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リリカルなのはクロスSSその68

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:36:36 ID:FVwCY9XE
ここはリリカルなのはのクロスオーバーSSスレです。
ガンダム関係のクロスオーバーは新シャア板に専用スレあるので投下はそちらにお願いします。
オリネタ、エロパロはエロパロ板の専用スレの方でお願いします。
このスレはsage進行です。
【メル欄にsageと入れてください】
荒らし、煽り等はスルーしてください。
ゲット・雑談は自重の方向で。
次スレは>>975を踏んだ方、もしくは475kbyteを超えたのを確認した方が立ててください。

前スレ
リリカルなのはクロスSSその67
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1211711766/

*雑談はこちらでお願いします
リリカルなのはウロス感想・雑談スレ38(避難所で進行中)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1212250295/

まとめサイト
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/

避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/

NanohaWiki
ttp://nanoha.julynet.jp/

R&Rの【リリカルなのはStrikerS各種データ部屋】
ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/index.html


2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:38:21 ID:FVwCY9XE
【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
 http://gikonavi.sourceforge.jp/top.html
・Jane Style(フリーソフト)
 http://janestyle.s11.xrea.com/
・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認してダブルブッキングなどの問題が無いかどうかを前もって確認する事。

【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は感想・雑談スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
 前の作品投下終了から30分以上が目安です 。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。

【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
 議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
 皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
 著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
 いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
 追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。

3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:38:44 ID:FVwCY9XE
【警告】
・以下のコテは下記の問題行動のためスレの総意により追放が確定しました。

【作者】スーパーロボット大戦X ◆ByQOpSwBoI
【問題の作品】「スーパーロボット大戦X」「スーパーロボット大戦E」「魔法少女(チェンジ!!)リリカルなのはA'S 次元世界最後の日」
【問題行為】盗作及び誠意の見られない謝罪

【作者】StS+ライダー ◆W2/fRICvcs
【問題の作品】なのはStS+仮面ライダー(第2部) 
【問題行為】Wikipediaからの無断盗用

【作者】リリカルスクライド ◆etxgK549B2
【問題行動】盗作擁護発言
【問題行為】盗作の擁護(と見られる発言)及び、その後の自作削除の願いの乱用

【作者】はぴねす!
【問題の作品】はぴねす!
【問題行為】外部サイトからの盗作

【作者】リリカラー劇場
【問題の作品】魔法少女リリカルなのはFullcolor'S
【問題行為】盗作、該当作品の外部サイト投稿及び誠意のない謝罪

4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:40:20 ID:FVwCY9XE
お騒がせしましたorz
それでは続きと行きます
======

「ん? あぁ、いや、驚いてないって事はないけどさぁ、考えても見ろよ。
 武ちゃ丸が戦闘モードになる時は、見た目以上に中身がかなり別物臭いぜ?
 口調も変わるし、それに比べたらこのくらい、なぁ」
「あぁ、そう言われてみれば」
「確かに、あれはあれでびっくりしちゃったよー」

 何とか正気を取り戻したなのはも交え、この場にいない武ちゃ丸の話題に花が咲く。
 しかし、クロノは今度はどこか困ったような真剣な表情をして、その会話に横槍を入れてきた。

「その、武者頑駄無についてなんだが……」

 なのは達三人が振り向いたのを確認し、クロノは言葉を続ける。

「君達が今までジュエルシードを集め続けて来れた事に関する重要なファクターが
 彼ら、武者頑駄無の協力であった事についてはよく理解しているつもりだ。
 しかし……」

 思わずクロノは息を呑む。
 それは彼女らにとって、辛い事実を突き付けることに間違いないだろうから。

「僕は時空管理局員として、彼らに協力を求めるわけにはいかない」

 静かに、しかしはっきりと。
 クロノは、時空管理局は武者頑駄無の存在を拒絶した。




「ほな、はやて! ザフィーラ借りてくで!」

 すでにあたりは薄暗いを通り越して夜の帳が落ちようとしていた。
 しかし、雨にわずかな痕跡が流されてしまう前に、友の行方を求めて街に向かう者がいる。
 武ちゃ丸と、はやてから借り受けたその飼い犬、ザフィーラだ。

「もうぼちぼち夜やし、車とかに気ぃつけてな? まだ雨も降ってるし、体にも……
 わたし、待ってるさかい! みんな無事で帰ってくるの!」
「よっしゃ、あんじょうまかしとき! 待っとりや、シュシュ……にゃわぁっ!?
 ちょ、引っ張りなやって、ザフィ、ちょ、ま、ぬがわぁぁぁぁ!?」

 勢いよく宣言したはいいが、どう見ても武ちゃ丸が暴れ犬に振り回されているようにしか見えない。
 言い出しっぺでもある手前、はやては自分を抱えるシグナムを不安そうに見上げ、訊ねる。

「なぁシグナム、ホンマに大丈夫やろか?」
「ザフィーラに関しては主もよくご存じのはずです。
 そこらの犬ごときと比較するのもおこがましいほどの力を持っているという事は」

 だがその答えは彼女にとって少々ピントのずれたものであったらしく、
こめかみのあたりを軽く指でつつきながら、困った顔で返答する。

「うーん、わたしが言うてるのは、二人の相性と、兄ちゃんの身の安全なんやけど……」
「あいつも子供ではありますまいし、うまくやるでしょう」
「そやったらええんやけど……なぁ、ススム兄ちゃんがおらんようになったんに
 魔法が関わってるっちゅう話、ホンマなん?」

 はやては「魔法」という単語を、確かにその言葉に混ぜて問いかけを重ねた。

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:41:25 ID:9rr0Pgrp
このドジっ子めw
支援

6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:41:34 ID:FVwCY9XE
「えぇ。昼間、隣町で異常なまでに強力な魔力攻撃が感じられたの。
 それに、武ちゃ丸君の話ともだいたい一致するし」

 その質問に、顔色も変えず、当たり前の事のように答えたのはシャマルだ。
 左手にはめた指輪から、空中に浮かんだ「扉」と表現できる異空間に、緑色に瞬く糸が繋がっている。
 それらから放たれる光は、間違いなく魔力のみが持ちうる輝きであった。

「ったく、はやての友達だか何だか知らないけどさ、厄介な事持ち込んでくれるぜ!」
「ヴィータ、人様の悪口言うたらあかんよー?」

 毒づくヴィータをはやてがたしなめる。
 はやても、シグナムも、そしてヴィータも、シャマルの常識で考えられない行動を、
そしてその会話の内容にも疑問も持たず、ごく自然に受け答えしていた。
 「魔法」がかかわる内容だというのに。

「ともかく、夜天の主であるあなたの事は、我等ベルカの守護騎士、
 『ヴォルケンリッター』がこの命に代えてもお守りいたします」
「だから、はやては何にも心配することはねぇよ」
「あなたが望む限り、私達ははやてちゃんに絶対の平穏をお約束しますから……
 さぁ、ご飯の準備を始めましょう? いつザフィーラが帰ってきてもいいように、ね」

 それから後、四人は談笑しながら家の中へと入って行った。
 今日のおかずは何だだの、見たいテレビがあるかだの……先程の会話とは全く別物である。
 その光景は、普通の家族となんら変わることはなかった。


 ベルカの守護騎士、ヴォルケンリッターを名乗るはやての奇妙な家族達。
 彼女らは一体何者なのか?
 そして、クロノがなのは達に告げた言葉の真意とは?
 武ちゃ丸とザフィーラ、即席コンビはススムを見つけだすことができるのか?
 新たな謎と、衝撃の発言に翻弄される夢者遊撃隊とその仲間達。
 果たしてその行く手には何が待つのか?

 ――次回を待て!!


7 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/06/02(月) 20:44:46 ID:FVwCY9XE
以上です。
長らくお待たせして申し訳ありませんでした。
比較的笑いにふった内容で、お楽しみいただければ幸いです。

しかも新スレに入ってからコテつけ忘れてるウルトラCなドジっぷりorz

8 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:56:14 ID:CLaL9466
GJ
何か止まったなと思ったら容量か

クロノの思惑はいかに
想像つくようなつかないような


9 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 20:56:43 ID:LFpnLG5v
ある意味ばればれなのねーん


10 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 20:57:22 ID:Tonp6rXv
1乙&武者○伝氏お疲れです。
今回は武ちゃ丸とヴォルケンたちの出会い、そして長きに渡る喧嘩友達クロノとユーノの出会い編ですね(違う)
さっそくなのはを奪いあっているような気がします。
ここのクロノは本編よりも少年っぽいというかお茶目だw そして、淫獣扱いされなかったユーノセーフw
何故クロノ、いや管理局は協力を拒むのか。
やはり全身凶器というか刃物保持者な故にか? 色々と理由がありそうですし、想像する余地があって楽しみです。
次回も楽しみです!


そして、9時15分ごろから夜天メーカー後編を投下したいと思います。
26KBという馬鹿げた容量なので、ぜひとも支援をよろしくお願いします。


11 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:08:03 ID:CLaL9466
前スレと合わせて今日はバイド汚染の多いことで
もちろん前者は悪夢、後者はsうわ何をするくぁwせdrftgyふじこlp;

12 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:18:05 ID:Tonp6rXv
そろそろ時間ですが、投下開始してもよろしいですか?
容量は27KB。
レス数は最低でも15は超える予定です。
リインの愛らしさに悶えつつ、彼女の悲鳴に喜んでくださいw
ネタたっぷりです!

ネットに嫌われたのでちょっと投下に時間が掛かるかもしれません。


13 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/02(月) 21:21:52 ID:Xs9KWvUU
>>12
カモォォォォン!(エースコンバットZERO風に)
そして、私も夢境学園氏投下後に投下したいと思いますがよろしいですか?

14 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:23:10 ID:FVwCY9XE
支援!

15 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:27:37 ID:Tonp6rXv
 
 その日はいつものと変わらない日々だった

「ふんふんふ〜ん」

 鼻歌を歌いながら、クルクルと鍋の中の具をかき混ぜる。
 パタパタとエプロンの裾を翻し、汚れた食器を水の張った桶に入れ、洗剤であわ立ったスポンジで調理に使った包丁やまな板を洗っていく。

「今夜はシチューやで♪」

 コトコトと煮込まれていく鍋を横目に見ながら、洗い物を続ける茶髪の少女が楽しげに呟いた瞬間だった。
 ――チュドン!
 爆音が轟いた。
 ビリビリと室内が揺れて、ビクリと少女が手を止める。

「……また博士やな」

 少女の動揺は一瞬だけだった。
 手馴れた仕草で泡立った手を水で洗うと、壁に掛けておいたタオルで手を拭い、鍋に掛けてあった火を止めて、蓋をする。
 パタパタとスリッパを履いたまま玄関に向かい、外出用の靴に履き替え、ドアを開けた。
 ……先にあったのは。

「なんや、このピンクの煙?」

 お隣の玄関や、窓からモクモクと昇って行くピンクの煙。
 綿飴に顔から突っ込んで嗅いだかのような甘い香りが漂っていた。
 丁度嵐は止んだらしく、雨は降っていないがあまりにも異様な光景に少女は目を瞬かせる。

「あの人なら生きてるやろうけど、様子見にいこか」

 一応ハンカチを顔に当てて、少女は手馴れた動きで玄関から靴のまま押し入る。
 色んな器具や物が普段から散らばっているし、爆発で壊れたモノなどもあるので素足のままだと危険なのだ。
 ドシドシと邪魔なものを踏みつけながら、居間を通り、開きっぱなしの地下へと続く階段を降りていく。
 その時だった。

「ん?」

 何か声がした。
 男の声ではなく、女……それも小さな女の子が。

「ま、まさか!」

 慌てて少女が階段を駆け下りる。
 その先に見たのは。

 ――銀髪の少女が全裸で気絶している姿とピンクのアフロに見覚えのある背中の男が手を伸ばしている光景。

「つ、遂に犯罪に手を染めてしもうたんやな、スカ博士!」

「え?」

「この性犯罪者ー!!!」

 振り返ったピンクアフロの男――ジェイル・スカリエッティがその瞬間見たのは、顔面に迫るエプロン姿の美少女――八神 はやてが繰り出したドロップキックの靴底だった。



【夜天メーカー 魔法少女育てます】
 多分一日目 こんにちは失敗作 後編

16 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:28:15 ID:Tonp6rXv
 
 その日はいつものと変わらない日々だった

「ふんふんふ〜ん」

 鼻歌を歌いながら、クルクルと鍋の中の具をかき混ぜる。
 パタパタとエプロンの裾を翻し、汚れた食器を水の張った桶に入れ、洗剤であわ立ったスポンジで調理に使った包丁やまな板を洗っていく。

「今夜はシチューやで♪」

 コトコトと煮込まれていく鍋を横目に見ながら、洗い物を続ける茶髪の少女が楽しげに呟いた瞬間だった。
 ――チュドン!
 爆音が轟いた。
 ビリビリと室内が揺れて、ビクリと少女が手を止める。

「……また博士やな」

 少女の動揺は一瞬だけだった。
 手馴れた仕草で泡立った手を水で洗うと、壁に掛けておいたタオルで手を拭い、鍋に掛けてあった火を止めて、蓋をする。
 パタパタとスリッパを履いたまま玄関に向かい、外出用の靴に履き替え、ドアを開けた。
 ……先にあったのは。

「なんや、このピンクの煙?」

 お隣の玄関や、窓からモクモクと昇って行くピンクの煙。
 綿飴に顔から突っ込んで嗅いだかのような甘い香りが漂っていた。
 丁度嵐は止んだらしく、雨は降っていないがあまりにも異様な光景に少女は目を瞬かせる。

「あの人なら生きてるやろうけど、様子見にいこか」

 一応ハンカチを顔に当てて、少女は手馴れた動きで玄関から靴のまま押し入る。
 色んな器具や物が普段から散らばっているし、爆発で壊れたモノなどもあるので素足のままだと危険なのだ。
 ドシドシと邪魔なものを踏みつけながら、居間を通り、開きっぱなしの地下へと続く階段を降りていく。
 その時だった。

「ん?」

 何か声がした。
 男の声ではなく、女……それも小さな女の子が。

「ま、まさか!」

 慌てて少女が階段を駆け下りる。
 その先に見たのは。

 ――銀髪の少女が全裸で気絶している姿とピンクのアフロに見覚えのある背中の男が手を伸ばしている光景。

「つ、遂に犯罪に手を染めてしもうたんやな、スカ博士!」

「え?」

「この性犯罪者ー!!!」

 振り返ったピンクアフロの男――ジェイル・スカリエッティがその瞬間見たのは、顔面に迫るエプロン姿の美少女――八神 はやてが繰り出したドロップキックの靴底だった。



【夜天メーカー 魔法少女育てます】
 多分一日目 こんにちは失敗作 後編

17 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:29:20 ID:FVwCY9XE
質量をもった残像だと!? 支援

18 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:29:40 ID:Tonp6rXv
 
 場所は居間。
 五分ほど二人掛かりで片付けた場所に、三人の男女が座っていた。

「ふむふむ、つまりスカ博士は理事長先生たちの依頼でこの子を造ったということやね?」

 エプロン姿で腕組みする少女、八神 はやてが納得がいったように頷く。

「そうだとも。というか、私が犯罪行為に走るような勇気があるわけないじゃないか」

 顔面にくっきりと靴の跡を残し、鼻にティッシュを詰めたジェイル・スカリエッティが痛そうに顔に氷袋を押し当てながら返事を返す。
 ちなみに頭のアフロは『毛神様の幻想をぶち殺す整髪剤』でなんとか修復し、キューティクルな元の髪型になっていた。

「で、スカ博士はこの子をどうするん?」

「ほえ?」

 はやての言葉に、ジュルジュルとジュースを啜っていた三人目が顔を上げる。
 真っ白いワンピースを着た銀髪の少女――リインフォースだった。全裸ではさすがに不味いということで、はやてが慌てて出してきた子供時代の服である。

「なんですかー?」

「ん、いやリインちゃんはかわええなぁという話や」

「えへへーです」

 嬉しそうに微笑むリインフォース――なんだかんだで愛称としてリインという名称が付いた少女は恥ずかしそうに頬を染める。

「ちょっと博士、一緒に来てくれる?」

 そういってはやてがテーブルから立った。

「ん? ああ」

 ちょいちょいと手を伸ばすはやてに続いて、スカリエッティも席を立つ。

「ちょっとまっててーな、リインちゃん」

「はいですー!」

 ピコっと手を上げるリインに、はやても頬が緩む。
 軽く手を振ってはやてが廊下に出ると、続いてスカリエッティも廊下に出る。

「で? 改めて聞くんやけど、スカ博士はあの子どうするん?」

 ジロリと不安と威圧の混ざった瞳がスカリエッティに向けられる。

「む? そうだな、一応私が育てるつもりだ。理事長たちからの依頼でもあるし、今のままでは到底能力が足りない。彼女はまだ殆ど幼稚園児みたいなものだからな」

「博士は育児経験あるの?」

「ふっ。私にぬかりはない。こんなこともあろうかと――というわけでもないが、昔養護施設で12人ほどの子供の面倒を見ていたことがある」

 胸を突き出し、ニヤリと笑うスカリエッティ。

19 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:29:54 ID:9rr0Pgrp
いきなり連投w
支援

20 :一尉:2008/06/02(月) 21:30:30 ID:K2dhFR+5
うむ失敗作支援

21 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:31:08 ID:Tonp6rXv
 
「ほか。それならええけど、服とか食事とかどないするの? スカ博士、料理下手やろ? あと女の子の服選ぶセンスあるん?」

「むぅ。それは、確かに……」

 研究命。食事はレトルトかお隣のはやてからのおすそ分けで食いつないでいたスカリエッティである。
 ちょっぴり額に汗を浮かべた。
 そんなスカリエッティの表情に、はやては深々とため息を付いた。

「しゃあないな。私も手伝ったる」

「なんと!? いいのかね?」

「博士に任せとったら、センス壊滅、料理ベタ、行く先はマッド博士の道に進みそうやからな、あの子」

「それは否定しないな」

「否定せんかい!」

 スパーンとエプロンの内側から取り出されたはやてのハリセンが、景気良くスカリエッティの頭を引っぱたいた。

「はやてくん、毎度ながら思っているのだが君は常にハリセンを常備しているのかね?」

「気にしたらあかん。それはそうとして、あの子ホムンクルスやろ? どういう風に育てるかとか、なんか検討ついとるんか?」

「うむ。一応私も造る前に下調べはしている。これだ」

 そういって白衣のポケットから手帳を取り出し、あるページを捲ってはやてに見せた。
 そこに移っているのは四枚の写真。

「ん? 誰やこの人たち」

 写真に写っているのは四人の男女だった。
 一人は桜色の髪をポニーテールに結んだ、凛々しい顔つきをした女性。
 もう一人は金髪で、穏やかな表情を浮かべた女性。
 もう一人は赤茶の髪をおさげにした少女。
 最後の一人はよく焼けた焼土色の肌に、逞しい体躯を持った白髪の男だった。

「過去に夜天の書を使って作られたホムンクルスたちだ」

「え?! スカ博士以外に作った人がいたんか!?」

「うむ。大体数百年ほど前に造られて、現在も存命しているらしい」

「はぁ、長生きなんやね」

「聞いた話だとほぼ不老の性質を持っているらしいな」

 そう告げて、スカリエッティは手帳の写真を順に指差していく。


22 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:32:17 ID:Tonp6rXv
 
「調べた結果、夜天の書のホムンクルスはこの四人のどれかのタイプに当てはまるらしい」

「どれかってどういうこと? リインちゃんとこの人たち全然似てないけど」

「うむ。リインフォースは変態するらしい」

「変態?」

 ビッとはやてが突き出した指の先にはスカリエッティ。

「違う」

 ぺシッとはやての手を叩いて、スカリエッティが説明を続ける。

「成長の段階として大きく姿を変えるということだ。夜天の書によると大体生まれた時にはこの四人のどれかになるらしいが、稀にどれにも当てはまらない形状になることがあるらしい」

「今のリインちゃんやね?」

「うむ。その場合、成長の段階として一番近いタイプにいずれ変態するらしい」

「へえ、そうなんやー……って、ちょっとまってや」

 感心したように頷いていたはやての動きが止まる。
 凍りついたかのように動きが止まり、ギチギチとスカリエッティの長身を見上げた。

「それって“四人”のどれかなんやね?」

「うむ」

「じゃあ、この人にもなるんか?」

 そういってはやてが指差した先の写真。
 それは焼土色に焼けた肌を持つ逞しい“男”が写っている。

「そう……なるな」

「……」

 彼らの脳裏に浮かんだのは、「はやてちゃーん、遊ぼうですー」などと笑顔で駆け寄ってくる逞しい男の姿だった。
 吐き気が浮かんでくる。
 見たくない、とても見たくない光景だった。


23 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:32:36 ID:FVwCY9XE
犬キモいwww
支援

24 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:33:25 ID:CLaL9466
変態w支援

25 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:33:41 ID:Tonp6rXv
 
「いやー! あんな可愛い子がこんなムキムキになるのはいやー!」

「運命を天に任せるしかないな……」

「遠い目するなぁ! 回避や! 絶対に回避やからね!?」

「む、むぐ?!」

 ガクガクとスカリエッティの首を揺さぶるはやての顔はかなり必死だった。
 そして、首を絞められるスカリエッティはブクブクと泡を吹いていた。
 閑話休題。

「あ、危うく死に掛けた……」

「あははー、ごめん」

 ゲホゲホと息を吐く青白い顔のスカリエッティに、はやては苦笑しながら頬を掻いていた。

「ゴホン!」

 咳払いして、一旦気を取り直すスカリエッティ。

「まあとにかく、だ。私としては依頼どおりに出来るだけスペックの高い育成をしようと思っているのだが、協力してくれるかね? 具体的には食事とか食事とか、服とかだが」

「まあお隣のよしみやし、足を治してもらった借りもあるから手伝うで!」

 十年ほど前まで歩けなかった足をパシンと叩いて、はやてがニッコリと笑う。

「よし! それではリインフォース育成計画、題して《魔法少女育てます》計画の始動だ!」

「ダサすぎるわ!」

 バシーンとはやてのハリセンが、スカリエッティの脳天に叩き込まれる。

 それがスカリエッティとリインフォースの厳しくも辛い育成物語の始まりだった。




26 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:34:51 ID:Tonp6rXv
 
 そして、嵐の明けた次の日。

「まあまずは現段階のスペックが分からないとどうにもならないわけで。テストをしてみよう」

「えっと。ここどこですー?」

「ここは道場だ!」

 場所はミッド学院の道場。
 薙刀部や剣道部などが普段使っている場所である。

「どうじょう? ってなんですかー、どくたー」

「この馬鹿弟子がぁ!!」

 その瞬間だった。
 スパーンとリインフォースの脳天に叩き込まれるガジェットのストラップが付いた竹刀――通称ガジェット竹刀の一撃。

「あうぅ! いたいですー!」

「この道場にいる間は師範と呼べ! 弟子一号!」

「う、うっすですー、しはん!」

 涙目になりながら、教えたとおりに返事を返す体操服にブルマ姿のリイン。
 ウムウムと満足そうに頷く胴衣姿のスカリエッティだった。

「それで何をするですか、どくたー?」

「これからリインの能力をテストする」

「てすと、ですか?」

「如何せん君は生まれたばかりだからね、計器で計るわけにもいかないから実際に確認するしかない」

「? どくたーが相手するですか?」

「いや、私じゃない。彼がテストしてくれる」

 そういってスカリエッティが手を向けた方向には、一人の男が立っていた。

「……コントをするのは構わんが、スカリエッティ。何故お前が胴衣で、彼女がブルマ姿なのだ?」

 そんな二人を見ていた道場の主――戦闘魔導師の指南役であるジャージ姿のゼスト・グランガイツが腕を組んで眺めていた。
 休日の職員室で書類をまとめていた彼に事情を話し、スカリエッティは引っ張り出してきたのである。


27 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:36:12 ID:FVwCY9XE
オレンジ道場支援

28 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:37:02 ID:arwckv+k
支援

29 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:37:09 ID:Tonp6rXv
 
「いやなに、世界の必然というものさ」

「意味がわからんのだが……」

「ふ、安心したまえ」

 カッと目を見開き、スカリエッティが叫ぶ。

「私にも分からん!」

「……普段のお前も分からんが、理論的でないお前はもっとよく分からんな」

 やれやれとため息を吐いて、ゼストが床に立てていた槍――普段愛用している木製の槍ではなく、先端部分がクッションで覆われたスポーツ用の模擬槍を構えた。

「それで? 俺が彼女の腕を確認すればいいのだな」

「その通りだとも」

「よ、よろしくおねがいしますー!」

 小柄な彼女でも持てる小さな竹刀を持って、リインが健気に構える。

「ふむ。古代文明のホムンクルスか、試させてもらうぞ」

 足を前に出し、ゆっくりと槍を構えるゼスト。
 肌に痛みを覚えるほどの緊張感を持って、二人が対峙する。

「来い」

 緩やかに槍を持ち、水を飲むような緩やかな呼吸を見せて、ゼストがリインを見る。
 リインもまた不器用な構えを持ちながらも、息を呑み――踏み出した。

「」

 気息は洩らすが、声は出さない。
 不必要に声を上げれば力が抜ける。
 それを本能的に知っていたかのように、リインは走る。
 ゼストは動かない。
 ただ笑い、目を細めて。

「しでん」

 リインが振り抜こうとする一撃を、待ち構えて。

「いっせん!」

 リインが声を上げた。
 それはアクショントリガー。魔導師が使う動作。
 魔力を纏う竹刀。瞬間的に速度を上げる歩み。
 拙い歩みが一瞬だけ加速し――

「ですの!!」

 リインの振り抜く竹刀が動かぬ槍を無視して、ゼストへと迫り――


30 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:38:29 ID:Tonp6rXv
 
「遅い」

 スパーンと小気味の良い音が響いた。
 ゼストの胴体からではなく、リインの頭部から。
 彼女の竹刀が届くよりも早く、後から動いたはずのゼストの槍がリインの頭に命中していた

「あうっ!」

 涙目になりながら、再びリインが竹刀を構えようとして。

「角度が甘い」

 ぺシーン!

「はうっ!」

「立ち直りが遅い」

 パーン!

「あうぅう!」

「動きに無駄が多い」

 ベシ、ベシ、ベシ!

「い、痛いですー!」

 十数回ほど挑んだのはいいものの、結局リインは一本も取れなかった。
 フラフラになりながら、パタンと前のめりに倒れるリイン。
 その様子を後ろから眺めていたスカリエッティは顔を上げて、ゼストに訊ねた。

「ふむ。ゼスト、君から見て彼女はどうかね?」

「センスはあるかもしれんが、今はまだ駄目だな」

 はう〜と目を回すリインを見下ろして、

「なるほど」

 センスはあるとメモするスカリエッティ。

「よろしい。次のテストだ」




31 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:41:41 ID:Tonp6rXv
 
 というわけでやってきたのは学院の裏側。
 そこにあったのはサンサンと日光が降り注ぐ巨大な畑だった。

「あ、教授。どうしたんですか?」

 畑の横に設置された怪しげな機械。それを工具で弄っていたメガネの女学生がスカリエッティの姿を確認して、腰を上げた。

「やぁシャーリーくん。調子はどうかね? グリフィス君がレポートで手こずっていると心配していたが」

 シャーリーと呼びかけられた女性は軽く額を拭うと、にこやかに笑みを浮かべた。

「あー、インテリジェントデバイスのカートリッジ搭載数の限界数をアップさせるための理論でしたら、この間なんとか解決しました。後は内容をまとめて提出するだけです」

「なるほど。それはよかった」

「ところでその横の子は誰ですか?」

「うむ。実は理事長たちが直々にスカウトした新しい人材でね、今学院の案内をしているのだよ」

 さすがにかかわりのない学生にまでホムンクルスだということを言うわけにはいかないので、用意していた嘘を告げた。

「リインですー。よろしくおねがいします」

「よろしくリインちゃん。ところでなんでその子ブルマ履いてるんですか?」

「――世界の意思だ」

 胴衣からいつもの白衣とスーツに着替えたスカリッティはさらりと告げた。

「そうですか」

 どうやっても納得出来るような理由ではなかったが、いつものスカリエッティの奇行としてシャーリーは流した。

「納得してくれたなら幸いだ。ところで、“奴ら”は出ているかね?」

「やつらですか?」

 スカリエッティの言葉にシャーリーは顔を曇らせた。

「また出てます。ちょうど撃退用の機械が故障していて、これから戦闘魔導師の学生でも呼ぼうかと思っていたところです」

「ふむ。それなら丁度いい、この子を使ってみないかね?」

「ほえ?」

 事情が飲み込めてないリインを突き出すスカリエッティ。
 その行為にシャーリーのメガネが怪しい輝きを放った。


32 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:42:15 ID:9rr0Pgrp
しえん


33 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:45:18 ID:Tonp6rXv
 
「……いいんですか、教授? ”傷物”になっても責任は取れませんよ?」

「見くびらないで欲しいなシャーリーくん。彼女はそこまで弱くはないよ」

「へ? へ? なにがです?」

「ふふふ、面白そうですね。それじゃ、お言葉に甘えますね」

 ニコリと楽しげに笑みを浮かべると、シャーリーはおもむろに直していた機械の横に付いていたパネルを開く。
 金属製のボックス状になっていたパネル内部からある一部は細長く、一部はとても巨大な物体を取り出すと、彼女はそれをリインに握らせた。

「これ、なんです?」

 リインが持たされた物体。握り手は細長い金属の棒であり、先端部分は長方形で黄色く塗られた物体だった。
 あえて言おう。
 それはピコピコハンマーだと。しかも子供サイズもある巨大なハンマー。

「さあリインちゃん、それを持って畑に向かうのよ」

「頑張りたまえ」

「何かよく分からないですけど、行ってみるです」

 よく耕された畑。リインの腰ほどもある巨大な野菜畑に足を踏み入れながら、リインは歩く。
 ピコピコハンマーを両手に握り締め、彼女が畑の真ん中まで到着すると。

 ――不意に音が響いた。

「なんです?!」

 それは何かが掘り返されるような音。
 よく見れば周囲の地面が微細に震動していた。

「じ、地面からですか?」

 ゴクリと息を呑んで、リインが構えた瞬間だった。
 土が噴火したかのように噴出した。
 そして、そこから現れたのは――巨大なモグラだった。
 しかも、リインの半分以上もあるサイズの。


34 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:46:15 ID:FVwCY9XE
支援

35 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:49:16 ID:Tonp6rXv
 
「お、おばけですのー!?」

 叫び声を上げるリインに反応したのか巨大モグラはグモグモと鼻息を上げて、ゆっくりと退化した目が彼女の方角に向けられた。

「へ?」

 嫌な予感。
 背筋に走る戦慄。
 未体験の恐怖を肯定するかのように、モグラはゆっくりとその手に持った鋭い爪を持って――跳んだ。
 リインへと。

「き、きゃあああああああですぅううう!!!」

 上がる悲鳴。
 迸る獣の咆哮。
 振り下ろされる黄色の鉄槌。
 響き渡る電撃の音。

「大丈夫ですかねー、リインちゃん」

「まあとって喰われることはないだろう」

 そんな様子を畑の外からシャーリーとスカリエッティが暢気に眺めていた。

「それにしてもまた大きくなってないかね?」

「そうですねー。まさか魔法で巨大化させた野菜を盗み食いした動物まででかくなるなんて予測外でした」

「追い払うためのスタンハンマーがあるとはいえ、いい加減対策を考える必要があるな」

「ですねー」

 涙目になりながら、ハンマーを振るうリインを見ながらスカリエッティは遠い目で呟いた。

「ふむ。あの様子を見ると、立派なゲボ子への道はまだまだ遠いな」

「誰かたすけてですー!」

 ひーんという可愛らしい泣き声が響く昼時のことだった。


36 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:49:44 ID:ifBZAdNG
ベストを見るにはモラルを下げよう支援

37 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:50:19 ID:kNMU8UYY
ゲボ子支援

38 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:51:05 ID:I1cARaTi
モラルは低め 支援

39 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:51:40 ID:Tonp6rXv
 
 午後の三時頃。
 スカリエッティとリインは学院内で営業している売店の傍にあるベンチに座っていた。

「少し休憩するかな」

「し、死ぬかとおもったです」

 優雅に買ったラムネを飲むスカリエッティと体操着から着替えて子供用のジャージ姿のリインが疲れた顔でラムネのビンを両手で握り締めていた。

「ひどいです、ひどいですー。あ、あんなけだものたちにリインをおしつけるなんて〜」

「ハッハッハ。さすがに死ぬことはないだろうと思ったのでね」

「叩いても叩いても全然ひるまなかったです。あいつらけだものです、おばけです、ちくしょうですー!」

「動物だから仕方あるまい」

 クスンクスンと涙目で怖がるリインに、言葉では冷たく言いながらもよしよしと頭を撫でるスカリエッティ。

「むー! こんなので誤魔化されるリインじゃないです!」

 ぺシッとスカリエッティの手を撥ね退けるリイン。

「それはすまない」

 撥ね退けられた手を気にした様子もなく、スカリエッティは皮肉げな笑みを浮かべる。

「ところで、どくたー」

「ん? なにかね?」

「これ、どうやって飲むですか?」

 未だに開けられないラムネのビンを持って、リインが困ったように首を傾げる。

「ふむ。貸してみたまえ」

 リインからラムネのビンを取ると、スカリエッティは慣れた仕草でラムネの蓋部分を外し、器具で押し込んだ。

「あ、シュワシュワしてるですー!」

 炭酸の抜ける音と共に零れる泡。ラムネの口からこぼれ出るそれは容赦なくスカリエッティの手を濡らしたが、彼は気にせず蓋を押し込み続ける。
 やがて時間と共に泡は納まり、零れ出ていた泡も止まった。

「納まったようだな」

 押さえていた手を外し、スカリエッティはリインにラムネを渡す。
 受け取ったリインは嬉しそうに口を付けて、次の瞬間目と口を×の字に歪めた。

「すっぱいですー!」

「炭酸の味は未体験だったようだな」

 白衣から取り出したウェットティッシュで手を拭くと、すかさずメモを取るスカリエッティ。


40 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:53:09 ID:I1cARaTi
どこと無く翠を思い出させる……スカは良い男支援

41 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:53:22 ID:Tonp6rXv
 
「でも、慣れるとおいしいですの」

 クピクピと音を立てながら、ラムネを飲むリイン。
 同じようにラムネに口を付けて飲みなおすスカリエッティ。
 しばしの間、心地よい風が吹く時間が流れる。

「あ、なくなっちゃったです」

「む?」

 リインが空になったラムネビンを手に、悲しげな顔を浮かべていた。

「二本目でも買ってくるかね?」

「さすがにそんなには飲みきれないです」

「なら諦めるしかあるまい」

「そうですねー」

 そういいつつも、リインがジッとラムネのビンを見つめる。
 カラカラと中で揺れるビー玉を彼女は見つめていた。

「これ取れないですか?」

「む? 確か取れたような気がしたが、少し面倒だな」

 プラスチックの取り方なら分かるが、ビンでのやり方はあまり知られていない。
 どうやったかな? とスカリエッティが首を傾げて思い出そうとする中で、不意にリインがビンを見つめた。
 何をするのかとスカリッティが注目した瞬間、魔力の流動を感じた。
 彼女の両手が薄い光を纏い、ラムネの中のビー玉が同じように燐光を帯びる。

(む? アポートでも使うのか)

 遠くのモノを、障害物を関係なしに手元に引き寄せる魔法。
 魔法の基礎も習ってないものには難しいBクラスの魔法だったが、彼女は未知の可能性を秘めたホムンクルスだ。
 生まれて一日目とはいえ、魔法を使いこなす可能性もある。
 そう考えて、ジッとスカリエッティは見つめていたが――

「はらわたをぶちまけろですー!」

 酷く縁起の悪い掛け声と共にラムネの中のビー玉が消失し、次の瞬間には上空から落下、リインの額に直撃した。

「はう!」

 悲鳴を上げて、頭を押さえるリイン。
 そんな様子を見ながら、スカリエッティは落ちたビー玉を拾い上げ、呟いた。

「多少は情操教育に重点をおいたほうがいいかもしれないな」



42 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:57:24 ID:ifBZAdNG
武装錬金支援!

43 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:57:35 ID:+HcClEDo
支援

44 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 21:58:15 ID:MwYoXPmw
パロディ多いなwww支援

45 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 21:58:34 ID:Tonp6rXv
 
 ザザーンという波の音がした。
 西の水平線には真っ赤な夕日が浮かんでいた。

「良い風ね」

 荒波打ち付ける崖の上に、一人の女性が腕組をしながら夕日を眺めていた。
 両手にはバンテ―ジを、青を基調としたバリアジャケットに身を包み、一歩足を踏み出せば崖から真っ逆さまに落下するであろう崖っぷちで彼女は悠然と立っていた。

「そう思わないかしら、二人共?」

 クルリと彼女が背後に振り返る。
 そこにはいつもの白衣姿のスカリエッティとジャージから胴衣に頭の鉢巻を巻いたリインが立っていた。

「こ、こんにちはですー!」

 幾分か緊張しながら、リインが挨拶する。
 クイント・ナカジマ。崖の上に立つその女性こそが、本日最後の能力確認のテスト、最後の相手だと聞いているからだった。
 ちなみに頭の鉢巻と胴衣はクイントからの指定だったりする。

「こんにちは、可愛いお嬢さん」

 優しげな笑みを浮かべて手を振るクイント。
 そして、その目がゆっくりとリインの横に立つスカリエッティに向いた。

「あら、久しぶりねスカ教授」

「ふむ。まあ最近は講義の都合上顔を合わせなかったからな」

「久しぶりに散打でもやる?」

「時間が取れたら快く受けよう」

 シュッと空気が切れそうなストレートを突き出して笑うクイントに、スカリエッティは少しだけ引き攣った顔で返事を返す。

「あれ? どくたーって強いんですの?」

「ふっふっふ、私をそこらのモヤシみたいな科学者と同じにしては困る。こう見えても名物三人娘のザンバーモードを受け止めたこともある」

 そう告げて、スカリエッティは遠い目をした。




46 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:00:01 ID:kNMU8UYY
支援


47 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 22:00:19 ID:Tonp6rXv
 
 それは数ヶ月ほど前の話である。
 お昼休みが終わりかけた昼時の時、次の講義をするために器具を持ってスカリエッティがグラウンド横の廊下を歩いていた時のことだ。

「ん? なにか騒がしいな」

 グラウンドから聞こえる男女の声に気付き、スカリエッティが徐に目を向けた時だった。

「はやて! 今日という今日こそ決着をつけるよ!!」

 グラウンドの真ん中で学生用のリミッターが付いているはずなのに、バリバリの高出力で構築されたザンバーモードを振り上げた金髪の女性。
 フェイト・テスタロッサ。
 大学部では有名な三人娘の一人だった。

「こ、こらぁあああ! は、刃物というか暴力沙汰は反則やで!?」

 その大剣に狙われているのは見覚えのある女性――というわりには胸とかが足らない八神 はやてだった。
 黒い服を着た男の後ろに隠れて、というか盾にして声を上げている。

「フェイト! 落ち着くんだ、幾らなんでも学院内でデバイスを起動するな!」

 そして、汗を吹き出しながらも必死に説得をしている盾の男。
 大学院生にして、極めて優秀な成績を収めているクロノ・ハラオウン。
 二人の女に囲まれて、両手に花どころか、両手にダイナマイト状態になっていた。いと哀れというべきだろう。

(……修羅場だな)

 立ち込める殺意というか泥沼の気配に、スカリエッティは器具を廊下において、ガラリと窓を開けた。
 手には生意気な生徒をよく縛り上げるためのデバイスを嵌めた。
 その瞬間だった。

「助けてなー、クロノくーん!」

 ガシリとクロノの背後に隠れていたはやてがクロノの腰に抱きついた。
 一見ラブコメに見える。
 しかし、傍目から見ているスカリエッティには分かった。
 あ、あれはそんな生易しいものじゃない。ラブコメだとか、ぶりっことかいうチャチなもんでもねえ。もっと恐ろしいもの――というか確実性をとった盾だ。
 現にクロノは危険性に気付き、必死にはやてを引き剥がそうとしている。

 ブチッ。

 という音がした。
 ニッコリとフェイトの顔に笑みが浮かぶ。聖母のような表情。
 しかし、その身に纏うのはまごうことなき修羅のオーラ。

「マズイ!」

 スカリエッティが窓枠に足をかけて、跳び出した。


48 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:00:22 ID:MwYoXPmw
実は強いスカ先生? 支援

49 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 22:01:23 ID:Tonp6rXv
 
「ふぇ、フェイト? お、落ち着くんだ!!」

「あーこれあかんわ。クロノ君。一緒に死んでくれる?」

「不吉なことを言うな!」

 生命の危機を感じて蒼白なクロノが、遠い目をするはやてに怒鳴りつける。
 しかし、それも目の前の女性には油を注ぐ結果になっていた。

「お兄ちゃんどいて。その女殺せない♪」

 笑み。笑顔。微笑み。
 神さえも蕩かすような極上の笑みを浮かべながら、フェイトがゆっくりとザンバーを振り上げる。
 バチバチと帯電し、空気を焦がし、閃光の戦斧というよりは天罰の剛剣と呼ぶに相応しい光景。

「愛って奪い取るものだよね?」

「まてえええ!」

「アカンやろ!」

 剛剣一閃。
 天を断ち、大地を割るかのような巨大な斬撃が振り下ろされる。
 それは一直線に二人を両断する――かと思われた瞬間だった。

「とぅっ!」

 振り抜かれる瞬間、割り込んだスカリエッティの手が受け止めていた。

「きょ、教授!?」

「博士!」

「ふ、大丈夫かね? 二人と――」

『Riot Zamber』

「えい♪」

 バーン!

 髪を掻き上げて言葉を吐こうとした瞬間と、瞬時にフォームを切り替えたフェイトのライオットザンバーがスカリエッティを場外ホームランにしたのはほぼ同時だった。




50 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:01:46 ID:MwYoXPmw
おにごろしwwwww支援

51 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 22:05:13 ID:Tonp6rXv
 
「ふ、ふふふ」

「どうしたですか?」

 突然ガクガクと震えだすスカリエッティに、リインが首をかしげた。

「な、なんでもないさ。あの後一ヶ月ほど入院したとか、反省レポートを100枚ほど書かせたとかそんなことはどうでもいいのさ」

「?」

「スカ教授は時々トラウマ発生するから放置していいわ」

「わかったですー」

 トラウマ再発中のスカリエッティを放置し、クイントとリインが向かい合う。

「確かリインちゃんって言ったわね」

「はいです!」

 ゆっくりとクイントが左手を前に突き出し、腰を落とす。

「どんなに才能と素質があっても磨かなければ意味はないわ。だからこれから貴方を試す」

「試すですか?」

「私に続いて手を突き出すの」

 クイントが手を突き出す。
 それは風を切る手。

「こう、ですの?」

 リインもまた手を突き出す。
 それは風を切らずに、流れるのみ。

「そう! でも、もっと早く」

「はいです!」

 赤き夕暮れに武道を行う二人。
 熱い血潮のように汗が飛び散り、燃え上がる炎のように咆哮があがる。


52 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 22:06:12 ID:Tonp6rXv
 
「いいわ! 娘二人も優秀だったけど、リインちゃん。あなたも磨けば光る魂を感じる!」

 ニコリと笑みを浮かべ、クイントが叫ぶ。
 リインもまた真っ赤にはためく鉢巻を靡かせながら笑った。

「よし、さっき教えたとおりに続けるのよ!」

「はいです!」

「流派!」

 風が唸る。

「東」 ザザーン! 「敗は!」

 波が打ち寄せる。

「王者の!」

「風よ!」

 空気が瞬き、夕日が輝き。

「全……新!」

「系列っ!」

『天破侠乱っ!!』

『見よ!! 東方は赤く燃えているう!!!!!』

 互いに拳を打ち付けた瞬間、夕日を覆っていた雲は晴れ、真っ赤な光が二人を包んだ。
 しばしの沈黙。
 そして、やがて二人の口元に浮かんだのは笑みだった。


53 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 22:06:54 ID:Tonp6rXv
 
「ふふふ、いい魂の入った拳だったわ」

「クイントさんこそ熱い心が入っていたです」

「いえ、まだまだ師匠には遠く及ばないわ。師匠ならあと30発は繰り出せるもの」

 クイントがゆっくりと夕日を見る。
 真っ赤に輝く夕日を見る目はまるで恋に焦がれる乙女のような目だった。

「私の夢は、いつか師匠を越えることなの」

「クイントさんならやれるです」

「ありがとう」

 和やかな笑みで夕日を見つめるクイントとリイン。
 その瞬間だった。

「ところで、夕日が沈むのは西側だから東方はおかしくないかね?」

 空気の読めない発言をするものが一人。
 そんな人物に対し、クイントはにこやかに振り返ると、拳を振り上げた。
 魔力伝達。魔法発動。

「リボルバーシュート!!」

「おわっー!」

 生身の拳圧と魔力で繰り出された衝撃破によって、スカリエッティは空を舞った。
 それを見てリインは楽しげに笑っていた。




54 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 22:11:20 ID:Tonp6rXv
 
 夜はふけり、月が出てきた頃。
 土で汚れた白衣を翻したスカリエッティと鉢巻を外したリインが帰路についていた。

「やれやれ、酷い目にあったな」

「どくたーのじごうじとくですー」

「私が悪いのかね?」

「そうですー」

 やれやれと首を振るスカリエッティ。
 技術畑の人間には体育会系の心は理解しがたいのだ。

「それはそれとして、いいデータが取れたよ」

「ふえ?」

「調べた結果だが、現状ではもっとも優れているのは魔力素養だな」

 今日一日観察して取ったメモを読み直す。
 実証と推測を交えたデータを数字にするとこうだ。

【リインフォース】/現在パラメータ

 体力 C
 魔力 B+
 知力 D
 魅力 B
 プライド C
 モラル C+
 気品 D
 感受性 B
 気立て D
 知名度 E
 武術能力 C+
 魔術能力 B−
 信頼度 D

 と言ったところだろうか?


55 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:12:20 ID:FVwCY9XE
支援

56 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 22:13:21 ID:Tonp6rXv
 
「まだまだ先は長いな」

 夜空の星を見ながら、依頼達成までの遠さにスカリエッティは目を細めた。

「家までもうすぐですよ?」

「そういうわけじゃないさ」

 スカリエッティは苦笑すると、おもむろにリインの頭を撫でた。

「えへへーです」

 くすぐったそうに目を細めて、顔を赤くするリイン。
 そんなリインを見て、スカリエッティも柔らかい笑みを浮かべた。

「こらー、二人共ー! さっさと帰ってこんかーい!」

 その時だった。
 聞き覚えのある声が二人の耳に届いたのは。

 見れば視線の先、スカリエッティの家の前でお玉を振り上げているはやての姿。

「ごはんやでー」

「おっと、それはまずい。いくかね、リイン」

「ハイです、どくたー!」

 二人は駆け足で走り出した。

 そうして、一日目は終わる。


 これから始まるのは無限の未来。

 得がたき青春を送り、幾多の苦難や事件を乗り越えていく二人の物語。

 未知の可能性を秘めたホムンクルス。

 リインフォース。

 彼女が纏う祝福の風が運んでくる未来はどのようなものか。

 それはまだ誰も知らない。


57 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:13:24 ID:mVEAXcSy
信頼度ひくwwww 支援

58 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 22:17:32 ID:Tonp6rXv
投下終了です。
初っ端から連投ミスなどすみませんでした。
ネットの調子が悪く、中々書き込めずに時間を掛けてしまいTOL氏にも申し訳ない。
支援ありがとうございます。

このお話は本来ならば単発ネタの予定でしたが、書いているうちに色々とねたが浮かんでしまい、
さらにはWikiにもう連載SSの一つとして登録されてしまったのでこれも運命だと思って今後も続けていこう思います。
次回からはさらなる学園物語とリインの成長などを逢わせてコメディたっぷり、ほのぼのたっぷりで書いていきます。
いずれアギトやヴィヴィオなどの面々や、多分これがゲームだったら不可能なヴォルケンの面々も登場する予定です。

次回もスカ博士の子育て奮闘記をお楽しみ下さい!

59 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:20:17 ID:UCv8a5+J
>>58
GJ!!!
期待してますwwww

60 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:20:25 ID:kNMU8UYY
GJ!
ドクターってこんな人だったっけ?
次回も楽しみに待っています。


61 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:20:59 ID:pb3Fw67A
超GJ
連載を抱えるのは大変と思いますが期待してます


しっかし信頼度が低いww

62 :夜天メーカー 魔法少女育てます ◆CPytksUTvk :2008/06/02(月) 22:22:35 ID:Tonp6rXv
追記。
信頼度がDなのは、スカ博士がマッドなためです。
マッドな博士を普通信頼できませんよね? 常識的に考えてw
なお、今後もネタは豊富に入れて行きますのでよろしくお願いします。

63 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/02(月) 22:23:28 ID:Xs9KWvUU
>>58
投下乙&GJ!
スカが、スカがあまりにもいい人過ぎるwww
随所にネタが散りばめてあってニヤニヤが止まりませんでしたよ。

さて、私の方は2250頃に投下しようと思いますのでどうか支援をよろしくお願いします。

64 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:24:43 ID:FVwCY9XE
GJ!!
もう何回笑ったかわかりませんよ、これはwww
ところどころに仕込まれているネタの切れ味も抜群。
原作からいろいろずれてるキャラクターたちも輝いています!
特にヤンデレなフェイトそんと、乙女なザフィーラ(妄想)あたりが秀逸w
かと思えば、いい人なスカさんとリインの交流がほのぼのとしていて、大変癒されました。
次回以降も続くという事で、楽しみにしています!

65 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:33:24 ID:Vmsac+36
夜天メーカーGJでした!
なんかこの世界の人は良い人が多そうですね。
しかしリイン2×スカの流れから、ここまで話が進むとはw

66 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/02(月) 22:52:03 ID:Xs9KWvUU
そろそろ時間なんですが、投下してもよろしいでしょうか?

67 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:52:35 ID:Zaf9Exi1
かもーん

68 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/02(月) 22:54:00 ID:Xs9KWvUU
んでは、投下開始。


ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL


第10話 翼を休める時


今はただ休息を―束の間であっても構わない。


六課の格納庫――。
尾翼にリボンのマークをつけたF-22が、疲れたように水平尾翼を垂れ下げていた。
本当はフライバイワイヤと呼ばれる電子制御で機体をコントロールするため電源を入れなければならないだけなのだが、激しい空戦機動
に晒されてわずか三日後と言うこともあって、パイロットを務めるメビウス1にはF-22が疲れているように見えた。
「通常の点検では異常は見当たりません…ですが、相当強いGをかけられたんですよね?時間があれば超音波を使った精密点検を実施した
いところなんですが……」
機体の整備点検を実施してくれた若い整備員はチェックリストを片手に報告してくれた。
「そうか……そうだな、頼むよ。万が一異常があったら困るからな」
「了解しました。機材の準備があるので、それが出来たらお呼びしますね」
整備員は快く了承し、早速精密点検に必要な機材の準備を始めるべく、自分の持ち場に戻っていった。
――さすがのお前もお疲れか?
整備員が立ち去った後、結構な付き合いになる愛機の無機質な肌をメビウス1は労わるように撫でた。
F-4EファントムやF-15Cイーグル、以前の愛機たちにも捨てがたい魅力はあったが、やはりF-22は格別だ。優れたステルス性に高度な探知
能力、ずば抜けた機動性とどれを取っても不満が見当たらない。
――それでも、奴には勝てなかった。
脳裏に浮かぶのは主翼や尾翼の先端を黄色で彩り、灰色のロービジ迷彩で固めたSu-37の姿。
苦い記憶が蘇り、メビウス1は顔をしかめる。なのはの援護がなければこの身は愛機もろ共空に散っただろう。それは戦闘機乗りにとって
恥ずべき事態だ。
そもそも何故黄色の13は犯罪者のスカリエッティに協力しているのか。彼は友軍と言えど病院の屋上に高射砲陣地を築いた陸軍連中に
怒りを露にするような誇り高い人物だと聞いたのだが。
「……やめよう、気分が悪くなる」
苦味と疑問ばかりの思考を投げ捨てて、メビウス1は天を仰ぐ。
そういえば、今日は六課のメンバーの大半が休みだと聞いた。機材の準備を進める整備員たちに目をやると、まだまだ時間がかかりそうな
様子だった。
「少しブラついてくるか」
ほかに特別急ぐ仕事もない。立ち上がり、メビウス1は格納庫から出た。確かヴィータが医務室に入室―実質的に入院のようなものだ――
していたはず。まずはそこから行ってみることにした。


69 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:54:03 ID:FVwCY9XE
怪獣モチロン

70 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/02(月) 22:55:24 ID:Xs9KWvUU
「いやぁー、派手にやられちまったよ」
あははは、と能天気な笑い声を上げて、入院着のヴィータがベッドの上にいた。頭には包帯を巻いて、顔には絆創膏。右腕は首から吊り下
げられている痛々しい姿で。
「頭部裂傷、右腕骨折、身体各部に切創と火傷―これだけ重傷負ってるのに、元気ねぇ」
呆れた声を上げながら、ヴィータを眺めるのは治療を担当したシャマル。まともな人間なら普通死んでいてもおかしくない重傷を負ったヴィ
ータがこうして笑っていられるのは彼女の治療魔法の存在が大きい。事実、医務室に担ぎ込まれた時のヴィータは死体同然の虫の息だっ
た。
「あはは……悪かったな、心配かけて」
笑うのをやめて、ヴィータは心底申し訳なさそうな表情を浮かべ、俯く。
負傷は間違いなく自分の責任だった。メビウス1は警告してくれたのに、不用意に前に出た結果―あの戦闘機からミサイル攻撃を受けた。
「ホント、心配したわよ…はやてちゃんとかわんわん泣いちゃって、大変だったんだから」
医務室に担ぎ込まれたヴィータを見て、はやては大泣きしながらシャマルに縋り付き、何とかして助けるよう懇願してきた。
それは指揮官としてはあるまじき姿なのかもしれないが、主として、家族としては正しい姿と言える。
「あぁ、悪いことした……」
ますます申し訳なさそうな表情で、ヴィータは自身の主の顔を思い浮かべる。
歩けるようになったら真っ先に会いに行かなければなるまい。
そんなことを考えていると、医務室のドアが開かれてリボンのマークのフライトジャケットを羽織ったメビウス1が入ってきた。何故だ
か頭にリインフォースを乗せているというオプションパーツ付きで。
「よぅヴィータ、まだ生きてるか?」
「生きてるかー、ですよ」
「……入室してる身に生きてるか、はねぇだろ」
苦笑いを浮かべながら、ヴィータは先ほどの表情を一変させた。
「なんでリインも一緒なんだ?」
「途中で合流した。目的が一緒だったからな」
「そうなのですよ。みんな忙しいけど、ヴィータちゃんのことを心配してるのですよ」
相変わらずメビウス1の頭の上に乗ったままリインフォースが言う。どうやらメビウス1と行動を共にするときはそこが定位置らしい。
ちなみに六課にやって来た当初、初めてリインフォースを見たメビウス1は思わず「うわ、妖精?」と驚き、続けて「きっと名前はピクシ
ーに違いない」と断言して本人に怒られたことがある。「だってエースコンバットで妖精と言ったらラリー・フォルクしか……」と言い訳
してみたが無駄だった。
「みんな……っう、ありがとうな。あたしは幸せだ」
わざとらしく涙ぐんで見せて、ヴィータはやや大げさに喜んで見みせた。
「大げさな……怪我は、どうなんだっけ」
怪我を負った本人であるヴィータ、それに治療を担当したシャマルの両方に目配せしてメビウス1は彼女の容態を問う。
「見ての通りの重傷。だけど、定期的に治療魔法をかけてますから。二日もすれば歩けるし、一週間もあれば復帰できます」
「そういうこと。あたしは頑丈なのが取り柄なんだ」
「頑丈、ねぇ……」
シャマルの治療魔法も凄いがヴィータの言葉にメビウス1は苦笑いを浮かべる。六発のミサイルの直撃を受けても死なないのは頑丈を通り
越して、半ば不死身に近いような気がした。頑丈さで定評のあるA-10サンダーボルトU攻撃機もびっくりだ。
「でもいくら頑丈だからって無茶しちゃだめですよ。でないと、またはやてちゃんが泣いちゃいますよ」
「うぅ……その、ごめん」
がっくりと首を項垂れて、ヴィータは本来妹分であるはずのリインフォースに謝った。

71 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/02(月) 22:56:52 ID:Xs9KWvUU
「あ、そうだメビウスさん」
そんな光景を温かく見守っていたシャマルが突然、何かを思い出したようにメビウス1に声をかけた。
「ん、どうした?」
「この間身体検査をやりましたよね?その時ちょっと機材の準備が出来なくて見送った検査があったんですが…」
「なんだ、そんなのあったのか。ああ、今日は暇だから出来るなら今すぐにでも……」
「それはよかったです」
語尾に音符マークをつけたような口調でシャマルが取り出したのは―注射器。
「血液検査なんですけど――」
「ごめん用事思い出した」
シャマルが言い終わる前に、メビウス1は医務室を飛び出そうとして―突然、足元に発生したバインドによって転倒。医務室の床に顔面を
叩きつける羽目になる。言うまでもなく、シャマルが自身のデバイスであるクラールヴィントで発動したものだ。これぞデバイスの無駄
使い。
「逃がしませんよー?六課の医務官としてみんなの体調をしっかり把握しておく必要がありますから」
「ちょ、ま、勘弁してくれ……グアッーーーー!?」
ズルズルとバインドに引きずられる形で医務室の奥へと連れ去られていったメビウス1を、リインフォースとヴィータはそれぞれ胸に十
字を切ったり合掌したりして見送った。
人間、幾つになっても怖いものは怖いんです。

F-22の格納庫を訪ねたティアナは、いつもならそこにいるはずのメビウス1の姿がないことに気づく。
彼の居場所を訪ねようと格納庫の中の整備員に声をかけようとしたが、なんだか忙しそうなのでやめておいた。
「残念ね、せっかく休みもらったのに……」
今朝になって突然なのはから言い渡された休暇に気をよくしつつも、どこか寂しげな表情を浮かべる。
そんな彼女の背中に迫る黒い影――。
「へぇ〜、そっかぁ。メビウスさんいないんだぁ?」
「うぇ!?」
いきなり背後から舐めるような声をかけられて、背筋にぞぞーっとした寒気を感じながらティアナは振り返る。
声の主――スバルが、ニヤニヤした顔を浮かべて立っていた。
「な、何よ…」
「別にぃ。そっか、ティアナって年上が好みなんだね。ちょっとブラコンっぽいところがあるからよく分かるよ」
「ち、ち、ち、違うわよ!そんなんじゃあ無くって、私は単に、その――」
腕を豪快に振り回して必死に否定しようとするティアナだったが、言葉が見つからない上にしっかり顔は火照ってる。
それを見たスバルはますますニヤついた表情。
「うんうん、言わなくても分かるよティア。確かにカッコいいよねー、パイロットだもん。○ム・クルーズよりも身長高いし……」
「ト、ト○・クルーズがどうしたってのよ?」
「またまたとぼけちゃって。私知ってるよ?ティアが最近ヒコーキの映画ばっかり見てて"あぁこの人カッコいいけど身長であの人に及ばな
いなぁ"とか言ってるの」
「な…っ!」
ばっちり見られていたとは。夜中にこっそり布団をかぶって、バレないようしっかり対策をしていたのにこの付き合いの長い親友はそんなこ
とはお見通しだったらしい。
ちなみにティアナが見ていた映画は九七管理外世界では戦闘機と言ったらこの映画の主題歌と言っても過言ではないくらい大ヒットしたもの
だ。CGの無い時代ゆえに海軍航空隊全面協力の元、登場する航空機はすべて実写と言う現代ではまずお目にかかれない作品だ。まだ見てない
人は是非見てほしい、きっとF-14トムキャットが大好きになるはずだ!

72 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:57:43 ID:jxLpas0c
BEST GUYを忘れるな支援

73 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/02(月) 22:57:50 ID:Xs9KWvUU
――閑話休題。作者は決して、米海軍航空隊の回し者ではないのであしからず。あ、でもF-14はもう退役していたか。くそ、米海軍め。
「とにかく!あたしは別にわざわざメビウスさんを誘いに来たんじゃなくて、ヴァイス陸曹にバイクを借りに来ただけ!勘違いしないでよ!」
「はいはい。ティアってばホント、ツンデレだよね」
無駄な抵抗を繰り返すティアナを見て、スバルは楽しそうに笑いながら駆け出した。
「ちょっとみんなに言いふらしてこようかな〜」
「……な、こら、待ちなさい!」
とんでもないことを口にしたスバルをティアナは全速力で追いかけるが、そこは共に今日まで厳しい訓練を耐え抜いてきたスバルのこと
だ。「こっちこっちー」と必死の形相で追いかけてくるティアナを茶化すように逃げる。
実際は、どうなんだろう――?
一向に縮まらない親友の背中を追いかけながら、ティアナの胸のうちでどこか冷静な思考が自分自身に問いかけてきた。
結果的に、彼は自分に自信を与えてくれた。そのおかげで今の自分がある、と彼女は考えている。
だから彼にそのお礼がしたい――そういう何でもない自然な感情を指摘されて、必死になって否定している自分がなんだか可笑しく見えた。
あたし、スバルの言う通りツンデレなのかしら?
疑問に答えてくれる人は、この場にいなかった。

「はぁ……あぁ、えらい目にあった」
ようやくシャマルの魔の手から解放されたメビウス1はふらふらと隊舎の廊下を歩いていた。
検査で血液を抜き取られた分足元がおぼつかないようだ。壁に手を当てて安定しない身体を補助しつつ進んでいると、廊下の奥にある休
憩スペースで聞き覚えのある声がした。
「ハンカチ持ったね?IDカード、忘れてない?」
「あ、大丈夫です」
―この声はハラウオンと、エリオとか言ったっけ、あの少年。
身を乗り出してみると予想通り、フェイトとエリオがいた。ただし、どういう訳かエリオはいつもの制服ではなく年齢相応な私服姿だ。
「よう、お二人さん。どうしたんだい?」
「あ、メビウスさん―大丈夫ですか、顔色がすっごいディープブルーですよ?」
声をかけるとフェイトが心配そうな表情で返答。そんなに酷い顔をしているのだろうか、だとしたら明らかにシャマル、血を抜きすぎで
ある。まったく吸血鬼じゃあるまいし。
「いや、ぶっちゃけ大丈夫かと聞かれたら大丈夫じゃないが今医務室に行く気は全く無いので大丈夫といっておこう」
「…?なら、いいんですが」
気丈に振舞ってみせるメビウス1に首をかしげながらも、フェイトはひとまず納得したような表情を見せた。
「それで、どうしたんだ?エリオはこれからお出かけかい?」
「はい、せっかくお休みもらったので―」
なるほど、とメビウス1は頷く。先ほどの会話内容から察するに、忘れ物が無いかフェイトに確認を受けていたのだろう。
しかし、フェイトは制服を着ているのを見るとわざわざ勤務を抜け出してきたように見える。案外過保護なのかもしれない。
「すみませーん、お待たせしました」
ちょうどその時、たったった、と急ぎ足で三人の元にやって来た小さな影があった。ピンクの髪に可愛らしい私服、キャロだ。
「やぁ、キャロ。君もお出かけ?」
「はい、そうで―メビウスさん、大丈夫ですか?なんか、こう、澄み切った青空みたいな顔色ですけど」
「君までそれを言うか。いいんだか悪いんだかよく分からない例えだな」
思わず苦笑いを浮かべて、メビウス1は手元に鏡があるならすぐにでも自分の顔を確認したい気分になった。まったくシャマルめ、いっ
たいどれほどの量の血を抜いたのだ。若い男の血が、そんなに欲しいのか。目的は何なのだ。まさか『恐るべき子供たち計画』か!?
脳内で怪しい含み笑いを浮かべる湖の騎士に対して黒い感情を燃やしながら、ふとメビウス1はエリオとキャロを交互に眺める。
「……デート、かな?」
『えぇ!?』
ぽつりと呟いた彼の言葉に、幼い二人は顔を真っ赤にしてしまう。エリオもキャロもまだまだ初心らしい。

74 :名無しさん@お腹いっぱい:2008/06/02(月) 22:58:41 ID:zNTvql27
対空砲全開支援

75 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/02(月) 22:58:55 ID:Xs9KWvUU
「あ、あの、メビウスさん、僕たちまだそういう関係では……」
「"まだ"ってことはこれから?」
悪戯っぽく笑うメビウス1にエリオはあたふたと慌てている。一方で、キャロの方は恥ずかしそうに俯いているが、満更でもなさそうだ。
「――はいメビウスさん、その辺にしてあげてください」
「ああ、悪い悪い……エリオ、男の子ならしっかりエスコートしてやれよ。キャロもエリオについて行くようにな」
フェイトがやんわりと困り果てているエリオに助け舟を出し、メビウス1も最後は大人の男らしく二人の肩を叩いてやった。
「は、はい――頑張ります!」
「わ、分かりました!」
何故だか敬礼までして見せたエリオとキャロにメビウス1は頬を緩くしながら答礼してみせた。
「……ところで、行き先とかスケジュールは決まってる?」
ふと疑問を抱いたのか、フェイトがエリオに確認するように言った。
「はい。シャーリーさんにプランを作ってもらってます」
「シャーリーに?」
意外なところで出てきた六課屈指の技術員の名前に怪訝な表情を浮かべながら、フェイトとメビウス1はエリオのデバイス"ストラーダ"
に収録されている本日の行動計画を覗き込む。
「何々……公園で散歩、デパートでショッピング、レストランで食事を取り、映画を見て、夕方には海岸線で夕焼けを見る……」
「シャーリー、いつの間にこんなものを……」
「……む、ホテルはさすがに無いんだなっ!?」
その瞬間、フェイトが表情ひとつ変えずに、自分のかかとをメビウス1の右足に振り落とす。たまらず声にならない声を上げて悶絶する彼
を見て、何も知らない無垢な少年と少女は怪訝な表情を浮かべた。
「…………うん、健全なスケジュールで安心。二人とも楽しんできてね」
『はーい!』
被弾部を抑えてゴロゴロと転がりまわる情けないエースパイロットを余所に、にっこりと笑顔を浮かべて、フェイトはエリオとキャロを送り
出した。何事も悪ふざけはほどほどにした方が身のためである。

結局その後フェイトにいくらか小言を浴びる羽目になったメビウス1は逃げ出すようにその場を後にした。
途中、内線で格納庫に連絡を取るともう少しで精密点検の準備が終わるとの報告を受けた。
「そろそろ戻るとするか……あー、イテテテ……」
戻ろうとして、先ほどフェイトからもらった容赦ない一撃が彼を苦しめる。仕方ないので途中で一休みしようと会議室前にあったソファ
ーに腰を下ろすと、その会議室から誰かが出てきた。
「あれ、メビウスさん?どうしたんです?」
現れたのはなのはだった。前回宿命のライバルと壮絶なドックファイトを繰り広げたのに、何故だか今回はただのダメな大人になっている
彼に向かって怪訝な表情を浮かべている。
「いや、ちょっとかくかくじかじか……君こそ何を?」
「私はちょっと、前回の戦闘でのデータをまとめてました」
「ああ――」
相手がユージア大陸で間違いなくトップクラスの技量を誇る者だったとはいえ、追い回されるばかりだった自分が不甲斐ないと彼女は感
じていた。それが休日を楽しむ新人たちを余所に一人データをまとめる行動に出させたのかもしれない。
「それなら俺を呼んでもよかったんだが?黄色の13とは何度か戦ってる」
「いえ……それは、ありがたいんですけど」
メビウス1の傍に腰を下ろし、なのははまとめたデータを展開させる。
その表情には、何か意味深いものがあるのをメビウス1は見抜いた。
「……自分の強さに、自信があったんです。けど、あの人には勝てなかった。挙句、メビウスさんは逃げろって言ってるのに無視して、
助けられちゃって」
「それは俺も同じだ。君の援護がなけりゃ今頃は――」
率直な意見を述べようとしたメビウス1だったが、なのはは首を振って彼の言葉を遮った。
「そうじゃないんです。なんて言うか―自分が、情けなく思えて」
正式に管理局に入局し、教導隊の資格を取り、魔法の使い方も格段に上手になっていた自分が、勝てない相手。自惚れるつもりはないが
教導隊員は強くあらねばならないのだ。そうでなければ教え子たちは失望してしまう。

76 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:58:57 ID:FVwCY9XE
支援

77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 22:59:54 ID:wMzpMk2v
支援です

78 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/02(月) 23:00:07 ID:Xs9KWvUU
「――自信を失った、か?」
そんななのはの心中を察したのか、メビウス1が彼女に問いかけてきた。
「落ち込むな、とは言えんよ。相手が何であれ負けたのは事実だ。俺も一度、今回で二度目だが黄色の13に勝てなかったことがある」
彼の脳裏によみがえってくるのは、敵の艦隊の行動力を無くすために発動された石油プラント及びその貯蔵施設の爆撃任務。あの時、追
い込まれた戦況下で、旧式機であるF-4Eを駆っていたメビウス1は後席を務める相棒と共に大きな戦果を上げていた。
「あの時は自分が無敵だ最強だと思っていたんだろうな。そして、奴は現れたんだ」
「それが―メビウスさんの言う、黄色の13?」
なのはの問いに彼は静かに頷き、話を続けた。
「AWACSのスカイアイはただちに撤退するよう命令したんだが、俺と相棒は無視した。せめて味方の脱出時間を稼ごうって、奴の率いる編
隊に挑んだ。時間を稼ごうとは言うけど、はっきり言って俺も相棒も落とす気だったんだがな」
自嘲気味な笑顔を浮かべ、メビウス1は調子に乗っていた当時の自分を省みる。
「――勝てる訳がなかった。相手は五機、どれも経験を積んだエルジアでも屈指のベテラン揃い。機体の性能差も大きかった。結局追い回さ
れて、被弾して……俺は運良く助かったが、相棒は重傷でな。翌日息を引き取ったよ」
だから複座戦闘機に乗るのはもうやめた、と付け加えてメビウス1は言った。
「俺もあの時は思ったさ。なんて自分は情けないんだろうって。調子に乗って無茶した挙句、大事な相棒を死なせちまって。なんとして
も奴に、黄色の13に勝ってみせると考えた――」
知らなかった、と言う言葉が口から出そうになるのをなのははかろうじて呑み込んだ。
以前一緒にウイスキーを飲んだ時でさえ、彼はこの話をしなかった。辛く、出来れば思い出したくない記憶だったのだろう。
絶対無敵のエースパイロットだと思ったんだけど―そうじゃないんだね。
彼への認識を改めなければならない、となのはは思う。彼とて失敗や挫折を経験してここまで来たのだ、最初から強かったと思うのは失
礼に値する。それはかつての撃墜事件から、ここまで立ち直って見せた自分と同じ気がした。
「まぁでも、結局すぐ勝てるようになる訳ないよな。そのことに気付いてからは焦っちゃダメだって考えた。それから――
「それから?」
「せっかく隣に経験豊富な仲間がいるんだからな、頼らなきゃダメだろう」
な?と優しい笑顔を浮かべて、メビウス1はなのはに確認するように言った。
「頼って、いいんですか?」
「当然だ。仲間に頼るのは全然情けない話じゃないし、むしろ戦術としては有効だ」
言い切ったメビウス1を目の当たりにして、ようやく―なのはは納得したような表情を見せた。
「そっか――そうですよね、うん」
教導隊員だから、エースオブエースと言う周囲の期待があるから。それが知らない間に自分への重圧になり、追い込んでいたことになの
はは気付く。もっと肩の力を抜いても罰は当たるまい。自分には受け止めてくれる仲間がいる。
「OK、納得できたならいい。今後ともよろしく頼む」
「……はい!」
互いに笑みを交わす。なのはの胸のうちで生まれた暗い影は、綺麗さっぱり消え去っていた。

79 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/02(月) 23:00:42 ID:Xs9KWvUU
一方で、はやての執務室。
部屋の主であるはやては、自分のデスクの上でこめかみを突っつきながら、自分の端末に表示される映像を眺めていた。
「先のホテル・アグスタ襲撃にて、迅速に対処した機動六課。私は、彼女らを賞賛に値する人間たちだと考える」
映像に映る男――管理局の地上本部代表、レジアス・ゲイズ中将は集められた報道陣に対してそう語った。
強力な戦力を一手に集めた部隊は、他所の部隊から「贔屓されすぎだ」と批判を浴びることが多々ある。六課も同じように、管理局内部、
特に慢性的な戦力不足に悩む地上本部からは猛烈な批判を受けていた。レジアスはその急先鋒と言ったところである。
「そのはずやのに……いったいどうしたんかな」
突然、手のひらを返すように今回の記者会見で六課をべた褒めするレジアスに、はやては怪訝な表情を隠しきれない。
「管理局とは、彼女らのように強くあるべきなのだ。それは地上本部とて例外ではない。そこで私は、不足する戦力を補うため、新兵器の
開発に着手した」
――新兵器?
眉毛につばをつけるような思いで記者会見を続けるレジアスの言葉に、はやては思わず胸のうちで聞き返した。
「まだ詳細は明らかに出来ないが、これが投入されれば、現在各地にて発生している質量兵器による破壊活動も、瞬く間に鎮圧できる。す
でに試験段階は終了し、数週間以内に最初の実戦部隊がクラナガンに配備される」
「なんやなんや、突然何の前振りも無く……」
突然レジアスが公表した"新兵器"について、はやては口を尖らせながらも電話に手を伸ばす。
「もしもし、クロノ君?久しぶりやね。うん、唐突やけど調べてほしいもんがあるんや……」

80 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 23:01:10 ID:qrHdTBkb
支援〜

81 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/02(月) 23:02:15 ID:Xs9KWvUU
投下終了です。
メビウス1がハッチャケ過ぎたか?いやでもここまで来たら引くに引けまい。
次回より再び戦闘です。ほのぼのパートって意外と難しい……。

82 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 23:08:09 ID:apzK+QxF
投下GJ!
>新兵器
普通にアインヘリアルなんてことは無いだろうからなぁ
まさかユージア大陸最強の対空砲なんてことは…


83 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 23:13:45 ID:wCPhvYWj
GJ!
6課を褒めるレジアス中将を初めて見た気がするwww

84 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 23:38:52 ID:pb3Fw67A
二股はダメですよと言っておくGJ
次々回くらいには夢にまで見た「優秀」なアインヘリアルと会える!?w

85 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 00:24:40 ID:fDH4ZMKP
GJ!!
アインヘリアル・・・六課に落された戦闘機を復元し使うとかw

86 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 00:29:55 ID:eRJ6L4lL
リリカルナイツ待ちだが考えてみるとこっちに投下はねぇよなw

87 :名無しんぼ@お腹いっぱい:2008/06/03(火) 00:35:09 ID:lCwUZnGj
GJ!!
六課に落された戦闘機を復元するよりは、スカから流れてくるんじゃね?

