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リリカルなのはクロスSSその71

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 21:33:44 ID:wWaYdRoF
ここはリリカルなのはのクロスオーバーSSスレです。
型月作品関連のクロスは同じ板の、ガンダムSEEDシリーズ関係のクロスは新シャア板の専用スレにお願いします。
ガンダム関係のクロスオーバーは新シャア板に専用スレあるので投下はそちらにお願いします。
オリネタ、エロパロはエロパロ板の専用スレの方でお願いします。
このスレはsage進行です。
【メル欄にsageと入れてください】
荒らし、煽り等はスルーしてください。
ゲット・雑談は自重の方向で。
次スレは>>975を踏んだ方、もしくは475kbyteを超えたのを確認した方が立ててください。

前スレ
リリカルなのはクロスSSその70
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1213958689/

*雑談はこちらでお願いします
リリカルなのはウロス感想・雑談スレ39(避難所で進行中)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1213416975/

まとめサイト
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/

避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/

NanohaWiki
ttp://nanoha.julynet.jp/

R&Rの【リリカルなのはStrikerS各種データ部屋】
ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/index.html

2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 21:34:45 ID:wWaYdRoF
【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
  http://gikonavi.sourceforge.jp/top.html
・Jane Style(フリーソフト)
  http://janestyle.s11.xrea.com/
・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認してダブルブッキングなどの問題が無いかどうかを前もって確認する事。
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
 前の作品投下終了から30分以上が目安です。

【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は感想・雑談スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。

【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
 議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
 皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
 著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
 いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
 追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。

3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 21:35:44 ID:wWaYdRoF
【警告】
・以下のコテは下記の問題行動のためスレの総意により追放が確定しました。

【作者】スーパーロボット大戦X ◆ByQOpSwBoI
【問題の作品】「スーパーロボット大戦X」「スーパーロボット大戦E」「魔法少女(チェンジ!!)リリカルなのはA'S 次元世界最後の日」
【問題行為】盗作及び誠意の見られない謝罪

【作者】StS+ライダー ◆W2/fRICvcs
【問題の作品】なのはStS+仮面ライダー(第2部) 
【問題行為】Wikipediaからの無断盗用

【作者】リリカルスクライド ◆etxgK549B2
【問題行動】盗作擁護発言
【問題行為】盗作の擁護(と見られる発言)及び、その後の自作削除の願いの乱用

【作者】はぴねす!
【問題の作品】はぴねす!
【問題行為】外部サイトからの盗作

【作者】リリカラー劇場
【問題の作品】魔法少女リリカルなのはFullcolor'S
【問題行為】盗作、該当作品の外部サイト投稿及び誠意のない謝罪

4 :フルメタなのは 代理:2008/06/29(日) 21:45:53 ID:wWaYdRoF
ついでに代理投下しますよ、と。

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 21:47:56 ID:wWaYdRoF
 ──時は数時間ほど前に遡る。

 「くうっ!?」

 自室にて黒い金属の羽を掴んだゴウの脳内に、情報が激流の如く流れ込んでくる。

 『オペレーティングシステムの起動を開始』
 『マスター・デバイス間のリンク接続・・・肉体のスキャン、および最適化を開始』
 『体内各部のスキャン完了、異常なし。これより全身への魔力供給を行う』
 『筋組織および神経系への魔力伝達を確認』
 『脊髄・脳髄へ魔力伝達。順能率96.7パーセント』 
『供給完了を確認』
 『最適化完了。ファーストフェイズ終了』
 『セカンドフェイズ開始』
 『魔法の知識・発現方法のデータおよび汎用・戦闘用魔法のデータを送信準備』
 『情報伝達回路の形成を開始・・・形成完了。オールグリーン』
 『伝達開始・・・・・・・・完了』
 『セカンドフェイズ終了。全過程終了を確認』
 『これよりマスターの表層意識における意思疎通を図る』

 
 「…っぐ……がはっ」

 わずか一瞬の時間で雷に打たれたかのような衝撃をくらい、倒れそうになる体を必死で支えるゴウ。
 自身の身に何が起こったのか、ふらつきの抜けきらない頭で考える。
 感覚としては、過去に我無乱に魂を抜かれたときに受けた衝撃に近いだろうか。
 だがあれは文字通り“抜き出される”感覚なのに対し、今のはむしろ逆、“詰め込まれる”感じがした。
 そこまだ考えていた時、不意に声が聞こえてきた。

 『はじめまして。御機嫌いかがでしょう、我が主』

 その声を聞き、ゴウは飛び上がりそうになるほどに仰天した。何せ、自分の耳がおかしくなってないなら、声が聞こえたのは今自分が手にしている羽から聞こえてきたのだ。

 「なっ!?」
 『驚かせてしまい申し訳ありません。ですが、今のは必要な処置でしたのでどうかお許しの程を』
 「何だ貴様は!」
 『私は主専用の、あの封印刀の変じたデバイス、簡潔に申しますと魔法の使用を補助するための道具です』

 魔法。その言葉に、ゴウの心は大きく揺れ動いた。

 「魔法、だと?」
 『そうです。私は主が魔法を使うための、主が再び戦うための道具にして、武器です』
「武器・・・」
 『私のことについては、今は重要ではありません。単刀直入に申し上げます。主のご家族、騎士の皆様が、現在窮地に陥っています』
 「っ!?どういうことだ!」
 『騎士たちが現在、何を行っておられるかは既にご存知ですね?』
 「ああ」
 『その蒐集作業を行っている最中、時空管理局─平たく申しますと、一種の警察機構ようなものですが、その人間に捕捉され現在は戦闘状態、戦況は芳しくない物と思われます。』
 「何だと!?」
 『脱出しようにも数が多すぎる模様、下手を打てばやられるでしょう』

 デバイスの発した言葉に愕然とするゴウ。今日という日まで共にこの家に住み、家族として生きてきた騎士たち。その彼らに危険が迫っている。そして打ちひしがれているゴウにお構いなくデバイスは続ける。

6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 21:49:11 ID:wWaYdRoF
 『私を使ってください、主。あなたはこの力を望んでいたはずです』
 
 ゴウは視線をゆっくりと掌のの上のそれに戻す。
 
 『私の内には、主の願望をかなえるに足る確かな“力”があります。主に再び戦場に出る覚悟が御ありになるなら、私は自らの力の全てを喜んで主に捧げましょう』
 
 ゴウは一瞬だけ迷う。“力”を欲したのも確かだが、今一度戦の場に出る事への恐れも、自分はまた抱いていたからだ。
 過去では自分が刀を振るう度に、人が一人、また一人と死んでいった。いや、正確に言えば、最早人を殺すことに恐れなどない。
 ゴウが真に恐れるのは、今の生活が、図らずも掴んだ“平穏”が失われることにあった。戦いを続けつつも、そこから逃げ出したいと思う自分がいることを彼は自覚していた。
 だが───

 『ご決断を。主』
 「ああ……お前の使い方を、教えろ」

 ゴウは自らの弱さを、断ち切った。
 確かに今全てに目を瞑れば、平穏ではあれるかもしれないが、それは「周りに誰もいない」平穏だ。四人を見捨てて、悲しみに暮れるはやてとだけ生きていくなど、ゴウには考えられなかった。
 その心中には、「二度と仲間を失うものか」という意思だけがあった。

 『御意。では一言唱えてください。「セットアップ」と。戦闘時に主の身体をお守りする防護服等の設計は既に完了していますので』
 「至れり尽くせりだな。・・・セットアップ」

 苦笑しながらも起動キーを唱えるゴウ。瞬間、その身が光に包まれ、今来ていた服が分子レベルにまで分解され、同時に魔力で編まれた新しい戦装束が現れる。
 深い闇色をしたそれは今までに来ていた装束に準拠したデザインで、されどところどころが流線的というか羽をあしらったかのようなイメージがあった。
 最も目がいくのは左腕の手甲で、大きめで金属的な見た目にもかかわらず重量感はさほど感じなかった。

 「これが新しい俺の服か」
 『はい。見た目こそ普通の出来ですが、受けた衝撃の分散、水中での呼吸が可能などの機能が備わっております』
 「何から驚いたらいいか分からんな。…よし、それで、どうやればあいつらのところへ向かえる?」
 『次元転移魔法を発動します。本来大掛かりな手順が必要ですが、人一人なら少しの時間で済みます』

 言うが早いか、足元に光が溢れはじめる。その光を見つめながら、ゴウはふと思ったことを口に出した。

7 :フルメタなのは 代理:2008/06/29(日) 21:51:10 ID:wWaYdRoF
 「そういえばお前、名はなんと言うんだ?」
 『名前は…特にありません。魔法のプログラムの組み立てに時間を費やしていたので、自身の名前を決めている暇がありませんでした。主、私に名前を付けて頂けないでしょうか』
 「俺がか?」
 『はい。私は主のためだけに存在します。ですから是非ともお願いします』

 ゴウはしばし黙考し、やがてなにか思いついたのか顔を上げて話した。

 「陰牙、というのはどうだ」
 『いい名前だと思いますが、何か由来が?』
 「俺の二つ名は鴉、その字を分けると牙と鳥だ。鳥が俺なら牙はお前。陰に生きる俺が持つ牙、だから陰牙だ」
 『なるほど、理解できました』
 「それに業と因果なら、丁度いい組み合わせだしな」
 『皮肉ですね。ですが異論はありません、その名前を頂戴します』

 会話の終了とほぼ同時に術式の展開が完了し、身体が光に飲み込まれる。

 「行くぞ、陰牙!」
 『御意!』



 「・・・という訳だ」

 
 時間は現在に戻り、今五人は街中のとあるビルの屋上に集まっていた。
 何があったのかと四人に言い寄られたゴウは、自分の身に起きたこと、そしてあの場へと馳せ参じるまでの過程を話していた。

 「…そうか。大体の状況は把握出来た」
 「ぶっつけ本番で魔法やデバイスをああまで扱うとはな。正直驚嘆に値する」
 「全くだぜ。でもホントすげぇ闘い振りだったよな」

 シャマルに回復魔法をかけてもらいながら口々に話す一同。

 「全く驚いたわよ、突然家の中から強い魔力反応が出て、部屋に確かめに行ったらゴウさんの姿が消えてて、それで皆を支援に行ったら今度はバリアジャケット着たゴウさんがいるんだもの」
 「すまんな、だが事情を話している間も無かったんでな」
 「ハァ、まあいいですけどね」

 半ば呆れて嘆息するシャマル。しかしゴウは口調と顔つきを改めて騎士たちに言い放つ。

 「お前らこそ、俺やはやてに黙って禁止されたことを続けていたんだ。人のことは言えんだろう」

 ゴウのセリフに、その場の空気が一気に張り詰める。

 「知ったのはいつからだ?」
 「最初からさ。あの日のお前らはどこか様子がおかしかったからな」
 「…うかつだったな。全く気付けなかった」
 「忍をなめるな、気配を断って相手に近づくなど朝飯前だ」
 「なるほどな・・・で、貴様はその事実をどうする?」

 目を細めたシグナムが底冷えするような声で語りかける。隣に立ったザフィーラも同様の視線を発している。返答によっては只では済まさない、そんな感じの雰囲気だ。

 だが、ここで思わぬ人物から横槍が入った。

8 :フルメタなのは 代理:2008/06/29(日) 21:52:22 ID:wWaYdRoF
 「二人ともそんな目すんなよ!現にゴウはあたしらを助けてくれたし、事実を知ってたのにはやてにばらしたりしなかったじゃんか!」

 間に割って入ったのはヴィータだった。シグナム達は珍しいものを見たかのような顔をしているが、それも当然。騎士たちのなかでゴウを最も嫌っていたのはヴィータだったからだ。

 「お前が助け舟を出してくれるとは思わなかったな」
 「そりゃ、その、お前にはさっき助けてもらったから・・・・」

 最後の方はゴニョゴニョとしてて聞き取れなかったが、赤く染まった頬が全てを代弁していた。

 「ヴィータの言うとおりだ、お前らのしていることをとがめたりする気は無い。はやてのことを思っての行動だろうからな。だが、一つ頼みがある」
 「?」
 「俺にも、蒐集行為を手伝わせてくれ」
 「何だと!?」
 「今まで干渉しなかったのは、お前らのように戦う為の力を持っていなかったからだ。そしてそれが手に入った以上、もう遠慮する気も必要もない。だから俺にも、はやてを助けさせてくれ」

 沈黙が全てを支配する。ゴウは騎士たちの将の返答を待ち、烈火の将はどう答えるべきかを考え続けた。どれほどの時間が経ったのか、やがてシグナムは静かに口を開いた。

 「今後人を殺さないと約束出来るか?」
 「え?」
 「先程の戦闘で見ていたが、お前、向かってきた局員を何人も刺し殺したろう。我らの流させた血によって主の人生が穢れるなどあってはならないことだ。だから「ちょっと待て、俺は一人も殺してはいない」って、何?」

 急に言われ、思わずシグナムは聞き返す。

 「おまえらがはやてのために不殺を誓ったことは知っている。だからさっきは全て非殺傷設定とやらを使った」
 「そんな、いくら非殺傷設定でも、魔力の刃で刺されて無事な訳は…」
 「ああ。そこの所は陰牙が上手くやってくれたよ」

 ゴウの説明はこうだった。確かに如何に非殺傷と言えど、そのまま体に刺されれば肉体を傷つけるので結果的に殺すことになる。しかしデバイス『陰牙』の発生させる魔力刃は通常のつくりではなかった。
 どういうことか説明すると、あの刀身の構成はどちらかというと発した魔力を人の細胞と融合させる回復魔法に近いのである。
 先に挙げたとおり、そのままの魔力では人体を損傷させてしまうので、刃そのものを身体の中に溶け合わせるような性質で、されど完全にはなくならない程度の強度を持たせて顕現させているのだ。
 例えるなら、スポンジを針で突付けば壊れるが、水を当ててもそのまま浸透し、後ろに流れていくようなものだ。
 これならばショックは有るが殺すことはなく、突き刺した後に電気のように自分の身体から魔力を発し、体内の急所に直に流せば相手を昏倒させることが可能となるのだった。

9 :フルメタなのは 代理:2008/06/29(日) 21:53:28 ID:wWaYdRoF
 「だからお前達の言う不殺は守っているし、破る気も無い。問題は無いはずだ」
 「…分かった。ヴォルケンリッター烈火の将が認めよう。主の命のために、我らとともに戦ってくれ、ゴウ」
 
 右手を差し出し、近いの握手を求めるシグナム。そしてその手をゴウはしっかりと握り締めた。

 「もちろんだ、この命と力、はやてとお前達のために振るおう」

 ゴウとヴォルケンズが共闘を誓い、全員の意思が一つとなった瞬間であった。

 「あーっ、にしても疲れたよなぁ。お腹空いちまったよ」

 腹の辺りをさすって空腹を示すヴィータ。

 「そうね、早く家に帰ってはやてちゃんの・・・って」
 『あ゛』

 全員の顔が青ざめ、別な意味で意思が一つとなった瞬間だった。





 「…まずはお帰り、皆。そ・ん・で、こぉ〜んな時間まで帰ってこなかった理由を聞かせてもらいたいんやけどなぁ?」

 八神家に帰ってきたゴウたちを待ち構えていたのは、引きつった笑みと青筋を額に浮かべたはやてであった。

 「連絡も入れずにほっつき歩いとったシグナム、ヴィータ、ザフィーラ。それと探しに行ったきり戻って来いひんかったゴウとシャマル、うちがどんな気持ちで待っとったか分かるか?ん?」

 見た者全てを竦みあがらせるような迫力をしたはやて。ズゴゴゴゴという音と一緒に背後に般若が見えるのは気のせいだろうか。

 「「「「「ごめんなさい……」」」」」

 見事なシンクロっぷりで土下座する一同。歴戦の兵(つわもの)でも震えるほどのスゴ味であった。
 その後延々とはやてのお説教を聴かされることになり、終わる頃には夜が白んでおった、とさ。
 
 続く

10 :フルメタなのは 代理:2008/06/29(日) 21:55:05 ID:wWaYdRoF
429 名前:フルメタなのは ◆JCTewlikow[sage] 投稿日:2008/06/29(日) 21:44:03 ID:1hkglxyM
投下終了です。厨設定、説明だらけ、ぐだぐだです。orz
余り突っ込まないでもらえるとうれしいです。

実生活でいろいろと用事があるので次がいつになるかは分かりませんが、その内番外編でも書こうかと思っています。
それでは、また。

それと前スレで容量オーバーしてしまいすみませんでした。

11 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 21:56:40 ID:wWaYdRoF
代理投下完了。

12 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/29(日) 21:59:38 ID:zxczu9Tv
スレ立て&代理投下お疲れ様でした〜
さて……予約が無ければ私もこっそりと「キャロとバクラ」の出番が少ない「キャロとバクラ〜シリーズ」の最新話を投下したいと思います。
どうよ? むしろこっちを見ている人がどれだけ居るのかと言う疑問?

10時半頃を目安に投下を開始しますね〜

13 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:06:57 ID:A3//2+z7
避難所には人は多いけど
こっちには人が少なくなりましたよね

14 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:14:40 ID:iwOOmE1C
最新話を「最終話」と読み違えて驚いたよ……。なにはともあれ、支援射撃の準備して待ってます。

15 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:17:28 ID:Ca206rn1
>>10
GJ!
全くデバイスはべんりだぜ!
なんというお説教タイム…

16 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:19:50 ID:Ca206rn1
>>12
支援だ!

17 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:33:13 ID:CQaYCfPr
さぁ…諸君、支援の時間だ!

18 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:33:51 ID:Ca206rn1
バイク支援

19 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:35:35 ID:A3//2+z7
D・ホイール支援

20 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:35:38 ID:lh1cXfoH
支援するぜ!!

21 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/29(日) 22:36:11 ID:zxczu9Tv
私 機動六課部隊長 八神はやては今回与えられた任務について、盛大にタメ息を吐いた。
内容は『ホテル・アグスタで行われるオークションの警護』というもの。

「お門違いも良いところやん」

確かにそのオークションにはロストロギア紛いの代物が出品されたりする。
だけど遺失物管理部の名を持つとは言え、六課の仕事は即時対応と言う新しい形式を確立させること。
ソレを広める事で管理局の事件への対応力を挙げ、ついでにその功績を使ってウチが順調に出世するための部隊。
それが何で道楽の金持ち共が骨董品に金をつぎ込む場所の警護などせねば成らないのだろう?
コレもすべては地上本部の一室から先日掛かってきた電話のせいだ……ちくしょ〜あの大タヌキめ〜



「はい、おはようございます! 毎度お世話になってます、遺失物管理部機動六課でございま〜す」

「なんだ? 通販にでも掛け間違えたか? 切るぞ」

『このヤロウ……人がせっかく出るのが怖い電話に出て、愛想全開で対応してやればふざけやがって!
 そのシールみたいなもみ上げと連結したヒゲを毟り取るぞ!? ゴラァア!!』

……なんて言えるほど偉くなりたいな〜実際はと言えば……

「堪忍してください。六課のはやてです〜今日はレジアス中将自らお電話いただきまして〜」

そう、ワザワザ私の部屋の直通で電話を掛けてこられたのは、地上本部の実質的トップとして君臨するレジアス・ゲイズ中将。
海に吸い取られる優秀な人材を抜きにして、地上の治安を守ってきた凄い御人。黒い噂も聴くけど、まぁ偉い人なんてそんなモンや。

「リニアレールの件では報告書を読んだ。
無茶をして集めた優秀な人材と機材を腐らせる愚は犯さなかったようだな? 評価できる結果だ」

「ありがとうございます。何せコネを総動員して集めましたから。
必ず結果を出すという気構えで……もちろん中将のご支援あってこそですけど?」

私みたいな管理が異世界出身の新参者が、二十歳を前にしてここまで出世できた理由は大きく分けて二つある。
一つは失ってしまった大事な家族、初代リィンフォースより託された魔道師としての能力。
もう一つは波乱万丈な人生のうちに積み上げた各方面へのコネ・人脈だ。
そしてその各方面への人脈やコネは公にしているモノで二つほど。
一つはハラウオン一家を中心とした海へのモノ。もう一つは騎士カリムを中心とした聖王教会へのモノ。
そして前者二つへは隠している裏のコネ。それがいま電話をしているレジアス中将をメインとした陸へのモノ。

「当然だ。普通ならば陸で海と教会連中の実験的部隊運営などさせるものか。
 貴様らが上手くやれば、陸と海の大きすぎる戦力格差是正に対する一つのアプローチが確立する。故に好きにやらせているのだ」

「はい。心得とりますよ」

この裏のコネは他の二つとは大きく異なる。それはお互いが完全な利益の一致によって動いていることだ。
もし六課が失敗をしても、レジアス中将は一切問題を抱えない。
逆も然りであり、万が一にもレジアス中将が失脚するような事が起きても、六課は被害を被らない。
故にどんな資料にも残らない関係であり、正にギリギリと言った表現が相応しい。




22 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:36:55 ID:lh1cXfoH


         ―――――さぁ、約束の刻限だ―――――

23 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:37:21 ID:Wt2O7E2v
まだキャバクラ氏の投下フェイズは終了していない支援

24 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/29(日) 22:37:31 ID:zxczu9Tv
「話は変わるがホテル・アグスタでのオーディション、知っているな?」

「あのロストロギア紛いの品も出品するきな臭い奴ですか?」

何かどこぞのフェレットが参加するとかしないとかで、興奮していた記憶がある。
もっともお仕事でもなければそういった品物とお付き合いする趣味は無いわけやけど……

「そうだ。既にいくつかの部隊に警護を命じているが、そこに六課を加える。お前ら三バカは出席者に顔でも出しておけ」

「はぁ!? 私らは即時対応の攻勢部隊であって……」

オークションの警護!? 如何してそんな事を私の六課がせなあかんの?
『遂にボケたか? ヒゲゴリラめ!』
そんな決して口を出ないだろう文句が脳内で飛び交い、受話器を握る手に力が入りかけて……一喝された。

「戯けが! 華々しい活躍だけが部隊の質を決めるのではない!
 知識人や権力者に覚えよくして置くことも、大事な功績のうち。後に効いてくるのだ。
そう言ったことが解らんようでは……ワシの後釜には座れんな? 小タヌキめ」

「っ!? これは一本取られました……八神はやて、精進します!」



「……今にして思うと完全に乗せられとる。ウチもまだまだや」

面倒なお仕事をプレゼントされた事を、敬礼して電話を切ってから気が付いた。
たぶんレジアス中将は自分がお呼ばれしていた案件を私に押し付けたのだろう。
財界にも理解者が多い人やから、そう言った事態もおかしくは無い。それに……

「あの人のコネが無いなら、招待客って事で中になんて入れないやん……
うちらのドレス姿で老人方を喜ばせ、自分の株を上げようって魂胆やな? 古狸め〜」

本当に隙が無い……これが地上の治安を守り抜いてきた猛将の実力か!?
悔しさでガリガリと奥歯を噛み締めていると、通信の端末から響くのは部下であり家族である湖の騎士の明るい声。

「はやてちゃ〜ん、そろそろ時間です」

「そやな〜いま行く」

「三人のドレスもしっかり準備万端です〜」

「お〜しっかり頼む。今日のうちの戦装束やからな!」

私はパチンと両の頬を左右の手で挟むように一打ち。下らないと思える任務に気合を入れ直して、私は自分の仕事部屋を後にした。
部下達には悪いが今回は前回のような任務には成らない。本来の警備部隊も配置についているのだ。
悪く言えば退屈な時間だけを消費する事に成るだろう。そんな中で私はお洒落な戦装束 ドレスを纏って金持ちどもの相手。
申し訳が立たない気もするが、そこも確かに私の戦場。


……今にして思うとそんな考えがあの失態を生んだのかもしれない。





25 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:37:36 ID:iwOOmE1C
支援っ!

26 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:38:03 ID:CQaYCfPr
し・え・ん!

27 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/29(日) 22:40:12 ID:zxczu9Tv
「警備の体制は問題無さそうだね?」

「うん、先任の陸士部隊の隊長さんも良くできた人だったよ」

「これは間違いなく私ら六課はお飾りや」

魔法が飛び交う何時もの職場とは異なるホテルのロビーを、バリアジャケットとは異なる華やかなドレスと言う鎧を纏い、彼女達は歩く。
高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやて。機動六課の中枢メンバーにして、管理局期待の三大ホープ。

「でもやるからには気は抜けない。フォワード達の配置は?」

「一応陸士部隊の穴になる部分に配置したよ」

「向こうさんから以来があれば各分隊の副隊長とザフィーラが遊撃っちゅう形や。
 それとシャマルにも現場管制をお願いしとる。今やるべきはこんなもんやな」

口から漏れるのは部隊運営と拠点防御に必要な案件の数々。されど彼女達の姿はやはりどこから見ても着飾ったドレスのソレだ。
そして周りから降り注ぐ好機の視線が自分達の役割を再認識させるもの。

「「「あぁ……客寄せパンダだ」」」と

不意に近寄ってくる中年男性。好意だけの笑みを浮かべた男性。
仕立ての良いスーツを纏い、背後には黒服にサングラスのSPを引き連れている。
告げられるのは自己紹介と挨拶がセットになった常等文句。続けられるのは鼻に付かない程度のお世辞と自慢話。

「□□□氏のお噂はかねがね、管理局にも多大なご協力を頂いているそうで……」

それにまず答えるのは、はやてだ。部隊長と言う役職上、前線に出ることは少ないし、出来ない。
ならばこんな時こそ、彼女が親友達よりも一歩前へと出る時。汚い世の波から部下を守るのも上司の立派な仕事。
実験部隊などと言うメンドウな仕事を請けなければ、それぞれ執務官や教導官としてより有意義な時間になったはず。
それを蹴って自分の夢に付き合ってくれた親友の為、このある種修羅の巷を一人で切り抜ける程度の覚悟ではやては居た。
けれど……

「ズルイよ、はやてちゃん」

「へ?」

「一人で全部受け答えしちゃうんだもん」

「は?」

まさかそんな事で、良かれと思ってやったことで文句を言われると思わなかったはやては目をパチクリ。
片やなのはとフェイトは親友に向ける最上級の微笑で答える。

「私たちは友達でしょ?」

「友達なら良い事も悪い事も一緒に……」

「ほな……付き合ってもらおか? 退屈で、嫌気の差しそうな……地味な戦いやけど」





28 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:41:40 ID:Ca206rn1
バカな!レジアスがはやてを押している!?支援

29 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/29(日) 22:42:52 ID:zxczu9Tv
そんな華やかで地味な戦いが繰り広げられているホテル・アグスタは周囲を森に囲まれている。
これは景観という意味で最良のものだが、防衛と言う事を考えた場合、襲撃者に対して多数の遮蔽物を提供する事を意味していた。
その遮蔽物だが多勢の進軍を阻むという面と、少数の潜入を助けるという二つの側面があり、一概に評価は出来ない。
だが今回のような警護という六課や他の陸士の任務にとっては、不利と言わざるえない。
なぜならば『小数で潜入し、多勢に進撃する』ことが出来るその訪問者が見事に隠されてしまうから。


「ドクターのオモチャが来た……やられてるけど」

森の中、木の陰でその人物は指先に止まる不思議な虫の明滅を見て、囁くように呟いた。
声の主は年端も行かない小さな少女。淡い紫色の輝く長い髪、色白の肌。
顔は明瞭な表情を欠いており、額には奇妙な紋様、瞳も鉱物のような変わらぬ色を宿す。

「そうか……だがアソコにはお前の探し物は無いのだろう?」

囁きに答えるのは少女の後ろに控えていた中年の男性。ガッシリとした体と強固な意志を宿す瞳から、歴戦の魔道師としての過去が窺える。

「ガラクタなど捨て置けば良い。ここに居る事がやつに知れたら、何か余計な事を依頼されるに決まって……」

ここからは見えないオモチャやガラクタに向かって、あいも変わらず平坦な視線を向ける少女に、男がそう言いかけた。
そんなときに狙ったようになり響く通信を受信した事を知らせる電子音。ため息をつく男を無視して、少女は指を一振り。

「ごきげんよう、ルーテシア。それに騎士ゼスト」

開かれた通信用のウィンドウに映し出されるのは、白衣に身を包んだ長身の男だ。
金色の瞳に紫の髪。すべてを見下したようなニヤニヤとして気味が悪い微笑み。

「ごきげんよう、ドクター」

「何のようだ、スカリエッティ」

男の名はDrジェイル・スカリエッティ。多次元世界で指名手配される次元犯罪者。
罪状は生命操作や人体改造などに代表される違法研究。その成果として存在するルーテシアとゼストと、この変人の立場は難しいものがある。

「ちょっとお願い事があってね。アソコにはレリックは無いみたいなんだ。
実に興味深い研究材料が『断る。レリックが絡まない限り、我らは不可侵の……』
ルーテシアはどうだい? 引き受けてくれるかな?」

自分を無視して年端もいかない少女へと矛先を向け直すスカリエッティに、ゼストは舌打ちを一つ。
当然ながら好意など抱いていない自分よりも、幼く拒む理由も存在しないルーテシアへと言葉を向けるほうが容易いからだ。

「良いよ」

「本当かい? ありがとう、ルーテシア。今度お菓子とお茶をご馳走しよう」

ゼストの心配を体現するように、ルーテシアはコクリと肯定で首を曲げる。
完全に予想していただろうに、まるで予想外の嬉しい出来事だと言いたげなアクションで御礼を約束するスカリエッティ。

「チーズケーキ」

「ん?」

「森の小熊のチーズケーキが良い」

だがそんな嫌味なアクションなど、ルーテシアには関係の無い事だ。
純粋な食欲と言う欲求と味の探求の成果として、以前食べて気に入ったケーキ屋の名前と商品名を呟く。
そんな僅かながら子供っぽいアクションにスカリエッティとゼスト、どちらも程度の差があれど笑みの形を作った。




30 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:43:37 ID:Ca206rn1
つじつまが合わない!これは現実ではない!支援

31 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:44:40 ID:A3//2+z7
黒はやて支援

32 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/29(日) 22:44:56 ID:zxczu9Tv
「解った、準備しておこう。お茶はダージリンだね?」

「ミルクたっぷりで」

「心得たよ、お姫様。欲しい物のデータは君のデバイス アスクレピオスに転送したからね?」

コクリとルーテシアが頷いて、スカリエッティを映したウィンドウも消える。嫌な奴の目が無くなったのを確認して、ゼストは聞いた。

「良いのか?」

「うん。私はドクターの事嫌いじゃないし……それに……」

「ん?」

続けて放たれたルーテシアの何気ない言葉に、ゼストは胸を打つ痛みを覚える。

「新しく調整された私の体、まだ出力限界を試して無いから」

『調整された体』
ルーテシアとゼスト、二人は普通の人間ではない。スカリエッティの作品なのだ。
レリックと呼ばれる高次元魔力結晶体を体に埋め込まれた人造魔道師 レリックウェポン。
だが二人の間には純然たる差がある。ゼストは普通の人間として生まれて、死後レリックウェポンとなった。

「そうか……無理はするなよ」

しかしルーテシアは生まれる前、とある女性の腹から胎児の段階で取り出され、調整を受けて生まれた。
つまり生まれついて、純然たるレリックウェポン。他の自分を知らないし、レリックが埋まっていない状態など考えられない。
自分が異質な存在であると言う認識が無ければ、その圧倒的な力を振るう事にためらいなど生まれない。


「解ってる。無理をせず……でも全力を出す」

ルーテシアの胸元で交差された両の手は黒のグローブで覆われている。
その甲の部分では紫色の玉が輝きを放ち、彼女の内から溢れ出す魔力により、虫が這うような音を立てて同色のラインが走った。

「行くよ、アスクレピオス」

「YES」

「汝ら這いずるモノ、飛翔するモノ、踏み潰すモノ。硬き甲殻、節なる多足、複数なる瞳」

レリックに裏打ちされた底なしの魔力が、呪文と共に辺りを満たし、目を伏せたルーテシアの長い髪を揺らす。
そんな姿を見つつゼストは呟いた。

「魔法を使う姿はメガーヌにそっくりだ」

ゼストの部下として地上所属としては破格の能力を持つ召喚士だった女性 メガーヌ・アルピーノ。
本人同士には面識が無くとも、確かにルーテシアとは血が繋がった関係であり、魔道師の素養は間違いなくメガーヌ譲りだ。
アスクレピオスと言うデバイスも改良を加えながらも受け継ぎ、ガリューと言う人型の知性ある召喚虫は親子二代に忠誠を誓う。




33 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:46:03 ID:Ca206rn1
スピード上げればAMFも関係ねえ!支援

34 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/29(日) 22:46:11 ID:zxczu9Tv
だがルーテシアとメガーヌ、二人の間には純然たる差が存在している。
それは……『人間で在るか否か』。人間と魔力炉のような……純然たる出力の差だ。


「我が呼び声に答えよ…『蟲』…招来」

生まれるのは余りにも大きくて緻密な魔法の形態。ルーテシアの魔法が形を成すのは自らの近くではない。
離れた場所、ホテル・アグスタを中心にした複数の場所で同時に展開される彼女の魔力光を放つ魔法陣。
どれもが召喚魔法独特の形状を示し、その底は異世界へと繋がる扉。這い出てくるのは様々な『蟲』。

「行って……」

囁くような命令に各地から同意を示す歯軋りや羽ばたきの音がルーテシアの耳に届いた。
母親譲りの魔法技能でレリックの有り余る魔力を制御し、無数の召喚虫を一気に複数のポイントへと召喚。
更に遠距離複数の召喚を維持・制御しながら、状況に応じて更に新しい魔法を発動していく。
それらの動作を淡々とこなし、召喚虫たちが告げる戦況と被害者の悲鳴や怒号にも、眉の一つ動かさず表情は変わらない。

『ルーテシアは心が無い』

故に戸惑わない。力に恐怖しない。異形を屈服させる事に疑問が無い。
踏み潰される相手の悲鳴が雑音にしか聴こえない。善悪など価値を持たない。
故に……ルーテシアは『強者足る』のだ。




35 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:48:16 ID:zSYPLBn7
支援、支援と。

36 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/29(日) 22:49:47 ID:zxczu9Tv
「コレって!」

『間違いないぜ、相棒』

「キャウウ!?」

襲来したガジェットは六課の副隊長と防衛部隊の先鋭による遊撃で、キャロたちフォアード陣が配置された防衛ラインには届かなかった。
敵の数も徐々に減っていき、誰もが戦いの終焉を感じた時、ソレは来たのだ。
奇しくも最初に気付いたのは、竜やら死霊を操る同じ召喚士であるキャロ・ル・ルシエとその相棒であるバクラとフリード。

「どうしたの? キャロ」

「召喚魔法です!」

隣に控えていたエリオの疑問にキャロが叫ぶ。その言葉に僅かに離れていたティアナがクルスミラージュを構え直した。

「それってアンタと同じ?」

「あぁ、そうだ。だが……」

キャロに変わり、バクラがティアナの疑問に答えつつ……訂正を一つ。

「桁が違う」





37 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:51:28 ID:A3//2+z7
キックバックで召喚ごと蹴り返せ支援

38 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:51:32 ID:Ca206rn1
この蟲野郎!フラグ支援

39 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/29(日) 22:52:43 ID:zxczu9Tv
「なんやこの魔力反応!」

お得意様に愛想を言う偽りの表情を吹き飛ばし、機動六課部隊長たる八神はやてが周りの目を気にするでもなく叫んだ。
返事は直ぐに来る。まずは隊舎の管制室にいるロングアーチから。先程までの冷静な声とは違う驚きの色を含んで。

「アグスタを中心にした複数のポイントで、召喚魔法の発現を確認!」

「召喚! この反応全部が!?」

召喚は決して簡単な魔法ではない。異なる世界に存在するモノを、次元という厚い壁を越えて呼び出すのだ。
他の魔法よりも魔力効率もいいとは言えず、制御も難しい。それを遠距離で、複数行うのがどれだけ難しいか察するのは容易い。

「召喚されたモノの確認は?」

「こちらシャマル、前線との連絡取れました。映像を受信、そっちに映しますね」

魔法が展開された場所を示すウィンドウに重なり、展開される画面を覗き込んで、はやては思わず呟く。

「……ウゲ」

映し出されたのは無数の昆虫。アリ、カブトムシ、ノミ、ハチ、ゴキブリ。
通常の乙女ならば脊髄反射的に『ウゲ〜』となるだろう。しかもコイツらは……デカイ。
少なくとも陸士部隊達の防衛線を食い破れるだけの大きさ。

「なのはちゃん、フェイトちゃん。ドレス着て『キャッキャ、ウッフッフ♪』はしまいや。
 外の防衛線で迎撃を指揮を取り、存分に本来の仕事をしてえな?」

「「了解!!」」

通信から響く声に頷き、はやては再びディスプレイを睨みつけ、指示を飛ばす。
本当の彼女の戦いもまた、始まった。


「オレ様たちでもこの程度だ」

ティアナを中心とした防衛戦の打ち合わせの最中、キャロの体でバクラは己の後ろに居並ぶ死霊たちを指差す。
その数は十を遥かに超えている。だがそれでも……周りから伝えられる虫の数や大きさは比較になるモノではない。

「それって……普通じゃないですよね?」

「あぁ、普通なら魔道師が一人で出せる出力じゃねえと思うんだが……」

「例えどんな相手でも! 倒すしかないわ」

僅かに顔を青くするエリオに答えていたバクラに、ティアナが気合を入れる。

「倒す? 違うな」

「なっ!?」

だがバクラが何を言ってやがる?と言う視線を向けるのだから、ティアナはカチンときた視線をぶつけ返す。

「私達のお仕事は守り切ることです」

「っ!! 解ってるわ……」

「焦ってんじゃねえよ? ケッケッケ」


40 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/29(日) 22:53:22 ID:zxczu9Tv
徐々に近づいてくるバキバキと言う木をねじ切るような音、虫が上げるまさに金切り声。
それが直ぐに彼らを戦士の顔へと戻す。

「行くわよ!?」

「「「おう!!」」」

ティアナの掛け声にスバルにエリオ、そしてキャロが返す。内心ではバクラが呟いた。


『さ〜て、メンドウな相手になりそうだ……』



と言う事で……


『キャロとバクラが久し振りの強敵に激突する事になりそうです』


41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:53:44 ID:Ca206rn1
支援

42 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:54:26 ID:A3//2+z7
トゲトゲ神の殺虫剤使用許可申請支援

43 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:54:44 ID:FbXxecHh
ついに死霊使いとインセクター激突!支援

44 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/29(日) 22:55:24 ID:zxczu9Tv
以上でした〜え? レジアスとはやてが仲良しで納得できない?
そんなのどっちもいざとなったら切り捨てる気満々ですからw

え? ルーテシアが強すぎる? だってレリックが埋まってるんですよ?
コレくらい強くてもいいかな〜と。だってこのお話ではラスボスだし(ぇ

とまあ、予想される感想に先に答えつつ……さらばだ!!

45 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:55:56 ID:Ca206rn1
ドロー!モンスターカード!支援

46 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:58:46 ID:OD+/Jvzp
GJです。
はやてとレジアスが結構仲良くやっている所が個人的には良かったです。
それにしてもルーテシアは蟲使いのみならず、本人も蟲の様な在り方に
なってしまっていますね。

47 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 22:59:33 ID:A3//2+z7
GJ!
HAGAAAAAAAAAA
召喚自体をカウンターできなかったのは仕方がない
さあ、トゲトゲ神の殺虫剤を散布しようか?

AMF?D・ホイールの魔力加速でぶっちぎってやんよ

48 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/06/29(日) 23:02:56 ID:zxczu9Tv
言い忘れた〜
このルールーの設定は私の短編『昆虫幼女 インセクタールールー』と同一ですよん。
そっちも読んでいただければよりルールーを愛する事ができるかもしれません(ぇ


49 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 23:03:29 ID:Ca206rn1
GJ!
はやてとレジアス中将の会話なんてレアな物が見れるとはwwwしかも中将優勢www
以外すぎる人間関係だw
キャバクラ達がむしむしQにどう対応するか楽しみ。

50 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 23:04:08 ID:FbXxecHh
GJでした!
つーかここのはやてとレジアス何気に好きだwww
ついに始まった召還大戦。続きを楽しみに待っております!
で、完全究極体グレート・モスの出番はいつですか?


