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リリカルなのはクロスSSその67

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 19:36:06 ID:UlHKIDcg
ここはリリカルなのはのクロスオーバーSSスレです。
ガンダム関係のクロスオーバーは新シャア板に専用スレあるので投下はそちらにお願いします。
オリネタ、エロパロはエロパロ板の専用スレの方でお願いします。
このスレはsage進行です。
【メル欄にsageと入れてください】
荒らし、煽り等はスルーしてください。
ゲット・雑談は自重の方向で。
次スレは>>975を踏んだ方、もしくは475kbyteを超えたのを確認した方が立ててください。

前スレ
リリカルなのはクロスSSその64
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1209789426/

*雑談はこちらでお願いします
リリカルなのはウロスSS感想・雑談スレ37(避難所で進行中)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1211304843/

まとめサイト
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/

避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/

NanohaWiki
ttp://nanoha.julynet.jp/

R&Rの【リリカルなのはStrikerS各種データ部屋】
ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/index.html



2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 19:36:43 ID:UlHKIDcg
【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
 http://gikonavi.sourceforge.jp/top.html
・Jane Style(フリーソフト)
 http://janestyle.s11.xrea.com/
・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認してダブルブッキングなどの問題が無いかどうかを前もって確認する事。

【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は感想・雑談スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
 前の作品投下終了から30分以上が目安です 。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。

【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
 議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
 皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
 著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
 いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
 追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。



3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 19:37:19 ID:UlHKIDcg
【警告】
・以下のコテは下記の問題行動のためスレの総意により追放が確定しました。

【作者】スーパーロボット大戦X ◆ByQOpSwBoI
【問題の作品】「スーパーロボット大戦X」「スーパーロボット大戦E」「魔法少女(チェンジ!!)リリカルなのはA'S 次元世界最後の日」
【問題行為】盗作及び誠意の見られない謝罪

【作者】StS+ライダー ◆W2/fRICvcs
【問題の作品】なのはStS+仮面ライダー(第2部) 
【問題行為】Wikipediaからの無断盗用

【作者】リリカルスクライド ◆etxgK549B2
【問題行動】盗作擁護発言
【問題行為】盗作の擁護(と見られる発言)及び、その後の自作削除の願いの乱用

【作者】はぴねす!
【問題の作品】はぴねす!
【問題行為】外部サイトからの盗作

【作者】リリカラー劇場
【問題の作品】魔法少女リリカルなのはFullcolor'S
【問題行為】盗作、該当作品の外部サイト投稿及び誠意のない謝罪




4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 19:37:45 ID:Wgt5vfPj
ご苦労様です

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 19:38:49 ID:UlHKIDcg
失敬

前スレリリカルなのはクロスSSその66
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1211194262/

6 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 20:24:46 ID:xLJY2WcD
>>1乙です!
早速ですが八時五十分くらいに投下させていただきます。

7 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 20:26:10 ID:KI66QDUg
>>1乙!!

そして>>6最大級の支援!!
パニッシャー三本構えて待ってますよ〜♪

8 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 20:45:53 ID:HFn9NShU
6
リリカルTRIGUN氏待っていました。

9 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 20:50:13 ID:xLJY2WcD
それでは、第九話「自由への扉、開くために・前編」投下します。

10 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 20:51:13 ID:xLJY2WcD
「なーんでこんな事になってるのかなぁ……?」

ある世界では人間台風として恐れられている男――ヴァッシュ・ザ・スタンピードは引きつった笑みを浮かべ、それを見つめていた。
大量の物――主に衣服が詰まったビニール袋。
それが山のようにカートに積まれている。
その光景はまるで山。
マウント・富士。
それは、人間台風でさえ裸足で逃げ出したくなる程の威圧感を放っていた。

今はまだ良い。
人類の英知の結晶、買い物カートが頑張ってくれているから。

この買い物カートを作った人は本当に凄い。
総計十数キロにも及ぶであろう山を僅かな負担で運ぶ事が出来る。
これがなければ自分はとっくの当に力尽きていただろう。
買い物カートを発明した見知らぬ誰か。
心の底から礼を言わせてくれ。
本当にありがとう。
その人に出会えたら高いお酒を一緒に飲みたいなぁ、うん。

「ヴァ〜〜ッシュ!!何ボーっとしてんのよ!次行くわよ次!」

強烈な声がヴァッシュの鼓膜を揺らし、現実逃避の渦から呼び戻す。
声のした方には、大量の買い物袋を持ったアリサ、そしてなのは達が立っている。
なのは達は最高に楽しそうな笑みを浮かべ、買い物袋をカートへと乗せていく。

記録更新。
標高が一割増しだ。
カートがデバイスみたいに意志を持ってたら絶対に怒るぞ、コレ。

ヴァッシュはどこか人事のようにその光景を見て、そんな事を考えていた。

「ねぇ、そろそろ良いんじゃないかな……」

その時、天使の様な言葉がヴァッシュの耳に届いた。
その声の主はフェイト。
フェイトは、心配そうな顔でヴァッシュを見ている。

「う〜ん、そうねぇ……そろそろいいかしら」

その言葉にアリサも少し考え、頷く。
ヴァッシュの顔が、嵐から晴天に変わるかの様に分かり易く変化した。

「じゃ、次のお店ね!ここはもう見飽きちゃったし」

――だが、アリサの一言にヴァッシュの笑顔が固まり、崩れ去る。

「つ、次って、まだ見て回るのかい?」
「……嫌なの?」
「そりゃ――」

そうだよ、と言おうとしてヴァッシュは自らの口を覆った。
視線の先には氷点下の笑みを浮かべるアリサ。
アリサは、ヴァッシュへと向き直り口を開く。



11 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 20:53:28 ID:xLJY2WcD
「ある日、いきなり行方不明になった男は誰だっけ?」
「う……」

「連絡もしないで沢山の人を心配させた男は誰だっけ?」
「うう……」

「そのお詫びとして私達の買い物に付き合うって言ったのは誰だっけ?」
「…………僕です」

「こんなんじゃ済まさないわよ!どれだけ私達が心配したと思ってるのよ、まったく!」

そうヴァッシュには、このショッピングという名の地獄に付き合わなければいけない理由がある。
帰りたいなんて口が裂けても言えない。

がっくりと肩を落としうなだれるヴァッシュ。
それを見てアリサは勝ち誇ったかの様な笑みを浮かべ、なのは達へと振り返る。

「んじゃ、次の店に行くわよ!荷物落とさないでね、ヴァッシュ!」

拳を振り上げ先陣を切るアリサの顔には、この上なく楽しそうな微笑みがあった。
その小悪魔のような笑みに目の前が暗くなるのを感じながら、ヴァッシュは立ち上がる。

(……ありがとな、買い物かご……お前には世話になった……)

かごに詰まれた買い物袋に腕を通し店を後にするヴァッシュの背中には、言いようのない悲壮さが漂っていた。

(頑張れよ)

喋るはずのない買い物カゴから励まされた、そんな気がしたヴァッシュであった。



「ごめんね、私達そろそろ行かなくちゃ……」

それから数時間後のとある喫茶店。
お昼を食べる為に立ち寄ったそこにて、なのはが申し訳なさそうに手を合わせた。

「え〜もう?」
「うん。もうちょっと遊びたかったけど……」

不満げなアリサの声にフェイトが残念そうに答え、なのはが苦笑する。

「じゃあ、また明日!なのはちゃん、フェイトちゃん」
「ちゃんと気をつけて帰んのよ!」
「アリサ達も、あんまりヴァッシュのこと無理させちゃ駄目だよ……」
「わ、分かってるわよ!」
「にゃはは……じゃあね〜!」

そして二人の少女が喫茶店を後にし、三人が残される。
三人の内の一人ヴァッシュ・ザ・スタンピードは、テーブルに突っ伏したままピクリとも動かない。

「……ヴァッシュさん大丈夫……?」
「…………大丈夫だよ……」

心配そうに呟くすずかに、明らかに大丈夫じゃない声でヴァッシュが答える。
まだ返答する元気はあるらしい。



12 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 20:53:44 ID:jnvRNMpH
支援

13 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 20:54:56 ID:xLJY2WcD
「ふぅ、ヴァッシュも体力ないのね〜。そんなんじゃ、彼女ができた時大変よ?」
「……そういうもんかい」

ため息一つ。
両手を広げ、呆れた様に首を振るアリサ。
対するヴァッシュは小さく八回、口を動かすだけ。

「仕方がないわね……」

そんなヴァッシュを見て再度ため息をつき、アリサが立ち上がる。
そして、レジの方へと歩いていってしまった。


数分後、戻ってきたアリサはその手に持ったソレをヴァッシュへと差し出す。

「ヴァッシュ、あんたコレ好きだったわよね?」

アリサの言葉、そして鼻孔をくすぐるソレの香りに、ヴァッシュの体がピクリと動いた。
この甘い香り、嗅いでるだけでヨダレが口の中へと溜まるこの香りは――――。
ソレの正体に行き着くと同時に、ヴァッシュが勢い良く顔を上げる。

浅く焦げ目がついた薄茶色の生地、その生地の間からチラリと見える乳白色のホイップクリームとその上に鎮座するアイスクリーム。
甘党には堪らない組み合わせを惜しげもなく見せるソレは――

「そ、それは……」

――クレープ。

この世界で知ったヴァッシュお気に入りのデザートがアリサの手に握られていた。

「はい、今日はご苦労様」
「え?」
「私の奢りよ。遠慮しないで」

そう言いながらクレープを差し出すアリサ。
そのアリサの微笑みが、ヴァッシュには輝いて見えた。

「ありがとう!」

クレープにかぶりつくと、ホイップクリームとアイスクリームの濃厚な味が口へと広がる。
今日一日の疲れが何処かに吹き飛んでってしまう程ね甘さ。
ヴァッシュは、じっくりと味わいながら天使からの贈り物を飲み込んでいった。






14 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 20:55:32 ID:jnvRNMpH
支援

15 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 20:57:00 ID:xLJY2WcD
「いや、美味しかった!本当にありがとな、アリサ」

数分後至福の時を終えたヴァッシュが、手と手を合わせ頭を下げた。

「そんで次は何処に行くんだい?もう元気いっぱいだよ、僕は!」

その言葉を表すように勢い良くヴァッシュが立ち上がる。
それを見て、アリサとすずかの顔に柔らかい笑みが浮かんだ。

「そんじゃ、午後は午前中以上に頑張ってもらうわよ!」
「楽しみだね!」

再び浮かぶ小悪魔の様な笑みに少したじろぎながらも、ヴァッシュは任せとけと言うように胸を叩く。

「よし!んじゃ後半戦行くわよ!」

嬉しそうに微笑む二人。
さっきまでは小悪魔の様に見えたそれも、今は少し違って見える。
ヴァッシュも二人に負けない様に微笑んだ。


――ヴァッシュ・ザ・スタンピードが望む平穏がそこにはあった。





「あ〜疲れた……どんだけ元気なんだ、あの子達は……」

夜の海鳴市。
高町家へと続く並木道をヴァッシュは歩いていた。
あれから、服屋、雑貨屋、眼鏡屋と、再びヴァッシュがグロッキーになるまで続けられた買い物劇も、日が落ちた事によりようやく終わりを告げた。
周囲は真っ暗だが、並木道は、等間隔に設置された電灯のおかげであまり暗くない。

「うー寒……早く帰ろ」

季節はもう冬。
二つの太陽がある惑星で暮らしていたヴァッシュにとって、この突き刺さる様な寒さは未だにキツい。
早く帰って温かい風呂にでも入ろう、そんな事を考えながら足早に並木道を進んでいたその時、ズボンに入っていた携帯――この世界に戻っきた際にリンディに渡されたそれが、甲高いメロディを奏でた。

「ん?」

いきなり鳴り響いたメロディに驚き、慣れない手つきで携帯を取り出すヴァッシュ。

「もしもし?」
「ヴァッシュ!奴らが現れた!」

のんびりと電話に出たヴァッシュとは対照的に電話の主は慌てた様な声を上げている。
そのまだ声変わりのしていない少年の声をヴァッシュは知っていた。

「クロノ、奴らって……」
「闇の書の守護騎士達だ!」

その言葉にヴァッシュの顔から疲労の色が吹き飛び、戦士のそれとなる。

「今すぐ、武器を持って臨時本部に来てくれ!」
「分かった、直ぐに向かう」



16 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 20:57:31 ID:jnvRNMpH
支援

17 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 20:59:25 ID:xLJY2WcD
言うより先にヴァッシュの体は動き出していた。
腰のホルスターには銀色のリボルバー銃。
左手には管理局製の義手。
戦いの準備は出来ている。

金色の髪を揺らし一人の男が、夜の海鳴市を駆ける。

――そう言えば、あの時もこうして夜の海鳴市を走ってたなぁ。

駆け続けながらヴァッシュは思い出していた。
自分がこの事件に巻き込まれるきっかけとなった日の事を。
あの時は結界なんて知らずに、みんなが消えた事に戸惑い、恐怖し、何かにすがる様に海鳴市を走っていた。
そして、初めて見た魔導師として戦うなのは。
それからは無我夢中だった。
なのはを助けようと街を駆け、ビルを登り、吹き飛ばされたなのはを受け止め、壁へと叩き付けられた。

(あれはかなり痛かったな……)

でも、今思えばあの日が分岐点だったのかもしれない。
あの出来事があったから自分は魔法や異世界についてを知り、なのはの想いを知り、この世界で生きる事を決意した。

今ここに居る自分は、あの時の――魔法について何も知らなかった自分とは違う。
世界を守る為、そして平穏な日々の為に戦うんだ。

いつも人の為に戦ってきた自分が、初めて自分の為に戦おうとしている事に気付き、苦笑する。

こんな気持ちは初めてだった。
色々な感情が入り混じった、複雑な微笑みを浮かべながらヴァッシュは走り続けた。



「ヴァッシュさん!こっちに来て下さい!」

ヴァッシュが臨時本部の扉をくぐると同時に、切羽詰まった様子のエイミィの声が耳に届いた。
慌てて声のした方に向かうと、様々な映像が映し出されている薄暗い部屋にエイミィ、リンディ、クロノの三人立っていた。

「ヴァッシュさんも来ましたね。それでは、今回の任務について手短に説明します」

いつもののんびりした雰囲気を微塵も感じさせないハキハキとした口調で、リンディが告げる。

「現在十名の武装局員が結界を張り、標的を取り囲んでいます。そこでクロノとヴァッシュさんにしてもらう事は一つ」

そこでリンディが言葉を切る。

「奇襲です」
「奇襲?」

聞き返すはヴァッシュ。
リンディはヴァッシュの方を向き一つ頷くと再び口を開く。

「そう、奇襲です。クロノは上から、ヴァッシュさんは下から、同時に攻撃をして下さい」
「了解しました」
「OK」

リンディの言葉にクロノとヴァッシュは首を縦に振り了承の意を伝える。



18 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 21:00:22 ID:xLJY2WcD
「転送の準備できました!…………あと、ヴァッシュさん。これ頼まれた物です」

そう言いエイミィが一つの箱をヴァッシュへと渡す。

「お、できたのか」

嬉しそうな表情で箱を受け取り、早速蓋を開けるヴァッシュ。
横にいたクロノには、箱の中にある真紅の『それ』が何なのか分からなかった。
ただ僅かに確認できた事が一つある。

――赤い色。

箱に敷き詰められた『それ』は真紅の色に染められていた。
数秒の間、『それ』を眺めたヴァッシュは、ゆっくりと取り出し、広げる。

広げられた『それ』を見てクロノも、それの正体を理解した。

――真紅の外套。

まるで自らの存在を誇示するかの様なド派手な色の外套が、ヴァッシュの手に握られていた。

「一応、耐魔法加工してありますけど……良いんですかこれで?
バリアジャケットだって用意できましたけど……」

エイミィの言葉に、外套に視線を残したままヴァッシュは首を振る。
その時のヴァッシュが、どこか感慨深げな表情をしていることにエイミィは気付いた。

「いや、これでいいんだ……何て言うか気分的にね」
「……そうですか。あ、それと義手の通信装置の具合はどうですか?」
「ん、感度良好。良い感じだよ」


そう言い真紅の外套を羽織ると、ヴァッシュは床に出現した緑色の魔法陣へと足を踏み入れた。
続いて、バリアジャケットを展開し、手にS2Uを持ったクロノが魔法陣へと入る。

「それじゃ、いきますよ!」

手元のキーボードへと指を置き、エイミィが声を上げる。

光の中、ヴァッシュは自分の鼓動が大きくなっていくのを感じていた。
それは世界を賭けた戦いに赴く緊張か。
魔導師という強大な力を持った敵と戦うことへの恐怖か。
はたまた、その両方か。
静かに巡る血液の音に耳を貸し、深く深く息を吸いこんだ。
そして、ヴァッシュは目を瞑る。







19 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 21:00:27 ID:asYsWP0G
支援

20 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 21:00:58 ID:UPgXrZ+s
支援するぜ!

21 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 21:01:07 ID:jnvRNMpH
支援

22 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 21:01:08 ID:xLJY2WcD
瞼の裏に思い浮かぶ、百年以上も前の思い出。


「綺麗でしょ?ゼラニウムっていうのよ。
地球ではもっと沢山の種類の花が咲いていてね。人にとって、とても身近なの」


その女性は、まだ何も知らない子供だった自分に一輪の紅い花を見せ、言った。


「赤い花はよく愛情に例えられるわ。
決して大輪じゃなくても自然強く咲く花なんてチョー好み」


楽しそうな笑みを浮かべる女性。


「でもね、ゼラニウムの紅い花には別の意味もあるの」


そこで言葉を切ると、女性は何かを思い出したかのように遠い目をして――


「その花言葉は……『決意』……」


――小さくそう呟いた。



女性の名はレム。
自分を育ててくれた女性。
もうこの世にはいない女性。





俺は戦う。
この世界を守る為に、平穏な毎日を手に入れる為に。
桃子さんの美味しい料理を食べ、士郎さんと酒を飲み合い、なのは達と騒ぐ。
そんな最高な毎日を送る為に――俺は戦う。

ヴァッシュは目を開ける。その目に迷いはない。
そんなヴァッシュへクロノが口を開く。

「準備は?」
「何時でも」
「よし、エイミィ、転送を頼む」



23 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 21:01:33 ID:jnvRNMpH
支援

24 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 21:02:04 ID:xLJY2WcD
一つ頷くと、エイミィは目の前のキーボードへと指を走らせ始める。
そのエイミィの指の動きに連動するかの様に、緑の光が輝きを増していく。
遂に光は二人を包み込み、戦場へと送っていった。



もし、砂の惑星の人々がその時のヴァッシュの姿を見れば口々に唱えただろう。

――『人間台風が現れた』、と。




鉄槌の騎士ヴィータは歯痒い思いで周りに浮かぶ魔導師達を睨んでいた。
今まで管理局の網を何とかかいくぐって蒐集を続けてきたが遂に見つかってしまった。
広域結界に加え、十人の武装局員による完全包囲。
決して良いとは言えない状況――だがピンチと言うにも程遠い。

「チャラいよ、こいつら。返り討ちだ!」

警戒を含めた、それでいて何処か余裕を感じさせる口調と共に、ヴィータがグラーフアイゼンを構える。
それに対し武装局員は距離を取るように円を広げた。
ヴィータの頭に浮かぶ僅かな違和感。
何故武器を構えただけで、こいつらは引く?
その疑問の答えに辿り着いたのは、褐色の肌の獣人、守護獣ザフィーラ。

「上だ!」

叫びと共にヴィータを庇う様に前へ出る。
上を向いたヴィータの目に映るは、一人の少年。
そして、その周囲に浮かぶ数え切れない程の青色の光剣。

「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!」

叫びと共に、切っ先が一斉に守護騎士達へと向き、加速、発射された。
防ぐも回避も不可能と思われる攻撃に対して動いたのはザフィーラ。
迫る数十の光剣へと、突き出した手から発現する白銀の盾。

光剣と盾がぶつかろうとした瞬間――

『Panzerhindernis』

――ヴィータの手の中の鉄槌が何かに反応した。

困惑する主を後目に鉄槌が、形成するは赤色の盾。
しかも、それは光剣が飛来する方向とは逆の真下に作られた。
不思議に思ったヴィータが下方に目をやる。

――そして、そこに居たのは見覚えのある一人の男。
ツンツンに尖った金髪。手に持つは銀色のリボルバー。
銃口はこちらを向いている。
ヴィータには、その姿がいつぞやの時――グラーフアイゼンを撃ち落とされた時と被って見える。
前回とは違い、真っ赤なロングコートを身にまとっているが見間違える筈がない。
脳裏に思い出されるのは、あの、限り無く敗北に近い勝利。
そして、捕縛寸前までに追い詰められた自分。



25 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 21:02:25 ID:UPgXrZ+s
支援!

26 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 21:03:25 ID:xLJY2WcD
苦い記憶にヴィータは強く歯を噛み締め、怒りに満ちた目で男を睨んだその瞬間、白銀の盾と光剣が激突。
爆煙が二人を包み、轟音が響き渡った。




「……どうだ?」

結界内にそびえ立つビルの屋上。
空に広がる爆煙を眺めながら、銃を構えた姿勢のままヴァッシュが呟く。
どうやら奇襲には気付かれてしまったらしいが、クロノの術なら充分に盾を貫く可能性がある。

――だが

煙が晴れていくにつれ、ヴァッシュの目が見開かれていく。

そこには平然と宙に浮かぶ、守護騎士達の姿。
クロノの放った数十の光剣は、僅か三本しか盾を貫かず、その三本ですら使い魔らしき男の強靭な筋肉により止められてしまっている。
後ろに居る少女に至っては傷一つ負っていない。
それどころか、敵意に満ち溢れた眼でこっちを見て、いや睨んで――。


瞬間、少女――ヴィータがヴァッシュへと突進した。

「おわっ!」

ぶつかり合った鉄槌と拳銃が、二人の間で火花を散らす。
一撃。
二撃。
三撃。
連続して振るわれる鉄槌を銃身を用い、丁寧にいなすヴァッシュ。
対するヴィータは、攻めても攻めても攻めきれない状況に苛立ちが募っていく。

「ちょっと落ち着かない?そんなカッカしてても良い事ないよ?」

攻撃を受けながらの軽口に、ヴィータの眉間の皺がさらに深くなる。

「なんなんだよ、お前は!」

遂には怒りに任せ、隙だらけのフルスイング。
これ幸いと大きく後ろに下がり距離を放すと、ヴァッシュは銃口をヴィータへと向ける。

「……少しは話を聞いてみるとか考えないのかい?この世はラブ・アンド・ピースだよ?」
「うっせー!」

向けられた銃口を睨みつけ、ヴィータはグラーフアイゼンを構える。
その様子からは、『引く』という意志は見受けられない。

フゥ、と肩を落とし、ヴァッシュがため息をつく。

『武装局員、配置終了!OK、クロノ君!』
『了解!』
『それから、今、現場に助っ人を転送したよ』

同時に義手を通じてエイミィからの通信がヴァッシュの頭の中に響く。
それはこちらの増援を知らせる内容。



27 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 21:05:18 ID:xLJY2WcD
「あー、あっち見てみて」
「はぁ?」

ヴァッシュが銃口をずらし、ヴィータの右手方にそびえるビルへと向ける。
つられる様にヴィータもそちらを見た。

そこには二人の少女が手のひらに宝石を乗せ、掲げている。
少女達が何かを叫ぶと同時に、淡い白色の光が包んだ。
光が晴れ、現れたのは服装が大きく変化した少女達。
そして、先ほどまで握っていた宝石の変わりに、一人は金と白とピンクを基調にした長杖、もう一人は黒を基調とした戦斧を手に持っている。

「私達はあなた達と戦いに来た訳じゃない、まずは話を聞かせて」
「――闇の書の完成を目指す理由を!」

二人の少女――高町なのはとフェイト・テスタロッサが言葉を紡ぐ。
それは戦いでは無く、話し合いを求める言葉。
だが、ヴィータは呆れた様な表情で口を開く。

「あのさ。ベルカのことわざにこーゆーのがあんだよ、『和平の使者なら槍は持たない』」

その言葉に顔見合わせ、首を捻るフェイトとなのは。
ヴィータの側にいるヴァッシュも不思議そうな表情を浮かべている。

「話し合いをしようってのに武器を持って来る奴が居るかバカ、って意味だよ、バーカ!」

そんな二人へ、手に持つ鉄槌を突きつけるヴィータ。
その言葉に、なのはの表情が固まる。

「い、いきなり有無を言わずに襲いかかってきた子がそれを言う!?」

ヴァッシュもなのはに同意する様に頷く。

「……それにそれはことわざではなく、小話のオチだ」
「うっせー!良いんだよ細かい事は!」

更に重なるザフィーラからの冷静のツッコミに、ヴィータが頬を膨らませる。
そのやり取りに、剣呑な空気が少し柔いだかと思われた――次の瞬間、遥か上空から轟音が響き渡った。

そして、轟音と共にビルへと降り立つは、守護騎士の将にして烈火の騎士。
鮮やかなピンク色のポニーテールを風にたなびかせ、シグナムが戦場へと舞い降りた。

「……話し合おうって気は?」

その眼に宿る戦闘への意志を読み取りながらも、ヴァッシュは問う。

「ない」

僅かな躊躇いすら見せずに烈火の騎士は返す。
その予想通りの返答にヴァッシュは、頭を抱えた。

「ユーノ君、クロノ君、ヴァッシュさん、手を出さないでね。私、あの子と1対1だから!」
『アルフ、私も……彼女と』
『あぁ、私も野郎にちょいっと話がある……』

抱えた頭に更に絶望的な言葉が響き渡る。

(なんでみんな、こんなに好戦的なの!?)



28 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 21:06:10 ID:xLJY2WcD
心の中で大きく溜め息をつき、ヴァッシュも顔を上げる。
空には四本の光の筋。
ピンク色と赤色、橙色と銀色が一緒に離れていく。
色からして、前者はなのはと赤服の少女、後者はアルフと使い魔の男か。
ヴァッシュは、その光の筋を心配そうな表情で眺めた後、ゆっくりと息を吸った。


「……僕も戦うよ」

そして、ヴァッシュは様々な感情を押し止め、痛いくらいの剣気を飛ばしている女性――シグナムの方へと、銃口を向けた。

「君もそれがお望みらしいしね」

飄々とした笑みでシグナムへと笑いかけるヴァッシュ。

「二対一になるけど良いのかい?」
「私は一向に構わない」

そこで言葉を切り、真っ直ぐにヴァッシュを睨み付けるシグナム。

「貴様の様な強者をヴィータやザフィーラに任せる訳にはいかないのでな」

戸惑った様な表情のフェイト、銃を構えるヴァッシュ、その二人を睨み烈火の騎士は静かに呟いた。

「フェイトは良いのかい?」
「…………はい、構いません」

僅かな迷いの後、フェイトが首を縦に振った。

「……すまんな、テスタロッサ」

望んでいた1対1の勝負が出来ない事への謝罪か。
申し訳なさそうにシグナムが頭を下げた。
だが、その表情も直ぐに引き締まり、騎士としての顔に戻る。

「行くぞ」

場の空気が一気に張り詰める。

淡々と剣を構えるは烈火の騎士、シグナム。
小さな願いを胸に戦斧を振り上げるは雷の魔導師、フェイト・テスタロッサ。
真紅の決意を羽織り銃を構えるは人間台風、ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
一陣の風が三人の間を吹き抜け――――三人は、同時に動いた。



29 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 21:06:27 ID:asYsWP0G
好戦的なみんなに支援


30 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 21:06:52 ID:xLJY2WcD


(ヴァッシュさん……)

桜色の光の中、高町なのはは、ビルの屋上に立ち真紅の外套に身を包んでいる男を見ていた。

あの人は強い。
クロノ君との模擬戦や訓練を見れば分かる。
魔導師の筈の自分やフェイトちゃんと拳銃一つで戦える程の実力を持っている。

――それでも何故か、胸に沸く不安を抑えられない。

(……大丈夫、ヴァッシュさんなら)

頭を振り、それらネガティブな思考を振り落とす。
気付けば赤服の子も移動を止め、こちらを睨んでいる。

そう、今は気を引き締めなければ。
前回の様な敗北はもう許されない。

「私が勝ったら話を聞かせてもらうよ、いいね!」

手に握った魔法の杖を振りかざし、魔法少女が大きく叫んだ。






こうして平穏は終焉を迎え、戦いの時が始まる。


魔法少女達の小さな願いは届くのか。


決意を纏った人間台風は自由への扉を開くことが出来るのか。



ここがいわゆる正念場。


戦いはまだ始まったばかり。


31 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/05/25(日) 21:08:57 ID:xLJY2WcD
投下終了。
ご支援感謝!
いやー両手に花ならぬ、両手に幼女のヴァッシュ……いいのかそれで……。
まぁ、トライガンがこんな平和な日々だけで終わる訳もなく……次回は三話ぶり、時間にして約三カ月ぶりにあの男が登場です。
いやーなのは達とヴァッシュには頑張って欲しいですな……。

最後に、この場を借りて絵板に支援絵を投下して下さったstylish氏へ。


>【静かに】高町家のシーンを内藤調で描いてみた【寄り添うよ】

何コレェェエエ!
最高すぎるだろ、JK!
もう、見た瞬間、嬉しすぎて思考が止まりましたよ、マジでw
実際、トライガンクロス書いといてあれですけど、この発想は無かった……。
今までの脳内では、ヴァッシュとなのは、全く違う絵柄で再生されてたけど、これのお陰でどっちも内藤風に再生される様になってしまったぜ!
あ、それとはやては…………頑張って生きて下さいw


>【私は】十年後を想像してみた【しつこく思い出す】

ちょっ、二枚目ぇえええ!!
夢か!?夢なのかこれは!!
嬉しいよ……嬉しすぎるよ、ママン。
もう涙で前が見えないですよ。

そして嬉しさと共に、なのはの肩幅、ウルフウッド風はやてに吹いてしまった、自分www
いや、本当、その発想力に脱帽です。

あ、フェイトさんは…………。
そう言えば今回もフェイトの見せ場潰してるし……お気に入りキャラな筈なんだけど、何でだろ。



二枚の支援絵、本当にありがとう御座いました!
stylish氏の作品も楽しみに待っております。
頑張って下さい!


32 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 21:09:40 ID:Vs5KdVeS
いやっほぅ! 待ってたぜ人間台風支援!

33 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 21:10:52 ID:57k4RZxc
待っておりました支援!!

34 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 21:10:57 ID:UPgXrZ+s
人間台風 支援!

35 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 21:12:36 ID:Vs5KdVeS
GJ!
ヴァッシュかっこいいよヴァッシュ。
今回はアニキの動向について全く語られていないから、次回がすごい愉しみ。
今後とも、頑張ってください!

36 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 21:15:25 ID:UPwPz/EE
GJ!!!!
買い物籠、おまwww
平和を謳歌するおとぼけヴァッシュと、戦いに臨む「人間台風」ヴァッシュの対比が素晴らしく、
キャラが生き生きと輝いて見えます。
とにかく何度でも言っちゃいますよGJッ!!

37 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 21:23:25 ID:UPgXrZ+s
GJ!
ヴァァアアアッシュww おま、買い物籠っておまw(おちつけ)
相変わらず女子供にはとことん弱い人間台風さんに凄い和みましたw
頑張れ、頑張れ、いつかカートの人と同じ苦しみを味わい続ける世界まで(まて)
そして、さりげない原作ネタとかがあって胸がドキュンとしましたw
TRIGAN氏はこういうピンポイントでレバーブローを叩き込んでくるから油断が出来ない!
戦いの時には凛々しくも、彼らしさを失わず。
次回から始まる本格的な対魔道師戦をいかにヴァッシュが切り抜けるのか。
そして、未だに動きを見せない兄貴との遭遇はどうなるのか凄い楽しみというかドキドキですw
今後の展開が楽しみな作品ではもう五指に入ってます!
次回も頑張ってください!
応援しています!!!


38 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 21:45:45 ID:UOQ2KEvd
リリカルTRIGUN氏GJ
ヴァッシュは女子供にはとことん弱いですね。

次回はあの男の登場ですか。
ヴァッシュは再開したらどうするんでしょう。

ヴァッシュはあの男がアースラを落とそうとしたら原作のように力を使って守るんですかね。

TRIGUN本編ででた名言?がどの程度この作品でみ出るのか楽しみにしています。

ところで、このヴァッシュは疲弊の黒髪化は少しでもしてきているんですか。
次回も楽しみにしています。

39 :一尉:2008/05/25(日) 21:59:41 ID:9n6PKYF5
ヴァッシュ支援たよ

40 :なの魂の人 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 22:10:59 ID:nTRCEy3O
えー、前回後書きで「次で決着」とか言ってましたが、容量がエラいことになりそうだったので
パート分けして投下しようかと思います。

22時45分頃から投下してもよろしいでしょうか?

41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:11:51 ID:UPgXrZ+s
支援しないわけがないw
っ、支援をしようと思っていたら既に投下は終わっている 支援

42 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:12:14 ID:/8lFu9ZI
OKでございやす。
これより全員支援の体制に入る。

43 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:13:56 ID:Vs5KdVeS
もっとだ……もっと踏み込んで来いっ!
そうして此方のフトコロに入ったらすぐさま支援を開始する!

44 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:15:07 ID:UPwPz/EE
支援するしかない!

45 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:36:05 ID:LHpnPuB5
待っていました。
支援!

46 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:40:42 ID:OEzHbufJ
この世はラブ・アンド・ピースだよ、か。
陳腐な言葉だがヴァッシュが言うと凄く重いな。

47 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 22:46:56 ID:nTRCEy3O
振動が艦を揺さぶり、とめどなく轟音が響き続ける。
必死に船体を支える操舵手とAIの苦労もお構いなしに、暴力的な揺れはアースラを襲い続けていた。

「次元震発生……! 震度、徐々に増加しています!」

「この速度で震度が増加していくと、次元断層の発生予測値まで、あと三十分足らずです!」

『あの庭園の駆動炉もジュエルシードと同系のロストロギアです!
 それを暴走覚悟で発動させて、足りない出力を補っているんです』

発令所のオペレーターが、そして観測室のエイミィが報告を行う。
次元断層の発生が意味するところはつまり、世界の崩壊である。
状況は既に予断が許されないところまで来ているということは、誰の目から見ても明らかだった。

「……始めから、片道の予定なのね」

火の手が上がり、外壁が脆くも崩れ去っていく時の庭園の姿を見やりながら、リンディは思考を巡らせる。
既にジュエルシードが発動してしまった今、プレシアを捕らえたところでこの次元震を抑えることは出来ないだろう。
逆に言えば、例えプレシアを逃してしまっても、次元震さえ押さえれば当面の危機は回避できる。
ならば、自分のすべきことは決まっている。

「……私も出ます。庭園内でディストーションシールドを展開して、次元震を食い止めます!」

敵陣への単騎突入。
無謀にしか見えない行為だが、彼女にはそれを成し遂げるだけの自信も実力もあった。
何より今この場にいる人間で、それが出来るのは自分しかいない。
凛とした態度で告げたリンディは、艦長席を後にした。



なの魂 〜第二十四幕 友達はなるものじゃない気付いたらなってるものだ 前編〜



重たい金属が地面を踏みしめる音が響く。
それと同時に、僅かに揺れる足元。
庭園へと到達したなのは達の目の前には、まるでロールプレイングゲームのダンジョンのような光景が広がっていた。
立ち並ぶ鎧、鎧、鎧。
大中小、様々な大きさの西洋の鎧――傀儡兵が、なのは達の行く手を阻んでいたのだ。
それらは各々得物は違う物の、その全てが手に武器を取り、なのは達を威圧するように身構えていた。

「……いっぱいいるね……」

「まだ入り口だ、中にはもっといるはずさ」

ユーノとクロノもそれぞれ身構え、戦闘に備える。
だがなのはだけは、妙な汗を掻きながら口元に指を当て、ぽつりと呟いた。

「ガ……ガ○ダム?」

ロボットと見れば何でもかんでも○ンダムにしてしまうのは、最近の若者の悪いクセである。
なのはにしてみれば、連邦の白い悪魔が揃い踏みというこの状況は、恐怖以外の何物でもないだろう。多分。


48 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:47:04 ID:UPgXrZ+s
支援を開始する。
アームストロングサイクロンアームストロング支援砲用意!

49 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:47:46 ID:GqDM7Fea
支援だコラアアアアアアアアアアアアアアア!!!

50 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:48:18 ID:Vs5KdVeS
支援だ、支援するしかない!

51 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 22:48:59 ID:nTRCEy3O
「クロノ君、コレって……」

恐る恐る聞いてみる。
返ってきた答えは、あまりにもあっさりしたものだった。

「近くの相手を攻撃するだけの、ただの機械だよ」

「そっか……なら安心だ」

はたしてこの安心というのは、相手が白い悪魔でないということに対する安堵なのか、
それとも中の人などいないということに対してなのか。
そのことはなのは当人にしか分からない。
ともかく、クロノの答えに安心したなのははデバイスを構え、砲撃の準備に入る。
だが、クロノがそれを手で制した。

「この程度の相手に無駄弾は必要ないよ」

「え……」

クロノが愛用のデバイス――S2Uを敵へ向け、そして魔力を集中させる。
デバイスの先端へ蒼い魔力光が集まってゆき、拳二つ分ほどの光球を生成する。

『Stinger Snipe.』

音声と同時に、攻撃が放たれる。
蒼い光の矢となった魔力は、加速しながら手近な傀儡兵へと向かう。
ゆうに数十メートルはあったはずの距離が、一気に縮まり――着弾。
金属の軋む音と共に、傀儡兵が爆発を起こした。
しかし、それだけでは終わらない。
矢は傀儡兵を突きぬけ、次なる獲物に喰らいつく。
一機、二機、三機。
六機目の傀儡兵を撃ち抜いたところで、矢は急激な上昇を始めた。
そして虚空で螺旋を描き、その場に停滞する。

「スナイプ……ショット!」

宣言と共に、矢が再加速を行う。
目標は最奥に位置する、巨大な斧を手にした大型の傀儡兵。
寸分違わぬ射撃が、傀儡兵の脳天に直撃した。
だが、大きさ相応の装甲がその攻撃を阻む。
派手な轟音と煙が発生したものの、傀儡兵は無傷だった。
目にあたる部分を不気味に光らせ、両手にした斧をクロノ目掛けて振り下ろす。
が、その場に既に彼の姿は無かった。
巨斧が床を砕く音に混じり、金属を叩くような音が傀儡兵の首筋から聞こえた。

『Break Impulse.』

瞬間、傀儡兵の身体がバラバラに砕け散った。
目標の固有振動数を割り出し、対応した振動エネルギーを送り込むことで目標を破砕する接近戦用魔法――ブレイクインパルス。
一瞬の隙を突いて傀儡兵の背後に回りこんだクロノが、それを放ったのだ。


52 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:49:06 ID:UPgXrZ+s
若い女性はなんでもかんでもガンダム、おばはんはアトム 支援!

53 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:49:14 ID:UPwPz/EE
支援

54 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:49:29 ID:QnDh/reD
総員、支援体制に入れーっ!

55 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:49:30 ID:GqDM7Fea
儚く強くまっすぐ伸びた支援

56 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 22:50:18 ID:nTRCEy3O
「ぼーっとしてないで、行くよ!」

立ち昇る砂煙と瓦礫の山の中からクロノが叫ぶ。
寸分の無駄も無い鮮やかな戦いぶりに見惚れていたなのはは、彼のその言葉で我に返る。
そうだ、まだ入り口も抜けてないじゃないか。
こんな所で立ち止まってる場合じゃない。
残骸の山を避け、三人は庭園の中へと入っていった。



庭園内部は、もはや建造物とは言えない位に酷い有様だった。
壁は落ち、天井も抜け、そして床が砕け、薄気味の悪い配色の空間――次元空間が、眼下に広がっていた。
紫を基調としたマーブル模様の中に、まるで獲物が来るのを待ち構えているかのように、黒い空間がぽっかりと口を開けている。

「その穴……黒い空間がある場所は気を付けて」

クロノが注意を促すが、要領を得ないなのはは首を傾げる。
そんな彼女に対し、クロノに代わってユーノが説明を行う。

「虚数空間……あらゆる魔法が一切発動しなくなる空間なんだ」

あらゆる魔法ということは、飛行魔法も例外ではないだろう。
つまり、あの空間へ落ちた場合、脱出は不可能になるということだ。
うっかり落っこちて行方不明に、などということになったら、笑い話にもならない。

「き、気を付ける!」

肝を冷やし、裏返った声で返答をして、なのはは顔を上げる。
正面には巨大な門。
いつの間にか、結構な距離を走っていたらしい。
間髪入れずに、クロノがその門を射撃魔法で吹き飛ばす。
爆煙に紛れて内部へ侵入。
そこでなのは達を待ち受けていたのは、先程よりは幾分か小型の傀儡兵の大群であった。

(……こんなところで時間を食っているわけには……!)

クロノは部屋を見渡す。
どこもかしこも鎧、鎧、鎧。
先程と全く同じ状況だ。

「……ここから二手に分かれる! 君達は最上階にある駆動炉の封印を!」

「クロノ君は……?」

「プレシアの元へ行く。それが僕の仕事だからね」

デバイスを構え、先端に魔力を集中。
砲撃の姿勢をとる。

「今道を作るから、そしたら!」

「うん……!」

視界の隅に映った階段に目配せをし、クロノは言う。
彼の考えはきちんとなのはに伝わったらしく、彼女はユーノの手を引いて飛行の準備に入る。


57 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:51:25 ID:UPgXrZ+s
赤い色に角を着ければ何でも三倍だ! 支援

58 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:51:41 ID:GqDM7Fea
手と手をつなぐまっすぐ伸びた支援

59 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:51:56 ID:/8lFu9ZI
うん…?銀さんたちはまだアースラかな?支援

60 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:51:56 ID:UPwPz/EE
僕の支援が騒ぐ

61 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 22:52:09 ID:nTRCEy3O
『Blaze Cannon.』

瞬間、強烈な蒼い閃光が迸る。
床を砕き、敵を砕き、そして向かいの壁をも砕き、クロノは言葉通りに一本の"道"を作り上げた。
階段までのルートに一切の敵が存在しないことを確認すると、なのはは急激に速度を上げて飛翔する。

「クロノくん! 気をつけてね!」

ユーノを連れ、一直線に階段へと向かうなのは。
部屋を後にする直前、ちらりと後ろを振り向いた彼女の目に映ったのは、
こちらを見て不敵な笑みを浮かべるクロノの姿だった。



アースラ艦内のとある個室で、アルフはなのは達の様子が映されたモニターをじっと見つめていた。
どうやら、二手に分かれて行動をするようだ。
傀儡兵の大群に立ち向かうクロノと、その隙間を縫って最上階へと向かうなのはとユーノ。
クロノはおそらく大丈夫だろう。
仮にも執務官だ。あの程度の人形に遅れはとらないだろう。
だが、なのは達は……。
アルフの脳裏に、今までのなのは達の姿が鮮明に照らし出される。
いつも危なっかしい戦い方ばかりして、毎度のようにフェイトに追い詰められそうになって、
そしていつも、あの妙な三人組に助けられて。
今だってそうだ。
飛行型の傀儡兵に追いかけられ、必死に応戦しながら先を急ぐなのはの姿は、危なっかしくてとても見ていられなかった。
アルフは傍のベッドに腰掛け、その上でまどろむフェイトの頭を、そっと撫ぜた。

「……あの子達が心配だから、アタシもちょっと手伝ってくるね。……すぐ帰って来るよ」

返事は返ってこない。
眠っているのだから、当然といえば当然だ。
フェイトを起こさないようにそっと立ち上がり、アルフは部屋の扉の前へ立つ。

「そんで、全部終わったら……ゆっくりでいいから、アタシの大好きな、ホントのフェイトに戻ってね……」

これから自分が為そうとしていることが何を意味するのか、理解はしている。
なのは達に手を貸すということは、プレシアの逮捕の手助けをするということだ。
あんな女でも、フェイトにとっては大事な母親だ。
それを捕まえるということは、フェイトに対する裏切りでもある。
でも、そうすればきっと、フェイトを縛るものは何も無くなる。
フェイトも、自分の意思で生きていくことが出来る。

「これからは……フェイトの時間は、全部フェイトが自由に使っていいんだから」

そのためなら、いくらでも泥を被っても構わない。
決意を胸に秘め、アルフは部屋を後にした。



不意に名前を呼ばれた気がして、フェイトは目を覚ました。
一体どれだけの時間、眠っていたのだろうか。
辺りを見回してみるが、時間を推し量れそうな物は何一つ見当たらない。
代わりに目に入ったのは、壁に表示される一つの映像。
なのは、そしてユーノと共に、傀儡兵達を打ち倒すアルフの姿だった。
彼女らが為さんとしていることは、容易に想像がついた。
……このまま放っておけば、じきに母は逮捕されてしまうだろう。


62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:52:57 ID:GqDM7Fea
完成度高い話だなオイ

63 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:53:10 ID:UPgXrZ+s
空が落ちるってよくいうけれど、落ちてるのは自分だったりする 支援

64 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 22:53:59 ID:nTRCEy3O
(……母さん……)

あの時、発令所で聞いた母の言葉が脳裏に蘇る。

――あなたを創り出してから、ずっとね……私はあなたが……大嫌いだったのよ!!

結局、母は最後まで自分に対して微笑んではくれなかった。
どんなに足りないといわれても、どんなに酷いことをされても、それでも生きていたいと思い続けることが出来たのは、
ひとえに母に笑ってもらいたいという一心からであった。
そして、その思いは今も変わらない。
あれだけはっきりと捨てられた今でも、自分はまだ母にすがりついている。
掴むことの出来ない虚像を、未練がましく追い続けている。
惨めな気分だった。
いっそ捨ててしまえば楽になるのかもしれないが、そんなことは出来そうにも無い。
フェイトは項垂れ、自分の手元に目を落とす。

「よお……目ェ覚めたか」

唐突に扉の開く音と共に、男の声が聞こえた。
顔を上げ、声のした方を向こうとする。
だがそれよりも先に、フェイトの手元に長方形の何かが飛んできた。
ポフッ、という音と共にベッドの上に落ちたそれは、『いちご牛乳』と表面に印刷された紙パック飲料だった。

「何はなくともカルシウムだ。カルシウムさえ取っときゃ全てうまくいくんだよ」

再び顔を上げ、扉の方へ視線をやる。
そこに立っていたのは、あの三人――新八と、神楽と、そして銀時だった。

「受験戦争、親との確執、気になるあの子。とりあえずカルシウム取っときゃ全てうまく……」

「問題だらけの人が何言ってんですか」

パックのいちご牛乳を片手に熱弁を始める銀時を、新八がジト目でいなす。
銀時は特に気分を害した様子も無く、一息にいちご牛乳を飲み干すとパックをグシャリと握りつぶし、ゴミ箱へと放り投げた。
壁に背をもたれかけさせ、ポリポリと頭を掻きながら銀時は言う。

「……イマイチ事情が飲めねェし、オメーの母ちゃんが何考えてんのかも、よく分からねーけどよ……」

フェイトではなく、その隣に浮かぶモニターを眺めながら、彼は呟いた。

「……お前は、これでいいのか?」

質問の意図が分からず、フェイトはぼぉっと銀時の顔を見つめる。
銀時は呆れた様子でため息をつきながら、フェイトの傍まで歩み寄って、そして再び問いかける。

「このまま終わっちまっていいのかって聞いてんだよ」

ようやく意味を理解し、しかしフェイトはそのまま押し黙る。
終わっていいはずがない。
終わって欲しくない。
だが、一体自分に何が出来ようか。
面と向かって母に捨てられた自分が、今更自分が何を言えるというのか。

「……でも、母さんは……」

――私を捨てた。
その言葉が出る前に、銀時が先に言葉を紡ぎ出す。
憮然として、フェイトの言葉を遮るように紡ぎ出す。


65 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:54:52 ID:LHpnPuB5
支援!

66 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:54:59 ID:GqDM7Fea
親子が会う理由なんざツラが見たい
それだけで十分じゃねーのかよ支援

67 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 22:55:29 ID:nTRCEy3O
「事あるごとに母ちゃん母ちゃん。オメーは母ちゃんの操り人形かってんだよ」

そう言って銀時はフェイトの頭を小突き……そっと、彼女の頭を撫ぜた。
小さく声を漏らし、フェイトはその場に俯く。
――人形。
その言葉はフェイトの心の奥に突き刺さり、無慈悲に抉る。
だが続けて聞こえた言葉は、その全てを否定するものだった。

「違うだろーがよ。お前はお前だ。やりてーようにやりゃぁいい」

その言葉にはっとし、フェイトは顔を上げようとする。
しかし、銀時が急に乱暴にわしゃわしゃと髪の毛を掻き乱してきたせいで、それは叶わなかった。
くすぐったそうな顔で俯きながら、フェイトは彼の言葉の意味を噛み締める。
――人形、身代わり。
母の言ったそれらの言葉を、真っ向から否定するその言葉。
――お前はお前だ。
"アリシア・テスタロッサの身代わり"としてではなく、"フェイト・テスタロッサ"として、自分のことを認めてくれた言葉。
純粋に嬉しかった。しかし、同時に不安も感じた。
この人にとっては、自分は自分なのかもしれない。
だが母にしてみれば、自分はやはりただの人形に過ぎない。
そして自分自身も、そう思っている。
人形が何を言ったところで、母に伝わるわけが……。
そこまで思ったところで、不意に頭に触れていた感触が消えた。

「人が動くのに、理屈なんざ必要ねーさ。そこに護りてェもんがあるなら、護りにいきゃいい」

全てを見透かしたような、そんな言葉。
――護りたいモノ。
私が本当に護りたかったモノは、一体なんだったのだろうか。
母の夢? 母の幸せ? 母の笑顔?
……違う、そんなものじゃない。
私が本当に護りたかったのは……"絆"。
認めてもらいたかった。
傍に居て欲しかった。
唯一の拠り所である、親子の絆を護りたかった。
でも、認めたくなかった。
そうやって必死になって護らなければならないほど、自分と母との間にある絆が脆いものであるという事を認めたくなかった。
だからこそ、私は自分の心を偽った。
夢のため、幸せのため、笑顔のため。
そうやって一方的に母を見るだけで、母と向かい合ったことは、一度たりともなかった。
――そこに護りてェもんがあるなら、護りにいきゃいい。
今からでも、間に合うだろうか。
言葉は交わせなくとも、今からでも母と向き合うことは出来るだろうか。
……今からでも、絆を取り戻すことは出来るだろうか。


68 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:56:04 ID:UPwPz/EE
シリアスモードktkr支援!

69 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:56:56 ID:UPgXrZ+s
親子会うのに金はいらんぜよ 支援!

70 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:57:01 ID:GqDM7Fea
心の殻被っていようがなんだろうが
殻ごと引きずって行かせてもらう支援

71 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 22:57:09 ID:nTRCEy3O
「……母ちゃんは好きか?」

不意に聞こえた問いかけに対し、フェイトは自然に首を縦に振っていた。
頬を涙が流れ、シーツに小さな染みを作る。

「友達の悲しむ姿なんて、見てて気分がいいモンじゃないアル」

扉の方から聞こえた声に、フェイトは泣き顔を隠そうともせず顔を上げた。
視線の先には、番傘を肩に担ぎ、こちらへ背を向ける神楽の姿。

「オメーが悲しむと、なのはも悲しむネ。だから、今日だけは肩持ってやるヨ」

一切の表情を見せず、彼女はそうとだけ言い残して部屋を去っていった。

――どうして……。

「僕達はねェ……正義の味方でも、管理局の味方でもない」

後に残った新八もまた、神楽と同じようにこちらへ背を向けたまま、静かに告げる。

「君の味方だ」

腰の木刀を差し直し、彼もまた、こちらを向くことなく部屋を後にした。

――どうしてこの人達は、私のことを……。

「……行くか」

着流した着物を翻し、部屋の扉へと銀時は向かう。
分からない。理解できない。
彼らの行動の意図を計り兼ね、フェイトはただその場で銀時の後姿を眺めているだけだった。

「好きなんだろ。母ちゃんのこと」

まるでこちらの姿が見えているかのように、銀時が言う。
一切の逡巡もなくフェイトは頷いた。
先程よりも、ずっと力強く。

「だったら……取り戻しに行こーや。オメーの大好きな母ちゃんをよ」

振り向き、こちらを見やる銀時の顔には、微かに笑みが浮かんでいた。
泥だらけになって逆上がりの練習をする子供を、遠くから見守る父親のような。
そんな、優しい笑みだった。

「操り人形は今日で終いだ。……始めようじゃねーか。本当の自分をよ」



誰も居なくなった部屋の中、フェイトは呆然と開け放たれた扉を眺めていた。
静寂だけが辺りを支配し、身動ぎするたびに衣擦れの音が部屋に響く。

――操り人形は今日で終いだ。……始めようじゃねーか。本当の自分をよ。

脳裏で彼の言葉を何度も反芻する。
確かに、自分はただの操り人形だったのかもしれない。
自分の本当の意思を隠し、母の言うがままに動き、そして自身の意思で動いているのだと、そう自分に言い聞かせていた。
結局、自分の意思など、どこにも無かった。

……本当の自分など、どこにも存在していなかった。


72 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:58:16 ID:GqDM7Fea
短く蒼く駆けてく支援

73 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 22:58:40 ID:nTRCEy3O
「……私……まだ、始まってもいなかったんだ……」

視界の片隅で、何かが光った。
机の上に無造作に置かれていた愛機だった。
手に取り、そして慈しむように両の手で包み込む。
長年連れ添った相棒は、大破しヒビだらけになった惨めな姿と成り果てていた。

「……今からでも、間に合うかな……今からでも……始められるのかな……」

誰に問いかけるでもなく、フェイトは呟く。
返事など返ってくるはずも無い。
……そう、思っていた。

『……Get Set.』

不意に聞こえた言葉に驚き、閉じていた手を開く。
機能を停止していたはずのバルディッシュが再び起動を初め、そしてあろうことか、
自己修復すらも試みていたのだ。
淡い光を放ち、じっと主人の言葉を待ち続ける相棒を見、フェイトは確信する。
――この子はまだ、諦めていない。

「……そうだよね。バルディッシュも、ずっと私の傍にいてくれたんだもんね……。
 お前も……このまま終わるのなんて、嫌だよね……」

バルディッシュを握り締め、フェイトは呟く。
終わりたくない。終わらせたくない。
まだ何も始まっていないのに終わるなんて……そんなのは、嫌だ。

『Recovery Complete.』

返事代わりに聞こえてきた言葉通り、手の中の愛機は元の姿を取り戻していた。
まるで新品のように輝きを放つバルディッシュは、無言でフェイトに決断を迫っているようだった
それに応えるように、フェイトは小さく頷く。

「……上手く出来るかわからないけど、一緒に頑張ろう」

『Yes Sir.』

金色の光が、フェイトを包む。
漆黒の法衣が、戦斧が、彼女を彩る。

――私達の全ては、まだ始まってもいない。

――だから……本当の自分を始めるために。

――今までの自分を……終わらせよう。



天井が見えなくなるほど高大な部屋に、爆発音が断続的に響き渡る。
襲い来る傀儡兵達を、片っ端から撃つ、打つ、討つ。
十何機目かになる傀儡兵を殴り砕いたところで、アルフがうんざりとした様子で呟いた。

「……クッ! 数が多い!」

「だけならいいんだけど……!」


74 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:58:49 ID:u/4Ndhwz
新八「『V』っていいですよね」支援

75 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 22:59:19 ID:GqDM7Fea
死にかけたババアのツラ一発ぶん殴りにいくぞ支援

76 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 22:59:40 ID:nTRCEy3O
円形の部屋に沿うように巡らされた螺旋階段の上から敵を撃ち落すなのはは、若干の焦燥に駆られていた。
数が多いだけでなく、個々の戦闘力も高い。
このままこの場所に居続ければ、間違いなくジリ貧だろう。
なんとかして早急に敵を倒し、先へ進まなければ。

「何とかしないと……!」

吹き抜けの中心で傀儡兵の足止めをしていたユーノが、なのはへ視線をやる。
一瞬の隙。
さらには、蓄積していた疲労が、彼の魔法の精度を鈍らせた。
鎖状のバインドで動きを封じられていた傀儡兵の一機が、僅かな隙を突いてバインドを破ったのだ。
即座に再捕縛を試みるユーノだが、間に合わない。
枷を失った破壊者は、己が得物を振りかざしなのはに襲い掛かる。
死角からの攻撃に虚を突かれ、なのはは呆然と眼前に迫る白刃を見る。

「ッ!? なのはーーーー!」

ユーノの叫びが木霊した、まさにその瞬間だ。

『Thunder Rage. Get Set.』

電子音声。機械の駆動音。
遥か上空で起こった一瞬の明滅の直後、突如として複数の雷が室内に降り注いだ。
荒れ狂う雷は部屋を縦横無尽に駆け、一切の破壊者たちを喰らい尽くす。

「……フェイト?」

上空を仰ぎ、アルフが呟く。
眩く輝く、金色の魔法陣。
その中心で杖を構える、漆黒の魔導師。
僅かにスパークを纏いながら地面へ降り立つその人物は……見紛うはずも無い。
紛れも無く、フェイト・テスタロッサであった。
思わぬ援軍の登場に、なのはもアルフも顔を綻ばせる。
一方のフェイトは、なのはのすぐ傍に降り立つも、すぐにばつが悪そうに顔を背けてしまう。
瞬間、地響きと共に壁面が音を立てて砕けた。
砂煙と共に現れたのは、なのは達の十倍ほどはありそうな巨体の傀儡兵だった。
なのはとフェイトはすぐさまデバイスを構え直し、敵と対峙する。

「……大型だ。バリアが厚い」

「うん……それにあの背中の……」

傀儡兵の背中を見やる。
背部にマウントされた、二門の大型砲。
大きさ相応の威力だとすれば、直撃すれば間違いなくただでは済まないだろう。
だが、フェイトは物怖じ一つせず、目の前を見据える。

「だけど……二人でなら……!」

――二人で。
その言葉の意味するところを理解し、なのはは嬉しそうに頷く。


77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:00:15 ID:GqDM7Fea
神シーン支援

78 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 23:01:10 ID:nTRCEy3O
「いくよ、バルディッシュ」

『Get Set.』

「こっちもだよ、レイジングハート!」

『Stanby Ready.』

まばゆい金色の光が迸り、美麗な桜花色の光が二人を包む。
二人から発せられる余剰魔力が部屋を満たす。
空気が揺れ、瓦礫が舞い上がり、そして荒々しく風が舞う。

「サンダー……!」

「ディバイン……!」

二人のデバイスの先端に生み出される、己の魔力光と同じ色の光球。
それらはその場で炸裂してしまうのではないかと思わせる勢いで膨張していき、
数秒と立たないうちにバスケットボール程の大きさにまで膨れ上がった。
目配せをし、タイミングを合わせて同時にデバイスを掲げるなのは、そしてフェイト。
迷いも、わだかまりも、全てを吹き飛ばすかのように二人はデバイスを振り下ろした。

『……バスタァァァァァ!!』

二つの光柱が重なり合うように傀儡兵にぶつかる。
発光。
二本の砲撃を受け止めた魔力障壁が、波打つように光を放った。
だが、それも一瞬のことだった。
超高出力の砲撃を前に、障壁は悲鳴を上げて砕け、そして傀儡兵の装甲はいとも容易く貫かれる。
だが砲撃の勢いは依然として止まらない。
壁を砕き、床を撃ち抜き、派手な轟音と振動が部屋を満たす。
爆音と共に濃密な煙が立ち昇り、視界を遮った。



ようやく光の奔流が収まり、薄くなってきた煙の中に広がる光景を見て、なのはは心の中で反省をした。
薄煙の中心に穿たれた、常識外れの大穴。
階下どころか、庭園を真っ直ぐにブチ抜いた穴の連続は、彼女達の砲撃の荒々しさを雄弁と物語っていた。
少しやりすぎたかな、と思いながら、ふと隣を見やると、こちらの様子を窺っていたらしいフェイトと目が合ってしまった。
目一杯の笑みを投げかけると、フェイトは恥ずかしそうになのはから顔を背ける。
その様子が可笑しくて、つい小さく声を出して笑ってしまう。
それに気付いたのか、フェイトが抗議するかのような視線をこちらへ向けてきた。
まさにその時だ。
突如として二人に巨大な影が覆いかぶさった。
はっとし、後ろを振り向く。
いつの間に現れたのか、目の前では巨大な斧を掲げた傀儡兵がこちらを見据えていた。

「ふえぇ!? さ、さすがにこれはKYって奴なんじゃないでしょうかぁ!?」

完全に油断をしていたなのはは、狼狽をあらわにあとずさる。
だが心無き機械に、彼女の声が届くはずも無い。
無慈悲な凶刃が、彼女らの頭上に振り下ろされ……。
衝突音。
脇から凄まじい勢いで飛んできた別の傀儡兵が、眼前の巨人にぶつかった。
頭はひしゃげ、装甲が凹み、二機はもつれ合うように壁に衝突し、爆発する。
唐突に目の前で起こった光景に唖然とするなのは。


79 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:01:39 ID:GqDM7Fea
傀儡兵空気嫁支援

80 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:01:44 ID:IsN7LlfN
銀魂の家族が絡んだ時の感動度とシリアスは異常
支援

81 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 23:02:37 ID:nTRCEy3O
「どーもォ! 万事屋銀ちゃんは全世界の頑張る魔法少女を応援してまーす!」

そんな彼女の耳に飛び込んできたのは、ひどく聞き覚えのある声。
驚きと期待の入り混じった眼差しで、なのはは声のした方を見やる。
薄く舞い上がる砂煙の向こう。
そこに、彼らはいた。
真白の着物と藍の袴を纏い、手にした木刀を腰溜めに構える青年――志村新八。
歳に不相応な艶やかなチャイナドレスを着込み、番傘を広げ優美に佇む少女――神楽。
そして……。

「ぎ……銀さん!」

白銀の髪と純白の着物をなびかせ、木刀を肩に担ぎながら不敵な笑みを見せる男――坂田銀時。

「随分派手に暴れたじゃねーか。……ったく、末恐ろしいガキ共だぜ」

なのはの傍まで歩み寄りながら、穿たれた大穴を見て銀時は呟き、そして身構える。
同時に彼らの周辺の空間から、大量に光が漏れ出す。
地面に、中空に、壁に。
所構わず、大量の魔法陣が展開された。
そして個々の陣の中心から傀儡兵が飛び出し、銀時達を取り囲む。
七人の魔導師と侍は互いに背中を預け、眼前の敵たちに対し身構える。

「オイ。俺達が引きつけといてやるから、お前ら先に行け」

なのはの肩を小突き、銀時は先の通路を顎で指す。
彼の両脇では既に新八と神楽が、敵に対して飛び掛らんばかりの眼光を浴びせていた。

「でも、銀さん……!」

三人を置いていくことなんて出来ない。
そう言葉を続けようとするなのはに対し、銀時は意味深に笑みを投げかけた。

「前にも言っただろーが。……ガキが気ィ廻すなんざ、十年早ェんだよ」



「これはまた……常識外れだね……」

観測室からなのは達の様子をモニターしていたエイミィは、愕然とした様子で声を漏らした。
高出力の魔力により発せられた砲撃と、それにより庭園下部に穿たれた大穴。
これらを見るだけで、なのは達が規格外の魔力を持っているということが分かる。
データ上ではAAAランク相当となっていたが、きちんと訓練を受ければ、近いうちにクロノすら追い越してしまうかもしれない。
そんな事を考えていると、スピーカーを通じて、発令所から切迫した声が聞こえてきた。

『魔力反応多数! ……マズい! なのはちゃん達、完全に囲まれて……』

言葉が途切れる。
続いて聞こえてくる爆発音。

「な、なになに!? 何が起こったの!?」

目の前の画面では、なのは達が居る辺りから多大な砂煙が巻き上がる様子が映し出されていた。
庭園の壁面が音を立てて吹き飛び、瓦礫の山が次元空間に落下していく。
いや、瓦礫だけではなかった。
粉々になった建材に紛れて落下する鎧兜の数々。
それは紛れも無く、なのは達を取り囲んでいた傀儡兵"だった"ものであった。




82 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:02:45 ID:LHpnPuB5
支援!

83 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:02:51 ID:UPgXrZ+s
KY自重www 支援!

84 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:03:12 ID:GqDM7Fea
スーパー銀さんタイム支援

85 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 23:03:49 ID:nTRCEy3O
「はィィィィィ!! 次ィィィィィ!!」

怒鳴り声と共に、銀時の手にした木刀が振るわれる。
渾身の力を込めたその一撃は傀儡兵の脇腹を正確無比に捕らえた。
勢いを付けて蹴り飛ばされたサッカーボールのように傀儡兵の身体は宙を舞い、射線上に並ぶ他の傀儡兵を巻き込んで吹き飛ぶ。
その勢いは留まるところを知らない。
縺れ合った物言わぬ鎧達は、壁をぶち抜き、バラバラに砕け、一瞬にして鉄屑と化す。
銀時と程離れた場所では、新八が比較的小型な傀儡兵相手に奮戦している。
とは言うものの、銀時達と比べると、さほどの力を持たない彼には少々荷が重かったようだ。
すぐに劣勢に追い込まれ、壁際まで追い詰められてしまう。
対峙する傀儡兵は、長剣を握った手を掲げ――。
その腕が、音と共に吹き飛んだ。
宙を舞う腕を見送る傀儡兵の眼前に、自身の腕を吹き飛ばした張本人――神楽が躍り出る。
傀儡兵は残った腕で神楽に殴りかかる。
床が割れる。
金属を叩く音。
床にめり込んだ拳の上で、神楽が不敵に笑う。
振り払おうと、傀儡兵が腕を振るう。
だが、既に拳の上に神楽の姿は無い。
再び金属を叩く音。
続いて、鉄板のひしゃげる様な音が傀儡兵の頭上から発せられた。
神楽が傀儡兵の脳天に番傘を突き刺し、そして――。
爆音。
内部から強烈な砲撃を叩き込まれ、甲冑を模した自動人形は真っ二つに割れた。

「で、でたらめだけど……」

「強い……」

銀時達の大立ち回りを、呆けた表情で眺めていたアルフとフェイトは呟く。

「……行こう、フェイトちゃん!」

その二人の手を引き、なのははユーノと共に通路へ駆ける。
背後から聞こえる剣戟の音に何度か身を竦めるが、彼女が後ろを振り向くことは、決してなかった



床が抜ける。天井が崩れる。
崩壊までのカウントダウンを開始した庭園内を、なのは達は疾走する。

「な、なのは! 本当に大丈夫なの!?」

「何が!?」

息を切らしながらユーノが問いかける。

「銀時さんだよ! いくらなんでも、あの数は……」

圧倒的な物量差。
先程まで自分達が戦っていた時の倍以上の数の敵を相手にしては、さしもの彼らでも苦戦をするはずだ。
だが、なのはは首を横に振り、

「大丈夫! 銀さん達は絶対戻ってくるよ!」

そう言って、笑ってみせた。
絶対的な信頼を寄せて、確かな確信を持って、彼女は声を大にして言う。


86 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:04:26 ID:GqDM7Fea
勇者よりも魔王よりも強い侍支援

87 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:05:05 ID:UPgXrZ+s
たまに人間やめるぜ 銀さんは! 支援!!

88 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 23:05:19 ID:nTRCEy3O
「だって、銀さん達は……侍だから!」

『あああああ!!!』

直後に聞こえてくる壮絶な絶叫。
何事かと四人は一斉に後ろを振り向く。
彼女らの視界には、死に物狂いの形相で、こちらへ猛然と突っ込んでくる万事屋の姿が映っていた。

「ホントに戻ってきた!?」

「キツかったんだ! 思ったよりキツかったんだ!!」

あんぐりと口を開けるアルフに対し、必死に訴えかける銀時。
彼の後ろで散発的に発光が起こる。
続けて巻き起こる爆発音。
遥か後方から銀時達に追いすがる、傀儡兵の大群から発せられた魔力弾が
銀時達の背後の床を撃ち砕いた。

「ちょっとしっかりしてくださいよ! まだ五十行も持ってないじゃないですかっ!」

「うるせェェェ! 五十行も文章書くのは意外と大変なんだぞ!」

呆れ返った様子で傀儡兵の集団に砲撃を叩き込み、なのははぼやく。
少女相手に必死に弁明を試みる銀時の姿は、先程まで無双を演じていた豪傑とは思えないくらいに情けない。
B級のアクション映画のように、派手な爆発を背景になのは達は逃走を続ける。
そんな彼女達の目に飛び込んできたのは、箱型の鉄製の巨大な機械。

「あそこのエレベーターから、駆動炉へ向かえる」

それを指差し、フェイトが言う。
すぐさまエレベーターの方へ進路を向けるなのは達だが、フェイトとアルフは彼女らについていこうとせず、
そのまま直進を続ける。
立ち止まり、なのはが問いかける。

「……フェイトちゃんは、お母さんのところに?」

「うん……」

小さく頷くフェイトの表情からは、言いようの無い不安を募らせているということが
手に取るように分かる。
なのはは少しの間押し黙り、そして遠慮がちに、

「……私、その……上手く言えないけど……がんばって……」

そう言って、微笑みかける。

「……ありがとう」

なのはの言葉に多少気を楽にしたのか、フェイトも凝り固まった表情を僅かに緩めた。
エレベーターの方から、なのはを呼ぶ声が聞こえる。
応答代わりに、迫る敵の集団に向けて砲撃を一発。
フェイトに目配せをし、なのははエレベーターへ向かって走り出す。
手にした愛機を握りなおし、フェイトもまたアルフを伴って通路の奥へと消えていった。

89 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:06:00 ID:GqDM7Fea
そういえば定春ハブられてね支援

90 :なの魂の人 ◆.ocPz86dpI :2008/05/25(日) 23:07:31 ID:nTRCEy3O
以上で前半戦終了です
続きはまた後日、ということで

やはり庭園突入〜エピローグを一話で仕上げるのは無理があったようです

91 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:08:42 ID:LHpnPuB5
GJ!!
後半も楽しみにまっています!

