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リリカルなのはクロスSSその64

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 13:37:06 ID:oGiKpRO3
ここはリリカルなのはのクロスオーバーSSスレです。
ガンダム関係のクロスオーバーは新シャア板に専用スレあるので投下はそちらにお願いします。
オリネタ、エロパロはエロパロ板の専用スレの方でお願いします。
このスレはsage進行です。
【メル欄にsageと入れてください】
荒らし、煽り等はスルーしてください。
ゲット・雑談は自重の方向で。
次スレは>>975を踏んだ方、もしくは475kbyteを超えたのを確認した方が立ててください。

前スレ
リリカルなのはクロスSSその62
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1209392336/

*雑談はこちらでお願いします
リリカルなのはウロスSS感想・雑談スレ36(避難所で進行中)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1209615724/

まとめサイト
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/

避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/

NanohaWiki
ttp://nanoha.julynet.jp/

R&Rの【リリカルなのはStrikerS各種データ部屋】
ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/index.html

2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 13:38:44 ID:oGiKpRO3
【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
 http://gikonavi.sourceforge.jp/top.html
・Jane Style(フリーソフト)
 http://janestyle.s11.xrea.com/
・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認してダブルブッキングなどの問題が無いかどうかを前もって確認する事。

【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は感想・雑談スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
 前の作品投下終了から30分以上が目安です 。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。

【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
 議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
 皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
 著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
 いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
 追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。

3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 13:39:25 ID:oGiKpRO3
【警告】
・以下のコテは下記の問題行動のためスレの総意により追放が確定しました。

【作者】スーパーロボット大戦X ◆ByQOpSwBoI
【問題の作品】「スーパーロボット大戦X」「スーパーロボット大戦E」「魔法少女(チェンジ!!)リリカルなのはA'S 次元世界最後の日」
【問題行為】盗作及び誠意の見られない謝罪

【作者】StS+ライダー ◆W2/fRICvcs
【問題の作品】なのはStS+仮面ライダー(第2部) 
【問題行為】Wikipediaからの無断盗用

【作者】リリカルスクライド ◆etxgK549B2
【問題行動】盗作擁護発言
【問題行為】盗作の擁護(と見られる発言)及び、その後の自作削除の願いの乱用

【作者】はぴねす!
【問題の作品】はぴねす!
【問題行為】外部サイトからの盗作

【作者】リリカラー劇場
【問題の作品】魔法少女リリカルなのはFullcolor'S
【問題行為】盗作、該当作品の外部サイト投稿及び誠意のない謝罪

4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 13:48:42 ID:V9tbZeDQ
乙と言わざるをえない

5 :一尉:2008/05/03(土) 13:58:36 ID:azTISkbf
言う事無い支援

6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 15:19:55 ID:aMv1BaCl
>1乙でしたー
前スレラストのAAで癒された…

7 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 15:28:33 ID:2RalpOky
>>1

ところで、前スレの番号が修正されてなくね?

8 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 15:34:14 ID:mQmVBwU+
>>7
またやっちまったorz
アドレスは合ってるから見逃してくれ

9 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 16:38:30 ID:SQn1BpYV
前スレ>>513
でもあれって半妖とは言っても"人外"の技だろ?
幾ら魔法でも化け物に効くのだろうか
多少傷を与えられても決定打になりそうに思えないんだよな妖怪的に考えて

10 :前スレ513:2008/05/03(土) 16:50:40 ID:PB/05ss2
>>9
それを言うなら“人間”の技である破魔の矢や法力にやられる妖怪は何なんだ、ってことになると思うんだが。

ウロスで話すべきなんだろうけど、向こう本編叩き(?)でそれどころじゃないしなぁ……

11 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 17:53:12 ID:h1fxnmYQ
ならば逆転の発想だ。
物理干渉(殺傷設定)で影響を与えられないなら、魔力干渉である非殺傷設定でのみ殺傷できる。とか。

12 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 18:41:06 ID:ZFztDhhT
スレイヤーズの魔族とかもそんな感じだな
物理攻撃は無効、魔力&精神攻撃である非殺傷設定なら攻撃は通るだろう
けれど、どこまで効くかって問題。


13 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 18:44:33 ID:9My1xpjW
メガテンでは幽霊系はともかく、実体がある悪魔には銃とかは効いてたな。

14 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 18:47:15 ID:FYJTEVxW
>>11
なのはの魔力は精神エネルギーでも何でもないけどな。

15 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 18:48:37 ID:X1Uxb6gi
メタルギアを初めてプレイしてる最中に閃いたんだけどさ、意外となのはstsとクロスさせやすくないか?
軍の秘密機関でESPを使う特殊兵を育成してるし、スカリエッティがブラックマーケットに流れたメタルギアの設計図を入手して、ガジェットドローンX型『スカリエッティ式メタルギア』を作り上げるとか。そして、それを破壊するために派遣されるソリッド・スネーク

16 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 18:51:24 ID:9My1xpjW
もうそろそろウロスに行っても大丈夫かな?

17 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 19:10:31 ID:2RalpOky
>>13
メガテンだと暴走したチューナーの物理攻撃は存在の特性を無視してダメージを与えることもあるし
出力さえ十分であればどうにかならなくはないだろ

18 :一尉:2008/05/03(土) 20:17:30 ID:azTISkbf
それならスネークは新作ゲーム出るらしい。支援

19 :作者の都合により名無しです:2008/05/03(土) 20:21:58 ID:MHDY/z62
スレイヤーズの魔族は元々精神生命体であって物理世界に干渉する際に物理的な肉体を使ってるだけでしょ
だから物理的な攻撃ではダメージを与えることすらできないってだけで効く効かない以前の問題


20 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 20:44:23 ID:17HuXi7o
>>12
スレイヤーズ並みの精神にもダメージ与える魔法の威力はなのは達は
だせないというかだしてはいけないかと・・・。
でなければなのはがお仕事のたびにどれだけの精神崩壊した
廃人を作ることになるか・・・
まあSLB直撃の人でも人格は吹き飛んでないから
エルメキアランスくらいじゃないか?
エルメキアフレイムくらいになると人の精神は破壊されちゃうし。

21 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 20:56:55 ID:SlopRUeH
非殺傷って、精神攻撃じゃなくて、魔力に対しての攻撃じゃなかったっけ?
魔力ってのが物質と精神のどちらに傾いてるのかは知らんが、
スレイヤーズ系の精神対象の魔法とは効果が異なるだろう。

=廃人生まれない

22 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 21:03:49 ID:xpaeBzSx
非殺傷を精神攻撃とか言ってる奴まだいたのか
そんな設定ねぇよ

23 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 21:08:44 ID:CmaPR+FQ
ウロスか設定議論いけよ…

24 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 21:09:29 ID:Sy7h8KbG
いい加減ウロス行って議論しろよ。避難所には設定議論スレまであるんだぞ。
前の騒動の時に散々住み分けができない住人だって言われたの、もう忘れたのか?

25 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 21:25:45 ID:GyNKosnL
言い方悪いけどバカは死んでも治らない
さて何人死んだら少しはまともになるかな?

26 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 21:52:03 ID:WrBrmmrQ
0はいくらかけたって0ですよ

27 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 22:45:05 ID:SjmsLBze
おいおい、ウロスとか避難所とかあんまり難しい言葉使ってやるなよ
ここはsageの仕方すら知らんような奴らが覗いてることもあるんだぜ?

28 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 22:54:23 ID:v0FrI2Y0
いい加減しつこい

29 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 00:49:36 ID:P0oyCC6Q
特に予約も入ってないようなので1時からネロス帝国の第2話を投下しようと思います。
37kbあるんでどうぞ支援よろしくお願いします。

30 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 00:52:28 ID:IR8vCo+B
支援ですw
アースラ、プレシア、ネロス帝国による三つ巴が見れるのかwww
地力は今はネロス帝国が一番か。

31 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 00:59:59 ID:P0oyCC6Q
「アグミスより入電。深海にて目標を発見しこれを撃破。結晶体を回収して帰投するとのことです」
「おお、さすがはアグミスだな」
「ストローブ2号より増援要請、単機では火力が足りないようです」
「ダーバーボ、ブルチェック、直ちに向かえ!」
「了解!」

メガドロンの号令の下、戦闘用ワゴン車ダークガンキャリーが物騒な戦士を満載して走ってゆく。
ブルチェックの手によって謎の高魔力結晶体がネロス帝国にもたらされてしばらく、機甲軍団の
結晶体捜索はかなりの成果を上げており、集まった結晶体はすでに6つにもなる。得体の知れない獣や
歩行する大樹、あるいは動植物と融合していない高エネルギー体の形で発見されたそれら全てを、
機甲軍団は火力でねじ伏せてきた。
結晶体の確保に成功した後、傷ついた動物が出てきた場合かいがいしく傷の手当をする
ブルチェックが見られたが、それはこの際関係ないだろう。
一見すると順調である。ネロス帝国の繁栄を阻む者は誰もいないかのようであった。
だが、彼らは知らない。その結晶体『ジュエルシード』を求めているのがネロス帝国だけではないことを。


魔法帝王リリカルネロス  第2話「翔く魔導師!娘よ、母の願いを!」


「なんなんだよ、あの鬼婆!!もう11個も集めたっていうのに、何が『いつになったら全部揃うの?』だ!
フェイトがどんだけ苦労してると思ってんだよ!」
「アルフ、母さんを悪く言わないで。私が時間をかけすぎてるのが悪いんだから」

とある高層マンションの一室で、そんな会話を行う2人組の姿があった。
片方は鮮やかな橙色のロングヘアーの女性。アルフと呼ばれたその人物は今にも泣き出しそうだった。
頭から突き出た獣の耳とふさふさした尻尾が彼女が人間でないことを示している。

「だってフェイト!あんなのってないよ!今度こそ褒められるかもって思ってたのになんでそんなに
ボロボロにされなきゃいけないんだよ!」

もう一方は金髪の長い髪を二つに分けた少女、名はフェイト。アルフの言葉通り、フェイトの体には
至る所に真新しい傷が見える。その傷はフェイトが最も敬愛する人物によって与えられた物だった。

フェイト・テスタロッサは魔導師である。母プレシア・テスタロッサの命を受け、この地球でロストロギア、
ジュエルシードを探していた。彼女は文字通り身を削りながら戦い、21個あるジュエルシードのうち
これまでに11個を回収している。全ては母のため、母に喜んでもらうため、だがフェイトのその思いが
報われることは一度としてなかった。

(今までだってずっと冷たい態度だったけど、ここに来てそれが加速している。このままじゃフェイトは
あの女のせいで――――――)

フェイトに生み出された使い魔であるアルフには、プレシアに対する思い入れは一切無い。むしろ、
フェイトの労苦に報いずただ徒に彼女をいたぶるその姿に憎悪すら感じていた。
本当は優しい人なんだ、ジュエルシードが全部集まればきっと優しい母さんに戻ってくれる、
フェイトは一貫してそう主張し続けていたが、アルフにはとてもじゃないがそうは思えなかった。
むしろジュエルシードが全て集まったら、あなた達はもう用済みよ、などと言って自分とフェイトを
始末しようとするのではないか、とまで考えている。

「フェイト……あの女のとこにいちゃダメだよ。私これ以上フェイトがボロボロになるのを見たくないよ。
ねぇ、2人で一緒に逃げよ?誰の手も届かないところにさあ」
「ダメだよアルフ、ちゃんとジュエルシードを集めなきゃ。……私なら大丈夫だから」
「フェイトぉ……」

フェイトの意志は固い。身も心もボロボロになりながら、それでも彼女は母を信じ続けている。
自らの傷を省みずひたむきに突き進む少女を前に、アルフは心の中で誓っていた。

絶対にこの子を守ってみせる。どんな手を使ってでも――――――

32 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:01:37 ID:P0oyCC6Q
 
「ダムネンよ、お前が持っているそれはなんだ?」

このところ姿を見せなかった帝王が謁見の間に現れて、いつものように「余は神!」と宣言した後のこと。
唐突に話を振られたモンスター軍団爆闘士は混乱していた。ぎょろりとした大きな目が不安げに
視線を彷徨わせる。

「お、オレですか?」
「おうダムネン。何持っとるか知らんが帝王のお言葉や、はよ出さんかい」

帝王が興味を持つ物など持っていたか?と焦ったダムネンだが、出撃して数の減っている機甲軍団を見て
思い出した。数日前手に入れたブツのことである。

「もしかしてコイツですか?」

そう言って深紅の宝石を差し出す。

「うむ……それだな」

自分が間違ってなかったことに安堵しつつ帝王に宝石を献上するダムネン。
帝王は指でそれを摘むと、光に透かすようにのぞき込んでいる。

「なんやダムネン、あんなもんどこで見つけてきた」
「この間のフェレットですよ、ブルチェックが持ち込んできたアレの首についてたんです。あんな高価そう
な物を動物が持っててもしょうがないんで俺が使ってやろうと、まあブルチェックが部屋から出た後に」
「ガメた、と」

『食うて寝て果報を待つ』などと公言してはばからないモンスター軍団であるが、それは逆を言えば一瞬の
チャンスを逃さず物にするという思想でもある。
爆闘士ダムネンは隙を逃さずお宝を手に入れていたわけだ。
せっかく手に入れた宝石を手放すのに抵抗がないわけではないが、タダで手に入れた物が帝王への賄賂と
なるなら安い物だ。

「余の考えが間違っていなければ、これの使い方は……」

しばらくの間しきりに何かを呟きながら宝石を摘んだりにらんだり帝王だったが、そのうち動きを止め
何かを考え込む様子で瞳を閉じてしまった。

「……………………」
「帝王…?」
「静かにしろ、帝王の邪魔だ」

宝石を握りしめ黙り込む帝王の様子を不審に思ったバルスキーが声をかけるが、
何かに気付いた様子のクールギンが制止する。
一同が沈黙して帝王の行動を見守る中、全身に魔力をみなぎらせた帝王はかっと目を見開くと
『呪文』を唱えた。

「起動せよ!」
「Stand by ready. Set up」

瞬間、宝石が光を放ち一回り巨大な宝玉に姿を変えた。

33 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:04:50 ID:P0oyCC6Q
『おおおおお!?』

意味不明な現象に驚愕する一同の前で、浮き上がる宝玉を掴む黄金の鉤爪が現れる。
さらにがちゃがちゃと耳障りな金属音を立てながら生えてくる人骨のような部品。
光が収まった後には、血のように赤い宝玉で飾られた白色の杖を持つ帝王の姿があった。

「帝王、それはいったい?」
「ふむ……これもまた魔法に関わるもののようだな。時を同じくして現れた結晶体とこの杖。
何らかの関係があるやもしれん。早急な調査が必要だ。時に……」

目をすっと細めた帝王がモンスター軍団長に視線を向ける。

「こんなものを持つ者がただの動物というわけはあるまい。いずこかの組織が諜報のために
送り込んだ者やもしれん。手抜かりだなゲルドリング」
「げえっ!?……いやいや帝王。たかが動物一匹に出来る事なんてありませんで」
「この杖に発信器が仕掛けられていたらどうする?このゴーストバンクの位置が
特定される可能性もあるではないか!」

帝王ゴッドネロスは徹底的な秘密主義者である。自分自身の過去をほぼ完璧に消すだけでなく、
ネロス帝国の存在が誰にも知られないよう常に情報の隠蔽を怠らない。
ネロス帝国と取引のあるごく一部の死の商人であっても、その本拠地であるゴーストバンクの
ことまでは知らないほどである。
ゴーストバンクはその所在を知られないために通信等を妨害する素材で防護されているが、
未知の技術によるこの『杖』に対応しきれているかどうかは分からない。
それ故に帝王は怒りを露わにしているのである。

「いやっ、それは……そもそもブルチェックのやつが持ち込んだのが発端でっせ!」
「隅から隅まで調べた、そう報告したのはお前だったな」
「余計なこと言わんでええ!」

貴重品を献上しててっきりお褒めの言葉が来ると思ったら逆に懲罰の話である。
更には横からのクールギンの言葉に、ゲルドリングの焦りは加速する一方だった。

(何や、最近こんなんばっかりやがな。大体動物1匹でそんなに大騒ぎすることも……
ヤバイ、帝王の目つきが厳しくなってきとる。ありゃマジや、何とかせな………あっ、そうや)

「帝王、あの動物の調査したんは実はダムネンとザケムボーでして」
「えええ!?軍団長そりゃないですよ!」
「やかましい!軍団長が罰を受けそうなときは身を挺して庇うんが部下の務めやろが!」
「たまには戦闘ロボット軍団みたいに『責任はワシが取る』とか言ってくださいよ!」
「そんな殊勝なこと言うたらワシはワシでなくなってしまうわ!」
「ええい黙れい!!」

途端に始まる醜い争いを一喝して中止させた帝王は、苛立った様子で裁定を下した。

「ダムネン、ザケムボー両名は烈闘士へ降格とする」
「ひぃー、そんなあ……せっかく激闘士まであがったのに」
「お前なんかマシだろ!?オレは2階級下がるんだぞ!
おそれながら帝王、その宝石を確保しておいたオレの方が罰が重いのは何故ですか!」
「黙らんかい!お前ら帝王のお言葉に逆らう気か!」
「ダムネンよ、お前が直ちにその宝石を提出していればあの獣を逃す事もなかったからだ。
そしてゲルドリングよ、調子に乗るな。モンスター軍団に失態が続けばお前への制裁も
考えねばならんのだぞ?」
「……!!もちろんわかっておりますがな!!」
「先の獣から情報を手に入れた何者かがゴーストバンクへの侵入を図るやもしれん。
各員警戒を怠るな!」

34 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 01:05:37 ID:IR8vCo+B
なにぃ!!リリカルネロス文字どうりなるのかwww
支援

35 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 01:06:20 ID:b5py2g4l
支援

36 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:08:54 ID:P0oyCC6Q
ふう、とため息をこぼしながら帝王は呟く。

「お前達に魔力を感知する機能を与えておかなかったのは余の過ちであったか」

「帝王!一大事です!!」

出撃中の戦闘機型機甲軍団員ストローブが飛び込んできたのは場が解散しようとした頃だった。

「何事だ」
「結晶体の回収中にバーベリィが未確認の敵と交戦、撃墜されました!」

同時に室内に運ばれてくるバーベリィ。ヘリコプター型のアイデンティティとも言える背中のローターは
醜く折れ曲がり、体の所々が土にまみれひしゃげている。また背中には大きく切り裂かれた痕がある。
バーベリィは倒れ伏したまま体を痙攣させ、起きあがることもできない様子だった。

「まことに申し訳ございません…!」
「未確認の敵とは何だ?」

クールギンに問われたストローブだが、その言葉は要領を得なかった。

「人間……だと思うのですが、あれが人間かどうかは正直理解しかねる物がありまして」
「もうよい、記録を出せ」
「はっ!」

帝王の命を受け、バーベリィの記録をモニターに映し出す。
その光景は先行したバーベリィの報を受け、第二陣としてストローブが合流する少し前のものだった。

 
偵察中に発見した不審な物体、それはかなりの広範囲に渡ってそびえ立つ巨大な樹木群であった。
昨日までここは普通の森林だったはずだが、たった一日で木の大きさが3倍ほどに跳ね上がっている。
おそらく例の結晶体だとあたりを付けたバーベリィなのだが―――――――
それ以上にとんでもない物を見つけてしまった。

「本部、大変だ。子供が空を飛んでいる!」
『……バーベリィ、何を言っている』

ひどく困惑した通信が返ってきた。

金髪の少女が空を飛んでいる。ローターもロケットブースターも無しに空を飛ぶその少女が
呆気にとられるバーベリィの前で高出力のビームらしきものを照射すると、一本の樹木にそれが当たり、
探し求める結晶体が幹から飛び出しふわりと空に浮かんだ。同時に巨大化していた樹木群が縮み、
森は普段の姿を取り戻していく。

「空を飛ぶ子供がビーム砲を発射……結晶体が出てきた!?」
『どうしたバーベリィ、回路が狂ったか!報告は正確にしろ!』
「結晶体を狙う敵が出現………だが所詮は子供一人、オレ一人で十分だ」
『おいバーベリィ!』

「通信を切ったか……戦闘状態に入ったのか?」

バーベリィの通信相手だった豪将メガドロンは、高射砲型の頭をひねっていた。
報告は今ひとつ意味が分からない。しかし、敵が居るのは間違いない様子だった。

「メガドロン、どうしたのですか?」
「バーベリィが何者かと交戦を開始したようだが状況が不明瞭だ、ストローブを急行させろ」
「了解」

37 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:10:30 ID:P0oyCC6Q
 
ストローブが急いでいる頃、そこでは空中戦が行われていた。バーベリィと、黒衣の少女、
魔導師フェイト・テスタロッサとの青い結晶体をかけた戦いが。

「ジュエルシードは……渡さない!」
「ジュエルシード?それがあの結晶体の呼び名か!」
「知らずにあれを欲しがるの!?」

背中から生えたローターで飛行する乱入者の姿があまりに予想外だったため一瞬とまどった
フェイトだったが、すぐに思考を切り替えて戦いに集中することにした。
邪魔が入る可能性は考えていたし、そのための訓練も受けてきたからだ。
一方のバーベリィは実戦経験ではフェイトの比ではなかったが、『高速飛行する人間』との戦闘は
未経験である。まして魔法というものには無知も同然だった。

「くらえ!」

バーベリィから発射される小型ミサイル、人間に直撃すれば粉微塵に吹っ飛ぶのは間違いない。
それをフェイトは戦闘ヘリですら不可能であろう挙動で回避する。
スピード自体はバーベリィの方が上だろうが、小回りの良さから来る瞬間的な機動性はフェイトの方が
上であった。
奇怪な能力を持ってはいるようだが所詮は子供。そう侮っていたバーベリィは驚愕していた。
そして同時に怒りが沸いてくる。

「人間が、何故空を飛んでいる」

彼にしてみれば許し難いことであった。ネロス帝国の中でも空を飛べるのはストローブとバーベリィのみ。
これまでも各国の空軍と渡り合い戦闘機やヘリを数多く落としてきている。
いわば空は自分たちの縄張りなのだ。
だというのに、目の前のこの娘は飛行用の装備など持たないまま空を飛び、あまつさえ自分たち
ネロス帝国に刃向かってくる。

「あなたこそいったい何!?」

叫びながら発射される金色の光弾、フォトンランサーがバーベリィを掠めていくが、掠めたくらいでは
ダメージになっていないのかバーベリィは動きを止めない。

「効いてないの……?なら、これで…!」
「Photon Lancer Multishot」

フェイトの周囲に浮かび上がる8基のフォトンスフィア、それぞれが10発ずつのフォトンランサーを
生みだし、周囲にばらまく。

「うおわぁっ!」

先ほどの単発の攻撃とは違って、さすがに広範囲にばらまく高速弾は回避しきれなかったのか、
バーベリィの体に20発あまりのフォトンランサーが突き刺さる。

「終わった…?」
「効かんな!」

38 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:12:31 ID:P0oyCC6Q
倒したかと思い油断したフェイトにミサイルによる返事が返ってくる。
電気を帯びない純粋な魔力攻撃はバーネリィを驚かすことは出来ても、その鋼の体にはダメージと
ならなかったのだ。

「Defenser」

不意を突かれたフェイトを、自動的に展開された防御魔法が守る。
だが爆発による衝撃は大きく、防壁越しにくる衝撃は直撃すればどれほど危険かを感じさせてくれる。
――直撃すれば死亡する可能性あり――
バルディッシュからの警告はもっとはっきりその危険性を伝えていた。
今まで感じたことのない寒気がフェイトの背筋を走る。

「バ、バリアだと!?」

そしてバーベリィは眼前の光景が信じられなかった。
人間がバリアを張り、しかもミサイルが通じないほどの強度であるなど。
ネロス帝国にもそんな技術はなかった。

「くそっふざけるな!機甲軍団の雄闘が子供一人に!」
(手加減なんてできる相手じゃない……全力でどうにかしないと!)

恐るべき相手に対し、お互いに高速で飛び回りながら隙を探す。フェイトはその中で相手の正体を推測する。
ヘリのようなローターでの飛行、全く感じない魔力、防護服と言うよりは全身が機械そのものに見える外見。
感情豊かに喋る点を除けば傀儡といえなくもない。フェイトはフォトンランサーが通じなかった理由に
思い当たった。

(そうか、あれがこの世界の傀儡兵なら魔力攻撃じゃ意味がないんだ。だったら!)
「Scythe form Setup」

フェイトの杖が姿を変え、光の刃が大鎌の形をとる。それと同時に飛行速度が落ちるフェイト。

「疲れてきたか、スピードが落ちているぞ!」

それを好機と見たバーベリィは一気の勝負をかける。彼はフェイトの罠にかかったのだ。

「もらっ……」
「Blitz Action」
「たぞ……?」

フェイトの背後を取ったはずのバーベリィだったが、体当たりをしようとした瞬間その姿を見失った。

「Scythe Slash」
「ぐあっ…!」

敵が瞬間的に凄まじい加速をして自分の背後に回り込んだことに考えがいったのは、背中を深く
斬りつけられてからだった。

39 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 01:15:13 ID:b5py2g4l
支援

40 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:15:28 ID:P0oyCC6Q
 
「敵が斬りつけると同時に内部に電流を流され……機能の大半がやられました…」

ジュエルシードと呼ばれた結晶体が少女の杖に吸い込まれる映像を流しながら、バーベリィは報告を
続ける。交戦記録はストローブが救援に来たところで終了していた。

「ストローブ、お前は敵の姿を見たのか?」
「いや、オレが到着したときにはもういなかった。バーベリィの交戦記録はすぐにチェックしたんだが
オレ達では何が何やら分からなかった」

バルスキーの問いに答えるストローブは、しきりに首をひねっている様子だった。
それも当然のこと。高魔力結晶体なるものを集めだしたとはいえ、機甲軍団の捜索方法は目視による
異常な生物の発見に頼っている。センサーに反応もしないエネルギーが相手では判断のしようがない。
この映像を唯一理解しているのはやはり帝王だけだった。

「これは魔法だ。余の操るものとはまた異なる戦闘用……しかも高度に洗練されている」
「魔法!?こ、これが……」
「魔法とは、人間にこれほどのことを可能とさせるものなのですか?」

バルスキー、ドランガーは驚きを隠せない。

「これほどのものは余も知らぬ。よもやバーベリィを上回るとはな……恐るべき力よ」
「だからといって小娘一人に墜とされるなんぞ軍団の恥さらしとちゃいますか?」

ゲルドリングの嫌味な言い方に腹は立つが、その内容はドランガーにも理解できる。
失敗者には罰を。これはネロス帝国における不変のルールだ。

「帝王。この者の処置、いかがなさいましょう」

バーベリィの首もとに剣を突きつけながら、ドランガーが尋ねる。

「本来ならば銃殺。……だが偵察飛行には欠かせぬやつだ、より強力なパワーを与えよ」
「ありがたきお言葉、痛み入ります。連れて行けぃ!」

ダーバーボとストローブに両腕を掴まれたバーベリィはそのまま改造室へと連れて行かれた。
その光景を横目で見ながらクールギンが進言する。

「帝王。この娘、捨て置くわけにはいきません。至急討伐すべきかと」
「それやったらワシらに任せや!ここらで汚名返上しとかんといかんからな」

それに対し名乗りを挙げたのはゲルドリング。無論帝国の未来を考えて、などということはなく
帝王に媚びを売っておかないとマズイという打算からの発言だった。

「帝王!我がモンスター軍団の精鋭ならばあんな小娘の一人や二人どうということはありませんで」
「いや、ここは我が戦闘ロボット軍団に任せていただこう」

さらに出撃を表明するバルスキー。
なおヨロイ軍団は名乗りをあげていない。自分たちが格闘技や剣、槍など近接戦闘に
特化しているが故に、空を飛ぶ相手との戦いに向いてないことを理解しているからだ。
また機甲軍団も、すでに結晶体探索の任務を帯びている上、バーベリィが撃墜されたことで
慎重になっているためか沈黙を保っていた。

41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 01:16:47 ID:b5py2g4l
支援

42 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:17:29 ID:P0oyCC6Q
「そもそもモンスター軍団に空を飛ぶ相手を落とせる者がいるのか?」
「あのガキかてずっと飛んでるわけやないやろう、地上に降りた時を狙えばええんや」
「我が軍団には射撃に優れた者も多い。飛行する相手といえども遅れはとらん」
「討論はそれまでだ。決着は勝負で付けろ!」

白熱するバルスキーとゲルドリングの言い争いをクールギンが止める。

「よっしゃあ、バンコーラ、来い!」
「おお!」
「トップガンダー!」
「………」

ゲルドリング、バルスキーの呼びかけに応えてモンスター軍団暴魂バンコーラは勢いよく、
戦闘ロボット軍団雄闘トップガンダーは静かに人混みをかき分けて出てくる。
バンコーラは両肩に甲羅のようなプロテクターを持ったモンスターで、自在に伸びる腕を武器とする。
一方、漆黒のボディに隻眼の戦士トップガンダーは、愛用の狙撃銃で常に一撃必殺を成し遂げてきた
凄腕のスナイパーである。
任務と、軍団の名誉をかけて2人の戦士が向かい合う。

「よし、はじめ!」

クールギンの言葉を受けて鳴り響くファンファーレを切欠に、一気に距離を取る2人。
同時に周囲にいた者達が揃って部屋の隅まで退き、謁見の間は簡易コロシアムとなった。

ネロス帝国ではしばしばこのような任務の取り合いが起こる。帝王直々の困難な任務を無事成功させれば
上の階級へと昇進できる可能性が高く、腕に覚えのある者達は我先にと志願するのだ。
そして志願者が複数の場合、多くは決闘によって任務の受領者が決められる。
いわば御前試合とも言えるこの戦いは帝王も認めており、強者こそが正義であるネロス帝国の
在り方を示す物と言えよう。

円を描くように互いの間合いを計るバンコーラとトップガンダー。ひとしきり睨み合った後、
トップガンダーが勝負の形式を申し出た。

「この銃を、オレより速く手にすることが出来るかどうか。それが勝負だ」
「よぉーし、いいだろう」

スナイパーでありながら正々堂々とした戦いが好みであるトップガンダーは、銃や剣のような
武器を持たない相手にはしばしばこのような形式での立ち会いを望む。
伸縮自在の腕を持つバンコーラは、随分自分に有利な勝負が来たものだと内心で笑いながら快諾した。

「おい」

合意が成立したトップガンダーは帝王に仕える秘書Kを呼ぶと、自分の銃を手渡した。

「これを向こうに置け」
「はい」

受け取った銃を二人から離れた場所に置いた秘書Kが壁際まで下がると、バンコーラはすり足で少しずつ
動き出した。

「………………」
「………………」

対してトップガンダー全く動きを見せない。
現在バンコーラと銃の距離は2メートル、既に目標は彼の射程の中にあった。
対してトップガンダーからは、5メートル近くの距離がある。

43 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 01:18:25 ID:b5py2g4l
支援

44 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:19:39 ID:P0oyCC6Q
(……いける!)

相手が勝負を捨てていると思ったバンコーラは一気に勝負を付けることにした。
だがトップガンダーはバンコーラが腕を伸ばそうとした瞬間ジャンプ!
一部の無駄もなく組み上げられた機械の肉体が持つ瞬発力は、バンコーラの予測を越えて凄まじい。
あたかも黒い弾丸のように打ち出されたトップガンダーは転がりながらライフルを掴み、
立ち上がると同時に構える。その銃口はバンコーラを捕らえていた。

「う……まいった…」
「勝負あり!」

クールギンの声が響く。

「何やっとんやアホンダラ!」
「さすがだなトップガンダー」

去りゆくバンコーラの後ろ姿に罵倒を投げかけるゲルドリングと、満足そうに頷くバルスキーが
対照的だった。



「トップガンダー、お前のその狙撃銃であの娘を倒せるか」
「……………」
「トップガンダーはこれまで帝王の邪魔になる世界各国のVIPを取り除いた必殺のガンマン。
軍団長の名にかけてお約束いたします。そうだな?トップガンダー」

戦闘ロボット軍団長バルスキーはトップガンダーを高く評価している。沈黙を保っているからといって
任務に恐れをなしているとは微塵も考えてはいない。
事実、口を開いたトップガンダーから出た言葉は現状を冷静に分析し、勝利を目指す戦士のものだった。

「帝王、今のままでは心許ない。銃のパワーアップの許可を」
「なんや、小娘一人にびびりおって。そのごつい銃は飾りかい」
「なんだと!」

ゲルドリングが一々入れる嫌味に、戦闘ロボット軍団の中でも血の気の多い者達は怒りを露わにする。
しかし当のトップガンダーは一切無視して話を続けていた。

「バーベリィのミサイルを受け止めたということはあの娘の防御力は戦車並かそれ以上!
あのバリアを貫くには今以上のパワーが必要だ」
「よかろう、お前の望むようにするがいい」

だがトップガンダーの要求は止まらない。

「それともう一つ、あの結晶体をお貸しいただきたい」
「言葉が過ぎるぞトップガンダー!あの結晶体は今や帝国の最重要捜索目標、
軽々しく手に入れられると思うな!」

思わず声を荒げるドランガーを軽く手を振って制すると、帝王はトップガンダーに尋ねた。

45 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 01:20:22 ID:b5py2g4l
支援

46 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:20:46 ID:P0oyCC6Q
「あれは戦闘ロボット軍団が持ったところで意味のない物。何故にお前が欲しがるのだ」
「理由は一つ、あの結晶体のあるところに必ず娘は現れる」
「なるほど……」

トップガンダーがもし暗殺に失敗すれば帝国はジュエルシードを1つ失うことになるが、
仕損じ無しのスナイパーが後れをとるはずがない。それにあの娘を仕留めた後、死体から
先ほどの杖のような未知の技術に関する情報が得られるかもしれない。帝王の決断は早かった。

「よかろう、だが失敗は許さんぞ。必ずやあの娘を葬るのだ!そして任務遂行後は娘の死体と装備品の
回収を怠るでない。よいな?」
「しかと承った」


「なんてこった……」
「あんまりだ……」

妖しげな蒸気が漂うモンスター軍団の本部。その片隅では2人のモンスターがどんよりとした空気を
まとって落ち込んでいる。
セミ型モンスターのザケムボーはどこかに飛んでいきたい気分だった。飛べないが。
一方のダムネンもやけくそ気味に暴れたい衝動に駆られていた。こんな時には弱者をいたぶるような
仕事で憂さを晴らしたいものだが、生憎とそんな任務の予定はなかった。
そこに通りがかった電磁鞭の怪物、雄闘ガナドーンが2人に声をかける。

「お前ら、軍団長の召集がかかってるぞ。手の空いてる奴は全員来いってよ」

戦闘ロボット軍団がトップガンダーの銃を強化している頃、モンスター軍団ではゲルドリングによる
ありがたい訓辞が行われていた。悪巧みとも言う。

「戦闘ロボット軍団だけに手柄を持っていかれてたまるかい。お前ら、ワシの顔を立ててみい!」

要は他人の手柄を横取りしてこいという話である。実にモンスター軍団らしい話であった。
任務の正式な受領者で無かろうが、多少命令違反しようが、確かな成果さえ上げれば帝王はそれを
認めてくれるため、軍団間での足の引っ張り合いに近いこういう自体も時には起こる。
また四つの軍団が鎬を削るこのネロス帝国の中でも、ゲルドリングは特に労せず成果を得るのを
好む幹部であった。他の軍団の手柄を横取りというならなお気分がいい。

「あの娘の首を持ってくれば下げられた階級も元通りかもしれねえな」
「よし、トップガンダーの手柄を横取りしてやろうぜ」

そして軍団員もまたそれに倣っている。ダムネンとザケムボーはさっそく新しい手柄を求めて
動き出そうとしていた。
もともと成長が早い代わりに寿命が短いモンスター軍団は、過去のことにあまりこだわらない。
目の前にチャンスがあるなら以前失敗したことはさておきそれに全力投球するのだ。

47 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:21:17 ID:P0oyCC6Q
 
立ち入る者のいないネロス帝国の領域、採石場にカモフラージュされた演習場で
トップガンダーはただひたすらに待っていた。
無造作に転がされたジュエルシード、それにターゲットが食いつくのはいつになるか。
1時間後か、1日後か、1ヶ月後か。
スナイパーは獲物が罠にはまるまでひたすら待ち続ける。ロボットであるが故の、人間を遥かに上回る
鋼鉄の忍耐。唯ひたすらに待ち続ける。

トップガンダーは常に任務を一人でこなしてきた。彼なりの「殺しの美学」の故である。
戦いにおいてはフェアプレイ、それがトップガンダーの信条だ。
標的がもし年端もいかぬ娘ではなく一人前の戦士であるならば、彼は狙撃による暗殺ではなく
正々堂々とした立ち会いを望んだだろう。
しかし、いくら特異な能力を持っていても所詮は子供。全力を傾けて殺し合いたい、トップガンダーに
そう思わせることは出来なかった。ネロス帝国においては、女子供は無力な物という認識が一般的な
ため、彼にとってフェイトは「獲物」であって「敵」とは成り得ていない。
そのためにジュエルシードを囮として使い、待ちの戦法を取っている。

だが、心静かに標的の到来を待つトップガンダーの集中をかき乱す者達がいた。

(あいつらは何をやっている)

降格されたばかりのモンスター軍団烈闘士ダムネン、ザケムボーの両名がジュエルシードの周りを
ウロウロしている。離れた場所に隠れているトップガンダーにはまったく気付かない様子だった
自分の任務を邪魔されるのは何よりも気に入らない。
足元に銃弾を撃ち込んで追い払おうとしたそのとき、ジュエルシードがまばゆい光を放ちだした。

「うわあああ!何だこりゃあ!」

帝王が手にしたときと同じ輝き。それがザケムボーの体を包むと、彼の体は全長6メートルを越える
巨大なセミの姿となっていた。

『ううおおおおおなんか分からんが力が漲ってきたあああああ!!!!』
「ザ、ザザザケムボー!?」
『トップガンダーがなんだああああ!!今のオレならあんな小娘の1人や2人いいいい。
捻りつぶせええるううううおおおおおおおお!!!!』
「おいザケムボー!落ち着け!!パワーアップしたのは分かったから超音波やめ……うぎゃああ!」

ブルチェックの発見した犬のように巨大化して暴れ回るザケムボーの攻撃が、
ダムネンに命中したのが見える。

「成る程、機甲軍団に探させるわけだな」

欲望に反応するとかいうあの結晶体の力は、おそらく生物でなければ反応しないのだろうと
トップガンダーは見当を付ける。
戦闘ロボットが持ったところで意味がない、という帝王の言葉もあった。
しかしこのまま放っておくわけにはいかない。どうしたものか―――――と考えていたところで
予想外に早く来た客の姿が目に入った。

48 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:22:27 ID:P0oyCC6Q
 
「ジュエルシードが発動してる」
「すぐ見つかってよかったじゃないか」

長距離探索魔法によってジュエルシードのおおまかな位置を捕捉したフェイトとアルフは、目的の
エリアに近づく途中で強大な魔力の発動を感じた。ジュエルシードが何らかの原因によってその力を
解き放った証だ。
前回正体不明の敵にフェイトが襲われたことで警戒を強めたアルフは、別行動をとるのをやめ
常にフェイトのそばにいるようになっていた。

「あれだね?」
「うん」

遠くに見える巨大な虫がジュエルシードを取り込んでいるのは間違いない。
今までに虫と融合した例はなく、また巨大昆虫というのは生理的に受け付けないものがあった2人だが、
封印自体はいつもと変わらないだろうと思っていた。
しかし近くまで寄ったとき彼女たちは驚愕することになる。

『おおおお!来たな、ネロス帝国に刃向かう小娘え!』
「しゃ、しゃべったあ!?」
「まさか、人間なの!?」

今まで12個のジュエルシードを回収してきたが、融合した生物が人語を解したケースは無かった。
前回のような邪魔が入る可能性を考えて行動を共にしていたアルフとフェイトだが、こんなことは
さすがに予想外だった。

『おれはモンスター軍団烈闘士ザケムボオオォォォ!!!』
「モ、モンスターだって?」
「人間じゃないの!?」

フェイトは何となく前回遭遇したヘリ型傀儡兵の関係ではないかと思ったが、今は詮索するべきでは
ないと判断し、念話での通信に切り替えて戦闘に突入した。

(さすがにロストロギアだ、訳分かんないもんが出てくるね)
(とにかくあれを封印しないと)
(オッケー、まずはあたしからいくよ!)

アルフは人から狼の姿に変わると、数発の光弾を放ちながら相手の様子をうかがうことにした。
ザケムボーが鈍重な体を揺すってそれを回避しようとしたところで、金色の呪縛がその全身にからみつく。
バインドで縛られた巨体にアルフの魔法が容赦なく撃ち込まれる。

『なんだこりゃ……いてえっ!』

ザケムボーが痛みに仰け反ると、バインドが軋みだす。
このうっとおしい縄だか鎖だかを外さないと動くこともままならないと、いささか弱くなった頭で
考えたザケムボーは全身の筋肉に力を込める。力に満ちた今の自分ならこんなもの壊せるはずだという
自信があった。

『こんなものおっ!』

49 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 01:23:22 ID:b5py2g4l
支援

50 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:23:34 ID:P0oyCC6Q
雄叫びと共にバインドは引きちぎられた。

(嘘!フェイトのバインドをこんなにあっさり!?)
(確かにパワーはすごいけど……付け入る隙はあるはず)

眼前の怪物との戦闘に集中するフェイトとアルフは、自分たちが観察されていることに気付いてなかった。
離れた崖の上に潜んでいたトップガンダーは慎重に標的の動向を探る。

(小娘1人かと思っていたが、モンスター女とつるんでいたか)

戦闘に際し狼の姿になるアルフ。ネロス帝国の常識で言えば、人の姿と人以外の姿を持つ彼女は
『モンスター女』にカテゴリー分けされる。
それにしては変身後の姿は随分と綺麗な物だ、と遠目に見たトップガンダーは素直に感心した。
そして同時にジュエルシードをエサにした作戦が無駄にならなかったことを喜んでもいた。

(囮としては十分すぎるほど役に立ってくれているな)

というより、そもそもザケムボーは戦力としてまったく役に立っていなかった。

『どうだあああパワーアップしたオレの力はああああ!!!!』

ザケムボーの巨大な腕が薙ぎ払ったのはフェイトが数秒前にいた空間だった。

『くらいやがれええええ!!!』

超音波があさっての方向に放たれる。

『うおおおおお!!』

吐き出された溶解液がジュウジュウと音を立てて地面を溶かす。宙に浮いているアルフは
吹き上がる酸性のにおいに思わず顔をしかめた。

ザケムボーは明らかに自分の力を持て余していた。大きすぎる自分の体をうまく動かせず、
強化された超音波も溶解液もすばしっこく立ち回るフェイトとアルフにはかすりもしない。
砕かれ、溶かされるのは周辺に転がる岩や地面ばかりであった。

『くっそおおおおこいつらなんで当たらねええええええ!!!』
(フェイトの言ったとおりだね、こいつパワーはすごいけど制御は全然だ。
あたしがかき回しとくからその間に封印を)
(分かった、ケガしないでね)
(こんなノロマな攻撃、当たりゃしないよ!)

上空へと上がるフェイトと低空に残るアルフ。ザケムボーは羽が生えてはいるが空が飛べないため、
射程外に逃れたフェイトはひとまずおいてアルフから叩くことにした。

『おまえがどこのモンスターかしらねえがああぶっつぶしてやらああああ!!!』
「あんたみたいなのと使い魔を一緒にするな!」

怒りと共に叩きつけられるフォトンランサーの散弾。バーベリィと違い生身の体であるザケムボーには、
魔力による攻撃が激しい痛みとなって襲いかかる。
もしザケムボーが人並みの知恵を持たない生物であったならば、ジュエルシードの波動に身を任せて
本能的な魔法防御を修得していたかもしれない。
しかしなまじ融合後も意識が残ったために、ジュエルシードは「手柄を立てる力が欲しい」という
ザケムボーの邪な願いをパワー偏重のアンバランスな強化で叶えることとなってしまった。
あるいは魔法というものをもっとよく知っていれば、これほど魔力に対する防御がおろそかに
ならなかったかもしれない。

51 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:24:21 ID:P0oyCC6Q
『痛ええええええええ!!!!』

巨大なセミが叫びながらもがく様は快いものではなかった。

(これだけデカイとクルもんがあるねえ……)
(すぐに終わらせるから……………いけるよアルフ)
(了解、ぶちかましてあげな!)

「撃ち抜け、轟雷」

ザケムボーの視界のはるか上方、空に作られた金色の魔法陣の中でフェイトは厳かに唱える。
アルフが時間を稼いでくれたお陰で、魔力の収束は十分過ぎる程だ。

「サンダースマッシャー!!!」

高出力のビーム砲、とバーベリィが評した砲撃魔法は、苦痛にのたうち回るザケムボーを貫いていった。



「それじゃあ封印封印っと。さっさと終わらせてこんな薄っ気味悪いもんがいるとこ離れよう」
「うん。……バルディッシュ」
「Sealing form. Set up」

地べたに転がりひくひくと痙攣するザケムボーの巨体に何重ものバインドをかけた上で、
フェイトは杖を変形させた。バルディッシュから放たれた光がザケムボーの額に当たると
禍々しく輝く結晶は光を失って浮かび上がり、フェイトの方へと一直線に飛んでいく。

「……!!Defe…」
――――――ガアンッ!―――――――

ジュエルシードがバルディッシュに吸い込まれようとしたそのときだった。
固いもの同士をぶつけ合ったような音と共にフェイトの体が跳ね飛ばされたのは。

「……え?……フェイト!!」

一瞬アルフは何が起こったか理解できなかった。
しかし、1秒にも満たない思考でフェイトが攻撃されたことを理解したアルフは、意識を失い落ちていく
主を守るため飛び出す。

完全な奇襲。アルフの魔力で強化された五感も野生の勘も、完全に気配を絶った狙撃手の前では
役には立たなかった。
平時ならば防壁を張るであろうバルディッシュも、ジュエルシードの回収に処理能力を割いていた
この時だけは対応しきれなかったのだ。全てはトップガンダーの予定通り。
フェイトが生きていること以外は。

(このライフルでも貫けなかっただと!?)

トップガンダーの優れた視力は、通常のライフルを上回る大きさの弾丸が少女のこめかみを捉えるも、
その防御を突破できず鈍器で殴られたような衝撃を与えたに留まったのをはっきり確認していた。
バルディッシュが咄嗟に発動しようとした防御魔法がギリギリのところでフェイトの命を救ったのである。

(魔法とは人間にここまでの防御力を持たせるのか……だが衝撃を防ぎきることは出来なかったようだな)

墜落していくフェイトを、アルフが抱きかかえるのが見える。

52 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 01:24:38 ID:AEwqAX1q
支援するッ!

53 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 01:25:23 ID:b5py2g4l
支援

54 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 01:25:42 ID:YOY/iaBo
更なる支援を!!!

55 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:26:12 ID:P0oyCC6Q
(そしてモンスター女、お前もこれで終わりだ)

1人目の標的はエサに食いついたところを狙い撃ち。2人目はお荷物を抱えている。
ネロス帝国で最高のスナイパーが外す道理はなかった。

フェイトの跳ね飛ばされた方向から狙撃手の位置に見当を付けたアルフは、フェイトを庇うように
抱きかかえながらその方向にプロテクションを張る。
その刹那。
ぎいんという衝突音と共に、展開されたプロテクションに巨大な弾丸が深々と突き刺さっていた。
しかもその弾道はアルフの額を捉えている。
だが、逃走を図る暇もなく、2発目の弾丸がすぐそこまで来ているのが見えた――――――

(ヤバ…!)

全く同じ弾道を辿ったそれはプロテクションに刺さった1つ目の弾丸を後ろから押し込む。
拮抗したのはほんの一瞬のこと。防壁を突き破った銃弾はアルフの頭蓋に叩きつけられ、
痛撃をもって彼女の意識を奪い去る。
トップガンダーの技量のなせる神業であった。

僅か数秒にも満たない攻防が終わり、現場に転がっているのは頭部への凄まじい攻撃により
撃墜された少女と狼女。そしていつのまにか地面に落ちていたジュエルシードだけである。
しかしトップガンダーの胸中には勝利の喜びはなかった。

「3発撃ってあいつらはまだ生きている………この勝負、オレの負けだ……」

どんな相手も一発で仕留めてきた凄腕スナイパー、そんなプライドはたった今砕かれた。
殺し屋である自分に狙われて生き延びている。それ故に彼は自分が敗北したと感じていた。
気絶した2人にとどめを刺すつもりはトップガンダーにはない。

「………本部、聞こえるか、こちらトップガンダー。目標の娘とその仲間のモンスター女を
生け捕りにした。直ちに回収部隊を送ってくれ」

だからといって見逃すつもりもなかった。ネロス帝国の戦闘ロボット軍団として、任務を放棄
するような真似は出来ない。それに、せっかく生きたまま無力化したのだからこの2人から情報を
吐かせるべきであるし、その内容にもトップガンダーは興味があった。
一体何者で、何故こんな力があるのか。そして、正面から闘えばどれほどの力があるのか。
彼にしては珍しく好奇心というものが沸いていた。


なお後年、友と思っていた同僚に裏切られたトップガンダーはフェアプレイの精神への執着を強め、
任務の達成よりも自分の美学を重んじるようになってしまうのだがそれはまた別の話である。

56 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:27:15 ID:P0oyCC6Q
 
一方その頃。

「それであなたは、ジュエルシードを自分で回収しようとこあの世界に行ったのね?」
「はい……」

次元航行艦アースラ、その中では管理局に救助されたユーノがリンディ・ハラオウン艦長、
クロノ・ハラオウン執務官の2人に事情聴取を受けている。
ようやく安心できる場所に来れたというのに、ユーノの表情は暗いままであった。

「偉いわ」
「だが無謀すぎる」

穏やかな口調のリンディとは対照的に、クロノは糾弾するかのような口振りだった。

「民間人1人でロストロギアを回収しようだなんて……」
「分かってる、分かってるよ!」

苛立ちをぶつけるように声を荒げるユーノ。年齢の割には落ち着いている彼にしては珍しいことだった。

「僕が甘かった…!あんな、あんな恐ろしいものが…!」
「落ち着いて話してみて、あなたが何を見たのか」

やたらと甘い茶をあおりつつ、ユーノは話していく。
自分が垣間見た、第97管理外世界『地球』の闇に潜む存在について。



「ユーノ君、あなたの話を総合すると……あの世界には発動したジュエルシードと融合して魔力による
防御を備えた生物を物理的に破壊するほどの質量兵器が存在して、それを装備した多数の傀儡兵は
人間並みの高度な思考力を持つ、しかもその傀儡兵達を保有しているのはおそらく反社会的な組織…
ということでいいのね?」
「生体兵器らしい怪物もたくさん見ました」
「目眩がするような話だな……どういう世界なんだ」
「魔法技術がないのにそこまで発展してるなんて、世の中広いわね」

ため息をつきながら、リンディは2杯目のお茶を自分のカップに注ぐ。無論砂糖とミルクもたっぷりと。

「これから……どうなるんですか?」
「いかに犯罪的な組織だろうと、その力が管理外世界に留まる限り私たちが手を出すわけには
いかないわ。だけど…」
「魔法技術のみならずロストロギアまで手にしているというなら話は別になる。管理局が介入する
理由としては十分だ」

57 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 01:27:18 ID:b5py2g4l
支援

58 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:28:41 ID:P0oyCC6Q
ユーノの問いにリンディが答え、さらにクロノが続ける。
実際のところ、ロストロギアであるジュエルシードとユーノから奪ったインテリジェンスデバイスを
所有していることは間違いないのだが、魔法そのものを使うのかどうかまでは定かではない。
ネロス帝国という組織が魔法を全く使えなかった場合、この案件に介入すること自体が管理外世界への
不当な干渉として問題化する可能性もある。執務官というエリートの経歴に泥がつくことになるかも
しれない。だがクロノには手を引くつもりは全くなかった。

「暴走すれば、複数の次元を巻き込む大災害が起こるかもしれない……そんなことは絶対に止めなくちゃ
いけないんだ」

決意を新たにするクロノ。一方ユーノもまた一つ決めていたことがあった。
それは、民間協力者としてここに残りジュエルシード回収に携わること。

「あのっ……できれば僕にも協力させてください!」
「気持ちは嬉しいけど、それはできない」

しかしユーノの申し出はクロノにばっさり切り捨てられた。

「局所的とはいえ魔法を上回る威力の質量兵器、当然非殺傷設定なんて存在するわけがない。
下手をすれば局員だって犠牲となるかもしれないんだ。民間人を関わらせるわけにはいかない。
大体君だって自分が無謀なのは分かったって言ったじゃないか」
「だけど……僕が発掘してしまったロストロギアなんだ、もう十分に関わってる!
1人だけ帰って結果を待つだけなんて我慢できない!」
「そういう話じゃないんだよ!安全性の問題なんだ!」

なにやら熱くなって口論に発展しかけてるユーノとクロノを止めるために、リンディは大人らしく
折衷案を出すことにした。

「それじゃあユーノ君の身柄をしばらくアースラで保護するというのはどうかしら。
話を聞く限りサポート系はなかなかできるみたいだし」
「艦長!」
「もちろん現場に出るのは厳禁よ。それでいいなら、だけど」
「あ、ありがとうございます!」

こうなってしまうとクロノは諦めざるを得ない。上官の決定だからだ。

「はあ……なんでこうなるんだ」
「ため息なんてついてる暇はないわよクロノ、これから忙しくなるんだから。
さしあたってはユーノ君、あなたがその帝国に遭遇した場所の座標を教えて貰えるかしら」
「はい!」


時空管理局、ついに地球への介入を始める。
ネロス帝国との激突までのタイムリミットは、近い―――――――

59 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:29:21 ID:P0oyCC6Q
囚われの身となったフェイトとアルフ。
主を救うため、使い魔の決死の作戦が始まる。
そして混乱の中、ついに姿を現す時空管理局。
戦えアルフ!フェイトを救えるのは君だけだ!

魔法帝王リリカルネロス
次回「主よ生きて!哀しみの女使い魔アルフ」

こいつはすごいぜ!



    提  供

  桐原コンツェルン
    翠  屋
  時 空 管 理 局

このSSは
暮らしの中の野望、桐原コンツェルン
出番の全くない翠屋
ご覧のスポンサーの提供でお送りしました。

60 :リリカルネロス ◆IYbP33Ghd2 :2008/05/04(日) 01:32:20 ID:P0oyCC6Q
投下終了!

クロスオーバー数あれど、フェイトの頭にライフルブチ込むSSはそんなにないだろう…

次回は
アルフとフェイト酷い目に遭う
管理局もっと酷い目に遭う
期間限定プレシア無双
の3本でお送りする予定。
予定通り行くと良いんですが。

相変わらず話の大半がネロス帝国ですな。
帝王デザインのレイジングハートはファンシーさが本編以上に足りません。
そしてバーベリィがやたら厚遇なのは原作準拠です。
メタルダー本編の頃のトップガンダーならフェイトを見逃して反逆罪で処刑されそうに
なるかもしれませんが、本作では少し若いのでそうはなりませんでした。
かっこいいので忘れがちだけど、正々堂々と闘いたがるスナイパーは
個人的にかなりの問題児ではないかと思います。

あと、この話は主役が最後には幸せになるハッピーエンドを目指しています。
フェイトもこのままじゃあ終わりません。

誰が主役なのかはまあ、作品タイトルを見てもらえば……。

そして支援ありがとうございました。

61 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 01:38:00 ID:IR8vCo+B
GJ!!です。
確かに、質量兵器がココまで、本編主人公陣を苦しめるのはなかったwww
管理局の戦力でネロス帝国に対応できるか心配だ。
プレシアは無双状態でも全然、違和感ないw最悪、ネロス帝国に頼んでアリシアが
生き返るならジュエルシードを全部渡すだろうなぁ。

62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 03:38:12 ID:gjibrshX
http://jp.shockwave.com/55shock/boj/

63 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 08:24:34 ID:AN9smRhS
>リリカルネロス
怒 る !(俺が
恐るべきゴッドネロス軍団。まさか魔法少女の顔面にライフル弾撃ち込むとは思わなかった。まさに外道。
しかもそんな軍団にフェイトとアルフも掴まっちゃうし、異形軍団に可憐な少女が放り込まれるなんて何気にリリなの最大のピンチじゃん!
た、助けてメタルダー…(汗
しかし、クロスオーバー先に明確な味方キャラがいないのはかなり珍しく、斬新な内容だと思います。しかもそれでいて秀逸。
っつかゴッドネロス様がレイジングハートを操るとは思わなかったw
さすがは帝王。なんかそのビジュアルって想像するだけでおぞましいよ、いろんな意味でww
任務に積極的な軍団の皆さんとか、それを決定する為に戦うとか、子供時代に見たメタルダーの記憶が鮮明に蘇ってニヤニヤしました。
トップガンダーはやっぱりカッコいいなぁ。
次回予告もナレーターのあの声で脳内再生余裕でした。ラストがどうなるのか、意味深げなあとがきの発言で気になります。
それハッピーじゃなくね?w
次回も期待。こいつはすごいぜ!

64 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 11:21:20 ID:6sMYMzP9
相変わらず提供がカオスwww

65 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 11:57:26 ID:IR8vCo+B
大企業、個人経営の喫茶店、治安を守る組織だもんなぁw

66 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 12:00:10 ID:0btaRqnt
GJ!
ずっとネロス帝国のターンwwwメタルダーは待機中w
メタルダークオリティ炸裂w
まさかゴッドネロス様のBJ姿がくるとはwwwRH持ってるゴッドネロス様w
飛べるとはいえBランク局員ではネロス軍団の相手はきつそうだぜ!
そしてゴッドネロス様のご出陣が楽しみです。

67 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 13:55:00 ID:mOL0gkus
砂ぼうずとなのはがクロスしたら面白そう

68 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 14:09:23 ID:Y2Rjt6WL
砂ぼうずが魔法使えたらヤバいな…

69 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 16:35:43 ID:Yh+dH/NJ
専用スレな

70 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 18:28:29 ID:mOL0gkus
>>67に訂正を加えて、
なのはの世界(時期は自由で)に砂ぼうずや小砂など、
砂ぼうずのキャラがやって来たらどうなるだろうか?
あの世界を生きて来た砂ぼうずがなのは世界で何をしでかすか見てみたい。
ウィンチェスターなどの実弾兵器をどうするかで管理局と衝突しそうだが……。


71 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 18:40:56 ID:/Y9qftnO
奴なら質量兵器を捨てても何とか誤魔化してもはたまた捨てずに犯罪者になっても何とかしそうだし、魔力がバカ高くても普通でもアホみたいに低くてもそれどころか無くてもどうにかしてしまいそうではある

72 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/04(日) 18:42:54 ID:ISuSUPuu
こんばんは。 空気なリリカル×アセリアです。
最新話が完成したので今晩23:00頃に投下したいと思います。

予約……ありませんよね?

73 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 18:50:36 ID:OtCP5OEJ
おふこーす!

74 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 19:29:00 ID:jAzqNcg9
kita- !

75 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 20:05:12 ID:vGBhEIE5
72
波動砲を持つ者は君だ

76 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 21:35:15 ID:GfZkXoin
リリカルネロス氏GJ!
次回は二人が身体の隅々を調べる訳ですね!(生理学的な意味で
期間限定プレシア無双・・・想像するだけでガクブルが止まらねえ。

77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 22:16:11 ID:7YBmcLX1
支援だ

78 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 22:56:20 ID:AWutfdwk
リリカルネロスのEDが「Dancing in tha velvet moon」だったらイイと思う。
サビの部分で、フェイトが総員で襲い掛かるネロスの団員達を片っ端から蹴散らしたりとか…。

79 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/04(日) 23:03:13 ID:ISuSUPuu
「くそっ! 何故こうなった!」

 地上本部の脱出路でオルネイ・ガーンズバックは悪態をつきながら走っていた。
 万全の準備をして、行った会議。 ここで自分達の派閥の発言力を強くめるつもりであった。
 会議を成功させ、襲撃者達を撃退に成功すれば間違いなく自分の地位も向上し、あのレジアスの失脚に成功すると信じていた。
 が、結果はこのザマだ。
 用意した戦力の半分は既に失ったと聞く。 残った人員も他の部署が用意した者達であり、奇跡が起きてこの戦局を一変出来たとしても自分にはなんら意味がない。
 更に言えば、強行に会議開催を進めたとして処分される可能性だってある。

「くそっ!」

 再び悪態をつく。
 そうだ。 自分は生き残らなくてはならない。
 新たな時空管理局の未来を切り開くのはこの――

「でも残念。 あなたはここでおしまいです」
「あ――」

 頭と胴体からあっさりと離れる。
 時空管理局の掌握を望んだオルネイ・ガーンズバックの人生がここであっさりと終わる事になった。

「お疲れ様ですわドゥーエ姉様」
「クアットロこそ」

 オルネイを殺した犯人――ナンバーズ2・ドゥーエの元に幻影ではあるがクアットロが現れる。
 ドゥーエは床に転がっている骸に目もくれず、クアットロに笑顔を向ける。 彼女は敵には冷酷だが姉妹達には優しいのだ。

「状況はどうなってるの。 こっちじゃあんまり情報が入ってこなかったから」
「ガジェット及びミニオン隊が地上と空の両面から襲撃。 防衛部隊の半分程を壊滅させましたが、やはり抵抗する部隊は多いみたいです」
「やっぱ精鋭部隊?」
「ええ。 ドゥーエ姉様からもらったリストに書かれていた部隊が善戦してるみたいですわ」
「それなら作戦通りね」

 奮戦してる前線部隊が入ればいるほどありがたい。 必死に戦う仲間いれば、援軍達も外で戦う防衛隊の援護に向かうだろう。そうなれば、中に存在する防衛戦力が少なくなる。
 クアットロは知らないが、シグナムやシャッハなどのエースクラスの騎士や魔道師達も中から外の援護に向かってしまっている為、ここまでは作戦は成功していると言っていい。
 後は目的のロストロギアを手に入れて逃げればいい。 自分達の目的は地上本部の壊滅ではなく、ロストロギアの奪取にあるのだ。 目的さえ達成すれば付き合う必要はない。
 しかしこのまますんなり行かないのが現実である。


80 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/04(日) 23:06:40 ID:ISuSUPuu
「むっ!」
「どうしたのクアットロ?」
「ちょっと待ってください」

 幻影のクアットロの目の焦点が消える。 幻影を動かす事をやめて本体の方で何か行っているのだろう。
 3分程待機していると、再起動するクアットロ。 しかしその表情には先程とは違い苦々しいと言わんばかりの表情が張り付いている。
 何か不測の事態が発生したのだろうか? そう思って口を開こうとするドゥーエの前にクアットロが口を開いた。

「カオス・エターナルの出現を確認」
「なるほど。 テムオリン殿の宿敵が現れたって事ね」
「出現したカオス・エターナルは今の所10人程ですわ。 今妹達に撤退の指示を出しています」
「賢明ね」

 カオス・エターナルは強い。 強化されたとは言え、ナンバーズの1人で戦えるとは到底思っていない。 戦うならば、それ相応の準備が必要だ。
 現在参戦しているロウ・エターナルはタキオスだけもあって戦力的に覆されたと言っていいだろう。
 ならばこちらの必要戦力が削られる前に撤退するべきである。
 既に地上本部襲撃に参加していたチンク、ノーヴェ、ディエチ、セッテは撤退済み。
 残るはセインとウェンディ、クアットロ。 そしてタキオス、ティアナだけである。

「では私達も撤退します。 ドゥーエ姉様、気をつけて」
「クアットロ達も。 それと伝言を妹達とティアナに」
「はい」
「終わったら、みんなでまた遊びに行きましょうって」
「ええ、必ず伝えますわ」

 クアットロの幻影が消えると、ドゥーエは息を吐くとそこにはナンバーズ2・ドゥーエの姿はなく管理局の職員の姿に変わっていた。
 スパイ。 これこそがドゥーエに与えられた役目。 最近、感ずかれたのか裏で動いている存在がある為、動きづらいがしっかりとこの役目を果たさなければならない。
 それが姉妹達の為になると信じているからだ。

「みんな、頑張りなさいよ」



 ○―――○




81 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 23:08:29 ID:XiTTZ2Du
ドゥーエ姉様支援

82 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/04(日) 23:11:29 ID:ISuSUPuu
「聖賢者ユウト!?」

 その存在を確認した瞬間、ティアナは一気にその場から離脱する。 あのまま斬りあうのは自分では力不足だ。
 カオス・エターナルの中でも新参者だと聞いているが、それでも自分より遥かに強い存在だと言う事には変わりない。
 ここでこのまま交戦するのは、危険だ。

「ならっ!」

 求めと誓いにマナを込める。 それと同時に時間稼ぎになるかは分からないが幻影数体を展開、突撃させる。
 1体目の幻影が一瞬にして、聖賢者に切り裂かれ消滅していく。
 強大な攻撃魔法――オーラフォトンビームを放つ為に更にマナを込めていく。
 2体目の幻影が、背後から斬りかかるが一瞬で剣諸共真っ二つにされる。

「これでどう!」

 3体目と4体目が斬りかかるのではなく掴みかかりに行く。 一瞬でも動きを止める為にだ。
 聖賢者は幻影2体を切り裂く為に足を止めた。 これで十分。 マナの収束は完了した。

「オーラフォトン……ビーム!!」

 放たれる黒の魔法。 黒い光の槍が聖賢者を貫かんと一瞬で駆け抜ける。
 放つと同時にティアナは脱出する。 攻撃は囮。 脱出出来る時間さえ稼げればそれで十分なのだ。
 だが相手は予想を上回っていた。

「なぁっ!?」
「はっ!」

 気がついたら目の前にいたのだ。 脱出の為後ろを向いた方向に。
 それと同時に襲い掛かる斬撃。 速度、破壊力など自分のものとは遥かに違う攻撃。 なんとか両方の剣を重ね合わせる事で防御には成功したが、バリアなど一瞬で破壊された。
 まるでレベルが違う。 どう足掻いても勝てない、そんな気持ちが湧き出てしまうぐらいにレベルが違いすぎる。
 受けた衝撃を利用して、後ろの壁まで後退。 更に壁を更に利用して、横っ飛びするように通路を駆け抜けていく。
 ここが狭い空間で助かったとしか言いようがない。 もしここが何もない広い空間だったならば、このように壁などを利用して加速する事など出来なかっただろう。
 もちろんエターナル相手では気休め程度しかないのだが、あるとないとではまったくもって違うのだ。

「追って……来ない?」


83 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/04(日) 23:16:59 ID:ISuSUPuu
 壁を使いながらの離脱中にクアットロからの撤退指示。 ウェンディはどうしたのかと聞くと、セインと一緒に離脱中だと言う。
 ならばここにいる必要はないな、と判断。 後はミニオンとガジェットに任せればいい。 今回投入されているあれらは用済みな旧型でしかないのだ。
 気配を探って聖賢者ユウトの位置を調べようとしたのだが、どうやらあの場から動いていないようだ。
 多分だが、自分が倒したあの魔道師を救っているのだろう。
 逃げれる安堵と同時に屈辱もこみ上げてくる。 自分は奴の眼中にもないと言う事なのだろう。

「私もエターナルになれば……」

 そうすればあんな奴に後れを取る事などなかったのに。
 強くなりたい。 もっと強く……!
 戦場から離脱しながらティアナは心の中で叫びを上げていた。



 ○―――○



「あの子の持ってる剣……」

 一方、その場に残ったユウトは先程の神剣使いの持っていた剣を思い出して顔を顰めていた。
 あれは自分の見間違いなどでなければ、【求め】と【誓い】であった。
 どうしてあの2振りの剣がここにあるのだろうか? あの剣達はかつての戦いで砕け、吸収されこの世にはないと思っていたのだが。

「聖賢」
『ふむ。 何者かが復活させたという事か』
「だけど、砕けて消滅した剣を復活させる事が出来るのか?」
『前例がない訳ではないだろう。 ユウト、お前の妹に持たせたあれのようにな』

 なるほど。 確かにそうだと思う。
 妹である佳織にペンダントとして残った【求め】のような事もある。
 砕け散った【世界】の破片が残っていてもおかしくはないのかもしれない。 そこから修復した。 可能性がない訳ではないか。

「大丈夫か?」
「は、はい……」

 ユウトが倒れこんでいるなのはに話しかける。
 刺された傷は、致命傷ではないが辛いだろう。 すぐに治療を受けた方がいい。
 治療所か何かに運べればいいのだが、つい先程この世界にやってきたユウトにはそんな場所分かる筈もない。
 なので、ユウトは神剣魔法を発動させる。 彼の神剣魔法は少量ではあるが治癒の力も働くのだ。


84 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/04(日) 23:21:33 ID:ISuSUPuu
「本当はエスペリアがいてくれれば楽なんだけどな」

 エスペリアがいればこの程度の傷、一瞬で治してしまうだろう。
 しかしエスペリアは、【彼女】と一緒に行動を共にしているため、この場にはいない。
 30秒程で、なのはの傷が完全に塞がる。 もちろん完璧に治癒された訳ではないが、一先ずは大丈夫だろう。
 さて、これからどうするべきか? この辺りのミニオンや正体不明の機械――ガジェットを倒しに来たのはいいのだが、気配を探った限りではこの辺りにはすでにいない。
 どうやらこの辺りにいたのはあの少女だけだったようだ。
 ならば用はない。 なのはを連れて一先ず、彼女の仲間に会って彼女を預けてから、エスペリア達と合流しようと、思った矢先に念話が飛んでくる。
 この感覚は

「ユキナか」

 カオス・エターナルの先輩である姉御肌の女性からの通信のようだ。
 どうやら彼女も来ていたようだが珍しいな、とユウトは苦笑する。 敵であっても愛着を持つ彼女が大掛かりな作戦に参加するとは思っていなかったのだ。
 まぁ、今回自分達に同行してきたゲストな【彼女】に比べればそう珍しい事でもないかと決め付け通信に出る。

「こっちは大丈夫。 ああ」

 戦局はこちらの方が有利。 とは言ってもロウ・エターナルの姿がないのが気になる所だ。
 これだけ大量のミニオンとガジェットを投入しているというのに彼等の姿だけない。
 いや、1人だけいる。 この建物の中枢部分で強大な力を発している存在が。
 しかしあちらには別の人物が向かっている。 時深から聞いた話では奴に因縁のある人物だそうだが。

「じゃあ俺はエスペリア達と合流するよ。 そっちも気をつけて……えっ? ルシィマさんもいるから大丈夫? そっか」

 同じくカオス・エターナルの先輩がいるのならばミニオン程度に後れを取る事はない。
 更に言えば、並大抵なロウ・エターナルではあの2人を倒す事など出来ないだろうが。

「じゃあ、行くか」

 なのはをかかえて、ユウトは跳んだ。



 ○―――○




85 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/04(日) 23:26:43 ID:ISuSUPuu
「ほう、貴様か。 まさか生きていたとはな」
「ああ。 貴様を倒す為に地獄から帰って来た」

 タキオスの刃を受け止めたのは、1人の男。 レジアス・ゲイズの友であり、死んだと言われていた男。
 その姿ははやても知っていた。 シグナムから聞いた事がある人物であり、地上本部所属では最強と言われたストライカーだからだ。
 ゼスト・グランガイツ。 それが今、自分達を救ってくれた男の名前である。

「ゼスト……お前……」
「久しぶりだなレジアス。 だが再会を喜んでいる暇は……ない!」

 巨大な槍を巧みに動かし、タキオスの剣を弾き飛ばす。 そこにはやてが援護射撃を行う。
 そんな姿を見て、タキオスはなるほど、と頷く。 どうやら認めてもらえたようだ。

「援護は任せてくださいグランガイツ一尉」
「久しぶりに階級で呼ばれたな。 君は?」
「八神はやて三佐であります」
「なら君の方が上官だ」
「いえ、この場は先輩の指揮下に入るのが最善かと」
「そうか」

 それだけ言うと、ゼストは己の槍にマナを込めなおす。
 目の前の敵は強い。 強すぎる相手と言っていい。
 しかしこちらとて負ける訳にはいかないのだ。

「援護は任せた」
「了解です」
「行くぞ【専心】」
『御意』

 後ろをはやて達に任せると、ゼストは一気に加速しタキオスに突撃する。
 その神速とも呼べる速度から放たれる槍の一撃を、タキオスは簡単に剣で受け止める。 しかしその放たれた衝撃は想定していた以上のものであった。
 タキオスの目から見て、ゼストの持つ槍――永遠神剣である――は第5位から第6位程度のものだと思っていたがどうやら違うようだ。
 いやランク自体はタキオスの目に狂いはないだろう。 しかしそこに込められた別の力。
 それは……

「なるほどな! 第3位以上の神剣から力を分けてもらったのか!」
「これならばエターナルではない俺とて戦う事が出来る!!」

 それならばエターナルである自分にこれだけ攻勢を仕掛けられる理由も分かる。 更に言えば、後ろには優秀な魔道師達もいるのだ。
 状況から考えれば、間違いなく状況はあちらが有利だろう。
 幾らタキオスとはこれだけの戦力相手に1人で立ち向かうのはさすがにきついと言わざるおえない。
 ゼストの重い一撃が繰り出されるが、全力で防ぐタキオス。
 その合間を縫って放たれるはやて達による援護射撃。 それを捌きながら潮時か、とタキオスは判断する。
 このまま心行くまで戦いたい所ではあるが、己が忠誠を誓う主の計画を成功させる為にも、ここで倒れる訳にはいかない。


86 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/04(日) 23:31:25 ID:ISuSUPuu
「ふん!」
「ちっ!」

 その大剣を巧みに操り、マナを込めた一撃でゼスト達を吹き飛ばす。
 2人がすぐに態勢を立て直すが、既にこの場にタキオスの姿はなかった。

「くっ……逃げられたか……」
「目的は……主要人物の抹殺ですよね。 呆気なく撤退していきおりましたけど……」
「他に目的があるのか……」

 あまりにあっさりしすぎている撤退に2人を首を傾げる。
 あれ程の実力者だ。 このまま戦闘を続けていけば、あちらの援軍が来れば間違いなく倒されたのはこちらだ。
 しかしすぐにはやては気づいた。

「ロストロギアか!」
「そっちか!」

 はやての叫び声にゼストもすぐに気がついた。 事前に情報を手に入れていたのかもしれない。
 ならば話は早い。 今までの彼等の動きからすれば、どう考えても主要人物を殺すよりロストロギアの奪取を優先するだろう。
 目の前の存在に恐怖していたはやてもどうやら一時、思考がうまく回らなかったようだ。
 しかしここから動けない。 はやてとしてはもうここには危険はないと思うのだが、ここにいる人々はそうは思っていない筈だ。
 故に強力の力を持ったはやてとゼストをここから動かすとは思えない。

「行くがいい」
「レジアス……」
「中将……」

 口を開いたのはレジアス・ゲイズであった。
 他の参加者達は口々に残すように叫ぶが、レジアスはまるで気にする様子はない。
 ロストロギア奪取の方が遥かに優先度が高いと判断した為だ。 だからこそ行かせるのだ。

「ここは儂に任せておけ。 ……頼むぞ」
「了解です!」
「任せておけ……レジアス!」

 ゼストを先頭に飛び出していく2人。 それを見送るとレジアス。
 さて、とレジアスは残ったメンバーの方に向き直る。 先程の戦闘を間近で見て顔を青ざめている者達を見て、こちらをどうにかするのが自分の仕事だな、と思った。



 ○―――○




87 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/04(日) 23:36:37 ID:ISuSUPuu
 さて時間を少しだけ戻す。
 地上本部襲撃から1時間経った頃、機動六課にも敵が襲撃してきたのだ。 地上本部程の数ではないが、やはりミニオンとガジェットの大部隊である。
 その指揮を執るのはトーレ。 サポートにディードとオットー、ルーテシアとアギト、ガリューの姿もある。

「事前に説明があった通り私が直接正面から戦闘を仕掛ける。 サポートにディードが、オットーが指揮、ルーお嬢様達は目標の確保をお願いします」
「了解ですトーレ姉様」
「了解」
「分かった……」

 トーレ達の目標はあるモノの回収であった。
 そのモノこそがドクターの目的に絶対的に必要なモノ。 今回の作戦で確実に確保しなければならない。
 これだけ派手にやらかしたのだ。 間違いなく次からは強固な防衛線を用意するだろう。 確実に確保するならば今しかない。
 地上本部襲撃こそが、この為の囮にすぎないのだから。

「見えてきた……あれは……!」

 六課の建物上空にいる存在を見つけてトーレが唸る。
 黒いバリアジャケットに白いマント。 死神の鎌を思わせるデバイス。 間違いない、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンだ。
 前回は引き分けに終わってしまった為、決着をつけたいと思うが今は目標の確保を最優先にしなければならない。

「だが、簡単に倒せる相手ではないな」
「トーレ姉様」
「ああ、奴とは私が戦おう」
「了解です」

 ディードがガジェットから飛び降り、光の剣【ツインブレイド】を構える。
 その眼前、六課建物前には槍を構えた少年と竜を従える少女の姿。 それに金髪の女性と、筋肉質な男も控えている。
 なるほど。 あれが六課に残された戦力なのだ。
 つまり眼前の敵を全員倒しきればこちらの勝ちだ。
 しかし不安もある。 ディードとオットーだけであの4人を相手に戦いきれるかどうかだ。
 ミニオン隊も健在とは言え、あの4人の戦力は高い。 特に筋肉質な男は、先日の戦いで実力は分かっている。
 しかしトーレ自身が援護に向かう事は出来ない。 彼女はフェイトと戦う事で精一杯だろう。
 ならば後頼る事が出来るのは、オットーが指揮するミニオン隊とガジェット部隊だけだろう。

「すまんが……任せたぞ!!」

 一気に高度まで飛翔する。
 フェイトも最初からこちらに狙いを定めてきたのか、即座にトーレを追って上昇する。


88 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 23:41:33 ID:OtCP5OEJ
支援

89 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/04(日) 23:41:50 ID:ISuSUPuu
「また会いましたね」
「ああ」

 それだけ言うと己の獲物を構えあう。
 トーレとしては倒せなくても出来るだけ時間を稼ぎたい。 正直、今の妹達では彼女は倒す事が出来ないだろう。
 ナンバーズ3トーレとフェイト・テスタロッサ・ハラオウンの2度目の激突である。
 フェイトは何か言いたい様子ではあったが、トーレは話す事はないと言わんばかりにフェイトに突撃していく。

「はああぁぁ!」
「くっ!」

 光の鎌と光の刃が激突する。
 お互いが神速の領域である。 些細な一撃が、己の命取りになる事を理解していた。
 激突と同時に距離を離し、加速。 再び突撃を行う。

(くっ、やはり速さではあちらの方が上か!)