51 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 23:12:12 ID:zSYPLBn7
GJ!
あわせて、本編でこの時点で隊長陣が室内にいたことに対する解答が
ここに有り、というところですな。
さあ、これからスーパーキャロバクラタイムだ!?

52 :マスカレード ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/29(日) 23:18:20 ID:s9IpbOIR
職人の皆様GJです!

さて、本編の更新もまだだと言うのに、思い付きで一発ネタの一話を書き上げてしまいました。
特に問題等無ければ、0時前くらいから投下しようと思いますね

53 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 23:19:32 ID:OD+/Jvzp
>>10
フルメタなのは氏GJ!
ゴウのバリアジャケット姿は格好よさそうです。
それに陰牙とも名コンビになりそうですね。
前半での事が気にかかっていましたが、ちゃんと非殺傷設定が使えていて
ほっとしました。

54 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 23:21:46 ID:OD+/Jvzp
>>52
お、すいません、支援します。

55 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 23:52:57 ID:xp1zywpH
GJ!ヘカに任せて大量召喚しやがった!
しかも、フィールドが森でフィールドパワーソースで30パーセント能力アップ!
恐るべし!インセクター・ルールー!

56 :マスカレード ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/29(日) 23:57:56 ID:s9IpbOIR
では、そろそろ投下しようと思いますね

タイトルは……
「キバってリリカルなのは」
です。はい、今決めました(ぇ

57 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 23:59:28 ID:AQufDozx
牙……だと 支援

58 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 00:03:16 ID:Ca206rn1
朝から虐殺ですね。分かります支援

59 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 00:06:10 ID:TSu9GjXo
しえーん

60 :キバッてなのは ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/30(月) 00:07:13 ID:0T94zRRx
それは、いつも通りの、とある平凡な日常の中で起こった、小さな事件。
――と言っても、彼の日常は元々平凡と言うには程遠いものなのかも知れないが。
思えば、今から起こる事件は、これから始まって行く事件のほんの始まりだったのかも知れない。
だが、今の彼にそんなことが解る筈も無く。
今日も今日とて、いつも通りにお洒落なスーツを着込み、ネクタイを締め、彼は外出した。
家を出て数歩進み、空を見上げる。暖かい太陽の光と、透き通るような青空が、彼の心をより晴れやかにする。
彼――名護啓介――は、一度立ち止まり、大きく両手を広げた。

「ん〜、いい天気だ。今日は特別気分がいい!」

清々しいまでの笑顔を振り撒きながら、名護は言った。
ややあって、再び歩き出した彼の足取りは至って軽快。
名護には何故か、今日はとてもいい一日になりそうな気がした。



「ロックや……これが本物のロックや!!」

自分の真横の観客から、ぱちぱちと小さな拍手が聞こえる中、八神はやてはその目を輝かせた。
中学校の制服を着たまま、学校に指定された鞄を足元に置き、八神はやてもまた両の手を打ち合わせる。
はやての視線の先にいる金髪の男は、ギターを構えたまま、天を仰いでいる。
はやては、更なる拍手を送りながら、男に輝く視線をぶつけた。
視線に気付いた男も、自信に満ち溢れた笑顔で、はやてを見遣る。

「おぉ、わかっとるやないか姉ちゃん! これが! 本物の!
 ロック魂やぁぁぁーーーッ!!!」
「うんうん! ジンジン伝わってきたで! お兄さんのロック魂!!」
「そうやろそうやろー! 姉ちゃん、中々解っとるやないか!!」

駆け寄ったはやてに、男が両手を高く掲げる。所謂ハイタッチだ。
はやてと男が、いぇーい! と盛り上がりながら、両手を叩き合う。
どうやらこの二人、初対面ではあるものの、中々息の合ったコンビらしい。

では、初対面である彼女らが、一体どうやって知り合えたのか。
それは至って簡単な事だ。
時間は少し遡る。いつも通り、学校が終わって下校している最中の事だった。
彼女は、今日から数えて数日間、久々に時空管理局へ出向する用事が無かった。
管理局へ行く用事が無い以上、彼女の生活は、魔法を知らない普通の人間達と何ら変わりは無い。
もちろん来年度からは本格的に管理局員として働く事を決めた彼女には、高校受験等は無縁。
故に今日は、はやてにとって羽を伸ばせる、言わば休日のような一日であった。
あと一年でこの世界からは暫しお別れする事になるのだ。自由に歩けるこの足で、出来る限り色んな思い出を心に刻もう。
そう思ったはやては、近所の公園に寄り道してから帰る事にした。
思えば、自分の足が使える用になってからは、この公園にもあまり来る機会が無くなっていた。
大好きな家族達に車椅子を押されながら、この公園を散歩していた時の事を思い出すと、自然に笑みが零れた。
そうして暫く、懐かしさに浸りながら歩いていると。はやての耳に、すぐ近くから音楽が聴こえて来たのだ。

『ウェーイクアーップ! 解き放て未〜知の力〜♪
 僕を呼ぶ〜声〜不思議な〜♪』

ギターの重低音と共に聞こえる、男の歌声。
まるではやての心に、ジンジンと響くようなメロディ。
いつしかはやては、公園内から聞こえてくるメロディに釣られ、歩を進めていた。
こうして現在に至る訳である。

「――と、言う訳で姉ちゃん、音楽はやったことあるんか?」
「へ? 私は無いけど……」
「よっしゃ! じゃあ姉ちゃんも俺らと一緒にバンドやらへんか!?」
「え……えぇっ!?」

どういう訳か、バンドの経験は皆無だと答えた筈のはやてがバンドに誘われてしまった!

61 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 00:08:37 ID:cFg8TE1/
GJ!!です。
ルー子が怖いw感情がないから蹂躙しても何も思わないとかwww
しかも、火器付きインセクトアーマーをベーシック・インセクトに付ければ
遠距離の支援もさせられるw一人小隊だwww
あと、はやての一人称って私では?時々うちってなってますよ。

62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 00:13:11 ID:TSu9GjXo
はやてが…?

ΩΩΩ{な、なんだってー!?

63 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 00:13:54 ID:TSu9GjXo
しえん

64 :キバッてなのは:2008/06/30(月) 00:15:47 ID:0T94zRRx
 


「たすけてーたすけてーたすけてー!」

一方で、はやて達からそう離れていない場所に、何者かに追われる男がいた。
逃げる男は助けてと叫びながら、竹刀を振り回している。
そして、そんな男の目前にいるのは、とある中学校の制服を着た二人の少女。
男は走りながらその少女達に駆け寄り―――

「たすけてーたすけてー!」
「きゃっ!? な、何!?」
「ちょっ……!? フェイトちゃん!?」

なんと、その場にいた我らがフェイトさんが、何者かから逃走中の男に捕まってしまったのだ!
なのはがすぐに助け出そうとするも、男は竹刀を振り回しながら暴れている。
しかも質が悪い事に、男は錯乱状態にあるらしく、ただ竹刀を振り回して暴れるのみ。
なのはは、お世辞にも運動が得意とは言えない。竹刀を振り回す男からフェイトを救出するのは、正直言って無理だ。
……かといって、こんな公衆の面前でBJを装着し、魔法で男を鎮圧するのも色々と問題がある。
故に、なのはは叫ぶことにした。

「だ、誰か! 誰かー! 助けて下さい!」
「たすけてーたすけてーたすけてー!」

なのはの声に、次第に周囲の人々も竹刀を持った男に注目する。だが、誰ひとり助けようとはしない。
もちろん男は、フェイトの腰を掴んで離さない。それどころか、振り回す竹刀はさらに目茶苦茶な軌跡を描いてゆく。
やがて男が振り回す竹刀が、近くにいたなのはに勢い良く激突しようとした。
なのはも痛みを覚悟し、反射的に目を閉じるが――

「……あ、あれ……?」

なのはが、予想した痛みを感じる事は無かった。
何故なら、なのはに激突しかけた竹刀を、割り込んだ男が肘で受け止めたからだ。



我らがヒーロー――名護啓介は、竹刀を振り回しながら逃げ惑う“悪”を追い掛けていた。
あの男は、悪質な金融業者を営み、罪の無い人々から必要以上に金を巻き上げた、“絶対的な悪”だ。
その首に賭けられた賞金も相当な額となっている。
もちろん、揺るぎ無き“正義の味方”である名護啓介が、そんな“悪”を許す筈が無い。
悪の金融業者に乗り込んだ彼は、今現在竹刀を振り回している男のSP共を軽く薙ぎ払った後、男からボタンを奪い取った。
そう、正義の味方であり、バウンティハンターである名護啓介が、あの男を捕まえる証に。
ボタンを奪った以上、あの男を逃がす事は絶対に許されない。故に名護は、逃げる男を心神共に追い詰め、捕まえる事にした。

こうして現在、錯乱した男は罪の無い少女を人質に取り、竹刀を振り回している訳である。
だが、それは名護啓介の前では無意味に等しかった。
例え人質を取られようが、名護の正義感が揺らぐ事は有り得ない。寧ろ、更に名護の心に火を付けたくらいだ。

人質に取られた少女――フェイトの友人と思しき少女に、男の竹刀が迫る。
名護は直ぐに飛び出し、少女――なのはの代わりに、男の竹刀を受け止めた。
そのまま竹刀を掴み取り、男の動きを封じた名護は、男の顔面に重いパンチを叩き込む。
殴られた事で怯んだ隙に、名護は人質にされていたフェイトの腰に手を回し、男の体から引き離す。
自由の身となったフェイトは、直ぐになのはに駆け寄り、名護に視線を送る。

「あ、貴方は……?」
「……大丈夫かい? 怪我は、無かった?」
「え……は、はい。ありがとうございます……」

一瞬何が何だか解らずに混乱したフェイトであったが、直ぐに名護に返事を返す。

65 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 00:19:28 ID:TSu9GjXo
753キター!

66 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 00:20:29 ID:cFg8TE1/
支援、警察に捕まってしまう正義の味方w

67 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 00:23:42 ID:recCgVI3
親父が一番いいキャラしてる支援

68 :キバッてなのは ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/30(月) 00:25:06 ID:0T94zRRx
フェイトの返事に安心した名護は、男から引ったくった竹刀を構え――

「い、痛い! 痛い! やめてっ、痛いっ!」

男に竹刀を振り下ろした。
右から、左から、前から、後ろから。連続で竹刀に殴られた男は、痛い痛いと叫びながら、次第に自由な動きを封じられて行く。
そして、トドメの一撃。頭に振り下ろされた竹刀の衝撃に、男は意識を失った。
同時に聞こえるパトカーのサイレン音。騒ぎを聞き付けた警察が駆け付けたのだろう。
恐らく助けを呼ぶなのはの声に、これはマズイと判断した誰かが連絡したものと思われる。
警察官が倒れた男に駆け寄る中、名護は、倒れた男に向かって言った。

「生まれ変わりなさい。きちんと罪を償えば、貴方にもチャンスはあります。
どんな人間にも……可能性はあるのです。」
「あ、貴方はまさか……! あの有名なバウンティハンターの!!」

直ぐに男を確保した警察官が、名護を眩しそうに見上げ、言う。
そう。名護啓介は、賞金が掛かる程の悪人を捕まえ、その賞金を受け取る、“バウンティハンター”なのだ。

「なのは……あの人知ってる?」
「ううん、知らないけど、有名な人らしいね」

名護の耳に、先程助けた少女達がひそひそと話す声が聞こえる。
彼女らは自分を知らないらしいが、さして問題は無い。
正義の味方は、誰かに見せ付ける為にやっている事では無いのだから。
だが、きっとなのは達はこれから、正義の味方・名護啓介の名を覚えていてくれる事だろう。
それだけでいいのだ。今は知らずとも……それだけで、名護は十分満足なのだ。

「……賞金は、いつもの所へ寄付して下さい。恵まれない子供達の為に……」

最後に名護はそれだけ言うと、警察官の前から立ち去った。
名護には、こんな所で油を売っている暇は無いのだ。
この世界に闇が存在するのなら、光という罠を仕掛け、一つ一つあぶり出しす。
そして、この正義の両手で消滅させねばならないのだから。
そう。より崇高で、完全な正義の為に……

そんな名護啓介の背中を、なのは達はじっと見詰めていた。



「――そんな訳で、今ベースの渡が、腕を怪我しとるんや。」
「な、なるほど、そういうことやったんか……」
「僕のせいで……ごめんなさい……」

はやてに説明する健吾。続けて、もう一人の男が謝罪する。
このギターの青年――襟立健吾と、さっきまで影が薄かったが、一応はやてと一緒に音楽を聞いていた男――紅渡。
健吾の説明によると、以上の二人は、イケメンズというバンドを組んでいたらしい。
だが、ベースの渡が腕を怪我してしまった為に、人員不足に陥り、次のライブまでに間に合わないかも知れないらしい。

「そこでや、はやてに頼みがあるんや! 俺らイケメンズに入れへんか!?」
「うーん……でも私、バンドなんてした事あらへんし、それに――」
「大丈夫や! 俺が一から教えたる! 世界中を、ジンジン言わせたろや!」

はやての言葉に割り込みをかけ、熱心に頼み込む健吾。
「それに、私は毎日暇な訳や無い」と言いたかった訳だが、それを言う事は叶わなかった。
別にイケメンズに入るのは構わないが、はやては管理局に出向しなければならない為に、平日・休日問わずこの世界に居ない事が多いのだ。
それが、はやてを悩ませる大きな理由の一つ。参加するだけして、ろくに現れないのでは意味が無い。
さっきから渡は何も喋らないが、渡の目付きからして、はやてに入って欲しいと考えているであろう事は明白だ。
初対面でいきなりバンドに誘うのもどうかと思うが、健吾の熱意が本物だという事ははやてにも解る。
はやては色々と考え込んだが、ややあって、その顔を上げた。

69 :キバッてなのは ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/30(月) 00:35:54 ID:0T94zRRx
 
「……わかった。毎日参加は出来へんと思うけど……
 ううん、寧ろ参加出来へん日の方が多いと思うけど……私でいいなら……」
「ほんまか!? 入ってくれるんか!?」
「う、うん……宜しくな、健吾くん、渡くん。」

はやての言葉に、健吾も渡も、一気に明るい表情となった。
健吾に至っては両手を上げながらよっしゃー!と喜んでいる。相当嬉しいのであろう。

「やぁ!」

……と、その時であった。もう一人の男の声が聞こえて来たのは。はやてが声の方向へと視線を向けると、そこにいるのはスーツを着込んだ男。

「名護さん……」
「んあぁ〜、いい天気だ。今日は特別気分がいい。ほら、飲みなさい」

どうやら今現れた男は、渡の知り合いらしい。
渡に名護と呼ばれた男は、ミネラルウォーターをはやて達三人に投げ渡すと、機嫌よさ気に背を伸ばした。
先程また一人悪人を捕まえた直後なのだ。それは気分がいいのも当然だろう。
一方のはやては、何で今いきなり現れたおじさんが人数分の飲み物をしっかり用意してんねん、と無性に突っ込みたくなったが、取りあえず我慢した。
折角の好意を無駄にするのもどうかと思ったはやては、ありがとうと、一言御礼を言いながら、ミネラルウォーターを口に含んだ。

はやてに軽く微笑んだ名護は、そのまま数歩歩くと、健吾の傍に置かれていたギターに視線を送った。

「ほぅ……君達は音楽をやるのか。悪い事は言わない、そんな事は止めて、社会の為に何が出来るのかを考えなさい。」

名護が言うと同時に、その場の雰囲気が静まり帰った。
はやては「いきなり現れて何を言うてんねや、このおじさんは」と、無性に言いたくなったが、今度もやはり我慢した。
初対面の相手にそれは失礼過ぎる。
そんなはやての心配をよそに、健吾は唐突に立ち上がった。

「何を言うてんねやおっさん!」

…………。
言うてもうたーーーっ!!
はやてが抑えて言わなかった台詞を、この男が言ってしまった!
おっさんという言葉に反応した名護は、ぴくりと反応し、健吾を睨む。
どうやら不愉快だったらしい。まぁ当然と言えば当然だが。
気まずい雰囲気になるのではないかと懸念するはやて。
そんなはやての心を知ってか知らずか、健吾はギターを取り出し、構えた。

70 :キバッてなのは ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/30(月) 00:37:03 ID:0T94zRRx

「よっしゃ! 飲み物の礼や! 俺の音楽でジンジン言わせたる!!」

言いながら、ギターでの演奏を始める健吾。演奏するのはイケメンズの「Destiny's Play」だ。
ギターの重低音が響き、健吾も次第に乗って行く。
先程はやての心にもジンジンと響いたメロディだ。これを聴いては流石の名護も考えを改めるだろう。
そう思ったはやては、名護に視線を向けるが。

「やめろ……」

小さく聞こえる声。残念ながら、ギターの音に掻き消され、はっきりとは聞こえない。

「YA☆ME☆RO!」
「……は!?」

次の瞬間、名護は、健吾に掴み掛かった。
そして、繰り出されるパンチ。健吾の顔面に綺麗に入ったパンチにより、ギターの演奏は中断される。
もちろんはやても渡も、そんな暴挙を黙って見ている筈が無い。

「や、止めて下さい名護さん!」
「ちょっと……いきなり何しはるんですか!」

二人が直ぐに名護に駆け寄り、名護を落ち着かせる。
二人に宥められた名護は、どうやらまだ怒っているらしく、後ろを向いたまま言った。

「俺に……同じ事を2度言わせるな!!」
「で、でも今のは酷いやないですか! 別に殴らなくたって……
ギターの音で、おじさんの声が聞こえへんかっただけかも知れへんのに……」

健吾の“おっさん”よりも少し丸めに、はやては“おじさん”という言葉を選んだ。
しかし、それは直ぐに失言だと気付いた。
だが気付いた時にはもう遅い。はやてはもう言ってしまったのだ。“おじさん”と。
それはもちろん、名護にとっては不愉快極まりない言葉なのだろう。

71 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 00:42:45 ID:recCgVI3
2chの仕様はわかりにくい支援?

72 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 00:43:28 ID:TSu9GjXo
7☆5☆3

73 :キバッてなのは ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/30(月) 00:49:05 ID:0T94zRRx
名護はその鋭い眼光で、はやてを睨み付けた。

「君は何歳だ」
「え……? 私は15歳ですけど……」

いやいやおじさんこそ何歳やねん。と、はやてはこの見てて何か面白いおじさんに、目茶苦茶言いたくなった。
いや、だがこのおじさんは間違いなくキレる。ここは我慢するべきだろう。
なんとか衝動を抑え込み、はやては自分の年齢を述べた。
すると、名護はしかめた表情のまま、大きく口を開き――

「私は22だッ!!」
「……はッ!?」
「おじさんと呼ぶのは止めNA☆SA☆I!
 不愉快だ!」

名護は、自分は22歳だと大声で主張した。
はやては、色んな意味でびっくりした。年齢はまぁいいとして、何やねんこの上から目線は、と。
説得力とかそれ以前に面白過ぎるだろう、このおじさん。もう腹立たしいとかそれ以前に、何か友達になりたいとまで思えた。
……と、そう思うのは勝手だが、そろそろ場の雰囲気は最悪の状況だ。色々と気まず過ぎる。
そんな時、はやて達にとって救いの声(?)が響き渡った。

『きゃーーーーーっ!!!』

「「……!?」」
すぐ近くから聞こえる悲鳴。
女性の悲鳴だ。もちろんはやてが、それを聞き逃す事は有り得なかった。
周囲を見渡すが、既に渡はこの場には居なかった。何処へ行ったのかは知らないが、周囲を見渡しても渡の姿はどこにも無い。
名護に殴られた事で痛そうに頬を摩っている健吾はまぁいいとして、名護も既に悲鳴が聞こえた方向へ走り出していた。

「(あぁ、何処行くねんおじさん!)」

気付けば、はやてもおじさんの後ろを走り出していた。
ちなみに、心の中で呼ぶ時はいけ好かないおじさんでも構わないが、
声に出して呼ぶ時はちゃんと「名護さん」と呼ぼうと心に誓ったはやてであった。

74 :キバッてなのは ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/30(月) 00:49:55 ID:0T94zRRx
 


「チューッリッヒヒヒヒ!」

奇声を上げながら、無防備な女性に詰め寄る男。彼の名は糸矢僚。
女性ばかりを襲う悪質なファンガイアだ。
尻餅をついたまま後ずさる女性に、糸矢が迫る。鼠の腹話術人形を持ちながら、嫌らしい笑いを浮かべて。
しかし、糸矢の体に、木の棒が激突した事で、糸矢のゲームは終了した。

「またお前か……」

そう。女性のピンチに駆け付けたのは、正義のファンガイアハンター・名護啓介だ。
どこからか取り出したベルトを構え、バックル部のロックを外す。
それにより、ロックを外されたベルトは、名護の腰に巻き付くように装着される。
そして、バックルを中心に、再びベルトをロック。名護の腰に、変身ベルト――イクサベルトが輝いた。
手に持つ武器は、イクサナックル。絶対的な正義を体言する、――自称――最強のライダーシステム。
名護啓介の前では、どんな小さな悪であろうと、存在する事を許されないのだ。

『レ・ディ・ー』

目の前にいるのはファンガイア。イクサとは相対的な位置に存在する、絶対的な悪の象徴。
悪は滅んで当然なのだ。
そんな名護の想いに呼応するように、掌に当てられたイクサナックルが、その電子音声を響かせる。
甲高い待機音が響く中、名護は、イクサナックルをベルトへと装填した。

『フィ・ス・ト・オ・ン』

イクサもまた、名護と同じく、悪を憎んでいるかのように、怒りの雄叫びを響かせる。
ベルトから現れた金の十字は、回転しながら、スーツの形を形勢する。
『Intercept X Attackker System』通称イクサシステム。
フィストオンの掛け声と共に形勢されたイクサスーツが、名護の体に重なる。

そこにいるのは、悪を倒す正義の戦士。
男の名は、仮面ライダー――仮面ライダーイクサ。

75 :キバッてなのは ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/30(月) 00:54:30 ID:0T94zRRx
 
「はぁ……はぁ……ちょっと待って、おじ……名護さん!」

後ろから、さっきの失礼な少女――八神はやてが駆け付ける。
同時に、イクサの胸部に内蔵されたイクサエンジンは、フル稼動でそのエネルギーを全身に巡らせる。
イクサシステムがフルパフォーマンスで起動した事により、イクサの仮面を覆うクロスシールドが、四方に向かって開く。
熱い炎が周囲を焼き、イクサの二つの赤い瞳が姿を表した。
イクサはそのまま、ゆっくりとはやてに向き直る。赤い二つの目が視界にはやてを捉えた。
イクサの能力を制限するセーブモードから、100%の能力を発揮出来るバーストモードへとモードチェンジしたのだ。

「まさか……仮面……ライダー?」

イクサの赤い二つの目を見たはやてが、ぽつりと呟いた。
しかし、イクサは答えない。
イクサには、確かにはやての言葉が聞こえた。だが、今はそんなことはどうでも良いのだ。
今は、目の前の“悪”を消滅させることが、名護にとっての最優先事項。
直ぐに糸矢……いや、スパイダーファンガイアに向き直ると、どこからか取り出したイクサカリバーを構えた。

「その魂……神に返しなさい!」

76 :キバッてなのは ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/30(月) 00:54:58 ID:0T94zRRx
イクサアームズの一つ、ファンガイアが苦手とする、純銀を含んだ光弾を発射する銃型の装備だ。
それをスパイダーファンガイアへと構え、発射。
凄まじい連射速度を誇るイクサカリバーの弾丸は、スパイダーファンガイアの装甲を小さく爆発させる。
イクサは、弾丸を連射したまま一気にスパイダーファンガイアとの距離を積めた。
一方的に攻撃を受けるだけしか出来ないスパイダーファンガイア。
さらに、イクサはスパイダーファンガイアと接触する直前に、イクサカリバーのマガジンを、グリップ内部へと押し込んだ。
そうすることで、イクサカリバー本体から、赤いブレードが現れる。
イクサカリバー・カリバーモードだ。このブレードもやはり、対ファンガイア装備が成されている。
細かく振動するブレードに斬られたファンガイアの皮膚は、化学反応を起こし、溶解してしまうのだ。
イクサはカリバーをスパイダーファンガイアへと振り下ろした。
同時に火花が飛び散り、スパイダーファンガイアは声にならない鳴咽を漏らす。
だが、イクサは悪とみなした相手には一切の容赦をしない。
斜め上から横方向へとカリバーを振り下ろし、それを振り上げる過程で、再び皮膚を切り裂く。
あらゆる方向からメッタ斬りにされたスパイダーファンガイアは、情けない姿勢のまま、後方へと後ずさる。

しかし、イクサはそれを追い掛けようとはしない。
イクサはベルトからカリバーフエッスルを取り出し、それをイクサベルトへと押し込んだ。
同時に、イクサナックルからデジタル音が響き、中心のイクサジェネレーターが輝く。

『イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー・ラ・イ・ズ・アッ・プ』

胸部の装甲に、太陽の紋章が浮かび上がる。
それはつまり、イクサエンジンの出力がレッドゾーンに達したことを意味する。
これだけの出力をぶつけられれば、並のファンガイアならば一撃で灰と化してしまう。
そう。イクサは必殺技を――イクサジャッジメントを放とうとしているのだ。
イクサの全エネルギーがイクサカリバーに集約されたのを合図に、イクサは走り出した。
そして一気にスパイダーファンガイアとの距離を詰め、輝くカリバーを振り下ろした!

77 :キバッてなのは ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/30(月) 00:58:46 ID:0T94zRRx
 
「チューリッヒヒヒ!」
「な……!?」

だが、スパイダーファンガイアにイクサジャッジメントが命中することは無かった。
スパイダーファンガイアは咄嗟に後方へと転がり、イクサジャッジメントを回避したのだ。
バーストモードになった以上、イクサは30分と活動出来ない。
出力が高すぎる為に、30分以上の活動でシステムの自壊が始まってしまうのだ。
それ故に、最後の大技であるイクサジャッジメントはここぞという展開でしか使用する事を許されないのだ。
名護は、スパイダーファンガイアの体力からして、今が使用する時だと判断した。
――判断したのだが、その読みが浅かったのだ。事実、スパイダーファンガイアの体力はまだ残っていた。
それ故に、スパイダーファンガイアはイクサジャッジメントを回避することが出来たのだ。
――と言っても、スパイダーファンガイアとしても本当に紙一重で、偶然かわせただけに過ぎないが。
イクサエンジンのフルドライブを使用してしまったイクサは、最早これ以上の戦闘は不可能。
名護は、悔しさに表情を歪ませながら、イクサベルトを腰から外した。
スパイダーファンガイアを取り逃がしてしまったのは大きいが、今は背後にいたはやての方が心配だ。
故に、名護はすぐに振り向き、はやての無事を確認しようとするが――

「……逃げたか」

そこに、はやては居なかった。





「リイン、さっきの化け物がどっちに行ったか索敵出来る!?」
「はいですっ!」

騎士甲冑を纏ったはやてが、すぐ傍にリインフォース・ツヴァイを飛ばしながら、スパイダーファンガイアを追い掛ける。
あんな人を襲う化け物を逃がしておける筈が無い。仮面ライダーが取り逃がしたのならば、はやてがトドメを刺すまでの事。
リインの能力を使い、スパイダーファンガイアを追い掛けていたはやては、いつしか霧の深い雑木林へと入り込んでいた。

「……見付けたッ!」

暫く飛んだ事で、目前にスパイダーファンガイアを発見。後は、ブラッディダガーでも何でもいい。奴にトドメを刺せればそれでいいのだ。

78 :キバッてなのは ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/30(月) 01:05:24 ID:0T94zRRx
だからはやては空中で静止し、呪文の詠唱に入った。あのファンガイアを倒す為に。

「刃以て、血に染めよ……!」

『ウェイクッ! アーーーップ!!!』

「穿て、ブラッディダガーッ!!」

はやてが詠唱を終える前に、よく聞き覚えのある声が響いた。
あれは……クロノ提督の声? 等と考えるが、クロノがこんなところにいる訳が無い。
故にはやてはそれを空耳だと判断し、周囲に赤い刃を浮かべた。

……だが、はやての周囲に浮かんだのは、赤い刃だけでは無かった。
同時に浮かんだもの。それは―――巨大な月。
はやては一瞬目を疑った。今は昼間だと言うのに、月が見える筈が無いのだ。

「あれ……今は、昼間……?」

呟くはやて。気付けば、はやての周囲は、漆黒の闇に包まれたのだ。
つい先程まで昼間であった筈の青空は、雲一つ見えない真っ暗闇。
これでは真昼どころか、真夜中と言っても過言では無い。それほどまでに、周囲の闇は深いのだ。
今のはやて達を照らす光源は、天空に怪しく輝く、巨大な満月のみ。
「な、何やコレ……リイン!?」
「ち、違います! リインがやったんじゃないですよー!?」

まぁ解ってはいたが、やはりリインの新たな術などでは無いらしい。
はやては考えた。この状況、どうする事が最善の方法かを。
周囲に闇夜が拡がったのは確かに不穏だが、それ故に早くトドメを刺さねば、ファンガイアの姿も見えなくなってしまう。
ならば――

「えぇいリイン、今はまず、あの化け物を倒す!」
「はいですっ!」

決意を固めたはやてが、ブラッディダガーの切っ先をファンガイアへと定める。
同時に、何処からか、美しい笛の音色が響き渡った。まるで、この闇を照らす月のように、怪しくも、美しい音色。
その音色に合わせるように、はやてはブラッディダガーを勢い良く加速させた。

79 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 01:08:54 ID:I1ow9htc
支援

80 :キバッてなのは ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/30(月) 01:10:36 ID:0T94zRRx
 
「行け……ッ!」

はやての掛け声と共に、ブラッディダガーがスパイダーファンガイアの背中に突き刺さる。
その衝撃により、スパイダーファンガイアははやてとは反対の方向へと吹っ飛んだ。
この闇のせいで、少しでも離れてしまえば、何も見えなくなってしまう。
故にスパイダーファンガイアの姿も、闇の中へ。はやての視界から消えてしまった。

「あれ、倒せた……?」
「た、多分……」

リインが保証はしてくれるが、いまひとつ自信が無い。
故にはやては、闇に消えたスパイダーファンガイアを追い掛け、更なる闇へと潜ろうとした、その時であった。

「マイスターはやて、あれ! 月に人が……!!」
「……人?」

スパイダーファンガイアの生死よりも先に、はやてはリインに呼ばれ、月を見上げた。
よくは見えないが、目を細めると、巨大な月の光に、小さな人影が浮かんで見えた。
まるでキックでも撃とうとしているかのようなポーズで、片脚を地面へと向け、そして―――急降下した。
それっきり、月に浮かんだ人影は、はやて達の前に姿を表す事は無かった。


やがて、闇は晴れ、周囲は元の明るい風景を取り戻した。
はやてには、月に浮かんだ人影が何なのかはさっぱり解らない。
ただ、黒っぽい人影が、月の光に見えただけなのだから。
それはもしかしたら見間違いなのかもしれないし、もしかしたらそこには本当に人が居たのかもしれない。
どっちにしろ、闇が晴れた今となっては、それを確かめる術は無いのだから。
闇が晴れ、視界が晴れた事で、はやてはすぐにスパイダーファンガイアが吹っ飛んだ場所へと駆け付けるが、そこには誰も居なかった。
されどそこにあったものは、明らかに周囲の風景にはそぐわぬものであった。

「マイスターはやて……何ですか? これは」
「クレーター……? やろか……」

そこにあったもの。
それは、地面にでかでかと残った、“コウモリ型のクレーター”。
普通に考えれば、こんな人為的なクレーターが自然に出来る事は有り得ない。
だが、そこには確かにクレーターが存在していた。

「化け物と、コウモリ型のクレーター……? 訳がわからん」

はやては、ぽつりと呟いた。
視線の先にあるものは、地面に深く刻まれたクレーター。

今のはやてに、このクレーターの正体など――ダークネスムーンブレイクにより現れたこのクレーターの正体など、解る筈が無かった。

81 :キバッてなのは ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/30(月) 01:14:05 ID:0T94zRRx
 




やがて、はやては騎士甲冑を解除し、さっきの公園へと戻った。
そこにいるのは、相変わらずギターを構えている健吾と。いつの間にか帰って来た紅渡であった。

「おいはやてー! どこ行っててん、早くもイケメンズ解散かと冷や冷やしたやないかー!」
「あはは、ごめんやで、健吾さん。それから渡君も」
「ほんまやでー、ったく……渡もはやてもおっさんも、いきなり俺を見捨ててどっか行きおって……
 でもな、俺はそんな細かい事でグチグチ言わん! さぁ、新生イケメンズの誕生やーーー!!」

やたらとハイテンションな健吾に、はやても渡も苦笑する。
ふとはやてが渡を見ると、渡はさっと視線を逸らした。まるではやてと目を合わせるのを拒むかのように。
はやてはそれを、単なる人見知りなのだろうと判断し、渡に向けて、にっこりと笑顔を浮かべた。
一方の渡も、はやての視線に気付き、ぎこちない笑顔を浮かべた。
どうやら、この渡という青年と仲良くなるのは、そう簡単には行かないらしい。

82 :キバッてなのは ◆gFOqjEuBs6 :2008/06/30(月) 01:19:50 ID:0T94zRRx
 


はやて達の居る公園で、はやて達を……というよりも、渡を見守る影が一つ。
空に羽ばたきながら、コウモリの形をしたそれは、赤い瞳を瞬かせた。

「おいおい、どうなってんだよこりゃあ?
 あのはやてとか言う姉ちゃん、さっきファンガイアと戦ってた姉ちゃんじゃねぇか!」

渡と一緒にいる少女――八神はやては、まさしく先程の戦闘でファンガイアに赤い刃をぶっ刺してくれた姉ちゃんだ。
渡は気付いたのかどうか知らないが、少なくとも彼は――キバットバット三世は、その事に気付いていた。

「おいおい渡ぅー、気付けよ渡ー
 その姉ちゃん、絶対普通じゃねぇって! 絶対ヤバいって!」

ファンガイアと生身で渡り合える時点で明らかに普通じゃない。心配性のキバットは、はやてを警戒せずにはいられなかった。
だが、キバットがいくらそんな想いを込めて叫んだ所で、その声は渡には届かないのであった。



第1話 「ウェイクアップ|新たな出会い」

つづく……かもしれない。




◆ ◇ ◆ ◇ ◆

投下終了です。
いつもなら専用ブラウザを使えてるので、改行とか解りやすいんですが、今回はいつもと違うPCを使っている為に、やたらと時間が掛かってしまいましたorz

さて、思い付きで書いてしまった一発ネタです。
はい、続きません……
ですが、リリカルBLADEを完結させれば、全4話くらいの短編でキバクロス書くかもしれません。キバ本編のストーリーにあまり深く関わらない程度に。
マスカレード本編も、カブト編が終わってから1話程更新すれば、しばらくはリリカルBLADEに集中して執筆しようと思ってます。
ブレードのストーリーももう後半に差し掛かってますので。

どうでもいい話ですが、リリカルBLADE完結後は仮面ライダーTHE NEXTとのネタがありまして……
キバ短編はブレードとNEXTの間に書くかも知れません。

最後に、支援ありがとうございました!

83 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 01:25:31 ID:TSu9GjXo

感想を書くのが下手なので、とにかくGJ!

84 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 01:37:26 ID:K5SBlQOn
投下乙&GJ!
名護さんが面白すぎるというか、名護さんの面白さをうまく再現しているというか、
ともあれ作者さんは最高です!

85 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 01:53:50 ID:tCAAfReZ
>千年リング

はやてとレジアスがいいですね。
はやての偏ってない人脈、身内にも隠し事して進めれる政治家としての顔。
そしてそんなはやてとギブアンドテイクの関係を保っている中将。
これ位政治と駆け引きがあればなぁ……と。

86 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 10:11:04 ID:D65BPD1s
gjレジアス スカさんとかの関係も多分あっても尻尾は切れるようにしているんだろうな。
指揮権取られるとか、暗殺される姿が全く想像できねえ。
はやても見込まれているようで中々の交渉上手。

87 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 12:30:43 ID:Bc5W6CK4
>>48
誤字発見
>その言葉に僅かに離れていたティアナがクルスミラージュを構え直した。


レジアスにもっと出番を!

88 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 13:09:04 ID:YpNlTXUw
>「チューリッヒヒヒ!」
保険会社な鳴き声吹いたw

89 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 19:19:53 ID:K5SBlQOn
>>88
そいつは「ガーリッククククク」とも笑うんだぜ

90 :リリカルジェダイ:2008/06/30(月) 19:43:07 ID:I1ow9htc
職人の皆さんGJです。

選ばれし騎士 エピソード1が出来たので投下しても良いですか?