92 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:10:06 ID:2NPCnB3Q
畜生、シリアスで決めたと思ったらすぐにぶち壊しにしやがるw

GJ!

93 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:13:24 ID:uDvcLHNt
白夜叉モード無しでも十分に強いぜ支援

94 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:14:06 ID:IsN7LlfN
GJでした! もう銀ちゃんならプレシアもフェイトも両方救えると信じてます

95 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:16:36 ID:vvqcUp1r
>>90
GJ!

あと、>>91さんsageわすれてるお

96 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:17:19 ID:UPwPz/EE
GJ!

この決めようとして、実際に決まってるんだけどなかなか持続してくれないあたりが激しく銀魂w
なのはと銀魂のノリが見事なまでに融合して、びっくりするくらい違和感がなく感じられます。
「家族の絆」というなのはの根底に流れるテーマと、銀魂の得意とする話づくりが
融和した結果でしょうか。
そして始まる最終決戦に、今から期待に胸が躍ります!

97 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:24:55 ID:GqDM7Fea
GJ!!!
いやほんとこれマジヤバイマジヤバイヨーどれぐらいヤバイかっていうとマジヤバイ
ただでさえ原作で神回だったのが銀魂パワーで凄いことになってるデスハイ
銀さんに柳生編で言われたセリフを言う新八とかイイツンデレなグラさんとかホント最高ですコノヤロー
両方のいいところを併せ持った反則級の出来ですオイ

原作でもグラさんの過去に関わる重要な話に入ってますが、とにかく期待してます

98 :名無し@お腹いっぱい:2008/05/25(日) 23:25:34 ID:aOTiKC13
GJ!とにかくGJ!!


でも殺陣の場面、せっかく『修羅』脳内で流してアニメ版紅桜編ラストのノリで楽しんでたのに・・・(泣き笑い)

99 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:39:20 ID:8Ui2RXg2
GJです、とにかく最高です。
もうほんとーまじサイコー

100 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 23:48:23 ID:Wgt5vfPj
GJです
>>98 アニメ版紅桜編は確かに凄かったですね

101 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 01:20:40 ID:mh7+mQIp
GJ!待ちわびてました!
でも支援MADの存在を知ったのは最近でした(ぉ

102 :名無しんぼ@お腹いっぱい:2008/05/26(月) 01:59:54 ID:np7Dd7o1
最高っす銀さん、痺れるぅ憧れないぃぃぃ。
プレセアは助けろとは言わないけど、せめてフェイトに救済の一言だけでもかけれればなぁ……と。


103 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 05:41:04 ID:IPbN4Jm6
何か突発的思い付きで作ってしまったアーマードコアとリリカルなのはのクロスSS投下しても良いでしょうか?

時間は6時を予定します

104 :103:2008/05/26(月) 06:06:12 ID:IPbN4Jm6
では投下を開始します
注:今回は予告編の為 台本風だったりしますが本編ではそのつもりはありませんのでご安心を
  さらに予告編の為若干口調が変ですがそれもあまり気にしないで


第97管理外世界とは違う世界にある『地球』 企業の飽くなき欲望により滅びつつあるこの星にある異変が起きた

ローディ「やはり、見付からないか」
リリウム「はい、No1オッツ・ダルヴァ様 No10ハリ様 共に未だ行方不明です」
ウィンD「アルテリア襲撃も彼等の失踪と共に停止…これは偶然と言って良いのか」
王小龍「ここで騒いでも始まらんよ 大事なのはランク変動と切り札を失ったオーメルの扱いだ…楽にいくまい」

彼等は知らない 「若き革命家」が「作られた狂科学者」と出会いこの世界を去った事を そして始まる戦い…全ては

マクミリアン「人類未来の為に!!」

アーマ−ド・コア fLA(for Lyrcil Answer)

クロノ「十二箇所同時襲撃!?」
リンディ「ええ、XV級3 L級2 地上施設7 が襲撃され移送や封印中だったレリック、ジュエルシードなどのロストロギアが…奪われたわ」
クロノ「そんな、襲撃犯に何か共通点は」
リンディ「全て一人か二人…そして単機と言うべきね」
クロノ「どう言う事です」
リンディ「襲撃に使われたのはガジェットとは違う人型の金属で作られた巨人、そして質量兵器を使用していたの」


彼等は知らない その兵器がアーマードコア、それも『ネクスト』と呼ばれる事を さらに作られた狂科学者により改修されている事も

ウーノ「彼等との相性は?」
トーレ「ジュリアスは、30秒で第一次目標全破壊…悪くない」
クアットロ「オールド?悪くないわ 皆壊すって楽しいし」
チンク「私もだ 彼の戦い方には見惚れそうになる」
セイン「ヴァオー?…あんなうるさっいのと組んで楽しい訳無いでしょーが」
オットー「僕は…どうだろ」

メルツェル「それで時空管理局との感想は」
ヴァオー「吹き飛ばしたぜメルツェェェェェル」
真改「…不足」
ジュリアス「あれでは分からんよ、早く戦いたいものだなSランクと」

105 :103:2008/05/26(月) 06:21:27 ID:IPbN4Jm6
戦闘機人『ナンバーズ』と最悪の反動勢力『ORCA旅団』が手を組んだ 後手にまわる時空管理局達

クロノ「これまでに50以上の施設、艦船が襲撃され、さらに『汚染物質』による被害も含めると数千万人…このままでは」


そして彼等は決意する、ORCA旅団と同種の力を持つ者達に手を借りる事を

グレアム「特別大使のグレアムです」
王小龍「今回カラード側の代表を務めております 王小龍です」


投入される『首輪付き』達

ド・ス「えぐらせてもらうでぇーORCA旅団」
ローディ「老兵だが腕は確かなつもりだ」
CUBE「プランU いわゆる分からないですね」


しかしナンバーズの力を得て強化されたネクストには互角に戦えずある決断が下される

ユーノ「奴等と同じくネクストにタンデムさせる…だけど乗る人達はどうなる」

セレン「心配するな…こいつは奥手で案外甘い男だ」
スバル「は、はい」
セレン「ストレイド ジョン・スミスwithスバル・ナカジマ…出せ!!」

フィオナ「すいません、なのはさん ネクストに乗せてしまって」
なのは「心配いりません 望んだ事ですから」
フィオナ「はい…ホワイトグリント アナトリアwith高町なのは、発進して下さい」


激闘は続き彼等、彼女等はORCAの意味を知る

キャロ「そんな、あの人達も救う為に戦っているんですよ」
ウィンD「だが、その為に払われる犠牲…見過ごす訳にいかん」

王小龍「この利益 BFFのモノにせねばならんの」
フェイト「そんなにお金儲けが良いのかー!!」

なのは「テルミドールさん、もうやめて」
マクシミリアン「犠牲を払わねば人類は救えんのだ 分からないのかその発想が人類を壊死させる事を」

スバル「ギン姉ー」
セレン「殺す事だけを覚えさせたか」

はやて「行くでリィンフォース…いや、セレ・クロワール」

スカリエッティ「ORCAなどもういらんよ、聖王のゆりかごにディソーダーさえあれば」


戦いの先にリリカルな答えはあるのか 近日開始…予定?

106 :103:2008/05/26(月) 06:35:13 ID:IPbN4Jm6
はい、投下完了ですAC4fAやってて「ORCAって12人(+1人)でちょうど良くね?」と電波が飛んで来たので書きました
「リンクスとなのは達がタンデムして大暴れ」な話の予定です

107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 11:45:56 ID:leJ2cT/e
>リリカルTRIGUN
シグナム…お前はこれからただのガンマンの前にひれ伏す!
一体どういう組み合わせでの戦闘になるのか気になっていましたが、ヴァッシュはフェイトとタッグでシグナムに当たるか。
原作ではフェイト不利でしたが、これで勝負がどうなるか分からなくなりましたね。
っつか、ヴォルケンズと戦闘になると、どうしてもナイブズという不安要素が付き纏って、嫌でも緊迫感高まるわww
もし奴が関わるとなったら、勝敗以前に死人が出ないことを祈るしかないですな。
そして、これほどに戦闘が盛り上がるもの、やっぱりその前の日常シーンがあるからなんですよね。
なのはとクロスして、ヴァッシュが原作とは違う穏やかな日々を過ごすのを見る度に、それを守る為の戦いにも深く引き込みそうになります。
けど、まず戦闘を回避しようとするヴァッシュの姿勢にニヤリ。それが彼の戦い方ですからねー。
熱血だからこそ好戦的なリリなのサイドとは違う戦い方を見せてくれそうで、次回の展開に期待大ですw
ああ、しかしやっぱりトライガンとのクロスはいいねぇ。もう元ネタの時点でナイスチョイスですよ。
頑張ってください。限りなく支援しますw

>なの魂
いや、あれだから。なのはが決定的なこと口走っちゃったのはクロスの影響だから。ネタ的に際どい表現は銀魂の味だから。
冒頭のガン○ム発言で吹きましたwwしかも一発ネタじゃなくて、地の描写まで引くなよw
しかし、今回は銀魂でもたまに出てくるシリアス回でしたね。この辺のメリハリが原作もこの作品事態も上手い。
個人的に私はクサイ台詞とか苦手なんですが、銀さんってそこに持っていくまでの切り出しが上手いんですよね。
何気ない言葉と笑いを絡めながら、ドキッとするような言葉を言っちゃう。
今回のフェイトとの会話でもそれが表れていました。
アニメ本編ではフェイトが自力で立ち上がったシーンですけどね、やっぱ銀さんに引っ張ってもらって無理なく立ち直れた感があって、読みながら安心してしまいました。
ホントさぁ、反則だから。
銀さん以上にたまにしか真面目にならない神楽の貴重な思いやりとか、新八の漢前ぶりとか。
お前、「僕達はねェ……正義の味方でも、管理局の味方でもない。君の味方だ」 とか、台詞が空気読みすぎだから。これはフェイトももう惚れるしかないw
銀さんみたいに達観してるわけでもない、青臭い少年って感じの新八ですけど、だからこそこういうストレートな台詞が映えるんですよね。
実は一番リリなの向きのキャラじゃね?
その後の戦闘でも、なのは達に負けずに見せ場全開の万事屋。銀魂一話のシーンでしっかりギャグを取るあたりが一番お気に入りですw
次回、いよいよ全ての決着が付きそうで、もうどのキャラもどう動くのか気になって仕方ないです。
やっぱフェイトとプレシアの対峙が肝かなぁ。銀さんにラストも何か言ってもらいたい所存。期待しています!

108 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 15:46:40 ID:EgPyXa9a
「リリカルTRIGUN」のヴァッシュさん&「なの魂」の万事屋メンバーの皆様GJ!支援です。
久々に来て嬉しいダブルパンチでしたよ。

109 :一尉:2008/05/26(月) 15:56:33 ID:2hdEgtA9
坂田銀時殿支援

110 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 20:59:27 ID:Xvh0IQvN


111 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 21:01:05 ID:SvVYm7+f
こいつら管理だなんだって言って、いかにも自分達が正しいことしてる風にしてっけど、勝手にごちゃごちゃ難癖つけて来られた方はたまったもんじゃねぇな。まさにありがた迷惑以外の何物でもねぇ。
そもそも人間が次元を管理ってwwお前等アホかw何様じゃwww

112 :一尉:2008/05/26(月) 21:20:20 ID:2hdEgtA9
そうやな支援

113 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 22:21:13 ID:/+yo20X1
>>111
分かってるよ。

114 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 22:50:02 ID:2uFDlXay
>>>111
帰れ

115 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 22:58:54 ID:rzBN5ZI/
>>111
そんなことわかってる前提でやってるんだから一歩的に文句言う奴は
さっさとアンチスレにいってください。
ここはクロススレであってアンチスレではない。

116 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 23:02:02 ID:GV3eXzmP
お前等もそんなの前提にするな。

117 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 23:03:37 ID:X5e0E72b
まーたスルーも出来ない住人が増えてきてるのか? どうせ単発のレスに過ぎないんだから無視しろよ……

118 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 23:18:59 ID:4H/Gr99R
いい加減ここの住人達は、特殊スキル華麗にスルーを覚えてもらいたいな。


119 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 23:22:15 ID:2GuQMM8G
本当に住人なのかもわからんけどな

120 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 23:46:48 ID:SvVYm7+f
管理局以外になんか警察とか軍とかはおらんのか?それも含め管理局が全部やってんの?
ていうか質量兵器禁止って公布出来るってどんだけ政治に影響力持っとんねん。


121 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 23:47:37 ID:fYcRKXC4
設定議論スレ行け

122 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 23:49:09 ID:X5e0E72b
もうスルーしろ。そうすればスレ違いなのに、一人で騒いでいるだけの間抜けになるから……

123 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 23:54:42 ID:2GuQMM8G
わかった スルーするー

124 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 00:24:04 ID:UDk92l9m
えっと…こんなときどう言えばいいんだ?

125 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 00:24:45 ID:HzelA5tF
笑えばいいと思うよ

126 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 00:25:18 ID:5LGkerv3
あはははは

127 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 01:02:07 ID:jxdPWWvR
グゲっゲッゲッゲッゲッゲッゲッゲッゲ

128 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 01:35:41 ID:/oN5iRDJ
なんか避難所にキャバとバクラの新作投下されているよ?
すまんが、誰か代理投下してくれ。俺携帯(涙)

129 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 01:38:33 ID:kKHW26rK
なら私がやりましょう

130 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:39:09 ID:kKHW26rK
「さっそく訓練するあたり、なのはちゃん気合入っているみたいや」

「そう言うはやては気合入れて報告書を書かなくて良いの?」

「……戦士には休息が必要やねん、フェイトちゃん」

「…クスッ」

陸、海問わず部隊長のパイプをフル活用した潤滑な資金により誕生した、陸戦用空間シュミレーター。
高度な魔力操作・凝集技術により、一瞬で立体的構造物を構成し、数多の状況を再現できる最先端訓練施設。
それを見下ろすように六課隊舎の屋上に立つ二人の女性。どちらも管理局の制服に身を包んでいる。
機動六課部隊長の八神はやてと、機動六課ライトニング分隊分隊長であるフェイト・T・ハラオウンだ。

「さて……新人達のお手並み拝見といこか?」

二人の周りに集まる宙に浮くウィンドウには、展開された廃墟のビル郡に隠れてしまった新人フォワード四人の姿。
各々がお揃いの訓練用に服に身を包み、準備運動や事前の打ち合わせをしていた。その映像を見てはやては確信したように呟いた。

「やっぱり上手く行ってないみたいやね?」

映し出される四人は各分隊に別れて、つまりスターズとライトニングで体を動かし、言葉を交えている。
時々分隊を超えた会話がティアナを中心にあるものの、そこにはどこかトゲと壁が感じられた。

「盛大にケンカしたみたいだよ、キャロとティアナが」

「そやろな〜管理局員の兄に育てられ、その兄の夢をかなえるために管理局に入ったティアナと……」

「己と相棒の為に私の手と管理局の正義を振り払ったキャロとじゃ、すぐに会話があわないのは当然。
 それに……ギクシャクする事も狙いの一つなんだよ。あの子達を本物の『ストライカーズ』にする為に」


131 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:39:46 ID:kKHW26rK
『ストライカーズ』とは魔道師ランクや戦闘力のみで与えられる称号では断じて無い。
ただ強さのみで計るのならば、それは『エース』ではありえるが『ストライカーズ』ではない。
ストライカーズは「その人が居れば困難な状況も打破できる」、「どんな厳しい状況も突破可能」と言う『信頼』が重要なのだ。
そして……その信頼を獲得するというのは、ある種魔道師ランクを上げることよりも困難な作業である。

「私やなのは、はやては友達だよね? 最高の」

「そやね……最高の友達。諍いなんておきへん、何時でも信じられる。でもソレは所詮、私たちと言う狭い間だけでの事や」

管理局と言う組織の中で数年を過ごし、揉まれる事で二人は理解した。
『人は簡単に理解しあえない』
そんな人が無数に存在する組織、その人同士が命を賭ける戦場で、不意に現れようと信頼を獲得し、命と力を預けてもらえる存在。
それこそが真のストライカーズ。


「魔法や戦闘の事はなのはにお任せしちゃう事になりそうだけど、他の部分はなるべく他で対処していかないとね?
 なのはそういうの苦手そうだから。自分ばっかり責めちゃって」

「そやね〜教導隊に教わるのなんて、イイコちゃんばっかりやからな〜
 なのはちゃんもフェイトちゃん秘蔵のじゃじゃ馬には苦労するんと違うか?」

「「アッハッハ〜」」とこれからの友人の苦労を盛大に笑い飛ばしていた二人だが、不意に鳴り響いた訓練開始のアラームで顔を引き締める。
自分達が参加するわけでは無いが、機動六課の行く末を占う最初の大事な訓練。自然と緊張の糸も張り詰めていく。

「始まったな……」

「うん、機動六課が……はやての大きな夢のワンステップが」

感慨深げな呟き、ソレに答えたフェイトにはやては首を振りながら、返す。

「ちゃうな。みんなの……目標や」


『キャロとバクラが模擬戦訓練に参加するそうです』


132 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:40:17 ID:kKHW26rK
フォワード四人の初訓練の内容は『逃走するターゲットの破壊』。実に単純だ。
そのターゲットと言うのは自立行動型の魔導機械 通称ガジェット・ドローン。
転送の魔法陣から現れたのは、カプセルのように凹凸の無い表面、四肢は無く中央部にはカメラアイという造形の物体。それが合計八体。

「第一回模擬戦訓練。ミッション目的 逃走するターゲット八体の破壊、もしくは捕獲。十五分以内に」

何処からか聞こえるスターズ分隊の隊長にして、フォワード陣の訓練を担当する高町なのはの声。

「ミッション・スタート」

フォワード四人と対面する形で出現したが、訓練開始の合図とともに一斉に背中を向けて、逃走を開始する。
背中を見せるというのは、逃走と言う作戦目的に置いてどうしても必要な行動だ。だが同時にソレは大きなスキでもある。
纏まったまま、直進的な逃走を選ぶなど遠距離攻撃が可能な者からすれば、「狙ってくれ」と言っているのと変わりが無い。

「ここで一気に減らす!」

もちろんフォワード陣の一人、スターズ分隊スターズ4 ティアナ・ランスターもそう判断した。
ここは訓練場、これは模擬戦。求められるのは過程ではなく、答え。最後に『八体撃破』と報告すれば良い。
ならばこの好機を逃すのは愚者のすることだ。打ち合わせも移動も一切無し。
オレンジ色の髪をツインテールにした少女は、シッカリとした踏ん張った足とアンカーガンを構えた両の腕、魔力が収束する感覚を確かめる。

「あの! ティアナさん、ブーストかけられますけど……」

その声により一瞬、僅かな時間だが張り詰めた力が乱れるのをティアナは感じる。
誰とでも笑顔で付き合えるタイプではない自分の性格を考慮に入れても、あれほど盛大に衝突する事は珍しい。
自分の正義、兄の信じた道を『笑顔で』否定されたのだ。こんな屈辱は無い。
だけど……その憎いヤツは連れている幼竜とは違い敏感に、ターゲット出現・逃走の流れにすぐに反応した。
チラリとスバルとエリオがこちらを窺う視線を向ける間に、視線をターゲットに絞って魔力を練り始めていた。
そして今の問い……ティアナ・ランスターの真意とこの状況の正解を理解しているからこそ取れる行動。
ならば……試させて貰う!


133 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:40:49 ID:kKHW26rK
「よし! バシッと来なさい!!」

「はっはい!」

ティアナと笑顔で意見をぶつけ合うには幼い、桃色の髪の少女 キャロは腕を一閃。
今まで死線を潜り抜けてきたデバイスではなく、管理局から与えられたブーストデバイスケリュケイオンが光を放つ。
構成された魔法は『威力強化』。キャロの魔力を添加されたティアナは更なる力の充足に身を震わせる。

「これはっ!?」

だが彼女を襲う震えは力の充足などと言う、ヌルイものではなかった。
それは体が上げる悲鳴。余りにも強いブーストが体を軋ませ、魔力弾の構成を揺さ振る。
しかしブースト魔法をかけるという宣言自体に偽りは無い。つまりここで制御を投げ出すのは……『敗北』だとティアナは捉えた。

「このぉおお!!」

ソレはティアナの意地だった。叫び声とともにアクション。
震える銃身を押さえつけ、その場で炸裂しそうになる魔力に形を与え、引き攣る指でトリガーを引く。
搾り出された虚脱感と前方へと飛び去る勢いが、必死に立っていたティアナの体を大きく反発の原理で後ろへと吹き飛ばす。
放たれた魔力弾は軌道を揺らしながらも、大威力を留めたまま何とかガジェットに着弾……する前に急激にその大きさを小さくする。

「魔力が消された?」


盛大に打ち付けた尻を摩りながら立ち上がったティアナは、自分の努力のあまりに小さな成果に首を傾げる。
打ち抜けたのはたった一体。それも余りに小さな魔力弾が上手く決まった偶然の成果。

「どうしたの、ティア!?」

『ガジェット・ドローンには厄介な能力があってね?』

心配そうに近寄ってきた訓練学校からの腐れ縁、スバルの声に重なるように、なのはがその事態を説明。
『AMF アンチ・マギリング・フィールド』
魔力結合を分解する魔道師にとっては非常に厄介な能力。それに舌打ちを一つしたティアナに、キャロが慌てて言う。

「ゴメンなさい、ティアナさん! 何時も加減なんて考えないで使ってるから、その癖で調節無しでブーストしちゃいました!!」

アワアワと慌てる様子、本当に申し訳ないと言いたげに潤んだキャロの瞳。
どれこれも普通の少女なのに……なんでこんなに腹立たしい存在なのだろう?
ティアナが何度目か解らない舌打ちをして、取り落としたアンカーガンを拾い上げる。
カートリッジを排出し、新しいものを装填。各部を手際よくチェック。自分の体ほど無茶なブースとで悲鳴を上げていない事実に安堵する。


134 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:41:32 ID:kKHW26rK
だが……まだ訓練は終わっていない。ターゲットは7体も残っているのだ。

「問題ないわ。それよりも…「追いかけろ、エリオ」…キャロ?」

「「っ!?」」

不意に放たれた声の主は間違いなく自分達の同僚、キャロ・ル・ルシエ……のはず。
だが違う、余りに違った。これは違う誰かが出している声。人とは違うナニカが出している音。
その音 声に赤毛でもっともキャロに年や身長が近いエリオはデバイス ストラーダを抱えてビクリと震えた。

「ターゲットを分散させないまま、これから指定するポイントへ6分で追い込め。遅くても早くてもダメだ」

変化があったしたら、訓練時にも身に着けていた悪趣味な金色のペンダント 千年リングが一瞬光った程度だろう。
それだけなのに……ヤッパリここに居るのは違う存在だ。エリオだけが理解し、その強い声色の意味を知るが故にすぐに返す。

「はいっ!」

「ちょっとエリオ!?」

スバルが上げた驚きの声を無視して、エリオはデバイスに標準搭載されている現在の地形データに目を通す。
その一点に赤いスポットが入り、補足されるキャロ?の言葉に頷いて、彼は走りだした。

「えっと……」

「スバル、アンタも行って」

「ティア!? でも!」

ティアナはスバルが上げた非難の声の意味を理解している。
突然の指示、不和の原因であるはずのキャロのアクションが気に入らないのだろう。
それはティアナも同じだ。だがもう一つの条件が彼女を大人しく、冷静にさせていた。
今もっとも優先すべき事は何か? チームワークの確立? 違う、それは重要だが今の限られた時間で解決すべき事ではない。
『模擬戦訓練の完遂』
それこそがいま、何よりも優先すべき事柄。ティアナが目指すのは、兄が夢見た執務官の地位。
六課という実験部隊に彼女が求める事は成果であり、陳腐な経歴を彩る煌びやかな華。
その為にここに居るのだ。憧れの『ナノハサン』と同じ職場と言うだけで幸せな親友とは根本的に違う。

「ローラー装備のアンタの方が、通常時の速度でエリオよりも上よ。集団の頭を抑えて」

そしてやはりティアナにとって腹立たしい事だが、キャロが指示した追い立てる役と迎撃する役への分散も正しい選択だった。

「指定ポイントのデータはこれ。エリオと挟撃する形、時間厳守で誘導を」

「うっうん……」

スバルは頷きながらも、どこか寂しそうに走りだそうとする。
その理由は親友であるティアナが関係の良好とは言えない、会ったばかりの同僚と見せる意思のシンクロが原因だろう。
親友が転校生と急に仲良くなったのが気に入らない子供と変わらない。だが子供のソレとは状況が違う。
不況はそのままエリオとの連携に不備をきたすかも知れないし、単純なミスをする要因足りうる。
故にティアナはフォローを忘れない。訓練学校時代から非常に解り易く、心強いパートナーの管理は得意だった。




135 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:42:40 ID:kKHW26rK
「スバル、私が今までアンタの信頼を裏切った事があった?」

「……無い。ティアは何時だって……答えてくれたもん」

「なら今日も信じて……指定ポイントで待ってる」

「うん!!」

親友二人は握った拳を突き合わせ、踵を返す。スバルは逃走したガジェットの背を追い、ティアナは先に動き出していたキャロの背を追う。


136 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:43:12 ID:kKHW26rK
そこは訓練スペースに魔力で形作られた町の一角、丁度行き止まりになっている道の末端に建つほかと変わらぬ廃墟のビル。
魔法で作られたとは思えない五階建てのビルの屋上、ガジェットを追い込むポイントである袋小路を見渡す絶好のロケーション。

そこに立つのは二人と一匹。ティアナ・ランスターとキャロ・ル・ルシエ……あと白銀の飛竜フリードリッヒ。
僅かな訓練の時間で確認された、両分隊のブレインにして後方組。後は予定通りに前衛の二人がガジェットを追い込むのを待つだけ。
まぁ、空気は未だに宜しくない物だったが……不意にティアナが振り返りつつ、アンカーガンを構える。

「アナタは一体ナニ?」

銃口の先に居るのはガジェットではない。味方である筈のキャロだった。
意味が解らないと首を傾げる同僚に対して、ティアナは真剣そのもの。そうさせるだけの理由が彼女にはあった。

「え? 私はキャロ・ル…「そうじゃない!」…よく気がついたな?」

疑問の言葉はティアナの叫びで中断され、再会されたときには別の言葉に代わる。
その声の主こそが「アナタは一体ナニ?」と言う言葉が向けられた先。
黄金のペンダント千年リングが光り輝き、前髪が二房立ち上がった。目元には刃のように鋭く、口元は悪魔のように歪む。
それだけの変化。しかしキャロ「の肩」に止まっていたフリードは、大きな違いに気が付いて飛び去る。
きっとソコにいるのは間違いなくキャロではないし、ティアナが定める人間の範疇からも外れる存在。

「で、何者なの? いま私と話しているアンタは」

「オレ様はバクラ。この千年リングに宿る古い魂さ」

戯言と斬って捨てるにはキャロの変化は劇的過ぎて、その妄言にティアナは何となく納得してしまった。

「ロストロギア……ユニゾンデバイスみたいなもの?」

「まぁ、そんなところだな。さて……指定した時間まで残り三分だ。あの二人が上手くやれば……だけどよ?」

「エリオは解らないけど、スバルは私と一緒に訓練学校の主席を取ってるわ。問題ないはず」

「けっ! 学校の成績で現実の戦績が約束されるんなら世話無いぜ」


137 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:43:44 ID:kKHW26rK
やはりこういう奴だった。ティアナは自分がキャロと言う少女に感じた憤りと同じ物を、バクラと名乗った管制人格に覚える。
むしろこっちの方があからさまな嘲笑を含んでいるが故に余計に鼻に付き、腹が立つ。

「自分達はこういう追撃のスペシャリストだとでも?」

「そこまでは言わねぇ。だがよ、こっちは実戦に基づいた経験がある。追いかけて、狩った対象は様々だしな?
 例えば密売の途中で逃げた魔獣、組織の金を持ち逃げした会計士。あのオモチャ共にも狙っていた品を盗まれたことがある。
 お前にそんな経験があんのか? ティアナ・ランスター」

「……アンタみたいなヤツと四六時中一緒にいれば、キャロの性格も悪くなるわ」

指定した時間まで四分間、この場に居る者は成すべき事が無い。図らずも生まれた暇。ティアナは僅かながらも、関係の改善に努める事にした。
その方法は原因を他に設けることだ。この悪辣な管制人格のせいで、キャロは正しい大儀を否定するような成長をしてしまったに「違いない」。
そう思えばティアナは自分を一段上に置き、優越感を持って腹立たしい子に接する事ができる。

「おいおい、まるでオレ様が悪者みたいじゃねえか?」

『あんまり否定できませんけど……でも……』

対して残念そうではないバクラと否定できない辺りを苦笑いで誤魔化すキャロ。
だけどキャロには言っておかなければならない事があった。
千年リングが輝き、目元が柔らかくなり、口元がはにかんだ小さな笑みへと変わる。

「私はバクラさんのおかげで生きてこられました」

「え?」

ペンダントが光る事が、キャロとバクラの人格入れ替えのサインだと理解したティアナは首を傾げた。
どうしてこの悪辣な存在を小さな少女は肯定するのか?と。

「もしオレ様が四六時中一緒に居なかったら、相棒は最悪死んでるか……よくて薬物中毒で体を売ってるだろうな」

「……」

ソコに横たわるのはティアナが見たことが無い、聴いた事も無い闇だった。
彼女の信じる正義にはそんなモノは存在しないし、生まれればすぐさま摘まれる害悪の芽。

「如何してそんな事が……」

「罷り通るのか? 簡単な事だぜ! キレイな正義だけじゃ、何にもできねえんだ!!
 キレイな正義じゃ光も手も届かない場所が腐るほど在るんだぜ? 世の中にはよ〜
 光の届かない闇の中で這いずり回りながら、ここまで登ってくれば相棒みたいなメスガキが出来上がるのさ」

『メスガキとか言うな〜』
そんなキャロの心の内だけでの叫びを無視し、バクラは勝ち誇ったように宣言する。
つまり管理局の正義に助けられた事も無いし、その威光が届いた事も無い場所に居た。
だから信じないし、信じられない。そこにそんなモノがあるからなんだと言うのだ?
重要なのは己を守り他者から奪う力であり、力によって獲得する金が全てなのだ。
以上の事からキャロにとって管理局とは『己の力を活かし、潤沢な賃金を得る仕事の一つ』に過ぎない。
過ぎないからこそ、笑顔で否定する事ができるのだ。当然の事柄に罪悪感など感じる必要は無い。




138 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:44:14 ID:kKHW26rK
「ついでにもう一つ良い事を教えてやるぜ。世の中はな? 強いヤツが正しいのさ」

言うとバクラはキャロの顔を侮辱の色に染め、誘うように手をヒラヒラ。

「押し通せよ、テメエの陳腐な正義。
それが出来からこそ、管理局は今でもデカイ顔をしている。
 できねえなら……テメエは、テメエの正義は……カス以下だぜ?」

「このぉぉお!!」

それだけは認められない。私の正義はお兄ちゃんの……大好きなお兄ちゃんの信じていたモノ!
お兄ちゃんの目指した場所! それだけはどんな理由があったって! 私はここで! このキレイな正義を!!

「ついでに忠告だ。もし誰かがケンカを売ってきたら、ソイツはもうケンカの準備は済ませていると考えたほうが良いぜ」

反射的に魔力を込めて、ティアナが跳ね上げたアンカーガン。怒りなどの感情がゴチャゴチャに混ざった濁流で震える腕。
それでも何時もの訓練の冷静さが震えを押さえて、狙いを付ける。
『こんな事をしても無意味だ!』
ティアナの冷静な部分が声高に叫んでいるが、それでも!!

「パチン」

しかし……銃口で収束した魔力が炸裂する事は無かった。バクラが鳴らしたキャロの指。
そちらの方が早い。起きた成果は……転倒するティアナ。

「っ!? これは!?」

彼女の足元で展開された闇色の魔法陣。生えてきたのは痩せ細り潤いを無くした死人の手
伝わる死の冷たさにティアナは慌てて振り払い、立ち上がろうとして……絶句する。
いつの間にか自分を囲む形で展開されていた複数の同型魔法陣。そこから浮かび上がってくる様々な異形。
頭部が欠けた中世の鎧、腐り落ちて骨が除く亜人の死体、絵画から湧き立つ亡霊。

「これが……オレ様たちがここまで上り詰めた力『死霊召喚』だ」

「でもこの程度なら!?」

「確か一体は弱い。だがこの数で、この距離。ゲーム・オーバーだぜ!」

ティアナはすぐ一体目を撃ち抜き、二体目の攻撃を回避し……それで華麗な攻防は終わり。
三体目に片腕を掴まれて、ソレを撃つと四体目に腰にタックルを受け、五体目にアンカーガンを持つ手を掴まれて……




139 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:44:46 ID:kKHW26rK
「この卑怯者〜!!」

「ヒャッハッハッハ〜! 良いカッコだな? 正義の味方さんよ〜」

数秒で無数の死霊に揉みくちゃにされ、押しつぶされるように拘束されるティアナの図が完成した。
それだけの数を一瞬で召喚するのは魔法理論の常識からすれば不可能に近い。つまり……

「本当にゴメンなさい、ティアナさん。バクラさん、最初っからこの時間を使って、コレをやる気満々だったんです」

「え?」

優しい声を聴くのを心待ちにしていた感もあるティアナは、キャロの申し訳無さそうな言葉に思わず抜けた一言。
つまり……ティアナを怒らせてケンカを売らせ、話の途中から死霊召喚の術式を順次セット。
爆発の種火となる言葉を自ら投げ込む事で開戦の時期をコントロールし、一斉に魔法を発動。
後は限られた距離とティアナの魔道師としてのスタイルから、どうしても逃れられない布陣を用いての力押し。

「退かしなさいよ、この怪物ども! 全身鳥肌が…『ティア! 追い込んだよ!!』…スバル!?」

色々あってティアナはスッカリ忘れていたが、今は模擬戦訓練の途中。そしてターゲットが目前に飛び込んでくる時間なのだ。

「しまった! 時間…『ティア? なに遊んでんの?』…ウッサイ!!」

異形に押しつぶされた親友の姿に、哀れみにも似た表情を浮かべるスバル。
すぐさま噛み付くティアナだが、そんな事をしている場合ではない事を思い出した。

「ちょっと! 早く退かしなさいよ!! もうターゲットが……」

「アァ、今飛び込んできたところだ」

「だったら!!」

本来の目的であるターゲットの撃破、訓練の成功を逃すわけには行かない。
ティアナは声を荒げるが、バクラは未だにニヤニヤと勝者の余韻を手放さなかった。
だが彼も訓練とは言え失敗と言う単語が好きな訳がない。盗賊として、デュエリストとして、常に欲するは勝利。

「罰ゲームだ。ゆっくり見学して目に刻んどけ。オレ様の相棒の力もよ」
光る千年リングは人格交代の証。キャロの体を取り戻したキャロと言う人格がティアナに見せた事がなかった真剣な表情で言う。

「あのっ! 色々ご迷惑をおかけしてすみませんでした。
 けど! ここに至る私の心、私の力を知って欲しかったから。
 ケンカしても後悔してません。そして……見てください。ルシエの血の意味を」


140 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:45:18 ID:kKHW26rK
突き出された手でケリュケイオンの宝玉が激しく明滅。
バクラと共に常に傍らに居てくれた、もう一人の相棒にキャロは言う。

「行くよ! フリード!?」

「キュルル〜!!」

答える竜の声は可愛いながらも荒々しく、ルビーのような真紅の瞳も戦意に燃えている。
そんなフリードへ捧げられるのは巫女の祝詞。己の半身にして、超自然の力へと語る。

「蒼穹を奔る白き閃光。我が翼となり、天を翔けよ!」

フリードを中心に展開される大型の魔法陣。やがてフリードが薄紅色の光球に包まれ、周りを取り囲み回転する環状魔法陣。

「来よ、我が竜フリードリヒ。竜魂召喚!」

そして呼ばれるのは本当の名前。フリードと言う略称ではなく、白銀の飛竜が与えられた真実の名前。
光の玉から翼が突き出し、一瞬遅れて炸裂する。中から現れたのは今までのフリードとは全く違う存在。
巨大な姿、強大な翼、頑強な顎、強固な皮膚。正しく竜、神話に語り継がれる強存在。人をゴミクズのように踏み潰す圧倒的な者。

「これが……竜」

バクラにより生まれた死霊召喚が、汎用性の効く手頃な魔法ならば、キャロが本来持ちうる竜召喚は使い勝手が難しい魔法。
コレを用いる事ができるのは周りの被害を気にしなくて良い、もしくは気にしていられない状況。
多くの敵、もしくは強大な敵を撃ち滅ぼす最後の奥の手。

「フリードォオオ!」

「ギャワアア!」

キャロの掛け声と答えるフリードの怒号が重なる。追いかけてきたスバルとエリオも、ソレが何を意味するのかを本能的に理解した。
訓練を完遂する手段がアレであり、アレの射線上に居るのは危険だと。


141 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:45:49 ID:kKHW26rK
フリードが擡げた頭の先、口の中で溢れる炎にも似た魔力光。徐々に形を成し、炸裂する瞬間を待ちわびる破壊の怒涛。
だがそれだけでは完全とは言えない。KMFと言う厄介な防御手段を持つターゲットを完全に破壊するには。
故に更に唱えよう、天を高らかと指し。歌おう、勝利の凱歌を!

「我が乞うは滅びの光。荒ぶる飛竜の息吹に更なる焔を」

『Boost Up Blast Power』

恐らく世界でキャロだけが使うだろう、竜専用のブレス強化魔法。
フリードリッヒの巨大な口の前方で収縮する炎を二重に包む環状魔法陣。
環状魔法陣から供給される魔力により、炎の色が白色……いや輝くような白銀へと染まっていく。


「滅びのブラスト・レイ」


振り下ろされたキャロの指先。解き放たれた竜の息吹。放たれるのは白銀の炎。
純粋で圧倒的な熱量を前にして、無機的なガジェットのボディをまるで紙で出来たように燃え上がらせる。
ビルの上から放たれた一撃は全てのガジェットを等しく、炎へと変えてしまう。
白銀の炎が光の粒子へと消え、フリードがゼエゼエ言いながら何時もの小さな姿に戻る。
ビルの陰からおっかなびっくりスバルとエリオが現れ、その一撃に呆然と見惚れるティアナの上から死霊たちが消えれば……


『模擬戦訓練終了』




142 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:46:20 ID:kKHW26rK
ティアナ・ランスターは盛大に落ち込んでいた。一日の訓練を終えてシャワールームで引き締まった裸体に温水を浴びながら。
彼女を落ち込ませる原因は今日一日の訓練の結果ではない。訓練の過程で見せられた戦友の力に……だ。
三人とも自分より勝る面は多々あるが、その中でもキャロのソレは群を抜いている。インパクト的にも。
人数と言う戦略概念を一気にひっくり返す無数の死霊召喚、AMFを無視してガジェットを全機燃やし尽くす竜使役。
そして数多の異なる条件化で生き延びてきた事による圧倒的な経験。どれもが自分には無いモノだ。

「あん? まだ入ってんのか?」

壁のほうを向いてシャワーを浴びていたティアナはその声に振り向いた。
するとそこにいるのは桃色の髪に女性の特徴が乏しい少女、自分の劣等感の原因であるキャロ・ル・ルシエ?
でもこの口調、ニヤニヤと見下したような目、真っ裸に首から千年リングを下げただけの珍妙なカッコで堂々と仁王立ちする神経の無さ。
まさか!?

「まさか、バクラ!?」

「おうよ」

「キャアアア!!」

「うるせえ奴だぜ」

ティアナはタオルを引き寄せて身を屈み叫ぶ。女性としては外見が幼女だろうと、中身が男とわかっているならば妥当な反応だろう。
もっともそんな反応にもバクラは態度を改める気配も見せないのだが……

「ななな! なんでここに!?」

「あ? 相棒の体は確かに貧相だが女だぜ? エリオに見せてサービスしてやれとでも?」

「ソレは確かにマズイ……でも男のアンタが洗わなくても!」

「オレ様だって汗を流したい時だってあるぜ? それに表に出て無くても感覚は共有だから丸見えだ」

完全に反応する言葉を無くしたティナを捨て置き、シャワーから流れ出る温水を被りながら、思い出したようにバクラの視線が戻る。




143 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:46:52 ID:kKHW26rK
「どうせテメエの矮小な存在を目の当たりにして落ち込んでんだろ?」

グウの音も出ないティアナに更に笑いを深めて、バクラは続けた。

「テメエの力だけで押し通せると思ってんのかよ? その陳腐な正義。
 別にこれはテメエに限った事じゃねえが、ザコいバカな奴ほど……他者を利用できねえ」
 オレ様たちは利用するぜ? 管理局は食い扶持であり、力を磨く場所に過ぎねえ。
 お前たち六課の同僚は新たに振り分けられたカードだ。使えねえとこも多いが、使い方次第で何とかなるだろう」

その言葉に更に苛立ちを深めてティアナは問うた。

「私達は唯の駒だって良いたいの?」

「オレ様たちの最終的な目的にしてみれば、小さな存在だと言いたいのさ。
 優先順位が低く、使い捨てる事も見捨てる事も計算の内に入れているってことよ!」

「そうまで……なにを目指す?」

「好きなように生きる事。それが相棒とオレ様の最終目的よぉ。テメエはなんだ? 陳腐な正義が一番大事なんじゃねえのか?」

「そう……かしらね?」

もうそんなモノに価値が無いと押し付けられたような感覚による虚脱。呆然とした答えだったが、返事は予想外のもの。

「なら利用しろ。テメエの力だけで出し切った気になってんじゃねえよ!
キャロとバクラと言う強力なカード、お前は同僚として手札に持ってんだぜ?」

「お互い様?」

「おう、相互利用の関係。エリオはバカみたいに純粋で使いやすいが、頭がキレない。
お前の連れも同様だ。だがお前は少しは頭が回る? それに……くだらねえ目的の為だろうが、這い上がってやるという姿勢は嫌いじゃない」

ティアナは理解した。這い上がるレベルの高さならば、間違いなくこの二人は大先輩だろうと。

「……上等よ! アンタは、この六課は私が執務官になる踏み台に過ぎないわ!」

「おうとも! テメエは、管理局はオレ様たちがやりたい事をする為のカードの一つだ」

「「ソレで良い。カードも踏み台も役立つ内は大事にする」」

そんな関係。


144 :キャロとバクラの人 ◇2kYxpqWJ8k 代理:2008/05/27(火) 01:47:22 ID:kKHW26rK
以上です、なんだかやたら長くなってしまいました。
代理投下してくださる方も、一人では厳しいかも?
色々とお手数をおかけしますが、なにとぞよろしくお願いします(平伏


145 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 02:10:28 ID:Otr18aDD
超GJ!!
フリードがやっと活躍できて思わずホロリ

146 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 05:01:31 ID:PDRd4h8F
なんかキャロはバクラに対してデレだらけで微笑ましいな
ツン要素とういうか反抗期は果たして来るのかどうかが心配だ

147 :sage:2008/05/27(火) 07:29:54 ID:vzsEYZNm
フリード=ブルーアイズホワイトドラゴン??

148 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 08:08:32 ID:f6P1VFVV
>>147
名前じゃなくてメ欄にsageっていれないとsageにならないぜ

149 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 08:45:38 ID:yt6hi7Ki
>キャロとバクラ
そんな、ティアナをいじめるなんて……興奮しちゃうじゃないか☆(ズキュゥゥウン
原作能力のままでバクラと敵対した段階でなんとなくオチは分かってましたが、やっぱりコテンパンでしたねぇ。
でも、挫折する姿が可愛いよティアナw
まあ、展開が一方的なんでバクラの言葉が真理に思えてきてしまうかもしれませんが、奴も悪役らしく結構ひでえこと言ってますよね。
っていうか第一印象が悪すぎるww読んでてもギスギスした空気が肌で感じられましたw
それでも強引にいっちゃうあたり、やはり下積みのあるバクラとキャロは地力が違いますね。いつもまにかフリードがデュアル風に…
そして、すっかり舎弟だね。エリオ君w
このまましばらくギスギスかな? と思ってたら、最後で意外にもそれなりに和解して安心しました。
でも少しだけがっかりもしたり。
胃の痛い展開苦手な私ですが、もっと不協和音続いてもよかったかもしれないと思う辺り、キャロとバクラを読んでると悪役方面に傾いてしまうから困るww

150 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 16:12:49 ID:odw3LKx7
GJ!でした。
エリオを駒にしてるのが面白いですw
原作になかったタイプの戦闘スタイルですので楽しいですね。
いつかくるライバルルールーとのデュエルに期待してます。

151 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 16:16:42 ID:xdeNLmnJ

六課でのキャロの成長が楽しみです。

152 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 17:46:16 ID:wUaLhrah
GJエリオ完全に体の良い木偶扱いw
 実はフリードこのままフェードアウトするかと思っていましたw
ティアナも上に上がるには綺麗なままではいられないということ覚えたようで。

153 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 20:22:24 ID:eskFpagK
GJ!!です。
自分の目的のために全てを利用するバクラの考えを知ったティアナですが、
それに囚われて暴走しないか不安です。そうゆうやり方は上手くできないと
自身の破滅に繋がりますし。そして、フリードが着実にブルーアイズへのロードへwww
フリードの、この必殺の一撃がランク的にどのくらいの威力なのか気になります。

154 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 20:31:47 ID:dVl5i6+t
失礼します。当方 こちらのスレで初なのですが、
一発ネタを投下したいのですがよろしいでしょうか?
テーマ曲系で、元ネタはZOIDSのwild flowers です。

投下が許されるなら35分に投下します。

155 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 20:36:57 ID:dVl5i6+t
A’S Flowers

Sing F/T/H

急に泣き出した空に声を上げはしゃぐ無垢な友人たち
慌てふためく大人をよそに遠い瞳で 明日への希望 描いてる
いつか渡れたらいいな 虹色の夢 デバイスに詰め込んで
術式広げて まだ見ぬ世界へ 私もまた巣立ってゆく
ここから始めよう 全てを。
傷だらけの心なら捨てて
一つ一つの真実を受け止めて
例えヒトより生まれ特殊でも 足かせされても

押し迫る時を越えて 私たちは行く
力強く杖を掲げながら
遥かなる時に名を馳せた英雄みたいに
誇り高く信じること友達に感謝したい
この歌に乗せて


156 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 20:38:34 ID:dVl5i6+t
投下終了です。ありがとうございました

157 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 20:48:22 ID:XHDDkm7j
>>155
その、なんだ。
思いついただけなら投下しない方がいいかと…。

158 :一尉:2008/05/27(火) 21:44:43 ID:RkCFqGx8
少ない気する。支援

159 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:04:00 ID:yt6hi7Ki
誰かおりますかな?
13話が完成したので、支援必須の投下をしたいのですが、よろしいでしょうか?

160 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:05:55 ID:hGL4cRVy
おお、待っていました!
支援準備。

161 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:06:11 ID:8gb6YNqN
全力で支援だぜ。

162 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:08:00 ID:7hZUTJaZ
支援準備だぜ!

163 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:09:24 ID:ErRO65aU
うっす、援軍はばっちりのようなので、投下予告をするぜ。
最後の推敲も含めて、20分に投下すると予告しよう。

164 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:18:05 ID:vt27Ewa/
待ってましたw
支援します

165 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:20:35 ID:vt27Ewa/
なぜかsageれてませんでした
ちゃんとsageって入ってたのにorz
スマソ

166 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:22:24 ID:ErRO65aU
「内部からの襲撃だぁ!?」

 シャマルからの報告に、ヴィータはまさしく寝耳に水といった声を上げた。
 ゲームで悪質な反則を見た気分だった。
 数日前からホテルの警戒に当たり、今も敵の如何なる奇襲にさえ対処出来るよう万全の体勢を整えていたというのに、敵はまともな手順を飛ばしていきなり王手を掛けて来たのだ。

「どっから侵入された!? こっちは何も察知してねーぞ!」
『オークションの人形が突然動き出したって……! 信じられないわ、クラールヴィントのセンサーもさっき突然反応したの!』
「なんだとぉ……っ」

 ホラー映画を真に受けたような報告を聞いて、ヴィータの脳裏に浮かんだのは以前の夜の事だった。
 予兆のない突然の襲撃。時間も場所も関係ない、影の中から湧き出るような出現。
 ヴィータとシャマル、そしてザフィーラには覚えのある感覚だった。

「襲撃者は<悪魔>か!」
『<悪魔>? 何のことだ?』

 思わず口を突いて出た言葉を聞いて、通信越しにシグナムが首を傾げる。しかし、今は説明している暇がない。

「すぐに援護に向かう!」
『待って! センサーに新しい反応、今度は外部から複数の接近よ!』
『来た来た、来ましたよ! ガジェットドローン陸戦T型、機影30!』
「このクソ忙しい時にっ!」

 矢継ぎ早に飛び込んでくる凶報に、ヴィータは思わず悪態を吐いた。
 真に守るべきオークションの中枢を既に襲撃され、おまけに挟み撃ちの形で追い討ちがやってくる。
 理不尽を感じずにはいられない状況だった。

「部隊長、隊長陣から命令は出てるか!? ホールの状況はどうなってんだ!?」
『なのは隊長からの命令、「外部からの襲撃者の迎撃に専念せよ」「内部は独自に対処する」とのことです!』
『援護が必要ではないか? テスタロッサ以外、室内戦には向いていないぞ』
『―――待って、はやて部隊長と通信が繋がりました』

 現場の状況や通信を纏め、司令室へ中継していたシャマルが言った。

『こちらはやて、現在地はホールに繋がるドアの前や。マズった、締め出されたわ。敵はホールを結界で隔離しとる。ここからでは様子も分からん』

 話の内容に反して、声色には僅かな動揺すらも見せないはやての声を聞き、全員の心に僅かな安堵が浮かび上がった。
 不測の事態の中で最高指揮者の無事を確認出来たことは朗報だったし、揺るがぬ部隊長の態度は混乱と不安を払拭する効果があった。
 こういった混戦状況で、実戦経験のある上司の言動は大きな信頼性を持つ。

『現状ではホールに手は出せん。ライトニング分隊、スターズ分隊は共に外の襲撃者を迎撃。内部の迎撃は隊長陣に任せる』

 なのはの命令と状況を合わせ、判断の下、改めて部隊長から正式な命令が下される。これに逆らうことは出来ない。
 正直、ヴィータは不安に後ろ髪を引かれる思いだったが、なのは達への信頼で僅かな迷いを振り切った。
 内部に回れば外側が薄くなる。いずれにせよ、敵の侵入を許した段階で苦しい判断は避けられないのだ。

『私も外で合流するつもりやけど、この結界は得体が知れん。どこまで隔離されてるか分からんから、その間の現場指揮はシャマルに一任する。各員、速やかに行動に移れ!』
『了解!』
「了解!」

 戦況は一気にピンチだ。気がかりは山ほど。
 しかし、やるべき事を決めたヴィータは今やその真価を発揮していた。
 まず、この機動六課が守る場所へ近づく身の程知らずどもを吹き飛ばし、それが終わったら中に戻って今度は侵入したドブネズミどもを一匹残らず磨り潰す。シンプルだ。

167 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:23:45 ID:ErRO65aU
「いくぜ、グラーフアイゼン!」
《Anfang.》

 迷い無き意思を秘め、鉄槌の騎士は自らのデバイスを呼び起こした。






「とりあえず、外はこれで大丈夫かな……」

 通信を終えて、はやては小さくため息を吐いた。
 短い通信だった。こちらの様子がおかしいことは悟られていないだろう。
 余計な不安や懸念は抱かせたくなかった。つまらない自己犠牲精神などではなく、隊長としての全く合理的な考え故だ。

 ―――息を潜めて曲がり角の物陰から外へ向かう通路を覗き込めば、そこには枯れ木のような人形が数体、観客のいない人形劇のように徘徊していた。

 例の得体の知れない結界のせいで、ホテルから外に出るルートはかなり限られている。
 この人形が徘徊する通路を抜けることは必須だ。
 はやてはもう一度ため息を吐き、壁に背を預けて自分の判断が正しかったどうかを考えた。
 シグナムかヴィータに護衛を頼むべきだったか。いや、外部の敵への対応を万が一にも間違えるわけにはいかない。本来最終防衛ラインとなる隊長陣がいきなり襲われたのだ。
 部隊長という地位とその命の価値をはやては正確に理解していたが、それ故に優先順位もしっかりと決めていた。
 分の悪い賭けじゃない。今はリスクを犯す時だ。

「ガチンコは苦手やけど」

 もう一度深呼吸して、目を開く。
 意思は固まった。
 通路へと飛び出す。

「―――久々に走るか!」

 はやての気配に気付き、得体の知れない敵意が一斉に向けられる。
 久しく感じる危機感と緊張感で顔を引き締め、それでも尚不敵に笑いながら、はやてはバリアジャケットを纏って駆け出した。






魔法少女リリカルなのはStylish
 第十三話『Chance Meeting』








168 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:24:27 ID:7hZUTJaZ
ジャックポット!

169 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:24:31 ID:8gb6YNqN
支援

170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:25:00 ID:vt27Ewa/
支援www


171 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:25:52 ID:ErRO65aU
『前線各員へ! 状況は広域防御戦です。ロングアーチ1の総合管制と合わせて、私シャマルが現場指揮を行います!』

 ホテルの外周を警備していたティアナは、スバル達との合流の為にホテルへと足を戻していた。
 そこへ、シャマルの通信が届く。

「<スターズ4>了解」

 シャマルの報告に、ティアナは緊張と責任が肩から一つ降りるのを実感した。
 副隊長陣を含むベテランが今回の任務には参加している以上、新人は前線から一歩退くことになる。
 すでにヴィータとシグナムがホテルから出撃したことは確認しているし、必然的に自分達新人の仕事は撃ち漏らした敵の迎撃になるはずだ。
 その事に若干の安堵と、同時に物足りなさを感じてしまうのは若さゆえの血気なのかもしれなかった。
 しかし、本当は初出動時の激戦が異常だったのだ。
 もちろん、今回は後方に回るとはいえ、それを理由に気を緩めるような愚行は犯さない。
 ティアナは前線の様子を確認する為、シャマルにモニターを回してもらうよう個人的に通信を開こうとして―――それより早くシャマルの方から通信が繋がった。

『ティアナ。前線の様子をモニターして、クロスミラージュに送ります』
「え……っ? あ、はい」

 元より自分に状況を見せるつもりだったらしいシャマルの言葉に、ティアナは戸惑いながらも応じる。
 その疑問に答えるように言葉が続いた。

『なのは隊長から、戦闘時にはアナタの意見も取り入れるように言われているの。敵の勢力図と味方の配置も付属して送るから、率直な意見を聞かせて』

 すぐさまシャマルからモニターとマップが送られ、目の前に表示される。
 予想していなかった展開に、ティアナは動揺した。
 一新人魔導師に過ぎない自分の意見が望まれるとは思ってもいなかった。しかも、それを命じたのがなのはだ。
 自分が嫌われてるとか、蔑ろにされてるとは思っていない。だが、それでもティアナはなのはとの間に確執を感じていた。
 意に沿わぬ訓練。疑問に応じない態度。
 それらは全て、目の前に突きつけられた現実を見て吹き飛ぶ。
 ―――あたしは、能力を買われている。

「……了解!」

 適度なリラックスを保っていた体に、不意に力が漲るのを感じた。
 まだ戦闘に入ったわけでもないのに気分が高揚するのを実感する。
 目の前に敵の姿を捉え、その攻撃が視界を掠める―――そんな実戦の中ではない。しかし、確かに今自分が戦闘に関わっている緊迫感があった。
 常に前へ出て戦い続けてきたティアナにとって、全く未知の感覚だった。
 それは<指揮する者>の戦い。

「―――味方の配備はこれでいいと思います。エリオとキャロにはコンビで動くよう徹底させてください」

 スバルの合流を待つティアナの現在地から正面に捉えた方向に、最も多くの敵勢力が迫りつつある。それを迎え撃つ為にヴィータとシグナムは先行していた。
 しかし、もちろんその方向からのみ敵が来るわけでもなく、反対側からはホテルを挟み込むように別働隊の敵が接近していた。
 比較すれば少数勢ではあるが、残ったザフィーラだけでは捌ききれないこの敵の迎撃をエリオ達ライトニング分隊が担当していた。
 単独でも戦闘可能なティアナとスバルのコンビが、単純に数の多い敵の対処へ回るのは当然のことである。

172 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:26:54 ID:ErRO65aU
「ただ、ザフィーラには先行した攻性防御を重点に行動するようお願いします」
『二人への援護は要らないのね?』
「エリオとキャロの戦い方なら互いにカバーし合えます」
『了解。ではそれを加えて、これより作戦行動を開始します!』

 シャマルとの通信が打ち切られるのと同時に、ティアナの元へスバルが駆けつけた。

「お待たせ!」
「デバイスを起動させて、周囲を警戒。そろそろ前線での戦いが始まるわよ」

 そして、ティアナのその言葉が予言であったかのように、遠くの空で爆発の音と光が瞬き始めた。






「てぉぁあああああああっ!!」

 青い獣の咆哮が響き渡る。
 ザフィーラの<牙>が地を割き、崖を砕いてガジェットを串刺しにした。
 大地から隆起する無数の光の杭。
 ガジェットの熱線は強靭な障壁を揺るがすことも出来ず、逆にザフィーラの攻撃はAMFを貫通して敵をただの鉄屑へと変えていった。
 戦闘力の差は明確だった。
 しかし、戦力差はその限りではない。ガジェットは単純な武力―――物量の力で以って、盾の守護獣の牙を何体かがすり抜けていく。
 それを追う為に踵を返そうとして、しかしザフィーラは思い留まる。

「エリオ! キャロ! そちらに数体向かったぞ!」

 撃ち漏らしを後方の新人二人に任せ、彼は積極的に獲物を捕らえ、狩ることに専念した。
 不安はある。しかし、同時に楽しみでもあった。あの少年少女が自分の信頼に応え得るのか、すぐに分かるだろう。

「了解! キャロ、いくよ!」
「はいっ!」
『キュクルー!』

 迫り来る敵影を捉えて、キャロを背後に控えたエリオが戦闘態勢を取った。
 あの列車での死闘で得た、二人の戦い方。
 敵を迎え撃つエリオの体に不必要な緊張はなく、見据えるキャロの瞳に悲壮な覚悟もない。たった一度の実戦が、幼い二人を大きく成長させていた。

「ブーストいきます!」
「頼む!」

 キャロのデバイス<ケリュケイオン>が淡い輝きを放つ。

「我が乞うは、清銀の剣(つるぎ)。若き槍(そう)騎士の刃(やいば)に、祝福の光を―――」
《Enchant Up Field Invade》
「猛きその身に、力を与える祈りの光を―――!」
《Boost Up Strike Power》

 両手左右で別々の増幅魔法を行使。フィールド貫通特性の付加と、攻撃力の向上の効果を持った二種類の光がエリオを包み込んだ。

173 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:27:42 ID:7hZUTJaZ
Break down !

174 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:28:16 ID:ErRO65aU
「いっくぞぉぉおおおーーーっ!!」

 吼え、駆ける。
 恐るべき速さで飛び出した若い獣は、迫り来る鋼鉄の群れに一切の恐れ無く喰らい付いた。
 複数体による弾幕も何ら脅威にならない。
 新型ガジェットの持つ強力な熱線や、常軌を逸した<悪魔>の眼光に晒された時の圧迫感に比べれば。エリオにとってそれらは想定する脅威『以下』のものだった。
 全身を突撃槍と化したかのような一撃が機体を食い破り、ブーストにより強化され、衰えることを知らない勢いがすぐさま次の標的へ襲い掛かる。
 撃破を示す爆発が次々と巻き起こり、その中をエリオの放つ魔力光が駆け抜けていった。
 一方的な展開の中から、一体のガジェットが運良く逃げ出すことに成功する。
 仲間を省みない機械的な行動と、単純な数の有利によるものだった。
 ガジェットの向かう先。そこには、直接的な戦闘力を持たないキャロの姿があった。
 後方支援から潰そうというセオリーどおりの判断。
 しかし、もちろんそれを彼女に従う白い下僕が許すはずもない。

「フリード! <ブラストフレア>!!」
『キュァアアアッ!!』

 キャロの命令に従い、フリードはすぐさま火球を吐き出した。
 その一撃。火炎を生み出すタイムラグは短縮され、圧縮率は倍近く上がっている。実戦で何かを得たのは二人だけではなかった。
 硬球ほどにまで圧縮された火炎は、やはり単純な魔力量が及ばず、AMFによって無効化されたが、炸裂と同時に生み出された強烈な衝撃はガジェットの動きを硬直させた。
 その一瞬の停滞を、背後から迫るエリオは見逃さない。
 背中から貫通して顔を出したストラーダの穂先。そのまま槍を振り上げてガジェットを真っ二つに切り裂くと、エリオが離脱すると同時に遅れて爆発が響いたのだった。

「ほう―――」

 戦いながらも後方の戦闘を伺っていたザフィーラは思わず感嘆を漏らした。
 見事な連携だった。自分達がどんな特性を持ち、それをどう活かすか理解したうえで行動している。互いのサポートも申し分ない。
 自分に先行した単独戦闘命令を与えた理由も分かる気がした。
 エリオとキャロは二人で一つ。分担して戦うことは出来ないが、コンビを組むことで新人であっても高い完成度を誇ることが出来る。

「残念だったな。これで盾は二重だ。貴様らがここを突破できる可能性は万に一つもなくなった!」

 愚直な前進を続けるガジェットの群れに向かい、ザフィーラは後方の二人を背にして誇らしげに言い放って見せた。
 不測の事態の中で、健闘する機動六課。
 しかしこの時、彼らにとって二度目となる脅威が近づき始めていた。

「―――っく!? これは……っ!」
「どうしたの、キャロ!?」

 何かと共鳴するように明滅するデバイスを押さえ込み、苦しげに呻くキャロを見てエリオが慌てて駆け寄る。
 慣れ親しんだ寒気と苦痛の中、キャロは虚空を睨み据えながら呟いた。

「近くで、誰かが召喚を使ってる……。しかも、これは……!」
『クラールヴィントのセンサーにも反応! だけど、この魔力反応って―――!』

 シャマルの言葉を、司令室で情報を解析していたシャリオが引き継ぐ。

『以前確認したパターンです! 反応複数、気をつけてください! これは、前回の<アンノウン>と同様の反応です!!』

 悪魔、襲来。







175 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:29:15 ID:8gb6YNqN
支援〜〜

176 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:29:50 ID:ErRO65aU
「―――動きが変わったな」
「っつか、もう見た目からして変わってるじゃねーか」

 上空に退避したシグナムとヴィータは、シャマル達の報告と連動するように変化したガジェットの様子を見て顔を顰めた。
 新たに加わった増援のガジェット、また撃破には至らなくともかなりの損傷を負わせた機体も含めて、鋼鉄の体に肉の皮膚を張り付かせた姿でそこに浮かんでいた。
 破損した部分をその奇怪な肉塊で繋ぎ合わせ、巨大な眼球とそこから放つ不気味な生気を持った機械と生物の融合体と化している。
 それは間違いなくリニアレールで遭遇した、ガジェットに正体不明の蟲が寄生した姿だった。
 <寄生型>と仮称されたそのガジェットが群れを成す光景は、初見のシグナムとヴィータを戦慄させるに足る異様さを醸し出している。

『確認した<アンノウン>はそのガジェット寄生型。それとホテル周辺から、こちらは全く未知の反応が複数出てるわ』
「またかよ! 防衛線の意味ねーじゃねえか、卑怯くせえ!」
「室内戦になるか……私が行こう」
『いえ、違うの。その反応が出現してから、外へ向かってるのよ』

 シャマルの言葉に、シグナムとヴィータは眉を顰めた。
 内部へ浸透するならともかく、わざわざ外部へ姿を現す。敵の目的はホールの襲撃ではないのか?

『目的は分からないけど、スターズFやライトニングFに向かって移動しているわ』
「こちらと戦うことが目的なのか?」
「どちらにしろ、このままじゃガジェットと挟み撃ちだ。こっちもガジェットの数を全部押さえつけられるわけじゃねぇんだぞ」

 次々と舞い込む悪い報せに、ヴィータは思わず悪態を吐いた。
 敵の―――<悪魔>の目的は何となく分かる。それは、あの夜の戦いを経たヴィータやザフィーラが実感を持って理解するものだった。
 奴らが欲しがるモノがあるとしたら一つだけ。
 それは血だ。
 その生贄に、何故自分達を選ぶのまでは分からないが。

「―――ヴィータ、ラインまで下がれ」

 歴戦の騎士をして戦慄を抱かせる化け物の参戦に、背後の新人達への不安を隠せないヴィータへシグナムが言った。

「敵の数が多すぎる。二人で戦っても確実に何機かは撃ち漏らすだろう。
 混戦になれば新人達の経験不足が痛い。誰かサポートする者が必要だ。行ってやれ」
「わ、わかった!」
「シャマル、ザフィーラにも伝えろ。こちらから援護には向かえん」
『分かったわ』

 ヴォルケンリッターのリーダー格であるシグナムの判断の元、四人の歴戦の戦士達は更に追い込まれる戦況の中で行動を開始した。 





「スバル、ヴィータ副隊長が援護に来てくれるわ。それまであたし達だけでやるのよ」
「お、おう!」
「スバル」
「な、何……?」
「ビビるな」
「お、おう!」

 やれやれ。ティアナは完全に萎縮した相棒に気付かれないようにため息を吐いた。
 新たに参入した敵の正体が、あの列車に現れた者と同質であることを告げられた途端、スバルはこの様になってしまった。
 ティアナは敵の正体を知り、スバルは知らないという差もあるだろう。
 だがそれを差し引いても、<悪魔>とスバルの相性はあまり良くないらしい。
 <悪魔>の持つ、人を根源から恐怖させる闇の存在感が、無垢なスバルの感性を撫でつけ、その危機感を無闇に煽るのだ。
 ―――最悪、戦えないかもしれない。
 冷淡とも言える考えを抱きながら、ティアナはガジェットの群れが迫る方向に背を向けて、守るべきホテルの方向を睨みつけるという奇妙な状況に陥っていた。
 そして、全くの謎と告げられた敵の姿がついに確認できる。

177 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:30:16 ID:LguL7IUq
支援でも喰らいな! ハッハー!

178 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:30:20 ID:BedgnUXs
支援しろい!

179 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:31:14 ID:XjYnF68J
支援

180 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:31:23 ID:ErRO65aU
「何、アレ……?」

 何が出て来ても驚かないし、どうせ理解なんて出来っこない。
 <悪魔>に対して、前回の戦いでそう学んだスバルだったが、眼前の光景にそんな開き直りすらあっさりとなくなってしまった。
 搬入口のあるホテルの裏手からゆっくりと現れる敵の群れ。その姿は少なくとも人の形はしている。
 それらは継ぎ接ぎの布袋を出来損ないのピエロの衣装のように見せかけて、しかし決して人間では在り得ないようなぎこちない動きで跳ねるように歩いていた。
 右腕が巨大な処刑刀そのものになっており、足は単なる棒切れが二本、裾から伸びて地面に突き立ち、フラフラ動いてその不安定なバランスを終始保っている。
 一体、どんな生物がその中に入っていれば、こんな存在そのものがぎこちないピエロが出来上がるのだろうか?
 その答えを示すように、不意に敵がティアナとスバルへ向けて何かを投げつけた。
 思わず身構える二人の眼前で、放り投げられた物が力なく地面に横たわる。
 それは、丁度敵の<服>と同じ袋のような―――いや、中身が入っていなければ、まさに単なる布袋としか見えないような物だった。
 では、その<中身>とは何なのか?