 加速をしながらトーレが唸る。 自分もかなり速いと理解しているが、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンはその更に上を行っている。
 今の【切り札】を使わない状態では速度で勝つ事は出来ないだろう。
 しかしまだだとトーレは【切り札】の使用を却下する。 この戦いは速さの戦いなどではないのだ。
 確かにあの速さは驚異的ではあるが、追いつけない訳ではない。 それに純粋なパワーならこちらの方が上だ。
 そして何よりも防御力はかなり低いと見た。 掠っただけで、彼女に傷を残しているのがその証拠だ。 普通の魔道師相手なら、傷1つ付かないだろう。
 そこから考えられる作戦は1つだ。
 あの速度を殺す事はトーレには無理だ。 しかしフェイト自身が殺してくれればいい。
 エネルギーブレードと魔力の鎌で1合、2合と切り結びながら、頭の中で考える。
 刃同士の威力は互角。 身体能力での力はトーレの方が上、しかし速度ではフェイトに一歩及ばない。
 繰り出される砲撃を回避しつつ、トーレも数少ない遠距離武器であるエネルギー弾を放ちながら、このまま戦っていたいという一種のバトルマニア的な考えが浮かぶがそう時間がある訳ではない。
 クアットロから提示されている時間は1時間。 理想は30分以内に目標の確保、六課施設の破壊、撤退を行わないといけない。
 となれば、やはり戦っている時間はない。

「早々に終わらせてもらうぞ!」

 IS【ライドインパルス】にエネルギーを込めていく。
 トーレがやろうとしている事が出来るのは1度しかない。 もし失敗すれば、フェイトはすぐに対応策を練って実行してくるだろう。
 そうなってしまえば、悔しいが現状で【切り札】を使わないでトーレが勝てる見込みはなくなってしまう。
 しかし負ける訳にはいかないのだ。 下で戦っている妹達、本部で戦っている友人や妹達、そしてドクターの為に。

「ん、決着をつける気……?」

 フェイトは旋回しながら、動きを止めたトーレの姿を見てそう呟いた。
 まだ2桁も刃を交えてないが、あちらはそうそうに決着をつけるらしい。
 それはこちらにとっても有難い話だ。 六課の戦力は多くない。 エリオやキャロ、ザフィーラにシャマルしかいないのだ。
 もちろんあの4人がそう簡単に負けるとは思えないのだが、やはり数の多さを考えると今すぐ援護に向かいたい所だ。


90 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/04(日) 23:47:05 ID:ISuSUPuu
「バルディッシュ!」
『Yes、Sir!』
「ライオットモード!!」

 バルディッシュが二振りの剣に変形する。 今までの大振りなザンバーモードとは違い、取り回しを強化したタイプだ。
 一撃の威力こそ下がるが、フェイト自身のスピードも上昇しているので、連続して叩き込む事が出来る筈である。
 トーレが最大の攻撃の準備をしているのは分かっている。 ならばその初撃を回避、その後こちらの攻撃を叩き込めば倒せる。
 カートリッジをロードしていく。 あちらの動きも速い。 少しのミスが己の命取りになるのは間違いない。
 久しぶりの高揚感だ。 戦場でここまで高揚したのは、かつてシグナムと敵対していた頃か。

「行くよ! バルディッシュ!!」

 一気に加速。 トーレに向かって突撃していく。
 だがトーレは動かず、静かにエネルギーを貯めていく。 やはりカウンター系だとフェイトは判断した。
 この速度でカウンターを受ければ、元々装甲が薄い自分では、確かに一撃で落とされてしまうだろう。 更に言えば、現在は通常よりも更に装甲が薄い。
 危険だと分かっているが、トーレ相手にそんな生半可な方法では勝つ事は出来ないと判断したからだ。
 そんなフェイトに対してトーレもまたエネルギーを貯めていく。
 動きが更に早くなったフェイトを見て、思わず舌打ちするトーレ。 自分の思惑が外れた。
 先程までの速度ならば今の状態でも勝つ事は出来たが、更に早くなるのでは話は別だ。
 あの速度に追いつけないとは言えないが、かと言って確実に倒せるとも言えない。

「仕方ないか……」

 先程までは使う気のなかった【切り札】を起動させる。
 フルでの運用はさすがに無理だが、フェイトを叩き落す事のみに使えば短時間の運用で済む筈だ。

「行くぞ! フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!!」
「っ!!」

 突撃してくるフェイトに向かって、トーレも突撃していく。
 激突は一瞬。 決着も一瞬であった。

「あ……」
「私の勝ちだ……!」

 トーレの刃がバルディッシュを切り裂くのを見て、フェイトは茫然と口を開いてしまう。
 負けない筈であった。 スピードでは自分の方が有利だったし、考えていた通りトーレの初撃を回避する事にも成功していた。
 初撃を回避されたトーレに自分を攻撃出来る態勢ではなかった。 なのに何故、バルディッシュに攻撃が加えられているのかが理解出来なかった。

「何故こうなった分からないと言った顔だな」

 そうまったくもって理解出来ない。
 フェイトの目で、トーレを追う事が出来なかったのだ。

「ならばお前は私に勝つ事は出来ん」

 その言葉が終幕の証。
 金の閃光の相棒。 閃光の戦斧バルディッシュはあっさりと砕け散っていった。



 ○―――○




91 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/04(日) 23:51:51 ID:ISuSUPuu
「フェイトちゃん!?」

 シャマルが目にしたのは墜落しているフェイトの姿だ。
 無残にも破壊されたバルディッシュと一緒に、力なく地面へと叩きつけられるべく墜ちている。

「今、助け――きゃっ!?」
「シャマル!?」

 受け止めようと動こうとするものの、無慈悲な人形達がそれを許す筈もなく赤いミニオン達の容赦のない砲撃がシャマルに襲い掛かる。
 防御力は人並み以上にあるシャマルとはいえ、集中砲火を受ければただで済むはずもなく、バリアを抜いた幾つかの灼熱がシャマルを焼いていた。
 ザフィーラが援護に回るが、全てをカバーしきれない。

「私が助けます! フリード!!」
「無茶は――」
「僕が援護するから大丈夫です!」

 フェイトを救うべく次に動いたのはキャロとフリードだ。
 本来の姿に戻ったフリードならばフェイトを救えるだろう。 もちろんそれをミニオン達が見逃す訳がない。
 しかしシャマルとは違い、キャロを撃とうとしたミニオン達はあっさりと塵になっていた。
 神速で突撃してきたエリオの槍に貫かれたからである。
 赤いミニオンは物理攻撃に対しては、バリアは然程強固な訳ではない。 それをエリオは理解しているからこそ、簡単に貫く事が出来たのである。
 青いミニオンや黒いミニオンがエリオへと矛先を向けるが、敵はエリオだけではないのだ。

「鋼の軛!!」

 地面が現れた光の針達がミニオン達を貫いていく。
 これでキャロとフリードは無事にフェイトを助けられるだろう。
 そう、フェイトは助けられるだろう。

「あっ……ぐっ!?」

 だがミニオンの数があまりにも多すぎるのだ。
 援護で放った、ザフィーラの攻撃が一角を崩したとは言え、焼け石に水のレベル。 前へと出すぎたエリオはミニオン達の格好の的でしかない。
 離脱しようにも雨霰のような攻撃をすべて捌く事など出来ず、次々と傷を負ってしまう。
 ザフィーラとシャマルが援護に向かおうとするが、ミニオン達はそれを許してくれる筈もなく、次々に攻撃を放ってくる。
 エリオは必死に相棒であるストラーダとバリアを盾にして必死に防いで、離脱を図っているが数の暴力に勝てる筈もなくその勢いは着々と弱まっている。
 このままで行けば、間違いなく自分達は敗北する。 死という形でだ。
 いや、もうエリオは限界だ。 キャロを援護する為に敵陣に突っ込んだ為、もっとも集中砲火を受けているのだ。

「あっ……」


92 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 23:56:13 ID:jy1A+I9r
支援支援

93 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/04(日) 23:57:18 ID:ISuSUPuu
 手に持っていたストラーダが弾き飛ばされた。 デバイスを、己の武器を失う事は魔道師にとっては致命傷だ。
 デバイスを失えば、先程まで展開出来ていたバリアの強度はぐっと落ちる。 展開するのに己の力だけでやらねばならないからだ。
 もし、今までの現場ならば離脱程度、デバイスがなくても可能であったが、こちらを囲むミニオンを突破するのは至難の技だ。
 エリオが武器を失った事に気づいて、ザフィーラやシャマル、キャロが援護に向かうがあまりにも遅い。
 無慈悲なミニオン達がエリオに止めを刺す方が圧倒的に早い。
 死。 エリオが朦朧する意識の中、それを感じ取った。
 ミニオンがエリオへと剣を振り下ろす時、

「―――」

 閃光が走った。
 気がつけば、エリオの周りに居た筈のミニオンが消し飛んでいる。 あの場にいるのは倒れているエリオだけだ。
 いや、1つだけあった。 槍だ。 1本の槍が地面に突き刺さっているのだ。 多分だが、この槍が先程の閃光の正体なのだろう。
 一体誰が? と思った時、槍の近くに人影が降りてきた。
 綺麗な緑色の髪に、エプロンドレスを身に纏った女性だ。
 この人が? とエリオが思った時、優しく声がかけられる。

「大丈夫ですか?」

 大丈夫、と言いたかったがうまく力が出ない。
 しかし次の瞬間、何か優しい風に包まれていく感じがした。

「後は任せてくださいね」

 そんな優しい声を聞きながら、エリオの意識は静かに落ちていった。
 静かに眠りについたエリオを見届けると、女性は刺さったままであった槍を片手で軽々と持ち上げた。
 先程の投擲による一撃である程度のミニオンは倒したが、相手の戦力はまだまだ豊富だ。
 しかし先程から、動きがない所を見ると、ミニオン達はこちらの様子を伺っているようだ。

「貴様は……」
「私は大丈夫ですから、その子と一緒に下がっていてください」

 近くに寄ってきたザフィーラにそれだけを言う。
 相手がただのミニオンとは言え、あれだけの数だ。 集中してかからないとめんどうだろう。
 ザフィーラとして突如現れた女性に警戒を抱いていたが、エリオを救ってくれた事やこちらに敵意がない事をあわせて一先ず言う通りに下がる事にした。
 そこを狙ってミニオン達が動くが、次は青い光によって寸分なく真っ二つに切り裂かれていた。
 この女性の仕業ではない。 だとすれば誰が?

「油断しないでとっとと下がりなさい」

 もう1人、女性がまたもや空から降りてきた。
 黒い長髪の女性だ。 武器は持っていないが、その手から青い光が発生している所から見ると、この女性の手刀で切り裂いたのだろう。
 冷静に自分達の窮地を救ってくれた女性の戦力を分析しながら、ザフィーラがエリオを抱えて撤退していく。

「数は多いですね」
「でも雑魚よ。 エターナルミニオンですらないこいつ等が私達に勝てるとでも思ってるわけ?」

 黒髪の女性が自信満々に言う。
 確かに、と緑髪の女性も頷くとそれぞれ構えを取る。
 もし彼女達の正体を知っていたのなら、常人ならば既に裸足で逃げていただろう。
 だが感情なき人形達にそれが分かる筈もない。 ただ指示された通りに彼女達を攻撃するだろう。


94 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 23:57:22 ID:WKutCMxj
もしかしてアセリアヒロイン全員エターナル化!?支援

95 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 23:59:03 ID:jy1A+I9r
>>94
いや、たしかエスペリアルートっていってなかったっけ?

96 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 23:59:36 ID:JkcJuYvW
エスは茶髪だろ。

97 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/05(月) 00:01:41 ID:ISuSUPuu
「行くわよエスペリア!」
「了解です! ナルカナ様!」

 【聖緑のエスペリア】と【叢雲の化身・ナルカナ】がミニオンに向かって同時に突撃した。



 ○―――○



「あれが……エターナル」

 離れた場所でミニオンの指揮を取っていたオットーが静かに呟いた。
 エターナルという存在自体は、テムオリンやタキオスを見ていた為知っていたが、実際に戦闘を見るのは初めてなのだ。
 その感想は一言。
 圧倒的だ。 圧倒的すぎるのだ。
 ミニオンやガジェットなど相手になってすらいない。 今は数で無理矢理押し込めているが、突破されるのは時間の問題だろう。

「ディード!」
「トーレ姉様から連絡、お嬢様は無事目標の確保に成功。 撤退を開始したみたい」
「なら、こっちも全力で撤退するよ」
「うん」

 この場でエターナルと戦う必要はまったくない。 戦った所で、勝てるとも思っていないが。
 今回の作戦の要はすでに確保したのだ。 ならば後は撤退するのみだ。
 残されたミニオンとガジェットは既にお払い箱。 ここで失っても特に痛くなどないのだ。

「あっちの方は?」
「順次に撤退中。 私達が撤退すれば作戦終了」
「作戦終了か……」

 確かに目標の確保に成功。 地上本部の施設破壊と今回の目的は達成したと言っていい。
 それはあちらの慢心に付け込んだだけだ。 次もうまく行くとは限らない。
 何よりも、次からはあちらもエターナルという戦力を投入してくるだろう。
 理想としては管理局とカオス・エターナルが協力しない事だが、そんな都合のいい展開にはならないだろう。
 ならば、次はもっと緻密な作戦と行動が要求されるに違いない。
 そこまで考えて、ふとオットーは思う。

「どうして……僕達はここまで必死になってるんだろう」

 ロウ・エターナルとて自分達から見れば化け物な存在だ。
 ナンバーズの中でもっとも戦闘能力が高いトーレと対等な存在であるティアナですら、ロウ・エターナルではもっとも弱い存在なのだ。
 そんな化け物達が自分達を切り捨てる可能性を何故考えないのだろうか?

「ドクター……貴方は何を考えてるんですか?」

 オットーの呟きは、虚空の空に消えていった。



 リリカル×アセリア SCENE10 混沌の反撃 END
                          →
                           NEXT SCENE11 エターナル

98 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 00:03:56 ID:WKutCMxj
げー!ナルカナ様来てるかよ!支援

99 :リリカル×アセリア ◆UcPt.BPOZc :2008/05/05(月) 00:05:43 ID:QUUANDJt
投下終了です。
今回、聖なるかなの【彼女】が登場しました。
投下直前まで、出していいのか悩んだんですが、最初のプロットに従って登場してもらう事になりました。
【彼女】に関しては色々言いたい事はあるかと思いますが、最後までプロット通りに書き上げたいと思います。
後、8話ぐらいかと思いますが、最後までお付き合いください。

では今宵は失礼します。

100 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 00:06:49 ID:NjLCjpza
ナルカナ様がいるってことは、あのナル・ハイエターナルという痛い人もいるわけかね?

101 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 00:06:58 ID:R6rdsVLR
信じられん。
あの、ナルカナがローガス一味とつるむなんて。
い、いったい何があった!

意外と、ローガスぶん殴って気が済んだのか?


102 :作者の都合により名無しです:2008/05/05(月) 00:12:30 ID:eO9H3mTP
なんでナルカナがカオス側に?運命を毛嫌いしてたのに
しかもエスルートっぽいのになるかなともクロスってユーフィなしで?
いろいろ疑問がありますが、どう整合つけるのか楽しみ

でも、破壊神の生まれ変わりがでてくるのならきっついなぁ

103 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 00:17:21 ID:yqbwAHpp
GJ!
ついに管理局はカオスエターナルと接触しましたか、管理局が彼らにどういう対応をするか楽しみです。
しかもゼストが永遠神剣持ちとは…何があったんだろう。
残り8話でどうまとめるのか、次回が楽しみで仕方がありません!

104 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 00:46:10 ID:ZBXRN/18
>>60
待ってました!!必ず続きがあると信じてました!信じる者は救われる)??
ヤツはまだか、まだかと思ってたが、つ、ついに・・・・・!
特撮隆盛期稀代の名悪役にして名好敵手、トップガンダーキターwww
ちなみに私が押す名悪役は王蛇ですが何か?
しかし全く管理局の勝ち目が見えない上にマリアナ海溝並みの底の深さと
ブラックホールの如くの混沌を併せ持った帝国の総合戦力。
とどめにRHの力をモノにしてしまった(?)帝王サマ・・・・・
やべえ。オラわくわくしてきたぞ!
結論から言おう。GJです!!


105 :THE OPERATION LYRICAL:2008/05/05(月) 01:21:32 ID:HlHBbs8c
「永遠のアセリア」は原作未プレイなんで人づてにしか聞いたこと無いんですが
文章力のレベルが高ぇ!読んでて止まらなくなります。

なんかこんな大作の後に投下するのはアレですがオメガ11、イジェクトしても
OKでしょうか?今回初の番外編になります。

106 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 01:23:17 ID:huLYjB8G
OK、支援する

107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 01:27:29 ID:bjQDHp9y
あれ?神剣魔法により回復出来るのはマナ存在だけじゃなかったっけ?
マナ存在じゃないなのはには意味がない気がするぞ
ついでに言うと名前が出てるカオスエターナルって10人もいないし(ヒロイン除く)
たかが1時間樹に10人も来る必要ってあるのか?

ナルカナは置いといて、疑問に思ったことを挙げてみた

108 :THE OPERATION LYRICAL:2008/05/05(月) 01:27:43 ID:HlHBbs8c
んじゃば、投下開始。

ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL


番外編その1 お酒は二十歳になってから


「メビウス1、着陸を許可します―誘導開始」
星の瞬く夜空を潜り抜け、メビウス1の駆るF-22は機動六課の敷地内に設置された滑走路を目視。同時に、通信機に管制官を務めてくれて
いる六課の副官グリフィスの声が入ってきた。
「メビウス1、進路を右へ―OKです。そのままゆっくり、降りてきてください」
グリフィスの的確な指示を受けて、メビウス1は操縦桿とラダーで微妙な操作を行い、F-22の進路と滑走路を合わせる。
滑走路を取り囲むように浮かぶ着陸灯は、まるでその日の訓練を終えたメビウス1を優しく迎えるように輝いていた。
F-22はゆっくりと滑走路に降下―タッチダウン。脚が地面について、猛禽類はようやく空から還ってきた。
「ナイスランディング、メビウス1。お疲れ様でした」
「サンキュー、ロングアーチ。そっちもお疲れ」
グリフィスとの交信を終えて、メビウス1のF-22は滑走路から誘導路を通って駐機場に入る。
駐機場では六課の整備員たちが待ち構えていて、帰還したF-22の目視点検を素早く実施していく。
「ふいー、終わった終わった」
キャノピーを開けて、メビウス1は肩を鳴らしながらコクピットを出る。
吹き付ける夜風が高いGに晒され、疲れた身体を癒してくれるような気がした。
その後、整備員たちと共に機体の目視点検を実施していると背後から声をかけられた。
「メビウス、ちょっといいか?」
「ん?―ああ、ヴァイスか。どうした?」
声の主はヘリのパイロットであるヴァイスだった。機体は固定翼と回転翼と違えど、同じパイロットと言うことでメビウス1は彼と話す機会が多く、この世界に飛ばされてから出来た最初の友人だ。
「今日お前と飲む予定だっただろ?すまんが、都合が悪くなってきた」
「何、それは残念だな…何があったんだ?」
「どうもヘリの調子が悪くてな、整備連中と原因究明やるから今日は無理だ…お詫びに、これをやる」
そういってヴァイスが手にしていた包みから取り出したのは一本のウイスキー。本来なら今日、彼と飲む予定だったものだ。
「いいのか?これ、結構なものじゃあ…」
「構わん。飲みに誘ったのは俺の方だ」
「それじゃあ、遠慮なく頂くよ」
メビウス1は礼を言ってヴァイスからウイスキーを受け取る。
とは言え、こんな高級なものを一人で飲んでしまう気にはなれなかった。
F-22の全ての点検を終えて、まだ作業を続けるヴァイスと整備員たちに別れを告げたメビウス1は思案顔で自室に戻ろうとする。
ちょうどその時―まだ明かりのついている部屋があった。確か事務に使用されている部屋だ。
こんな時間に誰だろう。疑問を感じたメビウス1は扉をノックして、部屋に入ってみた。
「メビウス1、入るぞ―ん、高町?」
「あ、はい―メビウスさん?」
部屋にいたのはなのはだった。彼女の手元を見ると、それなりに厚みのある書類の束。
「なんだ、こんな時間にまで仕事か?」
「明日お休みなんで出来るやつはやっちゃおうと思って―」
「ああ―」
そういえば、昼間にはやてがそんなことを言っていた気がする。メビウス1は納得した様子を見せて、はっと何か思いついた。
「そうだ高町。それ手伝ってやるから、ちょっと付き合ってくれないか?」
「え?」
突然のメビウス1の提案に疑問の声を上げるなのは。メビウス1はそんな彼女に、答えの代わりとしてウイスキーを見せつけた。
「ヴァイスと一緒に飲む予定だったんだがな、あいつの都合が悪くなって。一人で飲むにはもったいないんだ」
「でも、私アルコール飲んだことあんまりないんですけど」
「別に一緒に飲んでくれって訳じゃない。話し相手になってくれればいいのさ」
なのはは人差し指を顎に当てて「うーん」と少し考えるような仕草を見せて、
「…じゃあ、私でよければ」
と了承した。

109 :THE OPERATION LYRICAL:2008/05/05(月) 01:29:33 ID:HlHBbs8c
メビウス1の加勢も加わって、残っていた書類をささっと終わらせた二人は彼の自室へと辿り着いた。
「ツマミはこんなのしかないけど、まぁ食ってくれ」
そういってメビウス1がテーブルの上に差し出したのは裂きイカ。見た目は安っぽい市販品そのものだ。
「それじゃ遠慮なく」
制服の上着だけ脱いで、なのははリラックスした表情で裂きイカを口に放り込んだ。
メビウス1も裂きイカを適当に一つ摘んでそれを噛みながら、ウイスキーを開けた。氷の入ったグラスに琥珀色の液体が流れ込み、彼は一口飲んでみた。
「―ふう。ああ、なかなかいけるな」
「美味しいですか?」
「そりゃもう。仕事の後の一杯は特にな。話し相手もいることだし」
メビウス1は美味そうにもう一口、ウイスキーを飲む。口に広がるのは濃厚な香り。疲れた身体には染みるようだ。
「元の世界でもよく飲んでたんですか?」
「ん―まあな。毎日とはいかんが、作戦が成功したり訓練がうまくいったりした時は大概こうして飲んでいたよ」
なのはの問いに、メビウス1はしみじみと答える。少し溶けた氷が音を立てて、カランとグラスの中で傾いた。
「前から疑問だったんだが、お前さんどうして時空管理局に?」
引き続きウイスキーを一口、じっくり味わうように飲みながら今度はメビウス1がなのはに問いかけた。
そういえば、彼に自分のことをあまり話す機会がなかったような気がする。なのははそう考えて、自分の過去を振り返りながら彼の問いに
答えた。
「それはですね―ええと、どこから話そっか。事の始まりは十年くらい前からなんですけど―」
彼女の脳裏によみがえって来るのは、魔法との出会いから今日に至るまでの日々。その最中で彼女が手に入れたのは唯一無二の仲間と頼れる仲間たち、そして大きな力。
メビウス1とは形こそ違うが、彼女の持つ力も強大なものだ。
「力は正しいことに使いたい―だからかな、管理局に入ったのは?」
「ふぅむ…しかしそれじゃあ九歳の時分から実戦経験してる訳か。その点じゃ俺なんか足元にも及ばないな」
いい感じに酔いが回ってきたのか、しかし口調は普段どおりの顔を赤くしたメビウス1が笑みを浮かべながら言った。
「でもアレだな」
「アレ?」
表情が一変、突然なにか納得いってないような顔をしたメビウス1に、なのはは眉をひそめた。
「アレだよ、九歳の頃ならタイトルで魔法少女も分かるがさすがに今は―ごめん俺が悪かったから許して」
さすがにそれはまずい発言を堂々としてしまったメビウス1は目の前の魔王の冷たく刺すような視線を感じ、冷や汗をかきながら平謝り。
「―まぁ確かに、言いたいことは分からなくもないですが」
不機嫌な表情を露にして、いつの間にか起動させていたレイジングハートを待機モードに戻してなのはは呟く。
「もともと魔法少女じゃなくて魔砲少女って言われてましたし―」
一応自覚はあるらしく、ため息を吐きながらなのはは裂きイカをもう一口。
「ホントなぁ、ストーンヘンジもビックリな大火力を誇る訳だし」
元の世界の対隕石迎撃用巨大レールガンの存在を思い出し、メビウス1は脳内でなのはの砲撃魔法とその威力を比較してみる。
まず射程。これはストーンヘンジの勝ちだ。なんせユージア大陸ほぼ全土が射程内に入っているのだ。なのはもかなり長距離の射程を誇る
がこれは相手が悪い。
次に威力。これは五分五分では無いだろうか。砲撃魔法も物理干渉ありにしたら、ストーンヘンジに勝るとも劣らない威力はありそうだ。
最後に機動力。言うまでもなく、なのはの勝ちだ。ストーンヘンジが空など飛んだら悪夢以外何者でもない。
「…ってーことは総合能力的には互角?いや、ストーンヘンジは整備だけで百人単位の人数が必要だし…兵器としての実用性はなのはの方
がよっぽど上だなぁ」
「あのー、メビウスさん?人とエースコンバット恒例の超兵器を一緒にしないでくれます?」
文字通り悪魔の微笑みにメビウス1はびくりと震え、誤魔化すようにグラスの中のウイスキーを一気飲み。
「まぁ…その、なんだ、お前の実力は本物だよ、うん」
「なんか喜べない褒め方だなぁ…」
口を尖らすなのは。いつの間にか食べていた裂きイカも残り少なくなっていた。
「…メビウスさん、アルコールっておいしいんですか?」
「…はい?」
思わぬなのはの唐突な質問に、メビウス1はグラスにウイスキーを注ぐ手を止める。
美味そうに飲んでいるから、彼女は興味を持ったのかもしれない。

110 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 01:31:21 ID:huLYjB8G
ありがとうメビウス1、僕らの心を代弁してくれて支援ww

111 :THE OPERATION LYRICAL:2008/05/05(月) 01:32:19 ID:HlHBbs8c
「まぁ美味いから俺は飲んでいるが―飲むか?でもお前未成年…」
「それは気にしない方針で」
まぁ、俺ばかり飲むのもあれか―メビウス1はグラスをもう一つ取り出し、それにウイスキーと水を入れる。さすがにロックはキツいだろうと踏んで、水割りにしたのだ。
「ほれ。まずは一口」
「はい、ありがとうございます」
グラスを受け取ったなのははくいっとウイスキーの水割りを口に運び―なんと、そのままグイグイ一気飲みを敢行した。
「―ぷはぁ!あ、結構美味しいですね…もう一杯、お願いします」
「あ、ああ―」
案外強いんだなぁと感心しつつ、メビウス1はなのはのグラスにウイスキーを注いでやる。今度はロック、さすがにこれで一気飲みは無理だろうと彼は予測し、直後にそれは間違いであることを目の前で実証される。
「お前…案外強いなぁ」
「ふう―というか、結構美味しいんですよ。うん、もう一杯」
「おう、飲め飲め」
なのはの気持ちのいい飲みっぷりに見惚れたメビウス1は自身の分も合わせてウイスキーを注ぐ。
酔った勢いと言うのは恐ろしいもので、二人はその後意気投合。戦闘に関する技術から人間関係、およそ普段の二人からは想像も尽かないあーんな話やこーんな話まで展開させて、管理局のエースオブエースとISAF空軍のトップエースはウイスキーのビンが空になるまで飲み続けた。

窓から差し込んできた光に照らされて、メビウス1は眼を覚ました。
「む…いかん、寝ちまったか」
上半身を起こして、かすかに痛む頭を抑えながら彼は昨夜の出来事を思い出す。
そうだ、確か高町と飲んで―それからどうした?
記憶の一部が吹き飛んでいる。メビウス1は飲みすぎたことを後悔しつつ、ベッドから出ようとして―ふと、先ほどから自分の右腕から伝わる柔らかい感触に気付く。
「…へ?」
思わず口から出た言葉はそれだけ。
何故?何故に俺の隣で高町がワイシャツ一枚で寝てる?いや、それにしても綺麗な肌だよなぁ―じゃなくて!
ピンク色に染まりそうになった思考を一蹴し、メビウス1はまずは冷静になる。
「まさか…いや、そんなまさか…なぁ。そんな避難所行きな行為は…」
とりあえず真っ先に思いついた、なのはが隣で寝ている原因を否定。こんな状況じゃそう思ってもおかしくはあるまい。
他に考えられるのは―思考の真っ最中にメビウス1の脳裏に突然昨夜の消えていた記憶がフラッシュバックしてきた。
そうだ、確か飲んでたら酔ったなのはが脱ぎだして、慌ててそれを止めて、そしたら急に泣き出して―。

112 :THE OPERATION LYRICAL:2008/05/05(月) 01:33:05 ID:HlHBbs8c
「それから…それから…」
必死に思い出す。そうでなくては誤解される恐れがあるのだ。
女性ばかりの機動六課でもし誤解なんぞされたりしたら―破滅である。そりゃあユージア大陸戦争を終結させた英雄も必死になる。
ええと、泣き出したなのはをどうにか泣き止ませて、泣き疲れたのかそのままベッドの上で寝てしまった。
「そうか―事件の真相はこれだったんだな。よし、とりあえず大丈夫だ」
事情の説明の準備完了。しかしそれなら何故自分も同じベッドで寝たのか、メビウス1はあえてそこは気にしないことにした。
「失礼します―メビウスさ〜ん、なのは知りません…って!?」
まるで準備が終わるのを待っていたかのように、なのはと相部屋のフェイトがメビウス1の部屋を訪ねてきて、ワイシャツ一枚で眠るなの
はを見て硬直した。
「あ、いや、違うんだハラウオン。これには事情がって、ちょっとぉ!?」
早速事情を説明しようとして、メビウス1はいつの間にかフェイトがバリアジャケットを展開させ凄い形相で睨んでいることに気付く。
なんというか、円卓の鬼神と実際に対峙したらこんな気迫を味わえるかもしれない。
「少し…頭、冷やしますか?」
「それはお前の台詞じゃないだろ、だから、ちょっと、話聞けってぇぇぇ!」
「問答無用ぉぉぉぉ!!」
フェイト、戦闘機に乗ってないメビウス1相手にソニックフォーム展開。超高速で迫ってきた魔力の刃をスレスレのところでメビウス1は

回避。
「…ちょ、非殺傷設定解除!?」
頬をかすった魔力刃が生み出した傷に、メビウス1は顔を青ざめる。
「よくも、よくもなのはの初めてを…それは私のだったのに…!」
「知らんがな!と言うか誤解だから話聞けって、うおおおお!?」
部屋から飛び出して、メビウス1はさながらアフターバーナーで猛加速した戦闘機の如く高速で逃げ出す。
だが、所詮人間の足である。六課最速のオールレンジアタッカーであるフェイトから逃れられる訳がなかった。
この場にAWACSのスカイアイがいたら、こう言ってくれただろう。
<<Mobius1 Crash!>>

「…うーん…あぁ、頭痛い…」
一人部屋に取り残されたなのはが目を覚ましたのは、それから一時間後のことである。

113 :THE OPERATION LYRICAL:2008/05/05(月) 01:34:41 ID:HlHBbs8c
投下終了。
「メビウス1となのはもいいかなぁ」なんて考えながら描いてたら話が
あらぬ方向に…。

114 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 01:37:22 ID:huLYjB8G
GJ
説明の準備が完了したのはいいが、実際はどうだったのやらw
飲んだら乗るな、乗るなら飲むな。これは戦闘機乗りにも言える事、と…w

115 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 01:38:47 ID:kOb+P4/l
アッー!
逃げてモビウス
モビウス逃げて

しかし割きイカとは・・・
チーズ辺りかと思ってた

116 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 01:41:05 ID:t+vuB9gX
ナルカナ様はさすがにやりすぎと言わざるを得ない

117 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 01:58:06 ID:D3yCvVdJ
GJ!
……寝台の撃墜王。

118 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 02:16:40 ID:kOb+P4/l
喋ってるモビウスに違和感感じるのは俺だけだろうか

119 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 02:45:50 ID:9q3KFem6
酒は早々飲めるものじゃないぞ
もし飲んでたら飛べないし八時間以内に飲んでたらスクランブル外されて怒られるし
飲んでて落ちかけたやつはいるし

120 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 03:07:54 ID:LLmjWA86
なんだ
結局
オリキャラか

121 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 08:26:39 ID:c6LjD/9/
GJ!
なんという役得だメビウス1、うらやましいぜ。
トップエース同士がこういう感じで話すのも良い感じだぜ。

122 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 08:43:16 ID:DWN4MsSf
某F少佐「バーロー! 酒が怖くて戦ができるかってんでい!」

123 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/05(月) 08:50:05 ID:+XgUKtqj
おはようございます。

天元突破第10話、9時過ぎくらいに投下よろしいでしょうか?

124 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/05(月) 09:06:15 ID:+XgUKtqj
 ロングアーチ――はやてが部隊長を務める、機動六課の後方支援部隊である。
 補給や索敵、人員輸送などを主な任務とし、前線部隊を影から支える大黒柱として組織されたこの部隊の初陣は、皮肉にも自分達自身が前線に出るという形で始まった。

『カートリッジロード! 一番槍いきまーす!!』

 シャリオの掛け声と共にダヤッカイザーの頭の大砲から、ドラム缶のように巨大な空薬莢が排出され、同時に砲口正面に魔方陣を展開――砲撃魔法が発動する。
 放たれた光の奔流がムガンを呑み込み、敵の群れに風穴を開けた。

『今の砲撃で敵勢力の5.7%が消滅、誘爆により尚も減少を続けています』
『砲身冷却までの推定所要時間十五秒、二十秒後には第二射撃てます』

 ダヤッカイザーに乗るシャリオにそう報告しながら、アルトとルキノ――ツインボークンが前に出た。

『ターゲットロックオン!』
『スピンバリアー弾発射!!』

 ツインボークンの両掌からドリル型の弾丸――スピンバリアー弾が射出され、ムガンを撃ち抜いていく。
 その間にダヤッカイザーの砲身冷却が完了、カートリッジ装填と共に砲撃の第二射が放たれた。

 再び空を貫く光の奔流と並走するように翔る一つの影がある――グリフィスの駆るエンキドゥだった。
 単身ムガン群に突入したエンキドゥが頭のトサカを取り外し、ブーメランのように投擲した。
 円のような軌跡を描いて飛ぶトサカ――エンキラッガーがムガンを切り裂き、再び主の手の中に戻る。
 トサカを頭に装着し直したエンキドゥは、今度は左右の腰の刀を引き抜いた。

『カートリッジロード!!』

 グリフィスの怒号と共に刀身の付け根から空薬莢は排出され、鞘を被せたように鋼の刀身の外側に魔力刃が生成される。
 魔力刃によって延長した二本の刀を我武者羅に振るい、エンキドゥはムガンの群れの中を飛び回った。

 ガンメン――かつてこの世界とは違う次元、違う宇宙において、対アンチスパイラル用に開発運用された大型質量兵器。
 時空管理局の魔法技術を応用し、魔導兵器として再設計されたガンメンを駆り、若者達は戦う――自分達の長、はやてを完全に置き去りにして。

「こらぁーっ! お前らウチを無視するなぁーっ!!」

 部隊長である自分の指示を仰ごうともせず、好き勝手に戦い始めるガンメン軍団に、はやては拳を振り上げ怒号を上げる。

 助けにきてくれたことは素直に感謝するが、しかしそれとこれとは別問題である。
 傲慢な言い方になるが、ロングアーチは自分の部隊なのた――自分は部隊を指揮しなければならないし、グリフィス達は自分の言うことを聞かなければならない。
 それが指揮官としての自分の責任であり、部下としてのグリフィス達の義務なのだ。
 機動六課――ロングアーチも組織である以上、そのけじめは果たさなければならない。

 そして何より――これが本音なのだが――部隊長の自分を差し置いて活躍するガンメン軍団に、はやては嫉妬していた、対抗心を燃やしていた。

125 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/05(月) 09:07:16 ID:+XgUKtqj
「リィン、ウチらも征くで! シャーリーやグリフィス君達だけにええ格好はさせへん!!」

 胸に抱いたリィンフォースUを解放し、はやては昂然と言い放った。
 新参者共にこれ以上出番を喰われてなるものか……リィンフォースUを見下ろすはやての瞳の奥で、熱い炎が燃えている。

「イエス、マイスターはやて!」

 笑顔で首肯するリィンフォースUの身体が光に変わり、はやての身体の中へと吸収される。

 ユニゾン――術者とデバイスが文字通り一心同体となり、魔力や戦闘能力を爆発的に上昇させる融合能力。
 ラゼンガン――或いは同タイプのグレンラガン――の合体が気合いと気合いのぶつかり合いならば、はやて達のユニゾンは思いと想いのぶつかり合いである。
 ユニゾンの影響で白金色に変わった髪を風に遊ばせ、翡翠色に染まる瞳を煌かせ、胸の奥で鼓動するリィンフォースUの心を感じながら、はやてはデバイスを構える。

 右手に握る騎士杖型アームドデバイス――シュベルトクロイツ。
 左手で開く魔導書型ストレージデバイス――夜天の書。
 ユニゾンの際に同時に融合したもう一つの魔導書型デバイス――蒼天の書。
 そしてその全てを統制する管制人格――リィンフォースU。
 四つのデバイスを同時に扱い、圧倒的な攻撃力で戦場そのものを消し飛ばす……それがはやての真の戦闘スタイルである。

 若いな……見せ場の奪還に燃えるはやてをモニターの端に見遣りながら、ロージェノムは唇の端を持ち上げる。
 かつて、今のはやてと同じ眼をした男と出会った。
 そしてロージェノム自身もまた、同じように身と心を戦いに燃やした経験がある。
 言葉や理性では抑えられない熱い衝動――螺旋の本能。
 はやてもその存在を認知してはいるが、己の内から迸るその衝動こそが螺旋の力に他ならないということには、未だ気付いてはいないだろう。

「ロージェノムさん! デカい呪文で一気に叩くから、詠唱の間ウチを守って!!」

 はやての命令にロージェノムは不敵な笑みを浮かべ、「是」と応えた。
 グラパールが盾となるようにはやての前に仁王立ちし、腕組みしてムガン群を見据える、
 ムガンのビームが雨のように撃ち込まれるが、グラパールの展開したバリアに阻まれはやて達までは届かない。

「ふん……」

 歯応えの無い敵の攻撃にロージェノムは退屈そうに鼻を鳴らし、自分達を守るバリアを解除した。
 迫り来るビームの雨にグラパールは腕組みを解き、右腕をギガドリルに変形させる。
 前方に突き出されたギガドリルの先端から更に五本の細長いドリルが指のように突き出し、ムガンのビームを鷲掴みした。
 ビームのエネルギーがドリルの「腕」と吸収一体化し、巨大な光球となってグラパールの掌の上で暴れ回る。

『返すぞ』

 荒れ狂い爆発寸前のエネルギー塊を、グラパールはムガン群へと投げ返した。
 ムガン爆発の連鎖による炎の帯が空に広がる中、はやての呪文が完成した。

「詠唱完了、皆逃げろぉーっ!!」

 念話、通信、そして肉声と、あらゆる手段で伝えられるはやての退避勧告に、ガンメン軍団が慌てたようにムガン群から遠ざかる。
 最後の一体――ムガン群の中心に斬り込んでいたエンキドゥ――の退避を見届け、はやては魔法を起動した。

「遠き地にて沈め……デアボリックエミッション!!」

 はやての咆哮と共に、暗黒の光が周囲の空間ごとムガン群を呑み込んだ。




126 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/05(月) 09:09:21 ID:+XgUKtqj
 
 
 はやての放った広域攻撃魔法によって空の敵は全滅し、地上の小型ムガンは教会騎士団が全て片付けた。
 静けさを取り戻した戦場に、山の向こう側から一機の輸送ヘリが姿を現す。
 グリフィスの派遣した交替部隊である。

「へ? こ、交替部隊……?」

 交替部隊到着の報告をグリフィスから受け、はやては思わず声を上擦らせた。

「交替部隊……?」

 胡散そうな視線を向けるフェイトに、はやては乾いた笑みを浮かべる。

「あははははー。……すっかり忘れとったわ」
「しっかりしてよ部隊長!?」

 てへっと可愛らしく首を傾げて誤魔化すはやてに、フェイトが魂の叫びを上げる。

「しゃ、しゃーないやろ! 交替部隊って半分グリフィス君の私兵みたいなもんやし、あん時はウチも冗談抜きでテンパっとったし……」

 逆上したように顔を紅潮させながら弁明するはやてだが、容赦なく突き刺さるフェイトの絶対零度の視線を前に言い訳の声は次第に小さくなっていき、

「もーしわけありませんでした!!」

 ……最終的に、はやてはフェイトの前に土下座して謝っていた。
 部隊長としての威厳の欠片もない親友の姿に、フェイトは呆れたように息を吐く。

 その時、

「上に立つ人間が、そんな風に軽々しく頭を下げたりするものではないわよ? はやて」

 穏やかな女性の声が、はやての背中にかけられた。

「カリム!?」
「久しぶりね、はやて。リィンも元気そうね」

 顔を上げ、満面の笑顔を浮かべて振り返るはやてに、声の主――カリム・グラシアも柔和な笑みを返す。

「そちらの方は初めてお会いするわね。聖王教会騎士、カリム・グラシアです」
「機動六課ライトニング隊隊長、フェイト・T・ハラオウンです」

 フェイトとの自己紹介を簡潔に済ませ、カリムははやてへと向き直る。

「部隊の方は順調みたいね。今回は助かったわ」

 騎士団と共に現場検証や負傷者の救助作業を行う交替部隊の隊員達、そして瓦礫の撤去作業を行うガンメン達を好意的に評価するカリムに、はやての笑顔が固まった。
 言えない、今回獅子奮迅の活躍を見せたガンメン軍団の中の人が、実は前線部隊でも何でもないただの内勤スタッフであるなどとは絶対に言えない……。

「そ、それより……今回カリムがウチと会って話そ思うとったんは何なんや?」

 慌てたように話題を変えたはやての問いに、カリムの顔から笑みが消えた。

127 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/05(月) 09:11:26 ID:+XgUKtqj
「そうね……早速だけど、本題に入りましょうか」

 そう言ってカリムは傍らの騎士に合図し、何かのケースを受け取った。

「昨日の深夜――日付は今日に変わっていたかしら――教会礼拝堂を清掃していた修道士が、長椅子の陰に隠すように置かれていたこれを見つけたの」

 そう言ってカリムが差し出した金属製のケースに、はやてとフェイトは瞠目したように同時に声を上げた。

「「レリック!?」」

 第一級捜索指定ロストロギア、レリック。
 ロストロギア――様々な世界で生じたオーバーテクノロジーの内、消滅した世界や古代文明を歴史に持つ世界において発見される、危険度の高い古代遺産。
 レリックもその一つである。
 外観はただの宝石だが、古代文明時代に何らかの目的で作成された超高エネルギー結晶体であることが判明している。
 レリックは過去に四度発見され、その度にムガンの出現が確認されている。
 そして、今回の事件が五度目。
 アンチスパイラルがレリックを狙う理由は未だ解明されていないが、レリックの放出するエネルギーを螺旋力と誤認してムガンが出現するという仮説が有力である。

 思わず息を呑む二人に、しかしカリムは首を振り、ケースに掛けられたロックを解除する。

「……イエスとも言えるし、ノーとも言えるわ」

 カリムの返答と共に開けられたケースの中身に、二人は驚愕を隠せなかった。
 通常レリックを安置する台座が納められている筈のケースの内側いっぱいに、複雑な機械と回路が詰め込まれ、配線が血管のように張り巡らされている。
 明らかに何者かの細工の施された、変わり果てたレリックケース――しかし二人の驚愕した理由は、それだけではなかった。
 回路の心臓部に搭載されている二つのロストロギア――片方は動力部に設置されたレリック、そしてもう一つは……。

「これ、コアドリル……?」

 困惑したようにはやてがケースの中に手を突っ込み、スイッチのように差し込まれていた小さなドリル――コアドリルを引き抜いた。
 稼動していた機械が動きを止め、発光していたレリックも徐々に光を失っていく。
 コアドリルもまたロストロギアに登録され、ムガンはこれを破壊するために動いている。
 機動六課が追う二つのロストロギア、その二つともを積み込んだ謎の機械……理解を超えた事態に、はやて達は思わず顔を見合わせた。

「……カリム、正直これはウチらだけには荷が重過ぎる。幸い、これの専門家が今ここに来とるから、その人にも見て貰ってええかな?」

 カリムにそう提案し、はやてはロージェノムへと通信を繋いだ。

「ロージェノムさん……ちょっとええかな?」

128 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/05(月) 09:12:44 ID:+XgUKtqj
 はやての召喚を受けて、独りガンメンを降りて救助作業に参加していた巨漢――ロージェノムが三人の元へと足を運ぶ。

「……これは一種の永久機関だな」

 はやてから手渡されたケースをためつすがめつ観察し、やがてロージェノムはそう結論を下した。

「レリックのエネルギーをコアドリルが増幅し、そして再びレリックの中へと戻す――それ以外には何の機能も無い。
 増幅したエネルギーの殆どは機械部分の稼動に回され、機構外部への仕事は機械部分の廃熱と余剰エネルギーの漏出以外には一切存在しない。
 コアドリルのエネルギー増幅率も必要最低限に抑えられ、ほぼ完全にこのケースの中だけで完結したエネルギー循環機構だ」
「そんなものに、一体何の意味があるんですか……?」

 フェイトの口にした疑問の言葉に、ロージェノムはつまらなそうに鼻を鳴らした。

「何の意味も無いだろうな。精々……ムガンを無限に呼び寄せる程度だ」

 ロージェノムの答えに、三人の顔は戦慄に凍りついた。
 そのためだったのか……無意識の内に、フェイトは拳を握り締めていた。
 あの執拗なまでに続いたムガンの増援はこれが原因だったのか……!

 ケース中央、回路の心臓部付近に、一枚の金属プレートが貼られている。
 プレートに彫られた製作者の名前、銘を入れるように刻印されたその名は……。

「ジェイル・スカリエッティ……!」

 風の中に消えたフェイトの呟きは、憎悪と憤怒に染まっていた。


129 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/05(月) 09:14:22 ID:+XgUKtqj
 
 
 
 荘厳――この場所以上にその言葉の相応しい場所が、果たしてこの世に存在するだろうか。
 豪華な装飾の施された支柱の立ち並ぶ、巨大な金色の空間。
 まるで玉座の間のように絢爛に飾り立てられた広間は、しかし中央に展開された巨大なウィンドウによって、その荘厳な雰囲気を台無しにされている。
 ウィンドウに映し出される映像は二つ――片方はなのは達を乗せて飛ぶ輸送ヘリ、もう片方は火の手の収まりつつあるベルカ自治領。

 機動六課の動く二つの現場を映したウィンドウを食い入るように見つめる、白衣を着た一人の男がいる。
 しなやかな細身の身体、長い黒髪、中性的な細面、そして金色の瞳――男を構成するパーツの一つ一つが絶妙なバランスで調和し合い、異形の美しさを形成している。
 そう、男は人の形をした異形だった。
 数々の禁断の知識をその身に修め、己の欲望を満たすためならば如何なる犠牲も辞さない外道。
 生まれながらに罪を背負い、業に塗れたその両手で幾つもの未来を破壊し、そして創造してきた天才。
 男の真実を識る者は、畏怖を込めてこう呼ぶ――無限の欲望≠ニ。

 男の傍らにウィンドウがもう一枚開き、妙齢の女性の顔が映し出される。

『ベルカ自治領市街地のムガン全滅、ムガン発生装置も稼動を停止した模様です』
「見ていたよ、ウーノ」

 ウィンドウの女性――ウーノの顔を横目で見遣り、男はその報告に首肯を返す。

『よろしいのですか、ドクター? これで刻印ナンバー9並びに刻印ナンバー44のレリック、それにコアドリルが管理局の手に落ちてしまいましたが……』
「別に構わんよ、そのおかげで面白いデータが手に入った」

 ウーノの問いに涼しい顔で即答し、ドクターと呼ばれた男は正面の巨大ウィンドウに視線を戻した。

「それにしても、この案件はやはり素晴らしい……。私の研究にとって興味深い素材が揃っている」

 ウィンドウの映像が切り替わり、機動六課前線部隊の内の三人――スバル、エリオ、そしてフェイト――の戦闘映像が映し出された。
 三人ともその出生には、男の過去の研究と浅からぬ因縁がある。

 それに……男は更に画面を切り替え、二つの戦闘映像を表示させた。
 ベルカ自治領市街地上空を縦横無尽に飛び回る鋼の巨人達――ガンメン。
 仮初の街を駆け回る漆黒の巨人、ガンメンのオリジナル――ラゼンガン。

「私以外に螺旋の力を、それも私以上に深く識る者がいるとは……」

 氷のような笑みを顔に貼り付け、魅入ったように恍惚とした声音で男が呟く。
 螺旋の力――それは人という種が秘めた無限の可能性、そして世界をも滅ぼす魔の力。

「足掻いてみせろ抗ってみせろ……螺旋の戦士達よ」

 憎むように愛おしむようにウィンドウの中の巨人達にそう語りかけ、男――ジェイル・スカリエッティは高らかに哄笑を上げる。
 金色の瞳の奥で、炎が回っている、光が巡っている――ロージェノムと同じ螺旋の輝きを、宿していた。



天元突破リリカルなのはSpiral
 第10話「ジェイル・スカリエッティ……!」(了)

130 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/05(月) 09:15:39 ID:+XgUKtqj
 
 
 
 ところで――、

「え゛!? み、皆仕事放り出して来てもーたの!?」

 ロングアーチ出撃の裏の真実を聞き、はやては引き攣らせた。

「はやてさん達が心配でいてもたってもいられなくて、なのはさん達に必要最低限の指示だけ出して、他は全部丸投げして飛び出して来ちゃいました」
「現場放棄に無断出撃、それに任務管轄外の越権行為……どんな処分でも受ける所存です」

 シャリオはあははーと誤魔化すように笑い、固い表情で部隊長の返答を待つグリフィスに、はやては思わず天を仰いだ。
 なまじ善意で動いてくれたので、怒るに怒れない……。

 平穏を取り戻したベルカ自治領の空は、どこまでも高く、広く、そして青かった。

 己の過失に加えて部下の監督不行き届き……洒落にならない失態の連続に、はやては絶望したようにこう呟く。

「か、神はどこまでウチを試すん……」

 全部お前に自業自得だろうというツッコミを喉の奥に留め、フェイトは諦めたように嘆息を零す。

 街のどこかで、鴉がアホウアホウと鳴いていた。


131 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/05(月) 09:18:39 ID:+XgUKtqj
以上、投下完了です。
次回はスバルサイドの様子を書きます。

前回GJコールくれた方々、この場を借りてありがとうございます。

132 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 09:56:16 ID:IKSuA9lY
投下乙&GJ
とっても熱いぜ後方部隊ロングアーチ
それでいのか縁の下の力任せロングアーチw

133 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 11:15:56 ID:bKxNTbnq
GJ!!です。
スカ博士も螺旋力に目覚めてるとはw
必ずしも、善人だけが目覚める能力じゃないことが物語的には面白くなりそうですwww

134 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 12:01:03 ID:0XwtuRxH
GJ!
スパイラルネメシスを引き起こしてもおかしくないなこの博士。

135 :一尉:2008/05/05(月) 13:27:25 ID:y0lLJEjH
F22は空母に乗ています。支援

136 :テルミドール ◆Q8cqSo5Bg2 :2008/05/05(月) 20:29:00 ID:GNjvGRDN
まず最初に一言。申し訳ありません。アーマードコアBBSの感覚が抜けきっていませんでした。
反省し、今後は、発言に十分に留意していきたいと思います。

さて、今回はFAをご存じない方々のためにFAの世界観をある程度知っていただくための資料を
用意させていただきました。本編の続きのほうはもうしばらくかかりそうですorz最初に一人称
視点に固定してしまったのがいけなかった…その点も含めて鋭意修正中です。


それでは他の方の投下予告はないようですので投下させて頂きます。

137 :テルミドール ◆Q8cqSo5Bg2 :2008/05/05(月) 20:30:28 ID:GNjvGRDN
アーマードコアFA資料

組織
・企業連
 国家解体戦争(別項目参照)以降、世界を管理する企業は、現在では大きく3つのグループに分かれており、ほぼ全ての
 企業が参加する国際機構。
 公式には企業社会の平和と秩序の維持が目的となるが、当然のように機能していない。
 現在は、「企業の総意」を表現する仮主体としてのみ存在意味を保っているが、政治力に優れたオーメル・サイエンスの意
 を代弁することが多い。

・カラード
 企業連管理下のリンクス管理機構。
 リンクス戦争(別項目参照)で、ネクスト戦力の個体依存性に危機感を抱いた企業は、企業社会に対するリンクスの潜在的
危険性を熟知しつつもその戦力としての魅力、あるいはネクスト無しにネクストを敵とする恐怖から、くだらない調整と妥
協により、すべてのリンクスの占有権を放棄、これを共同で管理する方法を採った。これがカラードである。
上位者たる企業連の惨状に相応しく、管理機構としては、カラードランクの管理とランクマッチの主催としてのみ機能して
いる。

・オーメルグループ
 盟主はオーメルサイエンス。同盟企業にローゼンタール・アルゼブラ・テクノクラート社がある。
 かつての盟主はローゼンタールであったが、リンクス戦争後、オーメルサイエンスにとってかわられた。
 オーメルサイエンスはコジマ技術に専門性が高いが、レイレナードの残党を取り込むことでさらに専門性を高めた。

・GAグループ
 盟主はGA(グローバルアーマメンツ)。傘下にBFF・MSACインターナショナル・クーガー・有澤重工がある。
 このうちBFFと有澤重工以外は完全にGAの子会社。
 グループ全体として実弾兵器に傾倒している。MSACはミサイル分野、有澤は装甲とグレネード、クーガーはブースター、
 BFFは精密兵器にそれぞれ専門性が高い。
 なお、BFFはリンクス戦争においてアナトリアの傭兵の手により一度壊滅しているが、後にGAの支援により復興した。

・インテリオルグループ
 盟主はインテリオルユニオン。同盟企業はアルブレヒトドライス(アルドラ)とトーラス。
 全体としてエネルギー(EN)兵器に専門性が高いがアルドラは近年実弾兵器へと方針を転換しており、また、トーラスは
 コジマ兵器に関して極めて高い技術力を有している。
 なお、トーラスはリンクス戦争にて壊滅してGAEとアクアビットが合併することで誕生。

・レイレナード社
 リンクス戦争以前に勢力を強めたエネルギー系新興企業。コジマ技術開発でも重要な地位を占めていた。
 純軍事的にネクストに傾倒していたことで有名。
 この企業の目的として、衛星軌道を覆う自律兵器「アサルト・セル」の排除があったようであり、実際に、衛星軌道掃射コジ
マ砲「エーレンベルク」などを開発していた。
リンクス戦争においてアナトリアの傭兵の手により壊滅。その後、多くはオーメルサイエンスに吸収された。

・GAE,アクアビット社
 リンクス戦争で壊滅。

・ORCA旅団
 リンクス戦争により壊滅したレイレナード・アクアビットの一部残党及びその思想に賛同する者が集まって結成された、反体制武装
 勢力。旅団長はマクシミリアン・テルミドール。
 彼らの目的は旧レイレナードの意思を継ぎ、アサルト・セルの清算、それにより宇宙への道を切り拓くことにあり、それを「クローズ
 プラン」と呼称していた。。
 また、組織としての戦略、作戦の立案が主にメルツェルが行っていた。



138 :テルミドール ◆Q8cqSo5Bg2 :2008/05/05(月) 20:31:32 ID:GNjvGRDN
資料その2

戦争
・国家解体戦争
 人口爆発による、食糧およびエネルギー資源の慢性的な不足などによって、統治能力の低下した世界すべての国家に対し、新しい秩序の構築を目指す巨大企業グループによ
って引き起こされた全面戦争。企業側の一方的な奇襲によって始まった、人類史上に類を見ない大規模クーデターは、短期間の内に企業側の圧倒的な勝利によって決着した。
しかし、企業が国家解体戦争を行った真の目的は、自分たちが開発した自律兵器「アサルト・セル」が衛星軌道を埋め尽くし、宇宙開発の道が断たれてしまったこと、それを
隠匿するためであった。

・リンクス戦争
 国家解体戦争後に勃発した戦争。
 レイレナード陣営(レイレナード・アクアビット・BFF・GAE・インテリオル(当時レオーネメカニカ及びメリエス))と
 オーメル陣営(オーメルサイエンス・ローゼンタール・GA・イクバール(現在のアルゼブラ)&テクノクラート(イクバール
 とテクノクラートは戦争中にGAに対して攻撃))との間で行われた戦争。
 両陣営共に多数のネクストを投入した結果、未曾有の被害とコジマ汚染を引き起こした。
 戦争末期にはレイレナードによりアサルト・セルの排除が行われようとしたが、過去の罪の露呈を恐れた他企業により阻止された。
 なお、戦争は一応オーメル陣営の勝利で終わっているが、オーメルサイエンスは全てのリンクスを失うなど、被害はその通りではない。

その他
・アーマードコア
 国家の統治能力減退によって顕在化した、テロと暴動の脅威に対抗すべく開発された
「圧倒的な火力、制圧力を実現する人型汎用兵器」。
その後の新技術の開発によって、現在では「ノーマル」「ネクスト」と呼ばれる2つのタイプに大別されている。

・ネクスト
 ノーマルをベースに、秘密裏に開発されていた最新鋭兵器。国家解体戦争ではじめて実戦投入され、企業側の切り札となった。
アクアビット社のコジマ技術、アスピナ機関のアレゴリーマニュピレイトシステム(AMS)など多くの先端技術を使用し、ノーマルとは隔世の戦闘能力を持つ。企業の持つ強大な権力の
象徴でもあり、通常、コロニーあるいは武装勢力がネクストを有することはできない。
リンクス戦争後(FA時代)においては、ネクストは増加、特定の企業に属さない独立傭兵も多数現れるようになった。

・リンクス
ネクストの搭乗者(AMS適合者)を指す通称。
ネクストの操縦機構AMSは、搭乗者の能力を機体の戦闘能力にダイレクトに反映させる反面、特異な知的能力を要求する。これに適合できるか否かは、訓練などによって後天的
に獲得することは極めて困難であり、生来の素養の有無が重要となる。彼らはいわば一種の天才であり、所謂「軍人」ではなく、企業に囲われた被験者・被験体である場合も多い。
例外的に、精神状態に異常をきたすほどの強烈な精神付加に耐えることができればネクストを動かす事は可能であり、また、AMS適性の高さは必ずしも、実際の戦闘能力には比例
しない。

・マクシミリアン・テルミドール
 本小説の主人公。ORCA旅団長。ORCAランク1・乗機は軽量寄りの中量逆間接「アンサング」
 レイレナードの遺志を継ぎクローズプランを先導するが、その重圧故かロマンチストでありながら複雑な、あるいは分裂した男と評されるなど、その精神状態は不安定。
 アルテリア・クラニアム制圧するための戦いにおいてウィン・Dファンション及びロイ・ザーランドに敗北。
 なお、カラードランク1・オッツダルヴァとは同一人物である。

・メルツェル
 ORCA所属リンクス。ORCAランクは7.乗機は「オープニング」だが、本編では登場しない予定。
 策謀を用いてオーメルサイエンスの支援を取り付け、ORCA旅団を設立、秘密裏にクローズプランを計画した。
 なお、ゲーム中において彼のセリフにのみノイズが走ることから、本編では元からAIであったと設定を変更。デバイス管理AIとして設定した。

・オッツダルヴァ
 カラード所属・ランクは1。乗機は軽量2脚「ステイシス」
 オーメルサイエンスに所属していたが、ラインアークの戦いにおいてネクスト「ホワイト・グリント」に敗北。海中に没した。
 本編ではテルミドールの別人格として設定。主導権はテルミドールにある。
 かなりの毒舌家で、味方に対しても辛辣な言葉を容赦なく浴びせ、神経を逆撫でする。
 なお、カラードとは「首輪つき」という意味を持ち、力を持ちながら企業に飼われているリンクスに対する皮肉でもある。


139 :テルミドール ◆Q8cqSo5Bg2 :2008/05/05(月) 20:36:10 ID:GNjvGRDN
・コジマ粒子
 国家解体戦争の7年ほど前に発見された新物質。発見者の名を冠し、コジマ粒子と呼ばれる。アクアビットとオーメル・サイエンス・テクノロジーによって、
 高い軍事活用可能性が見出され、現在ではネクスト技術の根幹を成す、さまざまなテクノロジーに応用されている。
 反面、広範かつ長期にわたり、人体やそのた環境生態系に深刻な悪影響を及ぼす危険性の高い環境汚染原でもある。
 本編においてもコジマ粒子ならびにコジマ兵器は登場予定であり、高い汚染性をどう扱っていくか試行錯誤中。

140 :テルミドール ◆Q8cqSo5Bg2 :2008/05/05(月) 20:37:40 ID:GNjvGRDN
以上です。今後執筆予定に本編において登場する単語もあるかと思いますのでよろしければ
御一読お願い致します。

141 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 20:49:33 ID:ad3d7syf
……え、作品投下はなしっすか?
ぶっちゃけ資料だけ置かれても「だから?」なんですけど

142 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 20:53:35 ID:T5O7bPcB
>>141
痛い子に触らない。
NGしてスルーしましょう。

143 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 20:54:37 ID:YeFK3SU1
>>141
まとめの方でACfAの設定が分からんとかの書き込みがあったからそれへの返答だと思う

144 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 21:01:15 ID:NrY6M72u
設定知りたきゃ自分で調べろよな

145 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 21:01:51 ID:ad3d7syf
そっか…ごめんね

では何事もなかったように次の職人を待つよ

146 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 21:14:26 ID:zaxiLSQn
>>140
今回みたいな時は避難所に行くか本編投下と合わせるようにするといい思うぞ

147 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 21:16:11 ID:BYU5NWnz
本編投下される頃にはみんな忘れてるなw

148 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 22:15:27 ID:bsyZUcwH
>>138
あからさまなネタバレは駄目だよ…

149 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 22:27:05 ID:izrJn9e0
>>147
むしろ、忘れられないように、今日か明日中には投下するぜ!!
っていう意思じゃね?