88 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 00:40:03 ID:fDH4ZMKP
なんとなく、アインヘリアルの逸話にかけてみたかったんだw
ヴァルキリー(なのはたち)に選ばれた(撃墜された)戦士(能力が証明されている戦闘機)みたいな。

89 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 00:55:42 ID:jPgOLAbM
夜天メーカさん、最初のはやてのつっこみの変態以外は変体じゃないといけないと思います
でないとはやての突込みがつっこみにならなくなってしまいます!

90 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 01:26:21 ID:mINltpWI
>>86
いや、さすがにこっちには投下しませんよwww
今のところ、序は上がってるんですが、その後の展開にちょっと戸惑ってまして。
申し訳ないです

91 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 01:59:35 ID:O8xCVJuM
へんた〜い、とまれ!

92 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 08:40:56 ID:YIqRnBpM
>>90
ですよねーw
気長に全裸で正座して待ってますので

93 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 12:19:50 ID:bnj1NP4A
GJ!
良い青春劇ですね。

94 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 12:21:18 ID:LJwVQdrT
test

95 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 12:23:44 ID:LJwVQdrT
すいません。
リリカルナイツはどこでやっているのですか?

96 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 14:12:17 ID:xyIdZHqN
リリカルナイツじゃなくてリリカルナイトだろ

97 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 14:27:20 ID:fIMfBTA6
>>95
上で言われているリリカルナイツのことならまだ始まっていません。
それとは別のSSですがリリカルナイトというのもあります。

98 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 14:52:47 ID:bnj1NP4A
>>95
90を見ればわかりますよ。

99 :一尉:2008/06/03(火) 17:21:27 ID:23kxMrC4
うむF−14はもうすで旧式たな。支援

100 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/03(火) 19:53:19 ID:keHMR/zp
昨日投下しようと思ったけど時間なくてできなかった後編の投下
今大丈夫でしょうか?

101 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/03(火) 20:02:38 ID:keHMR/zp
大丈夫そうですね。
そろそろ投下します。

102 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/03(火) 20:03:46 ID:keHMR/zp
某所の工場跡、そこには十数名の男達が集まっていた。
 
「リーランドさん、空港火災で例のお宝が無くなったそうですぜ。それでもやるんですか?」
 
不安そうに聞いた男の声を受けて、周りに居た男達もリーランドと呼ばれた人物の方を見る。
 
「この計画には大金を注ぎ込んだんだ、今更引けるか」
 
廃材にどっかりと腰掛けたまま、リーランドは苛立ったように答えた。
 
「だけど、ぶん取るお宝が無けりゃ意味無いんじゃ?」
「それ以外にも管制AIや金持ちどもの荷物があるだろうが。少なくとも元を取るには十分だぜ」
「ですが………」
「くどい!」
 
言い縋ろうとする手下の声を遮り、隅の方に目を向ける。
 
「心配いらねえ、絶対成功する。こっちには心強い味方が居るんだからよ。なあ、先生」
 
周囲の視線も釣られて向いた先、暗がりの中に壁に寄り掛かるようにして一人の男が立っていた。
 
「あんたがいれば問題ないだろ。なあ、ジェフリー先生」
 
まるで返事をするかのように、陰の中で歪んだ笑みが浮かび上がった。
エルク達がリニアに乗り込む数時間前の事である。
 
 
リリカルなのはARC THE LAD
『第二話:ミッドチルダの車窓から(後編)』
 
 
粗方の事情を聞きだしたエルクは、まず始めに貨物室を片付ける事に決めた。
慎重に室内へと体を滑り込ませ棚の陰に隠れて様子を窺うと、先程は分りにくかった内部が良く見える。
縛られた警備員五人に強盗は三人、真正面から向かって倒しても良さそうだが、聞きだした話では他にまだ仲間が居るとの事。
呼ばれると厄介だと判断し、手近にあった小物を掴むと放り投げる。
緩い放物線を描きながら飛んでいくそれは、隅に落下するとカツンと小気味良い音を鳴らし、全員が揃ってそちらを向いた。
想像通りの素人臭い動き。
その隙に一息に間合いを詰めると、槍の鎬で無防備に曝け出された後頭部を薙ぎ払った
鈍い手ごたえの後、意識を刈り取られた男達は崩れ落ちる。
気絶した連中を見下ろして、エルクはつまらなそうに息を吐いた。
(相手にならねえな)
安全を確保したエルクは警備員らの縄を解いていくと、その縄で今度は先に捕らえた一人を加えて強盗達を縛っていく。
 
「もう終わりましたか?」
「まあな」
 
入り口から顔を覗かせたキャロに警備員の介抱を頼むと、今度は強盗達の武器を取り上げていく事にした。
と言っても、建築材を加工したロッドや改造エアガンなどばかりで、武器らしい武器などなかった。
可哀想なぐらい貧弱な装備に、この強盗グループの程度が知れ、この程度で何故リニアを襲おうと思ったのかますます謎が深まった気がする。
そんな時ふと横を見ると、自由になった警備員達が壁際の装置を前に何やら話し込んでいる。
不審に思ったが気にしないでいると、やがてエルクの方へと近づいてきた。

103 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/03(火) 20:04:59 ID:keHMR/zp
「どうしたんだ?」
「いえ………、警報装置が止められていて通報が出来ないんです。おそらく機関室のメインシステムが停止してるんだと思いますが」
「それを復旧させろってことか?」
 
警備員達は顔を見合わせると申し訳なさそうに頷く。
あんな装備の奴らに圧倒されるぐらいだ、自ら向かおうというだけの気概を持つ者などいないのだろう。
 
「分った、俺に任せな」
 
   ◆
 
エルクは一人機関室へと向かって進む。
強引に聞き出した話では残りの仲間は七人、その殆どは先程の奴らと大差ないらしいが、一人主犯格の男が雇った魔導師が居るとの事。
こんな奴らが雇った魔導師なのだから大した事無いと思うのだが、決して油断は出来ない。
かといって相手の正体が分からない以上あれこれ模索しても特に良い案も出ず、そうしている内に展望台への階段を通り過ぎ機関室の扉が見えてきた。
(あれか………)
扉に触れるが、どうやらロックされていて開かず、カードキーが必要なようである。
恨めしげにカード挿入口を眺めるが無い以上どうしようもない。
(取りに戻るか? いや、これならば)
扉からは内部の駆動音が漏れ聞こえてくる。
外に居てもこれほどの騒音である、中に居る人間には多少の物音など聞こえないだろう。
 
「ふっ!」
 
勢い良く槍の穂先を扉の隙間に差し込むとそのまま下に振り下ろす。
ギンッという音と共に鍵が壊れて扉が開いた。
機関室内部は大小無数の機器が並び、まるで機械の密林のように入り組んだ複雑な構造になっており、奥まで見渡す事が大変難しい。
身を隠して進むのには大変好都合であった。
エルクは安心して一歩踏み出し―――目が合った。
丁度運悪く機材の陰から男が顔を覗かせたのである。
 
「おい、お前―――ッ!?」
 
男が全ての言葉を吐き出す前に、エルクは素早く近寄り拳を叩き込んで黙らせた。
力み過ぎたのか相手の体からゴキリという嫌な音が聞こえたが、そんな事に気を払っている暇は無い。
カツカツと金属製の床を鳴らす靴音が近くに寄ってくる音が聞こえたからだ。
エルクの姿が見えたとは考えにくいので、殴った男の呻き声かまたは倒れる音が聞こえたか、どちらにせよ早々に何とかした方が良い。
結論付けると相手が寄ってくるのをじっと待った。
 
「!? おい、どうした?」
 
仲間の惨状に気付いたらしく駆け寄る男、その背中にエルクは煌めく白刃を振り下ろした。

104 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/03(火) 20:06:15 ID:keHMR/zp
どうもこの部屋には二人しか居なかったらしい。
奥には管制室の扉があり、残りの連中はそこに居るのだろう。
気付かれる前に警報装置を復旧させるには好都合だと考え、エルクはメインシステムを探した。
あっさり見つかった件の装置は魔力駆動炉に脇に設置されていて、表面にはハッキング用の計器がペタペタと張り付いている。
それらを毟り取るとエルクはパネルを操作していき、遂に復旧確認画面まで漕ぎ着けた。
しかし………、
(IDカードが必要ってどういう事だ!?)
最後の最後で必要となったカードの確認。
今更ながら入り口の段階で取りに戻っていればと後悔するがもう遅い。
余計な手間を掛けてしまえば床に転がった二人が目を覚ましかねないし、管制室から他の仲間が出てきて気付かれるかもしれない。
迅速な行動が要求されるこの場面、どうしたものかと頭を悩ませた抜いた結果、

「勝手に制御奪われときながら、このポンコツ!」
 
苛立って思い切り拳を叩きつけた。
 
「ッッッッカァー! 硬っ!」
 
鈍い音を立てて表面がへこむが、さすがに壊れたテレビの様には直らず、やはりIDカードがいるようだ。
痛む手を振りながら頭を悩ませていた時、突然下からニュッと心を読んだかのようにカードが差し出された。
 
「エルクさん、IDカードです」
 
危険な為貨物室に預けてきたはずのキャロがそこにいた。
 
「キャロ!? なんでここに?」
「おじさん達からカードを渡すように頼まれたんです」
 
小さな子供にこんなお使い頼むなよと思うが、あの連中にここまで来る根性を期待するのも酷であろう。
復旧させたら一旦戻ろうと、げんなりしながらカードを通そうとした時―――今までずっと黙り込んでいた装置が、泣き喚くように突如としてけたたましい音を吐き出した。
 
『Warning! Warning!』
 
機械合成された音声が発せられると同時に、エルク達に急激な慣性が掛かる。
どうやらリニアを急停止させたらしく、魔力駆動炉の駆動音が小さくなっていった。
思わずたたらを踏み何とか体勢を整える事には成功したのだが、ふと気が付くとエルクの手からいつの間にかIDカードが消えている。
あわてて探し、見つけた場所は、
(………最悪だ)
ドバンと音を立てて開き、中からぞろぞろと男達を吐き出した管制室の扉、その前に転がっていたのだ。
数人の男達との対峙、僅かな睨み合いの一時。
その最中に不意にエルクの感覚が目の前の連中とは異なる刺すような殺気を掴んだ―――これは。
 
「!?」
 
危険を感じたエルクは急いでキャロの手を引き飛び退いた。
一拍遅れてエルクの立っていた位置へと幾筋もの雷が降り注ぐ。
 
「IDカード、か。届くのが遅いと思っていたが邪魔者が居たとは………」
 
カードを拾い上げ感慨深そうに呟く男は、他の連中に比べ暗く澱んだ印象を受けた。
おそらくこの男が今回の事件の主犯格。

105 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/03(火) 20:07:57 ID:keHMR/zp
「ジェフリー先生、そいつらの処理は頼みましたぜ」
 
そう言い残すと再び管制室に入っていく男。
入れ替わるようにして現れたのは、一言で表すなら魔導師だった。
ピンクとグリーンの派手なマントを纏い、先端にドクロの付いた杖をこちらに向けている。
まるで子供向けの絵本に出てくる悪い魔導師そのままの姿。
 
「………その桃色の髪の娘は俺によこせよ」
 
先程の雷はこいつが放ったのだろう。
電気に魔力を変換できるとは警戒に値する、予想以上の実力がありそうだ。
そう考えて改めて奴の服装を見れば、相手を油断させる為と考えられなくも無い。
だが仮にそうだとしても普通はそんな事はしない、そう普通ではないのだ。
 
「ロリコンかよ。キャロ下がってな、この変態は俺が………キャロ?」
 
返事がない。
不審に思いエルクがキャロの方へと目を向けると、明らかに様子がおかしい。
魔法に驚いたとか状況に付いて行けていないといった類ではなく、まるで未知の怪物にでも出会ったかのような怯え方をしていたのである。
 
「違う………」
 
一歩逃げるように後退る。
 
「違う………あの人、人間じゃない!」
「キャロ、下がってどこかに隠れてろ」
 
理由は分らないがキャロをこのままの状態にしておくの危険だ。
エルクはキャロを押しのけるように下がらせた。
 
「一人で相手をすると? 舐められたものだな。行け、お前ら。援護してやる」
 
ジェフリーと呼ばれていた魔導師の足元に波紋のように魔法陣が広がり、それと同時に弾かれたように三人の男達が駆け寄ってくる。
それぞれが思い思いの武器を手にしてはいるが、最も警戒するのはやはり奥に佇むあの魔導師。
エルクは身構えて魔法陣を展開、及び肉体強化を施して相手の魔法に応じようとした。
だが………、
 
「ブーストアップ・ジャンピングハイ」
 
ガキンッという激しい音、エルクのデバイスと金属製のバールがぶつかり合う音だ。
エルクの眼前には一瞬で距離を詰めてきた男の顔、相手のバールを受け止められたのは、臨戦態勢であるが故のある種の勘のおかげといえる。
力任せに押し返すと、エルクの上に影が差した。
慌てて飛び退くと、目の前を掠めるように流星のごとく鉄パイプが振り下ろされる。
(何だこいつらの動き!? あの野郎何したんだ!?)
先程あの男が何か唱えたのは分かる。
となると視界に映るあの二人に何らかの補助をしたと思われ………、
(………二人?)
咄嗟に槍の柄を横に繰り出すと猛烈な勢いの蹴りが叩き込まれた。
生身の足に普通の靴、にもかかわらず先刻のバールとは比べようも無い衝撃に、全身強化を施しているはずのエルクは宙へと舞い上げられる。
詠唱後の加速、及び攻撃方法による威力の違い。
空中へと浮き上がる間の火花のような思考、その中で出された答え―――奴が使ったのは、おそらく脚部限定の筋力強化。
そこまで考えた所で、エルクの視界が開けた。

106 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/03(火) 20:09:30 ID:keHMR/zp
天井近くまで浮き上がったがゆえに、煩雑な機械に遮られる事無く全体が見渡せる。
敵の能力は分かった、配置も見える、後はどう片付けるかだ。
だが、戦術を模索しようとしたとき、敵意の篭った強い視線を感じた。
こちらから良く見えると言う事は、裏を返せば敵の目にも留まり易いという事。
目を向けた先にはこちらに杖を向けるジェフリーの姿。
気が付けばエルクは直感的に天井を蹴っていた。
判断は正しく、背後を雷撃の軌跡が貫いてゆく。
三箇所の同時ブースト強化に加えこの砲撃、おかしな外見の割に魔導師としての力量はエルクよりも上かもしれない。
(まずいな、このままじゃ………)
落下しながら途中で幾つかの機材を蹴り、遮蔽物の密集した地点へと降り立つ。
飛び上がれば狙撃、かといって視界の悪いこの空間では飛び上がりでもしない限り、どうしても死角が出来てしまう。
通常ならば防戦一方となるこの状況、だがエルクは魔導師で魔法という便利なツールが存在する。
自らのデバイス内にある魔法の記憶野から最適なものを探し出すと、魔法陣を現した。
 
「炎よ、復讐の刃と化せ!」
 
唱えるが外見上の変化は全く無い。
だが、エルクの熱くなっていた思考は冷えて、精神は澄んだ水のようになってゆく。
感覚が研ぎ澄まされ、呼吸音や振動、加えて筋肉の軋みや放たれた熱量からでも相手の位置が手に取るように分かる。
使用した魔法は『リタリエイション』自らの五感を高める事で反応速度を上げ、カウンターを与え易くするものだ。
しかし、見た目が変わらない以上、魔導師でもない相手はそんな事分かるはずも無い。
上から不用意に飛び掛る一人目を突き上げると、そのまま勢い良く後ろに引き、石突で機材の陰から飛び出した二人目を打ち倒す。
残る三人目の方に顔を向けると、先の二人の末路を目にして気が引けたか、襲い掛かろうとするのを止めたせいで前につんのめっている。
無論そんな隙を逃すはずも無く、全身をバネにした弾丸のような強烈な刺突は、相手の体へと吸い込まれるように叩き込まれた。
(残すはあの野郎だけだな)
エルクは打ち倒した強盗たちを一瞥すると、残る敵を片付けるべく再び意気込んだ。
 
「―――煌め……る天神よ…今………もと………」
 
そんな時にふと聞えた擦れたような音。
気のせいだろうか、いや、これは―――、
 
「―――撃つは雷、響くは轟雷………」
 
儀式魔法の詠唱。
気付いた時にはもう遅く、
 
「サンダーフォール」
 
雷撃の嵐が吹き荒れた。
 
 
文字通り全身を貫いた衝撃と焼け付くような痛みに、エルクの視界は明滅する。
それでも何とか意識を飛ばさずに踏みとどまれたのは魔力で全身を強化していたからか。
だが、脱力感に痺れ、さらに呼吸困難と筋肉の痙攣は止めることが出来ず膝を付いた。
まさか機関室で広域魔法を使うとは普通思わないだろう。
いくら丈夫に作られているとはいえ魔力駆動炉に雷撃を放つなど正気の沙汰とは思えない。
軽く焼けた皮膚の痛みを耐えながらただうずくまっていると、カツリカツリと渇いた靴音が近づいてくる。
間違いなくあの魔導師だ。
気力を振り絞り何とか震える四肢を抑えて再び立ち上がると、エルクは音の方へと槍を構えた。
機材の陰から悠々と現れたのはやはり、あの極彩色の魔導師。
しかし、ふらつく体と朦朧とした意識では次の行動に移ることが出来なかった。

107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 20:10:52 ID:cAztpEmk
支援

108 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/03(火) 20:11:33 ID:keHMR/zp
「今のを耐えるとは………。小娘にばかり気を取られて気付かなかったが、なかなか優秀な魔導師のようだな」
 
上から下に値踏みするような視線を感じた。
曖昧な意識の中、相手の声が遠くから響いてくるように聞こえる。
耳障りな音に不快感を感じ、
 
「なかなか丈夫そうだ。お前も新しき人類としての素養があるかもしれん」
 
告げられた言葉でエルクの意識は一気に覚醒した。
新しい人類、この単語には聞き覚えがある。
同じ言葉を聞かされたのはほんの数時間前のことではなかったか。
 
「どうだ、新しき人類としてその力何倍にもしてみたくはないか?」
 
聞き間違いではない、こいつは件の黒服に関係がある。
燃え盛るように心に戦意の火が灯るのを感じる。
心の昂ぶりと共に全身に魔力が満ち溢れていくようであった。
 
「そうか………、お前も黒服の連中の一味か。無理矢理にでも話を聞かせてもらうぜ!」
「交渉決裂か、―――ならば邪魔者は死ぬがいい」
 
両者から殺気が膨れ上がり、互いの足元には魔法陣が浮かび上がった。
空気が張り詰め魔力が鳴動し、辺りの計器は余波を受けてガタガタ揺れる。
緊迫した一瞬、それらを全てぶち破るようにして、
 
「あの………、終わりましたか?」
 
間の悪い事にキャロが顔を覗かせた。
戦闘音がしばらく止んでいたため、もう戦いが終わったと勘違いしたのだろうか。
だが、これはあまりにもタイミングが悪すぎる。
ジェフリーの顔がニヤリと歪むのが良く見えた。
ドクロの杖をキャロへと向け、その正面に新たに展開されるもう一つの魔法陣。
(あの野郎―――!)
発動前に潰すには距離があり、かといって放置すればキャロが犠牲になる。
もはや選べる選択肢はただ一つ、エルクが壁となり相手の魔法を防ぐしかない。
迷う時間もなく、回避も反撃も封じられたエルクは敵の射線上に飛び出すと、
 
「炎よ、俺を護る盾となれ!」
「トライデントスマッシャー」
 
炎と雷が交わり、そして爆ぜた。

109 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/03(火) 20:12:39 ID:keHMR/zp
   ◆
 
キャロ・ル・ルシエが戦場に足を踏み入れたのは、なにもエルクの事が心配だからという訳ではなかった。
もちろん心配はしていたが、それ以上にキャロの心を占めていたのは自分の感じたある奇妙な感覚の事であった。
信じられない、夢や幻であって欲しいという己の願いに突き動かされ、いち早く確かめるために戦いの音が止むと、とりあえず機関室へと再び入ったのである。
だが、実際には戦闘は終わったのではなく膠着していただけ。
護るべく飛び出したエルクの生み出した硬質な障壁は、三つに分かれた雷撃の中央からの一本を防いでいた。
しかし、続く上下からの二本の射撃が折り重なった大きな一つの破壊の塊は、圧倒的な圧力でエルクを防御ごと押し飛ばすと瓦礫の海へと沈める。
自らの不用意さが招いてしまった結末は、居場所を作ろうとしてくれた恩人が傷つけられるという現実と、自分が感じたものがやはり間違いではなかったという事実。
嫌悪感を抱くような笑みを浮かべて近づいてくる、あれは、あの人の形をした「何か」は。
激しい後悔と恐怖に、キャロの理性の戒めはいとも簡単に吹き飛び、眠れる竜が目を覚ました。
 
   ◆
 
エルクは圧し掛かる重みと蓄積したダメージで動けはしなかったが、意識はあった為その一部始終を見ていた。
エルクを無視し、キャロの元へとジェフリーが近寄っていった時、突如としてキャロの体が爆発したかのように見えた。
現実はフリードが巨大な姿に変わる為、劇的に膨張した結果そう見えたのである。
次に視界に映ったのは紅蓮の炎。
フリードの放った炎弾はジェフリーを飲み込み、周囲の装置を穿ち、壁に大穴をあけた。
 
「グオオオオ!」
 
脅威を排除してもフリード暴走は止まらない。
でたらめに放たれた炎は天井を砕き、床を焦がし、辺りの機器を融解させる。
デバイスの補助無しでこれ程の力が引き出せるとは、さすがにキャロの魔力は桁外れだと言える。
しかし、デバイスの介在がない以上これは殺傷設定と同意である。
魔力駆動炉にでも炎が当たれば、即座に惨事を招く事になってしまう。
自分が何とかしなければ………、その想いからエルクは瓦礫を押しのけて無理矢理体を起こすとキャロの元へと歩み寄った。
 
「キャロ! おい、しっかりしろ!」
 
軽く揺するとキャロが放心したような顔を上げた。
急激な魔力放出の疲労により意識が混濁して、その目は虚ろである。
 
「グルルルル」
 
フリードが怒りの目つきでこちらを向く。
もはや敵味方の区別も付かないのだろう。
一体どうすればよいのか、まともな活路を見出せぬままフリードをただ見つめたとき、唐突に乾いた銃声が響いた。
 
「このバケモノめ!」
 
血走った眼で密造であろう銃を撃つ男、しかしその程度ではフリードの外皮を傷つけることすら出来ず、火花が舞うだけである。
この男の服装と声には覚えがある、たしか今回の事件の主犯格であった。
(あいつは馬鹿か!?)
フリードの首がそちらを向き口蓋が開く。
最悪な事に男の隣には魔力駆動炉があった。
あまりに危険な状況にエルクはあせるが、そんなとき天啓のように解決策が閃いた。

110 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 20:12:56 ID:ICHP84jD
ししししし…支援だーーーーー

111 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/03(火) 20:14:49 ID:keHMR/zp
「キャロ! こいつを持て、こいつだけに意識を集中しろ!」
 
キャロに押し付けるように渡したのはエルクのデバイス、これならば非殺傷設定に代わり危機は去るはずだった。
だがしかし、
 
「!?」
 
ビシリと音を立ててデバイスにヒビが入る。
強すぎる魔力を流し込まれて、フレームが耐え切れず破損したのである。
それならば………、
(悪いが使わせてもらうぜ)
キャロにさらに持たせたのは銃型のデバイス、2つのデバイスで魔力を二分すれば制御できると考えたのだ。
果たして、フリードから放たれた火球は男を呆気なく吹き飛ばす、しかし周囲の機材には焦げ目が付く程度であった。
上手く制御できたフリードの体はみるみる縮み、キャロの頭にポスリと着地する。
 
「これで、一件落着、か?」
 
緊張が解けて忘れかけていた疲労が湧き上がってくる。
急に体が重くなった気がして思わずまどろみそうになるほどだ。
しかし、そんな余韻を断ち切るように、無粋な影が割り込んだ。
 
「このガキが、舐めた真似しやがって!」
 
魔導師ジェフリー、あれほどの炎を受けてなお禍々しくそこに存在していた。
衣服は焦げ顔も煤けているが、血走った眼から戦意の光は全く衰えていない。
むしろ狂気を含んで危険性が増したと言っても良い。
足元から滲み出すように拡がる魔法陣と連動するかのように、埒外の魔力が収束し渦を巻く、否、現実に蒼い風が渦巻いている。
魔法陣から風が吹き出しているのだ。
雷に次いで風の魔力変換、おまけに辺り一面更地にしそうなほどの魔力を込めている。
それを見るや否やエルクはひび割れたデバイスを手に駆け出した。
あれだけの膨大な魔力で高速処理など出来るはずがない、潰すなら今。
 
「炎よ! 熱く燃えろっ!」
 
掛け声と共に全身へと圧縮した魔力を流し込む。
一種のカートリッジシステムの上辺だけの真似、もちろん多大な負荷に全身の筋肉が軋むが、エルクの身体能力は一時的とはいえ飛躍的に向上した。
文字通り全身全霊を込めた突撃は一息に距離を詰め、ジェフリーの腹部に突き刺さる。
 
「だああああ!」
「貴様ぁぁぁ!」
 
衝突に伴う衝撃はエルクの質量を加えて余すことなくジェフリーへと伝わり、ジェフリーの口からは血の混じった泡が噴出した。
そのまま新緑の中へと叩き落すと一瞬の後、森の一部が吹き飛んだ。
 
「手強い奴だ」
 
遠くに光の線が見える、ようやくやって来た管理局員だろうか。
見届けるかのように、役目を果たした相棒は中ほどからへし折れた。
直接の危機は去っている、しかし同時にまた新たな問題が湧き上がってきた。
(これって不味いんじゃないか?)
これだけ派手に暴れたのだ、エルクもキャロも事情聴取は免れない。
そうなると当然キャロのことが管理局の暗部にも知られてしまうだろう。
エルクは迷わずキャロを抱えると、壁に空いた穴から高架下へと飛び降りた。

112 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/03(火) 20:16:06 ID:keHMR/zp
   ◆
 
高架脇の獣道をエルク達は進んでいた。
薬草を口に含み、肉体的な痛みや疲れを誤魔化してはいるのだが精神面はどうしようもなく、エルクの歩みからは傍から見ていても無気力さが伝わってくるようである。
一方エルクの数歩後ろをついてくるキャロはというと、どうにも消沈した様子でうなだれており、エルク以上に活力が無かった。
 
「おい、キャロ」
「………」
 
さすがに気になったエルクが声を掛けると、キャロはノロノロと無言で顔を上げた。
 
「どうした? 泣きそうな顔だぞ」
「………ごめんなさい。わたしのせいで………」
 
どうやら先程の事を気に掛けていたようだ。
そもそもキャロが巻き込まれる形になったのは、元はといえばエルクが警報機を力の限り殴りつけたのが原因であり、キャロが気に病む必要はないのであるが、そう言っても納得しないであろう。
 
「それにフリードも暴れさせてしまって………」
 
表情を暗くして述べるキャロ、だがここは訂正しておくべきだった。
 
「それはキャロが魔法の知識や訓練を欠いていたからであって、別にキャロが悪い所為じゃない。現にデバイスがあれば制御できたじゃねぇか」
「………」
「失敗してもそこから学べばいいだろ。分からない事があればちゃんと答えてやるから」
「………はい」
「そういやなんであんなに怯えていたんだ?」
 
今思い起こしてみてもキャロの怯え方は異常だった。
それにあの時言った言葉も気に掛かる。
 
「確か、人間じゃないとか言ってなかったか? ロリコンは人でなしって事か?」
「? いえ、ただあの時あの人から………」
「あいつから?」
「あの人からとても普通の人間とは思えない感情を感じたんです」
「どういうことだ?」
「………研究所でわたしは様々な生き物と暮らす実験をさせられたんです。その中で身に付けたのが生き物と心を通じ合わせる力。例えば―――」
 
軽く頭を起こしてエルクをじっと見るキャロ、その眼は出会ってから何度か見たことのある、考え込むような眼だった。
 
「エルクさんは常に何かに怒ってイライラいるけど、大抵がわたしに対する心配から来ているものだったから安心して付いて来れたんです」
 
自分でもガラが悪いと思っているエルクに、なぜキャロが何の不信も抱かずに付いてきてくれたのか。
エルクは今まで特に考えなかったが、その理由が解った気がした。
 
「でもあの人は、誰かに押しつぶされて苦しんでいる心と、取り付いている誰かの心が混じったような、そんな不気味な感情を持っていたんです」
「そういう事か」
 
確かにエルクも似たような事を感じた気がする。
三箇所に強化を施す力がありながら脚部のみに留まったり、バリアで防いだわけでもないのに致命傷を与えられなかったり、まるで心と体を間違えているようであった。
 
「ただ、ロリコンってのは間違いなさそうだな」
「………そういえばずっと気になっていた事があるんですが―――」

113 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/03(火) 20:17:21 ID:keHMR/zp
   ◆
 
ミッドチルダ極北部、ここには一種の空白地帯が存在している。
ベルカ自治領の辺縁部、聖王教会と管理局の間に余計な諍いが生じぬ様に意図的に廃棄された都市群。
書類上住民はいない、という事になってはいるが実際は依然として多数の人間が暮らしている場所であり、そしてこの地はハンターズギルド発足の地でもあった。
この地域はベルカ自治領との交易ラインであったために、廃棄後も依然として残り続ける者、失った役職を埋める者、そして彼らの生活を支える者が再び集まったのだ。
そして再び人が暮らせる環境が出来ると、ある種の独立した社会が生じたのである。
しかし、政治的な摩擦を避ける為管理局も聖王教会も手を出せない間隙ゆえに、当然のようにテロリストや犯罪者、それに類する荒くれ者たちも入ってきていたのだ。
治安は維持しなければならない、しかしどこかに頼る事は出来ない。
苦肉の策として治安の維持のために作られた民間警備会社、これがハンターズギルドの雛形であった。
現在では他地域まで仕事の幅を広げるほど大きくなったギルド、その大元が治めるこの一帯は内包する犯罪者数はミッド有数の多さだが、治安の方は地方都市並みに安全と言える。
その一地域、住民からはインディゴスと呼ばれる存在しないはずの町の一角、都市鉱山として廃ビルを解体した跡地に立てられたアパートに二人と一匹の影が入り込んだ。
 
『―――こちらが事故のあった現場です。見えるでしょうか、市民の足として愛されてきたリニアレールは無残な姿に………』
 
傾いた夕日が屋内を赤々と染め、テレビからの音声のみが室内を埋める静かな一時。
 
『―――犯人グループの内五人死亡、二人が行方不明で、事件を解決しようとした魔導師が居たとの情報も入っており………』
 
その均衡を破るようにノックの音が鳴り響く。
 
「シュウ、俺だ。エルクだ」
「入れ。鍵は開いている」
 
物音一つ立てずに佇みテレビを見ていたこの部屋の住人は、ドアの方へと声を掛けた。
長身に水色の髪、軍人のような物腰だが纏う雰囲気は暗殺者のようである。
入ってきたのは声の通りの見知った顔。
 
「どうしたんだ急に? 連絡の一つでも遣せば良いのに」
「悪りぃ、考えてなかった。―――シュウ、暫くここに置いてくれないか?」
「構わないが………、後ろの娘は?」
「厄介ごとに巻き込まれたんで俺が保護したんだ」
 
焼き焦げボロボロになった服のエルクを見て、シュウの頭に先程のニュースが思い浮かんだ。
 
「もしやリニアでなにか………」
「疲れてるから全部後で話す」
 
フラフラした足取りで進むとエルクはぐったりとソファーに倒れこむ。
大変疲労の色が濃く、事の顛末を聞くのは無理だろう。
それはそうとして、
 
「えーと君は………?」
「キャロ・ル・ルシエです」

114 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/03(火) 20:18:48 ID:keHMR/zp
エルクが連れてきた少女の、じっと覗き込むような瞳からは戸惑っているようなものを感じる。
見知らぬ相手と二人で居るのはこの年ぐらいの子には酷だろう。
まずは気を許せる相手と認めてもらうのが良い。
 
「勝手が分らない所もあるだろうがゆっくりしていって欲しい。何か分らない所があれば聞いてくれ」
 
努めて優しく言ったのが功を奏したのか、少女は少し考え込んでいるようだが気まずさは多少薄れた気がする。
それゆえに、
 
「聞きたい事があるんですけど、いいですか? エルクさんも詳しくは分からないらしくて」
「まあ、エルクも何だかんだいってもまだ若いからな、知らない事もあるだろう。それで聞きたい事とは?」
 
こんな質問が繰り出される事となったのだ。
 
 
 
「―――ろりこんって何ですか?」
 
 
 

115 :光と音のLNS ◆3jfmPG.Fu. :2008/06/03(火) 20:21:27 ID:keHMR/zp
以上で投下完了です。
無理矢理アークザラッドの世界観と融合させたせいで勝手な設定が多いですけど
あまり気にしないで頂ければ幸いです。

116 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 20:39:12 ID:3gEoA07K
GJ!
これは西川先生版のシュウなのでしょうか?

117 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 20:42:47 ID:MGB4q89l
此処の長編のストーリーはSSというよりは原作のコピーが大半だな
主役級は誰も死なないし、ハッピーエンドで、なのはさん達すげーの定型文って感じ

もっとアグレッシブに原作から外れた作品が無いといい加減秋田

118 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 20:45:41 ID:BLUBOgXI
GJキメラとかスカさん作れるかな?

119 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 21:37:44 ID:zGRq09Rg
>リリカルなのはARC THE LAD
なんという高速更新。早くも続きが見れて嬉しいですw
まだ序章って感じなんですけど、ストーリーが気になって仕方ないですね。これは原作ネタを調べざる得ない。
生物と心を通わせるっていうのは、やっぱり原作には無いこのキャロの追加能力でしょうね。
いい感じです。なにがいい感じって、心を通わせるとか、なんか巫女っぽくね? この能力w
フリードの暴走も、原作では周囲が凄すぎてイマイチ強調されてない感があったのですが、エリク視点だと暴走の危険性ってのがヒシヒシ伝わってきて、原作通りの能力なのに新鮮に読めました。
この力を制御するっていうのも燃える展開ではありますが、やっぱ暴走には暴走の良さがあるんですよねぇ。
このスレではキャロにスポット当たること多くて実に良し。
色んなタイプのキャラがいますが、こっちのキャロは儚さと天然っぽさを持ってて可愛いよキャロw
ラストのオチになる台詞には悶えずには居られませんね。色んな意味でw

120 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:15:14 ID:zGRq09Rg
折角の投下のなのに妙に静かでサビシス…
時間帯のせいかな? 誰かおられましたら投下したいので支援お願いしたいのですが、宜しいでしょうか?
魔法少女リリカルなのはStylish十四話です。

121 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:17:41 ID:gKYPqiQ1
オッパイカンケーネージャン!
どうぞ。

122 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:19:21 ID:YxgrFlfG
全力で支援!


123 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:19:27 ID:8XsGiYz+
>>>120
ドーゾ

124 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:21:34 ID:zGRq09Rg
反応あり! では30分丁度に投下させていただきます。
今回はスーパーティアナタイムさ! 負の意味でw

125 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:22:27 ID:fOwiIdqZ
支援します。

126 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:30:53 ID:gKYPqiQ1
顎ナス支援

127 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:31:10 ID:zGRq09Rg
投下開始します。投下数は17 容量は約42KB
支援ヨロ

128 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:31:46 ID:zGRq09Rg
 オークション会場は地獄絵図を展開していた。
 突然動き出した操り人形達。そいつらの虚ろな瞳と錆びた短剣から逃げ惑うオークションの参加客。
 大抵の者達は自らの陥った状況を理解出来ず、ただ闇雲に逃げ惑っていた。
 血の結界によって閉鎖空間となったホールに在りもしない逃げ場を求めて駆け回り、椅子に躓いて転倒し、二階の客席から転げ落ちる。
 そして足や腕を負傷して、呻き、ただすすり泣くだけの憐れな子羊と化して徘徊する悪魔達から逃れる為に神に助けを請い続けた。
 しかし、そんな彼らはまだ幸運な方だった。
 皮肉にも、不必要に動かなくなった彼らは混乱の中で奮戦するなのは達にとって保護しやすい対象となる。
 賢い者達は、この状況でなけなしの理性を保ち、冷静さを失わなかった者達だった。
 恐怖に先走らず、動き鈍い人形達を警戒して、壁を背にして器用に逃げ回っていた。
 ――そして最も愚かなのは、混乱し、『他人を犠牲にしてでも助かりたい』と自分勝手に行動する者達だった。

「ど、どけっ! 邪魔だぁ!!」

 肥満体を必死で動かし、逃げ惑う人々を掻き分けて、時には迫り来る<悪魔>の前へ囮として突き飛ばす。

「落ち着いて! 必ず助けます、混乱しないで下さい!!」

 懇願にも似たフェイトの警告も、冷静さを欠いた自己保身のみに動き続ける者の脳には届かない。
 一部の暴走した者達が被害と混乱の拡大を促し、なのはとフェイトはそのフォローに行動を割かれる最悪の展開となりつつあった。
 混乱を振り撒いていることも自覚せず、肥満体は走り続ける。
 これまでの人生のように、自分の身の為だけに奔走する男は混沌の中で助かる道を見つけ出した。
 誰もが逃げ惑う中、ただ一人周囲の<悪魔>達を打ち倒し続ける男がいる。

「頼む、助けてくれ! 金なら幾らでも払う!!」

 二挺の銃型デバイスを振り回し、この地獄の中でも決して鈍らない力の輝きを放つその存在へ、彼は縋り付いた。
 自らの仕事を遂行していたダンテは、男の必死な形相を一瞥する。

「――金か。確かに、今丁度要り様なんだ」
「だろう!? この場の誰よりも高く払うぞ! だから、私を助けるんだ!!」
「OK、助けてやるぜ。そら、危ない」

 そう言って、笑いながらダンテは彼をサッカーボールよろしく蹴っ飛ばした。
 文字通り豚のような悲鳴と共に肥満体は軽々と宙を飛び、壁に激突して沈黙する。そのコンマ一秒後に男の居た場所に投げナイフが突き刺さった。
 意識と数本の歯を引き換えに男は命を救われ、次の瞬間ダンテの魔力弾が射線の先にいた人形を粉砕した。

「やりすぎです」
「おっと失礼。人命優先ってことで許してくれ」

 狙って蹴ったものか、すぐ傍にいたなのはが気絶した男に防護結界を張る中、さすがに顔を顰める様子にダンテは嘯いてみせる。
 皮肉を込めた返答に、なのはは困ったように沈黙するしかない。
 自己保身の為の暴走で、被害が増えることをこれで抑え、同時にこれは本人の安全の為にもなる。
 やり方は乱暴だが、ただ敵を倒すのではなく周囲に気を配っているダンテの戦い方を、なのはは信頼しつつあった。

「この敵のこと、何か知ってるみたいですけど……っ」
「悠長に説明してる暇はないが、一つだけ言っとくと、客を逃がそうなんて思うなよ。外にコイツらがいない保証はないぜ」
「……分かってます」

 内心、ダンテに援護を頼み、自分が結界を砲撃で破壊するという考えもあったなのははそれを改めた。
 結界の得体がまるで知れない以上、砲撃の出力調整のミスは余剰エネルギーによる建物の破壊とそれに次ぐ崩落の危機を招くし、脱出を求める客の行動が更に被害を拡大させる事は想像に難くない。
 自分でも焦りがあることを自覚し、なのはは冷静になるように努めた。
 しかし、このままではジリ貧なのは確かだ。
 室内戦に適したフェイトが持ち前のスピードで混戦の中奔走することで、未だ死者だけは出ていないが、それは多少の幸運も関わっての結果だ。
 この状況が続けば、疑問に思わざる得ない。
 果たして、サイコロを振って同じ目を出し続けることが何時まで出来るのか――?
 その答えはすぐに出た。

129 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:31:52 ID:bCtWS5LC
うひょー! 支援だぜ!!

130 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:32:33 ID:zGRq09Rg
「――ッ! 危ない!」

 ディバインシューターでまた一人の客を襲おうとしていた敵を撃破したなのはは、そのすぐ傍で抱き合って蹲る老夫婦を見つけ、意味のない警告を発した。
 別の人形が二階からナイフを振り上げて飛び降りようとしている中、神に祈るしかない彼らは一歩も動かない。

「ディバイン……っ!」
「避けろ!」

 すぐさま次弾の魔力を練り上げるなのはを、不意にダンテが突き飛ばした。
 一瞬遅れて、飛来したナイフがなのはの頬を掠める。
 鍛え上げられた危機回避能力が無意識に体を動かし、なのはは反射的に形成した魔力弾をカウンターで撃ち出してしまった。
 自分を攻撃した敵を素早く粉砕し、しかし次の瞬間絶望的な失敗を悟る。

「あ」

 なのはに残された行動は、そんな間の抜けた言葉を漏らして視線を老夫婦に戻すことだけだった。
 悪魔の人形が嬉々として彼らに飛び掛る。
 それはあの二人の死を意味する。なのに唯一それに気付く自分はもう何も出来ない。
 すぐに形成しようとする次の魔力弾は、完全に間に合わず。
 なのはの目の前で、ついに犠牲が出ようとして――。

「させるかぁ!」

 間に割り込んだユーノの展開するバリアによってそれは防がれた。

「ユーノく……っ」
「なのは、打ち上げるよ! 墜として!」
「――!! 分かった!」

 意外な乱入に驚愕するよりも先にユーノの声がなのはの体を突き動かし、魔法を行使させた。
 ユーノは左腕で展開したプロテクションで人形の体ごと攻撃を受け止め、右腕をフィールド系の魔法で防護する。
 そして振り抜いた拳は、貧弱な腕力よりも障壁の反発作用によって、枯れ木で出来た人形の体を軽々と宙へ弾き飛ばした。

「シュート!」

 放たれた桃色の弾丸が、空中で標的をバラバラに爆砕した。
 10年ぶりのコンビネーションを成功させたなのはとユーノ、互いに幾つもの感情を交えて視線を交差させる。
 交わしたい言葉や疑問は幾つもあった。

「――敵の動きを止める! 一気にカタをつけるんだ!」
「――分かった!!」

 しかし、言葉など交わすまでもなく、今この場で最も必要な判断と行動を二人は無意識下で互いに理解し合っていた。
 ユーノとなのは、二人は自分の成すべき魔法を準備する。

「フェイトちゃん、勝負を掛けるよ!」

 混戦の中、貫くように走るなのはの声をフェイトは聞き逃さず、その真意も間違えない。
 ここぞという時の為に控えていた高速移動魔法を発動させ、フェイトはなのはの空白の時間を埋めるべく疾走する。
 制限時間のあるフェイトのフォローの間に、なのはは独り敵を撃ち続けるダンテにも声を飛ばした。

「敵の動きが止まります! 合わせて!!」

 端的ななのはの言葉に、ダンテは目配せ一つで応じてみせる。
 そして、ユーノの魔法が完成した。

131 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:33:13 ID:zGRq09Rg
「いくよ! <レストリクトロック>!!」

 集束系上位魔法が発動する。
 指定区域内の対象を全て捕縛するバインド。発動と同時に、ホール内で動く全ての<悪魔>と、逃げ惑う人間を纏めて無数の光の輪が捕らえた。
 敵味方問わない無差別な捕縛だが、その対象数を考慮すれば信じられないほど高度な魔法技術であることは明白だった。
 魔女の釜の如き混沌とした空間が唐突に全て制止される光景に、それを待ち構えていたなのはすら圧巻される。
 実戦から退いていたとはいえ、成長したユーノの実力はなのはの予想を超えるものだった。
 一瞬呆けてしまう中、ダンテの純粋な感嘆の口笛だけが軽快に響く。

「なるほど、こいつはスゴい。食べ放題ってワケだ」
「数が多い! 守って五秒!」
「三秒で十分さ」

 不敵に笑うダンテの両腕が集束された魔力を帯びて赤く発光し、スパークを放ち始めた。
 我に返ったなのはがすぐさま魔力弾を周囲に形成する。フェイトによって稼がれた貴重な時間を使い、用意した弾数は倍近い。

「いくぜ?」
「今っ!」

 言葉も交わさず、互いに相手の射線を把握し、自分が撃つべき標的を捉える。

「Fire!!」
「シュート!!」

 引き絞られた弓のように、満を持して二種類の光が解き放たれた。
 真紅と桃色の光弾が乱れ飛び、敵だけを正確に捉えてそれに直撃し、呪われた人形を吹き飛ばす音が連続した爆音となりホールを埋め尽くす。
 一瞬にして一方的な破壊の嵐が暴れ回る。動けなくなった人々の悲鳴はその中に埋もれていった。
 そして、束の間の嵐が過ぎ去った時、後に残るのは人間だけだった。
 あれほどいた<悪魔>は一匹残らず消し飛び、敵の全滅を示すようにホールの扉を覆っていた赤い結界は音を立てて砕け散る。

「――BINGO」

 唐突に取り戻された静寂の中、ダンテは舞台の幕を閉じるように、これ見よがしに銃口から立ち昇る煙を口で吹いて見せたのだった。






魔法少女リリカルなのはStylish
 第十四話『Cross Fire』







132 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:33:48 ID:3gEoA07K
我が身はすでに支援完了!

133 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:33:54 ID:bCtWS5LC
SHI☆E☆N!! SHI☆E☆N!!

134 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:34:25 ID:zGRq09Rg
「――うん、そう。こっちの戦闘は終了したよ。重軽傷者は多数、でも死者は出てないから」

 状況から考えれば奇跡的とも言える結果を確認したなのはが通信を行う中、ユーノ達はホールのステージ付近に集められた客の様子を見て回っていた。
 結界が解除された今、何人かは外に出ることを強く主張していたが、外でも戦闘があったことを告げるとすぐに黙り込んだ。
 誰もが回避された惨劇に安堵し、同時にジワジワと実感を持って蘇る恐怖の余韻に身を強張らせていた。

「すぐに救護隊が来ます。それまで辛抱して下さい」
「腕が……腕が折れてるんだっ! 早く治すよう言ってくれ!!」

 フェイトは無用なパニックを起こさないよう笑顔を振り撒き、客の一人一人に声を掛けていたが、似合わないタキシードの中年が泣き付いて来て対応に困っていた。
 重傷者に治癒魔法をかけるユーノを指して、男はただひたすら腕が折れていることを主張し続ける。

「すみません、重傷者が優先なんです。それに、彼が働いているのは善意で……」
「うるさいっ! 分かっているのか!? 腕が折れてるんだぞ、腕が……っ!」
「へえ、そうかい。痛むのか?」

 辛抱強く落ち着かせようとするフェイトの横から、ぬっと腕が伸びて、迫る男の肩を押さえ込んだ。折れた腕の方の肩を。
 走り抜ける激痛に、男は言葉を忘れて奇怪な悲鳴を上げた。
 しかし、ダンテはそんな様子を尻目に優しい笑顔を浮かべながら、加減もせずにポンポンと肩を叩く。

「ああ、確かに痛そうだ。だが、こんな美人に怪我の心配をしてもらえるんだから、男ならやせ我慢の一つも見せなきゃな?」

 呆気に取られるフェイトの前で、ついに泡を吹き始める男の顔に何を感じ取ったのか、納得するようにダンテは頷いた。

「そうか。分かってくれて嬉しいぜ」
「相手は怪我人なんですよ……?」
「怪我人なら他に山ほど居るさ。甘やかす歳でもないだろ」

 諌めるフェイトに、ダンテは全く悪びれもせずに笑って見せたのだった。
 様子を伺っていた周囲の者達の間で飛び交う自分勝手な文句が鳴りを潜める中、ダンテ達はなのはの元へと集まった。

「とりあえず、応急処置は施したよ。命に関わる怪我の人はいないね」
「ありがとう、ユーノ君。それに……久しぶりだね」
「うん。僕も、驚いたよ」

 なのはとユーノの二人の間に何とも言えない空気が漂った。
 二人が顔を合わせるのは実に久しぶりのことだったし、大人になって少しずつ言葉を交わし辛くなりつつあった中、窮地において変わらず心を通わせ合えたことが嬉しかった。

「……ポップコーン買って来るか?」
「しっ、少しだけそっとしておいて上げましょうよ」

 そして、傍らで一連のシーンが終わるまで待ち惚けを喰らう二人を思い出して、なのはとユーノは我に返った。
 顔を赤らめながら咳払い一つ。お互い、心なし距離を取り合う。
 冷静になった。今は、こんな悠長なことをしている場合じゃない。

「それで、あの……」
「ダンテだ。職業は便利屋。ここにはお偉いさんの護衛に雇われて来た」

 どう切り出したものか、と伺うなのはの様子を察して、ダンテは手短に自己紹介を済ませた。
 基本的な質問には幾らでも答えられるが、<悪魔>に関してはどう説明したものかと顔に出さずに悩むしかない。
 それに、敵のいなくなった今でも何か違和感が残って仕方ない。
 先ほどから、さりげなく走らせる視線に護衛すべき男の姿が一向に捉えられないのも気になった。

135 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:35:13 ID:zGRq09Rg
「さて、アンタらも何から聞いたらいいのか分からないって顔だが、俺もどう話せばいいもんか悩んでてね」
「そうですね……とりあえず、わたしは高町なのはといいます。機動六課所属の分隊長をやっています」
「ナノハ、ね――アンタらの知り合いにヴィータやザフィーラって奴がいれば、話は早いんだが」

 ダンテは全く期待せずにその名前を出したが、三人は一様に驚きの視線を彼に向けた。

「知ってるんですか、ヴィータちゃんのこと!?」
「……まさか本当に知り合いなのか?」
「同じ部隊の所属です。それに、ダンテさんはひょっとしてティアナと知り合いじゃないですか?」
「オイオイ、ティアまでいるってのか? 冗談が現実になりやがった」
「やっぱり。ティアナは外で警備に当たってます。よければ、会いますか? その方が話もしやすいと思うし」
「ハハッ、いいね。感動の再会って言うらしいぜ、こういうの」

 そう言って破顔するダンテの表情を、これまでの見せ掛けではない純粋な笑顔だとなのは達は感じた。
 そこにはティアナに対する確かな親愛の情があった。
 目の前の得体の知れない男に抱く最後の不信感が消えていく。
 不法所持の可能性があるデバイス。自分の部下と共通する戦闘スタイル。そして何より、その力。
 警戒に値する要素は幾つもあるが、それを打ち消しているのはたった今判明した彼の人間関係と、何より彼自身の人柄だった。
 悪い男ではない。なのははようやく、何の隔たりもない友好的な笑みを浮かべることが出来た。

「お話、聞かせてもらってもいいですか?」
「ああ、美人の尋問なら大歓迎だね。望んだとおり、再会出来たしな」

 オークションが始まる前、偶然出会った時の言葉を思い出して、なのはとフェイトは苦笑した。

「それじゃあ、わたしはダンテさんを連れて外で合流してくるから、フェイトちゃんは救護班が来るまでここで待機してね」
「分かった」
「ユーノ君も。わたし達が守る側の人間なんだから、無理はしないで」
「……うん、分かったよ」

 なのはの仕事としての言葉に、ほんの僅かな寂しさを感じながらユーノは頷く。
 ダンテと共に未だ危険の残る前線へ歩み去っていくかつての少女の背を眺め、彼は昔とは違う自分達の関係を改めて噛み締めていた。

「気をつけて、なのは……」







136 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:36:03 ID:zGRq09Rg
 その時、その瞬間、異なった場所で多くの出来事が歯車のように連動して動き出していた。
 ただ一つ、ヴィータの立つ光の届き切らない薄暗い空間を除いて。
 ホテル<アグスタ>の地下駐車場は、外の喧騒から隔離されているかのように音の死んだ静寂に満ちていた。

「野郎……」

 ヴィータは視線を落としたまま悪態を吐いた。それは彼女の足元に広がるモノのせいだった。
 血だ。
 正確には死体と血だった。
 このホテルの警備員の服を着た幾つもの肉の塊が、暗闇の中にあってどす黒い血の海に沈んでいた。
 散らばったパーツを集めればきっと人間が出来るに違いない。原形を留めぬほどバラバラにされた憐れな死体だった。
 自分の考え得る最悪の事態が起こったのだとヴィータは悟った。
 ホテルへの搬入口のある地下の更なる奥。死んだ血と肉の放つ臭いはそこからも漂ってくる。
 ヴィータはすぐさまデバイスの通信機能をOFFにした。非常灯だけが照らす暗闇の中、集中を乱す邪魔を入れたくない。
 血溜まりに足を踏み下ろし、びちゃっと響く不快な水音を無視して歩みを進めた。
 本来ならパニックに陥るような惨状の中、ヴィータの思考は逆に冷たく、静かになっていく。
 無血鎮圧を第一とし、非殺傷設定によってそれを成す管理局の魔導師は生々しい死への耐性が足りない。もし新人達ならば、この場で冷静ではいられなかっただろう。
 しかし、ヴィータは古代ベルカの騎士であった。
 人が死ぬ時、必ず安らかに眼を瞑ったまま逝けるのではないことを知っていた。人は、何処までも汚く殺せる。
 そういう意味で、この場に転がる死体はむしろ綺麗だとすら感じた。

(一人も、生きちゃいないのか……?)

 また一つ、死体を見つけた。
 体から離れた位置にある腕がハンドライトを握り締め、別の場所に転がる自分の頭を照らしている。
 その死に顔は苦悶のそれではなく、ただぼんやりとした驚きだけがあった。
 自分の死にも気づいていないような呆けた表情が逆に不気味ですらある。
 しかし、ヴィータの気を引いたのはその死相ではなく、この死体を生み出した手段だった。

(すげえ断面だ。シグナム並の腕じゃねぇか)

 戦士としての純粋な感性が、不謹慎にも目の前の死に対して感嘆を漏らしていた。
 何らかの刃物による切断。死因はそれに違いない。しかも、相手に苦痛を感じさせる間もなく一瞬で人体をバラバラにするような斬撃だ。
 柔らかい人肉を、鉱物を切るように鋭利な平面で切り分けている。『斬った』というより『スライスした』という表現が相応しい。まるでトマトのように。

(雑魚とは違うか……)

 グラーフアイゼンを握り締める手に、力と緊張が加わった。
 自分の戦った有象無象の<悪魔>どもに出来る芸当ではない。
 何らかの大物が待ち構えている―――半ば確信した警戒心を抱き、ヴィータは更に足を進めて行く。
 敵がもう立ち去った、などと楽観的な考えは欠片も浮かばなかった。
 この奥には何かが居る。進むごとに増していく、ただ存在するだけで発せられる圧迫感のようなものが感じられるのだ。
 死臭が強くなり、終着が近いことを示していた。
 物音が聞こえる。
 何かを漁るような音だ。やはり、敵の目的はオークションの品物か?
 足音と気配を殺して、並び立つ支柱に隠れながら近づき、ヴィータはついに辿り着いた。
 一台の輸送車の近くに転がる死体。おそらく二人分だ。血とパーツの量が多い。
 輸送車の二台は扉が鋭角に切り開かれている。周囲には投げ捨てられたコンテナが幾つも転がっていた。
 その荷台の前に佇む、人影が一つ。

137 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:36:42 ID:bCtWS5LC
闇に堕ちたティアナにwktk

138 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:37:01 ID:fOwiIdqZ
支援だぜ!

139 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:37:04 ID:zGRq09Rg
「――動くな。両手を見せながら、ゆっくりと振り返れ」

 完全に背後を取れる位置に立ったヴィータは、静かく端的に告げた。
 人影の小刻みな動きが停止する。
 やはり何かを探していたらしい、コンテナに差し入れていた手をゆっくりと取り出すと、そのまま力なく垂れ下がった。

「頭の位置まで上げろ」

 ヴィータは再度命令したが、その人影は従わなかった。代わりに背を向けながらも自分に発せられる殺気が感じられる。
 コイツは降伏なんて考えちゃいない――ヴィータはそう悟ったが、不用意に攻撃的になることはなかった。
 現状、自分は有利な位置にある。それを確保し続ければいい。
 何かを仕掛けるつもりなら警戒するべき両手も、ヴィータの位置からはハッキリと確認出来た。
 右手は無手。左手には問題の得物を握っている。
 鞘の形状からシグナムと同じ片刃の剣。しかし、レヴァンティンより反りが深い。

「振り返れ。ゆっくりだ」

 その言葉には、目の前の人影も従った。
 足の動き、手の位置、相手の向ける視線の向きまで用心深くヴィータは観察する。
 見上げるほどの長身と広い肩幅、そして露わになった服の上からでも分かる屈強な胸板が男であることを示していた。
 動きと合わせて揺れるコートの裾。
 視線が自分を捉えた瞬間増した殺気と圧迫感。
 そして、完全にヴィータと向き直り、その顔を見た瞬間驚愕が冷静さを吹き飛ばした。

「お、お前……っ!?」

 見開いた眼に映る男の顔は、信じられないことにヴィータにとって見知ったものだった。






「例の<アンノウン>と同質の魔力反応です! でもこれは……数値が桁違いです!」
「極小規模の次元震を感知! 信じられません、数メートルの範囲内で安定、継続して起こっています!」
「数メートル……『あの化け物』の体格とほぼ同じか」

 矢継ぎ早に届く報告を必死に脳内で処理しながら、グリフィスはモニターを睨み付けた。
 たった今出現した反応の出所がそこに表示されている。
 リニアレールでの事件以来、サーチャーに改良を加えることでノイズ交じりとはいえ不可解な映像妨害を克服したモニターが可能になっていた。
 センサーに何の前触れもなく出現したソレは、対峙するティアナ達を大きく上回る巨躯で佇んでいる。
 牛の頭と人間の肉体を持つ、全身を炎で包まれた化け物――信じ難い存在が現実に具現していた。

「次元空間の航行や転送を行う際の波長にも似ています」
「というと、あの怪物は他の次元世界から転送されて来たのか?」
「『された』というよりも、今も転送『され続けている』と表現した方がいいような――」
「なんだ、それは? …………アレは、本来現実に存在しないものが無理に存在し続けている?」

 グリフィスは自分でも支離滅裂な言葉だと思いながらも、その表現が最も正しいように感じた。
 これまで確認された<アンノウン>は、倒れた後に例外なく消滅する。まるで最初からこの場には存在していなかったかのように。
 それが正しい認識であったとしたら?
 本来この世界に存在出来ないはずのものが何らかの切欠や力によって現れ、力尽きることによって再び元の場所へ還されて行くのだとしたら?

 ――だとすれば、あの化け物どもが本来居る筈の世界とは一体どんな場所なのか?

 次元空間にすら隔てられず、現実と夢の境のように決して越えられないのに紙のように薄い境界――その先に存在するというのか。

140 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:37:49 ID:BLUBOgXI
スケアクロウを剣でホームラン支援

141 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:39:47 ID:zGRq09Rg
「馬鹿な……」

 言葉とは裏腹に、グリフィスは滲み出る嫌な汗を拭った。
 これ以上考えても混乱するだけだ。今は、状況に対処しなくては。

「ヴィータ副隊長は?」
「残存勢力探索の為、地下に向かいました。通信はカットされています」
「呼び出し続けろ。探索が終わり次第、スターズFの援護に」

 思考を切り替えたグリフィスに応じるように、はやての通信モニターが展開された。

『状況は把握した。現場にはなのは隊長が向かっとるから、スターズFには専守防衛を命じて到着まで持たせるんや』
「しかし、これを相手に援護も無く、新人だけでは……っ!」
『敵の奇襲の恐ろしさはさっき分かったやろ。後手の対応に回る以上、配置は下手に動かせん』

 はやての声は平静そのものだったが、内心では予想外の出来事の連続に頭を抱えているだろうとグリフィスには予想出来た。
 人情家の部隊長は決して指揮者向きの性格ではないが、だからこそ自らへの厳しい戒めによって冷徹であり続けようとする。
 ならば自分に出来ることは、違える事無く命令を下し、前線の者達に出血を強いるだけだ。

「<アンノウン>動き出しました! スターズFと交戦開始!」
「――防御に徹し、<アンノウン>をその場に繋ぎ止めろ。ホテルには絶対に近づけるな。その命を賭けてでも!」

 部隊長の言葉を代弁するグリフィスの命令が厳かに下された。






「ティア、来るよ!」

 動き出した燃える山のような牛の化け物を見て、スバルは傍らのパートナーに悲鳴のような警告を発した。
 正直、スバルの心には不安と恐怖しかなかった。
 幼い頃に出会った炎の怪物は、あの時と変わらず――むしろあの時よりもハッキリとした存在感を持って目の前に敵として立ち塞がっている。
 得体の知れない恐怖が全身を支配し、こんな時自分を支えてくれる筈のパートナーは先ほどから様子がおかしい。
 唐突に突き付けられたティアナの過去の真実と、初めて見た彼女の豹変振りが思考をかき乱して、スバルから冷静さ奪っていた。
 今の彼女を戦場に繋ぎ止めているのは、課せられた任務に対する使命感だけだ。
 見た目通りの闘牛のような勢いで突進してくる炎の塊を前に、スバルはそれ以上言葉を続けられず、咄嗟に回避行動を取った。
 一瞬早く、ティアナもその場から跳び退いている。
 しかし、二人の意思は噛み合わなかった。
 意図せず互いに正反対の方向へ跳び、ティアナを案じていたスバルとは違い、ティアナは自身で躊躇わず判断した。
 それが、二人の行動の暗明を分けた。

「うわぁああああっ!?」

 すぐ傍を駆け抜けていくバックドラフトのような高熱の風。二人とも直撃回避は成功させていた。
 しかし、全身に纏わりつく炎の余波にスバルは悲鳴を上げる。
 恐怖による竦みと一瞬の判断の遅れが、スバルの足を引いたのだ。
 荒れ狂う熱と風に吹き飛ばされ、地面を転がるスバルをティアナは一瞥もしなかった。

142 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:39:54 ID:bCtWS5LC
支援したいんです!!