「まさか……」

 ティアナが想像したものが何なのか、口にするより早くソレらは現れた。
 何かの擦れる微細な音が幾つも重なり、連続した一つの音となって四方八方から接近してくる。

「ひ……っ!?」

 それが羽音を含む『虫の移動する音』だと気付いた瞬間、スバルは思わず悲鳴を漏らしていた。
 特定の方向ではなくホテルの周辺の森林地帯から、木々の間を抜け、茂みを這い。空中から地面から、黒い煙としか表現できないほど密集した虫の群れが現れ、二人の間をすり抜けて行った。
 そしてそれらは、まるで吸い込まれるように横たわる布袋の中へ入り込んで行く。
 空気のように中を満たされた布袋は膨れ上がり、蠢き―――そして立ち上がった。

「うぇええっ!?」
「まったく、虫に縁があるわね」

 不気味なピエロの中身を知り、スバルは盛大に顔を顰めて、ティアナは皮肉交じりの笑みを浮かべた。
 無数の虫―――<スケアクロウ>が群れを成して布袋に入り込み、あたかも一つの生命のように振舞う姿。
 それが、新たに現れたおぞましい敵の正体だった。

「ね、ねぇ、ティア。アレ殴って、もし袋が破れたら……」
「帰りに殺虫剤買っていきましょ」
「うわぁあああ、嫌だぁー! 最大のピンチだよぉ!」

 すでに虫がトラウマになりつつあるスバルの横では、他人顔のティアナが射撃武器であるクロスミラージュを構えていた。
 ある意味普段通りである二人のやりとりの前では、先ほどと同じプロセスで次々と敵が数を増やしている。まるで風船のような手軽さだった。

「真面目な話、必要以上にビビることなんてないんだからね。スバル、アンタは強いんだから」
「う、うん。分かった!」

 非現実的な光景に恐慌を起こしそうになるスバルの意識を、普段通りのティアナの姿が現実に繋ぎ止めていた。
 その不気味さ以外、全く未知の力を秘めた敵。<スケアクロウ>の数は、既に10を超えている。

「いくわよ!」
「おう!」

 否応の無い緊迫感が周囲を支配する中、ティアナの銃火が開戦の合図となって二者の間で瞬いた。






181 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:31:36 ID:8gb6YNqN
ティアナの判断に期待ww
支援

182 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:32:44 ID:6+wlsElN
支援

183 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:32:56 ID:7hZUTJaZ
殺虫剤か! 支援だぜ!

184 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:33:01 ID:ErRO65aU
『スターズF、<アンノウン>との交戦を開始しました! ライトニングFもたった今接敵!』
「クソ、何でこんなことに……!」

 オペレーターの報告が通信機から漏れ、ヘリの機内でヴァイスは拳を握り締めた。
 閉じられた手のひらの中には無力感があった。
 シャマルからの通信がヴァイスに向けられる。

『ヴァイス陸曹。敵は今のところホテル内部には向かっていませんが、いつ目標を変更するか分かりませんし、これまでの修験パターンを省みるに、奇襲の可能性も考えられます。危険を感じたら、すぐにヘリを上空へ退避させてください』
「……っ、了解」

 戦闘能力を持たない単なる移動手段であるヘリとそのパイロットであるヴァイスに対して、まったく妥当な命令ではあったが、同時に彼への戦力外通知であることも明らかだった。
 その事実に、何故かどうしようもない情けなさと焦りを感じる。
 焦燥感の理由は分かっていた。
 今、機動六課は苦しい状況にある。
 隊長陣は押さえ込まれ、護衛すべき要人達はすでに窮地に立たされている。浮き足立つ戦況の中、正体不明の敵の追撃まで現れ、味方の戦力は絶望的に足りない。
 そんな中で、戦う力を持っているはずの自分が後方で燻っているという事実が、どうしようもなくヴァイスを焦らせ、責め立てるのだ。
 戦えるだけの技能を持ち、武器も手元に、そして何より自分の尻にまで火が付きそうな戦闘の最中―――でも何もしない。
 自分はヘリパイロットだから。
 それが愚にも付かない言い訳なのだと理解しているからこそ、尚ヴァイスの焦燥感は増した。

(ここまで追い込まれてるってのに、頭の中がグルグル回るのをやめねぇ。指一本動かせば戦えるのに!)

 トリガーを引く為の指一本。ソイツが動けばいい。それだけで自分は敵を撃ち続けるマシーンになれる。その戦力を今は誰もが必要としているのに。
 動かない。
 狙撃手として、前線で戦い続けてきた自分の中で最も新しい経験が、引き金を引くことを躊躇わせる。

(俺は、ビビっている。敵味方が入り乱れる混戦の中で、俺の弾が味方のすぐ傍を掠めるだけで竦んじまう……)

 過去の失敗。一般人の誤射。それが実の妹。
 自分の魔法が正義の為に放たれ、女子供を人質に取るようなクソ虫の犯罪者どもを確実に貫き、一瞬で意識を砕く―――そう信じて疑わなかった頃だ。
 敵に気付かれずに倒すのが<狙撃>
 その為に誘導性を削って限りなく弾速を高めた魔力弾は、実弾と同じくただ直進する破壊の塊。決して当たる物を選びはしない。
 それ故に重い一発の弾丸の重みを、スコープの先で倒れる妹を見てようやく実感したのだ。
 その重さが、狙撃手としてのヴァイスの歩みを止めてしまった。
 命に別状は無かったが、光を失った妹の片目が自分を見る度に彼の良心は苛まれる。
 同じことが繰り返されたら―――?
 その自問が、今のヴァイスを押さえ込む最大の原因だった。

(俺はヘタレか? ヘタレだな。俺の狙撃にはもう絶対なんて無くなっちまった。それを知っただけで、もう指一本動かせねぇ……)

 この手は、ただただ無力感を握り締めるだけで、あとは何の役にも立たない。
 ホテル屋上にある来客用のヘリポートからは、戦況が一望出来た。
 上空で瞬くシグナムとガジェットとの激突。地上の戦闘は、ティアナとスバルのいる方向が一際激しい。
 状況が有利なのか不利なのかまでは分からないが、二人の少女が激戦の中にいることだけは分かった。
 二人のうち、自分と同じ限りなく実弾に近い魔法を操る少女を思い浮かべる。

(ティアナ、お前は撃てるんだよな。制御の利かない弾頭を、味方に当たるかもしれない弾丸を、味方の為に撃てるんだよな―――)

 それは彼女が誤射を経験したことが無いからなのかもしれない。
 しかし、そんなものは何の言い訳にもならず、ただ現状で自分とティアナとの差が明確に表れていることだけは確かだ。
 ティアナは撃てる。
 自分は撃てない。
 それが何よりも事実。誰かの為に撃てる彼女と、撃てない自分の違い。
 覚悟の違い。

185 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:34:09 ID:ErRO65aU
(俺がヘリを選んだのは、こんな時に篭って震える為じゃねぇ!)

 トラウマを克服出来たわけじゃない。だからこんな物に乗っている。
 しかし、戦いが一人一人の覚悟や決意を待ってくれるような悠長なものではないことはヴァイスも理解していた。
 自分に嘘をついて、心の傷を欺きながら、少しだけ戦場に近づく。
 コクピットに取り付けられていた待機モードのデバイスを引っ掴むと、ヴァイスは意を決して座席から立ち上がった。

(少しだ! 少しだけ腹を括る! それくらいなら、今の俺にも出来る筈だ!)

 手の中のデバイス<ストームレイダー>が、久方ぶりに呼びかける主の命令に応じて真の姿を現した。
 第97管理外世界の質量兵器に酷似した形状。
 ヴァイスのイメージに応じて、スナイパーライフルの姿を持ったデバイスは戦いの息吹を放っていた。

「こちら、ヴァイス! 緊急事態につき、狙撃による援護に回ります!」

 驚くシャマルを押し切り、ヴァイスは<悪魔>との戦闘に参戦した。






「リボルバーシュートォッ!!」

 スバルのナックルから放たれた衝撃波がスケアクロウ数体をまとめて吹き飛ばした。
 戦って分かったことだが、敵の動きは遅い。
 人体の構造に囚われないトリッキーな動きと数だけは脅威だったが、いずれも高い運動能力を持つスバルの脅威には成り得なかった。
 横合いから飛び掛ってくる敵の一撃を大きく避け、刃が空しく地面に突き立った瞬間を狙って蹴りを叩き込む。
 骨格を持たない体がグニャリと折れ曲がり、次の瞬間吹っ飛ぶ。
 リボルバーシュートで吹き飛んだ仲間と同じく、そいつは地面を転がった。
 しかし、人間ならば悶絶する一撃を受けても、奴らは意識を失うことなどない。
 無数の蟲が寄り集まって人の形を取っているだけの存在に、一つの意識などというものが存在するかははなはだ疑問だが。

「ダメだ、キリがないよ!」
「威力が足りないだけよ、腰が引けてるわ! もっと踏み込んで、スバル!!」

 一撃を与えることは容易いが、ダメージらしきものを感じない敵の動きに焦るスバル。それをティアナが叱咤した。
 今のスバルの動きはティアナの目から見ても精彩を欠いている。
 反してティアナの攻撃は冴えに冴えていた。
 両手が火を吹く。二人を包囲するように動く敵の最中へ、ティアナはクロスミラージュの魔力弾を次々と送り込んだ。
 衝撃波特有の広い範囲と浅い貫通力を持つリボルバーシュートとは反対に、ティアナの形成する魔力弾は小さく硬い。
 布の防御を易々と突き破り、内部の蟲を消し飛ばして、確実にダメージを刻み込んでいった。
 ズタズタに撃ち抜かれた目標から順番にスケアクロウは消滅していく。
 出血のように内部の蟲の死骸が穴から噴き出し、最後は粉々に破裂四散して、グロテスクな死に様を晒していった。

「スバル、もっと動いて! アンタのスピードなら、こんな奴ら敵じゃないのよ!?」
「期待してもらってるところ悪いけど、これで精一杯だよ!」

 互いに交わす軽口。しかし、応じるスバルの声には少しずつ余裕が無くなってきている。
 単純な攻撃力ならば、ティアナよりスバルの方が優れていることは自他共に認めているのに。
 ―――やはり、スバルは<悪魔>を相手にして竦んでいる。
 ティアナは冷静にそう結論付けて、内心で舌打ちした。
 予測し辛い敵の攻撃や、その数の多さもプレッシャーになるだろうが、そもそも思い切りの良さがウリのスバルにそんな理由は副次的なものとしか思えない。
 彼女は、ただ<悪魔>を怖がっている。
 それが<悪魔>と戦い慣れた自分以外の人間が持つ普通の感覚なのか、ティアナには判断出来なかったが、状況が芳しくないことだけは理解出来た。

186 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:34:42 ID:7hZUTJaZ
支援を緩めるな!

187 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:34:48 ID:6+wlsElN
支援

188 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:35:39 ID:ErRO65aU
「とにかく、敵を倒すことに集中して! ガジェットまでやって来たら厄介なことになるわ!」
「わ、分かってる!」

 足を砕いて転倒させた敵に銃弾を撃ち下ろしながら警告するティアナに、しかし返す言葉は頼りない。
 仕方がない。
 スバルが戦えないのなら、自分が戦う。
 単純な道理だった。

「OK! なら、あたしが踊ってあげるわ―――!」

 闘争心に満ちた獣が牙を剥くように口の端を吊り上げ、ティアナは嬉々として<悪魔>の群れを睨み付けた。
 つい先日も感じた高揚だ。昔は何度も感じていた。
 初めての生娘じゃない。<悪魔>を狩るのは得意だ。
 ティアナは『いつものように』敵中へ自ら突っ込もうと足に力を込め―――不意に脳裏を走り抜けた。



 自分が戦う時、いつも無意識に思い描いていた<不敵な笑みと赤いコート>の姿とは別に、<揺るがぬ瞳と白い外套>の姿が。



『チームの中心に立って、誰よりも早く中長距離を制する―――』

 自分の積み重ねてきた戦い方に間違いは無い。
 そう確信しているが、訓練で何度も教えられた教導官の言葉が、突撃しようとするティアナの足を止めた。
 戦うのはいい。その為に自ら前に出ることも。
 でも、それじゃあ今本調子じゃないスバルは?

『前だけを見ないで。一度足を止めて、視野を広く持てば、周りの仲間の動きも見えてくる。そして味方を活かすの―――』

 ティアナは自分一人で戦うことを選ぶと同時に、無意識にスバルを切り捨てようとしていたのだ。
 それに気付いた瞬間、愕然とした。
 リスクを背負って前に出ることは、ただ自分の覚悟の問題だと思っていた。
 その結果、残された相棒がどうなるのか忘れていた。
 圧倒的な力を持つダンテと共に戦った昔とは違うのだ。あの時の経験は自分の中で確かに自信となっているが、今ここに立つ自分は勝手気ままな子供ではない。
 機動六課の一員であり、スターズ分隊のセンターガードの任を与えられた管理局員だ。
 ただ敵を倒すだけじゃない。仲間と共に戦い、任務を果たす義務がある。
 その責任を背負う自覚と覚悟をするだけの歳は重ねてきた。

『貪欲になることはいいことだよ。でも、強くなることは自分を追い詰めることじゃない―――』

 昂ぶり、熱くなった頭が急激に冷えるのを感じた。

「―――スバル、もう一度リボルバーシュート!」
「え!? ……了解!」

 突然のティアナの言葉にも、スバルは反射的に従った。
 解き放たれる衝撃波が数体の敵を巻き込んで、混沌としつつある戦場を一掃する。
 しかし、やはりそれは敵を倒す決定打には成り得ない。地面に叩きつけられたスケアクロウは、ノロノロと次々に起き上がってくる。
 ―――その無防備な瞬間を、ティアナの正確無比な射撃が狙い撃ちにした。

「ティア、ナイスショット!」
「作戦変更! スバルは動き回って、敵を引っ掻き回して! アイツらじゃあアンタのスピードには追いつけないわ! 援護とトドメはあたしがやる!」
「了解っ!!」

189 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:36:07 ID:doT26RL5
支援

190 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:36:32 ID:6+wlsElN
支援

191 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:36:45 ID:ErRO65aU
 倒した敵の数こそ数体だったが、その一撃は戦いの流れを変えた。
 これまでとは違う、互いに要所でカバーし合う方法ではなく、一方が一つの役割に徹する新しいコンビネーション。
 ティアナの強力な援護を得たと確信した途端、動きに迷いの無くなったスバルが思う様駆け抜け、後方からティアナが射的ゲームよろしく敵を狙撃する。
 
「どりゃぁあああっ!」

 ミスショットなど一度も無く、連続して炸裂する魔力弾の音に勇気付けられたのか、スバルの声に力強さが戻った。
 抉り込むようなリボルバーナックルのブローが敵の腹を打ち破って、黒い中身を撒き散らしながら宙へ跳ね上げる。
 空高く舞い上がった標的を、ダメ押しにティアナの射撃が貫いた。
 流れを味方に付け、順調に撃破数を重ねていく中で、左手のクロスミラージュのカートリッジが尽きた。

「リロードに入るわ! 援護、少し薄くなるわよ!」
「了解!」

 一度勢いのついたスバルは簡単には止まらない。
 もはや、ティアナの援護に後押しされまでもなく、彼女は自ら駆ける。
 右の火力を維持しながら、ティアナはバレルカートリッジをパージして、左腰のパウチにある予備のバレルを装着しようと腕を下げた。
 その時。

『スターズF、そちらにガジェットが接近しています! まもなく接敵距離!』
「く……っ!」

 シャマルの切羽詰った報告が、ティアナを一瞬動揺させた。
 グリップとバレルがガチッと噛み合う音と、ほぼ同時に木々の間を抜けて一機のガジェットが飛び出してくる。
 迎撃は。間に合う。
 間に合う、が。AMFを思い出した。咄嗟の一撃でフィールドを撃ち抜けるか?
 確実さを欠いたギャンブルの一発にティアナは歯噛みしながらも魔力を可能な限り集束する。
 それを放とうとした瞬間、馴染みの薄い射撃音と共に空中のガジェットがその身に弾痕を刻んで爆発四散した。
 スバルではない。全く予想だにしなかった援護の射線を追ったが、その先にあったのはホテルだけだった。

「今のは!?」
『―――こちらヴァイス。増援は任せろ。離れた敵を優先して、俺が狙撃する』
「ええっ、ヴァイス陸曹!?」

 スバルの上げた驚愕の声は、ともすればティアナも漏らしてしまいそうだった。
 援護も予想外なら、それを行った人物自体予想外だ。
 一瞬で着弾した魔力弾の弾速から、自分と同じ誘導性を削った集束率を見出したティアナは、それをホテルからの距離で正確に当てたヴァイスの腕前に戦慄した。
 ティアナの命中精度も相当高いが、それと狙撃では必要とされる技能が全く違う。

「すごい……」

 思わず感嘆が漏れた。
 これまでの自分の戦い方に疑問を持ちはしないが、新しい見方が増えた気がする。
 足を止め、敵を見据え、そして撃つ―――これを極めれば、きっと自分はもっと強くなれる。

「おっしゃぁああー! 待たせたな、雑魚どもォ!!」

 間髪入れずに幾つもの鉄球が流星のようにスケアクロウの群れに降り注いだ。
 ガジェットに遅れて駆けつけたヴィータのシュワルベフリーゲンが一撃で一体、威力に物を言わせて敵を引き裂く。
 スバルとティアナの前に降り立つ真紅。
 小柄な上司は、その身にそぐわない圧倒的な力強さを以って敵の群れを一瞥した。

「……オメーら、よく持たせたな。こりゃぁ、あたしのお守りなんて必要ねぇか」

 肩越しに振り返り、悪戯っぽく笑うヴィータに対して、ティアナも思わず苦笑を浮かべる。

192 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:37:09 ID:8gb6YNqN
支援


193 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:37:51 ID:6+wlsElN
支援

194 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:38:03 ID:ErRO65aU
「いえ、援護感謝します」
「相変わらず固い奴だな。知ってるか? なのは隊長は部下のそんな態度に結構傷付いてるんだぜ」
「この任務が終わったら、善処しますよ」
「なんだ、今日は素直じゃねーか」
「いろいろ思うところがあったんです」

 ヴィータは深く尋ねなかったが、自然と二人の間には訓練の時に出来た溝はなくなっていた。
 先ほどの一撃でスケアクロウの数は随分減り、周囲を見回す余裕の戻り始めた状況でスバルがヴィータの傍に駆け寄る。

「ヴィータ副隊長、ガジェットの方は!?」
「おう、シグナム一人で全部抑えられるとは思えねぇ。すぐに来るぞ」
『来たわ。寄生型ガジェットが3体、正面から来ます!』

 シャマルからの正確な情報が飛び込み、三人はすぐさま身構えた。
 援護のヴァイスを加えた四人の中で、自然とティアナが指示を下す。

「ヴァイス陸曹は<アンノウン>への狙撃をお願いします!」
『了解、任せときな!』
「接近するガジェットに対しては、まずあたしが先行射撃を加えます! その後は―――」
「よし、射撃後三秒で突撃すっぞ! いいな、スバル!?」
「了解!」

 淀みなく打ち合わせを追え、ヴァイスの狙撃が小気味よく周囲の敵を吹き飛ばす中、ティアナはカートリッジをロードした。
 足元に展開される魔方陣。増加した魔力と鍛え上げた技術で周囲に10発を超える高出力の魔力弾を形成する。

「いきます! <クロスファイアシュート>―――Fire!!」

 空中に姿を現した寄生型ガジェットの不気味な姿を捉え、それに向けてティアナは全力射撃を叩き込んだ。
 爆裂する閃光と煙。その中でまだ尚蠢く影に向けて、青い影と赤い影が突撃していく。
 圧倒的不利な状況下で始まった戦闘は、しかし今や人間の勝利で終わろうとしていた。
 戦いの最中、ティアナの手に残った新しい力の片鱗を感じさせる感触と共に。






「―――全滅した」

 戦いの音が途絶えたホテルの方向を見つめ、ルーテシアが簡潔に戦闘の結末を告げた。
 同時に彼女の足元で広がっていた暗黒の空間は波が引くように消えていく。
 ルーテシアの言葉がガジェットと悪魔の全滅を示すことだと、ゼストは理解していた。
 こちらの敗北に終わった結果だが、どんな形にせよこの少女が闇の力をこれ以上使い続けなくても良いというのは望ましいことだ。

「そうか。目的が達せられたかは分からないが、もう我々が関わる必要もないだろう」
「ん」

 ゼストの渡す外套を羽織り、ルーテシアは小さく頷く。

「ここまで手が届くは思えんが、早くこの場は去った方がいい」

 元々気の進まないことだっただけに、さっさとルーテシアを連れてここを離れたかった。
 あのホテルにいる筈の協力者とやらもゼストにとっては得体の知れない存在だ。
 あえてその情報を渡さないスカリエッティ本人も含めて、全く信用の置けない者ばかりだった。
 ルシアを数少ない信用の置ける者達を除いて、積極的に関わりたいとは思わない。

195 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:38:39 ID:8gb6YNqN
まだまだ全力で支援

196 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:38:51 ID:6+wlsElN
支援

197 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:39:03 ID:ErRO65aU
「ルシアは?」
「もうこちらに向かって来ている。あとで合流する」
「わかった」
「さて、お前の探し物に戻るとしよう」

 ルーテシアを促し、踵を返す。

「……む?」

 何の前触れも無かった。
 その瞬間、ゼストが異変を察知できたのは歴戦の勘と、何より長くルーテシアと付き添うことで磨かれた闇の気配への感性だった。
 僅かな違和感に振り返った時、ゼストの視界に異様な光景が飛び込んできた。
 何も無い場所にポツンと、黒染みのような『影だけ』が広がっている。

「―――ッ! ルーテシア!!」

 咄嗟に少女の体を自分の元に引き寄せた。
 僅かな違和感はあっという間に巨大化し、凶悪な獣の形となって二人に襲い掛かった。
 地面に広がる影から、まるで『物に影が出来るのではなく影から物が出来るのだ』と言わんばかりに真っ黒な豹の化け物が飛び出す。
 間違いなく<悪魔>の一種だった。
 襲い掛かる影の化け物。僅かなヒントと一瞬の判断を間違えなかったゼストは、幸運にもその攻撃からルーテシアを守ることに成功した。
 つい先ほどまでルーテシアのいた場所を<悪魔>の爪が薙ぎ払う。
 ルーテシアを抱えたまま、ゼストは慌てて距離を取ろうとしたが、敵は間髪入れずに追撃を仕掛けてきた。
 影そのもので構成された獣は、開いた口を巨大化させて、二人まとめて喰らい尽くそうと跳ねる。

「ちぃ……っ!」

 悪態は迫り来る死の影に何の意味も無く。
 ゼストは腕の中のルーテシアを庇うように、敵の前に自らの体を差し出して盾にしようとした。
 しかし、覚悟を決めても体の一部を失うような激痛はやって来ない。

「お前たちは……」

 視線をやれば、代わりに敵が吹き飛ぶのが見えた。
 二人を救ったのは、何処からとも無く現れた二匹の白い狼だった。
 文字通り『何処から』とも無く―――ルーテシアの足元に一瞬広がった影の中が、この世に存在する『何処か』である筈が無い。
 対峙する黒い豹と相対してルーテシアとゼストの前に立ち塞がった二匹の白い狼は、やはり<悪魔>に類する者だった。

「ありがとう―――<フレキ><ゲリ>」

 ルーテシアの抑揚の無い言葉に、二匹の狼は僅かに顎を動かして応答した。
 この二匹も<悪魔>には違いない。
 ルーテシアは<悪魔>を使役するが、その支配は完全ではなく、奴らにとって人間は等しく生贄だ。また、この二匹には別に主が存在する。
 しかし、そんな<悪魔>の中でも、この二匹の狼は比較的マシな方だとゼストは認めていた。
 少なくとも、この二匹はルーテシアを守ろうとしている。
 互いに威嚇する唸り声を上げ、白と黒の<悪魔>が睨み合う拮抗状態が展開された。
 条件は五分だ。なんとかして、この状況から抜け出さなくてはならない。
 ゼストは素早く思案し―――拍子抜けするほどすぐに変化は起こった。

「ゼスト! ルーテシア!」

 木々の間から人影が飛び出す。
 駆けつけたルシアは拮抗した状況の中、一瞬で黒い塊を敵と判断すると、空中で全身を錐揉みさせながら遠心力の乗ったダガーを投げ放った。
 銃弾に匹敵する加速を得た刃は敵の眉間に突き刺さる。
 生身とは思えない姿では、その一撃がダメージを与えたかまでは判断出来ないが、攻撃を受けた敵はあっさりと身を足元の影に沈めて消えていった。

198 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:39:51 ID:6+wlsElN
支援

199 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:40:11 ID:Dn3ryCha
ダンテの出番なし?支援

200 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:40:21 ID:ErRO65aU
「―――去ったか」

 脅威が消えたことを確認して、二匹の狼もまた霞のように消滅していく。
 彼ら<悪魔>には時間も場所も関係ない無く―――ゼストは改めてこの不可思議な存在に戦慄した。

「ゼスト、今のは?」
「ルーテシアが呼び出した<悪魔>ではないな」

 周囲を未だ警戒するルシアにゼストは答える。
 二人の間で、珍しくルーテシアが口を開いた。

「……私以外にも、<悪魔>を召喚できる人がいる」
「本当か?」
「さっきと、私が召喚した時も、何かと共鳴した。あのホテルに―――」
「なんてことなの……」

 ルーテシアの指差す先。ホテルにいるらしい、もう一人の悪魔召喚師を思い浮かべて、ルシアが吐いたものは悪態などではなく、ただはっきりと憐れみだった。
 敵であろうと味方であろうと、まともな人間が<悪魔>と関わって不幸にならない筈が無い。
 今のルーテシアがそうであるように。
 ルシアとゼストは互いの顔に浮かぶ悲痛な表情を見合わせ、諦めたようなため息を吐いた。
 一体、<悪魔>は何処まで自分たちに付き纏うのか?

「……さあ、もう行きましょう」

 重く沈む空気を捨て置き、ルシアは二人を促した。
 また追撃が迫る前に、この場を離れなければ。
 三人はまたいつもように寄り添って森の奥へと消えていった。

「そういえばルシア、随分と速かったな」
「警備の人間が予想以上に健闘していたわ。私が手を出したのは、ほんの少しだけよ」
「なるほど。管理局も、なかなかやるようだ」
「いずれ、私達とぶつかることになるかもね」
「かもしれんな」






「―――キャロ? キャロ、大丈夫?」
「……エリオ君」

 なんだか我武者羅なままに戦闘は終了した。
 二度目の戦闘は初めての時と同じ緊張の連続で、しかしただ一つ違うことは集中出来たことだった。
 恐れ戦き、動けなくなることはない。自分の力で戦い抜けたことが、今のエリオには誇らしい。
 しかし、共に戦った少女が虚空を見据えたまま微動だにしないのを見て、エリオは緩んでいた気を引き締めた。

「ひょっとして、まだ何かいるの?」

 キャロには自分には無い力がある。
 それは、エリオが漠然と感じていることだった。
 死んでしまいそうな儚さと、全てを圧倒するような力を同居させる不思議な少女の存在は、エリオの中で知らず大きくなっている。

「ううん、大丈夫。あのピエロみたいな敵はもういない―――と、思う」

 根拠を話せないのに断言するものおかしいかな? と思い、キャロは付け加えた。

201 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:41:27 ID:ErRO65aU
「そっか」
「うん。ただ、逃がしちゃったな、と思って」
「逃がした?」
「敵を」

 その言葉の真意を、エリオは全く誤解した。
 夢中で戦い続ける中で、敵を一匹残らず倒せたか確信は無い。おそらく、何匹かは逃げたのだろう。
 キャロはそれを指している、と―――。
 しかし彼は知らない。
 キャロが、この襲撃の一因となる者達に、あとわずか指を掛け損なっていたという事実を。

(わたしと同じ、<悪魔>の力を持つ人……)

 自分の影に戻ってくる<シャドウ>が怒りの感情を燻らせているのを感じ、キャロはぼんやりと思索した。
 仲間意識なんて感じない。
 今は見ぬ<悪魔>の力を使う同胞に対して抱く感情があるとすれば、それは僅かな畏怖であった。
 あの列車の一件以来、この力を不必要に恐れることは止め、使うことを覚えたが、当然のように頼もしさや自信なんて欠片も感じはしなかった。
 相も変わらず<悪魔>は恐ろしく、おぞましい。
 今も命令にこそ従うが、明らかな不満と指定した獲物をただ屠殺することだけを欲する闇の獣は、人が従えるような存在では決して無い。
 ―――心なんて許せない。気を緩めれば、その瞬間殺される。
 だからこそ、あれほど多くの<悪魔>を召喚し、使役した敵に対して、キャロは畏怖しか感じなかった。

(きっと、その人はわたしとは違う)

 <悪魔>を恐れていないのだろうか?
 <悪魔>を愛しているのだろうか?
 いずれにせよ、自分とは違う<悪魔>との関わり方を持つ相手だ。
 もし、これから先その人と顔を合わせることがあったら、一体どうなってしまうのか自分自身でも分からない。

「……敵で、良かったのかも」

 キャロは思わず本音を呟いていた。
 どんな相手にせよ、敵なら分かりやすい。殺し合いをすればいいだけだから。

「エリオ、キャロ。よくやった。周囲の敵はこれで一掃されたようだ」

 先行してガジェットを狩り続けていたザフィーラが戻って来て、幼い二人を労った。
 今や、彼は二人の認識を完全に改めている。
 彼らはベルカの騎士が認める戦士だった。

「スターズ分隊も戦闘を終了している。これより合流するぞ」
「あの、フェイト隊長達の方は……」
「連絡待ちだ。あの二人なら問題はないだろうが、合流後も連絡が取れなければ、おそらく副隊長陣が突入することになるだろう」
「たぶん、大丈夫だと思います」
「む? ……キャロがそう言うなら、そうかもしれんな」

 根拠の無いキャロの言葉にも、ザフィーラは納得して見せた。
 彼もキャロの独特の感性は知っている。
 レアスキル持ちは理屈では説明できない能力を持つ者も多い。断定は出来ないが、キャロの保証は少なからずなのは達の身を案じていたザフィーラとエリオを安堵させた。

「……あれ?」

 三人連れ立って合流地点へ向かう中、最後尾を歩いていたエリオはふと地面に光る物を見つけた。
 駆け寄り、それを拾い上げる。周囲に散乱したガジェットの残骸の最中にソレはあった。

202 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:41:28 ID:8gb6YNqN
ダンテがどうなったか気になるww
支援

203 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:41:47 ID:FUshPx6z
ダンテマダー?

204 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:42:53 ID:ErRO65aU
「ナイフ……」

 矢じりのような刃と、握って振るうことを目的としていない細い柄。
 投擲用のスローイングダガーだった。
 異様と言えば異様な物が転がっていた。
 単純な金属物であるダガーを扱う者などこの場にはいない。
 ガジェットの武装であるはずもなく、仮に第三者がこの場に居たとしてもこの武器を使う者が単なる魔導師や魔法生物であるはずがなかった。

「エリオ、何をしている?」
「あ、はい! 何でもありません、すぐ行きます!」

 ザフィーラの呼び声がエリオの意識を呼び戻し、答えの出ない思考は中止された。
 一先ず、拾ったダガーを懐に収め、エリオは慌てて二人の後を追った。






「ホテル周辺、敵影ありません」

 幾つもの報告が飛び交っていた司令室に、最も望まれる一言が告げられる。
 突然の奇襲に始まり、混戦気味の戦闘で絶えず緊張感を強いられていたオペレーター達にようやく安堵の色が広がった。
 つい先ほど、簡潔だがなのはから内部での戦闘が終了した報告も受けている。
 しかし、一つの山を越えた穏やかな空気の中で、ただ一人グリフィスだけが周囲とは全く反対の方向へ表情を変化させていた。

「八神部隊長に通信を繋げ! 早く!」

 凛とした声は緊張感を失わず、むしろそこに焦りすら加えられていた。

「えっと……特に部隊長から指示は出ていませんが」
「だから、こちらから繋げと言っているんだ!」

 困惑するオペレーター達の遅々とした反応に、グリフィスは珍しく苛立ったような態度を示す。
 慌ててコンソールを操作し、通信を担当したルキノはようやく異変に気付いた。

「あ……っ、通信繋がりません!」
「ホテル内の敵影をもう一度調べろ! 一番近いのはヴィータ副隊長だったな、すぐに『救護』に向かわせるんだ!」

 最初にはやてと通信を交わした段階で、彼女の言動に違和感を感じていたグリフィスは現状を既に想定していた。
 だからこそ、戦闘の最中最も苦心したのは、戦力を割いてはやてを救いに行くよう命令を下すことを自制することだった。

「『救護』って……部隊長、襲撃されてるんですか!?」
「十分考えられるだろう? 外を襲った<アンノウン>もホテルから出てきたんだぞ。とにかく、部隊長の無事が確認できるまで最悪を想定して動け!」
「でも、部隊長なら自分の身を守るくらい……」
「バカヤロウ! 部隊長の魔法特性を知らないのかっ!? 室内戦で戦える人じゃない!」

 おそらく初めて聞くグリフィスの怒声に、ルキノは思わず身を竦めた。
 普段の穏やかな物腰を一切無くした余裕の無いグリフィスの様子を見て、全員がようやく緊急事態を察する。
 慌てて各々が行動しようとする中、不意に通信モニターが開いた。

『アロー、聞こえますか? 窓から見たけど、戦闘は終了したんかいな?』
「八神部隊長!!」

 バリアジャケットを纏っているが、変わりないはやての顔がモニターに映し出されるのを見て、その場の誰よりも大きなグリフィスの声が響いた。
 いつの間にか、傍らにはリインも浮いている。

205 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:43:54 ID:ErRO65aU
「は、はい! 戦闘は終了しました。こちらに損害はありません。ホテルの人員に関しては、まだ調査待ちです」
『ごめんごめん、ちょっとさっきまで立て込んでてな。戦況把握出来てへんねん』
「付近に敵は? 救援は要りますか?」
『あらら、やっぱりグリフィス君にはバレてたのねん』

 努めて冷静にはやての様子を伺っていたグリフィスは、負傷の様子も無いことを確認して、ようやく本当に安堵のため息を吐くことが出来た。
 はやてのテンションが少し高いことを除けば、切羽詰った様子は見られない。状況は安定したのだろう。

「……貴女の考えを知ることが、僕の任務ですよ」

 グリフィスは苦笑しながら、少しだけ皮肉交じりに言って返した。

『相変わらず殺し文句上手いなぁ。愛してるよー、グリフィスきゅん!』
『……すまないね。心配かけまいとしているが、本当に危なかったんだ』

 不意に、はやて以外の男の声が通信に割り込んだ。
 モニターを共有して現れたのは、オークションの参加者とも思えるようなスーツ姿の麗人だった。
 機動六課にとって多少なりとも関わりのあるその人物の登場に、グリフィスは驚愕する。

「ヴェロッサ=アコース査察官!?」
『や、グリフィス君。なかなか素敵な台詞だったよ。今度ご教授してくれ』

 はやての副官として働く中で、グリフィスはヴェロッサとの面識を得ていた。

「アコース査察官が、部隊長を?」
『ああ、保護したよ。例の謎の襲撃者に関連する<アンノウン>だね。なんとか駆逐出来た』
『あー……ごめんな、グリフィス君。心配掛けて』

 先ほどまでの、何かを誤魔化すような騒がしさは身を潜め、はやては苦笑を浮かべながら言った。
 グリフィスが自分の陥っている事態を察し、その上でこの状況で正確な指揮を執ってくれるという信頼があった。
 しかしそれは、彼の心配を知って無理を通したのと同じことだ。
 隊長としても、一人の人間としても、自分の命は自分だけのものではない。はやてはそれを自覚していた。

「いえ、無事ならそれで結構ですよ。―――近隣の観測隊に通達を出し、念の為周辺の森林を探ります」
『うん、お願いな。救護隊への通達は?』
「すでに済んでいます」
『なら、私はこのままアコース査察官と一緒にホールへ向かってなのは隊長達と合流するわ。応援が来るまで、部隊は警備を続行な』
「了解しました」
『ところで、グリフィス君』
「はい?」
『さっき、チラっと見えたのはデレっちゅーことでええ?』
「通信終わります」

 冷たく通信を切り、シャリオ達の忍び笑いを聞き流しながら、グリフィスはようやく普段の機動六課の空気が戻ってくるのを感じた。







206 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:44:47 ID:8gb6YNqN
まだまだ〜〜支援

207 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:45:01 ID:ErRO65aU
 戦闘が終われば、ホテルの周辺は拍子抜けするほど平穏を取り戻していた。
 相変わらず<悪魔>どもは倒れた後に一切の残骸を残さない。
 息も出来ないほどの大乱闘を繰り広げたと思ったのに、実際に残るのは木や地面に刻まれた破壊の跡と散らばった鉄屑だけだ。

「あたしは地下駐車場を見てくる。オークションの品物が一部、まだあそこに置いてあるはずだ」

 簡潔に警備の続行を命じて、ヴィータはスバルとティアナに告げた。
 再び新人達を残していくことに僅かな不安を感じるが、未だ興奮冷めやらぬスバルはともかく冷静なティアナには任せてもいいと思った。

「警備員がいるはずだけど、一般のだからな。あの化け物どもが残ってたら逆にやべえ。お前らも、まだ油断すんなよ?」
「了解。ライトニング分隊と合流後、少し周囲を散策します」
「あの、なのはさ……隊長は?」

 スバルはなのはの安否というよりも、ただなんとなく声が聞きたいなと思って尋ねた。
 戦っている時は夢中だったが、あの不気味な敵との遭遇で心臓は今もドキドキ言っている。
 自分でもよく分からないが、記憶の奥にある何かが、あの化け物の放つ雰囲気と共鳴して恐怖を生み出しているのだ。

「ホールも結構メチャクチャらしいからな。フェイトは残って、なのはだけこっちに向かってるよ」
「そうですか。よかった……」

 戦闘員にあるまじき安堵の笑顔を見て、ティアナは『油断すんな』と釘を刺した。ついでに頭にクロスミラージュも刺した。

「戦闘で民間の協力者がいたらしいからよ、ソイツも同行してる。警戒すんなよ」
「協力者?」
「ま、詳しくは後で取り調べだろ? じゃ、あたしは行くからな」
「お気をつけて」
「おう」

 後頭部を抑えて悶絶するスバルを尻目に、ヴィータとティアナは先日より幾分壁の無い会話を交わした。
 ヴィータが立ち去った後、ティアナは何となく周囲を見回した。
 シグナムは、ヴィータと同じく敵の残党を警戒して、森林をチェックしながらこちらに向かっているらしい。

「……敵は、いないみたいね」
「分かるの?」
「勘だけどね」
「なんか、ティアが言うと説得力があるよね」

 能天気に笑う相棒を見て、ティアナも苦笑を浮かべた。

「スバル」
「うん?」
「ありがとう」
「え、いきなり何?」

 とても貴重な笑顔と素直な言葉を聞き、その理由に思い至らないスバルは焦った。
 慌てふためくスバルを尻目に、ティアナは一人、今日までの出来事を反芻する。
 長く出会わなかった<悪魔>との遭遇。久しぶりに闇に浸した闘争本能は、知らず自分の心をささくれ立ったものにしていたらしい。
 なのはが言っていた。自分は、焦っている。
 確かに、そうなのかもしれない。
 今日の戦いで掴みかけた新しい感触が、それを自然に認めさせている。
 自分はもっと多くの事を学べる。一人ではなく、仲間と共に戦える。
 その実感が、ティアナの中にあった気付かない焦燥感を少しずつ消していってくれた。
 答えが出るのはまだ早い。しかし、確かにこの手には―――。

「…………なのは、さ」

208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:45:29 ID:7hZUTJaZ
支援だ!

209 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:45:57 ID:vt27Ewa/
支援だぜw

210 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:46:02 ID:ErRO65aU
 少しだけ歩み寄ってみようと、小さく囁くようにあの人の名前を口にしてみようとして―――それは運命の悪戯に遮られた。
 ホテルの正面玄関が開く。
 ティアナとスバルは思わず視線をそちらに向けた。
 警備は未だ続行中。敵襲を退けたとはいえ、今はまだ危険な状況下だ。
 ホテルの人員には未だ内部での待機を命じられ、ティアナ達にも無断で出る者は強制的に中へ戻す権限が与えられている。
 ましてやそれが、オークションの参加客であれば、それは在り得ない筈のことですらあった。

「あの人……」

 スバルが呆然と呟いた。
 ホテルからまるで当然のように外へ出て来たのは、明らかにホテルの従業員ではない、豪奢な服に身を包んだ男だった。
 真っ白なスーツを見せびらかし、黒いブーツの歩みはホテルの襲撃など気にも留めてない。
 葉巻の煙を燻らせ、自分が歩く先に何の障害も無いことを微塵も疑わない不遜な態度は、違和感を通り越して呆気に取られるしかなかった。
 間違いなくオークション参加者の富豪の一人であり、真っ先に戦闘が開始したホールにいたはずの人間でありながら、怪我一つ無いその男は、二人の護衛を引き連れてホテルから歩き去ろうとしていた。

「あの、ちょっと待って下さい! 危険ですから、中に戻って……!」

 慌ててスバルが追い縋るが、相手は声すら届いていないかのように無視して去っていく。
 歯牙にも掛けないその姿勢に、スバルは持ち前の性格で怒るよりも一層心配そうに声を掛けた。

「あの、待って……!」




「Freeze(動くな)!!」



 刃のように鋭い声が割って入った。
 警告というよりも敵意の混じった罵声のような声を聞いて、それを向けられた本人でもないのにスバルは竦み上がる。
 先ほどの落ち着いた様子から激変して緊迫感に満ちた相棒を、スバルは振り返った。

「ティ、ティア……どうしたの? 危ないよ、降ろして!」

 ようやく足を止め、しかし背は向けたままの男に向けて、ティアナはあろうことかクロスミラージュを向けていた。
 二人の護衛が静かにティアナの方へ向き直る。
 しかし、ティアナは決してデバイスを納めようとはしない。

「デバイスなんてやりすぎだよ! あの人は一般客なんだから……」
「こっちを向け! 従わないと撃つわよ!」

 突然の豹変に驚き、更に続く言葉を聞いてスバルは今度こそ顔面蒼白になった。
 守るべき一般人にデバイスを向けた上、射撃の警告まで突き付けている。正気とは思えない。
 そして、だからこそ混乱した。
 普段は冷静沈着なティアナがなぜこんな暴挙に出るのか? あまりに唐突で、あまりに意味不明だった。
 完全に思考のショートしたスバルは、ただひたすらティアナと男の間に視線を往復させる行動しか取れなくなった。

「―――君は、管理局員か?」

 背を向けたまま、男は尋ねた。
 見た目通りの、重苦しく、力に溢れ、同時に力の無いものを嘲る意思を含んだ声色だった。
 人を圧迫する声だ。
 それが理由かは分からないが、険しいティアナの表情が更に皺を刻んだ。

「問題だな」

 答えを聞くまでも無く、呆れるように吐き捨てると、男はそのまま歩みを再開した。

「動くなって言ってんのよ!」

211 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:46:14 ID:8gb6YNqN
ついにダンテの出番か!!

212 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:46:37 ID:vt27Ewa/
またsageが消えてた
スマソorz

213 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:47:03 ID:ErRO65aU
 ヒステリックに叫び、ティアナは本当に撃った。
 スバル以外の誰が見ても目を疑う行動。
 狂気の弾丸は真っ直ぐに男を狙い―――瞬時に射線へ割り込んだ護衛の一人が、あっさりと魔力弾を弾き散らした。
 いつの間にか両手に携えた曲刀が、波打つような形状の刀身に魔力光を帯びて虚空へ突き出されている。
 ティアナの魔力弾の弾速に反応し、その貫通力を相殺してみせた、護衛の力と技だった。
 もう一方の護衛がティアナに向けて刃を向ける中、男はようやく振り返ってみせた。

「驚いたな。本当に撃つとは……」

 言葉とは裏腹に、男の鋭い瞳はこの世の全ての物事に無関心だった。
 その瞳を、ティアナは無尽蔵の敵意を持って睨み据える。

「何のつもりかね、君は?」
「あたしの名前はティアナ=ランスター」
「ふむ、知らんな」

 ティアナの名乗りが一体どういう意味を持つのか『本当に、心底心当たりがない』といった様子で男は呟いた。
 その言葉に、ティアナは笑みを浮かべた。
 リラックスや友好とは全く正反対の、獣が殺意と共に牙を剥き出しにする時と同じ行動だった。

「6年前、アンタが起こした事件で死んだ……アンタが殺したティーダ・ランスター一等空尉の妹よ―――<アリウス>!!」

 血を吐くような叫びが木霊し、傍でそれを聞いたスバルは愕然とティアナを見つめた。
 自分を見つめる激昂した少女の視線と、その魂の叫びを聞き届けたアリウスは、一つだけ頷く。

「知らんな。他所を当たってくれ」

 納得でも疑問でもなく、アリウスの感想はただそれだけだった。
 話は終わったとばかりに踵を返し、何の躊躇いもなく歩き去る姿。その背に護衛も付き従う。

 ああ、そうか……。

 ティアナは、そのいっそ清々しいとも言える無関心さに、それまでのゴチャゴチャした思考は綺麗さっぱり無くなっていた。
 前触れも無く仇を目の前にした動揺。
 意思に反して体を突き動かす憎しみの衝動。
 引き金に掛かった指を止める理性。
 自分の行動に対する混乱。
 ただ一つの疑問。

 何故、兄を―――?

 そんなあらゆるものが心からすっぽり抜け落ちた。
 自分を路傍の石としか見ていないような、一切躊躇いのない歩みを見送って、ビックリするほど静かに悟る。
 ああ、そうか。

 ―――コイツは、もうここで殺していい。



「アァァリィウゥゥゥゥーーースッ!!!」




214 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:48:28 ID:7hZUTJaZ
クールだ、クールに成るんだティアァナ!

215 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:48:35 ID:ErRO65aU
 ティアナはその瞬間、正義や仲間の為ではなく、ただ憎悪の為だけに引き金を引いた。
 荒れ狂う憎しみを表すように、暴走染みた出力で放たれた魔力弾はプラズマを撒き散らして、無防備なアリウスの背中に殺到する。
 しかし、今度は突如出現した巨大な炎の壁に防がれた。

「何っ!?」

 アリウスとティアナ達の間を遮るように地面から噴き出した爆炎は、それ自体が物理的な防御力を持つかのように、飛来した魔力弾を打ち消す。
 尋常ではない現象に、ティアナとスバルが共通した抱いた感覚は、やはり<悪魔>の出現と同じものだった。
 そして、それは正解だった。
 轟々と唸る炎の音がそのまま獣の唸り声へと変化し、それに合わせて形を持たない炎が独りでに捻れ、束となって人型を形作る。
 現れたのは、人の体と牛の頭を持つ巨大な炎の悪魔だった。

「ア……アレは……っ」

 スバルの脳裏にかつての記憶と恐怖が蘇った。
 幼い頃、自分に初めて死の恐怖を植えつけた火災の中で見た怪物―――思い出したその姿と寸分違わぬ形でソイツは再び目の前に現れた。
 ソイツを目にした瞬間、スバルの中にあった<悪魔>への漠然とした恐怖がはっきりと形になって蘇る。
 幼い日に出会ったアレが。忘れていたはずのアレが。
 わたしは、怖い。
 過去の悪夢との再会にスバルが完全な恐慌状態に陥る中、一方のティアナは具現した上位悪魔の存在には目もくれず、その炎の先を見ていた。

「アリウス……ッ!」

 炎の向こうで、あの男が嘲笑したような気がした。





 それは、運命の悪戯としか言えなかっただろう。

 あるいはこの時の再会が、別のものであったのなら。
 この場に居合わせた二人の男の再会のうち、ティアナの想いを知る優しいハンターとの再会であったのなら―――全ては違っていたかもしれない。
 彼女の心は余裕を取り戻し、新たな生活の中で手に入れかけていたかけがえのない物を身に付け、一つの成長を遂げていただろう。

 だが、そうはならなかった。
 ほんの少しの、タイミングの違いでしかなかったが。致命的なまでに。

 望まれながらも決して望まれない悪夢の再会は果たされた。
 理性は焼き切れ、胸に抱いた義務感は消え、明日を見る為の瞳は光を失った。
 今はただ、長年燻り続けていた無念を燃やし、憎しみだけを糧にして、過去を切り裂くのみ。
 その手に掴みかけていた<たいせつなこと>は、もはや頭の中から消え去って―――。



 ティアナが抱くのは、ただはっきりと―――憎悪。





to be continued…>





216 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:49:08 ID:vt27Ewa/
↑お前も落ち着けw
支援w

217 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:49:52 ID:ErRO65aU
<ダンテの悪魔解説コーナー>

スケアクロウ(DMC4に登場)

 ちっぽけな虫けらでも、そいつが<悪魔>の一種となったら油断は禁物だぜ。
 一匹一匹は便所にたかる蝿にも劣るような奴でも、奴らには常識では計り知れない行動で力を付ける闇の本能がある。
 スケアクロウという名前自体は魔界の甲虫に付けられたものだが、ここではコイツらが群れを成して形を取った出来損ないのピエロみたいな人形のことも指している。
 布袋に密集して入り込み、まるで一つの意思を持つようにのように行動するのがこの悪魔の正体だ。
 完全な一つの意思に統率されていないせいか、動きはフラフラと落ち着きがない。
 トリッキーな動きといえば聞こえはいいが、冷静に見れば無駄な動きで隙だらけだ。ダンスの仕方を一から教えてやろうぜ?
 ただ、やはりその数と、肉体を持たないせいか一撃では致命傷になりにくい特殊な耐久性が曲者と言えば曲者だ。
 それでも雑魚には違いない。ビビらずに、中の害虫をくまなく駆除してやるとしよう。
 まあ、殺虫剤が効かないところが普通の虫よりちょいと厄介なところだな。

218 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:51:01 ID:wBDeEWxG
憎悪がもたらす道もある 支援!

219 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:51:40 ID:kUBQ6RG4
ああ……ヒカリが消えてしまう!!
ていうか、相変わらず面白すぎです。
Stylish氏の作品は待ちに待ち焦がれるだけの甲斐があるというものです、本当に。


220 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/05/28(水) 00:55:07 ID:ErRO65aU
投下――完了。体はティアナ虐めで出来ている。

以上、十三話でティアナパートでしたー。
本当は正道で前回の延長から書いていこうかな、と思っていたのですが、ティアナ視点がメインなのでダンテのシーンは全部次回に回しました。
室内戦を補完し、次回ようやく<ホテルアグスタ編>は終了です。なげえww
繋ぎの回になるはずだったんですが、少し飾り気つけようといろいろ加えたらこんな長さになりました。
正直ヴァイスパートは自分でも書いてて意外。ダンテと役柄被るから、こいつハブる予定だったのにwwまあ、スナイパーは熱いってことでw
今回はちょっと時間をかけすぎたので、次は早めに書いていきたいですね。マジで間隔あけすぎると逆に書けなくなりますわ。
では、次回は初のボス戦をご期待ください。

221 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 01:46:09 ID:4QqvWIdZ
投下乙だこのSめw
仇を目にしてプッツンは返り討ちフラグだティアナ――!

スバルが復調する辺りもうちょっと描写欲しかったかも。
それ以外は文句なしです。でもグリフィスのバカヤロウは吹いたw

ボス戦……味方の頭数が多すぎるのを氏がどう捌くのかちょっと楽しみ。

222 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 04:23:02 ID:qU4jekvp
GJ!!
列車編でキャロとエリオが安定したと思ったら今度はティアナが……
ええい、このドSめがw
まあ、ダンテとの生活はきっと無駄じゃなかっただろうし、なんとか立ち直ってくれるに違いない!
もう一度GJ!

223 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 04:26:05 ID:bX5a1Zvg
>>104
GJ!AC好きの私にはたまらない!

224 :リリカル無双:2008/05/28(水) 06:31:22 ID:6PRJFstt
職人の皆さんGJです。
と、皆さんおはようございます。
無双NANOHA 『スカリエッティ軍 第1章』が出来たので投下します。

225 :リリカル無双:2008/05/28(水) 06:41:17 ID:6PRJFstt
『無双』が『勝利の鍵』の元に集い始めた……。

槍を振るう竜。若き知謀の虎。
紅き闘志の龍。若き知謀の狐。
天に愛されし傾奇者。

そして、今。彼らと同じ時……。
求めるのは望みをかなえる力を持つ『魔王』と『ゆりかご』を復活せんと目論む。

ジェイル・スカリエッティと平清盛。

彼らもまた、始まりし宴の準備を整えるために二人の協力者を得る。
一人は『贖罪』の為に。
一人は『最強』の為に。

スカリエッティ軍 第1章



「お前がジェイル・スカリエッティか……」

広く、ほの暗い部屋。

政宗は目の前に立つ白衣の男にそう尋ねる。

「ああ、よろしく頼むよ。政宗君。」

そう言うと男は口の端を吊り上げ、ニヤリと笑みを浮かべて政宗に手を差し出す。
それが握手なのだと理解し、政宗は鋭く彼を睨んで言い放つ。

「まだ儂は貴様から話を聞いておらぬ。清盛から貴様の名前と貴様のやろうとしておることを聞いただけじゃ。
だから、まだ儂は貴様と手を組む気持ちにはなれん。」


キッパリとそう言ってスカリエッティの握手を断る政宗に傍に立っていたスカリエッティと巨漢の翁はさも面白そうに「ク、クク。ハハハハ」笑い声を零す。
「流石は我輩達が見込んだ男よ。」
「なるほど。なら先ずは君が私達に抱いている疑念を晴らしてあげよう。君はお母さんを蘇らせたいのだろう?」

スカリエッティの尋ねに政宗は複雑そうな表情のまま、コクリと頷いて答える。

「それが儂にとって罪の償いじゃ……。『魔王』を再臨させることが近道とはまことなのか?」
政宗の尋ねにスカリエッティは「もちろんだ。」と答え、彼の目の前にモニターを展開して『ある物』を見せる。

そこには一つの結晶体、その名前、情報も表示されており。政宗はその名を口ずさむ。

「レ……リック……ロストロギアか。」
「そのとおり。レリックは『魔王再臨』の宴には必要不可欠のロストロギア。これが我輩達の元に集いし時、卿の望みを我輩の術とドクターの技で叶えてやれるのよ。」
鉤爪のように鋭く尖った指先を政宗に見せ付けるように握りしめて開くと、清盛はその掌に紅黒い光球を発生させる。
それは生者と死者を惑わす光……。
一瞬、政宗はそれに視線を外せなくなりそうになる。

226 :リリカル無双:2008/05/28(水) 06:45:13 ID:6PRJFstt
「卿も見て来たであろう……この男の技の成果を。」
清盛の言葉に政宗はこの部屋に来るまでに見たことを思い出す。
広い廊下の両脇に数えても数えきれないほどに並んだ数字が刻まれたカプセル。その中は液体、それに浸かっていた少女達。
清盛が言うにはあれは戦闘機人……。
確かに、あれがこの男の技の成果なのなら凄い。この男の目指す夢。
こやつら−−スカリエッティと清盛なら、母上を蘇らせることも可能なのやもしれぬ。

「私達と組まないか?政宗君。」
政宗の心情を読んだかのようなタイミングで再び手を差し出すスカリエッティ。
そんな彼に政宗はしばらく考えを巡らす。

この男達は危険じゃ……手を組めば儂は大罪人。
いや−−。母上を蘇らせたいと望んで施設を抜け出しておる時点で儂は大罪を課している。そんな儂が今更……。
ええぃ、フェイトの誘いを断った時点で何を迷っておる!!

自分に「居場所はあるよ。」と声をかけてくれた。話し掛けてくれた一人の女性の姿が心に精彩に浮かびあがり。
それらを政宗は頭を振るって消し去って、スカリエッティの手に自分の手を重ねる。

「……この伊達政宗。贖罪と二君らの望みの為に力になりたい。この話、受けさせていただく。ジェイル・スカリエッティ、平清盛。」

「ありがとう政宗君。改めて同盟成立だ。」
本当にありがたいよ……龍を宿す君の力を借りれるなんて。

スカリエッティは政宗に気付かれないように心で笑う。

また、清盛も。心底では政宗の悩み抜く顔を見て彼が会っていた女性と彼自身の共通点を見いだしてほくそ笑んでいる。

心底から殺した女を本当の母と思っておるとは純なる心よ……。まさかあの娘が妹である事など微塵にも思ってはおるまい。
クククク。冥府から戻り、捨てたもうひとりの我が子を見てあの女はどのような顔をするか……見物よ。

「スカリエッティ。」

「何かな清盛。」
「政宗はまだ身体に宿しておる龍の力を活かしきれぬ。そこで我輩の元にいる腕利き魔導師に魔法を学ばせ、使い魔を付けたいが良いかな?」

清盛の提案にスカリエッティは「ふむ……。」少し考え込むように間を置き。

「まだ外の妲己達と呼応するのには早いからね。政宗君、学んできたまえ。」




227 :リリカル無双:2008/05/28(水) 06:48:22 ID:6PRJFstt
「師事を受け、使い魔を持つ。か……。承知した。」
「クフフフ……では政宗、参ろうぞ。」
た易く、首を縦に振る政宗の姿に清盛はほくそ笑みながら彼を伴って転送する。行き先はこのラボに植え付けるように空間を置く『厳島』である。




「政宗はともかく、あの清盛という男を信用して良いのでしょうか?」
巨体を誇る翁と政宗の姿が消えた後、一人の女性が姿を現してスカリエッティに尋ねる。

「平清盛……食えない男だ。が、彼が居る方が心強いのは確かだ。ウーノ」
問題ないと言うように彼はウーノと言う名の女性に呟く。

彼の内には海馬に焼き付いて離れない初めて会った時の清盛が鮮明に残っている。
『聖王のゆりかご』について研究していた時、『魔王』の存在まで行き着き。
そして、魔王の名を述べた時……彼は「貴様の望みは我らが遠呂智様の望みに似ておる……手を組まぬか?」と頭に囁いて現れた。
最初のうちは興味の無い男に過ぎなかったが、『平清盛』と聞いたら話は別だ……。

「旧暦のこの世界に魔王・遠呂智が姿を現した時にその力に魅せられた男だ。が、かつては今の管理局において「伝説」と言われている三人を育てた魔導師でもある。」
「過去の人物……という訳ですか?」

ウーノの尋ねに「ああ」と頷く。
「そして敗れて命を落とし……虚数空間に消えたが。魔王から与えられた力で不可能とされる虚数空間から舞い戻ったそうだ……。」

そう告げ、話を区切ると同時にウーノの元に通信が届く。
「ドクター。ルーテシアお嬢様が呂布を伴って戻って参りました。」
「…………。こちらに転送するよう伝えてくれ。」

待ちこがれていたよ……鬼神。

呂布の名を聞き、スカリエッティはなんとも嬉しそうな笑みを浮かべる。
それはまるで欲しがっていた玩具を与えられた子供のようなものであった……。

そして、光が発生し。
そこからルーテシアと、彼女に連れ添われるように巨躯の男の二人がスカリエッティの前に現れる。




228 :リリカル無双:2008/05/28(水) 06:52:19 ID:6PRJFstt
「連れてきた……」
光が晴れ、彼を見上げ呟くように述べるルーテシア。
そんな彼女にスカリエッティは優しい笑顔で「ありがとうルーテシア。」と答え、男に向き直る。

「貴様がジェイル・スカリエッティか?」
鋭く、威圧の篭った低い声がかけられ。スカリエッティは頷く。

「ああ、よろしくね。呂布君。」
「……聞きたいことがある、答えろ「それは魔王と君の愛する女性の事とかな?」

「……」
言葉を遮られ、核心を突く質問に呂布は軽く舌打ちをして頷く。

やれやれ、鬼神の気の短さは困ったものだね……。
とスカリエッティはそう思い、苦笑を零してしまう。

「ルーテシアの母についてはこれから彼に教えて貰うと良い。ウーノ」

「はい。」
スカリエッティの呼びかけに傍居た女性は頷いて、モニターを展開させる。そこにはこの研究施設内にある訓練室が映し出されていた。

そして、そこに誰かを待っているかのように立っている男がおり。その姿を見た瞬間、呂布は今よりも険しい表情に変わり。無双が稲妻のように光を発して身体を稲走りだし、彼の周りの空間が揺らめいていた。

彼の変化にスカリエッティは自分の心が躍っているのがよく解る。

ククっ!クククク、周りを圧する存在感。まさに鬼神か……。


そして、呂布はモニターに映る男に懐かしさをも抱いていた。

かつての部下、ゼスト・グランガイツに。

……ゼスト。

「奉先。ゼストは望んでいるの……。」

ゼストを見据えていた呂布にそう告げたのは彼をここに連れてきた少女、ルーテシア。
彼女の言葉に呂布はそれがスカリエッティとゼストの望みなのだと悟る。


「ふん、良いだろう。試されるなど気に入らんが。望みと言うなら、この武を振るってやる。」
「頼もしい言葉だ……。」
承諾の言葉にスカリエッティはほくそ笑みながらルーテシアに呂布を訓練室へ案内させるように頼み、二人の後ろ姿を見送る。

「さあウーノ。呂布の力を余すところなく解析してくれよ。」
「はい。」

鬼神の戦いを見れるのは幸せなのかもしれないしね……。




229 :リリカル無双:2008/05/28(水) 06:56:20 ID:6PRJFstt
〜呂布・ゼストSide〜

この研究施設における訓練室はかなり設備が整っている。
それは戦闘機人を大掛かりに生み出しているからこそ、戦闘訓練は欠かすことができないから。

中央の部屋から離れ、ルーテシアの案内で訓練室に辿りつき。呂布は躊躇うそぶりなども見せずに入室する。

久しぶりに踏み込む訓練室という部屋。

その闘う為に設けられた部屋でゼストと武を交わす。

呂布は今このことしか頭に入っていない。

そして、彼を待っていたゼストもひとつの思いに駆られて互いを見遣りながら立っていた。




「……久しぶりだな。奉先隊長。」
互いに鋭い視線を交わし、先に口を開いたのはゼストから……。
それに呂布は表情を変えることなく答える。

「ゼスト、貴様もな。 ルーテシアは離れていろ」

視線を合わせないまま、呂布は傍に居る少女にそう言い放つ。
だが、少女は心配そうな表情で呂布、ゼストの二人を見る。

ゼストもまた、呂布の意見に同じようで「危険な闘いになる。」と表情で言っている。
頷くことしか選択肢は残されておらず。ルーテシアは二人に従って心配そうに表情で離れていく……。


「ルーテシアとは初めて会うのか……。」
ぽつりとそう述べるゼストに呂布はただ黙って頷く。


「お前の後ろに隠れている融合騎にもな。」

見抜いているぞ。というような彼の言葉は見事にゼストの心を射ぬいてしまう。

「出てこいアギト。奉先はお前が考えてる以上に鋭い。」

ゼストの促す言葉に「わかったよ……。」と背後から少女の声が答え、彼の右肩の辺りまでゆっくりと浮かんで姿を現す。
まるで妖精のような小ささでいて気の強そうな顔立ち。

が、アギトと呼ばれたその少女はゼストと自分に刺すような視線を向ける呂布を見て途端に畏怖を抱く。




230 :リリカル無双:2008/05/28(水) 07:09:31 ID:6PRJFstt
なんだよコイツ……。

踏ん張っていなくては身体をばらばらに破壊されそうな無双の力が目の前の男の身体を稲走り、空間が揺らめいているのが見える。

コイツはマジでやばい……。
「旦那!「黙っていろ小娘!!」

心配になり、ゼストを止めようと呼びかけたアギトを遮ったのは呂布であった。

刺す視線から殺す視線に変わっていることにアギトは黙ってしまう。

「ゼストは俺との闘いを望んでいる。そして俺は闘いを受けた……余計な水を注すのなら小娘。貴様から吹き飛ばすぞ……。」

「う……。」

それだけで見た者を殺すことが出来る呂布の威圧にアギトは目に涙を滲ませて黙り込んでしまう。


「……アギト、どうなろうとこれは俺が望んだことだ。」
アギトの頭を撫で、ゼストは呂布に向き直る。

「ルーテシアの−−あの男の誘いを受けたということはお前はまだ『魔王』に心を捕われているようだな……。」

「最強となれるのなら何だろうが俺は魔王をたたき起こし、討つ。」

憮然とした口調で言い切る呂布にゼストは「やはり、変わらないようだな……奉先。」と呟き。

自身のアームドデバイスを起動し、アギトを見遣る。

それにアギトは渋々と「解った。」と頷き、ゼストの身体に溶け込むように入っていき。
彼の髪の色、身体を纏いし甲冑は金色に変化する。
ユニゾンを終え、ゼストは大きな槍へと姿を変えたデバイスを右手に握り、穂先を呂布に向けて言い放つ。

「ルーテシアとアギトの為にも、奉先。お前の本気(おもい)を……見せてもらうぞ。」

旧友の願ってもない呂布はそこで初めて嬉しそうに笑みを浮かべ。無双式デバイス『方天画戟』を右手に持って起動する。

瞬時にキーホルダーサイズのデバイスは等身大の長さに変化し、ハルバードに似た形状の戟の姿をあらわにした。
彼自身の姿は頭に孔雀の羽を一つ一つ繋げた触角のような飾りの冠を乗せ。金、赤、紫を基調とした無双ジャケット(※真・三國無双4のコスチューム)に身を包んでいた。

「良いだろう。ゼスト……『人中の呂布』の全力全開を受けてみろ!!」


「ああ、行くぞ。奉先!!」




231 :リリカル無双:2008/05/28(水) 07:16:16 ID:6PRJFstt
『人中の呂布』または『鬼神』、『飛将』と数多の異名を持ち。次元世界にその名を轟かす無双の士。呂奉先。

かつて呂奉先の同僚として共にデバイスを振るった魔導師。ゼスト・グランガイツ。

数年前に生き別れた友は今再び
信念を貫く為に、託したい想いの為に対峙し。
……今、激突した。


続く

232 :リリカル無双:2008/05/28(水) 07:19:44 ID:6PRJFstt
以上です。

これからは話を無双OROCHIのように。使う話ごとに勢力を切り換えて投下しようと想います。
なのは(魏、呉、蜀、戦国)
スカリエッティ(遠呂智)
といった感じで。


233 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 09:12:05 ID:Nva0TbO1
GJしかしアリウスが意図的にやったという証拠が無いんだよなあ
 マリオネット持ち込みにしろフュリアタウルス召喚にしろ
アクシデント(乗り移って突然動き出した。)やフュリアタウルスが偶然そこに現れたと強弁できるし
ホテルへの賠償や企業の謝罪で済ませられる。しかも最悪 管理局員が殺意を持って民間人に発砲したと訴えられたらティアナ。

234 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 17:53:52 ID:BTWq81f/
>>232
GJ!
何だか架空戦記物を見ているようですね。
なのは達も無双をするのでしょうか。

235 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/28(水) 20:28:27 ID:HRufkz/Y
さて、40分から投下しますー。

25KBほど在るので、支援をお願いします。

236 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 20:29:48 ID:XsjTOmr4
いやだの反対の反対の反対の反対の反対の反対の反対の反対の反対

237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 20:36:26 ID:vt27Ewa/
待ってたぜw
支援w

238 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 20:37:36 ID:vt27Ewa/
また勝手にsageが消えてたorz

239 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/05/28(水) 20:41:49 ID:HRufkz/Y
魔法少女リリカルなのは 闇の王女 第六章後編

 空は燃え、町は粉塵で覆われていた。そんな中で繰り返される空中での剣戟――鋼と鋼のぶつかり合い。
切り結び、跳ぶたびに確実に落とされていくのは、北半球ベルカ自治領聖王教会騎士団の剣士たちだ。
手には長剣ロッセ。古代ベルカ騎士の武装を解析、量産化した焔蛇の剣。
空中に作り出した魔力の足場を踏み、爆発的な加速で相手の間合いに踏み込む――剣閃が奔る。
袈裟切りに振り下ろされる黒い刀身の長剣を、女の剣が迎え撃った。甲高い金属の音が響き、模造の剣が空中に投げ出され、教会騎士が丸腰同然になる。
神業――振り下ろし切られた剣の切っ先を一寸の見切りでかわし、上から絶妙の力加減で叩き落とす。
至近距離での剣戟は、鍔迫り合いすら起こらずに終わり、女の当身によって意識を失った教会騎士が地面に叩きつけられた。
気絶した男を、陸士武装隊が首尾よく拘束魔法で確保していく。それを確認し終え、長剣レヴァンティンを正眼に構えた。
そして女――シグナムは剣を交える。かつて友だった者と。
静かな呟きが口から洩れ、長剣が魔力の込められた薬莢を装填し、開放。
排出口がスライドし、蒸気とともに廃莢がなされた。
涼やかに、空中に浮かぶ女の桃色の髪――ポニーテールが揺れた。
魔力の足場――古代ベルカ式の三角形魔方陣が展開され、真っ直ぐな刃を炎が纏い、炎熱で空気を焦がした。
陽炎がゆるゆると景色を食らい、歪めていく。

「何故だ……こうも多くの命を奪い、何になるのだ――シスターシャッハ」
妖しく笑う修道女――シスターシャッハは、何処までも純粋極まりない感情をもって相対した。
巨大傀儡兵の背中からぐずぐずに蕩けたビルディングの屋上に飛び移り、両手にトンファーの如き柄の双剣ヴィンデルシャフトを構えて佇む。
くすり、と笑い答えた。

「知れたことを。私たちの願いは一つ。ベルカの再興」

「馬鹿げている。亡国ではないか――」
シャッハが笑みを浮かべたまま一歩前に足を進めた。静かな圧迫感に、首筋の毛が逆立つのを感じ、シグナムは微笑した。
恐怖ではない。もっと狂おしく、愛しい感情――戦士としての悦びだ。強者だ――眼下の剣士は、間違いなくテスタロッサと並ぶ実力を秘めている。
なんと、喜ばしいことか。戦士として、剣士としてこれ以上の悦びはない。
爆撃じみた音と共に、シャッハの身体が空中目掛けて跳んだ、否、飛んだ。衝撃波によってビルディングの屋上に亀裂が走り、裂け目を見せた。
身体強化による馬鹿げた跳躍力に驚くことも無く、シグナムは前に踏み出し必殺の一撃を放った。魔力変換――炎。