150 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 22:40:48 ID:tSZkS8uU
>>138
まあぶっちゃけた話AC自体はよく知らなかったから助かるが早く本編落とさないと
みんな忘れると思うぞ。話自体は面白かったからがんばってくれ。

151 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 22:56:12 ID:mNhiQKUq
>>142
お前がスルーされるぞ?

152 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 23:02:06 ID:BYU5NWnz
スルーするー?


いかん!俺がスル―されてしまう!

153 :ネオシャドームーン:2008/05/06(火) 01:17:45 ID:xudmDiUL
久しぶりに投稿します。 今回はタイムボカンシリーズのヤッターマンの敵役
ドロンボー一味の歌 天才ドロンボーをモチーフにした「天才ナンバーズ」です。

(スルモンダ ヤルモンダ コンナモンダ コンナモンダ ヤルモンダ スルモンダ)
頭はいいよ ヘイヘヘーイ 作戦バッチリよ ヘイヘへーイ
欲しいよ欲しいよ レリック 絶対探すと決めちゃった ジェイル ルーテシア ゼスト
負けても負けてもなんともないない 私達は天才だ ヘイヘヘーイ ナンナンナンバーズ
(スルモンダ ヤルモンダ コンナモンダ)
(ナンデカッテ ナゼカッテ ソレハネ ナゼカッテ ナンデカッテ)
戦闘お得意よ ヘイヘヘーイ 闘い大好きよ ヘイヘヘーイ
破壊は破壊は楽しいよ 面白いよ笑えるよ ウーノ ドゥーエ トーレ
負けても負けてもなんともないない 私達は不死身だ ヘイヘヘーイ ナンナンナンバーズ
(ドンナンダ コンナンダ アンナンダ アンナンダ コンナンダ ドンナンダ)
人気は高いよ ヘイヘヘーイ みんなのヒロインよ ヘイヘヘーイ
悪役悪役せんもんよ 可愛い強い仲間思い クアットロ チンク セイン
負けても負けてもなんともないない 私達は悪党だ ヘイヘヘーイ ナンナンナンバーズ
(ドンナンダ コンナンダ アンナンダ)

154 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 02:16:25 ID:ovtQFvFQ
とりあえず>>152でもいじるか


ちょwwwwおまwwwwwww
スルーするーってwwwwうぇwwwwうぇwwwww

155 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 02:53:53 ID:KPOTfF/S
便乗
神光臨
ちょwwwシースルーするー並の傑作wwwwww

156 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 04:12:23 ID:qHHOwCM2
ACFAの資料だけでは寂しいんですが、本編投下マダー?

157 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 07:22:40 ID:71DIcluh
おはようございました
なら俺は>>152をスールにしてやる

158 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 07:43:34 ID:MIBEfW//
何か完全に止まってるね、何故に?

159 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 09:18:46 ID:w4TjoBhM
>>158 イベントの集中してるとかでは?

160 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 09:25:07 ID:8Y/yWBdE
たしかに、息抜きレベルじゃないネタも多数あったけど…
こっちも忘れないでね!切実に!

161 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 10:02:54 ID:Gz6cOVA+
このスレにおいて最もキツイこと

つ叩き<完全なるスルー

162 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 10:13:15 ID:BS+AoRyU
>>160
逆に考えるんだ
このスレの職人にとっちゃ、アレですら息抜きレベルなんだ

163 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 10:48:16 ID:QLs4yV2W
>>158
何時ものこと

164 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 11:48:25 ID:BY5l7c1y
>>158
目ぼしい職人は殆どが先週投下した+イベントに集中

165 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 12:29:05 ID:BS+AoRyU
>>164
なるほど……先週の豪華メンバー投下ラッシュはこのためか

166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 15:26:44 ID:TQaKlcPd
イベントなんてあったんだ?なんの?

167 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/06(火) 17:36:00 ID:/IEk1GVY
投下よろしいでしょうかー?
予約等は見たとところ無いようですが。

美少女が一切登場しませんー、今回。

168 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 17:37:20 ID:8Y/yWBdE
>>166
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1204982121/
>>576から

169 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 17:38:25 ID:8Y/yWBdE
カモンカモン支援!

170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 17:41:17 ID:CEwgFPZU
渋い親父ならなおの事大歓迎だぜ。支援するぜ。

171 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/06(火) 17:43:06 ID:/IEk1GVY
魔法少女リリカルなのは 闇の王女 第五章中編

 人外、という言葉がある。
この言葉は、時としてどんな武器や脅迫よりも、人の心を傷つける。それが、人に近しい存在であればあるほど、彼、彼女らは悩まざるを得ない。
何故なら。如何なる慰めの言葉よりも、それは切実に彼らの存在の本質を抉るからだ。
人間と違う姿形ならば、どうとでも言い表せる。すなはち、動物や獣、怪物といった風に。
だが――人の形をしながら、異形の機械が蠢く身体を持つ者は、なんと己を形容すれば良いのだろうか。
人間。否。強化骨格を基礎フレームとし、無限のエネルギーを約束する小型動力器官――半永久機関――を体内に潜ませる異形は、人間とは言えない。
化け物。
これも厳密に言えば異なる。
機械の体を持ったそれは、確かに生物学上のヒトとは異なるが、脳髄を持ち、思考を行い、笑い、友を作り、生身の部分を持っている。
ヒトではないが、ホラームービーに出てくるクリーチャーのように人間を襲うわけではない。
中途半端だ。
ひどく中途半端な、出来損ない。

―――ゆえに。

「僕は諦め切れなかった――完全な戦闘機人って奴が、さ。旧暦の時代に出来なかったことをしてこその、僕らの時代じゃ有りませんか。
古い技術体系に用は無かったんですよ」

奇妙な口調で喋る男は、妙にきっちりと整えてある髪形を右手で擦りながら、貧乏ゆすりをして靴でリズムを取る。
まるで、タップダンスをしているかのような動きに、もう一人の男――ゲンヤ・ナカジマは顔を顰めた。
彼を知るものが見たならば、心の底から嫌悪感を感じているのだとわかるであろう、その顔。諦めと狂気に対する抗いの入り混じった表情。
溜息をつきながら、眼前の男に問いかける――真理を求める探求者のように、貪欲に。
白い天上――病院か、何処かの研究所の一室といった風情の部屋で、男二人が背もたれ付きの椅子に座り、向き合っている。
片方は、壮年に差し掛かった初老の男性。もう片方は、黒々した髪を整えた二十代後半から三十代半ばの男性。
一呼吸おき、言う。

「なあ、お前の言いたいことは分かったからよ、本題に早く入ってくれないか――」
椅子の上で、くるり、と一回転しながら男が笑った。髭のまるで生えていない、童顔に笑みが張り付きうふふふ、と声が喉から漏れる。
整った顔立ちを、愉悦に歪め、一言。

172 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 17:44:04 ID:7svOjb0k
支援

173 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/06(火) 17:44:14 ID:/IEk1GVY
「嫌だなあ、ゲンヤさん。僕は無駄なことなんて話してませんよ。<彼女達>について知りたいんでしょう? ならお話は、最後まで聞いて貰わなくっちゃ。
ええと、何処まで話しましたっけ。嫌だなあ、若年性アルツハイマーなんて冗談じゃない――そうそう、機械の身体について、でしたねぇ」
再び喋り始める男――うっとりとした表情で、自身の研究について語り始める。

「非常に悩みましたよ、ええ。何せ、やろうと思えば機械が身体の外にはみ出してるような悪趣味なデザインも出来たんですがね、それじゃあ面白くない。
そんなの、僕らみたいな天才、っていうんですか? そういう一握りの人種じゃなくてもできることですよ――馬鹿馬鹿しいことにね。だから、僕は思った。
究極の人機融合――それは、人体と機械の調和だって、ね」

すうっ、と息を吸い込み、うふふふ、と男が笑う。童のような笑みを見て、そんなもんか、とゲンヤは気の無い返事をした。
そうそう、そうなんですよ――と男が嬉しげに笑い、マグカップに入ったコーヒーにミルクと砂糖をたっぷりいれて飲み始めた。

「あつっ! ふーふー、熱いなあ、もう。ミルク入れても冷めないなんて、気の利かない飲み物ですよねぇ、これ。今度文句言ってやろ」

誰が文句を言われるのか知らないが、こんな変態に言われるほうはたまったもんじゃねえな――と思いながら、ゲンヤは己に出されたコーヒーに砂糖を少し入れて飲んだ。
今は亡き妻、クイントはこうして飲むのが好きだったな、と思い、少しだけしんみりとする。
よく気が利く、自分には勿体無いくらいのいい女だった。
青い長髪。ころころと良く変わる表情。締まった身体。恥らうときの顔。閨での、可愛らしい声。
全てが、ゲンヤにとっての理想であり、よく馴染む女だった。
クイントの死後、ゲンヤが妻を取ろうとしなかったのは、喪に服しているというよりも、クイントを上回る女が見つからなかった、というのが大きい。
それほどまでにクイントはゲンヤの心の中で大きなウェイトを占める存在であり、クイントにとってのゲンヤも、似たようなものだった。

――八年前の事件さえなければ。

ゼスト・グランガイツ率いる地上本部直属の精鋭部隊による戦闘機人生成工場への突撃作戦は、部隊の全滅という形で幕を閉じ、死傷者の中にはクイントの名もあった。
ついに、ゲンヤはクイントの死に際を見ることは叶わず、対面したのは彼女が物言わぬ骸になっていたときだった。
後悔だけが、残った。
悔やんでも悔やみきれない、というゲンヤの悲痛な感情をよそに、男はそののっぺりとした童顔をなでた。
ゆで卵のようにつやつやの皮膚。


174 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 17:44:29 ID:8Y/yWBdE
支援!

175 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/06(火) 17:44:59 ID:/IEk1GVY
無神経な声が、陽気に告げる。
真実を。
残酷な、過去を。

「その点、素材選びには慎重になりましたとも。どんなにいい素材を探しても、駄目駄目。
高レベルの魔導師のデータも、一通り揃ってましたから、見たんですが――どれも、いまいちでした。なんでしょうかね、とにかく、『クル』ものが無かったんですよ。
そんなこんなで、<海>の優秀な魔導師のデータを見尽くして、飽きて息抜きにミッドのニュースをつけた時でしたかねぇ。<彼女>を見つけたのは。
―――そうっ!貴方の奥さんのクイントさんですよ!! あれは本当に美しかったなあ。特殊魔法、ウィングロードで空を飛翔するように駆ける、女神って感じでした」

変態の言葉――興奮で頬は高揚し、立ち上がりにこにこと笑う。手は握ったり開いたりするのを繰り返し、忙しない。
下手をすると股座をいきり立たせるのではないか、という様な様子に、ゲンヤは吐き気を覚え、顔を背けた。
(変態が、クイントの名を語るんじゃねえ!)
それは、ゲンヤ自身押さえ切れない抵抗感であり、眼前の男に対する人としての抗いだった。
人間をパーツといって憚らない、壊れた男――それが、目の前の人の本質であり、受け入れ難い狂気であった。
冷めかけたミルクコーヒーを、腰に手をつけて飲み干しながら、男は笑う。
白衣が一連の動作に揺れ、ばさりとマントの様に翻った。

「んぐ。んぐ。うんうん、これこれ! やっぱり食事をする時は、孤独で豊かなのが一番です! あ、別にゲンヤさんを悪く言ってるわけじゃありませんよ?
それでですねぇ、もうあれは恋に等しい感情でしたね――気づいたときには脳裏はクイントさん一色でして、もうどうしようもなかった。
今思うと、恋焦がれる、って感情を僕が明確に理解したのは、あの時でしたね――全てが愛しかった。だから―――」

「――クイントの遺伝子情報を、使ったのか――?」

ゲンヤの声――嫌悪感を押し殺しての受け答え。
男――愉快、愉快と喜悦に顔を歪ませ、言う。

「ええ――かなり苦労したんですが、僕らの『バック』は優秀でしてね――クイントさんの生体情報は欲しいものがほとんど揃いました。
特に、生の『サンプル』を見たときは、興奮したなァ。いや、変な意味じゃなくて――心の底から、嬉しい、幸福だ、と思えたんですよ。
あんな気持ちになれたのは、後にも先にも、あのときだけだったかなァ。そうそう、戦闘機人の動力元、なんだかわかります?」

唐突な問いかけ――男の嬉しそうな笑み。
ゲンヤ――無言で首を横に振る。

「わっかりませんよねぇ、そりゃあ。僕も、魔法に頼らない、実戦的な動力源には悩みましたよ。何せ、AMF下における戦闘行動こそが、あれらの真価ですからね。
最初は、ロストロギアの類を使用することも考えましたが、駄目駄目です、あれは」
「どうしてだ――? 倫理的な問題はともかく、無尽蔵のパワーをあれは秘めている筈だ」

ゲンヤの疑問も尤もだった。
ロストロギア――危険指定遺失技術――は、滅んだ文明、世界の残した文字通りのロストテクノロジーであり、その危険性もさることながら、
秘めている力も莫大なものだ。それこそ、次元世界――人類居住可能環境下の惑星の一つや二つをまるごと吹き飛ばしてしまえる程に。
勿論、まっとうな脳味噌の持ち主なら、そんなものは封印処理を行うだろうが――この男がそんな理由で使用を控えるとは思えなかった。
事実、理由は違った。
男が椅子に座りなおし、答える。

「いや、ロストロギアの中でも、実戦に耐えうるモノって、思いのほか少ないんですよ。勿論、少数生産に止まるならそれで問題ないんですがね。
数を揃えようとすると、どうしても無理がでます。個々の『武具』としては完成でも、量産に向く『兵器』じゃない――僕ら科学者というのは、魔法と違って、
大衆に用いられる技術体系を揃えねばならない――だから、駄目だったんです。そこで、僕らは失われた技術体系に目をつけた。
―――もう、ゲンヤさんなら御分かりですよね?」

ぽつり、と呟いた。
呪われた言葉を紡ぐ気分――最悪。

「質量兵器文明、か」
男――膝を叩き、扇子を開いて大喜び。扇子に書かれた文字――日本号。第97管理外世界からの密輸入品。
扇子で扇ぎながら言い、童顔が喜びに歪み。
黒い髪がはらり、と揺れた。

176 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/06(火) 17:46:47 ID:/IEk1GVY
「御名答ッ! そう、だいぶ昔の、古ベルカ、ミッド――戦争が激し過ぎて文明そのものが一度塵に帰った時代、
小型戦闘機の動力源として用いられていた半永久駆動機関――正確に言えば、模造品ですね――それが、非魔導兵装、ISの動力機関。
つまり、彼女達は―――」

ゲンヤ――息を呑む。拳を握り締め、叫ぶ。
そんなことがあっていいのかという思い。
      
「――ッ! 『存在そのもの』が、『質量兵器』だということかッッ!!」
男――あくまで静かな笑み。
なんでもない、というふうに一言。
「そうですよ――何を今更。非魔導兵器は、全て質量兵器と定めたのは、時空管理局じゃないですか。戦闘機人だけが枠外という今の状況のほうがおかしい。
まあ、娘さん二人が戦闘機人である貴方にとっては重要なことですか? ゲンヤさん。大変ですねぇ、娘さんは数年前の火災で一人が行方不明。
戦闘機人技術、最初の申し子にして、『僕の作品』――行方不明なのが、とても残念ですよ」

ゲンヤが、ゆらりと立ち上がり、男の胸倉を掴んで壁に押し付けた。どん、というにぶい音。
悪鬼の如き形相で、ゲンヤが怒声を放った。
ひょろ長い変態科学者を持ち上げることなど、まかりなりにも管理局員のゲンヤには簡単なことだった。

「ふざけるんじゃねえ、あいつは……スバルは…………俺たちの、クイントの娘だッ! てめえなんかの被造物じゃないッッ!!」

男――表情を崩さず、笑顔で続ける。
多少息苦しそうにしながらも、呪いのような言葉を呟いた。

「そうはいいますがねぇ……地上本部襲撃のデータ、見ましたよ。あれ、タイプゼロセカンドですよね?
どういうわけか、僕とは別系統の技術でチェーンされてたみたいですけど、間違いない。あの動き、造型、能力は、彼女です。
誰がなんと言おうと、彼女達、タイプゼロシリーズを『造った』のは、僕なんだから―――」

「うるせぇッ! 黙れ、<ヤマサキ>ッッ!!」

ヤマサキとよばれた男は、それっきり喋るのを止めた――ように見えた。
数秒の沈黙。
再び口を開き、神妙な顔で言う。

「そうそう、以前、戦闘機人タイプゼロの胚珠――つまり加工したクイントさんの細胞の提出を、上から命じられましたよ。
どういうことか、御分かりですよね? ゲンヤさん」

ゲンヤは胸倉を掴んでいた手を離し、のろのろと後ろに下がり、ヤマサキの顔を見た。
何もかも知っている、という一種の超越者の顔。向こう側の人間。人をやめ、倫理をかなぐり捨てた者。
そいつが、底無しの闇を語り始めた。

「なん……だと?」
「ええ。ついでを言うなら、うちの課が集計してたタイプゼロファーストのデータも抜き取られまして。セカンドのデータも同様。
腹立たしいですねぇ、もう。製作者の僕に無断で、だなんて。許されることじゃありませんよ―――上は、タイプゼロを最低でも二体、再製造するつもりです」
「……できるのか? そんなことが―――」

177 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/06(火) 17:47:18 ID:/IEk1GVY
ヤマサキ――得体の知れない表情を浮かべ、含み笑い。白衣のポケットに手を突っ込み、解説。
「できますとも。セカンドとファーストの成長データと、僕の基礎設計、そしてクイントさんの細胞――これがあれば、
今すぐに貴方の『娘さん』そっくりの戦闘機人が造れます。記憶の転写はできませんから、そこは合成した適当なデータを乗っければ、はい、完成」

管理局自らが、禁忌の技術に手を出す――それが、どういうことなのか、今のゲンヤにはもうわからなかった。
ふと思いついたことを口にする。

「ここ最近のロストロギアの連続発掘は…………」
「ええ、ほぼ確実に人造魔導師量産の為の下準備、でしょうねぇ。いずれ、現れると思いますよ――僕らにも想像がつかないような、<怪物たち>が」

「ふざけるな! 何の為の管理局だッ!!」
では、クイントは何の為に死んだのかという問い――胸の中で鈍痛となって反響し続けるそれを、ゲンヤはぶちまけた。

「さあ? ただ言えるのは、ここはもう、理想と正義の組織じゃないってことですよ――御分かり頂けましたか、ゲンヤさん。
最後に言わせてくださいねぇ――セカンドは、私が造りだした最高傑作です。
後に製造されるであろう全ての戦闘機人を殺す為に製造された殺戮機械。それが彼女、スバルだ。彼女の為に造りされた、実験作のファーストでは、彼女には勝てない――」

そうして、男――元広域指定次元犯罪者にして、現時空管理局生体組織研究所所長、ヤマサキ・ヨシオは静かに歩み去った。
口元に笑みを湛え、こらえきれそうに無い笑い声を噛み殺して。
(楽しみじゃないですか、ジェイル・スカリエッティ。貴方と私、どちらの技術が優れているか、証明の時だ――)

笑う
嗤う。
哂う。
けたけた、けたけたと、闇が―――。


178 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/06(火) 17:49:24 ID:/IEk1GVY
投下完了ですー。
ナカジマ姉妹の運命は如何に?!

感想等よろしくお願いしますー。

179 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 17:56:30 ID:8Y/yWBdE
GJ!!
あぁ、そういえば劇ナデクロスだったっけ……。
一人の女性に対する想いの表わし方が全然別物で、
もはやヤマサキに嫌悪感すら覚える表現が良かったです。
というか毎度毎度変態悪役が輝き過ぎでしょう? 倒す事に一片たりとも迷いが生じないw
勝てないと断言されたギンガは本当にスバルを取り戻せるのか、ワクワクして続きを待たせていただきます!

180 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 18:57:47 ID:5dBKqhEI
GJ
悪党以下の外道に胸躍る俺は末期も末期だww

181 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 19:06:14 ID:BcpWDWwz

GJ。しかしヤマサキが来ましたか。
劇ナデで少女マンガ読んでるイメージが強くてマッドな奴を想像できるかなと
思ってましたが、倫理からはずれたことを語るシーンを読んで、ああマッドだこいつ
なんて思いました。

あとはありきたりですが、続き楽しみにしてます。

182 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/06(火) 20:11:00 ID:QlP+2mHI
闇の王女GJ!
ヤマサキはどこの世界でも狂人ですねぇ。

30分後くらいに天元突破第11話、投下よろしいでしょうか?

183 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 20:23:30 ID:JOMS8Z1B
支援します。
しかし天元突破氏は投稿感覚めっちゃ速いですねぇ…。

184 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/06(火) 20:41:04 ID:QlP+2mHI
一つ一つの話が短いので……。

ではそろそろ時間なので、投下はじめます

185 :一尉:2008/05/06(火) 20:42:03 ID:H8IUTHg1
これは早すきるでんな。

186 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/06(火) 20:42:27 ID:QlP+2mHI
 ……時は少し遡る。

 鋭い岩肌の突き出た丘陵の上空を、一機の輸送ヘリが飛んでいる。
 JF704式ヘリストームレイダー=\―機動六課に配備された最新型の輸送ヘリである。

 首都クラナガン行きの貨物用リニアレールが、謎の魔導機械――暫定的にガジェット・ドローン≠ニ呼称――群の襲撃を受けた。
 内部に侵入したガジェットに車両の制御を奪われ、外部から列車を止めることは不可能。
 しかも列車近辺にムガンも出現、このままではムガンを引き連れたまま列車は市街地へと至る。

 今回のスバル達の任務は、列車の市街地到達前にムガンを殲滅し、同時に列車内部のガジェットを破壊、車両の制御を奪還することである。

「リニアレール車内のガジェットは最低でも三十体、武装や能力その他は一切不明……正直、初陣のお前らにはかなりハードな相手だな」
「しかし戦えない相手という訳ではあるまい。我々副隊長や高町もフォローする、尻込みせずに思いきりやれ」

 ヴィータとシグナムの激励の言葉に、緊張したような面持ちでヘリに揺られていた新人達が、一斉に「はい」と返事を返すー―ただ一人、スバルを除いて。

「……スバル、アンタ大丈夫?」

 俯いたまま沈黙しているスバルに、ティアナが心配そうに声をかける。
 不安、緊張、萎縮……どれもこの親友には到底似合わない言葉ではあるが、しかしスバルも人間である以上、それらを感じていてもおかしくはないのだ。

 ティアナの声にスバルは顔を上げ、「大丈夫」と言いながら弱々しい笑みを浮かべる。

「ただちょっと……はやてさんとフェイトさん、大丈夫かなーって、心配してるだけだから……」

 スバルの言葉に、ティアナ達は思わず黙り込む。

 はやてとフェイトの二人は現在、ミッドチルダ北部、ベルカ自治領に出現したムガンの迎撃に当たっている。
 報告によれば、敵の数はおよそ二百――なのは達隊長陣曰く、その程度の規模相手ならば援軍も限定解除も必要ないらしいが、それでも不安は消し去れない。
 特に過去に同程度の規模のムガン群と相対し、そして危うく撃墜されそうになった、スバルとティアナは……。
 本来現場管制担当のリィンフォースUが隊舎待機を申し出たことも、スバル達の不安を助長させている。
 何かがあるのではないか、万が一のことが起きてしまうのではないか……マイナス思考の無限螺旋に、四人の心が囚われる。

 沈痛な表情を浮かべる新人達に、なのは達隊長勢はどこか呆れたように息を吐いた。

「どうやらお前達はあの二人を――いや、我々も含めた隊長格全員を、些か過小評価しているようだな」

 溜息混じりにそうひとりごち、シグナムがゆっくりと新人達を見渡す。
 次の瞬間、刃物のように研ぎ澄まされたシグナムの眼光が、四人を射抜いた。

「……なめるなよ小童共。たかがムガンの百や二百、その程度に主はやてとテスタロッサの二人が後れを取るとでも思ったか?」
「お前ら程度のひよっこがはやて達の心配なんて百年早い。んな無駄なことを考えてる暇があったら、自分達のことをまず心配しとけ」

 怒気を含んだシグナムの言葉に、ヴィータが憮然とした表情で同意する。
 副隊長二人の手厳しい物言いになのはは苦笑しながら、四人を元気付けるべく口を開いた。

「フェイトちゃん達なら大丈夫だよ。スバル風に言うなら……あの二人を誰だと思ってるの?」

 悪戯っぽくそう言って笑うなのはに、スバル達の表情も明るさを取り戻す。

「新デバイスでぶっつけ本番になっちゃったけど、練習通りにやれば大丈夫だからね」

 デバイス整備担当のシャリオの言によれば、四人の新型デバイスはこれまでの訓練データを基準に調整されており、いきなりの使用でも違和感は無いらしい。
 なのはの言葉にスバルは視線を落とし、手の中に握るペンダント状の青い宝石――己の新しい相棒、マッハキャリバーに優しく語りかける。

「初めて会っていきなりだけど、一緒に頑張ろうね」

 スバルの呼びかけに応えるように、待機状態のマッハキャリバーの表面がきらりと輝いた。
 
 

187 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/06(火) 20:43:52 ID:QlP+2mHI
 
 
 ストームレイダーが現場に近付き、ムガンの巨体が肉眼で確認出来る。
 敵の数は僅か十数体――数十単位を平均とし、時には数百単位で出現するムガンにしては、この数は異常とも言える程少ない。

「……妙だな」

 正面の窓ガラス越しに見える敵勢力に、ヴィータが眉を寄せながら呟いた。
 奇妙な点は敵の数だけではない。
 リニアレールと並走するように飛ぶムガン群は、しかし列車を攻撃する素振りは一切見せていない。
 攻撃もせず、ただ列車の周りを並んで飛んでいるだけ……その姿はまるで、

「ムガンが、列車を守ってる……?」

 咄嗟に呟いたその仮定を、しかしヴィータは頭を振って打ち消した。
 そんなことがある筈が無い……それ以前に、そんなことはどうでも良い。
 ムガンを排除し、新米共の突破口を開く――それが自分の役目、今の自分の考えるべきこと。

「……敵と列車との距離が近いな、あの距離で自爆されたら確実に列車も巻き込まれる。それに爆発で落盤が起きる可能性も考慮の必要があるな」
「いつもみたいに纏めて撃破は、ここではちと危な過ぎるな。面倒くせーけど、一体一体列車から引き離して各個撃破が無難か?」

 シグナムの指摘とヴィータの提案に、なのはは同意するように頷いた。

「ヴァイス君、わたしも出るよ。ヴィータちゃん達副隊長と空の敵を何とかする」

 なのはの言葉にヘリパイロット――ヴァイス・グランセニックが首肯を返し、輸送ヘリ後部のメインハッチを開放した。

「じゃあちょっと出てくるけど、皆も頑張ってズバッとやっつけちゃおう!」
「先程も言ったように、危なくなればすぐに我々がフォローに回る。落ち着いていけ」
「大切なのは熱いハートとクールな頭脳、そいつを忘れんじゃねーぞ?」

 口々に激励の言葉をかけるなのは達に、スバル達は――今度は四人とも――元気良く「はい!」と返した。
 新人達の返事に満足そうに首肯し、なのは達は大空へと飛び出した。

188 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/06(火) 20:45:31 ID:QlP+2mHI
 デバイスを起動し、バリアジャケット――副隊長二人は騎士甲冑――を身に纏う。
 風を切り裂き、三人の戦士が敵に接近する……ムガンが牽制するようにビームを撃つが、しかし列車から離れて本格的に迎撃しようとはしない。

「やっぱりおかしい……!」

 ムガンのビームをかわしながら、なのはが警戒するように声を上げる。
 敵はまるで噛り付くよう列車の傍から離れようとしない、まるで見えない糸で結ばれているかのように一定の距離を保ったまま並走している。
 今の敵は空を飛ぶだけのただの砲台に過ぎない、破壊することは容易だろう……しかし不用意に攻撃を仕掛けることは、なのはには出来なかった。
 シグナム達の指摘する通り、ムガンにこのままの距離を保たれたまま破壊すれば確実に列車をも巻き込んでしまう……敵は列車を人質に取っているようなものなのだ。
 自分達を囮に列車から引き離すという作戦も、敵が追って来なければ成り立たない。

 どうする……歯噛みするなのはの頭の中に、その時ヴィータからの念話が響いた。

(なのは、あそこを見てみろ! ムガンの頭の上!!)

 ヴィータの声を受け、なのははムガンの頭部に視線を向ける。
 ドーナツ状の円盤の真ん中から飛び出た突起部分、その先端に、小さな機械が取り付いている。
 卵のような楕円形の形状をし、触手のようなコードを生やした人間大の機械――ガジェット・ドローン。

(もしかして……あれがムガンの不審行動の原因!?)

 頭の中で驚愕の声を上げるなのはに、ヴィータとシグナムの首肯する気配が念話越しに伝わってくる。

(驚いたな。列車だけでなくムガンまで操れるのか、ガジェットという機械人形は)
(どーも変だと思ってたけど、ムガンの奴らガジェットに乗っ取られてたのかよ。だっせぇ!)

「呑気なこと言ってる場合じゃないでしょ!? 二人とも!!」

 緊張感の欠片も無い副隊長二人の科白に、吼え猛るようななのはのツッコミが炸裂する。
 本来ならば念話を送れば済むことだったのだが、興奮のためかつい声にまで出してしまった。

(とにかく! まずはムガンを操ってるガジェットを破壊して、その後最初の打ち合わせ通りに『引き離して各個撃破』作戦でいこう)

(ライトニング02――シグナム了解)
(スターズ02――ヴィータ同じく)

 なのはの提案に副隊長二人が了承の返事を返し、三人は行動を開始した。

「アクセルシューター!!」

 なのはが魔力弾を放ち、ムガン達に寄生したガジェットを撃ち抜いた。
 ガジェットの支配から解放されたムガン達が、三人に襲い掛かる。

(それじゃあ二人とも……)

 迫り来るムガン群になのはは不敵な笑みを浮かべ、レイジングハートの柄を握り直した。
 副隊長二人も表情を引き締め、なのはの次の言葉を待つ。

 そして、

「――逃げろぉーっ!!」

 ……なのはの号令と共に三人は一斉にムガンに背を向け、そして散り散りに逃げ出した。

 

189 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/06(火) 20:47:33 ID:QlP+2mHI
 
 
「おー、追っかけてる追っかけてる」

 操縦シートの脇から顔を出し、逃げるなのは達の背中を追いかけ列車から遠ざかるムガン達を眺めながら、スバルが感嘆の声を上げる。
 決して見栄えの良いやり方とは言えない――というかどう見ても格好悪い――戦い方であるが、しかしその効果は絶大だった。
 バラバラの方向へ飛ぶなのは達に合わせ、ムガン達もまた三方向に散開している。
 隊長格一人につき、追いかけるムガンは僅か数体……なのは達にとっては、楽勝を通り越して瞬殺だろう。
 今のなのは達の気分を喩えるならば、カーチェイスで敵を峠まで案内して、そこで一気に崖下へ蹴落とすようなものだろうか。
 逆にムガン達の方の現状と末路に目を向けてみれば、仔猫を追いかけていたと思ったら実は虎で、一瞬で食い殺されるという比喩が妥当だろう。

 えげつない……スバルは素直にそう思った。
 おかげで自分達はこうして順調に降下予定地点に近付いている訳だが、追い詰めている筈が逆に罠に嵌っているムガン達を見ていると、敵ながら哀れに思えてくる。
 合掌するスバルの視界の向こうで、十分に列車との距離を稼いだなのは達が攻撃に転じ、ムガンが次々と爆発に消えていく。
 丘陵上空の各所で派手に上がる紅蓮の花火を見上げながら、スバルはふと思いついたようにこうひとりごちた。

「なのはさんって、実はティアっぽい人だったんだね」
「……ちょっと馬鹿スバル、それどーゆー意味よ?」

 スバルの呟きを耳聡く聞き取り、憮然と抗議しようとするティアナだったが、

「言われてみれば確かに、なのは隊長ってティアナさんに似てますよね」
「あんな性格悪い作戦立てるところとか、容赦の無いところとか、ティアナさんそっくりです」

 子供二人の無邪気な追い討ちが突き刺さり、ティアナは沈黙を余儀なくされた。
 いじめか、いじめなのかこれは……?

「あ、アンタ達……後で覚えておきなさい……!」

 仲間達が自分のことをどう思っているのか……知らない方が良かった、知りたくなかった真実を鼻先に突きつけられ、ティアナはふるふると拳を震わせた。

「おい新米共! 漫才の時間はおしまいだ」

 操縦席から振り返り、ヴァイスが四人に声をかける。

「隊長達が空を押さえてくれてるおかげで、こっちは安全無事に降下まで到着だ……次はお前らの番だぜ?」

 ヴァイスの言葉に表情を引き締めるスバル達の前に、ロングアーチ――グリフィスからの通信ウィンドウが開いた。

『君達の任務は二つだ。一つはガジェットを逃走させずに全機破壊し、列車の制御を取り戻すこと。
 もう一つは列車のどこかにある筈の、ムガンの狙う何か――恐らくレリックかコアドリルだろうが――それを探し出し、安全に確保すること。
 スターズ分隊とライトニング分隊、二人ずつのコンビでガジェットを破壊しながら、車両前後から中央に向かってくれ。管制はこちらで行う』

 グリフィスの指示に首肯を返し、まずスターズ隊の二人――スバルとティアナがメインハッチへと歩を進める。

 その時、

『目標空域に未確認飛行体が多数接近、この反応……ガジェットです!』

 切羽詰まったようなオペレーターの声と共に画面が切り替わり、航空機のような三角形のフォルムの機械群がウィンドウに映し出された。


190 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/06(火) 20:48:53 ID:QlP+2mHI
「これって、敵の増援!?」
「航空型……別タイプのガジェットってこと!?」

 瞠目したように声を上げるスバル達の前に、なのはからの通信ウィンドウが展開された。

『ごめん、そっちに行くのはちょっと遅れそうかな』

 スバル達の中に飛べる者は――フリードリヒを除いて――存在しない、ストームレイダーも戦闘には不向きである。
 つまり接近中の新型ガジェット群の相手はなのは達が担当することとなり、必然的にスバル達への援護の手が塞がるということになる。
 困ったように己の力不足を謝罪するなのはに、スバルは首を振って笑いかけた。

「大丈夫です、なのはさん! あたし達のことは気にせず、空の敵をお願いします」

 力強い笑みでそう応えるスバルに、ティアナ達も便乗するように口を開いた。

「スバルの言う通りですよ、なのはさん。もう少しアタシ達を信用して下さい」
「僕達だってもう子供じゃありません、この二週間で強くなれるだけ強くなったんです!」
「なのは隊長達の背中を守ることはまだ無理ですけど、なのは隊長達がいなくてもちゃんとやれます!」

 フリードも同意するように一声鳴き、最後にスバルが一同を代表してなのはに向き直る。

「あたし達もあたし達で頑張りますから、なのはさん達も頑張って下さい!」

 スバル達の言葉になのはは一瞬きょとんと目を瞬かせるが、しかし次の瞬間、声を立てて笑い始めた。

『にゃはは……元気付けようと思ってたのに、逆にこっちが元気付けられちゃったね』

 目許に浮かんだ涙を拭き取り、なのはは毅然とした表情で四人を見据えた。

『煩い外野はわたし達に任せて、皆は皆のやるべきことを頑張って』

 凛としたなのはの言葉にスバル達も表情を引き締め、一斉に力強く頷いた。

「「「「はい!!」」」」

 開放されたメインハッチを蹴り、まずスバルが大空へと身を投げ出した。
 征こう、マッハキャリバー……右手に握る宝石を天高く掲げ、スバルは昂然と声を上げる。

「セットアップ!!」

 主の咆哮に応えるように宝石が眩い光を放ち、スバルの服装が白いバリアジャケット姿に変わる。
 それぞれの分隊の隊長――スバル達はなのは。エリオ達はフェイト――のものを参考にした最新式のバリアジャケットに身を包み、スバルが天を翔る。

「ウィングロード!!」

 スバルの足元に魔方陣が展開し、光の道が列車へとのびる。
 空を穿つように垂直に進むウィングロードは、途中で二又に分岐し、それぞれの先端が列車の先頭と最後尾の車両の側面に突き刺さる。
 後続のティアナ達三人が進む出陣の「道」が、これで完成した。
 両脚のローラーブーツ――マッハキャリバーで光の道を踏み締め、スバルは背後を振り返った。
 それぞれ新しいバリアジャケットを纏ったティアナ達三人が、スバルの創った道を進んでいる。

 スバル達の初陣が、始まった。



天元突破リリカルなのはSpiral
 第11話「初めて会っていきなりだけど、一緒に頑張ろうね」(了)

191 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/06(火) 20:51:59 ID:QlP+2mHI
投下完了しました。
今回は導入ということで少し短め、次回はバリバリのバトルです。

前回GJコールくれた方々、この場を借りてありがとうございます。

192 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 21:18:19 ID:DxjKDaF3
GJ!
こういう直前の盛り上がりというのも良いですね。
それとこんななのはさんも、新鮮でとても良かったです。

193 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 23:17:24 ID:Ntw/YoJD
天元突破リリカルなのはSpiral投下乙&GJ


194 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 23:23:32 ID:BcpWDWwz
Spiral氏GJ。
逃げろぉー、に吹いた。こんななのは見たことねえ。

195 :×DOD ◆murBO5fUVo :2008/05/06(火) 23:36:52 ID:+WqEWQRD
PCが帰ってきました。のでようやく書き終わった次第。
イベントもいいけどとりあえず0:15くらいからピポスバルゲッチュしたいんですがかまいませんねっ!

196 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 23:41:51 ID:jSjZby0c
OK!

197 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 23:43:47 ID:BcpWDWwz
新参ですがXDOD氏投下後に投下してよろしいでしょうか。



198 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 23:48:43 ID:k7h7V9O+
>>197
新規さんをつっぱねる道理はありません。
クロス元は何ですか?

199 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 23:55:21 ID:BcpWDWwz
>>198
コンシューマー化された某ADVなんですが、名前を出しちゃうと
展開予想できてしまう部分があるので投下後じゃダメでしょうか。

200 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 23:55:58 ID:CEwgFPZU
なんかdod氏の予告見たらバッテリーが回復したぜ。
アナウサギの盲腸糞の真似は出来ないが。

201 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 23:56:06 ID:NwLVCPt1
すいません、その後に投下していいですか?
うたわれ×なのは シグナムの短い話です

202 :スバゲッチュ 0/5 ◆murBO5fUVo :2008/05/07(水) 00:16:38 ID:8SBVkDx8
>>201
「投下した」なら(ry

では投下を開始します。
約2700字の5分割です。

203 :スバゲッチュ 第二話Bパート 1/5 ◆murBO5fUVo :2008/05/07(水) 00:18:29 ID:8SBVkDx8
「や、やだっ、グリグリは、グリグリだけはやめふにゃあぁぁぁああっ!!?」
「ひんっ、ゆるして、ゆるし……い、いやぁっ、らめぇぇぇええ!!」
「ハッ! ティ、ティア、そのながねぎでなにを……ひ、ひあぁぁぁ……っ!!」

 シャリオ発案の計略にはまり、機動六課食堂・キッチンで捕まった、四人のピポスバルたち。
 縄で両手両足を縛られた彼女たちは、ティアナからきつーいお仕置きを受けている最中だった。

『あまりにも阿鼻叫喚なため実況できませんでしたなの』

 シャリオの通信。そんなに酷い事はしていないと思うのだが。グリグリしたりペンペンしたり、
料理用の食材をちょっと本来と違う用途に使ったりしただけで。
 それはともかく、ティアナは丁重に無視をして、残る一人のピポスバルに向き直った。

「さぁて、これで残りはアンタだけね?」
「あ…………あぅぅぅっ……」

 まさに絶体絶命である。
 詰め寄るティアナの背後から聞こえるのは、びいびい泣き叫ぶピポスバルたちの大合唱。同胞の
惨状が嫌が応にも恐れをかきたてる。目もうるうると涙目で、怯えているのは明白だった。

「目的と他の奴等の居場所、教えないと……ひどいわよ」
「だ……だめっ、…………そ、そんなのっ…………」

 このピポスバル、中々強情のようであった。だがかたかた震えているのは全く隠せていない。
 まったく仕方がないとばかりに、ティアナは一つため息を吐いて、今度は穏やかに話しかけた。


204 :スバゲッチュ 第二話Bパート 2/5 ◆murBO5fUVo :2008/05/07(水) 00:19:41 ID:8SBVkDx8

「安心しなさい。まぁスパゲッティの一皿や二皿、食べさせてあげるわよ」
「え……ほんと? ほんと?」

 「スパゲッティ」と聞いた途端、目を爛々と輝かせるのは食いしん坊であるがゆえか、はたまた
身の安全を感じたゆえか。
 しかし今のティアナが最も好きなことは、「たすかるかもー」とか思ってるヤツにノーと言って
やることなのであった。

「ええ。ただし、ぜんぶ鼻から食べさせるけど」
『よい子はマネしてはいけませんなの』
「ふぇぇぇえんっ、やだ、やだぁ〜〜〜っ!」

 結局五分と持たなかった。



 魔法少女リリカルなのはStrikerS外伝
 スバゲッチュ   第二話「風雲! スバル城」 Bパート

205 :スバゲッチュ 第二話Bパート 3/5 ◆murBO5fUVo :2008/05/07(水) 00:20:48 ID:8SBVkDx8
 


「シャーリーさん? 割とあっさり吐きました。残りは訓練スペースに行ったそうです」
「いたぁい……」
「きゅぅぅっ……」

 とどめとばかりに拳骨をお見舞いされ、ハチマキを巻いた頭にコブを作ったピポスバルの前で、
そのチビどもの口を割らせたティアナが通信ウィンドウを開き、シャリオに事実確認を求めた。
 散々な目に合わせたから、虚をついたとは考えにくい。しかし
一応念のためである。ティアナ自身が確認しに行っているうちに逃げられても困る。

『了解っ、調べてみるなの!』

 それを聞き付けたシャリオはモニターから離れて、画面の向こうでなにやら別のパネルを弄くり
はじめた。訓練場のカメラを確認しているのだろう。
 本来この時間の訓練スペースは、教導を行うなのはやフォワードたちが使用している事が多い。
しかし幸いなことに今は休憩時間に入っており(デバイスのトラブルで場を離れたティアナとスバル
にもその旨は伝えてあった)さらに午後の教練は休みであった。
 もしこの事態がバレていたら、「はずかしいしゃしん」とやらの存在が知られていたらと思うと
地獄で仏である。主にシャリオ的な意味で。

「さーて、あとは動機だけど」
「いや……いやぁっ…………」
「ひぇぇん……ごめんなさい、ごめんなさいっ……」

 サワヤカな笑みを浮かべると、恐怖に震える声が聞こえた。
 視線を投げやると目を涙に濡らしたピポスバルたちが、怯えきった表情でティアナを見ていた。

206 :スバゲッチュ 第二話Bパート 4/5 ◆murBO5fUVo :2008/05/07(水) 00:22:14 ID:8SBVkDx8
「ま、勘弁してあげましょっか。時間も無駄っぽいし」

 さすがに情というものがわいて、ティアナはそこで勘弁してやることにした。
 途端、感謝と喜びの眼差しがピポスバルたちから向けられて、なんだかちょっとこそばゆい。
 ので、ちょっと弄ってみたくなる。好意を素直に受け取れないのは、ひねくれものというべきか。

「でも、ホントに何でこんなことしたの。大人しくしてればよかったのに」
「う、そ、それは……」
「だ、だめだよっ、それをいったら!」
「……良からぬことを隠しているようね。やっぱりもうちょっと苛めておきましょっか」
「ふぇぇえっ!?」

 自分で言っててサドっ気があるような気がするティアナであった。

「でも、どうしよう。置いてくわけにもいかないし……」
『そんな時に役立つのが、その「ゲットアミ」なのっ! こんなこともあろうかと、なのっ!』

 呼ばれもしないのに通信ウインドウが展開、出てきたのはやっぱりシャリオだった。その顔面に
向かってティアナが問う。

「訓練場の方は、どうですか?」
『やっぱり、いるみたいなの。かなりの数が……もしかしたら残りは全員、そっちにいるかもなの』
「……」
『うぅ、そんな微妙な表情をしないで欲しいの……』

 真剣な顔をして報告するシャリオだが、「なのなの光線」のせいで変わってしまった「なのなの
口調」のせいで全く迫力がない。
 ティアナが「うさんくせぇ」と言わんばかりの顔をするのも仕方ない話である。


207 :スバゲッチュ 第二話Bパート 5/5 ◆murBO5fUVo :2008/05/07(水) 00:23:23 ID:8SBVkDx8
『それよりっ! ティアナ、そのアミを使うなのっ!』
「……これですか?」

 訝しげに見るティアナの視線の先には、キッチンを訪れる前にシャリオから渡されていた虫取り
アミのような長柄の物体であった。動くのにあまりに邪魔なうえ用途が全く分からなかったため、
背に差していたのを外しておいたのである。手にとって問いかける。

「全然役に立ちそうにないんですけど、これ」
『大丈夫なの! それは捕まえた物体を転送するスグレものなのっ!』
「へぇそうですか。ところで、料理長を抑えてるグリフィスさんはどうしたんですか?」
『さ、さぁ、ピポスバルを捕まえるなのっ!』
「誤魔化しましたね?」
『ピ、ピポスバルゲッチュなのっ!』

 ということは押し付けたまんまということか。まったくひどい話である。
 しかしともあれ可哀そうな話ではあるが、グリフィスが石鹸で殴られまくっているかということ
よりもも、今はとにかくこのピポスバルの処理が先決である。
 ティアナはゲットアミを手にとって、じりじりとピポスバルどもににじり寄る。もうお仕置きが
ないと踏んでいるのか、ちびどもの顔は「ふへぁ〜」としたゆるんだ顔に戻っていた。
 そこに向かって、ティアナがアミを振り下ろす。
 その瞬間、ティアナの口が勝手に開き、こう叫んだ!



「ゲッチュ!」



「……今のは?」
『捕まえるときのデフォルトなの! 勝手に喋らせるように設定してあるの!』
「……イヤなんですけど」
『ダメなのっ。くーっ、一度ナマで聞いてみたかったのっ!』
「イヤなんですけど」
『さぁ、今度は訓練場にレッツゴーなのっ! 早く残りも捕まえるなの、ティアナっ』

 どうしてこの人は、こうも余計なことばかりするのだろう。
 写真の件をなのはやフェイトに暴露してやろうか。ひそかにそう思うティアナだった。

208 :スバゲッチュ あとがき ◆murBO5fUVo :2008/05/07(水) 00:25:02 ID:8SBVkDx8
おしまいです。

当面はDODクロスとこちらの、交互の更新になるかと思います。では。

209 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 00:32:28 ID:N88Eu0P/
なんといういぢめたくなるピポスバルなのかしら・・
一人下さい! つんつんしていぢめますから!

210 :197 ◆2pUVpKHRfQ :2008/05/07(水) 00:41:46 ID:MfO4EXS6
うへあへへへ……相変わらずピポスバには癒されるぜ。
とりあえず一人もら(ry

211 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 00:42:50 ID:AogmkeZk
GJ!
これはいいいじめてピポスバルwww
スパゲッティで餌付けしたいw

212 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 00:44:06 ID:3LR0OQA3
GJじゃあ俺も。

213 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 00:46:42 ID:v3wb+Czj
GJ!
相変わらずピポスバルが(ry

今回は次のステージへのつなぎ、といったところですか
だとすると次回は……駄目だ、顔がにやけるww

214 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 00:47:18 ID:AXrJmuYE
ピポスバルばっかに目がいきがちだが俺はティアナがサドの女王の階段着々と登ってる気が…
なんだろこの感覚…俺はMじゃないはずなんだが……

215 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 00:50:59 ID:5zJNBiBJ
GJ! 相変わらず可愛すぎだろ、そして残る大量のピポスバ軍団をどう処するか。
待て次回!

216 :×DOD ◆murBO5fUVo :2008/05/07(水) 00:56:46 ID:8SBVkDx8
感想ありがとうございます。今後もうちのチビどもで楽しんでいただけると幸いです。

>>213
忘れてたけど、第二話にはCパートもあるでよ。
第二話タイトルの理由はそこでわかると思うので楽しみにしててほしいのです。
そろそろゲストさんも動かしたいですし。

217 :197 ◆2pUVpKHRfQ :2008/05/07(水) 01:05:16 ID:MfO4EXS6
えっとそろそろ投下しても大丈夫でしょうか?
それとももう少し待ったほうがいいですか?

218 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 01:05:50 ID:8SBVkDx8
>>217
GO

219 :197 ◆2pUVpKHRfQ :2008/05/07(水) 01:08:07 ID:MfO4EXS6
それでは投下します。

 
 
 ギンガ・ナカジマは人を殺した。
 それは比喩や夢や幻覚ではなく、紛れもない一つの現実だ。
 人の死に直面するのは初めてではない。だが、直接的な原因となって死を生み出した体験を彼女は昨日までは知らなかった。
 ギンガが犯したことを聞いた同僚の誰もが耳を疑い、そして「悪い冗談はよせ。彼女はそんな人じゃない」と口を揃えて言ってくれた。その信頼は嬉しかったが、殺人を犯した事実は変えようがなく、彼らの信頼への裏切りに後ろめたさを覚え、二重の罪悪感に苛まれる。
 ジェイル・スカリエッティ事件で首謀者スカリエッティの操り人形と化した自分を、ぼろぼろになりながらも正気に戻してくれた妹、スバルにも顔向けできない。
 恨みのある相手だったのかと問われれば、迷いなくNOと答えた。殺してしまった人物とは昨日出会ったばかり、しかも言葉を交わす前、一瞬の間の出来事であった。恨む暇さえない。
 だが現に人は死んでしまった。他ならぬギンガの手によって。
 
「うっ……」
 
 こみ上がる吐気を堪える。その感覚には訓練生時代にすでに耐性をつけており、喉元近くまで昇ってきたものを胃に戻して乱れた息を整える。
 遺体が運び込まれた施設で身元が判明するまで待つ間に何度嘔吐感に教われただろう。
 本来のギンガにとって人の死でここまでの反応は異常と言えた。
 しかし人々を救うために鍛え続けてきた手を、よりによってなんの罪もない人の命を奪うことに使ってしまった。
 それはギンガ・ナカジマの信念に真っ向から反する行為だ。
 兵器である機人の力を、人として人々のために使う。娘と見てくれた母と父が彼女を機械ではなく人間だと言ってくれた時に――
 
「……誓ったのにっ」
 
 固く拳を握り締める。命を奪った手を。
 一晩経った今でも鮮明に思い出せる。あの、死の感触を。
 
   ●
 
「まいったわね。急に仕事が入っただなんて」
 
 その日、ギンガは久しぶりの休日を満喫していた。
 満喫といっても、当初予定していた友人との約束をドタキャンされたのは不満だったが。
 予定は狂ったがここで帰ってもすることは多くない。かといって仕事に戻るなんてことをやらかせば父に「休日でも仕事か。男でも作ったらちょっとは変わるんじゃねえか」などとからかわれかねない。

220 :197 ◆2pUVpKHRfQ :2008/05/07(水) 01:09:49 ID:MfO4EXS6
 どうせ恋人なんかまだ早いなんて思っているくせに。
 閑話休題。とりあえずひとりで散策してみようか。もしかしら何かあるかもしれない。
 羽を伸ばせるたまの休日にちょっとした期待を抱きながらギンガは歩み出す。
 その期待が周囲へ軽く気を取らせていた。
 ゆえに彼女は気づいた。視界の端に映る少年の姿に。
 
「なに? 迷っているの?」
 
 確かに少年は誰が見ても道に迷っているような様子だ。
 周囲の人々もそれに気づいているようだが彼を助けようとする者はいない。いや、踏ん切りがつかないだけの人も
 仕方ない。
 ギンガは足先を少年へと向ける。休日でも困っている人を見捨てられない性格なのだ。
 少年に近づいていくギンガに気づいたのか、関心をなくした人々を横目に彼女は吐息を漏らす。無遠慮な関心はその対象になる少年にとって心地悪いものだとわかるだろうに。
 まあ、今は彼らよりも少年だ。
 手が届くところまで来てギンガは改めて少年の姿を目にした。
 高い背丈と腰まで届く長い銀髪に、時々ちらりと窺える横顔は整っており美少年といっても過言ではなく、どこか触れることを躊躇わせる儚さをまとっている。
 未だにギンガに気づかず、当の少年は迷っているというか困惑しているようだ。
 そんな彼の肩に手を伸ばし、
 
「失礼、何かお困りです――」

221 :197 ◆2pUVpKHRfQ :2008/05/07(水) 01:11:51 ID:MfO4EXS6
 
 か、と先にはは続かなかった。
 軽く置こうとした手が、予想していた以上に低い位置で止まっていた。
 はずしてしまったのか。いや、差し出した手には少年の服の手触りと定期的に返ってくる反応がある。
 肩以外のどこかを掴んでしまったようだ。
 ならば、彼女の手はナニを掴んでいるのだろう。
 一瞬の自失から立ち直ったギンガは、呼ばれて振り返った少年の横顔から下に移る。
 そこにあるはずの肩がなかった。
 強い力で抉り取ったかのように腰の高さまで肉がそぎ落とされており、ふと気づいた。肩からそこまでの間にあるはずのものがなくなっていた。
 それはどこにあるんだろう。
 恐る恐る自分の手を見る。返ってくる反応はなくなり、少年の肩から剥がしとられた服で隠されたものを。
 逆の手が震えながら服の裏にあるソレを手にした。
 ――心臓だ。誰のだ? 少年のだ。命の証である鼓動はもう止まり、抗いようのない死に包まれている。
 ぐらり、と。心臓を抉り取られた少年の体が傾き、ギンガに受け止められた。
 少年は冷たかった。
 考えられたのはそれだけだった。返り血で真っ赤に染まった指が、ほとんど無意識に父に連絡をとった一方で彼女の思考は凍りついたまま。
 惨劇を目の当たりにした人々の悲鳴が遠かった。
 
   ●
 
 その後、局員と共にやってきた父、ゲンヤに連れられて今いる部屋で一晩付き添ってもらっていた。さすがにずっと父の手を煩わせるわけにもいかず、父は遺体の確認にいってもらっている。
 現在は部屋のドアの傍に父の部下が一人ついている。
 これでも過ぎた行為ではあるが本人が志願したらしく文句は言えなかった。事情聴取での様子から錯乱しているととられた以上は受け入れざるをえない。
 そう、錯乱だ。
 自分は錯乱しているかもとギンガは思う。
 あのような不可思議な光景、直視しても簡単に受け入れられまい。別の要因があり、それとギンガの行為がたまたま重なった。こちらならまだ信じやすい。実際信じかけた。
 しかしそんな、自身がやったことから目を逸らすに等しい行為は拒絶した。

222 :197 ◆2pUVpKHRfQ :2008/05/07(水) 01:12:55 ID:MfO4EXS6
 父の報告を待とう。
 そして少年を殺した責任をとろう。
 彼にも家族がいただろう、友人がいただろう、彼を大切に思う人がいただろう。自分は彼らから奪ってしまった。少年と、少年の未来を。
 砕いてしまったものの重みが背にかかる。軽くなることなどありえない重みだ。この重みを一生背負っていく。
 これからは償いの道だ。
 それはきっと辛いことだがやり通そう。たとえ許されることがなくとも。
 それがギンガ・ナカジマの選択だ。
 覚悟はできている。
 と、部屋の外から父の話し声が響いてきた。
 来た。
 握った掌は嫌な汗で湿り、昨日の惨劇が脳裏に蘇る。
 折れるな。自身を叱咤する。奪った命の重みを抱え続ける決意を胸の内で反芻し、ドアと対面する。
 
「ギンガ、入るぞ」
 
 久しぶりに見たような気がするゲンヤは形容しがたい表情をしていた。無理もない。身内が犯した事件はベテランのだろうと心中をかき乱すのに足りたらしい。
 そう、ギンガが普段の状態であれば、思考を回していたはずだ。
 だが彼女は大分落ち着いたとはいえ、昨日の混乱の残滓は胸の奥底に沈殿していた。
 それが嫌でも彼女の視線を、父の背後に立つ人物に釘付けにする。
 死体も同然に青褪めた端正な顔、茶色に変色した血が付着した銀の長髪、今にも崩れそうな硝子細工を連想させる雰囲気。
 
「あ――はっ……」
 
 口内が瞬時に乾き、冷たい汗が全身を覆い、呼吸は何度やってもうまくいかず、背筋が氷を差し込まれたように冷えつく。
 ギンガが殺した少年だった。

223 :197 ◆2pUVpKHRfQ :2008/05/07(水) 01:15:23 ID:MfO4EXS6
 生きていたのか? 否、引き千切った心臓は止まっていたし、適当に見ても流した血は致死量を上回っていた。ギンガ以外にも、連絡を受けてかけつけたゲンヤや他の局員も少年の死亡を確認していた。
 ならなぜ、と混乱する思考の隅で、機動六課に出向時に高町なのはから訊いた話が浮上した。第97管理外世界では、未練を持ったまま死んだ人間は幽霊、意識だけの存在となって世界を漂うと伝えられている、とか。
 父の先祖の出身世界の話に惹かれつつ、笑い飛ばしもした話が今になってリフレインする。
 なにせ、死んだはずの少年が目の前に現れている。彼がその幽霊とやらなのか。彼の未練とは一体……。
 愚問だ。決まっている。ギンガ・ナカジマに奪われた少年の未来の他にあろうものか。
 彼女に刻まれた罪の具現の視線がギンガのそれと重なり、返せ、命を、未来を、と幻聴が聞こえる。
 少年が手を伸ばす。罰を与えるというのか。贖いの時間すら得られないのか。
 
「君がギンガ・ナカジマクンだね。僕は愛野狩人。先日はお世――ごふっ」
 
 少年の声が吐血で途切れる。冷たい血潮の飛沫がギンガの頬にかかり、彼女の精神は限界に達した。
 
「ひぃっ、、、ああああぁっぁぁああぁああ!!」
 
 ようやく空気を取り込んだ喉が悲鳴を搾り出す。
 余談だが声、つまり音とは空気の振動である。人は内耳と外耳の境目にある鼓膜の振動信号を神経パルスに変換、脳へと伝える。
 彼女の悲鳴もそうして少年に認識される予定だった。
 されど少年の肉体は人体の常識を凌駕していた。
 彼の鼓膜が空気の振動に耐え切れずに破裂。振動は耳孔を蹂躙しながら通過していき、三半規管をも粉砕。
 平衡感覚を失った少年は後方によろけ、体勢を立て直そうと退いた右足が床を踏んだ瞬間、体重に負けて膝の部分から崩れた。
 もはや倒れる彼を止めるものがなくなり、背中を床に打ちつけた衝撃はいとも容易く背骨をへし折り、腹が裂けて臓物を撒き散らした。
 とどめに仰向けに倒れた少年の、脳漿を四散させた頭部を閉じかけていたドアが胴体から切り離したところで、惨劇の幕が閉じた。

224 :197 ◆2pUVpKHRfQ :2008/05/07(水) 01:16:17 ID:MfO4EXS6
「…………」
 
 この場で唯一、まともでいられたゲンヤは沈黙する。娘と少年を会わせるタイミングを誤ったがための惨劇だ。
 少年は幽霊などではなかった。血は流れるし喋り、直前まで生きていた。一晩かけて死の淵、いや死の彼方から舞い戻ってきたのだ。
 だが、彼は再び死んだ。昨日と同様、ギンガによって。
 部屋には握手を求めて差し出した手が無惨に転がり、凄惨さを際立たせていた。
 まばたきする間に形成された猟奇殺人現場の中心人物――愛野狩人と、錯乱した青い長髪の愛娘――ギンガ・ナカジマ。その二人を前にゲンヤ・ナカジマは頭を抱えた。
 
 
 
 第一話 「first & second kill から始まる二人の恋のヒストリー」 終
 
 次回  「僕を殺した責任、とって――グフォあっ!?」 
 
 人妖少年スプラッタかりと――くたばります

225 :197 ◆2pUVpKHRfQ :2008/05/07(水) 01:17:59 ID:MfO4EXS6
以上、「あやかしびと」から愛野狩人でした。
なんか今更ですがギンガの精神脆すぎですかね。

まあ、今は反省は置いといて、やっぱり最悪のファーストコンタクトから始まる恋は王道です。
この後、様々なイベントを経てギンガと狩人が絆を深めていくわけですよ。
たとえば、一緒に風呂とか。


まあ、冗談ですが。ラブストーリーなんか書けません。

というわけで一発ネタでした。

226 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 01:23:52 ID:EUKkT/c4
>>225
途中までシリアスかと思っていたのに、『愛野狩人』の名前で全部ひっくり返された。
OK。最高に笑わせてもらった。最近不足してる一発ネタを有難う。文句無しにGJ。

227 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 01:27:25 ID:NpSSsu2P
>なんか今更ですがギンガの精神脆すぎですかね。
ゲンヤが図太いだけのような希ガスw

あやかしびとの原作は知らんが禿ワラタ

228 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 01:32:13 ID:8SBVkDx8
>>225
クロス元の原作知らないけど面白かったですww

229 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 01:40:28 ID:VlsaD//N
あいつは仕方ないwwwwwけどあるシナリオだとナイスガッツを見せてくれる憎いやつwwww

230 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 02:04:43 ID:qbv+Dbck
なんというぬっぺふほふwww
一緒にお風呂に入ってもピンク色の雰囲気どころか
滑って転んで頭蓋骨爆砕、水が器官に入って溺死、風呂の温度がちょっと高めで茹死というトラウマ級の鮮赤空間がががwww

231 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 02:15:01 ID:kxRAZsZ+
くたばりますwwwwてめぇwwwwww



狩人ならしかたないな、うん!

232 :197 ◆2pUVpKHRfQ :2008/05/07(水) 02:23:48 ID:MfO4EXS6
感想ありがとうございました。楽しんでくれたようでほっとしました。
また書くことがあったらよろしくお願いします。

233 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 02:58:51 ID:H5G95BpN
そのうちギンガも慣れてしまうのかwww
「あ、またやっちゃった」

234 :y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/05/07(水) 06:14:54 ID:OryHlAU/
ここでは初めて投下させて頂きます201です
待ち時間計算に入れてなくて寝てしまいました
ではいきます




235 :y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/05/07(水) 06:17:07 ID:OryHlAU/
烈火の恋歌 

〜夢路〜




「…では」

……さらばだ

 シグナムは少しだけ最後に少しだけ微笑み、背を向けた
その背にややあってベナウィの声がかかった

「…最後に…最後に、一つだけ言わせて下さい」


 シグナムは強いて振り返らなかった、静かに語るベナウィの言葉をその背に聞きながら、だが少しずつ歩み始めていた

 ざっざっざっざ…その歩みはやがて走りだし、夜の草の野を駆け出し、そして宙に舞い上がった
満月の空に舞い浮かぶ愛する人の孤影を眩しくベナウィは見上げていた

 「ありがとう…感謝しています、私は…」

 ベナウィはむなしく口を2,3開閉させ夜空を見上げた、まだ間に合う、それは言える
だができなかった、もう、彼女には帰るべき場所と理由があり、私には守るべき国と約束があった
言葉とは…何と陳腐なものでしょう…いや、所詮私は…無骨な武人に過ぎないのでしたね…

「…かつて我が主は私に使命を
               …そして貴女は…    今また…私の生に意味を与えてくれました」

 ありが…とう…
もう一度ベナウィは呟いた




 馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿 馬鹿だ、男はみんな馬鹿ばかりだ



「はぅ…ぁっ…ぅ……うぅ……うっ…ひっ…ぐ……」

 飛びながら、シグナムの顔は泣き顔でくしゃくしゃだった、澄み渡る夜空、視界が朧に霞む
ゆるやかな民族衣装が風にはためきポロポロと涙が散って後方に飛んで行く

 一瞬シグナムは光輝き、その身を騎士甲冑に包んでいた
何かを振り切るようにシグナムはさらに速度を上げた、主の危機を救うために、その愛する世界を守る為に行かなくてはならなかった
「例え…ぁっ…っ…ぁ…でも……この身を炎に焦がそうとも……だけど…だけど…!」

 風を切り飛ぶ、言葉にならない叫びが喉から上がってくる、嗚咽を飲み込む、そして、ずっと遠くに
懐かしいリンカーコアの反応が彼女を待っているのを感じた

236 :y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/05/07(水) 06:20:04 ID:OryHlAU/
 遠ざかる小さな焔の破片が夕闇に消えて行く

ベナウィは今やただ一人、ぽつんと草原に佇んでいた

 夜風が草を撫で海鳴りのような音を鳴らした
どうにもならない事だと理解はしていた、いつかこんな日がくる事を解っていた気がする

あのシグナムに良く似た雰囲気の女性達が王都に降り立った日から
…だが取り返しの尽かない決断をしたという思いは消えない…消えようもない

 本当に今一人海原に置き去りにされた幼子のような心細さを感じて苦笑した、どうしようもない
「馬鹿ですからね…」ぽつりと言葉が漏れた「私は…」
そっと胸の子を抱き直す、男にしては長い前髪がかかり揺れた、ぼそりぼそりと呟く
 
「…かつて……我が主は地の底に沈み、そして今また…我が愛する人は天の彼方へ去りましたか…これは業…
                    私のやってきた事への報い…そういう事…なのでしょうね」

 胸の子が少しぐずり目を開けた、ベナウィは指先でそっとあやした

「…ええ…不甲斐無い話です…一人の女性すら幸せにできませんでした…アナタの父としても…大変…申し訳無く…」

 どうもそこから先の言葉が上手く続かなかった

 ベナウィは黙って小さく首を振った、その肩が小さく震えていた
不思議そうにその小さな瞳が見上げていた、赤子の頬にぽたぽたと暖かい水滴が落ちてきていた、月光の輝く夜
その父の表情はその子には逆光でよく見えなかった]










 風が明るく晴れ渡った草原を吹き抜けた
しゃがみこんでいた少女の後ろで束ねられたダークブルーの髪をなびかせた

お嬢ぉ〜…!