91 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 19:49:54 ID:cFg8TE1/
支援ですw
ベイダー卿が大暴れwww

92 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 19:49:55 ID:9mr0ZRwO
支援

93 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 19:54:16 ID:tCAAfReZ
予告と時間指定はしてねー。


94 :リリカルジェダイ:2008/06/30(月) 19:54:20 ID:I1ow9htc
魔法少女リリカルなのはStrikerS−選ばれしジェダイ−エピソード1

銀河帝国施設の謁見室で皇帝を自らの生命を引き換えに倒したダース・ヴェイダーは。
息子ルーク・スカイウォーカーの姿を目に焼け付け……ジェダイ騎士、アナキン・スカイウォーカーに帰還し、息を引き取る。
哀しみに暮れながら、ルークは父を宇宙艇に乗せて惑星に降り立ち。
火葬台に父を乗せ、火を放つ。しかし、そこにフォースの突風が巻き起こりアナキンは姿を消し。
新たな世界にバランスをもたらす為に未知なる世界に降り立った…………。


第162指定観測世界
北部の定置観測基地から発掘作業を行っている場所に三人のエース魔導師が到着した。


一人は時空管理局 戦技教導官。
高町なのは
「大丈夫ですかっ!?」
機械兵器の放つブラスター射撃から黒い魔導師と発掘員をプロテクション魔法で守り、無事を尋ねる。

もう一人は同じく時空管理局 執務官。
フェイト・T・ハラオウン
「プラズマランサー……、ファイア!!」
空に掲げた愛用のデバイスを振り下ろし、辺りに発生した魔力の楔を機械兵器に打ち込んで破壊していく。
そして、最後の一人は時空管理局 特別捜査官。八神はやて
『広域スキャン完了……。 人間はあの三人だけです。』
「ん!」
融合しているユニゾンデバイス・リインフォースIIからの報告にはやては頷き浮遊したまま残っている機械兵器を見下ろし。
それらを何かの魔法で破壊する漆黒のヘルメット、マスクで顔を隠している魔導師を見て言葉を失う。

「違う……あの格好は騎士甲冑みたいやけど。なんなんや……魔法とは違う力かんじや……。」
『魔力は感じますが、破壊する時には使用してないみたいです。』

リインの解析に「やっぱり。」とはやては呟く。
そして、フェイトは降り立ち。敬礼をとって彼に声をかける。




95 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 19:55:32 ID:cFg8TE1/
支援

96 :リリカルジェダイ:2008/06/30(月) 19:57:59 ID:I1ow9htc
「ご協力感謝します。時空管理局執務官フェイト・T・ハラオウンです。あの機械兵器は一体……?」
「解らん。が、あちらの二人が持つ箱を狙っていることは解った。」

呼吸音を発しながら、弾き出したヴェイダーの推測にフェイトは「一体誰が?」と考え込むが。その尋ねは、眼の前にのこる機械兵器に消えていく。

『中継です!やはり未確認!
危険認定破壊停止許可が出ました!』
基地から返ってきた解析結果にはやては「了解!」と答え、黒い魔導師へと向き直る。

「あの、私は時空管理局 特別捜査官の八神はやて言います。お名前を教えてください。」

彼女からかけられた願いにヴェイダーは少し考え込む。
暗黒面から戻ったとはいえ、自分は今までに多くの命を奪ってきた。そんな男に本当の名は……いらない。
この姿のうちはこの名前で良いか……。
迷いを振り切り、男は呼吸音を止ませ。八神はやてに名乗る。
「私はダース・ヴェイダー。ジェダイの騎士だ。」
「ヴェイダー……さん。わかりました。
発掘員の救護は私が引き受ける!二人で思いっきりやってええよ!ヴェイダーさんもお願いします!」
『えぇっ?良いんですか!?』
「ヴェイダーさんの実力は見てわかった。ここで手伝ってもらってて損はないよ。」


はやてからの指示にヴェイダーは呼吸音を発しながらマスク越しに機械兵器の群れを見据えてなのは、フェイトの二人と同じタイミングで「了解」と答える。

その瞬間、機械兵器の群れは少しの間であったが光を発し。こちらへと向かってきたのを見てなのははレイジングハートを構えて訝しむ。

「フィールドエフェクト……?」
様子を見るべく、そのまま一機の機械兵器へとなのははアクセルシューターをショットする。

桜色の小さな球がレイジングハートから飛び出し、機械兵器に直撃した……だが、一歩手前で魔力球はフィールドの波に吸い込まれていくかのように消えてしまい。
なのは、フェイトはそれが何なのか理解する。
「無効化フィールド!」
「AMF……機械兵器がAAAランクの魔法防御を……。」




97 :リリカルジェダイ:2008/06/30(月) 19:59:39 ID:I1ow9htc
なのはの攻撃や彼女達の言葉。そして……あるドロイドに似た印象を抱かせた機械兵器を見て聞いたヴェイダーは未知なる世界に自分は居るのだと悟っていた。

フォースを通して彼女達の力の源が魔力ということや……。
そして、自身の身体から内にかけて感じる今までと違う何かの力をヴェイダーはそれが魔力だと理解する。
それに比例するかのようにフォースはあの頃のように広範囲いたるまでこの世界の自然を感じることが出来る……と。

『あわわ、AMFっていうことは魔法が通用しないっていうことですよ。
魔力結合が消されちゃったら魔法が使えないです!』
あわてふためくリインの声にはやては微笑んで答える。
「リインはまだまだちっちゃいな……。」

『ええっ?』
「昔、似たような敵と闘ったことはある……だが、完璧な盾などありはしないと知れ。」

機械を介したような声でそう答えながら、左手を掲げてフォースで幾つもの石塊を持ち上げるヴェイダー。彼と同じ意見であったなのは、フェイトの二人はデバイスから薬莢を弾き出しながらリインに答える。

「ヴェイダーさんの言うとおりだよ、覚えとこうね。
例えば小石。どんな敵でも。」

フォースによって浮かび上がった小石とは呼べないサイズの石塊を魔力の弦に番えるなのは。

「例えば雷。どんな強力な武器や手段があっても崩せる穴は必ずある。」

空に浮遊し。バルディッシュを天空で掲げて雷雲を呼び寄せるフェイト。

「魔力が消されて通らないなら「発生した効果」のほうをぶつければええ。」
その二人を代弁するようにはやてが答えた瞬間。

「スターダスト……」
「サンダー……」

「「フォールッ!」」
二人が叫ぶと共に、雷音が鳴り響いて機械兵器を焼き払い。
岩石が轟音を響かせて機械兵器を打ち砕く。

あっという間に機械兵器の残骸が散乱した光景にリインは息を呑んで感嘆の声を漏らす。
『すごいです……』
「二人とも一流のエースやからな。それにヴェイダーさんもただの魔導騎士やない……。」



98 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 20:02:50 ID:cFg8TE1/
支援

99 :リリカルジェダイ:2008/06/30(月) 20:04:16 ID:I1ow9htc
『あ!何機か逃走してるです!』
「追おうか?」
リインの報告になのはが尋ねるとはやては「大丈夫」というように微笑んで首を振る。
「こっちで捕獲するよ。リイン頼んでええか?」

『はいです!』
はやての中で応答し、リインは本を開いて逃走している機械兵器を捉えてトライアングルの魔法陣を描き。
『フリーレンフェッセルンッ!』
機械兵器を凍結し、停止に成功する。

手際の良い彼女達の闘いに……生き生きとした若者達の表情にヴェイダーは感嘆していた。
友達なのだな。互いに信頼し合う。
私もあの時……間違っていた考えを持ち。シディアスの誘惑に、暗黒面に墜ちていなかったらこの娘達のようにパドメや子供達と暮らせたかもしれない……未練だな。と


辺りに機械兵器がいなくなったを判断し、フェイトは地に降り立ち。
発掘員に目的のものを見せてもらい確認する。
「これがそのロストロギアですね。」

「はい、中身は宝石のような結晶体で「レリック」と呼ばれています。」



「先程は手伝ってもらって、ありがとうございます。ヴェイダーさん。」
近くで佇んでいたダース・ヴェイダーになのはとはやて、ユニゾンを解除したリインフォースIIは歩み寄って敬礼をして声をかける。
が、呼吸音を鳴らし。ヴェイダーは彼女達に「いや……」と首を横に振って否定した。
「気付いたら私はこの世界にいた。そしてあのカプセルを破壊しただけだ。」
「……ヴェイダーさんは違う世界から飛ばされてきた。ということですか?」
なのはの推測から出された尋ねにヴェイダーは頷く。

「遠い星から来たんだ……多分。」

「やったら……この任務が終わったらヴェイダーさん、私らと艦に来てくれへんかな?
詳しい話やヴェイダーさんの居た世界なら割り出せるかもしれへんし。」

未知の世界で頼れるのはフォースとこの世界を知る人だけだ。
跳ね退けるはずもなく。ヴェイダーは「ああ」と随従の答えをだす。

「……そして、彼らを助けてくれてありがとう。」

礼を述べるヴェイダーの謙遜さに萎縮してしまう。
ヴェイダーさんが助けたのに……。と思いながら機械のような音声に潜む優しさに三人は親しみを感じていた。




100 :リリカルジェダイ:2008/06/30(月) 20:06:32 ID:I1ow9htc
〔シ……だ……こちら…〕
波長が合わないラジオのような女性の念声が聞こえ。それに、なのはは空を見上げて答える。
〔…こちらアースラ派遣隊!シグナムさんですか?〕
念話を繋ぎ、応答するとシグナムと呼ばれた女性の鮮明な声が返ってくる。
〔その声はなのはか? そちらは無事か?〕
〔機械兵器の襲撃があったんですが……まさかそっちも?〕
シグナムの意味深な口調に勘繰って尋ねると。彼女は〔いや……〕と答え駆け付けた先を見渡す。
〔こちらは襲撃ではなかったが。
危険を避けたからすでに無人だったのが不幸中の幸いだったが……発掘現場は跡形もない。
今日の任務、気楽にこなせるものではなさそうだな。〕
思わしくない口調でシグナムはそう告げる。

その時、頭に先程と同じ機械兵器の群れが砂地の中を浮遊して接近しているイメージが色濃く映り。ヴェイダーはフォースで念話先のシグナムに語りかける。
〔話しているところすまないが……私はダース・ヴェイダー。ジェダイの騎士だ。〕
〔この声……ヴェイダーさん!?〕

〔……?〕
突然、青年の声が介入し。それがヴェイダーのものと知ったなのは達は驚き。聞いたことのないシグナムは訝しい表情で念話に答える。
〔聞いたことのない名だが……。なんだ騎士ヴェイダー?〕

〔今、そちらに何人居る?〕
〔二人だ。〕
〔近くの護送隊へ機械兵器の群れが接近している。〕
そのヴェイダーの言葉をシグナムは津々と受け止める。
何故か……確証はないが、信頼するに値する声だ。
〔ヴェイダー、機械兵器は何分ほどで着く?〕
〔解らん、が。足は遅い。〕

〔そうか……こちらは先程、仲間を緊急で呼び出した。問題ない。〕
〔ならフォースと共にあれ。シグナム〕
そう告げ、念話を切ろうとするヴェイダーにシグナムは尋ねる。
〔フォースとはなんだ、ヴェイダー?〕
〔信ずる力という意味だ。〕
〔なるほどな……良い言葉だ。ヴェイダー、フォースと共にあれ。〕
そう告げ、今度こそ念話を切るシグナムにヴェイダーはマスクの中で小さく笑い声を漏らしてはやてに向き直る。

「八神はやて、私はどうすれば良い?」
「あ、うん。じゃあシグナムと合流するから飛ぼうか。」


101 :リリカルジェダイ:2008/06/30(月) 20:08:09 ID:I1ow9htc
再び、呼吸音を発し。機械を介しているような声で話す彼に答える。
すると……。
フォースを扱うようにすれば……私も魔法が使えるかもしれないとヴェイダーは考え、身体に自然を感じさせ行使を開始していく。
自然と一体化したかのように呼吸は整われ。
吹きゆく風、踏み締める地……そして深くに流れる水、遠くに存在する緑。
うちなる新たな力の魔力……。
それらとフォースを繋げ、研ぎ澄まされた心身となったヴェイダーをなのは達はただ呆然と見ていた。

その理由は、なんらかの力を持つ魔導騎士と判断していた彼が……急にBランクの魔導師を軽く上回る魔力を備えた事を認識できるからだ。

辺りに鳴り響いていた呼吸音が止んだ時、ヴェイダーはゆっくり彼女らを見遣って答える。
「行こう。」




第12管理世界
「聖王教会」中央教堂。

以前、この場所で未来の預言を見た女性は今。
モニターに映る第162観測指定世界を見ながら、アースラとの通信をしていた。


『片方は無事、確保できましたが……もう片方は爆発で発掘現場ごとロストしてしまっています。
爆発現場はこれから調査、ならびに捜索を行います。』

教堂の最前列の席に腰掛け、一通りの報告を受けた女性は通信相手であるアースラの艦長クロノ・ハラオウンに浮かない表情で聞き返す。
「クロノ提督、現場の方たちはご無事でしょうか……?」
『ええ、現地の発掘員、こちらの魔導師たちにも被害は何もありません。』

にこりと優しい笑顔で「安心してください。」と答えてくれた彼に聖王教会 教会騎士団の騎士。カリム・グラシアは「よかった。」と心からの安堵の笑顔を浮かべる。

『現場発掘員の迅速な避難は貴女からの指示をいただいていたからこそですね騎士カリム。』

「危険なロストロギアの調査と保守は管理局と同じく聖王教会の使命ですから……。
こちらのデータでは無理矢理な開封や魔力干渉しない限り「レリック」の暴走、暴発はないと思われますが現場の皆さんに十分気をつけてくださるようお伝えいただけますか。」
カリムの願い出に「もちろん。」というようにクロノは頷く。だが、そこで彼女にある報告をする。



102 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 20:10:52 ID:cFg8TE1/
支援

103 :リリカルジェダイ:2008/06/30(月) 20:11:08 ID:I1ow9htc
「それと……異世界から来た『ジェダイ』という漆黒の騎士が居合わせたのです……」
「異世界からの騎士?」
「ええ、『遠い星から来た』とこちらの魔導師に言ったそうです。預言の騎士では?」

「っ!?」
彼の確認にカリムは途端に言葉を失ってしまう……預言の言葉を思い出す。
『遠い古 はるかかなたの銀河に暗黒世界をもたらした者と、その暗黒に光をもたらし。世界を救った騎士が現れる。』
そして、カリムは告げる。
「クロノ提督。その騎士のお名前は解りますか……?」
「彼は、ダース・ヴェイダー。と名乗りました。任務が終わりしだい彼から話を聞こうとおもいます。」
「その時は私も同席をお願いします。」
「解りました、では……。」
彼から通信が切られ。
カリムはモニターに送られた漆黒の騎士の映像を見入る。

黒いマントが風に靡き、不気味な呼吸音を発して機械を介して出すような声。
しかし、その奥に宿る青年の声が微かにカリムには聞こえていた。
クロノから教えられた名をカリムは反駁する。
「ダース・ヴェイダー……漆黒のジェダイ騎士。」

そして、数時間後に彼女と限られた者達だけ。ダース・ヴェイダーは真の名前を告げることになるのであった……。



104 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 20:11:57 ID:DjAjTWU0
支援

105 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 20:14:41 ID:DjAjTWU0
投下終了なら言ってくださいねw

106 :リリカルジェダイ:2008/06/30(月) 20:15:02 ID:I1ow9htc
以上です。

ダース・ヴェイダーはフォースを通して魔法を使えるようになりましたw
あと青年の声。と表現しましたがその真相は以前いったようにおいおい書いていきます。
また、忠告ありがとうございます。投下時間予告も次からいたします。ご迷惑をおかけしました。

107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 20:19:06 ID:cFg8TE1/
GJ!!です。
うお!ヴェイダー卿がイケメン時代に若返ってるのかw
そして、フォースの使用方法を使っての魔法の使用、文を読んでてフォースの方が
魔法っぽいと思ってしまった。


108 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 20:20:15 ID:JiX9OesG
シグナムさんいきなり呼び捨てっすかwww

GJです!

109 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 20:20:45 ID:JiX9OesG
sage忘れスマン

110 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/30(月) 20:35:45 ID:64VM2SV9
乙です。
本日の夜10時頃にグラヴィオンStrikerSの第8話を投下したいのですがよろしいでしょうか?
容量は10KBと少ないですが支援をお願いします。もしかしたら10時半頃になるかも知れませんがよろしくお願いします。

111 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 20:41:31 ID:I1ow9htc
支援します。

112 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 20:42:28 ID:K/l3NKUc
承知しました。

113 :リリカルジェダイ:2008/06/30(月) 20:52:12 ID:I1ow9htc
>>107,108

新人ですが期待に応えていきたいと想います。感想ありがとうございます。


114 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 20:55:44 ID:Q5HCKkoz
GJ
ジェダイの技を陸に伝えたら質が向上すると思うんだけどなぁ
資質の問題はあるけど確実に本編よりマシになるだろうし

115 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 21:09:02 ID:soQOL+4p
GJ

敵として誰かシスこないかな
ダース・ショッピングモールとかダース・ティラミスとかwww
死んだけど

116 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/06/30(月) 21:25:48 ID:yz/jAh2t
支援

117 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/30(月) 22:02:21 ID:64VM2SV9
時間になりましたので投下します。

 第8話 白銀の牙



「どう思う? ヴェロッサ」

 スバルが戻って来てから1週間が経った。ヴェロッサとクロノは1週間前に倒したゼラバイアが発した光の事について考えていた。

「あれは恐らく、仲間に知らせるものだろうね」
「最近、敵の進化がすさまじいものだと考えるが……」
「恐らくはグラヴィオンを倒すための進化をしているのだろうね」

 ヴェロッサとクロノが真剣な顔をしてゼラバイアの対策を考える。

「あれをあの子達に渡す時が来たのかもしれないね」
「見極めないとね。はたしてあの子達に白銀の牙を託すのに値するかの資質があるのかどうかをね……」

 ヴェロッサは静かに一つの月を見る。

 グラナガンにある地上本部ではゼラバイア対策会議にレジアスを初めとする、地上部隊の高官達が出席していた。

「ミッドチルダを狙うゼラバイアの脅威は増していくばかりだ! しかし次元部隊や本局は地上に対して、たいした援助をしてくれない!
そこで私達はグラヴィオンと同じようにこの世界を守るものを考案した!」

 レジアスが指を鳴らすと、天井になにやらロボットのようなものが立体映像で映し出された。

「これは現在開発中の対ゼラバイア用の兵器、それは!」

 レジアスが対ゼラバイアのための兵器の名前を言おうとしたその時、来てしまった。それは当然ゼラバイアである。

「ゼラバイア……」
「中将、こちらへ」
「いや、いい」

 武装局員達はレジアスを退避させようとするが、レジアスは断る。

「しかし中将……」
「わしは大丈夫だ。お前達こそ早く逃げろ。わしはここにいる」
「しかし!」
「案ずるな。わしは生きて戻る。それにゼラバイアがここまで近くにおっては逃げれんだろ。だがお前達は逃げろ」
「中将……、わかりました」

 武装局員達はレジアスを置いて自分達は退却して行った。レジアスのすぐ横にはスカリエッティの姿があり、レジアスはスカリエッティの存在に気付く。

「お前は逃げんのか?」
「何をおっしゃいますか? 私が逃げる? こんなにいい研究材料が目の前にいるのにですか?」

 スカリエッティは狂ったようにレジアスに言う。スカリエッティは自分の命よりも研究が大事だと考えているマッドサイエンティストである。
 レジアスはその事を思い出し、思わず鼻で笑う。

「ふん、好きにするがいい」
「ええ、そうさせてもらいますよ」


 聖王教会ではゼラバイアが地上本部にやって来た事を知り、整備の為にゴッドグラヴィオンのままだったので合神をする必要がなく、
 スバル達はそのままグラヴィオンに乗り込もうとすると、ヴェロッサが引き止める。

「出撃は許可できない」

118 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/30(月) 22:03:26 ID:64VM2SV9
「何でですか!?」

 突然の事にスバルはヴェロッサに意見する。

「何で出撃しちゃいけないんですか!?」
「相手は対グラヴィオンのゼラバイアだ。」
「敵はグラヴィオンが今まで使った武器や技に対応できるようになっているはずだ。今のグラヴィオンでは勝ち目がない」
「それって……」
「完全にゼラバイアはグラヴィオンを敵視したと言う事だ」

 クロノの発言を聞いて回りは凍りつく。ゼラバイアがグラヴィオンを優先に狙ってくる。
 それは街に被害を出さないようにするにはいい事なのだが、逆を返せば敵はグラヴィオンだけを狙い、もしグラヴィオンが負けたらミッドチルダに抵抗する術はないと言う事だ。

「じゃあ、このまま黙って指を咥えるしかないのですか!? あたしは嫌です!」

 スバルが強く反論する。

「あたし達は今まで自分達が生き残るための戦いをしたんじゃないんです! 誰かを守ったりミッドチルダを守ったりするために戦っていたんです!
それをここに来てやめろ何てあたしには出来ない! そんな事したらギン姉に会わせる顔がない!」
「スバル……」

 クロノがスバルの強い思いにわずかに反応する。

「だから、行かせて下さい!」
「スバル……、ダメだ。今のグラヴィオンの装備では無理だ」
「大丈夫です!」

 話を聞いていたマリーが言い出す。

「対グラヴィオンって事は今までのグラヴィオンの武器が効かないってことですよね?」
「そうだが……」
「こんなこともあろうかと!」

 マリーが指を勢いよく鳴らす。するとマリーの後ろから何やらグラヴィオンの身の丈くらいの巨大な鋸刀が現れた。

「名づけて! 『グラヴィトンブレイカー』。これは前から作ってたのですが難癖が強いのですが、
今まで出すのはやめてたのですがこうなったら出すしかありませんね。でも難癖があるって言いましたけど破壊力は折り紙つきですよ」

 マリーがウインクして『グラヴィトンブレイカー』をグランンナイツやヴェロッサとクロノに紹介し、スバルは『グラヴィトンブレイカー』を見て強い決意がわく。

「行きましょう! ヴェロッサさん、クロノさん!」

 スバルの強い押しに、なのはやフェイト、ティアナにリイン、それに常にクールなドゥーエも賛同する。

「行こうよ! ヴェロッサさん、クロノ君!」
「これならいけるよ」
「それにこのまま黙って指を咥えるのはあたしも反対です」
「リインもです」
「私も反対よ。それにあれならその対グラヴィオンのゼラバイアを倒せるのなら行くべきね」

 グランナイツの強い決意に二人は負ける。

「わかった。出撃を許可しよう」
「だが、一撃だ。一撃決めてくれ。でないと敵は進化して『グラヴィトンブレイカー』に耐えられるようになるかもしれない」
『わかりました!』

119 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/30(月) 22:07:41 ID:64VM2SV9
 スバルはグランカイザー、なのははGアタッカーのコックピットに乗り込み、他の皆も各グランディーヴァに乗り込む。
 グランフォートレスも動き出し、グランフォートレスはシグナムとシャマルが動かす。
 出撃前にクロノがスバル達に任務内容を言い渡す。

「今回の任務は二つだ。一つは地上本部にいるゼラバイアの排除。そしてもう一つは、生き残る事だ! 誰一人かけることは許さんぞ」
「超重神グラヴィオン、発進せよ!」

 ヴェロッサの発進許可により、ゴッドグラヴィオンはグランフォートレスの上に乗り、発進し、グランフォートレスは飛んでいく。ゼラバイアのいる地上本部にへ飛ぶ。


 地上本部ではゼラバイアは着いてから何もしないまま、ただ腕を組んで座っていた。グラヴィオンが来るのを待っているのだ。

「ゼラバイアめ、何を考えている?」

 レジアスがゼラバイアが何もしないのを見て不審がるのを、スカリエッティが答えを与える。

「グラヴィオンを待っているのだろうね。恐らくあのゼラバイアはグラヴィオンを倒すために作られたものだろうね」

 今回のゼラバイアは今までと違い人型である。これは明らかに人類抹殺以外の何か明白な目的があると見た方がいいとスカリエッティは判断した。

「作られた?」
「前にも言ったが、あれは恐らくは誰かが作って送り込んだものだ。そしてその敵はグラヴィオン抹殺を最優先にした。そう見るのが妥当だろうね」
「うーむ……」

 レジアスも腕を組んで考える。スカリエッティの言い分はもっともだ。

「スカリエッティ、例のものはまだなのか?」
「まだだね。早くて数ヶ月はかかる。それにまだデータが少々不足している」
「もしここでグラヴィオンが負けたら……」
「全ては水の泡だろうね」

 レジアスとスカリエッティは真剣な顔でその場に留まる。
 それから数分もしないうちにグラヴィオンとグランフォートレスが現場に来る。

「どうやら来たようだな」
「ゼラバイアも迎撃体勢にはいるようだ」

 二人は妙に冷静に状況を見る。


 グランフォートレスの方では、敵ゼラバイアを視認した。

「よし、飛ばすぞ!」
「皆、しっかり捕まって!」

 シグナムとシャマルが思いっきりレバー引き、アクセルを踏む。グランフォートレスはものすごい勢いで加速する。

「敵が予測しているグラヴィオンの最大加速以上のスピードをキープしてください」
「わかってる!」

 マリーが通信を入れ、シグナムが了解を送る。
 そしてグラヴィオンはGシャドウのブースターで勢いよくグランフォートレスから離れ、ゼラバイアの頭上に一気に近づき、
 背中に背負っている剣『グラヴィトンブレイカー』を遥か上空に向けて振り下ろし、スバルは叫ぶ!

「サイキック、ざーーーーーーーーーん!!」

 スバルは最近見ていたロボットアニメの主役ロボが使う必殺技をイメージし、それを真似るように叫び、剣のギザギザ部分敵に向けて、
 敵を斜めに斬りつけ、敵は爆散。炎が上がる。

「やったーーーーー!」

120 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/30(月) 22:08:27 ID:64VM2SV9
 司令室で見ていた、マリーやシャーリー達は喜びの声を上げていた。

「まだだ!」

 ヴェロッサが叫ぶ。燃え上がる炎にゼラバイアは歩き出す。先ほどより少し小さくなっているが姿は変わらない。

「さっきまでのは厚い装甲を着ていたみたいだね」
「スバル、さっきのでブレイカーが持たない次で決めないと!」
「わかりました! ブレイズアップ!」

 スバルはグラヴィトンブレイカーに重力の力を加え、再び上空に飛び、また斬りつけようとすると、敵は肩の部分からグラヴィトンブレイカーに似たような剣を取り出す。

「サイキック、ざーーーーーん!!」

 しかしグラヴィトンブレイカーはゼラバイアの剣に防がれ、グラヴィトンブレイカーは二つに折れる。

「そんな……」
「もうこれじゃあ、グラヴィオンに勝ち目は……」

 事態を深刻と見たヴェロッサは黙って指令室を去る。

「ヴェロッサ、どこに…?」

 クロノは黙って去るヴェロッサを黙って見送る。
 ヴェロッサはすぐに聖王教会立ち入り禁止とされている西館の扉開く。
 閉じられた西館には正面に何かをはめ込むくぼみと、何らかの装置が置いてあるだけだった。
 ヴェロッサは自分の持っていた杖の宝石部分をくぼみにはめ込み、謎の装置に手を置く。

「今のあの子達なら白銀の牙を託すのに値する」

 ヴェロッサはピアノを弾くかのごとく、その装置を動かす。その装置からは美しい音色が流れ出し、聖王教会全体にその音色が響き渡る。

「何、この音?」
「いい音…」
「でも少し寂しい気が……」

 謎の装置は完全に起動し、聖王教会の高い塔の上から光が飛んで行き、それはミッドチルダの宇宙のいくつもある一つの月に届く。
 そして月はその光に反応し、月からも光が飛んで行き、その光はグラヴィオンの目の前に届く。

「これって……」
「剣……」

 光の中には宙に浮く剣が存在した。

「綺麗……」
「白銀の牙、『超重剣』だよ」

 通信でヴェロッサがその剣『超重剣』の名を口にする。

「スバル、握ってくれ。そして『エルゴ、ストーム』と言ってくれ」
「わかりました」

 グラヴィオンは目の前に浮く超重剣を握る。ゼラバイアは使わせまいといわんばかりに猛スピードでグラヴィオンに近づこうとする。

「超重剣、エルゴ、ストーーーム!」

 ゼラバイアよりもスバルの方が早かった。超重剣の先端からは重力の竜巻が飛んで行き、ゼラバイアを竜巻の中に閉じ込める。
 グラヴィオンは飛び、そしてスバルは叫ぶ!

「超重、斬!」

121 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/30(月) 22:09:45 ID:64VM2SV9
 グラヴィオンは超重剣を振り下ろす。そしてゼラバイアは完全に爆発を起こし、消滅した。
 それから数十分後、その様子を見ていたスカリエッティは狂ったように言う。

「素晴らしい! 目標を空間ごと斬ったのか!」
「ドクター……」

 喜ぶスカリエッティのそばにはいつの間にかグラヴィオンから下りていたドゥーエが近づいていた。

「ドゥーエ、久しぶりだね。元気そうでなによりだよ」
「ドクターも……」
「まさか、『タイプゼロファースト』でだけではなく『タイプゼロセカンド』も一緒だったとはね」
「私も最初は驚いたけど今はもう慣れたわ」
「まあいいさ。ところで、頼んでいた方はまだかい?」
「さすがにまだね。完全なものにするには早くて数ヶ月がいいところね」
「そちらもか……。では引き続き頼んだよ」
「ええ…」

 ドゥーエとスカリエッティは人知れず薄ら笑いをしていた。
 その一方でレジアスもまたグラヴィオンの新しい力を見て感動する。

(重力だけでなく、空間も征したと言うのか。我々も早く我らの切り札を作らねば……)

 スバルはグラヴィオンから降り、グラヴィオンを見ながら心で思う。

(グラヴィオン、教えて。後何回戦えば、ギン姉とまた会えるの? 後何回、またギン姉やノーヴェと一緒にいられるのかな?)


 戦闘が終わった中、ヴェロッサは外に出てふと考えていた。

(大人の事情に子供達を巻き込む。醜いものだな。だがあの子達ならその醜い連鎖を解き放てるはずだ。
僕はそう信じている。そしてそれが終わったら僕は………)

 ヴェロッサは聖王教会の近くにある湖を見る。
 ヴェロッサが眺める方にはスバルの姉、ギンガ・ナカジマの姿があったとか……。

122 :超魔法重神 ◆ghfhuMYiO. :2008/06/30(月) 22:11:22 ID:64VM2SV9
投下完了です。
少し原作と変更している箇所がいくつかあったり、独自に付け加えてる部分があります。
そしてひとまずこれでグラヴィオンの第1期の話は終わりました。
次の第9話からはツヴァイの話になります。

123 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 22:21:26 ID:zKFFTtt6
>>106
GJでした。
このベイダーさんには是非ユーノを弟子にしてフォースを教えてあげてほしい。
ユーノは何気にジェダイ適性が高そうだから。

124 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 22:39:02 ID:upbMf+Iw
職人の皆様、乙です

新参者ですが、11時頃に作品投下してもよいでしょうか?
クロス元は平成ウルトラセブンでストーリーはSTS後なんですが

125 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 22:42:09 ID:cFg8TE1/
支援


126 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 22:47:07 ID:4Xa0UHBa
StS後とは珍しい
支援

127 :平成セブン ◆SGpMBho4YI :2008/06/30(月) 23:07:29 ID:upbMf+Iw
時間になりましたので、投下します。

第一話 潜む陰

「ご苦労、交代の時間だ」
「あぁ、ありがとう。眠たくってしょうがないよ」
「はは、まさか本当に寝てなかっただろうな?」
「よせよ、減給どころじゃなくなる」

深夜の管理局本部は昼間以上に厳重な警備体制が敷かれている。最新鋭の警備システムはもちろんのこと、人による見回りなども行っている。平和を守る砦としてまさに恥ずかしくない警備体制であった。
若い局員はあくびをしながら、交代にやってきた同僚に警備を任せると、見回りがてら警備室へと戻ってゆく。デバイス片手に口笛を吹きながら、巡回する彼に油断が無かったとはいえない。だからこそ、
彼は自分に迫る影に気がつくのが遅れたのだろう。不意に肩を掴まれた彼は普段出すことはない奇怪な悲鳴を上げて振り返った。

「ひゃぁ! あぁ? なんだ、お前か……どうしたんだ、忘れ物か?」

 振り返った先にいたのは先ほど勤務交代をした同僚だった。同僚は彼の質問に答えるわけでもなく、ただ虚ろな視線を向けているだけだった。それを不振に思った彼は同僚が寝ぼけているのではと重い、肩を軽く叩いた。

「おい、寝ぼけるには早い……! がっ……」

彼は何が起きたのか、理解出来なかっただろう。薄れ行く意識の中、彼が最後に目にしたのは、淡く光るデバイスを片手に持つ同僚と『もう一人』の自分だった。
 誰一人と通ることの無い廊下に静寂が訪れ、二人の男は倒れた若い局員を見下ろしながらポツポツと呟くように言葉を発した。

「警備員は全て完了した」
「システムの把握も時間の問題だろう。しかし、作戦進行が遅れている」
「無理を言うな、我々は数が少ない」
「聖王教会、本局にはまだ手を出せん。だからこそ、土台を固める必要がある。その為にはこの地上本部、周辺世界の制圧を急がねばならん。奴も現れている、手遅れになる前に対処すべきだ」
「囮を使う。目を逸らすことも出来、奴はそれを放っておくことはせんだろう。その間に出来る限り、この地上本部を制圧する。邪魔者には消えてもらう」

***

128 :平成セブン ◆SGpMBho4YI :2008/06/30(月) 23:11:40 ID:upbMf+Iw
月日が経つのは意外と早いもので、ミッドチルダ及び周辺世界を大いに騒がせたJ・S事件から早二年、世界はある程度平和を保っていた。とは言え、犯罪者がいなくなるわけでもなく、管理局は休む暇もない。J・S事件
にて多大なる被害を受けた管理局ではあるが、二年でその機能を完全に回復できたのは局員たちや協力者たちの並ならぬ努力の賜物だろう。
自然保護隊の期待のルーキー、エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエはその歳に似合わぬほどの実力を持っている。それが二人の努力でもあり事件を乗り越えたからこその成果である。巨大化したフリードの背に乗り、
猛スピードで飛行する彼らの目の前には巨大なコンテナを積んだ、飛行船が飛んでいた。密猟者の船である。以前から指名手配されていたグループであり、遂に尻尾を掴んだのだ。そしてエリオら自然保護隊に密猟されている生物の保護と密猟者の逮捕という指令が下されたのだ。

「第一、第二小隊は船の前へ出ろ! 第三小隊はルーキーと共に船内へ突入、制圧せよ!」
『了解!』

隊長らしき男の命令の下、何十人もの魔導師たちは飛行船の周りを飛び、次々と魔弾を放ってゆく。それらは命中させるのではなく、飛行船の進行を妨害するためのもの、案の定、スピードを緩めた飛行船には数人の
魔導師とエリオが降り立った。そこからの行動は素早いものであった。エリオはデバイス・ストラーダで船体に穴を開け突入、船内に突入後、エリオたちの侵入に気がついた密猟者たちは武器を手に抵抗を試みたが、
魔導師たちのバインドによって抵抗する間もなく、取り押さえられてしまう。船の操縦者もまたバインドを掛けられ、突入から三分、見事に船内を制圧、密猟者の逮捕に成功という結果に終わったのだった。
呆気ないものだったが、彼らの任務はまだ終わってはいない。逮捕には成功したが、次は密猟されていた生物の確認、保護しなければならないのだ。船を操縦し着陸されると同時にコンテナの中身を確認する。コンテナ
の数は三つ、そのどれもが巨大であり、40mから60m程の大きさがあった。中身を確認する際には十分に注意しなければいけない。中身が陸上生物などならばよいが、鳥や竜など飛行可能な生物であった場合はあけた瞬間
に逃げてしまう恐れがあるからだ。その為、シールドなどを展開し、逃亡を防ぐのである。

「プロテクトを解除しました、あけますよ」

若い保護隊がコンテナの上部ハッチを開くと同時に何重ものシールドが展開される。何かが飛び立つ気配は無く、生物が飛行可能なものではないことが判明した。しかし、彼らは安心どころか、衝撃を受けてしまう。
保護隊を驚かせたもの、それは……俗に言う怪獣であった。

***

巨大怪獣を保護したという知らせはミッドチルダの八神はやての下へすぐに届けられた。特別捜査官として、逮捕された密猟者及び保護された怪獣を元いた世界への送還など、次々と仕事が入ってくるのだった。

「また、えらい金ぴかやなぁ」

送られてきた資料に目を通しながら、はやてはそう呟いた。送られてきた資料には密猟者たちの情報の他にも保護された怪獣たちの詳細なデータもあった。そこで彼女の特に気を引いたのは、保護された三体の怪獣の内
に一体、全身が金色に輝く怪獣であった。

「どうやら体の殆どが純金みたいです」

はやてのデスクのすぐ横の小さなデスクに座っているのはリインフォースUである。リインの言うとおり、その黄金の怪獣はまさに金で出来ていた。内臓器官を除く殆どは純金であり、円単位で換算すれば推定10兆は超えるといわれている。

「世の中には不思議な生物もおるもんやなぁ。大方、金だけ採って後は捨てるだけやったんやろうな。保護できて良かったわ」
「そうですね、みすみす犯罪のための資金にもならなかったし、なにより怪獣さんが無事でよかったです」
「うん。せやけど、さすがにミッドチルダで預かるわけにもいかんやろうし……元の次元が判明するまでは現地で預かってもらわんとなぁ……犯人たちはいつこっちへ?」
「それが、手続きとかで明日まで待って欲しいと……」
「またかいな……」

はやてはため息をつきながら言った。彼女が呆れるのも無理はない。ここ最近の管理局はどうも対応が遅く、以前ほどの素早い手続きが滞っている場合が多かった。見直されたといっても全てが改善できたわけでなく、
今なお人手不足という事態に悩まされている管理局ではあったが、最近は明らかに怠慢であった。半ば諦めかけているはやては犯人のことは後回しにし、過去に似たようなケースが無いかを調べ始める。端末を操作して、
過去の事件記録を閲覧しようとするが、何故か中々繋がらない。

129 :平成セブン ◆SGpMBho4YI :2008/06/30(月) 23:17:48 ID:upbMf+Iw
「……」

何度も指でデスクを叩きながら、ページが開かれるのを待つ。そして、アクセスできたかと思うと、何故かエラーが発生する。軽く舌打ちをしたい気分であったが、堪えてページを更新する。
しかし、またもやエラーが続く。何度も何度も繰り返していく内に遂に温厚なはやても我慢の限界であった。

「あー、もう、イラつく!」
「わー! 落ち着いてください〜!」

いくらか声は抑えていたが、髪をかきむしるなど相当な怒りが見え隠れするはやてとそんな彼女を怯えながらもなだめるリイン。そう時間も経たないうちに落ち着いたはやてだったが、
これでは仕事にならないと判断し、端末の電源を落とすと椅子にもたれかかった。

「なんや、最近おかしいわ。ここまで対応が遅れるなんて事はなかったんやけどなぁ」
「そうですねぇ、他の部署でも色々と問題がおきている見たいです。ヴィータちゃんたちも文句を言ってたですよ」
「日に日に対応が遅れてる気がするなぁ。あの事件の教訓を生かさなあかんのに、上の連中は一体何を考えてるんやろうか」

仕方なく、今は手元にある資料のみでやりくりしなければならない。事務作業を開始するも、やはり情報が少なすぎるため、手詰まりであった。結果、あまり作業は進まなかった。
途中、資料室へと足を運んだが、ここでもあまり情報は集まらなかった。必要としていた資料がすでに貸し出されていたのだ。 どうも妙な違和感を覚える。さっきから自分が行動するたびに、
行き詰ってしまい、どこか人為的な意図が感じられる。

「考えすぎですよ、はやてちゃん。どこも人手不足だから、こういう事態もありますよ。局の機能は完全に戻ってますし、いずれは……」
「せやけどな、機械を操作できる人間が揃わなんだら、意味がないねん」

深まる疑惑と不安、どこか信用のならない管理局の現体制をどうにかすることははやてには出来ない。それほど権力があるわけでもなく、さらに若くして出世、
功績を挙げた彼女には敵が多い。何か言えば、倍にして返されるだろう。
とにかく、今は目の前の事件の解決に尽力を尽くさねばならない。明日になれば密猟者の身柄を引き取り、事情聴取をして、保護された怪獣の処置を考えなければいけない。
余分なことを考えている暇はないのだ。はやては自分のデスクに戻ると明日の下準備を始めた。

***

130 :平成セブン ◆SGpMBho4YI :2008/06/30(月) 23:22:21 ID:upbMf+Iw
無限車庫の司書長であるユーノ・スクライアが忽然と姿を消した事実が判明したのは、翌日の事であった。最初に気がついたのは
調べ者をしにやってきた局員であった。局員が無限車庫を訪れたときには、車庫には無数のプロテクトが掛けられ、人っ子一人存在しない状態であった。
すぐさま調査がなされたが、何の手がかりも無く、また車庫のプロテクトが尋常ではないほど強力なものであり、痕跡を調べようにもできない状態であった。
司書長の関係者たちにはもちろんのこと、彼の友人にも話を聞いたが有力な情報は得られないため、捜査は難航していた。
 
「ユーノ君がなぁ……確かに心配やけど、一体なんで急にこんなことが?」
「いなくなる前は変わった様子はないみたいですよ。昨日の夜、突然消えたとしか……」
「気になるけど、私らは密猟者の方を何とかせなならんからな。身柄はもう届いたん?」
「それが……」

顔を曇らせるリインに嫌な予感を感じたはやて。リインから帰ってきた言葉は彼女の予想通りのものであった。

「今回の事件でバタバタしているみたいで」
「なんやのそれ? ええ加減にしてほしいわ、ホンマ」
「それだけじゃないんです」
「え?」
「港が封鎖されているみたいなんです」

これは穏やかではない。他世界へと繋がる港が封鎖されるということはまずない。管理局の要とも言っても良い施設であり、
次元航行艦の出入りがなされるのはその施設だけである。それが封鎖されているということは、密猟者の身柄を引き取ることも出来ない。またもや、
仕事が進まないことになる。それ以外にも民間にも影響を与えてしまう。

「また突然やね……ん、ということはフェイトちゃんたち本局に勤めとる人たちは閉じ込められたことになるんやな。なんや、立て続けに問題が起こると怪しいな」
「そうですね。最近の対応の遅れなどと並行して考えれば、明らかに多すぎます」
「ただの思い込みで済んでくれればえぇんやけど」

二人で話しをしながらはやては自分の専用室の扉前まで来ていた。しかし、そこでふと気がつく。今日は廊下で
誰ともすれ違っていないのだ。人手不足とは言え、地上本部に勤めている局員の数は少なくはない。必ず誰かと
はすれ違うはずである。それが今日に限っては、廊下では誰ともすれ違っていない。嫌な予感が過ぎった。

「……ッ!」

何故か気が進まないが、はやては扉を開ける。すると、そこには散らかった部屋が目に入った。あまりにも露骨な警告、
大胆すぎるがこれはこれで十分だろう。
はやてはすぐさまその場から離れようと、走り出そうとするが……

「はやてちゃん!」
「なっ!」

 すでに複数の魔導師たちによって退路は絶たれていた。そして、先頭の魔導師のデバイスに光が灯った。

***

『行方不明となったユーノ・スクライア氏は無限車庫の司書長であると同時に高名な考古学者としても……』

保護隊本部のテレビでもユーノの行方不明は放送されていた。それを見ていたエリオとキャロは一応、
顔見知りというのもあり心配にはなっていた。しかし、異なる次元にいる自分たちは心配することしか出来ず、
なにより管理局が捜索しているとの報道に安心もしていた。それ故にさほど気には留めていなかった。ニュース
を見ていた二人だが、パトロールの時間になり、出かけることにした。
自然保護隊の仕事は密猟者の摘発だけでなく、保護された生物の世話や周辺のパトロールというものがある。
保護隊というものは基本的に陸士が多い。そういう部隊で竜騎士であるエリオとそのパートナーであるキャロは
竜のフリードを駆って空からのパトロールが可能であり、重宝されていた。
いつもの巡回コースを回るのにさほど時間は掛からないが、これを二、三往復するのが普通である。