143 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:40:47 ID:zGRq09Rg
「<悪魔>がぁ……っ」

 炎の悪魔を睨みつける瞳には怒り。
 だがそれは、仲間を傷つけられたなどという優しさに基づいたものではなく。

「邪魔をするな!」

 炎の向こうへ消えた仇に届かぬ無念と絶えぬ憎悪。
 邪魔をするなら死ね。
 立ち塞がるなら死ね。
 <悪魔>は全て――滅んで果てろ!

「邪魔を」

 カートリッジ、ロード。

「するなァァァーーー!!」

 体の奥から吹き上がる感情の嵐をそのまま吐き出す。
 クロスミラージュが銃身を加熱させ、銃口はでたらめに吼えまくって、憎しみの弾丸を凄まじい勢いで発射し続けた。
 高圧縮された魔力弾が敵の強固な皮膚を突き破り、確実に体内へ潜り込んでいく。
 しかし、巨大な体格はただそれだけでティアナの魔力弾の威力を散らした。単純に効果範囲が狭い。弾丸が小さすぎる。
 カートリッジ一発分の弾丸を撃ち尽くしても、揺るぎもしない敵の巨体を見上げ、ティアナは舌打ちした。
 振り返る炎の山。その両腕に全身の覆う火炎が集束し、物質化するという在り得ない現象が起こる。
 炎が形作った物は、その体格に見合うほど巨大なハンマーだった。
 外見だけで鈍重な速度と、それに反比例するとてつもない威力が想像出来る。直撃すればダメージどころか原形も留められない。
 その凄惨なイメージを思い描いて、しかしティアナは笑う。
 いつだって笑ってきた。追い詰められた時でも不敵に、アイツのように。
 ――その笑みが、いつも思い描くダンテのそれとは全く異なる凄惨なものだということに、ティアナ自身は気付いていない。

《GYYYYAAAAAAAAAAAAA!!》

 この世界の何処にも存在しない怪物の雄叫びが響いた。
 ハンマーを振り上げ、地響きを起こしながら敵が迫り来る。
 眼前で、燃え盛る塊が振り下ろされた。

「デカブツがっ!」

 隕石が自分の真上から落下してくるような圧迫感に悪態を吐きながら、ティアナは横っ飛びする。

《Air Hike》

 更にもう一段。クロスミラージュの生み出した足場を蹴って、空高く飛翔した。
 そして、爆音。
 ティアナの立っていた場所を振り下ろされたハンマーの先端が抉り取る。
 インパクトの瞬間響いたのは比喩ではなく、爆発と同じ音と衝撃だった。破裂するように着弾点から炎が噴き出し、周囲を焼き尽くす。
 二度のジャンプで大きく距離を取っていなければ、ティアナも余波で火達磨になっていただろう。

《Snatch》

 だが判断ミス一つで直結する死に、ティアナは何の感慨も抱かない。憎しみだけが今の彼女を突き動かす。
 空中で放たれた魔力糸のアンカーが敵のハンマーの先端を捉えた。
 次の攻撃の為に得物を振り上げる敵の動作に応じて糸を縮め、二つの力に引き寄せられてティアナの体は空中を移動する。
 ハンマーが最頂点を描く軌道に達した時、タイミングを合わせてアンカーを解除した。
 丁度竿に釣り上げられるような形で宙に投げ出されたティアナは、計算し尽くされた軌道と姿勢制御で地面に着地する。
 その位置は、完全に敵の背後を取っていた。

144 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:41:21 ID:vTLK9VMX
支援?

145 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:41:32 ID:bCtWS5LC
各員、支援ニ徹セヨ。

146 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:42:06 ID:BLUBOgXI
次はあんただMrカミサマ支援

147 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:42:08 ID:zGRq09Rg
「もらった……っ!」

 アンカーを放つ傍ら、魔力を集中し続けていた右腕を、満を持して突き出す。
 オレンジから赤へと変わりつつある魔力のスパークが迸り、その凶暴な力の奔流を無防備な敵の後頭部に向けて解き放った。
 通常の魔力弾を倍近く上回る破壊力が、振り返ろうとする敵の顔面に直撃した。
 次々と炸裂する魔力光の中でへし折れた牛の角が宙を舞う。
 確かな手応えにティアナは残虐な笑みを浮かべ――光の中から真っ赤な炎が一直線に噴き出して来た。

《Round Shield》

 咄嗟にクロスミラージュの展開したシールドが火炎放射の直撃からティアナを守った。
 しかし、片目と角を失いながらも口から炎を吐き出す敵の反撃は、シールドごとティアナを飲み込もうと、濁流のように噴き出し続ける。

「ぐ……がぁあああああああああああ゛あ゛ああ゛あああーーーっ!!」

 シールドを維持しながら吐き出す苦悶の声はすぐに悲鳴へと変わっていった。
 確かに展開した壁によって炎の直撃は避けている。しかし、遮られた炎が消えるわけではないのだ。
 拡散し、周囲の空気を焼き尽くした炎は間接的にティアナを蝕んでいた。
 相手の魔力を弾くタイプの防御であるシールドは、炎や冷気のような流動的な攻撃を完全には防げない。
 更に、魔力によって形成された炎は全身を覆うフィールド系の障壁ともいえるバリアジャケットすら侵食する。耐熱効果など気休めにしかならなかった。
 血液が沸騰して湯気となり、皮膚を突き破ると錯覚するような激痛が全身を襲い続ける。
 地獄のような時間を、ティアナはただひたすら耐えた。
 魔力も体力も、精神力さえ消耗していく中、憎しみと殺意だけが無尽蔵に膨れ上がる。

「殺……して、やるぅ……っ!」

 ティアナの執念が、無限に続くような地獄を切り開いた。
 高熱の奔流が去った後、周囲が焼き尽くされた中で尚もティアナは立っていた。

「――カートリッジ、ロード!!」

 唾さえも蒸発して掠れた声。それでもハッキリと戦意に満ちた叫びが響いた。
 クロスミラージュに残されたカートリッジを全てロードする。
 今のティアナにはこれだけの魔力を制御する技術は無い。しかし、今必要なのはあの巨体を貫けるだけの純粋なパワーだ。
 引き攣った皮膚の下、苦痛を伴って全身を駆け巡る魔力と共に、残された自分自身の魔力もかき集めて両腕に集束する。
 ティアナはただ集中した。
 視線の先で、再び敵が体当たりを敢行しようと動き出しても。
 ティアナはただ信じた。

 ――自分だけの持つ力を弾丸に込める。それは必ず敵を打ち倒す。

「あたしの力は、<悪魔>なんかに負けない!!」

 どれほど歪んでも、我を忘れても、心に残り続けていた信念を支えに、ティアナは決死の表情で眼前の敵を睨みつけた。
 炎の塊が猛スピードで迫り来る中、回避など考えずに、ただ敵を撃ち抜くことだけに集中する。

「やめろぉっ!!」

 結末の決まりきった無謀な激突を止めたのは、復活したスバルだった。
 青白い<ウィングロード>が突進する真っ赤な巨石に向けて真っ直ぐに伸びる。その上をスバルは我武者羅に駆けた。
 体の痛みや恐怖を忘れ、悲壮なまでの覚悟とそれに応じたマッハキャリバーの力によって疾走する。

「リボルバー、シュートォォーーーッ!!」

 本来なら遠距離用の魔法を、敵と接触する寸前の零距離で発動させる。
 炸裂した衝撃波が纏った炎を吹き飛ばし、同時にその突進を停止させた。
 魔力を湯水のように放出し続け、圧倒的な質量の違いを持つ相手にスバルは拮抗する。

「ティ……ティア! 逃げてぇっ!!」

148 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:42:58 ID:zGRq09Rg
 気を抜けば一瞬で弾き飛ばされしまいそうな圧力の中、スバルは必死に背後のティアナへ呼び掛けた。
 その悲壮な声を――ティアナは、聞いてなどいなかった。

「うぁああああああああああああああっ!!」

 吐き出される魂の咆哮。
 暴走する魔力を無理矢理展開した術式で練り上げ、今の自分に使える最大攻撃魔法を発動する。
 振り上げた銃口の周囲に、環状魔方陣の代わりとなるターゲットリングが形成され、その一点へ全ての魔力が集結される。
 レーザーサイトが標的を捉え、その射線の近くにスバルの姿があることを気にも留めず、ティアナは憎しみで引き金を引いた。

「ファントム・ブレイザァァァーーーッ!!!」

 かつてない魔力の奔流が解き放たれた。
 放たれた光は一直線に燃え上がる敵の体の中心を目指す。進路上にいるスバルが何も分からずに弾き飛ばされた。
 自分を助けた仲間さえ避けず、直進し、ただ破壊するだけの狂気の一撃は狙い違わず<悪魔>を飲み込んだ。
 炸裂した魔力光と炎の残滓が撒き散らされる中、直撃を確かめたティアナは凄まじい脱力感に膝を付く。
 全ての力を使い切っていた。何もかもあの一撃に乗せた。
 ティアナの顔に再び笑みが、力無く浮かぶ。
 ただ一色に染まっていた視界は、脱力と同時に他の色を取り戻し始めていた。
 現実が見えてくる。
 逃がした仇。職務を逸脱した行為。管理局員の身の上で一般人に発砲し、挙句仲間まで背中から撃った。
 権力を持つアリウスが訴えれば、自分は機動六課どころか管理局にもいられない。
 例えそうでなくても、パートナーを撃った時からもう決定的なものを手放してしまった。
 全てが絶望的なまでに現実で、同時にもう何もかもが夢のようにどうでもよくなり始めた。
 だから、ティアナは笑う。笑ってやる。
 どんな時でも。
 それしか出来なくても。

「……スバル」

 顔を動かすのも億劫な脱力感の中、視界に倒れたスバルを見つけて未練たらしく声が漏れた。
 彼女をあの様にしたのは自分だ。
 もう何も取り戻せない。
 それでも、ティアナはスバルの元へ駆け寄ろうと足に力を入れ、



《GYYYYAAAAAAAAAAAAA――!!》



「え」

 二度と響かないはずの悪魔の咆哮が聞こえ、見上げた先には片腕でハンマーを振り上げる炎の巨体があった。
 成す術も無く眼前に巨大な炎の塊が振り下ろされた。
 直撃ではなかったが、先ほども予想していた余波の威力――炸裂と同時に広がった衝撃波と爆炎をティアナは自ら味わうことになった。
 力の抜けた体がゴミ屑のように吹き飛ばされ、宙を舞って地面に激突する。
 口の中で血と砂の味がした。

「なん……で……?」

 ただひたすら疑問だけが頭を掻き回していた。
 自分の最高の一撃が、確かに標的に直撃するのが見えた。バリアの類も確認出来ない。当たったはずなのに……。
 ティアナは必死の思いで顔を上げた。
 視界に捉えた敵の姿は、やはり確かに攻撃を受けた痕があった。
 巨体から右腕が消え失せている。ファントムブレイザーの直撃を右手で受けたらしい。先ほどの攻撃が不発だったのも、片手だった為軌道を誤ったのだ。
 しかし、それだけだった。

149 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:43:30 ID:BLUBOgXI
べリアルのように炎の鎧は強固支援

150 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:44:32 ID:bCtWS5LC
あわわ、支援

151 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:44:56 ID:zGRq09Rg
「はぁ……?」

 ティアナは性質の悪い冗談を聞いたかのように、引き攣った笑みを浮かべた。
 全身全霊を賭けた一撃が。全てを代償にした一撃が。
 たった腕一本と引き換えだというのか?

「なによ、それ……」

 原因は、何も複雑なことなどなかった。単純明快極まりない。
 ――ただ威力が足りなかっただけ。

「なんなのよ……それっ」

 自分の引き出せる最高の力が。限界を超えた想いが。なんてことは無い、至らなかっただけなのだ。
 それで、一体どうしろというんだ?
 この単純な問題を解決する方法は?
 新しい戦法を考える、敵の弱点を突く、罠を仕掛ける――どれもこれも根本的な解決になどなってやしない。

「畜生……」

 倒せるだけの攻撃が出来なければ意味が無い。
 それが出来ない自分の力に、意味など、無い。

「ちっきしょぉ……っ!」

 拳を握り締め、無力感に打ちひしがれながら、ティアナはただ惨めに呻くことしか出来なかった。
 手負いの獣と化した敵が鼻息も荒くティアナににじり寄る。鼻息はやはり炎だった。

 ――終わりか。

 支えていたものが何もかも折れた。
 急激に沈んでいく意識の中、迫り来る死を見上げる。

 ――全部、お終いか。

 傷付いた体ごと、諦めが全てを沼の底へ沈めようと、下へ下へと引きずり込んでいく。
 これ以上上がらない視界の中、敵のハンマーが持ち上がって見えなくなった。一泊置いて、今度こそ確実な死が自分を押し潰す。
 それを受け入れようとした、と――。

《Divine Buster》

 意識が途切れる寸前、見慣れた桃色の光が視界を満たした。






152 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:45:22 ID:VkEWXNe0
片刃の剣・・・・バ、バージル来る?

153 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:46:30 ID:BLUBOgXI
人間の力支援

154 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:46:45 ID:bCtWS5LC
おや、乱入者ありか。支援

155 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:46:54 ID:zGRq09Rg
「シュート!!」

 なのはの砲撃が一直線に飛来して、ティアナに振り下ろされる寸前だったハンマーの先端を跡形も無く吹き飛ばした。

「間に合った!」
「ハッハァ、まるでバズーカだな!」

 初めて見る高位魔導師の砲撃魔法の威力に、腕の中でダンテが歓声を上げる。
 ホテルから文字通り飛び出して、ダンテを抱えたまま飛行して現場に急行したなのはは、その体勢のまま敵の頭上へと急上昇した。

「ティアナをお願いします!」
「任せな」

 敵の真上を獲ったところで手を離す。
 空中に身を投げ出したダンテは、敵に向かって落下しながら両手のデバイスを突き出した。

「自分で燃えるとはいい心がけだ。ミディアムにしてやるぜ!」

 怒りの弾丸が放たれる。
 空中で錐揉みしながら真下に向けての速射。ガトリング機構の回転を全身で再現しているようなでたらめな銃撃は、雨となって敵の巨体に降り注いだ。
 なのはの射撃魔法が質量なら、ダンテの射撃魔法は物量。湯水の如く吐き出され続ける魔力弾が燃え盛る<悪魔>の肉体を削り取る。
 苦悶の叫びを上げながら吐き出された火炎をエアハイクによって回避すると、ダンテはそのままティアナの前へ立ち塞がった。

「……やってくれたな、牛肉野郎。ハンバーガーの具になりな」

 傷付き、倒れたティアナの姿を一瞥して、再び敵に視線を向けた時にダンテが浮かべた表情はハッキリと怒りだった。
 <悪魔>は須らく敵だ。
 そして、目の前の存在はもはや絶対に逃がすことすら許さない敵となった。
 倒れたスバルの状態を確認し、なのはもまた彼女を守るように立ち塞がり、確固たる敵意を炎の怪物に向けた。
 二人の魔力がお互いのデバイスに集中する。

「Fire!」
「シュートッ!」

 真紅の雷光と桃色の閃光が同時に敵へと飛来した。
 例えこれを耐えたとしても、二人分の火力で押し切るつもりだった。怪我人を抱えて、下手な機動戦は出来ない。
 しかし、敵の対応は予想を超えていた。
 燃える山が、空を跳ぶ。

「嘘!?」
「Damn!」

 なのはが目を見開き、ダンテは悪態を吐きながらも素早くティアナを抱きかかえてその場を離れた。巨体の落下先はこちらだ。
 跳躍したこと自体信じられない大質量が落下し、地面が激震した。
 自らがハンマーそのものであるかのように、落下の衝撃と同時に爆炎が撒き散らされる。
 背中にビリビリとした振動と高熱を感じながら、ティアナを庇う形で余波を凌ぎ切ったダンテは振り返り様デバイスを突き付けた。

「……ヤバイぜ」

 冷や汗と共に再び悪態が口を突いて出た。
 敵は既に次の行動に移っていた。
 燃え盛る巨体の周囲。その炎に呼応するように、幾つもの魔力の集束が地面に点となって発生していた。それらは丁度敵を中心に円を描いて配置されている。
 噴火寸前の火山のように、真っ赤に変色していく魔力の集中点。

156 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:48:01 ID:fOwiIdqZ
支援

157 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:48:15 ID:zGRq09Rg
「ダンテさん! ティアナ!!」

 シールドと内側を覆うフィールドで二重の防御魔法を展開しながら、なのはは絶望的な気持ちでカバーが届かないほど離れた位置に居る二人を見た。
 ダンテが同じ真似が出来るほど高度な魔導師とは思えない。下手な防御は重傷のティアナに死に繋がる。
 思案する間もなく、敵の周囲を地面の魔力集中点から噴き出した炎の壁が覆った。
 そのまま炎の壁は波紋のように周囲350度全方位に向けて広がっていく。
 空へ逃げない限り回避も出来ない。防御しか残されていなかった。
 ダンテとティアナを案じる中、なのはの視界も炎だけに埋め尽くされる。

「くぅぅ……っ!」

 展開した二重の防御が、なのはとスバルをかろうじて守り切っていた。
 フィールドによる温度変化阻害効果がなければ、加熱した空気によって、気絶したスバルには更に深刻なダメージが行っていただろう。
 単純な魔力攻撃よりも、属性付加されたこの類の攻撃は厄介だ。対処方法も限られる。
 果たして、ダンテはこの攻撃からティアナを守れるのか?
 不安に急かされる中、なのははダンテ達の居た場所へ視線を向け――そして見た。
 炎の中に在って、尚も赤い血のような魔力の瞬きが見える。
 フィールドと炎のフィルター越しに、やはり眼の錯覚なのかと疑うしかない中で、しかしなのはは見ることになる。
 地獄の業火の中で、決して飲み込まれない真紅の光を放つ一点。
 かろうじて見える人影の背中に、<悪魔>のような翼が生えていた。

《―――GUAAAAAAAAAAA!!》

 火炎地獄は、敵の悲鳴によって唐突に終了した。
 周囲を覆いつくす炎の中から、突如飛来した真紅の魔力弾によって残された眼を潰され、顔面を抑えて無茶苦茶に暴れ回る。
 同時に、荒れ狂っていた炎は急速に鎮火しつつあった。
 障壁を解除し、なのはは一瞬の勝機を読み違わず正確に捉えた。

「レイジングハート!」
《All right. Load cartridge.》

 コッキング音と共に二発分のカートリッジが排夾される。
 敵の巨体を見越した高威力の砲撃魔法をセレクトし、なのはは漲る魔力を集束した。
 それは、奇しくもティアナが実現し得なかった巨大な敵を撃ち貫けるだけの純粋なパワー。

《Divine Buster Extension》

 凶悪な光がレイジングハートの先端に宿る。

「シューーートッ!!」

 通常のディバインバスターから発展・向上した貫通力と破壊力が唸りを上げて襲い掛かった。
 圧倒的な密度と量を誇る魔力が巨体の上半身を飲み込み、消し飛ばす。
 今度は<悪魔>が『原形を留めないほどの威力』を味わう番だった。
 跡形も無くなった半身。足だけになった敵は、全身を覆っていた炎を自らの活動と共に停止させ、冷えてひび割れた鉄のように黒ずんで、やがて崩れ落ちた。
 ヒュゥ、という口笛が聞こえ、見るといつの間にかダンテが炎に飲まれる前と同じ位置に立っていた。
 彼自身にも倒れたティアナにもダメージは見られない。何らかの力で守り切ったらしい。
 あの攻撃をどうやって退けたかは分からない。
 やはり、あの真紅の光は錯覚だったのか。あの姿は見間違えだったのか。それとも――。
 まあいい。全ては後回しだ。なのはは疑念を棚上げすることにした。

「……こちら、スターズ1 <アンノウン>の撃破に成功しました。スターズF両名負傷、すぐに救護を寄越してください」

 やはりいつものように、交戦を終えた後は何の痕跡も残さない敵の特性のまま、完全な静寂を取り戻した空間でなのはは本部に通信を繋げた。
 一方のダンテは、全身を襲う軽い脱力感をおくびにも出さず、デバイスを納めて背後を振り返った。

158 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:48:52 ID:BLUBOgXI
バジリスク カットラス グラディウスがペットで欲しい支援

159 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:49:12 ID:fDH4ZMKP
支援

160 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:49:44 ID:zGRq09Rg
「とんだ再会になっちまったな……」

 傷付き、眠るティアナに届かない言葉を掛ける。
 目を閉じた横顔は決して穏やかなものではなく、気絶する前に抱いた悔しさに歪んでいた。
 眠る時にすら安らぎは無いのか。あまりに不器用な生き方を続けるティアナの姿に、ダンテは困ったように笑うしかない。
 視線を移せば、<悪魔>は完全に消滅している。
 ティアナには荷の重い相手だった。上位悪魔の具現化など<この世界>に来て初めてのことだ。
 おそらく管理局にとって最も大きな<悪魔>との戦いはたった今終わった。
 しかし。
 管理局との本格的な接触、より大規模になりつつある<悪魔>どもの活動――少なくとも、ダンテにとってこれは何かの始まりに過ぎなかった。






 確実に敵と断定できる男を相手に面と向かい合い、ヴィータは凍りついたように動けなくなっていた。
 それほどまでに、目の前に立つ男は――その男の顔は彼女に衝撃を与えたのだ。
 忘れたくても忘れられない。
 悪夢のような夜に出会い、最悪の遭遇をちょっとした奇跡の対面だったと思わせてしまう男。
 襲い掛かる闇の中に在って<彼>の浮かべる笑みは、戦いの中では頼もしく、平穏の中では刺激を感じる。
 純粋に、また会いたいと思った。
 言葉を交わし、互いを知り合えば、きっと友人になれる――ヴィータがそう思うほどの男が、何故か今目の前に立っている。

「なんでだよ……?」

 だが、こんな形の再会を望んだワケじゃない。

「……<ダンテ>」

 闇の中にあって酷く映える銀髪と、何者にも屈しない瞳を持ったその顔を呆然と眺め、ヴィータは呆けたように呟いた。
 服装と髪型は変わっているが、その顔は間違いなくあの夜眼に焼き付いた物と同じだ。
 ただ一つの違和感――彼の性格を主張する不敵な笑みが、その顔には欠片も浮かんでいないということを除けば。

「――ダンテ?」

 僅かに訝しがるような反応が返ってきた。
 聞き慣れない低い声色に、ヴィータは我に返る。
 目の前の存在を呆然と受け入れていた心に、猛烈な違和感が湧き上がってきた。
 何かが違う。果たして、ダンテはこんな声を出していたか? 会話をリズミカルに弾ませるものではなく、鋼のように一方的な声を。

「そうか」

 一言発する度に、重なり合っていたダンテと目の前の男がズレていく。
 一人、何かに納得するような呟きを漏らすと、男は僅かに笑みを浮かべた。
 ヴィータの全身が総毛立つ。今や、彼女は完全にダンテと目の前の存在を別物と断じていた。
 形ばかりで何の意味もない笑みの形。正しく冷笑と呼べるそれは、ダンテが浮かべるものでは決してない。

「テメェは……誰だっ!?」

161 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:50:33 ID:bCtWS5LC
魔人化使ったのかな? 支援

162 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:50:56 ID:CwZubAEY
バージル支援

163 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:51:26 ID:zGRq09Rg
 ヴィータは咄嗟に身構えた。本能が告げる。この男に隙を見せてはならない。
 しかし、彼女の動揺は男にとって十二分な隙となった。
 男が左手を振り上げる。あまりに無造作なその行為に、ヴィータは一瞬反応出来なかった。
 男は風が吹くのと同じように一切の感情や意図を排して自然な動作で手の中の得物を放していた。
 丁度、自分に向けて投げ渡されるように飛んで来る武器。それに意識を逸らされ、ヴィータは半ば無意識に手を伸ばして掴み取っていた。
 そこからは一瞬の出来事だった。
 意識を男に戻した時、既に彼は動いていた。ヴィータとの間合いを音も無く瞬時に詰める。シグナムが得意とする斬撃の踏み込みに匹敵する超高速の初動だった。
 鞘の部分を掴んだままヴィータの手の中にある剣を、そのまま素早く引き抜く。
 露わになった刀身は波紋を持つ片刃。<日本刀>の型を持ちながら、ただの鋼ではない全く異質な雰囲気を持つ武器だった。
 闇の中に銀光が閃き、ヴィータ自身にさえ視認する間もない速さで刃が走る。
 それが、腹部を貫いた。

「が……っ! ぶっ」

 肉を裂く音と共にヴィータの小柄な体が無残にもくの字に折れ曲がる。
 血が喉を逆流して、食い縛った口から外へ溢れた。
 バリアジャケットを易々と貫通し、刀は完全にヴィータを串刺しにしている。

「テ、テメェ……は……っ」

 グラーフアイゼンが音を立てて主の血に濡れた地面へ転がる。
 ヴィータは必死に男を見上げた。ダンテと同じ作りの顔に冷酷さが加わり、無慈悲な変貌を遂げた眼光が淡々とこちらを見下ろしている。
 ヴィータは初めて戦慄した。
 あの時頼もしいと感じたダンテの力を、全く反対のベクトルに変えて備えた存在が眼の前に居る。この<敵>は危険だ。

「何……なん、だっ!」

 苦悶の中に決死の覚悟を宿しながら、ヴィータは自分の腹に突き刺さった刀身を握り締める。
 懸命なその姿を、しかし男は嘲笑いもせず、ただ冷徹な意思のまま刀を更に奥へと抉り込こんだ。ヴィータが激痛に喘ぐ様を尻目に、肩を掴んで無造作に刀を引き抜く。
 広がった傷口から血が噴き出し、ヴィータは自らの血溜まりに力無く倒れ込んだ。

「ダンテ……奴も<この世界>にいるのか」

 僅かに愉悦を含んだ独白を漏らし、力を無くしたヴィータの手から取り返した鞘に刀を収める。
 倒れた彼女にはもはや一瞥もくれず、輸送車の荷台に戻ると、探していた物を取り出した。
 それは赤い宝石をあしらったアミュレットだった。
 死の静寂を取り戻した闇の中、ただじっとそれを見つめる男の視線には何処か感慨深いものが感じられる。あるいは第三者が見ればそう錯覚するかもしれない、長い沈黙だった。

『――目的の物は手に入ったかね?』

 不意に、その沈黙は破られた。
 男の傍らに出現した通信モニターにはスカリエッティの姿が表示されている。
 彼の視線から隠すように、男はアミュレットを懐に忍ばせた。

「……ああ」
『これで、君の探し物が一つ見つかったワケだ』
「ああ」
『では、すぐに退散した方がいい。アリウス氏も目的を達したようだ。彼の置いていった目晦ましはたった今倒されたよ』
「分かった」
『では。寄り道をしないで戻って来てくれると助かる――<バージル>』

164 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:51:58 ID:bCtWS5LC
A☆NI☆KI!! A☆NI☆KI!!

165 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 22:52:23 ID:zGRq09Rg
 通信が切れると、バージルはすぐさま踵を返して、予め告げられた撤退ルートに向けて歩き出した。
 闇の中に彼の姿が消え、やがてその靴音も聞こえなくなると、本当の静寂が暗闇と共に辺りを満たした。
 もはやピクリとも動かなくなったヴィータの傍らで、グラーフアイゼンの通信機能がONになる。

『ヴィータ副隊長、救援要請が出ていますが!? ……副隊長、応答してくださいっ!』

 通信を繋いだのはデバイスのAIが主の危機に際して独自に判断して行ったものだったが、もはや通信の意味は無くなっていた。
 オペレーターのシャリオが異常事態を察して必死に呼びかける声にも、倒れ伏したヴィータは応えない。
 主の生命反応が徐々に低下していく事態を感じ取りながら、グラーフアイゼンはただひたすら緊急信号を発し続けることしか出来なかった。



『お願いです、応答して下さい! ヴィータ副隊長! 応答して――!』






to be continued…>






<ダンテの悪魔解説コーナー>

フレキ&ゲリ(DMC2に登場)

 犬の系統にある動物ってのは総じて忠誠心が高いと言われてる。忠犬を主役にした映画やアニメは結構在るよな。
 <悪魔>ってのはその対極にあると言っていい。
 奴らにあるのは力の有無だけだから、どいつもこいつも好き勝手に喰い合って、強い弱いで生きる死ぬが決まっちまう。まあ、分かりやすいといえば分かりやすい弱肉強食だ。
 そんな自分勝手な奴らの中でも変わった<悪魔>ってのはいるもんだ。それがこの二匹だ。
 <悪魔>でありながら同じ<悪魔>に付き従う、珍しい忠誠心を持った忠犬ならぬ忠狼ってワケだ。
 従属心が強いせいか、他の<悪魔>のように好き勝手暴れることがない。御主人様が別に居るとはいえ、忠誠に値するなら人間にも一応従うみたいだしな。
 人間サイズの大きな体格とそれに見合わない素早さが、狼そのものって感じの単純な攻撃パターンを強力なものにしてやがる。
 おまけにコイツらは必ず二匹行動するらしい。狼の狩りのように鋭いコンビネーションは決して油断できないぜ。
 なかなか厄介な相手だが、こんな奴らさえ付き従える<悪魔>ってのは更に厄介極まりない相手なんだろうな。

166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:53:05 ID:BLUBOgXI
閻魔刀は持ってるのかな?支援

167 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 22:55:59 ID:BLUBOgXI
スカさんアリウスさんとこなら研究好き放題出来るんじゃ?支援

168 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/03(火) 23:01:29 ID:zGRq09Rg
こういうの感動の投下完了って言うらしいぜ?
大分展開カットしたはずなのにこの長さですよ。もっと効率よく書きたいです。自分文章力落ちてね?(汗

今回は、いろんなコメントに対してもお茶を濁してきた兄貴がついに登場しました。
自分的に兄貴はツンの度合いが多いのが好みなので、もう初登場から容赦なく幼女を串刺しにしました。これからもします。
なんかラストの兄貴のインパクトに感想もってかれそうですが、個人的に肝はティアナの敗北でした。
自分なりの分析ですけど、ティアナの欠点ってもう純粋に火力不足だと思うんですよね。
どうフォローしても六課内で魔力量は劣るし、魔力弾を武器にしてる以上、やっぱ全部の攻撃がその魔力に左右されるわけです。スバル達みたいに打撃力プラスできないしね。
なもんで、対人ならともかく対物で巨大な対象には火力不足がモロに出る。たぶんジュエルシードの暴走体とか力押しが必要な相手だとティアナは非力だと分析。
そんな考えを基に、今回描いてみました。
でも安心してくれティアナ! 俺が必ずお前を強くしてやる!! ――うんと痛めつけた後でね、フヒヒw
次回も堕ちていく凡人タイムをお楽しみに(ぉ

169 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 23:04:17 ID:vTLK9VMX
GJ
このドSめw
まあ、人には得手不得手というのがあるからな

170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 23:04:56 ID:bnj1NP4A
GJ!です。
ここのティアナはどうなるかと思いましたが、こうなりましたか……。
なのはさんの砲撃の強さも良く出ててよかったです。
しかし、自分の事しか考えない親父にはやはりツボにはまりましたw

171 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 23:05:15 ID:VkEWXNe0
相変わらず情け容赦ねえバージル兄さんGJ!!!!!

まさかStylish氏のSSでバージル兄さんが出てくるとは思わなかった。しかもスカリエッティサイドで!!
スカとはどういう関係なんだろうか? 兄貴の性格を考えれば何か取引があってツルんでるんだろうな。

しかし兄さんがアミュレット持ってるって事は1よりも時間軸前か、このままなら魔帝出るかもという期待大!!

172 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 23:07:03 ID:bCtWS5LC
何と申しますやら、強烈な展開オンパレードですな。スバル気絶、ティアナ重傷、そしてヴィータはバージルにざっくりやられてきっと重体。
あれ、スターズF実質的に壊滅してね?
何気に繋がってるスカ博士とアリウスそして兄貴。
此処からどう巻き返すのか、果たしてティアナは立ち直れるのか!? 

次回も目が離せません!

おおっと、ここまで書いてGJを忘れるなんて!! GJで御座います!!

173 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 23:12:08 ID:YH0Y1oNC
GJ!
何気なユーノの活躍!
そしてなのはとユーノの境界線が描かれてましたね。

174 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 23:16:24 ID:fDH4ZMKP
GJ!!です。
これは楽しみですw
原作以上に力への渇望やなのは達に対する嫉妬による暴走が見れそうだwww
任務からはずされる場面で凄まじいマイナスパワーを見せてくれそうです。
シグナムにぶん殴られても、撃ち返すぐらいの心の捻れがwww
人外相手にティアナの火力はきついですよね。パンドラでもあげたいです。
でも、あんな感じのアイテムはユーノが似合いそうだ。



175 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 23:35:50 ID:BLUBOgXI
Gjなのはの行動は最善ですが力に対する渇望をさらに強めそうだ。
このまま行ったら魔具は良いが最悪帰天にまで手を染めそうだ。

176 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 23:36:48 ID:jLYDWkL2
超GJ!
兄貴もでてきてこれからが楽しみです

177 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 23:44:44 ID:dLEAs0dV
>>174
え?ユーノはレイハさんでイチローっぽくキめるんだろw


「Noooooooo!!?

178 :177:2008/06/03(火) 23:45:38 ID:dLEAs0dV
ミスったorz

179 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 23:46:07 ID:BY9lIlss
GJでした!
フェイトとダンテの組み合わせはやっぱり良いですねw
個人的にかなり気に入ってます。

180 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 23:54:10 ID:BLUBOgXI
まあ剣で敵をホームランした二人だからなw

181 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/06/04(水) 00:05:53 ID:wChPisVi
久しぶりに登場です。
今回は、管理局首脳部とはやて達のディスカッションや、カリムのスタンダール
シンドロームをメインとした話をUPしたいと思いますがいかがでしょうか?

182 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 00:07:40 ID:Nc6ZYQmf
支援

183 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/06/04(水) 00:14:34 ID:aPc/MfgY
5
聖王教会大聖堂。
遥か頭上の巨大なドーム上の天井には、魔力によって浮かんでいる水晶のシャンデリアが
ほのかな明かりを放ち、今はなき“ゆりかご”を中心に、無数の星々がとそれらを仰ぐ
次元世界の様々な生物が描かれた宗教画を照らし出している。
部屋を三百六十度囲むように配置されている窓には、聖王の守護騎士たちの絵を
あしらったステンドグラスがはめ込まれ、入り口から見て真正面には、粗末なローブ
に身を包み、右手に杖を持ち左手は天を指差す、白く長い髪と髭の狂気を孕んだ眼を
持つ眼鏡の男“聖王”の巨大なステンドグラスが、圧倒的な迫力を放っている。
聖王が示す先には、透明なガラスの日輪をイメージした丸い穴があり、そこから差し
込む陽の光が、重厚な装飾の施された大型のパイプオルガンを演奏する、金髪に
カチューシャをつけた、ロングスカートのドレスを着た女性を照らし出していた。

「今日の騎士カリムが弾く曲は、いつにも増して素晴らしいですな」
顔中碁盤の目の如く縦横に彫られた刺青の線と、線の交点総てに金属製の釘のような
角が生えたに修道士が、おかっぱ風の髪形の修道女に言った。
彼女は、一心不乱に演奏する聖王教会騎士カリム・グラシアを、不安げな表情で
見つめている。
「シスターシャッハ、どうかされましたか?」
修道士の問いかけに、教会シスターのシャッハ・ヌエラは我に返って振り向く。
「何だか、騎士カリムの様子がおかしくないですか?」
「様子…ですか?」
怪訝な顔で修道士が言うと、シャッハは頷いて先を続ける。
「今の演奏には、何かに追われているかのような切迫感が、私には感じられる
のですが…」
シャッハの言葉に、修道士は目を細め、床に視線を向けながら考え込む。
「確かに、騎士カリムは何かに憑かれたように必死に演奏されてますが、それは
いつもの事ですし、シスターの考えすぎ―――」
修道士がそこまで言ったとき、それまで流暢に流れていたオルガンの重厚な
リズムが、突然両手を鍵盤へ叩きつけたかのような不協和音に取って代わられた。
驚いた二人がが振り向くと、カリムが肩で息をしながら呆然と宙を仰いでいる
のが見えた。
唐突な出来事に、それまで厳かに祈りを捧げていた信者たちがざわめく中、
カリムは呆然とした表情のまま、聖王のステンドグラスへと視線を向ける。
「騎士カリム!?」
ステンドグラスを凝視したまま何事かブツブツと呟くカリムに、シャッハが恐る
恐る声を掛けてみた。
カリムはピクッと身を震わせると、今度はシャッハの方へ顔を向ける。
シャッハの方を向いているのに何も見ていない虚ろな瞳に、二人が戦慄を覚えた
瞬間、カリムは白目を剥いて両膝を付いた後、横向きに倒れこむ。
「騎士カリム!!」
シャッハが倒れたカリムへと駆け出したのをきっかけに、聖堂内は騒然となった。


184 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/06/04(水) 00:25:30 ID:aPc/MfgY
3m近い身長の、平べったい顔に三白眼に細長い胴体がゴキブリを髣髴とさせる、
六足歩行の将校が前足を動かして空間モニターを操作すると、電磁ロックの外れる
音がして自動ドアが開き、ゲラー長官以下管理局首脳陣が現れる。
「盗まれたデータは何か分かったか?」
向かい側の、総ガラス張りになっている会議室へ歩きながら長官が尋ねると、将校
は触角と首を横に振りながら答える。
「まだ不明ですが、管理局はおろか最高法院や元老院のかなり深部まで探られた
のが判明しました。
現在は、機密性及び重要性の高いファイルとプログラムをネットワークから分離
する作業にかかっています。
完了次第、ベルカ自治領にある非常時用のバックアップコンピュータに移す予定
です」
「ネットワークに侵入しているウイルスについては?」
長官の次なる問いかけに、カタツムリに大きい眼と牙をつけたような姿をした
将校が答える。
「技術部が調査しておりますが、ワームと似ている以外はまったく不明です。
というのも、分析や駆除をしようとすると、ウイルスが処理プロセスを解析して
対抗策を編み出している所為です」

「…で、思い余って“無限書庫”に、同じものがないかどうか問い合わせたん
です」
様々な階級・種族の武官・文官たちが忙しく動き回る廊下を歩きながら、
シャーリーは一緒に歩いている機動一課首都公安部特別捜査官の八神はやて
一等陸佐と、なのはの二人に話していた。
「何か分かったんか?」
はやての問いかけに、シャーリーは首を横に振った。
「いえ、手がかり一つも見つかっていないと聞いています。調査は続行する
そうですが…」
「ユーノ君のところでも見つからないなんて…」
シャーリーの返答に、なのはは驚きの表情を見せた。
「“世界の記憶を収めた場所”と言われる無限書庫で、そんな事があるんかいな?」


185 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/06/04(水) 00:26:13 ID:aPc/MfgY
はやてが首を傾げた時、彼女の左肩に乗っている身長30cmぐらいの腰まで伸びた
ラベンダー色の長髪に、前左側にはやてと同じヘアアクセサリーをしたつぶらな瞳の
十代前半の少女に見える小型亜人種生物が、外見相応の子供っぽい声で言った。
「ありえない事ではないですよ」
「リイン曹長、どういう事ですか?」
シャーリーが質問すると、首都公安部特別捜査官補のリインフォースU曹長は、
はやての肩から飛び上がり、三人の前を滑空しながら身振り手振りを交えて説明を
始める。
「まず考えられるのは、敵対勢力の故郷である世界が既に滅びているケースです。
この場合、記録や文献の殆どは滅亡時に失われてしまうので、実態を把握する
のは極めて難しくなります」
「古代ベルカと同じ…か」
はやてが言うと、リインは嬉しそうに顔を輝かせる。
「ご名答です、流石はやてちゃん♪」
大げさにリインが手を上げた次の瞬間、彼女のすぐ横を、身長1.3mで短い象の
ような鼻に不揃いな牙を生やした口とずんぐりした体型の局員が、二枚の小さな
羽を忙しく動かして、かなりの速さで通り過ぎた。
「バカヤロー! 後ろ向いて飛んでんじゃねぇ!」
悲鳴を上げて跳び上がるリインに、局員は罵声を浴びせて飛び去る。
慌ててはやての肩に戻ったリインに、なのはが質問してきた。
「もう一つ考えられるケースって何?」
リインは気を取り直すと、なのはの問いに答え始めた。
「あ、はい。ええとですね、敵勢力の起源が古過ぎて、データがまだ整理されて
いないケースです」
四人はいつしか、ゲラー長官たちが討議をしている会議室の近くまで来ていた。
「何しろ“無限書庫”ですからねぇ…私たちの探索がまだ及んでいないデータが
あっても不思議ではないです」
突然、はやては歩くのを止め、腕を組んで考え事を始めた。
「はやてちゃん(さん)?」
三人が訝しげに声をかけるのにも応えず、はやてはぶつぶつ呟きながら思案を
巡らせる。
「無限書庫で見つからん、自己進化するプログラム…。
…リインの言う通りだとすると…?
…ありえるな。いや、しかし…」
突然、はやては何か意を決したような表情で顔を上げると、なのはとシャーリー
の手を取る。
「三人とも、これは何が何でも上に報せんとあかんかも知れん。
危険な橋を渡る破目になるかも知れんけど、責任は私が取るさかい堪忍してや」
そう言うなり、はやてはなのはとシャーリーの手を取って会議室へと入る。
突然の出来事に、三人は声を上げる事もできなかった。


186 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/06/04(水) 00:32:23 ID:aPc/MfgY
会議室内部では、幕僚たちの意見が紛糾しており、外からなのは達四人が闖入
して来た事にまったく気付かない。
「ちょ…! ちょっとはやてちゃ――」
「しっ!」
なのはが文句を言おうとした時、はやては人差し指を自分の口に当てて黙らせ、
議論を続けている首脳陣へ向けて、顎をしゃくる。
「我々にこれほど大規模な攻撃を仕掛けられる敵となると…」
会議室中央部の席に座ったゲラー長官が両手を顔の前で組んで考え込み始めた時、
その前に立っている大きなギョロ眼に鼻のない、眉間に皺を寄せた蛙みたいな顔の
将官が、くぐもった声で意見を述べる。
「まず間違いなく“分離主義者”を剽窃する身の程知らず共に違いありません。
即刻機動一課を動員して、主要メンバーを一網打尽にすべきと考えます」
蛙顔の意見に対して、老人のような顔付きをした首が長くて寸胴の将官が、細長い
手を振り回して反論する。
「確たる証拠も無しに、いきなり逮捕するのか!? それはミッドチルダの建国理念
を否定する愚挙だぞ!!」
「愚挙だと!?」
蛙顔は激高し、大きな怒鳴り声で老人顔に食って掛る。
「自らの身を守れぬ愚か者共が、我らと対等の権利を求める方が愚挙ではないのかね!?
我々の保護下で生活できるだけでも、余りある恩恵だと言うものだ!!」
「貴様は古代ベルカ人か!? 力に驕って滅びた彼らの台詞だぞ、それは!!」
つかみ合い寸前の両者の間に、一つ目で六本の触手状の腕を持つ将官が割って入る。
「まぁまぁ、今の言葉は幾ら何でも言い過ぎだとして、第738管理外世界で、分離主義者
と反管理局武装勢力が結託して一触即発の情勢という報告が入っているのは無視出来ない
と思いますが、どうですか?」
「お言葉ですが、今回の一連の事件と、それとは無関係だと思います」
その言葉に、それまで激論を戦わせていた幕僚たちがはやてに振り向く。
「何だね君は!?」
蛙顔の将官が胡散臭そうな表情で睨みながら言うと、はやては彼に敬礼して自分の
身分を名乗る。
「陸上部局機動一課首都公安部特別捜査官、八神はやて一等陸佐であります」
それを聞いた途端、幕僚たちのうち数人の表情が一気に不快感を顕にしたものに
変わり、何人かはヒソヒソと話しこむ。
「八神一佐、我々は今、ミッドチルダの安全保障に関わる重大な会議を行って
いるところだ。
佐官クラスと言えども、この場に居る権限はないのだぞ」
嫌悪感を露わに言う蛙顔の将官に、はやては怯まずに言う。
「それに関する極めて重大な情報がありまして、無礼を承知で参りました」
必死に食い下がるはやてへ、まぶたが眉のように垂れ下がった、石仏のような
彫り顔に黒土の肌色をした将官がやって来る。
「それならば、部局長のベイラム中将を通しなさい」
彼は、なのは達のほうを振り向いて言った。
「君たち、八神一佐を連れて出てってもらえるかな?」
なのはとリインは頷くと、なのはがはやての右腕を、リインは左肩を掴んで外へ
連れ出そうとする。
「はやてちゃん、早く行こう」
「そうですよはやてちゃん」
二人に引っ張られながら、はやては首脳陣に大声で呼びかける。
「今回のクラッキング攻撃の第一発見者をここに連れてきました!!
現在、ネットワークを侵食しているウイルスについても、一番情報を持っております!!」

187 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/06/04(水) 00:37:27 ID:aPc/MfgY
「待て!」
ゲラー長官が立ち上がって鋭い声で言うと、なのはとリインはビクッと身を
すくませて動きを止める。
「第一発見者…と言ったな?」
はやては頷くと、事の成り行きを呆然と見ていたシャーリーの方を振り向く。
「シャーリー」
「え!? は、はい!」
はやてに呼ばれたシャーリーは、緊張気味にゲラー長官へ敬礼して自分の身分
を名乗る。
「陸上部局技術部士官、シャリオ・フィニーノ三等陸曹であります。
タイコンデロガにてマリエル・アザンテ技官と共にセギノール基地のクラッキング
信号を解析していた時、敵のネットワークへの侵入を発見いたしました」
ゲラー長官は、左横の一つ目ヒトデ型生物の将官へ振り向く。
「間違いないか?」
ヒトデの将官は、空間モニターを開いて事件当日の記録を確認する。
「はい、確かに敵のクラッキング信号の第一発見者として名前が載ってあります」
ゲラー長官はシャーリーに再び顔を向けた。
「話を聞こう」

シャーリーは一呼吸入れて気分を落ち着けてから、話を始める。
「今回の事件で私が指摘したいのは、侵入者がネットワークへ入り込むまで
にかかった時間は、僅か十秒であると言う事です」
シャーリーはそこで一旦言葉を切り、幕僚たちの反応を見る。
ゲラー長官が真剣に聞き入っているので、幕僚たちも神妙にしている。
話を続けて大丈夫と判断して、シャーリーは再び喋り始める。
「総当り法による正面攻撃では、最新鋭のスーパーコンピュータでも突破する
には最低二十年は掛るよう設計されているファイアウォールがあるにも関わらず、
たったそれだけの時間で突破されてしまいました」
鬼のように角が二つ突き出た、紅いつり目に皺だらけの顔の将官が、シャーリーに言う。
「で、君たちは何を言いたいのかね!」
シャーリーが振り向くと、はやては頷いてシャーリーの前に出てくる。
「要するに、今回我々管理局が相対している敵は、技術の粋を集めて構築された
鉄壁の防御を誇るネットワークを、僅か十秒で難なく突破できる相手であると
いう事です」
はやての助けに力を得たシャーリーは、ここぞとばかりに一気に喋り始める。
「しかも敵がネットワークに放った信号は自己学習し、絶えず変化と進化を
繰り返しています。
これは、我々が普段使っているフーリエ変換と同じに考えるべきことではありません、
むしろ量子力学の領域かも知れない」
ここで一呼吸入れた後、シャーリーは結論を結ぶ。
「私の見解を言いますと、あのウイルスプログラムは、コンピュータと同じ
学習能力とバクテリア並の強力な増殖力を持つ一種の生物であります。
分離主義者による犯行と考えるには、余りにも高度すぎると思いませんか?」
シャーリーの意見に、かぼちゃのような大きな頭と怒り肩のような瘤が両肩に
付いた将官が、呆れたように首を横に振りながら異を唱える。
「君たちはどうもドラマと現実を混同しているようだな。
いいかね? 管理内外の全次元世界内に、そんな複雑かつ即応性の高いシステム
を持つ世界など存在せんのだよ」


188 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/06/04(水) 00:41:49 ID:aPc/MfgY
それに対して、はやてが幾分感情的になりながら反論する。
「我々が知りうる世界ではそうでしょう。しかし、今まで存在を知られて
いない未知の次元世界から来たとしたらどうでしょうか?
現在までに確認されている次元世界は推定五千億、管理局が把握しているのは
そのうちの0.005パーセントの二千五百万、更に管理内外のランク付けが完了
しているのは0.005パーセントの千二百五十。
世界のほんの一端しか知っていない―――」
そこまで言いかけたとき、ゲラー長官が二度両手を叩いてはやての話を遮った。
「わかった、もういい充分だ」
話を途中で遮られて不機嫌そうなはやてとシャーリーに、ゲラー長官はゆっくり
はっきりとした口調で言う。
「八神一佐、フィニーノ陸曹、君らの意見はよく分かった。だが、分離主義者
の脅威がすぐそこに迫っている現状で、未知の勢力についてあれこれ論じている
余裕は我々にはない。
君らの仮説を裏付ける証拠が見つかった時、また話を聞かせてもらおう。
だが、それまではいたずらに騒ぎ立てないで欲しい、ここで話した事ももちろん
他言無用だ」
長官は背後を振り向いて声をかける。
「ギーズ一佐、彼女たちを送ってもらえないか?」
首脳陣の後ろにずっと控えていた、片顔が隠れるほどの長髪に精悍かつ凛々しい
顔立ちの、はやてと同じ佐官用の制服を着た白人、シャルル・ド・ギーズ一等陸佐が、
長官の言葉に前へ出てくる。
「私も、ちょっとご一緒してよろしいですか?」
それまで事の成り行きをじっと静かに見守っていたゲンヤがそう言って立ち上がった
時、はやてはビクッと身を竦ませた。

189 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/06/04(水) 00:44:32 ID:aPc/MfgY
ゲラー長官がゲンヤに頷くと、ギーズ一佐はドアを開けて退出するよう促す。
なのは達は敬礼して会議室を退出する。と、入れ替わりに通信将校が駆け足で
部屋へと入って行き、長官に敬礼して何か報告を始めた。

外へ出てしばらく歩いた後、突然ゲンヤははやての頭を軽めながらも、拳骨で
殴った。
「バカヤロ。お前、幾らちびダヌキでも、今回はムチャし過ぎだぞ」
両手で頭を押さえ、涙目になりながらはやては言う。
「す、すみません。でも、この話はどうしてもしとかないと、無関係の次元世界
で戦争になりかねないと思って…」
「そん時の為に俺が居るんだ、何もお前が心配する必要はなかったんだぞ」
厳しい表情で言うゲンヤに、はやての反論も尻つぼみになる。
「は、はい…」
「それに、騎士カリムやクロノ提督の立場も考えろ。ったく、高町とフィニーノの
お嬢まで巻き込みやがって」
「うう…」
すっかりしょげかえったはやてと不機嫌に腕を組むゲンヤに、ギーズ一佐が取り成す
ように間に入って言う。
「まぁまぁ、ナカジマ少将。長官は彼女たちの話に興味を持たれたようですから、
あながち無駄ではなかったと思いますよ」
その言葉に、はやては相好を崩してギーズにすがり付く。
「ギーズ一佐、ありがとな〜。あんたは私の恩人や〜」
ナカジマ少将は困った表情で額を押さえ、目を閉じながら言う。
「ギーズ一佐、あんまりちびダヌキを甘やかさないでくれ。増長されて元老院
まで行かれてはかなわん」
「以後は自重しますよ」
肩をすくめて会議室へと戻るゲンヤへ敬礼を返すギーズに、今度はなのはが
やって来て、右手を差し出し握手を求める。
「ギーズ一等陸佐ですね、噂は聞いております。陸上部局のストライカー級
魔導師として勇名を馳せているとか」
ギーズ一佐は、なのはと握手しながら笑って言う。
「エース・オブ・エースに名前を覚えていただけるとは、光栄の極み」
なのはとギーズのやり取りを横目に、シャーリーは何か深く考え込んでいる。
その眼には危険な光が宿っている事に、誰も気付かなかった。


190 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 00:46:23 ID:Gpn8AAAU
支援

191 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/06/04(水) 00:47:12 ID:aPc/MfgY
今回はこれで以上です。
次より、ようやく身動きの取れないフェイト以下の魔導師部隊VSメガザラック
の攻防戦に移ります。
あと、ゲンヤ・ナカジマの階級を「一佐」から「少将」に変更しました。
以後は「ゲンヤ・ナカジマ少将」と統一します。

192 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 01:21:33 ID:+ViLOJxz
久々乙!

193 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 07:03:05 ID:fXuWLYSz
遅ればせながら乙です!
Beast StrikerS(名指し失礼)と揃って停滞してて心配でした。
TF映画も続編が制作されるとの事なので、是非とも頑張ってください!

194 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 08:17:13 ID:Nkiq6HPL
Gjスターウォーズのキャラがかなりいるw


195 :一尉:2008/06/04(水) 13:25:34 ID:PsIDgSf5
八神ダヌキ隊長支援

196 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 14:18:19 ID:cZ3dI975
GJ!!です。
まさか、敵は、体が質量兵器で構成された生物とは思わないでしょうねw
反管理局勢力からしたら、質量兵器でありながら管理局以上の技術を持つトランスフォーマーは
救世主に見えるかも。

197 :一尉:2008/06/04(水) 17:08:44 ID:PsIDgSf5
見えそう支援たな。

198 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/06/04(水) 17:15:39 ID:StkzKmA+
19時より、闇の王女幕間11を投下しますー。

199 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 18:57:37 ID:mFdcbLwC
まってました〜〜〜〜〜
支援w


200 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/04(水) 19:02:11 ID:StkzKmA+
魔法少女リリカルなのは 闇の王女 幕間其の十一

 刃は、どう綺麗事をとってつけようが殺戮の道具だ。
刀剣とはより多くの人間を効率よく殺傷する為に生み出され、進化をしてきた武装であり、そこに芸術性は本来皆無な筈である。
騎士の誇り、と言った象徴性も後年になって付け加えられた要素だったし、その原型は紛れも無く獣の牙や爪と同質の――いや、それ以上の凶器だ。
狩のためではなく、純粋な闘争の為に発達した武器は、まさしく人間と言う生き物の業の申し子。
炎を纏った魔神の剣――レヴァンティンの大上段からの振り下ろしと、無銘の槍の激突は互角に見えた。
ゼストの太いとはいえぬ腕がにわかに盛り上がり、針金のように細い、みっちりと詰まった筋肉が膂力をもってシグナムの剣閃と拮抗した。
ぎちぎちと刃と刃のぶつかり合いが火花を生みつつ、長剣レヴァンティンが炎熱を噴いて全てを焼かんとする。
振り乱した桃色の髪をなびかせながら、シグナムは整った容貌を狂気じみた憤怒に染め、雄叫びをあげる。
ゼストは怜悧な顔つきを崩さずに、槍の先端部をいったん引き、レヴァンティンとの力比べから抜けた。

その隙をシグナムが見逃す筈もなく、身体ごと重心を移動し、足を踏み込む。
禍々しい炎を纏う凶刃が、ゼストの胸板目掛けて突き込まれた。
紡がれるのは、憎悪に満ちた言葉。

「死ね――ヴィータの痛みを味わえっ!!」

そこに騎士の矜持は、ない。ただ殺意に突き動かされる剣鬼、それが彼女の全てだった。
狙うは心臓。ヴィータが貫かれたのと同じ部位――人間ならば、即死は必至だ。
レヴァンティンの切っ先は、あっさりとプロテクションを突き破った。全魔力を注ぎ込んだ一撃に、貫けぬ魔法など無い。
続いて、防護服――これも、問題なく貫ける筈だった。
刃が無防備な防護服に向け迫り、ゼストの両腕が光り輝く――デバイスの展開。

ぎぃん、と刃が鳴り、とても堅く、強固な何かがレヴァンティンの刃を逸らしていた。

「な……に?」

瞬間、ゼストの手首が返され、槍の鋭い先端が防護服に触れることも無く、シグナムの脇腹を存分に抉った。
見えざる刃の前にバリアーは無効化され、穿たれる。
見れば、ゼストの左腕が紅い、鮮血を塗り込めたような深紅の篭手に覆われ、がっしりとレヴァンティンを掴んでいる。
もう、逃げられない――吐血しながら、シグナムは精一杯笑った。
男の技の正体に、気がついたから。
声高に、シャマルへ、地上の陸士たちに向け叫んだ。

「<次元断裂>の刃だっ! この槍は――空間を断裂させて目標を切り刻むっっ!!」

「それがわかったところで、勝ち目などあるまい」

もう一度槍が振るわれ、シグナムの左腕がほとんど寸断された。かろうじて、皮一枚でつながっている状態だ。
腕が千切れかけたことによる灼熱に痛覚を焼かれつつ、問うた。
己の刃が、通らなかった理由を。

「何故……だ?」

「ディストーションシールド。空間への干渉を行う高等魔法――俺の奥の手だ」

篭手の正体はスカリエッティの造りだした、ブーストデバイスである。
その開発目的は実に単純だ。高町なのはの、分厚い防御術式を現行技術で再現、量産化する――科学者の執念。
結局のところ、魔法とは高度化した科学技術である。それが個人の資質による先天的な要素に左右される為に<魔法>と呼ばれているに過ぎない。
これは、スカリエッティの肝いりのデバイスでも変わらない。
起動および術式の発動には、ロストロギアクラスの魔力がいると言うある意味欠陥品のデバイスであり、精々これを起動できるのはランクSSクラスの大魔導師か、
ロストロギアの体内埋め込みによって強化された人造魔導師くらいと言う有様だ。試作品をスカリエッティから提供されたものの、今日まで使う機会はなかった。
恐るべきは、ストライカー級魔導師をここまで追い詰めたシグナムの技量か。

201 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/04(水) 19:03:45 ID:StkzKmA+
いずれにせよ、決着はついた。
片腕が使用不能では戦闘続行など望める筈もなく、シグナムの命はゼストの手中にあった。
呻くように、言った。

「殺せ……!」

「無用な殺生は好まん」

シグナムが歯を剥いて笑った。如何なる感情も飲み込む、混沌の渦中の如き狂笑であった。
千切れかけた左腕を構いもせずに、囁いた。殺意に塗れた視線と、男のしわの刻まれた怜悧な相貌が交差する。
猫科の猛獣と壮年に達した狼の睨み合いに似た、獰猛な空気。

「次は、貴様の胸を貫く。この烈火の将が、必ずや」

無言。男の表情は何一つ、動かず。
かと思えば、それも運命だ、と薄く男が笑い、槍が騎士甲冑を切り裂きシグナムの意識は闇に消えた。


声がする――まるで遠雷だ。
ただ、響くことだけがわかり、明確な意味など形をなさない。
それでも、耳を打った。

「……グナム! シグナムッ!」

泣きそうな声だ。誰かと思い――すぐにシャマルだとわかる。金の髪が揺れ、風にそよぐのが耳で感じられた。
目を開ければ、傷も、騎士甲冑の傷も修復されている。治癒魔法か、とのろのろと頭を動かし、

すぐに凍りついた。

思考の奔流が押し寄せ、些細な現実感を吹き飛ばしていく。
跳ね起きるようにして喚いた。

「ヴィータはっ! ヴィータはどうなった?!」

「お、落ち着いてシグナムッ! あの子は」

顔を俯かせ、シャマルがぼそぼそと喋った。もはや、言葉にすらならぬ絶望の呻きであった。
一筋、また一筋と零れ落ちた涙は、ひび割れた大地を濡らし、瓦礫だらけの街並みに降り注ぎ始めた雨粒に似ていた。
それは、絶望と言う感情が形を得たようで、虚しかった。

「わ……私の回復魔法じゃ……な、治せなくて……本局に転送されたけど……プログラム体と人体のモザイクだから……、
ほ、本局の技術でも、治る見込みは……絶望的だって……それこそ……奇跡でも、起こらない限り……!」

じわり、と腹が疼いた。何事かと思えば、血が一筋流れ出ている。
千切れかけた左腕は熱を帯び、傷跡をなめるようにして蚯蚓腫れが走った。レヴァンティンをアスファルトに突きたて、ゆっくりと立ち上がる。
<次元断裂>の刃を受け、ぼろぼろに傷ついた刀身が主の意思を感じ、戦慄いた。
血を吐くような絶叫が迸り、辺りに血風を思わせる殺気が張り詰める。

「ははは……これが、これがお前のやり方かぁ!!」

幽鬼の如くふらふらと立ち上がったシグナムは、ヴィータの流した血でできた血溜まりに目を留め、砕け散るように涙を流す。
さながら、地獄の悪鬼が流す涙であった。文字通り羅刹の形相がさらに歪にねじれ、闘志に燃え盛った。
降り注ぐ雨を浴びながら、ぞっとするほど低い声で喚いた。

「いいだろう、受けて立つ、ゼスト・グランガイツッッッ!! 幾星霜の時がかかろうと、貴様は、貴様だけは私が討つッッ!!」


202 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/04(水) 19:04:33 ID:StkzKmA+
シャマルが戦慄に凍りつき、ただ呆然と目の前で変貌していく仲間を、烈火の将を見やった。
その顔は、笑みとも狂気とも、怒りとも悲しみとも取れる奇妙さである。
表情と認識できないほどの歪みが、彼女の心を満たし、虫食い穴のように瞬く間に広がった。
奇しくもそれは、高町なのはの心中と同じ要素であり、虚無であった。
生れ落ちたるは、一匹の修羅。
苦痛を無視し、その顎を持って対象の喉笛を噛み千切るまで止まれない壊れた者。
如何なる理由が在れ、けして祝福されない化け物が、シグナムという器を食い破って生れ落ちようとしていた。


 苦痛だ。力を振るえ、より多くを殺せと胸に埋め込まれ、半ば以上人体と融合した魔導の石が謳う。
<ジュエルシード>。かつて女が少女だった頃――闇を恐れ、しかし己と関係のないところにあるものだと認識していた頃の象徴。
一匹のフェレットとの出会いから始まり、金の髪を持つ少女と友達になったと言う輝かしい過去。

――全ては薄暗い実験室で飼われたというおぞましい現実に飲み込まれ、腐敗する記憶の中で融けて無くなった。

薄れゆく感情が告げるのは、哀切にあらず。
壊れきった心の空洞を埋める、慈しみにも似た深い、深い憎悪だ。
実験の中で植えつけられた暗い衝動は朗らかな感情を養分に芽吹き、命の鼓動を吸い取って開花した。
まともじゃない、とわかっていながら止められない。殺意の奔流に砕け散りそうになる理性を繋ぎとめ、ルーテシアに見つからぬようそっと部屋に入る。
がたん、と音。ベッドに倒れ込み、ぎりぎりと歯を食い縛って薬のラベルをなぞり、蓋を開けた。
ざらざらと数錠の錠剤を口に含みつつ、水をかぶりつくように飲んだ。
こみ上げて来る苦いものごと飲みほし、はあはあと荒い息をつく。

(馬鹿みたいだ、私)

唐突に鎌首をもたげた思念を振り払うように、首を振りながら栗色の髪を揺らした。
その白い整った顔立ちがあの男への憎しみに歪み、開かれるは遠く錆び付いた記憶の扉。
彼女の空白――誰も知らない、闇が呻いた。

繰り返される再生実験――眼球を掻き毟りたくなるような光景。

人造魔導師のなりそこない達が怨嗟の声をあげた。
全身の毛細血管が千切れて赤黒い身体になっていく女が、耳障りな騒音を洩らした。
知性など無くしたかのような女の声に、スカリエッティは穏やかに微笑した。

『どう思う? 高町なのは。優秀な管理局員だった君から見て、彼女はどう映る? とてもね、私は興味があるんだ』

強化硝子の向こうでゆっくりと壊死していく女の悲鳴だけが、なのはの耳を打った。
その身体は車椅子に四肢を固定され、スカリエッティによって強化硝子の真ん前まで運ばれた。
硝子の向こうの無数の瞳と目が合う。老若男女問わず集められた被検体たちの絶望。
悲しみ。怒り。妬み。そして――哀れみがなのはの心を抉った。

『ああ、可哀そうに。あの男の慰み者か――』

『生き残っても、地獄しか――』

どんな憎しみよりも、堪えた。
今にも死にそうな彼らに、哀れまれると言う己の境遇。

『もう、やめてぇ!! こんなことをして、何になるのっ?! 私は、私は――』

『可笑しなことを聞くんだね? 面白いから、さ。人間は断末魔の瞬間こそ本性を曝け出せる生き物なんだよ? 私はね、それが堪らなく愛しい』

スカリエッティの笑みは半ば慈愛に満ちたようなものであり、残り半分を狂気が覆っていた。
それがこの男の本性かどうかすらわからぬ、不気味な表情だった。

『狂ってる……! お前には、人の心が――』


203 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/04(水) 19:05:39 ID:StkzKmA+
ああ、と愉快そうに喉を鳴らし、スカリエッティが声をあげて笑い始めた。
紫の整えられた髪が男の表情を覆い隠し、ただその歓喜に満ちた感情だけを伝える。

『実際問題、欠けているんだろうね、私には。私の開発コードは<無限の欲望>さ。開発コンセプトは生命操作技術の研究。
そう、私は君のお友達、フェイト・テスタロッサと同じ人造生命だ。生まれた意味など人に決められた存在。
自己の在り方を模索し続けるだけの命――君達人の胎から産まれた者達には、理解できる筈もない』

『違うっ! フェイトちゃんは、自分で生きる意味を見つけたっ! お前みたいに、人の命を弄んだり――』

『本当にそうかな? 彼女は執務官として生きているが……くくく。滑稽なことに、彼女は自分と似た境遇の子供達を保護しては、
母親代わりをしているそうだよ? まるで、プレシアがアリシアの代替物として彼女を造ったように、ね』

思い出したくもない女のことを囁かれ、なのはが叫んだ。
全ての始まり。<ジュエルシード>を地球に撒き散らした、大魔導師を自称する女。
なのはにとって魔導との出会いの切欠を作ったとも言え、一方で親友を虐待していた悪鬼とも言える存在。
虚数空間の彼方へ消えた、<プレシア・テスタロッサ事件>の首謀者。

『ふざけるなっ! フェイトちゃんが、そんなつもりでしているわけがないっ!!』

『ああ、そうだろうねぇ。彼女は、いや、君達時空管理局の末端は、何時だって善意で動く。それが、当人の為だと信じてね。
だが、どうだい? それが、彼ら、弱者の為になったことはあったのかい。<闇の書事件>では魔導砲アルカンシェルで地球ごと葬り去ろうとした彼らに、
どんな理があるのか、聞かせてほしいものだね。所詮管理外世界の住人を人間ではなく、数値としてしか見ることの出来ない人種に、
全次元世界を統治する資格など、あるのかな? いやはや、我らが姫君は、いささか管理局に漬かり過ぎたと見える。
だいたい、君達そのものが――』

空中展開式モニターが開かれ、幾つもの数字が、顔写真がリストアップされる。
被検体番号と対応するように、なのはの顔も末端にあった。
続いて、スカリエッティがなのはの項目をクリック――写真が、文章データがミッドチルダ語で展開された。
その光景に、なのはが絶句した。

『え……?』

幾つもの映像データ――隠し撮りされた、かつての日常。
フェイトと、アリサと、すずかと共に談笑する自分の姿が、克明に記録されていた。
ミッドチルダ語の解説が、音声つきで再生される。

『対象は良好な素材。家族に武術経験者がいるものの、ナンバー105自体は魔法無しでは非力。捕獲後の処置が容易であり――』

『嘘だ……こんなの』

なおも、冷酷な報告文が続く。
どうやら、読み上げているのはミッドチルダ出身の男であるようで、流暢なミッド語である。
文法は英語に良く似ているし、比較的容易に覚えられたことをなのはは思い出した。

『カバーストーリーの準備は完了。プロジェクトF成功体と夜天の王への対処は万全である。
将来的にオーヴァーSランク魔導師に成長しうるナンバー105は、身体検査により各種薬物への適応性も――』

いい加減映像データに飽きたのか、スカリエッティがウィンドウを閉じ、にっこりとナンバリングされた人間達に笑いかけた。

『さあ、もうわかっただろう? 君達の実験対象としての人生は、管理局に入った頃から始まっていたのさ。
モルモットが自由になれるわけがないだろう? 大人しくここで果てたまえ』

そう強化硝子の向こうに折り重なった人影に向け笑顔でそう告げると、ガジェットドローンに命じて彼らを拘束し始める。
抵抗をしようと魔法を唱え始めた者もいたが、ガジェットの触手に手足を固定され、へし折られた。
あがる絶叫を尻目に、スカリエッティは言う。

『ああ、君には期待しているよ、高町なのは。是非是非、私を殺せるほどの力をつけてくれたまえ――』

204 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/04(水) 19:06:20 ID:StkzKmA+
 さらに数種類の薬を飲み、吐きそうなほどの量、水を流し込んだ。流れる汗は自分のものでないようで、肌を濡らしてひどくべたついた。
声にならない呻きのようなものが洩れ、薬物に拒否反応を起こした結果として口からは苦いものが溢れそうになる。
吐くわけにはいかない。戦う為に、必要だから。長髪が煩わしい――掻き毟りたいような衝動を抑え込み、ただひたすらに、落ち着け、落ち着けと念じる。

(そうだ。私は)

幼い頃、兄と姉の剣闘をみることさえ怖かった自分が、まだ心に住み着いているような錯覚を覚える。
父が、士郎が怪我をして、そのことで子供だった自分はフィアッセさんを追い出して――。
無邪気ゆえに残酷な一言が、彼女の心を抉ったのだろうことは、想像に難しくない。
これは――報いか。

(そうなのだとしても、もう私は止まれない。ううん、止まっちゃいけない)

あまりにも多くの命を犠牲にしてきたから。
そうだ、だから――。


「お前だけは殺してやるっっ!! ジェイル・スカリエッティィィィィッッ!!」


暗室にただただ殺意に塗れた声が響き渡り、抑えきれない衝動がけたたましい笑い声となった。
壊れた心を引きずって、女は力を手にし羽ばたく。

嵐の中を――時代の動乱の最中を、黒き鎧を身に纏いて復讐鬼は飛ぶ。

その先に待ち受けるものも知らずに。

慟哭。

対峙。

別れ。

闇の王女の舞踏の、第二幕が開こうとしていた。

踊れ、踊れ、踊れ。

死ぬまで踊り続けろ、愚者よ。

お姫様を求めるは、二人の王子――全ての始まりを告げた少年と、復讐の輩だった青年。

お姫様を救えるか、御伽噺のように。

205 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/06/04(水) 19:11:06 ID:StkzKmA+
以上を持ちまして投下完了です。

今回ダークサイドに落ちる人物がまた一人。
戦え、烈火の将!! でもシスの暗黒卿みたくなるな!!
ゼストさんは、色々と不味い武装を引っさげての決戦乱入です。
今後の彼の動向や如何に……?!