「ん?」

 遠くから聞こえる声に顔を上げた
引き締まった肢体は少女が女性になりかかっている事を示す柔らかな稜線で柔らかく縁取られていた
切れるような眼差しを伏せ、併せていた手を離し立ち上がったその少女はこの『亜人間』の世界にあっては
本来存在しない姿で獣の耳も尾もなかった、それは彼女の母親の形質の遺伝のせいである

ガチャリと腰のものが鳴った彼女の年齢にはまだ少しだけそぐわない大降りな異国風の長剣だ

 少女をお嬢と呼ばわった太い声の主がずんずんと草を掻き分け少女の居る開けた土の場所に近づいてきた
はぁはぁと息を継ぐその男は、中年から初老に差し掛かっただが歴戦を思わせる面構えの男だった
流石に少女の傍らに立つとようやくという感じで息を継いだ

「クロウか、おまえももう若くないのだから、だからあまり無理をするんじゃないぞ」

 腕を組み、少女は涼しい顔で応じた、そんな少年ぽい仕草ですら健康的な女性特有の屈託の無い可愛さがある

「ク…、ぜぇぜぇ…クロウかじゃないですよ、勘弁してくださいお嬢…
      …貴女の身に何かあったらオレぁ、大将とあの人になんて申し開きしたらいいか…」

237 :y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/05/07(水) 06:21:58 ID:OryHlAU/
「父上と、…母上か」


少女は足元の二つの小さな墓標に目を落とし、次いで暫時空を見上げた、青いそらに雲が流れていた

「………」

「…お嬢?」

呼ばれた少女は母親譲りの青い瞳で同じ色の空を見つめしばらく無言だった

「クロウ…私の母上はな…生きているのだ…」

「…お嬢?…それは…」

「生きているのだ…この空の向こうで」

視線を落とし二組の石組みを見つめた


 小さい時から物静かで優しい眼差しの父の膝で、その背に負ぶわされ聞かされた
お前の母上は…ウィツァルネミテア、オンヴィタイカヤン…あるいはこの父も知らぬ…
 …神々の世界から来た天女だったのですよ…と

(残念ながら父はその天女に見限られ、逃げられてしまいましたがね)
脳裏でそう話す父はいつも寂しそうに苦笑していた

 すらりと腰の長剣を抜き放った
真昼の強い日差しを眩しく跳ね返したその少女の握る剣はクロウには一瞬光の塊、いや陽炎のように焔が上がったように見えた

「………」

少女は未だ見ぬ母が残してくれたただ一つの絆を空にかざした、目を閉じる


「…母上はこの世か…あるいは違う世か…だが未だに、確かに居るのだ、…私には解る、お前も…
  きっといつか会えるのだと、そうだ、…そうだろう…レヴァンティン?」

 静かに愛剣に語りかけた、その柄には『かあとりっじ』とよばれる物が仕込まれている
今はオンカミヤリュー族の法術によって軌跡の力を擬似再現してあった


「…お嬢」

ふいに少女の口元が小さく微笑んだ

「…だからその為にも、この世かあの世か、いずれかは知らぬがな…
        どこかに居る我が母上に…お知らせして差し上げねばならん点我が名を…
              そして父の事を…あの人がどんなに母上の事を思っていたのかをな…」

 まったく父上も母上も…
その口元が小さく呟いた 本当に不器用な人達だったな… 

くるりと振り向いた              


「…ではいくぞクロウ、出陣だ!」




238 :y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/05/07(水) 06:27:13 ID:OryHlAU/
 少女は軽く笑い、レヴァンティンを腰に収めると勢い良く草原へ駆け出して行った

国境近くに野党が群れを成し暴れているとの報告が王都に上がってきていた
(わが名を天下に広める手始めには調度いいではないか)
クロウにはそんな言葉が駆け行く背中から聞こえて来そうだった

「ちょ、ちょ、お、お嬢!」

 クロウは一瞬立ち尽くしていた、そこにあの炎を纏ったようなあの女性が舞い戻ったかのように錯覚した
駆けて行くその姿、クロウの脳裏に

 かつてあの人がこの地に降り立ったあの日の事
不思議な技を使い、ベナウィ達の留守で手薄だったのをこれ幸いにトゥスクル周辺部の村々を荒し回った野盗を瞬く間に打ち倒して追い払ってしまった
あの人の事を、あれから、そしてようやく駆けつけたベナウィ達と出会い、そして…それから…

「うぉ、いけね!」

 ハッとしたクロウは駆け出すその姿の後を追い慌てて草むらを書き分け追いかけて行った

 随分と時が流れた、彼の永遠の将、侍大将のベナウィがこの世を去ってから
すでに10年の月日が流れていた、当時5つをようやく数えた幼子はクロウの手に託されていた
本当の子供以上にその子はクロウの宝となった、今見違えるほど成長して今老いが近づきつつある彼の前を疾っていた
「…どうこう言いつつ親子だよなぁ…」
ぼりぼりと頭を掻いた


「おそいぞクロウー」

笑い声が遠く駆けて草原に消えて行った






べるかの剣士、炎の剣士


エヴェンクルガ族と並び、そんな不思議な異国風の不思議な響きの女剣士の名が
人々の口の端に昇るようになったのは



ほんの少し、後の事であった





239 :y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/05/07(水) 06:30:45 ID:OryHlAU/
 前々からクロス書きたかったネタですが
まともに書くと長くなってしまうのでこんな形に、夢想歌いい曲ですね
これ書いてる時は夢路聞いてましたが では失礼しました、

240 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 13:07:42 ID:mFK5pC7Y
遅くなりましたが、
DOD氏に197氏、投下乙&GJ!
>DOD氏
ピポスバルの愛らしさは異常w蛇の人はそろそろでしょうか。

>197氏
双七と狩人の初遭遇を思い出しましたw
加害者ギンガと被害者狩人の温度差がすげぇw

241 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 13:35:22 ID:Y8F1KI6/
>>239
ちょwwww貴方はwwwww
なのは系スレでお見かけしたことがwww

242 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 15:52:46 ID:9HpVNU6x
>>239
ちょwwwwあんたwwwww
エロパロの常連さんではないかwwwww
あっちで、いつも楽しみにしてますよ〜。

243 :魔法少女リリカルなのはMissing:2008/05/07(水) 18:40:43 ID:KqKAkMjE
十九時からなのはMissing三話を投下します。

244 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 18:57:41 ID:GOPHcjsS
支援

245 :魔法少女リリカルなのはMissing:2008/05/07(水) 18:59:30 ID:KqKAkMjE
魔法少女リリカルなのはMissing

第三話 前編

 早朝。
機動六課隊長室で、はやてとシャマルの二人が話していた。

「わかったことはこれで全部?」
「はい、個人で調べられる限りでは、これが限界ですよ」
「うん、ありがとうな」

椅子に座ってはやてが目を通している書類は、第97管理外世界の、ある地域における行方不明者及び事故被害者のリストと、ある組織の捜査資料だった。

「これは…歴然やな」

羽間市という名前のその場所のそれは、つい最近まで他の地域と比べて明らかそういう人間が多かった。
引っ越したことになっていたり、数ヶ月あるいは数年の時間差で、一つの事件に関わった者が交通事故に遭ったりと、かなり巧妙に情報操作・隠蔽がされているが、ほんの少し突ついただけでボロボロと真実が出てきた。
おそらくあまりにも事件≠フ数が多過ぎて、その全てに手を回し切れなかったのだろう。

「村神さんの話、信じてなかった訳じゃないけど、これほどとは思わなかったな」
「私もです。いえ、私はあまり信じてませんでしたけど」

驚いたような感心したような口調で言うはやてに、シャマルは苦笑しながら言った。
 はやてには肩を竦めた。

「普通は心霊体験語られても信じんしな。でもこれを見れば…」
「信じざるを得ませんね…」

シャマルが答える。

『村神俊也:某月某日から行方不明。
聖創学院大付属高校における事件の重要参考人として、空目恭一と共に捜索中』

 はやてが眺めている機関≠フ書類の中には、村神俊也の名前がはっきりと記されていた。


246 :魔法少女リリカルなのはMissing:2008/05/07(水) 19:00:50 ID:KqKAkMjE

『木戸野亜紀:監視対象』
『近藤武巳:監視対象』
『日下部稜子:監視対象』

 説明の途中、俊也が僅かに気にしている素振りを見せた彼の仲間達も、簡潔に書かれている。

『十叶詠子:当事件の主犯と思われる。
頸部の傷による失血死。
遺体は回収済み』
「まぁ、これでもう俊也君について調べることはないな。しかし短い間によう調べてくれたなぁ。今日からシャマルにはジョバンニの称号を与えるわ」

机に書類を置きつつ、はやてはそんなことを言った。

「いりませんあんな雑用係」
 不服そうに返す。
「でもそうですね、上を誤魔化せる時期まではいてもらって、後のことは自分で決めてもらえれば安心ですし。あ、ところで…」
思い出したように、シャマルがそんなことを言った。
はやては首を傾げた。

「何や?」
「話は変わりますけど、はやてちゃん知ってます? 最近起きてる行方不明事件のこと」
「行方不明事件?」
「はい、何だか最近、管理局の局員が急にいなくなるんですよ」

答えつつシャマルは、懐から別の書類を取り出した。
 それはさっきの書類の数倍の厚さがあった。
 それを見て、はやては思う。

(…ところでっていうか、始めからこっちの話メインにしようとしてたんとちゃうか…?)

 そしてこの仕事の早さは、確かにジョバンニと呼ばれて然るべきものだろう。
 しつこくそう思いつつ、その書類を受け取る。

「これは…」

そこにはこの二、三週間で姿の見えなくなったらしい局員について書かれていた。
 その数、

「五十三人…! 何やこれ!?」

あまりに予想外な数字に、はやては思わず叫んでいた。
どう考えてもおかしかった。一つの組織内でこれほどの人数が失踪するなどあり得ない。

「ふらっと姿が見えなくなり、そしてそのまま行方不明。どんな組織でも、この短期間にこれだけの活動を行うのはほぼ不可能です」

驚愕するはやてに、シャマルはそう断言した。


247 :魔法少女リリカルなのはMissing:2008/05/07(水) 19:01:50 ID:KqKAkMjE

「発生時期が村神さんと被っているだけに、ちょっと考えてしまいますよね」

 あまりにもドンピシャ過ぎるタイミングで起きたこの事件、人間には不可能となると、未知のレアスキルかロストロギア、あるいは…、

「…怪異=c…?」

呟いたはやての声が、静かに隊長室に響いた。
 それと同時に、隊長室のドアが勢いよく開け放たれた。

「っ!?」



機動六課隊舎内隊員寮にて。
 ティアナ・ランスターが彼を見つけるのと、隣を歩いていた少女が声をかけたのは、殆ど同時だった。

「村神さーん」

廊下を歩いていた村神俊也は、朝からやけに元気のいい声に呼び止められ、振り返った。
声の主は自分と長らくコンビを組んでいる青い髪の少女、スバル・ナカジマである。

「おはようごさいます!」
「…どうも」
「…ああ」

自分達の挨拶に、軽く手を挙げて答える。別に気取ってるとかではなく、彼も眠いので面倒なだけだろう。

「俊也さんも今から訓練ですか?」

スバルが俊也の隣を歩きながら聞いた。

「ああ、そんなとこだ。お前らと違ってその辺を走り回るだけだけどな」

 退屈そうな雰囲気を隠そうともせず、俊也はそれに答えた。

(…眠いならこんなに早く起きなくてもいいのに…)

 目を擦りながらティアナはそう思ったが、別に彼女が気にすることではないので黙っていた。


248 :魔法少女リリカルなのはMissing:2008/05/07(水) 19:02:47 ID:KqKAkMjE
自分達と数日遅れで六課に来た俊也は、何か訳ありの次元漂流者らしい。
 最初の内こそ興味からスバル達の訓練を眺めていたが、すぐに飽きてしまったらしく、この一週間程は他の職員の雑用を手伝ったり、自主トレをしたりしてを過ごしていた。

「…前から思ってたんですけど、村神さんはどんな格闘技を習ってたんですか?」

何度か見た、筋トレやランニングをしている姿を思い出して、ティアナはそんなことを聞いてみた。

「魔力はないんでしたよね?」

 見た感じ質量兵器…拳銃を振り回す人間には思えなかったが、銃使いでなくとも、素手で戦うなら魔力の少ない自分の参考になるかも、と思っての質問だった。
 …もっとも、自分が肉弾戦を行うのは、相当追い詰められている場合だろうが。

「…ああ、そういやはやてがそんなこと言ってたな」

言いながら、俊也は懐かしむような表情をした。

(……?)
 ティアナは何となく、その表情に違和感を覚えた。が、一体何にそれを感じたのかは分からなかった。

「どうだっけな。空手の師範ではあったが、やってたことと言えば、倒れるまでひたすら殴りあう、ってやつばっかだった気がするな」

そんなティアナの様子には気付かずに、俊也は答える。

「ま、受けた方の身から感想を言わせてもらえれば、あれは稽古というよりも、喧嘩か、さもなきゃ殺し合いの仕方だな」

 どうでも良さそうに、それでいて聞き捨てならないこと、俊也は言った。

(…この人、殺し合いを経験したことがある…?)

 俊也の答えに、一瞬そんな考えが浮かんだが、すぐに振り払う。考えるのも失礼なことだ。 どこの次元世界だろうと、人殺しは速やかに社会から隔絶される。それにそんな人間を、あの人の良さそうな部隊長がここに置くとは思えなかった。
 実際のところは、はやて達がその事実を知らないだけなのだが…。

「何か、聞いてるだけだとすごくハードそうな稽古ですね」

 思考を切り替える為にも、ティアナはそう会話を続けた。

「い、痛そうです」

 こっちは純粋な感想だろう、スバルが少し引きながら言った。


249 :魔法少女リリカルなのはMissing:2008/05/07(水) 19:03:28 ID:KqKAkMjE

「ハードとか痛そうとか、お前らの訓練の方がそう思うけどな」

 そんな自分達に、俊也はそう漏らす。
 思わず頷きそうになるが、何とか堪える。肯定するのはここにはいない上司に失礼である。スバルは即座に頷いているが、それはともかくだ。
 と、その時、

「スバルさん、ティアナさん、村神さん、おはようございます」
「ございます」

前方から二人の声がした。
 玄関ロビーで赤毛の少年と桃色の髪の少女が手を振っていた。
エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエである。

「急がないと時間に遅れちゃいますよー?」

 言われてハッと気付く。
 話しながらのんびり歩いている内に、ずいぶん時間が経っていたようだ。

「あ、うん! じゃあ俊也さん、私達は…」
「おう、精々頑張れ」
「はい、失礼します! ティア急ご?」
「わ、わかった。失礼します」

俊也に軽く会釈して、ティアナはスバルと共に、小走りで二人のところに向かっていった。



やがて四人の姿が見えなくなってから、俊也は肩を竦めた。

(何やってんだろうな、俺)

機関≠フ追跡を逃れるという意味では、この場所はかなり好都合だった。
どこまでかは知らないが、第三者からは電波としか思えないだろう自分の話を信じてくれたはやてには、どれだけ感謝してもし足りないと思っている。
 自分のことを根掘り葉掘り聞いて来ないここの人間にも、好感を持っている。
しかしだからこそ、何も感じずにスバル達と話すことは難しかった。
 俊也は人を殺している。
それも自分と同世代の、つまりはやてやスバルと年の近い少女達をだ。
水内範子。
大木奈々美。
赤木友。
そして、十叶詠子。
間接的あるいは直接的に、事故あるいは意図に、これだけの人を殺しているのだ。


250 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 19:03:38 ID:6iyp2VIr
魔王陛下支援

251 :魔法少女リリカルなのはMissing:2008/05/07(水) 19:04:20 ID:KqKAkMjE
 後悔している訳でも、罪悪感を感じている訳でもない。
 そんなものはとうに吹っ切っているし、それに最後はそんなことを気にする必要もない相手だった。
それでも、スバル達と話していると思ってしまう。
自分はこんな平和に過ごしていていいのだろうか、と。
全ての物語が終わったのなら、自分も空目達のように消えてしまうのが正しいのではないか、と。

(…戯れ言だよな…)

考えながら、俊也は鼻を鳴らす。
要するに自分は、倒すべき敵≠ェいなくて、自分をもて余しているのだろう。
 狂った自分の身の置き場が分からずに、戸惑っているのだろう。
 一年もない間にあれだけのことがあり、そしてあっさりと全てが終わってしまい、拍子抜けしているのだ。

「ま、考えるだけ無駄か」

呟きつつ、俊也は外に出る。
考えるのは苦手だし、してもいい結果にならないことは経験済みだ。
問題が起きたら、その時対処すればいい。
そう考えを纏めて、ランニングを始めようとした時、
 枯れ草に少しの鉄錆を含ませたような空気の香りが、した。

「っ!?」

気付いた瞬間、俊也は全力で駆け出し、その香りの根元を探していた。


252 :魔法少女リリカルなのはMissing:2008/05/07(水) 19:05:10 ID:KqKAkMjE

(寮の方じゃない…? しかし何故俺にこの香りが識別出来る? いやそれよりも…!)

何故、ここで、この香りを感じるのか?
考えながら、それでも俊也は足を止めなかった。
とにかく嫌な予感がした。あれほど待ち望んでいた異界≠ニの接触だが、この香りだけは別だった。

(香りの元はまだ先…どこの部屋だ!?)

感じる香りは希薄で、正確に辿るのは難しかった。殆ど勘に頼る形で走り、

(ここか!)

着いた場所のドアを蹴破るように開ける。
広めの一室、机が二つ、人が二人、綺麗に磨かれた窓ガラス。
 そして、

「む、村神さん?」
「どうしたんですか?」

その窓から生える、人の手のような白い塊!

「そこどけ!」

俊也は怒鳴り、ソレに向かって走った。
視線を辿り、目をやったシャマルが、そしてはやてが動きを止めた。

「なっ!?」
「何やこれ!?」

その白い手≠ヘ、振り返ったはやての腕を掴んでいた。
 死人のようなその手≠フ感触に、はやては背筋まで凍らされた。


253 :魔法少女リリカルなのはMissing:2008/05/07(水) 19:05:54 ID:KqKAkMjE

「っ!?」
「はやてちゃん!」

シャマルが手を掲げ、バインドが手≠ノかけられ、拘束する。
しかしそんなことは関係なかった。
ゴムのように伸縮した手≠ヘ強引に動き、あろうことか空間に固定しているはずのバインドごとはやてを窓に引き寄せる。

「ひっ!?」
「はやてちゃん!?」

抵抗を許さない力で掴まれ、はやてが小さく悲鳴を上げたその時、

「ふぅっ!」

 ガシャァァン、と。
隊長机を飛び越えて放たれた俊也の蹴りが、窓ガラスを叩き割っていた。
それで、終わった。
はやての腕を掴んでいた手≠ヘスルスルと、鋭利な切断面を残して床に落ちた。

「……あ」
「はやてちゃん大丈夫ですか!?」

その場に崩れ落ちたはやてに、シャマルが駆け寄る。
横目でそれを見ながら、俊也は床の手≠ノ意識を向けた。

「む、村神さん…」

はやてもそれを見て、青ざめながらも言った。

「これが…怪異=c…?」

それに対して、俊也は嘆息しながら答えた。

「…できそこない≠セ」

続く。

254 :魔法少女リリカルなのはMissing:2008/05/07(水) 19:08:26 ID:KqKAkMjE
投下完了です。
ついさっき気付いたんだけど、リィンは何をしてるんだろうね。主の危機に。
朝だから寝てるのかな?

……ごめん、忘れてた。


255 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 19:17:40 ID:4ubef8Wr
投下乙〜
さすがは人狼、“敵”を察知する嗅覚は抜群だな。

256 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 19:18:25 ID:GOPHcjsS
GJ!でした。
管理局員の失踪ですか。面白くなってきましたね。
敵の正体がよく分らないのは不気味です。

257 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 20:07:26 ID:+m/O80Oi
GJです!
このホラー……もといメルヘンな展開に機動六課の面々が耐えられるか心配かな。
そして窓硝子の代金は村上持ち……?

258 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/05/07(水) 20:14:51 ID:ck0YhFcW
「感染」がどこまで広まっているのか心配だな。
ひょっとしてはやてたちは俊也から話を聞いたことで「感染」したのか?
でも俊也も「感染」の原因となるような話はしないはずだし……

259 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 21:20:47 ID:m3yTxsD1
GJ!
そして指紋がいなくなった局員と一致する
おr
アダムスファミリー

260 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/07(水) 22:29:32 ID:azRHvTEF
投下OKでしょうかー?
以前書いたギアスクロスの続きですー。

261 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 22:32:17 ID:PDgt26Yx
支援しますよー。

262 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/07(水) 22:35:17 ID:azRHvTEF
はっきりいって、あんちゃん、ビスケットヴァイスに勝てる気がしねえorz


コードギアス 不屈のスザク 「射手」

西暦2010年八月十日。
日本は、亡国となった――『時空管理局』――盟主国ブリタニアを中心とする次元世界管理機構の前に、東洋の島国は屈し、自由と伝統、誇りを奪われた。
新たな日本の名は、「エリア11」――支配と隷属の、証だった。
地球の戦争の概念を覆す新たな兵器群――<魔導砲>、<アルカンシェル>、<次元航行艦>。
そして、人でありながら万能の魔導の業を用いる者――<魔導師>。
これらの存在は世界を震撼させ、時空管理局による日本統治――異例の未確認世界による地球の領土統治には、暗黙の了解が取り付けられた。
日本侵攻から七年――物語は、動き始める。
歯車は、音をたて。
いざ、廻り始める―――。


 蒼穹。
雲一つ無い青空を眺めながら、オレンジ色の制服――時空管理局のものだ――を着込んだ少年が、軍のトレーラーの上に立っていた。
地上との距離、約6メートル。ちょっとした建物ほどの高さがある巨大トレーラーの上で、少年は物怖じもせずに、佇んでいた。
栗色のくせっ毛を短くまとめ、幼さを残した顔を持つ少年は、ただぽけーっと空を眺めている。
碧色の瞳には、何が映っているのか――誰にもわからない。
そのくせ、何故だかその双眸はひどく悲しそうだ。
少年が、トレーラーの上から立ち去ろうと踵を返したところで、一人の女性がトレーラーに駆け寄って来た。
まだ若い。二十代前半といったところだろうか。オレンジ色の制服に身を包んでおり、青い髪を揺らしている。

「スザク君! そんなところにいたのー? ロイドさんが呼んで―――ってきゃっ?!」
「セシルさん!!」

一瞬。
躓きそうになった女性。足元の段差に転びそうになったらしい――を支えるべく、少年は跳躍。
着地し、大急ぎで駆け寄り、倒れこみかけた女性――セシルの肩を、身体で支えた。

「大丈夫ですか? 怪我は?」
「う、うん……大丈夫。それより、スザク君。ロイドさんがZ−01のことで話があるって」


263 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 22:36:27 ID:PDgt26Yx
支援

264 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 22:36:56 ID:NM75WZZl
スザク=ワイアードですね。分かります。支援

265 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 22:37:08 ID:DKGmAQ2u
うざくないスザク支援。

266 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/07(水) 22:37:21 ID:azRHvTEF
少年――スザク、驚愕に見開かれる目。

「Z−01で、ですか? あのデバイスは、確か―――」
セシル――如何にも納得がいった、という顔。
嬉しそうに顔をほころばせながら、童女のようないい笑みを浮かべる。

「そう、デヴァイサーがいなかったの。でも、適合率で考えると多分――」

台詞を途中でとぎらせ、悪戯っぽく微笑みながら、セシルが続けた。

「――スザク君で決まり、かな。今夜はご馳走のオスシを……」
スザクがうっ、と呻き、若干後ずさり顔を強張らせた。無理も無い。セシルの言う「オスシ」は、スザクの知る日本の伝統食、寿司とは似て非なる何かである。
ご飯は酢飯だ――だが、具がすごい。
通常なら、新鮮な魚介類や海苔、錦糸卵などをのせるのがセオリーだろう。
だが、彼女の色々と誤ってる日本知識にかかると、途端に不気味な食べ物と化すのだ。
色とりどりのフルーツ――まるで悪夢。南国の劇甘なものまで使われた、ある意味豪華な代物だった。
どう考えても、寿司にフルーツはない。これ以上ないほどのミスチョイス――だが、枢木スザクは頑張った。
上司であるロイド伯爵や特別派遣嚮導技術部の面子が遠慮――というより退避して食らうのを憚る中、ただ一人彼は頑張り、完食したのだ。
これが、特別派遣嚮導技術部――特派に伝わる、<祝日の悪夢>である。

「とにかく――オスシはまたの機会に!」

セシル――小首をかしげて、一言。
「あら? スザク君オスシ嫌いだった?」

この後、スザクがセシルへの日本文化説明に、十分の時を費やしたのは言うまでもない。

267 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/07(水) 22:38:33 ID:azRHvTEF
 銃声。銃声。銃声。
鳴り止むことを知らない雷鳴の様な音が、遠方で響き鼓膜を叩き続ける。
今日も、廃棄都市区画はテロリストの跳梁跋扈する戦場だ――飛び交う質量兵器。
中国やロシア、はたまたアメリカの支援で送り込まれる大量の銃器は、反管理局の思想を持つ日本人――今はイレブンと呼ばれる――の間で氾濫し、
日本を侵略した次元世界群の中心、盟主国ブリタニアへの抵抗運動に使用され続けていた。
彼らのフレーズはこうだ――『ブリタニアの鬼畜野郎を追い出せ』『日本人に自由と誇りを』『立ち上がれ、日本人よ』――。
(冗談じゃねえ)
迷彩魔法――プログラミングされた光学迷彩の一種が展開される空間の中で、茶髪の少年――ヴァイスは溜息をついた。
もう一度心の中で毒づく。しかめっ面になり、溜息をはく回数も自然、多くなる。
(餓鬼に武器持たせて戦わせてる連中が、鬼畜呼ばわりとはまた、嫌な御時勢だ)
蜂の巣のように弾痕がはしり続ける、殺風景なコンクリートジャングルを、相棒の観測手が遠視用のゴーグルで見回しながら敵を探す。
崩れたビルディングの残骸が、四車線の道路を塞ぎ、アスファルトを破砕しひび割れを辺り一面に広めていた――廃ビルの屋上からでもわかる無残な光景。
ふと、目に入る光景――血のような赤の塗料で書かれた宣言――『日本解放!! 父の、母の仇をとれ』
泣き叫ぶ子供のヴィジョン――振り払う――払い切れない木霊する悪夢の声。

――何が悲しい?

『父さんが殺されたんだ――悪い奴らに』

――誰に? どうして?

『しぐなむ、って人に、邪魔をしたから。父さんは良いことをしたのに』

――じゃあ、どうするんだ?

『僕が、悪い奴らをやっつけるんだ! そのしぐなむってやつも』

――それで、仇はとれたのか?


「……うるせえ。黙れよ」
悪夢の声――フラッシュバックに向けて呟きながら、ストムレイダーを待機状態から狙撃形態へ。
観測手――怪訝な顔。

「どうかしたか?」
「いや、独り言だよ。なんでもない」

良いことを聞いたという笑み――癪な台詞。

「へっ。そんなことじゃ彼女できないぜ、ヴァイス」
「ほっとけ阿呆」

悪態をつきつつ、部隊の仲間に念話を送る。

(そろそろ予定時刻だ)
返答。短く、あっさりと。

(そっちにバギーを一匹追い込んだ。もうすぐ袋の鼠だ。頼んだぜ?<射手>)
(任せとけよ――戦友。グッドラック)

幸運を祈る言葉――何故だか言いたくなった。

(ああ、お前もな)
念話を切る。


268 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 22:39:16 ID:NM75WZZl
OSUSIはロスカラ主人公を殺しかけた劇物支援

269 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 22:39:47 ID:PDgt26Yx
支援

270 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/07(水) 22:41:39 ID:azRHvTEF
「来たぜ」
「ああ」
相棒――父から受け継いだ狙撃銃型デバイス、<ストームレイダー>を構えた。
銃身がぴたりと固定され、ぶれることなくエンジン音がした方向を向く――コンマ数秒の動作。
スコープを覗き込む――それだけで落ち着く。都市迷彩の施された灰色の戦闘服――ヴァイスが防護服を展開できないがゆえの装備――の下の引き締まった身体が、
緊張に少しばかり固まる。
だが、あの優しい父と同じ仕事をしているのだという安心感が、身体を満たし。
不思議と、高揚感の代わりに安心感と氷のような冷静さが戻り、戦士のモノへとその肉体を変える。
走りこんでくる一両のバギー、軽四輪駆動車。
男――運転席で必死の形相でハンドルを切る。
女――自動小銃を構え、後方を見る――額から流血。
男――右腕が無い。左足が無い。
流血。おびただしい量の出血――助からないと一目でわかる。
ショック症状。
死にかけの案山子といった風情。

眉一つ動かさずに、ヴァイスは引き金を優しく引き絞った。
魔力集束――生成される<無色の弾丸>。対物用超高密度魔力素。
魔導師としては欠陥品のヴァイスの、唯一無二の技能――不可視の弾頭。如何なる防御も食い破る、怪物の顎(あぎと)。
それが、<ストームレイダー>の銃身で加速され、撃ち出される――音速を容易く超える集束魔力の弾頭。
発砲音も無く着弾。
バギーのエンジン部が膨れ上がり飴の如く融け、ポップコーンのように爆ぜた。
タイヤが破裂し辺りに散らばって、燃え盛る地獄に、男女三人が投げ出されのたうち廻る。
いや。
一人は炎の海で焼け死ぬ――負傷者だった男。呻き声一つ無し――投げ出された際に死亡。
女――自動小銃を無茶苦茶に撃ちまくる。
吐き出される5.56ミリ弾――あっという間に撃ち尽くす。
対人用魔力集束開始。<ストームレイダー>の引き金が絞られ、発射。
着弾。
びくりと揺れる身体――痙攣。
胸に赤い染みが浮き、動かなくなる身体。
殺。

最後に残った男――丸腰。金魚のように口を動かす――パクパクと。
撃つ。
殺。
ゆっくりと迷彩空間の中で息をはく――唐突な問いかけ。
観測手からのものだ。

「なあ……」
「ん? なんだ」
息を吸い込む――息をはく、話す。
「あのイレブン最後になんて言ってたんだ? わかるか?」
「さあな……神様に命乞いをしたんじゃないか」
観測手――そんなもんか、と一言。
興味を無くし、撤収準備にかかる――迷彩を解除。空士部隊と合流予定のポイントまで移動する。
小走りで階段を駆け下りながら、ヴァイスは男の最期の言葉を思い出していた――読唇術。

『日本人に……栄光あれ……」

最期の願い。
わかってたまるか、と心中で呟き、ヴァイスは狙撃地点をあとにした。
父の最期の願いは、なんだったのだろう、と思いながら。


そして――その日、ロストロギア<ジュエルシード>とスザクは遭遇することとなる。
今ここに。
役者は揃い、廻るは馬鹿げた機械仕掛けの大舞台。
白騎士と狙撃手、エリア11の少年と管理世界の少年、魔女と皇子が出会うとき、世界が変わる―――。

271 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 22:42:45 ID:NM75WZZl
ジャッカルを呼ぶんだ!支援

272 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 22:42:59 ID:PDgt26Yx
支援

273 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/07(水) 22:45:39 ID:azRHvTEF
投下完了。
スザクはウザクじゃない、と堅く私は信じています――ワイアードかどうかはさておき。
ギアスユーザーとゼロ様は出すかもー、です。

次回予告
レイハさんを手にいれるスザク、そして脱ぐ人がギアスユーザーに?!

最後に、支援ありがとうございました。



274 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 22:50:37 ID:NM75WZZl
GJ!
早くもヴァイスの活躍ですね。ああ…日本人、なんて戦力差。
て、スザクがレイハを!?やはり魔導師姿は反攻スザクのランスロット仮面なのだろうか!?
ギアスユーザーならマオははやりマオたんのほうを(ry

275 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 23:15:02 ID:9+NV7lfd
GJ!
ロストカラーズのお寿司イベントは強烈でしたwwアレ全部食ったのかスザクはwww
主人公はいいオリキャラだったな。
それにしてもこの管理局は殺る気満々だぜ!
支援の鬼ユーノとスザクが組むとはかなりの戦力アップだ。

276 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 00:21:44 ID:IOjvpmWZ
ミッドチルダにイーデンホールが出来る妄想が浮かんだがカクテルと話を考えるのがめんどい

277 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 00:33:16 ID:WMqJWac9
>>276
まぁ、六課の隊員は未成年が多いけどなwww
ミッドの法律がどうなってるかは知らんけど

278 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 00:34:26 ID:8zRL2c4N
>>276 ギンガにギムレット飲ませりゃよかろうに。
レシピはもちろんジンとローズ社のライムジュースを半々でな。

279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 09:25:25 ID:oa/YhEio
書き上げちまったものは仕方ない。
クロスオーバーの第一話、9:30から投下します。

280 :魔法少女リリカルなのはTES ◆O4WHtYg2/w :2008/05/08(木) 09:30:14 ID:oa/YhEio
 ―――――私は勇者なんかじゃない。
 偶然に世界の命運なんてのを託された、運が悪いだけの一般人さ。
 私に任された仕事は、本当は私以上に適任の奴がいるはずなんだ。
 例えば伝説の英雄とか、聖なる騎士とか、本当の勇者とか、な。
 だが運の悪いことにそいつは現れない。
 もしかしたら、はじめっからそんな奴はいないのかもしれない。
 だから勇者のふりをするのさ。
 強くもないのに、強がりながら。



 空が燃えていた。
 大地は裂け、炎が荒れ狂い、街を呑み込んでいく。
 通りを駆け抜けるのは名状しがたい異形ども。
 禍々しい鎧兜を纏った戦士達や、冒涜的な姿の怪物たち。
 誰の眼にも明らかだ。
 かねてより警告されていた通り『門』が開いたのだ。
 そして彼らは『門』を通って、地の底より這い出た存在。
 ――極めて古典的な名前で呼ぶならば、

 『悪魔』

 そう形容されて然るべきものであった。

 多くの住民が家に閉じ篭って全てが終わるのを待ち、
 或いは逃げるのに間に合わず、悪魔どもに無残にも殺されていく。

 そんな中、ただ一つの目的を持って駆け抜けていく者がいた。
 男だ。男が二人。
 1人は様々な苦脳を秘めた厳しい面構えの、平凡な男。
 身につけた衣服は僧侶か何かを思わせる、装飾の少ないそれだ。
 目前に立ちはだかるのは、つい先ほどまで市民を貪り食っていた怪物ども。
 その数は1匹や2匹ではない。あまりにも多すぎる。

「ダメだ、此方の道は奴らが多い! 回り道を――」

「そんな時間があるものか! マーティン、私が切り開く!」

 その男――マーティンと呼ばれた男の脇を、一陣の風が擦り抜ける。
 身を低くして一瞬にして通りを走り抜けたのは、まるで影のような男だった。
 黒い鎖帷子を纏い、頭をすっぽりと外套で覆った彼は、手にした武器を振り抜く。
 片刃の長剣――遥かな東方から伝来したと言われる、切れ味の鋭い代物である。
 皇帝直属の親衛隊のみが携帯を許されるそれを持っているという事は、この影は親衛隊なのだろうか。
 そう思う者がいるならば、あえて言おう。答えは断じて否だ。
 護ることよりも殺すことに長けた剣、とでも呼ぶべきか。
 およそ真っ当な剣術ではない。どれほどの敵を斬れば、このようになるのだろうか。
 断じて、親衛隊などという組織に所属する者の剣技ではない。
 凄まじい速さで縦横無尽に振るわれた刃が、次々に怪物どもの命を刈り取った。
 彼らは男の攻撃を受けるまで、その存在に気付くことすら無かったのだろう。
 あまりにも呆気なくバタバタと斃れ、屍を晒した。

 だが、それで終わりではない。
 終わりの筈がなかった。

281 :魔法少女リリカルなのはTES ◆O4WHtYg2/w :2008/05/08(木) 09:30:53 ID:oa/YhEio
 騒ぎを聞きつけた鎧武者達が、具足を鳴らして迫り来る。
 その数は遠目に見ただけでも――あまりにも膨大だ。
 男は躊躇しない。
 マーティンを背に庇い、悪鬼どもを睨みつけ、叫ぶ。

「行け、マーティン! ここは私に任せて、お前はアミュレットを神殿へッ!」

「しかし……ッ!」

「馬鹿者ッ! お前が死ねば其処で終わりだが、お前が神殿につけば此方の勝ちだ!
 何も奴らを殲滅するわけではない。『門』が閉じるまでの間だ。
 お前の鈍足でも、どうせ五分かそこらだろう。安心しろ。その程度ならば防ぎきってみせる」

 マーティンの顔に迷いが浮かんだのは明らかだった。
 それなりに長い付き合いだ。この人物の心根の優しさは、よく知っている。
 だが、彼は影のような男を見やり、そして押し寄せてくる悪魔どもを見やり、
 その全てに背を向けた。

「…………感謝する。アルゴニアンよ。君は、良き友だった」

「ああ。そうとも、マーティン」

「……」

「お前は良い友だった」

 会話はそれで終わった。マーティンは走り去り、影は残る。
 そうして影は外套の内側で薄く笑うと、それを跳ね除けた。
 露になったのは人の頭ではない。似ても似つかぬ蜥蜴の其れだ。
 アルゴニアン――辺境に多くが暮らし、帝国人から忌み嫌われる種族。
 遥か昔には奴隷として使役された事もあるアルゴニアンだったが、
 それでも尚、彼は人々が好きだった。
 何よりも、あのマーティンという男は気に入っていた。
 躊躇わずに命を賭け、こんな場所にまで付き合うほどには、だが。

 刃を構える。
 なぁに、不可能な事ではない。難しいことでもない。
 このくらいの窮地ならば、過去に幾度となく乗り越えてきた。

「さあ来いデイドラどもッ! 生きてれば一度は死ぬものだッ!!」

 アルゴニアンの挑発に対し、悪魔――デイドラの軍勢が雄たけびを上げた。
 そして幾度と無く彼らの野望を打ち砕き、今この戦いに終止符を打とうとする男を滅ぼすため、
 幾百ものデイドラがこの路地へ押し寄せ、そして――




 ――――世界を光が包み込んだ。


282 :魔法少女リリカルなのはTES ◆O4WHtYg2/w :2008/05/08(木) 09:31:24 ID:oa/YhEio
 ――五年後。



 新暦68年 某月某日
 日本 海鳴と呼ばれる土地。

 深夜。時計の短針が十二を通り過ぎ、一を示す頃合。
 喫茶店『翠屋』には多くの人物が集まり、そして眠っていた。
 ある者はカウンターに突っ伏すようにして、
 ある者はテーブルの下で丸くなり、
 ある者は大きな犬にしがみついて。
 
 『高町なのは復帰記念パーティ』

 ようやく復帰した少女――彼らの大事な存在の帰還を祝うため、
 殆ど朝から晩まで騒いだ結果が、これである。
 
「もう、みんな酷いなぁ……。好き勝手に騒いで、勝手に寝ちゃうんだもん」

「仕方ないよ、なのは。それだけ皆、なのはが帰ってくるのを待ってたんだから……」

「うん、それは……わかってるんだけど、ね」

 今起きているのは、この二人。
 主賓である高町なのは。
 そして彼女の一番の親友であるフェイト・テスタロッサ・ハラウオン。
 悪戯っぽく笑いあいながら、幸せそうに眠りこけている仲間達を見やる。
 本当に幸せだ。
 自分達には家族がいて、友達がいて、仲間がいて。
 こうして何かにつけて祝って、騒いでくれる。

 だが、それもしばらくは見納めだ。

「なのは、その――」

「もぅ、心配性だなあフェイトちゃんは! クロノ君もだけど……。
 ひょっとして、お兄ちゃんに似た、とか?」

「なのはぁっ!」

 にゃはは、と笑って誤魔化すなのはを、フェイトは怒りながらも心配そうに見つめた。
 彼女がとてつもない大怪我をしたのは、一年前になる。
 だが、一年もかけねば治らないほどの負傷だったのだ。
 そして――まだリハビリを終えたばかりなのだから。
  
「私のことなら気にしなくて良いよ、フェイトちゃん。
 もうすっかり元気だし、前みたいな無茶はもうしない。
 それに――フェイトちゃんの執行官試験の方が大事なんだから!」

 そう、執行官試験。
 今まで二度受けて、フェイトは二回とも不合格になっている。
 本人は頑なに否定するだろうが、なのはの事故が影響しているのは間違いない。
 だが――……だからと言って、果たしてこのような事になっても良いのだろうか。


283 :魔法少女リリカルなのはTES ◆O4WHtYg2/w :2008/05/08(木) 09:32:01 ID:oa/YhEio
 ―――――話は数日前、高町なのはが退院する、その直前にまで巻戻る。

 退院準備の為、荷物を鞄に纏めていた彼女とフェイトの前に、クロノ・ハラウオンが現れたのだ。
 勿論、彼にとって最も大切な目的は、友人であるなのはの退院を祝う事だったが、
 それ以外にもう一つ、極めて重要な用件を抱えていた。

「「タムリエル?」」

「そう、第23管理外世界。現地の言葉で『タムリエル』と呼ばれている。
 文明ランクは――地球やミッドチルダよりもだいぶ低い。中世クラスだろう。
 ただ魔法に関しては正直想像がつかない。これまで、さして注目もされてなかったからね」

「これまで、って事は……今は注目されているの?」

 ああ、とクロノは頷いた。
 タムリエルは地球など他管理外世界と同様、次元宇宙に接触する技術を保持していない。
 そう思われていたのだ。――これまでは。

「事件が起きたのは新暦63年。なのはやフェイトと逢う二年前だ。
 タムリエルで大規模な次元震が確認された。
 その規模は――恐らく、史上最大。
 まず間違いなく『二つの世界が完全に繋がった』ような状態だった筈だ」

 それほどの大事件でありながら、事件の詳細は確認されていない。
 いや、できなかったのだ、とクロノは語った。

「次元震動が確認されてから一時間と経たず、それは消滅してしまったんだ。
 単なる偶然なのか、或いは人為的なものなのか、まるで判らないまま。
 そして、その後の調査も不可能だった。
 結界……とでも言うのかな。外部からの干渉を遮断するバリアが張られていたのさ。
 まあそんな事が可能な魔法技術があったなんて思いもよらなかったから、
 管理局のこれまでの調査が如何に杜撰だったか、って問題にもなったけど、
 とにかく、その世界への干渉は不可能だったんだ。ところが――三日前に、そのバリアが消滅した」

「それって……つまり、また同じ事が起こるかもしれないの、クロノ君?」

「ああ、そうだ。これは極めて重大な調査になる」

「でも、何で私と、なのはにその話を?」

「……つまり、なのは。君のSランク取得試験内容は『管理外世界タムリエルの調査』。
 そして、フェイト。君の執行官資格試験もまた『管理外世界タムリエルの調査』なんだ」


 ――魔法少女リリカルなのは The Elder Scrolls 始まります。

284 :魔法少女リリカルなのはTES ◆O4WHtYg2/w :2008/05/08(木) 09:32:24 ID:oa/YhEio
とりあえずここまで。

セタァァァップされてきます。

285 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 13:47:46 ID:enlGV8PZ
>>284
とりあえず、何とのクロスかは書いてくれ。

286 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 13:55:56 ID:47qJXpIZ
オブリビオン?

287 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 14:43:58 ID:oa/YhEio
オブリビオン

288 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 14:53:32 ID:kqZjG4Kl
オブリビオンとは・・・とりあえず今後、なのは世界の住人があの地獄にどう関っていくか期待。

289 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 15:03:55 ID:3VnpeQzK
アミュレットでマーティンってことはオブリだねえ。
マーティン無双は見れそうにないがw

290 :一尉:2008/05/08(木) 19:24:19 ID:++6LeOCC
マーテイン支援

291 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 20:53:04 ID:v4criAoQ
あの・・・いきなりでスイマセンがだれか
1から20までのログ持っている方いませんか・・・?
まちがえてログ消去しちまったよ・・・orz

292 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 21:05:28 ID:w/1IGFTX
どうでもいいけど、ここでする話じゃないよね。
ググって調べたら?

293 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 21:15:24 ID:v4criAoQ
>>292
いや、ググってみたんだけどわけわからなくて
レスしてみたんだけど、いけなかったのか・・・?

294 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 21:22:08 ID:QXcKSMTj
ミラー変換機でググれ

295 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 22:01:20 ID:IkzskWJX
相手してあげるあなたたちの優しさにワロタ
なぜよりにもよってSS投下スレでクレクレ言い出すのか


296 :Devil never Strikers:2008/05/08(木) 23:17:38 ID:G9cJNFz/
十一時半ごろから投下良いですか?

297 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 23:22:33 ID:CFs8gClr
支援

298 :Devil never Strikers 1/15:2008/05/08(木) 23:29:58 ID:G9cJNFz/
Devil never Strikers
Mission : 10
Let's rock!! baby?


 炎上する機動六課に救いのヒーローが現れた。
 そのヒーローは同時に襲い掛かった数体のガジェットを大剣の一振りで一閃。
 
「何なんだ?アイツは?」

 その一部始終を見ていたのはナンバーズの一人、ディエチ。
 遠く離れたビルの上からでもスコープを兼ねた目にハッキリと映るその男が、作戦前のミーティングで要注意と言われていた事を思い出した。
 周囲の状況を確認してから、男までの距離を計算する。

(周りには何も無い広い空間。敵も味方もいない。かといってチャージに時間をかけるのは危険。なら……)

 ディエチが選んだのは命中した後に爆発する炸裂弾タイプの物。
 設定を終え、スコープの中心に赤い男を捕らえて、引き金を引いた。
 狙い通りに飛んで行った炸裂弾はダンテの足元に命中し、爆発。

「やったか!?」

 数秒後に煙が薄れ、十秒しないうちに完全に煙が消えて、たった今できたクレーターがはっきりと見える。
 だがそこにターゲットの姿は無い。
 いくら爆発するとはいえ、原型を留めないなんて事は無い。
 つまり、避けられたのだ。

「ヒュウ、派手な爆発だな」

 急に声をかけられた。
 真後ろから聞こえてきた声は、今しがた自分が狙った標的の物。

「でも位置が惜しいな、もっと後ろだ」
「何で…ここに」
「大体、こんな感じだ」 

 ディエチの言葉を無視しダンテは狙撃砲を掴んだ。
 自身の武器を取られまいと得物を抱えた両腕に力を込めるが、易々と取り上げられてしまう。
 そのまま真上に放り投げ、リベリオンを大きく振るい、放られたイーメスカノンを頂点で二つに分ける。
 それが落ちるまでの間にゆっくりとした動作で納刀し、ホルスターから引き抜いた銃をくるくると回し始めたダンテ。
 最後にダンテの後ろに落ちたイーメスカノンが爆発するのに合わせて銃をディエチに突きつける。

「分かったな?」

 ディエチはこのまま撃たれるのかと身構えたが、ダンテは何もせずそのまま戦場を翔る一陣の風となって去って行った。

「……何なんだ?アイツ?」

 すでにこの場を去ったダンテがその呟きに答えるはずも無く、唯一の武器を失ったディエチは仕方なく撤退した。

299 :Devil never Strikers 2/15:2008/05/08(木) 23:32:11 ID:G9cJNFz/
 機動六課隊舎前に戻ったダンテを出迎えたのは二体の上級悪魔だった。
 ホテルアグスタで再会し、たった今隊舎が燃えている原因でもある、炎の魔神イフリート。
 深淵の地より解き放たれた後はダンテの力となった事もある、混乱や狂乱の名を持つ魔女ネヴァン。

「珍しい組み合わせだな?お前らがそんなに仲良しだったとは知らなかったぜ」

 口から出るのはいつもの軽口。
 イフリートは黙していたが、ネヴァンは軽口で返してきた。

「そっちこそ、子守まで引き受けるようになったの?」

 ネヴァンの言葉と同時にダンテの横に鋭い風が降り立った。
 その正体はエリオ。
 少し遅れてかかった影はフリードの物だろう。
 これでこちらの戦力は四人と二匹、と言いたいが生憎ザフィーラとシャマルはダメージが大きく、戦力としては期待できない。
 よって三人と一匹でこの悪魔二体と何人かいるはずのナンバーズ、そして多数のガジェットの相手をしなければならない。

(それに建物の中にいる人間も何とかしねーと)

 少し厳しい状況だがそれでもダンテの笑みは消えない。
 ハッタリでもなんでもなくこの状況を楽しむように口の端を吊り上げ、考える。

「さーて、どーする?」

 エリオだけでなく上にいるキャロにも聞こえる声なので、当然敵にも聞こえている。
 が、それを気にしないで作戦会議を始めた。

「まずは六課の人を助けないと!」
「私もそう思います!」
「キュクルー!」

 この時点で六課救出優先の意見が過半数。
 もっとも最初から『三人でさっさと倒してから救出』か『戦力を分けて同時進行』の二択しかない。
 この場合は後者。となれば後は誰が救出に向かうか、だった。
 となるとキャロは論外だ。フリードが大きすぎて建物に入れない。

(となると坊主か?素早いし、建物の構造も…)
「ダンテさん。六課の人たちの方、お願いします」

300 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 23:32:14 ID:CFs8gClr
sienn

301 :Devil never Strikers 3/15:2008/05/08(木) 23:34:27 ID:G9cJNFz/
 隣から聞こえてきた幼くも強い声。
 それはたった今建物内を頼もうと考えていたエリオの物だった。

「フリードは入れないし、僕じゃ小回りが利かないから」

 実はこれは嘘だ。
 本当の理由はそうじゃない。小さな騎士が命を賭ける理由はそうじゃない。

「しっかりやれよ?エリオ」

 それを承知の上で建物内に駆け出すダンテ。
 いつだったかの悪ガキと違って今度はダンテが見送られる側だが、花を持たせてやったのは一緒だった。
 その時にイフリートとネヴァンの側を通ったが互いに無視。
 遠くでディードとかオットーが小さな声で何か言ってるが、戦意の無い者とわざわざ戦うほど上級悪魔は安くない。

 くす、と微笑んだネヴァンは雷を帯びたコウモリを無数に呼び出し、稲妻と共に撃ち出した。
 ディストーションと言う名のこれは単発での威力ならネヴァンの攻撃中最大の威力を持っている。
 だが所詮はただ放たれただけの攻撃、回避は容易い―――筈だった。

「Sonic Move」

 回避を妨げたのはエリオのスピード。
 この場において最速のエリオは、そのスピードをもってコウモリの群れを『後ろから』貫いた。
 そしてそのままフリードの上に着地し、ストラーダの穂先を眼下の悪魔に突きつけた。

「キャロは僕が守る!」

 どんな顔でこれを言っているのかダンテには見えはしなかったが想像はできた。
 きっと一端の騎士の顔をしているのだろう。

(そんな顔されちゃ、譲らない訳にはいかないよな)

 最初の戦いの時から決めていた小さな騎士の大きな決意。
 それを蔑ろにするなんて出来ない相談だった。

302 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 23:35:19 ID:0Sf4P3SF
支援

303 :Devil never Strikers 4/15:2008/05/08(木) 23:36:39 ID:G9cJNFz/
 さて、一番派手な戦いこそエリオに譲ったがダンテだって地味にやるつもりは無い。
 隊舎内に入ったダンテは中にいたガジェットに敵と認識されるが、動かれる前に切り伏せた。

「まずは、入り込んだ燃えないゴミの掃除か」

 取り残されたロングアーチ含む非戦闘員の事も放っては置けないがこっちが優先だ。
 ガジェットを一体でも多く、一秒でも早く倒してAMFを弱めなければ外のエリオたちが倒される。
 幸い今のダンテはトリックスターのスタイルを使っている。
 これから先建物の床が抜けていようが瓦礫が道を塞いでいようがダンテの移動に支障は無い。

「上に行くか」

 目指すは最上階。
 特に理由は無く、勘である。
 が、この勘は大当たりだった。
 階段を昇ったダンテの目の前にガジェットが待ち構えていた。

 ガジェットのアームが機械ならではの精密な動きで襲い掛かる。
 しかも前後左右に伸びているアームは、ダンテの逃げ場を塞ぐ動きまで加わっている。
 数に任せた回避不可の攻撃、だがそれすらダンテには通じない。

「ウォール、ハイク」

 ウォールハイク。
 壁を走るだけの能力だがここのような廊下では絶大な力を発揮する。
 何せ床が二つ増えるのだ、この能力で壁を伝えばアームを避ける事など容易い。

 本来ありえない道に逃げ込まれた事でガジェットの動きが一瞬だけ止まる。
 機械と言うものはいつもこうだ。決められた事は素早くこなすくせに少しでも違うことがあればそれでエラーが起こる。
 そして止まっているガジェットなど彼にとってはただのオブジェクトに等しい。

 機械の計算や予測の外の動きをすることでガジェットを翻弄しながらダンテは隊舎内のガジェットを片付けていく。
 これが本能だけで動く悪魔だったら『見つけたから攻撃する』だけなので硬直など起こりようも無いが、それではコンビネーションでガジェットに劣る。
 結局悪魔にも機械にも弱点はあるのだ。大事なのはそこを付けるかどうか。
 それを間違えなかったダンテはかなりのペースで掃除を進める。


304 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 23:37:51 ID:CFs8gClr
しえん

305 :Devil never Strikers 5/15:2008/05/08(木) 23:38:53 ID:G9cJNFz/
 だが掃除に邪魔は付き物だ。
 急な来客や用事、片付けるはずの物でつい遊んでしまったりなど掃除の妨げになる物は多い。
 だが一番掃除の邪魔になるものと言えば―――

「猫だな」

 そう、猫だ。
 掃除機や箒を向けた先にいるのはもちろん、
 遊んでくれると勘違いしたのかまとわり付いてきたり、掃除用具で勝手に遊び始めて邪魔な事この上ない。

 やれやれ、といった風に目の前の猫二匹を見る。
 赤い光を帯びた双剣を持った戦闘機人ディード。
 武器は持っていないが、その代わりなのか上着とズボンを着用している戦闘機人オットー。
 同じ顔と同じ髪の色をした双子の機人が掃除の邪魔をしに姿を現した。

「まったく、出てくるなよお前ら」

 猫が掃除の邪魔になる理由は『単に邪魔をするから』だけではない。

「無視できねーんだからよ!」

 猫という生き物は視界に入れてしまうと何となく構いたくなるのだ。
 だが無視できないけれど長い時間もかけられない、さっきも言ったようにさっさとガジェットを倒さなければならない。
 一気に決着を付けるべくリベリオンを構えて駆け出すダンテ。
 ダンテの疾走に反応したのはディードだった。
 横薙ぎに振るわれたリベリオンをツインブレイズで受けるが、ダンテとディードではパワーがまるで違う。
 衝撃をツインブレイズだけでは抑えきれず剣の進行方向に飛ばされるディード。

「……バインド!」

 攻撃後の隙を突き、オットーは控えめに叫びながらバインドを仕掛ける。
 緑の光の輪がダンテの手足だけでなく首、肩、胴などを覆い、最終的には緑のミイラが出来上がった。
 そこにダンテの姿は全く見えない。

「……失礼」

 今の間に立ち直ったディードがダンテの頭上まで瞬間加速し、両の手の剣を振り下ろした。
 振り下ろされた双剣は狙い違わずダンテを一刀両断、……いや二刀三断にした。
 魚のように三枚におろされたバインドミイラの中身は……


306 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 23:40:14 ID:CFs8gClr
支援

307 :Devil never Strikers 6/15:2008/05/08(木) 23:41:22 ID:G9cJNFz/
「空っぽ!?」
「失礼」

 珍しく驚いた声を上げるディードにたった今自分の発した物と同じ声が返ってくる。
 その声の主をその目で見る前に、頭に走った衝撃によって気絶した。

 その様子を後ろから見ていたオットーは考えた。
 ディードはリベリオンの峰で殴られた。それもディード自身がダンテを切ったときと同じフォームで。
 だが問題はそこではない、どうやってバインドから逃れたか、それが分からなかった。

(どうやって逃れた?掴んだはずの体が……まるで手品のように……)

 しかし今は戦闘中、ゆっくり思考する時間なんてあるはずも無く、戦闘状態の体は無意識に攻撃を繰り出していた。
 だがその攻撃が命取り、ただ繰り出されただけの攻撃に絶対の攻撃力も百発百中の命中率もあるはずが無く、

「重ね重ね、失礼!」

 ディードと同じ、エアトリックからヘルムブレイカーへのコンボがオットーを襲った。
 頭のてっぺんからつま先まで、平たい金属の衝撃が伝わるのを感じながらオットーは意識を手放す。

 戦闘機人二体を、いや最初のディエチを合わせて三体を無傷で倒したダンテ。
 ふと窓から見えた外の様子に心底面白そうに笑う。

「ソロライブとは、中々やるな」

 しっかりやってるようで何よりだ、と呟いてから再び救出作業に戻る。
 外は心配ないだろう。



308 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 23:42:20 ID:CFs8gClr
支援

309 :Devil never Strikers 7/15:2008/05/08(木) 23:43:45 ID:G9cJNFz/
 そして時間を少し戻してエリオの誓いにまで戻る。

「キャロは僕が守る!」

 この言葉の反応は様々だった。
 知っているからこそこの場を託したダンテ。
 ただ驚くだけのキャロ。
 目的を同じくする同志の声に戦意を高めるフリード。
 その言葉にエリオの強さを垣間見たイフリート。
 そして……

「How's this?」

 ディストーションの時の微笑みのままコウモリ弾を連射するネヴァン。
 フリードが旋回飛行でかわすも、その先には落雷が。

「キュクルー!」

 気合を入れて加速するフリード。
 そのおかげで落雷は回避できたがこれも読まれていた。

「乗り心地は悪くないわね」

 ネヴァンがいつの間にかフリードの上に乗っていた。
 右手は既にエリオに向けられており、下手に動けば電撃を食らうことは想像に難くない。
 いくら強い精神を持った所で、上級悪魔との実力差を埋めるには足りなかった。せめてもう一つ何かあれば埋められるかも知れないのに。

「く……」
「動いたら丸焼きよ?」

 攻撃も防御も間に合わない距離。
 何をするにも相手のほうが早い状況でなお、エリオは諦めなかった。
 『明らかにレベルが上の相手を如何にして倒すか?』
 その手段を必死に考える。

 スピードで翻弄する? いや、それではキャロとフリードが置き去りになってしまう。
 一撃で仕留める? いや、ネヴァンの方が早いし、そんな攻撃力も持っていない。
 フリードに頼る? いや、フリードは自分の背中を攻撃できるほど器用な生き物ではない。

 数秒に渡る自問自答の末、行き着いたのは攻撃を受けながらストラーダを突き刺してそのままネヴァンごと飛ぶ、といった物だった。
 もしなのはにでも知られたのなら頭を冷やされること間違い無しの捨て身の攻撃。

(あれとこれ、どっちの方が痛いのかな)

 そんな事を考え、この状況とのギャップに苦笑する。
 苦笑と同時に体をネヴァンとキャロの間に運び、ストラーダを突きつける。
 エリオが動いたので丸焼きにしようとネヴァンが左手も持ち上げた。
 攻撃のタイミングを相手が攻撃した瞬間に定める。被弾前提なのだから命中率は高いほうが良い。

310 :Devil never Strikers 8/15:2008/05/08(木) 23:45:59 ID:G9cJNFz/
「中々男前ね」

 思わずえ?っとなるエリオの表情。
 研ぎ澄ました集中力を乱すほどにその言葉は予想外で急展開すぎた。

「たまにはこういうのも良いかもね」
「ど、どういうのですか?」

 つい聞き返してしまったエリオ。
 この時点でネヴァンのペースに飲まれているのだが、心理戦なんて全く習っていないエリオにどうにかする術は無かった。
 攻撃のタイミングが分からなくなったエリオのストラーダはいつの間にやらネヴァンの手に握られていた。
 両手で包み込むように握った手を上下に動かし始めたネヴァン。
 その動きはエリオには分からなかったがどう見てもアレである。

 段々と激しくなる上下運動。そこからは紫の雷がパチパチと発していた。
 その雷は段々と強くなり、一際強くなったと同時に光が出た。
 つい目を瞑ってしまったエリオ。その目を再び開いた時、そこにネヴァンの姿は無く、代わりに形を変えたストラーダがあった。

 刃部分の根元から鎌の刃が上向きに生えた鎌槍の形となっていた。
 そして機関部分から下に向けて弦が張られており、ギターのようになっている。
 カラーリングは全体的に紫がかった物に変更されている。

『力を貸すわ、坊や?』

 ストラーダから出てきたストラーダとは違う声。
 それはたった今まで対峙していたネヴァンの物で間違いなかった。
 何の気まぐれか力を貸してくれるらしい。

「キャロはこの距離から援護して!」

 少し考えた後にエリオはフリードから飛び降りる。
 別にネヴァンを信用した訳じゃない。
 それでもこうすればキャロとネヴァンの距離を引き離せる。
 一度は捨て身の攻撃を考えた彼にとっては悪い話じゃなかった。

「裏切りか……だが、我に咎める資格など無し!」

 空戦の術を持たないイフリートが構える。
 エリオも空に逃げる事はできない。このストラーダは危険だから。
 しかしだからこそこのストラーダは実力差を埋めるためのもう一つになりえる。

311 :Devil never Strikers 9/15:2008/05/08(木) 23:48:09 ID:G9cJNFz/
(この体格差と魔力差、一発受けたら終わりだ……)
(おそらくはスピード型、ネヴァンの助けもある。如何に攻撃を当てるかが鍵……)

 どこまで埋まったかはまだ分からない実力差。
 だがエリオには作戦があった。
 ある程度の実力差をはね返すだけの作戦が。

(キャロ、頼みがあるんだ)
(何、エリオ君?)
(隙を見てアイツの動きを止めて欲しいんだ。その後は任せて)

 念話でキャロと打ち合わせる。
 それが終われば後は実行あるのみ、パワーアップしたストラーダを構え、突進した。

「ヌウゥゥゥ!」

 エリオの突撃に合わせてイフリートは左拳を引き、力を込めた。
 その動きから左ストレートだと考えたエリオは軌道をズラす。その甲斐あって繰り出された炎の拳は空を切ってくれた。

「くっ!」

 だがその風圧でエリオの体は大きくぶれ、エリオの攻撃も外れる。
 かすりすらしなかった攻撃でこの影響だが、それでもエリオには自信があった。
 『僕たちなら勝てる』と言う自信が。
 その自信と誓いを原動力に再び突進。

「ハァ!」

 次に来たのは右の拳。
 今度は急停止し、やり過ごしてから再び顔面狙いの突進。

「読めているわ!」

 右の拳撃から流れるような動きとで見舞われた左ハイキック。
 先読みされて出された蹴りはエリオに直撃した。

「ぐぁ…が……!」

 直撃を食らったエリオの体が勢いのままにイフリートに激突し、足元に落ちる。
 本気の蹴りならエリオは遠くへ飛ばされていただろう。だがイフリートはあえてそれをしなかった。
 この蹴りで足元に落ちたエリオに、確実に止めを刺すために。
 イフリートは左足を下ろし、今度は右足を高く上げる。
 左拳、右拳、左蹴りと続くイフリートコンボの最終攻撃、踵落としだ。

「ヌウウウゥゥン!」

312 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 23:49:48 ID:CFs8gClr
支援

313 :Devil never Strikers 10/15:2008/05/08(木) 23:50:35 ID:G9cJNFz/
 高く上がったイフリートの左足に炎が集まる。
 最初の右ストレートと同じ力を溜めてからの攻撃、これを食らえば骨も残らないだろう。
 そしてついに炎が溜まりきり、最大威力の踵落としが完成した。
 全力を込めた踵を、エリオに落とそうとした瞬間、その踵に鎖が絡みつく。

「ヌゥ!?」

 それはもちろんキャロの錬鉄召喚、アルケミックチェーン。
 当初の予定通りイフリートの動きを封じたのだ。
 これで後はエリオの作戦を実行に移すだけ、痛む体に鞭打ってエリオは立ち上がる。

「ギターは、アコースティックギターとエレキギターの二種類がある……」

 ちょっと前に何となく興味を持って調べてみたギターの知識を諳んじる。
 この作戦の考えの元でもあるこの知識を。

「アコースティックはそのままでも弾けるけど……エレキギターはいくつか道具が必要……」
「ヌゥウゥゥウゥゥ!」

 ガチャガチャもがくイフリートの咆哮を気にせず、エリオは続ける。
 これなら大丈夫。と自分に言い聞かせるように。

「必要なのは本体と、名前は忘れたけど本体に繋ぐコード……後は……」

 ストラーダから生えたネヴァンの鎌を突き刺す。
 これではまだ浅く、ダメージにもならない。だが―――

「アンプと呼ばれるスピーカーだ!」

 ネヴァンの弦を掻き鳴らす。
 生じた音は電撃と化し、イフリートの体内で直接暴れ狂う。


314 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 23:51:00 ID:CFs8gClr
支援

315 :Devil never Strikers 11/15:2008/05/08(木) 23:52:51 ID:G9cJNFz/
「ヌガアァァアァァアァァア!!」

 コードやら何やらの基本なんて知らないエリオが無茶苦茶にいじった弦から生じる不協和音。
 それはそのままスピーカーの中に入り込み、ある意味正しく発せられる。

「ヌォゴァァァ!」

 一心不乱に弦を弾くエリオ。このままスピーカーをぶっ壊すつもりだった。
 電撃の不協和音が拘束されたイフリートの神経や筋肉を直接痛めつける。
 音撃と電撃の拷問に耐えられず、暴れだすイフリート。
 その力を押さえつけるアルケミックチェーン。
 力で引き千切るのが難しいと悟ったイフリートは即座に体から炎を出し、鎖を焼き切ろうとする。

「ヌオォォオォォオ!」
「うあぁぁあぁあぁぁぁ!」

 ありったけの電撃を流し込むエリオと、鎖を引き千切ろうとするイフリート。
 踵落としの状態で止まった体は、鎖が切れさえすれば容易にエリオの体を砕くだろう。
 だがその前にイフリートの体力を削りきれればそれは不発に終わり、勝利だ。

 ギリギリのせめぎ合いの中、エリオは再び思った。
 自分がここにいる理由を。顔を上げてそれを確認する。
 大きなフリードが普段のニワトリサイズに見えるくらい離れた距離。上に乗っている彼女は豆粒くらいになっている。
 その距離でもどんな表情をしているかは分かった。

「あんなに不安そうな顔…させちゃってる……」

 はたしてそんな顔をさせておいて自分はしっかりやれていると言えるだろうか。
 いや、言えない。
 ならどうすれば良いのか、その答えは握り締めているネヴァンから流れてきた。
 流れてきた言葉を反芻しながら弦を弾く手を一度止め、ゆっくりと持ち上げる。
 そして自分に『しっかりやれ』といった男がそうするように唇の端を吊り上げたニヒルな笑みを作る。
 キャロを不安にさせないように、心配なんてさせないですむように。
 そのためには―――

316 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 23:53:46 ID:CFs8gClr
支援

317 :Devil never Strikers 12/15:2008/05/08(木) 23:54:58 ID:G9cJNFz/
「Let's rock!!」

 派手にやるしかないだろう?
 徹底的に派手にやって、実力の差を分かりやすく見せ付けて、心配なんて吹き飛ばしてやらないと。
 言葉と共に再開した電撃は先ほどより強く、キャロの拘束すら必要ない。
 ただただ強くイフリートに電撃を流し込む。
 踵から脳まで全部を更に強く。
 少しでも動こうものならもっと強く。

 そして、ふとストラーダが軽くなった。
 手ごたえはストラーダが抜けたことを伝えてくる。
 だが感覚はそれは違うと言っている。
 どちらが正しいのかは分かっていた。
 確かめるため振り返り、イフリートのいた場所を見る。
 そこにイフリートの姿は無く、一対の篭手がぽつんと置かれていた。

「……やっ……た……」

 エリオの勝利だった。

318 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 23:55:33 ID:CFs8gClr
支援

319 :Devil never Strikers 13/15:2008/05/08(木) 23:57:03 ID:G9cJNFz/
 だが余韻に浸る暇も無く、次の敵が現れる。
 エリオは知らないがホテルアグスタの時と同じく、ガリューが。
 ガリューはエリオ蹴り飛ばし、イフリートに近づいた。
 腰を曲げてイフリートを拾ったガリュー、その遥か後方にはルーテシアの姿。その隣には色々と見えた。
 気絶したオットーとディード。その二人を運んできたらしいセイン。

「ルーお嬢様、転送をお願いします……」
「疲れてる?」
「疲れてますとも!地上本部からここまで来て三人も運んだんですから!頑張りましたよセインさん!」

 自分で自分をねぎらうセイン。
 地上本部からここまで来て三人を救出したのなら結構前に移動を始めたことになる。
 だがそれよりもエリオが気にしたのは三人と言いつつ二人しかそこにいない事だった。

「じゃあ転送お願いします……」

 そして息も絶え絶えにセインはオットーとディードの影から三人目を取り出した。
 流れから負傷したナンバーズの一人かと思っていたが、違う。
 あれは自分達が良く知った人間だ。
 
「ヴィヴィオ!」

 疲労は激しく、魔力は空っぽ。
 それでも動きたく無いと言う体に鞭打って走り出す。
 だが射程距離に捉える前に再びガリューの足に背中を蹴られ、前に倒れこむエリオ。
 倒れたまま顔だけ上げてヴィヴィオを見る。
 見失わないように。動けるようになったらすぐに助けに行けるように。

 だがそんな想いを嘲笑うかのようにルーテシアはヴィヴィオとナンバーズを連れ、転送魔法を起動する。
 魔法陣に吸い込まれていく五つの体を眺めるしかできなかった。
 完全に消えたヴィヴィオ達、もはやエリオにできることは何もない。
 それを知ってしまったエリオは、激しい疲労もあって気を失った。

「エリオ君!」

 キャロがエリオに近づき、治療を始める。
 だがその背後から忍び寄るガジェットがいた。治療に集中しているキャロは気づかない。
 そしてそのアームがキャロを捉えようとした瞬間―――

『ごきげんよう!!』

 聞きなれない声が響いた。

320 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/08(木) 23:59:24 ID:12jCimMw
支援


321 :Devil never Strikers 14/15:2008/05/08(木) 23:59:31 ID:G9cJNFz/
 びっくりして振り向いたキャロが見たのは写真でしか見たことの無い、スカリエッティの顔だった。

『いや〜危ないところでしたねぇ、地上本部の皆様、無事でしたか?』

 その言葉からこれは本来地上本部の方で流されるべき映像だと分かる。
 実際に地上本部のほうでもこの映像は流れていた。
 ガジェットだけでなくモニターというモニターを全てを乗っ取り映し出すオマケがついているが。

『私の作品達が間に合ったようで何よりです。悪魔達はだいぶいなくなったようなのでこれからは救助の方をお手伝いしましょう』

 悪魔をけしかけたのはお前だろうが、そう言って罵りたい気持ちを、地上本部内ではやては必死に抑える。
 そう言った所で聞こえないだろうし、決定的な証拠は残していないだろう。

『お望みならこの作品たちを譲っても構いません。流石にただで、とは言えませんが、格別の条件でお譲りしますよ?』

 それでも犯人はコイツだとみんな分かっている。
 分かっている。
 だからこそ、むかつく。

『必要ならいつでも誰でも、私宛に依頼してください、では、失礼』

 恭しく頭を下げるスカリエッティの姿、それを最後に通信は終わった。
 地上本部に悪魔の姿は無く、ガジェットが救助活動に当たっている。
 傷付けるのも、助けるのも奴の仕業。スカリエッティの手の上で踊らされているも同然。
 スカリエッティを信用する奴はおそらくいない。でも、むかつく。

「そうやって、高い所からうちらを見下しとるつもりか?こんな派手な真似までして」

 はやての呟きは周囲の喧騒に吸い込まれ、誰にも聞こえなかった。
 隣にいたカリムだけがに気づき、耳を澄ませる。

「でもそれも今のうちやで、絶対そこまで飛んでって、これ以上派手に叩き落したる!」

 機動六課の次の方針が、決まった。


322 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/09(金) 00:00:17 ID:CFs8gClr
支援

323 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/09(金) 00:01:33 ID:LvSK3mWJ
支援!