「パトロール、行ってきます!」
「あぁ、気をつけてな」
「はい!」

131 :平成セブン ◆SGpMBho4YI :2008/06/30(月) 23:27:50 ID:upbMf+Iw
エリオが挨拶をすると隊長らしき男も笑顔で答えた。
その後、すぐにフリードの背に乗り、エリオとキャロは巡回コースを飛んでいった。先日のような密猟団を発見することはなく、いたって平和であった。

「この一帯に異常はないみたいですね」
「うん、次のポイントに移動しようか。フリード、おねがい」
「キュクルー」

旋回行動をとり、翼を羽ばたかせるフリード。山岳地帯を見下ろし、変わったことが無いかを確認する。すでに二年もたてばなれたものである。途中、定時連絡を
入れるため小型の通信機を起動させる。

「こちらエリオ・モンディアル二等陸士、本部、応答を……あれ?」
「どうしたの、エリオ君?」
「おかしいな、通信が繋がらない」
「そういえばこの一帯は磁場の影響で通信が繋がらない時があるって聞いたことがあります。もしかしたら、そのせいかも知れません」
「うん、一応念話の方で連絡を取ってみるよ」

念のためにと思い、エリオは意識を集中させる。しかし、一向に繋がる気配はない。念話が届かない距離でもなく、受け取れないということはまずない。定時連絡を
受け取る側に何か異常があったとしか考えられない。

「駄目だ……」
「何かあったんでしょうか?」
「気になるね、すぐに戻ろう!」

不振に思ったエリオはフリードの手綱を引いて、本部へと引き返そうとする。現地点から本部へ戻るのに掛かる時間はおよそ一時間。フリードが全力で飛べば
少しくらいは縮められるだろう。一直線に本部へと急行するが、突然エリオはキャロを抱き寄せ、フリードを急降下させた。

「きゃっ! エリオ君!」
「しっかりつかまってて! 狙われている!」

言うや否や、先ほどまで飛行していた場所へ無数の砲撃が飛んでくる。彼らの知る魔導師よりもかなり低ランクの砲撃だが、
数が多ければ撃墜されかねない。回避行動をとったエリオはすぐさま、砲撃がなされた場所へ目を向ける。するとそこには数人の局の魔導師が浮かんでいた。

「そんな、どうして管理局の人たちが!」
「わからない、だけど狙われていることは確かだよ!」

取り乱しはするが、二人がすぐに平常心を取り戻すことが出来るのはJ・S事件を乗り越えたからこそだろう。
何故局の人間が自分たちを狙うのかという疑問は残るが、黙ってやられるわけにもいかない。何とかして理由を聞き出したいが、
問答無用で攻撃魔法を繰り出す局員たちに近づくことが困難だった。無理して近づけば集中砲火を食らうことになる。

132 :平成セブン ◆SGpMBho4YI :2008/06/30(月) 23:37:14 ID:upbMf+Iw
「クッ……もしかしたら、本部に通信が繋がらないのはあの人たちのせいかもしれない」
「もしかして、クーデター……とか?」
「わからない、なるべく避けるから、キャロ、もしものときはシールドをお願い!」
「うん! エリオ君もフリードも頑張って!」
「わかった!」
「キュクルー!」

局員から繰り出される砲撃や誘導弾を次々と避けていく。二人はデバイスを起動させエリオはストラーダで誘導弾を弾き、キャロもシールドを展開し、見事なコンビネーションを見せた。しかし、中々攻勢に出れないのは、
相手もまたプロであり、何より自在に飛行できる航空魔導師だからだ。フリードに乗らなければ長時間の飛行が不可能な二人は変則的な攻撃に劣勢を強いられていく。なにより二人が攻勢に出れないのは、現在の戦闘フィールドに
原因があった。やりようによっては数の少ない航空魔導師を撃退することは可能である。しかしこの高高度で攻撃し気絶させてしまうと、かなり危険である。さらに局員たちはそれを理解しているのか、決して高度を下げることはせず、
またエリオたちを下に向かわせることもしなかった。彼らに出来るのは何とかして逃げ、助けを求めることにあった。本部に通信が繋がらないとすれば、すでに本部は制圧されていると見ていい。ならば、まだ無事な可能性のあるほかの施設へと向かうことであった。

「このままじゃ消耗戦だ……フリードがやられたら、僕たちも……」
「エリオ君、アレ!」
「え?」

焦るエリオにキャロの悲痛な叫びが響く。同時にエリオはキャロの指差す方角を見ると、そこには保護した怪獣の一体であった。茶色の体表を持ち、トカゲがそのまま二足歩行できるように進化したような姿をした怪獣は地響きならし、咆哮しながら向かってくる。
その一瞬の隙を狙った局員は砲撃を放つ。直撃こそしなかったが、近くを掠め、その衝撃で大きく体勢を崩してしまう。なんとか落下することは避けられたが、その一瞬で周りを局員に包囲されてしまう。
杖状のアームドデバイスをエリオたちに向ける局員、無慈悲にもその先端には魔力が収束されてゆき、四方から砲撃が発射される。

『……ッ!』

瞬時にキャロはバリアを展開させるが、数の多い砲撃を長時間防ぐことは出来ない。下手をすれば、突き破られるかもしれないのだ。一環のお終いかと目を瞑る二人。しかし、キャロの展開したバリアには衝撃はやってこない。だが、バリアと
砲撃がぶつかり合う衝撃音は響いていた。何事かと思い、目を開けると一人の青年が砲撃を防いでいたのだ。エリオとキャロはその青年の姿を視認すると驚きの声を上げた。

『ゆ、ユーノ先生!?』
「やぁ、間に合ってよかったよ」

そこには行方不明といわれていた、ユーノ・スクライアの姿があった。 
涼しい顔で砲撃の防ぐユーノ。幼い頃とは言え、管理局のエース・オブ・エース高町なのはの砲撃を防げるほどの実力を持ったユーノだからこそ出来る表情だろう。そして、局員たちの砲撃が終了すると同時に手早く一人にバインドを掛け、その場に固定させる。

「手加減はしなくてもいい。落ちていく奴は僕が拾うから!」
「え、あぁはい! キャロ、フリードをお願い」
「うん!」

エリオはストラーダで加速し、一直線に近くにいた局員に突撃する。一気に間合いをつめ、そのままストラーダでなぎ払う。気絶した局員はユーノのバインドを掛けられ、エリオはフリードに拾われ体勢を立て直す。
反撃してくる局員の攻撃は全てユーノが引き受けた。数が少なくなり、砲撃はおろか誘導弾ごときではユーノの障壁を破ることは出来ない。今度は局員が焦りを見せ、その隙をエリオが逃すはずもなく、呆気なく撃退されてしまう。

「よし、これでこっちは片付いた」
「だけど、まだ怪獣が!」

局員の撃退は成功したが、まだ怪獣が残っている。恐らく40m以上はある体躯は脅威そのものであり、彼らがどうこうできるものではない。恐らく、キャロのヴォルテールならば対応できるだろうが、大きさが違いすぎる。下手をしたら踏み潰されるか、
叩き落されるかのどちらかだ。

「大丈夫、彼が何とかしてくれる」

不安げな表情を浮かべる二人とは打って変わって、ユーノにはそんな気配はない。ただ怪獣を見つめ、何かを待ち望んでいるような表情だった。
そして、エリオとキャロは見た。どこからとも無く、真っ赤な巨人が現れる瞬間を……

『デュワ!』

133 :平成セブン ◆SGpMBho4YI :2008/06/30(月) 23:37:48 ID:upbMf+Iw
人大杉で何度も投下が止まってしまった。
これで投下は終了です。ウルトラセブンの登場が最後の掛け声だけですが、
次回からセブンの戦闘シーンや人間体での活躍が始まります。

134 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 00:17:03 ID:0RjRKBQu
>>106
感想が遅れましたがリリカルジェダイの人、GJでした。
ヴェイダー、若返ってるけどあの鎧はかっこいいから着けててほしい。
あとユーノにジェダイが似合うならスカはシスが相応しいと思った。
シスもジェダイも知識欲が強いというが、ユーノもスカも条件は満たしてるわけで。
ユーノは緑、スカには紫のライトセイバーが似合いそうでならない。

135 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/07/01(火) 01:00:52 ID:05DnKsD/
は〜い、感想に対するお返事の時間だよ〜(教育番組調に(ぇ


>バイク、Dホイール
……オマエ達は根本的に勘違いしていると言わざるえないw


>キックバックとかトゲトゲ神の殺虫剤とか
どうしてそんなお返事を下さる人々がリリカルなのはのSSスレに居るのか?
そんな疑問を感じても構いませんね?


>はやてとレジアス
ワザワザあんなヒゲオヤジを出したのだから、コレくらい偉そうでも構うまい(爆
このSSでははやてが原作以上に腹黒くて出世を目指しています。これからもミッドチルダタヌキ合戦をお楽しみ下さい。


>遂に姿を表したインセクター☆ルールー!!
オーバースペックとかオラ知らない(ぇ あとヘカとか言うなw
次はいよいよキャバクラと召喚大戦の幕開け。出力に差が在りすぎるという話も在りますが。
そこら辺は盗賊のせこいテクニックで何とかします。ルールーが指定したチーズケーキのお店はどっかで来た名前を入力。
実際にあったりしたら焦るw


>誤字指摘
ありがと〜なんか今回ダメなんだ。誤字だらけで…精進が足りないな〜


以上ですが、誰か物好きな方がいらっしゃいましたら、まとめへの登録をお願いしたいです。
チャレンジしたのですが、失敗しそうなビジョンがビシバシと……自分での登録は切り札として手札に(ぉ

136 :なの魂の人 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:20:09 ID:fWpMyzoZ
はい、こんな時間にこんばんわ
2時30分からなの魂最終話(無印的な意味で)の投下をしようと思いますが、大丈夫ですかね?

137 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 02:21:02 ID:THZ9Oe71
きたーーーーーーーーー!!!!
支援。

138 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 02:27:36 ID:u5v7SL+N
ウルトラセブンの人とジェダイの人GJです。これからも楽しみにしてます。

139 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:31:00 ID:fWpMyzoZ
上昇を続けていた鉄箱が振動と共に動きを止め、そして扉を開く。
最上階に到着したなのは達を出迎えたのは、やはり傀儡兵の大群であった。
正面最奥に見える球状の機械――庭園の駆動炉までの道を完全に埋め尽くさんばかりの数。
半ばうんざりした様子で砲撃の構えを取るなのはだが、彼女の前にユーノが歩み出た。

「……防御は僕がやる。なのはは封印に集中して」

魔法陣を展開し、彼は眼前に広がる甲冑の群れを見据える。
――なのはには、指一本触れさせない。
彼の小さな背中が、雄弁とそう語っているようだった。

「うん、いつも通りだよね」

ほんの少しだけ頬を赤く染め、なのはは呟く。

「ユーノ君、いつも私と一緒にいてくれて……守っててくれたよね」

呆けた顔でこちらを見るユーノに歩み寄り、鎧の軍勢へデバイスを向ける。
そう、いつも通りだ。
いつも通り二人並んで、いつも通り無茶をする自分を助けてくれて。
そして、いつも傍に居てくれて。

「……だから戦えるんだよ。背中がいつも、あったかいから!」

微笑み、ユーノを見やる。
その視界の片隅で、何かが光った。

「……おーい、危ないアルよ、ご両人」

レイジングハートから警告が発せられる前に、なのはは凄まじい形相でその場を飛び退いた。
その様子に不審を抱いたユーノが後ろを振り向く。
瞬間、事態を理解したユーノもまた、バネの入った人形のようにその場を飛び退いた。
直後に巻き起こる轟音、発光。

『うおわァァァ!?』

思わず悲鳴を上げるなのはとユーノ。
エレベーターの方から飛んできた馬鹿でかい光柱は、先程までなのは達が居た場所を抉り取り、
射線上に居た傀儡兵の大群を消し飛ばす。

「か、神楽ちゃんんんんんん!!?」

しりもちをつき、上擦った声を上げるなのはの視線の先には、何故か蔑んだような目でこちらを見る神楽の姿。

「なんかイラッときたアル」

どうやら目の前でラブコメもどきを見せられたのが癪に障ったらしい。
彼女が手にした番傘の先端からは、薄い白煙が立ち昇り、ゆらゆらと風に揺れていた。

「まァ道も出来たんだし、良しとしようや」

顎に手をやり、目の前に広がる焦土を見やりながら銀時は呟く。
そう、目の前に広がっていたのは、紛れも無く焦土であった。
未だに魔力の残照と白煙が立ち昇る地面は歪な形に削られており、その破壊の痕は一直線に動力部へと
突き進んでいた。


140 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:32:01 ID:fWpMyzoZ
「良くないですって! 駆動炉に当たってたら、もろとも吹き飛んでましたよ!?」

「何ですかこの仕打ち!? 私何か悪いことしました!?」

唾を飛ばさん勢いで抗議するユーノとなのはであったが、そんなことは馬耳東風といわんばかりに
銀時達は出来上がった『道』の真ん中を、悠々と歩いていくのであった。



なの魂 〜第二十四幕 友達はなるものじゃない気付いたらなってるものだ 後編〜



轟音と共に瓦礫が落ち、床が砕け、空間が裂ける。
そこに広がる光景は地獄か。はたまた魔界か。
庭園の最奥部の中心でプレシアは佇む。
傍らで力無く浮遊するのは、己が娘を収めたガラスの円筒。
物言わぬ娘の姿を慈しむように見つめ、円筒に縋る。
もう少しだ。
あと少しで、失った全てを取り戻すことが出来る。
崩落する周辺の空間を気にも留めず、プレシアは念じる。
それに応じるかのように、彼女の頭上を舞うジュエルシードが、淡く明滅を繰り返した。
獣の呻き声のような音と共に、暴力的な地響きが巻き起こる。
が、それも僅かな間だけだった。

『……プレシア・テスタロッサ。終わりですよ。次元震は私が抑えています』

どこからか聞こえてきたその言葉通り、巻き起こる地響きは不自然なまでに激しさを弱めた。
空気が震え、肌を刺すような圧力を覚える。
それが外部からの魔力干渉によるものだということに思い当たるのに、時間はかからなかった。

『駆動炉もじき封印……執務官も、あなたの所へ向かっています。
 忘れられし都アルハザード……そしてそこに眠る秘術は、存在するかどうかすら曖昧なただの伝説です!』

そう語るは、あの目障りな時空管理局の犬。
つい先程、自分を捕らえるべく乗り込んできた、有象無象の魔導師の親玉――リンディ・ハラオウンの声だ。
おそらく彼女が庭園内に侵入し、なんらかの魔法を用いて次元震の拡大を抑制しているのだろう。
忌々しげにプレシアは虚空を睨み、叫ぶ。

「……違うわ。アルハザードへの道は次元の狭間にある。時間と空間が砕かれた時、
 その狭間に滑落していく輝き……道は、確かにそこにある……!」

『……随分と分の悪い賭けだわ。
 あなたはそこに行って、一体何をするの……? 失った時間と、犯した過ちを取り戻すの……?』

哀切を感じさせるその言葉に、プレシアは酷く憔悴した顔で不気味な笑みを浮かべる。

「……そうよ、私は取り戻す。私とアリシアの、過去と未来を……!
 取り戻すの……こんな筈じゃなかった、世界の全てを!」

その瞳に秘めたるは狂気。
全てを投げ打ち、この世界に絶望した者の醸し出す、禍々しい空気。
負の感情が渦巻くその空間を、一条の光線が切り裂く。
爆発、振動。
音源と思わしき箇所――プレシアの左斜め後方、およそ五十メートルほどの距離の壁面から粉塵が立ち昇り、
そして瓦礫を踏みしめる音が断続的に発せられる。


141 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:33:07 ID:fWpMyzoZ
「……世界は、いつだって! こんな筈じゃない事ばっかりだよ!!」

もうもうと立ち込める煙の間から見え隠れする人の影。
それが一歩、また一歩とこちらへ近づく。

「ずっと昔から……いつだって、誰だって……そうなんだ!!」

煙の中から現れのは、全身のいたるところに傷を作り、痛々しく頭部から血を流す少年――クロノであった。

「こんな筈じゃない現実から逃げるか、それとも立ち向かうかは個人の自由だ!
 だけど、自分の勝手な悲しみに、無関係な人間まで巻き込んでいい権利は、何処の誰にもありはしない!!」

耳障りな崩落の音に負けぬ大きさで、彼は叫ぶ。
その瞳に宿る感情は、軽蔑とも怒りとも取れなかった。
ただ、悲哀。
悲哀に満ちたその言葉だけが、空しく辺りに木霊する。
僅かな沈黙。
それを切り裂くように、突如として天井が砕けた。
落下する建材に紛れて、二つの人影がプレシアの目の前へと舞い降りる。
二つ括りにした長い金色の髪が風に揺れ、漆黒のマントが翻る。
少女――フェイトと、彼女の傍らに立つアルフを、プレシアは睨む。
そのプレシアが不意にその場にくずおれた。
苦しげに口元を押さえ、弱々しく何度も咳き込む。
それと同時に指の間から鮮血が滴り、不規則な形の血溜まりを床に描く。

「母さん……!」

すぐさま、フェイトはプレシアの元へと駆け寄ろうとする。

「何をしに来たの……!」

しかし、喉の奥から搾り出された、明確な憎悪を孕んだその言葉にフェイトは身を強張らせる。
目の前にうずくまる母は、まるで射殺さんばかりの視線をフェイトへと向けていた。

「消えなさい。もうあなたに用はないの……!」

今までのフェイトなら、そのまま何も言わずにどこへとなり行っていただろう。
そしてフェイトが姿を消した後、アルフが親の仇を前にしたかのようにプレシアに食って掛かっていただろう。
だが、今のフェイトは違った。
一瞬だけ逡巡はしたものの、彼女は首を横に振り、一歩、また一歩と地を踏みしめ、プレシアへと歩みだしていった。

「……あなたに、言いたい事があって来ました」

立ち止まり、前を見据える。
変わらず突き刺さる冷酷な視線も意に介さず、フェイトはゆっくりと口を開いた。

「私は……私は、アリシア・テスタロッサじゃありません。あなたが創った、ただの人形なのかもしれません」

誰のためでもない。
自分自身のために、本当の自分のために、フェイトは言葉を紡ぐ。

「だけど、私は……フェイト・テスタロッサは、あなたに生み出してもらって、育ててもらった……
 ――あなたの娘です!」

そうだ。
人形だろうとなんだろうと、自分は母の手で生み出され、そして育てられた。
それで充分じゃないか。
母との繋がりなんて、その事実で充分じゃないか。


142 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:34:17 ID:fWpMyzoZ
「……だから何? 今更あなたを娘と思えというの……?」

――繋がりなんて、それで充分だ。
――だから、私は……。

「……あなたが、それを望むなら。
 それを望むなら、私は世界中の誰からも……どんな出来事からも、あなたを護る」

――"絆"のために。
――ただの"繋がり"じゃない、本当の"絆"を取り戻すために。
――そのためになら……私は、いくらでも戦える。
――いくらでも、母さんを護ることが出来る。

「子が親を慕うのに、理屈も理由もありません。
 ……あなたにとっては、私は娘ではないとしても……私にとっては、あなたは紛れも無く、私の母さんです」

失った絆は、取り戻せばいい。
取り戻せないならば、新しく作っていけばいい。
どれだけ二人の距離が離れても、『親』と『子』という繋がりだけは、消えないから。
そう信じて疑わぬフェイトに、しかしくぐもった笑いが浴びせられる。

「……くだらないわ」

まるで、彼女の話には初めから興味など無かったかのように。
彼女の全てを嘲笑うかのように、プレシアは声を上げ続けた。

「もう、娘も母親も無いのよ……フェイト、あなたはもう用済みなの。要らないのよ!」



一際大きな破砕音が聞こえると同時に、今まで感じたことも無かった巨大な振動がフェイト達の身体に襲い掛かった。
かろうじて床の体面を保っていた建材が次々と落下していき、そこかしこで虚数空間がぽっかりと口を開け始める。

『艦長! ダメです、庭園が崩れます! 艦へ戻ってください! この規模の崩壊なら、次元断層は発生しませんから!
 クロノくん達も、早く脱出して! 崩壊まで、もう時間が無いの!』

大音量でアースラから切迫したエイミィの声が送られてくる。
どうやらこの振動は次元断層の発生に伴う物ではなく、この庭園が崩壊を起こしたことにより発生した物らしい。
クロノは苦虫を噛み潰したような表情で、

「了解した! ……フェイト・テスタロッサ!」

今の今までフェイトの意思を尊重し、状況の推移を見守っていたが、もはやそのような猶予は残されていない。
プレシアを逮捕し、フェイトを、アルフを、そして仲間達を連れて一刻も早くアースラへ戻らなければならない。
己の責務を全うするため、視線の先でプレシアと対峙するその少女の名を叫ぶ。
しかし、フェイトはクロノの呼びかけにも応じず、ただプレシアと向かい合うだけだった。

「……私は向かう。アルハザードへ……! そして全てを取り戻す……!
 過去も、未来も……たった一つの幸福も!」

薄ら寒い狂気すらも孕んだその言葉は、果たして誰に向けられたものだったのか。
プレシアのその言葉と共に、再び巨大な振動が室内を襲った。
天井からは石片が絶え間なく降り注ぎ、床には無数の亀裂が走り脱落していく。
それは、プレシアの周囲も例外ではなかった。
不意にプレシアの身体が、糸の切れた操り人形のようにグラリと傾いた。
彼女の傍にあったガラスの円筒もまた同じく、その身を傾ける。
耳障りな破砕音と共にプレシアの足元の床が完全に崩落し、彼女が、そして彼女の娘を収めた無機質な容器が、
無慈悲にも虚数空間の真上へと投げ出された。


143 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:35:21 ID:fWpMyzoZ
「母さん!!」

反射的に駆け出そうとするフェイトを、アルフが後ろから押し倒すようにして止める。
直後にフェイトの顔のすぐ傍に、人の頭ほどもありそうな岩が、鈍い音を立てて落下した。
アルフが止めていなければ今頃岩の下敷きになっていたであろうが、今の彼女はそんなことを気に留めていられるような状態ではなかった。
うつ伏せになったフェイトの視界から、まるでスローモーションのようにプレシアの姿が消えてゆき――

――轟音。

天井でも、床でも無い。
彼女らの左側――ほど離れた壁面から、強烈な魔力光と砂煙と共に、恐ろしいまでの破壊音が発せられた。

『ん待て待て待て待て待てェェェェェ!!!』

煙の中から放たれる五つの声。
そして同時に飛び出す、五つの人影。
疾風の如き速さで、フェイトの眼前に白い、大きな塊が躍り出た。
それが白の着物を纏った人間だということに気付くのに、そう時間はかからなかった。



行く手を遮る目障りな壁を粉砕し、銀時は疾走した。
霰のように降り注ぐ石片など意に介さず、目の前でぽっかりと口を開ける床へと走る。
跳躍。
一切の迷いも逡巡も無く、銀時は虚数空間へとダイブした。
手を伸ばす。確かな感触。
彼がプレシアの手を確実に掴んだのを確認すると同時に、宙に浮いていた彼の身体が、重力に逆らい制止する。
腕の中を電気が通ったような痛みが走り、脳が揺さぶられる感覚を覚える。
手のひらから、生暖かい感触。
次いで、焼けるような痛覚。
どうやら手を掴んだ際に、一緒に鋭利な石片までも掴んでしまったようだ。
握り締められた手の中から赤い液体が滴り、闇に飲まれていく。

「気張れみんなァァァ! みんなの双肩にゃ主役の命かかってんだぞォォォ!!」

上半身を虚数空間の上へ投げ出し、うつ伏せで銀時の両足を掴んだ新八が叫ぶ。

「イダダダダダ! 伸びる! 身長伸びるってコレ!!」

その新八の両足を掴み、歯を食いしばりながらユーノは言う。

「無理無理無理ぃ! もげる裂ける千切れるぅ!!」

さらにそのユーノの両足を掴んだなのはが、涙目になりながら情け無い声を上げる。

「ふんごォォォォォ!!」

そして最後列。
なのはの両足を掴んだ神楽が、決死の表情でその場に踏みとどまっていた。




144 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 02:36:35 ID:fgYqF5gt
支援

145 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:36:36 ID:fWpMyzoZ
「アリシア……!」

自分の腕を掴んだ人物すら見ようとせず、プレシアはまるでこの世の終わりを目の当たりにしたかのような表情を浮かべる。
眼下に広がる暗黒の空間は、全てを飲みつくそうとしていた。
庭園の一部であった瓦礫を。
道を開くための希望であった、ジュエルシードを。
そして――愛しい娘を。
呆然としつつ虚数空間に飲まれてゆくガラスの円筒を目で追い、不意にプレシアは激昂する。

「離しなさい!! 私の……私のアリシアが!」

その時になって、ようやくプレシアは男――銀時の顔を見た。
その表情には怒りも哀れみも無い。
ただ、何かに必死になっている。そういう顔だった。

「いつまでも未練引きずってんじゃねーよババァ!
 本当にテメェのガキのこと想ってんならなァ、墓前に花の一つでも添えてやりやがれ!」

手と手の間から滴る血が、その叫びと共に闇へ堕ちる。
何も知らない第三者の、心無いその言葉がプレシアの胸を刺す。

「黙りなさい! あなたに何が分かるっていうの!? アリシアの……私の気持ちが!」

「知らねーよ、ンなもん!」

しかし銀時は言葉を繋ぐ。
彼女の言う通りだ。
自分は彼女の歩んできた道など、欠片も知らない。
知るつもりもない。

「分からねーよ……身も心もボロボロになっても、それでもテメェの事を想ってくれるガキがいて……一体何が不満だってんだ!」

ただ、自分の芯を通すだけだ。
目の前で堕ちるものを拾い上げるだけだ。
今、必死こいて引っ張り上げてるバカ親を、じゃない。
すぐ隣で、バカみたいにうろたえている気の弱いガキを、拾い上げてやるだけだ。

「愛してやれとは言わねェ。好いてやれとも言わねェ。けどなァ!!
 せめて傍に置いて……テメェのクソマズいメシでも食わせてやりやがれ!」

親子というのが、どういうものなのかは分からない。
世話になってる一家の姿を見ても、どうにも実感も沸かなかった。
ただ、「ああ、いつも幸せそうだな」と。
そう思うだけだった。
だからこそ。
だからこそ一つだけ、確信を持って言えることがある。

「……どんな馬鹿野郎でもなァ! 子供にゃ親が必要なんだよ!!」

――そうだろう?
――親子ってのは……家族ってのは、一緒にいるだけで、幸せになれるモンなんだろう?


146 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:37:47 ID:fWpMyzoZ
「……母さん……!」

プレシアの前に、しかし決して手の届かぬ所に、小さな手が差し伸べられる。
銀時のそれよりもずっと儚く、優しく、穢れを知らない幼き手。
肩を入れ込むように、目一杯フェイトが手を伸ばす。
一瞬の沈黙。
まるで時を止められたかのように、誰一人として動こうとすらしない。
実際には片手で数え切れるほどの秒数しか経っていなかったが、その時間はフェイト達には永遠のように永く感じられた。
その永き時を破ったのは――誰が予想できたであろうか、プレシアであった。
彼女の意思を推し量ることは出来ない。
だが確かに、彼女は空いた手を虚空へと伸ばし始めていた。



異変を起こったのは、まさにその時であった。
ただでさえ暗かった空間が、一際強く闇に包まれた。
背筋が凍るような悪寒が走り、なのはは肩越しに天井を見やる。

「え……!?」

思わず目を見開き、そのままの状態でなのははその場に凍りつく。
素っ頓狂な声を上げた彼女の視界に入っていたものは、こちら目掛けて一直線に落下を始める、巨大な瓦礫だった。

「ウソぉぉぉ!? 漫画みたいなタイミングだ!!」

顔を青ざめさせ、新八が叫ぶ。
だが両手が塞がり、両足を掴まれている新八には、抗うことは出来ない。
いや、例え動けたとしても、例え強力な魔法が使えたとしても、自体は決して好転しない。
そう思わせるほどにまで状況は差し迫っていた。
だがしかし、だからといって誰が諦めることが出来ようか。
破片ごと掴み、血塗れになった手で、銀時はなおもプレシアを引き上げようと渾身の力を込める。
だが如何せん片手だ。
僅かばかりプレシアの身体が持ち上がったものの、それでも完全に引っ張り上げるには至らない。
その間にも、数珠繋ぎになったな銀時達全員を押しつぶせるほどの質量を持った瓦礫は、見る見るうちに彼女らのすぐ背後まで迫り――
不意に、目の前が淡く輝いた。
プレシアが虚空に伸ばした手のひらに、光が、魔力が収束し、円状の発射台を構築する。
熟練の魔導師が為せる、鮮やかな手際だった。
そして構築が完了すると同時に、一切の詠唱も無く円の中心から光の矢が放たれた。
矢はフェイトの頭を掠め、彼女の背後から迫る瓦礫に突き刺さる。
爆発、そして空間そのものを揺るがすほどの振動。
バラバラに砕け散った破片が雨霰のように降り注ぎ、銀時の身体を、肩を、腕を容赦なく叩く。
破片がぶつかる。手に込められていた力が緩む。
振動が襲う。掴んだ手が滑る。
血が滴る。滑り出す手に、拍車をかける。
駄目押しとも思える、一際大きな衝撃。

ついに。
銀時の手から。
痩せこけたその手が。
するりと、抜け落ちた。

「しまっ……!」

急ぎ再び手を伸ばすが、その手が掴むものは虚空のみ。
覆水盆に返らずの言葉通り、一度取り零したものが返って来る事は、決して無い。
力なく宙に横たわるプレシアの顔には、どこか安らぎすら感じさせる表情が浮かんでいた。
銀時のそれとは、全く対照的な表情だった。


147 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:38:55 ID:fWpMyzoZ
「私も、すぐに行くわ……待っていてね、アリシア……」

永久の闇に飲まれるその直前。
銀時が、フェイトが最後に見たプレシアは――

「今度はもう、離れないから……」

――ほんの僅かに、笑っていた気がした。



『……お願い、みんな! もう時間がないの! 脱出急いで!!』

呆然と目の前の闇を見つめるフェイトの耳に入ってきたのは、エイミィの悲痛な叫びだった。
その言葉も音として耳に入ってきただけに過ぎず、それを言葉として理解できるほど、彼女は冷静ではなかった。
今目の前で起きたことが、未だに信じられなかった。
信じたくなかった。
やっと……やっと、正面から向かい合うことが出来たというのに。
まだ何も始まっていなかったというのに。
始まりは、これからだというのに。
だというのに、これが運命なのだとしたら、あんまりな話じゃないか。
胸に穴が空いたかのような空しい虚無感と脱力感に苛まれ、思考も、挙動も、何もかもが動かなくなる。

「…………かよ……」

不意に聞こえてきた、虫が鳴くような小さな囁きにより、浮ついた意識が引き戻される。
声の主は、震えていた。
その震えは怒りか、はたまた哀しみか。
白銀の髪に隠されたその表情は、フェイトのいる位置からでは窺うことは出来なかった。

「……俺ァまた……取り零しちまったってのかよ……」

崩落の鼓動が響く中、銀時のその呟きを聞いていたのは、フェイトただ一人であった。



『……庭園崩壊終了、全て虚数空間に吸収されました』

『次元震停止します。断層発生はありません』

『第三戦速で離脱、巡航航路に戻ります』

本来の居場所である艦長席への帰還を果たし、クルー達の報告に耳を傾けながらリンディは正面のモニターを見やる。
先程まで圧倒的な存在感を示していた禍々しい建造物は、影も形も、何もかもをその空間から消し去られていた。
後に残っていたのは、ただ大きく口を開ける巨大な闇のみ。
今の今まであの場所に自分達が居たことを考えると、背筋が薄ら寒くなってくる。
だが、なんにせよこれで全て終わったのだ。
自分と同じく帰還を果たした大事な仲間の、大事な家族の身を案じながら、リンディはようやく深いため息をついた。



アースラ艦内の医務室は、現場帰りの局員達で大盛況だった。
傷だらけになった局員がそこかしこに座り込み、一部の治癒魔法が使える局員は、忙しなく部屋のあちらこちらを
走り回り、仲間の怪我の治療に奔走している。
そんな部屋の片隅に、一般局員とは明らかに趣の違う服を着た集団が居た。

「……あれ、フェイトちゃんは?」

集団の中の一人――ベッドに腰掛け、ユーノに捻った足の治療をしてもらっているなのはが、部屋を見渡しながら何気無しに呟く。


148 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:40:02 ID:fWpMyzoZ
「アルフと一緒に護送室だ。彼女はこの事件の重要参考人だからね。申し訳ないが、しばらく隔離になる」

こちらを向きながらそう言うクロノの額には、真っ白な包帯がぐるぐると巻かれており、
こめかみの辺りを巨大なリボン結びで止められていた。
先程まで彼が向いていた方向では、エイミィが満足げな表情を浮かべていた。
どうやらこのチャーミングなワンポイントは、彼女の仕業らしい。
痛々しさもシリアスさも半減である。

「そんな……あいたたた」

「なのは、じっとして」

立ち上がり不服を唱えようとするなのはだったが、不意に足首を襲った軽い痛みに、その場に座り込んだ。
ユーノにたしなめられ、なのははばつが悪そうな顔で俯く。

「今回の事件は、一歩間違えば次元断層さえ引き起こしかねなかった重大な事件なんだ。
 時空管理局としては、関係者の処遇については慎重にならざるを得ない……それは判るね?」

毅然とした態度でそう言い放つクロノだが、なのははやはり何処か不服そうな顔をし、隣へと視線を移す。
まず最初に視界に入ったのは、未だ乾ききらぬ血の跡が付いた指の先。
僅かに顔をゆがめ、しかしなのはは少しずつ視線を上へと向けてゆく。
だが、目的のものが目に入る前にそれは動き出す。

「あ、ちょっと銀さん! まだ治療終わってないですよ!」

突然部屋の入り口へと向かいだした銀時に対し、新八が救急箱から消毒液と包帯を取り出しながら言う。
だが彼の言葉が届かなかったのか、銀時は無言のまま扉を開け、通路へと出て行く。
その姿をしばらく呆然と眺めていたなのはだが、不意にはっとした様子で立ち上がり、
へこへこと痛む左足を引きずりながら銀時の後を追い始めた。
背後からユーノの声が聞こえてくるが、そんなことは気にも留めず、彼女もまた医務室を後にした。

「……あれ? そういえば、神楽ちゃんは?」

なんの突拍子も無く、エイミィが辺りを見回しながら尋ねる。
今の今まで気付かなかったが、そういえば神楽の姿が見えない。
よくよく考えれば、医務室に入ってきた時には既に彼女は姿を消していたことを思い出す。

「ああ、神楽ちゃんなら『寝れば治る』って言って、自分の部屋に戻っていきましたよ。
 一応検査してもらった方がいいって言ったんですけどね……」

手にした包帯と消毒液をユーノに渡しながら、新八は応える。
だがその言葉とは裏腹に、彼の顔には心配よりもむしろ「ああ、やっぱりか」という感じの表情が浮かんでいた。

「まったく……ホントに意地っ張りなんだから……」

苦笑を漏らしながら呟いた新八の言葉に、ユーノは首を傾げるしかなかった。



無駄に広い通路の壁にもたれかかり、銀時はぼぉっと向かいの窓を見つめる。
ガラスに映る自身の姿と、視界一杯に広がる次元の海が重なり、不鮮明な像が映し出される。
何一つ音の発せられぬ無音の空間で、銀時はぶっきらぼうに頭を掻いた。

「……銀さんっ!」


149 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:41:55 ID:SRw93Fy8
その静寂を破るように、銀時に声がかけられる。
首を傾けた先には、足を引きずりながら壁伝いにこちらへ向かってくるなのはの姿。
しかし、その姿を認めても銀時はなおも動こうとはしなかった。
顔の向きを直し、ただただ真正面を見つめるだけだ。
なのはは苦労しながらもそんな彼の傍へ歩み寄り、そして寄り添う。
きっと、責任を感じている。
人一人を目の前で死なせてしまったことに、負い目を感じている。
そう考え、何かしら声をかけようとここまでやってきたのだが、いざ本人を目の前にしてみると上手く言葉が出てこない。
口をもごもごさせながら「あの……」だの「えっと……」だの、言葉にならない声を出していると、

「……なのはよォ……」

不意に、銀時が尋ねる。
なのはは俯き、押し黙ったまま彼の次の言葉を待った。

「……お前……今、幸せか?」

「……え……?」

突拍子も無い問いかけに、なのはは素っ頓狂な声を上げる。
質問の意図を理解できずに、彼女はただ呆けたように口を開け、目をぱちくりさせながら銀時の顔を見た。
ぶっきらぼうに頭を掻く銀時の表情は、どこかばつが悪そうだった。

「……銀さんは……幸せじゃ、ないんですか……?」

ようやく喉の奥から搾り出せたのは、そんな言葉だった。
頭を掻く手を止め、銀時はしばらく考え込むように天井を見上げて、

「……さぁな……俺には分からねーや」

そう言い残し、なのはに背を向けた。
コツコツと靴が床を叩く音がし、銀時の背中が徐々に小さくなってゆく。
なのはにはその背中が、酷く煤けて見えた。
放っておけば、風に吹かれて消え入ってしまいそうな、そんな寂しい背中だった。
思わず、なのはは声を張り上げた。

「……銀さん! あの……なんて言ったらいいか分からないですけど、私……!」

しかしその言葉を遮るように銀時は右手を挙げ、

「ガキに心配されるほど、ヤワなタマは持ち合わせちゃいねーよ。
 ……俺のこたァいいから、アイツのところ行ってやりな」

その言葉を残し、彼は通路の角へと姿を消していった。
彼が残した言葉には悲しみも憤りも無い。
ただ、諦めに似た何かが込められているようだった。
何故だろうか。
今までずっと身近だった存在が、傍に居るのが当たり前だと思っていた存在が、
いつの間にか手の届かない遠くまで行ってしまったかのような、そんな言い知れぬ不安感を、なのはは感じていた。




150 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:43:11 ID:SRw93Fy8
床も壁も、そして天井も白一色に塗装された部屋の中に、わずかな衣擦れの音が響く。
扉の上部の格子から差し込む光が、音の主達をぼんやりと照らし出す。
護送室と名付けられたその部屋は、就寝のための簡素なベッド以外には何一つ置かれていない殺風景な部屋だった。
その部屋の片隅に鎮まる影が二つ。
壁にもたれかかり、俯いたままうずくまるフェイトと、彼女に寄り添うアルフであった。
全てが終わりこの場所へ連れてこられたその時から、二人は身じろぎ一つせずその場にただ座り込んでいた。
――そう、全て、終わった。
――何も、取り戻すことはできなかった。
まるで魂を抜かれてしまったかのように、まるで心を失ってしまったかのように、フェイトはただ押し黙る。
そんな彼女らの耳に、二つの足音が飛び込んでくる。
一つは、コツコツと無機質な床を踏む音。
もう一つは、何か柔らかいものが地面を踏みしめるような音。
その音達は次第に護送室へと近づいてゆき、そしてその扉の前と思わしき場所で姿を消す。
何かが布と擦れる音。
そして扉に、何かが当たる音。
残された沈黙の中、フェイトは重たげに首をもたげ、扉を見やる。
差し込む光の量が、明らかに減っていた。
扉の上部の格子に視線を向けると、何か白い毛むくじゃらなモノが見えた。
今まで機能を停止していた思考がようやく活動を開始する。
一体あれは何なんだろうか?
不審に思い、じっと格子の先を見つめる。

「……寝苦しかったから、風通しの良いトコ探してただけアル」

不意に扉の向こうから聞こえてきたその声に、フェイトは聞き覚えがあった。
あの妙に色めかしい服を着た、赤毛の女の子の声だ。
ということは、格子の向こうに見える毛むくじゃらは、彼女がいつも連れ添っているあの巨大犬か。