感想等よろしくお願いします。

206 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 19:15:44 ID:mFdcbLwC
面白かったですGJ!!


207 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 19:19:28 ID:VZqiPYLg
>>191
GJ!
なんという出世。

208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 19:20:37 ID:Ryb5Qrdk
やっと主役出てきた……
何かなのはが丹波文七に見えてきましたw
それはそうと、ヴォルケンの扱いが悪いですね

209 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 20:11:48 ID:wvYUPBBE
ぶっちゃけ、ヴォルケンの扱いはどこのクロスも結構悪いと思う。

210 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 20:17:34 ID:AZNhH5Je


390 :名無しさん:2008/06/04(水) 17:04:29 ID:XXdDClrM
LMSは正直イラネ


391 :名無しさん:2008/06/04(水) 17:21:32 ID:iCLT8rJA
本人は面白カッコイイつもりだったのか知らんが
あのキャラ改造はちょっと鼻についたな


392 :名無しさん:2008/06/04(水) 17:47:13 ID:7CXcjkIE
でもLMSは明らかにクロスが合わないリリなの一期とDMCクロスという冒険に挑んだのは評価すべきだと思う。
あと、ちゃんとSSを完結させたって事も。

ただ個人的には、キャラ改変よりもボスキャラの扱いのが問題あった気がするぞ。
上位悪魔のはずなのにあんま迫力なかった。


393 :名無しさん:2008/06/04(水) 17:56:00 ID:aGfUv0cw
上位悪魔より、バージルの扱いに問題があったと思うが。
少し弱すぎたと思う。


394 :名無しさん:2008/06/04(水) 18:47:37 ID:OW.bFYz6
ケルベロス瞬殺したのも俺的にはマイナスだな。
精神的に不自然にタフすぎたのも。


395 :名無しさん:2008/06/04(水) 19:02:06 ID:5gfat4TI
>>381
RXに比べれば無茶じゃないと思えば大概の矛盾は許せるよ。


396 :名無しさん:2008/06/04(水) 19:47:51 ID:2iZC9kDM
俺は好きだったけどなぁ、LMS。
いい意味でなのはのキャラクターがぶち壊れていたし。


397 :名無しさん:2008/06/04(水) 19:57:36 ID:INQvxBgU
>>395
そいつはちょいと弾けすぎていて大概のトンデモは足元にも及ばない気がするんですがw


211 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 20:26:33 ID:Ffs7sVFG
>>205
GJ!!
次回なのはvsゼストですか?
楽しみにしてるので待ってます!

212 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 20:31:53 ID:DkJuop2C
>>205
ニートが修羅に落ちたか(←マテ)
ダークサイドに落ちたメインキャラを見るのが大好きな人間なもんで(鬼畜めwww)
こういう展開、オレ的にはいいと思う。
おお、こいつを忘れるところだった→GJだぜ!!

>>208-209
ぶっちゃけ扱い悪いとか言われてるけど、
活躍してるってだけで満足する人もいると思うよ?
影が薄いとか出番少ないとかよりは。

>>210
またおまえか・・・

213 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 20:36:02 ID:VdExBemH
 なのはstsとMETAL GEAR SOLIDのクロスを書こうとしているんだけど、質量兵器禁止で少し悩んでいる。

 麻酔銃は無理だろうけど、スモークグレネードやフラッシュグレネードといった非殺傷兵器も質量兵器になるのかな?

214 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 20:39:49 ID:wn/iqlg+
>>213
ウ・ロ・ス・ヘ・GO!Hey!

215 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 20:48:44 ID:EaMOjdee
魔導師・管理局の優位性を失わせるような物は全て質量兵器として禁止、またはロストギアとして管理局の管轄下に置かれます。

216 :213:2008/06/04(水) 20:52:40 ID:VdExBemH
>>214
こっちの方が適切みたいなので避難所で聞いてきます。

217 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 21:07:14 ID:DdIi7NOt
>>209
出したり入れたりなシャマルさんや
猫耳なシグナムや
「てへっ♪」なヴィータをお忘れか

218 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 21:13:57 ID:4D5yNPH2
>>217
ちょい待ち、ヴォルケンって四人組だったよな、あと一人って……あぁ、リインか

219 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 21:29:30 ID:n2I4VM7V
>>209
クロス側の敵役の強さを表現する為の踏み台として手頃な位置に居るんだよな。
テリーマン的立場と言うか。

220 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 21:39:01 ID:wvYUPBBE
クロスでの基本的な力関係ってだいたい、

シグナム<クロスキャラ<なのは

もしくはシグナム<クロスキャラ=なのは

こんな感じになるからヴォルケン扱いが悪く感じるだよなー。


221 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 21:41:39 ID:riNIO9hz
>>219
どっちかと言えば、フェイトな気が…

222 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 21:50:42 ID:X5dwQLc+
>>220
プログラムであることを生かしてなのは達人間には活動がむずかしい
水中、宇宙での活動ならヴォルケン>なのは達と考えたこともありました
が人間化に近づいてる時点でオワタ

223 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 22:06:09 ID:lej9+0hf
人間に近づく=耐久含めた身体能力の弱体化なんじゃね

224 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 22:14:01 ID:Nkiq6HPL
GJしかしこのままでは某ディードになりそうだシグナム。

225 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 22:14:22 ID:9nSaJw3V
>>222
人類種は生命体としてはあんまし強くないからな
せめてDDSのチューナーのような存在であれば問題はないけど
人間に近似させる利点はあんましないと思う



226 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 22:21:46 ID:yno+cIWL
>>222
もうはやてが健在でも復活できなくなってるそうだからな>ヴォルケン

227 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 22:23:32 ID:QV3f8Nxp
もうそろそろウロス行きかねえ。

228 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 23:02:42 ID:IW6oQii8
よく考えたら今日はやての誕生日じゃねーか。
すっかり忘れてたぜ

229 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 23:55:11 ID:cZ3dI975
GJ!!です。
前回の我らがヒロイン、カリム&シャッハの活躍もよかったですが、
今回のゼストが堪らんw主人公じゃんwww
そして、管理局が凄いぞいw正義に狂って悪に変質してるよ。そこをスカ博士に利用されてるのにも
気づけない。

230 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 00:30:33 ID:jKIvTr/I
>>225
というかみんなザフィーラみたいな守護獣でよかったと思うんだ。
別に使い魔がデバイス持っちゃいけない道理はないんだし。切り札として変身、みたいな感じで。

231 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 00:34:35 ID:+YF2CEa4
ザフィーラはアルフのようなちび形態が無いのも痛いな。


232 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 00:36:34 ID:yVMySqjM
え……

233 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 01:09:33 ID:MFuiG/5o
存在を忘れられたちびザフィーラ哀れすぐる

234 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 01:21:52 ID:p0+QVX5X
仔犬フォームのことじゃなくて幼児フォームがないってことじゃ……

235 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 01:35:06 ID:5pn99FW0
ガチっとムチっとしたショタがみたいのか・・・

236 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 01:35:37 ID:3Wk68zo1
ヴィヴィオとちゃんとフラグを立てておけば……

237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 01:39:26 ID:5pn99FW0
>>236
それ、砲撃フラグと同意

238 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 01:51:38 ID:BV/hhj9U
http://www.23ch.info/test/read.cgi/anime2/1194450771/
このテンプレすげぇw
STSの不満を全部言ってくれてる。

239 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 03:10:07 ID:iRgomKOv
(*´∀`)<なのは信者こえ〜

240 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 03:12:22 ID:nA+thv2B
そういやザフィーラSTS本編じゃ一度も人間モードになってないけど
あれなんか制限でもかかってたのか?

241 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 03:15:01 ID:5pn99FW0
>>240
保有魔導師ランク制限で、なのは、はやて、フェイト等を同じ部隊にするために、ザッフィーは犬になったとかじゃなかったけ?
間違ってたらスマソ

242 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 03:15:50 ID:cPgn/Nxv
>>240
保有戦力ギリギリだ! → 隊長陣にリミッター付けようぜ! → あ、ザフィーラは飼い犬って事にすれば良くね?

243 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 03:29:04 ID:nA+thv2B
>>241-242
ザフィーラも保有制限かかってたのか
最終決戦ぐらい人間モードで戦えば良かったのにって思ったよ

244 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 07:24:33 ID:To7cBAmH
ザフィーラは局員にはなってないよ。
個人的にはやてやシャマルの護衛をやってる設定だったはず


245 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 07:39:51 ID:xzbff4LE
描写的には
リミッター付き他ヴォルケンズ≒ザフィー


orz

246 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 07:55:47 ID:yVMySqjM
でも、オーリスがレジアスに六課の説明をするときは普通に戦力としてカウントされてたけどな

247 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 14:41:10 ID:BTBqXCq+
犬耳しっぽ付けたガチムチな男がいると管理局の評判が落ちるからでいいじゃない

248 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 14:42:20 ID:gMuSGN8z
扱いが悲しすぎるw

249 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 15:22:21 ID:H+nXf82S
でも、ザッフィーはあの形態のおかげで得してるぞ
例えばシグナムの下着を見たり

250 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 15:34:32 ID:WWCrgvN+
>>249
ヤツは伝説のモレスターだからな
電車の中では英雄さ

251 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 15:37:18 ID:OT0lkcWB
>>247
病院で不審者扱いされて、力がありそうな職員に取り囲まれていたあの光景は忘れられないw

252 :一尉:2008/06/05(木) 15:45:07 ID:MIsHBWvY
うむ伝説の勇者ならよい。

253 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 15:45:37 ID:u4xzGI+l
よくよく考えればあいつは獣なんだから、誰かに洗ってもらってるはずだ
では、誰か?
はやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、リインのうちの誰だ!?
羨ましすぎる

254 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 15:53:22 ID:WWCrgvN+
>>253
ゲンヤおじさんとレジアス様だな

255 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 16:15:09 ID:liuhMkne
闇の書=ポケモン図鑑
ザフィーラ=ポケモン
突然こんな電波が降りてきたんだぜ

256 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 16:23:52 ID:Txi94ZJY
ザフィーラ
ベルカポケモン
タイプ1 かくとう
タイプ2 はがね

257 :sage:2008/06/05(木) 16:58:50 ID:Yewjrke8
ザフィーラは愛されてるな

258 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 18:19:09 ID:fu7kRVZ3
>>251
精神科の看護師はそういうのばっかりだぞ。

259 :177:2008/06/05(木) 19:54:43 ID:oglzMlbr
>>251
俺の知り合いに減量のため、柔道着を10枚くらい着込んで精神病院の近くをランニングしてたら突然5,6人の白衣の男に取り囲まれた末に拉致されたのがいる。

260 :Strikers May Cry:2008/06/05(木) 20:21:20 ID:qgT1VhZD
30分くらいからリリカル・グレイヴ投下します。

261 :Strikers May Cry:2008/06/05(木) 20:31:06 ID:qgT1VhZD
んじゃそろそろ投下します。

リリカル・グレイヴの十一話で若干グロあり(?)

262 :リリカル・グレイヴ:2008/06/05(木) 20:31:50 ID:qgT1VhZD
魔道戦屍 リリカル・グレイヴ Brother Of Numbers 第十一話 「二人の隻眼」



「グレイヴ! 起きてくれグレイヴッ!!」


愛すべきファミリーである隻眼の少女の呼びかけに死人は暗き眠りの淵から目を覚ました。
まだ覚醒すべき時には早いが強靭な意識で無理矢理に身体を稼動させる。
片方しかない瞳を見開き外界を視認すれば、自分の膝元に銀髪の少女が今にも泣き出しそうな表情で縋り付いていた。

何かに引火でもしているのか爆発音と振動が施設全体を揺るがし、警報がけたたましく鳴り響いて鼓膜を刺激する。
それだけで血液の交換を終えて起動したての死人に事態が緊急であると伝えていた。
グレイヴは眠りから醒めたばかりでまだ調子の戻らぬ身体をその強靭な意志で力を入れて死人用血液交換台座、チェンバーから立ち上がる。

瞬間、凄まじい音と共に部屋のドアが人外の力で破壊されて吹き飛んだ。
ひしゃげたドアが宙を舞い、床を数回バウンドして転がる。
グレイヴが視線を乱入者に向ければそこには彼がウンザリするほど見てきた一糸纏わぬ筋肉質な青白き巨体を揺らした怪人、オーグマンが鎌と化した腕を引っさげて立っていた。


「シャアアァァァアッッ!!!!」


鎌状の手を持つオーグマン、デス・サイズは部屋の中のグレイヴとチンクを発見するや耳障りな雄叫びを上げて二人目掛けて駆け出す。
蟲のよう多節関節型の異形の腕を伸ばし、その先端の鎌の刃を振りかざして迫るデスサイズ。常人ならば即座に首を刈り取られかねない状況だが相手は最強の死人である、反撃は迅速に正確に無慈悲に遂行された。

部屋の中に耳をつんざく銃声が木霊すると同時にオーグマンの胸に穴が開く。
死人の手に握られた獄狗(ケルベロス)がその咆哮と共に牙を突きたてたのだ。
傍にあった愛銃を手に取り、安全装置を解除し、照準を構えて銃爪を引くまでにグレイヴが要した時間は1秒に満たないほどの瞬速。
反撃はこれだけに終わらず、続いて二発・三発と15mmを誇る大口径の銃弾が異形の敵に叩き込まれる。


「グルゥアアァッ!!」


身体に撃ち込まれたケルベロスの凶弾の破壊力に奇声をあげてよろめくオーグマン。
その身体には体組織が崩壊する寸前の亀裂を無数に刻まれている。
さらにトドメと言わんばかりに異形の眉間に機人の少女の放った刃が吸い込まれた。
チンクの投擲したダガーナイフは正確な軌跡でオーグマンに命中。
次の刹那には戦闘機人の持つ固有技能(IS)発動の兆候であるテンプレートが展開されて彼女の持つ特殊能力が行使される。


「IS発動、ランブルデトネイター!!」


突き刺さったナイフは閃光と共に炸裂、オーグマンの頭部をスイカのように爆ぜ飛ばして粉微塵へと化す。
哀れな異形は瞬く間に砕け散り、塵へと成り果てて消えた。


「ふぅ・・・」


チンクは一つ息を吐いて呼吸を整える。
しばしドアの外の様子を伺い敵の新手や増援が来ないと悟ると、手を下ろしてダガーナイフの刃を収めた。
そんな彼女に目覚めたばかりの死人は何か言いたげな視線を向ける。突然施設内に敵が現るような状況、彼が抱いた疑問は言うまでもないだろう。


「・・・・」


263 :リリカル・グレイヴ:2008/06/05(木) 20:33:01 ID:qgT1VhZD
「グレイヴ・・・今のこの状況は私にもよく分からないんだ。ただ・・・恐らくはドクターの下にやって来たあの男達の仕業だ・・」


チンクは苦々しい表情でそう呟く。彼女の脳裏には数時間前にこの施設にやって来た数人の男、そして彼らを束ねる管理局中将の姿が浮かんでいた。
そんな少女に死人はいつものように小さな声で話しかける。
だが彼のその声にはチンクにも分からない程の僅かな緊張が含まれていた。


「チンク・・・・皆は?」
「ノーヴェ達は体の修復を終えたばかりで最深部のラボにいる。今、緊急脱出用の地下区画に向かっているところだ。・・・だがドクターとウーノ、それにクアットロと連絡が取れない・・・恐らくあいつらの迎撃に出て・・」


チンクの言葉はそこで言い淀んだ、思い浮かぶのは未帰還のトーレの末路。
最悪の想像が少女の小さな胸に棘を打つ。
彼女のその胸中を悟ってか、死人はその場に跪いて目線を小さな少女に合わせた。
片方しか開いていない彼の右目が同じく片方しか開いていないチンクの隻眼を間近で見つめ、二人の視線が宙で絡み合う。
そして死人は妹分の頭をそっと撫でた。
同時にこちらを覗き込んでくる儚げで優しい彼の瞳に、チンクは心に刺さった不安の鋭い棘の痛みが引いていくのを感じた。


「すまん・・・心配しなくても私は大丈夫だ」


チンクはそう言うといつもの怜悧な戦闘機人へと戻る。
戦闘機械へと転じた理性は家族への不安に駆られた少女の心に蓋をして思考を戦いに切り替えた。


「ともかくここを出よう。ドクター達が心配だ」


チンクの言葉にグレイヴは黙って小さく頷くと、地獄の番犬と鉄火を詰めた棺桶を携えて立ち上がる。


「それとグレイヴ、デス・ホーラーの武装は全て通常火器に換装してある。これであの敵にも使えるぞ」


グレイヴがデス・ホーラーを背負った姿を見てチンクが思い出したように声をかけた。
どうやら戦闘準備は万端らしい。
そしてグレイヴもまた、何か思い出したようにチンクに口を開いた。


「チンク・・・あの敵はオーグマン。戦う時はよく頭に狙いを付けた方が良い・・」
「知っているのか?」
「・・・」


死人はチンクの質問に黙って頷く。チンクは“そうか”とだけ言って黙った。
彼が何も言わないという事はそれ以上は無駄な情報という事であり、そして今は最低限の情報を知っていれば良い。

隻眼の死人と隻眼の機人はその手に鉄火と白刃を携えて並んだ。
二人の姿は第三者から見れば奇妙な取り合わせだったろう、片や黒い服に身を包み二丁の巨大な拳銃と棺で武装した大男、片や小柄な身体に似合わぬコートを羽織った小さな少女の取り合わせはひどく妙なものだった。
だがこの二人には一切の憂いもなければ隙もない。


264 :リリカル・グレイヴ:2008/06/05(木) 20:34:26 ID:qgT1VhZD
グレイヴとチンクは踵を返して部屋を後にした。


部屋を出れば、通路の壁には無数に亀裂が走り大きくヒビ割れている。
あちこちから聞こえる爆音と施設全体を揺るがす振動がここの崩壊を如実に伝えていた。


「シャアァァアッ!!」
「グルゥウアァァアッ!!!!」


二人が外に出た瞬間、彼ら目掛けて聞き覚えのある奇声と共にまた青白き怪人が現れた。
襲い来るオーグマンは五体、手が鎌と化したデスサイズが二体にランチャー化した両腕を構えた70mmフィンガーが三体。
70mmフィンガーがグレイヴとチンクに砲火を浴びせようと砲口の照準を合わせ、デスサイズが鎌の腕を振り上げて駆け出す。
死の鎌が血を啜らんと伸び、砲門に装填された鉄火が爆ぜんと射出された。

標的となった死人と機人は、この奇襲に疾風の如き速さで反撃を返す。
二人は照準を合わせて飛来する70mmフィンガーの放ったランチャーを側方へ駆けて回避、爆炎の中を転がると同時に各々の手の得物を翻した。
まずグレイヴは棺桶、デス・ホーラーを上に大きく振り上げてから脇に構えて高速可変変形、大口径バルカン砲バスターランチャーへと変えて次弾の発射に備えていた70mmフィンガーズに狙いを定める。
大口径バルカン砲“Fatality Bringer”を発動、強大な破壊力を内包した大口径の機銃掃射で70mmフィンガーズ三体を瞬く間にズタボロのゴミ屑へと変えた。
その攻撃の隙をつきグレイヴ目掛けてデスサイズが鎌の刃を振り上げて迫るが、その眉間に正確な軌道で数本のナイフが突き刺さる。
それだけならばオーグマンを屠るにはあまりに微々たる破壊、だがこの刃は単なる刃物(エッジウェポン)ではない。
次の瞬間には円形テンプレートを描きIS発動兆候を発し、そして盛大に爆ぜた。
刃を喰らったオーグマンは頭部を跡形もなく破壊されて身体を青い結晶の塵へと還して粉々になる。

オーグマン数体を息一つ切らさずに倒した二人は、そのままチラリと一度視線を交わした。


「オーグマンか・・以外に大した事は無いな」


少女はそう言いながら不敵さを含んだ愛らしい微笑を死人に見せた。
共に戦う彼を心の底から信用しているからこそ、この修羅場でも見せる会心の笑み。
彼女の微笑みにグレイヴもまた、ほんの僅かに口元を綻ばせた。


「よし、では早く行こう」
「・・・・」


チンクの言葉にグレイヴは小さく頷いて返す。
そして二人は崩壊しつつある研究所の奥へと駆け出した。





どこにあるとも知れぬ闇の中、そこに三つの巨大な強化ガラス製の容器、生体ポットが並んでいる。
そのそれぞれに生体組織を長期間生かすための特殊な培養液が満たされ、中には脳髄が浮いていた。

265 :リリカル・グレイヴ:2008/06/05(木) 20:34:59 ID:qgT1VhZD
それらこそが旧暦の時代から管理局を影から操る存在、「最高評議会」である。


沈黙と静寂が包む中、その中の一つの脳髄が人口音声で声を発した。


『まったく・・・・スカリエッティのみならずレジアスまでも造反者となるとはな・・』


その言葉と共に地上本部襲撃の際の様々な映像がモニターに展開されていく。
映し出されるのはガジェットや戦闘機人、グレイヴといったスカリエッティが地上本部に送り込んだ戦力。
次いで展開された映像は、青白き異形の怪人“オーグマン”とエバーグリーンやE・G・マインといったGUNG−HO−GUNSの者達、そしてその彼らと共に映るレジアスの姿だった。


『想像もできない事態だったのだ、いまさら悔やんだとて仕方あるまい。しかしこんな時の為に蘇らせたというのに、ゼスト・グランガイツは何をやっているのだ?』


一つの脳髄が上げた質問にもう一つの脳髄が映像を出しながら答えた。
映像には病室らしき部屋で点滴や各種医療機器に繋がれたゼストと彼を見守る小さな融合機の少女が映し出される。


『奴ならレジアスとその手勢に敗れている、今は秘匿性の高い私の管轄にある医療施設で治療を受けさせている。だがあの傷ではそう永くはあるまい・・・』
『そうか。ところで、レジアスが今回の騒動の元凶である件についての情報はまだ漏れていないだろうな?』
『ああ。この映像にしても奴が本件に関係していると思われる情報は全て封殺しているよ。こんな事実が知れ渡ったらそれこそとんでもない騒ぎになる』
『反管理局思想の世界やテロリストに犯罪組織、物騒な輩共が騒動に便乗して蜂起しかねん』


二つの脳髄が人工的に紡ぎだされた声で会話する中、もう一つのポットの浮かんでいる脳髄が声を挟んだ。


『だがいつまでも隠せる事ではない。奴が本気で管理局へのクーデターを考えているとすれば近いうちに必ず現れる筈だ。地上本部で得た各世界の要人を人質にな・・・』


その声は人工的に作り出されたものとは言えど、事の重大さの為か幾分力なく感じられた。


『それが問題だな・・・聖王教会の騎士カリムを始め、随分な数の要人を人質に取られている。もしもこれが管理局の身内が起こした事件と知れれば大問題だ』
『もし発表するならば時期は慎重に選ばなければならんな。そして可能な限りは内密に処理せねば』
『それならば一つ手を打ってある』
『ほう、なんだ?』
『レジアスの手勢に雇われた者達。なんでもGUNG−HO−GUNSと言う、ある管理外世界の戦闘集団らしいのだが、その生き残りにコンタクトを取った』


そう言いながら、その脳髄は荒涼とした乾いた荒野が支配する世界の映像をモニターに出す。


266 :リリカル・グレイヴ:2008/06/05(木) 20:35:30 ID:qgT1VhZD
そこは管理外に指定された世界、GUNG−HO−GUNSと呼ばれる超異常殺人能力集団のいた世界だった。


『ではこちら側に引き入れられると?』
『ああ、既に交渉を進めている。それに“策”はそれだけではない』
『そうか、ではそれは君に任せよう』
『了解した』
『では引き続きレジアスの捜索と今後の事件処理について論議を続けよう・・・』


暗闇の中、瓶詰めの脳髄達は再び様々な議題と問題を語り合い始めた。





「はぁっ!!」


良く澄んだ少女の声と共に数本のナイフがその鋭い刃で以って異形の怪物に突き刺さる。
頭部と胸に突き立てられた小さな刃は一瞬で炸裂する爆弾へと成り、爆音と爆炎を上げて敵の身体を散華した。
その衝撃に標的となった化け物の身体は砕け散り、粉々になったガラスのように青い結晶となって燃え盛る施設の空気へと混じって消えていく。
その光景は少女の輝く銀髪と相まって、どこか非現実的で幻想的な美しさすら感じられる。
だがこの場所に、その美しさに魅入られる者など一人もいなかった。


「ギシャアァァァアァ!!」
「ガァァアァァ!!!!」


一体倒したかと思えばまた新しいオーグマンが数体、奇声を上げ異形の兵器と化した手を振りかざして現れる。
もう倒した敵の数など覚えてはいない。倒しても倒しても現れる者の数など数えたとて意味は無かった。
チンクはコートを翻し、内に仕込まれた大量のナイフを抜きさってその小さな手の指の間にありったけ握る。


「いい加減に掃討せねば先に進めないな・・・・・では、盛大にいくぞグレイヴ!」
「・・・・・」


チンクは大量の刃で彩られた手を思い切り振りかぶり、全力の投擲モーションを取りながら自分の後ろを守っていた死人に声をかけた。
死人はただ黙って鉄火を詰め込んだ長大な鉄の塊、死を運ぶ棺デス・ホーラーを構える。

敵がこちらに攻撃を仕掛ける暇など与えはしない。
チンクはその小さな身体から発揮されるのが信じられない程の力を込めて、両手の十指に握られた幾つもの白刃を投げつけた。
戦闘機人の人工筋肉が生み出す投擲技能は、正確極まる軌道で眼前の敵目掛けて刃を躍らせる。


267 :リリカル・グレイヴ:2008/06/05(木) 20:36:13 ID:qgT1VhZD
チンクの投擲したナイフの刃がオーグマンの身体に突き刺さったのと、グレイヴが肩にデス・ホーラーを担いで照準を合わせたのはほぼ同時だった。
死人の肩に担がれ、狙いを付けたデス・ホーラーがその砲門からロケットランチャー“Death Blow”を発射。
鋼の口腔から吐き出されたランチャーが着弾した刹那、チンクのISが発動しナイフが閃光を放ち完全なタイミングで二つの爆発が併発した。

閃光・爆音・爆炎が巻き起こり、施設全体を揺るがしそうな程の凄まじい衝撃が辺りを包む。

立ち込めた煙が晴れ時、その場に立っていたのは隻眼の死人と機人だけだった。


「ふう・・・・これでようやく一段落か」


邪魔者のいなくなった瓦礫だらけの破壊された通路を見ながら、チンクはそう言って額の汗を拭った。
その言葉に緊張感など欠片もなく、それどころか余裕すら感じられる。
この死人と機人に死角など微塵もありはしない。

二人はメチャクチャに破壊された通路を進み、目的の場所に到着した。
そこは隔壁を下ろされて研究ブロックの一つ、スカリエッティの存在が最後に確認された場所だった。


「では、開けるぞ」
「・・・・・」


チンクの言葉にグレイヴは無言で銃を構えて頷く。
隔壁を一枚隔てた向こう側にいるのは敵かそれとも味方か、僅かに緊張が空気に鋭さを宿す。
戦闘機人の少女は壁に備えられたコントロールパネルを操作して隔壁のロックを解除した。
すると鈍く軋む音を立てながら分厚い強化金属製の壁が上部へとせり上がっていく。
耳障りな軋む音と裏腹に、スムーズに隔壁は収納された。
時間にすれば1分もかかってはいないだろう。
そして壁の向こう側、薄暗がりの支配する空間を支配していたのは・・・


「ああ・・・チンクか・・・遅かったね・・」


鼻が曲がるかという程のむせ返るような臭気、腸(はらわた)が外気にぶち撒けられた凄まじい臭い。
床や壁は薄暗がりの中でも鮮明に見える血の朱で染められている。
その中に散らばる肉片、よく見れば人間の内蔵や手足と分かるモノの只中にスカリエッティはいた。

皮一枚で繋がる下半身、千切れた左腕、目に痛い程赤く染まった凄惨な姿で。


続く。


268 :Strikers May Cry:2008/06/05(木) 20:38:06 ID:qgT1VhZD
投下終了です。
今回はグレイヴ復活&無双の回でした。そしてスカの介に何があったか、詳しくは次回で。

ああ、あと管理局側にもGUNG−HOつくんでそこんとこよろしくお願い済ます。

269 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 20:46:13 ID:C93ryfR4
GJ!!です。
スカ博士は、死亡フラグを回避できませんでしたか。
ウーノやクアットロもかな?


270 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 20:49:15 ID:Qj5I1uBV
投下乙
博士ー!無理かもしれないけど死んじゃだめだー!
他の数の子は無事かー!

271 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 21:15:22 ID:oglzMlbr
他のGUN-HOも来るのかー!?生き残りは誰がいたっけ?

272 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 21:40:07 ID:IubBJRSD
GJスカさん大丈夫か?
しかし六課も相当戦力減っていますね。

273 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 21:42:00 ID:7yscuoU7
>リリカルグレイヴ
ち、畜生…おかしいぜ! この作品では原作で「こいつムカつくwwwフルボッコ希望www」とか思ってた奴ほど死ぬのが惜しくなりやがる!
いや、正直リリカルグレイヴでもスカは大概悪役でしたが、なんかトーレの死に様が鮮烈で悲壮感感じちゃうなぁ。
あとクアットロ。頼むから逃げ切ってくれ…もう「うぜえwwwケツメガネ自重ww」とか言わないから。
ちゃんと暗躍してる偉い人の脳みそとかクライマックスに向けてバリバリ伏線張られてましたが、やっぱり終始グレイヴとチンクのコンビが輝いてましたねー。

>片方しか開いていない彼の右目が同じく片方しか開いていないチンクの隻眼を間近で見つめ、二人の視線が宙で絡み合う。
アニメ本編では特に触れられなかったチンク姉の眼帯が、もうこのシーンだけで絶大な意味を持つよ!
おまけに二人の対比の構図がマジ上手いっすねw燃えるwww
チンク姉のISがオーグマン相手に頼もしいこと。戦闘シーンはガングレのOPの曲聞きながら読むのは常識だよね。
それにしても、スカ山が早々にリタイアっぽくて、これはクロス初の管理局ラスボス展開? すげえよレジアスに三脳。普段の死亡フラグどうしたの?w
次回も期待大です。

274 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 22:15:13 ID:p5vCtNnw
GUNG−HO−GUNSの生き残りっていうとひょっとしなくてもダブルファングとトライパニッシャーしかいなくね?

275 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/05(木) 22:38:08 ID:yypS5LCV
出来ればナイブズとヴァッシュは出さないで欲しいな……リリカルTRIGUNとネタ被るし……。

276 :黒の戦士:2008/06/05(木) 23:03:10 ID:cJPnBV7t
こんな時間帯だけど、投下予告。
今日は第二話です

277 :黒の戦士〜ペペロンチーノ号リリカル奇談〜:2008/06/05(木) 23:07:55 ID:cJPnBV7t
第二幕「Chase The Wind」

台湾北部の港湾都市、基隆。
港から出たなのはたちは、日用品を求めて少し規模の大きいスーパーに入った。
しかし、ハカイダーが思いっきり目立ってしまっていた。
「……そろそろ職務質問されてもいい頃だな」
思いっきり他人事なハカイダーの言い草に、なのははコケそうになった。
「ハカイダーさん!」
「冗談だ」
怒るなのはをなだめながら、ハカイダーはこちらに向けられている視線に注意していた。
「ハカイダーさん?」
「誰かが俺たちに張り付いている」
その一言に素っ頓狂な声を上げそうになったなのはを制止し、ハカイダーは気付いていないフリを敢行した。

数十分後、ハカイダーたちはわざと路地裏へと入っていった。
ハカイダーたちをつけていた男たちも、後を追うように路地裏へと入っていき、……ハカイダーに返り討ちにされた。
男達の正体は、地元のマフィアであった。
「……何故俺たちを付け狙った?」
「た、頼まれた……」
「誰にだ?」
「スーツ姿の厳つい男で……右手が義手だった」
更に数分後。
「……」
「ナナミ、どうした?」
「あたし、あの人たちをけしかけた男に心当たりがある」
「本当か?」
「うん」

停泊中のペペロンチーノ号のキッチン。
「あの野郎、まだ俺たちを狙っていたのか」
「アルさん、知ってるの?」
「メタル・クロー……。ブラジルのある密猟組織の幹部だった男だ」
アルは、なのはとハカイダーに、メタル・クローとの因縁を説明した。
「アフリカでまいた時に諦めたかと思ったが、本当にしつこいぜ」
「逆恨みじゃないですか!」
「所詮そういう奴さ、メタル・クローは」
アルのメタルクロー評を聞き、ハカイダーは簡潔にこう言った。
「……醜い」
「ハカイダーさん……」
以前、ハカイダーがプレシアのこともそう評したことを知っていたなのはは、心中複雑であった。

278 :黒の戦士〜ペペロンチーノ号リリカル奇談〜:2008/06/05(木) 23:09:09 ID:cJPnBV7t
一方、ペペロンチーノ号に客が来ていた。
「スコット」
「ルコントじゃないか。どうした、急に?」
「調査中にたまたまこの船を見つけてな。挨拶ぐらいはしておこうかと」
「そうか」
「そういえば、例の二人、乗っているんだろう?」
「……どうやって知った?」
「あの二人のことを知っている少年が同伴していてな。この船に乗ることも、彼には伝えていたようだ」
「その少年は?」
「恐らく、トーマスと一緒にこの船のキッチンに行ったはずだ」
キッチン。
トーマス・ルコントの来訪に、キッチンは騒然としていた。
「トーマス!」
「こっちに来てたのか」
「たまたまペペロンチーノ号がこの港に入っているのを見かけたんだ」
トーマスとの再会に喜ぶナナミとアルに、なのはは尋ねた。
「ナナミさん、アルさん、この子は?」
「コイツはトーマス・ルコント。俺たちの仲間で、少し前までこの船に一緒に乗っていたんだ」
「初めまして、なのは」
「初めまして、トーマス」
一方、ハカイダーはドアの死角に隠れている少年の存在に気付いていた。
「そこにいるのは分かっているんだぞ」
ハカイダーの声に観念した少年は、ドアの死角から出て姿を現した。
「ユーノ君!」
「久しぶり、なのは……」
思わぬ再開を喜ぶなのはとは対照的に、ハカイダーは憮然としていた。
「お前も来ていたのか」
「あ、ああ……」
ハカイダーが外に出ようとしたのを、なのはが呼び止めた。
「ハカイダーさん、どこに行くの?」
「港の施設を見学してくる」
ハカイダーはそう言ってキッチンを出た直後、ドアの前に立ちすくんでいたユーノにこう言った。
「なのはは、渡さんぞ」
そのまま、ハカイダーは歩いていってしまった。
「わ、渡さない?」
「私を!?」
「ま、大胆」
面食らったユーノとなのはとは対照的に、ナナミはませた笑顔を見せた。
「あーらら、あいつ、なのはに気があったのか……」
「ユーノ、凄い強敵だね」

279 :黒の戦士〜ペペロンチーノ号リリカル奇談〜:2008/06/05(木) 23:10:35 ID:cJPnBV7t
ハカイダーは、港の施設を見学していた。
そして思い出していた。
いきなりミッドチルダに運び込まれたこと、運んだ連中と、それを操っていた『さいこうひょうぎかい』と呼ばれる三つの脳味噌を皆殺しにしたこと。
何故かアルフに拾われて、リニスの手伝いをしながらそれなりに日々を過ごしたこと、フェイトを虐待するプレシアに反感を抱き、最後の最後でアリシアの亡骸を奪った挙句プレシアだけ虚数空間に叩き落したこと。
アースラにいる間、話し合う内になのはとフェイトと仲良くなったこと、少しでもなのはの近くにいたくてこの世界に残ると決めたこと。
ほんの数日の間の出来事が頭の中を走り抜けた。
「……無粋な奴め」
ハカイダーは、自分を狙うものの気配をすぐ近くに感じ取り、思い出に浸るのを止めた。
それは、ほんの3m離れたところにいた。
「拾った恩を仇で返すとは……!」
「俺を拾ったのは貴様ではない。アルフだ。それに、あの時「消えろ」と言ったはずだ!」
「虚数空間を落ち続け、私はたどり着いたのだ」
それは身に纏っていたローブを派手に脱ぎ捨てた。
そこにいたのは、体の各所が金属と融合したプレシアであった。
「アルハザードに! そしてそこで私は私を強化改造した!!」
「醜さに磨きを増したようだな」
「ほざけ!」
プレシアは右手の爪をハカイダー目掛けて振り下ろしたが、ハカイダーには殆ど効いていなかった。
そして、ハカイダーの左ボディーブローが、プレシアのみぞおちを貫通した。
「な、何故!?」
「アルハザードの技術を妄信する余り、魔法を使おうという発想が出来なかったようだな」
「有り得ない! 堕天使が滅びた都市、「ジーザスタウン」の技術を使ったというのに……」
「……俺は、その「ジーザスタウン」で造られた」
「何!? では貴様は……!」
「アルハザードとやらの出身というわけだ」
ハカイダーはプレシアの喉元を掴み、こう言った。
「俺は破壊する者……、裁く者だ!!」
更に、一気に首を引き千切った。
「うごあ―――!」
止めに、左手に持っているプレシアの首を自分の頭に叩きつけた!
「へべぇ!!」

280 :黒の戦士〜ペペロンチーノ号リリカル奇談〜:2008/06/05(木) 23:11:21 ID:cJPnBV7t
プレシアの頭を砕き、ハカイダーはペペロンチーノ号に戻ろうとしたが、その直後に自分に向けられる拍手に気付いた。
「レジアス・ゲイズか……」
「ほう、わしの名を知っているとは」
ハカイダーはプレシアの亡骸に一度目を向けてから、こう答えた。
「プレシアとやらと、時折会っていただろう?」
「知っているのか?」
「俺は少しの間だけ、時の庭園にいた。そのとき、お前らしき男がプレシアと会っているのを遠目で見ていた際に、リニ巣が教えてくれた」
「盲点だったな。最高評議会殺害後にどこに姿をくらましたかと思ったら……」
「なぜ、あの女と会っていた? リニスがお前のことを「時空管理局の凄くえらい人」と言っていた。何の目的で時空犯罪者であるあの女と接触した」
「簡単だ……。より強い力を得るためだ。時空管理局は常に人材不足だ。より強力な装備でそれを補うことの何が悪い?」
「そのためなら、次元犯罪者とも手を組み、見返りに見てみぬフリをするというのか」
「当然だ。さっきも言ったが、我々は常に人材不足なんだよ。社会正義のためには仕方のないことなのだよ」
それから、レジアスの演説が延々と続いた。
ハカイダーはそんなレジアスの姿を、グルジェフと重ねた。
その一言、一言がハカイダーの精神にともった怒りの炎の燃料となった。
「同じだ、お前も」
「何だと!?」
「『さいこうひょうぎかい』やあの女と同じように、お前は……醜い!」
「き、貴様ぁ!」
「お前が正義なら……俺は悪だ!!」
ハカイダーの鉄拳が、レジアスを吹き飛ばした。
直後、武装局員たちが大挙して押し寄せた。
レジアスが血反吐を吐きながら勝ち誇っていたが、局員たちはデバイスをレジアスだけに向けた。
唖然としていたレジアスは、すぐに我に帰ってわめいたが、そのまま局員たちに連行された。
「どういうことなんだ……?」
ハカイダーは、近くにいた局員の一人に話しかけた。
「実は、レジアス中将の不正や背任行為がある筋からリークされたんです……」
あのレジタンスの一人に似ていたその局員は、リークされた情報を事細かにハカイダーに伝え、その場を去った。
「……とんだ社会正義だな」

281 :黒の戦士〜ペペロンチーノ号リリカル奇談〜:2008/06/05(木) 23:11:59 ID:cJPnBV7t
ペペロンチーノ号に戻った直後、なのはたちが駆け寄った。
「ハカイダーさん、大丈夫だった?」
「さっき、武装局員たちが大勢来たけど、何があったの?」
ハカイダーは、一人で行動していたときの時の一部始終を教えた。
ユーノは、うな垂れていた。
「ハカイダーさん、さっき、これからどうするかを話し合っていたの」
「どうするんだ?」
それを答えたのは、スコットであった。
「メタルクローに狙われている以上、この場に残るのは危険だから、この港を離れることにしたんだ」
「……」
「そこで追っ手をまきやすくするために、ペペロンチーノ号に残って一週間の間ルコントの船と行動を共にするチームと、こちらが連絡するまで台北に滞在するチームの二つに分けることにした。ホテルの方はルコントが手配してくれた」
「ペペロンチーノ号に残るのは?」
「私とアルだ」
「台北に行くのはナナミに、俺となのはか」
ハカイダーが呟いた直後、ルコントが口を開いた
「君への目付け役として、トーマスとユーノ君も同行する」
「……」

数十分後、準備が終わり、ペペロンチーノ号はルコントの船と一緒に港を出た。
なのははハカイダーが操縦するギルティーに、ナナミたちはルコントが調達したタクシー(代金は向こう持ち)で台北へと向かった
先に出発したギルティーが追っ手を釘付けにしている間に、ナナミたちを乗せたタクシーは悠々と高速道路経由で台北へと向かった。
追っ手を適当にひきつけた後、ハカイダーとなのはを乗せたギルティーは、猛スピードで追っ手を振り切り、一般道を突っ走った。
幸い、それ程混んでいなかったため、スムーズに走れた。
「何とかまいたみたいだね」
「後は、この道を加速していくだけだ」
一路、台北へ。


台湾の中枢、台北。
そこは中華特有の危険な香りがする大都市。
されど、ソドムでもゴモラでもない。
ソドムとゴモラとは違い、あの街は腐ってはいない。
そんな街にハカイダーたちは滞在することとなった。
そこで待ち受けるもの、それは……。
次回「今日は何色」
ハカイダーとなのはは歩く核弾頭につき、自爆、被爆、御用心。

282 :黒の戦士:2008/06/05(木) 23:13:41 ID:cJPnBV7t
投下完了。
今回も短かった……。
後、レジーの扱いがアレですが、気にしないでください。

283 :一尉:2008/06/06(金) 11:38:42 ID:wc7X9r37
レジー支援

284 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/06(金) 12:01:42 ID:fFCpGvlg
GJ!
このハカイダーは、なかなか良いですね。
続きを見てみたいです。

285 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/06/06(金) 18:57:47 ID:QKoHu0/r
十九時十分から投下します。

286 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/06(金) 19:11:31 ID:QKoHu0/r
 霧が立ち込め、むせ返るような水の匂いが鼻腔をついた。もう既にこの濃霧のお陰で服はびっしょり濡れていたし、
代えの衣服もこの分では駄目になっているだろうな、と男は判断し、脇を歩く妻の手を取った。
妻は色素の薄い髪を揺らしながら、はあ、と溜息をついた。小柄な女で、見れば歩くのも辛そうだ。
男は口を開き、妻へ声をかける。

「なぁ、やっぱりお前はスクライアの里に残ってきたほうが良かったんじゃないか? ユーノも産まれたばかりだ、やっぱりお前が――」

「私が後ろを守らなかったら、誰がドジなあなたのフォローをするんですか? 今日だって危うく山火事に――」

妻の可愛らしい見かけとは裏腹に辛辣な突っ込みに、男が堪らず悲鳴をあげた。
尻に敷かれているらしい。男は長身であり、見かけは厳めしいものだったが、意外と気が弱いのか言い返せないでいる。

「わ、わかったわかった。俺一人じゃどうにもならないのは認めるよ、けれど――」

「この旅で二人とも死んだら、あの子一人残されるって? そうならない為に、私がいるんじゃない」

明るい口調で暗い可能性を斬って捨てる妻に、男は敵わないなあ、とぼやいた。
どうも、自分が最悪の可能性ばかり考える間に、彼女はその千倍の打開策を考え出せるらしい。
つくづく、彼女には助けられてばかりだ。
彼女は、辛辣な言葉を言う。しかし、そのくせ、誰よりも夫の身を案じているのがわかった。
だからこそ、男はきつい一言であっても受け入れ、鷹揚に構えることができる。
今、二人――この年第一子ユーノ・スクライアを授かったスクライア夫妻は、とある遺跡の調査、発掘に赴いていた。
遺跡の名は、無い。
無名寺院、それが遺跡の通称であり、幾多の冒険者、遺跡荒らしを葬り去ってきた場所だ。

曰く、旧暦の史跡。

曰く、怪物の住む古代遺跡。

曰く、古代ミッドの遺失技術の保管庫。

もし事実ならば、それは大きな価値のある遺跡だ。
当初男は妻と子を残してこの学術的価値のある遺跡に挑もうとしていたが――妻に引き止められた挙句、ずるずるとついて来られてしまった。
なんとも、父としての威厳に欠けるなあ、と思う。

そのときである。
魔法による透過視界が、巨大な人型を捉えた。全長6メートルほどの、巨人。
手には――銃器か。細長い筒状の武装を持っている。
濃霧に紛れて、砲火が飛んだ。
すぐさま散開し、飛んだ二人のいた場所を、高初速の砲弾が襲う。地面が砲弾の前にずたずたに裂け、土煙があがる。
男はすぐさま、手近な岩をミッド式の円陣で加速させ、弾丸として撃ち出す準備をした。
一瞬足が止まる男目掛け機関砲が乱射される。弾丸の雨が霧を引き裂いて接近するのを感知するものの、男は動かない。
むしろ熱を込めて呪文を詠唱し続ける。

迫りくる弾丸の嵐を女の障壁が全弾弾き、かん高い音を立てた。
弾かれた砲弾が無茶苦茶に木々を分解するだけに終わり、男の詠唱が終わった。

「すまん、待たせたっ! スターダストフォールッッ!!」

環状魔方陣が人間の胴体ほどの直径の岩塊を恐るべき加速で撃ち出し、巨人の正面装甲を打ち砕かんとする。
脚の無限軌道を回転させ避けようとする巨人を、女のバインドが捕らえ固定。
巨人の高出力の四肢をもってしても引き千切れない、強力な拘束だ。
直撃――経年劣化でぼろぼろになっていた装甲を岩塊が叩き割り、駆動系に致命的なダメージが与えられた。
火花を噴いて行動を停止、地面に倒れ込み動かなくなる巨人。
機能停止を確認すると、子供のようにはしゃいで男が駆け寄った。
妻がその行動を咎め、大声を張り上げた。目鼻立ちの整った顔の眉根がつりあがる。
だが、そんなことは知ったことではない、と男はご機嫌だ。

287 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/06(金) 19:12:44 ID:QKoHu0/r
「見てみろ、凄いぞ。こいつは傀儡兵じゃない――全身質量兵器だぞ。多分無名寺院に近づく侵入者を迎撃するようにプログラミングされてたんだ。
おそらく、遺跡の怪物、っていうのはこいつの事だよ――っておい、どうしたんだ? 何で怒ってる?」

女は呆れて溜息をつくと、ぼそりと呟いた。

「ユーノにあなたのそういうところが遺伝されてないことを祈るわ。まったく、どうしてスクライアの男はみんなこうなのかしら?」

「性(さが)なのさ。どうも遺跡に弱いみたいだな、うちの一族は。それはともかく、こいつが守護してるってことは、ここは本物の遺跡ってことだ。
こいつ同様のトラップもあるだろうし、お前は外で待ってて――」

すぐさま大声を張り上げて女が夫を制止した。
何を馬鹿なことを言い出すのか、と。

「冗談言わないでくださいっ! あなた一人に任せたら、命が幾つあっても足りないわ。
私も行きます。しっかりエスコートしてくださいね、あなた」

参ったね、と言いつつ、男は息子の顔を思い浮かべて少し憂鬱になった。

(そういえば、ユーノは俺よりもこいつに似てるような……)

ひょっとしたら、家の中で俺は尻に敷かれっぱなしなんじゃないか、と思い、男はがっくり項垂れた。
まあ、既に尻に敷かれていると言えなくもないが。
苦労しそうだ、と思いながら男は無名寺院の扉へ手をかけた。
開かない。どんなに力を入れても、上手く開かず――扉の脇の蓋が開き、空間モニターが開かれた。

「ん? ああ、生体認証システムか……まだ機能してるなんて、すごいな」

「感心してないで」

「はいはい、と」

男は手馴れた様子で魔法を発動――スクライア一族が得意とする遺跡のトラップ解除の為の術式が、あっさりとシステムを掌握した。
む、と男が呻き、気難しそうな顔をし、妻が夫の奇妙な様子に困惑して声をかけた。

「どうしたの?」

「いや、この遺跡……何かの封印施設みたいなんだが、トラップの類が見当たらない……妙だな。途中で抵抗が無くなったんだ。
まるで侵入者を、迎え入れるみたいに――いや、待っていたのか。ここは」

夫がぶつぶつと何事かを呟くのを、妻は考え込みながら聞いた。
迎え入れる、ということは、この遺跡――無名寺院は訪れる者を選別していたということか。
ということは、だ。

(私達は、選ばれた? でもどうして)

こればっかりは、考えてわかるものではない。ふうむ、と思案しつつ、夫が開けた扉にするりと足を踏み出す。
中は空調施設が機能しているようで、息苦しい感じは皆無である。
天井や床――遺跡というよりも神殿のそれ――は、白い玉石を塗り固めたもので覆われ、どういう理屈で動いているか不可解な燐光に照らされて輝いている。
ともすれば、目がちかちかしそうな光景だが、嫌な感じはしなかった。
壁にはめ込まれた結晶体が緑色に光り輝き、二人を奥へと誘った。
困惑したように男が言った。

「どうする? 奥に何か在るようだけど……」

すう、と息を吸い込み、女は応える――それが、唯一の答えだと信じて。
囁くように小さな声が放たれた。

288 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/06(金) 19:13:55 ID:QKoHu0/r
「行きましょう。多分、あなたの推測どおり選ばれたなら――」

愛する夫の眼を見つめ、言った。
息子にも遺伝した色素の薄い髪が、背中で揺れる。
探検の為に短く切り揃えられたそれは、男にとって何よりも愛しい妻の一部だった。
あるいは、自分がもっとしっかりしていたなら、他の部族の女と同じように髪を伸ばせたのかもしれない、と思うと心が痛んだ。

「――先に、何かが待っている筈だから」


 導かれた先は、どうにも祭壇じみた場所だったが、奇異な印象を二人に与えた。
封印に用いられているのは、魔導技術的な魔力障壁と抗磁圧を応用した科学的な障壁の二つからなる防護壁で、戦艦の砲撃でも崩れそうにないほど強固だ。
辺りを装飾する物質は材質もわからない未知のもので、それだけで二人の知的好奇心をそそる。
純白に光り輝く床を土と泥で汚すのに抵抗感を覚えながらも、男は妻の手を取り、足を中央の祭壇へ向けた。
じじじ、という抗磁圧特有の空気の焦げ付くような音を耳にしながら、そっと祭壇の石碑に手をかざした。

「こうか……?」

空間モニターが幾つものウィンドウと共に表示され、何処となく読むことの出来る文字列が表示される。
感動に、男が叫んだ。

「すごい、このシステムは古代ミッド語で運用されてるんだっ! こいつの言語システムだけでも、大発見だぞ!!
保存された完璧な古代ミッドチルダ語なんて、そうそうないからな」

「あなた」

「ああ、今解除する」

空間モニターを眺めて、感涙を浮かべながら石碑に触れていくとウィンドウが切り替わり、主の操作を待ちわびた、
というふうに入力モードに変わる――障壁の解除を要請。
こういったプログラムの分野では、スクライア一族に勝てるものはいない。
彼らは魔法の行使にデバイスを介さなくていいほど演算が早く、デバイスによるそれ以上の速度で魔法を展開できた。
ある意味デバイス並みかそれ以上の演算回路が詰まった頭脳であり、脳味噌を最大限に使う必要のある旧時代の管理システムの掌握にも手間取ることはなかった。
にわかに抗磁圧の音が止み、続いて物理現象と化した魔力障壁が徐々に薄れ、消えた。
エネルギー供給を失った魔力素がきらきらと粒子状に滞空する様は、見事の一言に尽きる。

「止まったな……これで、中央にあるのが何なのかわかる」

「そうね――これで……」

二人が身を乗り出して覗き込むと、そこには――。

掌に乗りそうな大きさの、紅い宝玉と、一振りの短剣があった。

「これが? ずいぶんと小さいな」

そのとき、宝玉が唐突にミッド語を表面に浮かべ輝き、機械音声を放った。
ミッドチルダ語の韻韻とした響きが、耳を打った。

『Good morning,master. What is my name?』


289 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/06(金) 19:15:38 ID:QKoHu0/r
魔法少女リリカルなのは 闇の王女 第七章前編

 長い金髪をなびかせ、女は歩く。呼吸を落ち着つかせ、ルビーのような目を閉じその部屋の前に着いた。
かつん、という自身の靴音すら心臓の鼓動を引き上げ、どくんどくん、と脈打つ。
時空管理局の制服に身を包んでも、心の動きだけは抑えられないようだった。
疑問符が胸いっぱいに押し寄せ、感情を昂らせる。

(どうして? ユーノ)

おそらくはその大半が意味の無い問いなのだとわかっていても、女――フェイト・T・ハラオウンには考えるのを止めることはできなかった。
スクランブルエッグのようにぐちゃぐちゃの思考が、まとまってくれない。
不安、焦燥、怒り。
ネガティブな感情が混ざり合い、はっきりと言いたいことも見えてこない。
だから、艦内のユーノ・スクライアにあてがわれた部屋の前に来ても、フェイトはノック一つできずにいた。
勇気を出してそろり、と白く長い指を部屋のブザーに乗せ掛けたとき、声変わりもしていないような青年の声が響いた。

「フェイトかい? どうぞ」

思わず素っ頓狂な声をあげる。どうしてわかったのか。

「ユ、ユーノ気づいてたの?!」

「それは、ね。一応結界魔導師だし、自分で張った結界に誰か入ればわかるさ」

淡々とドア越しに語るユーノの言葉に、フェイトは目を見張った。
慌ててあたりを見回せば、それとわからぬような細かな文字で侵入者探知用の結界が書かれていた。ミッドチルダ式でもベルカ式でもない、異様な象形文字。
これは何なのか、と問うと、穏やかな声で返答が返ってきた。

「ん、即興で作った簡易結界。今手が離せないから、入って」

すすめられるままに、自動ドアを開けて入室した。小ざっぱりとした部屋で、装飾らしい装飾は無い。
スクライア一族の青年はマントを外套かけにかけ、軽装の法衣姿で何事かを端末で調べていた。
空中展開式モニターには複数のウィンドウが開かれ、高速で情報処理がなされている。メモを取る様子も無く、ユーノは膨大な情報を目で追い頭脳に収めているようだった。
それにしても、殺風景な部屋だ。書籍と衣服、端末以外私物らしいものが見当たらない。
もっとも、これは当然のことである。何故なら、今二人はXV級次元航行艦『クラウディア』の艦内にいわば客としているのだから。
フェイトは精鋭部隊『機動六課』の隊長として、対ロストロギア任務に乗艦していた。
ユーノは本局からの派遣魔導師――たった一人の魔導師が増援として派遣など異例であるから、ユーノがコネを使ったのだろう――としてクラウディアに来ていた。
名目は違えど、二人に与えられた任務は同質のものである。

――ロストロギア<聖王の揺り篭>攻略。

現時点で、時空管理局が全力で鎮圧に乗り出した事件が、これだった。
おそらく時空管理局創設以来の大事件だった。起動したロストロギアの攻略、鎮圧を主眼とした編成であると聞かされていたが、
フェイトを含め、上層部からのお達しをまともに信じている者は皆無だった。

時空管理局本局で起こった異例のクーデター。教導隊を含める全ての部隊で勃発。

脱走――XV級次元航行艦からなる艦隊の離反。

奪われた大量破壊魔導兵器――<アルカンシェル>。

犯行声明――<ベルカ解放戦線>によるもの。

旧ベルカ王国領の聖王による統治の再現を願う者たちの集まり――<海>の提督までが加担していたことが判明する。
さらに、八神はやて二佐からの報告――聖王教会騎士カリムの利敵行為。
カリム・グラシアを義理の姉として持つヴェロッサ・アコースの逃走――局員六名を殺害し、何処とも知れぬ次元世界に消える。
重要レアスキル保持者の相次ぐ離反に、魔導師至上主義を掲げる3提督派閥は混乱に陥り、クーデターのダメージのせいもあってか、
時空管理局次元航行艦隊の指揮は、実質的にクロノ・ハラオウンが背負う羽目になっていた。
フェイトの義理の兄である彼は、きっと、文字通りその身を削って職務を全うせんとしているのだろう。


290 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/06(金) 19:16:41 ID:QKoHu0/r
(お兄ちゃんは……無茶をし過ぎる)

ブリーフィングで顔を合わせたときも、クロノは厳粛な態度を崩そうとしなかったが、それが砂上の楼閣のように脆いものであることを
フェイトは本能的に悟っていた。義兄は、おそらく今この瞬間も復讐に燃える女――フェイトの友、高町なのはのことで心を痛めている筈だ。
兄は、思えばなのはに恋焦がれているところがあった。初めて出会ったときから、それは続いているのだと思う。
たとえ、彼女がどんなに変わり果てようと、止まらぬであろう愛。
ユーノの推測では、なのはに本格的な戦闘術を教え込んだのは、クロノだという。
それが事実ならば――フェイトは、思ったことを口に出した。

「ねえ……ユーノ。お兄ちゃんは、どうしてなのはを止めてあげなかったのかな。何時も、思うの。
どんなにひどいことをされたって、なのはは、なのはだって。なのに、復讐なんてこと、止めもせずに、逆に手伝いをするなんて……」

フェイトから見れば、クロノの行為はなのはを死地に走らせるものでしかなかった。
どう足掻いても絶望的な戦いに、たった一人身を投じる彼女のことを案じるならば、してはならぬ行動のようにフェイトには思えてならなかったのだ。
だが、ユーノ見解は違った。淡々とした声音ながら、初めて画面から顔をあげ、フェイトを見て言う。

「それは君の考え違いだよ、フェイト。クロノは何時だって生真面目で、馬鹿なだけだ。
彼は――きっと、なのはの願いを叶えてあげることでしか、自分の思いを伝えられなかったんだと思う」

(僕と同じように、ね)

言外にそう含みながら、ユーノは儚げに笑った。ひどく不吉なものを見る者に覚えさせる、不穏な笑みである。
その笑みを目にしたフェイトは、全身の毛が逆立つのを感じた。
ぽつり、と友人に向けて言葉を放つが、それが彼の心の奥に届いているとは、到底信じられないのが不思議だった。

「ユーノ……?」

「ねえ、フェイト。僕はこう考えたんだ――今にして思えば、<ジュエルシード>が地球にばら撒かれて、僕となのはが出会ったあの日から
全ては始まっていたんじゃないかって。レイジングハートが彼女の手に収まったあの日から、こうなることは運命づけられていたのかもしれない。
僕には決して扱えなかったあのデバイスが――両親が唯一僕に残してくれた宝物が、魔法を初めて使う彼女に馴染んだこと自体が、不自然だった。
勿論、こんなのは非理論的な考えだよ。でも、レイジングハートは特別だ」

突然とつとつと喋り始めたユーノに困惑したフェイトは、ただ黙って頷くのみだ。
管理局制服の襟元を右手でぎゅっ、と掴み内心の動揺を悟らせまいとする。

「あのデバイスは、<無名寺院>と呼ばれる場所で僕の両親が見つけた、名前のないデバイスだった。
そのとき初めて、父さんと母さんはそれに名前を与えたんだ――不屈の心、<レイジングハート>と。
不思議な、本当に不思議なことだったよ――あの娘の心のあり方を体現したような名前だったから――」

奇妙な確信が、フェイトの胸にも飛来した――おそらく、運命じみた神の手が働いたとしか思えない何かが、ユーノの言葉にはあった。
きっと、ユーノは後悔しているのだ。あの日、彼女に、高町なのはという平凡な少女に力を与えてしまったことを。
そう思ったから、問う。

「力を与えてしまったことを、後悔しているの? ユーノ」

いいや、とユーノはかぶりを振り、応えた。
レイジングハートと同じ色の――黄金と赤に彩られた短剣が煌き、ユーノの腰で振動し始める。

「後悔なんて、したって遅いさ。何も戻ってこない。だから――」

質素な黒塗りの鞘ごと短剣を引き抜き、そっと右手で触れた。
奇妙なことに、短剣は蠢いていた。鋼とは異なるもので出来た剣が、意思をもって脈動するかのようだった。
その奇妙さに、目を引かれたフェイトは、じっとそれを見つめた。
鋼でない、むしろレイジングハートの本体に似た赤いルビーのような材質。
武器と言うよりも、装飾品のように思われた。

「――僕は、僕なりに戦うさ、フェイト。君達、機動六課とは別のやり方で、なのはの為に」


291 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/06(金) 19:18:49 ID:QKoHu0/r
 次元航行艦アースラ改――時空の狭間を無音で航行する船は、対<揺り篭>戦の準備を、最終段階まで進めたところだった。
戦闘準備は完了し、後は主の命令を待つのみ。
管制人格<オモイカネ>は高町なのはの一挙一足にまで注目し、その鋼鉄の船体が唸りをあげるのを今か今かと待ち続ける。
そのブリッジで、静かに儀式が執り行われようとしていた。
黒衣の女と紫の髪の少女、そしてその召喚蟲が立ち、円陣を組んでいく。
これは、戦に臨む前の最後の仕上げ――女がもう戻れないかもしれないからこその、儀式だ。

(失ったものの、帳尻を合わせる――殺してやる、スカリエッティ)

少女――ルーテシアが、静かに殺意に燃えるなのはに向け、声をかける。
服の裾を引っ張られ、首を向けると、何処か今までと違った彼女がいた。

「ルーテシア……?」

「なのはは……帰ってくる?」

心臓を抉られたような痛みが胸に広がり、苦いものが舌に広がるような幻覚を覚える。
生きて帰る事など、微塵も考えていなかった。それでも、優しい嘘を紡ごうと言葉を発した。

「うん、必ず――」

「嘘……なのは、死にたがってる」

今度こそ、心臓を射抜かれたような幻痛がなのはを襲った。
どうやっても、逃れられないものだった。

「え……? どうして、そんなこと、言うのかな」

「本当のこと――アスクレピオスも、ガリューもそう言ってるし――」

なのはの顔を正面からきっ、と見据えルーテシアは常に無表情を保ってきた顔を、悲痛に歪めた。
今にも泣きそうなくらい、涙が目に溜まっている。
心が、痛む。その原因が、己なのだと自覚すればするほど、痛みが胸を駆け巡る。

「――私が一番、なのはの考えてることがわかるから――」

「死に……たい? 私が?」

(復讐の後、何が残る? 多くの命を奪ってきたお前に、生きる資格など有るのか――?)

それが、高町なのはを蝕む虚無の声だった。
復讐をやり遂げた後の自分は、一体なんなのだろうか。祝福などされることもない闇の塊が、この世界にいて良いのだろうか。
決して解けぬ呪縛が、そこに在った。もがけばもがくほど、締まっていく呪いの腕だ。

(存在意義すら、お前には残っていない――壊れた心を引きずって、何処に行く?)