「紫電一閃ッッ!!」
三角形の魔方陣を蹴り、突進。レヴァンティン――炎を纏った灼熱の刃は、それだけで鋼鉄を溶解させ、両断する。
振り下ろされる刃は、まるで魔神の得物。
一方、飛び込んだシャッハはただ一撃をもって全てを粉砕する魔法の名を、叫んだ。
高密度魔力を乗せた双剣ヴィンデルシャフトの斬撃が、レヴァンティンの圧倒的な炎熱を遮るかのように打ち出された。

「烈風一迅ッッッ!!」
炎を吹き飛ばすような剣圧であり、剣閃だった。
激突する直剣と双剣――レヴァンティンの炎とヴィンデルシャフトの刃に乗せられた魔力が、破滅を撒き散らしあい、より偉大な力を示さんと喰らい合う。
火花の代わりに紫電が散り、空気を焦げ付かせた。さながら派手な花火が上がったような閃光があたりを満たす。
互角の勝負であり、鍔迫り合いだった。互いに弾き飛ばされた二人――シグナムは空中に止まり、シャッハは地上に着地した。

「……ッ! やりますね……」
すぐさまシャッハを取り囲む武装隊――向けられる無数の杖、杖、杖。遊びを妨げられた子供のような顔をすると、シャッハは短髪を揺らしてそっと呟いた。
一瞬で剣が振るわれ――包囲網をしいていた数人の陸士を吹き飛ばした。血潮が迸り、道路のアスファルトを濡らす。
ルフトメッサー。衝撃波を飛び道具とする魔力凝結攻撃である。
ぴくりとも動かなくなる彼らを目にしながら、シャッハ・ヌエラが歌うように口を開いた。おぞましいほど、澄んだ声だった。

「……聖王陛下の御世が訪れる今こそ、蜂起の時――今まで、私達がどれだけ苦しんできたことか。
多くの民が飢え、嘆き苦しみ逝った時にも、誰も手を差し伸べようとしなかった。無限書庫にすら眠っているか定かでない記録を、我々は持っているのです。
質量兵器による戦争の結末――古代ベルカの最後をご存知ですか? 騎士シグナム」

240 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 20:42:55 ID:vt27Ewa/
支援w

241 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/05/28(水) 20:43:45 ID:HRufkz/Y
「古代ベルカの最後だと? それは――」
おかしい。何故記憶が無い――古代ベルカ時代に製造された<夜天の書>の守護騎士プログラムである己が、知らぬわけが無い。
だというのに、何故だ。一般的な知識は在っても、具体的な事象は一切無いのだ。
空洞のような記憶――在るのは、何かが爆ぜたと言う強烈な認識。虚無の増大と集束。

(ああ、逃げて、逃げて、逃げて――)

ぷっつりと途切れた感情の奔流に、どっと汗を掻きながらシグナムが問いかけた。まるで、寄る辺を失った幼子のように。
桃色の長髪が風に揺れ、ざわり、と僅かに逆立った。

「何が……言いたい、シスター?」

「真実を。ミッドが、今の時空管理局首脳部が平和の為と称して隠蔽した事実そのものです」

止めてくれと叫びたくなる。何故だ、騎士たるこの身が何を恐れると言うのだ。
勇猛果敢な騎士は知らない。それが、封じられた記憶なのだと。プログラム生命体ゆえの上書き、糊塗、隠蔽処理。
本能が否定するもの――御伽噺よりも非現実的な、異形の幻が語られ、巨大多脚傀儡兵の頭部から宙にスクリーンが展開される。
映し出されたものは、克明な映像データ――衛星軌道上からの撮影映像である。

 それは、朽ちゆく大地に撃ち込まれた破滅の砲火だった。
花火のように小さな揺らぎだった<それ>は、瞬く間に膨らみ、大地を穿つ。地平線の果てまで破壊の空間は爆ぜ、地中の岩盤すら消えうせる。
目標空間を強制的に相転移、物質を消滅させる究極の質量兵器<相転移砲>の着弾の瞬間、黎明の空が白く染まった。
消滅半径内の全ての物質が塵すら残さず消える、最強最悪の兵器の完成形がそこに在った。
着弾時の相転移で削り取られた大気の穴に向け空気が流入し、爆風にも似た嵐が巻き起こる。かろうじて消滅半径の外に存在した建物が、木々が、鳥や花が、
人々が宙を舞い、爆心地に吸い込まれ、四散した。やがて消滅の閃光が止み、全てが消え去った。
虚無が炸裂した跡には、馬鹿げた大きさのクレーターが残り、大地の命脈に死が訪れた。荒々しい神々の軍陣の跡のような、途方もない大きな力が振るわれた場所。
その名を――。

(――ベルカ王城、だ。我らが王都は、おぞましい空飛ぶ怪物に汚され、消え去ったよ。聖王陛下は鉄の戦舟を駆り報復に出陣なされた。
わしは老い、戦のお供もできなんだ。お前たちが、滅びかけた我らベルカの民の魔法を、少しでも多く保管してくれ)

シグナムの脳裏で知らない誰かの声が囁いた。懐かしいような声だった。
これは、誰だ。主はやてよりも、もっと、もっと昔の――。
声が、続く。
(ベルカは終わりだ――陛下が御隠れになられては、我らはどうしようもない。このまま彼奴等の侵攻によって、蹂躙されるのだろう。
だが、だがな――お前達は不滅だ、ヴォルケンリッターよ。お前達が生きている限り、ベルカの魔法は不滅。それが――我らの救いだ)

(……マイスター)

これは、いったいなんだ。私たちに、何を伝えようとしていたのだ。
シャッハが何かを喋っているが、聞こえない。わからない。
そのとき、鋭い声が、沈黙を切り裂いた。

「みんなッ! <それ>に……攻撃しないでッッ!!」
シャマルの絶叫が耳に届き、我に返った。シャマルからの広域通信に、耳を傾ける。その切羽詰った様子に、驚きつつ返答する。

『……どうした、シャマル。あれには何が――』
シャマルの声――切羽詰ったような焦りに満ちたもの。彼女らしくない。
『今、クラールヴィントの探査でわかったの――あれは、あの傀儡兵は、ロストロギア<ジュエルシード>で動いてる!
下手に動力源を攻撃したら、次元震でこの世界ごと吹き飛びかねないわッッ!!』

急いでシャッハを見る――慈愛に満ちた笑みが、返ってきた。手に携えられた双剣よりも、その笑みが今は恐ろしい。
背筋が凍りつく思いで、問いただした。吼える――この悪夢を演出した者へ。

「何を考えている、答えろッ! カリム・グラシアッッ!!」

242 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/05/28(水) 20:45:29 ID:HRufkz/Y
 あらあらと女は呟き、豊麗な胸元を右手で押さえ、長い金髪を揺らしてふふふ、と微笑んだ。
人形の如く整った容貌が歪み、隠し切れない喜悦が溢れ出す。
北半球ベルカ自治領聖王教会本部の一室に、空中展開式モニターを開き、魔導技術の結晶である傀儡兵制御機構を操る女。
名を、カリム・グラシアという――レアスキル<預言者の著書>を持つ聖王教会の重要人物であり、<C>として反管理局組織<ベルカ解放戦線>の
指揮を執ってきた人物である。今回のクーデターにおける中心人物の一人であり、事実上この焦土作戦の指揮官だった。
落ち着いた印象を与える黒い衣装を身に纏い、優しく画面の向こうに笑みを送る。

「別に、何も。聖王陛下の<揺り篭>は、次元消滅が起ころうと平気ですから。安心して破壊してくださって構いませんよ?」

『貴様ッッ! この世界に暮らすベルカの民の命すら危ういのだぞ、何故平気でいられる!!』
烈火の将、シグナムの怒声を真っ向から浴びせられても、カリムの笑みは崩れなかった。指を絡め、愉快そうに解説を始める。
長く伸ばされた金髪が揺れ、胸元にはらりとかかる。

「教えて差し上げましょうか、ベルカの歴史を。古代ベルカ時代の戦争で、ミッドチルダを盟主とする次元世界連合と戦争状態に陥ったベルカ王国は、
首都への質量兵器攻撃で事実上壊滅し、戦争継続能力を失いました。無辜の民を焼き殺され怒り狂った当時の聖王陛下は、<聖王の揺り篭>を駆り、
連合に報復攻撃を実行。幾つもの主要な次元世界が焼かれました。その結果が、今の世界――新暦の白紙の時代です。
質量兵器は忌み子とされ、封印。最高評議会主導による魔導技術時代が切り開かれましたが――」

突然始められた歴史の講義に呆然とするヴォルケンリッターを尻目に、女は高らかに告げた。真実を。
知るがいい、異境に心奪われし騎士達よ――悲劇の歴史を。

「――無論、そんなことをして、ベルカの民が無事に済むわけがありません。報復の報復に、武装すらしていない民衆が、殺されました。
刀槍を使った原始的な見せしめ――蛮行が行われ、大地はベルカの民の血に染まり、焼け落ちた家々の灰が空を覆わない日は無かったといいます」
シグナムが反論せんと口を開きかけるが、言葉が出てこない。
記憶が、無いのだ。あってしかるべきものが何処にも無く、上書きされた教科書の中身じみた知識が在るだけ。
反論の、しようが無かった。

『だがッ! それと次元世界を吹き飛ばすことに何の関係がある?!』

「わかりませんか? 多くのベルカ人――敬虔な聖王教徒は、遠く離れた次元世界に逃げ込み、現地に溶け込みました――聖王陛下の復活を信じながら。
彼らは信仰を捨てることなく、我等と共にベルカ再興を誓い――もう、この意味が、お分かりですね?」
管理局すら把握していないベルカの系譜が、そこにあった。
いや、あるいは時空管理局上層部なら、カリムの言うとおりに知っているのかもしれなかったが、現場の人間にとっては初耳だった。
導き出される答えに、シグナムの顔がモニターの向こうで歪む――憤怒。

『ッッ!! 他の次元世界のベルカ住民さえ残っていれば、ミッドは用無しということかッッッ!!』
「ええ、何か問題が?」
カリムの顔は穏やかで、日光に照らされ女神のように映えた。それだけに、余計に笑顔の不気味さが際立つ。
今、彼女は数十億から数百億の人命が消えても構わないと言い放ったのだ。無論その中には、彼女自身の命や、親しい人々の命も含まれている。
到底、そんなことを言う人間の顔ではなかった――人類愛でも謳いそうな慈母の顔。
それだけではない。失われるものの中には、各世界の育んできた特有の風土、文化、歴史があるのだ。
あるいは、カリム自身を育てたものもその中にあるかもしれない。聖王教会の本部も、次元世界ミッドチルダ北部に位置するのである。
次元震が起きて、無事に済むわけがなかった。だというのに、この女は、平然とし過ぎていた。
果たして、疑念に駆られたヴィータが、大声で喚いた。目に涙さえ浮かべている。


『なんだよ、それぇ! お前には、大切なものとかねーのかよッッ?!』
赤毛を揺らして、彼女が言う――人ならば、誰もが持ち合わせるであろうものを、問う。
ヴィータにとって、大切なものとは家族の、はやての幸福であり、それが全てだった。
あの生き地獄にも似た、陰惨な戦いだけの世界からヴォルケンリッターを解き放った彼女には、感謝しても仕切れなかったからだ。
だから、思う。カリムにも、大切なものがある筈だと。


243 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/05/28(水) 20:47:22 ID:HRufkz/Y
 だが、その言葉は決定的な何かが欠落した人間には、届かなかった。

「ええ――私はこの世界が嫌いですから。
私の望むように変わらないならば、壊れてしまえばいいのです。
何故? 何故です? 貴女方はこの腐敗と汚濁に塗れた世の理が見えないのですか。聖王陛下が御隠れになられた後、我らベルカの民には何も残らなかった。
質量兵器を操る術を禁じられ、低い魔力資質の為に、魔導師至上主義の管理局には疎んじられた。生きる術は、ミッドの民として下ることだけ――。
生き難く、醜い害虫たちが巣食う世界に何の価値があると? かつてベルカの騎士だった貴女方がそちらにいるのを見るに、生き易いのでしょうね。
<持つ者>にとって、管理世界は。<持たざる者>にとって、これほど屈辱的な世界は無いというのに」

あくまで、平坦な声だった。日常のつまらないことを話すかのような口ぶりで、彼女は世界の<全て>を否定していた。
怨念でも無く、憎悪ですらなかった。透明な、ただそこにあるだけの感情。おそらくは、何の狙いも無い本心そのもの。
おぞましい、と感ずることすら忌むべき、悪意の塊がそこに在った。
そっと、シグナムが口を開いた。斬るべき悪を、見出したのだ。

『悪鬼め……!!』

「そうして、理解できないものを拒む――それでいいのです。貴女方と私達は所詮別の人種。<持つ者>と<持たざるもの>です。
このレアスキルがあるからこそ、私とヴェロッサは管理局に認められた。これさえなければ、ただの人。いえ、人ですらない塵屑です、彼らにとっては。
レアスキルを持つ異人、それが私達の全てなのでしょう」
シャマルがぽろぽろと涙を零し、泣きながら叫ぶ――決して届かぬものを、届かせようと必死になって。
短いその金髪が揺れ、思いを――皆の思いを、声に出し続けた。

『どうしてなんです、騎士カリム?! 皆、はやてちゃんも、クロノ提督も、貴方達を大切に思っているんですよ?
ずっと、家族みたいに思っていました――それを、こんな人殺しで……!!』
リインフォースUもまた、その小さな身体をぶんぶんと動かして言った。

『そうです、そうですッ! マイスターはやては、ずっと皆の事だけを考えて戦ってきたのに――あんまりですッッ!!』
愚かだ。そう思いながら、カリムは真顔になって語りだした。
いやに饒舌であった。

「ああ、何故こうも貴方達とは噛み合わないのでしょうか――個々の至福の追求の先に在るのは、ただの停滞だけです。
それが今の歪を生み出し、管理世界そのものが立ちいかなる現実がすぐそこに迫っているのに。違法魔導師の増加と慢性的な戦力不足。
盟主世界たるミッドチルダの治安悪化。管理局の魔導師登用制度の害悪による法の軽視――崩壊の兆し以外の何者でもありません。
既に、<預言者の著書>にもこう出ていますよ?


闇より生まれし漆黒 天翔ける船舟に雷をくだすとき <法の塔>焼け落ち <彼の王>を祀るものは盾をかかげん

<闇の王女>は憎む <彼の王>の新たな生誕を <罪人>は祝福する <闇の王女>の生誕を

<三つの頂>を拝む者どもの船 戦舟より解き放たれし巨人の火の矢の前に 焼け落ち

新たな戦禍芽ばえしとき 暗き闇の底より <鋼の戦士>が蠢き 其の矛をもって巨人を穿ち

<闇の王女>の翼が羽ばたくとき 禍津神は彼の者を祝福し <二人の王子>は其れを嘆く

<二つの月>を見据えし戦舟 大いなる力を放ち 虚空は赤く燃え 戦舟は天を裂き <理想郷>への道を開かん

忌むべき法崩れし時 新たな<千年王国>の時が来る

<禁じられし剣>を手に 永久の栄光 人は再び立ち上がらん


これこそ、真の予言――最早、管理局に未来などありません」


244 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 20:48:07 ID:LguL7IUq
支援! 悪の黒幕カリムw

245 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/05/28(水) 20:49:49 ID:HRufkz/Y
 それが、合図だった。巨大な多脚傀儡兵<ヨツン>が咆哮――十本足の大蜘蛛の、金属を擦り合わせたような甲高い音が市街地に響き渡る。
カリムに同調するかのように動きを止めていた傀儡兵の群れが、一斉に雲霞の如く地上に殺到した。
悲鳴を上げながら応戦する陸士部隊――弾幕を形成。建物の陰に隠れての戦闘――遮蔽物を利用した市街戦を、圧倒的物量が押し潰そうとしていた。
雨霰と空中から降り注ぐ魔力弾が殺傷機能を全開にして襲い掛かり、道路のアスファルトを砕いていく。
<ヨツン>の数十メートルはある前脚が振り上げられ、
振り下ろされる――ビルディングの中腹を消し飛ばす――展開していた地上本部武装隊目掛けて落下するビル上層部分に、ティアナ・ランスターは悲鳴をあげた。
思わず隠れていた車の陰から飛び出すが、仲間の部隊員に引きずり倒される。ティアナの頭があった部位を、魔力弾が通過した。
そんなことも気にせず、叫んだ。

「逃げてぇぇぇ――!!」

崩落。土煙があがりぐしゃぐしゃに潰れた傀儡兵が瓦礫の下から這い出てくる。すぐさま遮蔽物に隠れていた陸士部隊が攻撃を加え、撃破。
そして――血液がさらさらと地面のひびを伝い、ティアナの足元まで流れ出てきた。それは、押し潰された武装隊の血液だった。
おそらく、あの瓦礫の下には全身の骨を、五臓六腑を粉砕された遺体があるのだろう――脳の奥のひどく冷静な部位がそう告げた。
何かとても冷酷なものが心の底からこみ上げて来る――絶対に許さない。
冷静に、鋼のような自制心で詠唱を開始。自身の魔法の中では最大級の威力を誇る砲撃魔法、ファントムブレイザーを唱える。

アンカーガンに装填された二発のカートリッジがあっという間に消費され、ティアナに圧倒的な量の魔力を一時的に貸してくれた。
魔力制御に集中しながらも、仲間に目配せ――眼前の怪物のシールドに穴を開けるべく、ヴォルケンリッターとも連携を取る。
作戦は、単純である。この巨大な怪物の厄介さは、脚部の多さにある。多脚兵器ゆえにどんな悪路も楽々と機動し、蹂躙するからだ。
砲撃魔法も恐ろしいが、それ以上に不味いのはその巨体が蠢くことそのものだ。超重量の巨獣は、それだけで脅威たりえる。
では、これを叩き潰すにはどうすればいいか。答えは単純そのものだ。機動力を奪い、木偶の棒にしてしまえばいい。
すなはち、脚部をもぐ。それが一番手っ取り早いし、動力源を壊すわけにはいかない以上、方法がこれしかない。

まず、生き残りの陸士部隊が砲撃魔法、射撃魔法で敵の防御術式――ディストーション・シールドを突き破る。
そこで、ヴォルケンリッターの攻撃力で突破、敵の撃破、無力化を行うというものだった。
戦艦級の防御シールドを突き破れるか、定かではない。しかし、生き延びる為にはやるしかなかったし、この場にいる者は皆怒り心頭だった。
狂信というのもおこがましい、無邪気な悪意によって蹂躙され、逝った仲間達の最期に。
傀儡兵の攻撃の一瞬の空白。魔力充填の為の隙を、陸士部隊と首都防空武装隊の面子は見逃さなかった。
半壊した官給品のストレージデバイスが、電子音と共に魔力をオーヴァーヒート寸前まで溜め込み、解放する。
怒声――砲撃が弾け、大規模な空間湾曲が起こる。景色が歪み、大地が、可視光線が捻じ曲がっていった。

「ファントムゥ、ブレイザァァァ――ッッ!!」
柑橘類に良く似た色合いの赤毛が揺れ、拳銃を模したデバイスが鮮烈な色の魔力砲撃を弾き出す。
ティアナの咆哮と、閃光が爆ぜるのは同時だった――黒煙の上がる空を、集束魔力の崩壊と空間湾曲力場の起動が掻き混ぜた。

246 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 20:49:52 ID:vt27Ewa/
支援だぜ

247 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 20:50:38 ID:LguL7IUq
支援する! スーパー凡人タイムw

248 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/05/28(水) 20:51:30 ID:HRufkz/Y
 案の定、精々Aランク程度の魔導師資質しか持たないアランには、手に余る相手だった。
敵はA+程度の実力者が三人。兵士としては未熟なれど、戦士としては一流の者ぞろいであり、気づけば防戦一方であった。
長剣が突き込まれる――槍術で弾き、石突を相手の腹目掛けて突き出す。叩き落される――石突を起点に飛び上がり、相手の背後に廻る。
二人目の横合いからの剣閃――長剣デバイス、ロッセの黒い刃が迫る――身を捻りかろうじてかわす。
三人目の下段からの突き――避けきれない。内臓を狙った一撃だ。身を焼くであろう激痛を覚悟したとき、一陣の風がふいた。
衝撃波の凝固した、不可視の刃が三人の聖王教会騎士の剣を、騎士甲冑を、肉体を粉砕し切り裂く。
両腕を、上半身を、首を落とされた騎士達が動脈から鮮血を噴出し、臓腑を撒き散らして崩れ落ちた。
眼前には茶色のコートを身に纏った金色の騎士が一人。死んだ筈の管理局員。
その男は長槍のデバイスを構え、静かに微笑した。

「騎士……ゼスト」

アランの呟き――乾いた声。幼き日の彼にとっての目標だった男が、そこにいた。ストライカーの名を持っていたエース。
敵意も露に短槍を構え、喚いた。地上本部襲撃の際に、空中戦力として<敵>の側にいた男が、何故ここにいるのか。

「あんたは……何なんだ?! 何故、殺したっ!」


「この身は修羅……答える必要など――」
黄金の魔力を纏った穂先が輝き、全てを断たんと煌く。
アランもまた、カートリッジを装填、解放。三発が廃莢され、一時的にアランの実力をAAA+クラスの魔導師に肉薄させる。
だが、融合騎とユニゾンした騎士を落とすには、全てが足りない。それでも、やらねばならなかった。
管理局員として譲れない一線があったから――かつての憧れに、刃を向けてでも。
敵対を選んだ若者を悲しく見つめながら、ゼストは魔力刃を発生させた。

「――無いッッ!!」

「貴方が憧れでした……ゼスト・グランガイツ。だから、ここで管理局員として貴方を逮捕しますッッ!!」
魔力の炸裂が、粉塵を生み出す。
瞬間、高速で――音速を超えて跳ね上がった互いの穂先がぶつかり合い、火花を散らす。互いに本能的に理解していた――この敵には、防御魔法など無意味だと。
事実、ゼストの槍は防御術式を透過する性質を持った武装だったし、アランの槍もカートリッジによる瞬発力で貫通性が向上していた。
つまり、二人は魔法の盾無しで切り結んでいるのと同じことをしていたのだ。攻撃力は魔導技術で跳ね上がっているだけに、危険極まりないといえた。
衝撃波に息が詰まりそうになり、手はびりびりとした振動に震える。一歩後ろに下がり槍を引いて突き出す、弾く、振るう。
絡み合う大蛇のような二本の槍による壮絶な討ち合いは、徐々にアランに不利になっていった。
元々、短槍と長槍という間合いの差もあったし、柄の短さを利用した歩法など、このストライカー級を超える化け物には無意味だった。

249 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/05/28(水) 20:53:06 ID:HRufkz/Y
かくなる上は、意表を突くしかない。
後方に跳ぶ――同時に突き出されたゼストの刺突に脇腹を抉られる。着地と同時に吐血しながら、カートリッジをさらに追加で装填し、廃莢。
弾倉の中の魔力の込められた薬莢を使い切り、魔力の奔流が身体のリンカーコアを焼いた。
血の雫が爪から溢れ、毛細血管が幾つか千切れる。脇腹の傷も浅くない。刃を交えられるのはあと一回だけだ。
全魔力を短槍に注ぎ込む。過剰な魔力供給に柄にひびが入り、刃が唸りを上げていく。そうだ、それでいい。今はこの男を倒せれば。
獣のような唸り声を上げながら、走る。牽制の飛び道具――ルフトメッサー。衝撃波の凝固した刃を、短槍の穂先が打ち消し走り続ける。

「ぬぅんッッ!!」
全力の刺突をもってしても、この青年の突撃は止められなかった、かに見えた。
瞬間、ゼストの右足がアスファルトの欠片を蹴りあげた。一瞬アランの視界が潰される――その一瞬で横合いにまわったゼストの手刀が首筋を強打し、
彼の意識を刈り取った。短槍に込められた暴走した魔力が霧散し、魔力素が大気中に散る。

「……アギト、彼を安全なところまで連れて行くぞ。ついでに治療が受けられるところ、だ」
『旦那ァ、向こうでドンパチ始まってるよー?』

脳裏で響くアギトの言葉にゼストが顔を上げ、そっと呟いた。
かつての己の愚かさを見るように、正義を妄信する彼らに危うさを感じながら。

「――なら、助太刀するまでだ、な。行くぞ」

 広域防御魔法ディストーション・シールドの壁が魔力砲撃を受け止めた。
空間湾曲力場を用いて魔力を逸らし始め、崩壊した集束魔力が大気を焦がす――絶望的な力の差を思い知らせるように。
それでも。それでも。ティアナ・ランスターは諦めない。胸に不屈の魂を宿し、アンカーガンのカートリッジを再装填する。
突き破れないなら、突き破れるまで攻撃し続けるだけだ――。
そのとき、白銀色に輝く連結鞭状刃が、ディストーション・シールドに巻きつき、シールドに多大な負荷を与え――ひびを入れた。
同時に、巨大な――巨大傀儡兵と同じくらいの大きさの――角柱状のハンマーの頭がとてつもない質量を持ってシールドに突き当たり――叩き割った。

「シュランゲバイセン・アングリフッッ!!」
シグナムが叫び、

「巨人の鉄槌、ギガントハンマーッ! こいつに砕けないものはねえ!!」
ヴィータが得意げに口上を謳いあげる。守護騎士ヴォルケンリッター最高クラスの攻撃力を持つ二人の一撃は、効いていた。
カリムがモニター越しに首を傾げ、呟いた。

『リミッター付きの貴方達では、<ヨツン>のシールドは撃ち抜けない筈――ああ、クロノ提督の差し金ですか』
シグナムが獰猛に笑い、桃色の長髪を揺らして烈火を纏う剣をカリムに――そして、シャッハに向けた。
対するシャッハは、鋼の軛に捕らえられ身動きの取れなくなった<ヨツン>を見上げ、寂しげに言う。

「……作戦は失敗のようです、カリム。<ヨツン>は――」



250 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 20:54:16 ID:LguL7IUq
死亡フラグだw アランさん! 支援!!

251 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/05/28(水) 20:55:03 ID:HRufkz/Y
『ジュエルシードを起爆させます、シャッハ。今すぐそこから逃げなさい――これは命令です』

「――カリム、聖王陛下の御加護があらんことを」

『あら、シャッハ。私は冥府魔道に堕ちてもいいと思っていますよ?』
シャッハがくすり、と笑い呟いた。

「つくづく素直ではない御方だ――私は、最期まで剣友(とも)と語り合っていたいのですよ、カリム」
シャッハの顔が牙を剥いた狼のそれになり、にぃ、と笑みを浮かべる。何処までも攻撃的な笑みだった。
カリムが少しだけ息を飲み、悲しそうな顔をした。豊満な胸に金の長髪がかかり、影が差した。

『……では、貴方も私を裏切るのですか、シャッハ』

「いえ、私達は一心同体の主従――貴方が亡くなるのであれば、私も逝くまでです」

カリムは悲しみに顔を歪めたまま、ジュエルシードを操作し、起爆プロセス開始。
傀儡兵の動力源であるジュエルシードが妖しく明滅する。
突然の起爆命令に誰もが唖然とする中、ティアナ・ランスターだけは駆け出していた。手にはありったけのカートリッジ。
異常を察したシャッハが跳躍――鞭状のレヴァンティンに叩き落され、着地。
地上に陣取るシグナムと睨み合う。両刃の長剣にレヴァンティンが戻った刹那、シャッハが、雌豹の如き剣士が跳んだ。
双剣を叩きつけるようにして振り下ろす――後ろに身体を反らしこれを避けるも、裂帛の気合にシグナムの髪が解け、長髪が舞った。
同時に、両手で握られ、だらりと下がっていた剣が跳ね上がり、剣の背でヴィンデルシャフトを叩いた。
どんな体術を用いても相殺しきれない衝撃がシャッハの両手を襲い、その両腕をぐしゃぐしゃに砕いた。

「――ッッ!! シィグゥナァァァムッッ!」
激痛に歯を食い縛りながらなおも突撃するシャッハを、シグナムは――斬った。
流し込まれた魔力が刃の中で炎熱に変換され、鋼鉄すら斬る炎の魔剣が誕生していた。
無造作に振り下ろす。

「――紫電一閃」
炎を纏った灼熱の刀身がシャッハの胴を綺麗に袈裟切りにし、肉の焼き切られる音がした。
どちゃり、と倒れ込む身体――生命が失われていく。

「見…事……!!」
はっきりと思い出せるもの。カリムの泣きそうな顔。のろのろと傷口にふれ、ほう、と溜息をつき血を吐いた。
暖かくも、冷たくも無い。ただ、虚ろなだけだ。

(カリム、カリム、カリム。泣かないで……ください。私が、ついていますから)

何時かの子供の頃、彼女と初めて出逢ったときを思い出し、意識が天に昇っていく。
そうして、気づくのだ。本当に守りたかったものを。
初めて会ったとき、カリムは泣きそうで――だから思ったのだ。この人は、私が守ろうと。

(ああ――泣か……な…い……で)

大切なものを亡くした顔で、シグナムが呻くように言った。

「私からの手向けだ。御前の信じる世界に行くがいい、シャッハ――」

泣きそうな、顔だった。

252 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/05/28(水) 20:56:17 ID:HRufkz/Y
 詠唱しながら駆ける、駆ける、駆ける。カートリッジ廃莢――装填。
アンカーガンの耐久限界に迫る勢いで、魔力を溜めていき直射式射撃魔法を唱えていく。
陸士部隊の隊長が、大声で制止した。探偵気取りが大好きな、顎鬚オヤジが空を飛んでこっちに向かってくる。

「馬鹿野郎っ! 何考えてやがる!!
「止めないでくださいっ! 今あれを、ロストロギアを止めなければ――」
隊長――エルキュールはにやりと笑い、陸士の総意を告げた。
悪戯っぽい笑みで、言う。

「面白そうなことには、俺達も混ぜろッッ!! 御前さんだけで背負ってると勘違いするな」
背後で一斉に男どもが立ち上がり、手に武器を持ち駆け寄ってくる。

ティアナが目を細めて毒をはいた。如何にも嫌そうな顔である。
(神様、あたしの周りにはこういう馬鹿しかいないんですか――)

「……前々から思っていたんですけど、皆ひょっとして馬鹿ですか?」
エルキュールはひょうけた動作で決めポーズを取ると、ずばり、言ってのけた。
口癖は、ずばり第97管理外世界からの密輸入品――探偵小説の台詞である。これを読む為に<英語>をマスターしたというから侮れない。
まあ、すごく馬鹿っぽいが。

「このエルキュールの灰色の脳細胞に見抜けないことなど無いのだよ、ティアナ君。君は今、嬉しがっている。間違いない」
「馬鹿言ってないで行きますよ、隊長」

背後で男どもが暑苦しい絶叫をし、突撃を敢行しているのを感じながら、ティアナは――少しだけ微笑んだ。
なんだ、一人じゃないじゃない――さっきまでの気負いが嘘のように消えていく。
なら、やることは一つだけ。
魔法の名を、叫ぶ。必殺必中の弾丸、その名を――。

「ヴァリアブルバレットォォォ!!」
放たれた弾丸が、傀儡兵<ヨツン>の額を撃ち抜き、蒼い結晶が宙に飛び出した。
ジュエルシードシリアル21――願いを叶える、魔法の石だ。

それに向けて、見えざる魔力の鎖を放ちながら、叫んだ。

「ジュエルシード、シリアル21、封印!!」

果たして――淡い燐光が、世界を満たした――。

253 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 20:57:42 ID:vt27Ewa/
ティアナにリリカルマジカルと言ってほしかった支援w

254 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 20:57:51 ID:LguL7IUq
どこの名探偵だw 支援!

255 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 20:59:16 ID:vt27Ewa/
シャーロック・ホームズ?
支援

256 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/28(水) 21:00:45 ID:HRufkz/Y
以上で投下完了ですー。
えらく難産の回でした。とにかく時間がかかりました。
けれど、一つだけいえる!!<カリムはヒロイン級>!!ちょっとヴェロッサがシスコンかもしれませんw
ご支援ありがとうございましたー。

感想等よろしくお願いします。



257 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 21:02:25 ID:vt27Ewa/
投下乙
次回期待してますw
@アセリアとサンダルフォンの投下も待ってるゼ☆

258 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/05/28(水) 21:06:51 ID:xGthVoDY
「やぁキョン君キョン君、投下予告はあるかい?」
「ぐぐれ」
「にょろーん」

というわけで、他にないようでしたら、30分からリリカル殺生丸十一話を投下します。

そして、闇王女の感想。
なんだかこの絶望と狂気に満ちた世界で、久々に正統派な燃えるバトルを見た気がしました。うん、大好物さ!w
原作では影の薄かったシャッハさん、死んでしまったのは残念ですが、壮絶な散り様に乾杯。
今回もGJでした!

259 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 21:07:20 ID:PvSmQzva
GJ!でした。
このカリム大好きですw
カリムはヒロイン兼裏の主人公な気がしてきました。
なのはといいカリムといい昴氏のキャラは魅力的ですね。

260 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 21:22:49 ID:LguL7IUq
>>256
まずはGJ。
そして、次になんというカリムw
今回は今までのバトルで一番燃えたような気がします。
熱いぜ、ティアナ! 熱いぜシグナム! そして、死亡フラグを破ったよアラン!(まて)
黒幕の一人であるカリムの憎悪と歪みにwktkしました。ああ、こんなカリムだったら俺本編でもファンになっていたかもしれません。
そして、何気にリリカルなのはだと珍しい音速戦闘に突入!
強いよ、ゼストでしたw
シャッハも良い味を出していますし、なんといっても近接戦闘同士のバトルは熱いですね。
ヴィータやシャマルも重要な役どころですし、もう文句ありません!
さらにはティアナが、遂に一期以来のジュエルシード封印!
凡人が光ったー! って感じでした。
次回以降も光って唸るぜw と変な期待をしています(さらにまて)
次も応援しています!
頑張ってください!!


それと反目氏の次の予約は空いていらっしゃるでしょうか?
空いていればエンドライン3−4の投下をします。


261 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/05/28(水) 21:30:36 ID:xGthVoDY
では、投下いきます。27KB8分割と、久々にすっきりした容量。

そして今回、主役のはずの殺生丸様は完全に不在です(ぇ

262 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 21:31:03 ID:U0URg4ak
>>260
大丈夫だと思いますよ〜。
ヤバイ。俺の好きなお二方が一気に来るとは!!
投下の際は間に合えば(←オイww)支援させてもらいます。

263 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/05/28(水) 21:31:56 ID:xGthVoDY
「いやはや、まったくもって見事なものじゃないか」
蛇のようにまとわりついてくるような嫌な声が、ラボの一室に響き渡った。
ジェイル・スカリエッティである。
基本的に無感動な両の瞳は、いつもに比べれば若干興奮に彩られ、口元はにぃとつり上がっている。
たった今、彼をこうまで喜ばせているのは、部屋中に展開されたスクリーンの映像だ。
カメラ越しに映し出されているのは、あの美しき白銀の魔人――殺生丸。
先のギンガとの戦闘での彼の姿が、ありとあらゆる角度からモニターされていた。
ギア・エクセリオンの超高速にすら伍する速力、戦闘機人を一撃で吹き飛ばす腕力。
そして、ギンガの最後の一撃――フェイトから受け継いだ必殺技・プラズマスマッシャーをかき消した妖力。
「敵の砲撃を相殺した、殺生丸様の妖刀・爆砕牙……測定されるエネルギー値は、Sランク魔導師の攻撃力にも匹敵しています」
コンソールを操りながら、ウーノが言った。
言い終えると同時に、次々と新たな映像が表示されていく。
先ほどまでのものとは異なり、夜の闇の中での戦闘が展開されているそれらは、一週間前の地上本部戦の時のものだ。
シグナムを相手に振るわれる、絶大な破壊力を秘めた白刃・爆砕牙。
ナンバーズの中でも随一の攻撃力を誇る、ディエチのイノーメスカノンでなければ破れない防壁を切り裂き、
斬撃の余波を受けた床に鋭い亀裂を走らせ、崩壊させる様が、ありありと映し出されていた。
「おまけに破壊エネルギーを残留させ、半永久的に攻撃を続けられる特性まで持っているときた」
さぞ面白そうにスカリエッティが呟く。
さながら電気が帯電するようなこの能力は、ナンバーズはおろか魔導師の中にすら保有する者はいない。
更に、触れたものにもまた攻撃を伝線させるともあれば、興味深いことこの上ないだろう。
「だが、まだ足りない」
「?」
おもむろに言い放ったスカリエッティの顔を、怪訝そうにウーノが覗き込んだ。
「ここまではまだ、人間でもできることだ。
 現にSランク魔導師ならゼストだってそうだし、ほんの何人か人数を集めれば、この手品に並ぶ打撃を与えることもできる」
無限の欲望が人外の魔物に求めたものは、人間業の領域ではない。
魔法という人間の理性の産物と並ぶ程度では、妖怪という蛮族が本能レベルで有した異能も、注目に値するものではない。
しかし、言葉とは裏腹に、彼の表情に落胆はない。
「私はね、この先を見たいんだよ」
声音に微かに混じるのは、期待。
スカリエッティは求めている。
「人間の現代科学の領域では到達できない、絶対的なまでの野性の力……私はそれを期待しているのさ」
人より嗅覚が優れているだけでもない。
ディエチの砲撃で並べる程度の攻撃力でも、トーレのライドインパルスで凌げるような脚力でもない。
科学という理性の産物では、絶対に及ばない何か――無限の欲望は、その「何か」が見られる時を待っている。
それがなければ、科学の絶対性が証明される。野性を超える理性の力を、今までどおりに使って研究をするだけのこと。
もしそれがあれば、それは新たな生命の可能性の証明だ。理性を超えた野性の可能性を、新たに探求することができる。
「――ではウーノ、私はそろそろ大事なお客様をお出迎えするとするよ」
言いながら、スカリエッティは踵を返すと、手のひらにデバイスを取り付けた。
ルーテシアのアスクレピオスにも似た、漆黒のグローブ型。
しかし、五指を覆う凶悪な鋼鉄の爪が、それを一般的なデバイスとは隔てている。
ミッド式ともベルカ式とも異なる、独自の様式の魔法を行使するための爪。AMFの効果対象から外れた、異形の力。
それを携えるは、コードネーム「アンリミテッド・デザイア」――かつて管理局が生み出した、人工生命体。
次元世界の平和を守る力を作るために生まれた科学者は、異能をもってその管理局に爪を向ける魔術師になった。
自らがプログラミングした無限の欲望は、その制御の域を越え、管理下での研究では飽き足らなくなった。
故に、魔術師は禁断の科学と異界の力をもって、管理局へと牙を剥く。
「お気をつけて」
かちゃり、かちゃりと爪を鳴らすスカリエッティを、ウーノは一礼と共に見送った。

聖王のゆりかごは飛翔する。
それぞれの思惑を巨体に乗せて、ミッドチルダの空を上っていく。
スカリエッティの期待、ゼストの過去への因縁、ルーテシアの母への願い、そして――殺生丸の帰郷の念をも乗せて。

264 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/28(水) 21:33:24 ID:xGthVoDY
魔法妖怪リリカル殺生丸

第十一話「空色の誓い(前編)」


クラナガン市内、地上本部付近の道路。
ぱらぱらという細かい石の音と共に、人影がゆっくりと立ち上がる。烈火の将こと、シグナムの姿だ。
美しい桜色のポニーテールと騎士甲冑に手を当てて、被った塵を払う。地面に突き刺したレヴァンティンを収める鞘は、腰にはなかった。
先ほどまでゼストとアギトの2人を相手に、激しい攻防戦を繰り広げていた彼女だったが、
相手の攻撃を鞘で受け止めた時、そのままそれを破壊され、この道路へと叩き落とされてしまったのだ。
生前はS+ランクだったというのも、伊達ではないということか。
シグナム自身のランクはS−である以上、魔力は向こうの方が高いのだ。
「騎士ゼスト、本部へ突入……」
傍らで報告するリイン――落下の拍子に、ユニゾンは解けていた――の声音に力はない。
横目に見れば、鎮痛な面持ちで軽くうつむいている。小さな肩は微かに震え、今にも泣きそうな様子だった。
「悔しいのか」
顔色を曇らせ、短くシグナムが問いかける。
返事はすぐには返ってこない。リインの震える唇が開かれるまでには、一拍の間を要した。
「……リイン、この前から、全然みんなのお役に立ててないです……」
ややあって、か細いリインの声が発せられる。
今まで六課の面々のムードメーカーとして、場を和ませていた「小さな上司」の元気さはどこへやら、
消え入るような弱々しい声のみが、今はその口から紡がれていた。
「それだけじゃない……ホテル・アグスタの時から、ずっと、ずっと……」
閉じた瞳に蘇るのは、どれもこれも苦い思い出の光景ばかりだ。
ホテル・アグスタでの戦闘では、ルーテシアの召喚虫によってあっという間に撤退を余儀なくされた。
廃棄区画での戦闘では、フリーレン・ツェッセルンの隙を突かれてまんまと逃げられた。
地上本部でヴィータとユニゾンした時には、ユニゾン練度で勝っていたにもかかわらず撃墜された。
先の戦闘でもまた、シグナムを勝たせることもできず、無様に地に落とされている。
「私は……みんなをお守りする、『祝福の風』なのに……!」
瞼の隙間から、一筋の熱い雫が漏れた。
彼女が二つ名にする「祝福の風」とは、ただその能力を表すだけの記号などでは断じてない。
かつて主たるはやてと、その従者たるヴォルケンリッターと共に戦い、
見事に力となった先代リインフォースから、文字通りその魂と共に託された名前だ。
それが今の自分はどうだ。戦闘で役に立つどころか、最悪な場合は何もできずにおめおめと引き下がっている。
情けない。
これでは彼女に合わせる顔がない。生まれた意味すら、彼女の中では危うくなっていると言っても過言ではなかった。
とめどなく涙を流し、リインは微かな嗚咽によってその無念を吐露する。
「……今、アルトのヘリを手配した」
それに対し、シグナムが突発的にかけたのは、そんな言葉だった。
「え……?」
「上では、エーカー一尉の率いる部隊が開いた突破口から、高町とヴィータが乗り込んだと聞く」
上空のゆりかごを仰ぎながら、シグナムは尚も続ける。
フラッグ隊隊長、グラハム・エーカー一等空尉。首都防衛隊に所属する、指折りの航空戦力だ。
魔力ランクはAA+とシグナムよりは低いが、地上本部では随一の速射能力と熟練のテクニックで、何度か互角の模擬戦を演じている。
「お前はヘリでゆりかごへ向かい、ヴィータと合流して動力を叩け」
あの巨大戦艦には、未だ目立った変化は見られない。
動力源を破壊されれば動きも止まるはずだが、その様子もないということは、破壊に向かったヴィータが苦戦しているということだ。
――悔しいのならば、めそめそせずにここで彼女の力になってみせろ。私がその背中を押してやる。
要するに、シグナムはそう言っているのである。
「でも、シグナムは……?」
「私は……」
言いながら、開いた手のひらを見つめる。
レヴァンティン越しに感じた、あの時の違和感。苛烈なゼストの剣閃の中に混じった、微かな手の震え。
「……恐らく、もう長くはかかるまい」

265 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/28(水) 21:34:27 ID:xGthVoDY
廃棄区画、とあるビルの中。
「はぁ、はぁ……」
ギンガと殺生丸の大激戦が繰り広げられた道路に程近いこの場所で、ティアナは1人疲労困憊といった様子で、荒く息を切らしていた。
身を隠すように柱の陰で中腰になり、エリアサーチで上の階層の様子を伺う。
そこで繰り広げられていたのは、一方的な殲滅戦の構図だった。
攻撃を受けているのは、全てが全てティアナと瓜二つの容姿を持った者達――フェイクシルエットの大軍団。
よく見れば本物のティアナの足元には、ミッド式のオレンジ色の魔法陣が輝いている。
まやかしの弾幕の中で幻影を叩きのめしているのは、総計3人のナンバーズだ。
茶色の長髪をたなびかせ、真紅の双剣を振るうディード。
盛大な爆発音を立てて、投げナイフを操る隻眼のチンク。
ボードに乗りながらエネルギー弾を連射するウェンディ。
近・中・遠距離と、それぞれがそれぞれに得意なレンジを有した3人が、優れた連携を発揮してティアナ達を倒して回っていた。
強力なフィールド結界がかけられている以上、この絶対的に不利な場所からの脱出は不可能。
増援を呼んで奇襲をかけてもらおうにも、フィールド内から発した念話は傍受されてしまう。
つまりティアナは、たった1人で3人の敵に当たらねばならなかったのだ。
『発見されました。3方向から真っすぐに向かってきます』
クロスミラージュから通達されるのは、絶望的な報告だった。
「シューターとシルエット……制御オーケー、現状維持。後はここで迎え撃つ」
『Yes.』
受け答えながら、ティアナは自身のデバイスをツーハンドモードに変更する。
具体的な対抗策が浮かぶまで時間を稼ぐつもりだったが、発見されるのが早すぎた。
ここに至るまでの攻防で逃げ足は封じられているし、カートリッジも魔力もほとんど残されていない。
この状況下で実行できる策はあるにはあるが、それもあまりに荒削りで、危険すぎる賭けだった。
自身ののろまさとスタミナのなさを呪う。もっと機動力と魔力が残っていれば、よりましな手段もあっただろうに。
(……でも……)
それでも、彼女の瞳から力が消えることはない。
記憶の中で蘇るのは、長きに渡って共に戦ってきた相棒の姿。
(ここで負けたら、アイツに合わせる顔がないじゃない……!)
青いショートカットと緑の瞳を持った、腐れ縁で結び付けられたパートナー。
自分達は誓ったのだ。彼女の――スバルの分も戦い抜き、必ずミッドを守ってみせると。
戦闘機人の身体に生まれたことで手にした、天賦の才ともいえる魔力と体力の全てを、今は完全に喪失したスバル。
かつては内心で憧れていながら、今は逆に凡人の自分よりも弱くなってしまった。
自分の無力を呪い、ギンガの胸の中で泣いていたという彼女が、今は自分達の後ろにいる。
力を持たない、守るべき大勢の人達の中にいる。
ならばどうするか。
答えは決まっている。
(私が――)
天井から爆発音が響いた。
(――やるしかないのよっ!)
侵入する3人の戦闘機人。ティアナの右足を傷付けた凶刃を携えるディードが、先陣を切って突っ込んでくる。
背後に続くのは、浮遊ボード・エリアルレイヴを操るウェンディと、同乗するチンクだ。
瞳に鋭さを宿すと、ティアナは両のクロスミラージュをダガーモードに変形させ、ディードの攻撃を受け止める。
無論、それだけには留まらない。
チンクのランブルデトネイターでは、強力すぎてディードを巻き込みかねないが、
ピンポイントで相手を狙えるウェンディのエリアルキャノンならば追撃が可能だった。
迫る真紅の魔弾。
広がる灰色の粉塵。
魔力アンカーの輝きと共に脱出するティアナの姿。
追撃のスティンガーが、残るチンクの手から投げ放たれた。
かつてギンガを完膚なきまでに叩きのめした、必殺の爆発力を内包する刃は――虚しく空を切る。
「幻影!?」
ティアナは脱出などしていなかった。煙が晴れた眼前で、変わらずクロスミラージュを構えている。
右手にダガーモードの光のバヨネットを握り、左手でクロスファイアシュートの2つの弾丸を制御し。
ギリギリ最小限の動きでエリアルキャノンをかわし、その場に残ることを選択したのだ。

266 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/28(水) 21:35:24 ID:xGthVoDY
(逃げない?)
(何かの罠か……)
(本物なのは間違いないッスね……)
ライディングボードの上で、通信を駆使しながらウェンディとチンクが確認し合う。
前衛担当のディードは、再びティアナの方へと歩み寄った。
(ええ、本物のようです)
(油断するな)
最も近い場所から正体を確認したディードの報告を受け、チンクがボードから飛び降りる。
チンクは両の手にスティンガーを構え、ウェンディは手に持ったエリアルレイヴからエネルギー弾を生成。
相手の目を見れば分かる。勝負を諦めたわけでは断じてない。
故に、早急に決着をつける。
三方向からの同時攻撃を仕掛けるための、一撃必殺の布陣だった。
(やっぱり、最初の時と同じポジショニングだ……)
そしてその様子を、ティアナは極めて冷静な頭脳を回転させて分析する。
この3人の連携は確かに完璧だが、その練度を発揮するために、構造自体は極めて単純なものになっている。
1人の人間を包囲し、同時に攻撃をかける際には、全員が全員、毎回同じ位置関係となっているのだ。
もしこれがトーレやディエチのような稼働歴の長い姉妹との連携だったならば、
チンクもその高い戦闘センスを発揮したコンビネーションを取れただろうが、ウェンディとディードはまだ生まれて日が浅かった。
複雑な連携になど対応できるはずもない。それこそが、ティアナに残った救いだった。
(あとは……コンビネーションの初動)
これもまた、彼女には把握できている。
各々が得意なレンジを有したこのトリオの中では、最初に仕掛けるのは近接型のディードだ。
次いでウェンディのエリアルキャノンでたたみかけ、最後はチンクのランブルデトネイターでとどめを刺す。
ならば、自分が見るべきはディードの動き。それで全員の行動が把握できる。
しばしの沈黙。お互いに相手の動向を探り、膠着状態が続く。
じり、と。
微かに耳に入った、ディードの床を踏む靴音。
そして、遂にツインブレイズの双剣士が、その身体を躍動させた。
遅れてチンクもまた、射程を確保するために走り出す。
(――ここっ!)
そして、それを見逃すティアナではなかった。
空中に浮かせたクロスファイアシュートを同時発射。挟み込むように立ったディードとチンクを、同時に狙い撃つ。
これは双方外れ。しかし、突然の反撃によって、全員の意識は一瞬ティアナに向き――仲間の存在が視野から外れた。
左手のクロスミラージュが、一瞬の早業でウェンディへと向けられ、通常弾を発射する。
「っ!」
一撃で仕留めるために、一度に多くを展開しすぎたエリアルキャノンに誘爆。
先ほどのそれなど比較にもならない、盛大な爆煙と衝撃波が、全員の動きを停止させる。
灰色の闇の中、ウェンディとディードを襲ったのは――先ほど「わざと外し、懐へと迂回させた」オレンジ色の弾丸だった。
それぞれにノーガードの顎と後頭部へと叩き込まれ、脳を揺さぶり、意識を一瞬のうちに刈り取る。
そして、背後から隙を突いたはずのチンクには、
「貴方達を……保護します」
余裕たっぷりのタイミングで、右のクロスミラージュの銃口が向けられていた。
たかだか3発の銃弾でウェンディとディードを無力化し、挙句自分の動きまで封じるとは。
しかも、得意の幻術を後半からは一切使わずに、これだけの戦果を収めている。
内心で相手のしたたかさに歯噛みしつつ、チンクは金色の単眼で、ティアナを睨みつけた。
「武装を解除しなさい」
その向こうで、ティアナの勝利宣言が響き渡った。

267 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/28(水) 21:37:36 ID:xGthVoDY
クロスミラージュを向け、オレンジ色のツインテールがチンクを封じ込める。
虚を突く役目だったはずが逆に虚を突かれ、構えを解いてしまった彼女には、相手の攻撃よりも早く反撃する手段がない。
ガードシェルの防壁を張っても、その隙に左のダガーでやられてしまうだろう。
完全にしてやられた。敗北だ。
ウェンディとディードの双方が気絶している今、自分1人ではこの場を切り抜けることは不可能。
チンクの胸の中は、己の軽率さを嘆く想いでいっぱいだった。
自分達3人で、たった1人の魔導師を仕留められなかったことに対して。
「……これで勝ったつもりか?」
――「4人目の手を煩わせることになってしまうこと」に対して。
ごう、と。
「!?」
ティアナの背後で鳴り響く、爆音。
巻き上がる粉塵と共に、コンクリートの壁が粉みじんに爆砕される。
突然の出来事に、銃口を外すことはなくとも、ティアナは反射的にそちらを向いた。
巻き上がる煙の中から続いて響くのは、すっかり聞きなれたローラー音。
スバルやギンガの愛用している、ローラーブレードの車輪の音だ。そしてそれは、何も味方だけが使うものではない。
粉塵が晴れた中に、あの赤毛の戦闘機人がいる。
鋼鉄の籠手を右腕に嵌め、凶暴なスピナーを内臓した具足を履いた、4人目の敵がいる。
ナンバー\・ノーヴェ。
今まで感知されることなく、突然現れた、存在しないはずの伏兵。
(このタイミングで、よりにもよってオールレンジ型……!?)
それも今のティアナにとっては、最悪の攻撃パターンを持った相手だった。
コイツのスピードは、同型の武器を装備したスバルに匹敵する。本気で当てようとしても、まず捉え切れずに詰め寄られるだろう。
残り僅かな魔力を振り絞り、足止めの弾丸を撃ったとしても、まだガンナックルの掃射がある。
彼女にとってのノーヴェは、皮肉にもチンクにとっての自分と同じだ。
いかなるパターンをもって反撃に及ぼうとも、今の自分では止めることはできない。
「便利なもんだな、オットーのジャケットは」
余裕たっぷりに言いながら、ノーヴェはガンナックルをティアナに向けて構えた。
そして今口にした言葉こそが、彼女がエリアサーチに引っかかることなく、今まで虎視眈々と奇襲のタイミングを狙えていた理由。
ナンバー[にして、ディードとは双子の姉妹に当たるオットーは、ステルスジャケットという物を羽織っている。
その名の通り高いステルス性を持ち、並の感度のレーダーに引っかかることはまず有り得ない代物だ。
今回の作戦に際し、ノーヴェはそれと同じ物をスカリエッティから受け取り、いつものジャケットの代わりに着込んでいたのである。
故に、今まで相手に見つかることなく、彼女はティアナを狙い続けていた。
有事の時に備え、横合いから思いっきり食らいつくために。
「ごめん、チンク姉。出張っちゃって」
「いや……むしろ、お前を頼ることになってしまった姉にこそ非がある」
それでも今までノーヴェが出てこなかったのは、このチンクが止めていたからと見て間違いなかった。
プライドの高い彼女としては、ノーヴェという4人目に頼ることなく、自分達の力でティアナを仕留めたかったのだろう。
しかし、それはどうあれ、結局勝ったとばかり思っていったティアナは、逆に窮地に立たされてしまった。
「さぁて……そろそろブッ殺してやろうか、オレンジィ?」
眼前ではノーヴェが、嗜虐的な笑みを浮かべてこちらを見つめている。
結局駄目だった。このままでは大した反撃もできることなくやられてしまう。
最初から無理だったのだ。こんな圧倒的な戦力差を、たった1人の凡人が覆すことなどは。
(ごめん……スバル……ッ!)
再び脳裏に浮かぶのは、やはりあの少女の姿。
死を覚悟したティアナの目が絶望に彩られ、堅く閉じられた。

268 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/28(水) 21:38:48 ID:xGthVoDY
.
――きいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん。

ふと、奇妙な音を耳にした気がした。
何かの幻聴だろうか。いや、こんな音は、死の間際に耳にするにはあまりにも飾り気がなさすぎる。
もっとこう、家族の言葉とか、友人の声だとか、そんなものが聞こえてきてしかるべきタイミングのはずだ。
なのにこの音は一体何なのだろう。こんな音、この場に似合うような重要な思い出の中にはあるはずもない。
閉じた瞼を微かに開き、音の正体を探る。
「何だ、この音は……?」
最初に飛び込んできたのは、同じく不審な音に反応するチンクの姿。
「オットー! オットー! ……くそっ、落とされたかっ!」
そして苛立たしげに吐き捨てるノーヴェ。オットーというのは、恐らくこのビルの結界を張った戦闘機人だろう。
今も耳に響き渡るこの音は、連中の仲間が発しているものではないらしい。
怪訝そうに視線を泳がせるチンクと、外の仲間に状況確認を取ろうとしたノーヴェの姿を見れば、嫌でも理解できる。
ならば、この音の正体は一体何なのか。一瞬前まで、遠くから鳴り響いていたこの音は――みるみるうちに近づいてきている。
(あ……そうだ、この音は……)
そこに至って、ようやくティアナは思い出した。
これは高速で飛行する物体が発する、いわゆる「風を切る音」というものだ。
それも、不可視のエネルギーを浮力とする飛行魔法が発する音ではない。
この音は、飛行機などがその鋼鉄の両翼で空気を掴み、切り裂く際に発せられる鋭い音。
控え目な音量からして、相当小型な機体が近づいてきているのであろう。
そうこう考えているうちにも、音はどんどん大きくなり、彼女の右側からこちらへと迫ってきている。
(……って、ちょっと待って!)
そしてティアナは気がついた。
この音の主たる、恐らく航空機か何かであろう飛行物体は、真っすぐにこちら側へと向かってくる。
彼女の右側に当たる壁には、背後に空いたような大きな穴はない。そのままビルの中へと侵入することは不可能。
いやそもそも、いかなる大穴を空けたとしても、航空機一台が滑り込むことなどできるはずもない。
つまり、まだ見ぬ機体のパイロットはこう考えている。
(思いっきり壁に激突して――突き破るってこと!?)
「来るぞっ!」
ティアナが結論に至り、その顔を青ざめさせると同時に、チンクがノーヴェに向かって大声で言い放った。
今や外から響く音は、その絶叫さえもかき消すような大音量となっている。
一体どこのどいつなのだ。救援に来てくれるのはありがたいが、これは手段を明らかに間違っている。
こんな無茶で無謀で無鉄砲な真似をする奴は――。
「!」
猛烈な爆音が、その思考を遮った。
外界からこのコンクリートの檻へと飛来した何物かは、凄まじい勢いで堅牢な壁を粉砕し、強烈な粉塵を巻き上げる。
今日一日で、一体ティアナは何度この手の煙を見たことになるだろう。
咄嗟のことに対応できず、粉塵を吸い込んでしまい、しばし苦しげに咳払いをする。
ぱらぱらとつぶての音が聞こえる中、煙を突き通すように光が差し込んできた。
盛大に空けられた巨大な風穴から、照明もなく、薄暗い室内へと日光が入ってきたのである。
さながらその陽光は、1人絶望の奈落へと叩き落とされたティアナを拾い上げる、救済の光のように強く煌いた。
光が差す方へと、彼女は視線を向ける。この輝きの先には誰がいる。その背に眩い後光を受けた、手荒い救世主様とやらは一体誰だ。
「――――っ」
そして、息を呑んだ。
視線の先にあったのは、大きな鋼鉄の戦闘機ではない。ましてや、一流の航空魔導師でもない。
そこに立っていたのは、1人の少女だった。
両手に特徴的なスピナーを装備した籠手を嵌め、足に履いたローラーブレードから空色の翼を伸ばして。
純白の装束を身に纏い、長いはちまきを風に躍動させるその姿は。

「――遅れてごめん、ティア」

うら若き少女の声が響き渡る。
もう何年もすぐ傍で聞き続け、耳から離れることは決してなかった、あの人懐っこい少女の声。
青いボーイッシュな髪と、エメラルドのような澄んだ瞳が、こちらを見つめている。
「まさか……」
そこにあったのは、決して見紛うことなき――最も信頼を寄せるパートナーの姿。

「――助けに来たよ!」

269 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/05/28(水) 21:40:03 ID:xGthVoDY
.
「……スバル……!?」
それは間違いなく、スバル・ナカジマ一等陸士の姿だった。
青いボーイッシュな髪と緑の瞳を持ち、白いバリアジャケットをその身に着込んだ、あのスバル・ナカジマだ。
姉ギンガの物と共に両手に装備されたリボルバーナックルも、ギア・エクセリオンの双翼を輝かせるマッハキャリバーも、
全てがあの騒がしい相棒である、スバル・ナカジマの物に他ならなかった。
がしゃん、という音と共に、スバルの背中から何かが落ちる。
純白の闘衣に背負っていたものは、何やら大仰な金属製のウイングだった。
ところどころが衝撃でへこみ、破損箇所の一部ではスパークが輝いている。恐らくこれを使って、彼女はここまで飛んできたのだろう。
そして、普段との相違点といえば、その鋭角的な翼だけではなかった。
鍛錬によって無駄な脂肪がそぎ落とされ、綺麗なラインを保った腰には、何かが取り付けられている。
鋼鉄色に光り輝くそれは、無骨なベルトのようなものだ。
奇妙な形状と普通よりも明らかに大きなサイズが、それを異質なものたらしめている。
マッハキャリバーやリボルバーナックルはギンガから受け取った物として、一体そのベルトは何なのだ。
いや、そもそもおかしい点はそれだけには留まらない。
彼女はリンカーコアと肉体に著しい損傷を受け、その魔力と体力の全てを、一時的に喪失したはずだった。
一般人の少女と何ら変わらない力しか持たず、それも一ヶ月は治らないという彼女が、何故ここにいる。
何故魔力なしには装備できないバリアジャケットを身につけ、重いデバイスを身体で保持して平然と立っている。
「アンタ、一体……」
「テメェ……あの時のハチマキ女かっ!」
ティアナの問いかけを遮ったのは、怒気を孕んだノーヴェの声だった。
先の地上本部戦において、彼女は戦闘機人の動力を暴走させたスバルから、尻尾を巻いて退却することを余儀なくされた。
自分のプライドをずたずたに引き裂いた因縁の相手が、今目の前に現れた。その憎悪もかくやと言ったところだろう。
「大丈夫だよ、ティア」
不意に、スバルの声が響く。
見れば、重病人のような立場であるはずの彼女の顔は、えらく頼もしげな笑顔を浮かべていた。
そしてその表情が、きっと引き締められる。
「コイツの相手はあたしがする!」
言いながら、腰のベルトから勢いよく金属の筒が吐き出された。
魔力カートリッジの空薬莢。新たに装備されたそれは、実はアームドデバイスの類だったのだ。
カートリッジロードの音は尚も続く。2回、3回、4回……総合計、10回。
「なっ……」
ティアナの瞳が驚愕に見開かれる。
コイツは一体、一度に何という数のカートリッジを併用しているのだ。
もちろん、弾薬残量の問題もある。だが、それよりも危惧すべきはスバルの身体。
こんなに一度に大量の魔力が注ぎ込まれれば、人間ならばその身に受ける負担も尋常なものではあるまい。
いかに頑丈な戦闘機人といえども、さすがにここまでするのはキツいだろう。
そしてスバル自身、その危険性が分からないほどの間抜けでもあるまい。では何故そんな真似をするというのか。
「ハッ! あの時の決着をつけるってか!」
結論が出るよりも早く、ノーヴェがジェットエッジのスピナーを回転させ、臨戦態勢に入る。
スバルもまた、己の両の手に装備したリボルバーナックルを起動させた。
黒と白。両の手に身に付けたナックルスピナーが、獣のごとき咆哮を上げる。
ファイナルリミッターから解き放たれ、その力の全てを解放したマッハキャリバーから立ち込める排気煙。
「行くよ……マッハキャリバー!」
『All right,buddy.』
スバルの声に応える、鋼鉄の「相棒」の声。
インテリジェントデバイスが発したその呼び名に、一瞬表情を綻ばせる。
そして、
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「でやあああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
両者は真っ向から激突した。

270 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 21:41:01 ID:xGthVoDY
疾駆するマッハキャリバーとジェットエッジ。
雄たけびと共に両者は一直線に加速し、スバルは右手を、ノーヴェは左脚を振り上げる。
衝突する2つのスピナー。回転する金属の刃がぶつかり合い、互いを巻き込み、悲鳴のような音を立てる。
力は拮抗。ノーヴェを下したスバルのIS・振動破砕は発動していない。故に、両者の攻撃は互角の威力をもって激突した。
再びスバルの腰から響く、重厚な金属音。カートリッジが新たに2つ、ロードされる。
彼女の身体能力を高めるナックルダスターが、一層その出力を高めた。
(なんだ、コイツの力は……あたしが押されてる……っ!?)
ノーヴェの眉がしかめられる。
ジェットエッジの左脚が、徐々にリボルバーナックルの右手に押されていくのを感じた。
以前に戦った時には、ここまでの身体強化はできなかったはずだ。ほとんど互角の筋力が、覆されることは有り得なかった。
魔力操作を司るデバイス・マッハキャリバーには、見慣れぬ翼が煌いている。
恐らく、前回の戦闘の時よりもパワーアップがなされているのだろう。
ならばナックルダスターが発揮できる出力が、以前よりも更に向上しているのもそのためか。
頬を伝う、嫌な汗。
このままでは無駄に体力を消耗した挙句に押し切られる。
「くっ!」
忌々しげにスバルに一睨みくれると、ノーヴェは加えてその右脚を振り上げた。
すかさず左腕の白銀のリボルバーナックルが、その蹴撃を受け止める。
ガードを蹴り飛ばした勢いでその場から跳び退ると、そのままガンナックルを構えながら後退。
右腕から放たれる弾丸の掃射で牽制しながら、ジェットエッジをフル加速させて距離を取った。
スバルもまたそれに怯むことなく、マッハキャリバーを走らせる。
ギンガが殺生丸と戦った時と同じ、A.C.Sの双翼の加速力を爆発させ、猛烈な速度で弾幕の中へと飛び込んだ。
音速の具足は、遂にその名に恥じぬスピードを発揮する。
迫り来る凶弾の雨の中、凄まじいまでの速力を強引に制御し、鋭いカットでその中を掻い潜る。
身体をひねり、上半身を屈ませ、襲い掛かる弾丸をものともせずに、ノーヴェとの距離を詰めていった。
(スピードも半端じゃねぇっ!)
内心で歯噛みしながら、ノーヴェはエアライナーを展開。
ナカジマ姉妹のウイングロードに似た、オレンジ色の光の道が彼女を天空へと上らせた。
パワーもスピードも、向こうは今やこちらを凌駕するに至っている。
正面からの衝突では僅かに向こうに押され、追いかけっこでも向こうの方が速かった。
まだ顔も知らぬ姉・ドゥーエからの報告では、今のスバルはろくに戦える力も持っていないはずだったのに。
コイツの力は一体何だ。何があのギア・エクセリオンを動かしている。
ノーヴェの視線の先で、あのベルト型デバイスが、またもやカートリッジを10発吐き出した。
「!」
その光景を見た瞬間、はっとしたようにノーヴェの瞳が見開かれた。
得られたうち、半分の魔力が本家本元のウイングロードを形成し、もう半分の魔力がナックルダスターを強化。
「だああぁぁぁっ!」
空色のロードを一瞬にして駆け上がったスバルの拳が、ノーヴェを並行するエアライナーから叩き落とした。
フィットスーツで包まれた身体が落下し、背中にコンクリートの硬度を味わう。
痛みにその顔を歪めながらも、ノーヴェは即座に立ち上がり、そして上空のスバルを睨みつける。
「テメェ、その魔力……そのカートリッジシステムから、強引に引っ張り出してやがるな!?」
「なっ……!?」
その言葉を耳にしたティアナは、驚愕も露わな様子でスバルの方を見る。
やはりスバルの身体は、まだあの状態から回復していなかった。
そんな彼女のからくりの謎を解く鍵は、あの腰に備え付けられた無骨なベルト型デバイスだったのだ。
魔力の枯れた身体に、数十発単位の大量のカートリッジを行使することで、外部からエネルギーを確保。
衰えた筋力は、身体強化魔法のナックルダスターによって強引に底上げされていた。
大丈夫などでは断じてない。スバルは思いっきり無茶をして、この場でノーヴェと戦っていたのだ。
身体を苛むカートリッジの負担に耐えながら、動かぬ身体に強引に鞭を打って。
ウイングロードの上から、しかしスバルは変わらず、毅然とした表情でノーヴェを見下ろしていた。

271 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/05/28(水) 21:42:01 ID:xGthVoDY
だから言っただろ? 俺はこのままスバルをフェードアウトさせるような外道じゃないって(ぇ

というわけで投下終了。
「突然訪れる不幸→絶望」が最近の流行り? むしろ「突然訪れる不幸→大☆復☆活!」が反目スタイル!(ぉ
そんなこんなで、見事復活を遂げ、
原作では「OP詐欺」と言われて夢のまた夢となった、ノーヴェとのガチバトルに挑んだスバルの話です。
ここに至るまでに一体スバルに何があったのか、何がスバルを危険な戦場へと駆り立てたのか。
それは次回の投下となる後編で明らかになります。

本来、ナンバーズの奇襲にはノーヴェよりもチンクの方が適任だったかもしれませんが、スバルと戦わせるためにノーヴェ(ぇ

272 :一尉:2008/05/28(水) 21:42:25 ID:pG/9U9MA
スター支援

273 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 21:43:11 ID:M572HoJl
>>256
GJ!
なんて魅力的なカリムとシャッハ。
そういえばベルカ人は魔力放出が苦手だとか設定がありましたな。
ベルカ式がカートリッジを使うことからの考察や、ちょっとした設定をうまく使っていて良かったです。

274 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 21:55:24 ID:KesULSje
さすがだ、反目氏!!
スバルの復活はないと思っていた矢先にこの展開!

おれたちにできない事を平然とやってのけるッ! そこに痺れる!憧れるゥ!

さて、次回のスバルの活躍はどうなるのか、殺生丸は活躍するのか、楽しみにしています。

275 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 21:59:14 ID:eTpHOAUJ
反目氏GJ!

スバルVSノーヴェはありそうであんま無いので次回が楽しみだっ!