「…………」

再び訪れる沈黙。
それがフェイトに重圧となって覆いかぶさる。
思えば彼女に対しても、随分と酷いことをしてきてしまった。
目の前で彼女の大事な友人を傷つけ、自分の不注意のせいで、彼女の大切な人を傷付けた。
そんな自分に、彼女と言葉を交わす資格などあろうか。
アルフもまたフェイトと同じく、床を見つめたままじっと黙りこくる。

「……今でもまだ、マミーのこと好きアルか」

扉の向こうから聞こえてくる声に、しかしフェイトは押し黙る。
重い空気と、聞こえてくる自身の呼吸音。
突然、扉が爆発でも受けたかのような振動と共に膨らんだ。
いや、向こうから見れば『凹んだ』というのが正しいだろう。

「……質問に応えろってんだヨ。クソガキ」

明らかに不機嫌なその物言いに、フェイトは思わず肩を竦める。
だが少しの間の後、フェイトは口を開いた。
相手の態度に臆したわけではない。
ただ、自分の意思を、想いを確かめるように、小さな手を胸に当て、フェイトは頷く。

「……うん……」

「だったら、いつまでもメソメソしてんじゃねーヨ」

まるで初めから答えなど分かっていたかのように、間髪入れずに神楽が返す。


151 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 02:43:58 ID:He5SULji
支援

152 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:44:25 ID:SRw93Fy8
「本当にマミーのこと好きならなァ。笑って、泣いて、怒って……あの世で『幸せでした』って胸張って言える生き方、してみろヨ。
 それがマミーに出来る、一番の手向けだろーが」

いつも通りのつっけんどんな言い方。
しかし、どこか優しさも孕んだ言い方。

「でないと……誰も、報われないアル」

最後に付け足すようにぽつりと呟かれたその言葉は、とても寂しく聞こえた。
――誰も、報われない。
……そうだ。
いつも傍に居てくれた相棒も。
自分の味方だとはっきり言ってくれた、あの眼鏡の男の人も。
今こうして扉の向こうで、自分の身を案じてくれている女の子も。
そっと自分の背中を押してくれた、あの男の人も。
……初めて、友達になりたいと言ってくれた、あの女の子も。
一体彼女らは、誰のために、何のために戦っていたのか。
……考えるまでも無い。自分のためだ。
だというのに、自分は。
やっと殻を破って、やっと一人で立つことが出来たというのに、また自分の殻に引き篭もろうとしている。
そんなことをして、一体どこの誰が喜ぶというのか。
一体誰が報われるというのか。
自分も、彼女達も……そして、母も。
母は、報われたのだろうか。
最期の最期でようやく笑顔を見せた、しかし唯一の幸せすらも掴み損ねた母は。
こればかりは、当人で無い限り分からない。
でも……。
ここで自分が折れてしまったら、母も、誰も彼も報われないのではないかと、フェイトは漠然と思う。

「……あの……!」

意を決したように、フェイトは扉に向かって声を投げかける。
返ってきたのはあろう事か、健やかな寝息。
寝床を探していた、というのは全くの冗談ではなかったらしい。
思わず拍子抜けしてガクリと肩を落とすフェイトの耳に、再び客人の来訪を知らせる音が飛び込む。
先程神楽がやってきた時と同じ、コツコツと床を叩くような音。
神楽のときと違い、不規則なリズムを刻みながらこちらへ近づいてきたそれは、扉の前の辺りまでやってきたところで動きを止め、

「……うわ……派手にやったね、神楽ちゃん……」

神楽が変形させた扉を見たのか、呆れとも驚愕とも取れる声を上げた。
声の主は、忘れるはずも無い。
一緒に戦った、あの白い魔導師の女の子だ。
女の子の声はそこで途切れ、代わりにまた神楽の寝息が格子から入り込む。
少しの間を置いて、コン、と何かがぶつかる音が、扉の下から響いた。

「……私も、ここで寝ちゃっていいかな……?」

その問いかけが神楽に対してのものではないということは、すぐに理解できた。
寝ている人間に問いかけをすることなど、そうそう無いだろう。
だからこそフェイトは、その問いを自分に対してのものだと受け取り、そしてすぐに返事を返した。

「……うん……」

それっきりフェイトも、扉の向こうのなのはも押し黙る。
沈黙の中、微かに聞こえる少女の寝息が、フェイトの耳に心地よく響いていた。




153 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:45:40 ID:SRw93Fy8
『日は流れて三日後。
 ようやく管理局での仕事を終え、地球へ戻れる日がやってきた。
 一番の不安要素であったフェイトちゃんの今後の処遇だが、本来なら数百年以上の幽閉という重罪だそうだ。
 が、状況が特殊であり、彼女自身が自らの意思で犯罪に加担していなかった事もはっきりしているため、
 無罪……とまでは行かなくとも、情状酌量の余地はあるそうだ。
 その辺はクロノくんが何とかしてくれるみたいなので、まあ、ひとまずは安心である。
 それにしても気になるのは、フェイトちゃんのお母さんが目指していたという、アルハザードという土地のことだ。
 遠い昔、次元の狭間に落ちて滅んだと言われている土地。
 時間と空間を遡り、過去さえ書き換える事が出来る秘術。
 そして失われた命をもう一度蘇らせる事が可能な秘術が眠る、幻の都。
 果たして、本当にそんなものがあるのだろうか?
 そんなおとぎ話に出てくるような土地が、本当に存在していたのだろうか?
 真相は、何も分からない。
 でも、そんな不確かな伝承にしか頼れなかった、いや、頼らざるを得なかったフェイトちゃんのお母さんのことを思うと、
 少しだけ、胸の奥が刺されるように痛む。
 ……だが、あれだけの人物が自分の命を賭してまで探そうとした途。
 もしかしたら、彼女は既にアルハザードへの途を――』

「オイ、何やってんだ新八」

「どわっ!? ぎ、銀さん!?」

転送ポートの前で手記を書き連ねていた新八は、突然背後から声をかけられ、大慌てで手帳を胸の前で抱えた。
思春期真っ盛りの青年としては、やはり秘密の日記帳を見られるのは恥ずかしいのだろう。
だがそんな新八の姿を見て、銀時と彼の傍にいた神楽の悪戯心に火がついてしまったようだ。
二人で新八の前後に立ち、彼の手から手帳を引っ手繰ろうとする。
銀時達の魔の手から必死に逃げ回る新八を見て思わず苦笑を漏らすなのはと、彼女の肩に乗って、同じように苦笑するフェレットが一匹。
そう、ユーノだ。
彼の故郷であるミッドチルダ方面は、先の庭園での次元震により航路が不安定になり、復旧までにかかる時間が数ヶ月から半年と見込まれていた。
別段急いで帰る必要も無いのだが、かといっていつまでも管理局の艦に世話になるのも気が引ける。
どうしたもんかと悩んでいたところに、なのはが「これまで通り、うちに居ればいい」と持ちかけたのだ。
もちろんユーノ当人は、最初はやんわりと断ろうとした。
というより、万事屋の三人が猛烈に反対してきたので、迂闊に首を縦に振ることが出来なかった。
しかしそこは見た目よりも頑固ななのは。
およそ一時間に及ぶ口論の末、遂にユーノの高町家への居住権を獲得したのであった。
ちなみに、口論が終わる頃にはユーノ自身の意見は完全にスルーされていたとか。

「それじゃ、今回は本当にありがとう」

「協力に感謝する。……フェイトの処遇は決まり次第連絡する。
 大丈夫さ、決して悪いようにはしない」

名残惜しむリンディとクロノに、しかしなのはは笑顔を作って返す。
短い間とはいえ、一緒に戦ってきた仲間。
今生の別れでは無いと分かっていても、やはり寂しいものがある。

「……次に会った時は、その時こそ決着をつけましょう。銀時さん」

「フン。そん時ゃ、一週間前からメシ抜いてくるこったな。ま、それでも俺が勝つけど」

「目に団子入っても火傷しないように鍛えとけヨ、クロ助」

「二度とやるか! あんなこと!」


154 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:47:21 ID:SRw93Fy8
その寂しさを吹き飛ばすように、派手に火花を散らしあう甘味王達。
最後の最後までこの騒ぎか。
エイミィと新八が互いに顔を合わせ、呆れ果てたように肩を竦める。

「……じゃ、そろそろいいかな?」

エイミィのその一言で、途端に場が静まり返る。
とうとう、本当にお別れの時だ。
少しだけ悲しげな表情をしながら頷き、なのははユーノと共に転送ポートへと向かう。
銀時達も後に続き、四人と二匹が白銀色の巨大な円形魔法陣の上へと乗る。
装置の傍へ据え付けられたコンソールをエイミィが叩き、なのは達の身体が淡い光へと包まれ、

「……またね! リンディさん! クロノくん! エイミィさん!」

なのはのその声と共に、彼女らの包んでいた光が弾けるように掻き消えた。
後に残された虚空を眺め、エイミィはそっと呟く。

「……そういえば報酬の振込先、銀時さんに聞いてましたっけ?
 というか……ちゃんと日本円で支払えるんですか?」

何故か固まる我らが艦長。
きっかり三秒の沈黙の後、リンディは笑いながら、

「まあまあ、ちょっとした経費削減だと思って♪」

そう言って、足取り軽やかに踵を返した。
そんなお茶目な艦長様を、ジト目で見つめるクロノとエイミィ。
ホント大丈夫なんだろうか、この艦は。
なんとも表現しがたい不安に駆られていると、鼻歌交じりで転送ポートを後にするリンディが突然足を止め
――彼女にしては珍しく――女性的な笑顔を浮かべ、クロノ達へと向き直った。

「それじゃ……サプライズイベントの準備でもしましょうか」



朝焼けの眩しい臨海公園。
初めてクロノ達と出会ったその場所に、彼女らは佇んでいた。
あまりにもあっけなく本来の日常へ放り出され、むしろ今目の前に広がる光景こそ夢なのではないかという錯覚すら感じる。
しかし、打ち寄せる波の音、風に揺れる木の葉の音、遠くから流れる電車の喧騒が、これは紛れも無い現実だと、合唱を奏でていた。

「……帰ろっか、みんな」

呟き、なのはは歩みだす。
そしてそれに連なるように、複数の足音が鳴り出す。
枯れ草と砂が擦りあうような、情緒ある草履の足音……新八。
擦りあうというより、むしろ叩くと言った方が正しいブーツの足音……銀時。
ペタペタと、何か柔らかい物が地面を踏みしめる音……神楽を背中に乗せた定春。
そして、あと二つ。
不意になのはが立ち止まる。
続いていた足音も一緒に止まる。
僅かな疑念と、そして期待を抱きながら、なのははゆっくりと後ろを振り向いた。

「……あ……」

きっとその時の自分の表情はきっと、驚きよりもむしろ嬉しさに溢れていただろうと、なのはは思う。
視線の先、先程まで自分達が居たその場所に、彼女は居た。
はにかみながらこちらを見る、美しい金髪を二つ括りにした少女と、その傍に佇む赤毛の獣人の女性。


155 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:48:58 ID:SRw93Fy8
「……しばらく、会えなくなるから……今のうちにお話してきなさいって、提督が……」

金髪の少女――フェイトが、恥ずかしそうに、どこか嬉しそうにそう言う。
そのまま訪れる沈黙。
どちらからも言葉を発せぬまま、少しずつ時間は過ぎてゆく。

「……ま、若いモン同士でゆっくりしていきな」

最初に沈黙を破ったのは銀時であった。
彼はそう言いってフェイトに背を向け、新八と神楽をいざない、ちゃっちゃとその場を離れる。
引きとめようと声をかけるなのはだが、彼女の声など馬耳東風といわんばかりの態度で、
銀時は公園の入り口付近のベンチにどっかりと腰を据えた。
いつも何にも興味無さそうな顔をして、その実、どこかでこっそり見守っている。
ただ単に恥ずかしいだけなのだ、彼は。

(ホント、素直じゃないんだから)

なのはは苦笑を漏らし、肩を竦める。

「それじゃ、僕らも向こうにいたほうがいいかもね」

「ん……そだね」

なのはの肩から地面へと飛び乗り、ユーノもまたアルフと一緒にベンチの方へと向かい始める。

「アルフ……?」

「ま、後は若いモン同士ってことで〜」

ひらひらと手を振るアルフの姿は、見る見るうちに小さくなっていく。
後に残された二人の間に、再び沈黙が訪れる。
恥ずかしさと気まずさが入り混じり、なんとも形容しがたい空気が辺りを包む。

「なんだかいっぱい話したいことあったのに……変だね、フェイトちゃんの顔見たら、忘れちゃった……」

「私は……うん、そうだね。私も、上手く言葉にできない」

あはは、と困ったような笑みなのはは浮かべ、フェイトは恥ずかしそうに俯き、そして呟く。
重苦しかった空気が、少しだけ薄れた気がした。
徐々にだが、なのはの笑みからも困惑の色が薄れてくる。
が、しかし。
一度顔を上げ、なのはの顔を見たフェイトは、不意に悲しげな表情を見せ、そして再び俯く。

「……あの時は……ごめんね……」

「え……?」

「君が、『友達になりたい』って言ってくれた、あの時……」

――友達なんて、いらない。
はっきりとそう言ってしまったあの時の事を思い浮かべ、辛そうにフェイトは押し黙る。
なのははほんの少しだけ逡巡し、

「……今でも、あの時と同じ?」

その問いに、フェイトは首を横に振って答える。


156 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:50:17 ID:peVQ5B51
「今は……私にできるなら、私でいいならって……そう思ってる。
 だけど私、どうしていいか分からない……だから、教えて欲しいんだ……どうしたら『友達』になれるのか」

「……簡単だよ。友達になるの、すごく簡単!」

嬉しそうにフェイトの手を取り、なのははそっと語りかける。

「……名前を呼んで。はじめはそれだけでいいの。
 君とかあなたとか、そういうのじゃなくて……ちゃんと相手の目を見て、はっきり相手の名前を呼ぶの」

満面の笑顔。
眩しくて、優しくて、どこか心地いいお日様のような笑顔が、フェイトの目の前に広がっていた。
その暖かい笑顔に、どこか懐かしさを感じる。
――ああ、そうか。
"彼"が記憶喪失になった時。
その"彼"が、彼女達の元に帰って来た時に見せた、あの笑顔。
ずっと憧れていた。護りたいと思っていた。
いつか自分も、心の底から浮かべてみたいと思っていた、あの笑顔。
今自分に向けられている笑顔は、まさしくそれなんだ。

「私、高町なのは……なのはだよ!」

そう言う彼女の表情は、純で、何一つの澱みもなくて。
見ているこちらの心まで、洗われていくようだった。
フェイトは少しだけ戸惑いながら、小さく口を動かし、

「なの、は……」

「うん、そう!」

おっかなびっくりに、一言一言を噛み締めるように言葉を紡ぐ。
何度も何度も、その言葉を、名前を呼ぶ。

「……なのは……ありがとう……」

正面から向き合ってくれた。
全てを受け止めてくれた。
ずっと共に在りたいと思ったその少女の手を、優しく握り返す。

「君の手は、暖かいね……なのは……」

愛しむ様に、なのははそっとフェイトを抱きしめた。
ようやく掴んだ"絆"の喜びを、共に分かち合うかの様になのはは涙を流す。
いつだったか、似たような光景を目にしたことを思い出す。
でも、その時の状況は全く逆で。
その時の彼女が流していたものは、紛れも泣く悲しみによるものだった。

「……少し、分かったことがある。
 友達が泣いていると、同じように自分も悲しいんだ」

ようやく、あの女の子の言っていたことが理解できた気がした。
友達が悲しむところを見ることは、自らが友達に悲しい思いをさせてしまうことは、
この世界中の何よりも、悲しく辛いことなのだと。
胸の中で小さく嗚咽を漏らすなのはを、フェイトはそっと抱きしめる。

「ありがとう、なのは……今は離れてしまうけど、きっとまた会える。
 そうしたら……また、君の名前を呼んでもいい……?」


157 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 02:50:31 ID:He5SULji
支援

158 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:51:54 ID:peVQ5B51
なのはは頷く。何度も、何度も。
裾を握る手から、離れたくない、一緒に居たいという思いが伝わってくる。
そのことが嬉しかった。
フェイトは、ふと頬を緩める。

「会いたくなったら、きっと名前を呼ぶ。
 だから、なのはも私を呼んで。なのはに困ったことがあったら、今度はきっと、私がなのはを助けるから」

朝焼けに包まれ微笑むフェイトの姿は、優しくて、神秘的で、
今までの彼女よりも、ずっと美しく映えていた。



両脇から聞こえてきた鼻をすする音に、銀時は思わず辟易した。
もうなんというか、情緒の欠片も無い。
完全に雰囲気ぶち壊しである。

「汚ねーよお前ら。とりあえず拭け」

「ぐず……スンマセン。こーいうの弱いんで……」

「アンタんところの子はさ……なのはは、ほんとにいい子だね。
 フェイトが……あんなに笑ってるよ……」

銀時が差し出したポケットティッシュを受け取り、新八とアルフは涙でボロボロになった顔を拭く。
半ば呆れた様子でため息をつきながら、銀時は件の二人へと視線を向けた。
別れを惜しむように抱き合い、そして微笑む二人の少女。
まったく、ここまで来るのにどれだけ遠回りをしたことか。
銀時は再びため息をつき、しかし何処か安堵した様子で重い腰を上げ、ベンチから立ち上がった。

「人騒がせなお嬢ちゃんだったな。ったく……」

そうとだけ言い残し、彼は公園の入り口へと向かう。
呼ばれるまでもなく、新八と神楽もそれに付き従う。

「……行っちゃうんですか? 銀時さん」

「フェイトとは……話していかないの?」

銀時の背中に、ユーノとアルフから声がかけられる。
彼らもまた別れを惜しむように、銀時達の背中を見つめていた。

「……言いてーことなら、アイツが全部言ってくれたさ」

銀時は立ち止まり、しかし背を向けたまま呟く。
ほんの少しの逡巡。
銀時は三度ため息をつき、面倒くさそうに頭を掻きながら振り返り、

「それに……」

意味深な笑みを、二人へと投げかけた。

「人を、待たせてるんでな」




159 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:54:07 ID:peVQ5B51
「……以上が、今回の事件の推移です」

薄暗い個室の中に展開されていたホロスクリーンが消え、女性の声が響く。
美しい紫のロングヘアーに、どこかのやり手の秘書官のような出で立ちをした優艶なその女性は、
傍らに立つ白衣の男に手にしたクリップボードを渡す。

「"プロジェクトF"……まさか独力で完成させていたとはね……いやはや、惜しい人物を亡くしたよ」

心底楽しそうにくぐもった笑いを漏らしながら、ボードに挟まれた書類をパラパラと捲っていた男は、
ある一枚の書類を見つけ、興味深げにそれを見つめだした。
少し豪華な履歴書、とでも言うべきだろうか。
紙面の隅々までにびっしりと書き込まれた文字と、左上に貼り付けられた金髪をツーテールにした少女の写真。
そして、その写真の横に書かれた名前。
すなわち……。

――"Fate Testarossa"

「……直ちに回収を?」

女性が問いかける。
だが、男はかぶりを振り、クリップボードを女性に返しながら笑う。

「楽しみは後に取っておくものさ。それに、さすがに"三兎"を追う気にはなれないね」

「畏まりました。続いて、No6とNo10の起動実験の件についてですが……」

たいした感慨も持たず、女性は淡々と報告を続ける。
男は一人、歓喜するように身体を震わせていた。
その胸中に宿るのは野心か、はたまた無限の欲望か。

「"聖王"と"夜天の王"……先に微笑みかけてくれるのは、果たしてどちらだろうね」



さて、ここへ来るのは何週間ぶりだろうか。
普通の人間なら、そうやって感慨に浸るだろう。
しかし彼は普通ではなかった。
見慣れた家。
見慣れた玄関。
肌身離さず持っていた合鍵をドアノブに差込み、勢いよく玄関を開く。

「うーっす。銀さんがやって来たよーっと……」

そんな彼を待ち受けていたのは。

「……この……」

「……あの、ちょっとはやてさん? 一体何を……」

シャマルに抱きかかえられ、俯き肩をワナワナと震わせるはやてであった。
マズい。非常にマズい。
何がマズいのか、と具体的に聞かれると困るが、とにかくこの威圧感は尋常じゃない。
思わず後退る銀時だか、そんな彼にシャマルは無言で接近してくる。
救いを求めるように銀時は後ろを向く。
一緒にいたはずの新八と神楽は、いつのまにやら忽然と姿を消していた。
どうやら逸早く危険を察知して、安全域まで退避したらしい。


160 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:55:36 ID:peVQ5B51
「……こンの……ドアホー!!!」

「ぶふぉ!?」

怒りの叫びと共に、銀時の顔面にはやての鉄拳がめり込んだ。
もう一度言うが、平手ではなくグーパンである。
しかも鼻っ面にだ。
さすがの銀時も、これには倒れざるを得ない。

「ホンマにこの人はもぉー!! 人の気も知らんと、毎度毎度心配ばっかりかけて!!」

「くぎゅ! くぎゅ!! くぎゅ!!!」

だが、はやての怒りは収まらない。
一体何をどうやったのかは知らないが、いつの間にかマウントポジションを取ったはやては、
銀時に仮借ない往復ビンタを叩き込む。
かなりハリのある良い音と共に、銀時の情けない声が玄関先で響く。
その音が十往復ほどした頃だろうか。
不意に銀時の両頬から発せられていた音が消え、あれほど怒り狂っていたはやてが突然鳴りを潜めた。
真っ赤に膨れ上がった頬を押さえ、不審そうに銀時ははやての顔を覗き込む。

「ほんっ……まに、心配したんやから……!!」

ぽたぽたと、顔に、身体に何か暖かい物が落ちてくる。
涙だった。
わなわなと身体を震わせ、搾り出すように声を出すはやての姿に、
銀時は珍しく……本当に珍しく、僅かな罪悪感を覚えた。
ぶっきらぼうに頭を掻き、しかしいつもと変わらぬ無愛想な口調で、

「……悪かったよ。反省してる」

「……ホンマに?」

手の甲で涙を拭いながら、はやてが疑いの眼差しを向けてくる。
それでも銀時は平静を努め、

「ああ」

しかし、銀時が珍しく見せた誠意ははやてには伝わらなかったようだ。
なおもはやては疑いの眼差しを向け、しつこく銀時を問い詰める。

「ホンマに、ホンマ?」

「しつけーな! してるって言ってんだろ!」

ついつい声を荒げて反論してしまう銀時の前に、不意に手が差し出された。
唐突なその行動に銀時は困惑する。

「……何? この手」

「ゴメンなさいで済んだら、警察も真選組もいらへんもん」

目を真っ赤にしながら、ぷぅ、と頬を膨らませたはやては両の手を突き出した格好のまま、
酷く不機嫌な声で小さく呟いた。


161 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:57:32 ID:peVQ5B51
「……お姫様抱っこしてくれたら、許したげる」

突然の意味不明な要求に、銀時は思わずぽかんとした表情をする。
――ありのまま今起こった事を話そう。
――『職場に戻ってきたら雇い主に殴り倒されて逆セクハラをされた』
そんなことを言いたげな表情だった。

「アレってお姫様を抱くからお姫様抱っこって言うんだろーが。
 こんなチビガキ抱き上げてお姫様ってそれなんてギャグ……」

かろうじて……の割にはやたらと流暢に出てきたその言葉は、再びはやてを修羅の戦士へと覚醒させるには
充分な破壊力を有していた。
両手を挙げ、鬼神の如き表情で威嚇をする少女の姿に、実戦経験者は本能的に生命の危機を感じ取った。
割とマジで。

「あ、スンマセン。喜んでさせていただきます」

荒ぶるはやてのポーズにすっかり恐れをなした銀時は、慌てるようにはやてを抱き、立ち上がる。
あまりにも急に軽々と持ち上げられたはやてが、小さく悲鳴を上げて銀時の首に手を回してくる。
首筋にかかる吐息が、妙にくすぐったい。
身動ぎしながら器用に靴を脱ぎ、廊下へとあがる銀時の耳に、何故だか妙な電子音が聞こえてきた。
何事かと居間の入り口に目をやる。

「って、お前ら何やってんのォォォォォ!?」

そこには、それぞれデジタルカメラとインスタントカメラを手に取り、
入り口からひょっこりと顔を出すシャマルとシグナムの姿があった。
一体何をやってるんだこいつらは。
まさか撮ったのか? 撮られたのか? こんなこっ恥ずかしいところを?
リミットブレイクした羞恥心を怒りへと変換した銀時が怒鳴り声を上げる。
が、しかし。
シャマルもシグナムもどこ吹く風といった表情で、

「何って……記念写真ですよ。銀時さんの復活記念」

「たまには、こういうのもいいではないですか。ヴィータ、ザフィーラ、お前達も来い」

あろうことか増援まで呼ぶ始末。
何ですかコレは? 新手のイジメ?
全身全霊を込めて銀時は叫ぶ。
この理不尽な状況を打破するために。


162 :なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 02:58:49 ID:peVQ5B51
「記念じゃねーよこんなん! ほとんど罰ゲームだよ!」

「ヴィータ、早くこっち来るネ! 私の隣空いてるヨ!」

「それじゃ新八さん、シャッターお願いしますね」

「ええ、任せておいてください」

が、銀時の最後の抵抗も徒労に終わってしまったようだ。
いつの間にか帰って来た神楽と新八も加わり、完全ななごやかムードで銀時の言葉など地平線の彼方まで
押しやられてしまった。

「人の話を聞けェェェェェ!!」

「ほら銀さん。ちゃんと前向いて笑わないと」

「笑えるかァァァァァ!!」

いつの間にか用意した三脚にインスタントカメラを載せ笑顔を要求してくる新八を怒鳴りつける。
しかしペースを掴んだ新八は強い。
銀時の言葉など意に介さず、ファインダーの向こうで思い思いのポーズを取る守護騎士に、万事屋に、そしてはやてに言う。

「ほら、みんなも笑って笑って!」

タイマーをセットし、急いで銀時の隣へ。
そんな彼を銀時は一睨み。
どうしてくれようかこのダメガネは。
シャッター下りる瞬間に蹴り飛ばしてやろうか。

「……銀ちゃん」

「あァ?」

悶々とそんなことを考えていた銀時の耳元で、小さく声が聞こえた。
小さく小さく、まさしく蚊の鳴く様な声で銀時を呼び掛けたその少女は、
少しだけ恥ずかしそうに、だが本当に嬉しそうに、溢れんばかりの笑顔を浮かべていた。

「……おかえり!」

163 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 03:02:28 ID:He5SULji
支援

164 :なの魂の人 ◆.ocPz86dpI :2008/07/01(火) 03:03:37 ID:fWpMyzoZ
「ただいま」なんて言いません。ツンデレだから
そういうわけで、ようやく終わりました無印編。
反省点は多々ありますが、今まで長編を完結させたことが無い自分にしては上出来な方かと……
え? まだ完結して無い? サーセンwwww

さて、次回からはいよいよA's編……というわけではなく、
少し無印〜A's間のお話を書いていこうかと考えています
ええ、姐さん達が本格始動するのは、もうちょっと先の話です
ですので、それまで……

ゆっくりしていってね!!!

165 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 03:05:59 ID:NQqzxWYX
最高の魂を
見せていただきましたっ!

166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 03:22:22 ID:E2v1ThZX
おほー、素晴らしかったです。
フェイトに救いがあったかどうかは微妙ですが、彼女も前向きに歩き出したので良かったかなと。
そして銀さん達は家族の元に帰る……のは良いですが無支給で扱き使われたのに気付くのは何時だろうか。

>少し無印〜A's間のお話を書いていこうかと考えています

全時空糖王決定選手権ですね解ります。

167 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 03:26:51 ID:He5SULji
シリアスにいい話やるときの銀魂じゃねーか、完成度たけーなオイ。

GJでした。

168 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 03:34:30 ID:zfMxxeR+
>>平成セブン氏
物語はおもしろいです。
ここからどうなっていくのかとても楽しみなんですが、
投稿する前に読んでチェックしましたか?
いくらなんでも無限車庫はひど過ぎます。

169 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 07:40:29 ID:meD7N8kT
>なの魂氏
待ち望んでいましたGJ!
間の話……ヴォルケン×動乱編とか(ぉ

170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 08:40:49 ID:sXDFK5Ba
────そうだね平成セブン氏。書き込む事は一番大事だ。けどそれとは別に、
書き込む前に自分の誤字を確認する心が────


171 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 09:33:19 ID:f4SLaTzL
なの魂GJ
マジよかったです。
無印とA'sの間の話ですか、たのしみです。

172 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 10:09:05 ID:1XpZ1lsS
>>なの魂氏
やられたよ 大人の鑑賞にもたえうるSSだ、いや大人にこそ見て欲しいSSだ。
銀さんの「落ちるものを拾い上げられなかった」哀しさとか、フェイトのことを案じてあげる神楽とか、素晴らしすぎですよ!
最後の最後で「娘」を助けたプレシアの行動とかね、もうね・・・
後暗躍する博士も今後の期待に火を注ぎます。

そして最後のはやてが、もうはやてが!!
とにかくGJでした。

173 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 14:18:19 ID:uAOZJVjf
>>172にマヨ吹いたw

さておき、なの魂GJです!
号泣新八&アルフに萌えましたw

174 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 18:30:41 ID:iR4LcBwO
>なの魂氏
仕事を終え、帰宅早々、最高のSSを拝見させていただきました!!
銀さんを始め、万事屋メンバーの絡め具合も絶妙でしたし、
以後の伏線には現時点から期待を燃え上がらせてくれましたし、
締めのはやてには完全にやられちゃいましたね。(核爆)

心の底から・・・GJです!!(感涙)

175 :リリカルサンダルフォン ◆ZFYhPjiPGw :2008/07/01(火) 18:37:16 ID:Sj54qAtT
教授「リリカルなのはクロスSSスレよ、私は帰ってきた!」

ということで皆さんお久しぶりです。
『運命の探求』のCパートことエピローグがようやく完成したので、
投下予約をしに参上しましたー。

今夜の十時頃に投下させて貰います。
では、また後ほどー。

176 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 18:43:02 ID:sXDFK5Ba
おかえりなさい
支援w

177 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 18:57:51 ID:eeV69Kht
>>175
旧神になってもどってきたのですね・・・支援

178 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 19:44:39 ID:GnE7MDTl
いあいあしえん

179 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 19:50:09 ID:kWwi6dyY
うほっwww
今週はなの魂氏といい、投下祭りになりそうだなwwwww
投下の際は微力ながら支援させていただきます。

180 :平成セブン ◆SGpMBho4YI :2008/07/01(火) 19:51:18 ID:p+e9I/Q1
>>168
>>170
すみません、改めて確認してみると無限車庫ってなんだよ……無限書庫だろうに
思うも重うになってたし

それと教授を支援!

181 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 21:30:15 ID:bcPfqOVe
>>なの魂
乙&GJ!!言っておくがGOD JOBのほうのGJだ!
さすがですなの魂の人!
救われた、とはあえて言わないけどそれでもフェイトはきっと
前に進んでいこうって思える強さを手に入れることができたと思います。

さあ、次回からA'sまでの間、久々の銀魂パートだぜ!
やっぱこういう日常パートあっての銀魂だよね!
なの魂A'sをこれからも楽しみに待っています!

182 :リリカルサンダルフォン ◆ZFYhPjiPGw :2008/07/01(火) 21:59:52 ID:Sj54qAtT
それではそろそろ投下します。
皆様、ご支援の程、よろしくお願いします!

183 :リリカルサンダルフォン ◆ZFYhPjiPGw :2008/07/01(火) 22:01:04 ID:Sj54qAtT
眩い極光が視界を焼き尽くし、白の中に無という白が産まれ、白い闇として己を灼いてゆく。
暴虐を極めた閃光と砲吼の狭間で、彼女は己が相棒が紡ぐ聖句をただただ呆然と、漠然と聞くことしか出来なかった。
邪神の無限新生とフェイト“達”の必滅魔法。一進一退の拮抗の最中、視界も聴覚も定まらぬ鬩ぎ合いの中でその声を聞いたのは正に奇跡といえるだろう。


『I'm innocent rage/我は憎悪に燃える空より産まれ落ちた涙』
『I'm innocent hatred/我は流れる血を舐める炎に宿りし、正しき怒り』
『I'm innocent sword/我は無垢なる刃』


その声は、バルディッシュであってバルディッシュではない。彼女が知る相棒であって、彼女と共に駆け抜けた戦友ではなかった。
其は、かつての無■螺■の大禍にて神話を紡いだ『彼等』の相棒であり、戦友であり、愛剣だ。
そう……其は■にして■に在らず/■械にして機■に在らず/其はヒトが創りし刃金の■。
刃無き狂える■■を/“輝きを放つ偏方■■四面■”を手に執る■殺しのyyyyyyaaaaaaaaa
【―――未だ早い。知るにはまだまだ早いよ、フェイト・T・ハラオウン。■は未だ■■の■■に■つ事を知るには些か性急過ぎる】
《……“無■の■”による検閲確認=介入思考強制削除申請/申請拒否――第十二〜九十思考神経を未知なるウイルスが侵食=白血球プログラム発動。
無効化。防衛システム強制遮断/汚染開始。
侵され侵され侵され侵され侵され侵され侵され侵され侵され侵され侵され侵され侵され侵され侵され侵され侵され――――喰らわれ、貪られ、奪われる=アンインストール完了》


……思考すらも侭成らない。否、考えている事を虫食いの様に所々剥奪されている。
まるで誰かによって考えることを否定されているようだ。
自分の意思や主張、命令などの自己という次元さえ超えた超次元的な意思によって介入され改竄されてしまう、とでも言えばいいだろうか。
だけど、そんなことはどうでもいい。些細なことだ。なにせこの決死を賭けた鬩ぎ合いの最中、そんなことなど考える暇など与えられて無いのだから。
誰が介入しようが、改竄しようが、剥奪しようが、今の彼女にはそれさえも考えることが出来ない。

否。それは考えてはいけないことだ。それを踏み越えてしまっては、彼女は彼女で無くなってしまう。
人間という脆弱な生命が進む路ではなく、もっと別の法則に編まれたおぞましい邪悪に冒された法則概念が支配する世界への路へ歩みだしてしまう。
彼女は、自分を弁えていた。此処から先は歩んではいけない、聞いてはいけない場所であり、領分だ。
それこそが彼女足りえる、人間足りえる意地であることも、彼女は無意識の内に理解している。
今は、この邪悪を。おぞましき孤島の邪神を。ガタノトーアを殲滅し封滅するのみ。
彼女が持ちうる最大出力の攻撃力を持つプラズマザンバーブレイカーは依然とその威力を劣ろう事を知らず、邪神の新生能力すらも追い付けぬ領域にまで到達している。
満身創痍でありながらこの威力。魔力も底を尽き掛けてなおこの破壊。
先ほど、かの狩人ラバン・シュリュズベリイが展開した『旧神の印』と呼ばれる魔法陣によるバックアップも在り得るのやもしれないが、今はそれすらも思考の外へ追いやった。
踏み込む。あともう少しで宝玉――ロストロギアに手が届く。
ガタノトーアの石化の魔眼の効力も、『旧神の印』の効果によりその大部分を阻害され、もはや彼女の足止めにすらならない。
あと一寸。魔力と魔力の鬩ぎ合いによる圧力は想像を絶し、気を抜くとすぐに全身が吹き飛ばされそうになる。フェイトは気を張り、尚も踏み込んだ。

184 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 22:01:16 ID:49PGfIg0
おっしゃー!待ってました! 支援

185 :リリカルサンダルフォン ◆ZFYhPjiPGw :2008/07/01(火) 22:02:25 ID:Sj54qAtT
―――届いた!
彼女の右手が、遂に邪神の額に埋め込まれている宝玉を掴む。
さぁ、ここからが正念場。意地と意地の張り合いだ。
ロストロギアの封印術式は、もう何年もやり続けている。
今回も大丈夫、冷静に。冷静に。術式を高速で構築し、演算し、改竄し、施錠を掛けるのだ。
そうしてフェイトは封印術式を施す魔法式を構築しようと―――だが、彼女に襲い掛かる運命の波濤は未だ終わりを迎えていなかった。

(な―――これは!?)

そして彼女は知る。知ってしまった。
宝玉に宿る膨大な魔力。それを無限大に、無尽蔵に放出する術式。
あまりに圧倒的な絶壁にも似た、壮大で堅牢で複雑すぎる構成。……それ以前に、この宝玉に凄まう、余りにおぞましい超宇宙的な闇黒の恐怖を。


フェイトの意識は、闇の底に沈んだ。


◆◆◆


暗い星。
昏い星。
悶え狂う慟哭の叫びが木霊し飛び交う闇黒の星。
我々が住む青き星より遥か永劫の彼方に存在しうる、忘れ去られし小さな星。
氷塊に閉ざされ、如何なる生物も存在しえない筈の魔星に蔓延るのは、余りに不定形で考えるのもおぞましき異形異形異形の数々。
魑魅魍魎と表現することすら生温い、そのどれもが彼女の、人間の思考や概念を遥かに超越した異形と怪異。
人の形をした黒き巨人が、氷に覆われた地表に何十匹も蠢いていた。
この星に似合わぬ、まるで綺麗な臓腑の色をした、甲殻類でありながら菌類の様に自らの身体を何体も何十体も何百体にも分裂させて、羽虫の様に飛び回っていた。
腐臭と臓物がぶちまけられた様な香りと共に粘々しい粘膜を滴らせながら分裂していく様は人間の思考能力の限界を超えており、見ただけでも発狂を催しそうになる。
そしてその星の中枢に頓挫せし―――甲殻を纏い、触手を唸らせ、されどもその魔眸を閉じて惰眠を貪る、この魔星を統べる闇黒の魔王。
 
そんな汚泥と邪悪に満ち溢れた異形の星で、彼女――フェイトは途方も無く立ち尽くしていた。
思考は剥奪され、考える事無く、本能のみで彼女は一歩前に進みだす。汚わいに満ち溢れたこの星に何の感情も浮かばせないで、無表情のまま歩み続ける。
何処までも続く地平線。そうかと思いきや突如として巨大な階段が目の前に現れる。先に見えるのは、闇黒よりもなお闇黒。漆黒とも取れる黒き光の世界。
彼女はなんの感慨も沸かず、その階段が続く先へ進み続ける。
 

階段は上に続く/『こっちだよ』
階段は下に続く/『そう、こっちに進むんだ』
階段は右に続く/『まだまだ続くよ、さぁ、こっちに』
階段は左に続く/『だけど辿りつけるかな?』
階段は上斜めに続く/『僕としては辿りつけなくても別に良いんだけどね』
階段は下斜めに続く/『まだまだ君はコレを知るには早過ぎる』
階段は直下に続く/『だけど、“どうしても知りたい”と、意識的にも無意識的にも思っているのなら話は別だ』
階段は弧を描いて続く/『“嫌よ嫌よも好きの内”ってことさ。さぁ、知りたければ此方へ辿りついてみせてくれ』
階段はそれ以外の角度を曲がって続く/『君にはその資格がある。君に宿る輝きは、彼等と同質のモノだからねェ』
階段は三次元の法則では計れない、超次元的な方角へ続く/『さて……では試させてもらうとしようか。君が真に宇宙の中心に立つ役者に相応しいか否かを』


歩み歩み歩み、何処まで進んだことだろうか。
もはやあの暗い昏い、冷たい星の氷野(ひょうや)は何処にも見えず、あるのは何処も此処も闇色だけ。
まるで大海原の様に広大で、まるでガラス瓶の中にギリギリまで詰められたかのように窮屈な場所。

 
「これ、は―――」

186 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 22:04:44 ID:kWwi6dyY
フェイトさんがいきなりピンチだ!!
支援!!!