虚無が、虚ろな呪いの言霊を吐き出し、ただただ<無>という概念を心に撒き散らしていく。
抗うこともできずに、暗黒の淵で泣き続ける自分が、いた。

「そっか……私……こんなに……」

涙が、零れ落ちる。復讐以外に寄る辺のない、己の虚ろさに気づいてしまったから。
復讐鬼でも、闇の王女でもなんでもない『高町なのは』に戻って、泣いていた。
強固に鎧を纏った心が、崩れ落ちていく。
如何なる鎧を纏おうと、心の弱さは隠せない――。
崩れ落ち、床に膝をついたなのはに向け、ルーテシアが手を差し伸べ言った。

292 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/06(金) 19:20:59 ID:QKoHu0/r
「でも……覚えていて欲しいの。なのはは、一人じゃない、って。私も、クロノも、<オモイカネ>も、なのはの昔の友達も、きっと……なのはを――」

意思と確信を秘めた瞳が、力強く伝えていた。
どんな苦難も、きっと乗り越えられるという強い意思が、なのはを奮い立たせた。

「――大切な人だと、思っているはずだから・…」

虚無の声は、もう聞こえない。
なのはは、らしくもなく声をあげて泣き――忌々しき虚無の腕から、解放された。

 儀式は驚くほど静かに、ルーテシアとガリュー、<オモイカネ>の見守る前で執り行われた。
それは、力の開封を意味する――禁断の力、ブラスターモード。

「我、使命を受けし者なり。契約の下、その力を解き放て――風は空に、星は天に。そして、不屈の心はこの胸にっ!!」

最初の、魔法を手にしたあのときとまったく同じ呪文を声高に叫びながら、レイジングハート・エクセリオンを天にかざす。
虹色の光が溢れ、なのはの身に黒き鎧を纏わせ、金色の杖がその手に顕現する。槍の如く尖った形状の先端を天に向け、なおも唱えた。
深紅の宝玉が光り輝き、機械音声で主に応じる。

『Stand by ready』

あの言葉を。非力な自分が、魔法と出会ったという、奇跡を。
栗色の長髪が巻き起こる風に揺れ、黄金の光が黒い甲冑に新たな息吹を与えていく。
荘厳な光景に、思わずルーテシアは目を見開いた。
自分の知らない、復讐とは違う感情を胸に抱いたなのはが、まったく別の神々しい空気を放っているのだ。
曲線を描く甲冑が、さらに分厚くなり、黒い翼はより大型のものに。手を覆う篭手は鋭く尖った鉤爪状に。
顔を覆う仮面は鋭角的シルエットを持つようになり、頭部全体をすっぽりと飲み込み防護する。

「この手に魔法を――レイジングハート、セットアップッッ!! ブラスターモード、解放っっ!!!」

『Set up』

巨大なテールスタビライザーが尻尾の如く腰から生え、先端についたアンカークローが蛇の如くのたうち、
レイジングハートは黒い増加装甲とドラムマガジンを備えた、異形の杖へと変わる。

「行くよ、レイジングハートッッ!!」

『All right,master』

呪縛を打破り、今ここに、新たな翼を持ってなのはは翔け出す。
鳥のように。
あの日、手にした力と共に。

ルーテシアは決意する。
たとえどんな苦難に遭おうとも、母を助け出そうと。
その小さな身体に宿るのは、とても大きな――きっと、誰にも壊せない絆の力。

蒼穹の下、二人は駆け出した――互いの終着点に向かって。

お姫様は飛ぶ、悪魔の翼で憎い憎いあいつを斃す為。

煉獄で得た力を胸に秘めて、金色の杖で全てを薙ぎ払おう。

小さな、小さなお姫さまは異形の従者の肩で母を想う、束縛から救い出す為に。

ちっぽけな力でも、誰かを救えると信じて。

天よ、見るがいい。

二人の姫君の、最初で最後の全力を。

293 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/06(金) 19:23:48 ID:QKoHu0/r
投下完了です。
ここからが対<聖王の揺り篭>戦ですー。

ブラスターモード1にご注目くださいませー。

ではでは。


294 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/06(金) 19:39:15 ID:FQhTzHbS
GJ!!です。
RHと一緒にあった短剣をユーノが持っているようですがどんな武器なのか気になります。
ジュエルシードで強化されたなのはのブラスターモードですか・・・怖いw

295 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/07(土) 00:23:26 ID:JzzfQcYt
お久しぶりです。
インディなスカこと、スカ博士の奇妙な冒険第二話が出来たのですが40分から投下してもよろしいでしょうか?


296 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 00:26:56 ID:cVhJcDCp
待ってるぜ!

297 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 00:30:22 ID:Oum2JM9d
アームドデバイス(バット的な意味で)レイハさんの受難待ちだぜ!


298 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/07(土) 00:40:30 ID:JzzfQcYt
そろそろ時間なので投下を開始します。
容量は12KB。支援をお願いします!
段々インディになっていきます!




 足を組む。
 本を開いて、文章に目を通す。
 優雅に紅茶を啜る。
 悲鳴が聞こえる。
 鼻腔を擽る香りに酔いしれる。
 さて問題だ。ここに一つ間違いが存在する。
 それはなんだろう?

『Heeeelp!(助けて!)』

 正解。
 横の悲鳴だ。

「うるさいよ、レイハ」

 僕は読んでいた本を一旦閉じて、横に目を向けた。
 テーブルの上に乗っけた金色の杖が、電子音声で悲鳴を上げていた。
 ちなみに名前はレイジングハート、すなわち不屈の魂という意味らしい。フルネームで呼ぶのは面倒なので、レイハと僕と博士は呼んでいる。
 そんなご大層な名前のデバイスが、みっともなく悲鳴を上げる様は聞いててとても見苦しかった。

「不屈の魂なんだから、悲鳴なんて上げちゃ駄目だよ」

『I am in the crisis situation!!(私は危機に晒されています!)』

「なーに、怖がる必要はない。少しいじるだけさ、少しだけ、ね」

『No!(イヤー!)』

 レイハを握り締め、片手に工具を持った博士がニヤリと笑う。
 とてもとても楽しそうだ。
 使い道を調べるために博士にいじらせてるけど、博士のストレス解消に使うのもいいかもしれないね。しばらく好奇心が満たせるだろうし。

「ふー、紅茶が美味しいなぁ」

 ホテルのルームサービスで届いた紅茶を飲みながら、僕は読み掛けの学術書に意識を戻すべく本を開いた。
 その時だった。
 コンコンコンとドアを叩く音がしたのは。

「ん?」

「おや、誰かな」

 博士が工具から手を離し、掛けていたゴーグルと上げて、片手に愛用のデバイスを嵌めた。
 僕も本を閉じて、肩を鳴らしながら、手の指をゆっくりと折り曲げる。魔力を体に通し、脳内に数個の術式を意識し、保存する。
 目を合わせる。
 こういう時の僕と博士は以心伝達も同然だった。
 何度も経験しているのだ。ルームサービスなどに偽装して襲撃されたことが。
 何故か知らないが偶然的にも幾つかの盗掘団や秘密結社の末端などを叩き潰してしまい、僕と博士は命を狙われている。
 ホテルの一室にロケットランチャーを撃ち込まれたこともあれば、乗っていた船に穴を開けられて沈みかけたこともあり、砂漠のど真ん中に置き去りにされて死に掛けたこともあった。
 故に僕と博士は油断せずに備えることにしている。


299 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 00:41:12 ID:BK4I6VeG
支援

300 :スカ博士と奇妙な冒険 ◆CPytksUTvk :2008/06/07(土) 00:41:34 ID:JzzfQcYt
 
「どっちが開ける?」

「私が開こう」

 僕はすかさず魔法で援護出来るような位置に移動し、博士はデバイスを構えながらドアに手をかける。

「誰かね?」

 博士が静かに声を上げた。

「私です。ユーノ・スクライアさん、ジェイル・スカリエッティさん」

「ん? この声は――」

 博士が怪訝な顔をしつつ、ドアを開いた。
 そこには一人の女性が立っていた。
 紫色の長髪、美しく整えられた美貌、皺一つないビジネスーツを着た女性。
 それは。

「時空管理局、遺失物管理部のウーノです」

 何度も二人が顔を合わせたことのある女性だった。

 何度となく僕らへ依頼してきた女性。
 それが彼女だった。





 スカ博士と奇妙な冒険

  実験1 魔法の石を手に入れろ パート2


301 :スカ博士と奇妙な冒険 ◆CPytksUTvk :2008/06/07(土) 00:42:52 ID:JzzfQcYt
 
「紅茶でいいですか?」

「あ、お構いなく」

 ホテルの一室。
 書類を手に持ったウーノさんがホテルの部屋に備え付けられたテーブルの前に座り、彼女の前にルームサービスで頼んでいた僕の紅茶を置いた。
 そして、僕と博士も席に座る。ちなみにレイハはうるさいから待機モードにして、ポケットの中に放り込んである。

「えっと、今日来た用件は、あのメールですよね?」

 つい数日前に届いた時空管理局からのメールを思い出す。
 優先度の低い遺跡や文献などの調査にフリーの探索者が雇われることは珍しくない。
 各地上の治安を護る地上部隊は年中人手不足らしいし、各次元世界の調査を行う海の部隊は必然的に優先度の高い遺跡や事件などの調査するのが精々。
 そのお陰で僕らのような人間が仕事にありつけるわけだけど、皮肉さを感じるね。
 と、そんなことはどうでもいいわけで。

「用意が出来たんですか?」

「ええ。例の調査対象の遺跡に関する書類が用意出来ましたので、お渡しに来ました」

 そういってウーノさんが僕たちの前に書類を置いた。
 書類に書かれているのは無数の情報とファイルにクリップされたのは遺跡と思しき場所の写真、コピーされた文献の写真と地図。
 僕らがそれを手に取るのを確認するかのように、ウーノさんが口を開いた。

「今回依頼するのは第87管理世界『パイレート』の遺跡です」

「パイレート?」

「ええ。詳しい情報はこちらの書類に記載してあります」

 そういってウーノさんは僕が持った書類の一枚を指摘し、僕はその書類に目を通した。
 第87管理世界【パイレート】
 文化レベルB 魔法技術C+。
 比較的レベルの低い管理世界の一つ。
 先住民のタイプはヒューマン。連盟への参加も同意されており、共通語が浸透している。
 調査対象の遺跡が存在している場所は寒暖差が激しい山岳地帯だという。


302 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 00:44:07 ID:GsXw4+Tr
しえーん

303 :スカ博士と奇妙な冒険 ◆CPytksUTvk :2008/06/07(土) 00:44:12 ID:JzzfQcYt
 
「山、か」

「正確には山を渡って、谷などの奥にあるみたいですよ?」

 博士に見えるように地図を指し示す。
 巨大な二つの山の地形の中心に走る巨大な谷、その傍にポツンと赤い点が記されていた。

「ふむ。何故か知らないが、凄い落下しそうな気がするな」

「ははは、もう三回以上落ちてるじゃないですか」

 一度は足を滑らせ山から落下。二回目は荒れ狂う竜から逃れるために崖からダイブ。三度目は船で川を渡っていたら先が滝で樽の中に入って生還などなど、それ以上は憶えていない。

「ふむ。確かにそうだったな。つまり、私達はもはや滑落のプロということだな?」

「落ちないに越したことはないんですけどねー」

「……安全に帰れるほうがよろしいと思うのですが」

 僕たちが笑いあう中で、何故かウーノさんが青い顔を浮かべていた。
 何故だろう?

「それではお引き受けお願いできますか?」

「あ、はい」

「断る理由は、ないな」

 ウーノさんの言葉に僕らは軽く頷いた。
 契約もしっかりしてるし、報酬も悪くないからだ。

「管理局は一ヶ月以内に何らかの成果が上がることを期待しています。もしも独自に遺跡内部の調査を完了させた場合にはボーナスも追加させていただきます」

「なるほど。美味い話だな」

「ええ。実績あるお二人の腕を見込んでの依頼です」

「嬉しいですね」

 ニッコリと僕は笑う。
 うずうずとスクライア一族の血が騒ぎ出すのを感じていたのだ。
 まだ誰も中を知らない遺跡。そこを探索し、謎を解き明かし、知り尽くし、財宝を手に入れる。
 なんという甘美な響きなのだろう。
 盗掘――いやいや、由緒ある考古学一族としての本能が騒ぎ立てるのだ。
 GOGOGO! と。

「では、私はそろそろ失礼させていただきます」

 ウーノさんは紅茶を半分ほど飲むと、相変わらず見事しか言いようのない動きで席から立ち、頭を下げた。
 単なる管理局員にしては徹底的に仕込まれている教育の良さに時々首を捻ることもあるが、それでも見ていて気分が良い彼女に今のところ騙されたこともないので、僕としては高評価に値する女性だった。


304 :スカ博士と奇妙な冒険 ◆CPytksUTvk :2008/06/07(土) 00:46:40 ID:JzzfQcYt
 
「今回もまた会えて嬉しかったよ、ウーノ君」

 博士が珍しく素直に笑みを浮かべて、ウーノさんにお世辞を言った。

「嬉しいお言葉をありがとうございます」

 ニッコリと営業用笑顔で答えるウーノさん。
 けれど、僕は気付いている。その頬が少しだけ赤らんでいたことに。
 とっても不思議なことなのだが、どうやらウーノさんは博士にホの字らしいのだ。
 初めて顔を合わせていた時に博士の顔に酷くビックリしていたし、もしかしたら昔の恋人にでも似ているのかもしれないなと僕は推測してるけど、口には出さない。
 だって僕はまだ子供だから、色恋沙汰に口を出してもいい歳じゃない。
 精々自他共に認めるこの変人な博士を頑張って射止めてくれと願うしかないね。

「ああ、そういえばあともう一つ渡すものがありました」

「え?」

 席を立ち、立ち去ろうとしたウーノさんが不意に思い出したように肩に掛けていたバックから一つの小さな手帳を取り出す。
 小さな手の平サイズの古ぼけた手帳。
 装丁は金属で出来ている骨董品らしきもの。

「無限書庫から先ほどお渡しした資料と共に発見されたものです。お二人の調査の手掛かりになるかもしれないので、お渡しするように預かっていました」

「ほう? 預かっても構わないのかね?」

「はい」

 ウーノさんが差し出した手帳を受け取る博士。
 パラパラとその中を見て興味深そうに息を吐いている。

「それではお二人共、調査のほどよろしくお願いします」

 そういってウーノさんは僕たちの前から立ち去った。




305 :スカ博士と奇妙な冒険 ◆CPytksUTvk :2008/06/07(土) 00:51:34 ID:JzzfQcYt
 
 僕たちの行動は迅速だった。
 事前に渡されていた準備金混みの前金で移動のための転送ポットの手配を行い、次元間を移動するための旅船などを乗り継いで、移動すること丸二日。
 僕と博士はパイレートの辺境地にある街【カイザル】へと辿り付いていた。

「思ったより活気ありますねー」

 古めかしい石造りの家などが立ち並ぶ中、開催されている市場。
 大きく伸びた道を住人達が歩き回り、楽しそうに買い物をしている。

「うむ。辺境の土地だから心配だったが、どうやら貿易などが上手くいっているようだな」

 時折道を徐行速度で走っているトラックなどを見かけた。
 古ぼけた車だが、排気口からは煙は出ておらず、水素発電なのが分かる。
 時空管理局及び連盟の管理下――つまるところ交流を得た時空世界には一定の技術協力が与えられる。
 元の文化を壊さぬ程度に、けれども彼らの文明が豊かになるように科学技術や魔法技術が給与されるのだ。
 そのことに少なからず反発は抱く管理世界は多いが、将来的にはプラスが多いメリットに頷かないわけがない。
 本来ならばまだ数百年は車などを持つことがなかったであろう文化に、トラックなどが走っている姿を見るとどこか違和感を覚えるのは僕が歴史を知り、過去を調べる考古学者だからだろうか。

「しかし、少し寒いね。レイハ、気温は?」

『――13℃』

 胸からペンダント状に下げておいたレイジングハートから電子音声で返答が来る。
 なんとなく声に元気がないような気がするのは気の所為かな?
 気のせいだよね。たかが博士にプログラムいじられただけだし、なんか悲鳴上げてたけど僕は無視して寝てたし。

「そりゃあ寒いわけだ。確かこの世界だとまだ春じゃないんだよね」

 よく見てみると、街の人々は皆マントやフードなどを羽織り体を護っている。
 いつものシャツの上に法衣姿だと寒いわけだ。

「博士ー、服とか買いましょうかって――あれ?」

 横を見る。
 そこには鼻を垂れた子供がほじほじと鼻をほじっていた。

「おいら、はかせじゃないよ?」

「見れば分かるよ」

 横から視線をどけて周囲を見回す。
 すると、すぐに見つかった。というか、特徴的な白衣は混雑の中でも目立つので分かりやすい。

「おーい、ユーノ君。こっちに来たまえ〜」

「なんですかー?」

 ブンブンと子供のように手を振る博士を止めるべく、僕は人ごみを掻き分けて迅速に駆け寄った。


306 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 00:54:05 ID:Oum2JM9d
ウーノさん支援

307 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 00:54:28 ID:0LhC+foa
支援いたします

308 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 00:55:23 ID:BK4I6VeG
じゃあ俺はユーノ君支援。

309 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 00:55:27 ID:qv2Y/KsF
支援

310 :スカ博士と奇妙な冒険 ◆CPytksUTvk :2008/06/07(土) 00:56:24 ID:JzzfQcYt
 
「ん? ここは」

「古着屋だよ。ここは寒いからね、服を買ったほうがいい」

 博士が居た場所、そこには無数の服や衣装が並べられ、吊るされた古着屋だった。

「丁度僕も提案しようと思ったところですよ」

「なるほど。いい判断だ」

「で、博士。なんか気に入ったのでもあったんですか?」

 服を買うだけならあんなに呼びはしない。
 濃厚な一年を過ごした仲である。僕は博士の思考パターンをある程度推測することが出来た。
 欲しいものがあった。
 だから金を持つ、つまり資金を管理する僕を呼んだのだ。
 まるで子供がお菓子を買って欲しいと親を呼び止めるようである。

「うむ。これなんてどうかね?」

 博士は飾られていた一つの帽子を手に取り、頭に被った。
 それは茶色い革で出来たハット。
 テンガロンハットによく似たデザインの帽子。

「似合っていると思いますよ、博士」

 正直言ってちょっとだけ悪役な目つきと紫色の髪をした博士が、被ると意外なほどにマッチしていた。
 変人からワイルドにランクアップしたかのような。

「なるほど。よし、それでは服を買おう」

「僕も買い揃えないと」

 僕と博士はそのまま古着屋へと突撃していった。

 そして、衣装チェンジである。

 僕が買ったのは法衣によく似た緑系のパーカーに、厚手のズボン。この地域ではポピュラーらしい良くなめした革靴に、首元を保護するためのベージュ色のマフラーに身を包んだ。
 博士は先ほどのテンガロンハットもどきに、同じ色の茶色いジャケット、厚手のジーンズに、これだけは古着屋ではなく持っていた分厚い革と厚みを持った安全靴を履いている。
 そして、その上から白衣。
 うん、白衣。白衣を取り除けばワイルド系な冒険者に見えるんだろうけど「これが私のトレンドマークだ!」と断固として脱がない白衣をジャケットの上から羽織っていた。
 趣味って大切だと思うけど、付き合わされる方は迷惑すると僕は思った。
 ……もう慣れたけど。

311 :スカ博士と奇妙な冒険 ◆CPytksUTvk :2008/06/07(土) 00:57:14 ID:JzzfQcYt
 
「それじゃ服も買ったし、移動用の車のレンタルと宿を探しに行きましょうか」

「そうだな。しばらくは文献を調査しよう」

 準備が出来たからといって速攻で遺跡に突撃するのは自殺志願者だ。
 こういうのには犯罪計画のように入念に下準備が必要だ。
 貰った書類や資料にはもう目を通したけれど、地元でしか手に入らない文献や未だに地形が変わってないかなどの確認も必要なのである。

「聞き込みと文献の調査で、大体一週間ぐらいかければいいかな?」

「そうだな。後実際の地形の確認や視察もあるから、二週間ほど準備期間にしよう」

 そういって博士が顔を上げる。
 街のはずれに見える巨大な山。見上げるほど高い山脈に博士は目を細めた。

「あの規模なら往復には最低5日はかかるな」

「魔法生物もいないとは限らないですしね」

「しかし、歯ごたえがありそうだな」

「ですね」

 久々に大物の臭いがする。
 博士もまた楽しげに笑みを浮かべる。

「さあ頑張ろうか、ユーノ君。この世の謎は全て私たちに暴かれるためにあるのだからね」

「頑張りましょう!」

 山脈から視線を逸らし、僕と博士は意気揚々と滞在するための宿を探しに歩き出した。

 しかし、その時僕と博士は気付いていなかった。

 古着屋を出てから、宿に泊まるまでズッと僕たちの後ろを付けてきた一人の少女と一匹の獣のことに。



 そして、一週間後。

 宿の一室で文献を読んでいた僕たちの部屋に、突如石槍を持った無数の人影が襲撃してきたことから事態は転がるように進み始めた。


312 :スカ博士と奇妙な冒険 ◆CPytksUTvk :2008/06/07(土) 01:00:18 ID:JzzfQcYt
投下完了。
今回は、
レイハさんようやく名前が分かる。
ウーノさん登場。
スカ博士ついにインディ化の三本立てでお送りしました。
次回よりインディジョーンズらしくアクションが入ります。
アームドデバイス、レイハさん(ただしバット的な)も次回から輝ける太陽の如く振るわれることでしょう。
魔法少女? なにそれ、おいしーの?
という疑問をはさみつつ、近いうちに魔法少女も登場予定。
次回もスカ博士とユーノと可愛らしいレイハさんで、冒険に出てもらいます。

支援ありがとうございました!


313 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 01:05:47 ID:lp4B39mB
あくまで白衣にこだわる博士GJ!

314 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 01:09:37 ID:cVhJcDCp
ヒロインはウーノさんとレイハですねGJ

315 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 01:11:37 ID:qv2Y/KsF
GJ!!です。
ウーノさん登場w記憶が無いことを利用して手に入れようとするのかな?www
そして、フェ○トそん登場フラグがw

316 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 01:14:04 ID:9Y0qmHWp
GJでした!
博士とユーノが逞しくなってました。
このユーノは司書長に収まる器じゃない気がするw
そんな安全な生活で満足できる性格じゃなさそうです。
クロノが無謀だと言うだろうけど、スリルを求めてるんだなw

レイハさんは相変わらず可愛いです。和みますね。
そのうちスカ×レイハなカップリングになりそうです、
二人のやり取りを見てると。
フェイトはどうなるのか。

317 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 01:34:53 ID:7ZMUq8gu
レイジングハート既に杖じゃなくなってるのかw

318 :名無し@お腹いっぱい:2008/06/07(土) 10:26:54 ID:B6UWITNK
船に穴開けて沈められたり砂漠に置き去りにされたりのくだりでダーク・ピット思い出したw
あれか、ウーノはインディスカ創ったとこと同じ生まれだったりしてそれ繋がりで知ってたりするんだろうか。
・・・でもそれだと邪教集団に生贄にされかけたり罠にかかって串刺しになりかかったり大量の蛇に囲まれて苦労したりしてw
でも3作目みたいな結末になりませんように・・・

ユーノも逞しいよ。というか黒っ!?
この分だと無限書庫に勤めても「図書館から出るんだ!」とか言いそうだ。
そしてレイハ、合掌。

この分だとインディスカ×ウーノ、ユーノ×フェイトとか?

319 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 11:31:18 ID:T+v+6PWd
たくましい二人にGJですw
続きが気になるぜw
ところで、リリカル無双氏のSSに対抗したくなって無双OROCHIとのクロス書いたんですけど投下良いですか?

320 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 11:36:45 ID:T+v+6PWd
書き直しを発見したんで夜に出直しますーorz

321 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 11:41:39 ID:5X7Tslct
GJ!
RHがアームドデバイス化かよwww

322 :一尉:2008/06/07(土) 11:43:30 ID:zgvlsQkv
出直し支援

323 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 17:13:19 ID:aaAsc0Rw
GJ実際この二人がここまで合うとは思わなかったw

324 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 19:56:03 ID:WdUmGR/N
バイタリティ溢れんばかりですねwwwww

さて、新規の投下予告をしたいのですがどうでしょうか?
デビルメイクライとのクロスなんですが。

325 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 19:58:03 ID:bkp/ABGj
投下お待ちしています。

326 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 20:16:36 ID:Njy/7srB
支援

327 :324:2008/06/07(土) 20:25:40 ID:WdUmGR/N
では、8時40分過ぎあたり投下したいと思います。
今回は最初のさわり部分だけですが。ちなみに小ネタで49代目スレ680で投下したものの正式版という形になります。


328 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/07(土) 20:58:19 ID:WdUmGR/N
では投下したいと思います。コテはリリカルなのはDHSとさせていただきます。


崩れゆく庭園。崩壊した破片が全て虚無たる空間へと投げ出されていく。
たった一人の母親の望みの結末。欲望の為に他を傷つける事を厭わなかった彼女「プレシア・テスタロッサ」の願いは打ち砕かれた。他でもない自らが『生んだ娘』をはじめとする正義の使者達に。
嘗ての平穏、失われた時間を取り戻すために、失われた都へ至ることは叶わなかった。だというのに、無へと落ち込む彼女の顔は穏やかであった。
その視線の先には、『娘』を収めたカプセル。愛娘と共に、というのはある意味救いだったのだろうか。しかしそれが分かることは無い。

「ずっと一緒よ・・・・・アリシア・・・・・・・・」
亡骸を抱え、落ちてゆく母。その首には、この世の物とは思えないほどに真紅に輝く宝石が輝いていた。
まだ平穏が崩れる前、娘が拾ってきた美しい鉱石。小さな子どもが面白がって拾ってきたものだというのに、それはプレシアの目を魅了した。そして終ぞ手放すことは無かった。

美しく、眩く、そして血のように禍々しくもある真紅の宝石。無に落ちゆく彼女の首元でそれは妖しく光を放っていた。

それの名は『神の石』

誰も気づきはしない。それが全ての始まりであり、新たな戦いを呼び、そして新たな伝説の幕開けになることなど・・・・・・・・・・・・・




遥か昔、地球は闇に覆われていた。人々の営みは表面上は穏やかに見えても、内では恐怖し己が無力さを呪った。

闇を生み出す存在、其の名は『悪魔』

闇に生き、生きる者の血を啜り、欲望のままに支配し、蹂躙する、遥か奈落の底『魔界』の住人達。

人々は恐怖し、抗った。だが、無力な人間に悪魔を滅するだけの力は無かった。ただ出来たのは、せめて一捻りに握りつぶされるのを防ぐ事のみ。そこに反攻は無い。ただひたすらの現状維持。だがそれが叶ったのは、魔界が本腰を入れない故であった。

そして約二千年前。歴史において『神の子』が誕生したとされる頃。闇は動いた。
魔界を統べる悪魔の中の頂点『魔帝 ムンドゥス』の大号令。

『今こそ地上を我らが悪魔の手中にせん』

人々は絶望した。多勢に無勢、抵抗も意味のない戦。かくして地上は闇に覆われ、人外達の園と化すはずであった。


329 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/07(土) 21:02:09 ID:WdUmGR/N
・・・・・・・・・・・・だが、その時奇跡は起きた・・・・・・・・・・・・・

そして、一つの伝説が生まれた。生を受けた己が世界を裏切り、正義に目覚め、弱き者の為に剣を振るった一人の悪魔の伝説が・・・・・・・・・・・・・・・・


“闇の剣士は立ち上がり、己と同じ名を持つ魔剣を手にされた。”

“魔帝の非道の振る舞いを、その刃で咎めるためである。”

“立ち上がる闇の眷属を討ち果たし、剣士は遂に魔帝と相対されたが、闇の剣士の力は魔帝の闇には遠く及ばず、一度は破れ、空に散った。”

“人々は祈りを捧げた。”

“空を覆う闇が晴れる時が来ることを信じ、讃歌を口ずさんだ。”

“その祈りこそは奇跡であり、力であった。”

“闇の剣士はその奇跡を受け甦り、魔帝を討ったのである。”

“剣士は言われた。闇は晴れた、と。”

“人々は歓喜し、剣士の名を永劫語り継ぐと誓った。”

“それこそがすなわち、偉大なる御名スパーダである。”



「ふぅ・・・・・・・・」
一人の男がテーブルに足を上げてだらしなく雑誌を読みながら座っている。
その足の置かれたテーブルはコクタン製の最高級品であり、絶え間なく室内に流れるハードロックのサウンドを響かせているのはヴィンテージもののジュークボックスである。
他にもドラムセットやビリヤード台など何でもかんでも置いてある室内は悪趣味であったが、そこにかけられた金は半端なモノではない。
「依頼がちっとも来やがらないぜ」
最も、この室内、いや、『店内』の内装をコーディネートした本人に今現在、金銭的余裕があるとは限らないのだが。

ここは『Devil May Cry』。ならずモノ達の吹き溜まりともいうべきスラム街の一角に位置する便利屋だ。
この真紅のコートを纏い、だらしなく雑誌を読み、デリバリーピザを貪る男、ダンテの経営する、裏の世界では名の通った店である。
曰く、喧嘩を売れば凶悪なマフィアすらも潰し
曰く、弾丸の雨の中を大剣一本で駆け抜ける
曰く、気に入らない依頼はいくら札束を積まれてもその首を縦に振ることはなく
曰く、悪魔・化け物退治の類はタダ同然でも飛びつく
数々の逸話を残すダンテだが、そのえり好みが激しすぎるのと、週休6日制を謳う自堕落っぷりにより、安定した収入は入らないのである。それに最近は『魔』がらみの仕事がなかなか来ないのも原因の一つである。

330 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 21:03:18 ID:NPgi40Lz
支援

331 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/07(土) 21:04:11 ID:WdUmGR/N
「トリッシュもどっかに行きやがったし」
外に出ている相棒の名を呟いた時だった。
「帰ったわよ」
正面の扉が勢いよく開かれ件の相棒が現れる。グラマラスな肢体にブロンドのロングヘアー。『人間とは思えない』雰囲気を醸す程の美女であった。
名はトリッシュ。とある事件をきっかけにダンテと出会い、そのパートナーを務めている。
「ダンテ、話があるわ」
歩みよるなり話を切り出すトリッシュ
「ヘイ、トリッシュ。帰ってくるなりいきなりそれかよ。文句の一つも言わせろよ」
「そんな場合ではないわね」
ダンテの抗議も軽く流され、さらに持っていた雑誌もすっ飛ばされる。
「なにしやが・・・」
「ダンテ、『時空管理局』ってしってる?」
続けられる言葉に逆らうのも無駄かと悟ったダンテは不貞腐れながらも答える。
「時空管理局?時空神像のメーカーか?」
おどけた様子で返すも、彼を見つめるトリッシュの目はふざけている時のそれでは無かった。
「面白いジョークだけど、この話は『お遊び』ではないわ」
その言葉に、場の空気が変わる。
「わかりやすく言えばね・・・・・・」

「再度、『孔』が開こうとしてるわ」
それは決定的だった。ダンテにふざけた様子は無くなり、その眼は・・・・・
「話を聞かせてもらおうか、トリッシュ」
「ええ」
・・・・・・狩人のそれであった。

「まずは、『ミッドチルダ』の話から始めましょうかね」





・・・・某日 城塞都市フォルトゥナ
その部屋には二人の男が居た。向い合う彼らには『友』という繋がりがあった。

「久しぶりだな・・・・・ダンテ」
「お前さんも元気そうだな。坊や(キッド)いや・・・・・・・・」

全てはここから始まる。次元を超えた、伝説の・・・・・



「・・・・・・・・・・・・・・ネロ」




Magical Girl Lyrical NANOHA −DEVIL HUNTERS−


332 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 21:04:45 ID:QhZY7/vD
同支援


333 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/07(土) 21:07:00 ID:WdUmGR/N
投下完了です。ありがとうございました。
DMC側は4寄りのメンバーで進めていきたいと思います。

そんでもってタイトルロゴなんぞも作ってみました

http://www2.uploda.org/uporg1468744.png.html

うpろだの方にうpしときました。PASSは半角で『devil』と打ち込んで下さい。


334 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 21:14:10 ID:qv2Y/KsF
GJ!!です。
プレシアママンが復活するかもしれないと言う時点で期待せざる得ないですw


335 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 21:21:56 ID:Njy/7srB
GJ!!
タイトルロゴとは気合入ってますなw
頑張ってくださいww

336 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 21:36:03 ID:AB2N0NBu
GJッス!!
ネロが出るっぽので期待させてもらいます。

337 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/08(日) 00:17:12 ID:ddFmrg5v
深夜ですがオメガ11には関係ないっ
と言う訳で今から投下してもよろしいでしょうか?

338 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 00:22:51 ID:g2FDPpR0
あなたに許されるのは投下するか、投下しないことをやめることだ。
つまり支援w

339 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/08(日) 00:25:44 ID:ddFmrg5v
>>338
<<だろうな、報酬上乗せだ>>

ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL


第11話 フレームアウト


悲鳴を上げる愛機――新たな鋼鉄の翼の出現。


――スカリエッティのアジト。
「――確定は出来ませんが、後者の方が可能性は高いかと」
「素晴らしい、早速追跡をかけるとしよう」
モニターに映る知的な雰囲気の女性――ウーノの言葉に、スカリエッティは楽しそうに言った。さながら、目当ての玩具が見つかった子
供のようだ。
そんな彼をあまり楽しくなさそうな表情で見つめる飛行服の男は、黄色の13。
「……で、本当に彼女たちを使うのか?」
彼が何を見つけたのかは知る由がない。それよりも、黄色の13としてはずっと気にかかることがあった。
彼女たち――自分がこの狂気の科学者に協力せざるをえない理由の一つが、関わってきた。
「おや、反対かね?さすがに教え子は可愛いかね」
スカリエッティは黄色の13の考えを見越したように言ってのけた。彼女たちの指導教官をやってくれるよう頼んだのはこの男のはずな
のだが。
「個々の技量は充分だが、ほとんどは連携がまだ未熟だ。武器が調整中の者もいる。出せるとしたら――そうだな、三人。クアットロ、
ディエチ、トーレくらいだ」
黄色の13は親指、人差し指、中指を立てて、彼女たちの中で実戦投入可能な者の名を上げる。決してこの世界の戦闘に詳しい訳ではな
いが、かつてエルジア最精鋭を誇った黄色中隊の長として養われた戦術眼は、嘘をつかない。だからこそ彼は、彼女たちに戦術を教える
教官となっている。
「ふむ……まぁ、君の言うことだから間違いは無いのだろうな」
スカリエッティも大して反対することなく、黄色の13の案に従った。
「しかし、君は出ないのかね?」
「確かに、出来ることなら俺も出たいんだがな……」
スカリエッティの問いに、黄色の13は本音を漏らす。愛機のSu-37は、慣らし運転も無しに激しい空戦機動を行ったためか、機嫌を損ね
ていた。普段ならば整備員たちが徹夜をしてでも本調子に戻してくれるのだが、ここに彼らはいない。点検程度ならガジェットがやって
くれるが、今のところ本格的な整備はマニュアル片手に自分でやらなければならなかった。
「案外慎重なのだねぇ……」
スカリエッティがボヤくが、黄色の13は無視した。
不調な機体で上がる真似は、リボン付き相手にやりたくない。そうすることで、撃墜された僚機があった。
すまん、と黄色の13は胸のうちで今回同行できない彼女たちに謝り、すまなかった、と空に散った僚機に謝った。
ただの僚機ではなかった。彼女は自身が教官だった頃からの付き合いで、安心して背中を任せられる不動の二番機だった。
だから――今度は守り抜きたい。この科学者の目的が何であれ、俺を教官と慕ってくれる彼女たちを。
決意を胸に秘めて、黄色の13はモニターを見上げる。すでに発進したガジェットと無人機たちは、目的地へ着々と進行していた。


340 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 00:26:32 ID:g2FDPpR0
支援する。ガッツリ稼ぎな!

341 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 00:26:48 ID:iLc/trA/
支援〜!

342 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/08(日) 00:27:14 ID:ddFmrg5v
「点検中止、ただちに出撃準備だ!弾薬搭載を急げ!」
格納庫に飛び込むようにやって来たメビウス1の言葉で、F-22の精密点検中だった整備員たちはわらわらと動き出した。
事の始まりは、休暇を満喫していたエリオとキャロが偶然、ロストロギア・レリックのケースを複数持った女の子を保護したことである。
レリックの存在を嗅ぎつけたスカリエッティが、ガジェット及び戦闘機を送ってくることが懸念されたためメビウス1にもコクピット待
機が命じられた。
リボンのマークの入ったフライトジャケットを脱ぎ置き、サヴァイバル・ジャケットを羽織ってヘルメットを手にF-22のコクピットに座
り込むと、ヘリポートからヴァイスの操縦するヘリが発進するのが見えた。なのはとフェイト、シャマルも搭乗しているはずだ。
整備員たちは大急ぎでF-22の点検パネルに繋がれていたケーブルを引っこ抜き、機材を撤収させると共に弾薬搭載を始めた。専用の運搬
車に載せられたミサイルが、整備員たちの手でF-22のウエポン・ベイに搭載され、機関砲弾も積み込まれていく。
機関砲弾は満載、ウエポン・ベイに短距離空対空ミサイルのAIM-9サイドワインダーが二発搭載されたところで、司令室のはやてから報告
が飛び込んできた。
「ロングアーチよりメビウス1」
「こちらメビウス1、なんだ?」
「案の定敵が出現や。現場の地下水路のガジェットT型が二〇、海上からはガジェットU型が六〇、敵戦闘機と思しき機影が六、接近中」
「早いな……分かった、出撃する」
敵の出現が予想より早い。やむを得ず、メビウス1は中距離空対空ミサイルのAIM-120AMRAAMの搭載を諦めることにした。
――なぁに、その分機体が身軽だからな。
プラス思考に考えて、メビウス1はエンジン始動、F-22を格納庫から出すと滑走路端に到着するとただちに離陸。敵の反応がある海上方向
に機首を向け、一気に加速していく。
自機が捉えたレーダー画面とデータリンクシステムで六課の司令室から送られてくる情報を照らし合わせて、メビウス1はガジェットと
戦闘機が二手に分かれて行動していることに気づく。速力に差がありすぎて、共に行動したのでは効率が悪いのだろう。
「……メビウス1、聞こえますか?こちらスターズ1、ライトニング1と共に行動中」
通信機に、なのはの声。サブディスプレイに視線を落とすと、市街地方面から二つの光点が高速で接近してくる。
「ガジェットの相手はこちらがします、戦闘機の相手を」
「了解。さっさと終わらせて俺たちも休暇と行きたいもんだ」
「そうしましょう。それじゃ、また」
「OK、交信終わり」
これで後顧の憂いは無くなったと見るべきだろう。メビウス1は目標を戦闘機に絞り、速度を上げた。海上であるから、F-22の強みであ
る音速巡航が使えるのはありがたい。
南西方向に飛行しているとAPG-77レーダーに反応があり、メビウス1は視線をレーダー画面に落とした。機影は六、IFF(敵味方識別装置)
は敵の判定を下す。
黄色の13は出てくるだろうか――いや、今は目の前の敵に集中だ。
余計な思考を振り払い、メビウス1はF-22を敵編隊に向けて突っ込ませる。
雲を突き抜けると目の前に広がるのは群青の世界、そしてその中にぽつりぽつりと浮かぶ敵機――デルタ翼、カナード翼の組み合わせのあ
のシルエットはラファールに違いない。あらゆる任務に対応し可能で、しかも安定した性能を発揮するマルチロールファイターだ。
ラファールもこちらに気付き、各々二機一組の編隊でメビウス1のF-22に挑みかかってくる。
「メビウス1、交戦!」
来い、と胸のうちで叫ぶ。相手は多数だが、メビウス1は引くつもりも負けるつもりも無かった。

343 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/08(日) 00:28:18 ID:ddFmrg5v
「所属不明の、航空機だと――?」
管理局、地上本部。地上の治安を預かるレジアス・ゲイズ中将は、自分の娘であり副官でもあるオーリス・ゲイズからの報告を受け取っていた。
「試験飛行中のゴーストアイがレーダーにて発見したそうです。現在海上方面より市街地へ向け飛行中…多数のガジェットを伴っています」
「むぅ……」
最近になって多発するようになったロストロギアを狙った無人兵器による破壊活動は、彼の手元にも届いていた。同時に、それと行動をともに
する無人戦闘機のことも。
渋い顔をするレジアスに、オーリスは報告を続ける。
「あの小娘連中……機動六課は当然、迎撃に出るのだろうな?」
「はい――これもゴーストアイからの情報ですが、すでに六課の所属の魔導師たちは出撃したそうです。おそらくは"彼"も」
「そうか……ゴーストアイ様々だな」
先日発表したばかりの新兵器開発の一環として配備した高度な電子戦機、コードネーム"ゴーストアイ"の性能に感嘆としつつ、レジアスは一つの
決断を迫られていた。
――どうする?新兵器はまだテスト中だが……あの連中に恩を売っておくか。"彼"をこちらに誘ういい機会になるかもしれん。
「……イーグルとドラゴン、出撃可能か」
レジアスが呟くように発した言葉に、オーリスははっと顔を上げる。その表情には明らかに、驚きが満ちていた。
「可能ですが……報道発表と相容れないことになります」
対外的な評価を気にして、反対の姿勢を取る彼女の言葉をレジアスは遮る。
「構わん、マスコミ連中など放っておけ。これ以上、奴らを地上で好きにさせてはならん」
「……ハッ。ではただちに」
敬礼してその場を後にするオーリスを尻目に、レジアスはふと、窓の外に広がる青空を眺めた。今回の新兵器の活躍次第では、もうあの空も本局の
空戦魔導師たちだけのものではなくなる。
魔力資質の是非に固執する本局は必ず何か言ってくるだろうが、知ったことかとレジアスは胸のうちで吐き捨てた。強力な魔導師たちを揃えた機動
六課でさえ、戦闘機を運用しているのだ。こちらはそれに倣ったまでの話である。
数分後、首都クラナガン郊外の臨時野戦飛行場では、下された出撃命令に従い鋼鉄の翼たちが空に舞い上がろうとしていた。
「対空戦闘用意、対空戦闘用意。イーグル、ドラゴン、各隊はただちに発進、不明機迎撃に当たれ。繰り返す、対空戦闘用意。イーグル、ドラゴン
各隊はただちに発進、不明機迎撃に当たれ――」

六課の各分隊がそれぞれの敵と戦っている中、はるか上空でほくそ笑む影が一つ。
白いマントに、身体にフィットし青と紫で彩られた戦闘服。影の正体は、丸眼鏡をかけた女性だった。
"単独行動は基本的に厳禁だ"と妹たちに戦術のイロハを教える男は言っていたが、彼女はあえてそれを無視した。理由は単純明快、つまらない
からだ。
「あらあら、やっぱりガジェットじゃあダメね。戦闘機の方も、時間の問題……」
目の前に展開されたサーチャーに映るのは、周辺一帯の地図に行動中のガジェット、それに無人戦闘機の位置。だが、ガジェットはその数を勢いよく
減らしていき、戦闘機も一機、また一機と消えていく。相手が悪いのは理解しているつもりだったが、この早さは予想外と言っていい。
「でも……もうちょっと、お付き合い願おうかしら?」
妖しい笑みを浮かべて、彼女――クアットロは腕を掲げて、自身の能力を発動させる。
「ふふ――クアットロのIS、シルバーカーテン。嘘と幻のイリュージョンで、踊ってもらいましょう」
あらゆるセンサーを幻惑させる幻の影が、空中に現れる。本物と違わぬ幻たちは加速し、戦闘空域に突っ込んでいく――。

344 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 00:28:34 ID:g2FDPpR0
こんなことはしてられない、さあ出撃だ! 支援w

345 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/08(日) 00:29:41 ID:ddFmrg5v
一方で、メビウス1は最後の一機となる敵機ラファールの後方上位に辿り着いていた。
攻撃する前に、搭載されている全ての火器を統括するウエポンシステムを確認。AIM-9は残弾無し、機関砲弾のみが残り二〇〇発だった。
多いように思えるが、愛機F-22に搭載されている機関砲はM61A2、俗に言うバルカン砲である。毎分六〇〇〇発と言う連射速度は捉えた目標をズタズタ
に引き裂くが、引き金を引きっぱなしにすればあっという間に弾切れになってしまう。メビウス1はこれを敵機との距離をぎりぎりまで詰めて、確実に
命中させることで弾薬の節約を図っていた。
「とは言え、こうも動き回られるとな……!」
目の前のラファールはメビウス1はすでにミサイルを撃ち尽くしたことを読んでか、その機動性を最大限に生かして逃げ回る。
上昇、宙返りをしながらメビウス1のF-22はラファールの後ろに食らいつくものの、まだ撃たない。今発砲したところで弾丸はまっすぐ飛ばず、下に流
れていってしまう。
宙返りを終えて今度は右旋回、ラファールは逃走を企てる。だが、その瞬間をメビウス1は待ち構えていた。
――ここだ!
ラダーを踏み込んで、F-22の機首を右に振り向かせる。その先にはラファールの無防備な横腹があった。ただし、機関砲の着弾地点を読んでメビウス1
は照準を機体一機分ずらして、引き金を短く引く。F-22の右主翼の付け根にある銃口に一瞬光が走り、放たれた赤い曳光弾がラファールの胴体を撃ち砕
く。穴だらけになったラファールはそのまままっすぐ飛び、次の瞬間爆発して散った。
ふぅ、とメビウス1は一息ついて、酸素マスクを外した。ひとまず襲来した敵機はこれで全て撃墜したことになる。
「ロングアーチ、こちらメビウス1だ。敵戦闘機を全て撃墜――以後の指示を頼む」
「ロングアーチよりメビウス1、お疲れ様。ガジェットがまだちょこっと残っとるけど、なのはちゃんたちなら大丈夫やろ。ヘリの護衛の方に…え、何
やて、これは!?」
突然、通信機で連絡を取った司令室のはやてが何かに驚いている。サブディスプレイに視線を落とすと、データリンクシステムにより投影される全体の
状況図に大きな変化があった。
「……!?」
たまらず、メビウス1は絶句した。数を大きく減らしていたはずのガジェットたちの群れが、多方面から数十機もの大編隊となって現れた。
そのうちの一つの編隊、二〇機ほどがこちらに向かってくる。残弾の乏しい現状では、いくらガジェットとは言え相手にするのはごめんだった。
「多いな……うちが出る、メビウスさんはただちに戦闘空域から離脱を」
「了解――何、八神が出るのか?」
はやてからの予想外の指示に、メビウス1は戸惑わざるおえなかった。彼女はてっきり後方で指揮に徹するタイプだと思っていたのだが。
「広域攻撃って言うてな、こういう大部隊を相手するにはうってつけの魔法を使えるんよ。だから早く退避を」
「ああ、了解した……っ!?」
突然、機体に大きな衝撃が走る。すぐさまメビウス1は計器に視線を送り、各部に異常が無いか確認する。
――主翼、よし。ラダーよし、ウエポンシステム、オールグリーン。エンジン…くそったれ!
機体に異常を示す赤いランプが、航空機にとって心臓と言えるエンジン部に点灯していた。
そうしているうちに、F-22は姿勢を崩す。身体が浮くような感覚がして、失速したことが分かった。
「メビウスさん!?」
通信機からはやての悲鳴のような声が入ったが、答える暇は無い。失速したF-22はそれまでの勢いが嘘のように高度を下げ続ける。このままでは海面に
ダイブする羽目になってしまう。
低い唸り声を上げながら、メビウス1は操縦桿、ラダーを巧みに操ってどうにか機体を安定させようとして、エンジン部の異常の正体に気付いた。
何らかの原因で内部の圧力が低下し、エンジンが異常燃焼を起こしてしまったのだ。普段なら双発ゆえどちらか片方が停止してももう片方で飛んでいら
れるのだが、よりにもよって今回は両方ともが一度に停止した。

346 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/08(日) 00:31:00 ID:ddFmrg5v
「――こちらメビウス1、エマージェンシー!エンジンが両方ともフレームアウト……くそ、言うこと聞けよ!」
「何やて!?ロングアーチから各隊、メビウス1の救助に向かって、今すぐ!」
「こちらライトニング1……行きたいけど、ガジェットが!」
「スターズ1、同じく――ええい!」
だが、突然大量に現れたガジェットたちに、一番近いなのはとフェイトは行く手を阻まれていた。新人たちも奇襲を仕掛けてきた召喚師と融合騎からレ
リックを巡って激しい攻防戦を展開していた。そもそも市街地にいる彼女たちでは間に合わないだろう。
要するに自分で何とかしなくきゃならん訳だな。それにしても、精密点検を中止したのはやはりまずかったか――?
ひとまずメビウス1はエンジンを再始動させることにした。電力供給は風圧でジェネレータが回っているので、もうしばらくは大丈夫だ。問題は接近し
つつあるガジェットの方だ。失速したF-22はもはや的に過ぎない。
エンジン・スロットルレバーを押し下げて、アイドリング状態に。次は燃料供給を断ち、排気温度が低下していくのを見計らって再び供給を開始。
「メビウスさん、今急行中や。それまでなんとか……」
「分かってる、戻ったら危険手当くれ」
心配そうな声を上げるはやてにあくまでも余裕を見せたメビウス1は作業を続行。地上と違って空は空気が薄かったが、一旦火を失ったエンジンに再び
火が灯る――左エンジンのみ。
露骨に舌打ちし、それでもメビウス1は左エンジンだけでもと再始動。エンジン・スロットルレバーを軽く押すと機体が加速し、姿勢制御も徐々に安定
してきた。だが、吹き上がりが悪くあまり推力が上がらない。どうにか水平飛行を維持するのが精一杯だ。このままでは、ガジェットに追いつかれる。
「…………なんだ、敵!?いや…違う」
その時、突如としてレーダーに反応があった。正面から八機、高速で接近してくる。これが敵機であれば万事休すだったが、IFFは味方と言う判定を下し
ていた。
「ロングアーチからメビウス1、助かった。どこの部隊だ?」
「……こちらロングアーチ、はやて。おかしいな、管理局にこんなコードの部隊は…」
「こちら、空中管制機ゴーストアイ。ロングアーチ及びメビウス1に告ぐ」
二人の会話に突然割り込みが入る。やけに渋い男の声だった。
――待て、今こいつはなんと言った?空中管制機だと?
ミッドチルダにそんなものはないはずだが、とメビウス1が首をかしげていると、一時方向に先ほどレーダーに捉えたものと思われる八機の戦闘機の編
隊が――なんだって、戦闘機?しかもあの可変翼は間違いなく……
「トムキャット!?」
F-14トムキャット艦上戦闘機。デジタル制御された可変翼によりあらゆる空域で優れた運動性能を誇り、レーダーも強力なものを搭載している機体だが、
そんな代物が、何故このミッドチルダの空を飛んでいるのだ。
「本空域での戦闘指揮はたった今から、機動六課より地上本部へと移った。メビウス1はただちに退避せよ」
ゴーストアイは一方的にそう告げて、通信を切った。サブディスプレイを見ると、F-14とガジェットの編隊はすでに交戦を開始していた。情勢は明らか
にF-14の方が有利だった。
訳も分からず、しかし機体の不調を抱える今のメビウス1には何も出来ず、ただ帰路に着くしかなかった。

347 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 00:31:56 ID:g2FDPpR0
イジェ−クト! 支援

348 :名無し@お腹いっぱい:2008/06/08(日) 00:32:20 ID:6XhPjcus
チョッパーか、それともPJか!?対空支援!

349 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/08(日) 00:33:15 ID:ddFmrg5v
投下終了。
と言う訳でレジアス中将の新兵器は戦闘機と電子戦機でした。ゴーストアイは
AC6からゲスト参戦ってことで。

350 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 00:34:36 ID:jtYDdiLR
タリズマンか!ともあれGJ!

351 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 00:51:00 ID:v6hPd5ZJ
GJ

レジアス良いチョイスじゃないかw

352 :OROCHI:2008/06/08(日) 01:07:06 ID:4ITt5NX2
職人の皆さんGJです。

昼ごろに言っていたOROCHIとのクロスが完成したのですが投下よろしいですか?

353 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 01:17:19 ID:KP1fuJGq
ktkr!

支援します!

354 :OROCHI:2008/06/08(日) 01:19:28 ID:4ITt5NX2
0076年 4月

『レリック回収事件』が幕を閉じ、何時もより穏やか風が吹き始め。その事件において力を尽くした時空管理局の部隊・機動六課は役目を終え。
春風が吹くなかで解散することになった……。

皆を召集しての挨拶も済ませ。
勝利の鍵達が別れと新な門出を祝うために手加減なしの最後の模擬戦を開く。

なのは「全力全開!行くよ!」
スバル「はい!!行こう皆!」

が、そこに新な嵐が迫っていることを誰も気付きはしない……。


シャマル「何かしらこの力……」
今まさに模擬戦が始まろうとしていた何かの変化にシャマルは怪訝な表情を浮かべて呟く。

ヴィータ「何だよ、今からって時に……。」
楽しみを邪魔され、ヴィータは不満そうに声をかける。
フェイト「っ……空が……」

一同「!?」
フェイトの言葉に皆は空を見上げる、すると先程まで晴天であった天候は突如として雲り初めていた……。
それもビデオの映像を早送りするかのように。

なのはは、それがただの天候の変化でないことを悟っていた。

……一体何が起きているの?

なのは「……っ!?」
曇り空を見上げていたなのは、それに皆は。更に訪れた変化に目を見開く。
何……あれ?

それは雲りだした空に大きな穴がぽっかりとあき、辺りの大気を巻き込むように渦を成し初めていた。

そして……。
その渦から紫色の光が注がれ、さらに地震に似た大きな揺れが起きる。

はやて「何や……何が起こって…………皆、とにかく飛ん−−−−。」
リイン「はわ、皆さん早く!」

シグナム「くっ!?」

地面がバウンドしているような感覚にはやては皆に空を飛ぶように促すが足が地面を離れる刹那、光が身体を呑みこんでしまい。皆の意識はそこで途切れてしまう。

そのまま光はミッドチルダ全土を呑み込んでいく……。




355 :OROCHI:2008/06/08(日) 01:21:06 ID:4ITt5NX2
※海上隔離施設

ギンガ「何……この光?」
チンク「引き寄せられている……?」


※聖王教会

クロノ「……次元震に似ている。これは貴女の能力にありましたか?」
カリム「いえ、こんなことが起きるなんて……。」

そして、こことは違う場所で。彼女達の姿を水晶球に映し出して眺めている男がいた。

???「ククク、強者よ。集うが良い。」
男の名は魔王・遠呂智。
太古、遠呂智は、境界無く世界に乱を招いた罪により、永劫の生、果てることのない罰を科された。

仙界に幽閉され業苦を与えられ、ゆるゆると悠久を生かされる。
周りの者から永遠に忌み嫌われながら……。

それを見ていた妖魔・妲己は遠呂智を手引きし、仙界から脱走させた。

そして。遠呂智は三国志、戦国史、ミッドチルダ。
時代、国、境界すらも超越した異世界を創り、そこに猛者を集結させた。

遠呂智の目的はただ一つ……ただ一つの目的のため。
すべてを戦いへと呑みこんでいった。

遠呂智『強者達よ、我に挑め。』

リリカル無双OROCHI−導入−




356 :OROCHI:2008/06/08(日) 01:24:06 ID:4ITt5NX2
※宛城

なのは「ここは一体……」
光が晴れ、視界が回復し。気付けば私は見知らぬ場所に居た。

辺りにはテントのような寝所や、木で造られた食糧庫が列び。それら全てを囲うように石造りの壁がある……。
それはまるで城壁のようで……。

ここはミッドチルダじゃないことは解る。やっぱりあの光が原因だね……。

??「ようやく来たんだ。待ちくたびれちゃったなー。」

っ!
背後からの声に振り向くと、そこには恐ろしいくらいの白い肌の女の人がいた。
辺りに人の姿は無く、この人が声をかけたんだと理解できた。

なのは「どうゆうことですか?」

今の言葉は何かを知っているような……そんな言葉。だから、私はレイジングハートを構えて彼に向ける。

なのは「私は高町なのは。お話、聞かせてほしいの。」

妲己「私は妲己。よろしくねー。」
可笑しそうに妲己さんは名乗り返し、瞬時に私の目の前に現れて大きな玉を私に放つ。

なのは「っ!?」
咄嗟にレイジングハートで払い、当たらずにすんだけど。
速い……。あまりの速さに私はそんな印象しか浮かばなかった……。

妲己「ホラホラ、どうしちゃっの〜?そんなんじゃ、貴女死んじゃうってば〜あははは。」
なのは「くっ!」

彼女から間を置くために離れ、私は空に飛び。アクセルシューターを出来るだけの数で放つ。

しかし、踊るかのように移動する彼女に魔力は一つも当たらない。

一つ、また一つ。
上、横、下。あらゆる方向から狙う攻撃を回避しながら彼女はアクセルシューターを破壊していく。
彼女は強い。でも、そのまま壊させはしない!

避けきる彼女の動きを目で追い掛け、私はレイジングハートを再び構える。

全力全開じゃいかないけど……私は捕まるわけにいかない!
なのは「ディバイーン……」
レイジングハートの先に魔力を集束し、私は出来る限りの魔力を彼女に放つ……。

なのは「バスター!!」
妲己「っ!気を取られ過ぎちゃった!?」
レイジングハートから放たれた私の魔力は彼女に襲いかかり、妲己さんは回避しようとしたけど……遅かった。



357 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 01:25:31 ID:KP1fuJGq
なのはさんvs妲己支援!

358 :OROCHI:2008/06/08(日) 01:27:53 ID:4ITt5NX2
ディバイン・バスターの光に包まれ。彼女の存在が消えたことを私は確認し、彼女がいた場所に近づいてレイジングハートを後ろに向ける。

妲己「非殺傷設定とかつまんないなぁ〜。でも、なかなかやるじゃない。なのはちゃん。」

なのは「私は時空管理局員だから!あグッ!?」

彼女は玉も動かしていないのに。腹部に重いなにかがぶつかる。
な、何……!?

なのは「かはっ、……け、結晶…」
足元から伸びるように飛び出した大きな紫の結晶体が私のお腹を殴ったんだ……。

妲己「はぁーい。で、これはオ・マ・ケよ♪」

楽しそうにそう告げ、彼女は二つの玉を私に向けている。
く、回避しないと……。

でも。頭でそう考えても、身体が思うように動かない。
先程の結晶体の一撃が身体に大きなダメージを負わせてしまった。

妲己「ああ、そうそう。今の攻撃で貴女の魔力をすこーし貰ったから♪」

なのは「そんな!?」

妲己「貴女達の世界じゃ、魔導師って魔力取られたら何も出来ないんだっけ?不便だねー♪」

なのは「魔力が無くても……戦え「無理無理」
妲己「貴女の今の身体じゃあ無理よ♪」

見ただけでそこまで知っている彼女の言葉に私は返せなくなる。

確かに、今の私は傷がある。でも、それでも……。

なのは「私は「貴女、飽きちゃったからもう寝ててよ♪」

彼女にそう遮られたのが耳に入った時。
あの時、私達を包み込んだような紫の光が魔力砲撃のように玉から放たれ。
直撃した。

なのは「きゃあぁぁぁっ!?」

身体を焼くような痛み。魔力砲撃とは違った衝撃が身体を、意識を襲い。音を立てて私は地面に倒れ込む。
妖しく曇った空を眺めるような形で……。それはここが異世界だと思わせて……哀しかった。

なのは「ぐっ……」

妲己「あららしぶと〜い。」



359 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 01:29:02 ID:KP1fuJGq
なのはさん負けた!?支援

360 :OROCHI:2008/06/08(日) 01:30:00 ID:4ITt5NX2
痛みを押し、なんとか逃げようと立ち上がる。けど、あの光の攻撃を受けたからか力が入らない……。
なのは「……この世界は……貴女たちが?」
妲己「ここは遠呂智様が創りあげた異世界。貴女達のミッドチルダの他にもいっぱい別世界からの人達が居るわ♪」

なのは「私達の他に……?」

妲己「そう。三国志と戦国、ミッドチルダが合わさった世界になったの♪」

なのは「一体なんのために……っ……う。」

妲己「貴女は知らなくて良いの♪な・の・はちゃん♪」
痛々しそうに言ってるのがかわいくて。つい、倒れている彼女のお腹を踏み付けちゃった♪

妲己「なのはちゃ〜ん。起きてる〜?」

呼び掛けてもなのはちゃんから言葉は返ってこなかった。
あらら〜、気を失っちゃったんだ〜♪

妲己「こっちはまずまずね。他は……と。」


※ミッドチルダ東部 森林地帯 スカリエッティのラボ跡付近


フェイト「やあぁぁぁっ!!」
??「ふんっ!!」

宛城にて、なのはが気を失った頃。

この森林において一人の魔導師と一人の武将がデバイスと戟を交わらせている。

エリオ「あの人、強い……。」
少し離れた場所でその闘いを見ているエリオ・モンディアルはそう呟く。

遡ること1時間前……。


あの光に包まれ。晴れ渡った時。

二人はこの場所に居た。そこに青白い肌の人の軍団が二人に襲い掛かり、それをフェイトが一蹴し。
終わったかに見えた……だが、フェイトの闘いぶりを見ていた赤い巨馬に跨がった一人の武将が彼女に勝負を挑んできたのだ。
呂布「俺は呂布、字は奉先。お前の名を教えろ。」
フェイト「フェイト、テスタロッサ・ハラオウンです。何故、貴方は私に闘いを挑むんですか……?」

呂布「フン……上なる獲物よ。俺を楽しませろ!!」

フェイトも、彼がただ者ではないと悟り。バリアントジャケットをソニックフォームへと変え。
プラズマザンバーを振るい。彼の戟によって弾かれて突き放される。
それを利用してフェイトは何度も何度も呂布に攻撃する。
それが何度も繰り返され、今に至っていた。


フェイト「くっ!!」
再び、突き放される形でフェイトは身体を吹き飛ばされる。



361 :OROCHI:2008/06/08(日) 01:33:32 ID:4ITt5NX2
本当に強い……。
奉先から発せられる力は半端な魔力砲撃よりも強力だ……少しでも気をやればあの戟で貫かれてしまう。
なら!!
フェイト「この間合いを利用すれば!!」
なんとか、態勢を立て直し。ソニックムーヴを使った速度を利用して馬上の彼の背中に回転斬りを放つ。
だが……。

ザンバーは空を切る。

呂布「俺をのけ反らせるとは……面白い!!」

呂布は身体を素早くのけ反らし、水平斬りを回避して愛用の方天画戟をフェイトに振るう。

エリオ「な……今のを避けた。」
確実に直撃すると思っていたのに……。

今までフェイトの闘いぶりを見てきただけにエリオの衝撃は大きいものだった。

フェイト「っ!?」
呂布の攻撃は鋭く、回避する先に方天画戟が襲い掛かってくる。

避け切れない!!なら障壁で!!

しかし、それは間違っていた。

呂布「おおー!!」

ガシャァン!!

呂布の一撃を受け、障壁は音を立てて破壊されてしまう。

フェイト「そんな!」
障壁を破壊するなんて……。

でもこれほど強力な一撃だから動きに隙が出来る。そこを今狙うしかない!

再び、私はソニックムーヴを使って奉先の頭上に飛びザンバーを構え。振るう。

でも、後で私はどこか彼を侮っていたんだと思うようになった。

奉先は私に追い付き。バリアントジャケットの襟元を開いている左手で掴んでいた。

呂布「寝ろ!!」

そう叫び、奉先は掴んだ状態で私は地面へとたたき付けられた。

フェイト「っぁあ!!」
地面が砕け散り、私の身体をいいようのない衝撃が襲う。

それ以外、わからない……。





362 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 01:34:32 ID:KP1fuJGq
○ゴキブリvsカミキリムシ×
ムシキング支援w

363 :OROCHI:2008/06/08(日) 01:37:54 ID:4ITt5NX2
エリオ「フェイトさん!!」
今の闘いを見るかぎりあの人にたたき付けられて大丈夫なはずはない。

ただ、それだけしか考えられなくて……。僕はフェイトさんの元に駆け寄る。


エリオ「フェイトさん!」
バリアントジャケットはもはやボロボロになり、フェイトさんは瞼を閉じて呼吸しているだけ。

気を失っているだけだった。
でもそれは僕達の終わりを意味していた。僕も闘える。
しかし、あの人に勝てることなど出来ない……。

兵士「ヘッヘッヘーようやく殺せるぜ!」
青白い肌の兵士達が口々にそう言いながら僕達に歩み寄り、刀をぎらつかせている。
兵士「死ねー!!」
シャリオ「っ……」
刀や槍を振り上げられ。
死んでもかまわない。フェイトさんを護る!そう決意した。

兵士「ギャアァ!!」
兵士「ウガァァッ!!」

え……。

僕はフェイトさんを倒したあの呂布が、戟で兵士達を貫くのを目撃する。

呂布「獲物に下らん真似をするなら……殺す!!」
兵士「ひ、ヒイぃ!」


見る者すべてを射殺してしまうような威圧に兵士だけじゃなく、僕も彼に恐怖を感じた……動けば殺されるとさえ思えた。


エリオ「な、何で……」
呂布「フン、殺すには惜しい獲物だからだ。フェイト・テスタロッサ・ハラオウン……俺の袖鎧を砕くとはな。」

なんとも嬉しそうに答える彼になんとなく誰かさんに似ているなと思う。

誰ナムさんだったっけ……?

エリオ「あの、僕たちはこれから「お前達はこれから魏に連れて行くそうだ。檻車に入っていろ……」

エリオ「くっ!」

そんなわけに行かない!!そう思って、僕はストラーダを起動しようとしたけど。
あの目が、僕を捕らえる……。



364 :OROCHI:2008/06/08(日) 01:39:02 ID:4ITt5NX2
呂布「小僧、良い目をしているがお前では俺を倒せん。」

エリオ「……そんなこと!わからないですよ!」
呂布「下らん」

エリオ「下らなくなんて「相手にならんからだ。」

……く!!
遮るような言葉にエリオは動きが止まる。
呂布「高順、連れていけ。」
高順「はっ!」
そして呂布の言葉通り、高順さんは用意していた檻車を僕たちの前に持ち出す。
フェイトさんを抱えて逃げ出すなら今しかない……でも。この人からは逃げられない。
どうすれば良いんだ?

呂布「俺には関係ないが。来たるべきときがずれくる。そのときは貴様の相手をしてやろう……。」

来たるべきとき?

呂布の言葉は、その時の僕にはそれが「その女の為に今は従え。」そういうふうに思えた。

フェイトさんを助けたい。でも、この人から逃げたくなかった。
複雑な気持ちが僕の心にあった。
恐らく、いや。今まで見てきた人達よりもこの呂布という人は強い。

彼の赤い馬が輝かしく見える。

エリオ「わかりました。フェイトさんは僕が運びすから……。」

また、フェイトさんを抱き抱えることになるなんて……。
ゆっくりと檻車に入り、扉が閉まろうとするとき。

僕は振り返る。

エリオ「呂布、僕は貴方を越えたい。」

呂布「フン、期待せずに待ってやる。」

そして、それらすべては妲己の手の平のうえに浮かべた鏡で見られてた。

妲己「エリオくんかわいい♪呂布さんやるじゃなぁい……これで二人のエースはこっちのものね。こっちは……」

鏡が映す人を切り替える。そこに映しだされていたのは……。

八神はやてちゃん。かぁ……。ま、手札はこっちにあるし小次郎さんに孫策さんを手伝わせよかな。
妲己「フフ♪」

あーダメダメ。笑っちゃいそう、この小さい女の子の事どれだけ大事なのかなぁー?

再び、映すものを切り替えて確認し。妲己はなのはと共に宛城から姿を消す。

こうして、二人のエースは遠呂智軍に囚われるの身となる。
遠呂智にとってそれはミッドチルダから選ばれた者達にとって思ってもみない試練の闘いの準備として……。


続く

365 :OROCHI:2008/06/08(日) 01:42:05 ID:4ITt5NX2
以上です。
話の構成上、放送では二人以外のなのキャラを目立たせたくてリタイアしてもらいました。

リリカル無双氏、お互いがんばりましょう!

366 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 01:43:33 ID:KP1fuJGq
GJ!