324 :Devil never Strikers 15/15:2008/05/09(金) 00:01:40 ID:G9cJNFz/
 そしてその機動六課の隊舎内で、機動六課に属さない男もこの映像を見ていた。
 映像を映し終えたガジェットに銃弾をブチ込み、ガラクタに変える。

「俺もそろそろ、決めなきゃな……」

 自分の方針を。
 はっきりさせてなかった自分の立場を。
 誰のため、何のために戦うのかを。

「ま、もう決まってんだけどな」

 後は言うだけ。この機動六課の連中に『お前らに付く』と。
 まあどうせ皮肉交じりで本音は最後に言うのだろう。本当に最後の、最後に。


Mission Clear and continues to the next mission

325 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/09(金) 00:02:37 ID:CFs8gClr
支援

326 :Devil never Strikers 15/15:2008/05/09(金) 00:05:40 ID:P97BRoKk
投下終了です。
そして投下した直後に痛恨のミス発見orz
最後のスカリエッティの映像、あれガジェットから出てます。
後で修正依頼出しときますがこの場は脳内保管でお願いします。
それと二つほど言いたいことが、

1、イフリートは武人っぽいと(勝手に)思ってます!
2、ずっと支援してくれた人のIDがクロスファイヤシュートなのに感動した!

327 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/09(金) 00:11:01 ID:5GZIjz1D
GJ!
このスカはいい面の皮してますねwww
ダンテだけでなくエリオのアクションもカッコよかったです!

328 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/09(金) 08:41:18 ID:Z3tyiahh
>>326
クロスファイヤーシュート吹きましたw。次も頑張って下さい。

329 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/09(金) 20:17:41 ID:1Ql9wc7i
カソード

330 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/09(金) 20:18:56 ID:wyHGNo0j
こんばんは。
21:00頃に天元突破投下よろしいでしょうか?

331 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/09(金) 20:22:23 ID:LOKwPrb7
>>330
おおおおおおおおおKに決まってるじゃまいかあああああ
支援だぜえええええ!!

332 :kasou:2008/05/09(金) 20:24:03 ID:fds3qeIc
待っていました。

333 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/09(金) 21:02:26 ID:wyHGNo0j
では時間なので投下させて頂きます。
話数のナンバリングが前回と違いますが、話は前回の続きなので気にせずお楽しみください。

334 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/09(金) 21:03:19 ID:wyHGNo0j
 機動六課前線部隊初任務――山岳輸送リニアレール奪還作戦は、新人四人の列車突入によって本格的に幕を開けた。

「スターズ隊見参! あたし達を誰だと思ってる!!」

 先頭車両側面の壁を突き破り、スバルが雄々しく名乗りを上げる。
 突然の侵入者に車両内を浮遊していた無数の楕円型の魔導機械――ガジェット・ドローンが迎撃行動に移ろうとするが、スバルの方が一瞬早く、そして速く動いていた。
 右手首のタービンが回転し、魔力の風が螺旋を描いてスバルの拳に集束する。

「リボルバーシュート!!」

 怒号と共に、スバルの拳から衝撃波が撃ち出された。
 手近なガジェット目掛けて直進する魔力塊は、しかし次の瞬間、まるで蜃気楼のように掻き消えた。

「……あれ?」

 間の抜けた声と共に動きを止めるスバルに、ガジェットの放つ光線――ムガンのビームとは違い、恐らくは魔力弾――が殺到する。
 慌てて防御陣を展開するスバルの背中からティアナが飛び出し、二挺拳銃の引き金を引いた。
 しかしティアナの放った魔力弾も、まるで見えない壁の中に溶け込むように、目標に届く前に消滅してしまう。

「バリア……いえ、あれはフィールド系ね。魔力を掻き消すなんて……!」

 舌打ちするティアナと未だ唖然と固まるスバルに――そして最後部車両に突入したエリオとキャロにも――ロングアーチからの通信が入る。

『こちらロングアーチ。解析の結果、今の現象はAMFによるものであると推測されます』
「AMFって……アンチ・マギリング・フィールド!?」

 オペレーターの言葉に、ティアナが瞠目したように声を上げた。
 AMF――効果範囲内のあらゆる魔力結合を強制分解し、魔法を無効化するフィールド系防御魔法。
 ランクはAAA、しかし難易度に反した実用性の低さから使用例は皆無と教本の片隅に補足されていたが……こうして相対してみると、厄介極まりない魔法である。

 しかし……ガジェットの光線を防御陣で弾きながら、ティアナは眉間にしわを寄せる。
 AMFの効果対象に例外はなく、フィールドの中心にいるガジェットも当然その影響を受けている筈である。
 魔導兵器ならばAMFの効果で自身の動力炉も活動を停止し、仮に質量兵器であればそもそも魔法を使えない――常識的に考えて、機械のAMF展開は不可能な筈なのだ。

(ね、ねぇ、ティア……えーえむえふって何?)
(取り敢えずこいつらには魔法が効かないってことだけ解ってればよろしい)

 念話越しに戸惑ったように声を上げるスバルを一言で切って捨て、ティアナの意識は再び思考の海に埋没する。

 機械にAMFは使えない、理論上矛盾しているからだ。
 にも関らず、ガジェットは何の問題もなく稼動を続け、しかも自分達に攻撃まで――流石にAMFと両立は出来ないようだが――仕掛けてきている。

 どうなっている……無限ループに陥る思考を、しかしティアナは次の瞬間、我に返ったように頭を振って放棄した。
 矛盾に悩むのは後からゆっくりやれば良い、今はこの悪趣味な玩具の駆除が先決だ……。
 謎は謎のままで良いと割り切り、ティアナは目の前の戦闘に思考を戻す。

 敵に魔法は効かない――この時点でスバルは兎も角、自分はあらゆる攻撃手段を封じられてしまっている。
 本当にそうか……脳神経ネットワークの迷宮の奥で、もう一人のティアナが疑問の声を投げかける。
 敵に魔法攻撃は効かない、そう断定するのは些か早計ではないか?
 思い出してみろ……露払いとして先行したなのはは、ムガンに寄生したガジェットを射撃魔法で苦もなく破壊していたではないか。
 なのはの撃ち落としたガジェットが、車両内のガジェットと性能的に異なる――例えばAMFを張れないなど――とは考え難い。
 AMFを突破して敵を倒す方法はある、自分がガジェットに対抗する手段は存在する筈なのだ。
 何だ、何が足りない……ティアナは思考を研ぎ澄ませた。
 この状況を打開する最後にして最大のピース、なのはにあって自分に無いものとは一体何なのだ……?

 思考のループが螺旋に変わり、ドリルのようにティアナの心を掘り進んでいく。
 そして遂に、ティアナは一つの答えに辿り着いた。

335 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/09(金) 21:05:28 ID:wyHGNo0j
 そうか……ガジェットへの対抗策を考え出し、ティアナが仲間達に念話で指示を出す前に、

「分かったぁっ!!」

 溌剌とした声と共に、スバルがガジェットに突撃していた。

 ティアナが思考の海に沈む間、スバルもまたガジェット攻略法を考えていた。
 敵に魔法攻撃は通用しない、ならば自分の執るべき手段はただ一つ。

「あたしの魔法が通じないなら――」

 吼えるスバルの右手首のタービンが起動し、唸りを上げて回転する。

 ……鼓動が聞こえる。
 胸のコアドリルが、両脚のマッハキャリバーが、高まるスバルの気合いに合わせて脈動している。

 唸る右拳を振り上げ、スバルは最寄りのガジェットに飛び掛った。

「――あたしの拳で叩いて砕く!!」

 怒号と共に繰り出されたスバルの拳が、ガジェットの装甲に音を立ててめり込んだ。

 無論、素手でガジェットを破壊出来ると考える程スバルも自信過剰ではない。
 スバルの拳には魔法と螺旋力の他にもう一つ、奥の手とも言える「力」が秘められている。
 インヒューレントスキル――ISと呼ばれる戦闘機人の先天固有技能、鋼の肉体と共に与えられた破壊の力。
 スバルがかつて忌み嫌い、そして今は受け入れた「人間でない証」……。

「奥の手発動! 振動――」

 雄叫びを上げ、スバルが己の「力」を解き放とうとしたその時、ガジェットの眼――のように見えるレンズ部分――から光が消えた。
 そのまま糸が切れたようにガジェットは落下し、ごとりと音を立てて床に転がる。

「ぅえ? あ、あれ……!?」
「嘘……」

 火花を上げながら沈黙するガジェットを、スバルとティアナは唖然と見下ろした。
 予想外の敵の打たれ弱さ――或いは予想外のスバルの馬鹿力――に、脳が事実の認識を拒否している。

「ティア……」

 困惑したような表情を浮かべ、スバルがティアナを振り返った。
 助けを求めるような顔で自分を見つめるスバルに、ティアナは咄嗟にかける言葉が見つからない。

 しかし次の瞬間、

「――こいつら意外と結構脆いよ!?」
「んな訳あるかぁ!!」 

 ……あっさりと開き直った親友に、ティアナは力の限りに絶叫していた。


336 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/09(金) 21:07:04 ID:wyHGNo0j
「ったく……馬鹿スバル! ちょっと試したいことが出来たから、段取り整えるまでアタシを守って!!」

 二挺拳銃を構えながら叫ぶティアナを、スバルはきょとんとした顔で見つめた。

「……こいつら全部、アタシの必殺技でぶち抜いてやるわ」
「ほほう?」

 鷹のように鋭く眼を細め、不敵に唇の端を持ち上げるティアナに、スバルの瞳がキラリと光る。
 必殺技……そのフレーズを聞いた瞬間、明らかにスバルの目の色が変わった。

「任された!」

 胸を張ってそう宣言し、スバルはガジェット達へと向き直った。
 防御陣を全開で展開し、ガジェットの放つ光線の雨を気合いで全て弾き返す。
 全ては、ティアナの必殺技を見たいがために……。

 ちょろいな……己の相棒の扱い易さに内心ほむそ笑みながら、ティアナは術式の構築に集中した。
 射撃型の自分が、攻撃を無効化されて「はいそうですか」などと素直に引き退がることが出来るだろうか?
 答えは、否――届かないものを届かせなければ、無理を通して道理を蹴飛ばさなければ、この過酷な世界では生き残れない。

 二挺拳銃の銃口の前で魔力弾が生成され、更にその周囲を魔力の「膜」が覆っていく。

 なのはの攻撃が通用していたところを見た限り、どうやらAMFによる魔法の無効化には限界があるらしい。
 許容量を超えた魔力でねじ込んでやれば、攻撃はAMFを突破して本体まで届く……つまりはそういうことなのだろう。
 なのはの場合は恐らく「密度」――膨大な魔力を小さな弾丸の形に圧縮して撃ち出すことで、AMFを貫きガジェットを撃破したのだと思う。
 集束系の魔法はなのはの十八番、無意識に魔力を籠めていても不思議ではない。

 では自分になのはと同じ芸当が出来るか――残念ながら、答えは「否」だ。
 凡人の自分にはなのはのように高密度の魔力の集束は出来ない、なのはのような才能は自分には無いのだ。
 力押しの出来ない自分は、だからこうして小細工に頼る……クロスミラージュの握るティアナの両手に力が籠った。
 自分はなのはと同じことは出来ない、ならば自分は自分のやり方でAMFを攻略するまでだ。
 攻撃用の弾体を、無効化フィールドで消される膜状バリアで包む……フィールドを突き抜けるまでの間だけ外殻が保てば、本命の弾丸はターゲットに届く。

 固まれ、固まれ、固まれ……!
 一心不乱に念じながら、ティアナは外殻生成に集中する。
 ガジェットも、スバルの背中も、そして自分自身さえもがティアナの世界から消えていく。
 ただ一つ、二挺拳銃の銃口の前で輝き続ける二つの魔力弾だけに、ティアナは意識の全てを集中させていた。

 ……鼓動が聞こえる。
 両手に握るクロスミラージュが、研ぎ澄まされるティアナの集中力に応えるように脈動している。

 魔力の「膜」が弾体全てを覆い尽し、激烈な光が車両内に満ち溢れる。

「ヴァリアブルシュート!!」

 ティアナの怒号と共に二挺拳銃の引き金が引かれ、二発の魔力弾がスバルの脇下を潜りながら撃ち出される。
 放たれた魔力弾はガジェットの展開したAMFと激突し、拮抗し、押し戻し、そして遂に突き抜けた。
 邪魔な「壁」を突破した二発の魔力弾はティアナの意思に操られ、不規則的な軌道を描きながら次々とガジェットを貫いていく。

 フィールド系防御を突き抜ける多重弾殻射撃――自身が小細工と称したその攻撃が、本来AAランク魔導師の技能であることを、ティアナはまだ知らない。

「ティア凄い!」

 破壊され次々と爆発していくガジェットを眺めながら、スバルが喝采の声を上げる。

「――必殺技にしては地味だけどっ!!」
「一々一言多いのよ! アンタはっ!!」

 スバルの蛇足に猛然と噛み付き、ティアナは疲れたように息を吐いた。

337 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/09(金) 21:09:02 ID:wyHGNo0j
 その時、車両に充満する爆煙を突き破り、生き残りのガジェットが二人に突撃を仕掛けてきた。

「「!!」」

 迫り来るガジェットにスバルの右拳に魔方陣を展開し、ティアナは魔力弾を生成した。

「ディバインバスター!!」

 スバルの咆哮と共に放たれた光の奔流が、AMFの壁ごとガジェットを粉砕する。

 もうAMFに順応している……集束砲撃魔法による一点集中突破、なのはと同じく力押しで敵を倒したスバルに、ティアナは思わず歯噛みした。
 相棒と自分を隔てる才能の壁に絶望し、親友に嫉妬する自分自身に憎悪していた。
 しかし、不貞腐れている暇は無い……ティアナは二挺拳銃の引き金を引いた。
 初撃でコツを掴み、デバイスの補助で複数同時生成に成功した多重外殻魔力弾が、残りのガジェットを正確に撃ち抜く。
 流石は最新型か……両手に握るクロスミラージュを見下ろし、ティアナは感嘆したように吐息を零した。
 使い勝手の良さは折り紙つきの上、弾体生成までサポートしてくれる……優秀なデバイスに頼りきりになるような事態は避けたいが、実戦では心強いことこの上ない。

「ティア!」

 感慨に浸るティアナの鼻先に、スバルが突然指を突きつけた。
 その指先は僅かに震え、瞳の奥では怒りの炎が燃えている。

「幾ら地味だからって、仮にも必殺技をバンバン連発するのはマナー違反だよ!!」
「アンタは何の話をしてんのよ!? それに地味言うな馬鹿スバル!!」

 ティアナには理解出来ない次元で激怒するスバルに、ティアナも怒りを爆発させる。

「大体必殺技なんてものはねぇ、須く劣化してライバルに破られた挙句、最終的には雑魚相手の露払い的な役割しか与えられなくなるのが運命なのよ!」

 ギガドリルブレイクなんてその最たる例でしょーと続けるティアナに、スバルは愕然と床に両膝をついた。

「ティ、ティアが苛める……」
「純然たる真実よ」

 項垂れるスバルに冷然と返し、ティアナは静寂を取り戻した車両内を見渡した。
 これでこの車両のガジェットは全滅……しかしここはまだ一両目、まだまだ先は長い。

 そう言えば……ティアナは背後を振り返った。
 無人リニアレールの運転席、万が一のための有人制御のための機器が、そこに広がっていた。
 窓の外の景色は未だ動き続けている、どうやらガジェットを倒しただけでだ列車は止まらないらしい。

「スターズ04からロングアーチへ」

 ティアナはもう一度嘆息し、ロングアーチへと通信を繋いだ。

「先頭車両のガジェットは殲滅完了、しかし列車は未だ運行を続行中。ケーブルの破壊は意味ないみたいです」
『ロングアーチからスターズ04へ。こちらからの遠隔操作にも列車は応答しません。
 どうやら戦闘の影響、もしくはガジェットによる破壊工作のために関係機器が無力化されているようです』

 オペレーターの返答に、ティアナは思わず「え」と声を上げそうになった。
 制御機器の破壊、そんな筈はない。
 敵の攻撃は防御陣で弾いて一発も自分達には届いていない、その自分達の背後にある運転席も当然無傷だ。

 ちょっと待て、自分は今何と考えた……ティアナは己の思考を巻き戻した。
 弾いた――自分達は敵の攻撃を弾いて返したと、自分は確かにそう考えた。
 ああそうだ……自分とスバルの今回使った防御陣はシールド系、弾いて逸らすのが基本の防御魔法だ。
 では弾かれた攻撃はどこに行く――どこかに当たるだろう。
 自分を守っている間のスバルが弾き返した敵の魔力弾の中には、真っ直ぐに跳ね返り撃ち出したガジェットをピッチャー返しよろしく直撃したものも一部存在した程だ。
 ごく一部、ごく一部にはそのような稀有な弾丸も存在した……では他のものは?

338 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/09(金) 21:10:42 ID:wyHGNo0j
 考えるまでもない、滅茶苦茶に跳ね返り好き勝手に車両内を撃ち抜いただろう。
 その証拠にほら、車両中に綺麗な丸い穴が無数開き、天井の穴から降り注ぐ暖かい太陽の光が車内を明るく照らしている……そこまで考えて、ティアナは現実逃避をやめた。
 つまりはそういうことなのだ。
 どうやら自分達の魔法の選択ミスで、運転席周辺は兎も角他の重要な機器を、不可抗力ながら問答無用で破壊しまくってしまったらしい。

 こんなことを素直に報告すれば……どう考えても雷――比喩・実物問わず――や始末書では済みそうにない。

「てぃ、ティア。遠隔効かないのってもしかして……」
(しっ! 黙ってなさい!!)

 余計なことを言いかけるスバルを念話で黙らせ、ティアナは再び通信を繋いだ。

「スターズ04からロングアーチへ。状況了解しました。列車はこちらから手動で停止させます」

 口早にそう告げて通信を切り、ティアナはスバルへと向き直った。

「……そういう訳だけど、リニアレールの操作ってアンタ知ってる?」
「子供の頃に、ゲーセンで!」
「よしお前何にも触るな」

 胸を張って即答するスバルにそう申しつけ、ティアナは運転席へと歩み寄った。

「アンタは先に行ってちびっ子達と合流して。アタシも列車止めてからすぐに追い着くから。
 ガジェットの破壊よりもライトニング隊との合流が優先、多少の撃ち漏らしはアタシが片付けるわ」
「それは良いけど……ティアの方こそ、電車の運転なんてどこで覚えたの?」

 慣れたような手つきでコンソールを操作するティアナに、スバルが怪訝そうな声でそう尋ねる。
 スバルの問いにティアナは手を止め、そして振り返りながら真顔でこうのたまった。

「知る訳ないでしょ? そんなもん」

 その瞬間、スバルは音を立てて石化した。

「バイクなら免許持ってるし、次元航行船の操縦も訓練の合間に目下勉強中。アンタの巻き添えで巨大ロボまで動かすことになったけど……流石にリニアレールは想定外よ」
「ちょっとちょっとちょっとちょっと!?」

 あっけらかんと続けるティアナに、スバルは狼狽えたように声を上げた。
 冗談ではない……スバルは奥歯を噛み締めた。
 素人の操作では何が起こるか分からない、突然脱線して谷底に真っ逆さま――という笑えない展開も十分有り得るのだ。
 この列車には自分達だけでなく、エリオやキャロも乗っている。
 聡明で、しかも仲間思いのティアナらしからぬ無謀な行動に、スバルの頭はオーバーヒート寸前だった。

 しかし混乱するスバルとは対称的に、ティアナの瞳には不安も迷いも存在していない。

「大丈夫、何とかする」

 力強く断言するティアナに、スバルの心も不思議と落ち着きを取り戻した。
 何の根拠も無い筈の親友の言葉を、何故か信用出来るような気がした。

「……信じて良いんだね?」

 確認するような響きで口にされたスバルの問いに、ティアナは無言で首肯を返す。

「分かった……」

 吹っ切れたような笑顔でスバルは頷き、ティアナに背を向けて出口へとローラーを転がせた。
 ティアナもコンソールに視線を戻し、不慣れな制御機器との格闘を再開する。
 スバルはエリオ達と合流するために、ティアナは暴走する列車を止めるために――それぞれが自分のやるべきことを、自分のやりたい形で成し遂げるために。


339 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/09(金) 21:11:42 ID:wyHGNo0j
「ティアとなのはさんは似てるって、あたし言ったけど……あれ、撤回するね」

 自動扉の前まで足を進めたスバルが、不意にそう言ってティアナを振り返った。
 無言で操作を続けるティアナの背中に、スバルは笑いながら言葉を続ける。

「ティアの方が、ずっと大雑把だよ」

 そう言い残し、自動扉の奥へ消えいくスバルの背中を、ティアナはミラー越しに見送った。、

「まったく……せめて大胆不敵って言いなさいよ、馬鹿スバル」

 遠慮を知らない親友の物言いに嘆息しながら、ティアナはコンソールと睨み合う。
 スバルは自分を信じてくれた。
 ならば自分はその信頼に応え、何としてでも列車を止めなければならない。
 重圧に押し潰されそうになる心を叱咤し、ティアナは黙然と作業を続ける。

 リニアレール奪還作戦、ティアナ達前線部隊の初任務は……長い戦いになりそうだった。



天元突破リリカルなのはSpiral
 第10.5話「初めて会っていきなりだけど、一緒に頑張ろうね」(続)


340 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/05/09(金) 21:15:49 ID:wyHGNo0j
以上、投下完了しました。
前回は11話と書きましたが、こちらの都合で前回、今回、そして次回の三話を「10.5話」の前中後編という形で纏めさせて頂きます。
混乱してしまった方は申し訳ありません。

前回GJコールくれた方々、この場を借りてありがとうございます。

341 :一尉:2008/05/09(金) 21:20:10 ID:DKxpSX/A
コール支援

342 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/09(金) 21:29:11 ID:RZSBwJCH
GJです

ラストのティアナが頼もしすぎる件w

343 :kasou:2008/05/09(金) 21:55:25 ID:fds3qeIc
最高です。

344 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/09(金) 21:58:14 ID:tZe8nBdJ
>>343
意図しているかは分からないので一度だけ助言いたします。
メール欄に半角小文字でsageと入れてください。

345 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/09(金) 23:58:48 ID:/dfbJ5V/
>>344
それは無視するべき。ずっと前からそうだから。

346 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/10(土) 05:41:26 ID:yJXQIaqH
1万年と2000年前から無視してる〜

347 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/10(土) 06:54:31 ID:6LeAsEdt
なのは世界ではテルミドールよりベルリオーズの方が合う気がする
柔軟な思考(らしい)、4での空気さ、何より込み入っていない設定
ああ、なんて妄想が楽ちんなオリジナルナンバー1

さて、問題は武器が実弾しかないことだが

348 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/10(土) 09:01:18 ID:xnMpp6bC
>天元突破リリカルなのはSpiral
もう完全にスバルの思考がスーパーロボットですねw
リアルロボットに位置するティアナの見も蓋もないツッコミが素敵でした。
必殺技のくだりで「ほほう」と感心を示すスバルも可愛いが、その必殺技をえげつなく現実で語るティアナの冷たさに痺れるw
あと、クロスした世界観がここで生かされてるのがいいですね。
ムガンが主力の敵だったせいか、ガジェットへの対応が知識不足だった点に細かい配慮を感じます。
魔力がダメなら拳で、って結局怯まないスバルは熱血度合いが増して比例する要因アホの子要素も上がってる気がする。
この馬鹿なノリがグレンラガンっぽくていいなぁw

349 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/10(土) 16:11:17 ID:TjYfy9rC
>>347
設定スレ行け

350 :一尉:2008/05/10(土) 19:31:37 ID:MuXAf1lh
特設支援

351 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/10(土) 20:54:27 ID:hnQf2jeh
R-type氏やキャバクラ氏、stylish氏の本編の続きが読みたい

352 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/10(土) 21:43:30 ID:I4NHZUZc
読めばいいじゃん
そのうち投下されるだろうし

353 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/10(土) 22:12:00 ID:BepFhByv
待ってる時に内容のおさらいをするのもまた楽しいもの。

354 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/10(土) 22:38:20 ID:DfOAwDPv
まあ、今日に限って誰の投下もないのはさみしいがな。
1日近く投下なしってここでは珍しいほうなのかな?

355 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/10(土) 23:03:19 ID:kqpUt9q/
今長編に手つけてみてるんですけど、なのは本編であまり触れられてない所に
趣味に走った捏造設定組み込むのってこのスレ的にアウトでしょうか?

356 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/10(土) 23:13:30 ID:xnGTRGoR
>>355
ウロスで聞きな。その方がもっと情報が仕入れられる。

357 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/10(土) 23:15:06 ID:bvO7koKY
>>355
あなたの力量しだいかな


358 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/10(土) 23:17:19 ID:kqpUt9q/
了解。ウロスにコピペしてきます。

359 :kasou:2008/05/11(日) 09:25:09 ID:yE+vMyHW
知りませんでした。迷惑かけてすみませんでした。

360 :魔法少女リリカルなのはTES ◆O4WHtYg2/w :2008/05/11(日) 12:01:17 ID:MGySNOR7
誰もいないみたいなので、隙を見て投下をば。

361 :魔法少女リリカルなのはTES ◆O4WHtYg2/w :2008/05/11(日) 12:01:48 ID:MGySNOR7
 この広い世界には幾千、幾万の人達がいて。
 いろんな人たちが、願いや想いを抱いて暮らしていて。
 その願いは時に触れ合って、ぶつかりあって。
 だけど、その中の幾つかは、
 きっと繋がっていける。伝え合っていける。
 これから始まるのは、そんな出会いとふれあいのお話。




 ――――魔法少女リリカルなのはThe Elder Scrolls はじまります



 タムリエル。

 正確に言えばニルンと呼ばれる世界に複数存在する、大陸の一つ。
 その全土を支配している、セプティム朝タムリエル帝国の事を示す。
 つまり管理局の見解による『第23管理外世界』とは、この世界の一部でしかない。
 とはいえ、このタムリエルのみを『管理外世界』とする判断も、決して間違っているわけではない。
 何故ならタムリエルと他大陸の間に広がり、互いの交流を阻む「ムンダスの大海」とは、
 我々の認識する「水によって満たされた海」ではなく、異世界と半ば地続きとなっている「精神世界」だからだ。
 管理局風に呼ぶならば「ムンダスの大海」は「次元空間」と置き換えても良いのかもしれない。
 最も、非常に危険が伴うとはいえ通常船舶で航行が可能な以上、やはり厳密な意味で「次元空間」とは別物なのだが。

 結界に揺らぎが見られた時点より密かに調査を実施した結果、上記の通り、ある程度以上の情報収集に成功している。
 この世界の文明レベルは中世の封建社会に酷似しており、それほど進歩した技術などは持っていない。
 石造りの街並みが広がり、機械類は未だ出現せず、よって世界は「剣と魔法」によって支配、運営されている。
 しかしながら魔法技術に関しては、時間や様々な技術的要因から調査は難航しており、現在の所は何も判明していない。
 だが、外部世界からの接触を遮断する結界。それも管理局に感知、解除できない結界。
 このような大規模魔法を行使できることから、その魔法技術は詳細不明なれども高度であると予想される。
 本任務は、その結界の基点であると思われるタムリエル中央、シロディール地方へと降下し、
 結界の揺らぎ――即ち大規模次元犯罪の前兆と思われる要因を調査し、可能ならば対応する事である。
 この異世界タムリエルは前述の通り、極めて未知の世界に等しく、その調査は多大な危険が伴うだろう。

362 :魔法少女リリカルなのはTES ◆O4WHtYg2/w :2008/05/11(日) 12:04:16 ID:MGySNOR7
「――――故にくれぐれも注意されたし、か」

 深い森の奥で、なのはとフェイトは出立前にクロノから言われた忠告を思い出し、小さくため息を吐いていた。
 成程、確かに注意力散漫であったかもしれない。
 タムリエル――シロディール地方に広がる森林の風景は、とても素晴らしいものだった。
 他都市に比べて多少なりとも自然の多い海鳴町は元より、ミッドチルダでも、こんなに綺麗な森は無いだろう。
 彼方此方から小鳥達の歌声が聞こえてくるし、青々と茂った木々の隙間から差し込む木漏れ日は、とても暖かだ。
 目を凝らせば林の奥には鹿の姿も見て取れた。周囲を探せば野兎なんかもいるかもしれない。
 そして何よりも、なのはが復帰したばかりであったし、二人っきりでの任務なんて本当に久しぶりだったのもある。
 ピクニック気分、とまでは言わなくとも浮かれていたのは事実だった。
 そしてこの世界で初めて人影を見かけて、ウキウキと話しかけてしまったことも認めて、なのはは頷いた。

「クロノ君、確かに私達が悪かったかもしれない」

 でもね。
 だけどね。

「こんな猫さんみたいな人に襲われるっていうのは、注意しようがないと思うの」
 
「猫じゃねえっ! カジートだッ!
 良いからさっさと金を出せ! 無けりゃ親御さんに出してもらうんだなッ!
 それも嫌だってんなら、ぶっ殺して身包み剥ぐだけだ!
 どっちにしたって手間は大して変わらねぇんだぞ!」」

 一方、吼える猫さんみたいな人――もといカジートの山賊は酷く頭が痛かった。
 カジートとは、つまり判りやすく説明するならば『猫の獣人』とでもするべきか。
 獅子か猫のような頭部を持ち、その体を覆う毛皮や、尻に生えた尾も獣のそれだ。
 そして何より特徴的なのは、その頭部に見合った瞳――暗視の力を持っているという事。
 その為、多くのカジートが盗賊や山賊へと道を誤ることが多いのだが、
 彼もまた、そうして犯罪者へと成り果てた――新米の山賊である。

 基本的に山賊、追剥の類は街道沿いの砦跡や、野営地に居座ることが多い。
 街道を行く旅人や何かは旅費を持っている事もあるし、良い稼ぎになるのだが――
 その一方で、山賊にとって酷く危険な場所でもある。
 数時間間隔で街道を巡回している帝都兵は、駆け出しの山賊にはとんでもない脅威なのだ。
 何せ帝国軍正式採用の鋼鉄鎧は酷く頑丈であり、その技量は並々ならぬものがある。
 まともに戦ったのでは当然太刀打ちできないし、隠れていても見つかるのが関の山だ。
 当然、駆け出しの山賊である彼にとって、街道沿いはリスクが高い。

 そこで彼は帝都南方に広がるグレートフォレストの、更に街道から南に外れたあたりを根城としている。
 洞窟や遺跡が点在し、新米の冒険者が訪れるこの辺りは非常に良い『穴場』なのだ。
 なにせ駆け出しの冒険者というのは新米の山賊と、たいして力量の差が無い。
 更には身に着けている装備は高く売れるし、上等な品だったら自分の物にしても良い。
 勿論、返り討ちにあう可能性だってあるのだが――今回に関しては、その心配はなさそうだった。
 何せ上等そうな衣服を身に着けた少女が二人、だ。
 杖を持っているのを見た所、魔術師の類かと思って警戒したが……呪文を唱えてくる気配も無い。
 というか、このシロディールでも見たことのない形の杖だ。
 噂に聞くMOD(意味は知らない。彼はモロウウィンド産だろうと見当をつけているが)とかいう品だろうか。
 何にせよ、高値で売り飛ばせるのは間違いあるまい。

363 :魔法少女リリカルなのはTES ◆O4WHtYg2/w :2008/05/11(日) 12:04:37 ID:MGySNOR7
「なのは、なのは。ひょっとしたら猫じゃなくてライオンなんじゃないかな」

「そっか……ごめんね、ライオンさん。間違えちゃったよ」

「だーかーらーっ!!」

 ああもうやり難いなァッ!
 まったくもって緊張感が無い。――どこぞの箱入り娘か何かだろうか。
 カジートの存在すら知らなかったようだし、そうと見て間違いは無い筈だ。
 噂じゃあ、レヤウィンの伯爵夫人は酷い異種族嫌いだとかで、
 折りを見ては異種族人を拷問にしかける――のだそうだ。
 まあ、其処まで過度じゃないにしろ、差別主義者に育てられた良いところの娘達。
 ――なんてところだろう。
 こうして威嚇の声を上げて斧を振り回してもまったく動じない辺りを見ても、
 やっぱり世間に慣れてないに違いない。

 ――そうやって声を荒げるカジートに対し、なのは達もまた途方に暮れていた。
 いや、確かに強盗に襲われるなんてのは二人とも初めての経験だったが、
 今までの人生――特にここ数年で――それに倍する程の修羅場を潜り抜けている。
 それに第一……その、何だ。持っている武器がデバイスでも何でもないただの鉄の斧では……。
 正直、バリアジャケットや防護シールドを抜けるとは思えないし……。
 彼の纏っている革鎧だって、此方の砲撃魔術に耐えうる品だとはとても……。
 
「どうしようか、フェイトちゃん?」

「この世界のお金なんて持って無いし――……」

「……泥棒さん相手だったら、お話を聞いてもらうのも、良いと思うの」

「それはちょっと、物騒なんじゃないかなぁ……」

「てめえら、何をごちゃごちゃ喋ってやがるッ!
 うるさ「いや、五月蝿いのはお前のほうじゃないか?」

 その声は、なのは達の背後から、本当に突然響き渡った。

364 :魔法少女リリカルなのはTES ◆O4WHtYg2/w :2008/05/11(日) 12:05:07 ID:MGySNOR7
 驚き、振り返った二人の前にいたのは――――影のような男。

 本当に今の今まで、彼が存在する事にまるで気がつかなかった。
 果たして何処からか転移してきたのだと言われても、疑う事は無かっただろう。
 或いは、ひょっとするとそれは、このカジートの山賊も同様だったのかもしれない。
 明らかに視線の先――視野に入っていたはずの空間に、突如現れた人物を、
 彼はこの世のものでない物を見るように見つめていた。

 何故なら、その腕には既に弓が引き絞られていたからだ。

 この距離だ。弓に矢をつがえる前ならば斧を持つカジートに分があった。
 だが、既に矢をいつでも発射できるのなら……話は別だ。
 よほど下手な射手でもない限り外すことはないだろうし、
 そしてこの男が『よほど下手な射手』である事に賭ける勇気は無い。
 だがカジートの山賊は、それでも精一杯の虚勢を張って叫んだ。

「なんだ、てめぇっ! 俺の獲物を横取りする気か!?」

「特段、そんなつもりは無いが。
 此方としては彼女達を見逃すのと、少し夢味が悪くなりそうでね。
 なので止めに入らせて貰った。
 良いから早く逃げ出す事をお勧めする。さもなければ君の頭を射抜くだけだ。
 ――どちらにしても、手間は大して変わらない」

 その最後の言葉――つまり『いつでも殺せた』という一言が、決定打だった。
 カジートは泡を食ったように斧を放り出すと、一目散に街道のほうへと走り出していく。
 当然の判断だったろう。それは、なのはとフェイトにも良く理解できた。

 この影のような男は、最初から見ていたのだ。一部始終を。
 そして――……三人が三人とも、その存在に気づかなかった。
 どれほどの力量の持ち主だというのか。
 ――若干12歳の二人には、とてもじゃないが見当がつかない。

「……やれやれ、まったく。
 ガードの奴ら、鹿狩りには熱心な癖をして街道外の山賊退治は……。
 君達、二人とも怪我は無いかい? 
 どこの出身だか知らないが、街道や街から離れない方が良いぞ」

 そう言いながら近づいてくる男に対して、二人は礼を言うべくその顔を見上げ――そして固まった。
 
 クロノ君。確かにクロノ君の言うとおり、この世界は色々とわからないことが多いみたいです。
 だって、その、さっきの猫さんにも驚いたけど――この人。
 助けてくれたし、すっごく優しそうな声なんだけれど、そのお顔が――……。



「「……蜥蜴さん?」」



 ……アルゴニアンだ、と蜥蜴頭の男は、苦笑しながら訂正した。

365 :魔法少女リリカルなのはTES ◆O4WHtYg2/w :2008/05/11(日) 12:06:29 ID:MGySNOR7
以上ここまで、投下終了。

シロディールでは歩いて五分で山賊に襲われます。
しかも基本は問答無用です。
有り金を置いてけ!とか言うカジート君はかなり良心的です。
というかガード(衛兵)仕事しろ。鹿狩りばっかしてるな。

では、帝国兵にセタァァァップッ!されてきます ノシ

366 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 12:28:13 ID:AH07ea2E
TES氏、GJでした。原作プレイしたことは無いのですが
方々で見ていますので楽しめました。
地の文もしっかりしているため原作を知らない人でも十分楽しめると
思います。次回も期待させていただきます。

一点だけ。MODの説明を。あれって確かプレイヤー側が作ったパッチ
でしたっけ? アイテムやイベント、街並みとかも変更できるという。

367 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 12:37:23 ID:D3ukvZWE
GJ!
フェイトとなのはのほんわかっぷりと新米山賊なカジートの三下っぷりに苦笑w
いや、確かに単なる鉄の斧じゃあバリアジャケットは抜けないけど、山賊に襲われている状態でその態度はないだろうw
stsだと見られない純粋無垢な”魔法少女”たちに和みました。
そして、おそらくプロローグに出てきたアルゴニアンらしき人物と出合ったフェイトとなのはたちがどうなるのか楽しみです。
原作は齧った程度ですが、文章もテンポよく、期待出来そうです。

ファンタジーなど文字通りぶっとばすなのはの砲撃魔法がいつ登場するのか楽しみにしつつ、次回が待ち遠しいです!
最後に再びGJ!

368 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 14:26:48 ID:5A+d+8UW
>では、帝国兵にセタァァァップッ!されてきます ノシ
貴様!犯罪者か!w

369 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 14:34:09 ID:jb1+Nyp+
カジートプレイヤー(新米、旅人)なもので、楽しみにしてましたー。
会話のテンポもよく、見ていて和みました。

これからも頑張ってくださいッ!!

370 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 15:00:15 ID:bKHv9KwZ
GJ!
読んでいてとても和みました。
次も楽しみにまっています。

371 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 15:07:25 ID:YzGh2cAb
なのはの他作品踏み台MADにぶち切れた俺にとってここはオアシスだ・・・
GJ!!!

372 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 15:10:47 ID:YzGh2cAb
なのはの他作品踏み台MADにぶち切れた俺にとってここはオアシスだ・・・
GJ!!!

373 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 15:11:09 ID:YzGh2cAb
連投ごめんなさい…orz

374 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 16:52:33 ID:rekxpiG3
一通りリリカルなのはのアニメ観たが昔俺が観てた魔法少女プリティサミーに似てるような気がするような、、、、

375 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 17:04:25 ID:st4IcX+l
>>374
ここはお前の日記帳じゃない

376 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 17:46:25 ID:Q69MApAC
なんかやっぱり最近投下減ったよなぁ
一時期は毎日が投下ラッシュだったのに

377 :作者の都合により名無しです:2008/05/11(日) 18:22:21 ID:h/Ho7n1T
投下が大量にあっても第一話というなの単発だらけだとかえってしょんぼりするけどね

378 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 18:42:32 ID:0rPKuecI
>>365
GJ!
OPの下水道を出て五分足らずで襲われたのはいい思い出。
一番最初に見つけた人が山賊でいきなり襲われるとは普通は思わんよねw
そういえばOblivionの世界って一応機械文明も存在してしなかったっけ?
まあ、作ってた連中が消えちゃったらしいし、文明の大半は確かに「剣と魔法」なんだけど。

あと、どうでもいいけど何故スタップでなくセタップ?
セタップだとガードじゃなくXライダーを思い出して困るw

379 :一尉:2008/05/11(日) 19:05:47 ID:CZIKOKqD
まさしく獅子王支援

380 :真・リリカル無双:2008/05/11(日) 19:09:43 ID:xIAbpEm5
>>365
テンポある文章作りが感じよかったです。GJ

また、これまで投下した職人の皆さんGJです。

以前に投下したLyrical無双を永い間考え直して新しく書いたのですが投下よろしいですか?

無双OROCHI 魔王再臨とStSのクロスです。

381 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:13:27 ID:sjVThyD1
ども、初めまして
ちょいと小ネタ考えて見ました。
以前、mixiのなのはコミュで投下してみた話を形にして見ました
投下体制良好ならお願いしたいのですが
それと、テンプレに以前投下された刀語のクロスをお借りしてます
ので、投下前に作者様に確認と了承頂きたいのですが、宜しければ可否の返信お願いします
不可なら、オリジナルで完成させて投下します(何時に成るか分かりませんが・・・・;)
尚、クロス元は投下時に一緒に

382 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:14:11 ID:sjVThyD1
<追記>
投下予定は、早ければ二分後に

383 :真・リリカル無双:2008/05/11(日) 19:15:45 ID:xIAbpEm5
あ、なら、先どうぞ。書き直しを見つけたので。

384 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:17:38 ID:sjVThyD1
>>無双の人
では、御言葉に甘えて

385 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:18:45 ID:9iTjPsod
>>刀語のクロスをお借りしてます

それってパクルって意味っすか?

386 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:19:09 ID:sjVThyD1
J.S事件終着後、起動六課に一つの依頼(命令)が降りてくる

“第97管理外世界に於いて、明らかに該当世界の技術力を超える発明品を発見
 その特異性と能力に因り、件の物質をオー・パーツ(ロストロギア)と認定
 速やかに確保、回収せよ”

それは、何の変哲も無い指輪と小箱

『しかし、私たちの故郷には色々とあるなぁ』
時空管理局遺失物管理部機動六課長・同部隊舎総部隊長・中枢司令部及び後方支援部隊「ロングアーチ」トップ
八神はやて

『何者だ?』
10代目ボンゴレファミリー嵐の守護者・同守護者筆頭
獄寺隼人
『今日、アポを取っていた来客だ』
10代目ボンゴレファミリー雨の守護者・時雨蒼燕流九代目継承者
山本武
『な!?何で俺が知らないのにオマエが知ってるんだよ!?』

『それは危険なモノなんです。明らかに、この世界の技術力を凌駕している。
 行き過ぎた力は、暴走を起こします!』
時空管理局執務官・同局遺失物管理部機動六課前線分隊「ライトニング」隊長
フェイト・T・ハラオウン

『オマエら、コレの何を知っている?』
ボンゴレファンリー10代目専属家庭教師・アルコバレーノの一人
リボーン

『なるほど。話は分かった』
『じゃあ!?』
『お帰り願おう』
ボンゴレファミリー10代目後継者。全てを包み込む大空
沢田綱吉

『どうして、そこまでして?それが危険なものだって、分かってるのに』
『―――――』
時空管理局本局武装隊航空戦技教導隊戦技教導官・同局遺失物管理部機動六課前線分隊「スターズ」隊長
高町なのは

交錯する彼我の想い
起こってしまう、衝突
増加する、存在への疑惑と懸念
そして、彼は決意する

『破棄しよう』
『ツナ!?』
『10代目!?』
『本気か!?沢田?』
『ボス・・・・(骸様、如何致します?)』
『―――――』
『僕はその意見に賛成です』

『本気なんだな?』
『あぁ。争いの種と成るのならこんなもの、棄てる』

コレは、空白の9年を埋めるifストーリー

387 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:20:32 ID:sjVThyD1
クロス元は、家庭教師ヒットマンリボーン!です
時間設定は、なのは側はJ.S事件終了二ヶ月後、リボーンは9年後
リボーン側の設定として、ボンゴレリング、 匣は有り
特殊設定として、獄寺はC.A.I、山本は燕特攻修得済みです

何か、無理矢理感が否めない構成に成ってしまいました
文才の無さを、本気で嘆くこの瞬間
ちなみに、実はコレは付属で本命は下だったりします
機動六課を守護者に例えて、闘った場合どちらが強いか
続けて投下します

388 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:21:45 ID:sjVThyD1
10代目ボンゴレファミリー晴の守護者
明るく大空を照らし、ファミリーを襲う逆境を自らの肉体で砕く日輪
口癖とモットーは『極限!!』 その拳に、砕けぬもの無し!!
拳闘士座の漢(実は乙女座)、笹川了平!!
「極限だ!!」
       VS
機動六課の鉄砲娘!
持ち前の明るさと前向きな精神で、現状打破どころか引っ繰り返す!?
S.Aの使い手、スバル・ナカジマ!!
「よく分からないけど、いっくぞー!」

10代目ボンゴレファミリー雷の守護者
激しい一撃を秘めた雷電。ファミリーへのダメージを一手に引き受け、消し去る避雷針
特異の電撃皮膚(エレットゥリコ・クオイオ)は通じるのか? ランボ!!
「やれやれ、面倒な事になったもんだ」
       VS
機動六課前線部隊の白一点!?
噂にめげず、今日も頑張れ青少年!
雷槍操りし疾風の竜騎士(ドラグーン)、エリオ・モンディアル!!
「よろしくお願いします!」

10代目ボンゴレファミリー嵐の守護者
荒々しく吹き荒れる疾風。常に攻撃の核となり、休む事のない怒涛の嵐
10年の月日が彼に与えたものは、成長だけに非ず!
10代目ボンゴレファミリー筆頭(自称)、獄寺隼人!
「果てろ」
       VS
機動六課スターズ分隊副隊長
夜天の主に付き従う守護騎士(ヴォルケン・リッター)が鉄槌の騎士!
我が鎚に、砕けぬもの無し! ヴィータ!!
「ブチ穿(ぬ)けェェェェ!!」

389 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:22:06 ID:sjVThyD1
10代目ボンゴレファミリー雨の守護者
全てを洗い流す恵みの村雨。戦いを清算し、流れた血を洗い流す鎮魂歌(レクイエム)の雨
ボンゴレファミリーが誇る二大剣豪の一角。その実力は当代の剣帝を超える!?
時雨蒼燕流九代目継承者、山本武!!
「よろしく」
       VS
機動六課ライトニング分隊副隊長
北欧神話に謳われる、炎の魔剣を振いし烈火の剣士!
夜天の主に付き従う守護騎士の将、シグナム!!
「さて、お相手願おうか」

10代目ボンゴレファミリー霧の守護者
実態の掴めぬ幻影。無いものを存るものとし、存るものを無いものとすることで敵を惑わし、ファミリーの実態を掴ませない幻

想(まやかし)の幻影
マフィア界の忌み子。纏いしその空気、実体を見せず
六道輪廻、六道骸!
「堕ちろ。そして廻れ」
       VS
機動六課新人達のリーダー
弛まぬ努力に裏付けされた、隠れた実力者!
戦闘情報並行処理(マルチタスク)のエキスパート。即ち“チームの核”!
相棒に振り回されるのも、実は嫌じゃない?ティアナ・ランスター!!
「やかましい!!////(↑)」

10代目ボンゴレファミリー雲の守護者
何者に囚われず我が道を行く。独自の立場からファミリーを守護する孤高の浮雲!
正に最強。それ以外に相応しい言葉は無い!
群れる事と束縛を嫌う一匹狼、雲雀恭弥!!
「群れる奴等は、咬み殺す」
       VS
機動六課スターズ分隊長
機動六課の誇る最凶の戦力。乙女に向かって、この紹介って如何でしょう!?
不屈のエース・オブ・エース、高町なのは!!
「行くよ、レイジングハート」

ボンゴレファミリー10代目後継者
全てに染まりつつ全てを飲み込み包容する大空
“マフィアらしくないマフィア”。争いごとを嫌う、優しい性格。仲間の為なら命を張れる(死んでも死にきれない)
その実力、未だ未知数、沢田綱吉!!
「――――――――」
       VS
機動六課部隊長
その実力は六課最強。しかして守護騎士達のお母さん!?
悲しき別離を乗り越え、彼女は強くなった
夜天の王、八神はやて!!
「ほな、頑張ろか」

390 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:25:28 ID:sjVThyD1
投下は以上に成ります。ありがとうございました(_ _)
何分、初投下なもので至らぬ点あるかも知れません;

<書いて見ての、個人的感想>
紹介文句に苦労しました
後、各々の一言台詞にも;
ちなみに、フェイトの出番はと言うと
20年後のランボならともかく、10年後では正直キツイのでエリオにしました
個人的に、ヴィータが嵐ってのは無茶が有るかもって思ってます

ありがとうございました

391 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:26:48 ID:sjVThyD1
>>385
有り体に言ってしまえば、そうなります
ただ、紹介の仕方が如何しても被ってしまうので・・・・

392 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:28:11 ID:7C47k6YA
もう嫌だ・・・
誰かどうにかして

393 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:39:05 ID:f9WnMs6W
     γ´`ヽ
     _ゝ -''` ー- _
   /          \
  /             ヽ    、′     、 ’、  ′     ’      ;  、
  ,':..              ',       . ’      ’、   ′ ’   . ・ 
  !:::::.  , -────── 、 |     、′・. ’   ;   ’、 ’、′‘ .・” 
  |:::::::. |  `ィェァ    `ィェァ| |         ’、′・  ’、.・”;  ”  ’、 
  |::::::::.. `───────' |    ’、′  ’、  (;;ノ;; (′‘ ・. ’、′”;
  .|:::::::::::..            |  ’、′・  ( (´;^`⌒)∴⌒`.・   ” ;  ’、′・
  |::::::::::::::..           l   、 ’、 ’・ 、´⌒,;y'⌒((´;;;;;ノ、"'人      ヽ
   l:::::::::::::::::....        /        、(⌒ ;;;:;´'从 ;'   ;:;;) ;⌒ ;; :) )、   ヽ
   |:::::..ヽ:::::::::::....      /         ( ´;`ヾ,;⌒)´  从⌒ ;) `⌒ )⌒:`.・ ヽ    ,[]
   |:::::::....` 、:::::::::..  /  ′‘: ;゜+° ′、:::::. ::: >>391´⌒(,ゞ、⌒) ;;:::)::ノ    ヽ/´
   }::::::::::::::::...`ヽ_人,ノ{          `:::、 ノ  ...;:;_)  ...::ノ  ソ ...::ノ  
  ̄:::::::::::::::.:::::::::::::::::::..  ̄ ー- _
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::....       \

許可取ると言っておきながらそのまま投下とは正気を疑います。
というかそもそもそれは「借りる」でなくて「盗用」に当たトエエエイ。
トエエエエエイ イエアイイ イエ イイエアイイエアエ!

394 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:41:36 ID:sjVThyD1
>>393
スミマセン、自分も今気付きました
投下する事で頭一杯に成ってたのと、一言入れた事で安心感が起きました
本当に、申し訳無いです(_ _)

395 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:42:17 ID:c/cReQ00
>>381
お前は誰に許可取って投下したんだ?
>>383のリリカル無双氏は「投下するならお先にどうぞ」って言っただけだぞ

396 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:44:22 ID:5YZKbrS2
>391
おまえさんが幾つか知らんが
人の常識(マナーとモラル)と知恵(オリジナリティ)を
持ちあわせていないのはよーくわかった。物まねパクリ猿だな。

人間レベルになるまで人生をやりなおしてこい。

397 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:45:55 ID:7C47k6YA
ここまで来るとスレを潰す為の工作なんじゃないかとすら思えてくる

398 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:45:55 ID:8W1o4mP1
>>391
もうここに来るな
盗作するような奴は死んだがいい

399 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:48:00 ID:f9WnMs6W
もう不毛なのでスルーで。
wikiにも載せないようにしましょう。

ちょっと盗用の確認だけ取ってくる。

400 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:54:17 ID:03/TGskO
良し、とりあえずリリカル無双氏のこと考えようぜ
ダッキのコス3を初めて見た時、無理すんなよ!ってリアルで叫んだ

401 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:55:21 ID:D3ukvZWE
あー、構成だけパクったというか真似た臭い。
でも、確認もしないで投下するのは本当に勘弁してくれ。

誰かWikiに乗せたら速攻で削除という形で。

402 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 19:56:16 ID:f9WnMs6W
「刀語」で検索をかけたところ、http://www38.atwiki.jp/nanohass/pages/2103.htmlがヒットしましたが、
正直に言ってどこパクったのかわからないです……。
>>401の言うとおり、構成を真似たということでしょうかね。

403 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 20:03:13 ID:D3ukvZWE
とりあえずリリカル無双氏の投下を準備しよう。
何分か知らんが、支援準備を行うんだ!

404 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 20:04:20 ID:7C47k6YA
よし
全裸で待機しとく

405 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 20:06:51 ID:f9WnMs6W
だね。

というわけで無双氏、もうこのまま投下してもいいと思いますよー

406 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 20:22:21 ID:dVZDDXcG
よし、無双氏投下待機

407 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 20:53:22 ID:kD5a3dpI
何もなかったということで。相手にするのも馬鹿馬鹿しい。わざとらしいし。
誰もまとめに載せないでください。載せたら即削除でお願いします。
それでは私も支援

408 :リリカル無双:2008/05/11(日) 21:08:52 ID:xIAbpEm5
なんだか、書き直ししてる間にエライコッチャ!

書き直し終了しましたので祝融みたいに投げます。

409 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 21:09:15 ID:f9WnMs6W
おk!

410 :リリカル無双:2008/05/11(日) 21:12:24 ID:xIAbpEm5
魔王……。

それは旧暦の次元世界において人々の争いに力による究極の世界を創ろうとして介入し、大規模な次元震を起こした最悪最凶の存在。

公には『聖王のゆりかご』が原因である。と言われているが一説によれば『魔王』とこの『聖王のゆりかご』が介入したことで古代ベルカはダメージを受け、滅亡寸前まで追い詰められたというらしい。

しかし、それも一握りの魔導師達により平定され。『魔王』の存在そのものが歴史上から消されて新暦の次元世界に生きる者の多くは知らない。

反対に『魔王』の存在を知る者達は彼の最悪最凶の力を欲している……。
とある研究施設に『魔王』を待ち望む二人がいた。

大きななモニターに映るカプセル型の機械兵器を見据えながら声が響く。

「卿の兵器、なかなか順調であるな。」

「ありがとう。準備は揃っている……だが、もっと行動を起こすには足となる人材が必要だ。」

暗く広い施設の中、紫色の長い髪を揺らせて白衣を纏った男性が呟いていた。
廊下を歩けば両側には何体ものカプセルが並び、中は蓄えられた液体に漬かった少女達が眠っている。


「ルーテシアだけでは行動も狭まろう……が今はまだ手の内を晒すには早いぞ。スカリエッティ。」
男性の名を呼んだ男の声。
「二人ほど心辺りがあるのではないのか……?」
続けてそう述べた男は小さなモニターを展開しスカリエッテの前に見せる。
するとスカリエッティはそこに映るある二人の姿に口の端を吊り上げて妖しく微笑む。

「ふふ、君も察しが良いな……そうだ、飛将とプロジェクトFで生まれた作品さ。」

「まだ若いが惨めな生を歩んできたようじゃ。」

「ククク……あはははは!」
いつもはつまらない表情でいることがほとんどだが、スカリエッティは自分の興味がそそられるものには狂に等しい笑い声をあげる。
何時もよりも狂っていた……。



411 :リリカル無双:2008/05/11(日) 21:16:25 ID:xIAbpEm5
「ならば、そろそろ私の元に来させるか。飛将にはルーテシアを向かわせてみよう……。もう一人の方は「儂が行こう」

遮るように答えた男は暗闇からその巨体を現す。
その姿はバリアントジャケットと皮膚が混ざり合ったようで。瞳は血の如く朱く染まり、頭からは角が生え。『鬼』といった風貌であった。

「かの者は最強を追い求め、かの者は迷っている。人とは芯が真っ直ぐで迷っている時ほど脆く篭絡しやすい生き物だからな。」

「君は悪魔だね……。清盛」
呆れたようにそう告げるスカリエッティ。
にも関わらず彼らは笑みを絶やしてはいない。

「儂なんぞより、強い命を造りだす卿の方が悪魔ではないのか?ふふふ」
「痛いところを着くね、君は。ああ、そうだ妲己はどうしているだろうね?」

スカリエッティの尋ねに清盛は右手の拳を鳴らしながら答える。
「フフ、案外にも我らが準備する宴に招く客人に成り済ましておるやもな。」



「……儂の居場所か。」

ミッドチルダ保護施設。その中の厳重に分厚いシェルターで閉められたな部屋で一人の少年が水の入ったコップを片手に呟いていた。

その日の彼はとても忙しいものであった。
薄い思考で少年は思い出す。
こんな部屋にいるから今の時間など把握出来ないが、昼下がりであっただろうか……。



412 :リリカル無双:2008/05/11(日) 21:20:58 ID:xIAbpEm5
突然、施設の人間が現れて自分の手足に枷を付け始めた。
何なのだ?と思っていると、部屋に黒い服……制服のようなものを纏った金髪の女が入ってきた。

施設の人間は儂がこの女に危害を加えないように念をおして身体を押さえ込む。しかし、女は「大丈夫です。」と言って儂を押さえ込む人間達に止めさせるように促した。

「何故、彼は此処に?」

女は人間達に儂の出生を尋ねる。

「はい、この子はプロジェクトF関連で造られた名家のご子息のクローンです。ご子息が事故で亡くなられて母親がクローンを造るように手配したのですが、クローニングに失敗してしまい、右眼が無い状態で生まれ、その姿を母親から疎まれました。
そのこともあり永い間虐待を受け、ある日にこの子供は龍を召喚して母親や一家全員を殺害してしまい。この施設に送られてきたのです。」



……母親に?

女性は眼の前の少年の生い立ちと自分の生い立ちを重ねてしまう。
母さんに「いらない子」と言われ、私の全ては崩れた。しかし、私にはなのはやみんなが居た……。
けど、この子はなんの希望もなかったのだ……。ただ、右眼が無いから。そんな理由って無いよ……。

内に現れた言い知れぬ憤りに女性は気付かないうちにキュッと力強く手を握っていた。

「そういうことじゃ……。貴様は儂に、何の用なのじゃ。」
説明の最中に。決して、顔を見ようとせずに少年は俯いたまま女に聞いた。

「止めておいた方が賢明です。この子は「もう結構です。この子の枷を外して下さい、引き取ります……。」
聞きたくない。ここの人達は前も。
キャロの時もそうだった……キャロの時もここの人達は彼女を化け物を見るような眼で見ていた。

「貴様が引き取る……だと?」
俯いたまま。少年は女に再び尋ねる。しかし、その口調は低かった。


「うん。貴方の居場所は「儂に居場所など無いわ!世迷い言をいうな、馬鹿め!」
女の言葉を遮るように少年は叫ぶ。が、女は顔を横に振る。




413 :リリカル無双:2008/05/11(日) 21:24:37 ID:xIAbpEm5
「そんな事、ないよ……」
「いけません!「大丈夫です。」
制止を振り切り、女は少年へと歩み寄る。
しかし、少年にとっては……それが我慢ならなかった。

「なら……なら貴様に何が解る!?母上に見捨てられ、無い右眼を醜いと言われ、それでも……。それでも殺したくなかったのに殺してしまった儂の心を、貴様なんぞに何が解る!!」
次第に少年の右眼の凹みから異様程の魔力が発し始めた。

それでも、女は優しく微笑み。少年にゆっくりと歩み寄る。

「……寄るな。儂に近づくな!独眼竜が貴様を殺すぞ!寄るなっ!」
女は、少年の言葉を受け止めるように彼を抱きしめる。

少年は言葉を失ってしまう。

「大丈夫だよ。貴方がいなくて良い場所なんて無いよ。」
温かい……。

何なのじゃ……この女は。

いままで冷ややかさしか感じたことのないこの儂に温かさを感じさせる。

こんな奴に怯えるとは儂は馬鹿じゃな……。馬鹿め。
身体を覆うように発していた魔力は収縮し、右眼へと戻ってゆく。

「……すまん。」

「ううん、私もいきなり抱きしめてごめんね。」

「……い、嫌ではなかった。」
赤くなった染まった顔を恥ずかしさから見せたくない少年は彼女から顔を背ける。

「大丈夫ですから、彼の枷を外して下さい。二人だけで話がしたいので。」
女の言葉に施設の人達は頷くしか出来ず、ただ黙って少年の枷を外し。部屋を後にした。


「結構、偉いのだな。貴様」

少年の素直な感想に女は怒ったように否定する。

「貴様じゃないよ。私はフェイト。フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。」

「す、すまん……儂は、伊達政宗じゃ。さっきの話……居場所と言ったな。」


政宗の問いにフェイトはこくんと頷く。

「政宗は一人じゃないよ……。」

が、政宗は首を横に振った。
ソレが予想していなかった行動からか、フェイトは驚いてしまう。

そして、彼は背を向けて答える。


414 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 21:27:16 ID:D3ukvZWE
支援!!
無双タイムまっているぜ!

415 :リリカル無双:2008/05/11(日) 21:30:08 ID:xIAbpEm5
「儂は……怒りに任せ。母や、皆を殺めた。未だ罪を償っておらぬのに居場所などない。」

その重苦しい声からフェイトは……。

同じく、生母を失ったフェイトには政宗の悲しみはよく分かる。が、自分よりも彼は深い闇に落ちている。

と悟らせた。

「…………」
言葉が出ない。

「儂はいましばらくこの場所で罪を償う。が、誘ってもらった気持ちには感謝しておる、フェイト。」


そう告げてから、儂はフェイトに帰るように促し、その時のフェイトは悲しそうな顔していた。
儂の前から完全に去るまでずっと。

それがずっと、頭に強く残っておる。
温かさをくれたからか……。
「だからこそ……フェイトのいう居場所は、儂には。」
ギリっと歯を噛み締めて呟く。

『卿の望み叶えてやろうか?』
「!?」
突然響いた声に政宗は辺りを見回す。しかし、隔離されて部屋に入るには眼の前のドアしかない。

『フフフ、こちらよ。』
再び響く声。
聞こえた方へと眼を向けるが自分の影しか無い。いや、影から聞こえたのだ……。

「誰じゃ……」
『卿の罪を償うことが出来る者よ。』
「何……?」


あの女性にしか話したことの無い。自分の願いを述べた影を政宗は鋭く睨む。
次第に右眼の凹みから身体へと魔力が溢れ出す。
「もう一度、ほざいてみろ。貴様を殺す!」
部屋に響く、憤怒の声。

しかし、影は恐れたふうを見せずに答える。
『魔王復活に力を貸せば家族を蘇らせることが出来る。』
「何……?」

影の言葉に身体を覆った魔力は霧散していく。
「馬鹿げたことを吐かすな。母は……儂を『無論、その忌々しい右の凹みに眼を与えることも容易じゃぞ。その姿なら卿の母も卿を醜く見ぬじゃろう。』

左眼が見開き、瞳が影から宙へと移り、力無く追う。
「右眼を治す……この呪われた穴に眼を?」
『儂と知り合いの研究者に任せればな。 来い、卿は此処で燻っているよりも望みの為に力を使うべきよ。』
スーッと影から姿を表した鬼のような男が政宗の心を揺さぶりはじめる。



416 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 21:32:03 ID:7C47k6YA
支援

417 :リリカル無双:2008/05/11(日) 21:37:40 ID:xIAbpEm5
「……儂は……儂は。」
『悩むならば、儂についてこい。』

「違う、そんなことでは償いの意味がない!」
『数年生きたばかりの若僧が罪を償う意味を語るか!!』

「……ぐっ、しかし。蘇るなど」
『それでも儂が信用出来んなら儂を殺すが良い。』

「…………」
『さあ答えるがいい、独眼竜……伊達政宗よ!』
ドスンと全身を殴るような衝撃が政宗の身体を襲った。
しばらくの間を沈黙の空気が支配する。そして……。

「…………罪を償うのが儂の願い。母上や皆を蘇らせることが出来るというなら、貴様に手を貸す。が、それが嘘なら儂は貴様を殺す!」

政宗は男を見上げながら立ち上がる。

『良い、判断じゃ。儂は平清盛。冥府より舞い戻りし男よ。 さあ、まずはドクターに会わせよう……フフフ』

嬉しそうにキヨモリは口の端を吊り上げ、政宗を影に連れ込む。
この時の彼の頭の片隅にはある女性の姿がまだ残っていた事を知りながら……。


※第22世界・カヒ北部の平原。

清盛が政宗を説得していた頃、気温の低い風が舞うこの平原に一人の大柄の男がある少女と立っていた。

「この俺にスカリエッティ等という雑魚と組めと言うのか……小娘?」

「……そう。ドクターの夢を叶える為に。」
紫色の長い髪が風でたなびくも、少女は気にとめず男を見上げる。

「下らん。妄想に浸る豚などに付き合う気はない。失せろ」
男は突き放すように背を向けて口笛を吹こうと指を加える。

「魔王と闘える。」

「何……?」
『魔王』……。少女が告げた名称に男は加えていた指を離す。

「管理局に居た時に貴方が追い求めた存在と会える。」

「……何故、それを知っている。小娘」
振り向くと男からは強大な殺気が溢れ出している。
少女は鋭く、見る者を射殺すような彼の視線に圧されるがそれでも懸命に答える。

「ゼストとお母さんが貴方の仲間だった……。」

「……ゼスト、小娘の母?」
思っても見なかった二人の名前に男から殺気が消える。

奴らだ、と……!?
それほど気にも止めなかった少女の姿に、男は記憶の中にある姿を重ねる。




418 :リリカル無双:2008/05/11(日) 21:44:35 ID:xIAbpEm5
自分が魔王を追い求めたが為に生き別れた同僚の二人の姿を……。
「なら母は……メガーヌ・アルピーノか……おまえの母の名前は。」
恐る恐る尋ねる男に少女はコクリと頷いて答える。
「私はルーテシア。メガーヌはお母さん。」

少女の答えに男は興味のなかった話につき動かされ始める。
自分の愛した女性の娘から、自分の追い求め、越えるべき天と見据えた存在の『魔王』を聞かされれば無理もなかった。

「俺は呂布、字は奉先だ……良いだろう、そのスカリエッティとかいう豚野郎に会わせろ。 ルーテシア」

その返事にルーテシアは静かに頷き、彼の手を握る。が、男はギロリとルーテシアを見下ろす。

「何のつもりだ?」

「わからない。……ダメ?」

「ふん……好きにしろ。」

メガーヌと似通った彼女の表情に男は複雑そうに答え。
ルーテシアは彼と繋ぐ手の力をきゅっと強くしながらグローブをに力を篭めて転送魔法を発動して、平原から自分達の姿を消す。


ミッドチルダ中央区画湾岸地区。


「呂布さんのGET作戦成功したようね♪ルーちゃんやるじゃない〜。」

手元に表示する小さなモニター越しに二人のやりとりを見ていた金髪の女性はどこか、嬉しそうにそう述べる。
「っと。六課の人居るなぁ。」

この地区に新しく建った為、眼の前には建物の中に荷物を運ぶ人の姿。建物を嬉しそうに見上げる管理局員の姿が視界に入り、女性は眼鏡を掛けて制服の人へと歩み寄る。が、

「眉毛書いてるわよね私?」
さささっと物陰に隠れて空間から鏡を取り出してで自分の顔を確認する。

制服も、間違ってない。身嗜みは……良し。私ってば可愛い〜♪

鏡を直し、女性は気を取り直して歩きだして先程見かけた人とは違う二人の女性局員へと声を掛ける。


「失礼します〜。」

「あ、はい。」


419 :リリカル無双:2008/05/11(日) 21:49:50 ID:xIAbpEm5
「本日から機動六課「ロングアーチ」スタッフとして情報補佐を担当する。ダッキ・ユウ二等陸士でーす♪」(※姿は魔王再臨3コスの耳無しです。)


「貴方もなんですか?」
ロングアーチスタッフと聞き、二人は嬉しそうに微笑む。

「私達も「ロングアーチ」スタッフなんです♪私は整備と通信担当のアルト・クラエッタ二等陸士です。」

「あ、私は情報処理担当のルキノ・リリエ二等陸士です。よろしくお願いしますね♪ダッキュウさん」

ピシッ!