187 :リリカルサンダルフォン ◆ZFYhPjiPGw :2008/07/01(火) 22:04:51 ID:Sj54qAtT
そんな闇の海の果てで、彼女は見つけた。あの“宝玉”を。
―――否、あの宝玉は角が無かった。純粋な水晶球だった筈だ。
だがあの宝石はなんだ? 幾何学的な模様が施された宝箱の中で、七本の支柱に支えられて姿を魅せる、黒く白く眩く暗い輝きを放つ結晶は。
その結晶の中をよく見れば、まるで血脈の様な線模様が枝分かれして、まるで内臓器の様に脈打っている。
無機物でありながら有機物。否、それ以上の次元で成り立つ超物質である事は明白だった。
そして何よりも、不揃いな切子面が数多く―――総計二十四の面によって成り立つ不可解な形。

それを視覚したと同時に、その奇怪な宝箱の外側に、闇よりも深い闇黒が人型の陽炎となって現出した。
かろうじて解ったが、その姿は人間でいう女に近かった様に思える。


『残念、それは“本物”ではないんだ。フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。それはただの“影”。
 映写機によって映し出された映像だと思えばいい。何せ、ソレの“本物”はもう既に彼等の手の内に納められているのだから』


女の影は愉快そうに、理解できない単語を口にした。
フェイトはその声に気付いているのかいないのか、ただただ無表情でその宝石を見詰め続けている。
影は尚も愉快そうに微笑んで、彼女の肩を優しく、甘美に包み込んだ。


『真逆、未だ舞台に上がる前にコレを見ることになるなんて僕ですら思わなかったよ。ふふっ、意外にせっかちなんだねぇ君も』


右肩に顎が乗せられる感覚。それだけでフェイトは余りに妖艶な香りと風情によって、感情を剥奪されながらも息が荒くなっていく。
それでもなお、彼女の視線はあの宝石から離れる事はない。その姿はまるで魔に魅入られているかのような、そんな風体。


『なに、そう熱い視線で見つめてやらなくたっていいんじゃないかな。“君は此処に辿りついた”。その事実だけでも上出来さ』


だが、そんな甘美な呪いに似た言霊を前に、感情を剥奪された筈の彼女に、在り得る筈のない感情が芽生えた。
此処から先は、本当に踏み越えてはならない一線だ。
彼女は悲鳴をあげる体を余所に、全力で、魂が焼き消えるかのような恐怖を目の前にして、小さく、それでもはっきりと声をあげた。

「く、ぁあ――――ぁ、」

『へぇ。中々やるじゃないか。さっきから君に対する僕の評価は鰻上りだ。真逆、人の身でありながら此処まで来て、この邪悪に抵抗できるだなんてね』

「あ、なた……は、一体―――」

瞬間、朦朧とする彼女の視界に、灼熱に燃える■つの眸が現れたかのように見えた。
余りにおぞましく、恐怖の概念そのものを凌駕しうる、理解不能の―――理解してはならない、戦慄に震えてしまう。女の影はその眸で笑い、哂い、嘲笑を零した。
女は哂いながら。醜悪なナニカを卑下するように、歓喜を篭めた声色で謳った。

『それはまたいずれ。君の“運命の幕”はまだ上がってないんでね、まだまだネタばらしをするには早過ぎるのさ。“君が捜し求める運命の在り処は、厳密に言えば此処じゃない”』

“まぁ、こんなものを見せる事自体がフライング染みているけどね”、と嘲り女の影は彼女から離れ、再び宝箱――の“映像”――の外側に現出した。
すると女の影は、遥か闇の先。何も見えない闇の彼方を見据えた。その表情は、まるで憧憬や憎悪、怨嗟と愛情が混ぜ込まれた様な異形の笑みを垂れ流していた。

188 :リリカルサンダルフォン ◆ZFYhPjiPGw :2008/07/01(火) 22:07:06 ID:Sj54qAtT
『君達も嗅ぎつけるのはいつも速いね―――そんなに彼女が大事かい?』


―――ねぇ、我が怨敵。
愛しい愛しい、神殺しの刃。


《―――――介入思考確認/優先順位第一級=“無■の■”による検閲状態から一時的に上書き開始》


瞬間、闇の世界の果てで清浄なる光輝が煌き、爆発を熾して、闇黒に穢された世界の全てが無垢なる閃光に塗り替えられる。
それと同時にフェイトの意識は現実へ引き戻されていった。


◆◆◆


「な―――!?」

意識を取り戻したフェイトの眼に映ったのは、先ほどと同じあの戦場。未だ宝玉の封印処理を完成させるに至っていない、聖地クナアでの決戦場だ。
思考が晴れた瞬間、彼女は一体何が起こったのかまるで理解出来ていなかった。
まるで……そう、まるで、何処かよく解らない別時空――我々時空を管理する者達ですらも理解不能の超時空間に送り込まれた様な気もした。
だが、それにしたって違和感が拭えなかった。思考が闇に沈んだ後の記憶がごっそりと抜け落ちているのだ。
フェイトはそれに恐怖や驚愕に感情を彩られる寸分の刹那も無く、絶え間無き魔力の波濤―――右手に掴む、かの宝玉が発する拒絶の意思に蹂躙され続ける。

(っ! 考えてる暇なんかない。今は、封印を――!)

最早、先ほどの疑問を考える時間も暇も刹那も無い。
一瞬だけ力が抜けかかった己の身体と魔力に再度全力を以ってして拮抗状態を踏破すべく挑みかかる。
だが如何せん反応が遅すぎた。
宝玉からの魔力無限放出という出鱈目な力の顕現は、フェイトの封印術式の演算処理を遥かに上回っており、その封印式を跳ね除けて、再び邪神の骸を再構築していく。
それでも尚、フェイトは諦めない。諦めなどという文字は無い。己が相棒(バルディッシュ)も、必死になってこの無限の波濤と相対し続けているではないか。
ならばその持ち主たる彼女が、諦めなどという言葉をうちだすなんて事は、してはならない。
この一撃、この一秒、この刹那。そのひととき全てが、この星の、人類の命運を決する天秤だ。ならば、その天秤を此方へ傾かせなければいけないのだ。
 
どんなに無様を曝したって。どんなに泥水を啜ったって。一つの事を懸命に、最後までやり遂げる事こそが、彼女が、人間が成し得る窮極のご都合主義だ。
ならば諦めてはならない。彼女はこの荒れ狂う波濤に呑まれ込もうとしてる最中、離し掛けた相棒を再び握り返す。

「な―――こんな時に……ッッ!?」 

だが、宝玉を掴む右手に力が入らない。放出される無限に及ぶ魔力の、余りに暴力的な波濤が、掌握した右手の神経をズタズタに引き裂いたのだ。
最早痛覚すら感じない。まるで右腕を根こそぎ引き千切られたかのように、感覚というものが全く機能しなくなっていた。
これではいくら諦めずに術式を構築したって、右手の神経を通して術式を疾走させることは出来ない。

万事休す。そんな言葉が彼女の頭の内を過ぎった瞬間―――


ふと、感覚を無くした筈の右手に、二つの温もりが優しく包み込んだ。


『集中しろ、フェイト! まだ――勝機は逃しちゃいねェ!!』

『そうだ! 無様を曝してでもやり遂げると、汝(なれ)は誓った筈だ! ならば、その刃を落としてはならぬ!』

189 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 22:07:30 ID:49PGfIg0
ナイアルラトホテェェェップ! 支援

190 :リリカルサンダルフォン ◆ZFYhPjiPGw :2008/07/01(火) 22:09:17 ID:Sj54qAtT
一つは男の声。もう一つは幼い女の声。
そう、先ほどフェイトの背中を押してくれた、あの声である。
それを理解したと同時に、彼女の脳内に、“記憶した事の無い言葉”が燦然と現れた。
其の言葉は、言霊は、彼女は全く以って知りもしない単語――詠唱だったのだが、その言霊を思い浮かべると、何処か胸の底から熱く、そして激しい感情が湧き出てくる。
其処に痛みも辛みも無い。ただただ毅然として燃え続ける、諦めを知らぬ不滅の炎。この熱さが、どうしても心地が良い。

『よし、“準備”は整ったようだな―――それじゃあ、こんな反吐が出るような三文芝居の幕引き(フィナーレ)と洒落込もうじゃねェか!!』
 
『応ともよ! ……女、惚けてないで汝も続け! 妾(わらわ)達と共に、その“言霊”を詠唱するのだ!』

「あ――う、うん! わかった!」

勇壮な声の響きと共に、彼女の感覚を無くした右腕を二つの光――“掌”がソレを支え、失った筈の神経が次第に再構築され行き渡っていく。
どのような奇跡か魔法かは解らない。だが、この右腕に包まれた暖かさ、信念。どれをとっても強く、激しい。
この人達となら、絶対に。この億分の一の勝機をもぎ取ってゆける。その確信と信念を共に、今。遥か遠き無限螺旋に於いて紡がれた、邪悪を滅ぼす必殺の言霊を。
―――破邪の意を胸に、邪神へと轟かせる。無限新生を廻す歯車たる宝玉が、その前兆をまえに、僅かながら慄くように震え上がっていた。
 
瞬間、フェイト“達”が持つバルディッシュの光刃が、無定形の波濤から不定形のカタチへとその姿を変貌させていく。
光り輝く閃きが唸りをあげながら変貌し変形し変則的に変動させていき、そのカタチは―――簡単に言えば、余りに巨大な“腕”へとその姿を象った。
その“腕”の掌に、プラズマザンバーの莫大なエネルギーが集約されてゆき、現空間と異相空間の摩擦が産まれ、その狭間から圧倒的な圧縮重力場――マイクロブラックホールが顕現された。
フェイトは突然の変化に驚く事無く―――否、それを当然の帰結だと理解した上で、“彼等”と共に遍く邪悪を封滅せしめる窮極の言霊を口訣した。



“光射す世界に、汝等闇黒、棲まう場所無し!”


放たれ続ける雷電は突如発生した重力場に引き込まれ、もはやただの純粋無垢たる熱エネルギーへ収束されてゆき、
光さえもその“質量を持ちえた空間の狭間”へ圧縮されて、空間を歪め、狂わせる無の色彩へと。
円環状に奔り回る原子は、その重力場が起こすある種の指向性を持たされ、更にその運動は連鎖し、物理限界を超越した運動を促し、加速加速加速加速加速加速加速加速加速。
無限連鎖。無限回転。無限加速。無限輪廻。
廻り続ける原子と原子の狭間で熾(おこ)る摩擦によって更に更に更に膨大な――それこそ無限の熱エネルギーが発生し、なおかつ無限に圧縮されてゆく。
其の物理法則も、ユークリッド幾何学でさえも測り切れぬ超絶的な圧縮重力場が孕む魔力を言うなれば――正しく『無限熱量』。
この余りに暴虐たりえる破滅の理こそ、この世界の……宇宙の果てよりこの星に来たる、人々を脅かさん外道を討ち滅ぼす理。外導を以って外道を断つ、魔導を以って魔道を滅ぼす刃の熱。


“渇かず、飢えず、無に還れ―――”


三つの声が、一つの言霊を編む。男と女、そしてフェイトによって紡がれる三位一体の咆吼は更なる魔力の昂ぶりを生み、白く染め上げる光輝は一層に煌きを帯びる。
視界を灼きつくすどころか、己の身体さえも灼き滅ぼしかねない暴虐たりえる魔力を内包した巨大な“掌”を、再生され続けている宝玉ごと邪神ガタノトーアに、思い切り叩き付けた。
瞬間、邪神に叩き付けた圧縮重力場――マイクロブラックホールが収縮し、
やがて無に消える/無が展開される=幾重もの魔術文字が刻まれた“球状の壁”/絶対否定空間――無限熱量が暴れる重力場を外界へ漏洩させぬ為の断絶結界。
そう、この技こそ。この術式こそ。この必滅奥義こそは―――



“レムリア―――インパクトッッッ!!!”



これぞ、かの機械仕掛けの神が持ち得る第一近接昇華呪法。
結界球の内部で破滅を熾す無限熱量は邪神ガタノトーアの巨躯を須らく蹂躙し尽くし続け、もはや無限新生と拮抗する、しない以前に構成原子さえも末端から髄まで灼き尽くしていく。
その閃光の最中、彼女は再び相棒の―――バルディッシュの声を聞いた。

191 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 22:09:21 ID:V5YrX9j5
支援

192 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 22:10:42 ID:uVci3ipR
円柱都市支援

193 :リリカルサンダルフォン ◆ZFYhPjiPGw :2008/07/01(火) 22:11:25 ID:Sj54qAtT
◆◆◆


『I'm innocent rage/我は憎悪に燃える空より産まれ落ちた涙』
『I'm innocent hatred/我は流れる血を舐める炎に宿りし、正しき怒り』
『I'm innocent sword/我は無垢なる刃』


『I'm―――/我は―――』


◆◆◆


―――その声が聴こえると同時に、総ての音が無へ掻き消える。
結界内の世界を荒れ狂う暴虐狂気の閃光は、邪神どころか結界内部の世界さえも灼き滅ぼし、
時空間さえも消滅させ、挙句の果てに宝玉を封印させるどころか、その“術式”ごと木っ端微塵に昇華された。

最早、結界内で蹂躙された邪神の影さえも存在しない。
それを彼女“達”は知覚したと同時に空間断絶結界は力が抜ける様に縮小されてゆき、まるで元から『無かった』かのように消滅する。
そう、その消滅こそが、長きに渡った邪神ガタノトーアとの闘争の終止符だった。


「―――終わった、の?」


フェイトは魔力を出し尽くし、己の身体限界さえも超え続けた運動を行った所為で、今や満身創痍の身。
何処からとも無く、眠気が彼女の瞼を重く圧し掛かって、今に意識を手放しかけていた。
そんな彼女の右肩に、優しくて暖かな感触が同時に圧し掛かったと同時に、男性の声と左側では苦笑染みた声――優しく、穏やかな少女の声が聴こえてきた。

 
『お疲れさん。後の些末事は俺達に任せて、今はゆっくり休みな』

『ああ、一先ずは休息をとるが良い。汝はよくやったよ、フェイト・T・ハラオウン。汝の刃、中々に良い切れ味であったぞ』


飾りのない賞賛の言葉に、フェイトは何処か気恥ずかしくて、顔を赤く染め上げた。
自分を幾度と無く助けてくれた、誰とも知れない彼等だが。それでも、そんな“当たり前の善意”こそが。彼等が信頼するに足る人物だという証拠なのだ。

「うん……そうだ、ね。今回は、流石に疲れちゃった――かな?」

そんな安心感に包まれて、彼女は瞼をゆっくりと閉じた。

『嗚呼、お休み。――いつか、また会おうぜ、フェイト』

『では我等は征く――気運が在るのならば、また再会もするだろう。その時まで、元気でやってゆけ』

右肩に乗せられた感触が離れてゆき、彼等がゆっくりと歩み去っていく感覚。
名残惜しいが、後腐れは何もない。また、在るべき運命の下で、彼等と再会することに確信を覚えながら。
――ああ、そうだ。後腐れ、というワケでもないのだが。


「名前、聞くの忘れちゃったな……」


そんな、些細ではあるが名残惜しかったことを小さく思いながら、フェイトは己が意識を手放した。

194 :リリカルサンダルフォン ◆ZFYhPjiPGw :2008/07/01(火) 22:13:46 ID:Sj54qAtT
◆◆◆

『運命の探求』
エピローグ

◆◆◆


―――かくして、人間と邪悪の闘争は人間の勝利に終わった。
絶対破滅、無限熱量の閃光と無限新生の光輝の鬩ぎ合いの果て、ついぞ彼女は邪神ガタノトーアに埋め込まれていた宝玉、
ロストロギアの封印――というよりも、その宝玉に施されていた術式の完全破壊に成功。
ガタノトーアの身体はそれと同時に霧散し、字祷子粒子に気化された。おそらくはただの純粋な魔力でのみ無理やり召喚された“出来損ない”故の終焉であろう。
ヒアデスの竜巻と幾百に至るであろう光刃の雨は止み、まるで先ほどの戦いがなかったかのような静けさだけが残った。

現状を述べれば、フェイトは邪神が消え去り、蔓延っていた瘴気も失せた大地に不時着した鬼械神アンブロシウスの装甲上に姿を現した、
盲目の探求者たるラバン・シュリュズベリイの腕の中で健やかに寝息を立てて夢の世界へ旅立っている。
先ほど、刹那の永劫という短くも永きに渡る無限の攻防において競り勝った猛者とは思えぬほど、安堵を催す寝顔だ。

「よもや出来損ないの神とはいえ、旧支配者と真っ向から競り合い勝利をもぎ取ったとは……測り知れんな、君は」

シュリュズベリイはそんな彼女の緩んだ寝顔を見据え、シニカルな笑みを浮かべて賞賛の言葉を言い渡し、己が“娘”にも労いの言葉を述べた。

「レディもよく頑張ってくれたな」
 
『さ、流石に、今回は、しんどかったよ、ダディ。魔力も、もう空っぽ……っ』

「嗚呼、そうだな。実を言うと、私も魔力が底を尽きそうになっていてね。早々に、ミスカトニックの生徒諸君を待たしている“カルコサ”へ戻り“後始末”をしたいのだが――」

と、言葉を濁してシュリュズベリイは前方に浮遊する黒衣の青年――クロノ・ハラオウンへ顔を向けた。
己の相棒たるストレージデバイス……氷結の魔杖デュランダルを片手に憮然とした表情でその場に佇む様は正に歴戦の戦士たる貫禄に満ち溢れている。
そんな彼も、硬かった表情を緩めて、苦笑するような仕草をとった。ほんの短い――そう、数分にも満たない邂逅であったが、彼もシュリュズベリイのことを信頼に足りえる魔導師だと認知している。

「時空管理局の魔導師の代表として、そしてフェイトの義兄として此度のご協力感謝します、シュリュズベリイ氏」

「気にすることは無い。元より私も此処を嗅ぎ付けていてね、あわよくば娘(レディ)と二人だけでこの島における儀式を粉砕しようと考えていた。
 そこに現れたフェイト君が初めて出会う我々を疑わず、信用して共に駆け抜けてくれたことは此方としても感謝しきれない事だよ、クロノ・ハラオウン君」

「では、お互い様という事で」

邪神との凄絶な闘争が、端から無かったかのように談笑するクロノとシュリュズベリイ。
出会って早々、意気投合するのは、お互い何処か思うところがあるからだろう。
吹き荒ぶ魔風もその威力を萎ませて、やがて清々しく心地の良い潮風が吹き、この聖地クナアの瘴気を流してゆく。
一通りの挨拶を終え、シュリュズベリイは熟睡しているフェイトをクロノへ引き渡し、所々傷ついた外套を翻し、クロノから背を向けた。

「私達はそろそろ戻らねばならない。この島の“後始末”もやらなくてはいけないのでね」

『物凄い疲れたけど、コレが最後の仕上げだもんね、ダディ』

盲目の探求者は、己が著書(むすめ)の痩せ我慢にも似た言葉を聴いて、無言でアンブロシウスの装甲を愛しく撫でる。また苦労をかけるな、と心中で述べながら。
そして、シュリュズベリイに代わってフェイトを抱きかかえたクロノは、その背中を名残惜しそうに見詰め、だが努めて凛然とした風情を纏って言葉を返した。

「――そうですか。出来得るなら、もう少し語り合いたかったのですが」

「なに、コレが今生の別れというワケじゃないさ……嗚呼、そうだ。私と君達が出会ったのもまた何かの運命だ。
 もしも私達に助力を求めたい時は、マサチューセッツ州にあるアーカムシティという街のミスカトニック大学に連絡してくれたまえ。すぐさまに駆けつけよう」

これでも生業は邪神狩人兼大学教授でね、と追言して、シュリュズベリイは背中越しからシニカルな笑みを浮かべた。

195 :リリカルサンダルフォン ◆ZFYhPjiPGw :2008/07/01(火) 22:16:01 ID:Sj54qAtT
「また会おうクロノ君。あと、フェイト君が眠りから覚めたのなら伝えて欲しいことがある」

『―――“合格、見事だった”ってね!』

「解りました―――では、また会う日まで」


クロノの別れの言葉を皮切りに、シュリュズベリイを載せた鬼械神アンブロシウスは多発型飛翔魔術群(クラスター・フーン)を起動させる。
刹那よりも速く。遥か彼方。轟音という壁を越えて、紫紺の機神は軌跡を残して飛翔した。
暗雲消え去った、遥か蒼天の空へと。
天高く、天高く。


◆◆◆


「良き兄弟だったな、レディ」


『うん、そうだねダディ。だけど……なんだか名残惜しいよ』


「ふむ、そうだな。だが先ほど言った通り、これが今生の別れというワケじゃない。世界という壁を越えて彼女達が私達と出会ったのを偶然と言うには些か滑稽と言える。
 そう、この運命は必然だった。ならば、別離するのも運命(必然)であるのならば、再会するのもまた運命(必然)だ」


『運命、か。名は体を現すって言うけど、フェイトのは中々波乱に満ちた運命のような気がするね』


「確かに……否、そうだろう。彼女は未だ理解はしていない。それは我々にも理解出来ないが、彼女はソレを理解する術をもっている。
 彼女は自覚してはいないだろうが、彼女自信の探し求める運命――『運命の探求』は始まったばかりだ」


『そっか。フェイトにも宿題が出来たってことだ』


「中々巧いことを言うじゃないか、レディ。……さて、そろそろカルコサが見えてきたようだ。レディ、通信回線を開いて、例の爆装(ドレス)の準備を行わせてくれ」


『イエス、ダディ。……久しぶりに使うね、“D型”。ハイアイアイ群島で使って以来だよ』


「嗚呼、そうだな。プロメテウスの炎を使うのは確かに久しい。では―――征こうか、レディ。ヒアデスの星屑の様に、あの忌まわしい島を塵芥に変えてやろう」

196 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 22:16:40 ID:49PGfIg0
しえーん

197 :リリカルサンダルフォン ◆ZFYhPjiPGw :2008/07/01(火) 22:17:38 ID:Sj54qAtT
◆◆◆


―――さて、いつものように唐突ではあるが、ここで喩(たと)え噺(ばなし)をしたい。
皆はこれを聞くのは何度目となろうことかは解らないが、耳をかたむけて聴いて欲しい。

是(これ)は何処かの宇宙の話。大樹の根の様に別れた宇宙の話。そもそも根の違えた、別の大樹に生える宇宙の話。
其(それ)は反応炉の中だったり、試験管の中だったり、チューインガムの包装紙にくるまれていたりする宇宙の話。
永劫を呑み込み、永劫を吐き出す、ほんの小さく広大な刹那のお話。
無限大を幽閉し、有限大を定義した塵の様な宇宙のお話。
宇宙の内側にある宇宙の話。
宇宙の外側にある宇宙の話。
宇宙の外側の外にある宇宙の話。
宇宙の外側の外の宇宙の外にある宇宙の話。
宇宙の外側の外の宇宙の外の宇宙の外の宇宙にある……。
詰まる所、宇宙は無限に連鎖し、零(アイン)へ帰結して尚、零(ソフ)へ膨張し、零(オウル)へ至るべき無限の宇宙のお話。

其れは無限と零が混ざり合って、遥か無き時空間の輪、或いは六芒星(ヘキサグラム)を巡る大蛇が爛れ堕ち、絶え間ない変化を熾し続ける混沌のスープ。
故に総ては淡すぎる、泡沫の塵夢。万物の神が、盲目白痴にして全知無能の神様が夢見る泡沫の幻想。
まどろみの最中で浮かび、消える運命にある刹那の夢。眼が覚めれば終わる、ただの夢だ。
終わりとも知れず、消滅するのみが故の泡沫。そもそも始まりがあったのかさえも泡沫の果て。
世界は虚ろ。現世(うつしよ)こそは幽世(かくりよ)で、幽世は何処までも幽世。
其処は総ての想いも、善も悪も狭間も無い、虚実(アイン)が成る虚無(ソフ)にして虚夢(オウル)の世界。
―――世界は何処までも虚ろんだ、まどろみという泡沫の中で潰える運命(さだめ)にあるのだろうか。


これは喩え噺なのだが―――そうは想わない存在が、やはりその運命に抗っていた様だ。


◆◆◆


ふと、邪神は眸を開けた。
余りに凄絶な痛みに、並大抵のことでは機能しない規格外の痛覚が、それ以上に規格外な痛みによって呼び起こされてしまったのだ。
鮮烈な痛みだ。痛みと共にかの光輝を思い出す。何処までも暴虐であり、我々魔を無へ還す為に呼び起こされた太陽の熱の様に激しい光輝。

《―――アレは、何処かで一度味わった光輝だ。はて、あの忌々しき輝きはいったい何処で受けてしまったのだろうか》

そう、邪神ガタノトーアは見るからに満身創痍の身で思い起こす。
先ほど人間が放った無限熱量の必滅奥義によって、ガタノトーアを顕現させる宝玉の魔力無限放出の術式は見事に無へ還され、それと同時にガタノトーアもその体躯を塵芥へと霧散させた筈だった。
そこまでは覚えている。……ならば、今の己は一体何処に居ると言うのだろうか。

『嗚呼、そうさ。君の見解に寸分の間違いなんて存在しないよ、ガタノトーア殿。君は人間の手で、人間の魂の光で、人間の諦めを知らぬ、愚かな不屈の煌きの中で無に消えた筈だったのさ』

女の声が聴こえた。或いは男の声だったのかもしれない。
何処までも得体の知れぬ、信用できない、まさにノイズの様な醜悪であり淫靡な声だった。
ガタノトーアは知覚する。その存在は、己と同じ存在だということを。かの焼き払われた闇黒の森に棲んでいた、灼える■眼にして無■の邪神を。

《―――貴様か。あいもかわらず狗の様に走り回って、ご苦労なことだ》

198 :リリカルサンダルフォン ◆ZFYhPjiPGw :2008/07/01(火) 22:19:49 ID:Sj54qAtT
『いやいや、狗はティンダロスだけで充分さ。……もっとも、君の言う通り彼の様にせわしく動き回っているけどね』 

哂いながら――或いは嘲笑だったろうか――、邪神はガタノトーアの皮肉を事無げにかわし、この宇宙の中心の狭間にて立ち尽くしていた。
その様子に何処か違和感を覚えながらも、ガタノトーアは疑問を口にした。

《―――もしや、貴様が我をこの宇宙に隔離させたのか?》

『隔離、という表現は当たらずも遠からずって所かな? 
 此処はね、君に埋め込まれた宝玉――彼女達に言わせれば、ロストロギアか――の中に存在する宇宙。君は、その宇宙に“吸収”されただけだ』

《―――成る程。アレほどの魔力を無尽蔵に内包しているワケだ、この宝玉自体が一つの宇宙であったか》

『然り。是こそは愛しき我等が宇宙の極々々々一部から産み出した純粋無垢、神聖『可侵』たる無限の器! 
 例え放出の術式を失ったとしても、どんなモノにでも簡単に染まる純粋な宇宙故に、こうして満身創痍の君は容易に吸収されたってワケさ』

女は、まるで舞台上で回る役者のような演技を催して嬉々と説明する。
ガタノトーアはその説明を憮然と聞き及びながら、やはり憮然と、頭の中に突如として浮かんだ言葉を“口にしてしまった”。

 
《―――ほう、ならばコレはかの高名な、輝きを放つ“連中の神具”ではなかったのか。貴様も欲深い物を創り上げたモノだな》

  
――刹那。そう、その刹那。その言葉を待っていたかのように、女は嘲笑すら超える凄絶な邪笑に口を歪めた。
ガタノトーアは未だ気付いていなかった。人間にとっても、神々にとっても、その言葉は理解など出来はしない、してはならない窮極の禁忌だという事を。
女はそれを無様と哂うように、そして本当に残念そうに満身創痍たるガタノトーアの体躯を俯瞰ながら、その最後になるであろう質問に答えてあげた。 


『ははッ、確かに似てはいるが、それは仕方の無いことさ、ガタノトーア殿。だって、“本物のアレ”はね―――――もう、然るべき担い手によって握られているのだから」


ガタノトーアが女のその言葉に再度疑問を口にしようとした瞬間―――世界が、けたたましく悲鳴をあげた。
爆砕し、創造し、破滅させ、顕現する圧倒的な白い闇。
否、闇すら凌駕し塗りつぶす絶対的な光輝。その光輝はまるで、先ほど受けた無限熱量のそれと果てしなく似ていて。
ガタノトーアは、純粋に戦慄を覚えた。
この圧倒的な殺意に。魔を滅ぼす為に我等と同じ存在になった、我等の天敵。
かの星座に臥する神威の狩人と同格の、総ての魔の天敵が持ち得る鋭利な殺意。
邪神ガタノトーアは……否、遍く総ての旧支配者は、その存在が何なのか、脳髄の底に深く刻まれている。

《―――真逆!?》

『そう、その真逆だよ。ガタノトーア。“彼等”は僕等の居る所ならどんなことをしたってやってくる。邪悪を滅ぼす為に。邪悪を根絶やしにする為に。
 この泡沫の夢の狭間で。人間達の祈りを護る為に。光り輝く世界を護る為に、必死に抗い続ける。愚かであり憧憬すべき、愛しい愛しい、忌まわしき狩人!』

女は狂ったかのように、まるで待ち望んでいたかのように、その生誕を嘲り哂いながら、初恋の人を見るような視線で、罅割れる世界の壁を見た。
が、彼女は名残惜しそうに背を向け、宇宙の中心の狭間の先にある、闇黒の領域へ脚を踏み込んだ。

《―――貴様、何処へゆく!?!?》

『新たな舞台の準備さ。その為に君には、“彼等”の足止めをしてもらおう。
 ギブアンドテイクと言うじゃないか、君をこの宝玉の中(セカイ)まで届けたのは他でもない僕だからね。せいぜい、気張ることだ』

“それでは、ご健勝の程を”と驚愕するガタノトーアに言い残し、女――邪神はその場から、この宇宙から消失した。
だが、それでもこの世界の崩壊は止められない。止める術を持ちえていない。
―――そんな崩壊する世界で、凛然とした男と女の声が聴こえた。

199 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 22:23:11 ID:V5YrX9j5
支援

200 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 22:25:10 ID:sXDFK5Ba
支援支援支援支援

201 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 22:29:46 ID:49PGfIg0
さるさんかな・・・?

202 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 22:37:51 ID:kWwi6dyY
氏がさるさんを喰らったっぽいので代理行きます。

203 :リリカルサンダルフォン氏代理:2008/07/01(火) 22:39:56 ID:kWwi6dyY
『こんなトコで呑気に居座りやがっていたか――それじゃ、ド派手に後始末といこうか!』

『あの女……フェイトの意志に応える為にも、我等の力、今こそ存分に見せつける刻だ!』


それは余りに輝かしい、善意の権化。
弱きを助け、強きを挫く。理不尽に蹂躙されながらも、必死に立ち上がる不屈の魂。
人間。諦めを知らぬ、善の……正の極限。
ガタノトーアは恐怖する。それは、己に刻まれた原初の記憶。何故己(ガタノトーア)はヤディスの地下深くに封印されてしまったのだろうか。
其の疑問に応えるモノは、ただ二人だけ。二人は、この世界全土に響けと言わんばかりに、互いの名を呼んだ。


『征くぜ――――“アル”ッッ!!』


『応ともよ――――“九朗”ッッ!!』


そう、彼等は連理の枝にして比翼。
どちらが一つも欠けはしない、窮極なる愛の証。
そして―――もう一つ。欠けてはならない存在。其曰く、“最弱無敵”の刃金を。


《―――そうか! 貴様達か!! どこまでも脚を挫き地に伏せても、決して立ち上がることを止めぬ不屈の刃ッッ!!!》


ガタノトーアは理解した。自分たちが恐怖せし、憎悪すべき神殺しの刃。
己自身をヤディスの地下深くに封印せしめた、窮極のご都合主義を信仰する神を。

慄く邪神を余所に、二人の神は天高々と、己が刃金を、剣を呼ぶ為に破邪の口訣を刻み上げる。
己が相棒を呼ぶ為に。己が半身を呼ぶ為に。己が刃を呼ぶ為に!!


『―――憎悪の空より来たりて、
 ―――正しき怒りを胸に、
 ―――我等は魔を断つ剣を執る!!』


言霊は、この世界に鎮座するガタノトーアによって産まれ出でた邪気の悉くを踏破し尽くしてゆく。
彼等の背後にて顕現するは、清浄な煌きを放ち続ける五芒星―――『旧き印(エルダーサイン)』。
その光輝の果てで、圧倒的な質量を持ってして顕れ出でるは、人の形をした鋼の神。機械仕掛けの神。半魔半機の神。


『汝、無垢なる刃―――』


言霊が響いた瞬間、世界を爆砕せしめる一つの神が降臨を遂げた。
宇宙の狭間、宇宙の中の宇宙で、宇宙の外の宇宙で響き渡るその唄は。
無限螺旋を超えて紡がれる、刹那の愛を謳ったソレは―――誰にも消せぬ、全能の神様にだって消せない、生命の歌。

明日への路を拓く魂の言霊を紡ぎ上げ、こうして彼等は―――最も新しき神、『旧神』は闘い、闘い、闘い続ける。
世界の未来を紡ぐ為に。世界の未来を紡ぐ人々を護る為に。

最も近く、限りなく遠い遥か宇宙の最果てで、機神の咆吼が木霊する―――。


◆◆◆

204 :リリカルサンダルフォン氏代理:2008/07/01(火) 22:40:50 ID:kWwi6dyY
そんな、不思議な夢を見た。
余りに荒唐無稽でありながら、心を締め付ける様な熱い祈りを謳った、刹那の物語を見た……ような気がする。
唐突に眼を覚まして、最初に飛び込んできたのは清潔感が漂う真っ白な天井。
無論、知らない天井というワケでもない。むしろ彼女自身が訓練でよく怪我をしたときにいつも見る、慣れ親しんだ天井だった。
現状を述べよう。彼女こと、フェイト・T・ハラオウンは、戦艦アースラ内にある医務室のベッドで横になっている。
何故こんな所にいるのかは解らない。今の今まで短いようで長かった眠りを貪っていたため、時間の感覚が定かでは無い。
だが――あの闘いのことは鮮明に、鮮烈に思い出せる。邪神狩人と共に駆け抜けた、かの邪悪との死闘。突然現れた義兄の助力もあって、ようやく任務を完遂出来たことは記憶に新しい。
フェイトは丁度視線の先に掛かってあった時計の針を見てみる。午後八時と示していた。今の今まで、半日以上も眠りこけていたのだろうか。
半日も眠っていたにも関わらず、自分の体の疲れが未だ完全に抜け落ちていない事に愕然するものの、気だるくベッドから上半身だけを起こそうと腹筋に力を入れた。
―――が、何故か力が入らない。力を入れようとすると、自分の意思とは無関係に脳がそれを拒否してしまうのだ。
これまた不思議だが、そんな脳の拒否反応を無視して起き上がろうとした瞬間、

「う、痛ッ、……っ!」

小さく、だが余りに鋭利な痛みが脊髄に迸るように駆け巡った。
それと同時にフェイトの身体は引き寄せられるように再度ベッドの上へと倒れおちる。
……恐らくは、余りに過度な肉体酷使によるリバウンドが、今更ながら盛大に竹箆(しっぺ)返しされているのだろう。
この痛みでは、起き上がろうとすること自体が逆効果だと悟り、大人しく、無為に天井を見上げなおす。

「終わった、んだよね……あの闘いは」

かの世界にて起こったロイガー族との、そしてSランクを大きく上回る術式によって召喚された邪神ガタノトーアとの闘いを思い起こす。
闘っている最中は余りの緊迫感だった所為か、時が流れるのが余りにも長く永く……それこそ永劫に続いたものかと言わんばかりの感覚の中での死闘であった。
だがいざ終わってみれば、そんな死闘も刹那の内に終わったのではないかとすら想う。刹那の永劫たる闘争はかくも凄絶で、淡すぎる泡沫の夢。
フェイトはその事実に溜息を付かざるを得なかった。……そうして幾分か過ぎて、病室の扉からノックする音が静かに二回程聴こえてきた。
彼女が了承する前に、扉が開かれる。其処にいたのは、管理局の制服に身を包み込んだ、現アースラ艦長――義兄であるクロノ・ハラオウンの姿だった。

「おはよう。よく眠れたか、フェイト?」

「クロノ……うん、ちょっと眠りすぎたくらいだよ」

「そうだな、丸々三日間も眠りこけていたんだ。確かに眠りすぎている」

三日間。その言葉を聴いて、フェイトは無自覚的に時計に付随してあるカレンダー機能を確認する。
あの邪神と闘った、ロストロギア封印の任務の日から、本当に三日も立っていた。よもや、そこまで身体限界を酷使し続けていたとは自覚さえも出来なかった。
それを半日と勘違いし、しかも三日間眠って尚、未だ激しい痛覚が残っているのだ。その痛みと三日間という言葉が、此度の死闘の壮絶さを今更ながら現実味を帯びさせてくれた。
だがクロノは未だ完治に納得のいかないフェイトに対して、嘆息まじりに、いつもの彼らしく説教口調で詳細を答える。



205 :リリカルサンダルフォン氏代理:2008/07/01(火) 22:44:19 ID:kWwi6dyY
「確かに三日間も眠って完治しないと憤るのは理解できるが、本当ならば君の命だって危うかったんだぞ? Sランク級どころか、それ以上の……個人的な見解だが、
 ランクでさえも測り切れないだろう召喚獣個体を相手に、命どころかリンカーコアさえも別状がなかったなんて、奇跡なんて言葉じゃ計れない奇跡じゃないか」

君の右腕の状態は流石に酷かったが、と言及した後にクロノは己の頭を掻いてフェイトの右腕を見た。
彼女の右腕は、指の末端から肩にかけてまで治癒魔法を常時展開できる特殊なナノマシンを内蔵したミッド医療の最先端技術を惜し気もなく使われた包帯を痛々しく巻かれていた。
それどころではない。彼女の肌が見える至る所にガーゼやシップなど大量に貼られており、傍から見れば出来損ないのミイラとしか思えぬ程だ。
こんな形相を第三者が見てしまっては、彼女が本当に無事に生き長らえているのか、もしかしたら死の淵から蘇った正真正銘の死人(アンデット)ではないのかと勘違いするかもしれない。
だのに、フェイトは改めてその包帯を巻かれた右腕を見ながら、思い出したかのようにふと声を漏らしてしまった。

「……あ、そうだった。右腕の感覚がなかったんだ」

「―――ハァ。君も、なのはと同じで自覚無しに無茶な行動ばかり取る。……君の感想通り、その右腕の神経はあのロストロギアがおこした莫大な魔力放出を正面から受けてボロボロだ。
 なんとか完治の余地はあるものの……下手をすれば、右腕を肩から切断せざるを得ない大惨事になっていたんだぞ?
 ……そのロストロギアも無事に回収できたのは僥倖だったが、奇跡というよりは個人的に作為的な運命を感じてしまうけどね」

「う、……ごめんなさい、クロノ」

しおらしく顔を俯かるように、クロノへの視線を外して、反省する。だが心の内ではやはり納得して消化しきれるモノでもなかったらしい。
確かにやり過ぎたかもしれないが、幾らなんでも無茶無謀の代名詞であり到達点であるなのはと同列に扱われるのは、些か不満だ。
あ、いや、別になのはのそんな無茶なトコロが嫌いだというワケじゃなく、むしろそんな無茶に自分自身が一生掛かっても返せないくらい救われてきたワケで。
そんなあやふやな心の葛藤を脳内で絶賛戦闘中な彼女を見て、額にしわを寄せていたクロノは顔の筋肉を解して、苦笑するような表情を取った。

「まぁ、そんな奇跡が起こったお陰で君も無事でいてくれたんだ。そのことに対して何かを言うほど、僕も無粋じゃない」

これでもクロノなりの怪我人に対する礼儀、というか気遣いらしく、その慣れない様子にフェイトは思わず吹き出し掛けた。
そんな話し合いも終わりを向かえ、病室の椅子にかけていたクロノは立ち上がる。

「もう行くの?」

「ああ。まだ仕事があるんでね。そろそろ戻らせてもらうとするよ」

クロノは背を向けて病室の扉も前に立つ。
その時に、思い出したかのように顔をフェイトのいる後方へ向けて、微笑みながら“伝言”をつたえた。


206 :リリカルサンダルフォン氏代理:2008/07/01(火) 22:45:48 ID:kWwi6dyY
「あと、シュリュズベリイ氏達から君への伝言だ―――『合格、見事だった』と」


そう言い残して、クロノはフェイトの返事を待たず仕事場へ戻っていった。
静寂が戻る。聴こえるのは時計の針が進む微かな音だけだ。そんな心地良いリズムが響いてる中、彼女はやはりベッドの上から天井を見上げた。