276 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 21:59:19 ID:LguL7IUq
>>271
さようならスーパーティアナタイム(おい)
そして、こんにちはスーパースバルタイム(まて)
なんか初めてサイボーグだと感じたよ、スバル!
GJでした!
このスバルならダンダバダンダバいいながら、プールとかから発進しそうで怖いw
と、それはおいといて。
今回はティアナは本編どおり戦闘機人三人潰して、そして本編よりも用心深いナンバーズによってピンチになりましたねw
伏兵など個人的には楽しい描写があってよかったです。
スカ博士も何やら素敵な発言をしつつ、出撃準備ですね。
ゼストはシグナムを退け、そして本部へ。
レジアスと話すのかそれとも別の何かか?
クライマックスに近づくにつれ、でかくなりつつある変化にwktkが止まりません!
次回も頑張ってください! 応援しています!


それでは予約が入っていないようなので、10時30分からエンドライン3−4を投下させていただきます。
長めな20KBなので支援をお願います。


277 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:04:21 ID:ErRO65aU
>リリカル殺生丸
「スバル!」
「あいよ」(保志さん調で
なんというティアナヒロインww今回ばかりは「また負けましたかw凡人乙www」などという無粋なツッコミは控えよう(ぉ
己の体を傷つけながらも戦うのは熱血ヒーローの王道! スバルはまさしくそれでしたねw
幻となったスバルVSノーヴェの結末がどうなるか、早くも次回が楽しみです。
っつか、前回のギン姉戦といい、乙女のガチンコが熱いねぇ。
そして、ギン姉といえば、戦いを終えた殺生丸がどうにも胡散臭いスカ山に対してどう動くのかも気になります。
何よりスカ山が単なるハイテンションなだけじゃないのがいいですね。
科学を信望しながらも、理屈では辿り着けない野生を崇める。狂気の科学者はこうあるべきですな。
なんかこのスカ山って、殺生丸にぶっ殺される時もすげえ喜びながら死にそうw
なのは達の活躍が今だナッシングなのは悲しいですが、でもStSって本来こうなるべきだったもんね。
今はただ、そう……スーパーナカジマタイムを味わいます!

278 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:07:23 ID:sB64aMre
支援だと?・・・許せるっ!

279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:29:24 ID:BTWq81f/
お二方GJ!
ゼストもかっこいいし、強さがよく表現されていた。
反目氏もスバルが出るとは夢にも思わなかった。


280 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:31:02 ID:eTpHOAUJ
30分だ!
支援

281 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 22:33:22 ID:LguL7IUq
そろそろ時間なのですが、投下開始してもよろしいでしょうか?
容量は20KB。
ホテル・アグスタ編。
フォワード陣サイドとスカ博士登場編です。

282 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:36:31 ID:KesULSje
スカ博士登場支援!!

283 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 22:37:17 ID:LguL7IUq
投下開始します。
支援よろしくお願いします。新人たちとフェイトそんのターン!




 仮面を被る。
 全てを偽る。
 演じよ、演じよ。
 誰かを、何かを、演じたまえ。
 それが、お前の役割だ。



                             ――演劇役者のお呪いより



 次々と展開される部隊。
 慌しく装備を整え、怒鳴るように無線で連絡を取り合う陸士たち。
 まだ何も起こっていないというにも、まるでそこは戦場のようだった。

「はぁー、凄いね」

 ピリピリとした雰囲気。
 されど無駄のなく、動き回る何人もの大人たち。
 その光景に、鮮やかな白いバリアジャケット姿のスバルが口を開けて立っていた。
 地味な色合いの武装隊のジャケットの中では一目立つ格好に、周囲を歩き回る陸士たちが一瞬目を向けるが、すぐに興味を失ったかのように目を逸らす。

「何大口開けて突っ立てんのよ」

 ガツンと小気味の良い音。

「あぅっ!」

 スバルの後頭部を殴打したのは銃型のグリップ。
 それの持ち手は勿論――

「痛いよ、ティア〜」

 アンカーガンを逆手に持ったティアナだった。


284 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:38:33 ID:lAZVo036
支援!

285 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:40:48 ID:ui0alVVT
支援

286 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 22:43:42 ID:LguL7IUq
 
「こんなところでボサッと突っ立っているほうが悪いわよ。隊長たちが打ち合わせに出ていて時間に余裕があるっていっても、いつブリーフィングがあるのか分からないのよ?」

「ご、ごめん。ティア。でも、ちょっと圧倒されちゃって」

「圧倒?」

 小首を傾げたティアナに、スバルは周りを視線で示す。

「こんな本格的な部隊とか、武装隊の人たちとの共同作戦とかってなかったから」

「あー、まあね」

 機動六課は部隊としては異常なほど少人数だ。
 隊長陣を含め、一個小隊が四人。二小隊で八人。
 それは少数精鋭を目的とした実験部隊だから許されている構成であり、現に交代部隊は数十人近くの部隊員で構成されている。
 量よりも質を重視した構成。
 常識を覆す高ランク魔導師の寄せ集め。
 よくも悪くも常識が通じない部隊。
 それが機動六課だ。
 スバルは初めて経験する他部隊の雰囲気に圧倒されているし、同じような経験しか積んでないティアナも実は少し緊張していた。
 人間、経験のしたことのないものには緊張をし、怯えるのが当たり前だ。
 けれど、それを強がりの仮面で覆い隠してティアナは平静を装っていた。

「ともかく、さっさと戻るわよ――」

「ッて、痛いよぉ、ティア〜!」

 耳を掴んでズリズリと戻ろうとするティアナに、スバルは涙目になりながらバタバタと従おうとして――

「あれ? スバル?」

 その二人の前に降り立ったのは藍色の髪をなびかせた女性。
 左手に手甲を嵌め、鋼色の胸部アーマーに、足甲を身に付け、ジャケットを羽織った姿のバリアジャケットを身に付けた女性。
 その女性の顔を、姿を二人は知っていた。

「あ、ギン姉!」

「ギンガさん?」

 それはスバルの実姉である――ギンガ・ナカジマだった。

「どうして二人共ここに――って、そういえば二人共機動六課に配属されたんだったわね」

「ギンガさんは陸士108部隊に?」

「父さんの部隊だから、確かそうだよね?」

「ええ、そうよ」

 意外な場所での見知った顔との再会に思わず場所を忘れて言葉を交わした。
 互いの近況、互いの部隊での違いに対する質問など。
 職務を忘れない程度に、けれど緊張が解れそうな穏やかな会話。
 そんな時が十分ほど流れた時だったろうか。

287 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:44:31 ID:eTpHOAUJ
支援

288 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:45:07 ID:ui0alVVT
支援

289 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 22:45:19 ID:LguL7IUq
 
「ああ、ギンガ。こんなところにいたのかい」

 三人の会話に割り込む声があった。
 それは武装隊のバリアジャケットを着た一人の男。
 黒い髪をオールバックに整え、鋭い目つきを穏やかな口元で打ち消した男性。

「あ、ラッド主任」

「サボりはよくないな、ギンガ。妹とその友達とはいえ職務を忘れたらいけないな」

「す、すみません」

 パタパタと慌てたように頭を下げるギンガ。
 姉のそんな態度は見慣れていないのか、ポカンと口を広げるスバルに、慌てて敬礼するティアナ。

「機動六課所属スターズ分隊のティアナ・ランスターです」

「あ、わ、私も。同じく機動六課所属の――」

「ギンガからは話は聞いているよ。スバル・ナカジマ二等陸士だったね?」

 スバルの挨拶を打ち切って、ラッドと呼ばれた男は穏やかに微笑む。

「そちらのランスター二等陸士に、ライトニング分隊のエリオ・モンディアル三等陸士、キャロ・ル・ルシエ三等陸士のデータも入っている。新人なのにも関わらず大した能力を持っているようだね」

 トントンとこめかみを指で叩きながら、ラッドは笑う。

「そちらの隊長たちも含めて、覚えやすくて助かったよ。普通なら数十人以上覚えないといけないところだからね」

「え、えっと――」

 どう答えればいいのか困るスバルとティアナの態度に、ギンガが慌てて小声でラッドに告げた。

「ら、ラッド主任。まだ自己紹介されてないですよ」

「おっとそれは失礼したね。肝心な自己紹介を忘れていたか」

 失礼と言葉を切り、ラッドは二人を見据えて言葉を紡ぐ。

「私はラッド・カルタス。階級は二尉、役職は捜査主任で、そうだな……立場的にはそこのギンガの上司になるのかな?」

 捜査主任。
 その言葉に二人が凍りつく。
 武装隊というのは略語であり、本来ならば武装捜査員という名称である。
 そして、捜査主任とはその武装捜査員を取り仕切るいわば隊長だった。


290 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:46:26 ID:ui0alVVT
支援

291 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:46:55 ID:M572HoJl
謎の男ラッド・カルタス支援

292 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 22:46:58 ID:LguL7IUq
 
「そ、捜査主任?!」

「馬鹿! 失礼な声を上げるんじゃないの!」

 捜査主任という言葉に素っ頓狂な言葉を上げるスバルの後頭部を、全力でティアナの鉄拳が叩いた。
 あぅうと声を洩らすスバルの頭を押さえつけて、ティアナが慌てて頭を下げる。

「す、すみません! 礼儀を知らない奴で!!」

「いや、いいよ。普段はむさくるしい面子に囲まれてばっかりでね、ギンガ以外の華を見れただけでも十二分にお釣りが来る」

「は、はぁ」

 あまり堅苦しいのは好まない。
 軽い冗談を交えながら告げるラッドの口調には険悪な雰囲気も強制するような意思も見られなかった。

「それにしても若いが――まぁ、ギンガが入隊した時よりはマシかな?」

『え?』

「ら、ラッド主任?!」

 口を歪めて苦笑するように告げるラッドの言葉に、スバルとティアナは目を丸くし、ギンガは慌てたように手を振り上げて。

「あの時のギンガは右も左も分からなくて、ゲンヤ部隊長も――」

「わーわーわー!!」

 大声を上げて、ラッドの口を塞ぐギンガ。
 よほど恥ずかしいことだったのか、それとも妹とその友人の前で過去の醜態を晒すのが嫌だったのか、その顔は沸騰したかのように真っ赤に染まっていた。

「おっと、すまない。ピヨピヨ歩きのひよこだった時の話など、誰も知られたくないものだったね」

「い、嫌がらせですか!」

「さてどうだろう?」

 唇を僅かに歪めた嘲笑の笑みでギンガの追及をさらりと受け流すと、ラッドは不意にティアナに目を向けた。

「そういえば、君は幻術使いだったね」

「あ、はい」

 何でその事を? と一瞬疑問に思うが、取得スキルの類は既に部隊長を通して提出されているだろうと判断し、ティアナは肯定の意を篭めて頷く。

「幻術使いの変則デバイス所持者――君には期待しているよ、拳銃使い(ガンスリンガー)」

「え?」

 ポンと肩を叩かれた衝撃に、ティアナは半ば呆然としていた。
 期待されている?
 私が?

293 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:47:56 ID:M572HoJl
支援

294 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 22:48:37 ID:LguL7IUq
 
 予想だにしなかった言葉に、ティアナが反射的に言葉を紡ぐ。

「な、何故私なんかに期待を――?」

「ん? いや、昔君と同じような魔導師と組んだことがあって――」

 ラッドが説明をしようと口を開いた瞬間だった。


「くぉらぁああ! スターズのひよっこ共〜!」


 怒声が聞こえた。

「あ」

「え?」

 聞き覚えのある声にスバルとティアナが振り返る。
 その視線の先には騎士甲冑姿でドシドシと歩く――ヴィータの姿。

「居たな! そこを動くなよ!」

「え?」

「は?」

 その瞬間ヴィータが視界から消えた。
 否、瞬くような速度で二人の目の前まで迫っていて――ドカバキという鈍い音が響いた。
 その発生源は当たり前のように二人の頭頂部からだった。

「っぅー!」

「!!!」

 打ち込まれたのは手加減しているとはいえガチガチの白兵戦最強であるベルカの騎士の鉄拳。
 まるでトンカチで殴られたかのような痛みに二人が悶絶し、拳を振り下ろしたヴィータはフシュゥと息を吐いた。

「この馬鹿二人! ブリーフィング十五分前には待機してろっていっただろうが!! 五分前になっても来ないから、探しに来てみれば何サボってやがる!」

「ご、ごめんなさーい」

「す、すみません」

「まったくお前らは――」

 しゅんとなって反省する二人に、まだ怒り足りないのか目を吊り上げたヴィータが鬼気迫る闘気を噴出しようとした瞬間だった。

「すまないね、ヴィータ三等空尉。彼女達は私が足止めしてしまったんだ」

「あん?」

 ヴィータが声をかけてきた方角に振り返る。
 そこには困ったように頬を掻くラッドの姿があった。

295 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:48:39 ID:ui0alVVT
支援

296 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 22:50:21 ID:LguL7IUq
 
「……ラッド? ラッド・カルタスか? そういえばお前陸士108部隊の所属だったな」

「ええ。いつぞやの事件の時にはお世話になりました」

「捜査主任だっけ? 出世したなー」

「お蔭様で」

 先ほどまでとはうって変わった態度でポンポンと足を伸ばして、長身のラッドの背を叩くヴィータ。
 その姿にスバルとティアナはもちろん、ギンガでさえも口を広げていた。

「まあいいや。取りあえずこの馬鹿二人は連れてくなー」

「お気をつけて。あ、ほどほどにお願いします」

「気が向いたらな。ほら、さっさと行くぞ」

 そういってヴィータが二人の首根っこを――を掴めないから、二人のバリアジャケットの裾を掴み、ズリズリと引きずっていく。
 魔力ランクの違いか、同じベルカ式であるスバルでさえも一見小柄なヴィータの力に抗うことも出来ず、ミッド式のティアナは言うまでもなかった。

「まったくこれから打ち合わせしなきゃいけねえつーのに、時間を取らせやがって」

「あ、あのヴィータ副隊長?」

「なんだ?」

 ズルズルと引きずられて歩き難そうにしながらも、スバルが不思議そうな顔つきで訊ねた。

「ラッド二尉と知り合いなんですか?」

「ん? まあな。あそこの部隊長ははやての師匠みたいなもんだし、ラッドの奴は昔からゲンヤのオッサンの部下だったからなぁ」

「昔からって……副隊長何年勤めてるんですか?」

 ヴィータの言葉に疑問を覚えたティアナがボソリと呟く。
 それは殆ど独り言のようなものだったが、ヴィータは不思議そうに首を曲げた。

「ん? アタシはもう十年は勤めてるぞ?」

「え?」

「え?」

 二人の時が止まった。
 見かけは十歳そこそこ程度の外見をしたヴィータが勤務十年以上。
 予想だにしない発言に、スバルとティアナは思わず顔を見合わせた。

297 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 22:51:12 ID:LguL7IUq
 
【もしかしてヴィータ副隊長って年を取らない人なのかな? 確か管理世界にそういう種族居たよね?】

【そうね。同じミッド人だと思ってたけど、もしかしたら別の世界出身者なのかも】

 スバルとティアナが念話で意見を交わすと、ジロリとヴィータが舐めるような目つきで睨んだ。

「なんだ? 何か文句あるのか?」

「い、いえ!」

「全然ないです! はい!」

「ならいいけどな。ほら、さっさと急げ」

 ようやくヴィータが二人から手を離すと、呆れた顔で二人に告げた。


「今はまだ気楽にいられるけどな、中にいるはやてたちはもう戦場にいるんだぞ」


「戦場って……」

「オークションに参加するだけですよね?」

「馬鹿コンビ」

 二人の言葉にヴィータが呆れる。
 もっと深く考えろとため息を吐く。

「少しは上の流れを考えろ。魔導師ってのはな、ただ現場で魔法使ってればいいもんじゃねえんだ」

 ヴィータは告げる。
 白亜の建物を見上げて、かつては考えもしなかった世界の深さに、その汚れに息を吐いた。

「力があれば義務が出来る。偉くなればくだらない世界が見えてくる。夢を見るなとはいわねえよ」

 奇跡を使う魔導師。
 魔法を操る魔導師。
 その力を持ってすれば、下手すれば国一つ滅ぼせることさえ可能な化け物。
 けれども。
 いかに力を持とうとも、いかに文明が進もうとも決して消えない汚れがあった。

「だけどな、何時かお前らも知る。どんなに綺麗な世界でも消せない馬鹿共の存在をな」



「――必ず知るんだ」



【Unrimited・EndLine/SIDE 3−4】


298 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:51:21 ID:ui0alVVT
支援

299 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 22:54:04 ID:LguL7IUq
 
 なんでこんなことになっているのだろうか?
 フェイト・T・ハラオウンは会場でシャンパンの器を持ちながら疑問を抱く。
 手持ち無沙汰で手首を僅かに傾けた。
 僅かに唇についたシャンパンの甘い味。普通ならば仕事中に微量とはいえアルコールなど厳禁だったが、何も持たない姿は違和感を発する。
 だから飲んだ。
 甘い、一口程度口にしただけだったがそれは芳醇な味をフェイトの舌に与え、喉越しは水を呑み込むよりも容易いほどに滑らかだった。
 アルコール分は少ないのに、その酔いしれそうな味に、普段のフェイトならば頬を綻ばせただろう。
 けれども、周囲を歩く人間たちへの嫌悪が、胸を付く外部への不安がフェイトの心を安堵や喜びへと傾けることを許さなかった。

(エリオ、それにキャロ……他の子も大丈夫かな)

 不安が首をもたげる。
 今までに何度となく抱いて、その度に悩み、考え、打ち消していた不安。
 自分は間違いを犯していないだろうかという疑念がどうしてもあった。
 エリオが入局を望んできた時に止めなかったのは――否、止めることが出来なかったのは誤りだったのではないのか。
 キャロを保護した時、その“心の闇”を癒す手段として選んだ方法が間違いではなかったのだろうか。
 二人はあまりにも特殊だ。
 片方は捨てられた故に“壊れてしまった少年”。
 もう片方は捨てられた故に“歪んでしまった少女”。
 あの二人を放置すればよくないことが起きる。
 あの二人を見失えばきっとよくないことが起こってしまう。
 そんな予感がするのだ。
 かつて母の愛を欲するために罪に手を染めた自分のように、あの子達は何かしらのエゴによって動いてしまう。
 エリオならまだいい。自分を放棄してしまったあの子ならまだ安心できる。
 けれど、キャロは――あの“狂乱”と呼ばれた少女は、いつかきっと……

「おや、どうしたのかね?」

 思考に没頭した瞬間、横から掛けられた声にハッと気が付いた。
 慌てて目を向けた先には仕立てのいいスーツに身を包み、肩まで伸びた男性にしては長い“黒髪”をなびかせた茶色の瞳の男性。
 どこか皮肉げな笑みを浮かべている表情が特徴的な男性。

「いえ、なんでもありません。イマジネートさん」

 どこか油断が出来ない彼に、フェイトは少しだけ硬い声で返事を返した。

「む? 他人行儀はよくないな、フェイトくん。私はジェイと呼んでくれても構わないと言っているのだがね」

「マスター。女性に対して押し付けはあまり褒められた行為ではないかと」

 ジェイ・イマジネート。
 そう出会った時に名乗った男性に対し、マスターと呼びかけた女性が怜悧な顔を少しだけ歪めて、怒ったように眉を潜める。


300 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:54:26 ID:M572HoJl
シエン

301 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:56:10 ID:KesULSje
おい、ジェイってww
支援!!


302 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 22:56:23 ID:LguL7IUq
 
「おっとすまないね、アイン」

「マスターは女性に対してデリカシーの欠ける面が多すぎます」

 アインと呼びかけられた女性。
 紫色のドレス。豊満な胸を、同じ女性だけど見ている私の方が恥ずかしくなるぐらいに広げたオープンドレスに、
ヒラヒラとしたスリットの切れ込みの入ったその格好はちょっと目に毒だった。
 さりげなく片手で胸を押さえていることが多いから、もしかしたら恥ずかしいのではないのだろうか?
 自分で選んだドレスじゃないのだろうか。と少しだけ考えるけど、それは私の推測する必要のないものだと思考を打ち切る。
 何故私がこの二人と一緒にいるのか。
 視界の端に映るなのはとはやて、その二人と一緒にいないのには理由がある。

 それは見張るため。
 データではなく、ただの直感。
 そう、それはこの二人と出会った時から囁き続ける捜査官としてのカンだった――






 現在時刻より数十分前。
 高町なのはと別れたフェイトは廊下を歩いていた。
 同じ頃に廊下の節々に目を向けているなのはと同様にフェイトは廊下に目を向け、さりげない人の流れに気を配っていた。
 教導隊所属であるなのはが戦術面を重視して推測していたのとは異なり、捜査官であるフェイトが重視したのは間取りとその配置である。
 基本的にお人よしに分類される彼女だったが、人間の全てが清いとは思っているほどではない。
 金が流れるところにはほぼ確実に裏がある。
 それは帳簿だったり、取引だったり、或いは他の何かだったりするが、ある目的のためのフェイクとして大掛かりな舞台を作るということもよくあるのだ。
 あくまでも警備のためとしている立場だったが、そういった点を重視して探ってしまうのは捜査官としての癖のようなものだった。
 ゆっくりとすれ違う人間の特徴を覚えながら、彼女は歩き――不意に目を止めた。
 人の少なくなった廊下の片隅。
 そこで佇む二人の人影があった。

「?」

 それは一見すると何ら不思議ではない光景だった。
 窓の外を見ているのは一人の男性。黒い髪に、整った顔。仕立ての良いスーツを着た男性。
 その横には付き人だろうか。恋人の割には怜悧な表情を浮かべている紫色のドレスを着た女性。
 フェイトは何気なく二人に目を向けて、その横を通り過ぎようと思った時だった。

「おや? 珍しい人物だね」

 不意に掛けられた言葉に、フェイトは反射的に顔を向けていた。

「私のことですか?」

「そうだが? フェイト・T・ハラオウン執務官殿」

 その言葉に、フェイトは聞こえない程度の舌打ちを洩らしていた。
 完全に顔を知られている。
 教導隊として、そして管理局の顔として時折取材や記事などになるなのはと違って、捜査官である自分はそれほどマスコミなどに顔を出しては居ない。
 管理局では有名なほうとはいえ、一般人にもすぐに分かるほど顔を曝け出しているわけではない。
 なのに、何故?

303 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:57:24 ID:4ix1e9o1
支援

304 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:58:18 ID:ui0alVVT
支援

305 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 22:58:58 ID:LguL7IUq
 
「あなたは?」

「おっと自己紹介が遅れて済まない。私はジェイ・イマジネート。しがない技術者だよ」

「技術者?」

 引っかかるものを感じて眉を潜めるフェイトに対し、ジェイと名乗った男は余裕の笑みを唇に浮かべて、大仰に隣に立つ女性を紹介した。

「こちらはアイン。私の有能な秘書だ」

「よろしくお願いします」

 洗練された佇まいでアインと呼ばれた女性が頭を下げる。
 その態度に慌ててフェイトも応じるように軽く頭を下げた。

「しかし、嬉しいことだ。ここでかの有名な魔導師に会えるとは、実に運がいい。あえて言うなら、そうハッピーというべきかな?」

「それを言うならラッキーではないでしょうか」

「ふむ。まあどちらでも心証的には正しいな」

「大きく違う気がしますが」

 なんなんだろうかと少しフェイトは呆れた。
 ジェイと名乗った男が大仰な言葉を吐いたと思えば、それを秘書だと呼ばれた女性が諌める。
 技術者にありがちな変人というものだろうか?
 シャーリーとかも時々変になることも多い。そう考えれば、よくあることだろうと彼女は納得し、静かに手首に付けたバルディッシュを指で叩いた。

(バルディッシュ。ジェイ・イマジネートという名前を招待客リストから検索)

 思考言語による操作。
 数秒と立たずにフェイトの脳内に、検索された情報が表示される。


 ――ジェイ・イマジネート。招待状リスト照合結果……OK


(正式な招待客か。六課司令部とコネクト、ジェイ・イマジネートの情報を抽出)


 ――ジェイ・イマジネート。
 登録年齢:34歳。
 現在住所:クラナガン南近郊市街地XN-998×××。
 出身地:ミッドチルダ。
 プロフィール:地上本部技術管理部所属、外部研究者。
 デバイスの制御プログラム及び機器設備において技術を地上本部に売り込み、その成果を認められて雇われている。


(地上本部所属?)

 意外な経歴にフェイトが思わず眉を潜めた瞬間だった。

306 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:59:46 ID:M572HoJl
まんまじゃねーか!w支援

307 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 22:59:57 ID:ui0alVVT
支援

308 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 23:00:48 ID:4ix1e9o1
支援

309 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 23:02:18 ID:LguL7IUq
 
「どうかしたのかね?」

「え?」

 フェイトの表情に気付いたジェイは、不思議そうに首を捻って声を掛けていた。

「なにやら険しい顔をしているが、私の顔に何か付いているのかね?」

「いえ、そんなことは」

「マスターの顔はいつも通りです」

 軽く首を振って否定するフェイトに、怜悧な顔で答えるアイン。
 まったく正反対な温度を見せる美女二人に、軽く顎に手を付けてふむとジェイが言葉を漏らす。

「まあそれならそれでいいが。ところでフェイトくん」

「え? あ、はい?」

 いきなりくん付けでファーストネームを呼ぶという、変人ならではの馴れ馴れしさに少しだけ呆れながらも返事を返すフェイト。

「もしや君もオークションに参加するのかね?」

「え、あ、一応ですが」

 警備する際には会場にいる必要がある。
 故に一応参加するという言葉は正しく、けれども競売品が欲しいわけではない彼女にとってその言葉は嘘でもある。

「なら、会場の場所を知っているね?」

 しかし、そんなフェイトの心情を気にする様子もなくジェイと名乗った男はあっさりと告げる。

「ちょっと案内してくれないかね」

「え?」

「いや、実は迷ってしまってね」

「は?」

 言葉を理解出来ずに固まるフェイトの肩をガシッと掴まれる。

「案内してくれないかね?」

「よろしくお願いします」

 ニッコリと笑みを浮かべて強制するジェイに、ペコリと礼儀正しく頭を下げるアイン。
 その二人を見てどうすればいいのかオロオロと迷いつつも。

「あ、いいですよ。それぐらいなら」

 持ち前のお人よしさと一部の打算を含んでフェイトは了承する。

310 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 23:03:55 ID:LguL7IUq
 
「それは助かる。そうだ、ついでに一緒にオークションに参加しないかね? 君のような美人が近くにいれば嬉しいのだが」

 その言葉を聞いて、ジェイはフェイトの肩から手を離し、笑みを浮かべながらそういった。

「私と、ですか?」

「マスター!?」

 ジェイの発言に、アインが冷静な顔を少し歪めて声を上げた。

「おや、アイン? まさか嫉妬でもしているのかね? それなら、とてもとても嬉しいのだが」

「いえ、そういうわけでは……」

「ならばいいじゃないか」

 ニッコリと微笑むジェイに、根負けしたかのようにアインが頭を落とす。
 普段苦労しているのだろうなぁ、と容易に想像出来そうな光景だった。

「それでフェイトくんはどうかね? もし君に一緒に来ているご友人などがいるのであれば、恐縮して引き下がるが」

「えっと、一応友人も来てますけど……」

 地上本部所属の技術者。
 何かが引っかかる予感。
 それらを踏まえて、フェイトは理性的に――けれどもどこか感覚的なものに従って言葉を返した。

「事情を話せば分かってくれると思いますから、いいですよ」

「それは助かるな。では案内してくれるかね?」

「ええ、こっちです」

 先ほどまで歩いていた道を逆方向に振り向いて、フェイトは歩き出す。


「何故、あんな破廉恥な人と……」


 ボソリとそんな言葉が聞こえたような気がしたけれど、多分フェイトの勘違いだったに違いない。



311 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 23:04:00 ID:4ix1e9o1
ウーノってば苦労人ね。支援。

312 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 23:04:07 ID:ui0alVVT
支援

313 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 23:05:41 ID:LguL7IUq
 そんな出会い。
 偶発的にしては変わった会話。
 それらをフェイトは思い返し――

「皆様、準備はよろしいでしょうか?」

 思考に沈んでいたフェイトの耳に、舞台の上に上がった司会役の声が飛び込んできた。

「どうやら始まるようだね」

 シャンパンを持ちながら、フェイトの横に立っていたジェイが軽く微笑み。
 アインはその後ろで控えて、ただ舞台を見上げ。

「これよりオークションを開始します!」

 音無き熱気に燃えながら、欲望の宴は始まりを告げる。





「時間だな」

 欲望の砦の外で静かにヴィータは時計を見て、その建物を見上げる。
 異常はない。
 問題もない。
 けれど、これはなんだ。

「吐き気がするな」

 閉じ込められた欲望たちが唸り声を上げているような気がした。
 獣が閉じ込められた袋を見ているかのような不快感があった。


 そして、それは――



「時間開始」

「反逆開始」

「制限開始」

「観測終了」

「準備終了」

「来る、来る、時」

「終わる、終わる、時」

「終わりの根がやってくる」

「時間を合わせよ」

「楽園を終わらせるために」


 何かの気配を感じ取っていた証。

314 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 23:06:14 ID:ui0alVVT
たぶんフェイトのタイプだったんだろう 支援

315 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 23:06:38 ID:LguL7IUq
 
 闇が、蠢いていた。

 欲望が、渦巻いていた。

 これより始まるのは己の欲を満たすための儀式。

 心を探りあい、妥協を知らず、ただ競い合う決闘劇。

 さあ、欲しいもののために手を伸ばせ。

 奪い取るために。



 ―― To Be Next Scene SIDE 3−5


316 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 23:08:47 ID:KesULSje
あれ、とまってしまいましたか?


317 :316:2008/05/28(水) 23:09:30 ID:KesULSje
今の文、気にしないでください。

318 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 23:22:57 ID:LguL7IUq
ちょっとネットに嫌われてました(汗)
これで投下完了です。
支援ありがとうございました。
次回、ホテル・アグスタ編――オークションシーンです。
欲望渦巻くブルジョワたちとの激戦をお楽しみください。
え? 魔法少女でオークション? そこらへんは気にしないでください。

次回激闘オークションの巻 お楽しみに!

319 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 23:24:23 ID:U0URg4ak
>>315
GJだぜ旦那。俺にはそれしか言えないぜb

>何故、あんな破廉恥な人と……
まあ、そのことについては否定しない(マテ)
次も楽しみにしてますよ〜ノシ

320 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 23:25:17 ID:hDZXbPnV
GJっす

しかし、ジェイが自重しないwww

321 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 23:28:04 ID:M572HoJl
GJ!
ついに伝説の男ラッド・カルタスが登場!
勝ての活躍に期待!

322 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/05/28(水) 23:36:03 ID:LguL7IUq
追記です。
ちなみにエンドライン本編と番外編は繋がっております。
何故ウー……げふんげふんアインが、フェイトを見て破廉恥と呼んだのかは
エンドライン番外編:【がんばれ! 我らのナンバーズ】 を参照してください。

何気に宣伝してすいません。
支援ありがとうございました!

323 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 23:53:17 ID:4WRSyM7E
GJ!

スカの成田声と「アイン」という名前から、
スカ「デッドエンド・シュート!」
なんてものを連想しちまったじゃねえかwww

324 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 00:19:59 ID:hJpyNXkq
>>323
クヴォレーとベルグバウだな懐かしいwww
彼はスパロボで「名前がややこしい間違える発音できない」No1だったから
印象強い。しかし彼が出てくるクロスは結構あるけど完結したのがほとんど無いんだよな・・・・・・
しかし管理局側が彼が現われた時にどう対処するかは気になる。

325 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 00:23:31 ID:JVcOdW4q
平行世界の番人だっけ?
デバイスがディスアストラナガンで魔力無限、
蝙蝠型ビット、なのはにも負けない中長距離射撃、近距離もいける・・・化け物だw


326 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 00:25:01 ID:PZm3tQSN
デッドエンドシュートするオレンジ声したイングラムのパクリはキャリコだってこと、誰か思い出してあげてください

327 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 00:28:50 ID:GZa0NnQl
>>324
クォヴレーじゃなかったっけ?

328 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 01:12:09 ID:hJpyNXkq
>>327
素で間違えてたワタシorz
アキシオン・バスター撃たれにいってくる。

329 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 02:26:44 ID:OY6YdWyK
>>325
もしなのはとクロスするならデバイスじゃなくスt・・・ペルソナで

330 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 02:44:32 ID:yyd/HLaM
>>325
おまけに『超重力体に敵を閉じ込め時間逆行で消し去る』なんて反則兵器もある

331 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 05:45:28 ID:LFGEdoED
普通にロストロギアだと認定されるだろうなぁ……
今日日あそこまで禍々しい召喚シーンで呼び出されるスパロボ主人公機も
珍しいだろうに。

332 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 05:53:39 ID:c+5RnUjE
「コールアストラナガン!」の掛け声で合体する、融合型デバイスですね。わかります

333 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 06:36:33 ID:1LMLE7W1
スカ博士には中村尚子声の妹がいて
こいつは遺伝子工学を重視して生体部分のみの男性タイプナンバーズを製作
(能力はHGSから採取)
そして道を違えた兄と姉もいて彼等は愚行を止めるべく暗躍
(声は当然古澤徹と田中敦子)
そして一番下の弟がアルハザード製の禍々しいデバイス持ってるとか
無論彼等を作り出したオリジナルの科学者の声は大友龍三郎な


334 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 07:05:06 ID:A0Fg69zt
それもわたしだ。

335 :一尉:2008/05/29(木) 11:23:38 ID:RyexMYK7
それても俺だ。

336 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 20:03:11 ID:L7v9Wwck
>>332
えっ? それって……ヒーロー戦記のギリアムでもいけね?w

いや、最近久々にやってみたからソッチもつかえね? と思ったんだけどさ

337 :一尉:2008/05/29(木) 21:23:26 ID:RyexMYK7
あの勇者シリース戦記でいいですか。

338 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 21:40:24 ID:oTfb3C9M
>>334
ユーゼス自重wwww

339 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 23:44:01 ID:c+5RnUjE
>>336
「おかしいと思わないか? 超能力者、吸血鬼、ロボ、巫女、妖怪、魔法少女、さらには暗殺剣の伝承者までも一つの世界に存在している。こんなでたらめな世界が自然に存在するはずがない!」
こうですか! わかりません!!

340 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 23:55:11 ID:68I45VM6
古泉「ですよねー」

341 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 23:57:44 ID:AcGSW48g
>>339
見てみたい気がする

342 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/05/29(木) 23:59:44 ID:c0kbV48T
すみませんが今予約は空いているでしょうか?
12時15分からウロスでネタになったSSを投下する予定です。


343 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 23:59:49 ID:68I45VM6
>>339
良く考えれば、ロボと巫女はおかしくないぞ

344 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:01:03 ID:HXhN2RFa
空いてるみたいですね。支援します。

345 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:02:33 ID:1skolyxq
今日は眠れない夜を覚悟した
支援するですぞ

346 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:06:38 ID:yOjo4Dhm
>>339
他にも国公認の忍者とか幽霊とかもいるしなw
それはそうと支援

347 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:10:43 ID:PLrv3xeY
>>346
海鳴市ではよくあることw
こんな事をしている場合ではない支援

348 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/05/30(金) 00:16:48 ID:XGf3vtN4
そろそろ時間なので投下してもよろしいでしょうか?
タイトルは【夜天メーカー 魔法少女育てます】の前編です。
クロス元はプリンセスメーカー……といいたいですが、マイフェアエンジェルです。
殆ど小ネタの癖に10KB。
世界観は独自のものになっておりますので、そこはご了承ください。
もの凄く平和な魔法少女世界をどうぞ。

349 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:17:28 ID:ja2cLEhM
支援

350 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/05/30(金) 00:18:41 ID:XGf3vtN4
 
 その日、とても薄気味悪い部屋で一人の男が笑い声を上げていた。

「ハーハッハッハ!」

 雷の鳴り響く夜。
 轟々と風が窓を打ちつけ、うるさい。
 まるで悪魔でも舞い降りるかのように不吉な夜。
 そこに一人の白衣を纏った男が笑い声を上げていた。
 巨大な人間大ほどもあるガラスのフラスコ。コポコポと妖しげな色を放ち、泡立つ中身。
 足元には無数に散らばる書物、得たいの知れない植物の欠片、ギラギラと光もないのに輝く鉱物。
 怪しげな、とても怪しい光景が広がっていた。

「ハーハッハッハ!」

 響き渡る男の笑い声。

「ハーハッハッハ!!」

 響き渡る男の笑い――

「ハーハッハッハ――ごふ! ゴホゲホッ!?!」

 笑い声が響いているはずだったが、途中で咽た。
 酸素が足りずにバシバシと自分の胸を男は叩きながら、近くのテーブルにもたれてしばし深呼吸。

「ごほごほ! すー、あー、危うく死ぬところだったな」

 笑い声で危うくあの世に逝きかけた男はちょっぴり涎の垂れた口を手で拭うと、ごほんと咳払いして改めてフラスコに向き直る。

「雰囲気作りのためとはいえ、悪役笑いは危険がちょっぴり多いから今度から気をつけよう」

 雰囲気作りかよ!
 と第三者が居れば突っ込まずにはいられないような台詞を吐き、白衣の男はツカツカとフラスコの横に伸びた出っ張りに手を掛ける。
 見ればフラスコの下や横には金属製のアームが取り付けられており、男が掴んだ出っ張りはアームから伸びる機材と繋がっていた。

「さあ歴史的な一瞬だ!」

 ガチョンと出っ張りが下に振り下ろされる。
 ビビビという怪しげな音と共にフラスコの中身が怪しく光り出す。

「生まれるが良い! 夜天の書より生まれし祝福の風――リインフォースよ!!」

 男が恍惚の笑みを浮かべて、絶叫した瞬間だった。


 ――その室内をピンク色の爆風が全てを吹き飛ばした。




【夜天メーカー 魔法少女育てます】

 多分一日目 こんにちは失敗作 前編


351 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:19:18 ID:ja2cLEhM
支援

352 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/05/30(金) 00:19:40 ID:XGf3vtN4
 
 時間は少々遡る。
 怪しげな白衣の男、本名ジェイル・スカリエッティは時空管理局最高評議会によって作り出された人造人間である――わけなどなく。
 とある次元世界に存在する教育機関、ミッド学院の教授である。
 幼稚園から大学院まで併合されたその学院は極めて優秀な人材を輩出する教育機関として次元世界でも有数の規模を誇り、
そこに所属するスカリエッティもまたとても優秀な博士号を得た科学者であった。
 生命科学および生命操作を専攻とするスカリエッティの活躍は輝かしい。
 近年論文を発表し、次元世界を揺るがした【60代になっても発毛可能な育毛物質】の発見には全次元の悩める薄い男たちが狂喜し、
その成分を使った育毛剤は瞬く間に次元世界に流通したという。
 閑話休題。
 とまあ少々マッドな発言と悪乗りする性格のお陰で、講義を受ける生徒たちは少々引かれることも多い彼だったが、その優秀な頭脳と意外にも分かりやすい授業で生徒たちの評判も基準点を越えている優秀な教師である。

 そんな彼が数日前、ミッド学院の理事長“たち”に呼ばれたことから事件は始まる。



「お呼びでしょうか、理事長たち殿」

 場所はミッド学院の最奥。
 鋼鉄製の理事長室と書かれた扉の向こう、完全防音の怪しげな三つの試験管の前にスカリエッティは立っていた。
 彼の前にある試験管、その中には緑色の溶液に使った――脳髄が浮かんでいた。
 一見すると不気味な光景。
 しかし、それを見慣れていたスカリエッティは動揺しない。

『ウム。良くぞきた、スカリエッティ君』

 一番手前の試験管――【知識】と描かれたペイントが目立つ理事長その1が声を発した。

『実は君に頼みたいことがある』

 一番左側の試験管――【人生】と描かれたペイントが堂々と目立つ理事長その2が言葉を繋げる。

『君の技術力を見込んでの依頼だ』

 そして、一番奥の試験管――【愛!】と大きく張られた理事長その3が電子音声で用件を伝えてきた。
 三つの脳髄、通称三脳。
 彼はミッド学院の創始者にして、この学院を影からサポートし続ける理事長たちである。
 試験管に書かれた三つの言葉は彼らが教育において重視する面であり、日々本当に正しい教育とは何かということを語り合っているため、この部屋は完全防音だったりする。
 ちなみに彼らは身内のないスカリエッティの身元保証人であり、若かりし頃に色々と面倒を見てくれた足長おじさんたち的な人(?)だった。


353 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:20:12 ID:1skolyxq
ニヤニヤが止まらないw支援

354 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:20:48 ID:PLrv3xeY
支援

355 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:21:08 ID:ja2cLEhM
支援

356 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/05/30(金) 00:21:16 ID:XGf3vtN4
 
「私に依頼ですか? 今、ストレスにやられた胃もすっきり治す方法の研究を抱えていて、忙しいのですが」

 ちなみにその研究は日々ストレスで苦しんでいるレジアス教頭からの依頼でもあった。

『うむ。その研究の重要性は十二分に理解しているのだが、この依頼は学院の未来を左右するかもしれないものなのかもしれないのだよ』

「ほう?」

 重々しい理事長その1の言葉を聞いて、スカリエッティは興味深そうに声を洩らす。

『スカリエッティ君。君はこの学院のことをどう思っているかね?』

「は? それは私としては満足出来る環境だと思っていますな。優秀な同僚も多いですし、才能溢れる生徒もいる。
大仰かもしれませんが、次元世界でもこれほどの教育機関はあまりないでしょう」

 そう、この学院には高い能力と経歴を持った人間が多い。
 考古学界の秀才にして、考古学界では名を馳せるスクライア一族のユーノ・スクライア。
 人類至上稀有な空間干渉魔法を運用可能とするリンディ・ハラオウン。
 召喚術の権威であるメガーヌ・アルピーノ。
 軍式格闘術の達人にして、ベルカ式魔導師の高ランク魔導師クイント・ナカジマ。
 ストライカー級魔導師にして、戦闘系魔導師の指導員ゼスト・グランガイツ。
 魔力運用技術の権威にして、錬金術にも精通しているSランク魔導師プレシア・テスタロッサ。
 などなど他の次元世界でも見つけるのが難しい人材が揃っている。

『うむ。私も120年ほどこの学院を見てきたが、近年ほど教師も生徒も粒ぞろいなのは見たことがない』

『長年の苦労が報われた気がして、とても感動している』

『しかしだ。逆に私達はそれを不安に思っているのだよ』

「というと?」

『人は輝かしい過去を忘れないものだ。今はまだいい、しかし時間が過ぎれば君たち教師も生徒たちも羽ばたいていくのだろう』

 しみじみとした声音を電子音声で再現しながら、理事長その2が呟く。

『その時、かつての栄光を待ち望むものは確実にいるだろう。無限の未来を持つ生徒達を導く優秀な者が、そう英雄がいるのだ』

『そして、それを君に造ってもらいたい』

「つく、るですか?」

 まさか人造人間とか戦闘機人とかそんな非合法なものを作れと命じないだろうな?
 などと、さすがに犯罪はちょっととビビるスカリエッティの後ろでスッとドアが開かれた。

「失礼します、スカリエッティ教授。それと理事長たち殿」

 そこには見目麗しくスーツを着た女性が立っていた。
 手には古ぼけた鎖に縛られた古本を持っている。


357 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:23:42 ID:ja2cLEhM
支援

358 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/05/30(金) 00:24:07 ID:XGf3vtN4
 
『おぉ、ドゥーエ』

『それを彼に渡してくれたまえ』

 三脳の言葉通りに、ドゥーエと呼ばれた女性がスカリエッティに本を手渡す。

「どうぞ、ドクタースカリエッティ」

「これは?」

『それは夜天の書と呼ばれる書物』

『あるホムンクルスを作る方法が記載されているというロストロギアじゃ』

「ホムンクルス? となると、これはまさか錬金術の本では」

 師匠でもある錬金術師プレシアの手ほどきで有る程度は錬金術も精通しているとはいえ、専攻は生命科学者であるスカリエッティは戸惑う。

『その通りじゃ』

『本来ならばその権威であるプレシア女史に頼もうと思ったのだが』

『彼女が君を推薦したのだよ』

「プレシア先生が、ですか?」

 まさか師匠からの推薦だったとは予想も出来ずに、スカリエッティは手渡された書物を思わず見返す。
 書物の表面には古代ベルカ文字が刻まれていた。
 そして、それはこう書かれていた。

【夜天の書】、と。

『文献によれば夜天の書より生み出されたホムンクルス――祝福の風リィンフォースと呼ばれる存在は極めて優れた魔法素養と肉体を持っているらしい』

『そのホムンクルスを正しい道に育て上げ、我が学院を引っ張りあげる英雄にするのだ』

『愛と知識と人生を語れば如何なる人間でもホムンクルスであろうとも正しい心を持つだろう』



『頼んだぞ、スカリエッティ』




359 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:24:58 ID:XHPlGUPW
なんてまっさらな人々なんだw支援

360 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:25:45 ID:ja2cLEhM
支援

361 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/05/30(金) 00:25:53 ID:XGf3vtN4
 
 ――などという依頼を受けて、その日スカリエッティは自宅の地下に作った己の研究室で夜天の書を片手にホムンクルスの製造に挑んでいた。
 怪しげな魔女の壺っぽいものに、ポイポイと材料を入れる。

「えーと、なになに? マンドラゴラを三つと賢者の石を一つに、真竜の唾液か」

 ギシャーと悲鳴を上げるマンドラゴラを耳栓した状態で壺に放り込み、銀メッキされた木の棒で磨り潰す。
 続いて真空保存されたガラス瓶から石なのにも関わらず、コンニャクのように柔らかい赤い石を放り込み、教え子の竜使いから分けてもらった手の平サイズの壺から透明な液体を鍋に入れて、クルクルと混ぜる。

「あとは、えーと魔力結晶体? 名前は……む、かすれて読めないな」

 ぺラリと捲った夜天の書に描かれた最後の材料の名称。
 そこがかすれて読めない。

「い、い、イ? イデ……む、読めん。しょうがない、ジュエルシードで代用するしかないか」

 ユーノ・スクライアからお裾分けでもらったジュエルシードを放り込み、さらにクルクルと回す。
 ……なにやらとてもデンジャラスな色と刺激臭が漂ってくる。
 が、いつものことなのでスカは気にせずにクルクルとかき混ぜること数十分。

「ふむ、コトコトと煮立ったら人工羊水に移すと」

 鍋に掛けていた火を止めて、少し冷めてから両手に巻いたタオルと共に壺を持ち上げ、巨大なフラスコの中に中身を入れる。
 プレシアから貰った特性の羊水に入れられた壷の中身は溶け出すこともなく、ゆっくりと揺れながら羊水の中に漂っている。

「これで最後に電気ショックをすればいいのだな――む?」

 最後の工程を確認するため夜天の書を捲っていたスカリエッティがある一文に気付く。
 ページの一番下に荒い文章で書かれた工程が乗っていた。

「なになに? 最後の電気ショックの前にこの呪文を唱えろだと? えーと……」

 本を一旦床に置く。
 足を開く。
 右足を前に出し、軽く腰を落とす。
 腰を捻り、半身を突き出す。
 右手を前に、左手を胸に付ける。
 そして、キュピーンと目を光らせて――。

「リリカルマジカル〜ロジカルテクニカル〜魔法少女にな〜れ☆」

 ピシーンと決めポーズを取り、呪文を唱えるスカリエッティ。

「……特に反応はないな?」

 ジッとフラスコの中身を見つめるが、変化はない。
 元の体勢に戻り、しばし首を傾げるが。

「まあいいか。呪文は唱えたのだし、最後の仕上げにいこう」

 特に気にせず、次の工程に移ることにした。
 しかし、彼は知らない。
 最後の呪文は夜天の書の執筆者が悪戯で書いた文章であり、まったく意味などなかったということを。
 そして、彼は丁度外で吹いてきた嵐に悪乗りして、悪役笑いを上げると、最後の電気ショックを与え――


 現在に至る。


362 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:26:41 ID:yOjo4Dhm
さてと、支援

363 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:27:16 ID:ja2cLEhM
支援

364 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:27:17 ID:PLrv3xeY
黒歴史持ち出すな支援w

365 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/05/30(金) 00:29:21 ID:XGf3vtN4
 
 突如発生したピンク色の爆風は部屋の全てを吹き飛ばし、ドゴンとスカリエッティの玄関からピンク色の爆煙を噴き出すほどのものだった。
 モクモクと部屋中に立ち込めるピンク色の煙。
 その中で唯一動くものがあった。

「ひえーん! ひえーん! ここはどこですかー!?」

 フラスコが元在った場所。
 木っ端微塵に砕け散ったフラスコで唯一残った底部分。
 その上に人影。

「なんですー!? ぴんくですー! 変な臭いするですー!」

 ゆっくりと晴れていく室内につれて、見えてくる形。
 純銀を溶かし、高名な装飾家が作り上げたような見事な銀髪に、変態的なまでに細部を作り上げる人形師のような造形の幼い肢体。泣き顔で歪めているが、笑顔を浮かべれば万人を蕩かすような愛らしい顔。
 一糸纏わぬ裸体で、握った両手で目元を覆いながら泣く姿はまさしく幼児だった。

「どーこーでーすー!」

 銀髪の幼女の泣き声が最大限に高まろうとした瞬間だった。
 ガシャンと鋭い音が響いた。

「ふぇ!?」

 恐る恐るそちらの方角に目を向ける幼児。
 ピンク色の煙がまだ残るそこに居たのは――

「ここは私の研究室、だー!」

 ピンクのアフロをしたスカリエッティ(黒こげ)だった。

「ふ、ふぇえええええええええ!!!」

 そのあまりの恐ろしさに泡を吹いてひっくり返る幼女だった。すっぽんぽんのままで。

 それをアフロのまま不審そうに見つめるスカリエッティ。

 それが祝福の風リインフォースと無限の欲望(自称)スカリエッティの出会いであり、

 彼らが送る厳しい育成計画の始まりだった。


前編終了
 後編に続く マジで。


366 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:29:39 ID:1skolyxq
そら失敗するわww支援

367 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:30:17 ID:D6+kQp+5
自称かよwww支援

368 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:30:59 ID:ja2cLEhM
支援

369 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:33:14 ID:1skolyxq
また一つウロスから名作が生まれましたよGJ
その才能に脱帽だ。後編も楽しみに待ってるw

370 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/05/30(金) 00:34:44 ID:XGf3vtN4
投下終了。支援感謝します。
あえて言います。俺は冗談でも真顔で書いてしまう男なんだぜ?
と、冗談はさておいて。
ウロスでネタになったスカ博士の調教計画改め育成計画でした。
後編も数日中に完成予定です。
リィンフォースと愉快なスカ博士の熱血育成計画のご期待下さい。
タイトルはプリンセスメーカーからのパロディです。
一応クロス先はマイフェアエンジェル。PCゲームですが、エロは書かないですよ?
舞台は暗くなく、ひたすら明るい話にするために学園ものにしてみました。

後編もネタ満載の予定ですが、愛らしいポンコツユニゾンデバイス、リィンフォースを見て和んでくれたら幸いです。
ご拝読ありがとうございました。

371 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:50:21 ID:JOdmyE4M
GJ!
なんだこの綺麗なスカ先生はwww
レジアスはこっちでもストレス抱えてんのかよww

372 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:54:28 ID:SAQUIqlv
GJでございます!
あぁ、ゼストさんがジャージ着て竹刀もってそうだw
いや竹やりか
にしても、いいなぁ続き読みたいっすねぇ

373 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 00:59:52 ID:e5ub0hTH
GJ!

しかし、正規の製作方法に無限力使うなんて………www

374 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 01:35:46 ID:o24GPoZD
イデって、あのイデ?
それともイデアセフィロス?

いずれにしても「この」夜天の書、信用に値しないよーな気が……www

375 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/05/30(金) 01:46:53 ID:XGf3vtN4
密かにレス返しw

>>359
この世界に悪人は殆ど居ませんw
いじわるな人がいるかなー程度です。ちなみに三脳は教師陣からは教師としての鏡として尊敬されていますw

>>369
ウロスでのネタがピピッと受信されましたw
一人では到底思いつかなかった内容ですが、楽しんでかけました。
スレ住人の方には頭が下がるばかりです。

>>371
綺麗というよりは駄目なマッドですw
犯罪行為にはちょっとビビリますw
レジアスは教頭として癖のある教師陣や”全力全開”などをする生徒のせいで少し胃がキリキリしてますw
親友のゼストさんが頑張って励ましているそうで、理想も熱いですw

>>372
ゼストさんはジャージに、木製の薙刀をもってよく生徒を吹き飛ばしてます。
ちなみに顧問は薙刀部。
次回も素早く書き上げる予定です。

>>373
いやいやいや、伝説の巨○ではないですからw

>>374
ネタ元は原作のリリカルおもちゃばこをどうぞ。
イデ○シードというものが出ております。
まさしく黒歴史〜。


沢山の感想どうもありがとうございます。

376 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 02:02:58 ID:91gF1QMa
お、俺が冗談で話していたネタがwwwww
GJ!!!!

377 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 02:06:46 ID:NPOMnb+h
こんな時間ですが、投下いたします。
タイトルは特になし。
短編どころか何も考えずに予告編のような形で書き上げました。
15分ごろに投下いたします

378 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 02:14:23 ID:NPOMnb+h
 まるで瀑布のように降り注ぐ気弾はその荘厳さとは裏腹に、一つ一つが人一人を殺傷せ
しめるには十分以上の威力を秘めていた。修行を重ねた悟飯の体ですら容赦なく打ち抜き、
肉をこそぎ落としていく。
「う、がぁぁぁああああああ!!」
 全身を針で貫かれるような痛みに耐えかね悟飯の口から悲鳴が迸る。それでも空にいる
17号と18号の顔色は一つも変わらない。作業のように両手から光弾を打ち出していた。そ
の数は百を超え、千を超え、万にも至ろう。
 ことここに至り、彼らからは油断の一文字は一切失われていた。どれだけ打ち倒そうと
死なず、力を伸ばし、その末に片腕になろうともあきらめない。一瞬ではあるが、二人が
かりの彼らに悟飯は抗しえたのだ。その先が敗北でないと誰が保証できよう。
 間違いなく、敵だ。玩具ではない。壊すのではなく、殺す。感情を交えぬ冷たい殺意を
胸に、人造人間たちは悟飯を殺しつくそうとしていた。
 もはや悟飯には対抗はおろか、逃げる術すら残されていない。痛みの中、必死で意識を
繋いではいるが、それは板面に苦しみを伸ばすだけだ。それがわかっていてなお、悟飯は
耐えようとしていた。
 後悔は、なかった。死を覚悟し、その上でトランクスをあえて残したのだ。あるいは、
初めからこの結果を予想していたとも言える。ならなぜ。なぜあえて苦しみを長引かせて
いるのだろうか。
 希望はあるはずだ。悟飯自身が残した希望が。そして彼はよくやった。命すらかけて、
人造人間たちに立ち向かったのだ。自身の命すらかけて。遣り残したことなどない。
 ――ふざけるな。痛みではなく怒りの咆哮を上げながら悟飯は拳を握る。
 ふざけるなよ、孫悟飯。何が希望か、何がよくやっただ。遣り残したことがない。そん
なはずはないはずだ。俺は今、トランクスに重荷を背負わそうとしているだけじゃないか。
 戦って、戦って、戦って。父を失くし、師を失くし、仲間を失くし、それでも、悟飯の
心の奥には扉があった。
 決して開かれることのない小さな、それでいてどこまでも固い扉が。
 拳は、まだ動く。余力があるのだ。命すらも燃やし尽くし負けるならまだいい。だが、
まだ俺にはやれることがあるはずだ!!
 まるで突き詰めれば重力が光すら吸い込むように、悟飯の気の全てがある一点に流れて
いく。それは怒り、それは決意。
 限界の遥か先にある命の輝きに気という気の全てが注ぎ込まれる。誰が知ろう。それは
別の未来でべジータが我が子を救うために選んだ選択と同じものだったということを。
 穏やかな心を持ちながら激しい怒りに目覚めることがスーパーサイヤ人に目覚める条件
ならば、今の悟飯の心はさらに未来への希望すら加われていた。
 トランクスを守るという尊い決意が悟飯の限界を遥かに超えさせる。
 例えベジータと同じ手段をとろうと、悟飯とではその潜在能力は比較にならない。必然、
引き出される威力も大きく異なる。
「うわぁぁあああああああああああああ!!」
 咆哮とともに膨れ上がった光はどこまでも尊く、そしてどこまでも純粋だった。しかし
それがもたらすのは悲しいかな破壊に他ならない。
 それでも、薄れ行く意識の中悟飯は満足していた。あせりの表情を浮かべたまま全力で
気孔を撃つ人造人間たち。しかしそんなものを意に返さず、光は一瞬で彼らを打ち消して
いたのだ。
 トランクスを、地球の未来を守ったのだ。
 そうして、辺り一面を破壊しつくしてその光は収縮した。後には何も残らない。
 そう、孫悟飯の死体さえも。
 ――べジータが決死の自爆を敢行した同じ未来。遥かな力は次元すら歪めると証明され
ていた。その力に、悟飯と人造人間たちが放った力の衝突は匹敵していたのだ。


「次元震動!? まさか、こんなところで!!」
 時空空間を潜行していたアースラの中がにわかに慌しくなる。あるいは平行世界に危機
が訪れるかもしれないのだ。
 可及的速やかにその原因を突き止めなければならない。可能ならば排除も。
 しかし、その備えは結果として杞憂に終わった。
 次元の乱れは一瞬で収まり、そして計測を終えた次の瞬間、アースラのモニタには一つ
の映像が映し出されていた。
「次元……漂流者か?」
 その身を山吹色の道義に包んだその青年の名は、もはや言うまでもなかった。
/To Be Continued?

379 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 02:17:13 ID:NPOMnb+h
以上です。
お目汚し失礼いたしました

380 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 03:02:37 ID:YtMQZ0yQ
遅ればせながら夢境学園氏GJ!
アンタよりこっちが笑い死にかけたわスカ博士!
つうか読めんからジュエルシードで代用ってジュエルシードさえ入れとけばいいってかw
しかし、もとネタわからんだもんで脳内でまかでみみたいな感じで再生された。
ウーノさんのツッコミが厳しそうだ。

381 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 03:23:43 ID:P4EMZgtB
なんとなく思いついたバキコラの一発ネタ3:30ごろ投下してみます

382 :ベストコンディション:2008/05/30(金) 03:30:34 ID:P4EMZgtB
ヴィヴィオの放つインパクトキャノン(中段突き)をかわしざまに合わせたSLBEXFBは――
正確にヴィヴィオの体内のレリックを捕え――魔力を全身に激突させ――
あたかも核融合炉の如く体内での魔力振動激突を繰り返し生じさせ――
典型的な半殺しの症状をつくり出し――
既に意識を分断されたヴィヴィオの下顎へダメ押しのショートバスター
崩れ落ちる体に照準固定された――
エクセリオンバスターによる零距離射撃はヴィヴィオを更なる遠い世界へと連れ去り――

全てを終わらせた!!!
その間 実に2秒!!!

声を忘れた仲間達は――
ただただ目前の状況に十字を切るのみ
これがもうじき20歳を迎えようとする冥王 高町なのは
ベストコンディションの姿である

383 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 11:16:46 ID:59QDy1cc
>>379
乙、トランクスは結構好きだ。

>>382
くっ、バキ好きの俺は乙を送りたい。

384 :一尉:2008/05/30(金) 11:31:29 ID:7GiTcRYq
よろしい支援たな。

385 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/30(金) 20:24:17 ID:S1Vi8el7
7時30分より「不屈のスザク」3話を投下しますー。
スザクは予告に反して少しだけ登場。

386 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/30(金) 20:28:33 ID:S1Vi8el7
訂正、8時30分です。

387 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 20:30:33 ID:QEXUUw8u
>>382
2秒でそのコンビネーションとか強すぎだろwwwwwwww

388 :不屈のスザク ◆yZGDumU3WM :2008/05/30(金) 20:34:07 ID:S1Vi8el7
ゼロ様ってゼノギアスのグラーフそっくりだと思う今日この頃。

コードギアス 不屈のスザク「出会い」

 暗夜の出来事だった。しとしと、と冷たい雨が降りしきる、月光もまばらな闇の中を、一人の少女が空を翔け、一匹の獣が野を駆ける。
ぴちゃぴちゃと大地を濡らしていく冷ややかな雨も、少女の身体を濡らすことはない。
防護服――魔導師の展開する強固な鎧はいかなる環境にも適応する恐るべき装備であり、本来体温を急速に奪っていくであろう雨粒を弾き、
少女をベストコンディションで戦える状態に保つ。
身体に張り付くような漆黒の防護服が少女の幼いしなやかな肢体を包み、金色の長髪が揺れる。
手には大振りな三日月斧のデバイス、バルディッシュ。こちらも漆黒に塗られた武器である。
紅い宝玉、ルビーのような少女の深紅の瞳が背後の闇を捉え――恐怖に歪んだ。普段、無表情と冷静さを保つ彼女にあるまじき姿であり、醜態だった。
この日、少女――フェイト・テスタロッサは一人で<ジュエルシード>回収にあたっていた。
<ジュエルシード>とは、ロストロギアと呼ばれる危険遺失技術の生み出したもののひとつであり、生物の願望を叶える力を持った宝石である。
フェイトの母、プレシア・テスタロッサが欲するものであり、彼女はフェイトを危険物収集の任務につかせていた。

おそらくは、願望を叶えるための手段として、フェイトを利用しているのだ。
そうとわかっていても、フェイトは止まれない。止まってしまったら、きっともう母から愛情を注いでもらえる機会は無くなってしまうから。
たとえ、叶わぬ願いだろうと、フェイトは一縷の望みに賭けているのだった。
悲しい在り方だった。おそらく、認められることなど無いと悟りながらの、愚直なまでの母への愛。
報われぬとわかっていながら、尽くし続けるところに、彼女の一途さがあった。

そして今日、地球エリア11に降り立ち、使い魔のアルフと別行動で<ジュエルシード>収集についた彼女は、どす黒い獣と遭遇した。
初めこそ、多彩な魔法で獣を押していた彼女だったが、アルフに連絡を取ろうとした時点で異変に気づいた。

『アルフ、もうこっちの収集は終わりそう。迎えに来て』
無言だった。もう一度念話――魔導師の通信手段――を行う。返答無し。
フェイトの無表情な容貌が、不安に歪んだ。こんなことは、この手合いの収集行為では初めてのことだったからだ。

『アルフ?』
獣が、にやりと嗤った。確かに、それは酷薄な笑みであった。
咽喉を鳴らし、ぎちぎちと身体を変態させていく――野犬がジュエルシードに接触したのだと知れた姿だった四本足の獣はその姿を変え、
ヒグマ程もある体躯の六本足の異形に。生理的嫌悪感をもよおす、醜い怪物だった。
野犬が<ジュエルシード>に願ったことは唯一つ。

――乾ク、ハラヘッタ。モット強クナリタイ。

その願いを聞き届け、魔法の石はただの飢えた老犬だったそれを、怪物へと変えた。
そもそも、この老犬は生まれながらの野犬ではなかった。7年前の管理局による日本侵攻で、飼い主が死に、天涯孤独の身の上となった哀れな犬だ。
同様の境遇のペット達に比べれば幾分か長生きだと言えた彼だが、足腰も衰え、ろくに食い物も漁れぬようになっていった。
そして、死に場所を求めて骨と皮ばかりの体を引きずり赴いた郊外の森で、彼はそれと出会う。
魔導技術の塊の、魔性の石に。

犬だった化け物を前にしても、フェイトは善戦した。己の持てる魔法を撃ち続け、バルディッシュによる至近距離攻撃まで当てた。
だというのに、まるで効き目が無かった。攻撃は尽く受け止められ、仕舞いにはフェイトが魔力切れを起こしそうなほど疲弊した。
だから、今フェイトは逃げている。目の前の脅威から逃れる為に。
高高度を飛べばこの怪物を振り切る自信があったが、それでは時空管理局エリア11総督府に察知される恐れがあった。
ある程度の高度は、彼らの航空武装隊と哨戒機が目を光らせているのだ。
獣が、いや、異形が跳んだ。黒光りする鋭い爪が降りかかってくる。
フェイトは、悲鳴を上げかけた。

そのときだった――あの、恐ろしく力強い声が響いたのは。

《力が欲しいか? 何者をも退ける力が》

不思議なことに、それは女とも男ともつかない声で、直接フェイトの脳髄に響いていた。
念話とも異なる、独特の感覚に戸惑い、思わず動きを止める。

389 :不屈のスザク ◆yZGDumU3WM :2008/05/30(金) 20:36:07 ID:S1Vi8el7
しまった、と思った。これでは異形の牙と爪が避けられない――死を覚悟する。
薄く、機動性を重視した己の防護服では、<ジュエルシード暴走体>の牙は防げない。
目を閉じ――痛みは、襲ってこなかった。
目を開けると――。

長いマントが翻り、フェイトの視界を塞いでいた。
ぞっとするほど、黒。
その長身はマントと同じ、闇に溶け込むような黒いプロテクターに覆われ、腕で――左腕の指二本で異形の振り上げられた爪を受け止めていた。
のっぺりとした流線形の仮面をかぶった頭部から、声が放たれる。

《下らんな……これが<ジュエルシード>とやらの力か。失望させてくれる》

周囲の時間が止まったかのように辺りは静寂に包まれ、闇と月明かりに彩られていた筈の風景は白黒のものに変わっている。
木立のざわめきも、聞こえてこない。
時が止まったかのような錯覚。
ヴィジョン――二つの惑星が、向かい合うようにして虚空に浮いている。

(これは……?)

脳髄に直接語りかけられる――再び中性的な声が響く。

《お前が望むのなら、契約をしよう。そう、これは契約。お前に力を授ける代わりに、私の願いを叶えて貰う》

(力……どんな? 母さんのためになるの?)

《お前の心がけ次第だろう――さぁ、どうする? ここで終わりたいのか、お前は》

考える――刹那の思考だった。答えなど、最初から一つしか無かった。
ならば、己の手で勝ち取るまで。

「力を――ください。私に、母さんの期待に応えられるだけの力をッ!」

このとき初めて、目の前の怪人物が肉声を発した。仮面でくぐもった、何処か機械的な声だ。
愉快そうに笑うと、右腕をフェイトに突き出し、言った。

「いいだろう、お前に力を授ける――このゼロがッ! ギアスという力を!!」

ゼロと名乗った者の仮面の左目部分がスライドし、赤く輝く、未知の力が解き放たれた。

赤い光がフェイトの瞳に飛び込み、脳髄を焼くような感覚が襲い来る――耐えた。身体が震える、痙攣する。
世界が変わる。再び色のある世界に――動き出す風景が認識され、ゼロの姿は消えていた。
同時に振り下ろされる異形の前肢の爪――宙を切る。既にフェイトの小柄な体躯は異形の遥か後方、100メートル先にいた。
爆発的な加速による機動だ。瞬時に音速を超えた身体が衝撃波を放ち、森の木々を揺さぶり木の葉が舞い落ちる。
バルディッシュが張る対風圧のフィールド魔法すら無意味な超高速機動に、怪物は翻弄されていた。
フェイトは、笑っていた。圧倒的な力に。

「これがッ! 私のギアス――<ザ・スピード>!!」

知らず、その能力の名を叫んでいた。重力制御による瞬間的加速能力――それが<ザ・スピード>の正体だ。
もっとも、その正体がわかったところで対策の方法は、無い。できるのは、一迅の風の如き刃に切り刻まれることのみ。

突撃を行う――超音速の刃が、一気に距離を詰め怪物に迫る。
ミッドチルダ式の円陣が展開され、バルディッシュがサイズフォームに――大鎌型の光刃を放つ。



390 :不屈のスザク ◆yZGDumU3WM :2008/05/30(金) 20:37:16 ID:S1Vi8el7
「うおおおぉぉぉぉぉッッ!!」

突撃の速さは最早、動物の眼に追えるものではなかった。
六本足の異形<ジュエルシード暴走体>は、鋭い刺突にその心臓部を貫かれ、四散した。
バルディッシュが槍型になり、シーリングフォームに移行。<ジュエルシード>を封印する。

「ジュエルシード、封印」

青く煌く宝玉が、フェイトの手に収まり、封印の輝きを放った。
ほう、と溜息をつき――激痛が全身の筋肉を襲った。がた、とバルディッシュを取り落とし、膝をついて項垂れた。

「……! 痛ッ……」
湿った森の腐葉土の上に落ちたバルディッシュが、機械音声で心配そうな声をあげた。

『Sir! Are you all right?!』

「大丈夫……ギアスの、代償が、これみたい……」
おそらく急激な加速による身体への負荷が、バルディッシュの負荷軽減魔法の効力を上回り、そのダメージに身体が戦闘後になって痛みを訴え始めたのだ。
急激加速の代償にフェイトが呻いていると、桜色の体毛の狼がこちらに向けて駆けて来た。
フェイトの使い魔、アルフだ。綺麗な体毛の狼は、うずくまるフェイトを見つけると、悲鳴じみた声をあげた。
使い魔は人語を解し、操るのだ――そんな当たり前のことをぼんやりと考えながら、フェイトは意識を失った。


 そしてこの日、新たな出会いがあった。
森の木々の中で傷つき、息も絶え絶えな一匹の小動物――フェレットが、弱弱しい念話を放った。

(誰か……僕の声が聞こえたら……助けてください。お願い、です……)

急速に失われていく意識の中、彼――ユーノ・スクライアが目にしたのは、時空管理局の服を着た少年だ。
栗毛と、緑色の目を持つ整った顔立ちの少年が、口を開く。

「……き……が? ……しっか……」

意識を失ったらしいフェレットをそっと抱きかかえると、少年は眉を寄せて走り出した。
凄まじい加速――恐るべき健脚である。

「大変だ……早くセシルさんに見て貰わなきゃ……!!」
でも、セシルさんで治療が出来るかな、と小首を傾げながら少年は特派トレーラーに向けて走り続けた。
少年の名を、枢木スザクという。
フェレットの首にかかる赤の宝玉が、月光の下で光り輝いた。
それは、新たな出会い。魔導の宝玉と、かつて犯した罪に心蝕まれる少年の出会いは、世界を変えうるのか。
今はまだ、誰にもわからないことだ。

391 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 20:38:41 ID:7x412uTq
支援

392 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/30(金) 20:39:53 ID:S1Vi8el7
以上で投下完了ー。

ギアスの理由=フェイトさんって何故か悪夢ナナリーのアリスに似てると思うんです。

次回こそ、スザク、レイハさんを起動させる!頑張れユーノ、セシルさんの手料理に をお送りします。

393 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 22:06:04 ID:ESOVrRbZ
>392
えと、ユーノがセシルさんの手料理になるの?