「名前はダッキ・ユウね♪」
可愛いいなぁも〜♪
二人の同僚にダッキも思わず微笑んでしまう。

彼女に関してそれは本能的興奮みたいなものであった。
これからこの娘達を含めた人間達を追い込む事への。
「よろしくね♪」
色んな意味で♪ふふふ♪



こうして政宗、呂布。二人の存在がスカリエッティの元に向かい……。ダッキが潜入したことで。

次元世界で魔王再臨を巡る物語が始まった。


無双NANOHA 魔王再臨 プロローグ 完

420 :リリカル無双:2008/05/11(日) 21:54:48 ID:xIAbpEm5
以上です。

とりあえず、無双キャラは次元世界に在住しているのはそのままで。政宗をクローン。

呂布がゼスト達と同僚であったことにしました。

デバイスもインテリジェントとアームドとは違うタイプにしようと思います。
無双式デバイスとかw
まだ、なのは側に無双キャラの誰を置くかで悩んでますがw

支援ありがとうございました。

421 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 22:44:41 ID:D3ukvZWE
おっといつの間にか投下されていたぜ。
まずはGJ!
原作は知らないが、おどろおどろしい始まりには期待出来ます。
これは戦国無双と三国無双の多重クロスなのでしょうか?
呂布といえば三国志最強の武将。
そこに若い独眼竜が絡むとなると気になりますw

時期はstsのかなり前みたいですが、これからクロスキャラが、そして本編とは違う協力者とちょっと素敵にイカれているスカ博士の活躍に期待です!
これからも頑張ってください!

422 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 22:45:48 ID:Il9+T6YT
GJ!
原作知らないけど面白かったです。
続きはまだですかw

423 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 23:06:30 ID:Uj5D2hA9
>>421
無双OROCHIという戦国と三国のキャラ達がクロスするソフトがあってだな

424 :声の出演:名無しさん:2008/05/11(日) 23:12:21 ID:iVHtKq7A
久しぶりにテーマ曲系ネタ。

一度だけの魔法(『ペットントン』ED)
歌:小林綾子(『おしん』の人です)

もしも一度だけ 魔法が使えたら
どんなお願いをしようかな
胸をDカップ……もっと大きくしたり
ピンクのキャミソール 着てみたり
リリカルマジカル ジュエルシード
リリカルマジカル ジュエルシード
逢えばケンカしちゃう
あの子(フェイト)とほんとは
誰よりも仲良しに な・り・た・い

元歌はこちら(初音ミクバージョンですが)
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm1905137


425 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 23:15:12 ID:jQ1O2Gsq
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
 著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。


426 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 23:15:39 ID:p86FmxX0
ニコ動貼るなこの荒らし野郎

427 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 23:16:03 ID:5YZKbrS2
>>422
原作を知ると十倍おもしろいよ、マジおすすめ。

428 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 23:17:03 ID:dVZDDXcG
>>425-426
構うな、落ち着け

429 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 23:19:38 ID:jQ1O2Gsq
>>428
>>1も読めないバカにくれぐれもかまうな」と言う
>>424以外への釘刺しなわけだが?

430 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 23:20:59 ID:jQ1O2Gsq
おっと「>>1も読めない」じゃなくて「>>1からのテンプレも読めない」だったな

431 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 23:25:05 ID:p86FmxX0
ごめん……今日はあんなのが来てたせいでちょっと冷静さを欠いてた。

432 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/11(日) 23:38:57 ID:jb1+Nyp+
えーと・・・皆さん、投下よろしいでしょうか?

闇の王女第五章後編ですー。
生首注意報、発令。

433 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 23:39:20 ID:sQ3VIaAx
もち支援

434 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 23:40:39 ID:03/TGskO
無双氏お疲れ様っした!
OROCHIのクロス物を読みたかったんですよ。
飛将が出るって事は忠勝さんとか慶次もでるんじゃろかとか、銀ちゃんと星彩と麿は?とか。
色々期待して待とうと思います。

435 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 23:47:21 ID:D3ukvZWE
支援体勢に移行する!
総員、支援しろ。全力でだ!!

436 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 23:49:22 ID:Nmt0rreo
支援ですwデビルマン並の生首期待www

437 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/11(日) 23:50:01 ID:jb1+Nyp+
3脳に名前をつけてみましたー。犬の如く。


魔法少女リリカルなのは 闇の王女 第五章後編

 高度な技術が産み落とすもの――その多くが、人々の生活を向上させると同時に、悲劇をもたらして来た。
技術の進歩と共に造りだされた、数多くの鋼の怪物達――質量兵器。一度、ミッドチルダとベルカを盟主とする次元世界群を灰にしかけた非魔導兵器だ。
時代が新暦――魔導師が闊歩し、質量兵器が禁じられてもこの悲劇は止まることを知らなかった。
デバイス――魔導技術をより大きい力として、『限られた人々』――魔導の才を天から授かった人々――へ与える魔法の機械。
結果、迎えた階級社会じみた高位魔導師至上主義――持たざるものにとって優しくない世界の到来。
管理局という強大すぎる組織への権力の集中、腐敗の芽ばえ。
潤沢な資金と高度化した技術が、少数の人々の為に用いられるようになったのも、事実である。
曰く、高位魔導師の為のインテリジェントデバイス――化け物じみた力を個人に依存させる愚行。
曰く、半径百数十キロを空間ごと消滅させる究極の破壊兵器――旧時代の質量兵器の反省など何処にも無い、大量虐殺を可能とする兵器。
曰く、上層部の意向が反映されやすい次元航行艦隊への人材の引き抜き、予算の偏り。
曰く、守るべき人々を無視した部隊の編成――既に、地上を見捨てた管理局。

全てが、害悪だった。
ゆえに、変えねばならない――如何なる手段を用いてでも。
その為の、人造魔導師――生体改造による魔導技術の使用を可能とするプラン。数多くの、人命が失われた。
失敗であった。あまりに多くの命が、散りすぎた。だが、止まらない。止まれない――失われた命の為にも。
傲慢だった。
己の手で殺したそれらを、どうして我が物のように言えるのか――もはや存在自体が目的となった醜悪な老人達の妄執。
静かにそれは進み、形を成し、悪夢じみた現実として顕現する―――。

 ゆらゆら、ゆらゆらと。
虚空を漂い羽をふらふらと羽ばたかせる蝶の様に、それは蠢いていた。
大型の生命維持装置のついた環境独立型ポッド――大きさだけでも、ちょっとした個室ほどもある空間が、三つ並んでいる。
透明な物理防壁で遮られた空間の中には、生首がそれぞれ中心に据えられており、周りには様々な機械が並んでいる。
まるで断頭台で処刑された人間の末路のようだが、違う――それは、確かに生きていた。
体温がある。瞬きをする。血流がある。代謝が働いている。
意識があり、喋る。
すなはち――生きている。
言葉が、紡がれた――中央の生首――金髪碧眼、整った顔立ち――若い頃は、さぞや美男だったのであろう男だ。
実年齢――百数十歳――にそぐわない若さ。魔導技術の粋を尽くした、延命処置の結果。

「ふむ――つまり、スカリエッティは、<無限の欲望>は裏切ったということかね? やれやれ、首輪を付けてもこの有様か。早急に対処せねばな、グノー、ベイバ。
我々の権益のみならず、管理体制そのものの崩壊が、あれの狙いだろう。生命工学の研究だけに飽き足らず、よもや飼い主に牙を剥こうとはな」

右側の生首――茶色の髪、黒い瞳――黄色人種。
知識人――グノーだ。優れた見識を持つ、<知識>の塊――数日前まで脳髄だけでポッドに浮いていた存在。

「だが、脅威だ。ザルヴァート、十中八九、聖王教会はやつらの陣営だ。聖王教徒達が皆、かような狂信者というわけでもなかろうが、
時間が経てば転がる者も出ることだろう。その前に対処をせねばならん。万が一にでも<聖王>の名が出れば、事態の鎮圧が難しくなる。
できることならば、<聖王>の器ごとあの船は沈めねば」

左側の生首が、喋った。短く刈られた白い髪、病的に白い肌、色素の薄い目――赤。アルビノの人間。
ベイバ――生首の再生後、細胞を徹底的に弄くり、外見年齢を二十歳前後に保ち続ける女。

「まあ――脳髄だけの生活から随分環境が改善されてきた矢先にこれはない、かもしれません。
もうすぐ身体の生成が終わるところですし、そうなれば、陣頭指揮も出来て大助かりなのですが。ザルヴァート、グノー、いささか事を甘く見すぎではありませんか。
相手はロストロギア――かつてミッドに破滅の矢をを降らした<聖王の揺り篭>ですよ?
アルカンシェル強奪を実行したクーデター軍の手元にはまだ二発のアルンカンシェルがあります。惑星全土が照準可能なのですから、楽観視はできません」




438 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/11(日) 23:52:26 ID:jb1+Nyp+
金髪碧眼――ザルヴァート。ぎこちなく、顔の筋肉を使い笑って、生首を固定してる台座を左に半回転させた。

「その為の<戦闘機人計画>だ。スカリエッティに先を越されたが、ヤマサキのデータで、タイプゼロシリーズは順調に量産できた。
それに―――<彼女>の記憶転写も順調に進行中だ―――」

ザルヴァートがそう呟いた刹那、三つの生首が議論しあう空間の壁が開き、何かがせり出してきた。
巨大な人体保存用のポッドに、その女は入っていた。プロジェクトFの成果――時間停止の限定的応用による遺体の永久保存。
全裸で死の眠りにつき続ける女――揺れる、腰まである青い長髪。格闘術でもしていたのか、素晴らしく引き締まった身体。
整った顔立ち――決して開くことの無い目蓋。
その全身をグノーがじろり、と眺め、溜息をついた。

「美しいものだ――死んだのが実に惜しい。この遺体の脳から記憶を?」
「ああ。グノーとベイバの知ってのとおり、プロジェクトFとその成功体――フェイト・テスタロッサの存在が、我らにその有効性を実証してくれている。
記憶転写による擬似的な死者蘇生――それは、こちらで細かいことさえ調整すれば、機人の大量生産すら可能とする技術なのだよ」

ベイバの声――穏やかに。
「つまり――」

ザルヴァート――笑みを浮かべて答える。技術部門での<救世主>――デバイスシステムの開発者。
今なお優秀な技術者――<戦闘機人計画>、<人造魔導師>の発案者である。

「そうだ。『クイント・ナカジマ』の細胞から造られた戦闘機人には、クイントの記憶から抜き出した戦闘情報を転写済みというわけだよ。
我ら<最高評議会>の尖兵は、これより魔導師ではない者たちになる。もはや、3提督の兵を数で上回り、質もガジェットのAMFで対応可能だ」

三人分の生首――これらこそが、新暦が始まって以来、次元世界を管理してきた統治機構、『時空管理局』の頭脳――<最高評議会>だった。
技術発展を司ってきたザルヴァート、軍事を司ってきたベイバ、政を司るを決めてきたグノー。
長い間、患ってきた身体を捨て、脳髄だけで生きてきた存在――それら、今ヤマサキの技術によって身体を取り戻しつつあった。
現在再生されたのは、頭部と喉のある首の一部までだが、やがて正常な五体を取り戻すことだろう。
ベイバが、口を開いた――何かを期待するように。軍事を仕切ってきた<紅い衣の魔女>。

「では――既に実戦投入が可能なレベルだと言うのですね、ザルヴァート?」
「勿論だとも。彼女ら、戦闘機人は――我らの新たな剣となるだろう。この混迷に満ちた時代を調停する存在としてな」

グノーが、ザルヴァートの台詞を拾い上げ、続ける――歯車を廻す。

「左様。<最高評議会>はこれからも在り続ける――わしらと共に、管理体制は更なる安定期に入らねばならんのだ。その為には――」

ベイバの言――軍事を司る魔女としての見解。歯車の先に在るもの――とつもなく強大な力。

「私達が、先んじてあれを――<聖王の揺り篭>を潰さねばならない、と。なんとも癪なことですが、いたしかたありません。
私の所有する高速ステルス艇を出します。それに、戦闘機人部隊を乗せればいい。小型ですので、探知は難しい筈です。
その後、出来ればアルカンシェルを装備させた艦隊で、クーデター軍も焼き払いましょう。一番後腐れがない」

「ふむ。今のベイバの発言が総意ということでよろしいか、ザルヴァート」

「異論は無いとも。さて――行動を起こそうか。我々の存在を、彼奴らに知らしめるときだ―――」

439 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/11(日) 23:52:56 ID:sQ3VIaAx
しえん

440 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/11(日) 23:54:44 ID:jb1+Nyp+
 漆黒。巨大な船体、XV級次元航行艦『クラウディア』のブリッジにて、黒髪と白い肌を持つ青年、クロノ・ハラオウンは、目深に提督帽をかぶり直していた。
通信が極秘通知で携帯端末に来ていた――のっそりと立ち上がり、提督服の裾を揺らすことなくブリッジを無言で立ち去る。
それに気づいたオペレーターの少年が、声をあげた。一体どうしたのだろう、と。

「提督、どうなされたのですか?」
現在の状況は、管理局にとって最悪のものだ――内部からの離反者、多数。
本局も痛手を負い、あってはならない、クーデター軍による地上へ向けてのアルカンシェルの発射という失態――不明勢力による介入でかろうじて防がれる。
聖王教会――クーデターに加担していると推測され、地上本部に襲撃を仕掛け、現在地上部隊と交戦中。
八神はやての証言によって得られた確証――『カリム・グラシアは敵』。
そこから導き出された答えは、実に単純だった。カリムの義理の弟――ヴェロッサ・アコース査察官。本局でもやり手の査察官にかけられた嫌疑。
スパイ疑惑。敵性組織、聖王教会への情報漏洩、及び査察の虚偽申告の疑い。
ただちに拘束措置が取られたが――レアスキル<無限の猟犬>によって生成された不可視の猟犬達に、局員六名が殺傷され、逃走されることとなった。
転送ポートにより彼自身は何処かに消え、その事実にヴェロッサの親友であったクロノは少なくない衝撃を受けていた。
ある意味危うい場所にいたクロノが疑われなかったのは、普段の彼の勤務態度と、その背後にある3提督の存在が大きい。
レオーネ・フィルス、ラルゴ・キール 、ミゼット・クローベルからなる管理局黎明期の立役者――実質的に<海>を支配する三人の提督。
彼らの実質的な配下であるクロノが、疑われずにすんだのはある意味当然かもしれなかった。
クロノを疑うということは、すなはち3提督に楯突くということになるからだ。
そういうわけで、クロノの心情が良いものでない、ということは誰にでも考えられることだった。

クロノが、背を向けたまま振り返ることもせずに言った。
どこか寂しそうな背中を見て、少年はなんだか泣きたくなった。

「個人的な用件だ。すぐに戻るよ」
「あ……」
クロノをそれ以上呼び止めることもできず、オペレーターの少年は立ち尽くした。その後姿に、不吉なものを感じながら。


こつこつ、こつこつと靴音。自室の端末まで歩むと、クロノは椅子に座り込んで端末を立ち上げた。
暗号を入力――回線が繋がる。空中に展開されるモニターを眺める――画面の向こうにいる相手は、誰だかすぐに分かった。
陶磁のように白い肌。背中まで伸ばされた栗色の長髪。ぞっとするほど黒い瞳。黒衣で固められた衣装。
整った顔立ちを、何処か押さえきれない衝動に歪ませながら。

「なのは……」
『クロノ君――依頼どおりアルカンシェルは撃ち落してきたよ。ううん、今日はそんなことを言いたかったんじゃないの』
「……なんだい?」

なのはがにっこりと微笑み、慈母の如き口調で告げた。
その胸には、赤い宝玉――レイジングハート。

『リミッターの解除を、お願い――あいつらを一人残らず殺すには、必要だから』
がたん、という音と共にクロノが立ち上がり、喚いた。

「正気か?! あれを使えば、君の身体は――」
『うん。体内の<ジュエルシード>に蝕まれるだろうね――でも、私なら制御できる、完璧に。ブラスターモードの力無しには、あいつらは倒せないし、
それはクロノ君だってわかってることの筈だよ?』

死人を見送る者の顔だった。
今にも舌を噛み切るのではないか、という渋面を形作ると、クロノは椅子に座りなおした。
押し黙り、ゆっくりと告げた。



441 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/11(日) 23:56:41 ID:jb1+Nyp+
「高町なのはに告げる。現時刻を持って全リミッターを解除、全力戦闘に移行せよ――なおこれは、クロノ・ハラオウン提督としての命令である。
一連の戦闘行動終了後はリミッターを復活させる」
『ありがとう、クロノ君』

なのはが、天使のような笑顔で礼を告げた。
儚い夢幻――そう思わせるほど、何処かが狂ってしまった人間の笑み。
痛ましそうにクロノが目を閉じ、呟いた。

「なのは――君を待つ人がいることも、忘れないでくれ。頼む」
なのはの動きがぴたりと止まり、端末の通信が切られた。
刹那、聞こえた声に、クロノは絶望し。
がっくりと項垂れ、黒い髪を揺らし、咆哮するように声を押し殺して泣いた。

『私は―――多分答えてあげられないから―――その人には、ごめんって伝えて、クロノ君』


 自室から出たクロノは、まっすぐに転送ポートへ向かった。
大型の転送システムを搭載し、大人数の転送を超高速で行えるのがXV級の強みの一つだが、今回送られてくる人員は一人だった。
艦長であるクロノすら知らない、未知の人物。名前、プロフィール共に伏せられているのは、急遽決まったことだからだという。
転送ポートに着いた――巨大な環状転移装置。魔力炉からのエネルギー供給で動く、大型装置。
にわかにそれが光り輝き、淡い燐光と環状魔方陣を発生させた。
人影。
本局から出向してきた、この船にとっての切り札――それは。
クロノが、誰よりもよく見知った男の顔だった。
揺れる、長く伸ばされ、纏められた色素の薄い髪。緑色の瞳。かけられた丸眼鏡。
厚手のマント――遺跡発掘に生きる部族、スクライア一族の伝統衣装である。やあ、という声と共に上げられる右手――手につけたグローブ。
声変わりしていない――少年のような高い声。

「ユーノ?! 無限書庫勤務じゃなかったのか」
「仕事は済ませてきたよ――あとの僕の仕事は、司書たちに任せてあるし、もう無限書庫でやれることはやり尽くしたさ」
クロノが、溜息をつきながらも口元を綻ばせた。

「本当に仕方の無いやつだな、君は。職務を放り出しての戦闘参加は感心しないぞ?」
「そっちこそ、だろ? 提督なんだから、間違っても前線に出ないように――」
そこまで言ったところで、ユーノが目を細めた。冷徹な、現実主義者としての彼の顔だ。以前までは持ち合わせていなかったモノ。
静かに呟く。クロノにしか聞こえないほどの小声で。

「なのはの様子はどうだい――もし彼女に何かあったなら」
「ああ。殺してくれて構わない――元より覚悟は決めているし、この命に代えてでも彼女を―――」
拳を握り締めながら、クロノが言った――悲痛さが、篭っていた。

「―――守ってみせる。君もそうだろう、ユーノ」
ユーノが静かに頷き、己の待機場所へと歩み去った。
ぽつりと、クロノがユーノへ向け語り掛けた。長年の友としての切実な願い――クロノ・ハラオウン個人としてのもの。

「死ぬなよ……ユーノ」

ユーノは、ついに答えなかった。



442 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/12(月) 00:01:03 ID:FLgvdo+L
投下完了です。
3脳の名前のモトネタは、趣味に走って「蒼穹のファフナー」の人類軍ファフナーより。

今回もメインキャラの出番が少なかったですね、すいません。
おそらく次回からは……!!

感想等よろしくお願いします。


443 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 00:05:18 ID:2Bl9ogVI
GJ!でした。管理局が予想以上にやばかったです。

それと皆死亡フラグ立ってる気がする。
なのはが幸せになれますように。


444 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 00:05:30 ID:nqRSxeQb
GJ!!です。
最高評議会が生身の体を得て、指揮を取るのかw
本編では瞬殺されたので、真っ黒な活躍に期待してますw

445 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 00:09:03 ID:V0t8gpMY
GJ!
ファフナーはよく分からないけど三脳がそれっぽく感じてよかったです
お疲れさまです!

446 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 00:09:11 ID:BCyPIKYe
なんというなんというクライマックスw
あとヴェロッサ期待してなかったけど、やっぱり悪人かー!
なのはも遂に本編よりヤバイブラスターモード解放ですね。
三脳も遂に登場。彼らがラスボスになるのか? やばいやばい、気配で一杯w
未だに数を減らさないどころか次々と増える敵たち。
合流したユーノに、クロノはどう動くのか。
そして、復讐に生きるなのはは如何なる結末を……最後を迎えるのか。
壮絶な戦いの始まりに、ドキドキします。
嘆き悲しむのか、歓喜するのか、それも虚無に心問われるのか、それとも――
最後まで目が離せませんね。
ナンバーズ13、三脳、三提督、クロノたち、他のモブたち、なのはたち、そして未だに不気味な沈黙を見せるスカ博士。
彼らの交わる先になにがあるのか。
楽しみです! 次回を待ってます!
GJでした!!!

447 :リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/05/12(月) 09:09:01 ID:eRtES1iO
おはようございます。
夜に投下できそうにないので、とりあえず投下しておきます。

リリカルゾイド第3話です。

448 :リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/05/12(月) 09:09:57 ID:eRtES1iO
「A班とD班は!?」
「まもなくC班と合流できます。あと2分です」
「負傷者は!?」
「今の所、軽傷者だけです。戦闘の続行には問題ありません」
「分かった。とりあえず、B班の回収が最優先だ。彼らを守りながら戦うのはさすがに不利だからな」
「了解。アースラの転送ポート使用可能地点まで後22分!」

ここは次元航行艦アースラの艦橋。
そこでは、つい先日、艦長に就任したばかりのクロノ・ハラオウンが、指揮をとっていた。


(初陣でまさかこんな事になるなんてな・・・)

クロノが心のうちで舌打ちする。
彼から見れば、現在、武装隊を襲撃しているアンノウンは質量兵器に該当するものだった。
あの遺跡に関するデータは、事前に無限書庫から取り寄せている。
それによれば、あの遺跡は遥か昔に滅んだ魔法文明が有していた美術館に該当する施設だ。
間違っても、あんな質量兵器を搭載した傀儡兵がいる筈はない。

(後であのフェレットもどきに調査依頼だな。文句は言わせないぞ・・・!)

数年来の友人を頭の中で思い浮かべながら、―――もっともその友人は嫌そうな顔をしていたが―――遺跡の中にいる筈のもう二人の友人の様子を尋ねるべく、クロノが口を開こうとした時だった。

「クロノ君!」
「よー、新人艦長!」

タイミングよく、当の本人達から通信が飛び込んできた。

「なのは、ヴィータ!良かった、無事か!?」
「うん、こっちは大丈夫だよ!ヴィータちゃんもいるしね!」
「分かった。いきなりで悪いんだが、そこからC班に合流するのにどれくらいかかりそうだ!?」
「何の妨害もなけりゃ、10分ありゃ着く」
「そうか、急いでくれ。今、A班D班も向かっているが、数は多いに越したことはない」
「了解だよ」
「りょーかい!後、こいつらはどうする?」

と、画面の中のヴィータが、隣の少年と黒竜を指差した。
クロノも画面に映った彼らを確認する。
報告にあった、B班を襲った犯人だろう。
大人しく投降したらしいが、現在の状況を考えれば、もっとも警戒しなければならない人物だ。
拳銃を所持していたというなら尚更の事だ。


449 :リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/05/12(月) 09:11:14 ID:eRtES1iO
そう考えながらもクロノは、どこか違和感を感じていた。
その違和感の原因は・・・

「何で彼を拘束しないんだ?」

そう、レイヴンはバインドを解かれていたのだ。
しかも、その事を画面上の二人は全く気にしている様子はない。

「あ、うん。詳しい事情はあとで話すけどね。レイヴン君は・・・」
「次元漂流者だ。たぶんな。それに外の奴らを襲ってる奴らとも、無関係だと思うぜ。こっちもさっき、奇襲されかけた」
「シャドーちゃんが、助けてくれたんだよ」
「・・・そうか」

二人の言葉に渋面を作るクロノ。
正直、彼はレイヴンの事を信用しきれずにいた。
なのはとヴィータを助けたのも、こちらを信用させる為の罠かもしれないとさえ思えてくる。

しかし、
(何を馬鹿な事考えているんだ僕は)
そんな可能性は、すぐに頭の中から消し去った。
もし彼の目的がこちらへの襲撃なら、わざわざB班の隊員を介抱する必要もないし、なのは達を奇襲から守ったりしないだろう。

(初任務でアクシデントに遭ったからって動揺しすぎだ。落ち着け、落ち着くんだ、クロノ・ハラオウン)

深呼吸したクロノは、自分が冷静な判断能力を取り戻しているのを確認すると、再びなのは達に声を掛けた。

「分かった。でも彼とそこの飛竜は、できれば合流しだいB班のやつらと一緒にこっちへ転送してくれ。銃はとりあげているな?」
「それはさすがにね・・・」

なのはが苦笑しながら答える。
「よし、じゃあ急いでくれ」
そう言って、クロノは通信画面を閉じた。


450 :リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/05/12(月) 09:12:42 ID:eRtES1iO
「つーわけで、調査は後回しだ」
「ごめんね、レイヴン君。無関係なのに巻き込んじゃって」
「単に運が悪かっただけだ。気にするな」

クロノとの通信から数分後、見えざる敵の奇襲を警戒しながらも、なのは、ヴィータ、レイヴン、シャドーの3人と一匹は、合流まで後2分弱という所まで来ていた。

「それにしても、さっきは本当に助かったよ。ありがとね、シャドーちゃん」
「・・・」

なのはが、あらためて傍らのシャドーに感謝を述べ、それを聞いていたレイヴンは何ともいえない顔をした。
しかし、感謝の念は伝わっている筈なのだが肝心のシャドーは何の反応もしなかった。

「うーん。私、嫌われてるのかなぁ?」
「気にすんなよ、なのは。って、レイヴン、おめー何て顔してやがる」
「いや、何でもない。それこそ気にするな。それより、そろそろじゃないのか?」

レイヴンの言う通り、通路の先から鈍い音が響いてきた。
また、周りの壁にも大小含めて、多くの傷跡が奔っている。
戦闘の現場に近づいている、何よりもの証だった。

「言われなくても分かってんよ。んな事より、問題はおめーの方だ、レイヴン」
「たぶん、外に出たらすぐに戦闘になると思うの。敵はAMFっていう特殊なフィールドを展開してるから、もしかしたら突破するのに時間をとられちゃうかもしれない」
「その間、おめーを守るのに私らのどっちかが一人ついていたら、突破できるのも突破できねー。だから・・・」
「だから、自分の身は自分で守れってことか?別に構わないけど、銃を取り上げておいて酷い事を言うんだな」

皮肉気にレイヴンが返す。
だが、本気でそう思っていないことは一目瞭然だった。
なぜなら彼の表情には、怯えという感情が全くなかったからだ。

「な、ならいいんだけどよ。気をつけろよ。間違っても油断なんかすんじゃねーぞ」
「言われなくてもそうするさ。第一、その言葉を掛ける相手は俺じゃないだろ」
「何?」
「高町だったか?今一番気をつけなきゃいけないのは、お前だ」
「「え?」」

予想外の言葉に思わず立ち止まり、レイヴンに振り返るなのはとヴィータ。
それはそうだろう。
高町なのはは、管理局でエース・オブ・エースと言われるほどの実力者である。
油断などといった言葉は、彼女と最も縁遠い言葉だ。
そんな彼女が、この中で最も気をつけなくてはいけない?
質の悪い冗談ととられても仕方がなかった。
しかし、レイヴンからは冗談をいっている気配は全く感じられなかった。
・・・そう、彼は本気で高町なのはの事を心配していたのだ。

「や、やだなぁ、レイヴン君。私なら大丈夫だよ」
「そーだ。いきなり変な事言ってんじゃねえ」
「・・・ならいい。間違っても無茶はするなよ」
「うん、ありがとう」

そして3人と1匹は、とうとう遺跡の出入り口にたどり着いた。
もはやはっきりと轟音が聞こえ、激しい振動も伝わってくる。
それが、戦闘の激しさを物語っていた。

「じゃあ、俺はこの入り口付近で待機する」
「うん。終わったらすぐに来るから!」
「ヘマすんじゃねーぞ!」

そう言い残すと、なのはとヴィータは戦場に向かって飛び立っていった。


451 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 09:13:53 ID:BCyPIKYe
支援!


452 :リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/05/12(月) 09:13:54 ID:eRtES1iO
Another View (Raven)

飛び立っていく二人を見送りおえると、シャドーに周辺の警戒を任せ、万が一の時の為に確認作業にとりかかった。
腰部のポーチを取り外し、中身の薬草を検分する。
とりあえず、外傷に効くものは全体の4割しかなかった。
後は全て、現状役に立たない内服薬だ。

(まあ、ないよりましか。しかし、この知識が役に立つ時が来るとは思わなかったな・・・。その点だけは、プロイツェンに感謝しないでもないか)

あの傲慢極まりない男に仕込まれたのは、何も戦闘技術だけではない。
本物の薬屋をしても生きていける様に帝国の施設で徹底して叩き込まれた。
当時は、全く無駄な知識としてしか感じていなかったが、世の中何が起こるか分からないものだ。

(それを言うなら今の俺もそうか・・・)

自嘲する。今の自分を見れば、昔の自分はどうするだろう。
恐らく呆れ果てるに違いない。
いや、見下すだろうか?

(だが、放っておけない)

彼女、高町なのは―――自分とシャドーを君付け、ちゃん付けで呼んだ初めての人物―――は無理をしている。
それも致命的な。
あれは恐らく、周囲に黙って長い間無茶をし続けて体に爆弾を抱えこんでいる。
相棒のヴィータも気づいた様子はない。
恐らく、今は本来の力を発揮できないでいるだろう。
そしてそんな事に気づけるのには理由がある。

かつてシャドーがそうであったからだ。
シャドーが赤熱化し、活動を停止した時の光景はよく覚えている。
そしてその時に抱いた、悲しみ、喪失感も。
それらのおかげで、相当な無茶をしでかしている人を見ると、何故かある予感ともいえるものを感じられる様になった。

(今の俺があるのは、良くも悪くもあの時のおかげなんだろうな・・・!)

チェックを終える。
確認できたのは、応急処置が出来る程度の装備しかもっていないという事だけだ。

(何も起こらなければいいんだが・・・)

自分に分かるのは爆弾を抱えているかどうかだけだ。
いつ爆発するか、どれほど重症なのかは、残念ながら分からない。

(今日爆発してくれるなよ)


Another View End(Raven)


453 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 09:14:31 ID:BCyPIKYe
荷電粒子砲で狙撃支援

454 :リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/05/12(月) 09:15:11 ID:eRtES1iO
戦場に飛び出したなのはとヴィータが目にしたのは、B班を守る様に扇状に展開したA、C、D班の姿だった。
まだ、アースラが転送可能地点に到着していないのか、B班が転送される様子はない。
そして、仲間を襲う様に展開する、機械兵器の群れ。
遺跡内部でシャドーが破壊した多足型もいるが、見慣れない形状の方が数多く確認できた。
しかも、質の悪いことにAMF装備ときている。
いくら微弱なAMFでもあれだけの数がいれば、効果範囲も相当広がっているだろう。
一般隊員には厳しい状況の筈だ。

「よし、行こう!ヴィータちゃん!」
「任せな!アイゼン!」
「ja!」


なのはが声を掛けると同時にヴィータがシュワルベフリーゲンを放ちながら、敵の真っ只中に切り込んだ。
先行して撃ちだされた鉄球が機械兵器を打ち砕き、続いてグラーフアイゼンが取り囲もうとした敵を纏めて薙ぎ払う。
さらに、

「スターダストフォール!」

なのはの魔法によって加速させられた多くの岩塊が、ヴィータを援護するべく降り注いだ。

そう、いかなAMFといえど、近接戦闘を主としアームドデバイスを装備する古代ベルカ騎士にとっては何の障害にもならず、また、その効果範囲外で魔法によって加速した物質まで防ぐことはできない。

その点を見事に突いた二人の立派な連携により、機械兵器はみるみるうちに数を減らしていく。
また、数が減ったことにより効果範囲が狭まったのか、防衛に徹していた隊員たちも、なのは達を真似て攻撃を始めた。
おまけにB班の隊員の何人かが目を覚まし始めている。
もはや機械兵器が駆逐されるのは、時間の問題だと思われた。


455 :リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/05/12(月) 09:16:11 ID:eRtES1iO
しかし、突然の事だった。
機械兵器が単純でバラバラな動きを止め、全体で連携する様な動きを始めたのだ。
合流していたなのはとヴィータは、上空でその動きを確認し、首をかしげた。

「どーいうこった?何でいきなりこんな動きを?」
「まるで誰かが指揮を執ってるみたい。・・・っ!ヴィータちゃん、あれ!!」
「あれは!!」

彼女らの目に飛び込んできたのは、武装隊から退却する様に遺跡の方へ移動していく多足型の機械兵器であった。
しかしながら、先程まで相手にしていたものよりも2回り程大きく、また目を凝らせば細部が違っているのが確認できた。
なによりもの特徴が背面に取り付けられたアンテナのような部品である。
おまけに周囲にはそれを守ろうとするかのように数十体もの機械兵器が併走している。
それだけでも、他の機械兵器達とは訳が違うことが窺えた。

「もしかして・・・あれが指揮官なのかな?」
「たぶんそうだろうな」
「じゃあ、あれさえ叩けば!」
「何とかなるかもしれねー!」
「こちら高町なのはです!敵の隊長と思しきタイプを捕捉!これより・・・って、あれ!?通信が・・・!」
「妨害されてる!?くっそ、小賢しい真似しやがって!」
「クロノ君、聞こえる!?クロノ君!?・・・駄目だ。アースラとも繋がらない!」
「・・・っ!まずいぞ、なのは!!あのままだとレイヴンの野郎、連中と鉢合わせだ!」
「本当だ!急ごう、ヴィータちゃん!」
「おーよ!」

その掛け声と共に二人は、敵に向かって急降下していく。
そして例の如くヴィータが先陣を切った。

「ギガントハンマァ!」

グラーフアイゼンから空薬莢が舞うと同時に、ヴィータが巨大化したそれを振り抜きながら、敵のど真ん中に着地する。
その時には既に護衛の機械兵器の6割が行動不能になっていた。
さらに上空からのなのはの援護も加わり、あっという間にそれらは数を減らし、残すところ10機となっていた。



(楽勝だなこりゃ。ま、機械如きに後れを取るようじゃ、ベルカの騎士の名折れもいいとこなんだけどよ)
(でも、油断大敵だよヴィータちゃん。指揮官タイプを倒したといっても、さっきまでのとは動きが段違いだったんだし)
(わーってるよ、そんくらい。んじゃ、さくっと片付けるから援護よろし・・・っ!なのは、下だ!!)
(大丈夫!!)

ヴィータが念話で声を荒げる。
突如、ヴィータをロックしていた機械兵器が目標を変更、なのはに向けて攻撃を始めたからだ。
もちろん上空に待機していたなのはは、回避行動をとろうとした。


しかし突然の事だった。
なのはの足に展開されていたアクセルフィンが輝きを失ったのだ。
そして空中で満足に動けなくなったなのはに、大量の攻撃が襲い掛かった。
かわせないと悟ったなのはは、シールドを展開する。
ところが先程まで楽々と防げていた筈の攻撃をなのはは、防ぐことは出来なかった。
敵の砲弾が次々になのはのシールドを貫通し、直撃していった。

「なのはぁぁぁぁ!!くそ!こいつらぁぁぁぁ!!」

この光景を目にしたヴィータは逆上し、残る10体の機械兵器を言葉通り一瞬でスクラップへと変えた。
そして大急ぎでなのはのもとへ向かった。


456 :リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/05/12(月) 09:20:08 ID:eRtES1iO
辿り着いたヴィータが目にしたのは、バリアジャケットに血を滲ませ地面に横たわるなのはの姿だった。
ヴィータには、一目見ただけで命に関わる重傷だと分かった。

「おい!おい!なのは、しっかりしろ!」
「・・だぃ・・・・から」

恐らく、“大丈夫だから”だと言いたいのだろうが上手く言葉にできていない。
こんな時でもなのはは、ヴィータを心配させまいとしていた。

「くっそ!クロノ!聞こえるか!」
「・・ヴィ・・タ・・?。ど・・・・。よく・・き・・・・なぃ」
「大変なんだ!なのはが・・・!なのはが・・・!早く医療班を!」

すぐにヴィータは通信画面を呼び出した。
途切れ途切れながらも通信が繋がってくれた事に感謝しながら、通信画面に向かって救援を要請しようとする。
しかし、再び激しいノイズがかかり始め、ヴィータは狼狽した。

「何でなんだよ!何でこんな時に!頼む!繋がってくれ!」
「意外だな。回復用の魔法はないのか」
「・・・!?」

思わず振り返るヴィータ。
そこにはシャドーを従えたレイヴンが立っていた。

「おめー、何でここに!」
「入り口から全部見えていた」

そう答えながらレイヴンはなのはのもとに辿り着くと、腰のポーチから水の入った容器、薬草、包帯を取り出した。

「手当てする。応急処置くらいしかできないが、何もしないよりはましだ」
「な!?た、頼む!なのはを助けてくれ!」
「じゃあ手伝え。まず服を脱がさないといけない」
「・・・っ、待て!」
「緊急事態なんだ、仕方がないだろ」
「違う!レイジングハート!生きてるか!?」
“はい、まだいけます”
「すぐにバリアジャケットをパージしてくれ!!」

ヴィータの要請を受け、レイジングハートがバリアジャケットを解除する。
次の瞬間、なのはの惨状が二人の目に飛び込んできた。


457 :リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/05/12(月) 09:20:44 ID:eRtES1iO
「うっ・・・!」
「ひどくやられたな」

顔を歪めるヴィータとは対照的にレイヴンは落ち着いていた。
その落ち着き払った態度に何か言いかけたヴィータだったが、レイヴンの目を見ると喉元まで出掛かった言葉は、自然と消えていった。
なぜなら、彼の目からなのはの事を真に心配していることが分かったからだ。

ヴィータが見守る中、レイヴンは水でなのはの傷の周りを洗い流し始めた。
ヴィータはその手つきに手馴れたものを感じ、思わずレイヴンに話しかけていた。
或いは、話をすることで自分自身の不安を紛らわせたかったのかもしれない。

「おめー、医者なのか?」
「違う」

ヴィータの問いかけにレイヴンは作業の手を緩めることなく即答した。

「軍人だった」
「そうか・・・。シャドーも軍に?」
「まあそんなところだ。驚かないのか?」
「そんな気はしてたからな」
「そうか」

空になったボトルを脇にどけながら注射器を取り出し、中身を確認するレイヴン。

「それは?」
「麻酔だ。安心しろ、副作用はない。・・・押さえてろ」

レイヴンの指示に大人しく従うヴィータ。
しばらく、このような光景が続いていた。


458 :リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/05/12(月) 09:21:38 ID:eRtES1iO
「よし、終わりだ」
「っはぁ」

手当てに要した時間は15分程だったが、ヴィータには永遠に感じられた為、溜息も吐こうというものだ。

「安心している場合じゃないんじゃないか?救援が来ないと助かるものも助からない。連絡できないのか?」
「ああ、まだ駄目みたいだ。くっそ、なのはがやばいってのに」
「そうか・・・」

それを聞いて何かを考えていたレイヴンだったが、やがて顔を上げ、シャドーに向き直った。
主の言わんとするところを既に理解しているのか、シャドーもレイヴンを見返しながら頷いている。

「ヴィータ。さっきの機械が来ても一人で対処できるか?」
「・・・?いや、できるっちゃできるけどよ。どーするつもりだ?」
「シャドーに高町と俺を運ばせる。だからお前に先導と護衛を頼みたい」
「はぁ!?何言ってんだお前ぇ!そいつ一匹じゃ、人一人がせいぜいってところじゃねぇか!第一、なのはは怪我人なんだ!落としたらどーするつもりだ!」
「問題ない。・・・シャドー」

ヴィータの抗議を一蹴し、なのはの側にシャドーを呼び寄せるレイヴン
そしてヴィータの見ている目の前でそれは起こった。

「なっ・・・!」

何とシャドーの胸部から腹部にかけての表面が一斉に開き、中から大量のコードが飛び出してきたのだ。
さらにコードはなのはの体に巻きついていき、なのはの体をシャドーに引き寄せていく。
そして遂には、なのはを自身の体内に“格納”してしまった。
その時間わずか十数秒。
ヴィータは予想外の光景に呆気にとられているしか出来なかった。
しかし、ヴィータの事などおかまいなしといった様子でシャドーの前に立つレイヴン。
シャドーも当然といった様子でレイヴンの襟を咥え、わき腹付近に腕を添えた。

「何をぼけっとしているんだ。行くぞ」
「お、お前・・・。今のは一体?」
「また後で話してやる。それより急げ。本当に手遅れになるぞ」
「あ、ああっ、分かったよ。飛ばすからな、はぐれんじゃねーぞ!」

そう言って気を取り直したヴィータは、レイジングハートを握り締めながら飛び立った。
そして後を追うように黒い竜は翼をはためかせると、粉雪の舞う空へと飛び出して行った。


459 :リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/05/12(月) 09:25:12 ID:eRtES1iO
以上で今回は終了です。
こんな朝早くにもご支援下さった方、本当にありがとうございます。


捏造だらけですいません。
ゾイドを見たことのない方も分かりやすく読める様に書いたつもりですが、如何だったでしょうか?
シャドーの“格納”の下りが特に苦労しました。
後、ゾイド視聴者の方は読んで頂ければお分かりだと思うのですが、レイヴンがかなり丸くなってます。
ですが、それは今回のような未経験の事態に遭遇した為ということと、なのはとシャドーをダブらせている為、自分とシャドーを恐れることなく、君付けちゃん付けした為でもあります。
また、GF編でリーゼとのふれ合いにもその兆候は出ていたので今回のようなレイヴンと相成りました。

今回書いていて気づいたことですが、自分、戦闘の描写が苦手です。
かなり、はしょってしまいました。
巧く書ける作者さん達が、いかに高レべルか思い知った次第です、はい。
前回も書きましたが、精進あるのみですね。

それでは失礼します。
これからは、なるべく週一のペースで投下できるよう頑張ります。
いや、こう宣言しないと、自分がどんどんさぼってしまいそうなので(笑)


460 :高町なのは:2008/05/12(月) 10:27:49 ID:4sCZsoGO
   ヽl   ,、 l/
  〃")' ~´ヘヘ)"ヽ lL_
  !( ソノ八)ヽ) ソ(●
    ヾl.^ヮ゚ノ!  ./ ̄ 
   .⊂^)卯(^つ/
    ./ソ、j、iヾ/
    .~(ノ!_j~´

<2ちゃんねるをご利用のみなさん、高町なのはです!
本日の第3回2ちゃんねる全板人気トーナメントの1次予選・11組目のお絵描き・創作板への投票をお願いしますなの!
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ttp://akm.cx/2d2/src/1210526012987.jpg

461 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/05/12(月) 16:52:00 ID:qaCfah7w
コテとしては御初に御目に掛かります。(一礼)
本日17:15辺りに此方に初めて作品を投下しても良ろしいでしょうか?
クロス元はTAITOの「PSYCHIC FORCE」です。

尚、今回は2つ用意した内のサイキ側の序章ですので、
リリカル世界の背景はクロスとして融合していますが、
本編レギュラー/準レギュラー陣は一切登場はしませんので、
その点は御了承下さいませ。(再度一礼)

462 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/05/12(月) 17:16:24 ID:KrY9tPxZ
時間になりましたけれど何の反応も有りませんし、
この時間帯に他の方の投下予定も無い事は確認済みですので、
独自判断で投下を開始させて載きます。(一礼)

463 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/05/12(月) 17:24:50 ID:KrY9tPxZ
【LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS】

♯PROLOGUE:SIDE - PSYCHIC FORCE

□■□■□

━━針葉樹が生い茂る広大な昏い森の中、
真昼の様に周りに連なる峰々を赭々と照らし燃え上がる一画を
離れた崖の上から見下ろし眺める男が一人━━否、その男は
十代前半の少女の様な面差しの少年を下から掬い上げるかの様に
両腕で自身の胸許に抱えているので二人か。
尤も少年の方は気絶でもしているのか、僅かに胸は心臓の鼓動に合わせるかの様に
緩やかに上下してはいるが瞼は閉じられ身体はぐったりと力無く弛緩している。
少年を抱えて崖上から焔の園と化した曾ての居場所━━超能力集団・ノアの本部が有った辺りを
見下ろし眺めていた男は、焔に焙られ生じて離れていてもそこまで届いている薄熱い風に
襟足で馬の尻尾の様にひとつに括った艶やかな黒髪と纏っている派手な柄のスーツの裾をはためかせながら、
口許に愉悦めいた微笑を浮かべつつ言葉を紡ぐ。

「……此れで、後顧の憂い無く私は新たな舞台へと移る事が出来ますね」

男の言葉には、数多の曾て同胞と呼んだ者達が死んだで在ろうこの崩壊が
自分が望んで招いた事に対する罪の意識は一片も含まれてはいない。
それどころか、その響きには“次”へ進む事への愉しみしか滲んではいない。
そんな男の後ろの森の中から、葉擦れの音を極力抑えつつ別の男が歩み現れる。
巌の様な体躯に猛々しくセットした髪、額から顔の左半面を大きな傷痕が刻まれている
その剛毅な男は、先程から崖上に居るスーツ姿の男から数歩離れた辺りで歩みを停めると、
スーツ姿の男に向けてぞんざいに声を掛ける。

「俺が言うこっちゃ無ぇけどよ、本当に良かったのか?
 えぇ、ノア参謀のリチャード・ウォンよ」

リチャード・ウォンと呼ばれたスーツ姿の男は顔だけを僅かに振り向いて、
声を掛けて来た貌傷(スカーフェイス)の男に言葉を返す。

「『元』参謀ですよ、ガデス。━━寧ろ好都合でしたよ、キースの下では様々な意味で
 もう先は有りませんでしたからね。それに、次の売り込み先にももう内定は採れていますからね。
 それよりもガデス、頼んでいた事は終らせて載けていますか?」
「応、『色々と』回収は終えてるぜ。アンタに着いて行く事にしたサイキッカー2012人その他、
 全員避難はさせて有るぜ。で、売り込み先ってなぁ何処なんだ? 前から噂が有った、
 俺等サイキッカーを目の敵にしてたこの国の軍か?」


464 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 17:29:22 ID:vx9SGcYX
最近は人が少なくなったな支援

465 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/05/12(月) 17:33:20 ID:KrY9tPxZ
ウォンがガデスと呼んだ貌傷の男が訝しげに訊いて来るのに対して、
ウォンは顔半面だけを向けた姿勢のままで応える。
その容貌に掛けられている丸いフレームの黒縁眼鏡のレンズは
赭々と猛る焔の光を反射し、その向こうに在るウォンの眼差しを窺う事は出来無い。

「いえ、この国の軍よりも━━この世界よりも広い世界を統べる軍組織が
 新たな私達の舞台ですよ。そろそろ、向こうから迎えが来る頃ですよ」
「何だそりゃ?」

ガデスが困惑した様に首を傾げると同時に燃え盛る元ノア本部の上空の空間が歪み、
直後に蒼白い閃光が疾りそれが収まると星明かり散りばめた漆黒の夜空には
一隻の艦(ふね)が静かに飛空していた。

突然の飛空艦の出現に驚いたガデスが即座にウォンに訊く。

「おいウォン、何だありゃあ!?」
「あれが私達の新たな舞台━━時空管理局からの迎えの次元航行艦ですよ。
 ほら、内火艇が出て来ました」

ウォンの言葉通り、虚空から現れた次元航行艦のコンテナと思われる辺りから
小集団を運搬するには適した大きさの小型艇が離推する光景がガデスにも確認出来た。
尤も次元航行艦が現れた空域からこちらまでの距離は少し離れており、
内火艇がこちらに到着するまでにはまだ1〜2分程の猶予が有る様に見え、
その間に訊ける事は訊こうとガデスはウォンに話し掛ける。

「で、察するにこの世界を離れて異世界に行くってみてぇだな?
 ま、俄かにゃ信じられねぇが問題はそこじゃねぇ……
 向こうの世界でも、俺が存分に暴れられんのか?」

獰猛な笑みを浮かべてガデスは問いを口にする。
それに答えるウォンの口調は実に淡々としたもので有る。

「……向こうの世界━━次元世界と呼ばれていますが、その中でも時空管理局が統轄している
 管理世界でもサイキッカー問題は有るのですよ。それに、我々とは似て非なる能力体系
 『魔法』を駆使する『魔導師』が次元犯罪者として暗躍もしていますからね、貴方の出番には
 不自由はしない筈ですよ」
「そりゃ有り難ぇ♪……けど、やけに向こうの事情に詳しいじゃねぇか、ウォン?
 前々から時々姿眩ましてたなぁ、奴等と接触してたからかぁ?」
「正確には、ノアに参加する前からですがね。と、内火艇が着きましたね」

ウォンとガデスが話をしている間に内火艇は二人から数m離れた辺りに静かに着陸し、
機体側面半ばに有るハッチが開くと同時に展開されるタラップを数人の武装した隊員らしき者達が
駆け降りて来て直ぐに整列すると、その中でも隊長と思われる一人が進み出てウォンに向けて
直立不動で敬礼する。

「リチャード・ウォン空少将、御迎えに上がりました!」
「少将ぉ〜?!」

隊長が口にしたウォンの階級を耳にして、ガデスが素っ頓狂な驚きの声を挙げる。
そのガデスの驚きの声を耳にした隊長は、憤慨して高慢な態度で食って掛かる。

「貴様、何者だか知らないが失礼だろうっ! リチャード・ウォン空少将は長年管理局に勤められ、
 かの『邪聖剣事件』を解決に導いた実績を経て今や技術部の総部長でも有らせられるのだぞ。
 口の利き方にも身の程を知れっ!」

「……っンだとぅ……!?」

隊長の態度に鶏冠にキたガデスのPSYエネルギーが瞬時に高まり、ガデスの周囲の空間が
重力で歪み出す━━と、そんなガデスと睨む隊長との間にウォンが入って微笑みながら執り成す。


466 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/05/12(月) 17:38:21 ID:KrY9tPxZ
「落ち着いて下さい、ガデス。━━ワーゲン三尉、君も早合点はしないで下さい。
 彼━━ガデスはノアから引き抜いた幹部級のサイキッカーなのですよ。
 口の利き方も、彼の好きな様にと私自身が認めているのですから良いのですよ」

双方共に未だ納得は行ってはいなかったがウォンのその言葉で一応は互いに矛を納め、
ガデスは高めたPSYエネルギーを鎮め、ワーゲン三尉と呼ばれた隊長は気を取り直して
退きながら部下に対して様々な指示を飛ばしている。

「……で、先刻から抱えてるそのガキはどうすんだ、ウォン?」

ガデスから見れば小物相手に諍いを引き摺るのも阿呆らしいとでも思ったのだろう、
ガデスは退く隊長にはもう視線も遣らずに再びウォンに問いを放つ。
別にガデスは少年の安否を気遣っている訳では無いが、その少年がS級の力を保持している
“MASTER OF LIGHT”エミリオ・ミハイロフで在ると知れば必然その処遇をどうするのか、
彼の傭兵としての感性が気にしていた。
何しろ、今保護している相手はウォンで在る。
もしかすれば、身内粛清用の兵器としてエミリオを“調整”してガデスの敵として
仕立て上げるかも知れないと云う懸念が拭い切れない。
対するウォンは、再び愉悦の混じる微笑を口許に浮かべてガデスに応じる。

「……今回の争乱で有力な手駒が幾つか機能停止してしまいましたからね、
 その穴を埋める為に彼には“処置”を施そうと思いまして。ブラドで培った
 人格制御処置の応用ですから、兵器としての質は落ちませんが少々開放的に
 なってしまいますか」

その様を想像してか、ウォンの口許に浮かぶ微笑にやや苦笑気味な感じが混ざる。
そして、そんなウォンの様を見てガデスは彼なりにそれなりの安堵を得た。
どうやらエミリオを身内粛清用に調整するつもりはウォンには無いらしい。
だが、ウォンの命令ひとつでそう変貌出来る様に何がしかの仕込みは施す可能性は高いが、
何、その時はエミリオがそうなっちまう前に不意討ちでも仕掛けて先にぶち殺しちまえば問題無ぇ、
とガデスはここまで考えて自身を納得させていた。


467 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/05/12(月) 17:44:42 ID:KrY9tPxZ

「……で、時空管理局とやらに入るとして、俺達の立場はどうなんだよ?」

ひとつの懸案をそれなりに解消したガデスは、次なる問いをウォンに投げ掛けた。
応じるウォンは、今度は淡々とした口調で答える。

「先ずは、今引き連れる二千人余のサイキッカーも管理局に登録して
 “管理局サイキッカー部隊”を編成します。勿論、私が司令官に就きますが。
 ガデス、貴方は其処で幹部待遇として迎えられます。
 ━━その次に、この二人が何やら画策している様ですので、それを利用して
 次の段階に進む計画ですよ」

そう言ってウォンが軽い念動力で自身の懐から取り出したフォト・チップから投射された
二枚の2Dホログラフ画像には、恰幅が良いながらもいかつい風情の壮年男性と、
褐色のボブヘアーに育ちの良さそうな明るい笑みを浮かべた美少女がそれぞれに写っていた。
二人共に堅い感じの制服を身に付けているが両方とも明らかに盗撮された撮され方で、
画像に添付されているメモデータにはそれぞれに「レジアス・ゲイズ陸中将(地上本部付)」と
「八神はやて三等陸佐(特別捜査官)」と名称階級が添えられている。

画像を見たガデスは極素直にウォンに問う。

「……で、コイツ等が何企んでやがんだ?」
「それは向こうに行ってから明かします。まぁ、直接には貴方には関係しませんから
 あまり気にする必要は無いですよ。それとも、舞台裏の細かい絡繰まで知らなければ
 舞台上で演技が出来無い程貴方は繊細な役者でしたか?
 “MASTER OF GRAVITY”地獄の傭兵、ガデス」

聞き様に因っては明ら様に馬鹿にしている様なウォンの台詞を、しかしガデスは
そうとは取らずに豪快な高笑いと共に軽く往して陽気に応える。

「ガハハハハ! 確かに、な。裏に何が有ろうと俺の邪魔になるなら
 纏めてぶっ飛ばすのが俺流だったな」

言いつつ、視線だけはウォンの眼を離さず欠片も笑みを含めず
用心深く見据えているのは、やはりガデスの傭兵たる所以か。

そんな遣り取りを数分程していた後に、先程の
ワーゲン三尉が二人に歩み寄って来て報告を告げる。



468 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/05/12(月) 17:49:57 ID:KrY9tPxZ

「ウォン少将貴下の二千人余は皆、転送で艦に収容終了しました。
 ですが……次元航行艦がこの次元に現れた際の極微弱な次元震動と
 この場に充満していた膨大なPSYエネルギーとが相互に干渉し合って、
 大規模な次元穴が意図せず開いてしまいました。
 これへの対処は如何致しましょう、ウォン少将?」
「その次元穴は何時まで開きっ放しになりますか?」

ワーゲン三尉に尋ねるウォン。

「試算では約30分間程かと……」
「自然には閉じるのですね、なら放って置きなさい」

淡々と応えるウォンの返答に、ワーゲン三尉は吃驚して
ノア本部が在った辺りを指差して尋ね返す。

「放って置くって……!? ですが、あの施設の中にまだ生きている人が居れば
 運良く一命を取り留めたとしてもそのまま次元漂流に巻き込まれてしまう可能性が高く……」
「この作戦は管理局の中でも上層の更に一部しか知らない、謂わば極秘任務です。
 これ以上長居をして他の次元艦艇に気付かれる訳には行きません。
 さぁ、早く私達も内火艇に乗せて撤収して下さい」

ウォンは一方的にそう告げると続けて何かを言い縋ろうとするワーゲン三尉を後に置いて、
エミリオを抱えたまま足早に内火艇に乗り込んだ。その後ろには、大袈裟におちゃらけた感じで
肩を竦めたガデスが続く。

その場に置き去りにされたワーゲン三尉は、燃え上がるノア本部の在る辺りと
黒く開いた次元穴とを見据えて数瞬逡巡すると、頭を左右に振って何かを振り切って
内火艇へと歩を進めた。

ウォン達を乗せた内火艇を収容した次元航行艦は、現れた時と同じく閃光と共に
虚空へと消え、それから約30分後に山の斜面に開いていた次元穴も閉じ、
唯、後には次元穴に猛焔をも引き剥がされ只々黒々とした燃え跡を晒すだけの一画が
ぽっかりと樹海の只中に開いているだけで有った……。


━━以上が、この次元に置ける“第一次超能力大戦”の知られざる顛末で有る。

そして、場面はもうひとつの序章━━これより半年後の
と或る場所へと向かう少女へと移る事になる……。




469 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/05/12(月) 17:59:22 ID:KrY9tPxZ
==================
以上、サイキ側の序章はこれで投下終了です。
次回はリリカル側の序章━━機動6課設立目前を
時間軸的な舞台にして、はやてとカリムが唯々語らい合う
そんなシーンを、L.P.F.Sのクロスとしての世界観説明を織り交ぜつつ
書かせて載く所存です。遅筆ながらじっくりと作り込んで書いて行くつもりですので、
御用と御急ぎの無い皆様は此方の作品に飽きが来るまでは
どうか末永く御付き合い下さいませ。(一礼)

470 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 18:17:42 ID:uW/zkwKp
なんというGJ。開幕からウォンがすごすぎる。

471 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 19:27:50 ID:x83PPO8a
GJ
サイキックフォースというとレポーターCMのあれ?


472 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 19:42:28 ID:6atqN/K0
懐かしのサイキックフォースとのクロスSSを読めるとは嬉しすぎる
バーンとキースはどうなるんだろ?次元穴がきになる

473 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 19:53:31 ID:BjcTP+Tp
GJ

474 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 20:13:36 ID:UF17rCpN
GJ!
ウォンが最初っから飛ばしっぱなしだぜ!すでに管理局に浸透済み!用意周到!
スカ相手にあの様ではこいつの相手は管理局にはちと重い。

475 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 20:55:41 ID:tOqBZvAi
GJ!であります。
ついにウォン閣下の新たな野望へと歩みだしたか。
閣下の策謀がどのように管理局を動かすか楽しみです。

476 :一尉:2008/05/12(月) 21:17:18 ID:YMzyfH3R
ウォン支援やな。

477 :メタルサーガsts ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 21:48:17 ID:YHb50RJs
前の方の投下から30分が経過してログのほうを確認しても予約がないようですが、
メタサガの14話投下行ってもよろしいでしょうか?

478 :メタルサーガsts(01/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 21:50:14 ID:YHb50RJs
マスター。
私のマスター。
世界最強のマスター。
私にとって唯一のマスター。
たった1つ以外の全てに楽しみを見出せないマスター。
既にマスターの身体は不具合だらけ。
次の瞬間にシステムダウンを起こしてもおかしくは無い。
それなのにどうして動き続けていられるのだろうか。
桁外れの精神力、あるいは意思なんて非論理的なものにしか回答は見つけられない。
逆を言えば論理的なものではただの1つも動き続けられる回答は存在しない。
何も無い穏やかなこの瞬間が一分一秒でも長く続いてほしいと私は願う。
けれど、マスターにとってはそれこそが苦痛。
私はどうすれば良いのだろう。
現在施されている私の改造は最終段階。
この改造で私はマスターの苦痛を取り除けるようになる。
けれど、本当にそれは良いことなのだろうか?
もしも、マスターがそれを望んでいなかったならば……。
マスターの願いと私の願い、相反したのならばどちらを優先すべきなのか?
魔法少女リリカルなのはStrikerS―砂塵の鎖―始めようか。

第14話 それぞれの思い

「相変わらずゴキブリはくたばったみたいにぐったりしてるねぇ。
考えたくなかったけど、やっぱりこれってやっぱりってことなのかな?」
「お答えしかねます。」
「天才のボクをごまかせるとか思ったのかい、ダッチワイフ。
今のは付加疑問文ってやつだよ。確認みたいなものさ。
ゴキブリはゴキブリ、ダッチワイフはダッチワイフ。
見れば誰でもわかる当然過ぎる現実を今更ながら確認してみただけだよ。
この程度のことさえ分からないなんてポンコツCPUが焼きついてるんじゃないの。」
「……。」

バトー博士の研究室。
その片隅に文字通り転がっているマスター。
そんなマスターを傍らに淡々と工具を持つ手を動かし続けるバトー博士。
作業をやめないまま紡がれたそんな彼の言葉に私は沈黙する。
バトー博士の言葉は正しいと私の思考論理が訴える。
以前であれば『問題ありません』の一言を淡々と返しただろうから。
それができないのはひとえにマスターの状態を知っているから。
おそらく私はマスター自身の次にマスターの状態を正確に理解している。
もしも、身体検査を行ったならば医者という医者がパニックを起こすだろう。
なぜ動いているのかと……。
本来ならばジャンクヤード送りになっているはずの身体。
オイホロトキシン中毒末期寸前の身体であることも合わせれば、
動いていることこそが解析不能の事態。
依然としてスペックダウンせずに同じ動きを繰り返し続けられる現実が理解不能。
可能性は限りなく0%であるはずなのに。
大破したエンジンが作りたてのエンジンと同じ性能を出している。
そんなありえるはずがない話がマスターに起こっている。

479 :メタルサーガsts(02/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 21:50:48 ID:YHb50RJs
動かないはずのエンジンがどうして動き続けているのだろう?
精神力、あるいは決して譲れないマスターの鋼の意志などという
非論理的なものによってか?
だが、私には理解できない概念のものによってとしか考えられない。
けれど、マスターが眠りにつく周期は確実に長くなりつつある。
それは終わりが近づいているという認めたくない事実の兆候。
ゆえに私は改造を望んだ。
よりマスターの役に立つ道具となるため、マスターの負担を軽減するため……。
ただの一度も本当の目的を口にしないままに……。
しかし、バトー博士は騙せない。
おそらく歴史上存在する全ての人類をランク付けして、
上から5位以内に確実に入る頭脳の持ち主。
もしも、バトー博士の脳を演算ユニットにすれば大半の演算において私と五分、
あるいは上回るものが生まれるだろう。
確実に私が勝るとすれば単純演算処理のみ。
それほどに優れた頭脳の持ち主がバトー博士。
ゆえに、この改造が何を意味するものなのか、全てが分かっていて手を貸してくれているのか?
全てはトモダチであるマスターのために。
そんな私の思考を読み取ったようにバトー博士が言葉を続ける。

「まぁ、この機能をつけちゃえばダッチワイフのほうからゴキブリのことを好き勝手に
弄繰り回して調教しちゃえるわけだ。調教する側から調教される側に回るなんて
この間のマゾヒストフォームのときにも思ったけど、ゴキブリって真性のマゾにでも
鞍替えしたのかな。まぁ、腕を斬り飛ばされてはぁはぁ欲情する変態ゴキブリの
趣味嗜好にサドとかマゾとかロリとかペドとかショタとかネクロとかスカとかゲイとか
ズーとか筋肉とかフォーミコとかバイとか女装が加わったとしても別にボクは気にしないけどね。」
「……。」

全てを知った上で行っている。
今の言葉で確信を得た。
もしかしたら私と同程度までマスターの状態を理解しているのかもしれない。
情報は一切無いはずなのに。

「ダッチワイフ。君の気持ち程度マシなクサレCPUで理解できるか微妙すぎるけど
ダメモトで先に言っておくよ。」
「なんでしょうか。」
「ゴキブリの意思は変えられないよ。」

作業の手は休めないまま、淡々と告げられた言葉に私の思考がフリーズする。
認めたくない1つの事実。
何度条件を変えてもたどり着いてしまう1つの事実。
この改造が無駄に終わるかもしれないという最も考えたくない1つの事実。
バトー博士の言葉は止まらない。

480 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 21:51:34 ID:ymn728Dk
ばっちこーい!
キャプテン・ラヴやりながら支援!!