「そっか……シュリュズベリイ先生に、お別れの言葉一つ言えなかったな」

クロノが戻った後、フェイトは彼……ラバン・シュリュズベリイが残した伝言を頭の中で幾度も幾度も反復させて、焦燥に浸る。
あの闘いが終わった瞬間、眩し過ぎる光の輝きの中で二つの影――あの闘争の中で自分を幾度となく闇の淵から救ってくれた恩人達に別れを告げられた後の記憶が無い所から、
恐らくはあそこで自分は眠りに落ちてしまったのだろう。
あのまま我慢して起きてさえ居れば、自分に“諦めぬ心”を、不屈の想いを明確に教授してくれたシュリュズベリイにお礼とお別れを言えただろうにと、軽い後悔を想って、あの闘いをまた振り返る。

―――そういえば。あの時に聴こえた“バルディッシュの声”を唐突に思い出す。
今頃、きっと己の相棒はあの闘いで酷使しすぎた所為で今もメンテナンスルームで修復中のことだろう。彼自身に聴こうにも聴けないが、聴かずとも彼女は解っていることだろう。
アレは確かにバルディッシュ自身が言い放ったモノだが、彼女はそれがバルディッシュの言葉でないことを、感覚の中だが確信を覚える程に理解していた。

 
『I'm innocent rage/我は憎悪に燃える空より産まれ落ちた涙』
『I'm innocent hatred/我は流れる血を舐める炎に宿りし、正しき怒り』
『I'm innocent sword/我は無垢なる刃』


その言葉を思い出すたびに、胸の底がまた熱くなっていく。それはとても苛烈で、激しい炎の昂ぶりだが、その熱さが、どうしても心地が良い。
そして、この後に続く言葉。ソレこそはバルディッシュの声を借りた、その言葉の持ち主だろうと想う。
其の名を思い出して、彼女は思わずその名を―――その剣の名を、初めて口に出した。



「魔を滅ぼす者(DEMONBANE)―――『デモンベイン』、か」



―――彼女の運命は、或いはこの名を口にした時から始まったのかもしれない。
カチリ、と。この部屋にある時計ではない、何処かの物語(セカイ)の歯車が、ゆっくりと軋みを上げて動き出す。



◆◆◆



207 :リリカルサンダルフォン氏代理:2008/07/01(火) 22:47:00 ID:kWwi6dyY
―――数年後。



「くッ―――急いで向かってはいるけど、間に合うか……!?」

彼女ことフェイト・T・ハラオウンは今、暗雲がつもり今にも雨が降りそうな空の下を駆け抜けている。
列車襲撃事件からそう日も立っていない、ある日の夜の出来事だった。
仕事の用事で帰りが遅くなり、六課隊舎へ帰るついでに夜食を買うために街に繰り出した時だ。
突如として彼女の耳に緊急事態時に発せられる念話が届けられ、フェイトの居る場所からそう遠くない廃工場で、レリックの反応を感知したという。
彼女はすぐさま、指定された場所に向かって走り出した。時は一刻を争う。レリック反応を捉えたのは僥倖だが、問題はそのレリックを奪う謎の機動兵器“ガジェット・ドローン”。
アレ等より先にレリックを回収しなくてはならない。もし、彼女の予想通りだとすれば、あのガジェットを操っている裏側の存在こそは―――。

そんな思考は切り捨てる。今はガジェットよりも先にレリックを回収するのが最優先だ。
彼女は走りながら、己の懐にしまってあった相棒――バルディッシュを手にする。小さくセットアップと口訣し、彼女の身体に鮮烈なる魔力が循環し、疾走する。
管理局の制服が粒子化され、彼女の身体を包み込む様に、魔力を帯びた稲妻が迸った。
其の稲妻は段々と質量を帯びてゆき、遂には彼女の身体を魔術的/概念的に護る戦闘装束、バリアジャケットを錬成する。
それと同時にバルディッシュもその姿を変貌させる=アサルトフォーム。

即座に戦闘形態へ移行を遂げた彼女に迷いは無い。彼女は自身の身体をまるで風の様に……いや、むしろ迅雷の如き速度を以って飛翔した。
魔力の残照を浮かべて、鋭角な軌道を残した後に、真っ直ぐ綺麗な軌跡を暗雲がたちこめる漆黒の夜空に残して、現場である廃工場へと向かう。



其処で、彼女は出会うのだ。
漆黒に犯された、狂気に冒された、何よりも憎悪に侵された―――黒い天使と。



これは、彼女がこの出会いという運命(必然)に至る為の物語。
未だ自覚せず、理解もしていない彼女が辿るべき運命を提示する、始まりに至る為の物語。



『そうだとも―――彼女の物語は未だ、始まったばかりさ』



物語の歯車は廻り続ける。 
果たして、この物語が……運命が行き着く先は、いったい何処なのだろうか。


―――それはきっと、カミサマにだってわからない。


END

NEXT TO 『LYRICAL SANDALPHON』



208 :リリカルサンダルフォン氏代理:2008/07/01(火) 22:48:45 ID:kWwi6dyY
後書き

ども、皆さんお久しぶりです。
前回から数えて二ヶ月ぶり……いや、三ヶ月ぶりくらいですね。
そろそろ皆さんも自分のことをお忘れになっているのではないでしょうか?
あ、いや。ごめんなさい。決してサボっていたワケではないです。
今回のヤツが余りに難産だっただけで! 完成するのにちょこっと遅れただけなんだから!
―――ごめん、ほんと反省してるorz

ということで如何だったでしょうか。
これで単発ネタとして最初は出していた筈のが、いつの間にか連載作品になってしまった『運命の探求』は完結です。
色々とSAN値を削りに削って書き上げた分、自分が書きたいことは総て書ききった筈。これで無念も無い!
……さて、次はようやく機人咆哮へ移行します。必ずや近日中にお届けしますので、そんなことを頭の片隅にでも覚えてくだされば幸いです。
では、今回はこの辺でー。

ps
すみません、投下中に規制を喰らってしまいましたorz
いつもご迷惑をおかけします。


209 :リリカルサンダルフォン氏代理:2008/07/01(火) 22:52:24 ID:kWwi6dyY
前のレスと一緒に投下しようとしたら、
氏のあとがきで行数オーバーになってしまったので
分割して投下させていただきました。ご了承ください。

そして最後に、サンダルフォン氏GJううううう!!

210 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 22:54:52 ID:t9pcg/Gc
GJ!であります。
こっから本編につながっていくわけですね!
教授カッコいい!
このフェイトとサンダルフォンの邂逅は何をもたらすのか!?

211 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/01(火) 23:09:42 ID:V5YrX9j5
GJ!!

サンダルフォンへの序章だったとは・・・なんと壮大な!
リリカルサンダルフォンも楽しみにしてますー。

212 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 00:08:13 ID:agvE6DLT
こんばんは、皆さん。リヒャルト・トラクルだよ。プリンチップ者のエージェ……ゲフンゲフン
勢いで書いた短編を0:15から投下しますー。
多少長いので支援をお願いしますー。

213 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 00:14:57 ID:myrSR8lm
トラクルおじさんだとおお!?

214 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 00:19:04 ID:agvE6DLT
クラナガン・シュピーゲル「少女と少年 その1」

少女はご機嫌だった。ふんふんと鼻歌雑じりに歩く――非番こそ、彼女の楽しみにしているものである。
何故なら、買い食いし放題/有り余った給料の使い道=すなわち食事。首都クラナガンの出店は美味い各世界の名産品でいっぱいなのだ。
母親譲りのさらさらの青い髪をショートカットに/宝石みたいな緑色の瞳/日焼け具合もちょうどいい健康的肌/同年代の少女達より大きい胸元。
休暇なのだから、と選んだ私服――青いシャツに半ズボン/首からかかったアクセサリ=待機状態のデバイス/コツコツとした足音も楽しい革靴/腰のポーチ。
ポーチの中身=時空管理局局員の証となる部隊章――機動六課スターズ分隊所属『スバル・ナカジマ』――歳相応の少女にしか見えない彼女だったが、
これでもエース級魔導師に期待をかけてしごかれる新米魔導師だ。
今日は残念なことに相棒にして親友の少女、『ティアナ・ランスター』は休暇を取れなかった為に、かねてから実行しようと思っていた『一人大食い食い倒れツアー』を
行うことにしていたのだった。これは、極めて胃の容量のでかい人間しかできない行い――ひたすら飯を食い続けて街を歩き続けるというものであり、
その性質上付き合える人間がスバルの知り合いには実の姉ギンガしかいないというものだった。
呆れるほど買い込まれた食料――クレープ3個、各種スパゲッティのトレー5皿、ピザが7種類、挽肉の腸詰焼き2本。
公園のベンチに腰掛け、喰う、食う。
吐き気をもよおすほどの圧倒的量/通りがかった通行人が「うぷっ」と言って走り去る/公園でそれぞれ芸に精を出すアマチュアの演奏家/役者/芸人達の
パフォーマンスが一瞬止まるほどの衝撃的光景――何かの罰ゲームかと思い目を疑うが、本人はすごく嬉しそうに頬張る。
咀嚼し、ごくんと飲み込む/みるみる減っていく食料――残りはクレープ1個だけに。
食べた後のゴミ屑を片付け、デザートに取り掛かる。

「うーん、やっぱりここの食べ物は美味しい。流石ギン姉の推薦」

スバルの呟き――不意に、美しい音色が耳に入る。はっ、と顔を上げて振り返る――クレープを齧りながら。
バイオリンを弾く、十六、十七歳くらいの少年の演奏は見事の一言に尽きた。
大勢の人々が足を止め、その演奏に聞き入り、蓋が開いたバイオリンケースに小銭を放り込んでいく。
スバルは立ち上がり、少年のほうまで歩きよりながらクレープを食べ終えた。
『彼』の演奏が終わるのを待ち、目を閉じて聞き入り――やがて、ふっ、と終わりを告げた。

「今日は終わりなんだ、これで。ごめんね」

穏やかかつ、どこか冷たい響きのある声。
目をぱっちり開くと、少年がバイオリンケースを手に微笑んでいる。バイオリンはケースの中と言うことは、つまり、演奏はお仕舞いということ。
ちょっぴり残念だったが、笑顔で言った。

「今日もいい演奏だったよ、白露(シラツユ)さん!」

「ありがとう……」

少年、つまりは白露の微笑/ちょっと陰が在る。
うーん、と悩みながら財布の中身と格闘――力んで言う。

「CDとか、無いかな?」

「そういうのはないんだ……でも、週末のこの時間はここにいるから」

思い出す――少年は平日は働いているらしい/週末のみのパフォーマンス。

「それじゃ、休み取れたらまた聞きにくるからねー」

そう言いながら立ち去ろうとすると、白露が口を開いた。
静かな、でも確かな意志のこめられた言葉。

「次の週末食事でも、どうかな? 勿論、僕の奢りで」

215 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 00:21:30 ID:agvE6DLT
少年――『白露・ルドルフ・ハース』の爆弾発言/穏やかに、でも大胆に。
ベルカ系住人/銀がかかった金髪/蒼穹の如き青い目/桃色の薄い唇/滑らかな頬と首筋。
まるで白い陶磁器――日の当たらないところに保管されていたといった風情の、どこかひんやりと冷たい感じ。
スバルの反応は、あまりにもわかりやすかった。
立ち去りかけた足が止まる/ずっこけそうになる――かろうじて踏み止まる。
振り返り、相手の言ったことを理解するのに数秒/理解と同時に首筋辺りまで真っ赤に。

「え……な、ななな……」

「駄目かな? スバルさんは管理局員で忙しいだろうし、駄目なら――」

まあ待て落ち着けスバル・ナカジマ、深呼吸、深呼吸だ、と己を落ち着かせながら、相手の台詞を遮って言った。
勢いよく一言。

「も、勿論OK、だよ! えーと……」

「待ち合わせは、ここで。正午前でどうかな?」

「う、うん。そ、それじゃあねー!!」

走り去る/顔まで真っ赤にしながら。
僅かに思考――纏まらないそれ。

(え……? え、え? これって、つまり――デート?)


「デートね。それは。OKしたんでしょ? 良かったじゃない」

つん、とした声。
その夜、機動六課寮内の自室で、スバルはルームメイトであるティアナと顔を突き合わせて話し合っていた。
ティアナ・ランスターは、ミッドチルダでは珍しい拳銃型デバイスの使い手だ。
オレンジ色に見える赤毛をツインテールに/つり上がり気味の目元/割合あるほうな胸/身長も意外とある。
今はトレーニグウェアから寝間着に着替えており、既に消灯時刻を迎えていた。
むう、と考え込みながらスバルは答えた。

「じゃ、じゃあさ……白露さんはやっぱりあたしのことが――」

ティアナの反応=最高に投げやり――「他人の惚気話は面白くないわ」でばっさりと斬り捨てる。
ううう、としゅんとなるスバルを見て思うこと=あ、なんか落ち込んだ子犬みたいで可愛いかも。

「まあ……何時もどおりアンタらしくしてればいいのよ、多分」

「う、うん……頑張ってみるね、ティア」

とりあえずティアナは、明日ギンガさんに報告しておこう、と思うのだった。

そして、当日が来た。
週末に休暇を取るスバル――精一杯着飾って寮から出る。
モノレールと地下鉄を乗り継ぎ、クラナガンの大通りへ――何処からどう見ても遊びに出かけるティーンエイジャー。
だが、その表情は硬い/まるで戦地に赴く兵隊の風情。駅から出るなり、一直線に公園まで歩いていく=白露との待ち合わせ場所。
しかし、まだ待ち合わせ三十分前。少々急ぎすぎと言えた。
そんな彼女の背後をつける人影は、二つ。
ティアナ・ランスターと『ギンガ・ナカジマ』――スバルの姉。
青いさらさらの長髪/緑色の瞳/引き締まった身体/やはり出ている胸元。
二人とも、サングラスをかけ、らしくもなく厚着で移動――どこからどうみても不審者のそれ。
妹の親友からの通告『スバルがデートに誘われたらしい』。
これを聞いたギンガの行動=週末に休暇を取り、ティアナを誘う――サングラスなどの変装セットも彼女の発案。

216 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 00:22:58 ID:agvE6DLT
ティアナの雑感――発想の根底が同じだという直感的感覚。
依然こちらに気づかずに歩むスバルを小走りで追いかけながら、ティアナはちょっと溜息を吐きたくなった。


「特甲猟兵? なんやそれ?」

栗色の髪を揺らしながら、機動六課部隊長八神はやては声をあげた。
室内は機動六課の隊舎の隊長室であり、はやてにとっては忙しいデスクワークの中心地。
各種端末が揃った部屋はまさしく一国一城の主といった風情を漂わせる。今この瞬間もはやては情報を端末に収め、隊長としての仕事を果たしている。
それはさておき。
はやての問いに、金髪の美女が答えを言った。

「うん。最近、<海>のほうで問題になっている戦闘機人技術の発展系のことなんだけどね……」

「戦闘機人? スバルやギンガみたいな人が?」

美女――フェイト・T・ハラオウン。
金の長髪/ルビーのような赤い瞳/すらりと高い身長/豊麗な胸元/陶磁のように白い肌。
類まれなる美貌を持つ彼女こそ、オーヴァーSランク魔導師である機動六課の切り札/雷光の如き機動戦を得意とする若手執務官だ。
目を憂鬱そうに伏せながら、語った。

「違うの……戦闘機人が機械に適合させる為に人間を生み出す技術だとするなら、特甲は、四肢に障害のある子供を優秀な兵士に作り変える技術。
彼らは時空管理局の<子供工場>で訓練を受けて、機械の手足を動かす術を得る。そして、戦闘用の義肢――通称<特甲>を渡され、
各次元世界で治安維持任務に派兵された。今現在、多くの管理局派兵地域で、特甲児童が戦力として運用されいるの――人材不足を補う為に、
特甲児童に限って質量兵器の使用を黙認してね。特甲猟兵は、その中でも最も強力な兵科」

「ちょ……待ってーな。私もついていけないで、そんな話。障害のある子供を兵士にする? 何考えとるんや、上は」

「子供の働く権利――管理局で魔導師に認められているそれを、拡大解釈したものなの。
拡大派の意見は、『子供の働く権利を認めているのだから、障害児もそれを認められてしかるべきだ』というもの。
その為の<子供工場>、<特甲>だそうよ――<海>の慢性的戦力不足は、地上から人材を吸い上げても止まるところを知らない。
だから、三提督の皆さんも認めざるを得なかった制度……」

「……酷い話やな、それで? その特甲児童がどうしたんや」

こみ上げて来る苦いものを飲み下す/組織人としてのはやての顔/この十年で身につけたもの――動じないタフさ。
真剣な顔でフェイトを見つめる――フェイトも真っ向から彼女の視線を受け取る。

「うん、それでね、先日最強の特甲児童、特甲猟兵が<陸>に引き抜かれたの。それも四人も。
それぞれ、紛争地域で抑止力として機能していた第一級の戦闘型特甲の使い手だった。彼らの転任先は――」

ごくり、とつばを飲み込み、はやてはその言葉を聴いた。

「――次元世界ミッドチルダ首都クラナガン地上本部。つまり、ここ。引き抜きはレジアス中将が率先して行ったらしいの。
地上の新たな戦力――アインヘリアル計画での、マスターサーバー<轟>の配備もこの布石だったみたい。都市全土を覆う電子干渉能力のせいで、
マスターサーバーに認められていない大型機動兵器の使用は困難になったけれど……防衛用に特甲猟兵四人は強大すぎる力……」

言い終えると、フェイトは溜息をついた。成人にもなっていない子供を戦場で用いているのは自分たちとて同じだ。
だが、特甲児童のコンセプトは異常だ――四肢のない/失くした子供達を兵士として教育する狂気じみた計画。
人体の機械との融和――最終的に、脳が戦闘用の異形の四肢を受け入れ、己の手足として操作することでこの兵士は完成するのだという。
そこまでして、子供を戦地に送ることが正しいことなのか――?
はやてが、口を開いた。

「……つまり、オーヴァーSランク魔導師級の戦力が、地上に出現したってことでええんか?」

頭を振って、フェイトは告げた。
真実を――ただ、絶望的なまでの力の差を。

「それ以上だよ、はやて。その子達の一人、『白露・ルドルフ・ハース』は一人で砂漠地帯の紛争を止めた。
たった一人の特甲猟兵が、魔導師の大部隊同士の睨みあいを、抑止力となって止めていたの」

217 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 00:27:01 ID:VX+ZCzm2
レベル3があの子の時間を止めた 支援

218 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 00:27:45 ID:e1fgzME7
亀田兄弟マダー?支援

219 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 00:29:30 ID:VX+ZCzm2
キルゾーンに叩き込め! 支援

220 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 00:33:46 ID:agvE6DLT
スバル――公園を横切り、のアマチュア演奏家/役者/芸人達の路上パフォーマンスを素通り。
その隅に位置する、ひっそりとした木漏れ日の下に、『彼』はいた。優しい音色が聞こえる――スバルの顔が綻ぶ/だが焦る。
しまった、先に来られていた――早歩きで音源まで歩んだ。
クリーム色のジャケット/ズボンのサスペンダーに青い馬のバッジ。
蓋が開いたバイオリンケースには、聴衆が入れた小銭がきらきらと光っている。
そっと近寄り、微笑む/少年の目線がスバルに向けられる――すぐに何も見ていない半ば眠る表情に。
弦を奏でながら、スバルのほうを体が向いた。
スバルは白露の奏でる音色を聞きながら、目を閉じた。

(いい感じだと思わない、ティアナ? きゃー、あの子、あんな近くにいるよ?!)

(わざわざ念話で実況しないでください、ギンガさん!)

一方、二人は近くの公園のベンチに座り込み、出店で買ったクレープを喰らいながらスバルと少年=白露を観察。
不意に、ギンガが息を呑む/じっと少年の顔を見つめる。
その様子に不信感を抱き、ティアナは小声で問いかけた。

「どうしたんですか? 何か――」

「地上本部に新しく来た管理局員? レジアス中将のお墨付きの……」

会話を再び念話に切り替える/質疑応答。

(あの人――白露さんって、管理局員だったんですか?)

(う、うん。私も父さんから又聞きしたくらいだけど、間違いないと思う。<海>から引き抜かれた中将の切り札だって)

ティアナの驚き――<陸>のトップに引き抜かれるほどの逸材が、スバルとデート?

「ひょっとして玉の輿?」

何か、恐ろしい予感――天変地異でもあるんじゃなかろうか。
そのまま、スバルと白露は公園の外のカフェテラスへ――そして、白露が一瞬こちらを振り返った。
値踏みするような、ひどく透明な目=まるで硝子球。

「――っっ!! 気づかれましたね……!」

「そうみたい……これ以上は退散かな、ティアナ」

そそくさと尾行者二名は立ち去った。
ちなみに、この後ティアナがクラナガン大食いツアーに参加させられたのは言うまでもない。
ランスター、撃沈。


221 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 00:35:12 ID:agvE6DLT
「? どうしたんですか、白露さん」

白露――スバルのほうを向く/微笑を浮かべる。
気のせいだったよ、と一言――スバルが眉を顰めて、「へ?」と言った。

「いいや、なんでもない。それじゃ行こうか」

何処か陰のある微笑/細い形の良い指がスバルへ差し出される。
スバル――白露を見つめおずおずと手を伸ばし、頬を朱に染めて手を取った。


カフェテラスでの会話は、楽しかった。
何時もなら山のような量の食事を平らげるスバルも、今日この日は食べる量をセーブした。
といっても、サンドイッチを2皿も食べたのだから、一般的な基準から言えば多いが。
1皿目で満足できずにおろおろしていると、白露が言った/銀に近い金髪が揺れる。

「もう1皿頼もうか?」

「で、でも……」

らしくもなく吃音ぽくなるスバル/羞恥で顔が真っ赤に。
うっすらと笑みを浮かべて、白露が注文する――すぐに運ばれてくるサンドイッチ。

「恥ずかしがることは無いよ。スバルさんは育ち盛りなんだし、遠慮しちゃ駄目だ」

貴方の前だから遠慮したいんです――という心の声を押し殺して礼を言う。
恥ずかしがりながらの言葉。

「あ……ありがとう、白露さん」

完全に乙女なスバルの、花も恥らう初々しい空気。
白露=穏やかに、相手の気持ちを酌むように。

「何時も聴いてくれてありがとう、スバルさん」

スバル――咄嗟に返せずにかぶりを振る/御礼を返す。

「う、うん。何時も聴かせてくれてありがとう」

「どういたしまして」

少年の人形のように整った顔が、にこりと微笑む。
ふと、思いついたことを言ってみた、というふうに喋った。

「録音とかはしないの? 携帯端末に。あ、でも、録音したら聴きにくる必要なんてないか」

「そんなことないよっ!」

身を乗り出しながら。

「なんていうか……白露さんが直接弾くのが、一番いい。だから、録音してもきっと来る」

「そう言われると……嬉しいな」

冷たさを帯びる目はそのままに、少し照れたように微笑む。

「じゃぁ、カフェになんか誘わず弾いてたほうが良かったかな」

勢い込んで否定する――青いさらさらした髪が揺れる。

222 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 00:35:56 ID:agvE6DLT
「ううん、そんなことないよ?! 白露さんの言ってたお話とか、考え込んじゃったし」

「スバルさんが欲しいものはわかった?」

何かを期待する声音――微笑ましげな表情。

「一番目は、みんなを護れるようになること。二番目は、あの人――高町なのはさんみたいに、強くなること。誰も傷つけずに戦える力が、欲しい」

一本ずつ指を立てていく――最後になって言葉に詰まる。
むうー、と眉根を寄せて考え込む。


「三番目は……なんだか上手く言葉にできなくって……」

「多分、忘れてるからさ」

同じように指を立てながら、白露が言う。

「僕が一番目に欲しいのは、砂漠から出ること。二番目は、砂漠に戻らないこと。三番目は、ある歌を、もう一度聴くこと。
でも、どんな曲だったかわからない。それさえわかれば砂漠から出られる気がするのに」

砂漠、という言葉にスバルが反応した。おおよそこの少年に似つかわしくない言葉だった。
なんだか、街の音楽教室にでも通っていそうな線の細い白露が、そんな場所にいたとは到底思えなかった。

「どうして、砂漠に?」

「兵隊だった」

宙を白露の硝子球のような青い瞳が見る――目の冷たい輝きが増す。
ぞっとするほど低い、淡々とした声音だった。

「軍の命令でね。千日以上も、何もない――たまにサンドワームが来るくらいかな――砂漠の真ん中の待機所で暮らしてたんだ。
あそこで色んなものを失った気がする。その代わり、分かったこともある」

相手の虚無に飲まれそうになる/引き込まれる。

「分かったこと……?」

「感情は物質だってこと」

優しい顔――冷たさを宿す瞳/途方もない虚無が覗く。

「物質は感情だと言い換えてもいいかな。たとえば心臓移植の後、臓器を提供した人の記憶が、移植者に移ったりすることがあるんだって。
血液の中に、脳が記憶する為の物質が混ざってて、心臓に滞留してるからだよ――」

「へぇ……」

感心するというよりも、相手の虚無が少し怖くなる。
でも、どきどきした。

「そういうことが、砂漠にいるとわかってくるんだ。砂は、感情を――形を失った物質の最後の姿だから……」

「砂漠って、とても広いんでしょ?」

話題を変えようと努力するが、失敗。
冷たく透き通る目――過去に経験した砂漠を見つめる目だった。
無機質な声が響く。

「僕の生活では、あれは、箱だった。三百平方キロメートルもの空間に、砂しかない、巨大な空白――そこに、たった一人でいたんだ」

223 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 00:37:27 ID:agvE6DLT
「軍隊なのに、一人?」

仲間の姿が思い浮かぶ――ティア、エリオ、キャロ。大切な仲間たちが自分にはいて、共に戦ってきた。
それが、白露にはない?

「僕は平和維持軍の末端の末端の端っこで、そこにいるのが仕事だった。僕という兵士がいるだけで、色んな言い訳ができるらしい。
何もない光景はね、人間の心にとって壁と同じなんだ。何処まで行っても同じ景色に囲まれていると、小さな箱に閉じ込められた気分になる。
そのせいで様々な神経症に襲われたよ」

驚愕――相手の秘密に触れているという気分。
この少年が、そんな地獄に触れてきたのか、という驚きと、

――悲しみ。

すっ、と立ち上がり、白露の傍まで歩み寄った。
白露の過去を反芻する目を真っ向から見つめ、その白いほっそりした手を握った。
驚きに見開かれる冷ややかな瞳。

「スバルさん?」

すうっ、と息を吸い込んで、無意識のうちにその言葉を吐き出していた。
思い切って言った。

「白露さんの砂漠を見てみたい」

辛い思い出の話だけに、怒られるかもしれないと身構えながら。
だが、白露はくすっと笑う/怒ったりもしない/むしろ嬉しそう。

「僕の砂漠か」

ふふ、と笑いながら。

「確かに僕の砂漠だ。他の生き物もいたけれど――サソリ、トカゲ、サンドワーム。あとは……」

最後の言葉は、聞き取れなかった。

「僕が砂漠で心を失う前に、君に会いたかったな」

「……まだ間に合うよ」

白露は、立ち上がると「そうだといいね」と儚く笑った。
スバルは、何も言えなかった――自分の弱さが、情けなかった。

224 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 00:38:27 ID:VX+ZCzm2
可能な限りさっさとやれ 支援!

225 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 00:42:08 ID:agvE6DLT
皆様、支援ありがとうございました。
他の連載に支障が出ないように、短期連載で書き終えていきたいと思います。

次回、クラナガンに水が欲しい人現る!!
夕霧はいないから、ヒロイン=スバル一直線です!!

感想等よろしくお願いします。

226 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 00:42:25 ID:NHJ0rhXu
支援

227 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 00:42:41 ID:VX+ZCzm2
バイオリン弾きさんのための歌 支援

って終わってる!?W

228 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 01:15:53 ID:dRmFotmq
面白かったですw

229 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 07:33:39 ID:BI9WEj+x
先日嘘予告として書き込んだHALOクロス。
ついに書き出して、第一話が書き上がったので、
7時40分から投下開始しまっす。

230 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 07:38:57 ID:I7IW2VGx
遅ればせながらゲッター氏GJ!
まさか破壊と殺戮と渋い親父の多い氏の作品で、ここまで可愛らしいスバルを見られるとはwいいぞ、もっとやれw

231 :-THE REQULIMER- LV1 [First contact]:2008/07/02(水) 07:40:49 ID:BI9WEj+x


 ――――空の向こうに何かあるって考えたことはある?


 無。


 まったく何も無い。
 音も、光も、重力も。
 暗闇の中、"其れ"は巨大な惑星に引き寄せられていく。

 ――自由落下という奴だ。

 大気圏外から地表めがけて、何千キロもの距離を一直線に。
 まず最初に訪れたのは熱であり、続いて衝撃。
 分厚い空気の層に叩きつけられた"其れ"は、摩擦による途方も無い熱量に耐えながら、
 一挙に回復した重力によって、瞬く間に大地との距離を縮めていた。

 "其れ"は、岩ではなかった。

 震動に揺さぶられ、表面を焦がし、時折何かの破片を剥離させながら、
 只管に突き進む"其れ"は、何らかの知的生物によって作り出された――――人工物であった。
 無論、大昔から軌道上に存在している、数多の漂流物の一つが、
 惑星の引力に導かれて降下してきたのだ、などという可能性もある。
 しかし、明らかに"其れ"は未だ機能を喪ってはいなかった。

 数回、装甲と思わしき部位が剥がれ落ちると、即座に落下傘が開いたのだ。
 無論、この圧倒的な摩擦熱の前では、瞬く間に燃え尽きてしまうのだが、
 "其れ"は、落下傘を代償にして姿勢を安定させる事に成功する。

 そして――――文字通りの流星と化して、"其れ"はミッドチルダの大地に落着した。
 
********************************************

232 :-THE REQULIMER- LV1 [First contact]:2008/07/02(水) 07:42:00 ID:BI9WEj+x


「これが二日前の話。レリック――と断定はできないけれど。
 それに類似する存在が、クラナガン北西に落着した」

「……そういや、昨日のニュースで見た気がするわ。
 流れ星が落ちてきた、って随分と騒いどったなぁ」

「ええ。今朝の段階では、こんな物体だなんて私も知らなかった。
 まさか軌道上の衛星に動画が残っているなんて思わなかったから。
 私も事態を把握したのは、昨日だったの」

 薄暗い室内――――聖王教会の一室。
 カーテンによって完全に光を遮断された其処では、
 二人の女性がモニターに向かって視線を送っていた。
 外宇宙から飛来した何らかの人工物が、
 大気圏へと突入し、燃え上がりながら――……
 しかし形状を保ったまま、大地へと到達する映像。
 それを注視している一人は、騎士カリム・グラシア。
 そしてもう一人。
 八神はやて。正式名称、古代遺物管理部機動六課――
 即ち、通称を「六課」とする新設部隊の指揮官を務める人物である。
 そのはやての言葉に頷き、カリムは空中に投影されたキーボードへと指を走らせる。
 繊細な指捌き、深刻な顔つきとは対照的な、軽快な電子音が数度響き、
 続いてモニターに映っていた画像が切り替わった。

「そして問題が、これ。今日の本題」

「ん――? これ、大型次元航行船やないか……ッ」

 ええ、と頷くカリム。驚愕するはやて。
 無理も無い話である。
 それは異形の大型船舶であった。
 次元航行船――或いは単に宇宙船とでも呼ぶべき巨大な影が、
 ミッドチルダの衛星軌道上に数隻浮かんでいるのである。
 
「管理局にこんな型の船はない筈やし……船籍は?」

「不明。
 通信を送る間も無く、船舶はすぐに姿を消したから。
 未確認の世界からという可能性もあるし、或いは広域次元犯罪の可能性もある。
 でも一番の可能性は――――」

「落着物……レリック絡み、やな」
 
「ええ。本局へはまだ正式報告はしていないわ。
 一応、クロノ提督には連絡して、軌道上の警備を厳重にして貰っている。
 でも――はやてには話しておこうと思って。
 そして、これをどう判断するか。どう行動すべきか。
 慎重に行動しないと――失敗するわけにはいかないもの」


233 :-THE REQULIMER- LV1 [First contact]:2008/07/02(水) 07:42:22 ID:BI9WEj+x
「…………………」

 その通りだ。慎重にならざるを得ない。
 レリック事件も。その後に起こる事件も。
 対処を一つ間違えれば、どんな災厄が起きるかわからないのだから。
 だが――だからと言って、後手後手に回ってはならない。
 慎重に行動した結果 『間に合いませんでした』では駄目なのだ。

 ならば。

「だったら、すぐに調査してみんと。
 うちらに任せてくれるか、カリム?」

 そう、ならば。
 機動六課――自分達の出番だ。
 そう言って、はやては頷いた。
 キーボードを叩き、暗幕を取り払う。
 眩いばかりの陽光が室内を明るく照らし出した。
 ――このように、暗い状況でも打破できる部隊。
 それが機動六課なのだと、言わんばかりに。


「何があっても、きっと大丈夫。
 即戦力の隊長達は勿論。新人達も実戦に対応可能。
 予想外の事態にも、ちゃんと対応できる下地はできてる。
 だから――絶対に、大丈夫や」


 かくして、機動六課に初めて、アラートが響き渡る。

 ヘリで現場――山間の落着物へと向かった六課の面々は、
 空中型ガジェットと遭遇し、これを迎撃する方針を固めた。
 隊長陣にして空中戦力であるスターズ1、ライトニング1が迎え撃ち、
 それに平行して、残存兵力が地上落着物の警備を担当。

 ――――――何の問題も無かったのだ。
 少なくとも、その時までは。


*********************************

234 :-THE REQULIMER- LV1 [First contact]:2008/07/02(水) 07:42:57 ID:BI9WEj+x

《スターズ1、ライトニング1、エンゲージ!》
《スターズ1、ヘッドオン! シュート……ナイスキル!》
《続けてスターズ1、アクセルシュート》
《ライトニング1、ハーケンモード! 2キル!》

「…………ふぇー。なのはさん達、凄いなぁ。
 うわ! 見て見てティア! あの反転機動!
 上に昇りながらひっくり返って向き変えてる!」

「スバルうっさい。
 無駄口叩いてる暇があるなら、ちゃんと周り見てなさい。
 この落着物を取られたら、アタシ達の負けなのよ」

「だぁいじょうぶだって。ティアは心配性なんだからー」

 通信機から聞こえる管制官達の報告を聞きながら、
 二人の少女が、光点の明滅する空を見上げていた。
 スバル・ナカジマ。ティアナ・ランスター。
 真新しい白色のバリアジャケットに身を包んだ彼女達は、
 スターズ3、スターズ4――つまり、機動六課の新人フォワードである。

 度重なる訓練を重ねて、ようやくの初任務。
 新型の装備に、新しいバリアジャケットも相俟って、
 地上に降り立ったばかりの彼女達は、興奮と緊張の最中にあった。
 ――――が。
 それも自分達の担当する場所が「安全」だとわかるまでの話だ。

 勿論、ガジェットが地上を襲撃する可能性はある。
 ……あるのだが、しかし空中で簡単に蹴散らされているのを見ながら、
 こうして手持ち無沙汰に落着物の護衛をしていると、
 そのような高揚した感覚は、あっという間に冷めていった。
 つまりは平常心、いつも通りという事だ。
 ある意味では理想的な状態とも言えるが……。
 しかしティアナにしてみれば、初任務としては少々、不本意だといわざるを得ない。
 焦りにも似た感情。最も、それに突き動かされるほどの衝動では無いのだが。
 
「それにしても……」

 そういった自分の心情を落ち着かせるべく――意識しているかどうかはともかく――
 彼女は、自分達の護衛対象である落着物へと視線を向けた。

「……何なのかしらね、これ」

「うーん……まあ、お星様には、見えないよねぇ」


235 :-THE REQULIMER- LV1 [First contact]:2008/07/02(水) 07:44:01 ID:BI9WEj+x
 数十メートルに渡るなぎ倒された木々と、抉られた大地の先に、"其れ"はあった。
 巨大な金属の塊、とでも表現すれば良いのだろうか。
 半ば以上は地面にめり込んでいるそれは、入り口らしい開口部を此方に向けて鎮座している。
 地面に埋まっている部分もそう大きくは無いが、
 それでも六課の有するヘリコプター程の大きさはあるように思えた。
 だが、用途がわからない。
 こうして形状をほぼ完全に留めたままという事は、かなり頑丈に作られているのだろうが。

「……わかるのは、なのはさん達の戦闘が終わって専門家が来てから、か」

「でもさ、結構ミッドチルダ風じゃないかな、あれ。
 レリックって言うから、もうちょっと古臭いの想像してたんだけど」

「見た目に惑わされないの。綺麗な宝石みたいなのだってあるん、だ、か………」

「ん? ティア、どうしたの?」

 そう言いながら落着物から視線を外したティアの表情が、一転して硬く険しいものになる。
 それにつられて、彼女と同じ方向へとスバルも眼を向ける。
 ――そして、それを認識した。
 
 それが第一の『想定外』。

 巨大な影が、空間からにじみ出るようにして現れる。
 それは船だった。
 無論、ただの船である訳がない。
 戦闘目的に建造された船だった。
 堅牢に作られた装甲。巨大な推進器。
 そして、それに取り付けられていた銃口は、明らかに此方に向いていた。
 ―――敵だ。

「――――ッ! スバル、戦闘準備!
 こちらスターズ4! 緊急通信―――敵の増援です!」

 ――――本当、とんだ初任務になりそうだ。
 身体の内から湧き上がってくる高揚感を覚えながら、
 突如として空中に出現した船を相手取り、ティアナはその手に銃を握り締めた。


***********************************************

236 :-THE REQULIMER- LV1 [First contact]:2008/07/02(水) 07:44:52 ID:BI9WEj+x

 それに前後する事、数分前。
 ライトニング分隊――即ちエリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエ、
 そしてフリードリヒの二人と一匹は、レリックと推定される落着物、その内部にいた。

 年若く、経験も不足しているとはいえ、それでも立派な管理局員である彼らは、
 物珍しさに周囲を見回しながらも、生真面目な表情で警備、調査に当たっている。
 少なくともその点においては、良くも悪くも、スターズよりは緊張感があるといえた。
 或いは、落着物内部の雰囲気に呑まれてしまったのかもしれない。

 特段、何か危険な物体があった、というわけではない。
 其処にあったのは、一つの巨大な――透明のケースだった。
 今まで黙って其れを眺めていたエリオは、搾り出すようにして口にする。

「――――まるで、お墓みたいだ」

 完全な静寂に支配された暗室。
 その最奥に安置されている棺の中には、一人の人物が眠っていた。
 緑色の鎧兜、甲冑を纏って横たわる彼は、まるで古の英雄のよう。
 むしろ荘厳ささえ感じさせる光景は、まさしく墓の其れだった。
 となると、周囲に置かれた大小さまざまなコンテナは、
 英雄の為の副葬品といえるのかもしれない。

 いずれにせよ、尊い光景に思えた。
 尊く、寂しく、そして穏やかな風景。
 となると、僕達はこの人を――この人のお墓を守ってるのかな。
 そんな思いを抱いたエリオは苦笑を浮かべて首を左右に振る。
 ――――と、不意にキャロ、フリードが棺の更に奥へ視線を向けているのに気がついた。

「……どうか、したの?」

「え、あ、いえっ。何でもないんです、ただ――……」

「ただ?」

「……誰かに、見られているような気がして……」

 その言葉に従い、エリオもまた棺の向こう側へと眼を向ける。
 勿論――誰もいない。いる筈がない。
 ここにいるのは自分達と、あの棺の中の戦士だけなのだから。

「――大丈夫だよ、誰もいない」

「そう……ですよね。ごめんなさい、私、ちょっと緊張しちゃって――」

 無理もない、と思う。
 自分だってそうなのだし、それなら彼女だってそうだ。
 だからエリオは少しだけ照れ臭そうな様子で、笑いかけた。

「うん、僕も、そうだから。――だから、その。大丈夫だよ」

「――――うん」

 その言葉にキャロが返事をした直後であった。
 アラート。新たな敵の出現を察知したティアナからの全員通信。
 それを聞いた二人は、互いの手を握り締め、落着物から外へと飛び出していく。

 ――其の背中を、カメラアイが見つめていた事にも気付かずに。

*****************************************

237 :-THE REQULIMER- LV1 [First contact]:2008/07/02(水) 07:45:55 ID:BI9WEj+x

 船はどうやら、恐らくは降下艇であるらしかった。
 地面に降り立つと同時に展開されたタラップからは、
 二十体近くの敵増援が姿を現した――――が。

 予想外の事態が一つ。

「な、なにあれ……」

「ガジェットじゃ――無い?」

 そう、ガジェットではなかった。

 それは人間の胸ほどの身長の、小柄な異形の兵士達が二十名。
 そして――3mはあるだろう、巨大な兵士が一人。

 どれもが不気味な装甲を纏っており、手には奇妙な武器を携えている。
 誰もが初めて見る、そして初めて知った相手だった。
 別段、フォワード陣だけではない。
 その背後に控えるロングアーチにとっても、だ。

 エイリアン(異星人)。或いはインヴェーダー(侵略者)。

 次元管理局の、決して短いとはいえない歴史を紐解いても、
 非人類型の存在と接触した例は皆無である。
 即ち、これはどういう事なのか。

 ―――――――ファーストコンタクト。

 まったく、冗談じゃない。とんだ初任務だ。
 そんな言葉が思い浮かび、ティアナは頭を振って思考を追い払う。
 目の前で武器らしき物を構えている存在がいるというのに。

「…………ッ! 迷ってる暇は無い、か。
 スバル、クロスシフトA!
 エリオはスバルと一緒に敵を霍乱!
 キャロは――エリオをブーストした後、チビ竜で攻撃!」

「わかった!」
「了解!」
「了解しました!」

 それぞれの応答があり、六課フォワード陣が動き出す。

238 :-THE REQULIMER- LV1 [First contact]:2008/07/02(水) 07:46:46 ID:BI9WEj+x

「いっくぞぉーっ!」

 まずスバルが両腕を打ち合わせ、マッハキャリバーの速力によって突貫。
 シールドとバリアジャケット、そしてあのスピードは、フロントアタッカーとして最適だ。

「我が乞うは、疾風の翼――――」

 ついで、キャロの詠唱が始まる。
 支援魔法。および竜使役による火力。
 まったく、将来が恐ろしいったらありゃしない。

「……一気に行くよ、ストラーダ」
《OK!》

 ブーストによって速力が上昇すれば、多少防御力が低いとはいえ、
 エリオも十二分に前線で戦うことができる。
 何せ彼の速度は、少なくとも新人フォワードの中では最速なのだから!