まさか、なのはさんが負けるなんて……面白かったです。頑張って下さい。

367 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 01:45:04 ID:PkpFQNf+
まず台本形式をやめましょうね〜

368 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 01:48:36 ID:3jedJU1o
別に台本は絶対にいけないとは書いてないが?
読みにくいから改善した方が良いというならともかく

369 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 03:43:03 ID:iGDsnX7R
流れぶったぎる形ですいません。
リリカルなのはDHSについてですが、今回はプロローグということでお願いします。
よくみたら話数書いてなかったよorz

370 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 04:16:04 ID:5pUkY9WN
いやまあ、台本形式が悪いとは言わないさ。
ネタとか短編とかでは、そういうのもあるし。
ただ、その、何だ……。
それで長編を書こうと思うのは――
というか「書こうと思える」のがな。

371 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 05:37:03 ID:VbZmEl68
>>370
自分で書いてもいないくせにw


372 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 07:40:00 ID:NUNB5a2H
自治厨より、割り込みを何とかしてほしい

373 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 08:35:10 ID:JuxS4Mc6
>>370
自分が出来るわけじゃないのに他人に100%を求めること自体駄目だろ。
まあその辺はある程度妥協するしかない、ってかそろそろウロス行きだな。

374 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 11:27:59 ID:sIWKiwNk
しかし、これはあまりに酷い。
指摘するのは当然だろう。

375 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 11:46:20 ID:poyU9GXy
ギャグ調の短編とかなら構わないと思うが、長編でやられるとさすがになぁ……

376 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 11:49:22 ID:N0rqRlw2
>365
>話の構成上、放送では二人以外のなのキャラを目立たせたくてリタイアしてもらいました。

意味不明。必要なキャラだけ抽出すればよいだけだろうに。
リリカル無双氏が自分と同程度に駄目だと認識しているのか、リリカル無双氏くらいに自分が凄いと思っているのか。
リリカル無双氏のも大概な代物だが、こいつのよりはマシだろうにな。

377 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 15:04:25 ID:A/TEF4eN
指摘や文句はウロスか本音で言って来い

378 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 15:06:33 ID:EV2iykEP
「OROCHI」
http://www.mitsuoka-orochi.com/


379 :一尉:2008/06/08(日) 15:43:26 ID:+UH3tSOc
うむ他キャラも戦い始めているたな。支援

380 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 18:18:26 ID:u/BiJE8w
>>371
>>370が職人でないという根拠は?

381 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 18:45:56 ID:A05bPWpN
>>349
引き抜きイベントが発声しなきゃいいけど。>中将の飛行隊

382 :OROCHI:2008/06/08(日) 18:46:15 ID:4ITt5NX2
言われてみて解りました。たしかに台本形式は読みづらいですね……。注意不足でした。

>>376
それは私の説明不足です。二人のリタイアは話の展開上必要だったのであの流れになりました。
また無双OROCHIは三國と戦国のオールスターのクロスファンタジー。それになのはをクロスして。二つの作品の良いところを出すための結果でもあります。
無双氏への言葉は同じクロス元を扱うのでもやもやした気持ちがあったので書きました。

皆さん、ご指摘下さって誠にありがたく思います。そして、拙い文章で申し訳ありません。

これからの文章で改善していき。皆さんを納得させられるような作品を書いていきたいと思います。どうか、厳しく。また温かい眼で私のこれからを見て下さい。
本当ならウロスに書くべきことですが。私から広まった議論の波紋が止まりそうにないように見えたので、これで打ち止めとさせて下さい。

最後に……迷惑をおかけし。誠に全て申し訳ありませんでした。

383 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 18:52:01 ID:n+flW5FE
>>373
こんなの最低限だろうが。

384 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/08(日) 18:52:58 ID:HEFvgJli
どうも〜お久しぶりで本当にゴメンなさい。
このたびは「キャロとバクラシリーズ」の続編が!!……書けてませんOrz
しかし突発的な短編を何時も通り書きましたので、とりあえず投下したいと思います。

題名は『魔法殺し屋☆ピノッキオ』です……視線が痛いw
先約が居なければ7時15分ごろに投下開始したいと思います。

385 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 19:12:09 ID:iLc/trA/
おう、支援。

でもピノッキオ? 誰?

386 :魔法殺し屋☆ピノッキオ ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/08(日) 19:16:26 ID:HEFvgJli
ミッドチルダの大都市、魔法文明の中心地 クラナガン。
無数の高層ビルが立ち並び、キレイに舗装された道が広がり、ライフラインが完備された完成形とも言える街。
だがソコに人が住んでいる以上、どうしても「ソンナ場所」は存在する。キレイな大通りから一歩脇道に入ってみよう。
暗い通りがある。汚い建物があり、弱々しい明かりがある。非合法な店が軒先を並べている。

「ソンナ場所」

そのビルも裏路地に居を構えるだけあって、古く薄暗い印象を与える有象無象の一角。
だけどその一室だけはまた違った色を纏うことになる。まぁ、コレもこう言う場所では起こりやすい事態の一つなのだが……

「ゴフッ……」

悲鳴と呼ぶには余りにも小さく、だが余りにも凄惨な音。ボコボコと溢れかえる水音。
だけど水の色は紅いアカい赤。溢れ出る先は人間の首元。横一文字に切り裂かれた傷。
崩れ落ちる男の背後から彼の喉元を引き裂いたのは銀に光る鋭い刃。シッカリとしたグリップとそれに似合う刃を備えたダガーナイフ。
ソレを持つ黒一色に包まれた人影は、崩れ落ちる男に何の感慨も抱かず、淡々と奥の部屋へと歩を進める。

「コンコン」

軽いノック音。これまた友人の家を訪ねるような自然なノック。数秒の沈黙の後、開かれた扉。
怪訝そうな表情の中年女性が顔を覗かせる。人影はその襟元を掴んで引きずり出すと同時にナイフを腹部へと一撃。

「□□□□□!!」

「っ!? どうした!!」

ナイフを回転させて引き抜くと悲鳴、それによって生まれた驚愕の声が室内から響く。
回転させて傷口を抉った結果として生まれる多量の返り血を浴びながら、殺戮者は室内へと飛び込んだ。

「キサマ!」

奥に見えた最後の標的、白いスーツの青年が突き出しての先に魔力反応。魔道師、しかもその収束率からしてかなりの腕利き。
だが……遅い。人影、殺戮者、殺し屋には遅すぎた。距離も既に魔法の間合いではない。
ここはもう魔法に比べれば原始的な殺傷兵器、ナイフの間合いだ。

「グッ!?」

自然な動きで殺し屋の袖口から引き抜かれたもう一本のナイフ。二人の命を奪ったナイフよりも幾分細く、シンプルな作り。
切り裂く事ではなく、投擲用に重心が先端部にあり、「突き刺さる」事に重点を置いたスローティングナイフ。
飛翔した凶器は寸分違わず、魔道師の肩に突き刺さる。もちそんそれだけでは命を奪う事は出来ない。
だが魔法を成功させる集中を途切れさせるという意味では充分。残された手に握られたナイフが容易く最後の命を刈り取った。




387 :OROCHI:2008/06/08(日) 19:16:42 ID:4ITt5NX2
支援!

388 :魔法殺し屋☆ピノッキオ ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/08(日) 19:17:24 ID:HEFvgJli
「あぁ……ゲンヤさん? 終わりました。三人、皆殺しです」

辺りに死体が散乱するホテルの一室。そこで黒いロングコートを筆頭とした黒尽くめの殺戮者は携帯電話を取り出して、番号をプッシュ。
慇懃無礼に高級そうなソファーの上で姿勢を崩し、足をテーブルに乗せて組んだ姿勢で、繋がった先で黒尽くめの殺し屋は言う。

『相変わらずお前さんの仕事は速くて助かるぜ、ピノッキオ。何時も通り処理するから、先に出な』

答えたのは中年の男性の声。話の内容から察するにこのような出来事は日常的に行われる慣れた行為。

「解りました」

それだけ言うと殺し屋 ピノッキオは電話を切る。余計な会話は足をつく事に成りかねない。
仕事で使ったナイフと携帯電話を黒いコートの中へと納め、彼は呟いた。

「バリアジャケット解除」

『YES』

光がピノッキオの体を包み、一瞬で弾ければ彼の服装は何処にでもいる好青年のソレ。
気だるげな表情は青年期独特の無気力感を醸し出しており、手元に収まったのは小さなナイフにも似たペンダント。
それが彼の扱う魔法の道具であり、殺しのアイテム。『カヴァリエーレ』 ナイフ形という珍しいデバイスだった。

「けど……便利なもんだ、魔法って」

魔道師資質に乏しいといわれた某管理外世界ではピノッキオを驚かせる不思議な事など多くは無かった。
まぁ不思議な事など、自分と殺し合える小さな女の子くらいなもの。
勿論彼自身も魔法に才能があるわけではない。いま行ったバリアジャケットの生成と解除、僅かな運動能力の強化が限界だった。

だが……彼の強さは魔道師としての才能ではない。単純な身体能力と適切な行動予測、そして殺しの知識に裏づけされたもの。


「……ん?」

ジャケットの内ポケットを弄っていたピノッキオはソコにお目当ての品 タバコが無い事に顔をしかめる。
何時から吸うようになったか覚えてないが、仕事のあとに一服するのはそれなりに気分が良いものだ。
思い出したように己が命を奪った死体 白いスーツの魔道師の懐へと手を入れて、引き出したタバコを咥え、火をつける。




389 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 19:17:45 ID:Rh4TBV5Y
・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。

支援

390 :魔法殺し屋☆ピノッキオ ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/08(日) 19:18:38 ID:HEFvgJli
「変わった味だな……」

煙を吐き出しながら立ち上がり、軽い足取りで扉を二つ通って廊下へ。
ピノッキオの足取りは三人を殺して、その背後には死体が転がっている事など感じさせない自然なソレ。
裏に分類される場所とは言え、廊下で歩きながらの喫煙などしているからか?

「?」

「……」

途中で擦れ違った少女に訝しげな目を向けられたこと以外、ありきたりな日常のような平静。
二階分ほど階段を下りたころには、彼も意識するレベルでは無いが、仕事を終えた安心感を覚え始めても居た。

だが……ピノッキオと「女の子」の相性は基本的に最悪なのである。


「まて!!」

「なに?」

体全体で振り返る何時もの本能を押さえ、ピノッキオは首の動きだけで背後に居るだろう、叫びの主へと視線を向ける。
一般人としての対応により、不信を感じさせない策だったのだが……叫びの主の姿からすればソレは失敗だった。
オレンジ色の髪をツインテールにしてバリアジャケットに身を包んだ少女が銃型のデバイスを向けていたのだから。

「708号室……殺ったのはアナタね!?」

「はぁ?」

疑問を確かに表情に乗せ、ピノッキオはゆっくりと振り返る。
自然な動きで尚且つ隙が無く、気取られないようにジャケットの袖中へと指が滑り込む。

「何を言っているのか解らない」

だがそのナイフが閃くのは最後の手段だ。ピノッキオとて殺しが好きな訳ではない。
余計な殺しは足がつく危険が増す事にもなる。しかし少女が如何して確信を持って彼に対峙するのか?
その理由は……

「タバコ」

「ん?」

「そのタバコ、ヘンな味でしょ? ベルカ自治領でしか売ってない珍品なの。
708号室で殺されていた私の知り合いも……ソレを吸うのよ。確認したら持っていなかったわ」

そこまで聞いてピノッキオは最良の展開を切り捨てた。

「アナタが持っているタバコの箱を調べさせてもらおうかしら? 彼の指紋がバッチリ付着している箱をね?」

冷静な状況判断、慎重にして大胆な考察。それを効果的に発言し、相手の抵抗を押さえ込む手法。
実に優秀だ。だが……『殺しの腕』はどうだろうか?




391 :魔法殺し屋☆ピノッキオ ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/08(日) 19:20:33 ID:HEFvgJli
「どうぞご勝手に。急いでるんだ、早くしてくれ」

ピノッキオは右の手で懐からタバコの箱を取り出し、自分にデバイスを向ける相手へ放り投げる。
相手の突然の動きに驚き、反射的に箱を受け取ろうと彼女の視線が僅かに揺れる。しかし動いたのは視線だけ。
余りにも小さなスキ、だがそれでピノッキオには充分だった。反対側になる左の袖下から器用にナイフを引き抜く。そして予備動作は無しで投擲。

「このっ!?」

少女は回避も防御も選ばない。受けるか、弾くかしての間髪置かない射撃を選択。
ナイフだと油断? 違う、これは管理世界の魔道師ならば正解の判断。
魔力反応無しで放たれた物体では、バリアジャケットを破る事などできないからだ。
ご禁制の質量兵器ならばまだしも、手一つで放つことができるナイフ程度。先ほど放り投げたタバコ程度の価値しかない。

「え?」

だがティアナは貫き、焼くような痛みを覚える事になる。
呆然と見下ろした視線の先、バリアジャケットを貫き、太腿に突き刺さるナイフの柄。
そこから滲み出した血を見るに至り、ようやく自分に起きた事態を把握する。
だが遅い。受けてしまい、傷を負ってしまった時点で取り返しのつかない「スキ」を作っているのだ。


「誰も同じ反応だな!」

その様子にピノッキオは冷静な判断として嘲りの叫びを上げた。
確かに魔法はスゴイし、ソレを操る魔道師は厄介な敵となりうる。だが……魔道師は自分達の力、魔法を過信している。
同時に魔法を使わない技術を甘く見ている。体術、戦闘の術として身のこなしを学習しても、ソコに魔力反応が無いだけで油断する。
ナイフを遠距離から『魔力無し』で投擲したところで致命傷にはならないと『思い込んで』いるのだ。

「シッ!」

予想外の負傷に少女の気が散る一瞬の間、ピノッキオが新たなナイフを構えて走る。
彼がもつナイフは全て対魔力鉱物を用いた合金製だが、その能力は簡易な障壁やバリアジャケットを無効化する程度。
つまり本気で障壁など防御に徹されれば攻撃する事は叶わないし、距離を本当の意味で離されれば攻撃自体は不可能になってしまう。
故にピノッキオは距離を詰める。魔法が持つ優位点を数多く無効化し、一撃で必殺できる場所まで歩を進める。

痛み集中力が乱れた少女の射撃魔法など当たらない。ピノッキオは見るのではなく、射線を感じて避ける。
『先生』に教わった動きを忠実に、そして自分なりにアレンジを加えた的確な軌道。
相手に射撃する機会をなるべく与えず、もっとも早くナイフだけの間合いに入る為の動き。

「ヒュン!」

動きの収束点でナイフが閃く。響くのは小さな風を切る音だけ。輝くのは一つ筋の白銀。
それだけだ。実に小さく、実に確実な……殺しの動き。狙う先には少女の細い首があった。
だが少女も唯の少女ではない。魔道師であり、あれだけの状況推測が可能な人物。

「ダガーモード!」

銃口から飛び出したオレンジ色の魔力光が刃を形成。ナイフを受け止めて、払おうとする。
だが力をかけると同時に抜ける手ごたえ。宙を舞うピノッキオのナイフに目を奪われそうになって少女は気がつく。

「囮!?」




392 :魔法殺し屋☆ピノッキオ ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/08(日) 19:21:27 ID:HEFvgJli
ピノッキオの足が少女の足元を薙いだ。可愛らしい悲鳴を上げるまもなく、背を地へと打ちつける。
息が詰まるのにもかまわず立ち上がり、再びデバイスを銃として運用。ピノッキオに標準をあわせる。
だが……ピノッキオの金髪が視界の下へと沈む。身を伏せるように射線から逃れ、沈み込んだ視線から顎へ拳……ではなく掌底で一撃。

「ドン」

鈍い衝撃音。意識を刈り取られて少女は崩れ落ちた。
一度このように対処した少女を逃がさずに放置し、後に痛い目にあったことがあるピノッキオだ。
きっちり止めを刺そうとナイフを振り上げて……





「良いんですか? 僕と直接、こんな場所で会うなんて」

「硬い事は言いっこ無しだぜ、ピノッキオ」

『高すぎる事も無く、極めて安いわけではない』
ビルの地下に居を構えるそのレストランの値段設定は大体そんな感じだ。
地球で言うところのイタリア料理風の料理はピノッキオの舌にあったが、対面している人物には不満があった。
ヨレヨレのスーツと同じく草臥れた中年男性……そんな事が問題ではなく、その中年男性の名と素性が問題だ。

「オメエさんには世話になってるからな。これくらいはな?」

屈託の無い笑みを浮かべながら、二つのグラスへとワインを注ぐ男性の名前はゲンヤ・ナカジマ。
管理局の局員であり、世に言うJS事件が起きるまでは平凡な部隊指揮官、三等陸佐に過ぎなかった人物だ。だが今は?
『表記するのが面倒なほど複雑な地位と立場』
ソレくらいがピノッキオの解る事であり、そんな状態だからこそ表には出せない厄介事や危険に常に隣り合わせ。
そしてこの世界に流れ着いた自分の面倒を見てくれた恩人でもある。

「恩は返すよ」

先生に教えられ、おじさんに実行してきた彼にとってのたった一つの行動理念、『恩返し』。


「……そう言えばあの女の子は始末しなくて良かったのかい?」

「ん? ティアナの嬢ちゃんのことか?」

運ばれてきた料理に手をつけながら、思い出したようにピノッキオは疑問を口にした。
あの仕事の後、要らない頭を利かせて追いかけてきた魔道師の少女。始末する直前でゲンヤからの連絡が来たのだ。

「本局なんだろ? 彼女も」

「彼女はスバルの親友でな? 知らない事とは言え、見殺しにしたら目覚めが悪いだろ?」

「プロならば優先順位を考えるべきだ」

人の首を掻き切るよりも手馴れない動きで、ステーキをカットしているピノッキオはタメ息を一つ。

「それにイザと言う時の為に海とのパイプも確保しておいたほうが良いからよ」

「……そっちが本音でしょ?」



393 :魔法殺し屋☆ピノッキオ ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/08(日) 19:22:30 ID:HEFvgJli
現在の陸と海の関係、管理局の混乱っぷりを見ればそんな思考が浮かんでくるのもわかる。
JS事件により余りにも多くの問題点が噴出し、陸と海の関係は今までに増して険悪。
地上本部は『まともな戦力を寄越さないからこんな事になる!』と言い、
本局は『お前らが言う事を聞かないからこんな事になる!』と反論した。
だが犯罪者との取引の容疑で逮捕されたオーリス・ゲイズの裁判が進むに連れて、地上本部の余りにも苦しい状況が浮き彫りになった。
するとその僅かな戦力で地上を守り抜いてきた故 レジアス・ゲイズへの支持の声と本局への不満が噴出。
本局が主導する事後処理に不満を持っていたレジアス派と呼ばれる中堅職員が、地上本部を大量に退職して業務に滞りが出る始末。

その打開策として本局が提示してきた新たな地上本部中枢の人事案、そのトップに置かれていたのがゲンヤ・ナカジマだった。
海に理解と親交があり、同時に経歴としては根っからの陸でもあり、ある程度有能。
正に本局が求める最高の人材と言っても良い。だが如何してそんなゲンヤが本局と影ながらとは言え対立する事を望んだのか?

「せっかく新しい娘たちも含めた家族と余生を楽しもうと思ってたのによ」

この大抜擢が無ければゲンヤは長女であるギンガ・ナカジマとJS事件の遺児、戦闘機人の保護観察の任に付くはずだった。
実はゲンヤが選ばれた大きな理由として『戦闘機人という特殊な娘の境遇を利用して縛る事が可能だから』と言うものも含まれる。

「まぁ、これでギンガ達の体の事を陸で行えるようになれば御の字だ。
レジアス派もナンバーズの嬢ちゃん達が運用可能になれば汚名が晴れる事になるし、嬢ちゃん達も狭い檻から出してやれる」

だが彼とてそのまま飼い殺されるつもりは無い。
根っからの陸であり、妻が本局とのつまらない確執や戦力差の犠牲になった身としては、このまま陸を海の下におく気など無かった。
薦められる陸の改革は海との関係を対等にしていくものだと気がついた本局は焦った。
しかし表向きには『陸と海の体質・関係の改善』を掲げて任命したゲンヤを解任する事は出来ない。

故に……暗躍する。ゲンヤや地上本部の荒を探し、優秀な人材の引抜を裏では加速させ、ときに犯罪組織とすら手を組む。
暗躍してきた魔手を潰し、地上での本局の勢力を秘密裏に削いでいく。それがピノッキオに与えられた恩返しの方法だった。


「そうそう! ギンガを覚えてるか?」

「? ゲンヤさんの娘ですよね?……上の」

「おう、そのギンガだがな? お前に気があるんじゃねえか?と思ってよ」

「まさか……数回しか有った事無いのに」

メインディッシュをたべ終わり、もっぱらワインを飲む時間へと移行したテーブル。
ゲンヤのそんな言葉にも、タバコを吸いつつグラスを傾けていたピノッキオは、ヒドク詰まらなそうに返した。

「いや! お前の事は民間の情報・捜査協力者って紹介したんだがよ? 
あれからけっこう『ピーノ君、元気?』とか『今度は何時来るの?』とか聞いて来るんだ。
ギンガは同年齢だと仕事仲間に見えるのか、職場じゃ彼氏ができね。お前さんみたいに、どっか抜けている奴が母性的に気になるんじゃね〜かと……」

「言っただろ? 女の子は苦手なんだ」


394 :魔法殺し屋☆ピノッキオ ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/08(日) 19:24:45 ID:HEFvgJli
「ソイツは人生の半分は損してるぜ、ピノッキオ」

「忠告ありがとう。でも実体験だからさ」

最初の殺しの時、撃ち殺した少女の血飛沫と表情を今でも覚えている。
モンタルチーノに潜伏していた時も、お節介を焼いてくれた少女に正体がバレて、殺そうとした。
そして……そのモンタルチーノでやりあい、殺せなかった少女の暗殺者。後に自分を殺したあの褐色の少女。

「女の子には良い思い出が無いんだ」

「じゃあこれから作れば良いさ!」

確実に酔っていると言えなくも無い言動を繰り返すゲンヤにピノッキオはタメ息を一つ。
不意にゲンヤが楽しそうに注いでいたワイングラスに映りこむ人影にふと視線を写す。
ワイングラスに映る場所、つまりピノッキオの後ろから近づいてくる……少女。
ウェイトレスの格好をしているが左手に持ったお盆は、右手を『隠すように』の組まれていて……

「ゲンヤさん伏せて!!」

「「っ!?」」

ピノッキオの反射と言っても良い叫びに、二つの方向が即座に反応した。
一つはもちろん呼びかけられたゲンヤ。すぐさまテーブルの下に転がり込む。
そしてもう一つ……ウェイトレスの少女がトレーの下に隠していたのは……拳銃。
拳銃型のデバイスではない。火薬の反動により金属の弾頭を飛ばす質量兵器だ。

「このっ!」

立ち上がりざま、ピノッキオは盛大に真白なテーブルクロスを引っ張る。
上に乗っていた食器やワイングラスを広範囲にぶちまけながら、テーブルクロスが空間を埋め尽くす。
これは目晦まし。そのスキにナイフを引き抜き布と布の僅かな隙間、そこから一瞬見えた金属の光沢へと投擲。

「キン!」

「ちっ!?」

銃を取り落としたらしい相手の顔、ようやくテーブルクロスが空中で暴れるのを止めた時、確かに見えた。
どちらも緊張を孕んだまま、視線だけが交差して……驚きの色に染まる。

「モンタルチーノの女の子……?」

ウェイトレスの服装に身を包んでいるが、間違いなかった。その女の子をピノッキオが見間違えるはずが無い。
褐色の肌に青い瞳、くすんだ金髪を長いツインテールにしている。それだけならば世界にはたくさん居るだろう。
だがその視線と身のこなし。小さな女の子の体は戦士としての理想形をなぞり、視線にははっきりとして冷静な闘争の色。

「ピノッキオ!? なんで……」

「君は本当に何時でも邪魔をする……やはりあの時殺しておくべきだった」

少女の方も相対する存在が何者であるのかを理解し、同時にどうしてこの場所に居るのか?と言う疑問を漂わせる。
だがそんな理解を得る作業をここで行うことは出来ない。今ここは確かに戦場、修羅の巷。


395 :魔法殺し屋☆ピノッキオ ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/08(日) 19:25:34 ID:HEFvgJli
「やってみろ……セットアップ、アウグストゥス」

少女の手の内で光を放つのは小さなクマのお人形。
光が納まれば少女のみを包むのは不釣合いなピッチリとしたネクタイと灰色のズボン型のスーツ。
その上からはロングコートを羽織り、手に持つのは……銃剣付きショットガン。
確かに銃剣まで完備した大型銃器を携帯するのに、デバイスと言う形はナイフ以上に都合が良い。

「それと私は『モンタルチーノの女の子』じゃない」

「ん?」

「私の名前はトリエラ。あなたに一度負けたけど、貴方を殺して……もう一度倒す者だ」

どちらとも無く闘争が弾ける瞬間、ピノッキオは思う。

「アァ……本当に女の子は苦手だ」と

396 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 19:26:39 ID:Rh4TBV5Y
支援

397 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/08(日) 19:28:29 ID:HEFvgJli
以上でした〜
誰もガンスリンガー・ガールのピノッキオだなんて思っていまい(そんな事無いか?
とりあえずナイフを使った戦闘って難しい!と言う事とそこかしこに捏造があること……後者は何時も通りだw

評判がよければ(バカな!?)もしかしたら『魔法義体☆トリエラ』が連載される事があるかも(ぇ
ではまた〜

398 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 19:29:18 ID:v6hPd5ZJ
ガンスリの彼か支援

399 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 19:35:13 ID:zLDZtzos
悪いが予測済みだったぜ
だがGJ


400 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 20:07:36 ID:eAtWDxcQ
>THE OPERATION LYRICAL
《グッジョーブ、メビウスワン!》
相変わらず戦闘機に関する知識に長けた描写の巧みさが際立ってますねぇw
いや、正直戦闘機の部位の名称とか分からないからイメージしづらい部分もあるんですが、これ分からなくても面白いですよ。
攻殻機動隊の説明に似てますね。情報量の多さが心地良いというか…なんか自分でも上手く表現できてないけど(ぉ
それに空という部隊を通じて魔法少女と戦闘機という全く異なる二つの要素を上手く融合させているのも素晴らしい。
魔法少女と戦闘機が並んで飛ぶシーンとか想像すると素敵じゃね? 新ジャンルの浪漫を感じますなw
そして今回、やっぱりというかレジアスのおやっさんはコイツに目をつけてきましたね。
でも魔法技術が主体になってる世界でこの兵器は単なる武器ではない、まさに革新ともいえる存在なのではないでしょうか。この辺、レジアス中将も言ってますね。
彼はやっぱりメビウス1かな。正直、この二人の組み合わせも面白そうで仕方ない。
なんつーか、原作でもレジアス中将は魔法に左右されない力を欲していたワケですが、このクロスで手に入れた戦闘機という力でどう展開が変化していくのか全く予想できませんね。
いや、不思議と悪い展開ばっかりじゃないような感じがします。だって戦闘機って人が扱う上で全く無理のある力じゃないんだもの。
人の扱われるべくして扱われているこの兵器がレジアス中将の策謀にどんな変化を及ぼすのか、非常に楽しみです。
うーん、正直『彼を誘う』とか言ってて「バッカ、クロスキャラは女の子達とキャッキャウフフって過ごすんだよ!」って笑ってやりたいんだけど、今回ばっかりはレジアスサイドに回っても全然面白いんじゃね? とか考えてしまうwwこれは期待せざる得ないw

>魔法殺し屋ピノッキオ
ち、畜生! 予想外だった。ティアナがトリエラの位置に嵌るのかと思ったら、本人出てきちゃった。
しかし、なんつーかチョイス渋いっすねぇw
ガンスリは一応可愛い女の子出てきますが、もうやるせなさいっぱいの漫画ですからね。
熱血系のリリなのには合わなさそうな気がしましたが、組織という舞台を上手く使って殺しの要素を入れていますね。
ゲンヤさん、人のいいおっさんだと思ったけどやっぱり歳は食ってないねぇ。
いや、こっちの顔も全然魅力的ですけどね。正統派の魔法少女には出せない渋みを感じますw
トリエラサイドも描かれるかも、とのことですが、個人的にはラストがすごく綺麗だったので短編で終えておくのもありかと思います。
この続きそうな余韻が味わい深くて好きですしねw

401 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/08(日) 20:12:12 ID:b8jcGjWl
ガンスリですか・・・・自分は読んだことはないんですが・・・・・バイオレンスですね。雑誌とかの記事は見たことあるんですが。なにはともあれお疲れ様です。

さて、なんかもう一話が出来上がったのですが、30分あたりに投下宜しいでしょうか?

402 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/06/08(日) 20:12:40 ID:s6SEFA/l
この後20:30辺りからLYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerSの
EPISODE:1-1を投下したいのですが、良ろしいでしょうか?
既に予約が有りますれば現時点での最終予約に回りますけれども。

403 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/06/08(日) 20:18:03 ID:abXODr23
>>401
あ、でしたら御先にどうぞ。

404 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/08(日) 20:21:15 ID:b8jcGjWl
>>403
これはまっこと申し訳ない。ありがとうございます

405 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/08(日) 20:32:38 ID:b8jcGjWl
30分になりましたので投下させて頂きます。



『スパーダ』

2000年前、地球において悪魔の大侵攻を阻んだ魔剣士。己は悪魔でありながら正義に目覚め、人々を救った大英雄。
未来永劫語り継ぐと言ったはずの人々はやがて、彼の名を忘れ、悪魔の存在すらも忘れていった。事実を知るのは、ほんの一握りだけ。彼を神と崇める者、悪魔の知識を有する者、そして

・・・・誇り高き血を受け継ぎ、彼と同じく魔を狩る狩人達。大魔剣士スパーダの血族。

魔法少女リリカルなのは DEVIL HUNTERS    第1話 「始動」



ミッドチルダ 首都クラナガン

「異世界か・・・・・・・・・」
中心世界の首都に恥じない繁栄ぶり。ビルの立ち並ぶ大通り。多くの人が行き来するそこに、彼は居た。
赤のパーカーの上にブルーのコート。パンツもブルーと随分と派手な配色の服装だ。しかし、程よく鍛えられた身体と美しい銀髪を持つ彼には、しっくりきていた。
「全く、悪魔は何度ぶっ殺してもどこにでもまた出てきやがる。処理に困るだろうが」

魔剣教団騎士『ネロ』。右手をロングのグローブで包み、三角巾で吊るした彼は、ミッドの街中を往く。

「ミッドチルダ?」
「そうさ。そんでもって次元世界中の治安維持にしゃかりきになってる組織の御膝元だとよ」
城塞都市フォルトゥナ。ネロ『達』の自宅に家主とその友、ダンテは向かい合っていた。
「悪魔が他の世界で出てくるってことか?流石にそこのお守りをしてやるほどお人好しでもねぇし、義理もないぜ」
『他の世界』。この様な言葉にネロやダンテのような人間に抵抗はあまりない。魔道の技術は地球にも表に出てこないだけで、確かに存在はしているし、『魔界』という実例もある。
きちんとした説明を受ければ受け入れることは出来る。
「そうなんだがな。まぁ、俺は個人的な用があるから首突っ込むのは決まってるようなモンなんだがな」
『彼女』に出された茶を啜り、言葉を区切る。
「今回はそう簡単な話でもないみたいだぜ?」

ダンテにトリッシュがもたらしたのは、魔界復活の可能性だ。
本来、魔界と人界の間には網のように張り巡らされた結界が存在する。網という表現の通り、人界出現のし易さは網へのかかり具合、言うなればその悪魔の大きさ、強大さによって変わってくる。
ちっぽけな低級悪魔はその矮小さ故に、世界の挟間の網にかかりにくい。簡単な寄り代などがあれば容易に現界が可能なのである。
しかし、大悪魔は違う。その強大さ故に『世界』の力に阻まれる。無理に押し通ろうとすれば悪くて自滅、よくて力を削られて現界することになる。故に大悪魔は態々人界に赴こうとしない。
態々、御膳立てもないのに人界を攻めるメリットも無い。利口なものは自らの住みかで生きていくのだ。だが、ここに御膳立てが整った場合その限りではない。
召喚術、口寄せ、霊憑依・・・・・・・・古今東西、死んだ者や、別世界の使者を呼び出そうとする儀式は数多くある。その儀式こそが御膳立てである。
自らの力を削るわけではない。魔界と人界の『門』の間に『道』を繋げた時、強大な悪魔はその本来の力を有したまま現界する。そして、欲望と破壊の限りを尽くすのだ。
儀式とは言っても、そこに正当なものでなくてはならない道理はない。
突発的な事故、強力な『魔具』による力の暴走なども、この門を繋げる要因たりえる。要は、門を繋ぎたりえる力の解放。これこそが強大な魔界の住人を呼び寄せるトリガー。
前者の儀式にしろ、後者の自己にしろ、魔界との門が開かれようとしている。しかも次元世界ミッドチルダにその影響が出ているという。
地球、ミッドチルダ、魔界、繋がりはまず分らないような細い物であるが、一種のラインが繋がった。
本来ならあり得ない事態。あくまでも魔界は地球と同一世界、表に対する裏の世界のようなもの。それが強引に繋がれている。しかも地球で次元世界の存在を知っている者は殆ど居ない。

『ミッド側』からのアプローチがあった。トリッシュはそう考えた。そして、ミッドの何者かが『魔界』の存在を知り、それを現そうとしていると。


406 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/08(日) 20:35:31 ID:b8jcGjWl
ネロ。お前にはこの仕事を手伝ってもらいたい」
ダンテの依頼はそれだった。
「手伝い?何をするっていうんだ?」
「別に四六時中一緒にいてやる事全部手伝えってわけじゃないんだが」
「それじゃあ、どうするんだよ」
砕け、そしてどこか素っ気ない口調だが、ネロに悪意はない。元々こういう性格なのだ。それどころかダンテには友として好意すらある。これは彼の先を促す科白なのだ。
「俺は悪魔狩りもするが、基本的に向こうに散らばった魔具の収集がメインになりそうだ。時空管理局、向こうのポリスみたいなところにも幾つか保管されているものもあるだろうから、そいつも頂くこともする」
その言葉にネロも目を見開く。
「ヘイ、それじゃ、あっちの世界で犯罪者になるってことじゃねぇか。ポリ公相手に喧嘩売るのか?」
ネロの言葉にダンテは動じることもない。むしろ笑みすらうかべている。
「なぁに、似たような事は経験済みさ、坊や」
坊や。かつてフォルトゥナで起きた事件で初めて会ったダンテがネロをこう呼んだ。その時に殺人未遂犯として教団に追われた時の事を言っているのだ。
「坊やはやめろよ」
憮然とした表情を浮かべ、抗議する。しかし思えばあれがダンテとの出会い、そしてすべての始まりだった。
「それで、お前さんには悪魔狩りをメインにやってもらいたい。こっちから情報は流すが、やり方はフリーで構わないさ」
そう前置きした後
「まぁ、受けるんならの話だがな」
そう。あくまでも依頼。ネロが受けなければ話は進まない。二人を暫し沈黙が包む。そして
「・・・・・・・・・いいさ。アンタには借りがある。それに、悪魔をぶっ殺すのに文句はないさ。・・・・・・・・キリエを守るためにも」
「ハッ!そうかい。全くお熱い事だな」
キリエ。ネロの愛する女性。幼いころからの付き合いで、ずっと守ると決めた愛する伴侶。世界を守る、ひいてはキリエも守るということだ。
「それなら話が続けられるな。言ったとおりフリーでやってくれ。希望を言えば人目につきそうなのを優先的にさっさと狩ってもらいたいがな」
「解った」





「異世界でも普通に車は走ってるんだな」
あれからダンテと話を続け、遂にミッドチルダへと赴くという運びになった。移動手段は転送陣をトリッシュが用意した。世界を超えるシロモノなんてよく用意できるものだなという問いに対し、
「企業秘密らしい」
とはダンテの弁である。とにかく、ミッドに来た以上、こちら側について良く知る必要があった。故に街中を散策してみたりしているのだ。
いくつか解ったこともあったが、一番重要だったのが、質量兵器の所持禁止であった。
そうなると武器として大口径リボルバー『ブルーローズ』を扱うことができないということになるのだが、いざというときは破る気満々のネロであった。
結局のところ、悪魔に対して銃火器というものは有効なものだ。こちらの魔法が使えない以上、出来るのはネロ流の戦い方。ブルーローズと大剣・レッドクイーンの射撃と斬撃。
本来はもう一つの武器、悪魔の右腕があるが、無駄な騒動を避ける為、基本的に隠しておくつもりだった。誰かに見られたら面倒だ。
 
「それにしてもデタラメだなここの魔法ってやつは」
ちょっとした資質があれば、杖に代表されるようなデバイスというものを使って弾を飛ばしたり、砲撃を放ったり、しまいには斬撃すらやってのける。科学技術と融合した形の魔法体系は彼からすれば異端だった。
そんなことを言ってしまえば恐らく、ミッド側から見れば彼らの様な魔力の運用もまた異端なのだろうが。
「まぁ、俺は悪魔を狩るだけだ」
そう呟き、歩き続けるネロ。その時だった。

407 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/08(日) 20:36:25 ID:b8jcGjWl
「ん?」
懐に入った通信機が音を出している。此方に出てくるときにダンテに渡された連絡用のものだ。
「なんだ?」
出た向こうは、言わずもがなダンテだった。
「うまく言ってるか?ネロ」
「そんなこと言っても、別にやることもないさ。適当にやってる」
事実、大体の事は調べた。特にやることもない。
「そうかい、だったら今度はお嬢ちゃんと一緒に来たらどうだ?お前さんの恋人だったら異世界でデートするくらい構わないぜ」
確かに、地球とは違う別の世界。同じように人間が住む近いようで遠い世界。キリエに見せたら喜ぶだろうか。
「考えとくさ」
「それはそれとして、本題だ」
その言葉で真剣な空気が流れる。ネロも通信機を持ちながら、人目に付きにくい路地に入る。
「今度、リニアレールを襲う」
「目星が付いたのか?」
「ああ、獲物は『オリハルコン』だ」
オリハルコン。『神石』とも呼ばれる魔界由来の超高エネルギー結晶体。内包された力は凄まじく、結晶が数個あれば、魔界との狭間の塔『テメンニグル』の制御すら可能なのである。
「エイリム山岳丘陵地区って所で仕掛ける。崖に面しているから監視や邪魔が入りにくい。それでな、あんな魔力の塊があるんだ。低級悪魔あたりが寄ってくるかもしれねぇ。露払い、頼めるか?」
「ああ、わかった」
「詳しい事はまた後で連絡する。準備頼むぜ?」
「All right(オーケー)」



「はやて、ちょっといい?」
「なんや?フェイトちゃん?」
機動六課隊舎、部隊長室で作業をする八神はやてに通信が入る。相手はフェイト。フェイト・T・ハラオウン執務官。9年来の親友だ。
「詳しい事はまだ纏まってないんだけど、とりあえず」
一拍置いて話されたのは、はやてにとって苦々しいものだった。
「また、ロストロギアが奪われたよ」
「っ!?またか・・・・・」
「うん、4課が偶然だけど『レリック』に似た物を発見。そのまま護送しようとしたんだけど・・・・・・」
声のトーンが落ちてゆく、話さずともはやてには解った。この会話ももう何回か同じことを繰り返した。
「謎の男に奪取された・・・・・・か」
謎の男。このところロストロギア奪取事件で必ず出てくる人物。その特徴についても話があがってきている。
「真紅のコートに大剣型のアームドデバイスらしきもの、それに二丁の拳銃・・・質量兵器をあつかうってか?」
「そう。何物かは解らないけど、用途がよくわからないものを狙ってる。地方にある局の施設で解析中だった物も2度奪われてる」
その男は詳細不明のロストロギアが見つかるときに決まって現れ、そして局員をなぎ倒し、強奪していく。
「でも、人死には出てないんよな?」
「うん、けが人はいるけど」
はやては眉をひそめ、考え込む。しかし、答えは出てこない。
「妙や。拳銃なんか持ってる凶悪犯のはずなのに、死人は出てない・・・・・・わざとなんか」
そしてフェイトにもう答えは見つからなかった。
「うん。妙なケースなんだよ。でも、ロストロギアを扱う以上、私たちも気をつけた方がいいね」
「そやね、このことはなのはちゃんには?」
高町なのは。六課の戦技教導官にして部隊のエース。戦いになれば彼女にも関わってくることだ。
「ううん、まだだよ」
「ほんなら後で話しといて」
「わかった。それじゃまた」
そう言って切られる通信ウィンドウ。静かになった室内にはやての溜息が響く。
「はあ・・・・」

「早く六課を完全なものにせんと・・・・・」
どうしようもない胸騒ぎを感じる。『例の予言』のこともある。立ち向かうにはこちらの態勢を早急に固める必要がある。

「なのはちゃんには頑張ってもらわんとな」




女神達と狩人。邂逅は・・・・・・・・近い。

408 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/08(日) 20:39:18 ID:b8jcGjWl
投下完了です。拙文ですが、なにとぞご容赦を。

最初は話のみになりましたが、次は両陣営が出合います。

409 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/06/08(日) 20:44:39 ID:DCR84lxh
>>408
御見事です。
序章としては期待感を高めてくれる描写と文力で
以降の展開が非常に楽しみになりますよ♪
さて、ダンテはこのままフリーのままで事に絡むのか?
それとも機動6課入りするのか……?

っと、それでは21:15辺りの次レスから自分の投下を始めさせて載きます。(一礼)

410 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 21:01:19 ID:qmsRFxPH
しえん

411 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/06/08(日) 21:15:14 ID:38eatXEW
【LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS】

♯EPISODE:1-1

□■□■□

━━赤い、朱い、緋い、赭い。

あの時、あたし━━スバル・ナカジマはまだ小さく幼くて、
自分が何に巻き込まれたのかも良く解らずに焔が周りを破壊的に彩る中を、
一緒に来た筈のはぐれてしまったお姉ちゃんやこれから逢いに行く筈だった
お父さんに助けて貰いたいと一婁の望みに縋って二人の姿を探しながら、
只泣きじゃくって彷徨い歩いていた。

翼の生えた大きな女性のモニュメントが中央に飾られたガレリアに差し掛かった時だったろう、
横手から突然生じた爆発に煽られてあたしはその余波に吹き飛ばされて、悲鳴を挙げながら
抗う術も無く床に転がされた。

「……いたいよぅ…あついよぅ…ひっく…こんなのいやだよぅ…
 ひっく…かえりたいよぅ……」

その時のあたしは、只々今自分が置かれていた状況を否定して、そうすれば自分は助かると
言わんばかりにその言葉に縋ろうとしていた。それが例え只の逃避に過ぎなかったとしても。

「━━すけて…ひっく…だれか、たすけてぇ」

そうしてあたしが泣いて絶望して諦め掛かった時に、あたしは正面の焔の向こうに
人影を見掛けた様な気がして、両膝を着いて蹲りつつも自身の右手の甲で涙と一緒に
目を擦りながら改めて正面に視線を遣ると、確かにそこには焔の向こうに
一人の男の人が佇んでいた。

派手な柄のスーツを羽織り、馬の尻尾の様に襟足で括った癖の無い長い黒髪を
炎熱に煽られた熱風に棚引かせたその長身の男の人は、向こうもあたしに気付いているらしく
丸いレンズの眼鏡越しに覗く眼差しは真っ直ぐにあたしを見据えていた━━様な気がした。

その男の人の口許に僅かに浮かんでいた笑みに何か怖くて厭なものを直感で感じて、
あたしは最初は声を掛ける事に少し尻込みしてしまったけど、漸く救いの手を見付けたと思ったあたしは
最後の気力を振り絞って必死の叫びを放つ。

「……おじさん、おねがい━━あたしをたすけてぇっ!!」

そのあたしの叫びと同時に、それまでの火災や爆発の余波で根元が脆くなったと思われる
翼を生やした女性のモニュメントが倒壊して、あたしに向かって倒れ掛かって来た。
 

412 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 21:22:41 ID:qmsRFxPH
ちょwwww人が違うww支援

413 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/06/08(日) 21:25:48 ID:ZOIbaeIl
倒壊の音と投げ掛けられる影に気付いて振り向いたあたしの視界は、
迫るモニュメントで埋め尽された。

(たすからないっ!?)

瞬間的にそう悟って両目を瞑って顔をモニュメントから背けて
再び蹲ったあたしの耳に、男の人の方から落ち着いた感じの声が響いた。

「━━時(とき)よっ!」



……そして気が付くと、あたしはモニュメントに潰される事も無く無事だった。

ゆっくりと見上げると、倒壊したモニュメントは桜色の魔力の
幾つもの輪に絡め取られて倒れ掛かる途中で静止していた。

「━━……良かったぁ、間に合ったぁ。助けに来たよ」

空中で静止したモニュメントの更に斜め直ぐ上からあたしに向けて息を切らせながらも
そう声を掛けてくれる、明茶色の髪を頭の左右で白い大きなリボンで括ってツインテールにして
白地に蒼と金のラインをあしらったバリアジャケットにその身を包んで左手にはまるで錫杖の様な
デバイスを携えたその女の人の魔導師は、あたしの傍に降り立つとこちらを安心させようと
優しく微笑み掛けながら声を掛けて来る。

「良く頑張ったね、偉いよ。わたしが駆け付けた時にモニュメントが
 空中で少しの間だけ止まってたけど、あれは貴方が?」

それを聞いて、あたしは頭にはてなマークを浮かべてぽかんとした顔で相手の魔導師の女の人を見上げていた。

━━あたしにそんな力は無いし、そんな事を願う隙も無かった。

そんな時、あの焔の向こうに佇んでいた男の人が脳裏を横切る。

(あのひとがなにかしてくれたんだ! そうだ、このおねえさんに
 あのおじさんのこともはなして、いっしょにたすけてもらわなきゃ!)

そう考えたあたしは男の人が居た辺りに顔を向けたけど、
そこにはもう誰の人影も見当たらなかった。

魔導師の女の人はあたしの仕草に多少怪訝そうに小首を傾げたけど、
あたしが見た先に自分も視線を向けて誰も居ない事を確認すると、
気を取り直して次の行動に移ろうとする。

「もう大丈夫だからね、安全な場所まで一直線だから」

そう言うと魔導師の女の人はデバイスの先端を一度天井に向け、
掲げられたデバイスの宝玉が自ら輝き光を明滅させながら電子音声の台詞を放つ。


414 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 21:27:16 ID:qmsRFxPH
まさかwwこれはwww支援

415 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 21:40:33 ID:4gPXXBcS
ちょ、それはいくらなんでもwww

416 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/06/08(日) 21:40:37 ID:HZ9ntnU2
『Upward clearance confirmation.(上方の安全を確認)』

そのデバイスからの声を受けた魔導師の女の人は、
デバイスを一振り下ろすと自身の足下に二重円の内に八芒星を重ねた
ミッドチルダ式の魔法陣を桜色の魔力光で描き展開する。

『A firing lock is cancelled.(ファイアリングロック、解除します)』
「一撃で地上まで抜くよっ!」
『All right.Lord cartrige.(了解。カートリッジ装填)』

魔導師の女の人の呼び掛けにそう応えたデバイスの杖頭の付け根辺りのパーツが
二回スライドしてその度毎に開く穴から空になったカートリッジが排筴されて、
次いでデバイスの杖頭の付け根辺りから三方に桜色の魔力光の羽根が展開される。
その時の魔力光の羽根の欠片がに舞い散る様は、今もあたしの瞼に焼き付いている。
そして、デバイスから『Buster set.』と云う声に応えて、魔導師の女の人は
再びデバイスを両手で掲げてその先端を天井に向けて腰溜めに構え━━

「ディバイィーン…バスター!」

デバイスの先端を取り巻く三段の桜色の魔力円帯の内に生じた
同じく桜色の丸い魔力塊が瞬時に膨れて、そこから膨大な太さと威力を持った
砲撃魔法が放たれていとも簡単に何階層もの空港の天井を撃ち貫く。

……それらの光景に茫然としていたあたしが次に気が付いた時には、
あたしはその白い魔導師のお姉さんに抱き抱えられて一緒に夜空を飛んでいた。
魔導師のお姉さんは念話で誰かと連絡していてその時はあたしからは話し掛けられなかった
けれど、焔の中から助けだして貰って連れだして貰ったあたしの視界に映った
満天に星が散りばめられた広い夜空と、焔の熱で熱っていたあたしの頬を優しく撫でてくれる
冷たい風と、温かく抱き締めてくれるその女性(ひと)の手の温もりは、
今でもあたしは鮮明に覚えている。

そしてわたしは後に知る。
あの火災は空港全体に及ぶ程の大規模だったもので、
あたしを助けてくれたあの女性(ひと)は
“高町なのは”と言う名前の時空管理局魔導師だと云う事を。

━━助けてくれたあの女性(ひと)は、強くて、優しくて、格好良くて。
泣いてばかりで、何も出来ない自分が、情けなくて……。
あたしはあの時、生まれて初めて、心から思ったんだ。

『泣いてるだけなのも、何も出来ないのも、もう嫌だ、って
 ━━強くなるんだ』って……。

……けど、何でだろう? 
今の今まで、あの焔の向こうに佇んでいた男の人の事を
あたしが忘れていたのは……。



417 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 21:41:27 ID:qmsRFxPH
なんという完全なる世界www支援

418 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 21:43:03 ID:4gPXXBcS
奴さん、何しに来やがった!?
そもそもどーやって!?

419 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/06/08(日) 21:50:24 ID:xJDJ9kWQ
□■□■□

「━━スバル、あんまり暴れてると、試験中にそのおんぼろローラーが逝っちゃうわよ」

何処ぞの廃墟らしいビルの屋上で虚空に向かってパンチやキックを放ってウォームアップしていた
“スバル”と呼び掛けられた少女は、馳ていた思い出をその呼び掛けを切っ掛けに精神集中と共に解き、
ウォームアップも切り上げて自分を呼び掛けて来た主に向き直る。

羽織った白地のパフスリーブ半袖ハーフジャケットの下は
ハイネックの黒地に水色ラインのチューブトップにジーンズのホットパンツと
肘膝のサポーターだけのスバルの立派な胸や露になっているお腹とおへそや太股は
中々輝かしい健康美を醸し出しているが、その両脚に履くローラーブレードと
右腕を手先から肘手前まですっぽりと被う黒鉄色に鈍く輝く大きなギアを組み込んだ
手甲型デバイス“リボルバーナックル”、そしてトレードマークの如く額に巻いていて
明るい黒髪ショートヘアの後ろ頭でリボンの様に括っている風に棚引く白い長鉢巻きが、
スバルの健康美よりも先に周囲の視線を集める物々しさを醸し出している。

「うぇ〜ん、ティア〜嫌な事言わないで〜。ちゃんと油も差して来た〜」

僅かに機嫌を損ねた様に応えつつ軽く伸脚屈伸を始めたるスバルに対し、
ティアと呼ばれたスバルの傍らの少女は手にしている拳銃型デバイス
“アンカーガン”の中折れさせ露にした薬室にカートリッジを込めたり、
自身の左腕に小さな空間ディスプレイを浮かべて腕時計の様に時間の確認をしたりして
スバルに応える素振りは欠片も見せなかった。

こちらもスバルの様なストレートスリーブ半袖ハーフジャケットを羽織っているが、
その下は黒地に緋のツートンカラーのインナーシャツと一体型のミニスカートに
身を包み、白いハイニーソックスと黒いブーツを履いて両手は薄手の黒い手袋を嵌めていて、
スバルと比べるとおとなしめな格好に見えるが、頭の左右でツインテールに括った
明るいオレンジ色の髪と少々強気を帯びた絶妙なバランスのツリ目が一際周囲の目を惹きそうな
感じを醸し出している。

とまぁ、そんな感じに二人の間に遣り取りが交されたが、そこは陸士訓練校の頃から
長年コンビを組んで来た二人で在る。スバルの方は一向に気にせず伸脚屈伸を続ける。

と、突然にスバルとティアナの斜め前の頭上に1DKのアパート部屋並みの大きさの
空間ディスプレイが展開され、そこに癖無く流れる白銀のロングヘアも艶やかな
つぶらな瞳の可愛らしい陸士制服姿の少女がバストアップで大きく映し出される。
スバルとティアナが揃って見上げると、画面の少女は明るく挨拶して
スバルとティアナの点呼を取った後に二人の時空管理局内での所属階級と
二人がこの場に居る理由を確認口調で問い、二人が元気良く間違い無い事を返すと
画面の少女も自身の姓名階級と自身の役目を二人に向けて述べ、
スバルとティアナは敬礼を以て返事を返す。

「━━本日のおふたりの陸戦魔導師Bランク昇格試験の試験官を務ますのは、
 わたくし、リィンフォース・ツヴァイ空曹長です! 宜しくですよー♪」
「「宜しく御願いします!」」




420 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 21:51:38 ID:qmsRFxPH
ウォン閣下にとって空間跳躍など朝飯前支援

421 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/06/08(日) 21:58:36 ID:h9XvDfvq
□■□■□

「━━おぉ、早速始まっとんなぁ。リィンもちゃんと試験官しとる」

スバルとティアナが空間ディスプレイ越しにリィン試験官に敬礼を返している上空、
白い機体の幹部輸送用ヘリの側面のスライドドアを開け放して、陸士制服姿のはやてが
下の様子を眺めて微笑ましく笑みを浮かべる。

「はやて、ドア全開だと危ないよ。モニターでも見られるんだから」

そんなはやてに、後ろから別の女性から声が掛けられる。
「はぁい」と応えて顔を振り向かせたはやての前には、
艶やかな金髪を開け放たれているドアから吹き込む風に乱されぬ様に
右手で押さえている鳶色の瞳の美女が、二つ有る内の今のはやてから見て
奥側のシングルシートに着いていた。

彼女は、フェイト・T(テスタロッサ)・ハラオウン。
はやての十年来の幼馴染みで在り、今は時空管理局本局所属の執務官を務めており
━━そして、二人の共通のもう一人の親友と共に幼い頃から今に到るも仲良し三人組で
遣って来た内の一人で在る。
こちらは、はやてとは違う黒地に白ラインをあしらった次元航行士官の女性制服に身を包んでいる。

「それにしてもフェイトちゃんも何て言うか、忙しいんやねぇ」

直ぐ横手に有るボタンを押して開放していたドアを閉めたはやては、
振り返って自分のシートに着きながら軽く労う様にフェイトに話し掛ける。

「本当なら今頃はフェイトちゃん、空港にフェイトちゃんの呼んだ子達迎えに行ってた筈なんやろ?」
「うん、まぁ…そうなんだけれどね」

応じるフェイトは、少々困り気を交えた微笑みを浮かべてはやてに声を返す。

「……私が追っている次元犯罪者の捜査に関して、もう一人の捜査員から新しい進展の情報が
 齎されたから至急地上本部に来て欲しいって連絡が来たから、何よりも優先して駆け付けたんですもの。
 今から空港へ向かってもあの子達を長く待たせてしまって悪いわ。けど、丁度会えたはやてを通じて
 シグナムにあの子達の御迎えを御願い出来たのは幸運だったわ。有難う、はやて」

自分の席に着いて空間ディスプレイとホログラフ・コンソールを展開しているはやてに向けて、
フェイトは柔らかく微笑みつつ感謝の言葉を述べ、薄暗い席室内に唯一灯った空間ディスプレイや
ホログラフ・コンソールからの照りを受けるはやてもそれに微笑みで返す。

「ええんよ。丁度殆んど同じ時間に、時空管理局の本局に遣いに出してた
 シグナムが帰りに乗る便が空港に到着するかんな。序での出迎え位、シグナムなら
 連絡した機内で快く引き受けてくれたで。フェイトちゃんからの御願いやとも言うたら、
 何や余計張り切って受けとった感じもしたけどなぁ」

その時のシグナムと云う人物との遣り取りを思い出したのだろう、
くすくすと思い出し笑いを洩らすはやて。
そんなはやての様子を見て少々きょとんとしながらも、気を取り直して
はやてが開いた空間ディスプレイに顔を向けるフェイト。

「━━けど、あの子達が来る日時が決まってから此方の試験の開催日時が決まって、
 その結果として偶然予定が重なってしまったから本当なら諦めてたこの試験に立ち会えたのは
 都合が良くなったわ。あの子達にはこの後直ぐに会えるけれど、この試験は見逃したら
 同じ事をもう一度━━なんて言えないからね」



422 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 22:00:25 ID:qmsRFxPH
ウォン閣下の活躍支援

423 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/06/08(日) 22:09:01 ID:7vAgDI0u
先刻までのくすくす笑いを収め、ホログラフ・コンソールを操作して
地上のスバルとティアナを空間ディスプレイに映し出させたはやては、
その動画像に視線を注ぎつつフェイトに応じる。

「まぁ、その子達がこっち来る日程とこの試験の日程とは
 別々んトコが決めてるさかいな、そう云う不都合な偶然が有ってもしゃあないわ」

困った様な微苦笑を浮かべるはやて。
そんなはやての様子を横目で認めつつ、手を伸ばしてホログラ・フコンソールを
操作して副情報を表示するサブの空間ディスプレイを数枚展開させながら
フェイトははやてに話し掛ける。

「━━この二人が、はやての見付けた娘達だね?」
「うん。二人共、中々伸び代が有りそうな良ぇ素材や」

興味から生じる愉しみへの期待感を露にしつつフェイトに応えるはやて。
続けてフェイトがはやてに問い。

「今日の試験の様子を見て、行けそうなら正式に引き抜き?」
「う〜ん…直接の判断は、なのはちゃんにお任せしてるけどなぁ」
「そっかぁ」

フェイトに顔を向けて少し考えながらの
はやてからの応えに、簡潔に納得するフェイト。
そして、モニターとして稼動している空間ディスプレイに再び向き直り、
そこに映るスバルとティアナに視線を注ぎながらはやては嬉しげに宣言する。

「━━部隊に入ったら、なのはちゃんの直接の部下で、教え子になる訳やかんなぁ」




424 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 22:09:37 ID:qmsRFxPH
偶然なのか怪しいww支援

425 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/06/08(日) 22:16:09 ID:pWZQi+bo
□■□■□

スバルとティアナが試験開始に向けて準備を進め、
はやてとフェイトがヘリ上からその二人をモニター越しに観察しているのと同じ時刻、
と或る廃ビルの一室では白地に紺ラインのアクセントを彩ったタイトスカート姿の
制服に身を包み、明茶色の長髪をサイド・ポニーテールにした一人の女性━━高町なのはが
ぽつんと佇み、正面の大きな天窓から射し込まれる陽光の下で目の前に開いた空間ディスプレイの
アイコンを操作して幾つもの何かをチェックして行く。

ディスプレイに映された情報群を見るに、それがスバルとティアナがこれから受ける
魔導師ランク昇級試験のコースやターゲットの最終確認で有ろう事は間違い無い。

リィンと共に今回の試験官を務める彼女としては、試験が滞り無く進むよう、それでいて
想定難易度に誤りが無い様に入念に黙々とチェックを進めて行く。

『━━These is no life response within the range.
 There is no dangerous object either.
 (範囲内に生命反応、危険物の反応は有りません)』

と、なのはの胸元から理知的で落ち着いた感じの電子音声が、
コースとなる廃棄都市内部の走査の状況をなのはに伝える。

『…Check of the course was finished.(コースチェック、終了です)』
「……うん、有難う、レイジングハート」

なのはの首から提げられた胡桃大の紅珠━━なのはのデバイスで在り、
なのはが魔法に目覚めた切っ掛けを与えてくれて以来から続く付き合いになる
相棒たる“レイジングハート”は、自身からの発光の明滅と陽光にその身を煌めかせつつ
走査完了をなのはに告げると、信頼篤い響きでなのはもレイジングハートに応える。

「━━観察用のサーチャーと…障害用のオート・スフィアも設置完了。
 私達は、全体を見ていようか」
『Yes,my master.』

レイジングハートと打ち合わせをしながらも、これから試験を受けるあの二人が
どの様に障害をクリアして行くのかを様々に想像して、なのはの口許に快く愉しげな微笑みが浮かぶ。
そして、モニターの画像を広範囲観察モードに調整しつつ、なのはの眼差しは
スタート地点に立つスバルとティアナが映る一画面に自然と注がれる。


━━だが、なのはとレイジングハートは大きな見落としをしていた。

二人はあくまで「試験コースとその周辺の地表部分」までしか走査しておらず、
また時空管理局仕切りの試験で有るのだからそれ以上への注意は意識過剰と思っていた。
その為、走査の目を向けなかった空間━━廃棄都市区画・地下水路に蠢く
“害意”達の存在に気付けてはいなかった。


……そして、運命の魔導師ランク昇級試験の開始が迫る━━。





426 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 22:22:10 ID:qmsRFxPH
支援

427 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2 :2008/06/08(日) 22:28:53 ID:M4C9evVw
 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

以上、EPISODE:1-1の投下は終了です。
見ての通りのStS本編1話序盤のL.P.F.S版アレンジですので、
あまり目新しいものが多くなく読み応えが有るかどうかは正直不安です。

今回は何故か「あなたは騙されています」とか云うエラーが連続して
2ちゃんそのものを出ては入り直して書き込みを繰り返さざるを得ませんでしたので、
いつも以上に投下に時間を掛けてしまいました。
後続の皆様、誠に申し訳有りませんでした。(謝罪一礼)

尚、次のEPISODE:1-2は今回の最後に触れた「地下水路で蠢く者達」に
カメラを向けたままスバティアの試験実況をダイジェストで書き出して、
その後に一気にバトルに持ち込むつもりですので、良ければ御覧下さいませ。(一礼)

それから、ウォンがあの空港火災の現場に居た理由のヒントは
「ウォンは決して善人では無く根っからの悪人で在る」事と
「スバルの回想を何故わざわざ削らなかったか?」です。

それでは読み手の皆様及び支援して下さった方々、
御付き合い有難う御座いました。それでは、またの機会に御逢い致しましょう。(微笑一礼)

428 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 22:30:41 ID:qmsRFxPH
GJ!
さすがウォン閣下!仕込みは十分だということですね!

429 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 23:48:44 ID:9i9Ska2x
>>408
GJ!!です。
なんと、強奪するのはダンテですかw魔法使いとの接触が楽しみです。

430 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 23:53:42 ID:2AZVCNoM
MOBIUS1がGALM2に思えてくるのは何故だろう
本編で喋るイメージがないからか
猫もって来たって事は中身はブービーかねぇ?
あとオマエかゴーストアイ

431 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 10:22:08 ID:rxueKyl1
━罫線が気になる

432 :一尉:2008/06/09(月) 10:55:32 ID:YTwCMrpV
うん幽霊目支援

433 :322 ◆tRpcQgyEvU :2008/06/09(月) 17:01:05 ID:APvVPN9b
だめだ。タリズマンは某痛機のせいで、どうしてもカッコイイイメージが浮かばない。

それはそれとして、予定を大幅に超えてしまいましたが、EDFの続きを明日の夜十一時に投下します。
今回はナンバーズ魔改造?要素があるので嫌いな方はスルーしてください。

434 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 17:15:16 ID:C5LxILc3
魔改造?望むところだッ!

待ってますw

435 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 17:22:15 ID:qVrUFyuR
LPFS氏GJ。
ウォン様はここでも暗躍してましたか。そして、水路で蠢くものの正体とは!?
しかし、このまま進むとDMCやグレイヴ(名指し失礼)みたく三つ巴の戦いが起こりそうですね。

余談:MAGICの出演予定はあるんですかね?いっそ、同じ技を持たせた『あの娘』をば(阿呆)

436 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 17:41:54 ID:AL83/YmU
「やぁキョン君キョン君、投下予約は空いてるかい?」
「このネタ前にやったでしょ」
「にょろーん」

そんなわけで、7時半からリリ殺十二話を投下します。
36KBなので、支援がいるかも?

437 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 17:50:28 ID:VjhFFav8
支援いっとく?