481 :メタルサーガsts(03/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 21:53:00 ID:YHb50RJs
「なんてったってゴキブリは殺すしか能が無いんだからね。
それこそ死んでも直らないぐらいしみこんじゃってるんじゃないかな。
それに思わず笑っちゃうくらいに救いようのないバカ正直野郎だから
約束を反故にするって言葉を知らないみたいに振舞うだろうしね。
それこそ、ゴキブリの心を根元から動かせる出来事でも起こらない限り書き換えは無理だよ。
それこそサドからマゾに鞍替えするなんて可愛げあるレベルじゃないレベルの出来事も無い限りね。」
「……やってみなくてはわかりません。」
「ダッチワイフがずいぶんとアナログなことを言うじゃないか。
ゴキブリの調教は順調に機能しているようだね。
昔の君なら『可能』と『不可能』の2極で話は終わりだっただろうに。
もっとも、確立0と分かっていて悪あがきしているつもりなのかな。」
「……。」

だいぶ前からマスターが最後にたどり着く場所に気がついていたのかもしれない。
ならばどんな思いでバトー博士はマスターと付き合ってきたのか。
機械に過ぎない私でさえこんな状態。
こんなことならアナログな思考など理解したくは無かったとさえ思うことがある。
ならば、バトー博士は?
人間であるバトー博士ならばなおさら苦悩は深かったことだろう。
けれど、言葉を続けるバトー博士の調子は変わらない。

「そう悲観したものでもないよ。奇跡的に確立は0じゃないんだからね。」
「……0.0000000000000000000000000000000001%の確立ですか?」
「なんだ、分かってるじゃないか。まったく心配させないでよね。
ガラクタダッチワイフを溶鉱炉に突き落としても隕石の直撃ぶちこんでもスクラップにならないようにしたのに、
ガラクタCPUにガタが来たかと思ってびっくりしちゃったじゃないか。
そうだよ。なんてったって確立が0じゃないなんてゴキブリでもなければありえないことだもの。
さすが生き汚くてしぶとくて殺しても死なないゴキブリだよね。」
「それをなんて言うのか知っていて言っているのですね?」
「うん?もちろんだよ。知らなかったかい。科学者っていう人種はね、
いい歳ぶっこいていつまで夢見てんの?このバカってくらい夢想家でないと
やってられない職業なんだよ。
第一、科学こそが神様に反逆している学問なんだから些細なことだよね。
科学者は神様のくだらない説教を書いたクソありがたい紙をクソ拭き紙扱いしていろいろ解明してきたんだ。
だからボクとしては死神でも悪魔でも天使でも遠慮なく戦争やっちゃって構わないよ。
かったるくてマスカキしてるほうがよっぽど生産的だからそんな面倒なことやるのは
よっぽどのことでも起こったときぐらいだろうけどね。」

作業が続く。
改造レベル最終段階。
バトー博士が施す改造の全てをかき集めたフルカスタマイズ。
あの荒野生まれで奇形と言わんばかりに突き抜けた人間専用の改造。
マスターの他に扱えるとすれば……不本意だが赤い悪魔しか思いつかない。
既にスクラップと成り果てたあの女しか……。
しかし、この改造によって私が行おうとしていることはマスターへの反逆なのだろうか。
私の願いとマスターの願い。
相反するものであったならば、私はどうすれば良いのだろう。
回路が焼ききれても反逆するべきなのか。
それともマスターに従うべきなのか。
答えは出ない……。

482 :メタルサーガsts(04/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 21:53:26 ID:YHb50RJs
「さてと、あまりにも文献とか参考資料なさすぎて無限書庫なんてご大層で
身の程知らずでポルノの1冊も置いてないロクデナシのカビ臭いゴミ箱を爆竹かTNT爆薬か
核融合爆弾で跡形も無く消し飛ばしちゃおうかと思うくらいにろくに資料が無かった
機能はこれで搭載完了。
あまりにも資料がなさすぎたから探すのがだるくてかったるくてわずらわしくて
もうどうしようもなくなってしかたなしにシステムごと自分で構築しちゃったよ。
作るのに2週間もかかっちゃった自信作だからきっとゴキブリも気に入るよね。
なんてったって実にゴキブリ好みの壊れっぷりだもの。
ゴキブリとダッチワイフが次にどんなとち狂ったことを抜かすか予想して準備しておく。
これこそ天才の仕事ってやつさ。先見の明ってまさにボクにピッタリな言葉だよね。
ああ、そうだ。ついでに、ゴキブリ達がアグスタとかいう場末の連れ込み宿で
ドンパチやったくらいにうわ言で言ってた無意味な機能も搭載しちゃおうか。
片手間で搭載できるような内容だもんね。
どんなに些細でくだらなくて吐き気さえしちゃって正気疑うような思わず笑っちゃう改造だって親切なボクはつけてあげちゃうよ。
なんてったってトモダチだからね。
あと、ちまちましこしこマスカキ代わりの手慰みで暇つぶしに作ってた足場を召喚する
機能も搭載しておこうか。あの足場蜥蜴はだいぶ前に完成しちゃってるんだよね。
ナイチチもインジュウも融通が利かないからカラッポよりほんの少しマシだったはずの
足場蜥蜴のデコッパチがスカスカになっちゃったんだけど、
代わりになにをつめればいいかもう考えてあるんだ。
ナイチチが悪あがきしてエグレムネにバレバレなタオルやパッドをつめるみたいに
スカスカな場所へ詰め物しておく。
これって当然のことだよね。
それにナイチチのパッドよりはマシなものを詰めておくから。
そんなわけでダッチワイフはいらない心配しなくていいよ。
本当に魔法って便利だよね。
空間作って格納庫代わりにしちゃえるんだからさ。
詰め物についてはサースデーがあっちでがちゃこんがちゃこんやってくれてることだし、
ボクはこっちをとっとと片付けるとしようかな。
今日は徹夜だー。ハハハ、ハハハハハ、ハハハハハハハ……。」
「…わんわん。」
「おや?なんだい、クソイヌ。さっきまで置物か死体みたいに黙りこくってたのに。
ずいぶんとなにか言いたそうなツラしてるじゃないか。」
「わふ!!」
「なになに、オレにも武器をよこせって?わかってないなぁ。
やっぱりクソイヌは所詮クソイヌってことだよね。
でも、クソイヌはボクのトモダチのゴキブチのクソカイイヌだからね。
クソの役にも立たないだろうけどクソ暇だからクソ簡単に説明してあげるよ。
クソイヌでも分かるぐらいクソ簡単かつクソ丁寧にクソッタレな説明してあげるから理解してね。
ゴキブリの飼い犬のクソイヌだもん。簡単に理解できるよ。
理解できなかったらイヌナベにでもしてやるから楽しみにしててよ。
大丈夫。包丁の準備は出来てるからさ。それじゃ、いいかい。」
「わん!!!」

483 :メタルサーガsts(04/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 21:54:13 ID:YHb50RJs
「うん。いい返事だ。じゃ、説明するよ。
ここのゲロアマで砂糖吐きそうなアマチャン揃いのママゴト集団がボク達の故郷の使い慣れた武器は全部禁止とかほざくんだ。
だからどんなにかったるくてわずらわしくて面倒で跡形もなく消し飛ばしたくなるくらいにムカついても
武器は全部デバイスとかいうオモチャで代用しないといけないんだよ。
でもデバイスは魔力適性とかいうわけの分からないものがないとろくに動かせないんだ。
つまり、クソイヌに魔力適正がないとガラクタと大差ないオモチャを作ってやってもろくに動かせなくて
ママゴトさえろくにできない役立たずのクソイヌにしかならないってことだよ。
分かったかい、クソイヌ。」
「わんわん、わおーん!!!!!」
「なんだって?魔力適正があるかどうか測れって?仕方ないなぁ。
かったるいけどマスカキするよりは気持ち程度に生産的だから手慰みにやってあげるよ。
ゴキブリのためにもせいぜい無駄な努力してがんばってよ。」
「わん!!!!!!」
「どれどれ……………おや!へぇ!!ふぅん!まぁ、こんなもんでしょ。」
「わふ?」
「ああ、さすがゴキブリの飼い犬のクソイヌだよね。ゴキブリと同じで多少ましな魔力適正があったよ。
これでオモチャを運用するのに問題なくなったね。
そのままおとなしく馬鹿みたいにハァハァ言って尻尾振ってナニたててサカっていれば明日の朝には完成してるよ。
だからそれまでクソイヌのオモチャはオアズケさ。
オアズケーーーーーーーーーーーー!!!!!
うん。ゴキブリのカイイヌのクソイヌに本当にぴったりの言葉だよね。
そういうことだから、そこでマタグラのイチモツをオッタテてハァハァしながら
サカッておとなしく待ってるといいよ。わかったね。」
「わおーん!!」
「言われるまでも無いよ。ゴキブリの飼い犬であるクソイヌにピッタリのクソイヌデバイスにしてあげるからさ。
クソイヌがノウナシすぎて使いこなせないことはあっても性能が物足りないなんて絶対にいえない
ブチキレのブチマケのブッチャケのブッコロなクソすぎるクソッタレワンコロデバイスの完成を楽しみに待っていてよ。
さてと、材料はシャーリーが持ってきたゴミクズの山があることだし、とっとと終わらせちゃうか。」
「わん!!!!!」

バトー博士の作業が続く。
神業のような手際は留まることを知らない。
淀むことさえ無く動き続ける手によって、まったく方向性の異なるデバイスが手際よく形作られていく。
マスターは片隅で力なく崩れ落ちたまま。
ポチがその傍らで体を丸めている。
少しでもマスターに熱を移そうとするかのように……。
しかし、その日、1度としてマスターは目を覚まさなかった。
そして私は理解できなかった。
バトー博士の何気ない呟き。

484 :メタルサーガsts(06/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 21:54:37 ID:YHb50RJs
「ダッチワイフの頭、空きが冗談みたいにあるからついでにボクのレポートでもありったけ突っ込んでおくよ。
暇つぶしくらいにしかならないゴミデータだろうけどダッチワイフのろくに使わない無駄に要領のあまりまくった
クサレCPUはゴミ箱代わりにちょうどいいもんね。
もっとも、誰も読まないゴミにしかならないだろうけど。
なんせこれが本当に最後になるだろうからね。」


========
「今日は目立ったミスもなくいい感じでした。今後もこの調子でね。」
「「「「ありがとうございました。」」」」

そう言って微笑んでくれたなのはさんにあたし達は挨拶を返す。
なのはさんが考えている状態にあたし達はいったいどれだけ近づけているのだろう。
そんなことを考えながら訓練を終えて隊舎へ帰る道中。

「セカンドモードもだいぶなじんできたかなぁ。」
「そうですねぇ。」

なにげないあたしの呟きに真っ先に同意したのはキャロ。
セカンドモードが解放されて見た目にも使い勝手にも変化がなかったのはあたし達2人。
もちろん、出力とかはあがっているんだけど。
逆に同じものなのかと尋ねたくなるくらい形状から変わってしまうのがストラーダとクロスミラージュ。
カッコイイって思うけど、ぜんぜん使い勝手が変わっちゃって大変じゃないかって思う。
エリオのストラーダは物凄くピーキーになってるし、
ティアのクロスミラージュに至ってはミドルレンジ〜ロングレンジで使うものがクロスレンジ用に変わってしまっている。
以前ティアが大失敗しちゃったときに比べればクロスミラージュから展開される魔力刃はずっと洗練された形状だけど、
どれだけ使いこなせるものだろう。
ティアはすごいからさくさくっと使いこなせるようになるのかもしれない。
そんなふうに思ったことをそのまま口にする。

「変化の少ないあたしとキャロはともかく、ティアとエリオは大変そうだよね。」
「形から変わっちゃいますし…。」
「あたしは別にー。ダガーモードはあくまで補助だしね。」
「Yes.」
「複雑なのはエリオのほうでしょ。」

いくらか照れながらそう答えるティアは本当にすごい。
前みたいにいっぱいいっぱいの感じもしないし、物凄く落ち着いてきたように思う。

「ストラーダのセカンド、過激だもんね。」
「Wirklich?(訳:そうでしょうか?)」
「私はかっこいいと思うよ。ストラーダ。」
「Danke schon, mein Fraulein.(訳:ありがとうございます。レディ。)」
「ストラーダと一緒に鍛えていきます。がんばります。」

485 :メタルサーガsts(07/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 21:55:03 ID:YHb50RJs
かっこいいの一言で済ませてしまうキャロはどこかずれているような……。
でも、そんなやりとりがなんだかとっても微笑ましい。
以前は『モンディアル三士』とか『ルシエさん』とか、
いつもあたし達に敬語使うぐらいだったのに……。
気にしてなかったけど、いい変化なのかもしれない。
もしかするとあたし達を見ているなのはさんもこんな気分なのかも。
それにギン姉も同じことを思ったのかな。
少しずつ変わっていくあたしを見て……。
そういえば、あたし達のデバイスも変わってきたなって思う。
なによりもらったばかりのころに比べてずいぶんと話すようになってきたし。
もらったばかりのころは本当にほとんど話さなかったのに……あれ?
あれ……そんなまさか……あれ?

「ねぇ、みんな。あたし達のデバイスってインテリジェントデバイスなんだよね?」
「今更なに言ってんのよ。あんたのマッハキャリバーもあたしのクロスミラージュも
エリオのストラーダもキャロのケリュケイオンも全部インテリジェントデバイスよ。」

あたしの言葉にあきれたようにティアが答えてくれる。
でも、あたしが聞きたいのはそこじゃないんだ、ティア。

「スバルさん、どうしたんですか?」
「なのはさんのレイジングハートやフェイト隊長のバルディッシュ、
喋っているところみたことないなぁって・・・・・・。それに八神部隊長のデバイスも……。」
「ああ、そういうことですか。そうですね。フェイトさんのバルディッシュは
たまに喋っていますよ。でも、とても寡黙ですから。本当に必要最低限って感じです。」
「なのはさんのデバイスは……覚えていないですね。お喋りが嫌いなデバイスなんでしょうか。」
「性格もいろいろだからこそのインテリジェントデバイスでしょう。
そ・れ・にリインフォースU曹長が八神部隊長のユニゾンデバイスでしょうが!!」
「あ、そっか。」

言われて思い出した。
デバイス皆に性格があるんだって……。
だから生まれたての彼らを相棒って思って一緒に成長していかないといけないんだって。
リイン曹長とシャーリーさんに最初のころ言われたっけ。
いつの間にか当たり前になっていて忘れかけてた。
納得したようなあたしの表情を見てか、ため息を継ぎながらティアが口を開く。

「まったくあんたは……。どうして唐突にそんなことを言い出すかなぁ。」
「はんたさんのデバイスみたいに皆喋らないなぁって思って……。」
「「Sie ist eine Ausnahme. (訳:彼女は例外です。)」」
「「She is an exception.(訳:彼女は例外です。)」」

あたしの言葉に4人のデバイスが一斉に答えた。
まるで心外だとばかりのニュアンス込みで……。
うう、あたしってそんなにおかしなこと言ったのかな。
でも、デバイスに例外呼ばわりされるってどれだけ特殊なんだろう?
マッハキャリバーとあのぐらいたくさんお話したいんだけどな。
……バトー博士に相談してみようかな。
改造してもらったことないし……。

486 :メタルサーガsts(08/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 21:56:00 ID:YHb50RJs
========
「あれ?ティアナは?」

少し席を離れていたらティアナがいない。
今日はデスクワークのはずなんだけど・・・・・・。
管理局員なら現場できったはったのやり取りだけじゃなくて報告書の作成とか
レポートまとめたりとかしないといけない。
それが記録になって後に続いていくから。
それにどこで記録がリンクするか分からないもんね。
もっとも、わたしも昔はデスクワークが苦手だったんだよね。
ティアナはデスクワークが得意だったけど、
他のフォワードの子は最初のころ苦戦してたもんね。
ヴィータちゃんが厳しく指導しててだいぶ慣れたみたいだけど・・・・・・。
で、今日はそのデスクワークの日だったはずなんだけど・・・・・・。

「八神部隊長と同行だそうです。本局行きとか・・・・・・。」
「そっか。」

ああ、そういえば館内放送で呼び出しがかかってたっけ。
忘れるなんて疲れてるのかな、わたし。
隊長さんなんだもん、しっかりしないとね。

「なのはさんも今日はオフィスですか?」
「そうだよ。ライトニングは今日も現場調査だし、副隊長達はオフシフトだし。
前線メンバーはわたしとスバルとはんた君の3人だね。」
「あはは、なにも起きないことを祈ります。」

私の言葉に引き攣ったような笑みを浮かべるスバル。
実力が付いてきていることは実感しているだろうけど、
それでも単独でどこまで戦えるか自信が無いってところかな。
どこに出しても恥ずかしくないぐらいの実力はもうついているんだけどね。
でも、もっともっと鍛えてあげたい。
自分がなにをやりたいのか。
それに手が届くぐらいに・・・・・・。
そういえばはんた君、今日は1日バトー博士のところに篭るって言ってたけれど
いったいなにをするんだろう?
ぽんぽんデバイスを改造できるのはすごいと思うけど、扱えるのかな?
あちらをたてればこちらがたたずって感じに改造をすれば
それだけなにかが犠牲になるものなんだけど・・・・・・あれ?
・・・・・・そんなはずないよね?
バトー博士の少し口の悪い説明を思い出す。
本当に覚えやすいインパクト抜群の説明だったから内容は昨日のことみたいに思い出せる。
でも、あれれ?
アルファのペナルティらしいペナルティって重量だけ?
あれだけ高性能で・・・・・・。
それに、まさか取り付けるのって・・・・・・ユニゾン・・・・・・そんなはずないよね。

487 :メタルサーガsts(10/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 21:57:10 ID:YHb50RJs
でも、なんだろう。
なにかとんでもないものを見落としている気がする。
目の前にいるのにあまりにも当たり前にいるせいで気がつけないような気持ち悪い感覚がなくならない。
見逃しちゃいけないことを見逃してしまっているような・・・・・・。
胸騒ぎにも似た感覚は消えなかった。

「あれ?そういえばはんたさんの姿が見えないですけどデスクワークしないんですか?」
「・・・・・・事務仕事できるデバイスって反則だよね。」
「「・・・・・・She is an exception.(訳:彼女は例外です。)」」

レイジングハートとマッハキャリバーの躊躇いがちな言葉を聞いて
スバルの引き攣った笑みに大粒の汗が浮かんだ。


========
「テロ行為って地上本部にですか?」
「うん。そういう可能性がある・・・・・・って程度なんだけどね。」
「でも、たしかに・・・・・・。管理局施設の魔法防御は鉄壁ですけどガジェットを使えば・・・・・・。
それにフェイ・・・・・・いえ、なんでもないです。」

エリオはなにを言いよどんだんだろう。
でも、本当のことを話すわけにはいかない。
ほぼ確定で起こりうる未来で、機動六課設立の本当の理由だなんて・・・・・・。
普通なら管理局施設にテロをしようと考えないだろう。
人手不足に悩んでいるけど、それでも時空の平和を維持できるだけの戦力がある。
スキルも攻撃系から探査系まで幅広く揃ってる。
そんなところを攻撃しようものなら、尻尾を簡単に握られてしまう。
もっとも、ジェイル=スカリエッティのように尻尾を捕まえない相手もいる。
まるで内通者がいるみたいに・・・・・・。

「そう。管理局法では質量兵器の保持は禁止だからね。対処しづらい。」
「質量兵器?」
「あー、大雑把に言えば魔力を使わない物理兵器・・・・・・でいいのかな。」

どう言えば分かりやすいか思案しながら言葉を選ぶ。

「質量物質を飛ばしてぶつけたり、爆発させたり・・・・・・。先史時代のミッドや古代ベルカはそういう兵器がほとんどだったの。」
「聞いたことあります。一度作ってしまえば子供でも使えるとか・・・・・・。
指先一つで都市や世界を滅ぼしたり・・・・・・。」
「そう。管理局は創設以来、平和のため、安全のためにそういう武装を根絶してロストロギアの使用も規制し始めたの。
それが150年位前・・・・・・。でも、いろんな意味で武力は必要。さて、どうしたでしょう?」

私の質問に思案顔の2人。
答えはとても身近なものなんだけど・・・・・・。

488 :メタルサーガsts(10/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 21:57:52 ID:YHb50RJs
「比較的クリーンで安全な力として魔法文化が推奨されました。」

あっと思い至ったような表情と共にエリオが言葉を紡ぐ。
それに同意するかのように頷いているキャロ。
正解。答えは魔力。

「正解。魔法の力を有効に使って管理局システムは今の形で世界の管理を始めた。
書く世界が浮かぶ次元空間に本局を置いて・・・・・・。
発祥の地ミッドチルダに地上本部を置いて・・・・・・。」
「あ!!それが新暦の始まり・・・・・・。75年前・・・・・・。」
「そう。それで新暦前後の一番混乱していた時期に管理局を切り盛りして今の平和をつくるきっかけになったのが・・・・・・。」
「かの3提督・・・・・・。」

ディスプレイに3提督を映すとキャロが感嘆の声を上げる。
エリオも自分で答えておきながらなるほどと納得したように頷いている。
歴史なんて漠然とした理解しかしていない人も多いからしょうがないかな。
おっと、いけないいけない。
話がそれてしまった。

「と、世界の歴史は置いておいて・・・・・・。」
「あ・・・・・・。」
「すいません・・・・・・。」
「ガジェットが出てくるようなレリック事件でも六課が出動になるからねってこと。
しっかりやろうね。」
「「はい!!!」」

本当はエリオとキャロにはもっと安全な道に進んで欲しかったんだけど・・・・・・。
はんた君が聞いたら笑い飛ばされそうな考えだとは理解している。
それでも、子供に危険な場所に行って欲しくないというのは傲慢なんだろうか。

『そもそも地上本部がテロやクーデターにあったとして本局まで崩壊いうんわ考えづらいしなぁ。』

騎士カリムに会いに行った日、誰もが首を捻ってしまった部分がそこにある。
施設の破壊は確かに出来る。
リミッターの縛りさえなければ私やなのは、はやてにシグナム達ヴォルケンリッターでもできないとは言わない。
しかし、管理局という『システム』を壊すことはできない。
システムを破壊するのなら、時空管理局の法律を紙きれにしないといけない。
それならこの広い次元世界に広がっている管理局法をどうやって無効にするか?
どうしても考えが及ばない。
全ての次元世界を纏めて攻撃できるとでも言うのなら話は別だけれど・・・・・・。
『地上本部』を襲って『管理局法』を『全て無効』にするのは・・・・・・。
とにかく私にできることをやるまでだ。
地上と時空の平和と安全。
この子たちを含めた部隊の皆の安全と将来。
はやての立場となのはが飛ぶ空。
全部守るのは大変だけど、私がしっかりしなきゃ・・・・・・。
力を貸してね、バルディッシュ・・・・・・。

489 :メタルサーガsts(11/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 21:58:18 ID:YHb50RJs
手の中のバルディッシュが応えるかのように煌いた。

そしてエリオとキャロを伴って事件現場を調査しているときだった。
そういえば、質量兵器が毎日使われる世界から来てなかったかな。
はんたくんって・・・・・・。
案外、先史のミッドとか古代ベルカがはんた君の世界だったりしてね。
そんなことをふっと思っていた。


========
「じゃあ、データはこれね。重要データだから気をつけるように・・・・・・。」
「あ、はい・・・・・・。」

受け取ったメモリーカードをクロスミラージュに組み込んで格納していく。
その場に屈んでクロスミラージュの分解を始めたときだった。

「ティアナって言ったかな。ちょっといいかな。」

データを渡した相手、ヴェロッサ=アコース査察官が声をかけてきた。
返事をして向き直る。

「君から見て、はやてはどう?」

ひどく漠然とした質問。
どんな答えを要求した問いなんだろう?
若干の思案の後、一番素直で手堅そうな答えを口にする。

「それは・・・・・・優秀な魔導師で優れた指揮官かと・・・・・・。」

言葉に偽りは無い。
魔導師ランクSSなんて想像を超えた世界・・・・・・。
それに若手で部隊を1つ切り盛りしているのが優秀さの証拠だろう。
会話をしてみても気難しいわけでも、気分屋というわけでもない。
だからといって能天気になにも考えていないというわけじゃなくて、
みんなのことを末端まで見ている。
それに慎重、・・・・・・言葉は悪いが臆病、というわけじゃなくて大胆さも持っているし、
思い切りのよさもある。
なのはさん達といった友人にも恵まれている。
なんか順番に経歴とか人柄だけ考えてみると酷く恵まれた人に思えるから不思議だ。
苦労知らずの人にさえ思えてしまうほどに・・・・・・。
けれど、なにか苦労があったんだと思う。
なのはさんが再起不能になりかけたみたいに・・・・・・・。
はんたさんが義手であるように・・・・・・。

490 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 21:59:11 ID:tOqBZvAi
ところがどっこい、ミッドチルダはテロられまくりでした支援

491 :メタルサーガsts(12/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 22:00:37 ID:YHb50RJs
「うん。そうか。はやてとクロノ君、そして僕の義理の姉カリム・・・・・・。
3人は結構前から友人同士でね。その縁で僕も仲良くしてもらってるんだけど・・・・・・。」
「あ、はい。存じ上げています。」
「古代ベルカ式魔法の継承者同士だしなによりはやてはいい子だ。優しいしね。」
「あ、はい・・・・・・。」
「妹みたいなものだと思ってね。だから・・・・・・いろいろと心配でね。」
「はい。」

心配。
言葉にしてみれば2文字に過ぎないけれど、いったいどういう意味の心配なのだろうか。

「レアなスキルや強力な魔法、高い戦力、人を使える権限や権力・・・・・・。
そういう力を持つってことは同時に孤独になっていくってことなんだ・・・・・・。
僕はそう思う。」
「はい・・・・・・。」

返事を返しながら言葉の意味を反芻する。
ひどく意味深で深い言葉・・・・・・。
力があればなんでもできるって思っていた昔。
けれど、力があっても手が届かないものがあるって教えられた痛み。
以前の私だったら『そんなことあるはずがない』とでも噛み付いたか、笑い飛ばしたか・・・・・・。
でも、力だけじゃ駄目なんだって知った今は素直に言葉を受け入れられる。

「もちろん必要問わず頼られもする。だけど、それは人間としてじゃない。
その人がもっている力そのものが必要だとされているに過ぎない。
ああ、もちろんこれは極論だよ。実際にはそんなにデジタルじゃない。」
「あ、はい。わかります。強い力を持つものにはそういった重圧や寂しさが付き纏うと・・・・・・。」
「そう、それ!!」

我が意を得たりとばかりに表情を明るくし声を大きくするアコース査察官。
よかった。解釈が間違ってなくて。

「まぁ、つまり僕がいわんとしていることは・・・・・・だね。
部隊長と前線隊員の間だといろいろ難しいかもしれないけど、
上司と部下ってだけじゃなく人間として、女の子同士として接してあげてくれないかな。
はやてだけじゃない。君の隊長たちにも・・・・・・。」
「了解しました!!現場一同心がけるよう努めます。」

笑みと共に敬礼と返事を返す。
お返しのように笑みを浮かべてくれるアコース査察官。
上司と部下じゃない。
人間として、女の子同士として・・・・・・か。
私1人でどうにかできるなんて思ってないけど、少しでも負担を軽く出来たらって思う。

「それじゃ、頼みごとをするんだからなにか見返りがないと駄目だね。」

492 :メタルサーガsts(13/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 22:01:08 ID:YHb50RJs
悪戯っぽい笑みを浮かべながらのアコース査察官の言葉に首をかしげる。
どういうことだろう?
実戦で役に立つ魔法を教えてくれるとか、ボーナスをくれるとかかな?

「お値段もお手ごろでおいしい料理屋さんを教えてあげよう。
帰りに2人で寄っていくといい。」
「ありがとうございます。」

さっそく使わせてもらおう。
皆にもお土産買っていこっと・・・・・・。
スバル用のサイズがあればいいけど・・・・・・。
なんでアレだけ食べてウエストも体重も変わらないのかしら。
フォワードは消費カロリーがすごいとは言うけど・・・・・・。
しかし、人間として・・・・・・か。
もしも、あのとき私が勝っていたらどうなっていただろう。
思い出すのはなのはさんに挑んだあの模擬戦。
防がれてしまった近接攻撃が直撃していたなら・・・・・・。
私は思い上がりを正すことは出来なかっただろう。
そしてそのまま育った私は私として見られず、ただの駒としていつか壊れていったかもしれない。
あのとき叩きのめされて良かったと思う。
今でも鮮烈に思い出せる痛みの記憶。
もしも、叩きのめされなかったら?
もしも、六課に来ていなかったら?
もしも、スバルがいなかったら?
もしも・・・・・・。
考え始めると無数のIfがずらりと並ぶ。
おそらくそれら全てが分岐点。
たぶん私以上に隊長達やはんたさんはたくさんの分岐を超えてきたんだと思う。
その結果、今があるんだって・・・・・・。
そういえばどうしてだろう?
アコース査察官の言葉を聞いて真っ先に、はやて部隊長やなのはさん、
フェイト隊長やシグナム副隊長よりも先にはんたさんが思い浮かんだのは・・・・・・。
1人で凛と気高く佇んでいるようなイメージなのに・・・・・・。


========
ミッドチルダ地上、陸士108部隊、隊舎。
その薄暗い一室でウィンドウに移った映像を眺めてゲンヤ=ナガジマの顔が難しい表情を浮かべる。

「現場検証とあわせて改めて六課からデータをいただきました。」
「この魔法陣上のテンプレート、使っている動力反応。これまでのものと違い桁違いに高精度です。」
「間違いなさそうだな。」

娘のギンガとマリエル技官の説明に不本意ながら同意する。
認めたくなくても目の前に突きつけられた現実から眼は逸らせない。
しかし・・・・・・。

「はい。この子達全員、最新の技術で作られた・・・・・・戦闘機人です。」

493 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 22:01:30 ID:tOqBZvAi
はやてが孤独w支援

494 :メタルサーガsts(14/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 22:01:57 ID:YHb50RJs
戦闘機人・・・・・・か。
どうして因縁深いかね、家は・・・・・・。
家内も、スバルとギンガも、そしてたぬきの嬢ちゃんが躍起になって追いかけてるものも、
全部が全部戦闘機人絡み。
コストパフォーマンスなんて視点で見れば金持ちの道楽なんて次元を超えたもの。
そんなものを少なくとも4機保持してやがる。
しかも、まるで管理局に喧嘩売るみてぇに使いやがって・・・・・・。
心が鉛を流し込まれたかのように重い。
薄暗い部屋に沈黙が漂う。

「マリエルさんの解析データを六課と刷り合わせないといけないのですが」
「通信で済ます話じゃねぇな。俺が出向くとするわ。」
「はい。八神部隊長、御戻りは8時過ぎになるそうです。」
「マリエル技官はお忙しいかい?」
「私もご一緒します。最近スバルの顔も見ていないですし・・・・・・。
それになんだか物凄い科学者が六課にいるって噂になってますから。」
「ありがとうよ。じゃぁ、時間まで適当にやっていてくれ。ギンガ・・・・・・。」
「はい。マリエルさん、休憩室に・・・・・・。」
「うん。」

部屋を出て行く2人の後姿を見送る。
ふと視線を動かすと今は亡き家内の写真が目に入る。
お前が生きていたら・・・・・・どうしたかな。

「やっぱりと言やぁ・・・・・・やっぱりか・・・・・・。まだ何にも終わっちゃいないんだな。」

写真の中で笑顔を向けている家内は何も応えてはくれない。
ただ、胸に去来するこの感覚は・・・・・・感傷ってやつか。
女々しいもんだな。俺も・・・・・・。


========
「そう。なのはがママになってくれたんだ。」
「うん。」
「でも実は、フェイトさんもちょっとだけヴィヴィオのママになったんだよ。」
「ふぇ?」

フェイトちゃんの言葉に不思議そうに首をかしげるヴィヴィオ。
後見人になってくれたフェイトちゃん。
わたし1人でヴィヴィオの面倒を見ると思っていた矢先だっただけに、とても心強い。
でも、後見人って言葉の意味、ヴィヴィオに分かるかな。

「後見人っていうのになったからね。ヴィヴィオとなのはママを見守る役目があるの。」
「んーーーーーー。なのはママと・・・・・・フェイトママ?」
「うん。」
「そう。」

ヴィヴィオに言われて思わず納得してしまう。
とても分かりやすい表現。
そうだ。
わたしとフェイトちゃんの2人がヴィヴィオのママになったんだ。

495 :メタルサーガsts(15/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 22:02:22 ID:YHb50RJs
「ママ・・・・・・。」
「「はーい。」」

不思議そうに呼びかけるヴィヴィオにわたし達が声をそろえて返事をする。
途端に花の咲いたような笑顔がヴィヴィオの顔に浮かぶ。
言葉の意味を実感できたからかな。
それになんだかとても幸せな感じ。
自然と込み上げてくる笑いがわたし達3人から零れていた。
眠るまでそれは途絶えることは無かった。


========
「それにしてもなのはさんとフェイトさんがママって・・・・・・。」
「ヴィヴィオ、物凄い無敵な感じ・・・・・・。」
「あはは・・・・・・。それなら2人もフェイトさんの被保護者でなのはさんの教え子じゃない。」
「えーと、それはそうなんですけど。」
「えへへ・・・・・・。」

あたしの言葉に2人とも照れるような恥ずかしいような、
誇らしいような複雑な表情を浮かべる。
フェイト隊長、強いし美人だしかっこいいもんね。
あ、そうだ。
前から聞いてみたい質問があったんだ。

「そういえば、2人的にはフェイトさんってお母さん?お姉さん?どっち?」
「私は優しいお姉さん・・・・・・ですね。」
「あー、僕はどっちだろう。難しいかも・・・・・・。」

迷うことなく答えるキャロ。
対照的にエリオは酷く複雑そうな表情のまま、考え込んでしまった。
男の子と女の子でこういうのは違うものなのかな。
そんなことを考えているとキャロが口を開く。

「フェイトさん、エリオ君が子供なのと弟なのとどっちが嬉しいのかな?
明日聞いてみようか?」
「うっ!!!!!!!!!!!!ゴメン、キャロ。それはやめて!!」
「うん?」
「あははははは、ははは、うふふ・・・・・・。」

パスタを噴出しそうになりながら大慌てで止めさせようとするエリオ。
不思議そうな顔できょとんとするキャロ。
あまりにも対照的な2人のほのぼのとした雰囲気に自然と笑いがこみ上げてくる。
でも、お母さん・・・・・・か。
戦闘機人・・・・・・。
母さん、あたしが決着をつけます。

496 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 22:02:37 ID:tOqBZvAi
ママw支援

497 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 22:03:42 ID:NCExHmHy
お帰りなさい!
支援

498 :メタルサーガsts(15/15) ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 22:04:42 ID:YHb50RJs
以上でメタサガ14話投下完了。
リカバリ直後の話ですがドンパチなし、バイオレンスなし、殺伐なしです。
原作をご存知の方はこれからが盛り上がるパートとご存知ですね。
今回はお話として盛り上がらないかもしれませんがフラグ大量地帯なので回収よろしく。

それでは感想、ご指摘お待ちしております。

499 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 22:11:18 ID:ymn728Dk
長かった……
いやもう楽しみにしてました。GJです!
所でバトー博士に死亡フラグ立ってませんか? いや、なんとなく。

500 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 22:15:14 ID:x83PPO8a
GJ
相変わらずバトー博士は口の悪いこと悪いこと
指揮官はたしかに孤独になりがちですよね
高天原の白い悪魔みたくそんなの関係ねえと言わんばかりの超越的な存在に、、、
はやてがなっても困るけどw

501 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 22:15:34 ID:tOqBZvAi
GJ!
はんたの出番はなかったけど、アルファと博士のやり取りが良かったです!
はんたの存在感が感じられます。
あと、まあ地上本部の実態を知らないとああ思っちゃうだろうな……

502 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 22:29:06 ID:duQOZ/db
待ってましたよお久しぶりGJ!
バイオレンスで殺伐としてないのが不自然に感じてちゃ、色々不味いんだろうなぁw
ばら蒔かれた不安の種がスクスク育つのを楽しみに待ってますw

503 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 22:34:17 ID:n4kflGgz

果たして、はんたはこの世界で希望を見つけられるのか。

504 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 22:35:19 ID:jCKr6ZjC
お久しぶりGJ!
崩壊の時が刻一刻と迫ってるな。このままだと本部襲撃とストームドラゴン襲来は同時になるのかね?
下手すりゃ本部周辺はペンペン草1本残らないどころか、見渡すかぎりの砂漠になりそうだwww

505 :作者の都合により名無しです:2008/05/12(月) 22:37:22 ID:AWne7h1T
続きが楽しみですねぇ

506 :メビウス×なのは ◆ga/ayzh9y. :2008/05/12(月) 22:42:40 ID:QDHbgZaQ
GJっす。
嵐の前の静けさ……次回が色んな意味で恐くなりそうっすw


さて、今の所予約等はなさそうですので、よければ11時よりツバサの方投下いたします。

507 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 22:45:21 ID:ymn728Dk
そういえばストームドラゴンということは、
CIWSを三連装でバラまくはんたが見れそうじゃないか……!
wktkが止まらねえ

508 :メタルサーガsts ◆1vM/cJUE9g :2008/05/12(月) 22:51:32 ID:YHb50RJs
まずは久しぶりなのにお早い感想を下さった皆様へ最大級の感謝を。
最終話までバリバリいきます。

>>499
本当にお待たせしました。最後まで書ききるべく鋭意製作中。
ネットができない状態があまりにも続いたせいか書きたくて仕方ないです。
今後もおつきあいください。
がんばってフラグ回収してくださいなw

>>500
孤独をかんじさせないのが指揮官のすごいところです。
苛立ちや焦燥に駆られるはやてがいたらリリカルじゃない気もしたりしますが。

>>501
最初はアルファのみで14話にしてしまうか悩みました。
けれど、そうするとなのはたちのママフラグが立たなくなるので皆の心のほうを描く話としました。

>>502
お待たせしました。14話お届けにあがりました。
今週中にぽんぽん投下いきますのでお楽しみに。
不安の種の発芽と収穫祭をお待ち下さい。

>>503
なにをもって希望というのか、それが問題ですね。

>>504
原作を見て本部襲撃の話をわくわくしてお待ちください。

>>506
お楽しみに。アルファフルカスタムの登場をお待ちください。

>>507
CIWS登場しますよ。どの場面かは今後をお楽しみに。
wktkしてお待ち下さいな。

509 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 22:54:19 ID:n4kflGgz
>>508
すいません。はんたが辛そうで、この世界でそれは解消されるのかと思いましたもので。

510 :メビウス×なのは ◆ga/ayzh9y. :2008/05/12(月) 23:02:05 ID:QDHbgZaQ
それでは時間が来ましたので、これより投下に入ります。
よろしければ支援お願いします

511 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 23:03:06 ID:FLgvdo+L
支援

512 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 23:03:44 ID:w/u66V4m
支援〜

513 :ツバサ〜ミッドチルダ編〜 ◆ga/ayzh9y. :2008/05/12(月) 23:03:49 ID:QDHbgZaQ
ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE- 〜ミッドチルダ編〜
第3話「牙狼」


「オォォォォォッ!!」

開始の合図と共に、ザフィーラは勢いよく地を蹴り、ファイへと飛び掛った。
そのまま、右の前脚を大きく振り上げ、彼目掛けて爪撃を浴びせにかかる。
驚異的な瞬発力から繰り出されるその一撃は、威力は勿論、スピードもかなりのものがある。
しかしファイは、それを前にしても全く動じず、笑顔を保ったまま相対していた。
そして、爪が今まさに彼の顔面を捉えようとした……その瞬間。

「よっと」

ファイはホンの少しだけ、顔を動かした。
直後……爪は空を切り、僅かに彼の髪の毛を数本だけ切り落とす。
正しく、紙一重の回避であった。
ザフィーラは、そのままファイの肩の上を通り越して着地しようとする。
しかし、その瞬間……ファイは待ってましたと言わんばかりに、力いっぱい棒を垂直に振り上げた。

「そ〜れ」
「グッ!?」

ザフィーラの腹部へと、その一撃はまともに叩き込まれた。
あまりにも急な攻撃だった為に、防御は間に合わなかった。
そのままファイは、力を込めてザフィーラを投げ上げる。
蒼き巨体は、ゆっくりと回転しながら宙を舞う。
そして、地面へと叩きつけられ……

「ヒュ〜……空、飛べるんだ」

なかった。
ザフィーラは空中で何とか静止し、そのまま真っ直ぐにファイを見つめていた。
流石にザフィーラが空を飛べたのには、ファイも驚かされたらしい……尤も、相変わらずその顔は笑ったままであるが。
彼はそのまま、棒の先端をザフィーラへと向けた状態で静止し、ザフィーラに対して不敵な笑みを浮かべる。

514 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 23:04:08 ID:FLgvdo+L
支援

515 :ツバサ〜ミッドチルダ編〜 ◆ga/ayzh9y. :2008/05/12(月) 23:05:02 ID:QDHbgZaQ
(こいつ……!!)

ザフィーラは、そんなファイの行動に強い警戒心を抱く。
構えたまま静止したという事は、即ち少なくとも自ら仕掛けてくる可能性は無いという事。
此方が動き出すのを待っているという事になる……ザフィーラはどうすべきか迷った。
先程彼は、己の攻撃を紙一重で回避した上に、更に一撃を加えてきた。
今仕掛ければ、またも同じ結果になるのではないかと……そう感じられたのだ。
しかし、あのような真似をそう何度も出来るとも思えない。
ならばここは……相手の戦法を確認する為にも、もう一度行くしかない。

「ハァァッ!!」

先程同様に、ファイへと急激なスピードで迫る。
今度の攻撃は、爪撃ではなく全身を用いての体当たり。
縦に勢い良く回転しながら、体ごとぶつかりにかかる……しかし。
結果は先程とまったく同じだった。
ファイは、またもギリギリの所で攻撃を回避したのだ。

「ざ〜んねん」

ファイは上体を大きく反らし、その上をザフィーラがスレスレで通過する。
その後、ファイはザフィーラが着地する寸前に、すぐさま地を蹴って後方へと宙返り。
ザフィーラの目の前へと、彼に若干遅れて着地し……それと同時に、その眉間目掛けて真っ直ぐに棒を突き出す。

「ッ!!」

しかしザフィーラは、ギリギリのところで防壁を展開。
この突きを辛うじて受け止めると、すぐにファイとの間合いを離した。
ファイは追撃に出ようとはせず、そのまま棒を構えなおす。

(油断が出来ないどころの話ではない……とんだ兵だ……!!)

ザフィーラは、ファイに対する認識を改めた。
そのへらへらとした態度からは想像できないほどに、彼は出来る相手だった。
そう判断した最大の理由は、こちらの攻撃に対する反応。
爪撃にも体当たりにも、彼は紙一重での回避に成功している。
これだけでも、それなりの技量があることは分かるのだが……それ以上に驚異的だったのは、彼の表情だった。
普通は目の前に攻撃が迫れば、人は何かしらの反応を必ず示す。
だが……彼は、笑顔のままだった。
此方に対し、表情を全く変えないままだった……警戒心も恐怖心も、微塵にも感じさせなかったのだ。
自分には、いや、六課にいる誰にも同じ芸当が出来るとは思えない。

516 :ツバサ〜ミッドチルダ編〜 ◆ga/ayzh9y. :2008/05/12(月) 23:07:01 ID:QDHbgZaQ
(……戦い慣れしている。
相当の修羅場を、潜り抜けてきているということだ)

攻撃が目の前に迫ろうとも、一切取り乱す事が無いレベルに彼はいる。
恐らくは、自分達が遭遇してきたのとは比べ物にならない数の死線を、何度も経験しているのだ。
無論、攻撃に対して一切の恐怖が無くとも、それに瞬時の反応が出来るだけの実力が無ければ話にはならない。
そして彼には、それが備わっている……これまで潜り抜けてきたであろう修羅場の中で、自然と培ったのだろう。
そう思うと……その顔に浮かぶ笑顔も、また作為的なものに思えてしまう。
己の感情を、他者に悟られないようにしていると……そう思えてしまうのだ。

(……どうやら、俺が考えていた以上にこいつは複雑らしいな)

何故、SS+もの魔力を持っておきながら、それを使おうとしないのか。
その理由が、何となくではあるがこれで分かった。
彼の過去は、苦難の連続だったのだ……恐らくは、自分達守護騎士に匹敵するほどの。
その中で、きっとあったに違いないのだ。
魔法を使いたくないと思ってしまうほどの……深く、暗い闇が。

(……鋼の軛で身動きを封じるのは、恐らく無理だろうな。
こいつの反応速度なら、拘束される前に逃れるのは十分可能だ……ならば……!!)
「来ないのかな、ワンちゃん?」
「……フローライトだったな。
すまない……お前の事を、どうやら甘くみていたようだ」

ザフィーラは、ファイに対し素直に謝罪の意を述べた。
魔法を使わずとも、彼には十分すぎる実力がある。
ならば……こちらも、それに応えられるだけの力で挑まなければならない。
ここからは、己が全身全霊を以て彼と合間見える……これが、今の自分に出来る最大の敬意である。

「ここからは……全力で行かせてもらおう!!」

直後。
ザフィーラの肉体が、光に包まれ……瞬時にその形態を変えた。
褐色の肌に、鍛え抜かれた屈強な筋肉。
その銀の髪からは、僅かに蒼い獣の耳が生えている。
これまでの、狼としての姿ではない、盾の守護獣としてのもう一つの姿……人間としての姿である。

517 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 23:07:25 ID:BCyPIKYe
支援!!
ファイVSザフィーラw

518 :ツバサ〜ミッドチルダ編〜 ◆ga/ayzh9y. :2008/05/12(月) 23:08:22 ID:QDHbgZaQ
「え……?」
「ざ、ザフィーラ……?」
「エェェェェェェェェェッ!!!??」

その姿を見て、フォワード四人並びに小狼とさくらの二人が、一斉に声を上げた。
黒鋼も、声こそ出さなかったものの、大きく目を見開き驚いていた。
それも当然の反応……狼がいきなり人間に変身したのだから、驚くなという方が無理である。
特にフォワード四人にとっては、これは衝撃的過ぎた。
先日、彼が喋れたという事だけでも十分驚かされたばかりだっただけに……開いた口が塞がらなかった。
なのは達はそんな彼等を見て、流石に苦笑せざるを得ない。

「ヒュ〜、驚いたなぁ」
「よく言う……最初から、気付いていた癖にな」

しかし肝心のファイはというと、先程までと全く変わらぬ様子でザフィーラと接していた。
流石に最初から見抜いていただけあって、然程驚きは無かったのだ。
ザフィーラはそんな彼に対し、微笑を浮かべながら構えを取る。

「でも、驚いたは驚いたよ?
想像してた姿とは、ちょっと違ってたしね」
「ほぅ……どんなのを想像してた?」
「喋り方とかから、結構おじさんかなって思ってた。
そしたら、意外に若かったからね〜」
「ふっ……だが生憎ながら、俺は見かけ通りな年齢というわけでもないぞ?」
「あ〜、やっぱりか」

互いに軽口を叩きあいつつも、その間に流れるは緊迫した空気。
はたして、どちらが先に仕掛けるか。
誰もが固唾を呑んで見守る中……先に動いたのは、やはりザフィーラだった。

「デヤァァァァァァッ!!」

真っ直ぐに踏み込み、右の拳を突き出す。
狼の状態にはない力強さを備えた、重い拳の一撃。
勿論、こんな攻撃に命中するわけにはいかないと、ファイは体を横へ僅かに反らして回避する。
そして、お返しにと素早く突きを繰り出す……しかし。

519 :ツバサ〜ミッドチルダ編〜 ◆ga/ayzh9y. :2008/05/12(月) 23:09:34 ID:QDHbgZaQ
「あっ……」
「ッ……ギリギリ、どうにかなったな」

突きは、ザフィーラの胴体まで後僅かという所で静止した。
命中寸前で、ザフィーラに棒を掴まれたのだ。
狼の姿では出来なかった、人間の姿だからこそ出来る芸当である。
とっさにファイは、棒を手放そうとする。
しかし、それよりも速くザフィーラは手首を返して回転を加え……それに釣られ、ファイの体もまた回転する。
ここにきて、ついにザフィーラがファイを捉えたのだ。
ファイはそのまま、地面へと両の踵から仰向けに落とされる。

「フンッ!!」

そしてそこへ、ザフィーラは追撃を繰り出す。
一歩前へと踏み込んで、ファイの顔面目掛け真っ直ぐに拳を打ち下ろしにいった。
しかしファイも、そう簡単に攻撃を受けてはくれない。
彼は体を横へと素早く転がして、拳を回避する。
そして素早く起き上がり、横薙ぎを仕掛けにいくが……

「ッ!!」

その一撃は、虚しく空を切った。
先程までザフィーラが立っていた筈の場所に、彼の姿が無かった。
いや……正確に言えば、ファイには今の彼の姿が見えていなかった。
まさかと思い、ファイはすぐさま足元へと視線を移すと……予想通りの光景がそこにはあった。

「あらら……ワンちゃんに戻ってたんだね」

ザフィーラは地面に伏せていた。
無論、その姿は人間ではなく狼である。
彼は、瞬時に狼化する事によってファイの攻撃を回避していたのだ。

「オォォォォッ!!」

ザフィーラは大きく口を開き、ファイへと飛び掛った。
爪撃でも体当たりでもない、その二つよりも更に強烈な一撃……噛み付き。
流石に距離が近すぎる為、回避は間に合わない。
ならばと、ファイはとっさに棒を横に構えてそれを受け止める。
何とか、防御には成功したのだが……これはザフィーラにとって、想定の範囲内だった。

520 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 23:09:50 ID:BCyPIKYe
そういえば本編だとザフィーラ結局犬のままだったな支援!

521 :ツバサ〜ミッドチルダ編〜 ◆ga/ayzh9y. :2008/05/12(月) 23:11:28 ID:QDHbgZaQ
「ヌンッ!!」

ザフィーラは棒を口に加えたまま、両の後ろ足で強く地を蹴る。
そうする事で、彼の体は棒を軸に縦回転し……その踵が、ファイの両肩へとまともに振り下ろされた。
ここでついに、ファイの笑顔が崩れる。
襲ってきた鈍い痛みに、顔を歪ませてしまうが……そんな彼へと、ザフィーラは更に仕掛けてきた。

「取ったぞ、フローライト!!」

ザフィーラは即座に棒を口から離して、それと同時に人間状態へと変化する。
そして、ファイの肩に乗せていた両足でがっちりと彼の首をロック。
そのまま、上体を大きく揺らしてその股下を潜り抜け……額から、彼の顔面を地面へと叩きつけた。
プロレス技で言う、フランケンシュタイナーである。

「ガハッ……!!」
「ファイさん!!」

ファイの口から苦悶の声が漏れる。
どうやら今の一撃は、かなり効いたらしい。
ならばここは一気に攻めるべしと、ザフィーラは素早く両足を解放し、ファイに追い討ちを仕掛けた。
先程と同じく、彼目掛けて拳を打ち下ろしにかかる。
だが、ファイはギリギリの所で立ち上がってそれを回避。
そのまま、彼との間合いを離す。

「参ったなぁ……結構効いたかも」

ファイは頭を片手で押さえながら、苦笑いを浮かべる。
結構なダメージは受けたが、まだ戦えなくはない。
実力を測るための模擬戦というならば、今の時点で既にそれなりの成果は得られているだろう。
だが……どうせなら、とことんまでやっておきたい。
ファイは棒を構えなおし……そして、強く地を蹴った。

「むっ……!!」
「ファイさんが打って出た!!」

ここまで受け主体だったファイが、ついに攻めへと転じた。
ザフィーラとの距離を一気に縮めて、その足元目掛けて棒を突き出す。
しかしザフィーラは、とっさにバックステップしてその一撃を回避。
すかさず前方へと踏み込んで、ファイへと右のコークスクリューを叩き込みにかかる……が。

522 :ツバサ〜ミッドチルダ編〜 ◆ga/ayzh9y. :2008/05/12(月) 23:12:44 ID:QDHbgZaQ
「何ッ!?」
「当たったら痛そうだしねー」

ザフィーラの拳は、虚しく空を切った。
ファイの体は今、その拳の真上にあった。
彼は足元への突きが外れたと同時に、棒高跳びの要領で上空へと飛び上がったのだ。
そしてそのまま、ザフィーラの背後に着地。
彼が反応するよりも早く、その無防備な背へと前蹴りを打ち込む。

「ちぃっ……だが!!」

ザフィーラは地面に倒れこみそうになるのを、ギリギリの所で踏ん張りきる。
そして、すかさず振り向き様に飛び蹴りを繰り出した。
その蹴りを、ファイは棒で受け止め防ぐ……だが。

「デヤアアァァァァァァァァァァッ!!!」
「ッ……!!」

ザフィーラは、その場で蹴りの連打を繰り出してきた。
空を飛べるからこそ出来る、空中での連続蹴り。
その強烈な勢いに耐え切れず……ここでついに、ファイの構えていた棒が折れた。
決定打を叩き込む、絶好のチャンス……それをザフィーラは見逃さなかった。
無防備になった彼の胴体目掛け、ザフィーラは勢いよく全力の蹴りを叩き込む。

「うっ……!?」

その重く強烈な蹴りに、ファイは苦悶の表情を浮かべた。
衝撃に耐え切れず、その体は地面へと仰向けに倒れこんでいく。
ザフィーラの全力の蹴りを相手に踏ん張りきるのは、ファイには不可能だったのだ。
しかし……ザフィーラの攻撃は、これだけでは終わらなかった。
彼は、ここで完全な決着をつけにかかってきたのだ。

「もらったぁっ!!」

すかさず狼状態へと変化し、その高い瞬発力でファイへと飛び掛る。
そして、彼の背が地面に着いたのとほぼ同時に……彼の体へと、覆いかぶさったのだ。
直後にザフィーラは、人間形態へ再び変化。
その両手を彼の背にしっかりと回し……そして、勢いよく上空へと飛び上がった。

523 :ツバサ〜ミッドチルダ編〜 ◆ga/ayzh9y. :2008/05/12(月) 23:14:13 ID:QDHbgZaQ
「おい、まさかあの狼……!!」
「っ……これは流石に、ちょっとまずいかな……!!」

相手を抱えたまま、空中へと飛行する。
このザフィーラの行動が何を意味するのか……答えは簡単である。
ファイは何とか脱出を試みようとするも、ザフィーラのパワーが強すぎて敵わない。

「ヌオオオォォォォォッ!!」

ザフィーラはそのまま、空中で反転。
地面目掛けて、頭から垂直に急降下してきたのだ。
高位置から勢いをつけての、フロント・スープレックス。
その威力がどれほどのものかは……最早、言うまでも無かった。


――――ゴシャッ


ファイの脳天が、地面に勢いよく叩きつけられた。
ザフィーラは両手を解放し、少しばかり離れた位置に着地。
それと同時に、ファイの体が地面へと倒れこむ。
ここから、更に立ち上がってくるか。
ザフィーラはそう警戒しながら、ファイの姿を見つめるが……それは、流石に不可能であった。

「……ごめん、ちょっともう無理かも」

ファイは自らの負けを認めた。
受けたダメージが大きすぎた……これ以上は、流石に戦えそうになかったのだ。
はやてもそれを察し、ここで判定を下す。

「はい、そこまで!!」

勝負は着いた。
小狼達と守護騎士達との模擬戦……その第一戦目は、ザフィーラの勝利に終わった。
ファイは軽い溜息を付いた後、何とか体を起こそうとする。
すると、そんな彼へとザフィーラが歩み寄り、そしてそっと手を差し出してきた。

524 :ツバサ〜ミッドチルダ編〜 ◆ga/ayzh9y. :2008/05/12(月) 23:15:44 ID:QDHbgZaQ
「立てるか?」
「ありがと、ワンちゃん」

ファイは彼の手を掴み、そのまま引っ張り起こされる。
この時、お互いの顔には笑みが浮かんでいた―――尤も、ファイは最初から笑顔であるが。
戦いを通じて、互いに友情の様なものを感じていたのだ。
そして……今やザフィーラには、ファイの魔力に対する懸念などは一切無かった。
彼ははやてへと、即座に念話を送る。

『……主』
『うん、分かっとる。
ファイさんの魔法の事やろ?』
『ええ……フローライトの過去に何があったかは、俺には分かりません。
ですが、こいつの魔法を使わないという信念は紛れも無い本物でしょう……お願いします』
『任しといて。
ファイさんの事は、絶対に何とかしてみせるから』

ファイの魔力レベルに関する問題は、何とかしてみせる。
はやてのその言葉を聞き、ザフィーラは安堵のため息をついた。
これで、どうにか一安心出来る。

525 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 23:16:21 ID:FLgvdo+L
支援

526 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 23:17:24 ID:BCyPIKYe
一日一万回の正拳突き支援。


527 :ツバサ〜ミッドチルダ編〜 ◆ga/ayzh9y. :2008/05/12(月) 23:18:55 ID:QDHbgZaQ
「さてと、それじゃあ次はどないしよか……」

その後、リインがファイの戦闘データを完全に取れたのを確認し、はやては少し考える。
小狼とヴィータ、黒鋼とシグナムのどちらを先にするか。
少しばかり申し訳ない話ではあるが、ファイ程は気になるというわけではない。
ここは本人達の意見を聞くべきか。
はやてはそう思ったが……すると、その矢先だった。

「主、次は私達にやらせてもらえませんか?」
「ん、シグナム?」

シグナムが自ら立候補してきた。
素手に彼女はレヴァンティンを起動させており、その柄に手をかけていた。
それを見て、黒鋼も笑みを浮かべる。

「俺からも頼むぜ、隊長さんよ」
「黒鋼さんまで……もしかして二人とも、血が騒いだとか?」
「ええ……そんな所です」

黒鋼とシグナム。
やや好戦的な性格である二人にとって、今の戦いは中々見応えがある物だった。
だからだろうか、自分達もすぐに戦いたいと感じたのだ。
はやて達はそれを見て、苦笑せざるをえない。
こうなった以上、止めるのも野暮というものである。

「ほな、次は黒鋼さんとシグナムさんとでいこか」
「ありがとうございます」
「よし……白まんじゅう、刀だ」
「は〜い♪」

黒鋼の言葉を聞き、モコナは口から一振りの長刀を出す。
蒼く輝く刀身を持った、彼の愛刀『蒼氷』……それを鞘から抜き、黒鋼は構えを取った。
シグナムも同様に、レヴァンティンを鞘から引き抜く。
両者共に、いつでも戦闘に突入できる状態に入った。

「日本国最強の剣の使い手……どれ程のものか、楽しみだな」
「そいつはこっちも同じだ。
魔法を使う剣士ってのは、初めてやりあうからよ」

528 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 23:19:34 ID:BCyPIKYe
幅射波動で支援!

529 :ツバサ〜ミッドチルダ編〜 ◆ga/ayzh9y. :2008/05/12(月) 23:21:48 ID:QDHbgZaQ
以上、投下終了です。
ファイvsザフィーラは、ザフィーラの勝利という形となりました。
ちと、ザフィーラが攻撃的な感じになってしまったかもしれませんが……

それでは、支援してくれた方々、ありがとうございました。

530 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/12(月) 23:27:55 ID:iZo0gEGr
>……バトー博士に相談してみようかな。
>改造してもらったことないし……。
むしろこれがスバルの死亡フラグに思える、そしておっぱいミサイルや
頭からドリルが生えたりするんだね・゚・(ノД`)・゚・

531 :×DOD ◆murBO5fUVo :2008/05/12(月) 23:58:27 ID:rAzveUIU
00:30より投下を開始したいのですが予約は大丈夫でしょうか。
DODクロスの方です。

532 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 00:02:27 ID:BCyPIKYe
支援するぜ!!


533 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 00:04:12 ID:tC3lSkkV
予約の方は問題ないはず。
そして今から支援の準備

534 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 00:07:16 ID:G2O6sFl1
なんだッ!どうしたんだッ!今日はパーティですかッ!!w
支援

535 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 00:09:12 ID:ys5FM+lc
支援!

536 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/05/13(火) 00:13:12 ID:9G+ZYMOq
さーせん。
DOD氏の次にエンドラインの予約をしてもよろしいでしょうか?
空いて、ますよね?

537 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 00:16:32 ID:G2O6sFl1
わーいwパーティーだwww
支援するしかないじゃないかッ!!

538 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 00:16:57 ID:H48P1GJR
昨日の殺伐さはなんだったんだwwwww
よーし!皆まとめて支援しちゃうぞ!!

539 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 00:29:19 ID:b2AEpoVo
投下ラッシュでウィキの方に載っかるのが間に合うのか気になる位です。
例えば>>99のアセリアクロスがまだ載っかって無いように。


540 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 00:32:05 ID:b2AEpoVo
失礼、今確認したら載っかって居ました。
失礼致しました。

541 :×DOD 五章十節 0/9 ◆murBO5fUVo :2008/05/13(火) 00:32:07 ID:N4AQxElw
そろそろ投下を開始します。文字数約9000の九分割です。
PCが戻ってきてから回線にまたしても嫌われたため、ペースが遅くなるかも知れません。申し訳ありません。

542 :×DOD 五章十節 1/9 ◆murBO5fUVo :2008/05/13(火) 00:37:48 ID:N4AQxElw
 息が詰まる重い風が、正面から吹き荒ぶ――それが錯覚であると知るには、一寸の時を要した。
 地につけた赤い剣の切っ先がわずかに揺れ、草地から立ち上がる。左手を柄へ、脇の両手持ち。

(来る……!)

 ゼストは反射的にルーテシアを後方へ突き飛ばして、愛用している無銘の槍を手に取り構えた。
同時にカイムが地を蹴り、月光と闇を脇に構え憎悪を垂れ流しながら、真っ直ぐに疾走する。
 かおはあいかわらずわらったまま。
 シャドウを斬殺したことに加えて、浅いとはいえ人間に傷を負わせたこと――剣身の先に乗った
血糊の色を見た事で、生かさねばならぬという機動六課からの制約や、地獄の責め苦にかけ黒幕を
吐かせるという当初の考えは奇麗に消え去っている。
 平穏な日々に封じてきた「殺したい」という欲望が、魂の底に深く刻まれた戦いの記憶と衝動が
呼び覚まされていた。闘いのほかに心に残っているものは、もはやカイムにはひとつもなかった。
ドラゴンが危惧し、フェイトたちに言った通りに。
 地鳴りのような音、重い踏み込み。月光と闇の紅蓮の刃が、稲妻のように槍の穂へ振り下ろされる。
 暴力的な一合目。ゼストの槍の大きな金属音と、大理石の長剣の異音が森に響いた。
 人間のそれとは思えぬ、暗黒の笑みに気圧されて受け身にまわったが、ゼストは直後に後悔した。
穂を打つ一撃は爆発的で、あまりもに強烈だった。身体が後方へずらされるほどの一撃を受けて、
槍を握る手に痛みと痺れが走る。骨の芯まで届く衝撃。
 体勢が崩れかけ片足が浮きかける。それを踏み直したところへ、続けざまに返しの二合目。
 長剣が虚空を奔り抜ける。連続した衝撃に槍から片手が弾かれ、槍そのものも右手を残したまま
跳ね上げられてしまった。
 奥歯を食いしめて耐えるゼスト。自分が以前の完全な状態でないといえ、防戦だけで精一杯だ。
 これが本当に人間の腕力か。槍で受けたにもかかわらず、骨の髄がいかれそうだった。
 手に汗握るとはこのことだろうか、握る掌がじっとりと水気を帯びていた。ユニゾン無しでは、
受け流すことすらままならない。どうする。どうする!

「っく!」

 思考の間も無く、三撃目の刺突。かろうじて避けると、胴への薙ぎ。柄でこらえる。同じ軌道の
剣閃をかわしたところで、カイムが剣を袈裟にかぶった。
 もう受けていられない。軸足の格闘は無い。ゼストはカイムの右、側方へと身を投げた。
 そこに左の蹴りが飛んだ。

「が……ッ」

 呻きが漏れ、鈍痛が走る。貰ってしまった。肺の空気が抜ける、呼吸が切れる。
 いかなる魔導師であろうとも、呼吸と動きが止まればただの肉塊でしかない。一瞬うずくまった
その顎を、今度は右足が容赦なく跳ね飛ばした。
 長身が宙に浮いて、そのまま地に落ちた。立ちあがろうとするも起き上がる気配はない。頭蓋が
揺れれば動きは止まる。脳を鍛えられる生物など存在しない。
 後方にゆらぎ。
 そのままカイムは掌だけを背後に向け、魔力を集め火炎を放つ。
 その先にはルーテシアが居る。襲われるゼストの援護に、召喚に魔力を注いでいるところだった。
 灼熱の火球が少女の髪を掠めて通り過ぎ、唸りを上げながら森の彼方へと消えていった。十分な
牽制であった。熱風にルーテシアの集中が途切れ、挙動を読まれた驚愕から動きが止まる。そこに
カイムは、首だけで振り返った。

 あセらなくてもあトでちゃんところシてころスこロししシろころコろすころころししししてやる

「…………!」

 感情が希薄なルーテシアでさえ、この笑顔には自然と震えが走った。本能的な部分で怯んだ。
 一拍遅れて少女の背を、冷たいものが確かに貫いていく。この世に生まれてから初めて感じる、
まがうことのない生命の危機であった。相貌が大きく開かれぶるりと肩が震え、指先がかたかたと
揺れはじめる。
 普段は眉一つ動かさぬ顔に、僅かであるが確かに蒼が差した。記憶にない感覚に戸惑いを覚える。
あの目で見られると動けない、口の中がどういうわけか、からからに乾いていく。
 心を知らぬルーテシアにはわからなかった。
 呪縛の如くに彼女を縛りつけたもの、希薄な精神に生まれたそれを、人は「恐怖」と呼ぶのだと。

543 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 00:40:49 ID:PTbNErdR
支援

ルー逃げてルー

544 :×DOD 五章十節 2/9 ◆murBO5fUVo :2008/05/13(火) 00:40:54 ID:N4AQxElw
 そのままルーテシアは、影を縫われたように身動きができなくなってしまった。
 頭の中が真っ白になったのだろう、援護する気配も感じられない。デバイスに魔力を流す様子も
なく、ただカイムの背中から視線を外せずにいるだけ。
 その気配から、邪魔がいなくなったことをカイムは知った。
 剣を握り、ゼストににじり寄る。あとは殺すだけ、ぶち殺すだけ。
 地に片膝をついた男の前にたどり着き、首を一息に刎ねる心算で、ゆっくり刃を振り上げていく。
ゼストを見下ろす眼球はどろどろとした光が渦巻いていて、ひどく汚れていて、そして濁っていた。
 男の影が落ちる、草地から目を外せずにゼストは思う。
 データ採取だけで済むと高をくくった己が、まるっきり甘かったとしか言いようがない。あの男、
スカリエッティは新しい実験動物のように思ったかも知れないが、もしそうならとんだ間違いだ。
 この男は正しく、狂った獣そのものだった。触れる対価として命を捧げねばならぬ、凶悪な野獣
だった。決して手を出してはならなかったのだ。文字通りの、竜騎士の逆鱗に……!
 ゼストはこの男には、どうあっても最早抗えぬことを悟った。
 アギトが居ないこの場ではもはや抵抗の手段などありはしない。せめて時間が稼げるなら分から
ないが、それが可能とは到底思えぬ。力量の差が分からぬほど、目が曇っているわけではない。
 そしてそれが、悔しくてたまらなかった。
 ゼストは手にあった若葉を、爪を立てて握りしめた。会うべき親友が、知るべき真実があった。
人間としての生を失ってからもそれを支えに、生き恥を晒しても耐えてきたのに。
 こんな終りがあっていいのか。
 何も叶えられぬまま、何もできないまま、死ねというのか?

 ――否。

 ゼストはうずくまりながら、見えぬように拳を握り直す。ただでは死ねない。護るべき者がいる。
 ルーテシアを、死なせる訳にはいかない。
 もとより死者同然の自分はどうなっても、せめて自分の所為で母と引き裂かれてしまった、あの
少女だけは守りたい。それが彼を、最後の抵抗へと駆り立てた。

(奪わせて、なる、ものか――)

 振り上げた刃が、カイムの頭上で静止する。ゼストの内心の闘志を悟られた気配はない。そこに
付け入る。刺し違えてでも。
 初撃を肩で受ければ。
 たとえ腕が千切れようが、一瞬で絶命はするまい。命尽きる前にありったけの魔力を、零距離で
炸裂させる。道連れはともかく、ルーテシアが逃げる時間は稼げるはずだ。
 ゼストは覚悟を決め、静かに剣の振り下ろしを待った。最期の機だ、背水の機――。
 しかし。

(…………?)

 カイムの影はいくら待っても、直立したまま動くことはなかった。
 来たるべきものが訪れない。何が起こった? ゼストは心の中で問いかけた。この男は明らかに、
人斬りを躊躇う種の人間ではないはず。
 もしやアギトが戻ったかと思ったが、もしそうなら彼女の性格から察するに、炎の一つや二つが
既に飛んできているはずだ。
 そして牽制され動けずにいる、ルーテシアの援護はあり得ない。
 気取られぬように、男の双眸をゼストは見た。そして飛び込んできた事実に、ゼストは困惑した。
 カイムの視線はなんと、ゼストを見てなどいなかった。意識の集中はそのかたわらを通り過ぎ、
ゼストの背後へと注がれている。斬りかかる最中浮かべた悪魔の如き狂気の笑みは失せ、驚愕とも
唖然とも取れる表情を浮かべていた。

(何が……?)

 何があるのか、何が起こったのか、ゼストには見えていない。
 しかし、ルーテシアには見えていた。
 茂みに現れた者の正体を、ルーテシアは見ることができていた。

 そこに居たのは、青と赤の光だった。


545 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 00:42:08 ID:UFF9QnXu
支援

546 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 00:42:24 ID:PTbNErdR
支援支援

547 :×DOD 五章十節 3/9 ◆murBO5fUVo :2008/05/13(火) 00:44:57 ID:N4AQxElw
 その光景に、カイムは目を疑った。
 行動を共にした色、記憶に新しい光だった。間違いない、間違える筈がない。共に旅した者たち
だった。間違えよう筈がない!
 水と炎の精霊……ウンディーネ、サラマンダー。
 一目で分かった。戦いの中で得た魔力も、飛び方までもがそのままだった。
 何をするでもなく茂みの陰から、ただカイムへ目を向けている。何かをはかるようであり、何も
見ていないようでもあった。
 混乱、混迷。
 天使に喰われたアリオーシュに引きずられ、死の運命を共にしたはずの彼らが、何故?
 何故生きている?
 生きていることは置いておくとしても、どうしてここに――ここにいる??? なぜ?

「……」

 男の背中に動揺を感じ取ったルーテシアは、それが機であると敏感に感じ取った。
 得体の知れぬ感情に震えて、上がろうとしない手のひらに勇気を込めて力を入れ、手の甲のデバイスに
ゆっくりと魔力を注ぐ。気取られぬよう、ただ慎重に。
 召喚魔法。
 呼ぶのは、彼女が最も信頼する使い魔――ではない。救ってほしいのは山々なのだが、この男の
目の前に呼び出すということは、同時に重大な傷を負わせることを意味する。それはできない。
 巨大な「蟲」を呼ぶことにも思考は回ったが、ホテルを巡回している機動六課の者に捕捉されて
しまうかもしれない。そうなっては本末転倒。
 ルーテシアの脳裏にはこの依頼を持ちかけた、スカリエッティの言葉が蘇っていた。
 彼の言葉と行動に、ルーテシアは信を置いているのだ。『良い武器があるんだ』というその男の
情報を、ルーテシアは忘れていなかった。

「!」

 淡い紫の光がカイムとゼストの間に発し、魔法陣が地面に展開する。それを目の当たりにして、
カイムは一気に我に返った。殺戮の欲望が散ったのではなく、渦巻く疑問の濁流から戦場へ帰って
きたという意味で。
 しかしこの一寸の思考の停滞は、その狂気をある程度緩和するには十分だった。汚濁から僅かに
戻った意識で認識する。森を訪れていた娘、キャロのそれと同種の召喚。
 生物ではない。
 ゼストもまた顔を上げた。一瞬遅れてルーテシアの魔法だと気付き、そこに最後の希望を見出す。
そして眼前で展開する魔法陣に手を伸ばす。かざした手のひらに、せり上がる硬い物が触れた。
 二人の男は同時に悟った。
 武器だ。
 カイムは知らぬ間に下していた剣の、握る両手に力を入れ直した。妖精たちに気を奪われている
暇はない。だいいちその影は、見れば忽然と失せている。
 ゼストの手を斬らんと、再び月光と闇を大上段に振りかぶった。
 何が出てくるかは知らないが、振る前に潰せば済む。
 今、ここで斬る!

「…………――――――」

 ゼストの手首にかかる直前で、しかしカイムはまたしても、剣を振るその手を止めてしまう。地より
這い出た剣の、真っ直ぐな片刃の剣を目にして。

「――――――」

 峰全体から手元を覆うように、広く取られた湾曲した手甲には見覚えがあった。
 長い剣身の白銀の鋼、その刃とは剣を交えた記憶があった。
 思い起こされるのは、赤色の瞳をした男。
 妹と共に要塞に消えた親友。その剣はまさしく、彼の――。

548 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 00:46:36 ID:ffbOO542
支援

549 :×DOD 五章十節 4/9 ◆murBO5fUVo :2008/05/13(火) 00:46:42 ID:N4AQxElw
 もし彼が言葉を持っていたならきっと、馬鹿な、とでも呟いていただろう。カイムはその一瞬、
完全に我を見失っていた。有り得ない光景の連続、脳の処理を超える事象に。
 それはゼストが待ち望んでいた、致命的かつ決定的な隙だった。
 停止した竜騎士の目の前で、立ち上がったゼストがその剣を抜き、地を蹴ってひとつ距離を取る。
 この剣を呼ぶことを選んだルーテシアの決断を、ゼストは迷うことなく信じた。

「……っは!」

 デバイスの要領で魔力を流し、刺し違えんとして溜め込んでいた魔力を次々と注ぎ込んでいく。
すると剣身が唐突に、鮮やかな蒼い光を放ち始めた。
 魔法の予兆、確かな悪寒。
 突き刺すような冷風が唐突に、嵐の如くカイムへと吹きつけはじめた。
 カイムを呑み込み木々を巻き込んで、凍てつく波動が森にほとばしる!

「…………!」

 咄嗟に斜めに剣を構えはしたものの、我を失っていたカイムは対抗して魔法を撃つことはおろか、
まともに回避することさえ出来はしなかった。全身を氷雪が包む。極低温の冷気が抵抗する間さえ
与えず、カイムの身体の自由を完全に奪っていく。
 全身が文字通り凍てつく中でカイムは、心の内側で叫んでいた。
 懐かしくも哀しい剣の主、友であった男の名前。それは。



 イウヴァルト!