394 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/30(金) 22:28:22 ID:S1Vi8el7
>>393
遅れて返答ー。

いや、流石にユーノ殺害はww
ただ、OSUSHIの被害者になったりするだけです。

395 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/30(金) 23:46:48 ID:NddVcjLL
GJ!
こっちのゼロはゼロさんなのか?www

396 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 02:41:58 ID:pInd2H9E
ちょwwwおまwwww
ゼロはゼロでも魔王ゼロ様じゃねーかwwwww

397 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 03:30:19 ID:7uuGTUgU
フェイトとナナリーがキャッキャウフフですかwww

398 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 11:41:58 ID:KJaKusPG
愚者の書の続きが読みたいっスよ

399 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 11:56:00 ID:HDeQlhZB
イギーがヴォルケンと戦うこところで終わりでしたからね。気になります。
ベルカはザ・フールと相性悪いw
あと、正伝が読みたいなぁ。

400 :一尉:2008/05/31(土) 11:57:17 ID:oSjH07FI
専者の書支援

401 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 16:01:37 ID:oEEA6Rv2
モンハンの続きが気になるな、私は

402 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 17:20:34 ID:UIVwxNy9
14 :名無しさん:2008/05/29(木) 19:25:54 ID:W0oieYNk
>>11よく読めとしかいえん

1.魔法少女リリカルなのはMaster strikerS……なかなかいいと俺は思う
2.DevilMayCry2……ダンテ?いいえケフィアです
3.該当無し
4.メタルサーガ……正直やりすぎ


15 :名無しさん:2008/05/29(木) 19:39:34 ID:zvOowwDc
排他的行為乙。


16 :名無しさん:2008/05/29(木) 19:57:41 ID:2.uXK9Vw
1.リリカルなのはVS勇者精霊伝ブレイカー……ほんのちょっとずつだけど進歩してるし、頑張って欲しい。
2.特になし。
3.殺生丸……ギン姉好きにはたまらない展開でした。
4.キャバクラ……まあ、>>7と同じ


17 :名無しさん:2008/05/29(木) 20:12:24 ID:BfitOWek
1.魔法少女リリカルなのはMaster strikerS
2.メタサガ、NG済みな所為で>>7が見えんかったw
3.無い
4.リ●カ●ー、ああいう方向で消えるとはww畜生メw



28 :名無しさん:2008/05/29(木) 21:35:05 ID:mBVwUERg
1.魔法少女リリカルなのはMaster strikerS…これまでの流れも素敵だが、
ナイブズが居る以上正直展開が全く予測付かんからなw
2.メタルサーガ…苦悩しなくていいから、はんたもう帰れよ
3.リリカルグレイヴ…トライガンキャラも出てくるって時は不安になったが、チョイスが良かった。
アニメ版チャペルはいい不意討ちw
4.Strikers May Cry…同作者だけどこっちは地雷を踏んだ。バージルの結婚はやりすぎだと思った。
イベントスレとかでそのネタを引き摺ってるのもちょっと気持ち悪い。



403 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 17:52:56 ID:Vab3e6ig
この程度の嫌がらせで満足できるってのは、楽しそうな人生だね。

404 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 17:53:20 ID:FRVCGm/1
↑みたいな荒らしや批判厨には手を出さないでスルーしましょう。
↓からは通常通りに。

405 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/31(土) 18:46:04 ID:ziDarES8
7時00分から投下しますー。

14.3KBです。

406 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 18:53:27 ID:UIVwxNy9
>403
これが本音なんだろ?
おまけ



130 名前:名無しさん 投稿日: 2008/05/31(土) 18:42:36 ID:1k5BYqYA
>>125−127
まあ落ち目のコテが腹いせにやったと見るべきだろうなスクリームとかマスカレードとかよ
スクリームなんかクズだし俺達の方が立場が上だと判ってない奴らばっかだから
まずこいつを追放して見せしめにするべきかもな。
誰も読んでない作品しかないのならスレにもダメージ無いだろ。


いや〜お上品な書き込みだな(プ
スクリームだかマスカレードだかってのが誰かなんざ俺の知った事じゃないが
俺がこいつらならやる気失くすね(プゲラッチョ
まあ関係無いけどぉーーw

407 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/31(土) 19:01:41 ID:ziDarES8
(超音速ヘリを象に撃墜されながら)メーデー、メーデー、これより投下する!!
というわけで 闇の王女幕間其の十 投下。

408 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 19:02:34 ID:YIlRyo2P
支援

409 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/05/31(土) 19:03:43 ID:ziDarES8
魔法少女リリカルなのは 闇の王女 幕間其の十

 スカリエッティからの定期通信が入った。
長槍を携え、小脇に自らと決闘して果てる寸前まで消耗した青年を抱えて飛行していたゼストは、その通信に気づくとあからさまに嫌そうな顔をした。
ゼストの消耗を感知し、ユニゾンを解きその肩口に座っていたアギトも、苦々しげに顔を歪めている。
知らず、毒を吐き捨てた。<烈火の剣精>らしからぬ振る舞いだ。

「なんだよ、スカリエッティの奴。またゼストの旦那をこき使うつもりかァ?」
たいそう嫌そうな物言いに、ゼストが肩をすくめた。言外に同意しているらしい。
実際、ジェイル・スカリエッティという人物は暗部が多すぎた。否、人と言う生き物が持ちうる暗黒を、塗り固めたような人物なのだ。
人体実験を愉悦の笑みを浮かべて行う悪魔。大量虐殺に眉根一つ動かさない悪鬼。子供を兵士として人体改造する外道。
これほど悪意という感情しか向けることの出来ない男を、ゼストとアギトは他に知らない。
さらに異様なのは、この男の心の在り様だ。
如何なる事態も、己の『楽しみ』として消化してしまうのだ。

たとえ、己が計画が狂おうと。

たとえ、愛娘と称した戦闘機人が四肢を砕かれて帰ってこようと。

たとえ、高町なのはというイレギュラーの存在を認めても。

要するに、狂人と称するのが最も相応しい人物なのだ。だが、この男の性質の悪いところは、己の狂いを自覚し、冷静に分析を加えているところだ。
そこに、この男の得体の知れなさがあった。狂った男でありながら、実に論理的な分析を行う怪物。
原始時代に灯なき場所の闇を恐れたように、人は理解できないものを拒否し、拒絶する。
あるいは、ゼストとアギトの反応はそういう類のものなのかもしれなかった。
勿論、この狂人はそんなことは百も承知で通信をかけてきているのだが。
半ば嫌がらせじみているが、本人にその気はなく、極々自然なこととして受け止めている。
なんとも嫌な男だった。
整った顔立ちを隠しきれない喜悦に歪めながら、スカリエッティは口を開いた。金色の瞳がぎらぎらと光り輝く。
空中展開式モニターを今すぐ閉じたい衝動を押さえ、通信に応じる。

「なんだ? レリックはもういらぬ筈だが」

『ははは、あんな玩具はどうでもいいのさ。それより騎士ゼスト、聖王教会の作戦はどうなったんだい?』
ふむ、と顎に手を当て考え込む。作戦意図がどうあれ――。

「失敗だな。傀儡兵は大半が機能停止状態だ」
紫の整えられた髪を揺らし、ははは、とスカリエッティが笑った。なんとも愉快そうな笑みだった。

『いやいや、君が二割ほど派手に壊したせいもあるんじゃないかな、ククク』


「何のことだか分からんな、切るぞ」

『ちょっと待ったぁ! まだ用件は済んでいないよ、騎士ゼスト』
すっ呆けた表情でゼストは答え、通信を切らんとした。スカリエッティが身体を前のめりにして制止する。
ずい、と拡大されるスカリエッティの顔に辟易しながら、応えた。

「早く言え」

『うんうん、そうさせて貰うよ。まぁね、用件は単純さ――要は、聖王教会に渡したジュエルシードを奪回して欲しいんだ』
驚きながら、スカリエッティへ返答する――危険指定遺失技術の塊が、目と鼻の先に転がっていると言うことか。

「取り返せ、か。よかろう、その後は――」

『ああ、メガーヌ君を解放しよう。それが交換条件ということで』

「……承知した。約束、違えるなよ」
私は約束を違える気はないよ――というスカリエッティを無表情に見つめ、通信を今度こそ切った。

410 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 19:03:52 ID:BHorWgYL
メイデイ! メイデイ! S! O! S!
支援

411 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/05/31(土) 19:05:18 ID:ziDarES8
ただ、悲しかった。この約定によって、同胞に、地上を守る兵に牙を剥くことになるのが。
眼下の地上を見やると、静かに息をはいた。アギトが気遣わしげに声をかけてくる。

「旦那ァ……」

「……何も言うな、アギト。俺達は、なすべきことをなすだけだ」
次の瞬間には、長身の槍使いの影は地上へ向け跳んでいた。ごうごう、と風が凄まじいが、フィールド系魔法で軽減し、慣性操作。
着地の衝撃をやわらげながら、失神している青年を路面に横たえ、青い宝玉を手にしている赤毛の少女に、刃を向けた。
かちり、と構えられる長槍の前に、少女が立ち竦むのがわかった。

(外道だな、俺は。一を助ける為に百を敵に回す、か)

それが己という存在なら、喜んで刃を交えよう。幾度と無く血の雨を浴びようと、この身は止まれぬのだから。

(メガーヌ……お前が、愛しかった。この手に――)

目を細め、己を取り囲む陸士を睥睨した。

(――取り戻す)

決意と共に、一言。

「それを、こちらに渡して貰おうか」
冷ややかな声が、唇から洩れた。
陸士部隊の隊長と思しき男が、声をあげた。顔を驚愕と怒りに染めている。
その視線が路面に横たわった青年に向けられているのを感じ取り、ゼストは静かに青年を見た。

「あんたが……アランをやったのか、騎士ゼスト……」

「騎士として刃を交えたまでだ。彼はまだ生きている」

その言葉に、周囲の陸士たちが一斉に殺気を放ちながらゼストを取り囲んだ。仲間を傷つけられたことに対する怒りだ。
もはや隠す必要もない、と言わんばかりにデバイスを手に攻撃態勢に入っている。

「よくも副長を……!」
そんな声が聞こえてくるのを感じながら、ゼストは冷静に戦力を分析していた。

(使い物になりそうな魔導師は精々、この少女と隊長格のみ……他は、雑魚か)
念話を放ち、アギトとコンタクトを取る。

『アギト、適当に彼らをあしらってくれ。俺はジュエルシードを確保する』

『あいよぉ! 了解しました、と』

これが地上の実状なのかと思うと、つくづくレジアスが哀れだった。なんと、虚しいことか。
肝心のジュエルシードを持った少女は凍りついたように動かない、否、動けない。
驚愕に強張ったままの少女の整った顔立ちへ向けて、一言。

「もう一度言おう。ジュエルシードを、渡せ」

「いいから刃を引け、騎士ゼスト! なんであんたが生きているのか知らないが、レジアスの旦那がこんなことして喜ぶと思うのか?!」

友の名を出されても、ゼストの顔色はなんら変わることが無かった。といっても、心が揺れ動かなかったわけではない。
ただ、虚無感のみが胸中にあった。もうすでに友は逝き、真実を知る術は永久に失われた。
何を、躊躇おうか。

412 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/05/31(土) 19:07:12 ID:ziDarES8
「もはや語るまい――それが、必要だ。死にたくなければ……!!」

「シュワルベフリーゲンッ!!」
唐突に、幼い少女の声音が響いた。即座に背後へ跳躍しながら槍を引き、打ち出す。
飛来したのは、一発の大型鉄球。銃弾もかくや、という速度の鉄球は砲撃じみた威力を持った凶器であり、バリアーを撃ち抜きうる射撃魔法だった。
これをゼストは、槍の刺突で打ち落とした。魔力によって付与された誘導機能を上回る膂力の前に鉄球は地面に転がった。
だが、それがヴィータの狙いであった。
このとき既に彼女の身体はラケーテンフォルムへ変じた鉄槌の魔力噴射機構によって、ロケットの如く加速し、ゼストとの距離を十二分に詰めていた。
指は堅く握り締められている。
初めてゼストの表情が驚きに染まり、大きく動いた。咄嗟に左腕を突き出し防御術式を構築する。
くるくると独楽の様に回転するヴィータの身体が魔力の足場を用いて踏ん張り、ハンマー先端のスパイクを加速させ叩きつける。
みしみしと言う音と共にバリアーが砕け散り、ゼストの身体へ向け凶悪な先端が突き刺さらんとした。

「バリアジャケット、パージ」
ゼストの防護服前面が弾け飛び、爆発が巻き起こった。パージされた防護服が瞬間的に膨張し、魔力爆発を引き起こしたのだ。
これによって、ハンマーの突撃力を相殺。衝撃にゼストの身体が後ろに吹っ飛び、地面に叩きつけられた。
ぐう、と鈍い呻き声と共に横合いに転がり、追撃のハンマーをかわす。
再び跳躍し、槍を構え小柄な鉄槌の騎士と対峙――真っ白な防護服を身に纏い、髪を三つ編みにした少女が立っていた。

「<ヴォルケンリッター>か……」

「鉄槌の騎士ヴィータと、鋼鉄の男爵グラーフアイゼン、そして融合騎リインフォースUだ。覚えとけッ!」

アギトが悲鳴のような声をあげた。既に数人の陸士を火炎魔法で蹴散らしていたところである。
空中に向け飛翔し、ゼストとの融合を声高に叫んだ。

「旦那ァ! そいつらユニゾンしてやがるッ! あたしたちも――」

「無用だ、アギト。この程度、俺一人で十分」
力強いゼストの言葉に安心したのか、<烈火の剣精>は胸を撫で下ろし――鞭状連結刃を回避した。
解けた髪を揺らしながら、<ヴォルケンリッター>烈火の将、シグナムは剣を操り追撃を実行する。
手首が柔らかくしなり、すっ、と伸ばされた人差し指の精妙な動きに合わせて蛇腹状の剣が蠢いた。
魔力の足場の上で仁王立ちするシグナムは、右腕と上体の動きだけで鞭状連結刃を操作し、空中を制圧せんとしていた。
大蛇の様に踊り狂う剣閃――弾く、叩き落す、避ける。火炎魔法をあびせられても、刃には傷一つつかない。
縦横無尽の空中戦が繰り広げられる中、アギトが咆哮した。

「あんたらは! 古代ベルカの騎士じゃないのかッ! どーしてミッドの仲間になんかなるんだ!!」

シグナムが、神妙な顔で頷き語る。

「忠義と――私自身の意思だ」
レヴァンティンを長剣としての姿に戻し、魔力炎熱変換機構を起動させる。
右八双に構えられた直剣の名は、レヴァンティン。カートリッジ機構を取り込んだ、魔導騎士の為の兵装である。
ごう、と火炎が刃を覆い、炎の魔剣を生み出した。それを見て、アギトがごくり、とつばを飲み込んだ。
炎の属性――己の最も得意とする術式だった。

「なんだよぉ……やっぱりお前らは、気に食わねぇ……!」

「ならば、どうする?」

「決まってるだろッッ!!」

灼熱の炎を放ちながら、烈火の二つ名を冠する二騎は空中を飛び回る。
もとより決着のつき難い勝負である。近接戦特化型の騎士と、炎術中心の妖精とでも呼ぶべき存在が勝負するのでは、まともに戦うだけ長引くだけだ。
よって、アギトは時間稼ぎに徹しようと飛び道具を撃ち続け、シグナムは近接戦でかたをつけるべく接近する。
炎の乱れ飛ぶ戦場が、形成されていた。


413 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 19:07:38 ID:1CGfMSKa
>>406
暇人だねー。
ブログで叩かれたのがよっぽど効いたのか。

414 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/05/31(土) 19:09:13 ID:ziDarES8
 槍騎士と鉄槌の騎士の激突は、はるか上空での空中戦に移行していた。
猛烈な勢いで宙を翔ける二人の行く手を遮るものは、無い。赤く燃え盛る炎の街並みを眼下に、二騎はうねるような機動を描き、衝突しあう。
片方が射撃を放てば、もう片方も射撃で相対し、撃ち落す。

「シュワルベフリーゲン!」

「ルフトメッサーッッ!」

共にベルカ式の術式のぶつかり合いに、大気が歪んでいく。高密度魔力の戦いは、用意に自然現象を捻じ曲げる。
撃ちあいは互角。かくなる上は、接近戦で――ベルカ式魔法が真価を発揮する距離。
急激加速により衝撃波が生じ、地上にいる陸士たちの耳を襲った。
両者の激突により魔力素が急速に魔力へと変換され、大気中に淡い煌きを放っていく。粒子の散るような光景に、誰もが息を呑んだ。
圧倒的な、技量の差があった。如何に<ヴォルケンリッター>と言えど、長い間の平穏は彼女達の技量に大きな影を落とし、蝕んでいたのだ。
それに対し、ゼストはかつてストライカーと呼ばれた猛者。ここ数年味わってきた地獄によって、その刃は研ぎ澄まされるばかりである。
ヴィータが叩きつけようとしたハンマーヘッドを、ゼストはあえて慣性操作による飛行を解除し――自由落下によって回避した。
あまりにも異様な動作に、ヴィータの反応が遅れた。

「何ぃ?!」

「――もらった」

飛行魔法を起動させ、瞬時にヴィータの背後に回りこみ、魔力の足場を展開――右脚で踏み込んだ。
空中機動の真っ最中は固定していた手首を開放し、柔らかに指を添えた槍を手首をスナップさせるようにして突き込んだ。
本来強固なシールドと防護服が防御している筈のヴィータの背面を、無銘の槍が穿つ。

――まるで、防御など『存在しない』かのように。

「はや……て」

ずぶり、と己の胸を貫き、矛先が心臓がある辺りから生えているのを見て、ヴィータは血を吐きながら笑った。
鮮血がどくどくと傷口から溢れ、ユニゾンによって白くなったドレスのような騎士甲冑を紅く染めていく。
胸から穂先が引き抜かれ、身体から力が抜けていく。
ゆるゆると落下――重力に逆らうことが出来ないほどの消耗、破損。
リインとのユニゾンが解け、ヴィータだけが落下していく。もっとも、リインフォースUも無事ではない。
いくらかヴィータのダメージを肩代わりし、機能停止寸前の状態だ。
可笑しいじゃないか。絶対に可笑しい。
だって、自分はこれからも、はやての家族で。
ヴォルケンリッターの仲間と一緒に、ギガ美味いご飯を食べて。
それで、それで、それで――。

「ヴィータァァァァッッ!!」

解けた長髪を揺らし、シグナムが叫びながら空を翔けた。長剣を腰に差し、落下するヴィータ目掛けて、突き進む。

「いかせるかッ!!」
アギトの放つ炎の塊を避けながら、一直線に突き進む。
普段は気にならないほどの空気抵抗が、歯がゆい。
もっと、もっと、もっとだ。テスタロッサなら、もっとずっと速くヴィータの元に駆けつけられる筈だ。
魔力を馬鹿げた速度で消費しながら、飛翔する――速く、速く、速く。加速に魔力を使い切るのではないかと言うほどの俊足だった。
ヴィータが弱弱しく息をするのを、そっと両腕で受け止めながら、シグナムは涙を零した。
三つ編みにされた赤毛が揺れ、赤い血が胸にぽっかりと開いた虚ろな穴から壊れた蛇口から吹き出る水のように噴出していく。
ヴィータのか細い呟きが、耳を打った。

「泣くなよぉ……シグナム……こんくらい、あたしは丈夫だから平気……」
嘘だった。防衛プログラム自体が<ヴォルケンリッター>の人間化を促進させている以上、心臓を貫かれて無事で済む筈が無かった。
嘘と互いにわかりながら、言葉を交わし続ける。

「だから、さぁ……シグナムが、ないちゃ、駄目だろぉ……? はやてが……不安に……」

415 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 19:09:33 ID:BHorWgYL
触れるな支援

416 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/05/31(土) 19:11:56 ID:ziDarES8
「もういい、喋るな、ヴィータッ! リインの再生機構とシャマルの治療があれば、お前は助かる、助かるんだ!!」
つう、と涙がヴィータの頬を伝い、零れ落ちて地面へ流れ落ちた。

「あれ……なんで泣いてんだ……あた……し」
それは、まるで、流れ落ちる命の雫のようで――ただもの悲しかった。
シグナムがシャマルへ向け声の限りに叫んだ。

「頼む! シャマル、ヴィータを助けてくれッッ!!」

「シグナム、落ち着いてッ! 今<旅の鏡>で――」
ヴィータの身体がシグナムの腕の中から消え、シャマルの手元に転送される。
リインもシャマルの手元にいるが、自閉モードに移行し、ぴくりとも動かない。

「……古代ベルカの騎士もぬるくなったなァ」

アギトの声が冷酷に今の<ヴォルケンリッター>を批評した。見限ったような言い方である。
事実、彼女は失望していた。このようなぬるい生き物が古代ベルカ騎士を名乗るとは、世も末だ。

辛辣な言葉に、シグナムが般若の如き壮絶な形相で、桃色の長髪を振り乱し咆哮した。
もはや、言葉と一瞬感知できぬほどの大音声であり、心の底から響くような悲しみと怒りに満ちた絶叫だった。

「ふざけるなぁぁぁッ! 貴様にぃ、何がわかるッッ! 私達の、何がッッッ!!」

「わからんさ、何も。だから、斬った。それだけだ」

ゼストが、透き通るように透明な声で言った。明瞭な声であり、意味だった。
自身の道を邪魔するならば、邪魔なだけだ――おそらく、この男はたったそれだけの理由でヴィータを斬ったのだ。
唐突に、一つの思念がシグナムの胸中で沸き起こり、弾けた。
まさに烈火の如き勢いで燃え広がったそれは、瞬く間に彼女の心を麻痺させ、たった一つの感情で満たさせた。

(殺す。この男だけは、殺そう)

よく熟れ腐った果実が地面に落ちて種子をばら撒くように、シグナムの理性の殻を突き破り、憎悪と言う種が解き放たれた。
殺意が身体の末端にまで満ち、はち切れんばかりの勢いでレヴァンティンが抜刀される。鞘から抜き放たれる際の衝撃で、みりみりと柄が軋みをあげた。

「カートリッジ、ロード」
主の感情の昂りに合わせる様に三発のカートリッジが蒸気と共に廃莢され、刀身に紅蓮の炎を纏わせた。
シャッハを一刀の元に斬り捨てた魔剣が、憎悪を込められて顕現したのだ。
構えは、大上段。蜻蛉の構えなどと称される、頭上の刃を相手へ振り下ろす為の、守りを捨てた攻撃特化の構え。
魔力で編まれた足場を蹴り、シグナムは跳んだ――既に足は魔力の足場への着地に備えている。

「うぉぉぉおおおおお!! 紫電――」
着地しながら右脚を一歩前に踏み込み、人差し指と親指に余裕を持たせた独特の握りで剣先を振り下ろす。
綺麗に斬る、など頭にない、神仏だろうと叩き切る為の剣術であり、戦技だった。
火の粉が散り、シグナムの髪にかかるが、憤怒の形相の彼女はそのようなことは頭に無い。

「怒りは、剣筋を鈍らせる――」
対するゼストは、何処までも冷静だ。踏み込みに使う足を一歩後ろに引き、手首を柔らかくして刺突に備えた。
弓を引き絞るようにきりきりと槍を手前に引き、力を溜め込んでいく。

「一閃!!」

撃尺の間合いだ――互いの武器がその真価を発揮しうる距離。
シグナムの剣閃が真空を生むのではないか、と思わせる速さで振り下ろされ、全身の筋肉が刃の加速に回される。
これに対し、ゼストは片足を踏み込みながら、石突を魔力の足場に固定、相手の心臓を打ち抜く為に手首を微調整する。
手前に引いていた長槍を恐るべき勢いで突き出し――修羅と魔剣の使い手は激突した。


417 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 19:14:29 ID:BHorWgYL
支援

418 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/05/31(土) 19:14:29 ID:ziDarES8
投下完了です。
皆様、ご支援ありがとうございました。

どうなるヴォルケンリッター、でお送りしました。

感想等よろしくお願いします。

419 :一尉:2008/05/31(土) 19:32:55 ID:oSjH07FI
よろしい支援

420 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 19:36:53 ID:YIlRyo2P
GJでした!
ゼストがとても格好いいですね!主人公してるw
ヴォルケンが技量が落ちてたり、ぬるくなったって台詞も良かったです。
なのはとかゼストとか地獄を経験して強くなってるんですね。
ヴォルケンがぬるくなったのは
戦友ではなく家族として接するようになったのが原因ではないかと思います。

目立ってないフェイトサイドにも期待してます。
周りの濃さが半端じゃないのでフェイトがついていけるかどうか心配です。
では。

421 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 20:11:05 ID:nSuUlbbK
そうやって、わたしは見つけた。
お兄ちゃんが書いていた小説。アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の話を使った小説を。
業界、って言うか、この界隈では二次創作って言うジャンルの、ネット小説。
お兄ちゃんはそこで、作家をしてたらしい。少し読んでからファイルを閉じた。
ぜんぜん判んない。わたしがエヴァンゲリオン見たのは幼稚園の頃で、憶えてない。
お兄ちゃんの部屋にDVDでもないかと思って探したけど、見当たらなかった。

何日かして近所のレンタルビデオ屋からエヴァンゲリオンを借りて見る。
幼稚園の頃はロボットがあんまり戦ったりしないマンガだって思って見てたけど、今見ると余計に判んなくなった。
最初はちゃんとしてたのに、後になってくると宗教の勧誘か自己啓発セミナーみたいになってくストーリー。
律儀に映画まで借りて、その訳判んなさに「金返せ」って叫んでクッションをボスボス殴って。

で、わたしはもう一度お兄ちゃんの小説を読んだ。
はっきり言うと、お兄ちゃんは才能がない。
読書感想文よりかはマシなんだろうけど、凄い下手に見えた。
現実、つまりパソコンの外側の世界に住む高校生が主人公。

で、ある日突然、精神だけが碇シンジ君に乗り移って、って言うか、碇シンジになっちゃう。
読みかけて別のいろんなサイト、お兄ちゃんの残したお気に入りの中のエヴァ関係サイトを調べて、
そんな小説が他にもあるのを知った。
だいたい酷かった。オタクの妄想の垂れ流しみたいなキモい展開、似たような内容。
お兄ちゃんのもそう。高校生なのに銃と格闘の達人で、軍隊にも詳しい。
見かけは碇シンジだって書いてあったのに大人、ミサトさん達なんかよりも偉そうにしてて人気者。馬鹿じゃないの?

その妄想小説とおんなじフォルダに入ってた、書き掛けみたいなのも酷い。
ミサトさんとか碇司令とかを極悪人にして惣流アスカや綾波レイと相思相愛。
あの最低映画じゃないけど「気持ち悪い」ってしか言えないわ。

422 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 20:14:22 ID:FRVCGm/1
なんか荒らしが沸いてきたな・・・
こういうやつらは即刻NGだ。
無視に限る。

423 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 20:42:49 ID:o74ART6x
ageられているとこういう輩が出てくるな……あぼ〜んで見えないが、ageてるの自重しろ

424 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 20:46:23 ID:1CGfMSKa
というか、この前に
「オリキャラ大活躍のプロット上げたら叩かれた。
 やっぱ奴らは可愛いキャラが活躍すれば良いだけのクズ」
とかブログで騒いでた奴しかいないだろ。

425 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 20:49:05 ID:n+vuykPg
>>可愛いキャラが活躍すれば良いだけのクズ
そのわりにはかませのヴィータは定着してるな
狂犬刹那並に

426 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 20:53:56 ID:kU3nMm5J
マジレスするとそれコピペ
他板でも見かける

427 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 21:09:28 ID:md6cXFnY
感想書こうぜ。GJヴィータ生きてんのかな?リィンもすごいやばい状態だ。

428 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 21:14:11 ID:YREfll44
>>427
書く前にsageろw

ここからガンガン死にそうだな
この先生きのこれるのは何人だろう…

429 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 21:18:07 ID:RKYX7nO4
最近ageられてるの多くなりましたね

430 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 21:32:17 ID:md6cXFnY
付いてなかった。すまん。説得力ねえよ俺opz
マジで生き残れるのは何人だろう。

431 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 22:06:20 ID:gdOWPsKB
ヴィータのかませっぷりに全俺が泣いた

432 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 23:59:36 ID:HDeQlhZB
GJ!!です。
ヴィータが簡単にやられるとは・・・ゼスト強すぎだw
フェイトは今まで保護した子供たちが相手になるのだろうか?
率いるのはもちろんエリオかな?楽しみです。

433 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/01(日) 11:22:24 ID:CfQVnSPb
おはようございました。
最近は(主に夢境氏のおかげで)ちょっぴり暴走気味というかアレなスカ博士が流行なようなので、
ちょっくら単発ネタを思いついたのですが、30分から投下よろしいでしょうか?

434 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 11:24:04 ID:QgZhMRSZ
かもん!

435 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/01(日) 11:29:35 ID:CfQVnSPb
では、そろそろ投下いきます。

ちなみにコレがクロス元になった作品
http://www.kaeruotoko.com/taka.html

436 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/01(日) 11:30:53 ID:CfQVnSPb
秘密結社スカの爪

【参上! スカの爪団】


ミッドチルダは今日も平和だった。
首都クラナガンの大都市は、大勢の人々で賑わっている。
コンクリートジャングルとでも呼ぶべきビルの間を、縫うように自動車が走っていった。
市民達の行き交う交差点。会話の飛び交うカフェテリア。休むことなく機能し続ける商社ビル。
次元世界を守る法治組織・時空管理局のお膝元とも言えるこの街は、その恩恵を最大限に受け、発展と繁栄を続けていた。

しかし、そんな管理局にも倒せない悪がいる。
何度となく叩きのめしても再び立ち上がり、世界を狙い続ける悪者達がいる。
ミッドチルダ征服を目論む、そんな悪の秘密結社の本拠地は――



――ごく普通なアパートにあった。



ミッドの街に吐いて捨てるほどあるような、そんなアパートの一室。
そこに彼らのアジトはあった。
微妙にだだっ広い部屋の中には、数人の男達が横一列に並んでいる。
着ている服は、皆一様に赤いタンクトップ。頭にも同様の、血のような真紅のバンダナが巻かれていた。
少々ラフではあるものの、これこそが彼らの抱える戦闘員の制服なのである。
そしてその中に、1人の女性がいた。
外見年齢にして20代程といった様子の、おしとやかな印象を受ける美女だ。
上品な薄紫のロングヘアーには微かにウェーブがかかり、金色の瞳と長く整ったまつ毛が輝いていた。
彼女こそが、この一団の戦闘主任として、新人戦闘員達の教育を一手に引き受けるサイボーグ――ウーノである。
「いい? まず貴方達に教えるのは、戦闘員の言葉よ。テレビでもお馴染みだけど、戦闘員は普通の言葉で話しては駄目。
 常に『イー!』か『ヒョー!』のいずれかで話すのよ」
ウーノが戦闘員達へ言う。今日は言語教育か何かを行っているらしい。
美人が大真面目な顔でそんな珍妙なことを言うのもシュールな光景だが、要は何事も「形」から、ということを言っているのか。
「では行くわよ。イー!」
『イー!』
「ヒョー!」
『ヒョー!』
いよいよ訓練が始まる。大の男達が、真顔でウーノの後に続いて奇声を上げ始めた。
管理局もよくこんな間抜けそうな連中を捕らえられないものだとは思うが、これでも立派な悪の秘密結社なのである。
「勘弁してください、上司から言われたんです!」
『勘弁してください、上司から言われたんです!』
「どうもこんにちは、プラス・ペプラーです」
『どうもこんにちは、プラス・ペプラーです』
何だか妙な流れになってきた。
「ウーノ君、一体何の訓練をしているんだね!」
見るに見かねて1人の男が奥から飛び出してきた。
顔の特徴はウーノに近い。紫の長髪に、黄金の瞳で、そこそこに整った顔立ちだ。
違いを上げるならば、彼の場合は髪色が濃くて、おまけにストレートヘアであるということか。
着ているものは、医者や研究員がよく着用している、あの白衣である。
「ああ、ドクター」
この男こそ、世界制服を企むベンチャー秘密結社「竜の爪団」の総統、ジェイル・スカリエッティである。
かつて管理局がアルハザードの技術を駆使して生み出した人造人間で、世界征服に取り組んで早23年。
得意分野は生命科学。誰もが幸せになれる世界を目指して次元世界の統一を目指す、こう見えて心は優しい科学者だった。

437 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/01(日) 11:32:00 ID:CfQVnSPb
「いえ、万が一のために、敵の機嫌を直す練習もしておこうと思いまして」
「そんなことで敵の機嫌が直るわけないじゃないか!」
真顔でさらりと言い放つウーノに対し、スカリエッティがツッコむ。
どうやらこの戦闘主任、見た目や物腰の割には相当ズレた人間だったようだ。
『どうもこんにちは、プラス・ペプラーです』
戦闘員達が一斉に口を開く。息もピッタリ、完璧な連携だった。
というか、もっとまともな方向にこのコンビネーションを活かせばいいのに。
「おお、本当だ。こりゃ悪くないね……、あ、いやいやいやいや! そんなこと言ってる場合じゃないのだよウーノ君!」
危うく戦闘員のペースに乗せられそうだったところを、スカリエッティは思いっきり首を振って我に返った。
「何だねこのカツラは!」
そして、何かを握っていた手をウーノの方へと差し出す。
それはスカリエッティが言うとおり、カツラだった。誰がどう見ても、あのカツラである。ウィッグである。
茶髪のロングヘアーのカツラで、何だか妙に上質な色ツヤを放っていた。
「ああ、小泉チルドレン風の紳士用カツラですが、何か?」
「何かじゃないよ! 最近ウーノ君のガラクタが更衣室を占領しつつある。このカツラだって私のロッカーに入っていたのだよ」
「いえ、私はもう飽きましたので」
「何故私が君のお下がりをかぶらねばならんのだね!」
相変わらずさらっと言ってのけるウーノに、それに食って掛かるスカリエッティ。ボケとツッコミの構図が完全に出来上がっていた。
それにしてもこのアパート、団員の更衣室まであるという辺り、一体どれほどの大きさがあるのだろう。
いやそもそも、何故ミッドチルダの人間が、第97管理外世界の「小泉チルドレン」を知っているんだ。
というか紳士用というからには、淑女であるウーノは対象外なのでは?
「ふざけている場合ではないよウーノ君。明日はいよいよ、我らの野望が達成される日なのだからね」
「そうでした。いよいよ私達も、歴史の表舞台に躍り出るのですね」
「そうだともウーノ君!」
我が意を得たりと言った様子で、スカリエッティのテンションも上がる。
黄金の瞳をくわと見開き、底抜けの愉悦に口元を歪ませた。
「見たまえ、これが竜の爪団が10年の歳月をかけて研究し、この度の総攻撃では、念願の世界征服を達成するために造られた……」
そして、狂気の科学者の秘密兵器は、遂にその全貌を彼らの前に現した。
「――ロストロギア・聖王のゆりかごだ!」
彼の指し示す先にあったのは、巨大な戦艦だった。
荘厳な黄金と紫で塗装された、全長数キロ単位にすら及ぶと思われる、見る者を圧倒する方舟。
どうやってアパートの室内に入れたのかは分からなかったが、ともかくもそれほどの巨大兵器がそこにあったのだ。
かつて古代ベルカ史上最悪の質量兵器と呼ばれたこの戦艦は、現存するあらゆる兵器よりも強力な次元跳躍砲撃能力を有している。
あらゆる攻撃はそのバリアを傷付けられず、更にステルス迷彩も完備。
葬式の時にはボディーカラーは黒く変色し、結婚式では白くなり、還暦の祝いでは赤くなるという優れものだ。
「素晴らしいです。これさえあれば、どんな戦場でも敵なしと言っていいでしょう」
聞く者を圧倒する機体スペックに、ウーノは素直な賞賛の声を上げた。
「うむ、確かにそうだが……」
しかし、当のスカリエッティの表情は険しい。
いかに強力な兵器を製造したと言えど、彼にはまだまだ油断できない理由があった。
「それだけでは世界征服はできない。何故なら――」
いるのである。
世界征服をもくろむ悪の秘密結社として竜の爪団が存在するように、どんな時でもその野望を粉砕するライバルが存在するのだ。
彼らにも、戦うべき正義の味方が存在したのだ。
「――管理局には、あのにっくきデラックスフェイトがいるからだよ」

438 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 11:32:24 ID:5t5rN1vo
DS版R2の情報で支援する。
デフォルメ化したゼロを見て爆笑せよ!

439 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/01(日) 11:33:16 ID:CfQVnSPb
「そうでした……デラックスフェイトがいました」
微かに忌々しげな響きをもって、ウーノが呟いた。
時空管理局所属執務官フェイト・T・ハラオウン。通称、デラックスフェイト。
あらゆる竜の爪団の作戦を、必殺のライオットザンバーでことごとく打ち破ってきた、にっくき宿敵である。
ミッド上空に空中戦艦に搭乗して現れ、「にゃっはっはー!」と高笑いしながら攻撃を行おうとした時も、
ロボット軍団を製造して「にゃっはっはー!」と高笑いした時も、
「にゃっはっはー!」と高笑いした時も、いつもいつもデラックスフェイトに必殺技の一撃で叩きのめされてしまったのだ。
「彼女は何ですぐに必殺技を繰り出すのだろう?」
思い出しているうちに沸々と憎悪が沸き上がってきたのか、スカリエッティがそんな疑問を口にする。
デラックスフェイトに前フリはない。最初からクライマックスだ。
いつだって、戦闘開始直後にライオットザンバーで一撃必殺なのである。
「まぁ、必殺技を遅く出す他のヒーローの方が不思議なのですが」
「しかしだね……あまりにも見せ場がないと言うか、少し卑怯なのではないか?
 いつもすぐにプラズマザンバーブレイカーで、少し根気が足りないと思うのだが」
「きっと末っ子なのでしょう」
まぁ、あながち間違いではない。
「それにしても、こちらはその度に一から資金を調達し、秘密兵器を造り直して、メンバーを訓練して、
 モチベーションを高め、聖王教会で戦勝祈願して、満を持してやっているというのに。もう少し敬意を表してもらいたいものだ」
「そうですね……」
世界征服の苦労をつらつらと語るスカリエッティ。
だだっ広くはあるものの、安部屋には変わりないアパートの薄汚れた壁に、どこか哀愁が漂っていた。
「ハッハッハー、今日もお前達の作戦は失敗だ!」
と、そこに若い女性の声が響く。
今までに何度となく聞いてきた、思い出すのも忌々しい仇敵の声だ。
「むぅぅ、まさかその声は!?」
そう、その声の主こそ――
「そうだ、デラックスフェイトだー!」
かの管理局の若きヒーローだった。
着込んだ服装は全身黒ずくめ。頭から伸びた金髪のツインテールが、眩しく輝いている。
魔導師の象徴たるバリアジャケットは、ノースリーブの上着にショートスパッツも同然の下半身という、かなりの露出度の服装。
遠目に見れば、スクール水着やレオタードにも見えるような、一種扇情的な衣装だった。
おまけに頭にはフルフェイスの仮面で、更に真紅のマントを羽織っているというのだから、何というか、もう救いようがない。
「むぅ〜デラックスフェイト、どこから入ってきた!?」
「玄関からだ」
「ウーノ君! また玄関の鍵を閉め忘れたな!」
「うっかりしていました」
かくして竜の爪団は、なんとも間抜けな理由でデラックスフェイトのアジトへの侵入を許してしまった。
ところで、一体彼女はどうやってこの場所を突き止めたのだろう。
悪の秘密結社のアジトというからには、それなりに見つかりにくいはずだというのに。
「というわけで……」
デラックスフェイトが、手にした漆黒のデバイスを構えた。
排出される空薬莢。魔力カートリッジ・ロード。自慢のインテリジェントデバイス「バルディッシュ・アサルト」が変形。
あらゆるバトルシーンの過程をぶっ飛ばし、リミットブレイク形態・ライオットフォームの黄金の刃が顕現する。
一撃必殺がモットー、デラックスフェイト。悪には前フリも容赦も我慢も必要なし。
極大の魔力の込められた凶刃が、無慈悲にも振り下ろされようとしていた。
「ライオットザン――」

440 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/01(日) 11:34:28 ID:CfQVnSPb
「ままま、待て!」
いきなり繰り出された必殺技を、スカリエッティが思いっきり焦りながら制止した。
両手を前面に突き出し、冷や汗をだらだらと流しながら懇願する。何というか、必死だ。
「毎回毎回すぐライオットザンバーばかりでは、我々の面子が立たない! ここはもう少し、もう少し時間をくれ!」
「やだ」
即答。
まぁ、そりゃそうだ。
「ライオッ――」
「そそそそこを頼むよ!」
正義のヒーローに本気で命乞いをする悪の総統。
テレビで放送されている特撮ヒーロー番組などでは、到底見られないような光景だった。
最も、こんな展開が地上波で流れるとなれば、それはそれで困ったことになってしまうのだが。
「戦闘準備が整うまでの5分! 5分でいいんだ!」
そう、そもそも竜の爪団側は訓練の真っ最中で、いきなり戦闘しろと言われても正直困るような状況なのだ。
おまけに聖王のゆりかごもまだ電源を入れていない。
このままでは彼らが10年の歳月を費やした秘密兵器は、日の目を見ることなく叩き潰されてしまう。
しかし、デラックスフェイトにとっちゃ、そんなの知ったことねぇ。
「ライ――」
「いやいやいやいやじゃじゃじゃあこうしよう! 10万円やろう! 10万円やる!
 そして今日は我らはとりあえず帰る! 今日は帰るから! これでどうだ!」
普通に説得しては無理だと判断したのか、とうとうスカリエッティは示談金交渉に持ち込み始めた。
おまけに今日は何も悪事はしないという条件までつけている。
しかし帰るも何も、ここが彼らの本拠地なのだが。提示した金額も日本円である辺り、相当テンパっているのだろう。
「10万……10万……」
「ちゃんと日本円だ。頼むよ」
デラックスフェイトはデラックスフェイトで、何だか本気で考えこんでやがった。
一拍の間を置いて思案した後、
「r――」
「うわ待て待て待て待て待て待て!」
またも止められるも、10万円の交渉は拒絶したデラックスフェイト。
金を出されたからといって、やっぱり正義のヒーローは悪を見逃したりはしないのである。
「それじゃプラズマテレビ! プラズマつけてハワイ旅行もつける!
 そして我々は今週は休む! 今週いっぱい休むからそれで何とか……」
もはやテレフォンショッピングか何かのように、たっぷりおまけを後付けして交渉を進める。
プラズマテレビにハワイ旅行とは言ったが、正直こんな安アパートに住んでいる秘密結社に用意できるのだろうか。
とはいえ彼らも一端の秘密結社。その気になれば用意できるのだろうと思っておこう。
「ワイハ……ワイハ、プラズマ……プラズマワイハ……う〜ん……」
「ちゃんとミッド製だ。32型だよ」
前言撤回。このヒーロー、今にも見逃す気満々といった様子で悩んでやがる。
というかさっきの決裂も見返りが足りかなかったからじゃないのか。この物欲の塊の畜生以下め。
「……今週いっぱい休むの?」
「今週いっぱい休む。来週は月曜の5時から」
「来週どうすんの?」
「そりゃまた来週考えるから……」
もはや正義のヒーロー・デラックスフェイトは陥落寸前。相手の交渉を呑む一歩手前といった様子である。
よくもまぁ今までミッドは、こんなヒーローに防衛を任せて大丈夫だったものだ。
ともあれ、これで竜の爪団の交渉もあと一歩。このままもう少し引っ張れば、首の皮一枚で繋がるといった状況だったのだが、
「小泉チルドレン風の紳士用カツラを差し上げますから」
ウーノの提示したガラクタがぶち壊しにした。
「――ライオットザンバー!!!」

441 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/01(日) 11:35:40 ID:CfQVnSPb
本日午前10時頃、秘密結社竜の爪団のアジトは、侵入したデラックスフェイトによって陥落した。
この知らせを受けた各管理世界の首脳は彼女に賛辞の言葉を述べ、近々管理局でもデラックスフェイトを表彰するという話が上がっている。
しかし、竜の爪団の総統・スカリエッティと一部の構成員の消息は、以前として確認されていない。

それもそのはず。

ジェイル・スカリエッティは生きていたからだ!

「しかしひどくやられたものだなぁ……」
室内を見渡して、スカリエッティはため息混じりに呟いた。
アパートの一室は、デラックスフェイトの必殺技によってことごとく荒らされてしまっていたのだ。
当然、バリアも張っていないゆりかごは無惨に壊され、内装も原型を留めているものの方が少ない。
あちこちには瓦礫が散乱し、とてもじゃないが、生活できるような環境ではなくなっていた。
「もう、誰もいないのかな……?」
おまけに戦闘員達の姿もない。
何せライオットザンバーの爆発で吹っ飛ばされ――た後も生きていたには生きていたのだが、
ショックのあまり世界征服の野望を捨て去り、みんなそろって涙を飲んで実家に帰ってしまったのだ。
微妙に広い廃墟の中には、もはやスカリエッティの姿しかなかった。
と、そこへ彼の元へと歩み寄る人影が1人。
「……ん? おおお、ディエチ! 無事だったのか!」
「どうも」
ウーノと同じ戦闘機人で、竜の爪団の中でも最古参メンバーに当たる少女・ディエチである。
少々引っ込み思案なところが玉にキズで、今もイマイチ影が薄かったことから、スカリエッティも気付くのが遅れたのだ。
長い栗色の髪を黄色いリボンで縛っており、あたかも動物の尻尾のようになっている。
身に付けているのは、青色や灰色系統で固められたボディコンスーツだ。
「無事で何よりだよ。ところで、ウーノ君は?」
「さぁ……」
「むぅぅ……ウーノ君は一体どこに行ったんだ。捜すぞ!」
こうしてスカリエッティの一声により、2人はまだ見ぬウーノの捜索に乗り出した。
瓦礫をひっくり返し、家財道具の破片をひっくり返し、名前を呼びながら捜して回る。
程なくして、スカリエッティが彼女の姿を発見した。
「ウーノ君! ウーノ君! しっかりするんだ!」
ウーノは床に力なく倒れている。意識を失っているようで、ぴくりとも動く気配がない。
スカリエッティは声をかけ、頬に軽く手を当て、その覚醒を促した。
「うぅ……貴方のために歌うことが、こんなにもつらいことだなんて……」
口を突いたのは、寝言。
「ウーノ君寝ぼけるんじゃない! 目を覚ますんだ!」
「ん……」
細い呻き声。長いまつ毛をたくわえた瞼が、微かに震えた。
ゆっくりとその美しい瞳が開かれ、スカリエッティの姿を確認する。セクシーな動作で髪を正しながら、その上体を起こした。
「ああ、ドクター……夜中を過ぎたら子供たちに甘いものを与えては駄目だと、約束したではないですか」
「ウーノ君、一体どんな夢を見ていたのだね」
半ば呆れながらスカリエッティが言う。
さっきの寝言でさえもわけが分からないものだったというのに、一体今の約束というものとそれとは、どんな関連性を持っていたというのだろう。
とはいえ、そんなどうでもいいことを延々と話しているわけではない。
周囲へ視線を促しながら、スカリエッティは言葉を続けた。
「それより見たまえ、秘密基地がやられてしまったのだよ」
「あ、本当ですね」
「まったくひどい有様だよ。一瞬にしてこれだ……他の仲間たちもすっかりいなくなってしまったし、残るは我々だけだよ」
心底落胆したようにスカリエッティが言った。
「もうこれでは、組織も終わりなのでしょうか……」
ウーノもまた、その美麗な顔を悲しみに曇らせて、力なく呟く。
しかし、無限の欲望は決して妥協しない。愚痴は愚痴、行動は行動だ。
弱音を吐くことこそすれども、彼は諦めることはしなかった。
「何を言うのだね! まだ終わってはいない!」

442 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/01(日) 11:36:52 ID:CfQVnSPb
「また復活するのですか?」
力強いスカリエッティの言葉に当てられたように、徐々にウーノの顔に生気が戻っていく。
背後で話を聞いていたディエチもまた、同様にその顔色を明るくしていった。
「そうだともウーノ君! 組織を刷新し、私にとどめを刺さなかったことを、デラックスフェイトに後悔させてやるのさ!」
「執念深いですね、ドクター」
「人数は問題ではない。要は世界を征服してやるという熱意……この熱意さえあれば、どんな敵でも打ち負かせられるのだよ!」
残忍な笑みに口を歪ませ、狂気を孕んだ熱意に瞳を見開き、スカリエッティは興奮気味に叫ぶ。
主張の正当性を裏付ける論理など一切なしの、完全なる感情論。
しかし、その顔芸の凄みもあってか、それはどんな理論をも凌駕するだけの説得力を内包していた。
「さすがです、ドクター。目の覚めるような発想です」
そしてその言葉は、彼に忠誠を誓うウーノを奮い立たせるのには十分だった。
「そこでだウーノ君。組織を刷新するに当たって、いっそ名前も変えようと思うのだが……何かいいアイデアはないかね?」
何の脈絡もなく、話はいきなり事務的な話題に移る。
狂気に当てられたかのようなスカリエッティの様相は一瞬にして引っこみ、いつものどこかすましたような表情へと戻った。
そしてその声もまた冷静さを取り戻し、先ほどまでの興奮などまるでなかったように振る舞う。
「前回が竜の爪団でしたから、『爪』という言葉は残すべきかと思われます」
その温度差に即座に対応できるウーノもウーノだとは思う。
やはりこの冷静さ、ただのアホというわけではなかったようだ。でなければ、組織の実質ナンバー2など務まるはずもなかった。
「うむ、そうだね……インパクトがあって新鮮で、皆が覚えやすい名前がいいだろう」
「新鮮……『生爪』というのはいかがでしょう?」
再び前言撤回。コイツやっぱりただのアホだ。
背後のディエチもあまりにあまりなネーミングに、すっかり呆れたような表情を浮かべる。
「ウーノ君、『生』とつけば何でも新鮮だと思ったら大間違いなのだよ」
スカリエッティもまた、同様の反応で返した。
「皆がドキッとするような名前でなくてはね」
「ドキッとする名前ですか……」
ウーノはまたも考え込む。今度こそまともなネーミングならばよかったのだが……
「『OLの爪』などというのはいかがでしょう?」
期待したのが馬鹿だった。
「んんっ、なかなか想像を掻き立てられるね! いいぞ!」
しかし、スカリエッティからはまさかの好印象。
やはり人造人間の科学者といえど男は男、沸き立つ劣情には敵わなかったということなのだろうか。
そこへ更に畳み掛けるように、ウーノのコンビネーションが襲い掛かる。
「『ナースの爪』」
「おお!」
「『未亡人の爪』」
「おおお!」
「『幼妻の爪』」
「うおおお! いいぞ! その『幼妻の爪』が特に気に入った!」
「そうですか。光栄です」
哀れ、遂に名前は決まってしまった。
「よし、今日から我々は、『幼妻の爪団』だあぁぁぁぁーっ!」
高らかにスカリエッティがその名を叫ぶ。
かつての悪の秘密結社・竜の爪団は、今まさに「幼妻の爪団」というなんとも情けない名前になってしまったのだった。
めでたし、めでたくもなし。ギャフン。

443 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/01(日) 11:37:59 ID:CfQVnSPb
「……ったわけがー!!!」
ここでまさかのノリツッコミ。
彼にもまだ最後の理性はあったらしい。ともかくも、こうして旧竜の爪団は、間抜けな名前から無事に逃れることができた。
「よくよく考えてみれば、世界征服と幼妻は、何ら関係ないではないかウーノ君!」
あわやそちらへとぐらつきかけたことは忘却の彼方、スカリエッティは烈火のごとくウーノを叱りつける。
確かに元の「竜」ならば、世界征服を実行できるだけの力の象徴としては間違ったネーミングではないのだが、
「幼妻」と世界征服に、一体何の関係があるのだろう。ただ幼いだけじゃないか。これではただのロリコンだ。
……いや、このリリカルなのは世界には、確かに強力な幼女主人公がいたにはいたのだが、
それだって今は今で19歳といういい歳なので、今回は考慮しないことにする。
というか、主人公というからにはそれは正義の味方じゃないか。そもそも悪の秘密結社とは相容れない存在だった。
「あ、本当でした」
今更気付いたように手で口を押さえるウーノ。やはりアホだ、この女。
「ううむ、何かいい名前はないものだろうか?」
「そうですね……」
再びネーミング問題は白紙に戻った。スカリエッティは唸りを上げて考え込む。
考えてみてはみるものの、竜の爪という名前にしたってそれなりに苦悩した末に思いついた名前なのだ。
そう簡単にそれに匹敵するような立派な名前など、思いつくはずもない。
と、ここで何かに気付いたウーノが、おもむろに背後へと向き直った。
その視線の先には――忘れられていたかと思われた少女・ディエチ。
「そうだ、ディエチ。貴方も考えなさい」
「ええ!?」
ここでまさか話題を振られるとは思わなかっただけに、思わず大きな声が上がる。
「そうだよディエチ。引っ込み思案はよくないよ。
 こういう時こそ積極的な発言をしないから、いつも影が薄いんじゃないか。ほら、何か言ってみなさい」
スカリエッティも一緒になり、ディエチへと意見を求めた。
そして当のディエチは、すっかり困った様子でうんうんと唸りだす。
そんなことを言われても、今まで本当に何も考えていなかったのだ。いきなり話を振られても、それはそれで困るというもの。
しかし何か言わなければ、周囲の空気を悪くしてしまう。
ディエチは必死になって考えた。
何か悪の組織に相応しい名前はないものか。相応しい名前、相応しい名前……
「……えっと……『悪魔の爪』、とか」
とりあえず、頭に浮かんだフレーズを口にしてみた。
「「悪魔の爪?」」
同時に口を開くスカリエッティとウーノ。2人に衝撃が走る。
確かに悪魔の爪というのはそれなりにそれらしいネーミングだ。これまでのおふざけ半分のものよりも遥かにマシである。
このままこれで決まりかと思いきや、
「何だかなー……とりあえずらしい言葉をつけてみました感が見えみえで、かえって寒々しいネーミングだなぁ」
「そんな安易なネーミングを採用するわけないのに、何なのでしょうね」
どうやらお気に召さなかったらしい。
まさかの冷たいリアクションに、ディエチの顔にも驚愕の色が浮かぶ。
「少し痛いと言うべきでしょうか。この期に及んで『悪魔』ですよ? 白い悪魔じゃあるまいし」
「やっぱり駄目な子は駄目だということがハッキリしたね。我々で考えるとしよう」
「そうですね」
人知れず涙を流したディエチだった。

444 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/01(日) 11:39:09 ID:CfQVnSPb
「うーん……やっぱり『生爪』がいいのかな?」
顎に手を当てて首をひねりながら、スカリエッティが言う。
何だかんだいって、今までに生爪団以外に条件を満たす意見は出ていない。
確かにそんなとんでもない名前なのだからインパクトはあるだろうし、ある意味では新鮮で、おまけに覚えやすい。
悪の組織らしいかはさておき、ドキッとするような名前でもある。
少々間抜けなネーミングであるのが玉にキズだが、これだって「OLの爪」だとか「幼妻の爪」だとかよりはマシなのだ。
「たかが爪のネーミングなのですがね……」
ぽつり、と呟いたウーノの言葉。
彼女からすれば、特に意識したというわけでもなく、それこそごくごく自然に口を突いた言葉なのだろう。
しかし、「違法研究に手を出していなければ間違いなく天才科学者」と謳われたスカリエッティは、それを聞き逃すことはなかった。
そこに込められた、ある重大なヒントに。
「ウーノ君、今何て言ったんだい?」
落雷のごときひらめきが、彼の頭脳を一瞬にして駆け巡る。
はっとしたような表情で、スカリエッティが問いかけた。
「はい? 何でしょうか」
「今何と言ったのだね」
「『今夜は右脳で抱きしめて』と言いました」
「こらこらこら! そんなこと言っていないだろう!」
慌てて訂正するスカリエッティ。
今はそんなおふざけをしている場合ではない。せっかく脳裏にひらめいたビジョンが消えてしまう前に、確認しなければならないのだ。
「すいません、徹夜で意識が朦朧としていまして……確か、『たかが爪のネーミング』と言いましたが」
「それだ! 『たか』だよ! 『鷹の爪』というのはどうだね?」
「『鷹の爪』……!」
ぱぁっと目の前が開けたような感触。差し込んでくる光明を、ウーノは確かに感じていた。
確かに、偶然出てきた割にはこのネーミングは凄い。
獰猛な猛禽類の鋭い爪で、この次元世界を丸ごと鷲掴み――いや、「鷹掴み」にする、秘密結社鷹の爪団。
どことなく立ちこめる、悪の組織らしい危険な香り。まさにぴったりの名前ではないか。
「そうですね。素敵です」
拒否するわけなどない。ウーノは新たな名前を賞賛した。
しかし、この「鷹の爪」というネーミングにも、ある1つの問題があったのである。
それに唯一気付いていたディエチは、呆れたような困ったような、そんな複雑な表情で呟いていた。
「『鷹の爪』って……それ、唐辛子じゃ……」
先が尖っており、紡錘系に曲がった小さめの実。辛い種子を持っていて、熟して食べ頃になると緑から赤に変色する。
一味唐辛子という香辛料の原料にもなっている、日本や中国・韓国では一般的な――唐辛子の品種の名前。
それが鷹の爪だった。
先ほどまでの極悪ムードはどこへやら、意味を知ると途端に不安になってくる。これで本当に大丈夫なのだろうか。
「ですがドクター、せっかく発音が近いのですから、ドクターの名にあやかって『スカの爪』というのはどうでしょう?」
「おおお! 私の名前か! いいね、実にいい!」
結果オーライで名前変更。しかし、さっきの名前よりもダサくなってしまったのではなかろうか。
そんなディエチの苦悩など知る由もなく、スカリエッティ達はもう組織の決めポーズまで考えている。
「スゥ〜カァ〜のぉ〜つぅ〜めぇ〜」
名前の原点となった鷹のカギ爪のように開いた腕を、わしゃわしゃと上下させるポージングだ。
そりゃまぁ古き善き特撮番組の悪の秘密結社を彷彿とさせるような、ダサ恐ろしいポーズではあるのだけれども。
「しかしドクター。名前を変えるのならば、もっと他に変えてもよろしいのではないでしょうか?」
「そうだね。コスチュームもこのままでは、前回の組織とは一緒だからね……いっそのこと、額に『爪』とでも書くかな?」
「成る程。それならば、見た目にも新しい感じがしますね」
スカリエッティ達はどんどん話を進めていった。
元々の竜の爪団のコスチュームは、特に模様があったわけでもないシンプルなもの。デザインを付け加えても何ら問題にはならない。
「ディエチ、こちらに来なさい」
「へ?」
急にウーノが振り返り、ディエチを呼ぶ。
先ほどまで思いっきり無視していたのにいきなり呼ぶのだから、思わず間抜けな声を上げてしまった。
怪訝そうな表情を浮かべながらも、条件反射的にそちらへと歩み寄っていく。
しかし、ここで気付くべきだった。ウーノの手に握られていたのは――マジックペン。
「額に書いてあげるわ」

445 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/01(日) 11:40:16 ID:CfQVnSPb
「え? ちょ、ちょっと待ってウーノ姉……」
突然の「額に書いてやる」宣言。
読者の皆様も一度は体験したであろう、額に「肉」と書かれるあの懐かしい嫌がらせ。事実上の死刑宣告だ。
今それに近い魔の手が、ディエチの額に迫ろうとしていた。
当然抗する術もなく、電光石火の早業で身体をがっしりとホールドされる。
「ちょっ……や、あ……やめ……あん……っ……く、ぅ……アアアッー!」
何やら艶かしい声を上げながら身をよじって抵抗するも、もはや後の祭りだった。
あっという間にディエチの額をペンがなぞり、見事な「瓜」の漢字一文字が刻み込まれる。
………………………、「瓜」?
「どうでしょうか、ドクター?」
「素晴らしいよウーノ君!」
「……これ、『うり』じゃあ……」
そう、「うり」だ。この「瓜」という漢字の読み方は、間違いなく「うり」である。
間違っても「つめ」ではない。「つめ」とはそもそも前述通り「爪」と書く。よくある典型的な誤字だ。
ただでさえとんでもない羞恥プレイを受けているというのに、その字まで間違いというのは一体どういう仕打ちなのだろう。
もう泣きたくなってきたディエチだった。
「よし、諸君! 今日この日が、我々『秘密結社スカの爪団』の――始まりだ!」
ともあれ、これで全ての準備は完了した。
心機一転し、新しい組織名も決定し、決めポーズやコスチュームも決定した。
デラックスフェイトに叩きのめされたこの日こそが、新生竜の爪団――すなわち「スカの爪団」の始まりの時。
白衣に袖を通した腕を思いっきり広げて、スカリエッティは高らかにその名を宣言する。
その顔に盛大な愉悦を浮かべ、常軌を逸した凄まじい笑顔を形作って。
黄金の瞳を見開き、紫の長髪を振り回し、無限の欲望は新たなる野望の名前を叫んだ。



かくして、世界征服を目論むベンチャー秘密結社「スカの爪団」は、今日このミッドのアパートの一室で誕生した。
世界中の人々が、総統ドクター・スカリエッティの生命技術で明るく笑える平和な時代を目指すために、
「人に優しく地球に優しい世界征服」をモットーに、スカの爪団は躍進し続ける。
頑張れ、スカの爪団! 頑張れ、スカリエッティ! くじけるな、ディエチ!
変態衣装の俗物ヒーロー・デラックスフェイトにはくれぐれも気を付けろ!



「「スゥ〜カァ〜のぉ〜つぅ〜めぇ〜」」



to be continued...

446 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/01(日) 11:41:22 ID:CfQVnSPb
投下終了。クロス元は蛙男商会制作のFLASHアニメ「秘密結社鷹の爪」でした。
元々の「鷹の爪」もこんな狂った内容だヨ!
なんかもう、スイマセンでした! 勘弁してください、上司から言われたんです!(ぉ

本当はもうちょい色々な話を盛り込みたかったのですが、やたら容量を食ってしまったので1話だけ。10分アニメ恐るべし……
ほとんど短期連載みたいな形で、ちゃんと続きもあるのですが、
ただ単に「鷹の爪」の登場人物をStSのキャラに置き換えただけなので、一応単発ネタに保管ということに。
ううむ、やっぱりアレの魅力を文章媒体で表現するのは難しい……

というわけで次回も、スーカーのーつーめー

447 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 11:51:30 ID:neVqUNey
支援

448 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 12:38:01 ID:6LpcNhlI
GJ!
鷹の爪は総統がほんっとうにかっこいいですよね。十話だけ。
元ネタから大好きなので期待してます。

449 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/01(日) 12:38:14 ID:P3FHL+15
お久しぶりです。
存在忘れ去られているかもしれないけど
リリカルなのはARC THE LAD二話できたので投下したいんですが、
今大丈夫でしょうか?

450 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 12:45:00 ID:tyfZ8Uk/
久々に支援する

451 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 12:45:26 ID:Mudlcff8
Yes

452 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/01(日) 12:47:25 ID:P3FHL+15
大丈夫かな?
それでは投下します。
長いので前編後編に分けてます。
あと勝手な設定とか多いのでその辺ご容赦を。

453 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/01(日) 12:48:59 ID:P3FHL+15
 
ロリコンとは何か?
 