438 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 18:42:27 ID:F5LStuTD
支援します。

439 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 19:38:27 ID:AVn3C9rZ
少々遅れましたが、投下します。
36KB11分割につき、支援よろ〜

440 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 19:40:30 ID:AVn3C9rZ
かつり、かつり、かつり。
アスファルトの道路の上で、冷たい鉄の具足がゆっくりと音を立てて躍る。
眩いまでの見事な銀髪を揺らして吹き抜ける風は、ただただ朽ちたコンクリートの臭いだけを純粋に運ぶだけ。
ここには、他の場所に見られる喧噪はほとんどなかった。
街中や上空を照らす爆発の炎も、地に叩き落とされたガジェットドローンのオイル臭もない。
地上本部に程近き街道を、殺生丸は1人歩いていた。
ゆらゆら、ゆらゆらと、その長髪と右肩の毛皮を揺らし、陽炎のような雰囲気を纏って。
まるでひとたび強風が吹けば、そのままかき消えてしまいそうな不確かさ。
だがしかし。であるが故に。
幽鬼のごとき殺生丸は、逆に圧倒的なまでの存在感を持って、無人の街を真っすぐに進んでいった。
頭に引っかかるのは、あの死人の臭いを漂わせた中年騎士のことだ。
廃棄区画でギンガを下した後に連絡をしてきたオットーを問い詰め、地上本部に向かったことは既に把握していた。
思えばここ最近のゼストは何かがおかしい。先の襲撃戦からの1週間、ずっとどこかで何かを焦っていたのだ。
寿命が残り少ないということもあるのだろう。フルドライブとやらの反動を見れば、それは理解できる。
しかし、それだけではない。それこそレリック探しとはまた別の、何か確固たる目的が、彼を急がせている。
思い返してみれば、そもそも襲撃戦の前日の反応すら奇妙だった。
単に陽動として攻撃を仕掛けるというだけではなく、もっと何か重要な目的があったような素振り。
であれば、それがここのところゼストを駆り立てているものと一致するということか。
と、不意に殺生丸は、腰に差した爆砕牙へと視線を落とした。
――何故、とどめを刺さなかったんですか?
その時のオットーの問いかけが、ぼんやりと耳に蘇る。
自身の死力を出し尽くしたギンガとの壮絶な激戦は、殺生丸の勝利に終わっていた。
4年前に、ほんの気紛れで命を拾ってやっただけの少女。勝手に自分に執着して、戦いを挑んだ挙句最後には敗れた少女。
それだけのはずなのに、彼は不思議と、ギンガに引導を渡す気にはなれなかった。
不思議なことはそれだけではない。そもそも何故、自分はあの少女相手に爆砕牙を抜く気になったのだろう。
ギア・エクセリオンの加速力は確かに驚異的だった。ほとんど殺生丸と互角と言っていいほどの超スピード。
両手の痺れた感覚は今でも思い出せる。ウイングロードからの回し蹴りは、殺生丸の腕力とも並ぶ威力を誇っていた。
しかし、それだけでは決定的な理由足り得ない。スピードとパワーが同じだけでは、彼と互角とは言い難い。
数百年の時を生き、数多の敵を屠り続けた殺生丸の戦闘スキルは、ギンガよりも明らかに勝っている。
それこそが、身体能力ではほぼ拮抗していたギンガとの間に、圧倒的なまでの実力差を生んでいたのだ。
最後に放ったあの砲撃――この世界に来て最初に目にした魔法・プラズマスマッシャーの一撃も、その気になれば回避はできた。
数ある魔法の中でも、砲撃魔法は発動までのタイムラグが特に長い。
恐らくその使用に慣れていなかったであろうギンガの隙を見逃すほど、殺生丸は愚鈍ではなかった。
にもかかわらず、彼は避けはしなかった。己の腰から爆砕牙を引き抜き――全力をもって、真っ向から相対した。
何故、わざわざそこまでする気になったのだろう。
特に自分を唸らせるような技術を持っていたわけではない。その点では、あのシグナムという女の方がまだ優れている。
それでも自分の本気を突き動かしたのは、一体何だったのだろうか。
――私が守るって決めたんだ!!!
彼女には妹がいた。
殺生丸が毒華爪で葬ろうとした、あのタイプゼロ・セカンド――スバル・ナカジマという妹が。
恐らくギンガは己の執着故に彼に挑み、しかし同時に、スバルを侵略者の手から守るために戦っていたのだろう。
あの時救えなかった最愛の妹を、今度こそ自分の手で守るために。
殺生丸にとっての犬夜叉と同じ「年下のきょうだい」を――その命を賭してでも、守り抜くために。
鋼鉄の拳を咆哮させながら放った紫電の奔流は、あまりにも熱く激しい姉妹愛の形だった。
であれば、彼がその全力の愛の波濤に、同じく全力をもって応えたのは、同じ「年上のきょうだい」としての敬意だったのか。
無意識の中に眠っていたその意識が、彼に刃を取らせたのだろうか。
――殺生丸! 出てきやがれ! くたばりやがったら承知しねぇぞっ!
あの弟のやかましい声が浮かんできた。
単細胞で、変化も毒も使えず、癇癪玉のようにわめき散らしてばかりいる、あの大嫌いな弟の声が。

441 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 19:42:04 ID:AVn3C9rZ
「……馬鹿馬鹿しい」
その幻影を振り払うように、ぽつりと殺生丸は呟いていた。

ミッドチルダ首都・クラナガンの中心に位置する巨大な法の塔・地上本部。
恐らくこの狂騒劇の最後を飾るであろう役者達が、今ここに集まろうとしていた。
1人はゼスト。
1人はシグナム。
そして――1人は殺生丸という名の主人公。


魔法妖怪リリカル殺生丸

第十二話「空色の誓い(後編)」


未だ戦闘の続く廃棄区画に立つ、一棟のビル。
戦闘機人達に追い詰められ、窮地に立たされたティアナの前に、突然スバルが姿を現した。
驚愕するティアナをよそに、スバルは単身戦闘機人・ノーヴェとの戦闘を開始。
ほとんど運動能力も魔力も戻っていない身体を、過剰なまでのカートリッジで強引に突き動かしながら。
そうまでして彼女がここへやって来たその理由は、今から約1時間前まで遡る。

聖王医療院のロビーには、その時2つの人影と1匹の狼の姿があった。
「地上のフォワード部隊のうち、ライトニングは敵召喚士を追って先行……スターズの方も、戦闘機人の攻撃で分断されたそうよ」
管理局員の制服に身を包んだ金髪の美女は、ヴォルケンリッターの一翼を担うシャマル。
先の六課防衛戦にて負傷した彼女は、しかし治療の甲斐あって、数日前には軍務に復帰していたのだ。
「おまけにティアナの方は、フィールド結界に閉じ込められて脱出不可能ってか……」
そしてシャマルに向き合うようにして座っているのは、ヘリパイロットのヴァイス・グランセニック。
かつては武装隊に所属していて、そして今、ようやくその手に戦う意志を取り戻していた。
くそ、と、苦々しげに吐き捨てる。
魔力量は自分よりも多いが、それでもティアナはまだまだ相方のスバル達に比べて決定力不足だ。
思考と判断を駆使して味方を動かすタイプの彼女では、単独で大軍に挑むのはあまりにも不利。
「当面はスターズ4の救援――すなわち、結界を張っている者を抑えるのが急務というわけか」
青い毛並みの狼が、低い人間の男の声を器用に発した。
シャマルと同じくヴォルケンリッターの一員である、守護獣のザフィーラだった。
実際のところ、この場の面々の中では最も負傷の色が濃い。
防衛戦終盤では、倒れたシャマルを庇いながらの戦いだったのだから、無理もないだろう。
「ええ。まずは私のクラールヴィントで、その戦闘機人を捕捉する」
そんな元入院患者の1人と1匹を迎えにきたシャマルが言った。
彼女の指輪型アームドデバイス・クラールヴィントは、守護騎士達のサポートに特化した機能を持っていた。
攻撃魔法は一切使えないが、そのエリアサーチの正確さと効果範囲は、他のあらゆる魔導師の追随を許さない。
いかなる高度なステルス機能を有していようとも、その神眼の前ではあらゆる隠蔽行為が無意味である。
「なら、善は急げッスね。まずは俺が動かすヘリを――」
「――待ってください!」
ワイシャツの上にパイロット服の上着を羽織ったヴァイスが立ち上がろうとするのを、不意に横からの声が遮った。
まだうら若き少女の声は、残るもう1人の入院患者の声だ。
「スバル……」
思わず、シャマルがその名を呟いていた。
いつの間にか姿を現していた、歳若い新人フォワードのスバルが身に付けているのは、パジャマ代わりのシャツとホットパンツだ。
その服装が、彼女の置かれた立場を如実に物語っている。
殺生丸によってその身に浴びせられた猛毒は、スバルの身体から戦う力を根こそぎ奪い去っていた。
今の彼女には魔導師としての能力は残されておらず、そこには年相応の非力な身体しかない。
「あたし……あたしも、つれてってくださいっ!」
にもかかわらず、スバルは大声で懇願した。

442 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 19:42:10 ID:f4AZl90h
支援

443 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 19:43:10 ID:AVn3C9rZ
「駄目よ、スバル。まだ戦えるような身体じゃないんだから……」
当然、シャマルはそれを制しようとする。
機動六課では医務官を務めている彼女としては、重病患者も同然のスバルを、おいそれと戦場へ連れていくわけにはいかなかった。
「ギン姉が……ティアが危ないんでしょ!? だったらあたしがっ……!」
「彼女達は、私達が責任を持ってちゃんと助けるから!」
それでもなお退かないスバルと、それを必死に説得しようとするシャマル。
両者ともに一歩も譲らず、話は平行線を辿ったまま一向に進まない。
そもそも今のスバルは、たとえ出撃したとしても足手まといにしかならないような存在なのだ。
こんなことで時間を取られても正直迷惑極まりない。
溜め息混じりにヴァイスが立ち上がり、諭そうとしたところを、
「――もうあたしは嫌なんです!」
より一層語気の強さを増したスバルの声に、その持ち上がった腰を押し留められた。
「誰も、何も守れずに……1人でじっとして、誰かに守ってもらうだけなのは……っ!」
真摯に発せられた声の中には、僅かな揺らぎが宿っている。気付けば、涙目になっていたスバルがそこにいた。
思い返されるのは、あの4年前の空港火災。何の力も持たず、状況も打開できず、震えて助けを待つばかりだった不甲斐無い過去の姿。
そして1週間前の地上本部戦でも、結局自分の手でギンガを救い出せず、無様な姿を晒してしまった。
もう、そんな悔しい思いをすることは、彼女には耐えられなかった。
「やれやれ、やっぱりこうなっちゃったか」
と、唐突に横合いからまた声が割って入る。
苦笑いを浮かべた、緑髪の女性の姿がそこにあった。
顔には丸眼鏡をかけ、青いカラーリングの制服に白衣を羽織っている。
時空管理局本局技術主任、マリエル・アテンザ技術官。
かつてはなのはとフェイトのデバイスの改良を手がけた、スバルにとって、いわば「専属医」のような存在だった。
戦闘機人の人工の肉体には、その機能維持のために定期的なメンテナンスが必要不可欠となる。
デバイスやヘリコプターのような機械が整備を必要とするように、サイボーグの彼女らにもまた、そうした処置が必要なのだ。
それをスバル達が亡母クイントに引き取られてから担当していたのが、この女性なのである。
「マリーさん……」
もうすっかり慣れ親しんだ専属医の愛称を、スバルがか細い声で呼んだ。
「大体予想はしていたけどね。だから……ほら」
言うと、マリエルは眼鏡の奥の視線を下へと落とし、皆の注意をそちらへと促す。
そちらを見れば、彼女の手は、キャスター付きの大きなケースの持ち手を掴んでいた。
銀色に光るそれのロックを外し、何やら物々しいケースが開け放たれる。
その中に入れられていたのは、
「デバイス……?」
黒光りするベルトだった。
それも普通のベルトではない。全体が金属製という相当無骨な作りになっており、
おまけにそのバックルサイズも通常よりも遥かに大きかった。
明らかにズボンを腰部分に固定するためのそれとは違う。これはむしろ、何らかの機能を持った戦うための装備品。
そんな気配が、スバルにそれをデバイスだと認識させていた。
「そう。試作型ストレージデバイス・ブーストバックル」
マリエルは一瞬にして真剣な表情を作ると、その異形のデバイスのスペックを読み上げ始める。
「カートリッジによる装備者の魔力増強に特化した構造。本体重量20kg。総弾数150発。オートマチック式……」
発せられたのは、冗談にしか思えないようなとんでもない数字だ。
20kgといえば、ほとんど旧時代の軍隊の行軍用バックパックに匹敵するような重量である。
当然、これをつけて身軽な戦闘などできるはずもない。
否、それ以上に問題なのはカートリッジの弾数だ。
使用者の身体に外部から魔力を供給するカートリッジが、身体にも一定の負担がかかる代物だということは周知の事実。
近代ベルカ式の誕生に伴い、少数ずつ使うのであれば、その負荷もほとんどゼロに近いものにはなったが、
一度に大量に使用することが危険であることに変わりはない。
故に、たとえばリボルバーナックルの最大装填数は3発。なのはのレイジングハート・エクセリオンですら6発である。
にもかかわらず、150発も連続使用することを前提にしているというのはどういうことだ。
それこそ、レイジングハートの25倍という異常なまでの数字。リボルバーナックル換算ならば50倍だ。
これら普通のデバイスをピストルとするならば、このベルトは軽機関銃にすら相当する暴れ馬。

444 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 19:44:15 ID:AVn3C9rZ
「無茶苦茶じゃねえか……」
ヴァイスの呟きが、そのスペックの全てを過不足なく物語っていた。
「ええ。それこそ、もはや戦闘機人でもなければ扱えない代物よ」
事実、これを人間が完全に使いこなすことは100パーセント不可能だろう。それこそ、あのエース・オブ・エースにすら叶わない。
これを使える見込みがある者がいるとすれば、人間以上に頑丈な身体を持った戦闘機人をおいて他にいるはずもなかった。
そう。まさにこの場において、唯一スバルだけが扱える可能性を持った物。
「……スバルだったら、いざという時は戦いに行くって言い出すんじゃないかと思って、作っちゃった」
さらりと言ってのけたマリエルの顔には、笑顔が浮かんでいた。
スバルが彼女に慣れ親しんでいたように、マリエルもまた、スバルの無鉄砲さをよく理解していたのだ。
だからこそ、来たるべき時に備え、この1週間を彼女の戦う力を生み出すために費やした。
「このカートリッジの魔力でナックルダスターを発動し、失われた身体能力を底上げする」
「残りの分を魔法とマッハキャリバーに回して、元の力を取り戻す」
「限定的に、だけどね」
マリエルの言葉が紡がれる度に、スバルの表情に力が戻っていく。
これなら戦える。
魔力と身体能力の問題はこれでクリアーされた。愛する姉のギンガと、無二の親友たるティアナを助けに行ける。
あと必要なものは――覚悟。
「でも……もちろんいくら戦闘機人といえど、短時間のカートリッジ連続使用が身体にかける負荷は計り知れない」
優しい笑顔を浮かべたマリエルの表情が、急速に深刻さを帯びていく。
元より彼女も、こんな危険な物をいきなり手放しで渡すつもりは毛頭なかった。
「それでも、これを使う覚悟はある?」
それだけは聞いておかなければならなかった。
スバルが生半可な気持ちでこのデバイスを使うというのならば、全力で止めなければならない。
未だ試験運用すら行っていない――というか行えるはずもないこの暴れ馬の危険性は、未だ未知数なのだ。
故に、マリエルは真剣な面持ちで、真っ向からスバルの双眸を見据えて問いかける。
眼鏡の奥の瞳が、この優しい技術官には珍しく、険しい色を宿していた。
その場に居合わせたシャマル達もまた、同様の様子でスバルの返答を伺う。全員が全員、マリエルと同じ心境だった。
対話の中で、一拍の間が空く。張りつめた緊張感が肌に痛い。
「やります」
ややあって、スバルが答えた。
「やってみせます。そして……みんなを助けてみせます。必ず」
そのエメラルドを思わせる澄んだ緑の瞳に、燃えるような意志を宿して。
短い答えの中に秘められたのは、決して折れることなき灼熱の意志。
この身が傷付こうとも、たとえ砕け散ろうとも、絶対に仲間を、家族を――大切なものを守り抜こうという決意。
普段は能天気なお調子者であるスバルが、本当の本当に真剣な時に見せる、真摯な眼差し。
射抜くような眼光が、マリエルの丸眼鏡に向けられていた。
「……なら、決まりね」
緊張を解くようにして一息つくと、マリエルの表情に笑顔が戻った。
これもまた、ある程度は予想できていた結末なのだ。
スバルの意志は強い。半端な覚悟で戦いに出るような、そんな娘ではない。
だからこそ、安心して任せられる。このブーストバックルを作り、託すことができる。
そして、マリエルの判断に異論を唱える者も、この場にはいなかったのだ。スバルの覚悟を、皆が見届けていたから。

445 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 19:45:37 ID:AVn3C9rZ
軍用ヘリを確保し、ヴァイスの運転のもと、3人と1匹は戦場へと向かう。
ようやく廃棄区画の高速道路に着陸した時には、既にギンガは殺生丸との戦闘を終え、ぼろぼろになってフェンスに背中を預けていた。
持てる全ての力と技を出し尽くした姉は、ひどく穏やかな表情で目を閉じている。
意識を失った影響からか、デバイスは待機モードになっていた。
ぽかぽかと暖かい陽光を全身に受けながら、安楽椅子にでも腰掛けて寝入ってしまったような、そんな安らかな顔。
あたかも、そのまま死んでしまったかのようにさえ見えた。
「ギン姉!」
ヘリから降りたスバルは、ブーストバックルを装着することさえも忘れて駆け出した。
まさか間に合わなかったのか。自分がもたもたしていたが故に、ギンガは敵の手にかかってしまったとでもいうのか。
最愛の姉の元へと向かい、ぼろぼろと涙を流しながらその身体を揺する。
「ギン姉! ギン姉っ!」
幾度となく言葉をかけながら、必死でその意識を揺り起こそうとした。
その甲斐あってか、ある時不意に、その瞼が微かにぴくりと動く。
「……ん……」
ゆっくりと覚醒し、瞳を開いたギンガの視界に映ったのは、涙でその目を潤ませながらも、満面の笑顔を浮かべる妹の姿だった。
「ギン姉……!」
大丈夫だ。ギンガは生きていた。大切な肉親の命の灯火が尽きる前に、ここまで来ることができた。
感極まったスバルは、未だ意識の朦朧としているギンガに思いっきりしがみ着く。
「よかった……ギン姉……!」
「スバル……どう……して……?」
力いっぱいにギンガを身体を抱きしめるスバルに、状況が読み込めない当の本人は、
ぼうっとしたような表情で問いかけることしかできなかった。
スバルは戦えるような身体ではないはずだ。それが何でまた、こんな戦場に来ている。
未だに微かな霞のかかった意識の中で、ギンガは漠然とそんな疑問を抱いていた。
そんな彼女の様子を尻目に、スバルの表情が変わる。
いつになく頼もしい、強気な笑顔を浮かべたかと思うと、ギンガの首からキャリバーズを取り、その右手に掴んだ。
「後はあたしに任せて」
確固たる意志の下に、スバルは宣言した。

デバイスをセットアップしたスバルは、屈強な大男にその身を抱えられていた。
今の彼女の様子を表現するなら、まさに全身フル装備という言葉が相応しい。
両の手には、漆黒と白銀のリボルバーナックル。ギンガが殺生丸との戦いで最後にみせた、両手の同時装備だ。
足元には、インテリジェントデバイス・マッハキャリバー。ファイナルリミッターが解除された音速の具足は、空色の翼を輝かせている。
腰に着けられたのは、黒光りするブーストバックル。
デバイスを装着し、ギア・エクセリオンを使う時点で、既に10発もカートリッジを使った。
更に背中には、真紅のカラーリングが映える、何やら大がかりな金属ウイングが背負われている。
地上本部にあったのをくすねてきた、試作フライトユニット・インパルス01。
有事における航空魔導師不足のために開発された、陸戦型を飛ばすための魔力炉式の翼だ。
もっとも、燃費の悪さ、そしてそもそもの陸戦魔導師の空中戦への適応の低さから、正式採用は見送られていたのだが。
これだけの装備の総重量は、計算することすらうんざりになってくる。
ナックルダスターによって体力を取り戻していなければ、スバルは即座にぺしゃんこになっていただろう。
(流石に、ちょっとキツいかな……)
身体の節々が、微かな痛みを訴えている。
ある程度は覚悟していたが、カートリッジの連続使用による身体への負担は、想像していたのよりもやや大きかった。
それでも、引き返すつもりは毛頭ない。唯一無二の親友の命がかかっているのだ。自分の都合など考えてはいられなかった。
ビルに張り巡らされた結界は、既にシャマルがナンバーズを確保することで解除されている。
後はスバルが、その翼で思いっきり突っ込めばいいだけのこと。

446 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 19:46:37 ID:AVn3C9rZ
「用意はいいな」
浅黒い肌の男が、スバルに確認する。
銀髪の中に青い犬耳をぴょこんと立たせたのは、あのザフィーラの人間形態の姿だ。
最初はスバルもえらく驚いてはいたが、そもそもエリオ達がよく一緒に遊んだという使い魔のアルフもまた、
人間としての姿を有していたという。
ミッドチルダ文明とベルカ文明の間で呼称の違いこそあれど、
根本的には同じ存在であるこの守護獣が、こうした能力を持っていないはずもなかった。
これからの手順はこうだ。
まず、ティアナのいる階層の壁目がけて、ザフィーラが思いっきりスバルを投げ飛ばす。
加速のついた状態で、スバルはインパルス01を起動し、プロテクションを展開してコンクリートの壁をぶち破る。
突入後は重りにしかならないインパルス01をパージして、敵戦闘機人と交戦、これを撃破する。
使えるカートリッジに限りがある以上、ウイングロードで目的地まで登るという無駄遣いはできなかった。
『マスター』
ふと、スバルの足元から彼女を呼ぶ声がする。
そちらを見れば、マッハキャリバーのスフィアが空色に光っていた。言葉を発していることを示す明滅だ。
『マスターはこうして戦場に出ることなく、後方に留まることもできました。それでも、マスターは敢えてこの道を選んだ……』
「マッハキャリバー……」
インテリジェントデバイスの機械音声が、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
無機質な声であり、しかし、いつになく強い感情の込められた声。
『ならば私の役目は、マスターのために――貴方の憧れる強さを貫くために、共に走ること。それが貴方の教えてくれた、私の生きる理由』
連日続けられたなのはのハードな訓練。幾度となく駆け抜けた戦闘。
いつもいかなる状況でも、最も近くで共に戦ってくれた鋼鉄のパートナー。
人工の機械音声でも、はっきりと理解できる。マッハキャリバーの声は、今までにないほどに素直な響きを持っていた。
『共に進みましょう――相棒』
「……うん!」
マスターとデバイスという主従関係ではない、対等な「相棒」という立場での、真摯な言葉。
機械的だったマッハキャリバーに、スバルがずっと望んでいたこと。それを受け止め、彼女は力強く頷いた。
それが合図と言わんばかりに、ザフィーラの隆々とした筋肉が躍動する。
「でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇやっ!」
気合一発。その身に宿した筋力を爆発させ、盾の守護獣が思いっきりスバルを投げ飛ばした。
筋肉という名のカタパルトから射出され、若きフロントアタッカーの身体は空中に躍り出る。
インパルス01のエンジンを始動。猛烈な加速に伴う風圧が、青い前髪を額に向かって押しつけた。
風に揺れるバリアジャケット。たなびく純白のはちまき。煌くギア・エクセリオンの双翼。
『Protection.』
ブーストバックルから、5つの空薬莢がばら撒かれた。同時に展開される、不可視の破城槌。
今まさに、スバルは挑む。あの戦闘機人達が待ち受けるコンクリートの牙城へ。窮地に立たされた親友を、この手で救うために。
「いぃっけえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ―――――ッ!!!」

かくして、4枚の翼を携えた救済の天使は、遂に友の待つ戦場へと降り立った。

447 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 19:47:42 ID:AVn3C9rZ
薄暗き廃ビルの中に響き渡る、2つのローラーブレードの駆動音。
咆哮と共に鋼鉄のスピナーが激突し、時折舞い散る火花が一瞬闇を照らす。
チンクへと銃口を突き付けたティアナの目の前では、スバルとノーヴェが激戦を繰り広げていた。
ガンナックルの弾丸をばら撒くノーヴェ。軽快な発砲音と共に、高速の銃弾が一挙に連射される。
対するスバルはそれを回避。ギア・エクセリオンの超スピードを巧みに制御し、複雑な軌道を描いて弾丸の雨を掻い潜った。
そして、一撃。
「うりゃあぁぁぁぁっ!」
ノーヴェの懐を間合いに捉えたスバルの、右のリボルバーナックルが撃ち込まれる。
新たに排出されるカートリッジ。出力を高めるナックルダスター。唸りを上げるナックルスピナー。
猛烈な威力と速度で繰り出された漆黒の鉄拳は、過たずノーヴェの腹部を直撃していた。
「ぐぅ……ッ!」
軽く後方へと押し出される、華奢な女の肉体。ジェットエッジのローラーが、がりがりと床を削った。
そして、足元に伝わる異物感。
転がっていたカートリッジの空薬莢を踏んでしまったのだろう。ノーヴェの身体が急激にバランスを崩す。
ここに至るまでに、スバルは相当な量のカートリッジを使用していた。
悲鳴を上げる身体に思いっきり鞭を打ちながら、強引に魔力を引きずり出し続ける。当然、足元の空薬莢の数も半端ではない。
その一つに足を取られたノーヴェは、今まさに盛大に転倒しようとしていた。
そしてその隙を突いて、スバルが彼女の元へと追いすがる。
迫る左の白銀の拳。空気を切り裂く音。
反射的にガントレットの右腕を突く。強引に捻られる肢体。脚部のスピナーが回転し、ノーヴェの右脚が振り上げられた。
「おおおぉぉぉーっ!」
「らあぁっ!」
衝突。左腕と右脚の回転刃が、真っ向からぶつかり合う。
一瞬の膠着の後、スバルとノーヴェの身体が、互いに反動で弾き飛ばされた。威力は互角――否、スバルの方が僅かに高い。
両腕と脚部と腰に、計4つものデバイスを装着したスバルは、かつて互角に戦ったノーヴェを凌ぐ能力を発揮していた。
元々の腕前は拮抗している。しかし、攻撃力では僅かに上回り、スピードでは大きく差を付けていた。
今回のケースは、ギンガと殺生丸の戦いとまるきり逆だ。技量が同じで、他に差が開いている。
どちらが優位に立つかは、火を見るよりも明らかだった。
「だあぁぁぁっ!」
加速をつけて飛びかかってきたノーヴェのドロップキックを、身をよじってかわす。赤毛の戦闘機人が小さく舌打ちした。
しかし、スバルの表情もまた冴えていない。顔にはじわりと汗が浮かび、見れば微かに肩が上下している。
この戦い、ハンデがあるのは何もパワーとスピードで劣るノーヴェの方だけではなかった。
スバルのスタミナは限られている。ナックルダスターに魔力を供給するだけのカートリッジがなくなれば、そこでゲームオーバー。
全身に身につけたデバイスの重量に耐えきれず、そのまま身動きできなくなったところを潰されるだろう。
加えて、カートリッジの負荷もあった。得られる魔力の反動で節々が痛む身体を、無理にでも動かさなければならないのだ。
「そんな間に合わせの力でぇぇぇ……っ!」
憎々しげに唸りながら、ノーヴェがガンナックルの右ストレートを繰り出す。
ほとんど満身創痍の相手に互角以上の戦闘を演じられて、いい気がするはずもなかった。
しかし、またもその攻撃は掻い潜られ、逆に顎に右のアッパーを撃ち込まれる。
宙を舞う身体。しかし、浮いている暇はない。エアライナーの光の道を形成し、足場を取って再び蹴りかかる。
がしゃん、がしゃん、と、薬莢の排出音が鳴り響いた。
マッハキャリバーとジェットエッジ。ほとんど同じ設計思想の下に生み出された具足が、火花を散らして激突した。

448 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 19:49:40 ID:AVn3C9rZ
「――何でだっ! 何でテメェはそこまで戦えるっ!」
遂に我慢は限界に達し、ノーヴェはわめき散らしていた。
「そんなボロボロの身体で、何でそこまでやれるんだ! そのマッハキャリバーとかいうのの力だってのか!」
「違うっ! これはあたし達だけの力じゃない! それだけの弱い力なら、ギア・エクセリオンに振り回されてとっくにやられてるっ!」
絶叫するノーヴェに、スバルは猛然と反論する。
その気合いを反映してか、蒼穹の翼輝くマッハキャリバーが、ジェットエッジの蹴撃を弾き飛ばした。
「チィッ……意味分かんねぇんだよッ!」
怒号を上げながら、尚もノーヴェは攻撃の手を緩めずに追いすがる。
たとえかわされようと、防がれようと、戦闘機人の鋼の四肢を、怒濤のごとき勢いで繰り出していった。
「じゃあ何がテメェを突き動かしてるってんだっ! まさか仲間の力とか、ンな生ぬるいこと言うんじゃねぇだろうな……ッ!」
冗談じゃない。そんな不確かな理由で、自分が追い詰められてたまるものか。
そんなもののおかげで、ろくに戦えもしないはずの相手に押されるなど、ノーヴェには耐えられないことだった。
その程度の根性論で覆されてたまるか。それでは自分は、今まで何のために――
「――ああそうだよッ!」
目の前のスバルは、しかしそれを、すがすがしいまでに思いっきり肯定してみせた。
「なっ……」
傍目から見つめていたティアナの目が、思わず驚愕に見開かれる。
そんな様子などお構いなしに、スバルは乱撃の応酬に挑みながらその言葉を続けていった。
「自分のために戦ってる人は、守るのが自分だから――自分が可愛いから、傷付かないようにしようとして、結局全力で戦えない。
 でも、誰かのために戦ってる人は……その人を守るためなら、自分が傷付くことなんてどうだってよくなっちゃうんだよっ!」
この戦いは、我が身可愛さがための戦いではない。唯一無二の親友を、この手で救うための戦いだ。
ティアナを守るためならば、この身体がどうなろうと構わない。
魔法もシューティングアーツも使えぬ貧弱な身体が、戦いの果てに粉々に砕け散ろうとも。
「それが――“人間”なんだよッ!!!」
雄たけびと共に、空を切り裂く一撃が撃ち出される。
攻撃魔法の威力を纏ったリボルバーキャノンの鉄拳が、ノーヴェの身体を盛大に吹っ飛ばした。
誰かのために、己の力の全てを出し切れる。ありふれた日常の中で培われた情故に、全力全開で戦える。
戦うためだけに生きる戦闘機人にはない力。
愛を知る人間だけが振るうことのできる力。
それがスバルの力。
「……あたし達は“戦闘機人”……戦うための、兵器だ……!」
それでも、僅かな血反吐を床に吐きつけながら、尚もノーヴェは立ち上がる。
「戦って勝ち抜く以外の生き方なんて――ねぇんだよッ!!!」
自身の生き方を、その足で肯定せんとするが故に。
戦って、戦って、戦い抜いて培った力こそが、唯一ノーヴェが生きるために手にした術。自分以外のために戦うことなど考えたことがない。
共に戦う姉妹達も、それこそ敬愛するチンクでさえも、突き詰めれば任務を遂行するためのパートナーに過ぎなかった。
こんなところで、訳の分からない理由で負けていては、自分の存在意義などない。
ジェットエッジをフル加速させ、猛烈な速度でスバルへと殺到する。跳躍する身体。振り出される激烈な蹴撃。
「じゃあ、誰かを守るために戦って生きてもいいじゃないっ!」
雄たけびと共に繰り出されたリボルバーナックルと、空中で激突する。
「命を賭けてでも守れる人を捜すために……誰かと一緒に笑い合ったり、高め合ったり……
 ……そんな風に、戦闘機人だとか、戦うための兵器だとかじゃなく……人間として生きていくことだってできるはずだよっ!」
「うるせぇ! テメェみたいな裏切り者が……あたしの生き方を否定するんじゃねぇっ!」
「この分からず屋ッ!」
スバルの腰のブーストバックルが、3発のカートリッジを一挙にロード。
必殺の拳撃はさらにその破壊力を高め、迫るスピナーの凶刃を弾き飛ばす。
その身を煽られながらも、ノーヴェは全身の筋力を搾り出し、鍛え上げられた身体の態勢を立て直して強引に着地した。
「あたしは――ティアのために戦うスバル・ナカジマは! 戦うためだけに戦ってるアンタには、絶対に負けないっ!」
構えを直したノーヴェを視線の先に捉え、スバルは高らかに宣言する。

449 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 19:50:51 ID:AVn3C9rZ
刹那、更なるカートリッジがロードされた。
噴き出す排気煙。ベルトから吐き出される薬莢。円を描く両手の動きが、その中心に魔力スフィアを生成する。
もっと大きく。もっと強く。一撃必倒のフィニッシュブローを発動すべく、空色の魔力が注ぎ込まれた。
振りかぶられる両の拳。この一撃で、全てを終わりにしてみせる!
がしゃん、がしゃん、がしゃん、がしゃん、がしゃん、――――――――――かちっ、かちかちっ。
「っ!?」
虚しく響いた音が、スバルの動作を停止させた。
カートリッジがロードされる時の、あの轟くような音が聞こえてこない。反射的にベルトへと視線を落とす。
150発もの弾薬を抱えていた暴れ馬は、しかしただその排出口を無駄に開閉させてばかりいた。
(まさか、弾切れ!?)
何ということだ。この局面にきて、自分はカートリッジを全弾使い果たしてしまったというのか。
生命線ともいえる魔力の結晶は、今やスバルの手元には1発たりとも残されていなかった。
「ハッ! 威勢のいいこと言ってる割にゃ、そこで打ち止めかぁぁぁっ!」
その痛恨のミスを見逃すほど、ノーヴェは甘くはない。
千載一遇の勝機を得たりといった様子で、勝ち誇った叫びを上げながら、ローラーブレードを回転させて肉迫する。
そして、動いたのはノーヴェだけではなかった。
脇から飛び上がる、新たな影。真紅の刃と栗色の長髪が、スバルの視界の片隅で躍動する。
意識を取り戻したディードが、ノーヴェに合わせて同時攻撃を仕掛けてきたのだ。
スバルは一歩も動けない。あと1発でもあれば完成したとどめの一撃は、未だ魔力不足で発射もままならない。
せめてあとカートリッジ1発分だけでも、この身に魔力が残されていれば。
非力な少女に逆戻りとなったスバルは、ただただ悔やむことしかできなかった。
(やられる……っ!)
――どん、と。
射撃魔法の銃声は、同時に「2発」響いた。
「がぁ……っ!」
「う……!」
スバルの視線の先で、唐突に2人の戦闘機人がもんどりうって倒れる。
「オットー! ディードッ!」
視界の外から、チンクの声が響いてきた。
「え……!?」
スバルは困惑する。
片方を――今まで戦っていたノーヴェを撃ち落とした弾丸は、今までによく見知ったオレンジ色の魔力光。
これはすぐそこに立った親友・ティアナが放ってくれた一撃だ。それだけは理解できた。
だが、もう片方のディードの後頭部を正確に捉え、一発で昏倒させた魔力弾は一体誰が放ったものだ。
こんな色の魔力光など、今までに見た覚えはない。大体、これほどまでに精密な射撃を、ティアナ以外に誰ができる。
反射的に、弾丸が飛来してきた先へと視線を向けた。
そこは先ほどスバルがぶち抜いた横穴だ。そしてその先にある大空には――
「ヴァイス、さん……!?」
ライフル型のデバイスを構えた、ヴァイス・グランセニックの乗るヘリの姿があった。
元地上本部武装隊所属。魔力量には恵まれなかったものの、卓越した技能によってエースとまで謳われた、百発百中のスナイパー。
かつて愛銃ストームレイダーと共に振るった腕前は、今もなお、ディードの意識を難なく吹っ飛ばすことに成功していた。
そして開かれたハッチから覗く人影は、ヴァイス1人だけではない。

450 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 19:51:47 ID:AVn3C9rZ
「くっ!?」
立ち上がろうとしたノーヴェを、顕現した光のリングが縄のように締め上げ、封じ込める。
若草色の美しいバリアジャケットを身につけた、守護騎士シャマルのバインドだ。
「――スバル!」
と、横合いからスバルを呼ぶ声がした。
幾度となくかけられた、すっかり耳に馴染んだ声に振り向けば、何やら金属製の物体が飛び込んでくる。
「わっ」と短く声を漏らし、反射的にそれを右手で受け取った。
くろがねのリボルバーナックルの手の中で輝くのは――新たな魔力カートリッジ。
首を持ち上げた先にあるのは、あのオレンジ色の髪のパートナーの姿。
「一発、ぶちかましてやりなさい!」
クロスミラージュの最後のカートリッジを投げてよこしたティアナが、スバルに向かって言い放った。
驚愕に彩られて、半ば呆けたようだったスバルの表情に、一挙に力が戻ってくる。
親友に向けられるは、ギンガに見せたものと同じ、あの頼もしさを持った強気の笑顔。
「……おうっ!」
元気よく返すと、スバルは再び虚空に浮いた魔力スフィアへと向き直った。
託されたカートリッジをブーストバックルに装填し、魔法の発動に必要な最後の1発をロードする。
両のリボルバーナックルの手のひらが空色の球体へとかざされ、更なる魔力を注ぎこんだ。
そして、その拳を振りかぶる。
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーっ!」
咆哮を上げ、スバルはギア・エクセリオンを始動させた。神速の領域にさえ達した音速の具足が、ノーヴェ目がけて一直線に殺到する。
自分は1人で戦っているんじゃない。
マリエルが戦う武器をくれた。ザフィーラがここまで運んでくれた。
ヴァイスとシャマルの援護を受け、ティアナに最後のひと押しをもらった。
これが、人間の持ちうる仲間達によって結集された、結束の力。何よりも貴き、絶対の力だ。
魔力チャージが完了。左手の白きリボルバーナックルが、右手と同じ漆黒に染まる。身体の中心で組まれる両の手のひら。
「……戦うための兵器だってさ……」
不意に、ぽつりと、ティアナが呟いていた。
「笑い合ったり、優しく生きることもできるわよ……」
「ディバイイィィィィィィィィィィィ――――――ンッ……!!」
ティアナの言葉に、スバルの絶叫が重なる。
「戦闘機人に生まれても……誰よりも人間らしく、馬鹿みたいに優しく……一生懸命に生きてる娘を……」
戦うための兵器に生まれながら、自分達人間と共に生き、人間としての力を振りかざす、目の前の少女を。
「私は知ってる」
ティアナの目の前で、スバルとノーヴェの距離がゼロになる。
突き出される両腕。押し込まれる魔力スフィア。15発のカートリッジによって生み出された、絶大なエネルギーが迸る。
「バスタアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ――――――――ッ!!!」
瞬間、世界は空色の光に満ちた。

451 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 19:52:50 ID:AVn3C9rZ
一撃必倒のディバインバスターがノーヴェを打ち倒した時、ギンガもまた、ヘリの中でその身を横たえていた。
殺生丸との戦いでずたずたになった身体へと、マリエルが応急処置を施していく。
されるがままとなっていたギンガは、その光景をじっと見つめていた。
意識は既に完全に覚醒している。視線の先で、スバルが敵を倒したことも理解できていた。
あの弱虫で泣いてばかりで、彼女にとっては守るべき存在だった妹が、自らと同じように、命を賭けて誰かを守ろうとしたことを。
ふと思い出されたのは、先ほど自分が殺生丸相手に繰り広げた戦いだ。
両の手にリボルバーナックルを携え、ブリッツキャリバーのファイナルリミッターを解除し、持てる全ての力でぶつかっていった。
ありとあらゆる力と技を駆使し、かつて自分が憧れたあの男を、この手で打ち倒さんとするために。
そしてその結果は、再確認するまでもない。
「……負けたなぁ」
不思議と、呟くギンガの口元には、微かな笑みが浮かんでいた。
「あの殺生丸って人に?」
それを見たマリエルは、ギンガに向かって問いかける。
「ええ、負けました。それはもう、こてんぱんに」
返すギンガの言葉は、至って晴れやかだ。
彼女の抱いた想いの反動によって生まれた怒りや憎しみは、今やそこには一片も残されてはいない。
全くの後腐れのない、晴れ晴れとした表情と声色がそこにあった。
「初めて殺生丸さんに全力で立ち向かって、思いっきり負けて……スバルの笑顔を見て……」
その緑の瞳で、どこか遠くを見つめながら、ギンガは言葉を紡いでいく。
全ての理性と感情をさらけ出し、憎むほどに恋したあの男へと叩き込んだプラズマスマッシャー。
己の無力さを嘆き、悲しみ、ひたすら泣きじゃくっていたスバルが見せた、あのたくましい笑顔。
それらの光景が、目の前にありありと浮かび上がってくる。
「そしたら……何かもう色々、どうでもよくなっちゃいました」
ぷっと噴き出すようにして笑いながら、ギンガはそう締めくくった。
「……そう」
その様子に、マリエルもまた笑顔で答える。
あの4年前の空港火災の夜からずっと、ギンガは殺生丸の背中を追いかけ続けていた。
いずこへ消えたかもつかぬ彼の姿を捜し続け、いつか訪れるであろう再会の時を渇望し、日々を生きてきた。
再び現れた彼が、レリックを狙う犯罪者に与していたと知った時には、その訳を聞かんと奔走を始めていた。
彼が最愛の妹であるスバルを傷付けた時には、その憧れを憎悪へと変え、この手で打ち倒さんと心に誓った。
そして彼との戦いに決着がつき、スバルの笑顔が戻った今には、もう何もかもがなくなっていた。
良くも悪くも今までのギンガは、殺生丸という絶対の存在によって、己を縛り続けていたのだ。
それが今、全力で戦い、思いっきり負けたこの時、たちどころに消え失せた。
4年もの間、自らの生み出した心のしがらみに囚われていたギンガは、今この時に、ようやくそこから解放されたのだった。

452 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 19:53:49 ID:AVn3C9rZ
戦闘が終わり、その場の4人のナンバーズが、シャマルによって次々と確保されていく。
ようやくこれでこの場は片付いたのだと実感し、ティアナは安堵の息を漏らした。
そして、自分を助けてくれたスバルの方へと視線を向け――いきなりふらりと倒れた彼女の元へと駆け寄った。
「スバル!」
ほとんど泣きそうな声を上げて、ティアナは無二の親友の名を呼ぶ。
やはりあれだけのカートリッジで、動かぬ身体を強引に動かした無茶が祟ったのか。その程度とは一体どれほどのものなのだ。
最悪、それこそ命すら落としてしまうのではないのか。
押しつぶされてしまいそうな不安に駆られ、ティアナは床に突っ伏したスバルの元へと急ぐ。
そして当のスバルは、
「……あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜……」
呑気とさえ思えるほどの、思いっきり気だるそうな呻きを上げていた。
「疲れたぁ……身体中痛いぃぃ……デバイス重いぃぃぃぃ〜……」
どっと汗を流しながら、のたうち回る気力すらないといった様子で独りごちる。
本人は真剣に苦しんでいるのだろうが、命の危機すら予感したティアナからすれば、それこそ拍子抜けするほかにない。
そして、一挙に緊張の糸が切れたことで、彼女の涙腺はことごとく決壊した。
「……この、馬鹿スバルッ!」
青い瞳からぼろぼろと涙を流しながら、ティアナは倒れた相棒を怒鳴りつける。
「何で……何であたしのために、そんなボロボロになってまで……っ!」
こみ上げてくる熱い雫を抑えきれず、遂に崩れ落ち、冷たい床へとへたり込んだ。
それ以上言葉を紡ぐことすらままならず、両手で顔を押さえると、ティアナはそのまま思いっきり泣きじゃくる。
自分が一体どれほど心配したのか分かっているのか。
何で高々自分1人のためだけに、命の危険さえも冒してその拳を振るったのだ。
プライドをかなぐり捨てて涙を流す、いつにもなくみっともないティアナの姿を、最初スバルはぽかんとした様子で見つめていた。
「――前にさ、シグナム副隊長が言ってたじゃん」
そしてしばらくの後、ふっと口元に笑みを浮かべて、言葉を発する。
「……?」
その視界を遮っていた両手をどけ、ティアナがスバルへと視線を向けた。
「命を賭ける戦いというものもある、って」
思い返されるのは、もう数ヶ月前になる模擬戦だ。
劣等感に苛まれ、己の身を顧みず、ただひたすらに力を追い求めたティアナ。
自らを追い詰め、その結果としていずれ訪れるであろう破綻を阻止せんとして、その時はかけられていた言葉。
「ティアが危ないって聞いた時……あたしは、今がその時だって思ったんだ」
にっこりと満面の笑顔を浮かべて、スバルが言った。
はっとしたように、ティアナは泣きはらして真っ赤になった瞳を見開く。
そして一拍の間を置いた後、頬を朱色に染めた顔を俯かせながら呟いた。
「……ばか……」
「えへへ……」
罵声を浴びせられたにもかかわらず、スバルは無邪気な表情で笑う。
否、それでいいのだ。この笑顔こそが、本当のスバル・ナカジマなのだから。
自身の無力を嘆き、ただただ涙を流し続けていた少女の姿はここにはない。今、スバルはやっと、いつもの笑顔を取り戻していた。
「あ、そうだティア」
そして、思い出したようにティアナへと声をかける。
「……何よ」
若干睨むような視線をくれながら、ティアナはスバルの声に応じた。
「起こして」
「っ……! 自分で起きなさいこの馬鹿スバルッ!」
すっとぼけたようなスバルの要求に対し、ティアナの足がその頭を思いっきり蹴っとばす。
いつもの光景が、ちゃんとそこに蘇っていた。

453 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/09(月) 19:54:20 ID:AVn3C9rZ
スバル「シャマルさん、目には目を……エネルギー(不足)にはエネルギーだ!」
シャマル「まさか!?」
ヴァイス「弾丸Xか!」
スバル「奴に勝てる手段があるとしたらそれだけだ!」

そんな感じの12話、投下終了。
前回の前編で27KB、今回で36KB、計63KB……
……何コレ? なんで主役でもライバルでもましてやヒロインでもないスバルにこんなに気合い入れてるの?(ぉ
どうやら自分は好きなキャラには、立ち位置ガン無視してでも愛を注がずにはおれんようです。
カッコいいスバルを書くことにかけちゃ、あの人にもこの人にも、原作者にも負けられねぇんだ!(暴言)

今回のベルト型デバイスは、本来レリックになる予定でした。
「ギンガの代わりにスバルがレリックウェポンになるとかよくね!?」という感じで。
しかし、出撃前に手術している時間があるはずもなく没。総弾数150発のキチ○イデバイスが誕生したのでした!(ぇ
コンセプトはガオガイガーの弾丸X。危険と背中合わせの超エネルギーといった感じです。
構造や外観なんかは龍騎や電王の変身ベルトだったのですが、ちょっぴりHELLSINGのジャッカルが入ってるかも?

まぁ、今回含めて向こう3〜4話は熱血ホイホイな内容が続く予定なので、適度に期待してお待ちください。ではー

454 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 20:05:59 ID:HKkxzqz4
GJ!
弾丸Xって燃え尽きる気かw

455 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 20:26:22 ID:F5LStuTD
ギン姉が切ないですね、でもこちらにも清涼感が……GJ!
熱血ホイホイは臨むところです!


456 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 20:27:20 ID:RpF3zpzM
GJっした!
スーパースバルタイム降臨の今回。
種運命のシンの如く影薄かったスバルの鬱憤が晴らせたので私はウキウキです。
stsでスバル主人公のはずなのになぜ本編はこの闘いを外したのか。
次回、今度こそ殺生丸のターン・・・・・・・ですよね?待ってます!!

457 :一尉:2008/06/09(月) 21:56:21 ID:YTwCMrpV
G弾丸Xなら支援

458 :メビウス×なのは ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 22:53:53 ID:4d7N7S6J
GJです。
熱血ホイホイは好きなだけに、もう望むところって感じですw

さて、ようやくLの4話が書き終わりました。
予約が特に無いようでしたら、23:30より投下をいたします。
今回かなり量があり、前後編に分けさせていただきました。
本日は前編を投下するので、よければ支援お願いします。

459 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 22:57:10 ID:lPOE1eDl
しかし11時にEDF氏が予約していると言ってみる

460 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 23:01:19 ID:yKtDPX6x
EDF氏は明日じゃないか?


461 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 23:05:15 ID:lPOE1eDl
ごめん早とちりだったorz

462 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 23:05:52 ID:5laR8UYy
EDF氏は明日だよ〜

463 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 23:16:35 ID:KXl+qp4L
GJ! コレが見たかった!!
スバルVSノーヴェのガチ戦闘シーンが見たかった
本編OPで散々期待させておいて「ありませんでしたwww」で終わらされただけに、嬉いったら無いですw

464 :メビウス×なのは ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:29:44 ID:4d7N7S6J
それでは時間になりましたので、これより投下開始します

465 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 23:30:43 ID:1dGeK0XJ
おう、支援〜

466 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:31:15 ID:4d7N7S6J
「そうか……分かった。
 そのまま、聞き込みを続けてくれ」

ミッドチルダの首都クラナガン。
今、その住宅街付近にある一つの公園に、時空管理局の局員達が大勢集まっていた。
公園の中央部には、白いチョークで描かれた人の形。
その付近に所々見られる血の跡。
そして公園の周囲には、騒ぎを聞きつけてやってきた野次馬の群集。
これらが意味する事は一つ……殺人事件である。

「参ったな……目撃情報は皆無か」

局員の一人―――クロノ=ハラオウンは、頭を抱えため息をついた。
本来ならば、提督の地位にある彼がこの様な現場に出る事はまずありえない。
ならばどうして、ここにいるかというと……その原因は、すぐ側に立つ人物。
彼のパートナー―――エイミィ=リミエッタにあった。

「結構、厄介な事になってきちゃったね……ごめんね、クロノ君」
「エイミィ、そういう事は言うな。
 休暇がなくなったのは確かに残念だけど、こういう事も僕達の役目なんだから」

クロノもエイミィも、今日は揃って何ヶ月ぶりかの休暇であった。
それで、久々に二人で外出をしたわけなのだが……その最中、エイミィが公園の人だかりを見かけてしまったのだ。
その後、彼女は己の好奇心に従って野次馬の中に混ざり……クロノ共々、現場を目撃したわけである。
目の前で事件が起きているとなれば、当然ながら局員として無視する事は出来なくて……そして、今に至るわけである。

「死亡推定時刻は大体午前三時頃、深夜だし目撃者がいないのも、仕方が無いといえば仕方ないかな」
「ああ……凶器の包丁からも、犯人の手がかりは得られなかったしな。
 エイミィ、とりあえずもう一度遺体の保存写真を見せてもらえないか?」
「はいはーい」

エイミィはキーボードを操作し、遺体の発見直後の写真をクロノへと見せた。
殺害されたのは、近所に住む25歳の男性。
身長は170cm、体重も65kgと標準的な体系である。
その所持品は、軽く小銭が入った財布と腕時計、携帯電話と自宅のキー。
死体は地面へとうつ伏せに倒れたまま、血塗れの状態であった……その死因は、腹部と背中につけられた無数の刺し傷。
腹と背を滅多刺しにされた末に、命を落としたのだ。
そしてその凶器はというと、家庭で普通に使われている一般的な包丁である。
凶器の発見は、極めて簡単に出来た……というよりも、そもそも捜索そのものをする必要が無かった。
何故ならばその包丁は、被害者の片手にしっかりと握られていたからだ。
その刀身全体は血に塗れており、その血が被害者の物である事は、先程検査の結果はっきりした。
凶器がこの包丁で間違いないのは、確かなのだが……持ち手から検出された指紋は、被害者の物のみであった。
足跡らしきものも残されていない……犯人に繋がる証拠は、一切残されていなかったのだ。

467 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 23:32:18 ID:O1w3Ug/H
いきなり事件!支援

468 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:33:09 ID:4d7N7S6J
「どうして凶器を被害者が握っていたかってのが、やっぱり引っかかるよね……」
「自殺にしても、腹と背中を滅多刺しというのはおかしすぎるしな。
 犯人が意図的に握らせたとしか思えないが……」
「やっぱり、これをどうにかするしか方法はないかな?」
「そうだな」

クロノとエイミィは、人型の人差し指へと視線を向ける。
その先には、血で描かれた一つの数列が並んでいる。

『19.1.26.15.14.1.18.1』

状況から考えるに、その数列が何なのか……その可能性は二つある。
被害者が残したダイイングメッセージか、それとも犯人からのメッセージかである。
何かの暗号らしいが、それが一体何を意味するのかは全く分からない。
現在も、局員達はその答えを懸命に考えているのだが……いつになったら解けるか、果たして分からない。
クロノは大きく溜息をつき……ある手段をとる事にした。

「……仕方ない。
 ここは、あいつの手を借りるのが一番だな」

すぐさま端末を操作し、ある場所へと連絡を繋ぐ。
彼はこの暗号を解けるかもしれない人物に、一人心当たりがあったのだ。
しかしエイミィには、それが誰なのかは分かっておらず、やや困惑気味であった。

「クロノ君、あいつって?」
「暗号の解読に一番向いてる奴だよ。
 遺跡の壁画とかで、この手のは慣れているだろうからな」

469 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:34:21 ID:4d7N7S6J
L change the world after story

第4話「初事件・遭遇編」




「Lさん、他に必要な資料はありますか?」

Lとユーノが協力関係を結んでから、その数十分後。
二人は無限書庫へと戻り、Lは先程まで同様に資料に専念していた。
その傍らには、既に読み終えた大量の資料が漂っている。
普通ならば何時間かかけてやっと読み終えられるであろう程の量であり、しかもLはその内容をしっかりと頭に入れている。
司書達もこのLの異常さには、感心を通り越してもはや呆れていた。

「そうですね……いえ、もうありません。
 ここで知りたいと思ったことはもう、これで全部知れましたから」

しかし、そんな資料漁りも終了の時を迎えようとしていた。
既にLは、現時点で知りたいと思えた知識は全て知りえたからである。
尤もそれは、『ここ』で知りたいと思った知識が……であるが。
その事は、ユーノもすぐに察せたのだが……だとすると、Lが何を知りたいのかという事が疑問に残った。
他の司書達に聞かれても問題は無い事だろうか。
それとも、先程同様に二人で会話をするのがよいか……ユーノは少しばかり悩まされた。
しかし……その悩みは、L自らの言葉ですぐに打ち消される事になる。

「ユーノさん、一応念のため聞きますが。
 大体ここ十数年間程でミッドチルダで発生した事件について纏めてある資料ってありませんよね?」
「事件……ですか?」
「ええ、どんな小さい物でも構いません。
 この世界における犯罪事例について、どの様なものがあるかを……どうですか?」

Lが知りたい、しかしここでは知れないであろう事。
それは、ここ最近の犯罪事例についてであった。
無限書庫にある資料はどれも大したものであるが、どうしても一昔前の物がその大半を占めている。
逆に最近の事に関しては、無限書庫で知るのは……

470 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:35:40 ID:4d7N7S6J
「流石にそれは、無限書庫じゃ無理ですね。
 別の部署の方に請求をしないと……」
「やはり、ですか」

予想通り、不可能であった。
流石に、こればかりは仕方がない……無いものは幾ら言っても無いのだから。
Lは大きく溜息をついた後、側の資料の山へと今まで読んでいたそれを積み上げる。

「一般人である私が知れる範囲で構いません。
 よければ、お頼みできますか?」
「ええ、分かりました。
 今日中には流石に無理かもしれませんから、早ければ明日……」

早ければ明日にでも渡せる。
そう言おうとした、その刹那であった。
突如として、ユーノの目の前にあった通信用端末に着信が入る。
彼は一旦Lとの会話を打ち切って、こちらに応答する事にする。

「はい、ユーノ=スクライアですが」
『ユーノ、僕だ』
「……クロノ?」

通信の相手……それは、他でもないクロノであった。
ユーノは、彼が今日は休暇であると聞かされていた為に不思議そうな顔をする。
仕事なら兎も角、彼が私用で無限書庫に連絡を取ってくる事は珍しい。
だとしたら……これは、彼に何かがあったと見るのが妥当だろう。

「もしかして、何かあったの?」
『ああ、事件の現場に出くわしてな。
 そのまま、エイミィと一緒に捜査に加わる形になったんだが……少し厄介な事になってる。
 そこで、お前の知恵を借りたいんだ』
「やっぱりね……とりあえず、詳しい話を聞かせてくれないか?」

やはり予想通りであった。
ユーノは一先ず、何があったのかを詳しく聞くことにした。
クロノも勿論だと言わんばかりに、すぐに説明を開始しようとする……が。

471 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:37:47 ID:4d7N7S6J
『……』
「クロノ?」

クロノの動きが、突然止まった。
まさに開いた口が塞がらないという状況で、彼は呆然としていた。
一体どうしたのか。
ユーノは彼の反応を不思議に感じるが……直後、すぐにその理由に気付く。
クロノの目線の先……それは自分、いや、自分の背後に明らかに向けられている。
そしてその背後にいるのは……彼しかいない。

「……Lさん」
『……おい、ユーノ。
司書じゃないのは間違いなさそうだが……その、誰だ?』

ユーノの背後で、Lが画面をじっと見つめ続けていた。
いつの間に背後に回られたのか、ユーノも気が付かなかったが……背後に回った理由は分かる。
探偵として、事件という一言に敏感に反応したのだろう。
尤も、クロノはそんな彼の行動に驚かされた―――Lの風体が異様なのも手伝って―――様であるが。

「はは……えっと、こちらはLさん。
 なのは達が昨日お世話になった探偵さんなんだ」
『え……探偵?
 ユーノ君、それって本当?』

クロノの後ろから、会話を聞いていたエイミィがひょっこりと顔を出してくる。
その表情には、驚きは勿論だが……若干ながらも笑みが浮かんでいる。
それを見て、ユーノは二人のいう事件がどの様なものであるかをすぐに察した。
魔法やロストロギア絡みではない、自分よりも寧ろLの方が向いている様な事。
例えば、一番分かりやすい例で言えば……

「もしかして……殺人事件とか、ですか?」
『え!?』
「……違いましたか?」
『……あ、いや……確かに、その通りだが……』
『驚いたぁ……一発で当てるなんて』

ユーノよりも先に、Lが答えを言い当てた。
これには、クロノもエイミィも驚かざるをえない。
本当に、ホンの僅かしか会話を交わしていないというのに……しかしこれが、ユーノに言われたのならまだ分かる。
自分達と付き合いの長い彼にならば、当てられてもまだ不思議は無い。
だが、Lとはこれが初対面なのだ。
直感的なものも勿論あったのだろうが、それでも見事なものである。

472 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 23:40:02 ID:O1w3Ug/H
支援

473 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:40:18 ID:4d7N7S6J
『何で分かったんだ……?』
「色んな人の反応を今まで目にしてきましたから。
 その経験上です」
『そ、そうか……それで、Lだったな。
 どうして無限書庫に?』
「ああ、それは……」

ユーノは二人に対し、Lの事について簡単な説明をする。
彼は、昨日の空港火災の現場に突如として姿を現した次元漂流者であること。
なのは達と協力し、火災を無事収束させたこと。
その礼として、なのはが彼を無限書庫に案内し、そして今に至るということ。
その全てを聞き、クロノとエイミィは少々の驚きを覚えた。

『世界一の探偵かぁ……何だか、言われてみるとそれっぽいかもね。
 こう、雰囲気がちょっと普通の人と違うって感じがするし……』
「よく言われます」
「……さてと、ちょっと話が反れちゃったから戻すけど……クロノ、エイミィさん。
 Lさんにも話を聞いてもらっても、構わないかな?」

このまま話が反れたままというわけにはいかない。
すぐにユーノは流れを戻し、その上で更に二人へと、Lにも協力してもらう許可を取りにかかる。
事件の早急な解決の為には、自分達だけで動くよりもLが居てくれた方が遥かにいい。
それに……不謹慎なのは承知しているが、自分はつい先程に、Lが事件を解決する所を見てみたくなったばかりである。
この展開は、願っても無い絶好のチャンスでもあるのだ。

「私からもお願いします。
 何かお力になれるかもしれませんし」

続けて、肝心のL本人も同じ事を言う。
彼も勿論、探偵としてこの事件に進んで関わる気でいた。
それどころか、もしもユーノが先に言っていなければ、自分から言い出すところであった。
真剣な顔つきで、二人はクロノ達の答えを待つ。
それに対しクロノとエイミィは、少しばかり考えるが……すぐにユーノと同じ結論を出した。

『……そうだな。
 民間人に協力を仰ぐというのは、正直気が引けるが……素直に意見が欲しいのも事実だ』
『Lさんが良いって言うなら、私も構わないよ』

474 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:42:01 ID:4d7N7S6J
二人とも、ここはLの力を借りるべきであると考えた。
世界一の探偵というだけあって、この手の事件にはそれなりに慣れているらしいのは明らか。
ならば、専門家としての率直な意見を是非とも聞きたい……そう思っての判断である。

「ありがとうございます、クロノさん、エイミィさん」
「それじゃあクロノ、早速だけど事件に関して教えてもらえないか?」
『ああ、そうだな……これを見てくれ』

早速クロノは、事件に関するデータをモニターに映し出した。
被害者の簡単なプロフィール、遺体の保存写真、死亡推定時刻、使用された凶器、死因。
細かい状況について、クロノは二人へと一つ一つ説明をしていくが……
その途中、Lは頭に浮かんだある疑問についてクロノへと尋ねた。

「クロノさん、犯人が魔法を使った可能性は無いんですよね?」
『ああ、もしも犯人が何かしらの魔法を使ったのだとしたら、残留魔力が大なり小なりある筈だ。
 だが、全く発見が出来なかった……被害者の方も同様だ。
 検査の結果、リンカーコアは見当たらなかった』
「検査というと、検死ですか?」
『そうだ。
 尤も、検死自体はまだ最中だが……』
「魔力の有無についてだけ、真っ先に報告があったと……分かりました、ありがとうございます。
 それではこのまま説明を続けてください」

Lはクロノの言葉を聞き、犯人が魔力を持たぬ一般人であると即座に判断した。
その根拠となったのは勿論、犯行に魔法が使われた可能性は無く、被害者も魔力は持たないという事実。
ここから、犯人が魔道士である線はまず無いと見ていい。
一応、魔道士が魔法を使わず殺害したというパターンもあるにはあるが、それだと魔法を使わないメリットが少なすぎる。
普通に魔法を使った方が遥かにやりやすいし、証拠だって通常の犯行よりも残らないのだから。

(……凶器は包丁、死因は滅多刺し……そして態々、容疑者の手に……)
「被害者の昨日の行動は?」
『仕事は休みだったそうだ。
 近所の住人が、昼頃に一度外出したのを見ていて、その後夕方頃に戻ってきたらしい。
 その後は、誰も被害者の姿は目撃した者はいない。
 この外出している間に何をしていたかは、まだ調査中だ』
「目撃者皆無となると、結構厄介だな……携帯の履歴は?」
『それが、ロックがかかってて見れないんだよね。
 解除も出来ない事は無いけど、結構時間がかかるんだ』
「まあ、他人に携帯電話を見られたくないという気持ちは誰にだってあるでしょう。
 私も暗証番号は普通にかけてましたし」
『それで最後に……これを見てもらいたい』

475 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 23:44:09 ID:O1w3Ug/H
しえん

476 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:44:23 ID:4d7N7S6J
クロノは一通りの説明を終えると、最後に本題へと触れる事にした。
現場に残されていたメッセージを、二人へと見せる。

「これは……数列?」
『僕が元々お前に連絡をしたのは、この暗号を解いてもらいたかったからなんだ。
 被害者の血を使ってかかれていたメッセージなのは間違いないが、どうにも意図が分からなくてな』
「念のため聞きますけど、私達以外の部外者にもこれ、聞きました?」
『いや、知ってるのは捜査に当たっている局員と僕達だけだ。
 被害者の遺族や容疑者の可能性がある者達も含めて、誰にも事情は話してない。
 下手に外部に公表して、妙な憶測を立てられるわけにもいかないしな』
「成る程、分かりました」 

クロノは二人へと、自分達が連絡をした理由を告げる。
ユーノへと連絡を入れたのは、彼が暗号等の解読に長けているからだった。
彼は考古学者として、遺跡に記されている古語や暗号の類を多く見てきた。
ならば、これももしやとクロノは思った訳である。

「……被害者の血で書かれた数列、ですか……」
「見た感じは、漢数字でもローマ数字でもない普通の数字だけど……」

二人は数列を見て、すぐに推理を開始する。
何かの数式になっていて、その答えが犯人に繋がるのか。
それとも、もしやこの数列自体が何かの文章になっているのか。
ユーノは、その数列が何を意味しているのか、あらゆる可能性を考える。
数列の答えさえ分かれば、メッセージを残したのが被害者か犯人かかを断定できる。
彼はそう考えていた……これは、当然でありそして正当な判断だろう。
通常ならば、大抵のものはこの順序で考えるのだが……

「……」

Lは違っていた……普通ではなかった。
彼の考えは、ユーノとは真逆。
数列の意味は後回しにして、先に誰が書いたのかを推理していたのである。
そして……彼はその答えをすぐに出す。

「……ダイイングメッセージの可能性はまずありませんね」
『何……?』

477 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:46:26 ID:4d7N7S6J
残された数列はダイイングメッセージではない。
Lは即座にそう断定したのである。
当然のことながら、これにはユーノ達も驚かざるをえない。
即座に、エイミィが発言の意味を聞きただそうとする。

『えっと……それって、どういう事?』
「ダイイングメッセージを書く余裕が、被害者にあったのかという事です。
 被害者の死因は、包丁での腹部と背中の滅多刺し……クロノさん。
 あなたは何故、被害者はこういう殺人法を取ったと思いますか?」
『それは……犯人に猟奇的な傾向があるか、余程被害者に恨みが……待てよ?
 もしそうだとしたら……そうか、そういうことか』

途中まで言って、クロノはLの言わんとしている事を悟った。
言われてみれば確かに……犯人側の気持ちを考えれば、これは少しおかしい。

「その通りです。
 前者も後者も、割合的には後者の方が遥かに高いでしょうが、どちらにせよ犯人は被害者を確実に殺したいと思う筈です。
 だからこそ、この様に被害者を滅多刺しにした……被害者が確実に死んだと判断できるまで」
『だったらダイイングメッセージが残ってるのって、凄い不自然だよね。
 だって、死んだって事をしっかりと犯人が確認したって事になるし……あ、でもLさん。
 奇跡的に息を吹き返したって事もありえるんじゃないの?』
「いえ、その可能性はありません。
 とりあえずこれに関しては、後で理由を説明しますが……現状で何が言いたいかは、分かりますよね?」

犯人が、ダイイングメッセージを書ける程の余力を被害者に残す筈が無い。
それなのに、こうしてメッセージがある……被害者に書く事は勿論不可能である。
ならば誰が書いたのかは、考えるまでも無い。

「このメッセージは、犯人が被害者の血を使って書いた……」
「ええ、被害者に対してのメッセージです。
 意味から考えても、間違いは無いでしょう」
『意味って……待ってくれ。
 お前、解読が出来たのか?』
「はい、今さっきですが。
 幸いな事に、以前に同じのがあったんです」


478 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 23:48:34 ID:O1w3Ug/H
しえ

479 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:48:50 ID:4d7N7S6J
そしてLは、数列の意味も既に分かっていた。
これは幸運な事に、過去の経験が助けてくれた。
己が手がけた最後の事件において、この暗号は使われていたのだ。
抗ウィルス薬作成の、最大の手がかりとして……御蔭で、時間を全くかけずに解読する事が出来た。

「この数字は、アルファベットの順番なんですよ」
『アルファベット……あ、分かった!!
 つまり、一番最初の19は19番目のアルファベットだから……S!!』
「そうです。
 そして次の1は、一番最初のアルファベットであるA。
 こういう風に、数字を一つ一つ照合していけば……」

種が分かれば、どうという事は無かった。
すぐに三人とも、一つ一つの数字を順番にアルファベットへと当て嵌めていく。
そして、出来上がったのは……別れを告げる、一つの単語。

「S・A・Y・O・N・A・R・A……『さよなら』……」
『……見事に、犯人と結びつかないな。
 ダイイングメッセージの可能性は無いか……』
「ええ、ここからもこのメッセージが、犯人の書いた言葉であるという事が分かります。
 そして、先程奇跡的に息を吹き返したなんてありえないと言ったのもここにあります。
 普通、こんな状況でさよならなんて書きませんよ」
『確かに、普通は犯人の手がかりとか残すもんだしね』

犯人に繋がる要素が一つも無いのでは、当然ながらダイイングメッセージと呼べるわけが無く。
この数列は、犯人がわざと残したものであるという線が極めて濃厚になった。
だとすると……これは手がかりになる。

「さよならということは、それなりに犯人は被害者と親しい人物って事になりますね」
「ええ、可能性としては大いにありえます。
 それに、それ以外にもう一つ……犯人は、結構致命的なミスを犯しています」
『ああ……筆跡だな』

メッセージは、犯人が書き記したという事実。
それこそが重要な手がかりであるという事に、L達は気付いていた。
何故ならば、文字には犯人の特徴―――筆跡がどうしても出てしまうからだ。
すぐにエイミィは、現時点で容疑者として上がっている者達のリストを出す。


480 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:50:01 ID:4d7N7S6J
『被害者の友人や仕事仲間、親戚……アリバイが確認できてないのは、その内30人。
 30人全員が寝てたって証言してて、それの証明が不可能な状況なんだけど……』
『流石に、まだ行動に出るのには早すぎるか』

容疑者30人全員にこのさよならという単語を書かせてみて、メッセージと照合する。
その結果、一番近い筆跡を持つ者こそが犯人である可能性は極めて高い。
更に、運がよければ数字を書かせた場合の反応だけで犯人を特定できるかもしれない。
自らが暗号を書いたという事実を見破られたと言われたも同然なのだから、少なからず動揺をするに違いないのだ。
だが……これをするのには、まだ少しだけ早い。
解けていない謎が残されている以上、今はそちらを片付けるのが先決である。

『容疑者の周辺は既に、局員が数名聞き込みも兼ねて見回りをしている。
 犯人が逃げたならすぐに分かる……いや、犯人は逃げないだろうな』
「ええ、そんな事をしたら自分が犯人だと自白したも同然ですから」
『なら、焦る必要は無いな。
 残りの謎を片付けるとしよう……そこから証拠が出るかもしれない』

その真意が掴めずにいる最後の謎。
それは、被害者の手に握られていた凶器の包丁である。
持ち手から採取された指紋は被害者のものであり、犯人には一切繋がらない。
恐らくは犯人が意図的に握らせたものであり、一見、捜査を撹乱させる事が目的と思われるが……

「持ち手の指紋って、逆手じゃなくて順手なんですよね?」
『そうなんだよね……もしも逆手なら、刺された瞬間に持ち手を握ったって判断出来るんだけど……
 最初の一刺しは背中だったか、正面からとしても、犯人がしっかりと持ち手を握っていた所為で持ち手を掴めなかったのか。
 ……Lさんはどう思ってます?』
「エイミィさんとほぼ同意見です」

持ち手に残された指紋は、逆手ではなく順手であった。
つまり、完全に死亡して犯人に握らされるまでの間は、被害者は包丁を握ってはいないという事になる。
これは犯人も、指紋を残されぬ様注意を払っていたに違いない。
例え被害者の指紋のみが検出されたとしても、予期せぬ形でそれが残ったならば全てが台無しになるという事は大いにありえるからだ。

「ですが幸運な事に、初撃が腹部か背中か、どちらかを判断する方法は無いわけではないです。
 犯人次第ではありますが……うまくいけばそこから、犯人を割り出せるかもしれません」
『え、そうなの?』
「ええ……検死の完全な結果って、まだ出ませんか?」
『分からない。
 もうそろそろ、報告があってもいいころなんだが……』
『ハラオウン執務官、お話中失礼します』

481 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 23:51:02 ID:sCKPy5OC
支援。

482 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:51:24 ID:4d7N7S6J
検死結果についてLが尋ねた、その時であった。
一人の局員が書類を持ってクロノへと駆け寄ってきた。
どうやら、何か進展があったらしい。
ここでクロノは一旦会話を止め、その局員の話を聞くことにする。

『どうした?』
『たった今、検死官から報告書が届きました。
 被害者の死因についてです』
『……L、さっきの発言は訂正する。
 たった今、結果が出たよ』
「ありがとうございます」