550 :×DOD 五章十節 5/9 ◆murBO5fUVo :2008/05/13(火) 00:49:10 ID:N4AQxElw
 


『いたぞ……魔法だ!』

 カイムのものでない魔力の増大を感じたドラゴンが『声』を伝え、翼でひとつ空を切った。
 術者はカイムが追いかけた「元凶」の方であろう。この森にいる魔導師で、機動六課以外の者と
なると、もはやそれ以外に可能性はない。
 キャロたち三人を背に乗せたフリードリヒが両翼を上げて加速の力を溜めはじめ、並走している
フェイトが体をひねって方向を修正する。その様子を流し目でちらと確かめて、ドラゴンはさらに
速度を上げた。
 「敵」はガジェットの操作をずいぶん遠くから行っていたのだろう、その場所までかなり距離が
あった。だがそれも間もなく詰めきることができよう。竜の羽翼のはばたきは人間の魔法の比では
ないのだし、人間のフェイトも劣らず、よくくらいついている。若いフリードリヒが見失わぬよう、
ドラゴンが加速を抑えているにしてもだ。
 しかしそのフェイトを筆頭に、ライトニング分隊の四人に流れる空気はやはりというか、暗雲が
立ちこめる空のように重苦しいものだった。
 当然といえば当然、カイムを見つけて追い付けたとしてもどんな顔をして、どう言葉をかければ
いいかわからない。それどころか更なる狂気を見る可能性もある。「元凶」はまだ無事らしいが、
それだっていつ殺されてもおかしくはないのだ。カイムなら殺りかねないというのは、ドラゴンの
言葉から既に察せられていた。

『大丈夫、ですか』

 ふと出し抜けに、フェイトがドラゴンへ念を飛ばした。風の音に消され、肉声では届かない。
 問いの向かう先はドラゴン自身ではない――その気配を感じながらも、ドラゴンは首を曲げずに、
無言の言葉を返した。

『何がだ』
『あの人が――』

 カイム以外にいるまい。
 そして単に肉体的な事を案じているのでなく、その精神を気にしていることに直ぐ気がついた。
 気がついたのだが、ドラゴンは珍しく、問いに答えなかった。
 普通の人間からすれば大丈夫でないのは当たり前で、あれがカイムの日常だと言えばその通り。
そう言えばいいものを、ドラゴンが伝えたのは別の言葉だった。

『あやつの口から聞け。おぬしの目で確かめよ』

 つまりは、そういうことなのだ。いずれにしてもカイムがいないこの場では、彼について言葉を
紡ぐことはさしたる意味を持たない。
 それにどうせ話せば話すほど、狂気が明るみに出てくるだけである。

『……「壊れている」というのは、この事だったんですね』

 しかしその答えを聞いてなお、フェイトは静かに思念を投げ続けた。いつだったか、そんな事を
こぼしたこともあったかとドラゴンは思う。
 そして言葉の中にどこか、何かを省みるような気配を感じ取って、今度は逆に問い返した。

『身に覚えでもあるのか?』

551 :×DOD 五章十節 6/9 ◆murBO5fUVo :2008/05/13(火) 00:51:22 ID:N4AQxElw
『……昔、少し』

 しばし空白の時を置いて、静かな答えが返ってきた。

『そうか――』

 だがそれを深く問うような、野暮な真似を竜はしなかった。
 言葉にして、も意味はない。
 それを境に、しばらく念話が途絶えた。虚空を切り裂く風の音を聞き、ただ魔力の根源へと空を
ひた走っていく。

(……)

 確かに聞こえたカイムの、かつての友の名を叫ぶ『声』に、ドラゴンの思考はフェイトから離れ
つつあった。
 あの男、イウヴァルトが生きているとは思えない。
 かといって何もなく、カイムがその名を呼ぶことはあり得ぬ。
 敵が他人の空似だったとは考えにくい。それでは名を叫ぶには至らないし、そんな間違いをする
はずもない。おそらくその形見でも見たか。シャドウやガーゴイルがいる以上、不思議ではない。
 そして、これでもはや、間違いはない。
 竜は確信に至った。己が生きた、滅びを迎えたあの世界が、ミッドチルダの世界に何らかの影を
落としつつある。
 残してきた敵や、カイムに関わる者の名残、それらから導いた結論であった。自分たちの来訪が
一度、「敵」で二度。三度目の偶然とは奇跡ではない。それを人は、必然と呼ぶのだ。
 それが大いなる意志によるものなのか、愚かな人の手によるものなのかは分からない。はたまた
自分たちが、ミッドチルダに来た事に由来するのかも。

(……何れにせよ)

 何も終わってなどいない、それだけは確かなこと。
 そう思いながら、竜はひとつ嘶いた。陽の昇った空が、天高くあおあおと広がっている。

552 :×DOD 五章十節 7/9 ◆murBO5fUVo :2008/05/13(火) 00:52:48 ID:N4AQxElw
 


「怪我は、ない、か」
「…………うん」

 ゼストは白銀の長剣を片手に握りしめたまま愛用の槍を拾い上げると、少女の方へと駆け寄って
口を開いた。その呼吸が荒いのは、刹那のうちに膨大な魔力を使用したからだ。
 少女の返答はとても弱々しいものだった。俯いた顔はいつもより白く、どちらかといえば「蒼白」
という表現が適しているくらいだ。ゼストは自分の外套をかけてやり、視線が同じ高さになるよう
膝をついて、言った。

「もう、大丈夫だ」

 聞いた途端、ルーテシアの膝がかくんと折れた。
 尻もちをついて地面にしゃがみこんでしまい、明らかに疲労の様子が見て取れた。
 あの鬼気迫る男の襲撃は、普段動じることのないルーテシアの精神力をも削り取っていたらしい。
その中でよく動いてくれたと、ゼストは心からそう思った。

(釈然としないが、今回ばかりはあの男の手を借りた……)
 
 だがそもそもこの事態に陥った原因もあの男、スカリエッティの所為だと加えてから、ゼストは
手の中の剣に目を落とした。そしてその剣が作り上げた光景に、襲い来る男のいた場所に、改めて
目を向ける。
 木々が、木の葉が、完全に凍りついていた。
 ゼストが魔力を込めすぎたのか、それとも剣が秘めていた魔法がそもそも強力だったのか。剣の
片刃の輝きから出でて、吹き荒れた氷雪の嵐が、森林の一角を氷の世界へと変えてしまっていた。
ため込んでいた魔力を全身からごっそりと奪っただけののことはある。凍てつく烈風が吹いたその
一帯だけが、まるで極寒の地にあるかのような、白銀の世界へ様相を一変させていた。
 森を巻き込んで作られた氷の世界。ゼストの背よりも高い巨大な氷の壁が、カイムがいた場所に
大きく聳え立っている。その中に男は巻き込まれた。氷塊の中に閉じ込めた。
 ファングオブシヴァ。イウヴァルトの長剣が秘めた魔法が、ゼストの流した魔力の大きさに暴れ
狂い、カイムを襲った結末であった。魔力を高めて抵抗することもできず、回避もできずに直撃を
受けてしまった結果だった。

「…………」

 ゼストは再び、ルーテシアが呼び己が振るった、手の中の剣に目を向ける。数多く槍を振るい、
節くれだった掌の内側で、その剣は不思議にも、何となく指に吸いつくように感じられた。
 というよりもそもそも、初めて手にしたこの剣に、どうして魔力を流そうとしたのか、また何故
魔力が流れ得たのか、ゼストにとっては不可解であった。
 ルーテシアが呼び出した、だからきっと何かある――そう踏んでの行動であったのだが、それに
してもすんなり手が伸びたし、魔力を注ぐ動作は全く澱みがなかったように思う。しかも生成した
魔法は強力なものであった。いくら大量に魔力を流したとしても、発動までのラグもほとんどなく。
 優れた武器は使い手を選ぶというが……この氷雪の剣はもしかしたら、自分と相性が良いのかも
知れない。ふとそんな考えが、ゼストの頭に浮かんだ。


553 :×DOD 五章十節 8/9 ◆murBO5fUVo :2008/05/13(火) 00:54:37 ID:N4AQxElw
「立てるか?」

 そのような思考の流れから現実の世界へと回帰し、名も知らぬ剣を槍とともに右手へとまとめ、
ゼストはルーテシアへと向きなおって問うた。

「足、が」

 ぺたんと地面に尻をついたルーテシアは、少し血色が良くなった顔をゼストに向けつつ言った。
もう安全だと悟ったのだろう、言葉の中には失われた力が戻ってきているように感じられた。顔も
いつもの表情に戻りつつある。といってもほとんど無表情に近いが。
 硬直した時に感じられた、恐怖のような気配も失せていた。しかし髪は汗で幾分湿っているし、
それにどうやら腰が抜けてしまっているようだ。
 安心したのはいいけれども、これではこの場を離れることができない。ゼストは小さく苦笑し、
背を向けてしゃがみこんだ。この小さい体にはかなり無理をさせてしまった。

「乗れ。逃げよう」

 とにかく、今が好機だ。
 あの男が動けない今のうちに、この場を離れなければならない。ガジェットが全滅している以上、
第二第三の追手がいつ来るとも知れないのだ。実際あの戦いの空で、「敵」を殲滅したのは二騎の
竜族だった。追ってこられると今度こそ危ない。

「……?」

 しかし、いくら待っても背に重さがやってこない。
 ゼストは首だけで振り返って、ルーテシアの様子を窺った。
 少女の視線はその後方、一点を凝視したまま固まっていた。

「どうした、ルー……」

 目を向けながら言いかけて、少女が見ていた光景が目に入ると、その瞬間に言葉が途切れた。
 ルーテシアが見ていたのは、分厚く広がった氷の壁。
 その周囲の虚空が、青白の表面が、真夏の陽炎の様に揺らめいていた。
 高熱――奥の見えない白銀の牢獄が、圧倒的な高熱に炙られている。
 その内に閉じ込めた竜騎士の姿が、徐々に光のもとへとさらされつつあった。

 氷の下に、カイムの顔がのぞいていた。

 憎悪をたぎらせ灼熱を目に宿しながら、カイムはぎろりとルーテシアたちを睨みつけていた。
 強大に過ぎる魔力を練り上げ、怒りの業火で氷壁を溶かしながら、「魔」を垂れ流す悪魔がそこにいた!

「――――――――――――!!」

 再び迫り来る未曽有の感情に突き動かされて、声にならない悲鳴を上げるルーテシア。
 その手をつかみ、ゼストは弾かれたように森の外へと走り出していた。
 背後に純然たる怒りをひしひしと感じ、肌が焼けつくのを感じながらゼストはただひたすらに、
森を駆け抜け、走り抜ける……。



 幾許かの時を置いて、そして森に炎が満ちた。

554 :×DOD 五章十節 9/9 ◆murBO5fUVo :2008/05/13(火) 00:59:18 ID:N4AQxElw
 


 二騎の竜が旋回する空の下、眼下に広がる森が唐突に爆ぜ、その一角が紅蓮の炎に巻かれていく
のをフェイトたちは呆然と見詰めていた。
 カイムがいるはずの、魔法の気配がした場所。その上空に辿り着く寸前、目指していた場所から
赤い炎が噴き上った。
 誰の目に見ても明らかに、ミッドチルダのそれとは違う種の魔法。
 明らかに術者はカイムであると彼女たちは確信した。「敵」がカイムの世界の武器を持っている
ことなど、魔導師たちが知る由もない。
 それより彼らの頭を過るのはカイムの無事、そして彼に遭遇した「元凶」の安否だった。だが、

「……取り逃がしたらしい」

 ドラゴンは、小さく言った。

「え……でも、まだ」

 キャロが聞きつけ、逆に問いかける。視線の先ではまだ、炎が立ち上り森を巻き込んだままだ。

「『敵』は最早あそこには居らぬ。焼け死ぬ前に逃げ出したらしい……悪運の強いことだ」

 その言葉が聞こえて、フェイトたちも疑問を含んだ目を向ける。
 しかしドラゴンは中途半端な憶測や、当てずっぽうで話している雰囲気は全くない。ただ静かに、
燃えあがる森を見つめるのみ。
 その緋色の翼が不意に空を切って、ゆっくりと高度を下げ始めた。
 地上へと向かうドラゴンの赤い背に、キャロは戸惑いの表情をフェイトに向ける。
 それに気がついて、フェイトはひとつ頷いた。金髪を風に靡かせてドラゴンを追い、またそれを
追いかけるフリードリヒの白い羽翼が、ゆるゆると地へ舞い降りる。



 地に降りた魔導師たちが目にしたのは、燃えゆく炎を前に佇む男の、剣を負った後ろ姿だった。
 赤と白の光を放つ火の粉が花弁の如く舞い狂い、はじけては消えていく。
 足元から小さな火が燻り、その向こう側には彼の火炎が、あかあかと燃えさかっている。
 煌々と立ち上る焔が揺らめき、浮かび上がる輪郭は緋色の光芒を湛えていた。

「……カイム、さん」

 キャロの呼び声に、カイムは振り返らなかった。身じろぎ一つしなかった。
 シグナムが見つめるその先で、フェイトと子供たちの目の前で、カイムは立つ。ただ静かに。
 その心は煙の中、誰の目にも見えはしなかった。
 ただひとり、ドラゴンを除いては。

「嬉しいのか?」

 そうして、やっと振り返る。
 カイムは目に怒りと憎しみを宿しながら、しかし確かにその表情は、微笑みを象っていた。
 病んだ瞳で、壊れた心で、再び訪れた戦いの予感に、小さな笑みを浮かべていた。
 紅い夜が帰ってくる。運命が、戦えと言っている。

 フリードリヒの赤い瞳が、ただ静かに、カイムと炎とを見つめていた――。


555 :×DOD あとがき ◆murBO5fUVo :2008/05/13(火) 01:01:16 ID:N4AQxElw
時間がかかってしまって申し訳ありませんでした。夢境氏申し訳ありません……。

いつかウロスで聞いた、DOD2ネタが混じってます。イウヴァルトの剣とかレイブレス(八節)
とか、ゲームやってないと実感湧かないかもしれませんが。

長くなりましたが、ようやく本当の意味で、キャロたちがカイムに出逢うところまで漕ぎ着けられました。
五章はこれにてお仕舞い。次はようやく六章、楽しみにしていただければ幸いです。

支援レスありがとうございました。最近はスレを覗く頻度が下がってきているので、質問やご意見
なぞありましたら、今のうちにどうぞ。

556 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/05/13(火) 01:09:14 ID:9G+ZYMOq
やばい、やばい、やばいw
遂に完全覚醒しましたね、殺戮王子ことカイム。
今回、その秘めたる狂気が完全に封を開けて解放されてしまいましたか。
氷塊の中でにこやかな笑みを浮かべるとかもうヤバス!
修羅へと落ちた殺人鬼。
彼はもはや人へと戻れないのか。
そして、知らぬとはいえその親友の剣を使ったゼスト。
その罪はカイムにとってはおそらく重いものでしょう。
そして、何故この世界に迷い込んできたのか不明なサラマンダーたち。
彼(彼女?)たちとルーテシアは如何なる関係を結ぶのか。

残酷な時間、過去、罪を背負ってきたカイムに対し、キャロたちはどう対応するのか。
これからが本当のスタートですね。
次回からが本当に怖いww
けれど、早く見たい! GJでした!!!


そして、自分の投下ですが、一時四十分頃から投下したいのですが、相変わらず長く
もう夜遅くですので多分支援がないと途中で止まりますw
人がいないようでしたら、また明日投下することにします。

557 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 01:20:39 ID:cpHF+ijc
GJ!でした。
狂気と炎っていいですよね。
ゼストたちはこれから生き残れるのか、続きに期待です。

558 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/05/13(火) 01:24:05 ID:9G+ZYMOq
ぬ。
もうあと二十分で投下時間ですが、ちょっと眠気が限界なので投下は明日に回す事にします。
すみません。

559 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 01:25:59 ID:zphR7hgU
>>555
GJ!
カイムがホラー映画のクリーチャーのノリですなw
しかしホントに悪運強いなゼスト+ルールー。ルーは次やばそうですが。
DODとクロスしてる時点で死亡フラグが全員に立ってますが、おそらく一番多く立ててるスカとナンバーズがどうなるかwktkです。


560 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 02:05:43 ID:5/DLguYZ
>>メタサガ氏
一ヶ月間待ちに待たせていただきました。GJ! ああ、全力バt−節。
たまりません。でも死亡フラグ。あれれ? 今週一週間、
毎日が楽しみでございます。

>>DoD氏
オツです。ああ、全力だなぁ王子。彼に穏やかなる心と日々が訪れることを
願います。……ピポスバルと会わせたらいいんじゃないかなー。

561 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 02:30:21 ID:iu1K6VOM
焼きスバルにされちまうぞ

562 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 07:15:03 ID:+TX8NWHn
覧から見ての亀レスだが、LPFS殿GJ!
超能力系のクロスが欲しいと思ってたので、これは嬉しい限りでする。
ウォン様は時折やたらムズい四字熟語を言うので、取り扱いにはご注意を。

余談:PS版の2をやってた頃が懐かC。歌とムービーにもシビれた!

563 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 08:55:19 ID:DtK77suo
>>メビウス×なのは氏GJでした。
ツバサ〜ミッドチルダ編〜が更新されるのを待っていましたよ。
ファイvsザフィーラは、ザフィーラの勝利でしたか。
次回のシグナムと黒鋼の戦いも楽しみにしています。

564 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 09:07:02 ID:gipbM2h7
>×DOD
「自分でも止められないんだ! 逃げてくれ!」みたいな少年漫画的暴走ではなく、正真正銘のバーサーカー。殺戮王子カイムのターンでしたね。
幼女にガチ殺気ぶつけるとか、最終鬼畜カイムww
精霊どもも、まあルールーを助ける為に全力全開はありえないと思ってましたけど、見てるだけかよw
ホント、DOD世界のキャラは変態っつーか薄情な奴ばかりだぜ!
しかし、生半可なことではこの死亡フラグは回避できないと思いましたが、まさか奴の剣が出てくるとは予想外!
これには全く意表を突かれました。
カイムの本性が明かされたことも含めて、またいろいろと不安要素が増えましたが、同時にスカ側の秘密も少しカイムに漏れたので、何も知らずいきなり最悪の事態という流れは回避できたかな?
敵もヤバイが味方もヤバイフラグ満載のカイムの行き先に六課のメンバーがどう関わってくるか、楽しみです。
あと、カイムのインパクト強すぎて忘れてるかもしれないけど、ティアナの挫折フラグもねw

565 :リリカル無双:2008/05/13(火) 15:47:45 ID:a8SiluzR
職人の皆様GJです。

無双NANOHA 小ネタを投下します。


566 :リリカル無双:2008/05/13(火) 15:55:49 ID:a8SiluzR
それはとある日の出来事。

場所は時空管理局本局、混成部隊・隊舎。

※混成部隊とはその名の通り管理局でも大きな存在である曹操孟徳が訓練校時代から率いた魔導師、無双を人員として創設し。混ぜ合わせた大部隊である。


夏候惇「孟徳」
曹操「なにごとだ?」
夏候惇「ヴェロッサがお前を尋ねにきた。」

威厳ある表情のままであるがその名を耳にした瞬間曹操の眼に嬉々とした輝きが現れ、手にしていた書類を机に置いて答える。
その反応に夏候惇は胸中に嫌な予感を募らせる。
曹操「馬鹿、通せ。」
夏候惇「ああ。」


ヴェロッサ「失礼いたします。曹提督。」
曹操「堅苦しい挨拶は抜きよ。用件を言えヴェロッサ。」


夏候惇に付き添われて隊長室に入ってきた青年を机の前のソファーに着かせ、曹操自身も彼に相対する形で席に着く。
秘書が入れてくれたお茶を口に含みながらヴェロッサは単刀直入に用件を述べる。
ヴェロッサ「知り合いの、八神はやての部隊創設に関して戦力を貸して下さい。」



567 :リリカル無双:2008/05/13(火) 15:59:19 ID:a8SiluzR
曹操「ヴェロッサよ、タダでは貸してやれんなぁ……。」
どこか含みのある返答にヴェロッサは微笑んで上着の内ポケットからある紙袋を取り出す。
ヴェロッサ「ふふふ……貸して頂ければ。この袋に入ったブツを差し上げますよ。」

曹操「ふむ。中身は何だ……ヴェロッサ。」
夏候惇「おいコラ」
ヴェロッサ「関羽執務官の隠し撮り生写真(クロノ撮影)と姉さんのエプロン姿生写真(はやて撮影)とアイドル喬姉妹の生写真「その話乗った。夏候惇と夏候淵を貸してやる。」

夏候惇「もぉとくぅ……(ヒクヒク」
青筋を浮かばせながら夏一瞬のうちに麒麟牙を起動した夏候惇を二人は恐る恐る振り向く。

曹操「な、なんだ夏候惇?」
夏候惇「言い訳があるなら聞いてやる……」

曹操「やだなぁ夏候惇くん。山吹色のお菓子じゃない「死ねぇいっ!!」

ギャー

夏候惇の麒麟牙から斬撃が隊長室で放たれた。


翌日。夏候惇と夏候淵は新設された機動六課に赴く事となった。
つい、気になった夏候淵は夏候惇に尋ねる。
夏候淵「なあ、惇兄。なんで急に俺らが?」

夏候惇「頼むから聞くな。」


第1話に続く。

568 :リリカル無双:2008/05/13(火) 16:00:31 ID:a8SiluzR
以上ですー。

これは正史です(グッシャ

569 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 17:48:06 ID:FNyKkyhj
どーもお久しぶりです。随分間が空きましたが、久々のリリカル殺生丸です。
6時から投下を行いたいのですが、よろしいでしょうか?
34KBなので、多分これがこの64番目のスレでは最後の投下になるかも。

……自分が投下後に責任もって次スレ挑みます、ハイ。

570 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 17:54:50 ID:9G+ZYMOq
支援するぜ!

571 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 17:57:17 ID:k+qyEiB9
さぁさぁ、来て来て

572 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 18:00:06 ID:FNyKkyhj
では投下します。
10レス分割、34KB、約16000文字です。

573 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 18:01:03 ID:9G+ZYMOq
支援!
ロリコン妖怪殺生丸の参上だw(ザシュッ)

574 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 18:05:30 ID:FNyKkyhj
燃え盛る機動六課隊舎。
ガジェットU型の背に乗ったルーテシアの眼下に広がるのは、さながらこの世の地獄とも見て取れる凄惨な光景だった。
死者は1人も出ていない。この状況を見て、一体誰がそんな言葉を信じられるだろう。
管理局随一の腕利き達と、才覚に優れた期待の新人達の帰る隊舎は、虚しくも崩れ落ちていた。
侵略の業火は容赦なく廃屋を舐めまわし、全てを灼熱の渦へと飲み込んでいく。
さながら火の海の孤島となったような開けた場所で、倒れ臥す2人の守護騎士。
尚も火の手を拡大して回る、ガジェットドローンの大軍勢。
破壊と侵略の光景を上空から見下ろす戦闘機人は、僅か2人しかいなかった。
地上本部攻撃の裏で行われた、六課隊舎への強襲作戦。無人機以外の戦力は、オットー、ディード、ルーテシアの3人のみ。
しかもルーテシアはマテリアル――ヴィヴィオの奪取に専念していた。実質的な戦力は2人だ。
僅か2人の戦闘機人と、有象無象のガジェットだけで、精鋭部隊の拠点はなす術もなく落とされた。陽動は完璧だった。
ルーテシアは今一度、隣に立つガリューの手の中の少女へと視線を向ける。
蒸し暑い風に揺られる金の髪。幼い彼女よりも更に小さなその娘は、今回の戦闘のターゲットだ。
既に意識を失ったヴィヴィオは、すっぽりとガリューの漆黒の腕に収まっている。
ここまでくると、退屈にさえ思えてしまった。
シャマルとザフィーラをナンバーズの2人が引きつけていたおかげで、彼女らを阻む者はまるでなし。
ガジェットを破壊していた魔導師も、ただの一撃であっさりとやられてしまった。
何にせよ、これで今日の仕事は完了だ。後はこの娘を転送できる場所まで、ガジェットで飛んでいけば――
「――でえぇぇやああぁぁぁぁぁぁぁーっ!」
途端、耳に入る怒号。同時に響いた、熱風切り裂く鋭い音。
あの赤毛の騎士が飛んでくる。ストラーダのロケットエンジンを噴かせ、エリオ・モンディアルが突っ込んでくる。
背後にはあの竜の姿も見えた。召喚士キャロ・ル・ルシエが引き連れる、白き飛竜フリードリヒ。
ライトニング隊はトーレ達が抑えていたはずだ。そんな思考が脳裏に浮かぶ。しかし、それはすぐに掻き消えた。
――ちょうどいい。
はっきりさせるにはいい機会だ。あのいけ好かない2人に、今日こそ思い知らせてやる。
真の力とは一体どういうものなのかを。
肉親に恵まれ、順風満帆に生きてきたただの子供が、喪失した母親を取り戻すために得たこの力に敵うはずなどないことを。
この力は――ガリューも地雷王も、白天王も、ぽっかりと空いた心の虚から生まれた力。
夢などという当たり前の願望にしか向いていない程度の力で、自らと同列に並ぶことがいかに愚かしいか。それを思い知るがいい。
ヴィヴィオを降ろしたガリューが、エリオに向かって飛びかかる。
漆黒の甲殻から放たれた強烈なドロップキックが、まだ声変わりもしていない少年騎士を弾き飛ばした。
「どおぉぉぉけええぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
それでもエリオは引き下がらない。再びデューゼンフォルムを加速させ、猛然とガリューに食ってかかる。
今までにはないまでの気迫だ。一体何でまた、今日に限ってここまでの必死さを発揮するのか。
しかし、そんなことはどうでもいい。どうせここで倒す存在なのだから。
正面からぶつかり合い、互いの槍とクローを交錯させる。
エリオ1ヶ月の成長には凄まじいものがあった。右腕を掠めはしたものの、ガリューの爪はストラーダによって断ち切られていたのだ。
以前の廃棄区画での戦闘や、夏の浜辺での戦闘での段階なら、反撃すら叶わずに吹っ飛ばされていただろうに。
「――失礼」
しかし、その後は続かなかった。
突如として背後に現れた、真紅の光。血塗れの双剣・ツインブレイズの閃光。
「うわああぁぁぁぁっ!」
一瞬の早業で背後に回りこんだディードの一撃を食らい、エリオは虚しく海中へと叩き落された。
黒天の空を映す墨色の大海に、純白の巨大なしぶきが上がる。
視線を移せば、あの忌々しい飛竜もまた、オットーの拘束によって翼を封じられ、そのまま落下していった。
「さっきのはFの遺産でしたか……まぁ、死んではいないでしょうが」
事も無げに言い放つディード。感情の希薄な、極めてクールな声。

575 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 18:06:55 ID:FNyKkyhj
しかしルーテシアは、一体彼女の言葉にどれほどの興味を抱いていただろう。彼女の心は、今は1つの想いでいっぱいだった。
――ざまあみろ。
それは歪んだ優越感。
今のエリオを襲った攻撃は、ガリューならば反応できた。フリードを縛り付けたバインドも、地雷王達なら突破できた。
誇張でも贔屓でもなく、それは紛れもない事実である。
やはり自分は正しかった。母を救うために必死に身に付けた力が、あんなちっぽけな子供に負けるはずなどなかった。
心無い無感情な表情のまま、しかしその内心は、どす黒い愉悦で静かに満たされていった。

ジェイル・スカリエッティによる同時攻撃作戦は、結果的には大成功という形で幕を閉じた。
タイプゼロの回収には失敗したものの、その他の目的――特にマテリアルの回収には成功したのだから。
かくして一介の科学者は、まんまと時空管理局という巨大な敵に土をつけてみせたのだった。


魔法妖怪リリカル殺生丸

第九話「最後の安息日」


機動六課との戦闘――否、一方的な殲滅戦闘を終え、ルーテシアは郊外の湖畔へと向かっていた。
既にスカリエッティへのヴィヴィオの受け渡しは完了した。後は地上本部で戦ってきたゼスト達と合流するだけだ。
すっかり夜も暮れた森の中を、少女と虫人間が並んで歩いていく。傍から見れば、かなり怪しい光景だ。
黒いゴシップロリータの服を着た幼女と、同じく黒い殻を全身に纏った長身の怪物。
互いに一言も発することもなく、暗い森林を奥深くへと進んでいく。
「ごふっ……げほ、ごほ……っ」
「旦那!」
やがて苦しげに咳き込む中年男の声と、心配そうな少女の声と共に、目の前の木々が開けた。
2つの月の光を受けて、水面は穏やかにきらきらと光っている。
思わず目を奪われるような幻想的な光景だったが、今はそちらを気にしている場合ではなくなった。
ルーテシアの瞳に僅かな焦りの色が宿り、声のする方をきょろきょろと探る。
そしてようやく、視線の端にゼストの襤褸を認めると同時に、彼女はそちらへと駆け出していた。
黒き闇と白き月光のモノトーンが支配する空間に落ちる、第3の色。
びちゃりびちゃりという液体音と共に、ゼストの口から血液が流れ落ちたのだ。
ようやくある程度落ち着いたのか、未だ息を荒げながらも、彼は手頃な木へとその身を預ける。すぐにアギトが傍へと寄った。
そして、傍らに立ってその様子を傍観する者があった。淡い月明に銀色の糸をたなびかせるのは、殺生丸だ。
「……これはどういうことだ」
ルーテシアがその場に姿を現したのを確認すると、殺生丸は横目を向けながら尋ねる。
金色の双眸が、彼女の赤い瞳を、じっと探るように見つめていた。
「ゼストは、身体がそんなに丈夫じゃないの」
そう説明するルーテシアの声から、いつもの淡々とした様子が僅かに抜けていたように感じられたのは、気のせいだろうか。
スカリエッティに殺されたのを無理やりに蘇らせたゼストの身体は、生前に比べると極めて不安定な状態にある。
彼のデバイスの最大出力にすら、既に体力が追いついていけていないのだ。
故に、フルドライブを行使した直後には、必ずこのような苦痛を味わうことになるのだという。
「もう、大丈夫だ……すまんな。心配をかけた」
息を整えながらも、ゼストがその場の者達へと声をかける。
「フン」
心配などしていない、とでも言わんばかりに、殺生丸が鼻を鳴らしてそっぽを向く。
見るからに相当不遜な態度だったが、もはやルーテシアらにとってはいつものことだったので、特に咎めはしなかった。
「ごめん旦那ぁ……あたしが使えなかったから……!」
「お前はよくやってくれた」
涙ぐみながらも謝罪するアギトへとゼストが返す。
「あの赤い騎士は、融合騎の乗りこなしも含め、いい騎士だった……」
赤い騎士、という言葉に殺生丸は微かに反応する。確かヴィータとかいう、あの廃棄区画で戦った幼女だったはずだ。
ということは、ゼストはぼろぼろになりながらも、自らの仕事を果たしたということになる。
「旦那の方が強い! 旦那がベストであたしがもっとちゃんとやれてたら、あんな奴っ!」
早口でまくし立てるアギトの語調からは、彼女の味わった悔しさがたっぷりと滲み出ていた。
彼女は守れなかった。あんな甘い融合騎から、自分を救ってくれた恩人を。
すなわちアギトは、ルーテシアとはまるきり逆で、またもあのユニゾンデバイス――リインフォースUに敗北したということ。

576 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 18:07:55 ID:9G+ZYMOq
支援! ゼストぼろぼろだなー。

577 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 18:08:40 ID:FNyKkyhj
「今が俺のベストさ……お前も精一杯やった」
それでもゼストは対照的に、極めて冷静に言葉を紡いでいた。
アギトの屈辱を知らないというわけでもないだろう。一行のまとめ役を務める彼は、いつだって仲間達のことを重々承知している。
それら全てをひっくるめて理解した上で、ゼストはアギトを労っていたのだ。
であればそれは、我が子を包み込む父性のようなものか。
「なぁ、アギト。お前が淹れてくれた薬湯、もう1杯もらえるか?」
「うん!」
ゼストの頼みを聞き入れたアギトは、即座にその場から飛び去った。薬の材料を調達してくるためである。
その辺りも、彼はよく心得ていた。
役に立てなかったと嘆く者には、仕事を与えてやればいい。ちゃんと自分は必要とされているのだと、自信を持たせるために。
『騎士ゼスト。ウーノです』
そこに現れたのは、端末から映されたメッセージウィンドウだ。ウーノの紫の髪と金色の瞳が、ゼストの目前に現れる。
月明かりと湖面の照り返しだけが頼りの薄暗い空間に、新たな光源が姿を現した。
『お身体の方は、よくないようですね』
――よく言う。
内心でゼストは悪態をついた。
元々この身体を、未だ発展途上だった人造魔導師技術の実験台に用いたのはスカリエッティであり、
その秘書的な役割に就いているウーノならば、自分の不安定な身体のことは重々承知であるだろうに。
クアットロ程ではないにせよ、こいつもまた相当な腹黒だ。あるいは、スカリエッティの命令を忠実にこなしているからかもしれないが。
「放っておけ……もはや俺もレリックも、お前達には必要ないのだろう」
ぶっきらぼうにゼストは吐き捨てた。
この身体が、もう余命いくばくもないことは分かっている。彼女らの計画に必要なレリックが、既に揃っていることも知っている。
『そんなことはありません』
にもかかわらず、ウーノはいけしゃあしゃあとそれを否定した。
「いくつか、為すべきことがあるだけだ……それが済めば勝手に死ぬ。お前達の邪魔になることはないはずだ」
要するに彼女は、ゼストをおだてているのだ。
あたかも彼が必要とされている、といった風に。勝手にいなくならないように、自分達に刃を向けないように、ごまをすっているだけ。
勝手に死ぬ、という部分を聞いたルーテシアの顔色が微かに曇ったが、ゼストはそれには気付かなかった。
『寂しいものですね。戦闘機人と人造魔導師の違いはあっても、私達はお仲間のはずですのに』
「俺はお前達とすら違う」
勝手に仲間にしようとして、命を奪ったくせに。
出かかったその言葉を飲み込みながらも、ゼストは続けた。
「一度は死に、再び土に還るまでの僅かな時間を生きているだけの、ただの死者だ」
いかなる理由があろうとも、死者が蘇ることは許されない。
この身体は、生まれながらに改造を受けたナンバーズやルーテシアとも違う、自然の輪廻から逸脱した存在だ。
本来生きていることすら許されない人間――それがゼストだった。
『ルーテシアお嬢様、検査と調整のために、一度こちらへ来ていただけないでしょうか?』
そこで話は終わったと判断したのか、ウーノは会話の矛先をルーテシアへと向ける。
「分かった」
ルーテシアはそれに短く答えると、足元に紫の魔法陣を輝かせた。
もうすっかりおなじみとなった、転送魔法用のゲートだ。幼い少女の身体は、吸い込まれるようにしてその中へと消えた。
『どうかご自愛ください』
最後にそれだけを付け足して、ウーノの顔も消える。
一瞬だけ明るくなった空間には、再び暗い夜の闇が差していた。
2つの巨大な月の下。夜風を受ける男が2人きり。お互いに口を開くこともなく、殺生丸とゼストは黙りこくっていた。
妖怪の細い瞳に焼きついた、あのルーテシアの顔。
ゼストの言葉の一言一言に、その無表情な顔を微かに歪めた様子。
おおよそ感情のなかったルーテシアの、初めて目にする、寂しげな顔。
本来ならばどうだっていいことのはずだ。しかし殺生丸には、何故かそれが無性に気になっていた。
故に、問いたださねばならなかった。高々人間のために、余計な気苦労を抱えないためにも。
「……奴に父親はいないのか」
重い口を開き、ゼストに問いかけた。
話題の切り口に選んだ質問は、これまた微妙に気にはなっていたことだった。
ルーテシアの母が、彼の部下のメガーヌという女であることは聞いている。しかし、父の話は一度も聞いていない。
ちょうどいい機会だ、と言わんばかりに、殺生丸は尋ねていた。
この質問もまた、彼の抱いた念と無関係とは言い切れないものだから。

578 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 18:09:47 ID:FNyKkyhj
しばらくの間、ゼストは目を伏せたまま、何も返さない。
これまで話さなかったからには、それなりに言いづらかったこともあったのだろう。
そして数瞬の沈黙の後、やがてゼストはその口を開いた。
「殺されたよ」
ぽつり、と、それだけを呟く。
それを聞いても、殺生丸は相変わらずの無表情だった。ただ事実だけを淡々と受け止めていた。
ルーテシアの父にしてメガーヌの妻は、彼女と同じ管理局に所属していた人間なのだそうだ。
前線に出ることはなく、デスクワークを専門としていた男だ。階級は二尉と、そこそこに優秀。
上司からの紹介でメガーヌと出会い、お互いに惹かれあったのだという。
ルーテシアがスカリエッティの手に落ちた時には、当然ゼストも力ずくでも彼の元へと送り届けるという選択肢を考えた。
しかし、その時には遅かったのだ。
彼女の父親は、既に殺害されていた。
先手を打たれたのだ。不器用な武人肌のゼストの考えなど、スカリエッティにはお見通しだったのだろう。
「それからどうするかを迷っているうちに、ここまで来てしまった……」
後は彼に刷り込まれ、ルーテシアは彼の手駒も同然となってしまった。
殺生丸は得心する。
何故ゼストが、管理局側を頼ろうとしないのかを。そして日頃の態度を取りながらも、それでもルーテシアを連れている理由を。
彼はは既に、頼るべきものを失っていたのだ。
「貴様は奴を遠ざけている」
彼の問いかけは、遂に核心へと触れた。
それが最大の気がかりだったのだ。ゼストは一応ルーテシアを保護してはいるものの、その態度はどこかよそよそしい。
クラナガンでの休暇には、殺生丸と2人だけで行かせ、自分は加わらなかった。
地上本部での戦闘でも、彼女と別々の戦場へと向かうことをためらいはしなかった。
この男は、どこかでルーテシアとの間に壁を作っている。必要以上の馴れ合いを、どこかで避けようとしている。
メガーヌの責任を取ると言っておきながら、一方で積極的にルーテシアと関わることを拒んでいるのだ。
ゼストは今度こそ沈黙した。
一瞬目を見開いたものの、すぐにその瞳は伏せられ、そのまま押し黙る。
重苦しい沈黙が流れた。
ものの数秒だというのに、とてつもなく長く感じられる静寂。
闇の中、淡い月光だけが2人を照らしている。その光の中で、さながらゼストは石像のように微動だにしなかった。
「……怖れているのかもしれん」
未来永劫続くとさえ思われた沈黙が、ゼストの言葉によって破られた。
「ルーテシアの力になりたいとは思う。しかし、俺は遠からず死ぬ身体……ずっと傍にいることはできん」
言葉を探るように、一言一言、ゆっくりと発していく。
「だから……責任から逃れようとしているのだろうな」
ルーテシアに必要以上になつかれても、共に生き続けることはできないから。
仮そめのものであっても、保護者としての責任を背負うことはできないから。
だからゼストは、彼女を遠ざけた。
自身の死によって、彼女が傷つくことがないように。そして己自身が、咎められて傷つくことがないように。
それでも、同じようにアギトを遠ざけることはしていない。何だかんだでいつも行動を共にしている。
それは彼女にすがるが故なのだろうか。ルーテシアに比べれば大人な彼女ならば、分かってくれるからだろうか。
であれば、要するにそれは甘えだ。
「卑怯な男だな、俺は」
部下の忘れ形見の影に怯え、小さな融合騎に身勝手にすがって。
そんな情けない自分の姿を、ゼストは自嘲気味な響きをもって短く評した。
殺生丸は何も答えない。彼の顔に視線を向けたまま、じっと押し黙っている。
何の感想も言わず。咎めもせず、慰めもせず。それが役目であるかのように。
戦国の世から現れた客人たる殺生丸は、ゼスト・グランガイツという1人の卑小な男の姿を、じっと傍観し続けていた。

579 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 18:10:54 ID:FNyKkyhj
聖王医療院。
ミッドチルダの国教団体・聖王教会の運営する、国内でも有数の大病院である。
元々教会が時空管理局とも密接な関わりを持っていただけあり、負傷した管理局員を預かることも多かった。
そして、今。地上本部および六課隊舎襲撃戦から数週間後。
多くの負傷兵達を抱えていたここも、ようやく落ち着きを取り戻してきている。
そして、そんな退院患者の1人が、かつかつと靴音を立てて廊下を歩いていた。
――ギンガ・ナカジマ。
地上本部ではナンバーズの襲撃を受けて危うく捕獲されるところだったが、
土壇場でシグナムによって救出され、つい先日までここでの治療を受けていたのだ。
生死の境をさまようほどの瀕死の重傷は、今ではすっかり治っている。
鍛え上げられた健康的なボディラインが、制服の上からもはっきりと見て取れた。
(つくづく、戦闘機人ってのは恐ろしいものよね)
自分の頑丈さに呆れ、思わず苦笑する。
左腕をひきちぎられ、全身に爆弾を叩き込まれても、僅か数週間で痕跡も残さず「修理」が完了してしまう。
自分達が普通の人間とは違うということを、改めて身をもって思い知った。
しかし、もうその身体を憎むことはしない。
元々は戦うために造られた戦闘機人だとしても、人として生きていくことはできる。それは亡き母が教えてくれたこと。
そして、今考えるべきことは――
「あ」
お目当ての病室のすぐ側に、1人の女性の姿があった。
自分と同じ管理局員の制服に身を包んだ、サイドポニーの女性。栗色の髪が、一歩一歩歩くたびに美しく揺れる。
「なのはさん」
「ああ、ギンガ」
名前を呼びかけられたなのはは、ギンガに対してにっこりと微笑みかけた。
「お見舞いに?」
「うん、今後の連絡とかも必要だったからね」
「わざわざすみません。先の戦闘の時も……」
「にゃはは……いいよいいよ」
軽く頭を下げて感謝するギンガに、なのはは困ったような笑顔を浮かべる。
先の戦闘、とは言うまでもなく地上本部戦のことだ。
ギンガが連れさらわれたあの時、妹のスバルは殺生丸と交戦し、ものの見事に打ちのめされたという。
猛毒の爪を打ち込まれ、とどめの刃を抜く一歩手前だったところを、なのはが駆けつけて追い払ったのだ。
その時彼女は、教え子をむごたらしく傷付けられた怒りのあまり、魔力限定を独断で解除。
当然のごとく上からはこっぴどく叱られ、先日始末書を提出したばかりなのだそうだ。
それなりに心労はかかったろうに、それでもなのははそれを微塵も表に出さず、こうして笑顔を浮かべている。
「でも……私はギンガが心配かな」
そして、その笑顔が不意に曇った。
「恐らく、もうすぐスカリエッティが大きな動きを見せてくる頃だと思う……」
沈痛な面持ちで、なのはは言葉を紡いでいく。
「多分……殺生丸さんとも、戦うことになるよ」
なのはにとっては、あの廃棄区画での戦いから、それがずっと気がかりだった。
4年前の空港火災の折に、ギンガを救い出した殺生丸。
スバルと違ってあまり表に出すことはなかったが、彼女が彼に深い感謝と尊敬の念を抱いていることは知っている。
そんな相手と戦うことが、本当にできるのか、と。
「……大丈夫です。戦ってみせます」
ギンガは、しかし毅然とした表情で返す。
確固たる決意をその瞳に宿し、はっきりとした強い語調で、真っ向からなのはの目を見据えて。
しばしなのはもまた、その視線に答えるかのように、じっとギンガの目を見つめていた。
「……そっか」
そして、ふっと表情を緩めた。
彼女は本当に大丈夫だ。
緑の双眸に映った、揺るぎない決意。あの殺生丸と、真っ向から向き合う決意を固めた目だ。これならばきっと――いや、必ず戦える。
「じゃあ、その時には一緒に頑張ろうね」
「はい」
そう言い残すと、なのはは笑顔でその場から立ち去った。

580 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 18:11:38 ID:3PwpeL3o
支援

581 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 18:12:55 ID:FNyKkyhj
その場に1人取り残されたギンガは、病室のドアへと目を向ける。こんこん、と叩き、そのまま扉を開けた。
「あ、ギン姉!」
弾けるような、若い少女の声が聞こえる。
いくつかのベッドが並んだ、木造のアンティークな病室。清潔な白いシーツが、さながら上物のカーペットのようにさえ思えた。
そしてそんな純白の中に、青い点が1つ。
スバルの姿だ。パジャマ代わりの空色のシャツが、ベッドの白の中で存在感をアピールしていた。
「元気そうね、スバル」
入院患者を訪ねてきたはずだったが、迎えに出たのは拍子抜けするほどの明るい笑顔。
ふっと表情をほころばせ、ギンガはベッドの近くの椅子に座る。
隣のベッドは元はエリオの物だったが、その姿は今はない。ギンガ共々、既に退院済みだ。
ロングアーチの面々も続々と戦線に復帰する中、フォワード陣の中では、未だスバルだけが布団の上で座っていた。
特に外傷があるわけではない。殺生丸との戦闘で受けた傷はどれも軽傷で、既に治っている。
しかし、彼女には、それとはまた別の問題があったのだ。
「なのはさんから聞いてると思うけど、私達、今日からアースラに上がるから……しばらくお見舞いには来れないかもね」
「いいな〜、あたしだってもう大丈夫なのに〜」
スバルは不機嫌そうに頬を膨らませる。
アースラ、とは、管理局の保有する次元航行艦の名称だ。L級艦船の第八番艦で、なのは達とは馴染み深い艦である。
PT事件や闇の書事件などの激戦を駆け抜け、老朽化の進んだ艦だったが、
崩壊した六課隊舎の代わりの移動できる拠点として、退役前に、最後の仕事を引き受けてもらうことになったのだ。
空飛ぶ巨大な船が新たな基地になるというシチュエーションは、さぞかしスバルの子供っぽい心をくすぐったことだろう。
それを分かってはいるが、しかしギンガは、敢えて厳しく接しなければならなかった。
「スバル」
「ん?」
「ちょっと、ここに思いっきりパンチしてみなさい」
自らの左の手のひらを掲げ、右の人差し指で示しながら言う。
「へ? 何でまた急に?」
「いいからやってみて」
わけの分からない要求にスバルは怪訝そうな表情を浮かべるものの、ギンガはお構いなしに急かしてくる。
結局未だよく分からないままに、彼女は右の拳を構えた。
「こう……かなっ?」
言われた通り、渾身の力を込めて思いっきりストレートを繰り出す。
シューティングアーツで鍛えられたスバルの拳は、あらゆる敵を打ち倒す必殺の鉄拳だ。少なくとも、そうではあったはずだった。
しかしギンガは、あっさりとそのパンチを受け止める。ろくに力を入れた様子もなしに、本当にあっさりと。
「ほら、まだ全然体力も戻ってないじゃない」
「う……」
やられた、といった様子で、スバルがばつの悪い表情を浮かべてうつむいた。
一見健康そうではあるものの、彼女の身体は、実は相当衰弱していたのだ。
殺生丸の毒華爪によって体内を侵食した、強力な毒素。
反射的な脳内演算によって構築されたナックルダスターのカウンタープログラムによって一命は取り留めたのだが、その後がよくなかった。
強引な形で魔力が搾り出されたことにより、逆にリンカーコアや動力系が深刻なダメージを受けることになってしまったのである。
戦闘機人の無尽蔵にも近いスタミナは、今はすっかりと枯れ果てた。
おまけに毒素の人体への影響も無視できるほどではなく、優れた身体能力の源泉たる筋力も相当衰えている。
魔力も使えず、身体に力も入らず。
陸戦Bランクの力を持った立派な魔導師の身体は、今は一般人とさえ大差がないほどになっていた。
おまけに、元の調子を取り戻すには、今から一ヶ月近くの時間を要するとさえ言われている。
「怪我人はちゃんと大人しくしてなさい」
優しい姉の笑顔を浮かべながら、ギンガはスバルの頭へと手を伸ばす。ボーイッシュな髪型の青い髪を、そっと手のひらが撫でた。

582 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 18:13:26 ID:9G+ZYMOq
支援! ギンガがメインのSSが遂にくるかw

583 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 18:14:01 ID:FNyKkyhj
それを皮切りに、視線を落としたスバルの肩が微かに震えだす。
「……ぅ……ひっく……うぅ……」
純白のシーツを灰色に染める染み。
すすり泣くスバルの抑えられた声が、2人きりの静かな病室の中でこだました。
悔しい。
誰かを守るために手にした力を失ったこと。みんなを守るための戦列に参加できないこと。ギンガと共に戦えないこと。
それら全てがとてつもなく悔しい。
突きつけられた現実は、15歳のスバルの肩に、あまりにも重くのしかかる。今ここにいるのは勇敢な魔導師ではなく、1人のちっぽけな少女だ。
「お姉ちゃんが、ちゃんとスバルの分まで戦ってくるから」
それが気休めにしかならないとは分かりつつも、ギンガは笑顔を浮かべたまま、幼子をあやすようにスバルへと声をかけた。

シャワー室とは、女が1人になる場所だ。
簡単な身支度を済ませた後、自宅の浴室で、ギンガは熱い雫を全身で受け止める。
けたたましく鳴り響き続ける、シャワーの水音。他に音源がないだけに、むしろそれは静寂さえももたらす。
母親譲りの紫色のロングヘアーが、お湯に濡れて身体に張り付いていた。
美しい長髪は水滴の照り返しによって、密室の中で艶やかな光を放つ。
形もよく、健全に育った豊かな乳房に、その形をなぞるようにして髪がへばりついていた。
優美なウエストラインが紫の糸によって強調され、更にその下には程よい形を保ったヒップ。
雫はそのまま、すらりと伸びた美脚を伝い床へと落ちていく。
出るところは出て、締まるところは綺麗に引き締まった、日々の鍛錬がもたらした絶妙なプロポーションだ。
ギンガの表情は、しかしそれとは裏腹にまるで冴えない。
病院で見せた母性的な笑顔が嘘のように、今度は彼女がすっかり沈んでしまっている。
(母さんなら、ちゃんと慰めてあげられたかな……)
亡き母親の姿を想う。
自分は失意のスバルに、何もしてやることはできなかった。震えて涙を流し続ける妹の力になれなかった。
何が無敵の戦闘機人の身体だ。何が陸戦Aランクのエリートだ。
たった1人の妹すら守ることができない力に、一体どれほどの価値があるというのだ。
結局、ギンガは繰り返していた。あの日の空港火災の時と、全く同じことを。
無念に震えるスバルの涙を、拭ってやることができなかった。あっけなくナンバーズに倒され、スバルを守ってやることができなかった。
燃え盛る炎の中、救われる立場にあったあの時と、全く変わっていない。
既に自分は管理局の捜査官という、立派な救う立場にある人間なのだというのに。自分の不甲斐なさに腹が立つ。
(……殺生丸さん……)
そして、許せないのは自分だけではなかった。
火災の現場で出会った白銀の麗人・殺生丸。4年の歳月を経て再び姿を現した彼は、容赦なく自分達に牙を剥いた。
廃棄区画での戦いではフォワード達を圧倒し、あまつさえ先の地上本部戦では、スバルを生命の危機にさえさらした。
彼の猛毒は愛する妹の身体を蹂躙し、今もなお彼女に涙を流させている。
がん、と。
タイルの壁を、ギンガの左拳が音を立てて殴りつけた。
緑色の瞳に、鋭い眼光が宿る。なのはに対して向けた、あの確固たる決意の視線が。
(許しはしない)
絶対に許すわけにはいかない。
たった1人のかけがえのない妹を、無惨にも傷付けたあの男を。
殺生丸は、間違いなく彼女にとっての憧れだった。
幼いギンガを助け出したあの男は、弱きを助ける正義のヒーローとして、絶対的な正義と力の象徴となった。
彼のように強くなりたいと思い続けてきたし、できればまたちゃんと話がしたいと思い、ずっと彼の消息を追い続けてきた。
その想いは、スバルがなのはに抱いたものにも負けないものであり、もしかしたら、それが異性であるが故に、もっと強力だったかもしれない。
――恋していたかもしれなかった。
恋愛感情と呼べるような甘酸っぱいものではない。多分、それは幼い子供がおとぎ話の英雄に抱くような、あまりに未熟で幼稚すぎる恋。
いわば殺生丸は、ギンガにとっての「白馬の王子様」だった。
しかし、強すぎる想いは、それが砕かれた時にはさらに強力な反発を生む。
今の彼女にとって、殺生丸は倒すべき敵だ。妹を傷付けた、許されざる敵だ。
その想いに偽りはない。
手段と目的は逆転する。
何故こうなってしまったのか、と話を聞くことなど、後でいくらでもできることだ。
きっと正面を睨む。その先に映る、あの美しく輝く銀髪の貴公子を見据えて。
殺生丸は。
かつて自分が抱き続けた幻想は。
(――私が倒す)

584 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 18:14:46 ID:9G+ZYMOq
かつての自分にとってのヒーローをぶちのめせ! 支援

585 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 18:15:55 ID:FNyKkyhj
スカリエッティのアジトにおける、数多ある実験室の1つ。
わざとらしく薄暗い室内の中心には、ぐったりと横たわる幼子の姿があった。
ルーテシアよりもさらに小さい、長い金髪を下ろした幼女。
機動六課から奪い去ったヴィヴィオが、時たまびくりと身体を痙攣させながら、実験室のベッドに寝かせられている。
手足にあるのは、冷たく重苦しい拘束具。
その両隣には、あの青と灰色のナンバーズスーツがあった。
尻尾のような後ろ髪を持つ]番のディエチと、白いマントを羽織ったW番のクアットロ。
その2人がコンソールを操作し、何やらこの無垢な子供の身体をいじくり回している。
「クアットロ」
無言でキーを叩いていたディエチが、不意に口を開いた。
「正直な感想言っていい?」
「ご自由に〜♪」
割と真剣な口調で言葉を紡ぐディエチとは対照的に、クアットロはいつものおどけた調子の声だ。
「この作戦……あまり気が進まない」
「あらぁ、どうしてぇ?」
これまでコンソールに集中していたクアットロの視線が、ここで彼女の方へとようやく向けられる。
ディエチの表情は、いつになく暗かった。オットー達ほどではないにせよ、どちらかといえばクールな部類に入る彼女には珍しいことだ。
「こんな小さな子供を使って、あんな大きな船を動かして……そこまでしないといけないことなのかな?」
ヴィヴィオはある古代遺産を動かすための、重要な鍵だった。
古代ベルカ文明の造り出した巨大戦艦――通称「聖王のゆりかご」。
2つの月の生み出す絶大な魔力を変換し、強力な次元間砲撃と堅牢なバリアを誇る、ミッド史上最強最悪の質量兵器である。
そのキーとなるのは、初期動力とするレリックと、ベルカの法王たる聖王の遺伝子。
そして、ヴィヴィオはそれを持っている。その遺伝子を基に作られた、人造魔導師の彼女ならば、ゆりかごを起動させることができる。
ガジェットやルーテシア達の働きによって、既にレリックも十分な数が集まった。あとはヴィヴィオに調整を施すだけ。
だが、ディエチの表情は冴えなかった。
「技術者の復讐とか、そんなのって……」
自らの提唱する技術を認めなかった管理局を、自らの技術によって叩きのめす。
そんな個人的な理由のために、いたいけな少女を苦しめてもいいのだろうか、と。
「ああ、あれ?」
しかし、クアットロの声は何でもないことのように響く。
「あんなのドクターの口先三寸、ただのでたらめよ?」
「そうなの?」
はっとしたように、ディエチがクアットロの方へと向き直った。
「ドクターの目標は初めっから1つだけ……生命操作技術の完全なる完成、そして、それが出来る空間作り」
スカリエッティが発掘した聖王のゆりかごは、そのための船であり、実現のための力だった。
数々の違法研究に手を染めた彼がゆっくりと研究を行うための牙城であり、そのための資金や物資を管理局から巻き上げるための武器。
「ま、今回の件で軽く何千人か死ぬでしょうけど、100年経たずに帳尻が合うわよぉ」
物騒なことを平然とクアットロは言ってのける。
「ドクターの研究はぁ、人々を救える力だものぉ♪」
自らの言葉――スカリエッティの思想に酔ったように、にこにこと笑うクアットロ。それを怪訝そうな表情で、ディエチは見つめる。
確かに、スカリエッティの研究は人々の役には立つだろう。多くの病人や怪我人を救うことができる。
クアットロの言うように、この戦いで失われるであろう人口はすぐに回復するかもしれない。
でも、それでいいのだろうか。
死んだ人の代わりが増えるだけで、解決する問題なのだろうか。
「どうしたのぉ、ディエチちゃぁん? お姉様やドクターの言うこと、信じられなくなっちゃったぁ?」
「……そうじゃないよ。そうじゃないけど……ただ……」
言いよどみながら、再びディエチの視線はヴィヴィオへと向かう。
天涯孤独の身で、ようやく高町なのはという母代わりを見つけたというのに、自分達が引き剥がしてしまった少女へと。
「こんなに弱くてちっちゃい命が、それでも生きて動いちゃうのを見てると……この子達は、別に関係ないんじゃないか、って」
「姿を見る前なら平然とトリガーを引けたのに、ねぇ?」
不意に、クアットロの言葉が意地悪っぽい響きを宿した。

586 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 18:17:01 ID:FNyKkyhj
辛辣な言葉が、ぐさりと突き刺さる。思い出すのは、あの廃棄区画での戦闘だ。
あの時ヴィヴィオの乗るヘリを狙ったのは、他ならぬ自分自身ではないか。そんな自分が、今になって同情するというのか。
まったくもって、人間とはどうしようもない生き物だ――一応人間の形をしたディエチは、ため息をつく。
今更自分にこの娘を哀れむ資格などありはしない。良心はずきずきと痛むが、どうにもならないことだ。
「ごめん、クアットロ。気の迷いだ。……忘れて」
表情を正すと、ディエチは再びコンソールへと向かった。
首から下げた銀ドクロが、頭の動きに合わせて揺れる。
「あ、結局それも直したのね」
今更それに気付いたクアットロが言った。
クラナガンへルーテシアを迎えに行った時から、ずっと首にかけていたネックレス。
先日の地上本部戦で、イノーメスカノンの反動にチェーンが耐えられず、とうとうほつれてしまったのだ。
そして戦闘から帰ってから、暇な時間にせっせと修理し、今に至っている。
「さすがに愛着でも湧いちゃったのかしらぁ?」
「愛着?」
僅かな驚きを顔色に映しながら、ディエチは胸元のドクロへと視線を落とした。
この可愛くも何ともない不気味なネックレスは、今日も銀色の歯を光らせている。
たまたま屋台の人に言われるがままに買って、何を思ったのかそのまま身に付けていた、どうでもいいはずの物。
そんな物に愛着など、持つはずもなかった。
「……まさか」
言いながら、ディエチは作業を再開する。
そもそもこの身体は、戦うための戦闘機人のもの。
主たるスカリエッティの命令と、共同作業者たるナンバーズ以外のことなど、さして気にもかける必要などないはずだった。
それが一体、ここのところの自分はどうしたのだろう。
こんなアクセサリーなんかに執着するし、目の前のヴィヴィオに同情なんて抱いている。
そんなものは戦闘の妨げとなるはずであり、戦闘機人には必要のないはずのものだった。
しかし一方で、ディエチは少しずつ、何かの手ごたえを感じている。
今日自分がヴィヴィオに抱いたこの想い。根拠はないが、これは常日頃からの疑問と、どこかで繋がっている気がする。
何となくだが、もう少しで分かるような気がした。
何故、自分がこの銀ドクロを買ったのか。それをそのまま首にかけているのか。
そんなことを考えつつも、ディエチの指先はコンソールの上で、休むことなく動いていた。

アジトの廊下には、今日も淡い光が足元に灯っていた。
待機状態のガジェットと共に、ずらりと並んだ大きなガラスのケース。
そのうちの1つを、ルーテシアはじっと見つめている。
金色のフレームに刻み込まれた]T番というナンバーは、それが適合するレリックであることを示しているのであろう。
培養液で満たされたケースの中では、1人の女性が眠っていた。
ルーテシアと同じ紫の髪を揺らし、むき出しの裸体を晒して、身体はぴくりとも動かない。
「――それがメガーヌ・アルピーノとやらか」
背後から男の声がかけられる。
振り向かずとも、それが誰かはすぐに分かった。いつの間にか、すっかり耳に馴染んでいた声だ。
殺生丸はアギトを連れて、ルーテシアの隣に立つ。
「らしいよ」
そちらを見ることもなく、彼女は淡々と言い放った。
ルーテシアが改造を受けた時は、まだ1歳。小さな赤ん坊もいいところで、親の顔など覚えているはずもなかった。
人知れず殺害されてしまった父親のことなどは、存在すら記憶にないのかもしれない。
それはアギトも――そして殺生丸もまた、重々承知のことだった。今更問いただすほどのことでもなかった。

587 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 18:18:08 ID:FNyKkyhj
殺生丸は、仮死状態のまま眠りについたメガーヌの姿を見据える。
そして不意に、腰の刀へと手をかけた。
二振りある刀のうち、あの破壊の凶刃・爆砕牙ではない方――亡父から譲り受けた“牙”、天生牙。
「それで斬ると、死んだ人が生き返るんだっけ?」
アギトが問いかけ、殺生丸は無言で頷く。
天生牙とは、一振りで百の命を救うとまで言われた、癒しの刀だ。
現世の存在を斬ることはできないなまくらでありながら、霊魂などのあの世の存在には、極めて強い切れ味を発揮する。
その副次効果によって、死者の魂を冥府へ送ろうとするあの世の使いを斬ることで、死者を復活させることができるのだ。
誇り高き最強の妖怪たる父を目指した殺生丸にとっては、かつては忌むべき刀だった。
妖怪一匹斬れない役立たずの刀。自らの欲した鉄砕牙に比べれば、あまりに貧弱すぎる牙。
しかし今では、恨むつもりなどありはしない。
この天生牙が自分にもたらされた意味――父を憎むようにしむけさせられた意味を知った、今となっては。
殺生丸はその剣を携え、今一度メガーヌを凝視する。
だが、数秒と経たないうちに、その刀身は再び鞘へと収められた。
「やっぱ駄目だったか」
がっくりとした様子で、アギトが肩を落とす。
彼女の言葉は、殺生丸に見えたものを的確に表していた。
メガーヌはゼストと異なり、別に死んだわけではない。仮死状態のまま、眠らされているだけ。
彼女の身体の周りには、あの世の使いがまるで存在しなかったのである。
これではさしもの天生牙も、それこそ完全ななまくら刀だ。別にこれは治癒魔法を施す剣ではない。死んでいない人間は救えない。
ほんの気まぐれ程度に試してみたことだったが、それも徒労に終わったようだ。
「大丈夫」
ルーテシアが口を開いた。
「この人は、ちゃんと私が生き返らせる」
]T番のレリックを見つけて、スカリエッティに届けることで。
淡々とした口調の中にも、確固たる決意を込めて、言葉を発する。
「目を覚まして、お母さんになってくれれば……私には、心が生まれるんだって」
それがルーテシア・アルピーノの願い。
母の愛を知らず、人の感情もろくに知らない。常に満たされない心の虚を抱いた彼女が、それを埋めるための道。
(心を知らない、か……)
殺生丸の金の瞳が、ルーテシアの横顔へと向かった。
この娘は、本当に何も知らないのだろう。
クラナガンでアイスをおごった優しさ。エリオとキャロに燃やした対抗心。ゼストがいなくなることへの寂しさ。
それこそが心であるということすらも知らないのだ。
ふと、重なった。
全然似ていないというのに。
目の前の紫の髪の幼女が、記憶に残った黒い髪の幼女と重なった。
家族を野盗達に殺された娘。天生牙によって殺生丸が生き返らせた、人間の娘。
いつも無邪気に殺生丸の名を呼んでついて回った、りんという名の小さな少女。
(いや……奴も、コイツと同じではあるか)
共通点はあった。
どちらもが家族を失ったことで、自身もまた何かを喪失していた。ルーテシアは言うまでもなく感情を。そしてりんは声を。
(私は、何かを失っただろうか)
自身を省みる。
最強最大の大妖怪にして、列島の覇者として君臨していた偉大なる父。それを失った自分は、果たして何かを喪失しただろうか。
思い当たるものは、何もない。
殺生丸は何も失わなかった。人の死がきっかけで失うものなど、もとより何も持っていなかったのだから。
冷徹非情な彼は、ルーテシアともりんとも違う。
それが少し寂しいと思えるのは、ただの気の迷いだろうか。
そして、自分には何もないと思うのは、あの人間の少女との触れ合いで得たものに、気付こうとしていないが故なのだろうか。

戦局は進んでいく。その者達の望む望まぬにかかわらず、戦いは終局へと向かっていく。
殺生丸には知る由もなかった。
今近づいている戦いが、このミッドチルダでの最後の戦いになるということを。
そしてその中で、1人の少女が己自身に決着を着けるべく、待ち受けているということを。

588 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 18:19:23 ID:9G+ZYMOq
クライマックスだw 支援!

589 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 18:19:35 ID:FNyKkyhj
4レス分も「文字数が多すぎます」と言われた……orz
おかげで、アバンタイトル部分は最初のレスに収めるというポリシーが崩壊……俺は、負け犬だあぁぁぁぁ!(ぇ

投下終了。
原作で描かれた範囲での行動は一切いじることなく、ゼストのルーちゃん放置にまっとうな(?)理由を持たせてみました。
……多分ゼストのとっつぁんも、ね……色々複雑だったんだと思うよ。

いよいよ次回からはゆりかご戦突入。
じらしにじらしたギン姉との因縁も、遂に決着を迎えます。
え? スバルはどうしたかだって?
やだなぁ〜、俺がスバルをここでフェードアウトするような外道なわけがないじゃないかw(ぇ

590 :魔法少女リリカルなのはTES ◆O4WHtYg2/w :2008/05/13(火) 18:22:29 ID:D6QyIPaN
混沌としたシロディールに颯爽と救世主が!
「スタァァップッ!!」
まあ不法侵入で逮捕されるんですが。

30分から投稿しますね。

591 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 18:23:33 ID:9G+ZYMOq
>>590
次スレを立てるまで待つんだ!
容量が足りない!
そして、前の投下から30分後がルールですよw

592 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 18:23:58 ID:mFWrFLZ6
GJ!
台詞がどこの勇者王ですかギン姉

593 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 18:24:24 ID:FNyKkyhj
次スレならカルタスが一晩でやってくれました

http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1210670509/

594 :魔法少女リリカルなのはTES ◆O4WHtYg2/w :2008/05/13(火) 18:25:51 ID:D6QyIPaN
Σ リロードをまったくしてなかった!

わっかりました、次スレいきます。

595 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/05/13(火) 18:25:57 ID:FNyKkyhj
>>592
ちょwww濡れ衣www
えーっと、どの辺が勇者王? 全く意識してなかったのですが

596 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 18:29:24 ID:9G+ZYMOq
>>594
時間的には6時55分からの投下がよろしいかと思いますよ?

597 :魔法少女リリカルなのはTES ◆O4WHtYg2/w :2008/05/13(火) 18:30:41 ID:D6QyIPaN
>>596
せっかくだから推敲しておきますノシ

598 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 18:43:03 ID:9G+ZYMOq
500KBなら今日はお祭り!
投下がジャンジャカされて賑わう!!

599 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 19:06:51 ID:EZByw0VO
500kなら作品を書く努力をするぜ

600 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 19:12:36 ID:NK5vLHnS
まさにホールインワン。500よこいこい。

601 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/13(火) 19:23:12 ID:iQFZE6Wr
【なぜかちがさわぐ】
               __,,.. -‐¬ニ三 ̄l__
           _,,.-‐=ニ´‐¬⌒´ ̄l    |、ハ
      __,,.イ´-‐'i"´ ! __,,..!-‐_ニ"l´ ̄┘! }Λ
      }ニイ´! __, -rァi´   ! l__| |    | ヽΛ
.   /レ' ,.イ丁  | ゙┘|  _|__,,,,...斗--ー‐j‐┴┴┐
   /ヲ1 l´ |└' _,,.l-‐''T二斗ェェァ7圷己己己己刊
.  ∨! |」レ‐'',.斗ァ'T圷下己f不己Τヲ<¨フ=ミ | |、
   }j/イ下匕f弌「ハ. l⌒l.l l´ ゙!.! !  | |   | | |ハ
   j.イn'゙ハ、Π.| 「゙|::||  |.| |   |.| |____」 |__|_|_|ハ______ ┌r‐--=....,,,__
   〈1「!:|'|::| |::| L..!└┘_二_j_`二] !_二二j_二二エニニニニ辷^┴‐┐lコ : : : ̄`>、
    |j」l‐'_¨ 三ェ七托己下己!下己'斤己己下二工二二下r┐ーー‐|: : Π┬i: n: :_:|
   必斥f斤Π i'゙`l l⌒l f⌒l」 l⌒゙l」 l´:::`l l.「:::`l | 「:::::`l|Y/⌒! Y┘Lj└' '='」|
.  'l|「lΠ|::| |::| | :::| |:::::| | : :|.| | :::::|.l |::::::::| |」::::: | | |::::::: || Y::::::| Y} l^lΠn┐!|
   jj」,!L!'=' '-'└‐'_'ニ´_二´i_`二].j_¨二´_l,,¨二工¨二¨T二二刀ー亠‐┐|_||_!_!_||
  幺赱/(赱赱云冗己子己l子己冗己己刀二.工二二工二二Y〔ニニニ}.ニ ニ゙ニ`!
  ∧/  `丿).l´`Ll⌒l f⌒l.i l⌒゙i l l´:::`l l.f⌒゙l l l/⌒',.」_/⌒l_||Yl⌒l 〈!Π「!「!「|
  ) ,.)`、   \ノ!|:::::| | : :|.l | : ::| l |::::::::| |.|::::: | l |::::::: | | |::::: | || Y::: | |.|:j !j.lЦ!
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  )ヽ`》'´⌒`彡 ノ         ̄´ ̄ ̄ ̄` ̄ ̄ ̄`ー‐'‐'‐'ー‐''´ ̄´
. ミ  lミcメノ))))) フ
  ヘ ゞ(l!・ωノ|l=っ=っ
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 \\ (_/-u'シュバババ/


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