辞書的な意味ではロリコンとは、幼女や少女に対して抱く男性の性的嗜好、もしくはそういった性癖を持つ人物の事を意味する。
おそらくこの少女の求める答えはこういった明確な意味の回答なのだろうが、果たしてこの事を告げるのはなんとも憚られた。
というより………、
(なぜそのような事を聞いてくる? 一体何があったんだ?)
思考の海にいくら沈もうと答えは出ないし、もちろん状況を打破する事もできない。
窓の外に見える夕日は、そんな彼の姿を嘲笑うかのように悠々と沈んでいった。
 
 
リリカルなのはARC THE LAD
『第二話:ミッドチルダの車窓から(前編)』
 
 
「なかなか見つからねぇな………」
 
情報端末を操作しながらエルクはつぶやいた。
場所は自分のアパートの一室。
窓からは朝日が差し込み手元には自分で淹れたコーヒー。
一見清々しい朝の風景のようだが、当の本人は大分疲れた様子である。
普段は勢いよく立ち上がっている髪も、心なしか幾分萎びている様であった。
その原因は昨日受けた依頼にあった。
今エルクは二つの依頼を受けている。
その内の一つであるお届け物、その届け先のティアナ・ランスターの情報を得ようとしているのだがなかなかうまくいかない。
 
「もっと詳しく言ってくれよな………」
 
生憎会話する時間が少なすぎて分かるのは唯一名前のみ。
一応依頼者であるティーダと呼ばれていた男から、取り上げたまま持ち帰ってしまったデバイスが有るには有るが、知性型ではなかったため専門の機材がないと情報を得られない。
そのため悪いと思ったが依頼品の手帳の内容を見て、おそらくティーダと兄妹の関係にあるであろうと判断し今検索しているのだが、普段使い慣れていないエルクには大変な重労働であった。
というのも、複数の次元世界の情報の集積地であるミッドチルダの電子の海は途方もなく広大であり、まるで砂漠に落ちた針を探すような徒労感ばかり募ってゆくからだ。
こういった類のものは専門の情報屋に頼るのが一番であるが、荒事専門であったエルクにそんな知り合いは殆どいない。
(シュウならこういうのに詳しいんだが、今はもう一つ依頼があるからなぁ………)
どうしたものかと悩ませていると、不意に部屋のドアの開く音がした。
 
「あの………、おはようございます」
「キュクルー」
 
現れたのはエルクの受けているそのもう一つの依頼の依頼主である桃色の髪の少女と銀の幼竜。
依頼内容は彼女達の保護である。
 
「ああ、おはよう。えっと………キャロだったっけ? 起きてすぐに悪いんだが詳しい話を聞かせてくれないか?」
 
昨夜空港で軽く話を聞いた際にエルクが知った事は、彼女達の名前と管理局に無理やり連れ去られたという事。
この時点で先程の黒服達の話を思い出したエルクは、彼女の依頼を受けてとりあえず自宅に保護したわけだが、事の詳細を聞く前に気が抜けたのか彼女らは寝入ってしまったのだった。
 
「詳しい話ですか? 何を言えばいいんでしょう?」
「どうしてさらわれたのか、その経緯を教えてくれないか?」
「経緯、ですか………」
 
エルクの言葉を受けると、少し顔を俯かせながらキャロはポツリポツリと言葉を紡いでいった。
まるで思考を過去へと遡らせるように、世界が変わった、そのときの事を。

454 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/01(日) 12:50:01 ID:P3FHL+15
   ◆
 
第6管理世界、その一地域であるアルザス、ここでは古くから竜が神として祭られてきた地だ。
その信仰の恩恵なのか力があるから信仰していたのかは定かではないが、この地では竜を呼び出し使役する「竜使役」という力を持つ者が少なからず存在している。
少数民族「ル・ルシエ」、その中に生まれたキャロもまた、特殊な力が使えるという事を除いては他と全く変わらない普通の子供であった。
ただし、その力は自身が持て余すほどに強大で、あまりにも暴力的であった。
他とは一線を画す力を周囲の人間は、黒き竜の力、災いを呼ぶ力として恐れ拒絶した。
伝統や慣習に縛られ、柔軟な発想のできない彼らには、キャロを受け入れるだけの心のゆとりなど存在しなかったのである。
しかし、唯一祖父だけは神に近い巫女たる力だと庇ってくれていた。
そのおかげもありキャロは祖父ヨーゼフの庇護の下、他者の思惑に触れることなく健やかに育っていった。
だが永遠のものなどなく、祖父により守られてきた平穏はやがて、ある日突然終わりを告げる。
 
 
その日はいつに無い快晴であり、吹き付ける涼やかな風に、キャロは今日もきっといつもと同じ穏やかな一日が過ごせると思っていた。
肩には自分で孵した竜フリードリヒを乗せ、祖父の洗濯の手伝いをしていた時、不意に空が陰ってきた。
不思議に思い見上げた空、そこには天を覆うようにして浮かぶ鋭利な形状をした巨大な無機物。
キャロは今までこのような存在を見たことは無かったが、何か良くないものが来たような気がしてならなかった。
 
「キャロ、中に入ろう、何か嫌な予感がする」
 
祖父もキャロと同じ気持ちだったのだろうか、キャロに呼びかけると隠れるように家の中へと入っていった。
そして、それからしばらくしてのことである。
 
「お邪魔するよ」
 
声のした方を向くと、そこに居たのは入り口に立つ長老と、見慣れぬ幾人かの黒服の男達。
 
「長老、いったいどうしたのじゃ?」
「………この娘です」
 
祖父の問い掛けには答えず、長老は黒服達をキャロの方へと促した。
男達は無言で家に入ってくるとキャロの周りに機材を並べ始める。
 
「なんじゃ、お前達は、何を………?」
 
詰め寄ろうとする祖父を長老は手で制した。
 
「二人だ。この数が何を意味するか分かるか?」
「何の話を?」
「ヨーゼフよ、彼ら異郷の者達は竜使役の力を求めている。もう二人連れて行かれた、これ以上長老として我が民の犠牲は出せん」
「長老、まさか………」
「一番力の強いキャロを差し出せば、もう我らに構うことも無いだろう」
「まさかそんな理由でキャロを売ったのか? あれだけ虐げておきながら犠牲になれと!?」
 
瞬く間に次々と積み上げられていく機材に、やがてキャロの姿が見えないほどになった。
 
「おおー! こ、これはすごい。ここを見てください。この少女の能力は未開発ながら、こんなに高い数値を示しています。全く素晴らしい………、使えますよこいつは」
「待て、この子に何をするつもりだ!?」
「じじい、邪魔するな!」

455 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/01(日) 12:51:15 ID:P3FHL+15
祖父は長老の制止を振り切り歩み寄るが、それは黒服に突き飛ばされ叶わなかった。
 
「おじいちゃん!」
 
キャロは悲痛な声を上げ近寄ろうとするも、黒服に抑えられて動けない。
黒服の一人は祖父に近寄ると、上から見下すように冷酷に告げた。
 
「何をするかだと? ふん、貴様には分らないだろうが言ってやろう。こいつは管理局の兵士として新しき人類となるのだ。このガキも恒久の平和の礎となれば本望だろうよ」
「おじいちゃん! おじいちゃん!」
「グルルルル!」
 
キャロはなおも祖父に駆け寄ろうとし、そんな彼女の不安な心を反映してかフリードは黒服の一人に飛び掛る。
しかし………、
 
「勝手に動くな」
 
黒服がつぶやくと同時、突然現れた光の輪のようなものに共に拘束されると、一切の身動きが取れなくなった。
そしてそのまま追い立てられるように、キャロ達は家の外に連れ出される。
非難の声を上げようとした時、キャロはふと横に居並ぶ人達に気付きそちらを見た、見てしまった。
道の脇に佇みじっとこちらを見てる大人たち、彼らのキャロを見る目は連れ去られる事に対する同情でも哀れみでもなく、――安堵である。
やっと余所者が消えてくれる、そんな様子で皆止めようともせず、連れ去られようとするキャロをただ眺めていた。
まるで他人事、連れ去られようとするキャロには何の関心も払いはしない。
その光景を見たくなくてキャロは目を閉じた。
だが、代わりに耳に入ってくる大人たちの囁きは、自分の想像を確信させるものでしかない。
このときになってようやくキャロは自分が嫌われた存在であり、部族の一員として認められていなかったのだと判った。
そしてそのまま、深い悲しみの中で住み慣れた村から連れ出されたのだった。
 
   ◆
 
「そうやって連れ出された後、いろんな研究所に移されて何度も検査を受けました。そして昨日、また別の施設に移されるために次元を超える船に乗せられて、空港に着いたら急に建物が揺れて………」
「その隙に逃げ出して俺と出会ったってわけか」
「はい。………村の外で優しくされたの初めてだったから、すごくうれしかったです」
 
痛々しい表情のキャロを見て、エルクは何とかしてやりたいと思う。
 
「じいさんの所へ帰りたいか?」
 
だが、その言葉にキャロはさらに表情を曇らせてしまった。
 
「………いえ。おじいちゃんに迷惑を掛けてしまいそうですから………」
「そうか………」
 
強大な力を持つというだけでキャロを忌避していた村である、その排斥は当然祖父にも向かっていただろう。
戻れば必ず迫害される、それ以前にそもそも村に再び受け入れるかも疑わしい。
それに逃げたとなれば、元の村に当然さらった連中の手は伸びる。
強引にさらうような奴等だ、庇えば何をしてもおかしくはない。
加えて、別世界の移動には必ず管理局の厳しい目が入るのが通例だ。
にもかかわらず奴等が検査を素通りしたという事は、管理局の名を騙る犯罪組織などではなく、管理局の裏の顔であると考えられる。
管理局に関する黒い噂は今まで幾つか聞いたことがあるが、所詮噂の粋を出ないものに過ぎないと思っていた。

456 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/01(日) 12:52:26 ID:P3FHL+15
しかしこうして本人から聞くと、それらの噂も事実ではないかと勘繰ってしまう。
表向きの正義と大義を盾にした、この非人道的な事がどれほど管理局の深くに組み込まれているかは判らない。
もちろん理念ある局員が殆どだとは思うが、やはり管理局との接触は出来る限り避けたい。
そのため管理局に頼み込むという、まっとうな方法では別次元には移動できなくなった。
となるとキャロを元の世界に帰す選択肢が選び難い今、これから彼女を安全に保護する方法はミッドチルダ内、それも管理局の影響の薄いところに行くしかないだろう。
だが、そういった場所は大抵治安が悪い廃棄都市か、そもそも住めないような極地である。
当然そんな所でキャロのような少女が暮らしていく事は極めて難しい。
 
「だったらキャロが安心して暮らすには、ギルドが幅を利かせている所に行くのがいいな」
「そんな所あるんですか?」
「ああ、俺の知り合いが居るインディゴスって所でな、少なくとも管理局にまた捕まる事はないと思うぜ」
 
エルクが知る限りで条件を満たす場所は、知人の住む町しかなかった。
そこも特別治安の良い所ではなかったが、ギルドが取り締まっている分いくらか安全である。
おまけに情報を得るのにも都合が良い、問題を一挙に解決できる方法だ。
 
「そんな所があるなら行ってみたいです」
「そうと決まればさっさと行こうぜ、早ければ早いほど追手は来難いだろうし」
 
そこで話を打ち切ると二人と一匹は支度を始める。
ただ目的地へと向かうだけ、簡単な旅となるはずだ。
 
   ◆
 
夜とは対照的に昼の大通りは活気に溢れている。
その通りの発端、行きかう人波の中心、それがレールウェイの駅である。
そこには凄まじい人だかりが出来ており、その中にはエルク達の姿もあった。
 
「凄い人数ですね。お祭りでもあるんですか?」
「休日ってのもあるが、昨日空港が焼けたせいだな」
 
エルクは切符を注文しつつキャロの質問に答える。
休日を利用して遊びに来ていた者は意外と多かったらしく、人の群れの中には旅行鞄を抱えた者が多数見られた。
 
「そういえばエルクさんの荷物はどこに行ったんですか? 色々用意してたみたいですけど」
 
エルクは服の上から暑苦しそうな外套を纏っているだけで、先刻まとめていた手荷物の類は見当たらなかった。
 
「服にいくつか収納スペースがあるんでそこに入れてるんだ」
 
動きやすいしな、と付け加えてエルクは改めて人波を見つめる。
異常な人数に、大変な時期に重なったものだと苦笑すると、キャロが迷わぬように注意しつつ駅へと進んでいった。
 

457 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 12:53:07 ID:tyfZ8Uk/
支援ッ

458 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/01(日) 12:53:58 ID:P3FHL+15
「………なんですか………コレ」
「キュゥ………」
 
エルク達が今居る駅のホーム、ソレは彼らの目の前に確固として鎮座していた。
大型輸送リニア『グラウノルン』。
古代の巨大列車と同じ名を冠すこのリニアは、その名に恥じぬ巨体に威厳を纏い、まるで見るもの全てを威圧しているようであった。
路線に対して不釣合いのサイズではあるが、そんな見た目の鈍重さとは裏腹に、最新の魔法技術とAI制御により、そこらのレールウェイ等より遥かに速い。
 
「こんな馬鹿でかいリニアは他に無いだろうから、驚くのもまあ無理ないな。とりあえず中に入っちまおうぜ」
 
おっかなびっくりなキャロの手を引きエルクは車内へと進む。
内部は当然のごとく広く、通路は二人並んでもまだ人とすれ違えるほどであり、両脇に並んだ個室と壁に施された質素な装飾は、照明と相成って柔らかで落ち着いた印象を受けた。
そんなホテルの様な車両の中ほど、そこにエルク達の座席があった。
部屋の前後には大きくゆったりとしたソファーが備え付けられており、中央に置かれたテーブルには鮮やかな装飾が成されている。
高級な席であることは一目で判るほどに明らかだった。
 
「あの………、エルクさん」
「なんだ? 腹でも減ったか?」
「いえ、そうじゃなくて………、まあ、確かにお腹は空きましたけど」
「じゃあなんか頼むか」
 
車内通信で食事の注文を始めてしまうエルクに対し、キャロは急いで訂正する。
 
「そうじゃなくて、こんな高そうな所でいいんですか?」
「ああ、その事か。今日は人が多かっただろ、そのせいでこういう席しか空いてなかったんだ。くつろげなかったらゴメンな」
「い、いえ! そんなことないですよ」
 
キャロが急いで否定するとほぼ同時、大きな音でベルが鳴り響く。
出発の合図だ。
 
   ◆
 
坦々と流れてゆく都市区画のビル群を横目に、エルクは先程運ばれてきた料理に手をつける。
だが正面に座るキャロは、何かを考え込む様にじっと皿を見つめていた。
横でフリードが物欲しそうにして肉料理を眺めているのだが、それも全く目に入っていないようである。
やがておずおずと顔を上げると、エルクの方を申し訳なさそうな顔で見上げた。
 
「どうして………ここまで良くしてくれるんですか? わたしは何のお返しも出来ないのに………」
「もしかして、さっきからずっと黙ってたのはその事を考えてたからか?」
 
エルクが手を止めてキャロの方を見ると、キャロはその通りだと言わんばかりにコクコクと頷いていた。
 
「んー、なんていうか俺も似たような境遇だったからかな」
「似たような境遇?」
「俺も六年前にシュウ―――これから行く所にいる人なんだが、そいつに拾われたんだ」
「エルクさんが………ですか」
「ああ。傷だらけで、昔の記憶全部無くしてて、シュウに出会ってなかったらのたれ死んでただろうな。だからもし自分と同じように行き場を失くした奴が居たら助けてやろうと思ってたんだ」
「そうですか………」

459 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/01(日) 12:55:26 ID:P3FHL+15
キャロは少し気兼ねしたようにしてエルクを見る。
 
「記憶無いんですか?」
「まあ、無くても生活に困らないからな。とりあえず冷めないうちに食事を終わらせようぜ!」
 
その場の気まずさを払拭すべく努めて明るく言うとエルクは食事を再開し、キャロもそれに習いようやく手をつける。
始終おとなしかったフリードはいつの間にか一皿勝手に平らげており、コロコロした玉のようになって満足そうに横になっていた。
しばらく黙々と食べ進め一段落したとき、思い出したかのようにキャロはエルクを見上げた。
 
「聞いてなかったんですけど、シュウさんって人もハンターなんですか?」
「ん? そうだぜ、俺にハンターの技術を教えてくれた人だ」
「ハンターってどういう仕事なんですか?」
「色々あるが俺がするのは大体荒事だな。指名手配犯の捕獲や依頼人の護衛、あとは最近急に増えてきた危険なモンスターの対処ってのもある」
 
エルクの答えにキャロは少し不思議そうな顔をする。
 
「モンスターって何ですか? 動物とは違うんですか?」
「モンスターってのは他時空からの外来生物、それも人間を襲う奴のことだ。魔法を使ってくる奴もいるから魔導師である俺達が処理するしかないんだ」
「処理って事は、やっぱり殺しちゃうんですか?」
 
少し悲しい顔をしてキャロが見つめる先には、幸せそうに寝転がるフリードの姿があった。
 
「………モンスターは次元移動なんて出来ないから、ミッドに居るのはペットや実験体として人間に連れてこられた奴らばかりさ。本来は被害者だが人間に危害を加える以上駆除するしかない」
 
すっかり暗くなった雰囲気にエルクは、話題を間違えたと今更ながらに思い顔をしかめた。
キャロは閉鎖された村に住んでいたというだけあり、何にでも関心を示し質問してくる。
話題に困らないのは良いが、どう答えてもキャロが喜んでいるようには思えなかった。
そもそもエルクはまだ一度もキャロが笑うのを見たことが無い。
感情の豊かなはずの年頃にもかかわらず、キャロの表情は老成しているかのように変化に乏しい。
ここまで感情を押し込めてしまうほどにキャロを傷つけてきた周囲への怒りで、エルクはなんとかしたいという思考は全て空回りしている様に感じるのだ。
楽しそうな話題を探してふと窓の外を見ると、車外の風景は画一的だった都市から無秩序に繁茂した緑の山々へと変わっていた。
 
「そうだ、ミッドの風景でも見てみないか? このリニアには確か展望台があったと思うし」
 
キャロがコクリと頷きフリードを抱きあげるのを見て、エルクも立ち上がり先導するように通路へと出た。
少しはこの雰囲気が払拭される事を望んで。
 
   ◆
 
エルク達がしばらく歩いて行き着いた先、行き止まりとなる扉には貨物室と表示されていた。
 
「道を間違えたか?」
「反対側じゃないんですか?」
 
ろくに案内も見ず進んだせいである。
引き返そうと思ったとき、エルクは何か違和感の様なものを覚えた。
 
「妙だな」
「どうしたんですか?」
「防犯用レーザーセンサーが切られてる。これじゃ盗んでくれって言ってる様なもんだ」

460 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/01(日) 12:56:31 ID:P3FHL+15
いぶかしみ扉に軽く触れると僅かに開いた。
それと同時に何かを漁る音、くぐもったうめき声が漏れ聞こえてくる。
明らかに変だという思いから、エルクは隙間から内部を覗き込んだ。
荷物の積まれた棚の並んだ先、そこに数人の人影が見える。
中央には警備員と思われる数人が縛られて転がされており、その周りで四人ほどの男達が荷物を漁っていた。
(どう見ても強盗だよな………)
ならば止めるべきとデバイスに手を伸ばしたが、急に強盗らしき男達の一人がこちらに向かって歩いてきたので、急いでキャロを連れて脇に隠れることにした。
入れ替わるようにのこのこと扉から出てきた男、エルクの中では既に強盗確定だが、その理由ぐらいは知っておくべきだと思う。
なぜなら、このリニアはかなり強力なセキュリティーを搭載している。
それを打ち破るにはそれなりの人員と機材が必要だった。
ただの物取りが狙うには割りに合わないのである。
エルクは極力気配と足音を消し、素早く滑るように男の面前へと飛び出す。
相手は驚いたような顔をしたが、もちろん声を出させるような隙など与えず、強烈なボディーブローを叩き込んだ。
抵抗するだけの気力を失った相手を暗がりに連れ込むと、後は極めて簡単である。
少しデバイスをちらつかせるだけで易々と口を割り、聞いてもいないのに全てを話す男。
そして………。
エルク達の今回の旅は簡単な物から一転して、厄介な事へと変わってしまった。

461 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 12:57:05 ID:tyfZ8Uk/
支援

462 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/01(日) 12:58:34 ID:P3FHL+15
前編投下完了です。
後編は明日に。

463 :一尉:2008/06/01(日) 15:09:34 ID:MhEEvhDR
では支援

464 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 17:50:19 ID:5n2PIN0v
>>462
GJ!!!
待ってましたよ、続きを
しかし、いきなりのオリジナル展開、がんばってください!!

465 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/06/01(日) 20:03:41 ID:C/KEoePr
こんばんは、お久しぶりです。
20:30から天元突破第10.5話(後編)の投下よろしいでしょうか?

466 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 20:24:11 ID:ppuNC84M
支援します。

467 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/06/01(日) 20:37:16 ID:C/KEoePr
そろそろ時間なので投下させて頂きます。

468 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/06/01(日) 20:38:11 ID:C/KEoePr
 閉鎖された戦場――リニアレール車両内に、嵐が吹き荒れていた。

「うおおおおおおおぉっ!!」

 青い髪の破壊神――スバルが雄叫びを上げながら敵陣の中心に飛び込み、車両を占領するガジェットの一体に掴み掛かった。
 コード状の触手をしっかりと掴まえ、スバルは捕獲したガジェットをハンマーのように振り回し、手近な敵に容赦なく叩きつける。
 咄嗟にAMFを展開するガジェットだが、高度な対魔法防御も原始的な物理攻撃には何の意味も無く、鈍器代わりに使用された仲間共々に破片を撒き散らしながら砕け散った。

「次っ!!」

 獰猛な光を瞳に宿し、スバルは次なる獲物へと魔の手を伸ばす。
 ローラーブーツを噴かし、背後から抱きつくように新たなガジェットを捕まえたスバルに、残りの敵が一斉に光線を放つ。
 降り注ぐ魔力弾の集中砲火にスバルは不敵な笑みを浮かべ、捕獲したガジェットを盾のように前方へ突き出した。
 迫り来る凶弾の雨を認識したガジェットは防御プログラムを作動、AMFを展開する。
 味方の展開したAMFに阻まれ、ガジェット達の攻撃はスバルに届くことはない。

「わはははは! 無駄無駄無駄ぁっ!!」

 敵の攻撃を敵の障壁で無効化しながら、スバルは勝ち誇ったように哄笑する。
 あらゆる魔法を打ち消すガジェットのAMF、敵に使われれば確かに厄介極まりない「壁」だが……自分で使う側に回ってしまえば、これ程便利な「盾」は無い。
 更にガジェット本体の強度やスバル自身の腕力も相まって、魔導師にとっての最悪の「敵」は、今やスバルにとっての最適な「武器」と化していた。

 敵の集中砲火が止んだ瞬間、今度はスバルが攻勢に回った。
 手元のガジェットを力任せに放り投げ、敵にぶつけて牽制する。
 敵が怯んだ隙に距離を詰め、術式を纏わせた拳で全力で殴りつける。

「リボルバーキャノン!!」

 咆哮と共に零距離から撃ち出された衝撃波が、ガジェット達を粉微塵に消し飛ばした。

「あたしを誰だと――へぶっ!?」

 高らかに勝ち名乗りを上げかけるスバルの背中に、ガジェットの放った光線が容赦なく突き刺さった。
 バリアジャケットのおかげで光線自体によるダメージは皆無であったが、着弾の衝撃スバルの身体は前のめりに倒れ込み、顔面を強かに床に打ちつけた。

「っつぅー……」

 痛む鼻頭に涙目になりながらスバルは上体を起こし、決め台詞を邪魔した無粋な敵を憤怒の表情で睨みつける。

「お前ら……」

 幽鬼のようにゆらりと立ち上がり、スバルは額に青筋を浮かべながら口を開いた。
 右手首のタービンが獲物を追う獣のように獰猛に唸りを上げ、全身から溢れ出る魔力が竜巻のように渦を巻き、荒れ狂う嵐となって車両内を吹き荒れる。

 ライトニング隊との合流というティアナの指示も、リニアレール奪還という自分達の任務そのものも、既にスバルの頭から消え失せていた。
 今の自分のやるべきことは唯一つ、空気の読めない馬鹿共の抹殺――今のスバルの思考回路は、その一点に支配されていた。

「――全員、極刑!!」

 スバルの怒号と共に空間が爆砕し、衝撃で車両天井が弾け飛ぶ。
 この瞬間、戦場は処刑場へとその名を変えた。

 リニアレール第五車両、戦闘続行中。




469 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/06/01(日) 20:39:23 ID:C/KEoePr
 
 
 リニアレール車両内を、一陣の風が駆け抜ける。

≪Sonic Move≫

 合成音声の無機質な呟きとほぼ同時に、車両中央に浮かぶガジェットが細切れに解体される。

≪Sonic Move≫

 再び響く合成音声と共に、振り下ろされた鋼の塊が車両後方を飛ぶガジェットが叩き潰し、更に返す刃でもう一体、敵がAMFを展開する前に一瞬で斬り捨てる。

≪Sonic Move≫

 三度紡がれる死刑宣告。
 次の瞬間、今度は車両前方のガジェットを、赤い髪の死神――エリオの槍が貫いていた。

 動きを止めたエリオをガジェット達が素早く取り囲み、一斉に光線を撃ち出した。

≪Sonic Move≫

 迫り来る光線の集中砲火に、エリオのデバイスが四度目の呟きを発する。
 次の瞬間、突如エリオの身体が霞のように掻き消えた。
 標的を見失った光線は直進を続け、その先に浮かぶ仲間の身体に無慈悲に突き刺さる。

 遅い、余りにも遅くて欠伸が出る……同士討ちして爆発するガジェット達を背中越しに一瞥し、エリオは軽やかな音を立てて床に着地した。
 鋭く正確なガジェットの光線攻撃だが、キャロの加速補助を二重に受け、しかも高速機動魔法を発動した今の自分の敵ではない。
 破片の散らばる床を蹴り、壁を、天井を、そしてまた床を……車両内を縦横無尽に駆け回り、エリオは踊るように生き残りのガジェット達を翻弄する。
 ガジェットがエリオを捕捉し、内蔵武器を起動する――その一瞬の隙に敵の懐に飛び込み、光線を放たれる前にデバイスを突き立てる。
 AMFを発動させるべく敵が動きを止めたその刹那、ガジェットの背後に回り込み槍を一閃させて斬り伏せる。
 魔法を無効化するガジェットのAMFも、鋭いが遅い敵の攻撃も、使われる前に倒してしまえば気にする必要は無い。


470 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/06/01(日) 20:40:12 ID:C/KEoePr
 圧倒的とも言えるエリオの猛攻を前に、生き残りのガジェット達は撤退を開始した。
 卵のような身体を反転させ、脱兎の如く逃げ出すガジェット達だが、しかしその必死な行動を嘲笑うかのように……、

≪Sonic Move≫

 ――敵を遥かに凌駕する神速の動きで正面に回りこんだエリオが、槍を携え立ち塞がる。

 更にエリオの隣にもう一人、桃色の髪の伏兵――キャロが姿を現した。

「錬鉄召喚、アルケミックチェーン!」

 キャロの呪文発動と共に床面に魔方陣が展開され、その中心から出現した無数の鎖がガジェット達を絡め取る。

「フリード」

 捕縛したガジェット達を油断なく見据え、キャロは傍らの相棒に呼びかけた。
 主の命令に応えるように、フリードが口の中から火球を生み出す。

 同時に隣のエリオも槍を構え、穂先に魔力を集束させる。

「ブラストレイ」

 キャロの号令と共に炎の弾丸が、

「ルフトメッサー」

 エリオの怒号と風の刃が、

「「――シュート!!」」

 撃ち放たれた。
 同時に撃ち出された炎と風の魔法は互いに干渉し、力を増幅させながら混ざり合い、最終的に巨大な火球となってガジェット達を飲み込んだ。
 まるで赤い絨毯を引いたように車両中が火の海に包まれ、防火装置の作動した天井から人工的な雨が降り注ぐ。
 スプリンクラーの水滴を全身に浴び、消えていく炎の海をどこか名残惜しそうに一瞥してから、エリオとキャロは互いの健闘を称え合うように笑いながらハイタッチを交わした。

 リニアレール第十車両、制圧完了。




471 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/06/01(日) 20:41:05 ID:C/KEoePr
 
 
「あの馬鹿共が……」

 各車両に設置された防犯カメラからリアルタイムで送られてくるスバル達の戦闘映像を横目に見遣り、ティアナは苛立ったように舌打ちした。

「馬鹿スバル! 遊んでないでとっとと先に進みなさい!! エリオにキャロ! 車両燃やしながらはしゃぐな!!」

 調子に乗る同僚達を通信回線越しに怒鳴りつけ、ティアナは続いてロングアーチへと通信を繋ぐ。

「スターズF、五両目で戦闘中。ライトニングF、十両目を奪還」

 自分は何をしているのだろう……列車の停止作業と並行して、いつの間にか現場管制の真似事をしている自分自身に呆れるように、ティアナは重い息を吐いた。
 管制など訓練生時代に軽い講義受けただけで演習すらも行った経験は無く、そもそも複数の作業を両立出来る程の処理能力は自分には無い。
 現に今自分は現場の状況報告と司令部からの指示伝達との中継に追われ、肝心の車両制御の方は中々進展していない。

 本来どちらかに集中するべき――否、現状を鑑みればどちらに集中するべきかは明らかなのだが、どちらとも中途半端に進んでしまっているので切り捨てるに捨てられない。
 結果どちらにも集中出来ないまま時間だけが浪費されていくという本末転倒な状況が続いているが、自分を変えようにもつまらない意地が邪魔をして中々一歩を踏み出せない。
 大体このような作業はリィン曹長の仕事だろうに……出撃の際に隊舎に残った上司に八つ当たりするように恨みの矛先を向けながら、ティアナは黙々と己の仕事を続ける。

 手元に展開したウィンドウ――緊急操作マニュアルを慎重に確認しながら、掲載された過程の一つ一つを丁寧に消化していく。

『ティア! 五両目のガジェットは全部潰したよ!!』
『ティアナさん、十両目の鎮火を確認したので次の車両に進みます』

 スバルとエリオからの報告を受け、制御パネルを操作しながら該当する車両の防犯カメラの映像を呼び出す。
 ……マニュアルを読み間違い、操作手順を一つ飛ばしてしまいエラー表示が出た。

「スバル、六両目のガジェットは五体。七両目の重要貨物室には敵はいないみたいだから、さっさと潰してとっととちび達と合流しなさい。
 エリオにキャロ、九両目の敵は九体、ちょっと数が多いけど気合いと根性で乗り切るのよ」

 操作をやり直しながらしながら現場のスバル達に通信を繋ぎ、激励の意味を込めて指示を出す。
 ……パスワードを打ち間違い、エラーの壁にぶつかった。

「スターズF、五両目を奪還。ライトニングF、九両目に突入」

 再度パスワードを入力し、ロングアーチにも状況を報告する。
 ……指が誤って削除キーに触れ、これまでの苦労が白紙に戻った。

 ティアナの中で、何かが切れた。

472 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 20:41:23 ID:5D4jomXn
支援

473 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/06/01(日) 20:42:06 ID:C/KEoePr
「だああああああああああああっ、もう! このポンコツ列車がああああああああっ!!」

 髪の毛を両手でかき回しながら絶叫し、ティアナは八つ当たりするように操作パネルに拳を叩きつけた。
 緊急操作マニュアルに羅列された二十以上の手順を再び最初からやり直し……自身の過失が原因とはいえ、これは流石に気が滅入る。
 大体電車などどうせ走るか止まるか車内放送を流すか程度の機能しか存在しないというのに、その操作に何故ここまで煩雑な手順が必要となるのか。
 犯罪防止のためか何かは知らないが、無駄なハイテクなど害悪以外の何物でもない。

 やってられるか……据わった眼でマニュアルのウィンドウを睨みつけ、ティアナはデバイスを取り出した。
 クロスミラージュの銃身が怯えたように一瞬震えるが、頭に血が上ったティアナが気付くことは無かった。
 わざわざ正攻法で付き合ってやる義理など、考えてみれば無いではないか。

 目には目を、ハイテクにはハイテクを――クロスミラージュを制御システムに介入させ、ガジェットと同じやり方で車両の制御を乗っ取ってしまえば万事解決。
 インテリジェントデバイスに搭載されたAIは戦闘用、しかもクロスミラージュは最新型……ガジェットのような訳の解らないメカに出来て、自分の相棒に出来ない道理は無い。
 デバイスの装甲をこじ開け、必要な配線を引き出す。
 機械の扱いは簡易デバイスを製作する際に多少は勉強した、ハードウェアを繋げるだけならば自分でも簡単に出来る。
 ソフトウェアの接続と掌握――言い換えればハッキングの作業自体は完全にクロスミラージュ頼みであるが、そこは相棒の性能を信じるしかない。

≪M……master?≫

 クロスミラージュが困惑したように声を上げるが、ティアナは無視して作業を続ける。
 ガジェットの残骸から拝借したケーブルにデバイスを繋ぎ、制御機器に接続して準備完了。

「クロスミラージュ! ちょっとハッキングでメインコンピュータを乗っ取って、大至急列車を止めなさい!!」

 まるでイソギンチャクのように無数のコードやケーブルに繋がれ、急造のハッキングツールと化した己のデバイスに、ティアナは高らかに命じた。
 こいつはデバイスを一体何だと思っているのだろーか……所有者の破天荒な行動に些か呆れながらも、クロスミラージュは主の命令を忠実に実行する。

 ――メインシステムにアクセス、プロテクトを突破
 ――制御プログラムに介入、システムの掌握完了

 リニアレールの制御奪取を完了させたクロスミラージュが停止シグナルを送信し、列車が急ブレーキをかけて減速する。
 まるで地震でも起きたかのように車両が大きく揺れ、窓の外の景色が動きを止める。

≪Order complete≫
「ご苦労」

 命令完遂を報告するデバイスに労いの言葉を短く口にし、ティアナは大きく安堵の息を吐いた。

 さて……クロスミラージュに繋いだコードやケーブルを引き抜きながら、ティアナは今後の段取りを思案する。
 まずはロングアーチに列車停止を報告、ついでにスバル達の戦闘状況も伝えておけば効率的だろう。
 その後はスバルと共にエリオ達と合流……否、先にスバルを合流させて後から追い着いた方が良いだろうか。
 各車両内の映像を映すウィンドウ群を見回すティアナは、その時ふと眉を顰めた。
 エリオ達の戦う第九車両からの映像が、いつの間にか途絶えている。
 受信機の故障か、それとも戦闘の余波でカメラが壊れたのか……十中八九後者だろーなーとエリオ達の荒っぽい戦い方に嘆息を零しながら、ティアナは二人に通信を繋ぐ。

「エリオ? キャロ?」

 二人の名を呼びかけてみるが、しかし通信機から返るのは雑音のみ……念話でも同じことを試してみたが、結果は変わらなかった。
 敵のジャミング……ティアナの顔から血の気が引いた。
 AMFを全開にすれば、通信魔法の妨害など造作も無い。
 その思考に至らなかった自分自身を責めながら、ティアナは唯一通信の繋がる仲間――スバルに叫ぶ。

「スバル! エリオとキャロを助けて!!」



474 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/06/01(日) 20:43:32 ID:C/KEoePr
 
 
 
 同時刻、エリオとキャロは半壊した第九車両で、巨大な敵と対峙していた。
 比喩ではない……自動扉を周囲の壁ごと突き崩し、ガジェット掃討も佳境に入っていた第九車両に、それは突然姿を現した。
 車両の幅の半分以上を塞ぐ球形の巨体――これまで自分達が倒してきたガジェットとも、外でなのは達が戦う敵とも異なる、しかし明らかにその面影を持つ新手の敵。
 ガジェットの新型、卵型の通常タイプをT型、三角形の航空型をU型とするならば、これはさしずめV型と言ったところだろうか。
 この車両に残存していたガジェットT型数体を周囲に従え、威圧するように自分達と相対する未知の敵に、エリオ達の顔が緊張に強張る。

 ガジェット達も敵を警戒しているのか、攻撃を仕掛ける様子も先の車両に進攻する気配も見せない。
 まるで時が止まったかのように続く沈黙、しかしこのまま永遠に睨み合いで時間を浪費する訳にもいかない。

「キャロ、頼むよ」
「任せて、エリオ君」

 パートナーの言葉に力強く首肯し、キャロは呪文の詠唱を始める。
 エリオの足元に薄桃色の魔方陣が展開され、くるくると独楽のように回転しながら輝きを増していく。

「What I want is the chain of bonds, What I wish is the sword of justice.(我が請うは縛めの鎖、我が求めるは正義の剣)
 What I hope is the bliss of my edge, what I desire is ruin of my enemy.(我は望む幸運を我が刃に、我は欲する破滅を我が敵に)」

 朗々と紡がれるキャロの言の葉を聞きながら、エリオは腰を落としてストラーダを構えた。
 両脚にぐっと力を込め、穂先の切っ先に魔力を集束させる。
 穂先の付け根のカバーがスライドし、カートリッジの空薬莢が排出される。
 放物線を描いて落下する空薬莢が、からりと音を立てて床に転がり……瞬間、エリオが動いた。
 地を穿つような勢いで床を蹴り、デバイスのブースターを点火する。

 ほぼ同時に、キャロの呪文も完成していた。

「アルケミックチェーン・デュアルブーステッド!!」

 車両内に凛と響き渡るキャロの声と共に、床に敷かれた魔方陣から数本の鎖が高速で撃ち出され≠ス。
 術式構成の段階で「加速」と「突撃強化」の補助効果を組み込まれ、無機物操作の魔法によって召喚と同時に矢のように射出された錬鉄鎖が、ガジェットT型を正確に射抜く。
 一つ眼に灯る光が消え、鎖に貫かれたまま力なく床を転がるガジェットT型に一瞥も向けることなく、エリオはただひたすらに目の前の敵――ガジェットV型へと突き進む。

≪Sonic――≫

 デバイスの無機質な呟きと共に、エリオの世界がギアを切り替えた。
 音が消え、まるで早回しのビデオのように加速しながら流れ過ぎる景色……神速の領域、時の流れから切り離された孤独な世界で、エリオはただひたすらに前進を続ける。
 走る、奔る、駆ける、翔ける……。
 敵の懐に飛び込む、己の間合いに捻り込む……辿り着いた。
 床を踏み締める、槍を振り上げる、そして……飛ぶ!

≪――Move≫

 再度耳朶を打つストラーダの声……音を取り戻し、世界は正常な時の流れに帰還した。

475 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/06/01(日) 20:44:40 ID:C/KEoePr
 一瞬でガジェットV型の頭上に移動したエリオが、渾身の力を込めてデバイスを打ち下ろす。
 大上段から振り下ろされたエリオの斬撃を、ガジェットV型は帯のようなアームを交差させて受け止めた。
 魔力の刃と鋼の鎧がぶつかり合い、火花を上げて拮抗する。
 堅い……予想外の敵の頑丈さに歯噛みしながら、エリオは更に槍を捻じ込む。
 魔力を纏った鋼の切っ先が敵のアームを貫通し……刹那、逆三角形に並んだガジェットV型の三つ眼が不気味に輝き、放たれた光線がエリオの身体に突き刺さった。

「ぐぁっ……!」

 呻き声と共に吹き飛ぶエリオを、ガジェットV型のアームが絡め取るように拘束した。
 容赦なく身体を絞めつける敵の拘束に骨が軋み、エリオの口から苦痛の声が漏れる。

「エリオ君!」

 捕われたパートナーに悲鳴を上げ、エリオの元へと走り出すキャロの足に、黒い触手が絡みついた。
 転倒するキャロの目に映ったものは、身体を貫く鎖を引きずりながらゆっくりと起き上がる、破壊した筈のガジェットT型。
 倒し損ねていた……キャロの瞳が愕然と凍りつく。
 再起動したのか、最初から死んだフリをしていたのかは定かではないが、どちらにしても形勢が逆転してしまったことに変わりは無い。

 危機に陥る主の前にフリードが盾のように立ち塞がり、口元に火球を生み出す……が、生成された炎の弾丸は、しかしその直後に魔力レベルで霧散した。
 AMF……キャロの顔が絶望に染まった。
 必死に術式を構築しようと試みるが、魔力は欠片も結合しない。
 足掻くキャロを嘲笑うように、ガジェットT型は触手をのばしながら獲物ににじり寄った。
 割れた単眼が鈍く煌き、コード状の触手が嬲るようにキャロの身体を這い回る。

「い、やぁ……!」

 掠れたような悲鳴がキャロの口から漏れ、大粒の涙が頬を零れ落ちる。

 その瞬間、エリオの中で何かが切れた。

「ゴミ屑風情が……キャロを、放せええええええええぇっ!!」

 怒りに染まった咆哮と共に、突如エリオの全身から激しい電光が迸った。
 まるで爆発するようにバリアジャケットが弾け飛び、衝撃でガジェットV型のアームが千切れ飛ぶ。
 敵の拘束から解放されたエリオはガジェットV型に背を向け、キャロを陵辱するガジェットT型へと走り寄った。

 狂犬のように牙を剥き出し、猪のように直線的な突進を仕掛けるエリオを嗤うように、ガジェットT型が光線を放つ……が、

「鬱陶しい!!」

 怒号と共にエリオの体から放たれた電撃の牙が、まるで食い千切るように敵の光線を消し飛ばした。

 守りたいと思った人がいた、護ると決めた人が出来た。
 いつも笑っていて欲しいと願った、だから自分がその笑顔を守ろうと誓った。
 故にエリオは……キャロを泣かせたあの敵を、全力全開で殺すことを心に決めた。

 どくん……と、ストラーダの奥で何かが鼓動したような気がした。

「うおおおおおおおおおおおおっ!!」

 雄叫びを上げながらエリオはガジェットT型に肉薄し、デバイスを力任せに突き刺した。
 体内の魔力の全てを電気に変換し、ストラーダ表面を伝えて敵の体内に叩き込む。
 内部機構を直接破壊され、黒煙を吐きながら完全に機能を停止したガジェットT型を、エリオは槍に突き刺したまま振り上げ、まるで鉄槌を振るうように床に叩きつけた。
 まるで硝子細工のように粉砕され、破片を撒き散らしながら爆発するガジェットT型に、キャロが安堵したように吐息を零す。

「ありがとう、エリオ君……」

 涙の残る顔で控えめに笑うキャロに応えるように、エリオは荒い呼吸を整えながら満面の笑みで親指を立てた。

476 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/06/01(日) 20:45:42 ID:C/KEoePr
 その時、エリオによる仲間の破壊を静観していたガジェットV型が、再び動いた。
 無機質な――しかしどこか獲物を狙う猛禽のような鋭い光が三つ眼に灯り、撃ち出された三条の光線がエリオの背中を襲う。

 しまった……迫り来る敵の攻撃に、エリオは愕然とした表情を浮かべた。
 キャロを助けることで頭がいっぱいで、背後の敵のことまでは考えていなかった。
 身を護るバリアジャケットは既に無く、回避も電撃による相殺や防御陣の展開――魔力が残っていれば、の話であるが――もこのタイミングでは間に合わない。

 やられる……自身の甘さと現実の残酷さに歯噛みするエリオの前に、青い影が突如滑り込んだ。

「スバルさん……」

 まるで盾になるように自分の前に立ち塞がる白い背中、まるでヒーローのように自分の窮地に颯爽と現れた仲間――スバルの名を、エリオは思わず呟いていた。

≪Protection≫

 術式発動を告げるデバイスの声と共に、スバルは掌を前方へと突き出す……が、AMFが展開されているのか防御陣が出現することはなく、三発の光線が正面からスバルを直撃した。

「ぁ痛っ!?」
「「スバルさん!?」」

 予想外の事態にスバルは小さく悲鳴を漏らし、エリオとキャロは唖然と声を上げる。
 しかし第五車両の時には敵の不意打ちにあっさりと吹き飛ばされたスバルだったが、その際の教訓を生かしたのか、今度は踏鞴一つ踏まずに持ち堪えてみせた。
 文字通り身を盾にして仲間を守り抜き、スバルは背中越しにエリオ達を振り返る。

「二人とも、よく頑張ったね。もう大丈夫だよ!」

 笑いながら紡がれたスバルの科白は、根拠も説得力も――数秒前に本人があっさりと敵の攻撃を喰らったこともあり――皆無だったが、何故かエリオ達の心に染み入った。
 格好良い……と、素直に思えた。

「さぁ、二人とも……皆で玉コロ退治といこーか!!」

 不敵な笑みと共に轟くスバルの号令と共に、反撃が始まった。



天元突破リリカルなのはSpiral
 第10.5話「初めて会っていきなりだけど、一緒に頑張ろうね(後編)」(続)


477 :天元突破リリカルなのはSpiral:2008/06/01(日) 20:51:19 ID:C/KEoePr
以上、投下完了しました。

まず最初に……列車編三話で終わりませんでした!
本来ならば前中後の三話構成で終わらせる予定だったのですが、話が長くなってしまったのでもう1話(完結編)を追加します。
今度こそ終わると思います。

今回一部(全部?)のキャラが妙にはっちゃけていますが、この番外編が終われば元に戻ると思います。

前回GJコールくれた方々、今回支援して下さった方、この場を借りてありがとうございます。

478 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 21:02:18 ID:JQmKS0Yd
>>477
良いですねぇ、間抜けに格好良いスバルと短気なティアナが良いっす
ちびっ子ズも良い感じで気合入ってるし、楽しいですね

479 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 21:11:38 ID:ppuNC84M
GJです。
エリオ達がすごくなってますねえ。

480 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 09:29:36 ID:RPuJXs8g
>スカの爪
元ネタ知らないからもう何処までが原作ネタで何処までがオリジナルなのか分からない。
でもただ一つ分かるのは、このスカ山は愛せるということww
リインUの話といい最近笑える綺麗なスカが多くて困りますね。これじゃあ悪役に出来ないじゃないかw
冒頭の『ミッドチルダは今日も平和だった』が話の全てを表現しているように思えてならない。
っつか、本編でもイマイチ個別でスポットの当たりづらいナンバーズにあって、特に印象がない(失礼)なウーノとディエチをメインに上げる辺り、反目氏のチャレンジ精神が伺えますね。
こんなウーノさんなら惚れざる得ない。あと、ディエチってば弄られキャラだったのねw
まあ、そんな中でも一番インパクトあったのが僕らのフェイトそんだったわけですが。
元祖リリなののネタキャラ。シリアスにギャグにとホント忙しいよね、このヒロイン。
「デラックスフェイト」のネーミングはただそれだけで笑うw
スカとウーノも「にっくきデラックスフェイトが…」「そうでした、デラックスフェイトがいました」とか真面目に連呼すんなwwww

>リリカルなのはARC THE LAD
綺麗なスカ山の反対で、キャロがどんどん虐められててこまる。もっとやれ(ぉ
そんなことを言っといてなんですが、とりあえずルシエの里は滅べばいいと思うよ。文明程度低そうだから飢餓あたりで。
あと、ブラックメンな管理局の裏側さんも自重しろ。
管理局って、本編では絶対あるはずの組織の暗部って点をあまり出さず、正義の部分を強くアピールしたせいか、こういう暗黒面って結構ドギツク描かれちゃう傾向にあるみたいですねぇ。
まあ、私も実際酷いところはとことん酷いってイメージありますけど。
やっぱあの脳みそどもがなぁ…w
この暗黒時代が、キャロとフェイト達との出会いに何か悪い影響を与えないよう願いたいです。エリクのいう理念ある局員だろうしね。
そして、オリジナル展開。こういうのは先が読めないから、アニメ本編とは違う味があっていいですね。
本編をなぞるというのも、アニメを見ながら感じたフラストレーションを、その部分にクロスによって介入して解消するという楽しみ方があっていいのですが、オリジナル展開は純粋に話を楽しめるからまた別の楽しみがありますw
これからどうなるか、気になりますね。

>天元突破リリカルなのはSpiral
熱血系とクロスしてるせいか、みんな短気になっていて困るw
まあ、スーパーロボット系は叫んで吼えてナンボですよねー。
これから戦闘のたびに特攻ばりの突撃戦法ばっかり取りまくる新人チームが幻視された。なのはの教導涙目ww
そんなスパロボ系の中でリアル系に位置するティアナの苦労が早くも感じられます。
だってさ、こいつら命令聞かなさそーだもん。接近戦大好きで長中距離制圧とか意味なさそーだもん。
そして、そんな苦労だけが溜まるティアナを見て俺ニヤニヤw「車両燃やしながらはしゃぐな!」とかティアナのツッコミが毎回秀逸すぎるww
前途多難だけど、成長が楽しみな機動六課ですね。今後の更なる活躍に期待します。
あと個人的な意見なんですけど、もう少しストーリー事態の進行速度を上げた方がいいかな、と思います。
地の文の描写とか、すごく丁寧で量も多く、状況が分かりやすいんですけど、全体的な文の量の割りに今回は戦闘以外状況があまり進行してないようなので。
やっぱり新しい展開があった方が読み手の方も感想など書きやすいと思いますし、今回あまり見られなかったグレンラガンのクロス要素も出しやすいと思います。
余計なことを言いましたが、こういう読後の爽快感がある作品は大好きです。今後も頑張ってください。
とりあえず、スバルはこれくらいテンション高いくらいで丁度いいw

481 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 13:34:30 ID:mtIppF8s
>>480
>スカの爪
人名等を置き換えただけで、話の中身は秘密結社鷹の爪の第一話そのもの。
>>435のリンク先で第一話だけ見られるから見てみるよろし。

482 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 15:18:02 ID:zUPbQAWE
>>439
>>排出される空薬莢。魔力カートリッジ・ロード。自慢のインテリジェントデバイス「バルディッシュ・アサルト」が変形。
反目氏、前にも言ったけどなんでカートリッジをまとめて交換する回転式弾装で空薬莢が排出されるんだ。

483 :一尉:2008/06/02(月) 15:40:43 ID:K2dhFR+5
空爆薬なら支援

484 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 15:51:54 ID:dOllr4JE
下げ

485 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 16:25:45 ID:5++K389D
>>482
とりあえず、仮に次回同じことがあったら避難所の誤字スレ行こうな

486 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 16:53:14 ID:oXnO17AK
お久し振りです
19時半頃より、R-TYPE Λ 第14話の投下を予約させていただきます

487 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 16:58:45 ID:jinVtpw0
>>486
III版R-9/0ラグナロックで支援する!

488 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 17:02:20 ID:YxuWQYBs
支援w
転送失敗の魔道師たちが、敵の腹の中で何人生き残れるか期待w

489 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 17:04:15 ID:FVwCY9XE
皆様、お久しぶりです。
それでは自分はその後に予約させていただいてよろしいでしょうか?

490 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 17:07:01 ID:rKMoDqz8
支援しますw

491 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 17:27:44 ID:Tonp6rXv
それでは武者○伝氏の次に予約させていただいてもよろしいでしょうか?
夜天メーカー後編を投下したいと思います。

492 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 18:51:26 ID:CEvB5Edq
リリカル武者○伝支援します。

493 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 18:52:50 ID:DKtBo+lO
遂に魔導師対メタ・ウェポノイドの死闘が始まる!

494 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:06:56 ID:xHkXRh6c
管理局員の絶望にwktk

495 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:22:01 ID:cVSJDu/m
今しがた59機目、R-13Aケルベロスが使用可能になった。
これより支援を開始する!

496 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:30:03 ID:oXnO17AK
それでは投下します
今回はスーパーヴァイスタイム入ります



銃声に次ぐ銃声。
薄闇の中より迫り来る異形の影が、その奇怪な形状の頭部へと銃撃を受け、苦痛による絶叫を上げる。
その更に後方よりもうひとつの影が現れるが、頭部やや右側面へと銃撃を受け、傷を庇う様に右へと回頭。
しかし直後、今度は頭部左側面の視覚器官らしき部位へと連続して3発の銃撃を受け、こちらも絶叫を上げつつ銃撃から逃れようと回頭を続行する。
そして前後2体、異形の影が重なった瞬間、1発の多重弾殻魔導弾が両者の頭部を撃ち抜いた。
巨大な爪が上部構造物より離れ、緑の蛍光色を放つ体液を周囲へと撒き散らしつつ、力なく落下しゆく2体の異形。
それらが暗く淀んだ水面へと叩き付けられ、暗黒の水底へと沈みゆく様を見届けた後にディエチは一言。

「・・・凄い」

ただ1発の砲撃さえ放つ事のなかったイノーメスカノンの砲口を下ろし、半ば呆然と呟いた。
彼女の数m横では、先程の銃撃の主であるヴァイスが射撃体勢を解き、ストームレイダーを手に周囲へと視線を走らせている。
やがて、周囲に敵影が存在しない事を確認したのか、彼はディエチへと歩み寄りつつ呟いた。

「ツイてないな。よりにもよって陸戦型、しかも機動性ほぼ皆無の2人が」

一旦、言葉を止め、もう一度周囲を見渡す。
漆黒の闇の中に、照明により施設の全貌が浮かび上がっていた。
人工地下水路に面した小規模輸送物資集積施設。

「空戦魔導師と逸れた上、同じ場所に転送されちまうとは」

そして言葉を続け、溜息を吐く。
ディエチは言葉もなくそんな彼を見つめていたが、やがてこちらも溜息をひとつ、感嘆の念と若干の呆れを込めて声を発した。

「・・・あれだけ巨大な生命体を11体も、しかも接近すら許さずに射殺できる貴方が、それを問題にするんですか?」

その言葉にヴァイスが肩を竦めるが、ディエチとしてはそれが偽らざる本心である。
転送直後、未確認生命体による上方からの襲撃を受け、即座に反応・迎撃を行ったヴァイス。
1体を撃破するや否や、地下水路の奥より迫り来る生命体への群れに対する狙撃を開始、ディエチがISヘヴィバレルによるイノーメスカノンへのチャージを終える猶予すら与えず、瞬く間に殲滅。
その間、僅か1分足らず。
「AC-47β」による魔力増幅の結果、弾体形成時の集束所要時間短縮により速射性が向上している事実を考慮に入れても、異常としか云い様のない腕前である。
牽制として放った魔導弾により生命体の行動を制限・誘導し、射線上に複数体が重なった瞬間に高圧縮多重弾殻魔導弾を撃ち込んで止めを刺す。
戦闘機人たる自身であっても容易ではない一連の過程を、この短時間に5回に亘って繰り返し、しかし微塵の疲労も窺わせる事のないこの人物。
旧機動六課に於いてはヘリのパイロットを務めていたという話ではあったが、その狙撃手としての腕はディエチから見ても遥かな高みにあった。

そして狙撃の腕だけではなく、魔力による弾体形成技術も相当なものだ。
保有技能は高速直射弾形成及び多重弾殻射撃のみであるとの事だが、しかし弾体毎の魔力圧縮率が尋常ではない。
単発の威力・貫通力だけに着目するならば、それこそ並みの集束砲撃魔法すら凌駕する程の高圧縮魔導弾。
非殺傷設定という縛めより解き放たれたそれらが、全長10mを優に超える異形の生命体を次々に射殺してゆく様は、何処か薄ら寒いものをすら感じさせる。


497 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:31:06 ID:oXnO17AK
もし2年前、この男性と戦う事となっていたならば。
同じ狙撃手としての立場から、銃火を交えていたならば。
敗れていたのは、恐らく自分。
一方的に狙撃され、自らが敗れた事にも気付かずに、戦線から退く事となっていたに違いない。

そして、オーバーSランク相当の砲撃と、Bランク魔導師による直射弾。
常であれば考えるまでもなく砲撃が勝るであろうが、この男性の放つ銃弾はその常識を覆す。
単発の弾体としては考えられないまでの魔力密度、それに伴う弾速・貫通力。
こちらと正面から撃ち合ったとして、恐らくは砲撃の中心を貫き突破してくるであろう、緑光の銃弾。
射程・速射性・精密性・威力、いずれの面から見ても、自身からすれば高町 なのは以上に分が悪い相手だ。
それは高町 なのはにとっても同様である筈で、移動しつつ使用できる長距離攻撃魔法を有していない以上、防御をほぼ無効化できる弾体による狙撃を駆使するこの男性は、エースオブエースを墜とし得る数少ない人物の1人であるといえるだろう。
魔導師ランク、そして魔力保有量が全てではない、実戦の恐ろしさを体現するかの様な存在である。

「しかし・・・何だ、コレ?」

思考に沈むディエチを余所に、当のヴァイスは集積区のほぼ中央、転送直後に射殺した未確認生命体の死骸へと歩み寄り、銃口でそれを指した。
ディエチもまた死骸へと目をやり、蛍光色を放つ体液に沈む異形の全貌に眉を顰める。

胴部全長、凡そ10m。
4mを超える巨大な前脚。
背面に浮き出した、人間の肋骨にも似た骨格。
胴部へと覆い被さる様に伸びた、ほぼ同じ全長の巨大な頭部。
無数の複眼が寄り集まった、何処か幾何学的な模様にすら思える視覚器官。
全体を覆う部位の無い口部に、ずらりと並んだ巨大な歯牙。
全身の複数箇所に埋め込まれた、鈍色の光沢を放つ機械部品。

「これが、汚染体・・・?」
「だと思うんだがなぁ・・・」

嗅覚を苛む異臭に顔を顰めつつ、2人は注意深く死骸の観察を始めた。
とはいえ、生物学の専門家でもない2人に詳細な分析などできる筈もなく、外観から探れる事は探ろうという程度のものである。
しかし彼等の予想に反し、然程に時間を掛ける事もなく、複数の異常な点が浮かび上がった。

光沢がありながらも、腐乱した死体の様な色の外皮。
前脚と比較して、余りにも小さ過ぎる後脚。
胴部下方へと折り畳まれた、無数の副脚。
如何なる目的かも判然としないながら、しかし完全に生体組織と融合した機械部品。

「人工生命体・・・?」
「・・・汚染体だろ? そんなもの、誰が弄るっていうんだ」
「でも、このインプラントは・・・」

戦闘機人と同じ、機械部品による生体強化ではないのか?
そう言い掛けて、ディエチは云い様のない嫌悪感を覚えた。

自分と、この化け物が同じ?
冗談ではない。
死人の肌の様な外皮を纏い、異臭を放つ粘液に塗れた蟲か爬虫類かも判然としないこの生命体が、強化されているとはいえ人としての意思と肉体を併せ持つ自身ら姉妹達と同類である筈がないではないか。


498 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:31:56 ID:X4Wc9zIR
支援

499 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:32:10 ID:oXnO17AK
自らの思考を、理性と感情の両面から否定するディエチ。
彼女の内面にて沸き起こる葛藤に気付く事もなく、ヴァイスは死骸の各部より覗く機械部品へと顔を近付け、呟いた。

「・・・どうも端から移植を目的として製造された物じゃないらしいな。ほら」

ヴァイスに促され、ディエチもまた死骸の一部へと顔を寄せる。
生体組織の合間から覗く機械部品の表面には、僅かな錆と黒い油、そしてミッドチルダ言語の羅列があった。
その文字列を目で追い、彼女は訝しげに声を発する。

「LD-3304・・・加重限界5000kgまで・・・?」
「はっきりとは解らないが・・・これ、汎用ロボットアームか何かの部品じゃないか? 骨格の間にあるやつは多分、小型水上船のシャフト基部だ。それもかなりボロボロ、ゴミ同然のやつ」
「廃棄物を取り込んでいる・・・?」
「多分な」

言葉を返しつつ、ヴァイスは死骸の後方へと回り込んだ。
ディエチは前方へと歩を進め、改めて後部に並ぶ歯牙へと注目する。

やはり、似ている。
遥かに巨大ではあるが、この汚染体らしき異形の歯牙は、人間のそれと余りにも酷似しているのだ。
何らかの原住生物を基に発生した事は疑い様が無いが、しかし此処まで人類に酷似した歯牙を有する生物が、果たしてこの隔離空間内へと取り込まれた世界のいずれかに存在していただろうか?



まさか。
まさか、この生命体は。
この汚染体の素体となった「生物」とは。



「おい、大丈夫か?」

掛けられる声に、ディエチはふと我に返った。
目前には、何処か気遣わしげな表情のヴァイスの顔。
思わず後退り、意味の無い声を洩らしてしまう。

「あ・・・え?」
「何か思い悩んでいたみたいだが・・・問題ないか?」
「あ、はい・・・」

何とか答えを返すディエチ。
そんな彼女の様子に未だ納得しかねているらしきヴァイスであったが、ややあってディエチに背を向けると、何処かへと向けて歩み始めた。
戸惑うディエチに、次の行動を促す声が掛かる。

「取り敢えず、此処の管制ログを調べてみようぜ。此処の連中が何処に消えたのか、って事だけでも明らかにしなきゃあな」

言いつつ、ストームレイダーの銃口を管制塔へと向けるヴァイス。
その言葉に納得し、ディエチもまたイノーメスカノンを担ぎ直し歩き出す。
管制塔まではそう距離がある訳でもなく、数分で到達できるだろう。
巨大なコンテナの間を歩きつつ、2人は現状についての意見を交わし合った。


500 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:33:13 ID:oXnO17AK
「しかし、本当に人っ子1人居やしねぇ・・・この1ヶ月の間に、何があったんだ?」
「まず此処が何処の世界かも判りませんし・・・少なくとも第61管理世界ではなさそうですが」
「隔離空間内のどれかではあるんだろうけどな。まあ、それもログを見れば判るだろ。ついでに此処で何があったのかも」
「・・・あまり良い事態ではなさそうですが」

唐突に足を止め、コンテナが積み重なる集積区の一画を指すディエチ。
同じく足を止めたヴァイスも、それを目にするや否や諦観の滲んだ溜息を吐く。

「・・・納得」



2人の視線の先には、数十個の潰れたコンテナと無数の車両、そして夥しい量の血痕が残されていた。



「・・・10人や20人じゃないな。100人・・・いや、それ以上か」
「抵抗した形跡が無い・・・一般人だった様ですね」

完全に圧壊した自家用車及び輸送車両、コンクリート舗装面に撒き散らされた黒ずんだ液体の染み。
それはこの場所に於いて、凄惨な殺戮が繰り広げられた事実を示していた。
既に相当の時間が経っているのか、本来ならばこの場に漂う筈の鼻腔を突く鉄の臭いも、既に掻き消えている。
臭いだけではない。
本来ならば此処に存在する筈のものが、1つとして見当たらないのだ。

「死体は・・・?」

「死体」が無い。
犠牲者達の亡骸だけが、忽然とこの場より消え失せている。
圧壊した車両の隙間を覗いても、人体の欠片すら見付ける事はできなかった。

「捕食されたのでしょうか?」
「・・・ま、全滅したと決まった訳じゃない。生存者が居るかどうかも調べりゃ判るだろ」

再び歩き出すヴァイス、そしてディエチ。
やがて管制塔へと辿り着いた2人は、コンソールを操作し過去1ヶ月のログを確認。
表示される記録は、そのいずれもが絶望的な状況を物語っていた。

第151管理世界、総人口4900万のこの世界を襲った惨劇。
人工衛星の消失より始まった一連の事態は、生態系の激変という通常では考えられない現象へと加速し、遂には地表域に於ける次元断層の連続発生による他世界との空間干渉及び接続という、最悪の事態が発生。
電子制御系の暴走、電力供給用魔力炉の爆発、変異生態系による都市部への生体汚染拡大。
都市及び主要施設間の長距離移動は不可能となり、各地では集団消失現象が多発、逆に他世界の住民が突如として出現する事態も発生し、既に隔離空間内に於ける各世界の区別は無きに等しいとの事。
地上にて観測された人工天体は日を追う毎に巨大化し、それが各世界の人工建造物を取り込んで形成されている事が判明した数日後には、この施設までもがその天体内へと転移していたのだという。
つまり此処は人工天体の複合建造物内部であり、既知の座標は機能しない。
次元間転移事故被災者を保護し、調査隊を編制して施設周囲の調査を行ったものの、その殆どが行方不明となってしまう。
更には未知の生命体群により度重なる襲撃を受け、6度目の交戦では集積区の車両内にて生活していた206名の被災者が全滅する事態となった。
そして遂に、戦闘可能な魔導師が10名を切る状況へと至り、遂には施設の放棄を決定。
地下水路を8kmほど進んだ地点に発見された、廃棄物処理場への移動を敢行。
汚染物質の流出を避ける為の多重隔壁と強固な施設外壁を頼りに、管理局の救出部隊が駆け付けるまでの篭城戦を行うとの事。
幸いにして輸送用小型次元航行艦2隻を確保できた為、艦体ごと処理場内部へと侵入し汚染を避ける事ができる。
食料も1ヶ月分は貯蔵があり、救出部隊の到着までは耐えられると判断したらしい。
最後に、施設を訪れるであろう管理局部隊へのメッセージを残し、ログは途絶えていた。

「廃棄物処理場・・・」
「嫌な予感しかしないな」


501 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:34:57 ID:oXnO17AK
ログの確認を終え、溜息を吐く2人。
一連の事態による被害は、管理局の予想を遥かに上回っていた。
この状況では、現時点に於いて要救助者の何割が生存している事か。

「・・・取り敢えず行ってみるか。御誂え向きにボートもある」
「でも、ヴァイス陸曹。このログ・・・」
「解ってる」

そして、常軌を逸した数々の現象が綴られるログの中、明らかに際立って異常と解る2つの記録。
人工天体への転移直前、そして転移6日後。
他の現象とは異なる、奇妙な記録。

「俺達や汚染体以外にも、招かれざる客が居るみたいだな」

そう言うと、ヴァイスはコンソールへと背を向けた。
ディエチもそれに倣う。
要救助者が存在しない以上、此処に留まる意味は無い。
入手した情報に基づき、彼等が身を潜めているであろう廃棄物処理場へと向かうだけだ。

管制塔を出る2人の背後、コンソールの僅かな明かりだけが、無人の室内を淡く照らし出す。
モニターに表示された無数のログの中、2つの記録だけが他とは異なる赤い色を放っていた。



「77.12.22 施設地上部より緊急連絡。2251時、東部地平線に複数の強烈な閃光を確認したとの事。直後、震度6相当の揺れを感知。2時間後、隣接する管理局拠点より入電。首都方面にて高濃度の放射能検出との事。警報発令。地上部より職員を退避させ、隔壁を封鎖」

「77.12.28 調査隊、水路内にて所属不明の小型船艇と遭遇。接触を試みるも、不明生命体群の襲撃を受け交戦。戦闘中、所属不明船艇は質量兵器と、複数の小型無人兵器を用いていたとの事。
戦闘終了後、船艇は高速にて当該域を離脱。船体が宙に浮いていた事から、反重力駆動方式と推定」

*  *  *

金色の閃光が空間を薙ぎ、異形の頸を切り飛ばす。
瞬間、宙を翔ける漆黒の影。
降り注ぐ血の雨をも掻い潜らんとするかの如き速度で突き抜けたそれは、上方へと6つの光弾を放つ。
遥か上方へと撃ち上げられたそれらは放物線を描き、一拍の後に砲弾の如く汚染生命体群の頭上へと降り注いだ。
連なる6つの爆発音、そして無数の絶叫。

『DOSE 50%』

粉塵と血煙の中から、数体の異形が血液を振り撒きつつ金切り声と共に影へと突進を開始する。
しかし、生存本能によって突き動かされるがままに開始された突進も、高速にて飛翔する影と擦れ違った、その瞬間に終わりを告げた。
閃光。
上下に二分される、13体の異形。

『DOSE 60%』

血が、内臓器官が、異形の体内に存在する無数の寄生体が、豪雨となって回廊へと降り注ぐ。
その惨状を尻目に、影は中空へと制止。
同時に巨大な魔法陣が展開され、黄金の光が周囲を埋め尽くす。
そして響くは、凍て付く感情を秘めし声。


502 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:35:06 ID:xHkXRh6c
支援だぜ!!

503 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:35:35 ID:wCPhvYWj
あの硬い虫相手にヴァイススゲー支援

504 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:35:49 ID:FVwCY9XE
支援

505 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:36:01 ID:oXnO17AK
『Phalanx Shift』
「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル」

影の周囲へと浮かぶ、38の光球。
余りにも眩いその閃光に反応したか、薄闇の奥から無数の叫びと異音が多重奏となって空間へと響く。
蚊のそれにも似た羽音、無数の脚が擦れ犇く音、枯れ枝を踏み折る様な音。
闇より迫り来るそれらの一切を無視、影の腕はゆっくりとその先を指し。

「フォトンランサー・ファランクスシフト」

そして、トリガーを引いた。

「ファイア」

瞬間、全ての光球が射撃を開始する。
単発ではなく、連射。
全てを埋め尽くさんばかりの弾幕が、闇の先に犇く異形の群れへと襲い掛かった。
着弾、炸裂、絶叫、破裂音、水音、爆発音。
それら全てが混然となり、空間を支配する。
炸裂する光の中に浮かび上がる、焼かれ、貫かれ、引き裂かれ、打ち砕かれ、断末魔を上げる無数の生命体の影。
その光景を前にしながら、僅かながらの揺らぎも見せずに人形の如く佇む人物。
左手に携えられた、黄金の刃に雷纏う片刃の長剣。
刃の周囲を旋回する、一筋の赤い光。

『Caution. DOSE 70%』
「排出実行」
『Exhaust DOSE』

刃の付け根、歪に突き出したドラム型マガジンから、高圧蒸気にも似た圧縮魔力が噴出する。
響き渡る噴射音、約8秒間。
それが止んだ時、長剣は戦斧状の杖となって其処にあった。

『・・・ハラオウン執務官』
『汚染体は殲滅しました。前進します』

後方に待機するディードからの念話。
ただ簡潔に敵の殲滅完了を伝え、前進する旨を告げる。
彼女からの反論は、特に無い。
意見しても無駄であると理解しているのだろう。

XV級次元航行艦が余裕を持って通過できる程の、広大な金属回廊。
その壁面は得体の知れぬ生体組織に侵されており、鈍色の光を放つ壁面の隙間からは黒ずんだ肉腫が覗いている。
鋼鉄の殻に覆われた肉壁、その合間から無数の汚染体と思しき生命体が湧き出したのが数分前。
ディードの他にオットー、そして他の攻撃隊員4名が居たのだが、大群を相手取る戦いには不利と判断、生体組織による侵蝕の及んでいない区画にて待機させていたのだ。

『無理はなさらないで下さい。敵の力は未知数です』
『分かってる』

続くオットーからの念話に答えを返しつつ、彼女、フェイトは己がデバイスへと目を落とす。
バルディッシュ・アサルトフォームの側面、カートリッジシステムから突き出したドラム型マガジン。
それを見つめつつ、彼女は思考する。


506 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:36:35 ID:wCPhvYWj
アンカーフォース改ははげしく暴走の予感支援

507 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:36:44 ID:pb3Fw67A
スーパーヴァイスタイムww支援

508 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:38:02 ID:oXnO17AK
ライオットブレードの状態でファランクスシフトを展開したというのに、違和感が一切存在しない。
身体への負担も、それ以上に魔力の消耗感すら感じられないという、異常な感覚。
魔力消費量が段違いであるライオットブレードを常時展開して尚、リンカーコアによる魔力素吸収速度が消費量を上回るという信じられない状態。
「AC-47β」。
あの憎むべきR戦闘機群によって齎された、禁断の技術。
次元世界の理を外れた、歪な技術体系によって構築された魔力増幅触媒。

「・・・大丈夫」

呟き、バルディッシュの柄を強く握り締める。
それは、自己に対する暗示だった。

これなら、勝てる。
必ず、必ず打倒できる。
忌まわしき漆黒の番犬、雷光を纏う悪魔の機体。

エリオを、キャロを、家族を取り戻し、脱出する。
そして、ユーノから四肢を奪った罪人に、然るべき報いを与えるのだ。
その為に、自身はこのシステムを受け入れた。
管理局の理念に相反する思想の下に生み出された技術、それを応用し構築されたシステム。
常ならば決して認めはしなかったであろうそれを受け入れた理由は、敵の強大さも然る事ながら、贖罪の意味合いもある。
自身が判断を誤ったが為に、ユーノの四肢、延いては幾多の可能性を奪ってしまった。
彼は今も意識の戻らぬまま、本局医療区の一画にて自らの生命を脅かす死の足音と戦っている。
自身が彼の為にできる事は、怨敵を打ち倒し、その報告を彼へと捧げる事だけだ。

フェイトには確信があった。
バイド鎮圧後、地球軍との交渉の場を設ける事を望む上層部。
彼等の見解とは異なる、独自の確信が。

22世紀の地球は、決して管理世界と同じテーブルに着く事はない。
感じるのだ。
あの漆黒の機体から、捕えられたR戦闘機パイロット達から。
管理世界の人間を、決して自らと同じ存在とは看做していない事を。
ケージ内のモルモット、或いは路傍の石を見るかの如き、無感動な視線を。

彼等が管理局に対し、積極的敵対行動を取る事はない。
彼等にとって、管理局には敵対する程の価値など存在しないのだ。
R戦闘機群が管理局部隊と遭遇したとして、あちらから戦闘を仕掛ける事はないだろう。
彼等は、管理局の一切を無視する。
目前で汚染体と魔導師が戦闘を行っていようと、彼等にしてみれば割り入るべき理由が存在しないのだ。
彼等が管理局部隊に対し戦闘を展開するとなれば、それはこちらから仕掛けた場合に他ならない。
本局及びクラナガンを襲撃した際とは異なり、既に彼等は十分な情報を得ているだろう。
こちらがバイドではないと知り得ているのならば、可能な限り交戦を避けようとする筈だ。
それは人道的な面からの配慮などではない。
不必要な戦力の消耗と、管理局による地球軍に対する情報収集を避ける為だ。
即ち、全ての行動が自らの生存の為であり、管理世界の人間に対する配慮の一切が欠落している。
彼等は未だに、こちらを「人間」であるとは捉えていないのだ。

恐らくは、義母や義兄も気付いている。
彼等の異質な認識、人間としての共通意識の欠落に。
地球軍にとって、管理世界の住人は「人」ではない。
だがそれは同時に管理世界の住人にとっても、地球軍を構成する人員は「人」ではないとの証明に他ならないのだ。
共存など以ての外、相互理解の構築など決して実現し得ない「未知」の存在。
ならば、自身がすべき事はひとつだ。


509 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:39:17 ID:oXnO17AK
彼等の「本性」を暴き、管理世界全ての目前へと曝せば良い。
決して解り合えぬ存在であると、知らしめれば良い。
彼等の目的はバイドの「殲滅」。
管理局が「制圧」及び「確保」を目的として行動する限り、いずれは敵対する事となるのだから。
そして、その時こそ。



自らの雷光にて、漆黒の番犬へと「断罪」を下すのだ。



『ハラオウン執務官、応答を!』

突然の念話。
その焦燥を含んだ念に、フェイトは我へと返る。

『どうしたの?』
『回廊の奥から巨大な・・・巨大な浮遊体が、高速にて接近してきます!』

瞬間、フェイトはバルディッシュをライオットブレードへと変貌させた。
身を翻し、ディード等の待機地点へと向かうべく、高速で宙を翔ける。

『浮遊体の特徴は? 機械? 生命体?』
『何らかの機械です! 大きさは・・・15m!』

その報告に、フェイトは僅かに眉を顰めた。
敵が大き過ぎる。
15mといえば、R戦闘機以上の大きさだ。
クラナガンを襲った、ゲインズとかいう人型機動兵器だろうか?