噂をすれば何とやらである。
すぐにクロノは報告書を受け取って、それをモニターへと映し出す。

「外因内因共に、他に怪しい点は無いですね」

まず肝心の死因だが、これはやはり滅多刺しによるものであった。
他に外傷は見当たらなく、毒物等を摂取した様子もまた一切見られなかった。
しかし……Lにとってそれは、はっきり言ってどうでもいいものであった。
彼が気にしていたのは、寧ろその滅多刺しによる傷跡の詳細。
もしも予想通りなら、必ずある筈である……傷跡の中に一つ、もしくは二つ程おかしなものが。

「ありました、これです。
これが犯人の初撃……犯人を絞り込める大きな要因です」

Lはモニターを指差し、ある一文を指差す。
そこには、一言こう書かれてあった……『背中に一つ、斜め下から急角度に突き上げられる様な形でつけられた深い傷がある』と。
それを見て、ユーノ達もLが言わんとしている事をすぐに理解した。
三人ともすぐに文章を追い、その先に記述されている詳しい分析結果を読み進めいく。

『被害者が地面に垂直に立っていたとして、傷口の入射角はおよそ26度……急すぎる。
 いきり立って、多少は犯人が前屈みになっていたとしても……
 エイミィ、容疑者の中で明らかに被害者より身長の低い者を割り出せるか?』
『はいは〜い、もうやってるよ』

Lの言うとおり、思わぬ証拠が現れた。
それは、犯人の身長について……傷口を見るに、これは被害者より明らかに低い者の犯行であることだった。
被害者よりも低い位置から突き上げなければ、こんな傷にはならない。

483 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:53:15 ID:4d7N7S6J
「腹部の傷は、刺されてすぐに振り返った瞬間につけられたものでしょう。
 こちらには急角度な傷が無いのは、恐らく痛みで地面に片膝をついた様な状態になっていたから」
『その後は、力尽きて地面に倒れこんで……そこを滅多刺しと』
「そうですね……被害者の身長は170cm。
 傷口から察するに、恐らく相手の身長は150半ば……女性か子どもかの可能性が高いですね」
「ええ、成人男性は少々考えにくいです。
 もしも犯人の身長が被害者と大差なければ、どうしようもなかったですが……これで大分、容疑者は絞り込めますよ」

Lとユーノは刺し傷の角度から、犯人の身長を逆算してみる。
犯人が屈んででもいなかった限りは、恐らくこれで正解の筈。

『よし……出たよ、皆』

ここでエイミィが、容疑者の絞込みを完了した。
被害者と身長差がある、ユーノの言う150半ばに当てはまるのはたったの四人。
そして、その全員が女性……L達の推測は当たっていた。
まず最初にエイミィは、その内の二人……被害者の同僚に関する調書を出す。

『内二人は、親しい職場仲間。
 同じ職場の人達によると、被害者とこの二人とは、時たま一緒に飲みに行く様な仲だって』
『まあ、僕達となのは達みたいな関係に近いな』
「……クロノ、まさか未成年のなのは達と?」
『そういう意味じゃない、単なる例えだ』
「うん、分かってるよ」
『……怒るぞ』

時々、フェレットもどきと呼んでからかっている仕返しだろうか。
ユーノはクロノに対し、軽く毒舌気味で発言する。
その様子を見ていたエイミィは、苦笑するしかないが……しかし、彼の発言は例えとしては的確であった。
同じ職場の者達に聞き込みをしてみた所、被害者と容疑者との間柄は、正しくその様な関係だったらしい。

『二人とも、昨日は残業で午後十時まで会社に一緒にいたらしいの。
 その後は、それぞれ帰宅して就寝したって』
「しかしそれを証明するアリバイはない、というわけですか……分かりました。
 残る二人に関しても、お願いできますか?」
『オッケー』

484 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 23:53:22 ID:O1w3Ug/H
しえん

485 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:54:34 ID:4d7N7S6J
続けて、残る二人の調書を出す。
一人は被害者の恋人、もう一人はその妹である。
こちらは当然ながら、先程の二人よりもさらに被害者とは親密な仲にある。

『恋人とは、もう付き合って半年になるらしい。
 周りからも、お似合いだと言われているそうだ。
 妹の方とも良好な関係らしく、実の兄の様に慕われていたそうだ』
「昨日の二人の状況は?」
『恋人の方は、仕事が休みだったから一日中家にいたといっている。
 妹の方は、昼の正午から夜中までずっとアルバイトだったそうだ。
 これは、バイト先にも確認は取れている』
『そのバイトが終わったのは午後十時頃。
 それからはまっすぐに家に帰って、少しして寝たって言ってるけど』
「こちらも同様に、確認する手段は無し……と」

四人とも、共通する点は二つ。
被害者とはそれなりに親しい間柄にあり、そして犯行時刻には自宅で寝ていたと証言している事。
しかし、もし仮にこの四人の内誰かが犯人だとしたら……表面上は仲良くして、心の底では憎悪を抱いていたという事になる。
余程の事があったに違いない……この四人だけに限らず、被害者が人に恨みを買うような事をしたかどうか。
恨みを買う様な何かを持ち合わせていたのか……Lはそれを確かめてみたのか、クロノ達に尋ねる。

「この四人に、被害者は他人から恨まれる様な事をしたかという質問は?」
『それはもう聞き込みの時にやっている。
 だが、四人とも思い当たる節が無いと……』
「家宅捜索は?」
『まさか、それに踏み込むには早すぎる。
 尤も、ここまで状況が整理できた今なら、任意でなら可能……いや。
 L、その家宅捜索というのは、容疑者の四人に対してだけか?』
「もしかして、被害者の自宅にはもう?」
『ああ、それなら今調査中だ。
 こちらは容疑者と違って、踏み切れる理由があるからな』

既にクロノ達は、被害者の自宅には家宅捜索に入っていた。
容疑者宅と違って、こちらには家主が死亡したという正当な理由がある。
尤も、決定的なものはまだ何も見つかっていないらしいが……

486 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 23:55:30 ID:O1w3Ug/H
えん

487 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:55:34 ID:4d7N7S6J
『とりあえず、これは連絡待ちとして……今は、まだ解けていない最後の問題についてだな』
「ええ、その通りです。
 どうして被害者の手に包丁が握られていたか、そろそろ本題に入らせていただきます。
 これはその家宅捜索にも関わる問題ですしね」

少々話が脱線してしまったが、Lはこの辺りで本題に入る事にした。
何故、犯人は被害者に包丁を握らせたのか。
その理由として、最も可能性の高いものが一つだけある。

「犯人が包丁を握らせたのは、捜査を撹乱する以外にもう一つ目的があります。
 これは恐らく、犯人に包丁を処分する方法が無かったからです」

犯人は、凶器を上手く始末する自信が無かった。
例えば、犯行時に着ていた返り血塗れの衣服や靴は、自宅で焼却して灰にするという簡単な処分方法がある。
灰にした状態ならば、元が分からない以上は近隣のゴミ捨て場から見つかったとしても、しらばっくれる事は可能。
ルミノール反応―――血液が付着していたか否かの反応―――も当然出ないから、検査をしても無駄。
しかし包丁は金属……そう簡単には、ばれないように処分をする事は出来ない。
そこで犯人は敢えてそれを逆手に取り、この場に凶器を残したのではないかというのが、Lの考えであった。

「錘をつけて深い川や海の底に沈めたり、山中に捨てたりという可能性も考えはしました、ですが。
 もしそれをするならば、包丁も一緒に捨てるのが普通です。
 凶器を現場に残しておくメリットというのは、正直少なすぎるので。
 クロノさん、近隣のゴミ捨て場から何か、それこそ灰とかが見つかったりはしていますか?」
『いや、既に捜索済みだが何も見つかってはいない。
 そもそも、今日はゴミの回収日じゃないからゴミ自体が無かったがな』
「分かりました、でしたら管理局の権限で、数日間業者に近辺のゴミの回収を停止するよう言ってください。
 証拠を完全処分させないためにも」
『勿論、その辺は抜かりは無いさ。
 だから今は、家宅捜索をすれば確実に何かしら発見できる状況だ』
「そうですね、ですが出てきたところでしらばっくれられるのがオチでしょう。
 洗濯して室内に干していたら、ストーブの所為で焼け焦げてしまったとか。
 煮沸消毒に失敗したとか、理由は幾らでも考えられますから」
『ちょ、ちょっと待った!!』
「……?
 どうかしましたか、エイミィさん?」

488 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/09(月) 23:58:32 ID:4d7N7S6J
Lの話を聞いていて、エイミィは少し違和感を覚えた。
彼はどうも、犯人が証拠を焼却処分した事を前提に話している。
しかし、そう判断した理由が彼女には分からなかった。
いや、証拠を処分するのは当然の話なのだろうが、何故焼却なのかが分からなかったのだ。

『焼却処分以外の方法で、犯人が証拠を処分したって可能性はないの?』
「それは、ゼロとは言い切れませんが、かなり低いです。
 家庭で出来る証拠の隠滅方法は、これ一つだけですから。
 単に衣類を洗濯しただけでは、返り血は落とせてもルミノール反応までは消せませんしね。
細切れにしたとしても、その僅かな欠片から反応が出ればやはりアウト、なら燃やすのがやはり一番です。
 塩酸や硫酸等で溶かすという手段もあるにはありますが、個人で簡単に入手できる代物ではありません。
 それに、こういう薬品が使えるのなら、包丁だって一緒に消そうとする筈です」
『でも、そんなに綺麗に燃やせるの?
 百歩譲って服や手袋はOKにしても、靴とかは無理じゃ……』
「サラダ油なり灯油なり、可燃性の何かを使えば不可能ではありません。
 先程言った細切れ、その状態にしてしまえば楽ですしね。
 それこそ、サンダルの様なものなら簡単ですよ」
『……じゃあ、そもそも証拠を処分していないって可能性は?』
「自分に疑いがかかる事は、流石に犯人も予想できている筈です。
 それも、早ければ死体発見後すぐに、と。
 犯行時刻と通報時刻との間にはそこそこ時間がありましたし、その間に全く手を打たないというのは考えられません」 
『まあ、それはそうだよね……うん、ごめん。
 何とか納得は出来たよ』

エイミィはLの推理に納得した。
確かに彼の言う事は、それなりに筋が通っている。
ならば、まずこの線で間違いはないのだろうが、だとすると一つ大きな問題がある。

『しかし……もしそうだとしたら、これは犯人が家に証拠を残していないという事にもなるんじゃないか?
 局員達が尋ねる前に処分が可能なものは、もう処分を済ましたと……』
「ええ、そうですね。
 確たる証拠は残していないでしょう」
『……やっぱりか』

Lは表情を変える事無く、はっきりと言い切った。
犯人は確たる証拠を残してはいない……家宅捜査をしても、何も出てこないだろうと。
クロノ達も、薄々それには気付いてはいたが、こうも断言されたのでは、返す言葉が無い。

「ここまでの推理と筆跡の調査とで、容疑者を一人に絞り込むのは勿論可能ですが……
 逮捕に踏み切るには、少しだけ弱いです。
 そして恐らくは犯人も、筆跡鑑定が決定的な証拠にはなりえないと分かっているでしょう。
 それもあって、メッセージをああして書いた……と。
 正直言うと私は、検死の結果次第では身長以外に決定的な証拠が出るかと思っていましたが、少し甘かったようです」
『参ったね……』

489 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 23:58:35 ID:O1w3Ug/H
支援

490 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/10(火) 00:01:16 ID:3jJ1d5S0
振り出しにとまではいかないものの、捜査はここで少し行き詰る事となった。
Lはポリポリと頭をかきながら、その場でくるりと一回転をする。
何か、見落としている観点がある筈……軽く溜息をついた後、Lはゆっくりと無限書庫の出入り口へと降りていった

「Lさん?」
「すみません、お手洗いついでに、少し一人で考えを纏めさせてもらいます。
 すぐに戻りますので」

Lはそう一言告げると、ユーノ達が返事を言う間も無く無限書庫の外へと出て行った。
何ともまあ、マイペース極まりないというか。
皆、呆れて物が言えなかった。

『……本当、変わってる人だよね』
「うん……それは認めるよ」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「ふむ」

先程、ユーノと二人きりで会話をしていた給湯室。
そこでLは、板チョコをかじりながら推理を続けていた。
先程は手洗いついでにといったか、別に無限書庫から一時退室する言い訳さえ出来れば何でもよかった。
一旦書庫の外に出て、甘いものの補給さえ出来れば後はどうでもよかったというのが、彼の本音であったのだ。

(やっぱり、引っかかる)

Lは、大きく溜息をつく。
実は彼には、ここまで発覚した事実の中に、一つだけどうにも腑に落ちない点があったのだ。
自分の推理通りならば、加害者は証拠を全て処分している。
それも、結構念入りにであるが……

(もしも容疑者が、絞られている四人の内誰か一人としたら……どうしてアリバイ工作もしなかった?)

491 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 00:03:34 ID:wZwJLWH4
支援

492 :L change the world after story ◆ga/ayzh9y. :2008/06/10(火) 00:07:30 ID:3jJ1d5S0
以上、前編投下終了です。

まず、殺人事件の捜査というなのはとは合わない内容になってしまい、申し訳ないです。
ただ、Lを書く以上はこの手の話が絶対必要と判断し、その上で書かせていただきました。

後編では、前編で全く無かったなのはらしさを出せていると思いますので。
アリバイの謎、メッセージを残した意味、犯人が誰なのか、証拠は何なのか。
後編で全て明らかになりますので、期待していただければ光栄です。

早ければ明日の夜、後編を投下したいと思います。
それでは最後に、支援してくださった方々、ありがとうございました

493 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 00:10:49 ID:wZwJLWH4
GJ!
来た来た来たー!
ついにLの力を発揮する時が!
Lが出す解決方法に期待します!

494 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 00:22:05 ID:AWbxxgct
GJ!!です。
事件は海だけで起きてるんじゃない!陸でも起きてるんだッ!!な回でしたねw
次回が楽しみです。


495 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 09:09:44 ID:QfebNGrM
GJ!
おお、推理で来ましたか。
続きを楽しみにしています。

496 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 10:14:25 ID:IiZBUF3s
いちいち割り込むID:O1w3Ug/Hは氏ね!

497 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 10:32:04 ID:E8vB2ZLW
>>496
支援も知らんのか。
まあ釣りかと思うが、テンプレ三百回読み直してから目でレイハさん噛む刑な。

498 :一尉:2008/06/10(火) 11:26:55 ID:DYhSVX/V
テンプレ事件支援

499 :魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/06/10(火) 18:00:38 ID:7wBYY4xh
おそばセながらGJでした。
10時頃に投下したいと思います。

500 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 19:45:22 ID:ch4LrRUI
>>499
お久しぶりです。
待ってます。

501 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 19:50:59 ID:ifxxqYVo
支援

502 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 20:00:03 ID:z3NbIPLh
お久しぶりです。
申し訳ありませんが、自分も投下したいのですが、9時頃でよろしいでしょうか?

503 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 20:18:46 ID:91r0R75A
9時〜魔法重神
10時〜魔装機神
11時〜EDF

かな?

504 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 20:26:00 ID:aQGiH9Qd
容量大丈夫かな?

505 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 20:36:04 ID:z3NbIPLh
自分の投下量は約20KBでした。分割は12の予定です。
20KBを投下すると464KBになるみたいです。
となると新しいスレが必要になる可能性が…。

506 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 20:38:09 ID:ch4LrRUI
>>504
3人も投下ならこの容量だと危ないから次スレ作ったほうがいいかもな。
どれ、いっちょ建ててきましょう。

507 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 21:02:38 ID:ch4LrRUI
ごめん。なんか規制中で建てれないorz

508 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 21:04:11 ID:z3NbIPLh
新スレ立てると言った人がまだ立ててないようですけど、まだ容量があるようですし、後のお二方にも迷惑がかかるかもしれないので投下させていただきます。支援のほうもよろしくお願いします。

 第5話 失われた君


「う〜〜〜〜〜〜〜ん」

 スバルはなのはともめた挙句、教会を出て行った後、自分がいた陸士部隊隊舎の自分の部屋に帰ってきていた。

「う〜〜〜〜〜〜〜ん」
「スバル、起きろ」

 誰かがベッドで眠るスバルを起こそうとするがスバルは起きる気配がない。

「う〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
「起きろ! スバル!」

 その起こそうとした者はスバルのベッドをひっくり返して、スバルを床に落とす。スバルは落ちた時に顔面を床にぶつけ、その痛みでようやく起きる。

「いった〜〜〜〜〜〜〜〜」
「やっと起きたかスバル…」
「あ、おはよう。ノーヴェ…」

 スバルは呑気にも自分を起こしに来た少女ノーヴェにおはようの挨拶をするが、ノーヴェはカリカリしたまま。

「お前な…。帰ってきたと思ったらすぐに寝ちまいやがって! それでようやく起きて「おはよう?」ふざけんじゃねえぞ!」

 ノーヴェはスバルに怒りをぶちまける。

「ごめんごめん」
「お前本当にあたしの姉かよ…。ギン姉と大違いだ…」

 ノーヴェはスバルの双子の妹であるのだ。

「それより早く支度しろよ。これから集会研修なんだから……」
「は〜い」

 スバルは急いで陸士部隊の制服に着替えて、外で待っていたスバルの友達のセインとウェンディと共に自分達が所属している部隊の本部に行くため、
 スバルはセインの乗るバイクで、ノーヴェはウェンディの操るライディングボートに乗りながら、本部に行く。

「なあ、スバル」
「スバルは今まで何してたんっスか?」

 
 本部に行く中、セインとウェンディが自分達の乗るものを運転しながらセインの後ろでバイクに座るスバルに尋ねる。

「だから連絡したとおりだよ」
「ふざけんなよな。グラヴィオンに乗って戦ってるってやつだろ。誰が信じるかっての……。本当は何してたんだよ?」

 ウェンディの後ろに乗るノーヴェがしぶしぶ言う。

「……ねえ、ノーヴェ。平和の為に誰かを一人犠牲にって出来る?」
「…何だって?」

 走りながらで尚且つ、スバルが小さい声で言ってるものだからノーヴェはスバルが何を言ったのか聞き取れない。

「何だって?」
「…何でもない…」

509 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 21:06:00 ID:z3NbIPLh
>>507 そうでしたか。自分も立てようとしたのですが立てれませんでした。他の人に頼むしかありませんね。

 4人は話を終え、そのまま本部へと向かう。
 本部の教習室では他の陸士達やギンガの親しい友、セインとウェンディの姉でノーヴェもギンガのように姉と慕う女の子チンクがいた。

「スバル…、久しぶりだな」
「チンクさん、久しぶりです」

 チンクとスバルはお互い微笑みながら再会の挨拶を交わす。

「チンク姉、聞いてよ。スバルの奴まだグラヴィオンに乗ってたって言うんだぜ」

 ノーヴェがチンクに言ってかかる。

「うーん、それはさすがに私も信じるのは難しいな…。だがノーヴェ、お前な…。もう少し言葉遣いをよくしろと何度も言ってるだろ。
双子とは言え、スバルもギンガと同じでお前の姉なのだから……」

 チンクが静かにノーヴェを論す。

「わりい、チンク姉」
「あ、教官が来たみたいっス」
「早く席に戻れ〜」

 スバル達は慌てて席に着く。
 教官は久々にスバルの顔を見て、あることを告げる。

「ナカジマ、お前確か今は機動六課所属のはずだが……」
「あ…」

 そう、スバルはヴェロッサの計らいで今は災害救助隊ではなく機動六課所属になっていたのだ。その事をチンクやノーヴェら、当人のスバルも忘れていたのだ。
 しかし教官はそんな事をお構いなしの顔をスバルに向ける。

「だがまあいいさ。久しぶりにお前の顔を見れたんだからな。よし、今日の特訓はお前の為にお前だけは特別にしごいてやるからな!」
「ははは」

 スバルは乾いた笑いを出してしまう。


 部隊本部の外では、少し豪華な車が止まっていて、その中にはリインとフェレットのユーノが乗っていた。

「いいのか? リイン」
「勝手に教会を抜け出したりするのは…」

 機動六課武装シスターナンバー1のシグナム、お世話においては一番のシスターのアイナ・トライトンがリインに声をかける。

「いいんです。私、やっぱりスバルさんに戻ってきてもらいです…」

 リインの表情は重い。リインはスバルとなのはの亀裂を深く心配している。

「それにヴェロッサさんに怒られるのはリインだけですし……」
「それは違うぞリイン」
「僕も一緒に怒られてあげるよ」
「私もです」

 シグナムにユーノにアイナがもしリインが怒られることがあったら一緒に怒られてあげるというが……。

(だが、ヴェロッサが怒るところを見たことないな)
(怒ると怖いかも……)

 三人はヴェロッサに怒られる想像するだけで身震いがしたそうだ。

510 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 21:07:26 ID:z3NbIPLh
 その一方、教会のなのはの部屋ではなのはが一人で色々考え込んでおり、ろくに食事を取っていない。
 その事を医療シスターのシャマルや他の皆が心配していた。

「なのはさん…」
「なのはちゃん、スバルが出てってた夜から何も食べてないの……」
「そうなの……」
「ねえ、ヴィヴィオ。ヴィヴィオがなのはに何か言ってあげて…」

 ヴィヴィオは昨日の事があったが、ただ単に意識を失っただけであり体に異常はなかった。
 フェイトはヴィヴィオになのはを励ますように勧め、ヴィヴィオはなのはを励ます為に閉じられたドアを開けて部屋に入る。

「なのはママ……」
「ヴィヴィオ、体はいいの?」

 なのはがヴィヴィオの体を気遣うが、ヴィヴィオはなのはの頭を撫でる。

「なのはママ…、大丈夫だよ。なのはママも元気になって…」
「ヴィヴィオ……」

 なのはは泣きながらヴィヴィオを抱きしめる。

「ありがとう……」


 さらに教会の庭ではヴェロッサが黄昏ていたのを見て、クロノが話しかける。

「ロッサ……」
「何だい? クロノ君」
「リインが勝手に抜け出したみたいだ」

 リインが教会から抜け出した事実を聞いてもヴェロッサは表情を一つも変えない。

「そうか…、あの子も随分変わったね」
「なのはは君が見つけてすぐに、対ゼラバイアの為に育てるために家族や友人から離して育てた」

 クロノがなのはの過去を知っているヴェロッサに対して語る。

「彼女は君と出会う前から少し攻撃的だったのは知ってる。話を聞かせるために自分から手を出したり、やらなければならない時はやる子だった。
しかしそれがスバルの感情を逆撫でするとは……。ロッサ、これも君の計画の内なのか?」

 クロノが真剣な顔をしながらヴェロッサに聞く。ヴェロッサは少し笑いをこぼしながら言う。

「人の感情とはままならないものだね」
「はあ?」

 クロノはヴェロッサの言いたいことがわからず、悩むのであった。


 それから数時間後、ようやく本部からスバルが出てくるがノーヴェ、チンク、セイン、ウェンディと共に出てきた。

「とりあえず、ついていきますね」
「お願い」

 アイナが車を動かしてスバル達の後を追う。
 スバル達はファーストフード店に入ってポテトなどを注文するが、スバルは一人だけアイスクリームを頼む。

「お前本当にアイス好きだな」
「好き好き大好き〜〜〜〜」

511 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 21:08:12 ID:aQGiH9Qd
立ててきたぜ!
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1213099525/

512 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 21:08:40 ID:z3NbIPLh
 スバルはおいしそうに6段アイスを一つずつ食べる。
 そんな時、店にあるテレビニュースでグラヴィオンが映し出される。

「あ、グラヴィオンっス」
「スバル、あんた本当にこれに乗ってたの?」

 セイン達は未だにスバルの言ってた事を疑っている。

「本当だよ〜って、あれ? 何、あのマーク?」

 スバルはグラヴィオンの両肩に管理局のエンブレムがついてることに気付く。

「何? あの肩についてるの〜……」
「知らないの? グラヴィオンは地上本部の対ゼラバイア用の切り札だって……」
「違うよ〜。グラヴィオンは地上本部のじゃないよ〜」

 スバルが懸命に言うが、皆スバルを疑いの眼差しで見る。

「スバル、そういう憧れを持つのはわかるがな……」
「チンクさんまで……、酷いよ〜〜」
「そう言えば、ゼラバイアはどこの世界からかやって来た機械生命体だそうだ」
「機械生命体ッスか。なんかあたしらみたいっスね」
「ウェンディ、しっーーーーーー!!」

 セインが人差し指を自分の鼻の前にやってウェンディを叱る。

「あ、ごめんっス」
「でもよ、機械生命体だって言うけど、ほんとに生命体なのか?」
「ノーヴェ、ニュースで言ってたはずだ。生命体と言ってもあまり考える力はないんだって言ってたぞ」
「わりいチンク姉、最近まともにニュース見てなくて……」

 ノーヴェはチンクに謝りながらスバルの方を見る。

「うん、何?」
「手前、人がどんだけ心配したのかわかってんのか?」
「え?」
「ノーヴェはギンガだけでなくお前の事も心配してたんだぞ」
「ギンガを捜しに行くって言って、ちょっと連絡しただけでスバル帰ってこなかったっスからね」
「そうそう、それでノーヴェをあやすの大変だったんだぞ」
「セイン、手前ーーーーーーー!!」

 セインの冗談をノーヴェは真剣に受け止めて、拳を握る。

「ノーヴェ、落ち着け。セインも言いすぎだぞ」
「わかったよチンク姉」
「は〜い」
「ところでスバル、ギンガの手がかりは見つかったのか?」

 チンクが真剣な表情でスバルを見る。チンクは見た目はリインと変わらないくらいの少女だが、実際の年齢はスバルやギンガよりも年上で18歳である。

「……、全然」
「…そうか…」
「ギン姉、どこ行ったんだろうな……」

 チンクとノーヴェとスバルにより重い空気が周りに立ちこむ。
 そんな時、スバル達のテーブルに何かがやって来る。

「あれ?」
「何なんッスか? これは?」
「これは確かフェレットと言う生き物だな…」

513 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 21:08:51 ID:aQGiH9Qd
ってリロードし忘れた。割り込みすみません。

514 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 21:10:08 ID:z3NbIPLh
>>511
乙です。ですが自分はこっちの方で投下を続けていきます。

「でもなんでこんなところに……」

 セイン、ウェンディ、チンク、ノーヴェが不審がるが、スバルはすぐにわかった。そのフェレットはユーノだったのだ。

(ユーノさん、何でここに?)

 スバルが念話でユーノに尋ねる。

(君を捜してたんだよ。それと君と話したいのいるしね……)

 ユーノが店の玄関の方を見ると、向かいにはリインが立っているのをスバルは確認する。

「リイン!」
『え?』

 スバルはリインの姿を見て店の外に出て、リインと二人っきりで話がしたいのでシグナムとアイナは少し席を外す。
 ユーノは店の中にいるウェンディ達に可愛がられていた。

「こいつ、かわいいっスね」
「このこの」

 ウェンディがユーノの頭を撫でたり、セインがユーノの体を突っついて遊ぶ。

「お前達な…」
「チンク姉もどうっスか?」
「可愛いですよ」

 ウェンディがユーノをチンクに手渡す。チンクは手渡されたフェレット姿のユーノを見つめる。

(可愛い)

 チンクはユーノの可愛さに理性が負けてしまい、思わずユーノ頭を撫でる。

「本当にかわいいな」
「「でしょ! でしょ!」」
「お前達、うるさいぞ!」

 窓の外を見ていたノーヴェがカリカリしたようにセインとウェンディに対して怒る。

「もうノーヴェったら…」
「ノーヴェもこいつと触れ合ってみるッスよ。可愛いっスよ」
「いいよ、あたしは…」

 ノーヴェは断ろうとするが、セインとウェンディは強く勧める。

「いいから、いいから」
「ノーヴェも触れてみるっス」
「だからいいって言ってんだろ!」

 ノーヴェは二人のしつこさに思わず大声で怒鳴りつけてしまい、周りの客がノーヴェ達に注目する。

「ノーヴェ、セイン、ウェンディ、それくらいにしろ。それと皆さんに謝れ」

 チンクがそう言うと、三人は席を立って周りの客に謝る。
 謝り終えた三人は再び席に座ってチンクの説教をくらう。

515 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 21:12:45 ID:z3NbIPLh
>>513
構いませんよ。リロードをしなかったのはこちらも同じです。

「お前達な、もう少し周りに気を使え」
「ごめん、チンク姉…」
「ところで、ノーヴェ。お前は外を見ていたのか?」
「ああ、あいつのな…」

 そう言うとノーヴェは再び窓の外を見る。ノーヴェの視線の先には外で真剣な表情で話しているスバルとリインの姿があった。

(あいつら、何話してんだろうな……)

 スバルとリインは真剣に話していた。それはもちろんスバル自身の事となのはの事であった。

「スバルさん、戻ってきてくださいです」
「リイン、あたし言ったよね。なのはさんとやっていけないって……」
「……」

 リインは思わずうつむいてしまう。

「リインはどう思うの?」
「リインはなのはさんの気持ちがわからなくも無いです」

 リインの言葉にスバルの顔がわずかに歪む。

「何で?」
「なのはさんは9歳頃までは家族や友達と一緒に過ごしてたけど、魔法の事を知ってからは一人だけこっちに来たという事は聞いてます。
それでなのはさんはゼラバイアを倒すためだけに訓練をつんだって…」
「だから?」
「リインは家族がいません。ヴェロッサさんに拾われた時にリインもゼラバイアを倒すためだけの訓練をしてきました」

 リインは確かにこの間までは隔離されていたかのようにリインだけ別の部屋にいたり、訓練をしていた。
 リインにとってはなのはの気持ちはわからないわけでもないかもしれない。しかしスバルは自分の怒る感情のままにリインに告げる。

「リインは甘いよ。ティアも少しだけど……。だからって昨日のような事をしても許されると思う!?」

 母がいないだけで父と姉妹を持つスバルにはその気持ちがわからないが、昨日のなのはの行動はやはり許せないものがある。
 それになのはだって9歳頃までは家族と一緒にいたのなら昨日のようなことはいけないことだと判断できるはず。
 スバルはそう考えているのだ。

「そ、それは……」

 その時! 突然街全体に警報が鳴り響く。

「これって……」
『ゼラバイア襲撃! 市民の皆さんは急いで避難してください! 繰り返します、ゼラバイア襲撃! 市民の皆さんは急いで……』
「やっぱり!」
「おおーい、スバルーーーー」

 警報を聞いて急いで店から出てきたウェンディ、セイン、ノーヴェ、チンクがスバルとリインの方に走り寄る。

「スバル、逃げるっスよ!」
「え?」
「さすがにゼラバイア相手ではあたし達じゃ歯が立たないって……」
「とにかく、近くに避難所があるそこまで行くぞ!」
「わかった。リイン、行くよ!」

 スバルがリインの手を引っ張ろうとするが、リインは突然の事で戸惑ってしまう。

「え? え? でも……、グラヴィオンは……」

516 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 21:13:41 ID:z3NbIPLh
「ファントムシステムでどうにかなるでしょ。とりあえずあたし達も逃げるよ」

 スバルはリインの手を引いて二人は急いで皆と共に避難所の方に向かう。

(ファントムシステム?)

 スバルの隣にいたノーヴェは何のことだがわからないがノーヴェも避難所の方に走る。

「リイン!」
「こう人が多いと……」

 警報を聞いて急いでアイナとシグナムがリインだけでもと思い、
 リインのところに戻ろうとしたら逃げ惑う人々の行列に巻き込まれてしまい、次第にリインを見失ってしまったのだ。

「くそ! 見失った! 騎士として何たる恥だ!」
「シグナムさん、そんな事言ってる場合じゃありませんよ」

 アイナは着ていたコートを脱ぎ捨てる。コートの下にはいつものシスター服を着ていた。

「とにかく、今はリインを捜しつつも逃げ遅れてる市民の皆さんを安全な場所まで連れて行きましょう!」
「そうですね! わかりました!」

 シグナムも自身のデバイス「レヴァンティン」を起動させて、騎士甲冑を着る。

「それじゃあ、私はこっちの方を見てきます。シグナムさんはあっちを…」
「わかりました」

 シグナムとアイナは別々の方向に向かって、シグナムは飛び、アイナは走り出す。


 聖王教会司令室でもゼラバイアの存在を確認していた。

「ゼラバイア2体市内にやってきます」
「2体か……」

 ヴェロッサは今度のゼラバイアはデストロイヤークラスが2体と聞いて真剣な顔をする。
 ウォリアークラスが何体も現れることはあったがデストロイヤークラスが2体以上同時に来たのは今までにないのだ。
 そんな相手にグランディーヴァは2つもファントムシステムを使って、グラヴィオンに合神しなければならない。
 グラヴィオンのパワーは20%以上もダウンしてしまうので、2体ものゼラバイアを相手にするのは荷が重いのだがやらねばミッドチルダは崩壊してしまう。

「なのは、一気にゴッドグラヴィオンに合神して現場に……」
「了解!」

 スバルとリインはノーヴェ達と共に避難所まで走って逃げていた。逃げ惑う人々を見ながら二人はそれぞれ思う。

(皆、逃げてる……。あたしはいつも戦ってたんだ。ノーヴェ達が心配するって……)
(皆さん……、ごめんなさいです)

 二人の悲しそうな表情をノーヴェは黙ってみながら共に避難所に向かう。
 ゼラバイアはその間に市街にやって来るがそれは1体だけであり、もう1体は空に浮いたままその位置をキープしている。
 空に浮くゼラバイアの姿はコマのような形で、地面に降りたゼラバイアは前にやって来た剣の形をしたゼラバイアと似ている。
 地上のゼラバイアが暴れる中、地上本部の首都防衛隊と現場近くにいた武装局員が懸命にゼラバイアに攻撃を仕掛け始める。

「狙い撃つぜ!」

 首都防衛隊の隊長であるヴァイスの指示の元に局員達は自身のデバイスで攻撃を始める。
 魔力弾はゼラバイアに命中するもやはりダメージは通らない。ゼラバイアは腕をふるってビルなど建物を破壊しながら局員達を攻撃する。

「うわあああああ!」

517 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 21:14:33 ID:z3NbIPLh
 そのものすごい攻撃の風圧に飛べない局員は皆吹き飛ばされる。

「くそ!」

 ヴァイスは叱責の声を洩らす。その時ゴッドグラヴィオンが現場にやって来る。

「グラヴィオンか……。頼んだぜ! 全員一時撤退だ! 動けない奴は動ける奴が支えてやれ!」
『了解!』

 ヴァイスの命令で立てる局員は立てない局員を抱えて急いで撤退する。
 撤退する中ヴァイスはグラヴィオンを見ながらこうつぶやく。

「俺にもグラヴィオンがあったら……」

 避難所ではグラヴィオンが現場に到着した様子が避難所にあるモニターに映し出される。

「グラヴィオンっス」
「頑張れ、グラヴィオン!」

 ウェンディやセインがグラヴィオンに向かって応援する。

「大丈夫でしょうか……」
「ファントムシステムでどうにかなるでしょ」

 リインが心配そうに見てスバルがリインの心配を除こうとする。
 そんな様子を見てノーヴェは考える。

(こいつら、本当に……?)


 地面に着地したグラヴィオンはいきなり両手をあわせる。

「グラヴィトンバスターーーーー!」

 両手についてるバスターから魔力弾を発射させ、目の前にいる剣型のゼラバイアに当てようとするが、
 その真上にいたコマ型のゼラバイアから特殊な粒子のようなものが蒔かれてバスターの魔力弾を防ぐ。

「なら、グラヴィトンライフル!」

 ドゥーエがグラヴィトンライフルの名前を叫んでグラヴィトンライフルで剣型のゼラバイアに向かって撃つ。
 しかしライフルの魔力弾もその粒子で防がれる。しかもただ防がれたのではなく、狙った部分のみに粒子を蒔いて攻撃を防いだのだ。

「ピンポイントでガードされてる……」
「次はグラヴィトンミサイル、オートマティックモード」

 Gアタッカーのファントムシステムがなのはの言葉に反応してグラヴィトンミサイルを発射するようにGアタッターに指示し、右脚からミサイルが大量に出る。
 ゼラバイアは先ほどと同じ防御の粒子を今度はバリアのようにして自分達を多い囲んで攻撃を防ぐ。

「効かない……」

 剣型のゼラバイアは攻撃が止んだのを見て近づいていき、左手をグラヴィオンに当てようとし、グラヴィオンは持っていたライフルで防ぐ。
 しかし左手を防いだライフルは突然凍りつく。

「え?」
「これは!?」

 そう、ゼラバイアの左手は氷の力を帯びて氷の手となっていた。ゼラバイアは次に右手に炎を纏わせ、炎の右手でライフルに向かって手を振るう。
 氷付けになったとたんに急に温められたのでライフルは当然壊れる。その様子を見ていたヴェロッサにはある疑念が頭をよぎる。

(まさかね……)

518 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 21:17:49 ID:J0br0CJl
ちょwwwロックオンwwwww反目のスバル氏といい00祭りか支援。

519 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 21:22:01 ID:z3NbIPLh
 しかしヴェロッサはすぐにその疑念を払いのけて今の状況を見る。

「グラヴィオン、重力子安定指数77%に低下」
「重力子臨界まで8043ポイントです」
「次はグラヴィトンスパイラルナックル、いくよ!」
「はい!」
「わかった!」

 グラヴィオンは両手を合わせてスパイラルナックルの発射体勢に入り、腕からブースターがうなる。

「グラヴィトン、スパイラル……」
「「ナックルーーーーーーーーー!!」」

 スパイラルナックルがゼラバイアのバリアに突っ込む。しかしそれも虚しくスパイラルナックルは弾かれ両手は地面へと落ちた。

「そんな……」
「スパイラルナックルが効かないなんて……」
「くっ!」

 なのははすぐに両手を引き戻す。

「次、グラヴィティクレッセント。オートマティックモード!」

 Gシャドウのファントムシステムはなのはの声に反応してGシャドウの翼が展開され、グラヴィオンは翼を掴む。

「シューーーーーート!」

 今度はグラヴィティクレッセントがゼラバイアに向かって飛んでいくが、すると今度は剣型のゼラバイアの胸がわずかに開きそこから発射されて粒子砲でグラヴィティクレッセントを消滅させる。

「嘘!」
「あれは反物質砲です!」
「反物質砲……」

 反物質砲とは簡単に言えば触れたものを何でも消滅させてしまう恐ろしい攻撃である。

(万事休すかな……)

 さすがのなのはにもわずかながら焦りが出てくる。
 その様子を避難所のモニターで見ていた人々もざわめく。

「ブーメラン技が効かないとは……」
「頑張るっス! グラヴィオン!」
「ファントムシステムじゃ勝てないです……」

 リインはすぐさま外の方へと走り出す。

「リイン! 待って!」

 スバルがすぐにリインの後を追いかける。その様子を隣にいたノーヴェが不審がる。

「あいつら……、ちょっと待て!」

520 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 21:22:27 ID:z3NbIPLh
 外に繋がる通路をリインが走る。その後ろからスバルがやって来てスバルの方が走るのが速いためスバルはすぐにリインに追いつき、リインの手を掴んでリインを引き止める。

「リイン、待って!」
「私行かなきゃ……。行かないと皆が……」
「でも一人で行ったって……」

 外では剣型のゼラバイアが右手に炎を纏わせてグラヴィオンを攻撃しようとし、グラヴィオンはグラヴィトンソードを出して攻撃を防いで踏ん張る。
 グラヴィオンは踏ん張るが相手のパワーに押されていき、グラヴィオンの足が少しだが地面を踏み込む。
 その影響で地下の避難所が揺れ、外に繋がる通路にいたリインとスバルも思わず揺れで体が揺れる。
 その時通路の天井が揺れた衝撃で崩れていき、瓦礫がスバルの上に落ちようとしたその時!

「危ねえ!」

 後ろからリインとスバルを追ってきたノーヴェがスバルの背中を押し出し、ノーヴェが瓦礫の下に埋もれた。

「ノーヴェ……」

 スバルは急いで瓦礫をどかしてノーヴェを救い出す。幸いにもまだ瓦礫は数枚しか落ちていないのですぐにノーヴェの体の上にあった瓦礫は全てどかせれた。

「ノーヴェ……」

 スバルは意識を失ったノーヴェの体を抱える。
 スバルは自分を庇って怪我をしたノーヴェを見て泣き叫ぶ!

「ノーーーーーーーーヴェーーーーー!」

521 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 21:26:24 ID:z3NbIPLh
投下完了です。
この世界で現在まで出ているナンバーズの設定年齢はドゥーエ20歳、チンク18歳、セイン16歳、ノーヴェ15歳、ウェンディ14歳です。
次の話では新技が続々と出てくる予定です。
>>518
同じスナイパーとして言わせてみました。ちなみにヴァイスがメカを手に入れたらグラハムのあのセリフを言わせたいと思ってます。

522 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 21:32:56 ID:z3NbIPLh
よく見たら第6話でした。第5話と書いてますが第6話です。ごめんなさい。
まとめの方では第6話に修正しておきました。

523 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 21:34:45 ID:WezNjnJr
おつかれさんと〜

524 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 21:40:53 ID:J0br0CJl
>>521
超魔法重神GJでした!支援に答えてくださり有難う御座います。
で、セリフの件なんですけど。

1.「私はヴァイス・グランセニック!君の存在に心奪われた男だ!」
2.「あえて言わせてもらおう、ヴァイス・グランセニックであると!」
3.「どれほどの性能差があろうと!今の私は阿修羅すら凌駕する存在だ!!」

・・・・・・・うん、何かどれも奴のキャラじゃないですね?

525 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 21:46:32 ID:J0br0CJl
すいません。氏が抜けてました。無礼申し訳ありません。

526 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/10(火) 21:46:47 ID:z3NbIPLh
>>524
>・・・・・・・うん、何かどれも奴のキャラじゃないですね?
まあ、普通にヴァイスには合わないようですが、実はこの中の一つは本当に言わせようと考えてます。

527 :魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/06/10(火) 22:00:47 ID:7wBYY4xh
それではそろそろ投下したいと思います。
なお、今回は久しぶりに魔装機神のほうを投下したいと思います。

528 :魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/06/10(火) 22:03:10 ID:7wBYY4xh
スーパーリリカル大戦(!?)外伝 魔装機神 THE BELKA OF MAZIKAL 18話

「久しぶりだな」

廃墟から現れた男は、静かにシグナムたちを見る。

「アクセル・アルマー」

アクセル・アルマー
ヴォルケンリッターにとって、この男の名前は嫌でも忘れられない者の一人だろう。
この男とは、今まで何度も自分達の前に立ちはだかった。
特に、ヴィータとはライバルのような存在で、何度も戦いを繰り広げている。

「おまえたちもここへ、だと?どういうことだ」

だが、今はそんな事はどうでもいい。
気づけば見知らぬところへ来た自分たち。
この事を、この男はなんか知っているのだろうか?

(なるほど……やはり転移にも時間差があるということか)

自分と一緒に転移してきた「アイツ」も、数日の誤差があった。
なら、彼女たちがかなり遅れてここに転移してきても別におかしくはない。
ただ全員が同じ世界、というのは珍しい話ではあるが。

「今、俺たちがいる世界は俺たちがいた世界とは違う世界だ」
「なに?」

突然のアクセルの言葉に、ヴォルケンリッターは首をかしげる。
いきなり何を言い出すのだ……

「まさか、貴様はここがパラレルワールドとでも言うつもりか?」
「まあ、そのようなものだろうな。ここは、俺達の世界に最も近く、だが限りなく遠い世界だ」

ザフィーラの言葉に、ご名答とぱちぱちと拍手を送るアクセル。
どうやら、冷静に物事を考えるほどには落ち着いているようだ。
ただし……

「そんなもの、信じられるかよ!!」

ヴィータは敵意をむき出しにしてアイゼンをアクセルへ向ける。

(これも予想どおりだ、これがな)

彼女がすぐに頭に血が登ることは良く知っている。
だから、彼女は自分が言っていることをすぐには信じないだろうとは思った。

「じゃあ聞くが、さっき貴様達が局員を襲ったときに、そいつがおかしなことを言ってなかったか?」

アクセルの言葉に、ヴィータはさっきの局員が言っていたことを思い返す。

(お前たちは管理局で一緒に働いているだろ?何で襲わなきゃ……)

確かに、さっきからこの言葉に妙に引っかかっていた。
普通の人間は、あんな状況下では嘘をつくことはできないというのは良くわかっている。
あの怯えよう、困惑した顔がすべてを物語っていた。
どういうことなのか、さっぱりわからない。
だが、さっきのパラレルワールドということが正しければ、さっきのも一応は納得がいく。

529 :魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/06/10(火) 22:04:57 ID:7wBYY4xh
「さて、話はこれぐらいでいいか?」

そのとき、アクセルは全身から魔力、闘気をみなぎらせた。
その気を感じ、シグナムたちもすぐに構える。

「貴様達はこの世界の局員を無差別に攻撃した……だが、殺してはいない。今ならまだ弁解の余地があるが、どうする?」

管理局局員として、同行を進めるアクセル。
だが、彼女を良く知る身としては、既に答えは知っていた。
その答えを示すように、うるせえ!とヴィータは拒否する。

「だれが同行なんかすっかよ!管理局ははやてを!……はやてを!!」
「この世界の管理局はそんな事はしてはいない」
「んなこと知るかよ!管理局は管理局だ!!」

ヴィータは、あの忌まわしき光景を思い出し、大粒の涙を流しながらアクセルを睨む。
一体、どこの誰がはやてをあんな目にしたのか……
ヴィータが思い浮かぶのは、はやての胸を貫く一本の杖、
その後、はやてはどこかへと連れて行かれた。

「八神はやてか……」

アクセルも彼女の事は知っていた。
幼い身でありながら闇の書の主として選ばれた少女。
あの時も、彼はあの場所にいた。

「思えば、不運な奴だったな」
「なんだと?」

今まで黙っていたシグナムが静かに返す。
そこには蒼い筋がぴくぴくと動いていた。
ヴィータほど顔に出さなかったが、シグナムも管理局を憎んでいる。
そして、そのアクセルの一言が引き金となった……
シグナムはカッとなり、アクセルを睨みつける。
それを知ってか知らずか、アクセルはさらに言葉を続ける。

「そうとは思わないのか?夜天の書さえなければ、足が不自由になることも、あんなことになることもなかった。
つまり、お前たちさえいなければ、少なくとも八神はやては死ぬこともなく、足が不自由になることもなかっただろう」

つらつらと言葉を発するアクセルだが、もうヴィータは我慢の限界だった。
グラーフアイゼンを構え、カートリッジをロード。すぐにでも飛び出す準備はできている。

「ふっざけんじゃねええぇぇ!!」

不幸だった?はやてが?
自分達のせいで?
そんなはずがあるか。

「何も知らねえ奴が、知ったような事を言うんじゃねえぇ!!」

はやては笑っていた。それも楽しそうに。
何も知らない奴が、勝手は想像をするな。
ヴィータは、体中の血が沸騰しそうなほど体が熱くなるのを感じた。
もう、自分でもコントロールできないかもしれない、という錯覚すら覚えるほどだった。

「ヴィータ、落ち着け。奴の口車に乗るな」

530 :魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/06/10(火) 22:07:25 ID:7wBYY4xh
今にも飛び掛りそうなヴィータの前に、ザフィーラがヴィータを静止させる。
それを振り払うように、うるせえ!とザフィーラを睨む。
あそこまで大切な人をあんな風に言われれば、一発でもぶん殴りたくなる。
もし、ザフィーラの顔をみず彼の手だけを見たなら、彼女はおそらくアクセルに向かっていただろう。

「あ……」

しかし、ヴィータは見てしまった。
ザフィーラの表情が、今まで見たこともないほどに怒りの形相だったのだ。

「ヴィータ、お前の気持ちは十分にわかる」
「だけど、それはあなただけじゃないのは知ってるでしょ?」

そこにシグナム、そしてシャマルも前に出る。
ザフィーラもそうだが、普段から冷静なあの二人が、本気で怒りの表情をあらわにして、アクセルを睨みつけている。
こんな二人を見るのは初めてかもれない。
それほど、はやては今までの主の中で特別な存在だということだ。

(やはり、八神はやてに関することなら熱しやすいようだな……)

アクセルは微笑を浮かべながら4人を見る。
しかし、いくら自分でもあの4人と戦っても無事ですむとは思っていない。
普通の局員ならいくらでも潰せるが、こいつらは違う。
一人ひとりなら何とかなるが、いっせいにかかってこられると……
だが、何もないわけではない。
対処法も一応考えてはある。
ただ、それには時間がいくらかかかってしまう。

(間に合うかどうか……これは賭けだな)

この戦いの状況の悪さに、アクセルはため息をつく。
その対処のためにも、今は時間を稼がなければいけない。

「4人で一斉に、か……騎士がそんなことしてもいいのか?」

アクセルは表情を硬くし、ヴォルケンリッターを見る。
もし間に合わなければ……その時はその時だ。
自分自らが戦い、時間を稼ぐだけ。

「もう、我等……いや、私たちに騎士の心など持ち合わせてはいない」

そういうと、シグナムは少しまぶたを閉じた。
そして思い浮かぶのは、本来プログラムである自分たちにとってありえないはずだった、人としての暖かい生活。
その生活を与えてくれた、はやての笑顔。
だが、次に思い浮かぶのは、自分の目の前で、その主が虚無のかなたへ連れて行かれるところだった。
そのときの自分たちは満身創痍。立ち上がるのがやっとの状態。
そして、数人の局員が殺意の目で自分たちを見下すように見ていた。
そんな中、シグナムたちが感じたのは怒りだった。
それははやてを封印した管理局に対してというのもある。
何より、一番許せなったのは主を守れなかった自分たちに対してだ。
本来ならば守るべきはずであった主を守れず、目の前で連れさらわれ、生死は不明。
もはや、何もできなかった自分達を騎士と名乗れるだろうか。

531 :魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/06/10(火) 22:09:42 ID:7wBYY4xh
「だから、私たちはもう決めた。どんなことがあっても」

シャマルがクラールヴィントで結界を張り、アクセルの逃げ場をなくす。

「たとえ、無様に地面に這い蹲ろうと」

ザフィーラはファイティングポーズをとり、すぐにでも動けるように構える。

「あたしたちは戦う!」

ヴィータはグラーフアイゼンのカートリッジをロード。
蒸気が発生し、魔力が膨れ上がった。

「すべては、家族である主はやてを取り戻すために!」

最後にシグナムの言葉をかわ切りに、4人が動いた。
いま、ここにいるのはかつてのヴォルケンリッターではない。
八神家の一員としてここにいる。
大切な家族を助けるために、彼女たちは戦っている。

「ち、しくじったか……」

アクセルは舌打ちして周囲を見る。
結局、火に油を注いでしまう結果となってしまった。
こうなったら、もう状況は絶望的である。
体中を突き刺すような視線。
それを肌でひしひしと感じながら、アクセルも動く。
だからといって諦めるわけにはいかない。
丁度、その時だった。

「駆けろ!!ファントムフェニックス!」

突如、轟音が周囲を襲い、それとともに、ガシャァン!!とシャマルの結界が破壊され、ガラスのように砕け散った。

「うそ!?」

かなり強固に張った結界のはず。
いったい誰がそんなことをしたのか……

「どうやら、間に合ったようだな」
「はい、キョウスケ二尉」

そのとき、ヴォルケンリッターとアクセルの間に、二人の人物が間に入った。
その人物はアクセルにとっても、ヴォルケンリッターにとってもなじみのある顔だった。

「大丈夫ですか?アクセル隊長」
「意外と早かったな、W17」
「いえ、それでも少々時間がかかったほうだと思いやがりましたりするんです……」
「……まだ言語機能は治ってないようだな」
「……はい」

少々頬を赤く染めているW17といわれている女性、ラミアにアクセルは苦笑する。
まあ、施設もないから直すのが無理なのも当たり前か。

「で、ベーオウルフ。お前も来ていたのか」

次に、アクセルはその横にいる赤いジャケットを纏った男を見る。
ベーオウルフと呼ばれた男、キョウスケ・ナンブは黙ってアクセルを見る。

532 :魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/06/10(火) 22:12:10 ID:7wBYY4xh
「何度も言うが、この世界では、俺はベーオウルフじゃない」
「しらんな。俺にとってはそのほうが呼びなれているからな」
「そうか……なら好きにしろ」
「そうさせてもらう」

それ以降、二人は黙ってヴォルケンリッターを見る。
どっちにしろ、時間は稼げたようであった。
さらにはベーオウルフのおまけ付で、だ。

「ラミア・ラヴレス……ベーオウルフ」

シグナムは、突如現れたラミアとキョウスケを睨み付ける。
ヴィータがアクセルと幾度となく戦うように、彼女もまたアクセルの元で戦っていたので、彼女たちとは面識もある。
ラミアはシグナムと、ザフィーラはキョウスケと何度も剣を交え、お互いにその腕を認めるほど実力は拮抗していた。

「投稿するんだ、お前たちは既に包囲されている」
『モード、アンジュルグ。イリュージョン・アロー』

ラミアはデバイス、アンジュルグを起動させ、弓形のデバイスに変化させる。
それをシグナムたちの方へ向け、ゆっくりと弦を引く。
そのラミアの顔が、獲物を狙う狩人のようであり、何か自分達がアクションを起こすものなら、遠慮なくその弦から手を離すだろう……

「今度は私達が追い詰められた、ということか……」

シグナムは歯を軋ませながらアクセルを見る。
どうやら、自分は彼の罠に陥れられたようだ。
周囲は局員で固められ、目の前には好敵手が二人……

「万事休す、だな……」

ザフィーラは嘆息混じりにため息をつく。
シグナムもシャマルも、どのように切り抜けるべきか、と画策している。
これは、切り抜けるにはかなり骨が折れそうであった。

「ふん!ようは全員ぶっ潰せばいいだけじゃねえか、あの三人以外は雑魚なんだ。あたし達ならやれる!!」

その中、ヴィータはグラーフアイゼンを持ち、カートリッジをロードする。
カートリッジが排出され、魔力が膨大に膨れ上がった。
ヴィータの思考は単純明快。
ただ、目の前の敵を潰す。
それだけだ。

「ヴィータちゃん……」

シャマルはそんなヴィータを見て、半ば呆れてしまう。
あの子は、あまり考えることがないのだろうか……

「だが、ヴィータの言うことも一理あるな……ただ眼前の敵を潰す。悪いことではない」

そして、ヴィータにつられるように、シグナムもレヴァンティンを構える。
その顔は、とても喜んでいるようだった。
リーダーまで……とシャマルは頭を痛めそうになる。
だが、それとともにあの二人が頼もしくもあった。

「はあ……軍師の名前は返上しなくちゃいけないみたいね」
「仕方あるまい。この状況、策を練る時間もないからな。これが上策といえば上策だろう」

シャマルは大きなため息をつき、じっとクラールヴィントの見つめ、ザフィーラはファイティングポーズをとる。
これで、4人のすることは決まった、

533 :魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/06/10(火) 22:14:24 ID:7wBYY4xh
「ふっ……くくく………」

しかし、ラミアはただヴォルケンリッターをみて、微笑を浮かべた。
それが、余裕の笑みのように4人は見えた。

「何がおかしいんだよ!」

ヴィータはそれが尺にさわり、今にもかかっていきそうな勢いで迫る。

「ふふ……ああ、すまない。あまりにもお前達が自分の実力を抑え目で言っているからな」
「なに?」

4人には、ラミアが言っている意味が解らなかった。
どういうことなのか……

「さっきのヴィータのセリフ、チャンスをやるから返上しておけ」
「なに?」

言われた本人、ヴィータは考える。
自分がさっき言ったことといえば……

(あの二人以外は雑魚なんだ。あたし達ならやれる)

おそらくその言葉だが、どういうことなのか……

(なんか変な事いったか?)

自分はおかしいことは言ってはいないと思っている。
自分にはさっぱり解らないので、ヴィータはちらっとシグナムたちを見る。
3人にもわからない、と首を横に振る。

「でなければ……」

さっきまで苦笑していたラミアだが、その表情が真剣なものとなる。

「お前達が雑魚だ、ということになるぞ」
「はぁ、おまえ何をいって……」

ラミアの意味が解らない言葉に首を傾げる。
その時だった……

「こんの……糞野郎共がーー!!」
「え?」

突如飛び込んできた絶叫に、近くで聞こえたヴィータは、その声を聞こえた方向……上を見る。
ヴィータの目に移ったのは、赤い何かだった……

「おぉらあぁーーー!!」

その何かは絶叫を上げ、ヴィータを襲う。

「がぁ!」

ヴィータは苦痛を浮かべながら、瓦礫の中に吹き飛ばされる。
その者の手には、ハンマーのような……それも、グラーフアイゼンに酷似しているものが、ヴィータを思いっきり吹き飛ばした。

534 :魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/06/10(火) 22:15:49 ID:7wBYY4xh
「ヴィータ!!」

シグナムは唖然とそれを見る。
ヴィータを襲ったもの。
あれはまさか……

『シュランゲフォルム』

そのとき、聞きなれは声に、はっと我に返ったシグナム。
そこに、あるものが視界に移る。
彼女が目にしたもの。

「れ、レバンティンだと!?」

それは、自分の相棒でもありレバンティンの連結刃、シュランゲフォルム。
自分は、まだ剣状のままだ。
そのレヴァンティンは、シグナム達を逃げられないように取り囲む。

「くっ、そういうことか……」

そのなか、ザフィーラはようやくこの状況を理解した。
最初の局員の言葉。
アクセルとラミアの意味深な言葉。
最後に、もう一つのグラーフアイゼンとレバンティン。
これを意味する事は……

「そこまでだ」

そこまで理解したと同時に、シャマルとザフィーラはバインドで拘束された。
かなり強固にできているのか、なかなか破ることができない。
だが、ザフィーラはこれで完全に納得したのだ。

「管理局だ、向こうの世界のヴォルケンリッター。このままお前達を拘束させてもらう。

そこには、ザフィーラが予想した通り、自分とまったく同じ姿をした者達がいたのだった。


「いっ痛う……」

何者かによって吹き飛ばされたヴィータは、瓦礫に埋もれながらも、何とか立ち上がろうとする。
しかし、瓦礫にぶつかった衝撃で頭はガンガンするし、襲われたときに受けた背中もズキズキと痛む。

「いったい何なんだよ……(ガシャン)」

起き上がろうとしたとき、何かが自分の首筋に突きつけられた。

(う、嘘だろ……)

それは、別に背後を取られたからではない。
ヴィータが驚いたのは、その突きつけられているものだった。
それは、紛れもない自分のデバイス、グラーフアイゼン。

「自分に言うのも変なものだけどよ……無益に局員を襲った罪だ。ヴォルケンリッター。お前達を連行する」

そこにいたのは、紛れもなく自分だった。
これで、ヴィータはようやくここはパラレルワールドなんだと深く理解し、自分を睨みつけるもう一人を自分を見る。

535 :魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/06/10(火) 22:17:04 ID:7wBYY4xh
「ヴィータ、そっちはどうだ?」

ふと、聞きなれた声が聞こえたので、両方のヴィータはそのほうを見る。
そこには、バインドで拘束されたヴォルケンリッターと、それを取り囲むもうひとつのヴォルケンリッター。
そっくりさんや双子ということでは難じてない。
両方とも同一人物という、なんとも奇怪な光景だった。

「くっそぉ……」

そのなか、バインドを施された向こう側のヴィータは悔し涙を流す。
もしバインドが解除されていれば、地面を何回も殴っていただろう。

「ここで、こんなところで終わっちまうのかよ……」

こんな、別世界とかいう訳の解らない所で、はやてを見つけ出す前に、自分達の戦いは終わってしまうのだろうか……
そう思うと、本当に悔しくて仕方がなかった。

「うぅあぁぁーーーーーーー!!」

その悔しさを晴らすように、ヴィータは絶叫を上げた。
ほかのヴォルケンリッターの気持ちをも代弁するような彼女の叫び声は、周囲にいる管理局全員の声に届いた。
その叫びを、この世界のヴィータはただ黙って、しかし胸に刻み込むように聞いていたのだった。


「もう接触していたのか、W17」

その光景を見て、アクセルは苦笑しつつラミアを見る。
この世界の管理局で、ばらばらで動いているアクセルとラミア。
アクセルもこの世界のヴォルケンリッターの事は耳にしていた。
この世界では、八神はやては生きていて、彼女の足を蝕んでいた闇の書の呪い、本体の暴走システムの完全消滅とともに既に完治。
しかも、ヴォルケンリッターは未だに存在している。
向こう側のはやてとは一目瞭然の生き方をしている。

「はい、私も最初は驚いちゃったりしちゃったんですが……」
「もういい、普通にしゃべれ」

ラミアの喋り方に、半ば呆れながらも苦笑するアクセル。
そんなアクセルに、了解した、とさっきまでとは違い、ため口で話し始めるラミア。
彼女のことをよく知らないものとしては、なんと奇怪な光景だろう。

「私も最初は驚いたが、つい先ほど接触して今に至っている」
「なるほど、偶然ということか」
「ああ」

淡々と説明するラミアに、アクセルは黙ってヴォルケンリッターを見る。

データでは、神音書は完全に呈しいたはず。
なのに、なぜいなくなったはずの管理人格が生きているのか……

(まぁ、この世界はパラレルワールドだ)

無数の分岐が存在するといわれてパラレルワールド。
この世界のはやて、そして自分の世界のはやて。
どれも、そんな無数の可能性のひとつだろう。

536 :魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/06/10(火) 22:18:09 ID:7wBYY4xh
そのとき、自分達の前方で魔方陣が展開された。
その光は次元航行艦からのテレポート用の術式だった。
テレポート時の魔力光は、だんだんと大きくなり、そこからは二人の女性が出てきた。


「あ、主。それにリィンフォースもなぜここに?あとは私達だけですると……」

その一人、小柄の少女を見て、シグナムはさっきまでのやり取りを思い出す。
それは、シグナムたちが来る前のこと。

自分達の事は自分達でなんとかします。

とシグナムが言ってこの世界に来た。
あの変わり果てた……いや、はやてに会う前に戻った、というにふさわしい別世界の自分達。
そんな彼女達を見て、
シグナムは自分達の事は自分たちが止めるべきだ、と感じたのだ。
だから、主には手を出さないようにといったのだ。

「そのつもりやったけど……あの子達をみとったらな……」

そう言って少女、八神はやてはバインドで拘束されたヴォルケンリッターを見る。
彼女にも、思っていることはある。
あの、画面越しからでも伝わる、見ているだけで痛々しい目。
そして禍々しいまでの殺気。
それを見た時、彼女はシグナムたちと同じことを思った。
あの彼女達を救えるのは自分だ、と。
夜天の書の主として。そして、大事な家族として。

「私は主の護衛だ。マサキはアースラの方にいる。いつシュウが来るか解らないからな」

そういって、優しい目ではやてを見て、その直後に、寂しそうな目でヴォルケンリッターをみた。
それは、確かに見慣れた彼女の姿だといっても良かった。
はやてと得あう前の、闇の書の一部として、ただ純粋に、主の命を忠実に従うだけの彼女達。
しかし、現在の主であるはやてと出会って、なおもこのような表情を見ると、どうしようもない悲しさが伝わってくる。

「は、はやて……」

バインドに縛られたまま、向こう側のヴィータは久しぶりの主を見る。
いったい、どれほど彼女に会いたかったか……
その、最も愛している人物が、別世界ではあるが、間違いなく八神はやてがそこ二いた。
はやては、静かにヴィータたちを見る。
近くで見ると、よりいっそう悲しく見えるその顔。
それを見るだけでも自分の心も悲しくなってくる。

「大方の話は、ラミアさんから聞いたけど……」

はやては静かに深呼吸をして、しばし目を閉じる。
それからいくつかのときが立ったかは解らない。
しかし、やがてはやては幼い大きな瞳を開けると、まっすぐにヴィータを見る。
その表情は、悲しんでいるようにも見え、怒っているようにも見える。
はやては、ヴィータに右手を差し伸べ……

パン!

「っ!……え?」

そのままその頬を思いっきりはたいた。

537 :魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/06/10(火) 22:19:20 ID:7wBYY4xh
パン!パン!パン!

その次に、はやてはシグナム、シャマル、ザフィーラの順番で、同じように思いっきり頬をはたく。
そのビンタは、今まで受けたどんな攻撃よりも心に響いた。
はやては、自らはたいたヴォルケンリッターの頬を見る。

「もう、本気ではたくんはこれが最初で最後にしたいな……」

そういって、はやてははたいた自分の手を見る。
思いっきり4回ほどはたいたその手は真っ赤だった。

「全く、うちの子たちは……あれだけ人様には迷惑かけたらあかんって口をすっぱくしていうたのに……」

家族を叱るように、はやてはヴォルケンリッターを見る。
あの時、出会ったときにした約束。

(自分のわがままで、他人に迷惑をかけるわけにはいかん。せやから、闇の書の蒐集はしなくてもいい)

こういったはずだ。
向こうの世界の自分の事は知らないが、このシグナムたちがこれだけ慕っているのだ。
おそらく同じ事を言っているだろう。
だがこの世界、そして向こうの世界。
両方のヴォルケンリッターはその約束を破った。
すべては主はやてのために、と……
その気持ちは痛いほど嬉しい。

「せやから、もうええんよ……」

そういって、はやては静かにヴィータをやさしく抱きしめた。

「はやて……」

ヴィータは久方ぶりにふれる優しい肌に、今にも泣き出しそうになる。

「もうええんよ……もう、私なんかのために、ヴィータ達が傷つかんでも……」

はやても、必死に涙を流すのをこらえながら話しかける。
そうだ、そのとおりだ。
シグナムたちは、はやてを見ながら思い出す。
主、八神はやてという人物は、自分自身よりも他人のことを思う優しい人だということを。
あの時も、おそらく自分のことよりも目の前で倒れている自分たちのことを思ってくれていたのだろうか……
そう思うと、自分達の行動は間違っていたのだというのか。
今となってはわからない。

「はやて……はやて!」

もう、ヴィータの方も我慢の限界で、大粒の涙を滝のように流しながらはやてを強く抱きしめた。
なにか、時分たちの汚れてしまった心が、洗われたような気がした。
結果、ヴォルケンリッターは投稿を受け入れ、アースラで事情聴取をすることになる。
そこで知らされる、向こう側の世界とは……

538 :魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/06/10(火) 22:21:46 ID:7wBYY4xh
投下完了。
久しぶりの魔装機神の投下でした。
最近忙しくなってきそうなので、投下ペースが遅くなってしまうので、その時は申し訳ありません。

539 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 22:37:09 ID:AWbxxgct
GJ!!です。
違う世界のはやてでも同じはやてと思うか、違う世界なんだから限りなく本人に近い他人
と、どちらに感じるかで、書く感想が変わりそうだw
個人的には、いずれ向こうに戻り終わりのない闘争にまた挑んでほしかったりするwww
私達の主は向こうでまだ、私達を待っているみたいなw

540 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 22:40:33 ID:QfebNGrM
魔装機神氏GJ!
違う世界の似ている人物とは、面白い所を突いてきますね。

541 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/10(火) 22:48:01 ID:63lFf1b3
魔装機神氏GJ&お疲れ様です。

さて、投下予告をしたいのですが、11時45分辺り大丈夫でしょうか?あと、たったのなら次スレが望ましいでしょうか?

542 :322 ◆tRpcQgyEvU :2008/06/10(火) 22:50:50 ID:aQGiH9Qd
もう容量がないのでその方がいいでしょう。
さて、もうそろそろ時間なのでEDFの続きを十分後に新スレで投下します。

543 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 23:04:19 ID:9gNKjr5E
支援待機

544 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/10(火) 23:13:25 ID:AWbxxgct
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1213099525/1-100#tag10
新スレだよ。

545 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/06/10(火) 23:45:27 ID:aECKrX/H
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
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546 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/06/10(火) 23:45:51 ID:aECKrX/H
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  し'∪   |   |   |   ∪ /  電波〜   電波〜    \毎日何処かの板で糞スレを立てる>>1
          ̄ ̄ ̄ ̄     /  .∧__∧      ∧__∧      \糞スレを立てる事しかできない白痴。
      ガッキーン       /  ( ゚∀゚ )    ( ゚∀゚ )          /test/read.cgi/anichara/1212406596/">★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

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