『浮遊体、頭上を通過!』
『特徴は?』
『塗装は黄色、後部に重力制御機関らしき赤いコアを確認! そちらに向かいました!』

新たな報告も終わらぬ内、フェイトの視界に巨大な鉄塊が映り込む。
成程、黄色の塗装を施された全高15m、全幅9m程の浮遊体が、高速でこちらへと突進してくるではないか。
その速度は、並みの空戦魔導師に勝るとも劣らない。
ライオットブレードの柄を握り直し、フェイトもまた突進を開始した。

「はッ!」

裂帛の気合と共に、擦れ違い様に一閃。
浮遊体の下部が切り裂かれ、轟音と共に回廊床面へと落下する。
しかし。

「ッ・・・!」

下部を切り裂かれた浮遊体は減速する事もなく、空気を押し退ける轟音と共に回廊の奥へと消え去った。
闇の中に消え往く赤いコアの光を呆然と見送りつつ、しかしフェイトは奇妙な事に気付く。


510 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:40:11 ID:wCPhvYWj
ちょwwフェイトそんwwwその思考は支援

511 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:40:20 ID:oXnO17AK
何故、攻撃が無かった?
あれだけの速度で突進してきて、何もせずに彼方へと飛び去った巨大な浮遊体。
弾幕を張るなり誘導兵器を放つなり、幾らでも手はあるだろうに、何故?
よもや、戦闘を目的としたシステムではないとでもいうのだろうか?

『執務官!』

そんなフェイトの予想を裏付けるかの様に、またも念話が飛び込む。
オットーだ。
彼女らしからぬ焦燥の感じられるそれに、フェイトが警戒を強めた、直後。

『浮遊体接近・・・総数18! 回廊を塞ぐ様に・・・』



巨大な影が、彼女の側面を掠め飛んだ。



「な・・・!」

驚愕と共に、全身を襲う風圧に抗い姿勢を立て直す。
背後より襲い掛かったそれは、確かに先程の浮遊体と同型のものだった。
回廊の奥へと消え往く赤い光を見据えながら、フェイトはディード等へと念話を繋げる。

『こちらも接触した! そちらの状況は?』
『何とか回避しました・・・しかし第2波が接近中、数が多過ぎます!』

その報告に対し新たな指示を出そうとしたフェイトであったが、彼女の視界に先程切断した浮遊体下部構造物が映り込んだ事により、それを中断した。
彼女の意識を捉えたのは、塗装面の一部に刻まれた第97管理外世界の言語。



「LV-220 Resource mining colony Transport System D-7.885」



「輸送・・・システム?」

呆然と呟くフェイトの背後、薄闇の中から、無数の重々しい風切り音が轟きだす。
11年間の時を経て、侵入者を悪夢へと誘う鋼鉄の行進曲、鋼鉄の回廊が、再びその鼓動を響かせ始めた。

*  *  *

「止まらないで! 突き当たりまで走って!」
「一尉、後ろです!」

咄嗟に振り返り、狙いも定めずにショートバスターを放つ。
光の奔流が闇を貫き、その先に潜む機械仕掛けの魔物へと突き刺さった。
爆発。
グレーの装甲が四散し、周囲に展開する同型機、そしてガジェットの装甲へと傷を刻む。
即座に爆炎の向こうから応射が返され、質量兵器の弾体が周囲の壁面へと弾痕を刻んだ。
煉瓦の様に砕け散る灰色の壁面は、魔力による多重コーティングを施された特殊防御壁である。
Sランク攻撃魔法の直撃にも耐え得るそれが、一切の魔力を含まぬ砲弾によって抉られてゆく様は、なのはの胸中に云い様のない悪寒を呼び起こした。


512 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:40:28 ID:FVwCY9XE
支援

513 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:41:22 ID:oXnO17AK
「一尉!」

叫びと共に数本のナイフが宙を翔け、なのはと敵の間にて爆発を起こす。
その粉塵に紛れ、身を翻して敵から距離を取るなのは。
目前へと現れた角に飛び込み、通路の奥に蠢く異形の様子を窺う。

それは、奇妙な造形を持つ機動兵器だった。
反重力駆動式の台座に人型の上半身を備えた、全高8m程の機体。
しかしその頭部は、御世辞にも人に近いとは言えない。
前後へと伸長したそれは、バイザー状の視覚装置と相俟って、第97管理外世界での映画に描かれる異星の生命体を思わせる。
両腕部の肘より先は連射型の質量兵器となっており、攻撃隊は転送直後より容赦の無い弾幕に曝されているのだ。
外観に反し装甲が薄く、撃破が容易であった事は不幸中の幸いであったが、しかし通路を塞がんばかりの巨体と閉所での弾幕射、行く先々で現れるグレーの装甲とカメラアイの赤い光は、攻撃隊の精神を徐々に圧迫してゆく。
既に20機近くを撃破しているにも拘らず、未だに出現を続ける機動兵器。
其処から導き出された量産機であると予想も、なのは達の不安を煽る要因であった。

「一尉、高町一尉」
「チンク」

背後からの声。
息を潜める様に発せられたそれに、なのはは振り返る。
其処には、銀髪の小さな影。
戦闘機人が1人、チンクだ。
先程、ISランブルデトネイターにより、なのはが後退する為の隙を作った人物でもある。

「ウェンディが非常通路を見付けた。周囲の機動兵器とガジェットは、既に砲撃魔導師により排除済みだ」
「解った。こっちは敵が多過ぎる。スターライトブレイカーで一掃するから、チンクは先に行って」
「了解だ」

会話を終え、なのはは通路の先へと向き直った。
敵が前進する様子はない。
しかし此方を排除するべく、前進の機会を窺っている事は明らかだ。
レイジングハートの柄を握り締めるなのはであったが、しかし未だ背後に佇むチンクの存在に気付き、再び振り返る。

「どうしたの?」

皆の許に戻ろうとしない彼女に、なのはは訝しげに声を掛けた。
チンクは何処か躊躇う様に、何かを言い掛けては口を閉じるを繰り返す。
しかしやがて、意を決したかの様に声を発した。

「高町一尉・・・貴女は、どう考える?」
「・・・何を?」
「この船・・・「聖王のゆりかご」についてだ」

沈黙。
なのはは押し黙り、チンクの隻眼を見つめる。
その瞳は、困惑と不安に揺らいでいた。
常日頃の彼女からは考えられない、弱々しい姿。

チンクの言葉通り、なのは等が転送され、異形の機動兵器群と戦闘を繰り広げるこの空間は、嘗て彼女自身が突入した古代の戦船、聖王のゆりかご内部であった。
2年前と寸分違わぬ内装とガジェットの群れ、そして自動防衛機構。
何もかもが模造され、オリジナルとの区別が付かぬまでの存在として空間を支配していた。
否、或いはこの船こそが、2年前に虚数空間へと消えたオリジナルであるのかもしれない。


514 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:41:39 ID:xHkXRh6c
更に支援

515 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:43:01 ID:oXnO17AK
「続けて」
「・・・従来のアルカンシェルに欠陥があった事も、虚数空間へと跳ばされたゆりかごがバイドに汚染されたのだという事も解っている。しかし、そのゆりかご自体を模造するなど、余りに異常だ。この船は唯の戦艦ではない。
古代ベルカの技術の粋を集めて建造された、世界を支配する為の船だ」
「・・・そうだね」
「だからこそ、彼等は聖王なき状態ではこの船を起動できぬよう、幾重にもプログラムの防壁を築いた。私達は聖王のコピーにレリックを埋め込み、起動の為の鍵としたんだ。だが・・・」

なのはに促され、途切れた言葉を再開したチンクであったが、しかし再び途中で声を区切り、沈黙する。
だが、彼女が何を言わんとしているのか、なのはは正確に理解していた。

「・・・ヴィヴィオ、だね?」

チンクは頷く。
クラナガンでの戦闘後、本局医療区にて目覚めた瞬間から、その疑問はなのはの脳裏にも燻っていた。

「鍵となる聖王が存在しなければ、ゆりかごは起動しない。無論、ゆりかごのプログラムを意のままに改変できるだけの技術力があれば、そんな問題は如何様にもできる。だが、最も効率が良いのは・・・」
「聖王を複製し、玉座に据える事」
「そうだ。聖王のコピーさえ制御下に置けば、間接的にゆりかごの全てを支配できる」
「つまり今、玉座の間には・・・」

爆音。
即座にレイジングハートを構え、通路の奥へとショートバスターを撃ち込む。
爆発、そしてまた爆発。
2機の機動兵器が数十体のガジェット共々、爆炎の中へと沈む。

「一尉・・・」
「行こう、玉座の間へ」

レイジングハートの矛先を下ろし、なのはは言い放った。
その目に浮かぶは、母としての毅然とした光。

玉座の間。
其処に、未だ見ぬヴィヴィオの妹、もしくは弟が居る。
邪悪な存在に操られるがまま、意に沿わぬ力を振舞い続けている。
救わねば。
必ず、救い出さねば。
ヴィヴィオの姉妹・兄弟ならば、我が子も同然だ。
子を救えずして、何が母か。

『Starlight Breaker』

レイジングハートから発せられた音声と共に、桜色に輝く魔法陣が展開され、4機のブラスタービットがなのはの周囲へと布陣される。
集束する光。
嘗ては自らの命さえ賭して放たれた希望の光は、その身体へと一切の負担を強いる事なく破滅的な魔力を球状集束体として形成。
5つの魔力球が玉座への道を切り開くべく、より一層に眩い光を放つ。
クラナガン西部区画、鋼鉄の巨獣を討った際と同じく、レイジングハートを振り被り。

「スターライト・・・」

空間を薙ぎ、魔力球の中心へと突き付けられる矛先。
周囲の全てが桜色の輝きに支配された、その瞬間。

「ブレイカー!」


516 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:44:04 ID:oXnO17AK
なのはの声と共に、砲撃は放たれた。
終結するガジェットと機動兵器を次々に飲み込み、突き当たりの壁へと衝突する5条の光。
しかし、Sランク攻撃魔法にさえ耐え得るそれすらも、「AC-47β」による無尽蔵の魔力供給を受けるなのはにとっては障害たり得ない。

「ブレイク・・・」

そして、立ち塞がる全てを排除せんと、なのははトリガーボイスを紡ぐ。
悪しき者を打倒し、未来へと進む為のトリガー。

「シュート!」

一際巨大な魔力の奔流と共に、大規模砲撃が放たれる。
幾重もの防御壁を貫通し、群れ為すガジェットを蹂躙し、立ちはだかる機動兵器を粉砕し。
玉座の間へと到る扉へ着弾したそれは数瞬、強固なる多重防御結界と拮抗し、魔力光を迸らせ。

「いっけぇぇぇぇッ!」

なのはの叫び、そして無意識の内に零れたチンクの声と共に。

「・・・ッ!?」
「な・・・!?」



結界の内側、突如として迸った「虹色」の魔力光によって、跡形もなく掻き消された。



「馬鹿な・・・!?」

絶句するなのは。
チンクもまた驚愕に目を瞠り、呆然と呟く事しかできない。
2人の視線の先、「虹色」の魔力光は渦を巻き、扉へと溶け込む様にして消え去った。
後には、何も残らない。

「・・・うそ」

なのはは知っている。
あの「虹色」の光を、「虹色」の魔力光を。
2年前、ゆりかごの玉座の間、其処で目にした圧倒的な輝き。
新たに結ばれた絆と共に、自らの記憶へと刻まれた鮮烈な光。
愛しき我が子の光。



「カイゼル・・・ファルベ・・・!」



轟音。
スターライトブレイカーによって抉られた、巨大な破壊の傷跡。
その半ば、下部構造物が吹き飛び、周囲へと無数の破片を飛散させる。
我に返り身構えるなのはとチンクの視線の先で、全高18m前後の人型機動兵器が姿を現した。
恐らくは艦内の被害拡大に伴い、大型の機動兵器による侵入者撃退実行を、防衛機構が許可したのだろう。
それは即ち、艦の機能維持態勢を半ば放棄したと同義だ。
玉座の間を守りつつ、しかしゆりかごそのものを犠牲にしてでも侵入者を排除せんとする、矛盾したプログラム。
これが、バイドによる汚染の結果という事か。


517 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:44:10 ID:wCPhvYWj
いやー助けに行かないほうが支援

518 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:45:06 ID:oXnO17AK
「チンク!」
「解っている、ゲインズだ! 波動砲がくるぞ!」

なのはもチンクも、パイロットの尋問により齎された、敵兵器に関する情報は聞き及んでいる。
ゲインズ。
R戦闘機群とほぼ同等の威力を持つ波動砲を装備し、複数のバーニアによる優れた姿勢制御と高機動、内蔵された大型ジェネレーターによるエネルギー供給を受けての波動砲の連射、両者を用いての戦術攻撃を行う機体。
クラナガン西部区画を襲い、新たな廃棄都市区画へと変貌させた兵器のひとつ。
大型波動砲を肩に担いだ旧型、波動砲を陽電子砲へと換装した戦略型、波動砲が左腕部と一体化した新型など、複数の型が存在するとの情報もある。
しかし現在、彼女達の眼前に出現したゲインズは、そのいずれにも当て嵌まらぬ外観を持っていた。
なのはは思考を満たす困惑を、そのまま声に乗せる。

「波動砲が、無い・・・?」

内部構造物を破壊し躍り出た、漆黒のゲインズ。
その外観には何故か波動砲が見当たらず、両腕部には盾の様な機構が備えられている。
一体、この機体は何なのかと警戒するなのはとチンクの目前で、右腕部の盾から3m程の突起が出現。
そして、一瞬の後。

「・・・ッ! そういう事・・・!」



突起の両側面から、全長20m以上ものエネルギーの刃が2つ、並行して展開された。



「接近戦型・・・!」

呻き、レイジングハートを構えるなのは。
その隣では、チンクがスティンガーを構えている。
2人の背後からは、ウェンディと攻撃隊の皆の声
どうやら状況を察し、加勢の為に引き返してきたらしい。
そんな彼女達を嘲笑うかの様に、漆黒のゲインズは脚部と背面のバーニアを一瞬だけ煌かせ、ブレードを展開した右腕部を腰溜めに構え。



直後、その背後で、バーニアの青い光が爆発した。



爆発的な推進力により突進してくる漆黒の巨躯を、無数の魔導弾と砲撃が迎え撃つ。
古の戦船、その腹の中で、侵略者たる魔導師と王を守護せし騎士による狂宴が幕を開けた。

*  *  *

「メタ・ウェポノイド・・・またけったいなもの研究しとったもんやなぁ」

目前のコンソールを操作しつつ、はやては呟く。
転送直後に目覚めた其処は、巨大な施設の内部。
ヴォルケンリッターの3人はすぐ傍に居たものの、他の攻撃隊員の姿はなく、孤立したかと肝を冷やしたのが30分ほど前の事だ。
幸運な事に同施設内に転送されていたセインにより発見され、自身等の他に20名ほどの攻撃隊員、そしてティアナとスバル、ノーヴェ等が付近に存在する事が確認された。
すぐに合流できるかと思われたのだが、各所に存在するゲートの解放に手間取り、攻撃隊は未だ複数のエリアに散開している状況である。
しかし、ザフィーラが発見した壁面のナビゲーションシステムを起動したところ、第4管制室と表記された部屋が付近に存在する事が判明した。
それを受け、はやては独自に情報収集を行う事を提案。
結果として融合を解いたリィンを含む5人は、管制室にてコンソールと向き合う事となった。


519 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:46:10 ID:oXnO17AK
引き出されてゆく情報。
強固なプロテクトの存在が予想されたのだが、何故かそれらは既に解除されていた。
この施設の職員達がプロテクトを解いたらしいが、当の彼等が何処へ消えたのか、各管制室への入室ログが無いにも拘らず如何にしてDNAによる認証をパスしたのか等、プロテクト解除までの経緯に不可解な点が余りにも多い。
兎にも角にも、ログの解析と情報収集は順調に進んだが、しかし得られた情報の内容は到底、はやて達にとっては理解し難いものであった。

「有機質兵器開発・・・ヒトDNAの軍事利用・・・クローン胚の大量生産・廃棄・・・胎児レベルに於けるインターフェース移植経過観察・コントロールロッド応用理論・・・」
「・・・墜ちる所まで墜ちたって事やな」
「・・・狂ってる」

余りにもおぞましい言葉の羅列。
人としての倫理、その一切を切り捨てた、正しく「人でなし」による悪夢の研究。
無数の生命を侮辱し、尊厳を踏み躙るその所業。
理解などできない、できる筈もない。
やはり、彼等は。
「地球人」は、自らの知るそれからは懸け離れた存在となってしまったらしい。

「この施設1つで、最終処分場も兼ねていたみたいですね。隣接するバイド生命体研究所から比較的大型のバイド体を運搬し、実戦形式での有機質兵器運用試験を行った後に、実験兵器もろとも殺処分していた様です」
「酷い・・」
「兵器やバイド体だけではない様です、主。西暦2166年8月に、バクテリア状のバイド体による汚染が発生。272名の職員が隔離調査の後、処理場にて処分されています」

呻き声。
振り返れば、ヴィータがコンソールの前で俯いている。
その右手は口元に当てられ、肩は小刻みに震えていた。
彼女の隣に浮かぶリィンもまた、コンソール上の空間ウィンドウから目を逸らし、両の掌で口元を押さえている。
はやては2人へと歩み寄ろうとしたが、それより早くウィンドウ上に何かを見出したザフィーラがコンソールへと歩み寄り、全ての表示を閉じた。
ウィンドウ、消滅。
ヴィータの背を撫ぜつつ、ザフィーラははやてとシャマルへ視線を送る。

「主、シャマル」
「・・・リィン、おいで」
「はやてちゃん、リィンちゃんをお願いします。私は有機質兵器の詳細について、もう少し探りを入れてみます」
「分かった、宜しゅうな」

はやてはリィンを連れ、管制室を出た。
この施設は大型物資輸送用の巨大な通路が縦横無尽に張り巡らされてはいるが、研究区等の生身の人間が立ち入る区画の設計は管理局本局と大差ない。
長く続く通路の奥へと目をやった後、はやてはリィンの小さな背を優しく撫ぜ始めた。

「大丈夫か、リィン? 落ち着いて深呼吸するんや。何にも心配要らん」
「・・・はやてちゃん」

自身の名を呼ぶ声に、はやてはリィンへと耳を寄せる。
すると彼女ははやての髪を掴み、震える声で以って語り始めた。

「・・・怖いです」

髪を通して伝わる、微かな震え。
何時になく弱々しいリィンの様子に、はやては穏やかに彼女の名を呼ぶ事で応えた。


520 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:46:24 ID:kNMU8UYY
支援


521 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:46:46 ID:wCPhvYWj
ゲインズ3キター!支援

522 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:47:13 ID:oXnO17AK
「・・・リィン」
「此処、怖いです。きっと此処に居た人達は、リィンには解らない思考を持った人ばかりだったんです」
「リィン」
「あんな、あんな事・・・「人」にできる筈がありません。今まで見てきた次元犯罪者だって・・・あんな事、してる人達なんて、居なかった」
「リィン」
「「人」じゃない。「人」があんな事、できる訳がないんです。できちゃいけないんです。そうじゃないなら、リィンは「人」じゃないから理解できない・・・」
「リィン、私にも解らへんよ。墜ちた人間の思考なんか、解りたくもない」

はやての言葉に、リィンは俯いていた顔を上げる。
その涙に濡れた顔を見つめつつ、はやては自身が今どんな顔をしているのだろうと考えた。
恐らく、侮蔑と嫌悪に歪んだ表情をしているに違いない。

「はやてちゃん・・・?」
「解らんでええ。解る必要なんて無いんや。「人」としての尊厳を捨てた連中の思考なんか、理解の仕様がない。そんな事、するだけ無駄や。私達自身がそうならん様に、心に刻んでおくしかないんや」

リィンが何を見たのか、はやてには分からない。
しかし今、リィンにそれを思い出させるつもりはない。
どの道、収集した情報は事態の収束後に目にする事となるであろうし、緊急を要する事象についてはシャマルが調査している。
リィンの口から引き出すべき理由など、存在しない。

何より、態々訊ねずとも想像は付く。
この施設にて行われていた数々の研究は、そのいずれもが常軌を逸した非人道的なものばかりである。
ヒト・クローン胚を大量生産し「研究資材」として扱うに止まらず、胎児レベルにまで育成した個体を観察対象とする実験、そして「解体」による生体部品摘出など、目を覆いたくなる程の凄惨な研究・実験が行われていたのだ。
それら全ての研究目的は、突き詰めれば2つの存在へと集約される。

新たなフォース・コントロールシステム、そしてメタ・ウェポノイドと呼称される有機質兵器の開発。
これらの研究区は各々に独立しており、しかし制御系の相似から共同開発に到る事も多く、隣接する区画へと創設された。
各々の研究により得られたデータ及び技術を自らのそれへとフィードバックし、それを繰り返す事によって更なる技術躍進が起こる。
そうして数々の有機制御系及びフォースを生み出した両機関であったが、西暦2168年1月、有機質兵器研究区にて汚染体漏洩事故が発生、全施設が緊急閉鎖されるという事態が発生。
汚染は隣接区にまで及び、職員の殆どは退避する暇もなく施設内へと隔離された。
脱出艇の殆どは使用されないままに施設内へと残され、しかし目立った混乱の形跡もない。
殲滅戦が行われたのか、施設構造物の被害は甚大なのだが、その中に取り残された職員の混乱によるものと思える被害が存在しないのだ。
より大規模な異常事態に呑み込まれたか、或いは混乱する間もなく汚染されたのか。
いずれにしても、はやてからすれば因果応報としか思えなかった。

「はやてちゃん」
「・・・シャマル」

背後からの声に、はやては振り返る。
其処にはログの解析を終えたらしきシャマル、そしてザフィーラに付き添われたヴィータが佇んでいた。

「どうやった?」
「駄目です。どういう訳か、有機質兵器の詳細に関する情報だけが、完全に削除されているんです。現存する研究ログでは2167年11月19日のものが最後ですが、その時点での研究対象がメタ・ウェポノイドと呼称される存在である事、それ以外は全く・・・」
「さよか・・・」


523 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:48:15 ID:oXnO17AK
その報告を受け、暫し黙考するはやて。
しかし現状では結論を導き出す事は不可能との判断に至り、決断する。

「一先ずは此処までや。攻撃隊との合流を第一に行動、合流後に改めて施設内の探索を行う。質問は?」
「ありません」
「同じく」
「分かったよ」
「了解です」

全員からの答えにはやては頷き、自らの騎士服、その腰部に固定されたポーチ状の装備品へと目を落とした。
「AC-47β」。
はやてやシャマル、ザフィーラといった、カートリッジシステムまたはデバイスを使用しない魔導師の為に開発された、魔力増幅機構・デバイス非介在型。
増幅された魔力をリンカーコアへと直接供給するという、少なからず危険を伴うシステムではあるが、敵の強大さを考えれば許容範囲内のリスクであるとはやては考えている。
何よりこのシステムが無ければ、AMF展開状況下に於ける行動は著しく制限されてしまうのだ。
この施設の所有者達である、22世紀の第97管理外世界に於いて開発された技術を用いて製造されたという事もあり、はやて個人としては受け入れがたいものではあったが、AMFによる行動の阻害と魔力の枯渇という最大の懸念を回避できる以上、強行に拒む事もできなかった。
しかし同時に、それが齎す絶対的な力はバイド・地球軍の区別を問わず、敵に対する脅威となり得る事を彼女は理解している。
要は、使いこなせるか否かだ。

「リィン」
「はいです」

再びリィンと融合し、シュベルトクロイツ、夜天の書を手にはやては凛と告げる。
一切の淀みなく澄んだ、青い瞳。
騎士達が、呼応するかの様に姿勢を正す。

「行くで、皆」

夜天の王としての号令。
漆黒の翼を翻し、通路の先へと振り返った、その先に。

「・・・ッ!?」
「はやてッ!?」



巨大なレンズが、無機質にはやてを見つめていた。



「おおああぁぁッ!」

雄叫び。
その場の誰よりも早く動いたのは、ザフィーラだった。
一瞬ではやての前面へと躍り出ると、その研ぎ澄まされた爪を以ってレンズ、そして後方へと続く長大な胴へと襲い掛かる。
しかし、振り抜かれたザフィーラの爪が胴を断ち切らんとする寸前、先端のレンズから眩い光が迸った。

「くっ・・・!」
「あああッ!?」

線状に射出された高圧縮魔力。
ザフィーラの胴を薙ぎ、更にははやてをも射界に収めたそれ。
しかし純魔力攻撃であった事が幸いし、「AC-47β」からの膨大な魔力供給により鉄壁の防御を更に強固なものとしたザフィーラ、そして攻撃の大部分を彼によって遮られたはやてには、傷ひとつ刻まれてはいなかった。
直後、2人の後方よりヴィータが飛び出し、気合の叫びと共にグラーフアイゼンを振り被る。

「らああぁぁぁッ!」

全力を以って振り下ろされたハンマーヘッドは、しかし目標を打ち据える事はなかった。
間一髪で身を引いたそれは激しくのたうち、轟音と共に通路の到る箇所を破壊しつつ遥か先の闇へと引き込まれてゆく。
淡いレンズの光がひとつ瞬き、通路には静寂と破壊の跡だけが残った。


524 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:49:26 ID:oXnO17AK
誰も、口を開こうとはしない。
はやては呆然と佇み、ヴィータは床面へと叩き付けたグラーフアイゼンもそのままに殺意を滾らせて通路の奥を睨む。
ザフィーラは一切の感情が抜け落ちたかの様に佇み、シャマルは驚愕に口元を覆いつつ目を見開いている。
それ程までに彼等は、今しがた自身が目にしたもの、その存在が信じられなかった。

褐色の表皮。
有機物としての動きを見せながら、無機物としての特徴をも併せ持つ外観。
先端部に備えられた巨大なレンズ。

有り得ない、あってはならないのだ。
「あれ」が未だ健在である事態など、決して許されない。
許してはならないのだ。

「ザフィーラ、シャマル、ヴィータ」

感情の感じられない、冷徹な声。
未だ嘗てはやての口から発せられた事など無かった、合成音の様に無機質な声が通路に響き渡る。
3人の騎士は微動だにせず、続く言葉を待っていた。

「今の、見たか?」
「ええ、主。はっきりと」
「間違いありません。私も・・・見ました」
「・・・忘れるもんかよ」

常より更に無機質な声、そして明確な負の感情を内包せし声。
各々より返されるそれらに、はやては俯いた。

何故、「あれ」が此処に存在する。
あの時、確かに消滅した筈なのに。
皆と共に、悪夢を終わらせた筈なのに。
「彼女」が、あの優しい魔導書が、その身を犠牲にしてまで、「あれ」の復活を防いだのに。

「なんで・・・なんで・・・ッ」

小さな、消え入るほど小さな声で、ヴぃータが呟く。
その声を耳にしつつ、自身も驚く程に醒め切った思考の中、はやては事実に思い至った。

アルカンシェルの欠陥。
対象の反応消滅ではなく、虚数空間への強制転送を以って破壊と為していた事実。
もし「あれ」が、虚数空間にてバイドによって回収されていたのであれば。
その消滅を待たずして、汚染されたのだとすれば。


525 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:49:35 ID:wCPhvYWj
そう言いつつバイドの虜なはやて支援

526 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:50:56 ID:oXnO17AK
「何処まで・・・」

何処まで、一体何処まで。
地球軍もバイドも、何処まで「彼女」を侮辱すれば気が済むのか。
どれほど「彼女」の決意を辱め、嘲笑えば満足するというのか。
「彼女」の死を、意思を、その記憶を。
全てを否定して、なお足りぬというのか。

「リィン・・・」
『分かっています、マイスター。許すつもりはありません』

鉄槌の騎士が、憤怒と共に立ち上がる。
湖の騎士が、怜悧なる光を瞳に宿して下命を待つ。
盾の守護獣が、無機質な殺意を宿して闇の果てを見据える。
彼等を従え。夜天の王は「戦」の始まりを告げる。

「夜天の王が命じる。「あれ」を生かしておく事は許さん。何としても討ち滅ぼせ」

応を返す騎士達。
足が床面を離れ、宙へと浮かび上がる白き影。
薄闇の通路に、王の声が朗々と響き渡った。



「「リインフォース」の遺志を穢した、その罪。死を以って償わせたる」



通路の奥、闇の中に、無数の光が点る。
禍々しき光、穢れた魔力の光。
耳障りな破壊音と共に、先端にレンズを備えた無数の巨大な触手が、周囲の構造物を破壊しつつ我先にと押し寄せ、王と騎士達を目掛け襲い来る。
「防御プログラム」。
度重なる改変により異常変質、遂には暴走した憐れなる存在。
全てを喰らい尽くさんと、津波となって王の許へと向かう。

宛ら、12年前の様に。
12年前のあの日、曇り空の下。
彼女、リインフォースと共に戦った、最初にして最後の日。
12月24日、あのクリスマス・イヴの様に。



八神 はやては、「闇」との再会を果たす。


527 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 19:51:56 ID:wCPhvYWj
多段変身するあいつか?支援

528 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/06/02(月) 19:52:00 ID:oXnO17AK
投下終了です
支援、有り難うございました

スーパーヴァイス&フェイトタイム、なのは覚醒&はやてシス化の回でした
R戦闘機、ちらりとも出ていません

そして一応説明しておくと、ヴァイス・ディエチが転送されたのが廃棄物処理場近辺
処理場のモデルはTのステージ7「腐敗都市」、そしてSUPERのステージ5「再生処理場」です
襲ってきた汚染体は「ガウパー」、初代からの常連です

フェイト・オットー・ディードが輸送システム
モデルというかそのまんまで、Tのステージ6「輸送システム」です・・・Vのステージ4「ファイアキャスクファクトリー」に並ぶトラウマステージ
突撃してきたのが「ドップ」、輸送コンテナである意味初代最強の敵

なのは・チンク・ウェンディはゆりかごです
量産型の機動兵器が「キャンサー」、これも初代からの常連
黒いゲインズがTACTICSから「ゲインズ3白兵戦型」、ゲーム中最高ランクのカッコ良さと近接兵器のみの漢武装を装備

はやてとヴォルケン、ティアナ・スバル・ノーヴェ・セインがVのステージ5「バイオニクス・ラボ」、シリーズで凾フステージ6と並ぶ精神汚染ステージ、トラウマ注意
今回の敵は勿論、A’sの12話でフルボッコにしたアレです

Final、なんとか101機集め直して俺、感涙
そしてOF系(イメージファイト系)の開発時間の長さと使えなさっぷりにレッドポッド嫌いになる俺
取り敢えず今は、作品中で使う外道機体の確認と更なる機体ピックアップに入っています
LEOU、外道杉・・・

では、また次回


529 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:05:57 ID:wCPhvYWj
GJ!
いやー懐かしい連中ばっかだな、同窓会みたいな気分になったw次はどのステージが来るか楽しみ。
それにしても見事なまでにフェイトもはやても和解する気ねー、でも先のこと考えてられるほどバイドは甘くないぞー
なのははゆりかごでエライもんを見る羽目になりそうだぜ。
R戦闘機が次回は活躍することを期待。

530 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 20:08:10 ID:FVwCY9XE
GJ!
ヴァイススゲーw
しかしまた狙ったみたいに過去がらみの敵がぶつかってきますね。
こっちもその気殺る気気合十分な人多いですし。
いかにして立ち向かうのか、次回も楽しみです!


では自分は20:25くらいからの投下になりますね。
よろしければ支援お願いいたします。

531 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:10:11 ID:Xs9KWvUU
>>528
原作は未プレイだけどいつもながらクオリティの高い文章力、GJ!

>>530
支援を開始!

532 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:18:45 ID:CLaL9466
GJ!
ヴァイス無双w
そしてゲインズ3のエクスカリバーには要注意
破壊係数だけなら波動砲にも匹敵する上に戦闘機ばりの回避能力を持ってるから困る

地球はTACTICSでも狂人ばかりだった罠
全てを背負い戦ったあの司令官は手に余ることをやらなければいいと考察してたけど
倫理感投げ捨てないと生きていけません、バイド侵攻的な意味合いで
多分地球人類は共存には適さない種族なんだよ

533 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:20:27 ID:Tonp6rXv
>>528
GJです! 原作は詳しく知らないですが、毎度なら圧巻されるようなメカ描写に黒い表現で楽しめます。
遂に始まった対バイド内部での戦い。
なんというか修羅に目覚めかけているフェイトが、この先変わり果てたエリオとキャロに出会いそうで怖いw
彼女の戦いはバイドを殲滅し、地球軍を殺し尽くすまで終わりそうにない無限の戦いになりそうで怖い。
さりげなく部下として戦っているナンバーズたちもツボでしたw
そして、来た来たスーパーヴァイスタイム!
地上編での戦いでさりげなくエースっぷりを発揮してましたが、ここにきて化け物な強さを見せ付けましたね。
ディエチでさえ勝てないと判断する、隠れた実力者。というかなのはすらも墜とせるって、おまwww
ヴァイススキーとしてガッツポーズを取りつつ、ディエチと二人で射撃のエキスパートとしての戦いを見せ付けてくれそうですね。
無事生き延びてくれることを願いつつ、活躍すればするほど後が怖いw
ヴォルケンたちも過去のトラウマというか、そういえばアルカンシェルで消し飛ばされていたなアレと思い出しましたw
まさしく悪夢としか言いようがないw
今後どうなるのかマジで予測不可能になりつつ、次回も楽しみにしてます。

もう一度言います。GJでした!

534 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 20:25:36 ID:FVwCY9XE
それでは、そろそろ投下を開始させていただきますねー

535 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:25:56 ID:wCPhvYWj
俺の愛機アルバトロス待ってる。

536 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 20:26:32 ID:FVwCY9XE
 
「あの……忙しいところ、スンマセン! この写真に写っとる男の子、どっかで見ませんでした?」

 朝から空を覆っていた雲は、いつしか暗く、重い雨雲へと変わっていた。
 梅雨時の空は、ばらばらと大きな音を立てながら地面に雨粒を叩きつけて大地を潤し、
行き交う人々はそんな空に複雑な表情を向けながら家路を急ぐ。
 そんな中、色とりどりの傘の下から傘の下へとちょこまか行き来する小さな白い影があった。

 武ちゃ丸だ。

 一枚の写真だけを手に、降りしきる雨を省みることなく、
あの騒ぎの中で姿を消したススムを探し続ける武ちゃ丸。
 だが、しかし。

「……いや、見なかったね」
「ごめんなさい、私は知らないわ」
「わっ、武者だ! 本物初めて見た! 写メ撮ってもいーい? えっ、男の子? あたし知らなーい」
「まずは警察に行きなさい、そんな事をしても見つからないよ」
「悪いけど、今急いでるので……」
「…………」
「知らねぇよ! 邪魔すんなこのチビが!」

 ススムの行方を知る者は誰もおらず、厳しい言葉を投げ掛けられた事も数知れない。
 それでも武ちゃ丸は起き上がり、ただ前を見る。
 前を見て、わずかな可能性にすがって次の情報を探し求める。
 それがススムを一人にし、こんな事態を引き起こした自分にできるたった一つの事だから、と。

「スンマセン! この写真の男の子ぉ、どっかで見ませんでした!?」

 そうしてただやみくもに突き進む武ちゃ丸であったが、その前についに道が開く事になる。

「あ! コイツだよ、コイツ! さっき家に来た不審者!」
「ヴィータ? あんまり失礼なこと言うたらあかんよ?
 うちの子がごめんなさい……って、あれ? ひょっとして武ちゃ丸くんとちゃうの?」

 一瞬、武ちゃ丸には何が起こったのかよくわからなかった。
 背中から声をかけたのは、赤毛の少女に押されて往来を行く車椅子の少女。
 彼女らが振り向き、互いの顔を認識したその時、彼の思考は停止してしまったためだ。

「もー、そんなにずぶ濡れになって……風邪ひくよー?
 ススム兄ちゃんはどないしたん? 一緒とちゃうのん? なんで海鳴にいてるん?」

 彼はその少女を知っていた。
 なぜなら、彼女はススムと同じく日本で初めて出会った大事な友達の一人だから。
 最初に会った時と同じように、目を輝かせて次々と質問をぶつけてくる車椅子の少女。
 その言葉にすぐに現実に引き戻された武ちゃ丸は、その顔をまじまじと見つめる。
 彼女の名は…… 

「は、や……て……?」
「うん、そやで!」

 薄暗い、夕暮れの街角で再び出会った武者と少女。
 この瞬間、彼らを取り巻く運命がまた一つ音を立てて動き出した。


537 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:26:52 ID:9rr0Pgrp
地上最強編が最近やっと揃った支援

538 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 20:27:08 ID:FVwCY9XE
 
 巻之壱拾九「それは大いなる危機やでっ!」



「狭い所で悪いが、ゆっくりしてほしい。
 話は少し長くなりそうだし、まだ雨もやまなさそうだしね」

 シュボッと、快い音を立てて笛吹きケトルがガスコンロの火にかかる。
 お茶を淹れる準備をしながら、穏やかな声でそう話しかける少年、クロノ=ハラオウンは
今の姿こそどこにでもいるような普通の男の子である。
 だがしかし、彼はさっきまで黒いコート……魔法により構成された防御の法衣
バリアジャケットを身に纏って、魔法の杖を片手に力を行使して見せ、
なおかつ自分は「時空管理局」なる耳慣れない組織に属する人間だと言ってのけた人物だ。
 そんな突拍子もない事を言いだされても正直、困る。
 魔法を用いるなのはやその組織の事に詳しいユーノはまぁ問題ないだろう。
 問題は本当に何も知らない一般人組の方にあった。

「あ、いえ、お構いなく……」

 見るからにお嬢様然としたすずかは丁寧に、かつ無難に会話のキャッチボールをこなす。
 よし、これならまぁ穏便に進むだろうと、なのはとユーノはほっと胸をなでおろす。
 ただし……

「何だよ、殺風景な部屋だなー。マンガや雑誌の一冊も置いてないのかよ?」
「そうよねぇ。魔法の国から来たイケメンの秘密基地だって言うから、
 こう、もっとミステリアスだったりファンタジックなのを想像してたんだけど……
 これじゃあただのビンボ臭いテナント事務所じゃない」
「ねー、お茶よりおなかすいたよー。お団子かなにかなーいー?」

 後から余計な言葉をぶちまける三人が、それをすべて台無しにさえしなければ、であったが。

「……いや、確かに僕はゆっくりしてくれと言ったけど……まぁ、いいか」
「すみません、すみません、すみません!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」

 こんな時に尻拭いをさせられるのは、いつだって常識を持っていたり、事情に詳しい者だ。
 わずかに顔をしかめるクロノに対し、なのはとユーノは平謝りを繰り返すことしかできなかった。

「いや、君がそこまでする必要はないよ、高町さん」
「あれ? 僕もおんなじように謝ってるんだけど、その反応はどうなの?」
「なのはでいいよ、えっと……クロノ、くん」
「……へっ!?」
「ちょっとなのは、僕の話はまだ終わって……って、えぇっ!?」

 なのはの何気ない一言に、一人と一匹が過剰なまでの反応を見せる。
 一人はさくらんぼのように顔を真っ赤に、一匹は目を見開いて
顎が外れんばかりの勢いであんぐりと大口を開けて彼女を見つめ返した。

「あ、あの、今なんて……」
「クロノくん?」
「ごめん、よく聞こえなかった。もう一回、かまわないかい? ……な、のは」
「クロノくん」
「もういっか……」
「シャーッ!!」

539 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:27:35 ID:c+/L0kv+
GJ
この終わらぬ悪夢に終止符をうったら管理局は地球に博物館を作らせるべき
それとチームR-TYPEも解散させないと

540 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 20:27:45 ID:FVwCY9XE
 クロノは、なのはの言葉を反芻するかのように、耳から脳に送りこむ。
 それも何度も何度も。
 彼の幸せそうな表情を面白くなさそうに見つめていたユーノは、我慢の限界に達したのだろうか、
長い体を精一杯伸ばして後ろ足で立ちあがり、大して鋭くもない牙を剥いてクロノを威嚇し、
何とかアドバンテージを得ようと彼なりの自己主張を行った。
 流れを正常化するためという大義名分を掲げつつ。

「話があるんじゃなかったんですか、執務官!?」
「いや、そのためにも互いの名前を確認する事は非常に重要だ」
「さすが職権濫用は管理局のお家芸ですね! 何か別のやましい意図が見え隠れしていますよ!」
「それは君の考え過ぎだ! そもそもそういう不埒な考えに至る事自体、
 君が邪な眼を持っている証拠に他ならないと僕は考えるけどね!」

 一人と一匹は目から火花が出ているのではないかと思えるほど厳しい目つきで睨みあう。
 そして、その心の内では。

 ――こいつは敵だ!

 男としての本能が、目の前の相手をそう認識していた。
 もはや、きっかけさえあれば、すぐにでも取っ組み合いになりそうな空気である。
 
「二人とも、喧嘩はだめーっ!」

 だが、それも両者の間に割って入った影によって遮られる事となった。
 騒動の原因となっているなのはの一言によって、クロノとユーノはぴしっと姿勢を正し、
直立不動の体勢を取った。まるでお預けをくらった飼い犬のように。
 なのははそんなユーノを抱え上げると、至近距離から目と目を合わせ、
少し濡れた鼻先に人指し指を突き立てて、ぷりぷりしながらお説教タイムの幕を開いていた。

「もう、ユーノ君! 初対面の人にそういう態度、よくないと思うよ?」
「それは、その……ごめん」

 いっぺんにしゅんとなってしまったユーノを見、クロノはいい気味だとほくそ笑んだ。
 それを察知したわけではないだろうが、なのははその凛とした目を、
今度はキッとクロノに向けて第二ラウンドの開始を告げる。

「クロノ君もだよ? やっと、まともに私達とお話ししてくれる人だって思ったのに……
 こんな事で喧嘩になって、全部だめになっちゃうなんて……私、もういやだ!」

 ここまで来てやっとユーノは気がついた。
 気丈ななのはが今にも泣き出しそうな、悲痛な顔をしている事に。
 それはそうだろう。友が次々と傷ついていく中で、やっとあの黒衣の少女……
フェイトに想いが届くかと思った矢先に、あの異次元からの横槍である。
 自分の努力が及ばないのなら、その結果は受け入れなければなるまい。
 だが、先程の場合はそうではない。
 今回にしたってそうだ。ユーノとクロノが彼女の意思を置き去りにして口論を始め、
些細な事で話をこじらせようとしている。
 普段ならば、彼女が気に留めるほどの事でもないだろうが、
意識の外からの妨害に弄ばれる彼女には、もう耐える事は限界になっていたのかもしれない。
 そんななのはの様子にクロノもようやく気付いた様子で、彼とユーノは四方八方から浴びせられる
非難の視線と、小さく嗚咽まで上げ始めたなのはに追い詰められあたふたとし始める。
 そして、憎々しげな視線を互いに交わした後、笑顔を引きつらせながら
クロノはなのはの腕の中のユーノをひょいと抱え上げ、表面上相手と友好的な姿勢を保ちつつ、
なのはに話しかけた。

「や、やだなぁ、なのは。僕達喧嘩なんかしてないよ?」
「そ、そうだとも。これはミッド……僕の故郷流のコミュニケーションの一種なんだ。
 だから僕達はとても仲良しさんだよ? 一目会ったその瞬間から……」

541 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 20:28:24 ID:FVwCY9XE
 明らかに嘘臭い言い訳に反応し、なのははゆっくりと顔を上げる。

「本当?」
「ほ、本当だよ」
「嘘じゃない?」
「もちろんさ、誓ったって構わない」

 何とも言えない空気がその場に立ち込め、沈黙が訪れる。
 よほど腕の悪いペテン師だってもう少し気の利いた事を言うだろうに。
 一拍の間を置き、なのはは満面の笑みをもって一人と一匹の言葉に答えた。

「よかった! 私、二人の相性はそんなに良くないんじゃないかって、そんな風に思っちゃったの。
 だって、二人とも大好きなお菓子を取りあうやんちゃな子供に見えたんだもの」

 天然なのか計算なのか、いやに本質をとらえた発言で、ただでさえ引きつっている
クロノとユーノの笑顔をますますぎこちないものにさせるなのは。
 そんなやり取りを傍からさめた目線で一連のドタバタを眺め、アリサはこう評した。

「あれ、二人とも将来女の尻に敷かれるタイプね」
「それが下級生のセリフかと思うと、俺はこの国の将来が恐ろしいよ」
「大丈夫よ、あたし日本国籍じゃないから」
「そういう問題か?」

 そんなアリサに対し、冷静に、かつ迅速に突っ込むシンヤ。
 五年生が三年生相手にそんな口を利いた所で、二人とも背伸びしているようにしか見えないのだが、
本人たちの名誉のため、そこには触れない事とする。

「それより……今、あんまり冗談とか言っていられないはずだと思うんだけど、
 何でみんなそんな余裕なの……?」

 そんな時、すずかがぽつりとつぶやいた言葉が部屋の中の体感温度を一気に氷点下にまで下げた。
 改めて確認するまでもなく、ハッキリ言って彼女の言う通りだ。
 友達は魔法使いで、そのペットは喋る動物。
 武者頑駄無とまともに戦えるどころか倒せる力を持った女の子と、その背後にいる謎の女。
 そのせいでススムは行方不明となり、武ちゃ丸はこの雨の中でまだその行方を捜している。
 ろくな説明もせず、だらだらとコントをやっている場合などではない。
 それに気付かされたその時、特に示し合わせたわけでもないのに、
一斉にその場に居合わせた面子の視線がクロノに注がれる。
 
「あー……そうだね、その通りだ。さて、何から話そうか……」

 観念したように、クロノは頭に手をやりつつ語り出した。
 頭を整理して、一番相手が欲しているであろう情報を探りながら。




「なるほど。武ちゃ丸君は、ススム兄ちゃんと一緒にわたしの家まで
 サプライズお見舞いに来てくれたはええんやけど、いっぺん家に来たらわたしはおらへんかった。
 うん、その辺はヴィータから聞いた通りやね」
「そうそう、そやからさっきから何べんもそう言うてるやん?」

 その頃、武ちゃ丸は渡されたタオルで体中を拭きながら、ちょっとした尋問を受けていた。
 尋問と言ってもその内容は事実の確認程度、行っているのは見知った顔の少女、
場所はその少女、八神はやての自宅であるが……

542 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 20:28:50 ID:FVwCY9XE
 ――なんや、視線がごっつう気になるわぁ……

 あの騒がしい武ちゃ丸が借りてきた猫のように大人しくしていた。
 理由はただ一つ。この家の住人が自分に向けてくる視線のためである。
 武ちゃ丸としては嘘をついているのだから、はやての視線をそう錯覚するのも無理はないが、
どちらかというと周りから一斉に注がれる疑惑の眼差しの方が恐ろしい。
 メンチを切っているというレベルでなく、もはや殺気すら感じるほどだ。
 先程ススムと一緒に出会った赤毛の少女ヴィータと、蒼い毛並みの大型犬ザフィーラ。
 彼女ら以外にも、桃色がかるまでにきめ細やかなブロンドの長髪をポニーテールにまとめ、
名だたる剣豪のような問答無用の威圧感を振り撒いている長身の女性、シグナム。
 そして、表面上は穏やかそうだが、その瞳の奥では冷酷な策謀を巡らせているように見える
短く切りそろえた金髪で、落ち着いた雰囲気を纏った女性、シャマル。
 彼女達から、気の弱い者なら軽く射殺せそうなほどの強烈な熱視線がまとめて送られてくる。

 ――いやいや、気のせいや。初対面やからみんな照れとるんや、うん。そういう事にしとこ!

 首を横に二、三度往復させ、雑念を振り払う。
 大体、堕悪闇軍団の侵略とジュエルシードの件さえ除けば
歴戦の猛者である自分が迂闊にも平和ボケしてしまうほど平穏なこの日本で、
何ゆえ人間からこんな仇敵を見るような眼光を送られなければならないのだ?
 気のせい以外であるはずがない。と言うか気のせいであってほしい。

 ――っちゅうか……そもそもこの人ら、一体何者なんや?

 と、ここで武ちゃ丸の脳裏を当然ともいえる疑問がよぎる。
 武ちゃ丸はごく短い間の事しか知らないが、はやてが大阪に住んでいた頃には
同居を申し出るような親類縁者はいなかったはずだし、どう見ても彼女らは日本人に見えない。
 ススムではないが疑問の一つも抱きたくなるというものだ。

「武ちゃ丸君!」
「ひゃいっ!?」

 と、しばし横道にそれていた思考を見抜かれたのか、
耳元ではやてが大声で武ちゃ丸の名前を叫び、強制的に疑問は中断される。

「な、何でしたでしょ!?」
「んもぅ、話してる途中やのに、よそ見してたらあかんよー?
 そんで、出直していっぺん材料買いに向かったらススム兄ちゃんとはぐれた……
 武ちゃ丸君はそう主張したいわけなんやな?」
「相変わらず疑り深い子ぉやなー。全部その通りやて!」

 やはりまだ視線が痛い。
 心にやましい事があると、まっすぐな視線はここまで心の奥底を抉るように鋭いものなのか?
 そう思っていると、ふっ……と、目の前のはやての瞳にわずかな悲しみの色が浮かぶ。
 
「……やっぱり。武ちゃ丸君、嘘ついてるわ。
 例えばススム兄ちゃんの目ぇはごまかせても、私はそうはいかへんよ?」

 その瞳は、まるで全てを見通す千里眼のよう。
 痛い所を突かれ、見るからに狼狽する武ちゃ丸に対してもなお、はやては追及の手を緩めない。

「な、な〜んのことやろ? ワイさっぱりわからへ……」
「ごまかしたかてあかん! 嘘つく時、周りをきょろきょろするんは武ちゃ丸君の癖やもん。
 なぁ、教えてくれへん? 何があったん? ススム兄ちゃん、いったいどないしはったん!?」

 どこからこれほどの力がわいてくるのかと驚かされるほどに、
武ちゃ丸の両肩をつかみ、はやては勢いよくがくがくとその体を揺らす。
 もう黙ったままでいるのは不可能だと悟った武ちゃ丸は、しぶしぶはやてに告げた。
 「とある事件」に巻き込まれ、ススムが神隠しにあったかのように消えてしまったという事を。

543 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 20:29:31 ID:FVwCY9XE
「ようわかったわ。話してくれておおきにな。それで、武ちゃ丸君はどないするん?」

 沈痛な面持ちを崩さぬまま、はやては武ちゃ丸に問いかける。

「シュシュムを見失うてしもたんはワイの責任や。そやから絶対ワイが見つけ出して……」
「手がかりは? ヒントの一つでも見つけられたん?」
「そ、それは……」

 かつてないほどに厳しい口調で武ちゃ丸を問い詰めるはやて。
 周りの人たちの影響なのか、少し見なかった間に精神的に強くなっているようだと、
こんな大変な時だというのに、頭のどこかで武ちゃ丸はそう感じていた。

「やっぱり! そんなとこちゃうかって思たんや。
 ざーざー雨降ってんのに、ずぶ濡れになってまで探してたし……
 そんな無茶苦茶して病気とかになって、一番怒るのは誰や思う? ススム兄ちゃんやで!」
「あう……」

 その強くなったはやてに、武ちゃ丸は完璧なまでに言い負かされ、二の句が継げなくなってしまう。
 野ざらしに会い、ぼこぼこになったアルミのバケツのような見るも無残なへこみ方をして
しゅんと落ち込む武ちゃ丸を見やり、ちょっと言い過ぎたかと思い直したはやては
彼を取り囲む自分の「家族」にその視線を移し、問いかけた。

「なぁ、みんな。ちょっとかまへんかな?」
「何でしょう、ある……」
「わー! わーっ! な、何かしら、はやてちゃん?」

 はやての言葉に、今まで沈黙を守っていた家人の中から真っ先にシグナムが答えようとするのを
引きつった作り笑いを浮かべたシャマルが遮り、彼女に代わって応じた。

「ある……何やて? えっと、シグナムはん何言うつもりやったん?」
「な、何でもないんですよー? そんな事よりはやてちゃん!?」
「はいはい、シャマルはあわてんぼさんやなー」

 このまとめ方は何かが違う気がする。

「さっきも紹介したけどこの武ちゃ丸君と行方がわからんようになってるススム兄ちゃんはな?
 わたしがここに引っ越してくる前、ひとりぼっちやったわたしと仲良うしてくれた、
 大事な大事な友達なんや」

 ここまではすらすらと、誇るような語り口で武ちゃ丸とススムの事を改めて説明する。

「そやけど、二人が困ってるのに私は足がこんなんやし、偉そうな口聞くばっかりで
 何のお手伝いもしてあげられへん。そやから、そやから……」

 だが、それもここまで。
 はやては自分の膝に目を落とすと、そこから先を言い淀んでしまう。
 家族に対して気が引けてしまい、どうしても次の句が告げられないのだ。
 「悪いけど、わたしのわがままにちょっと付き合うてくれへん?」という一言が。
 そんな主の様子を察し、すっくと立ち上がった影があった。

544 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:29:55 ID:CLaL9466
支援

545 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 20:30:07 ID:FVwCY9XE
「ザフィーラ?」

 ゆったり寝そべっていながらも、油断なく武ちゃ丸を睨み続けていた
鋭くも優しい目つきをした蒼い毛並みの獣……ザフィーラが、彼女の手の届く範囲まで歩み寄る。
 そんな愛犬の仕草にふっと表情を緩めたはやてはその首を優しく抱え、意志を確認した。

「……かまへんか、ザフィーラ?」

 二、三度瞬きしたその姿は肯定と受け取ったように見える。
 例のアルフではあるまいし、どう考えても犬が人間の意志をそこまで汲み取れるとは思えないが、
そんなはやてとザフィーラの姿はごく自然に会話を交わしているようであった。
 そう思っていたところ、不意にはやてが再び視線を武ちゃ丸に合わせ、こう言った。
 
「あんな、武ちゃ丸君? ちょうわたしらから提案があるんやけど……」




「じゃあ、まずは改めて僕の話から始めようかな」

 一方、時空管理局海鳴(仮)出張所。
 いれたての紅茶をテキパキとテーブルに並べ、雰囲気が落ち着いた所で
クロノはえへん、と一息ついて居並ぶ一同を前に話を切り出していた。

「名前はもう言ったはずだけど、 僕はクロノ。クロノ=ハラオウン。
 この世界とはちょっと違う……遠い、遠い所にある国から来たんだ。
 そして……」
「何のために? やっぱり堕悪闇軍団を退治しに?」
「そんな事より! どうしてなのはがいきなり魔法使いになってて、
 ユーノはおしゃべりマスコットになってるのよ!?」
「あんたの話なんてどうだっていい! トッキーはどうなんだ、トッキーは!?」

 話し始めた途端、質問が矢のようにクロノに浴びせかけられる。
 その上当惑する彼を差し置いて、その発言主である当の彼女らは、そこから派生する
自分たちの会話にその意識をそらし始めていた。

「トッキーなら大丈夫よ。鮫島に預けて、すずかん家まで送らせたのは見てたでしょ?」
「そういう事じゃねぇよ、すずかの家に預けても大丈夫なのかって言ってんだ!
 今は頼みの爆流頑駄無も来てなかったはずだし……」
「それなら大丈夫だよ! お姉ちゃん、何度か爆流さんのお手伝いしてて自信付いたって言ってたし、
 きっとトッキーさんも大丈夫だよ」
「ホントに大丈夫なのか? オレ、まだその人に会ったことないんだけ……」
「……き・み・た・ち!!」

 その時、鬼神が海鳴に降臨した。
 広大な次元世界を揺るがすその心の叫びを耳にした者は数少ない。
 振りまく怒気は大気を揺らし、ぴりぴりとガラス窓を震わせ、
 全身からは青白い魔力を陽炎のように漂わせる。
 彼の名はクロノ=ハラオウン。
 その存在をお子様たちに無視された男であった。

「質問は後でまとめて受け付けるから今は僕の話を聞いてくれ!
 と言うか、途中から質問の内容すら僕に全く関係なくなってるじゃないか!?」

 鬼神ことクロノは声を張り上げ、お行儀の悪い三人組を一喝する。

「お、落ち着いて、クロノ君……」
「大変ですねぇ、執務官殿?」

546 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 20:30:29 ID:FVwCY9XE
 なのはは冷や汗を垂らしながら、ユーノはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら、
そんなクロノにほとんど同時に声をかける。

「すまない、なのは。僕も少々熱くなりすぎたみたいだ。
 あとそこのケダモノはもう喋らないでくれ。今後一切フォーエバー」
「ちょっと待って! それ、僕となのはの扱いに天地の差があるよね!?」
「妥当な対応じゃないか。君は今更何を言っているんだ?」
「こ、このエセ紳士め!」
「もーっ! ユーノ君、クロノ君!?」

 またも先程と同じような展開を繰り返すクロノ達。
 そんな彼を見、さっき怒鳴られたシンヤとアリサはこそこそと耳打ちをして囁き合う。
 二人とも先程のことを根に持ったのか、嫌みったらしさをふんだんに浮かべた白い目をして。

「言ってる自分の方が脱線してるわよ?」 
「これだからエリートぶってる奴は……」

 クロノは明らかに聞こえる事前提で叩かれている陰口に顔をむっとさせつつも、
自分は彼らより年長者なのだからと、努めて平静さを示しつつ、話を戻す。

「とにかく、だ。今は大人しく僕の話を聞いて!
 話がロクに進みやしない……」
「ごめんなさい……ほら、アリサちゃんも、シンヤさんも!」
「そうだぞー、悪い子はお尻ペンペンされるんだぞー?」

 ここまできて、やっと減らず口を叩いていた二人が沈黙する。
 優等生なすずかはまだしも、明らかにお子ちゃまな羽丸にまで追い打ちをかけられるに至り、
ようやくささやかなレジスタンス活動は収束の気配を見せた。

「全く……僕はそこにある時空管理局という組織に属している。
 っと、時空管理局というのは、次元世界……わかりやすく言えば
 この世界で例えると国連の機関みたいに、違う世界同士の間で起こるトラブルを解決するための、
 警察と裁判所が一緒になったみたいな組織だよ。
 僕はそこの執務官として、前線で物事に対応している」
「しつむ……かん?」

 きょとんと、同じようなちんぷんかんぷんといった表情を並べて、
アリサと羽丸が同時にクロノに声をかける。

「ん? あぁ、この世界にこの役職の概念はないからわかりづらいか。
 うーん、前に資料の映画で見た西部劇のシェリフが一番近いのかな。
 あれも警察官なんだけど、悪人を裁いたりもするだろう?」
「あ、それだったらわかるわ。けど、あなたどう見ても子供じゃない?」
「失敬な。君達よりは年上のつもりだけど?」
「でも……」

 その先、すずかが言うであろう言葉はクロノにとっては容易に想像がつく内容だ。
 恐らく「それでも、十分に子供と呼べる年齢じゃないか」であろう。
 ミッドチルダのこうした慣習になじみのない世界の者から毎度のように言われ続けてきた言葉だ。
 だから、クロノは普段と同じように表情も変えずにしれっと言い放つ。

「僕達の世界は就業可能な年齢が君達の住むこの国より低くてね。
 技能を認められさえすれば僕よりもっと小さい子供でも働く事ができるんだ」

 それを聞き、アリサの瞳は羨ましそうに輝いた。

「へぇ、ちょっといいかも。才能の有効活用って感じ」
「俺はやだね、そんなの。めんどくさいし。
 それに、仕事、仕事って血相変えたって何にもいい事ないぜ。
 そんな事より……」

547 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 20:30:52 ID:FVwCY9XE
 シンヤは遠い目をして、「仕事」という言葉に隠されたもう一つの現実に思いを馳せながらも、
クロノが話そうとしていた言葉を追求する。

「違う世界同士のトラブルを解決って言ってたよな。って事は、あんたが来た理由って……」

 シンヤの、デザイングラスの奥の瞳がぎらりと鋭く光る。
 ベテランの刑事である彼の父がそのまま乗り移ったかのような、真実を見据える猛禽のごとき眼だ。

「その通り。第97管理外世界……君達の住むこの『地球』に
 未確認の次元世界からの干渉が確認された。もう半年前の事だ」
「それって頑駄無さんたちと、堕悪闇軍団の!?」
「やっぱり、か」

 なのはが漏らした言葉に、そして納得がいったと言わんばかりに腕組みして
深く椅子に体重を預けるシンヤに対し、クロノは無言で頷き、肯定の意思を示す。

「僕達管理局は、未知の存在である彼らの監視をするためにやって来たんだ。
 そして調査の結果、地球の常識を超える戦闘能力を持つ存在同士の争いが
 この日本を舞台に行われようとしている事を知った。
 その原因が……」

 そういいながら、クロノはなのはの膝の上にちょこんと座っていたユーノに首を向ける。
 その意図を察したユーノはすぐさまクロノの言葉を補足した。

「ジュエルシード、ですね」

 ユーノの発した「ジュエルシード」という言葉に対してすずかが口を開き、アリサもそれに続く。

「あ、それはさっきなのはちゃんやシンヤさんから聞きました。
 生き物の想いを力に変える魔法の宝石……ですよね?」
「けど、制御がきかなくて、この間街がジャングルになっちゃったみたいに、
 とんでもない事件を引き起こしちゃうっていうのも聞いたわ」

 予想外に彼女らが事態を把握している事に軽く驚きながら、クロノは話を続ける。

「うん、おおむねその通りだ。
 スクライア一族から捜索依頼の出ていた第一級指定ロストロギア『ジュエルシード』の情報が、
 どこからか彼らの世界に漏れていたらしい。
 ここ最近、日本各地でアレが原因と思われる様々な怪事件が持ち上がっている。
 そのうちいくつかは君達も現場に居合わせ、封印してきた……そうだね?」
「蜘蛛男の一件とかでっかい樹が生えてきたアレとか、新幹線乗っ取られたり……は、違うか。
 福岡で化け物鳥とやりあった時と、魔刃頑駄無に襲われた時。
 あとはついさっき……関わった事件は5つだな」
「うん。それで、今持っているのが……ひぃ、ふぅと、あと一つ、
 シャチョーさんから預かったのも入れて3つだね」

 なのはは今までの戦いを思い返し、苦労の末に自分たちが獲得したその結果を
指折り数えて勘定した。
 と、そこで彼女の脳裏をさっと疑問がよぎる。

「って、そう言えばロストロギアって何?
 あのフェイトちゃんもジュエルシードをそう呼んでいたけれど」
「な、何だか妙に知識が偏ってるね、君達は……」
「あぁ、そういえばそこの説明はしてなかったっけ」

 貴様が元凶かとユーノをジロリと見やりつつ、クロノは「ロストロギア」について語り出す。

548 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 20:31:23 ID:FVwCY9XE
「ロストロギアというのは、ジュエルシードに限らず遺失世界の遺産……
 技術が進化しすぎて、それが元になって滅びてしまった過去の文明の危険な忘れもの。
 それらを総称してロストロギアと呼ぶんだ。
 本来なら然るべき手続きを以って、然るべき場所に保管されていなければならない代物だよ」
「オーパーツみたいなものかしら?
 その時代の文明レベルでは絶対にありえないはずの道具がひょっこり出てくるって言う……」
「そんな生易しいものじゃない!」

 思わずクロノの口調が荒くなる。

「ジュエルシードの恐ろしさは君達も知っているだろう?
 あれは次元干渉型のエネルギー結晶体……条件と、数が揃えば次元震を引き起こす。
 最悪の場合は次元断層を発生させて、世界一つどころか隣接するいくつもの世界まで
 同時に崩壊させてしまう危険性を秘めた、最悪のロストロギアの一つなんだ!」

 クロノが言い終えると、短い沈黙がまた流れるが、程なくしてぽつりぽつりと
その言葉の意味を己なりにかみ砕いた者からそれを破る発言がこぼれだした。

「……言ってる事の意味は、正直難しくてよくわからないけど……」
「堕悪の手に渡っちまったり、ほったらかしのままにしといたら
 滅びてしまうのはオレ達の世界だけで済まないって事はわかったぜ」

 目の前の少年少女たちの予想以上の飲み込みの良さに感心しながら、
クロノは大きく頷いて、彼らの考えが間違っていない事に対する表現とした。

「それさえ伝われば十分だ。
 過去に、実際そんな事例が記録されていてね。僕らはそれを繰り返すわけにいかないんだ」
「彼の言う通りだよ。僕はそれを掘り出してしまった張本人……
 だから、何としてもこの手で最悪の事態を止めなきゃいけないと思って、
 この地球にやってきたんだ」

 カップを持つ手に力がこもるクロノに引き続き、ユーノも改めて己の決意を語るが
その独断での行動に厳しい意見が突き刺さる。

「だけど、それは勇敢であると同時に無謀でもある!
 その上、君達は民間人だろう? ここまで多くの人を巻き込んでしまうなんて……」

 クロノの叱責に、ユーノがシュンと頭を下げながらその辺りの事情を説明する。

「情けない話だけど、僕は力を消耗しすぎてしまったので……
 なのはや武ちゃ丸、トッキーさんに手伝ってもらって、何とかここまで来れたんです」
「それで、君はそんな獣の姿をとっているという訳か。
 けど、さっきの様子を見る限りでは無駄に元気が有り余っているようだ。
 もうそろそろ君も元の姿に戻っても構わないんじゃないか?」
「あーはいはいそうですね、聡明な執務官殿のご指示にありがたく従わせていただく事にしますよ」

 なのはに睨まれながらクロノとユーノはまたも刺々しい言葉のやり取りを交わす。
 直後、ユーノが空いたスペースにたっと駆けだし、しっかりと地面に腰を落ち着けて
眉間にしわを寄せながら瞑目すると、緑色の光が部屋を包む。
 そして……

「ふぅ……」

 光が収まった後。
 ユーノがいた場所に立っていたのは見た事もない、異国のものとしか形容できない服を着て
優しげな眼をしたなのは達と同じくらいの年頃の男の子だった。

549 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 20:31:57 ID:FVwCY9XE
「びっくりさせちゃったかな、アリサ、すずか、それに羽丸?」

 二人の少女が目を見開き、口をぱくぱくとさせている。
 対照的にその間に座っていた幼子はきらきらと目を輝かせて叫び声を上げた。

「すっげーっ! いたちって変化の術が使えたんだー! 人間に化けたー!!」
「いや、逆だよ、逆……今まで動物の姿を借りていたんだ。
 なのはにこの姿見せるのは久しぶりになるのかな?」

 だがしかし。
 ユーノであると思われる少年の思惑とは裏腹に、当のなのはも目をまん丸にして、
ふるふるとぎこちない動きで彼を指差し、完全に固まっていた。

「あ、あ、あ……」
「あ、あれ? なのは?」
「ふぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 直後。 
 普段からは想像できないなのはの大声がユーノの耳をつんざいた。

「ユーノ君って、ユーノ君って、あの、その、何!?
 えーと、だって、嘘!? えぇぇぇぇぇぇっ!?」
「ユーノ君は人間だけどフェレットでフェレットだけど人間で……」
「ありえないありえないありえないだって一緒にプールとか行ったしありえないありえないありえない」

 なのはが、すずかが、そしてアリサが各々思うがままに錯乱している。
 クロノはそんな彼女達の反応にあたふたしているユーノを楽しそうに、
そう、実に楽しそうに見つめていた。

「……どうやら、君達の間で何か意見の相違があるみたいだが?」
「一々笑いをこらえなくてもいいよ。何? そんなに今の状況楽しいですか?」
「君の想像に任せるよ。
 ただし、プールの件については……後で詳しい事情を聞かせてもらう事にしようか」

 このキザ執務官め、いつか目に物見せてやると心に誓いつつ、ユーノはなのはに問いかける。

「えーと、なのは? 僕達が最初に会った時って、僕はこの姿じゃあ……?」
「違う違う! 最初からフェレットだったよぉ!」

 その内容は彼にとって意外なものであったらしい。
 まさに鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。

「え? えーと、ちょっと待ってね……」
「一○さんかお前は?」

 突っ込みを入れたシンヤではないが、日本人なら誰しもが
頭の中に木魚の音を流しそうなポーズをとって、ユーノはしばし考え込む。
 そして、その結果。

「あーっ!
 そ、そうだそうだ! ごめんごめん、そういえばこの姿見せてなかった!」
「だ、だよねだよね、そうだよね!
 あー、びっくりしたぁ……けど、シンヤ君はあんまり驚いてないね?」

 どうやらようやく互いの認識のずれが埋まったようである。
 誤解が解けたところで、今度は一人冷静であり続けたシンヤに話が飛んだ。

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