「よし、クロスファイア―――………」

 そして自分――ティアナだ。
 カートリッジをロードし、魔力を補充。
 銃身に集中させ、一気に解き放つための準備をする。
 あの数だ。まともに撃っていては話にならない。

 こうして、機動六課フォワード陣は攻撃の準備を始めていた。
 スバル、エリオが突貫し、敵歩兵を霍乱した後、
 ティアナとキャロの一斉射撃で、殲滅する。
 作戦としてはシンプルだ。
 これが通常のガジェット戦であれば、容易に成功しただろう。

 だが、ある意味では当然の話だが。
 どんな魔導師が接近するのよりも。
 どんな魔導師が呪文を唱えるよりも。

 ―――狙いをつけてトリガーを弾くのは、早いのだ。

 鋭い発射音が連続して響き渡り、緑色の光弾が一挙に発射される。
 大気を焼く、科学的な臭い。それが鼻に届くよりも先に飛来する雷光。

 それに最初に対応したのはスバルであった。
 勿論、フロントアタッカーの彼女は慌てない。
 今まで経験してきた――主になのはやヴィータの――弾幕よりも、
 圧倒的に濃い攻撃の嵐の中にあっても、
 その右腕に展開したシールドとバリアジャケットがあれば、大丈夫。
 大丈夫。大丈夫なはずだった。

 ただ――そう、ここで第二の『想定外』が発生する。

239 :HALO代理:2008/07/02(水) 07:59:40 ID:4xYf3wgV

「――――へ?」

 バリンという軽い音と共に、シールドが弾けて消えた。
 その事実を認識するよりも先に、更に続けて飛んできた光弾が、
 彼女の左肩を撃ち据える。
 バランスを崩した主の身体を、マッハキャリバーの車輪が必死で支え、
 転倒する事無く、速力を維持したまま、体勢を立て直す。

「う、うわわわわわわわわわッ!!」

 痛みを堪えながら急速旋回。マッハキャリバーを駆使して、敵の集団から距離を取る。
 何かの焦げる――嫌な臭い。スバルはちらりと発生源に眼を向ける。
 新品だったはずのバリアジャケット、その左肩が無残にも焼け落ちていた。
 ――もしもバリアジャケットが無かったら。
 その事を考えると、鳥肌が立つ。
 だが――それ以前に、重要な事があった。

「ティア! シールドが通じない!!」

 だが、その叫びは既に遅い。
 統率された兵士達の弾幕は、互いの装填を補うことにより、ほぼ絶え間なく続く。
 無防備に呪文を唱えていた――それを兵士達が認識していたかは別だが――キャロ。
 ブーストがかかるのを待っていたエリオ。
 そして銃を構えたまま突っ立っていたティアナにも、光弾は、容赦なく襲い掛かっていたのだ。

「――――ッ! 遮蔽を……ッ!!」

 撃ち返すよりも先に、ティアナの身体は回避を行っていた。
 飛ぶようにして弾幕から身を避けて、背後にあった遮蔽物――落着物に身を隠す。
 見れば向こうではエリオがキャロを庇いつつ、同様の場所で遮蔽を取っており、
 そして、向こうから走ってきたスバルが隣へと転がり込んできた。
 
「スバル、キャロ、エリオ、チビ竜! 怪我は!?」

「あたしは無事だよーッ」

「わたしも……な、なんとか……ッ!」

「僕は――ハイ、大丈夫です!」

 みんなの声が震えてる。
 当然だ。きっと自分の声でさえ震えている。
 詠唱が間に合わない。呪文が発動できない。
 シールド、バリアジャケットが意味を為さない。

 ただでさえ初めての実戦だというのに、あまりにも状況が異質すぎた。

 勿論、だからと言って容赦してくれる筈もない。

 ちらりと遮蔽物から眼を出し、様子を伺う――ーと、
 今まで弾幕を小人兵士を任せていた巨人兵士が、その右手を構えるのが見えた。
 その先端には、他の光弾と比べるとあまりにも凶悪な灯りがついている。

 ――――アレはマズイ!

240 :HALO代理:2008/07/02(水) 08:00:10 ID:4xYf3wgV
「みんな、伏せてッ!!」

 言葉が早かったか、或いは砲撃の方が早かったのか。
 凄まじい衝撃と轟音が遮蔽物を揺さぶり、土砂が周囲に舞い上がる。
 砕けた地面の破片がフォワード達にも降り注ぐ。

 ――ティアナは、自分の歯が鳴っている事に気がついた。

 敵の攻撃は非殺傷ではない。ある筈が無い。
 実戦。負傷どころか、死の危険性さえ伴った実戦。
 機動六課に来る前、災害救助で危険な場所に赴いたことはある。
 森林警備だって、それなりの危険は伴っていた。
 スバルは死が間近に迫ったことさえある。
 だが――悪意を持った何者かの、殺意を持った攻撃。
 それに晒された事は――フォワード陣の誰もが、初めてだった。
 歯を食い縛る。
 死にたくは無い。怪我もしたくない。
 死なせたく無い。怪我をさせたくない。
 なら、前線で指揮を飛ばすセンターガードがしっかりしなければ。
 パン、と軽く自分の頬を叩いて気合を入れる。
 大丈夫。大丈夫だ。ランスターの弾丸は狙いを外さない。

「スバル、エリオ!
 援護するから――できる限りで良いから、敵の弾幕を凌いで!
 キャロ、ブーストは良いから、攻撃に集中して。
 クロスミラージュと、チビ竜の火球で…………。
 ――あのデカブツさえ叩けば、何とかなる……からッ」

 そう叫び、ティアナは銃を突き出して射撃を開始する。
 放っておくとガチガチと鳴りそうな歯を食い縛り、
 震えそうな足を踏ん張って、腕を突き出して必死にトリガーを引く。

 勿論、それに答えないわけにはいかない。

 怖い。どうしようもなく怖かったが――スバルとエリオもまた、遮蔽物から飛び出す。
 勿論、防御をしても仕方ないのは理解しているから、回避を優先して。
 そしてあの巨人兵士の攻撃する様子が見えたら、即座に遮蔽物へと引っ込むのだが。

 唯一の幸いは、敵にも同様に攻撃が通じるという事であった。
 どういうわけか、光弾がバリアジャケットや、此方のシールドを貫通するのと同様に、
 此方の魔法による攻撃も、相手のフィールドタイプらしい防御を貫くのである。
 勿論、スバルやエリオが接近して攻撃できる程の余裕は無いが、
 弾幕の合間を縫って発射されるティアナ、キャロ――フリードの火球は、
 辛うじて、数名の歩兵から戦闘能力を奪い、迎え撃つことには成功していた。

 だが――本命である筈のデカブツ、巨大な兵士にはまるで通じない。
 全身に纏った強固な鎧が、その悉くを弾いてしまうのだ。
 更に言えば、彼女達の魔法に対し、敵の弾幕はあまりにも量、速度ともに多すぎる。
 此方が一発撃つ間に、無効が十発近く弾丸を撃ち込んでくるのでは、まったくのジリ貧だ。
 そればかりか、時折発射される巨人兵士の砲撃が、遮蔽物を揺さぶり、精神を痛めつけていく。


 ――――初陣にしては、あまりにも絶望的な状況であった。


********************************************

241 :HALO代理:2008/07/02(水) 08:01:38 ID:4xYf3wgV
 その光景をモニター越しに眺めていたロングアーチおよび八神はやては、
 あまりにも絶望的な状況に対し、自分達がルーキーを死地においやった事を理解する。

 脳裏に浮かぶのは、あの軌道上に出現した戦艦だ。

(奴ら、いなくなったんやのうて――文字通り、姿を消してたんや!
 それで、密かにミッドチルダに降りてきた……あの落着物を狙って!)

 勿論、今更気付いたところでどうしようもない。
 戦場に『もしも』などと言った言葉は存在しないのだ。
 そんな事に時間を費やすくらいならば、何でも良いから行動しろ。
 後になってから正解を思いつくより、余程建設的だ。

「――せやったな、ナカジマ三佐」

 かつての恩師の言葉を思い返す。
 そうだとも、ここで彼女達、将来有望なルーキー、自分の部下を傷つけるわけにはいかない。
 その為にはどうするべきか――少なくとも機動六課に予備兵力は無い。
 はやておよびヴォルケンリッターが現場に急行するには、あまりに時間がかかりすぎる。
 となれば、現在、上空で戦闘行動中のなのは、フェイトの二名のみだ。

242 :HALO代理:2008/07/02(水) 08:02:26 ID:4xYf3wgV

「スターズ1、ライトニング1、現状は!?」

《此方スターズ1。ごめん、はやてちゃん――敵の数がちょっと多すぎるの!》

《ライトニング1――それでも、後10分もあれば……ッ!》

「無茶でも何でも、五分で片付けるんや!」

 そう叫ぶと同時に、通信――念話の対象を即座に切り替える。

「――――スターズ4、ティアナ! 聞こえるか!?」

《は、はい、八神隊長!》

「あと五分、五分だけ耐えて欲しいんや。すぐに救援が向かうからな!」

《了解――了解、しました!》

「ロングアーチは、敵勢力の調査! データ収集もや!
 リィン、情報を整理したら、片っ端からフォワードに送信!」

「了解したです、はやてちゃん!」

 そして再度、念話を切り替える。
 最悪の場合に備えて、隊長陣のリミッター解除の嘆願を開始するのだ。
 自分に出来うる行動はあまりにも少ない。
 だが、それでも行動しないよりは、遥かにマシだ。
 マシの、筈だ。

 グッと歯を食い縛りながら、八神はやては行動する。
 ロングアーチも、スターズ分隊も、ライトニング分隊も。

 誰もが必死で戦い続ける。それぞれの戦いを。


 ―――――だからこそ、誰も気付かなかった。
 落着物の内部で、何かが動き始めた事に。

 そう、第三の――『想定外』が、起こり始めた事に。


************************************

243 :HALO代理:2008/07/02(水) 08:03:54 ID:4xYf3wgV

 薄暗く、静寂に満ちた室内に、微かな光が灯った。
 続いて腹の底に響くような、機械の唸る音が響く。
 それに伴い、光源が一つ、二つと次々に数を増していき、
 ついには"それ"を照らし出す程にまでなっていった。
 "それ"は棺桶のように思えた。
 戦いに戦いを重ねて、ようやく兵士がたどり着く平穏。
 しかし"彼女"は、その穏やかな時間を壊さねばならない。
 一瞬の躊躇の後、"彼女"はその棺桶を起動した。 


《…………よく眠れた?》

 低い音を立てて、棺桶の蓋が持ち上がる。
 "彼"にとっては聞き慣れた声。
 さて主観ではつい先程まで聞いていたのだが、
 客観ではどれほどの間、聞くことが無かったのだろうか。
 姿の見えない女性の声に対し、低い落ち着いた声で返答をかえす。

「ああ。キミが管理していた割には。
 ………………状況はどうなっている?」

《あんまり良いとは言えないわね。
 ――――あなたが必要になったのよ》

 詳細な説明を女性がするより先に、鈍い震動が船体を襲った。
 更には微かにだが大気の焦げる懐かしい臭いが漂ってくる。
 そして――空間を切り裂く、あの鋭い射撃音も。

「時間はあまり無いようだ」

 それで悟ったのか、彼は声に対して頷きを返した。

《いつもと同じね。――戦ってるメンバーも。
 たった四名で粘っているけれど、長くはもちそうに無いわ。
 ……変ね、戦争が終わったのを知らないのかしら。
 どちらに味方するの?》

「人類だ」

《でしょうね》

244 :HALO代理:2008/07/02(水) 08:05:06 ID:4xYf3wgV
 
 手近なコンテナの一つを解放し、内部から黒光りする兵器を引っ張りだす。
 コンテナに刻印された文字はMA5C。
 俗にアサルトライフルと呼称される、強力な携行火器である。
 それを背中にマウントし、続いて左腰に手を伸ばした。
 其処に吊るされているのは一丁の拳銃。
 既に型遅れになって久しいが、彼にとっては唯一無二、最良のサイドアームだ。
 そのスライドを引き、初弾を送り込む。

《…………大丈夫? 目が覚めたばかりで寝惚けていない?》

「問題は無い」

 彼がそう言って船体から飛び出すのと、巨大な兵士――
 ――『ハンター』が、右腕の燃料ロッド砲を発射したのは、ほぼ同時だった。

 すぐ目の前では、両腕に銃を握った娘が何か叫んでいた。
 視線の先には、回避のタイミングを逸したのだろう。
 片腕にガントレットを装着した――やはり少女が、呆然と立ち尽くしている。

 躊躇う事無く彼は駆け出した。
 二挺拳銃の娘を飛び越え、地を駆け、瞬く間に少女の前へ。

 すれ違うとき、彼女が眼を閉じながら何かを呟くのが見えた。
 言葉はわからない。
 だが――……こういう時、兵士がどう思うかは良く知っていた。
 だから彼は言い切った。

「まだ終りではない」


*************************************

245 :HALO代理:2008/07/02(水) 08:05:30 ID:4xYf3wgV

「Not Yet」
  

 もう駄目だ。
 そう思い、呟いた瞬間。
 奇妙な声が聞こえ、スバルが眼を開けると緑色の背中が広がっていた。
 続いて、閃光と轟音。
 間近で炸裂した、巨人兵士の砲撃だ。
 自分が死を覚悟した攻撃。

 だが――自分は生きている。
 奇妙な泡のようなシールドの内部にいるからだ。

「…………へ?」

 事態に脳が追いついていない。
 何故、バリアジャケットをも貫通するような攻撃に、これは耐えているのか。
 いや。
 そもそも目の前の人物は何者なのか。
 緑色の装甲を纏った――戦士。そうとしか認識できない存在。
 そうやって観察している間にも、彼の動きは止まらない。
 瞬きするよりも早くシールドから飛び出したかと思えば、
 その左手に構えた拳銃が、一挙に火を吹いた。

 数えている余裕はあまり無かったけれど、多分十二発だとスバルは思った。
 だって十二体の小人兵士の頭が吹き飛んで、斃れちゃったんだから。
 ティアとキャロの攻撃でやっつけたのが八体で、
 全部で二十体だったから――すごいや、もう小人はいない。


「スバル! 馬鹿! 早く――早く引っ込みなさい!」

 ティアの泣きそうな声が聞こえた。ああもう、ティアは素直じゃないなあ。
 弾幕も消失し、一挙に極度の緊張から解放されたせいか、
 スバルは、ふらつく足取りで遮蔽物へと後退する。

「馬鹿! な、なんであんな所でボーっと突っ立てるのよ、馬鹿!」

「あ……えっと、……うん。……ゴメン」

 へなへなと膝から崩れ落ちるようにして腰を下ろした。
 本当に、生きているのが不思議なぐらいだった。

 そして――――ティアナに謝りながら、視線を戦士のほうに向ける。
 そう、戦いはまだ終わっていないのだ。


**************************************

246 :HALO代理:2008/07/02(水) 08:06:03 ID:4xYf3wgV

 先に言っておこう。
 ティアナの「大火力の敵を率先して撃破する」という作戦は、
 彼女が今までの模擬戦闘で経験したことから導き出したものであり、
 間違いなどではなかった。

 戦闘というのは、互いに全滅するまで行うものではない。
 士気が挫ければ撤退することもあるだろうし、
 ある程度の損害を受けても、撤退するのが得策だろう。
 勿論、状況や作戦などが撤退を許すならば、ではあるが。
 だからティアナが巨人兵士――ハンターの撃破を最優先としたのは、
 重ねて言うが、決して間違いではないのだ。

 巨大な兵士であり、大火力を有するハンターが倒れれば、
 その他の雑兵の士気を挫くか、
 戦力の減退から、指揮官が撤退を決断する可能性は、あった。

 だが、この場合、最大火力を有する敵を狙うのは、
 その敵を一撃で倒せるという事が前提となる。
 仮に倒せないとなれば、雑魚敵からの一斉射撃が延々と続き、
 まともに攻撃することなど、ほぼ不可能だ。

 つまりこの場合は、雑魚を先に潰して弾幕を削った後、
 火力を集中して強敵を撃破するという手法が適切であった、といえる。

 ティアナ、そしてフォワード陣は、
 ガジェットという大多数の兵力に対しての模擬戦闘は何度も経験したし、
 高町なのはという、大火力の存在に対しての模擬戦闘の経験もある。
 しかしながら、両者が混在するという事に対しては経験が無かった。
 其処が、今回のような事態を招いた原因といえるだろう。
 それはティアナの責任ではない。


 ともかくだ。
 "彼"は、敵対存在が好戦的であり、降伏も撤退も有り得ないと知っていた。
 小人兵士=グラントどもの一斉射撃、弾幕が如何に恐ろしいかも知っていたし、
 ハンターの倒し方も実に熟知していた。

 突貫である。

247 :HALO代理:2008/07/02(水) 08:06:29 ID:4xYf3wgV
 まさか"彼"のような存在が乱入してくるとは思わなかったのだろう。
 燃料ロッド砲を発射した直後の、再装填作業の最中、
 それを中断して"彼"を白兵で迎え撃つべきかどうか、一瞬の判断の遅れ。

 実に致命的だった。

 ハンドガンを腰にマウントし、背中のライフルと交換。
 そして500kgの重量と速度を乗せて、"彼"はハンターを銃把で殴りつけた。
 鈍い衝撃。ハンターの巨体が揺らぐ。これで十分だ。

 ハンターの装甲が無い部位は、頭部か腹部。
 普段はシールド(この場合は文字通りの物理的な盾である)に守られているが、
 こうして懐に飛び込んでしまえば、最早打つ手はあるまい。
 銃口を押し込み、フルオートで32発の銃弾を叩き込んだ。

 ――甲高い悲鳴。

 内部に詰まっていた環状生物の群が、ぐずぐずと崩れ落ちる。

 勿論、本来ならば狙撃銃で頭部を撃ち抜くか、
 ロケットランチャーやレーザーを叩き込むか、
 或いはグレネードを投げ込むかするのが手っ取り早いのだが、
 そういった装備は今、この場には存在しない。
 彼のハンドガンは狙撃も可能だが、如何せんハンター相手では火力不足だ。

《あとは――降下艇ね。 グレネードを持って来れば良かったかしら?》

「問題ない」

 方法はある。少々梃子摺るだろうが。
 まさか兵員が全滅するとは思っていなかったのだろう。
 ぐるりと銃口を此方に向ける降下艇に対して、
 彼は油断なく、アサルトライフルのマガジンを交換した。

 そして降下艇に対して肉薄攻撃を仕掛けるよりも早く――――


 ――――上空からの斬撃が砲塔を切り飛ばし、
 圧倒的な熱量をもった砲撃が、降下艇を消滅させた。


***************************************

248 :HALO代理:2008/07/02(水) 08:06:49 ID:4xYf3wgV

「お待たせ、皆ッ!」

「みんな――大丈夫ッ!?」

 スターズ1、ライトニング1の到着。辛うじて間に合った、という所か。
 すでに腰が抜けていたスバル以外――ティアナ、エリオもまた、その場にへたり込んだ。

「ふぇ、フェイトさん、フェイトさぁん……ッ」

 キャロに至っては泣き出してしまう始末。
 ――エリオは辛うじて堪えているけれど、やはり同じ。
 無理もない。まだ二人とも小さいのだ。
 地面に降り立ったフェイトは、二人に歩み寄ると、ぎゅっと抱きしめる。

「大丈夫。もう大丈夫だから――ごめんね、遅くなって」

「ふ、ふぇえぇぇえぇえぇ……ッ」

 ついに堪えきれなくなったキャロが泣きじゃくり、フェイトが慰める

 ――その光景を眺めていた"彼"は状況は終わったと言わんばかりに、
 背中にアサルトライフルをマウントし、ハンドガンを腰部に吊るす。
 そしてちらりと全員の様子を見回して――なのはに視線を向けた。
 恐らく、指揮官――少なくとも地位が高い存在だと気付いたのだろう。

 (うーん……わかっちゃうのかな、やっぱり)

 少しばかり苦笑を浮かべながら頷いてみせ、
 彼の思考が正解である事を認める。

「あの……助けてくれて、ありがとうございました。
 良かったら、貴方のお名前、聞かせてもらえないかな?」

 その言葉に"彼"は少し待て、というように掌を突き出した。


***************************************

249 :-THE REQULIMER- LV1 [First contact]:2008/07/02(水) 08:18:45 ID:BI9WEj+x
「どうだ、コルタナ?」

《ちょっと待って――随分と言語が複雑なの。
 ――大体、あんな光学兵器を操れる人間がいる事だけでも驚きなのに、
 空まで飛べるなんて、馬鹿げてるとしか言いようが――……》

「…………」

《文句があるなら、貴方が未知の言語を翻訳してる所を見てみたいわ。
 ――まったく、何よこれ。
 ジャーマンとイングリッシュ、ジャパニーズが混ざってるなんて……。
 ええと――お待たせ。これで良い筈》


***************************************


「……言葉はこれで通じるか?」

 しばらくして聞こえてきた声は、低く落ち着いた男性のものだった。
 表情は金色に煌くバイザーのせいで読み取ることはできないが、
 何となく第一印象通りの声だ、となのはは感じ取る。

「うん。大丈夫――ちゃんと通じているの」

「ならば其方の所属、階級、姓名を聞かせて貰いたい」

 恐らくは、と"彼"は思考する。
 ある程度以上に統率の取れた動きや、多少のアレンジの差はあるとはいえ、
 ほぼ同一のモチーフで作られている制服。
 そういった要素を鑑みて判断する限り、彼女達は何らかの組織に属している筈だ。

「所属は時空管理局本局、古代遺物管理部機動六課。
 スターズ分隊長、高町なのは一等空尉です。
 貴方の所属とお名前も教えてもらえるかな?」

 ――時空管理局。古代遺物管理部。
 そしてタカマチ・ナノハという名前。

《時空とはまた大きく出たわね。名前は――ジャパニーズかしら?》

 脳内に響く女性の声――閉鎖通信に頷きながら、"彼"もまた自分の名前を口にする。
 最も、恐らくは、これもまた――彼女にとっては理解できない単語の羅列ではあるだろうが。

「所属は国連宇宙軍海兵隊。SPARTAN-II-117」

 そして、

「階級は――――マスターチーフだ」
 

*******************************************

250 :-THE REQULIMER- LV1 [First contact]:2008/07/02(水) 08:19:05 ID:BI9WEj+x

「状況完了、ってところやね。
 何とかかんとか、死傷者が出ずに済んでよかったわ」

 モニターに映る"彼"――マスターチーフの言葉を聴きながら、はやては大きく息を吐いた。
 突如出現した未知の軍勢。謎の兵士。レリック。ガジェット。
 あのエイリアンが、ガジェットと共闘しているのか、或いは偶然同時にあらわれただけなのか。

「あんまり良い状況じゃあ無いですけどね。
 例の落着物――を狙ってだと思うんですけど、
 未知の勢力が出たとなると……やっぱり管理外世界からでしょうか?」

 シャリオがキーボードを叩くと同時、モニターに映し出されたのは、
 先程まで行われていた戦闘の状況写真。
 奇怪な装備――それも統一された――手に取り、統率を持ち、集団で行動している。
 となると――……。

「軍隊、やろか?」

「わかりません。ただ――……通信を傍受したんですけど。
 まだ解読や翻訳はできないですし、ノイズも酷かったんですが、
 ちょっと気になる情報がありまして」

 続いてモニターに映し出されたのは、一つの単語。

「解析できたのは、この言葉だけでしたけれど。
 通信を傍受した結果、何度も何度も繰り返されているんです」

 はやては、記憶していた。
 聖王教会のカリムから齎された情報。
 恐るべき予言。或いは管理局の終焉を告げる文書。 
 それを齎す、悪鬼の如き存在の名――

 幸いなるかな 忌むべき者ども
 災いなるかな 死せる王よ
 鉄の鎧 鉄の槍 鉄の意志 持つ
 一人の 兵 によりて
 数多の 海を 守る 法の船
 中つ大地の 法の輪 打ち砕かれん 
 称えよ栄光 仰げよ武勲
 伝えよ千年の後までも
 その名―――……


「リクレイマー……ッ」



    HALO
 -THE REQULIMER-
 
 LV1 [First contact]

Fin

251 :-THE REQULIMER- LV1 [First contact]:2008/07/02(水) 08:19:46 ID:BI9WEj+x
以上、投下完了です。
うーむ、ちょっと長文過ぎましたね(汗)
次回以降は、分割するなり何なり、もっと短縮しますね。
色々とお手数をおかけして申し訳ありませんでした。

252 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 09:07:50 ID:v2Yi7h12
>クラナガン・シュピーゲル
元ネタは分からないけどスバルが可愛いということだけは分かった(ぉ
っていうか、何この可愛らしい生き物? あと空気が甘酸っぱい。見ててドキドキしてくる。ふしぎ!w
『男の子っぽいけど実は乙女』という設定を見事に活かした素晴らしいスバルでした。
いや、相手の設定が結構重そうな感じするけど、それを吹き飛ばすほどのときめき空間だったよ!w
何かと確執のある地上本部所属となる白露の設定がスバルとの関係にどう絡んでくるのか気になります。いや、それ以前に奴のスバルへの真意も気になりますね。
でも今はただ…そう、フォーリンラブ。

>-THE REQULIMER-
以前の別の方のクロスでHALOの設定を読んでいて助かったぜ。知らなかったらやられていた…
こういう世界規模の未知の勢力の襲撃って、戦争物っぽくていいですね。なんか壮大な戦いになりそうな予感ですw
リリなのキャラのピンチにクロスキャラ登場! っていうのは割りとありふれたパターンですが、その過程を見事に描ききっていると思いました。
ティアナの実戦への恐怖と戦意もしっかりと描いていて、これは今後の戦闘シーンでどう成長していくのか見ものですね。
質量兵器の禁止云々に対して、そんな制度など欠片も考慮しない敵勢力が登場して、果たして管理局はどう対応するのか。
その中でマスターチーフがどういう立場になるのか。
これからの展開に期待ですw

あーっていうか、先日のなの魂も含めて感想全部書きたいけど時間ないよー!
新しい支援スレにでも後日書きますから今しばらくお待ちを!

253 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 10:30:49 ID:G3+5XKUd
>>251
乙です
先が気になる展開なのですが、なのはのセリフに違和感がありました
あの状況で初対面の人間と話してるのにあの話し方は……
チーフが見た目子供とかならまだ分からなくもないですが、普通に大人の背丈ですし

254 :322 ◆tRpcQgyEvU :2008/07/02(水) 16:04:39 ID:GSC5CJOK
だれもいないので今のうちに投下予告を。
今日の夜10時にEDFを投下します。

255 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 18:17:06 ID:CQYqQDbz
>>251
おお、まさかHALOとのクロスが読めるとは!!
HALOは大好きなゲームなので続きを期待して待ってます。

256 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 18:21:08 ID:/TOTyK7v
GJあの悪夢の寄生生物も出てくるのか?

257 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 18:28:22 ID:HKJN/Dj+
あの無敵の軍曹が読めるんですね分かります

258 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 18:48:11 ID:fYs03Bwu
GJ!
誰もあの軍曹を滅することはでいない…

259 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 18:55:16 ID:agvE6DLT
クラナガン・シュピーゲル二話を19:15から投下します。
多少長いので支援をお願いします。

260 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 19:16:30 ID:bgUz7wMM
ご奉仕しますわ! 支援

261 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 19:16:57 ID:agvE6DLT
クラナガン・シュピーゲル「少女と少年 その2」

白露とのデートから、二日が経った。
あのあとスバルは、また白露にデートに誘われた/今度の水曜日に/管理局でも休みが取りやすい日。
今度はディナーでも、という言葉に舞い上がり、有頂天に。
気まずい空気を振り払うべく、速攻でOKを出す/去り際に、白露が言った言葉が、脳裏に反響し続ける。

『君と僕は、以前会ったことがある……もしかしたら、君の歌声なのかもしれない、僕の求めるものは』

どういう意味だろう? スバルはここ数日、時間さえあれば記憶を探ってきた。
幼い頃の記憶=母がまだ生きていた頃の、平和で楽しい日常/自分より一歳年上の少年の姿は影も形もない。
誰も傷つけたくなかった――そう言い、泣いたあの日の自分。
では、もっと後の記憶はどうか――幼年学校では、該当者なし。幼馴染はみんなミッドチルダ人で、ベルカ人はいなかった。
さらに後――記憶の空白があるとき=空港火災の前後の記憶がない/トラウマを隠す為の脳の働き/気づいたら高町なのはに助けられていた。
ひょっとしたら、このときかもという確信/白露が軍役につく為に空港に来ていた可能性がある。

「……バル、スバル!」

「へ? あっ、す、すいません、なのはさん」

腰に手を当てて若干怒っている高町なのは=管理局のエースオブエース。
今は教導部隊に所属/機動六課の新人達の訓練を担当する。今は訓練前の説明の時間だった、と頭を掻く。

「もう、どうしちゃったのかな? スバルらしくないよ?」

「えーと……考え事してまして……すぐにフォーメーション組みますっ!」

駆け出すスバル/ローラーブーツ型デバイス『マッハキャリバー』を起動。
相棒に掛け声を/今の自分にできる精一杯の元気。

「行くよ、マッハキャリバー!!」

『Stand by, ready』

スバルのバリアジャケット――白いジャケットと手足を防護するサポーター/頭に巻かれた鉢巻=全体的に軽装の機動力重視の設計。
右手には鋼鉄の篭手『リボルバーナックル』――彼女の母、クイントの形見。
マッハキャリバーのローラーが一瞬で高速回転/スバルが空中に作り出した、魔力の足場ウィングロード目掛け駆け上がる。
土煙を上げながら、爆走。鉢巻が風になびき、青い髪が揺れた。

その様子を眺めながら、なのはは溜息をついた。
どうも、スバルの様子が変だった。何時もなら誰よりも熱心に自分の教導に聞き入る彼女が、この前の週末以来、何処か集中力に欠けている。
ぼやいていると、後ろから誰かが近づいてきた。もっとも足音のくせで誰だかすぐにわかったが。
後ろを振り返りもせずに、腕を組んでスバルの機動を見上げながら言った。

「どうしたんですか、八神部隊長?」

「あーっ、なのはちゃん、そんな他人行儀は止してえなぁ。私となのはちゃんの仲やないか」

若干息を吐きつつ、返す/あくまで社会人としての規範を強調。
公私混同はやるべきではない。

「部隊長、今はスバルたちの前なんだし、規範をしっかり示さないと」

「……わかった、わかったからぁ〜」

「それで、どうしたんですか?」

262 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 19:17:27 ID:bgUz7wMM
ブンブンしてるー 支援

263 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 19:18:19 ID:agvE6DLT
不思議そうに問いかけた。わざわざ教導を見に来たわけではあるまい。
そんなことは空間モニターで済ませればいいことだし、はやては部隊長。やらねばならないことは山ほどあるはずだ。
はやてが真顔になる/にやけたような笑みが消え、仕事のときの顔になった。

「スバルのことなんやけどな、高町隊長は特甲猟兵のことは聞いてる?」

「本局のレベル3の特甲児童のことですよね? 何回か教導で顔を合わせたことがあります。訓練は担当しませんでしたが」

そうそれや、と言うと、はやては念話に会話を切り替えた。
スバルやティアナに聞かれたくない会話なのかと理解/同時に、そんな話があるのかと疑問が浮かぶ。
脳裏に響く声=はやてのもの。

(この前の週末、スバルが男の子と会っとったそうや。ゲンヤさんから聞いてわかったんやけどね)

(男の子と? それじゃ、デート? スバルの様子がおかしいのはそのせいかな)

(まあ、そうかもしれへんけどね。問題は、相手の素性や。男の子の名前は、『白露』いうそうなんやけど、この名前の特甲猟兵が最近地上本部にきたんや。
『白露・ルドルフ・ハース』――第32管理世界での砂漠地帯の紛争を、たった一人で食い止めていた<海>の精鋭やった。
今は<陸>に引き抜かれて、レジアス中将お抱えの戦力になっとる。マスターサーバー<轟>と合わせて、地上の切り札とする気みたいやね。
ただ、気になるのは……彼の駐留してた空域で、航空機の墜落が相次いでたんや。
そして、待機所の壁には『僕は鳥を殺した』と書かれてた。飛行機の墜落と日付が一致する形で)

なのは――息を呑み、目を見開く/思わずスバルを見る。
地上本部の特甲猟兵と、スバルが接触? どういうことだろう。

(……地上本部がスバルを引き抜きたがってるってこと?)

(違う。地上本部の戦力は、四人の特甲猟兵のせいで、今や地上の軍の中でもトップクラスや。いまさら<戦闘機人>一人に拘る理由は向こうにはない。
今はまだ、なぁ。ゲンヤさんの話やと、個人的に親しくしてるだけみたいや。で、明日もデートをする予定らしいで)

恐るべき情報網――こんなに簡単に明日の予定まで把握しているとは。
無言。なのはは少しばかり憂鬱になった。

(私達のときは、十五歳のときなんて男の子とデート、しなかったよね……)

(ちょ、待ちぃや! ユーノ君はカウントに入ってないのかい?!)

何かあればすぐなのはの世話を焼く、気のいい青年の姿が思い浮かんだ。
整った顔立ち/縁の丸い眼鏡/長く伸ばした色素の薄い髪を一本に纏める/現在は時空管理局<無限書庫>司書長を務めるスクライア一族の考古学者。
『ユーノ・スクライア』。彼が高町なのはに惚れているのは、ほぼ周知の事実であった。
おそらく九歳の頃からずっと続いている十年越しの恋であるから、長いものだ。
それを今、高町なのは十九歳は華麗にスルーした。

(ほえ? ユーノ君はお友達だよ?)

うわあ、滅茶苦茶悲惨だ。内心ユーノをかなり慰めてやりたい気分に成りつつ、はやては溜息をついた。
話題を本題に戻す。いけない、泣けてきた。

(ま、まあとにかく、スバルから目を離さないようにしといてーな。特甲児童だってことはスバル知らないみたいだし、放っておいても問題はないやろうけど、
何か在ってからじゃ遅いし、なぁ)

(わかった)

はやてとなのはの念話が終わり、二人はにっこり微笑みあって挨拶を交わした。

「そいじゃーな、高町隊長。教導よろしく頼むでー」

「はい、八神部隊長」

264 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 19:19:43 ID:agvE6DLT
翌日、機動六課の新人達に言い渡された休暇/各々チームごとに行動を取る。
スバルとティアナ――昼間はともにクラナガン市中を歩き回る。二人で買い物――夕方になったらスバルは白露とデート。
ティアナはヘリパイロット/元狙撃手のヴァイス・グランセニックに夕食を誘われる――二つ返事でOKした。
ヴァイスなりの気遣い=肉親のいないティアナを食事に誘う/自分は実家には帰れないからな、と苦笑い。
誤射事件――当時狙撃班だったヴァイスが、妹ラグナの眼を誤って撃ってしまう/片目を失明させてしまい、以来銃を手にできなくなった狙撃手。
地上の慢性的人材不足が招いた悲劇だった。そんなことを悟らせずに、ヴァイスは「食事を楽しもうぜ」と笑う。
ちなみに、彼に恋しているアルトはこれを聞きショックを受けていた。
エリオとキャロ――保護者の了承つきで二人揃ってお出かけ=デートと呼べなくもないような、微妙な買い物。
クラナガン市中をエリオがキャロに案内――フェイトも保護者として同伴したかったが、仕事の都合で無理に。
かくして、機動六課に休みが訪れた。

首都クラナガン地下。何十にも複雑に交差する都市の地下水路を水が流れ、轟音が迷路のような通路を反響する。
そこを歩む人影=六歳ほどの少女。ロストロギア<レリック>の入ったケースと鎖でつながり、襤褸(ぼろ)を身に纏った少女の眼は、左右で色が違う。
オッドアイ/金色の髪/薄汚れているが、仏蘭西人形のように整った顔立ち。
少女は、逃げていた――何から?/誰から?

すべてわからない――だが、逃げなければ、という強い衝動。
歩むものの、その一歩が重い。脚を遅くする元凶である<レリック>ケースは一向に外れずに、ますます少女を追い詰める。
ついに、少女が重さに耐え切れずに倒れこんだ。

「うぇ……うぇぇーん」

泣き始める彼女を慰めるものは無く――暗闇だけが、広がっていた。


「泣いている……!」

「? どうしたの、エリオ君」

燃えるような赤い髪の少年『エリオ・モンディアル』十歳は、確かに誰かの泣く声を聞いた。
白竜の幼生を連れた、脇の桃色の髪の少女『キャロ・ル・ルシエ』が、首を傾げるのを尻目に、マンホールへ向かい、蓋をこじ開けた。
するり、と滑り込む/「ごめん、誰かいるみたいなんだ」と声。
突然の行動に、キャロが呆然としていると通信/慌てて携帯端末を開く/空間モニターにフェイトが映った。

《キャロ……! エリオは?》

「え、エリオ君は今地下水道に入っていっちゃいました」

《……! 落ち着いて聞いてね、キャロ。今、そこの地下水道から<レリック>の反応が出たの。ガジェットはマスターサーバーの干渉で入って来れない筈だけど、
いずれ敵が来ると思う……。急いでエリオを援護して》

キャロ――状況の変転に目を回す/でも、やるべきことは理解。
民族衣装をぎゅっと握り締め、地下水道入り口に入り込みながら、エリオを追った。

「はいっ!」

バリアジャケットを展開し、白銀の飛竜フリードリヒと共に暗黒の道を突き進んだ。


265 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 19:19:46 ID:bgUz7wMM
明王様のワザモノだ! 支援

266 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 19:20:46 ID:agvE6DLT
「だれだっ!」

エリオは、背後に人の気配を感じて叫んだ。
警戒感丸出しの声――突撃槍のデバイス『ストラーダ』を起動させながらの早業。

「なーなァ〜、ボウズ、ちょっとええかいのォ〜」

振り返る/驚く。
かなり独特のイントネーション/だぶだぶのズボンに花柄シャツという悪趣味な格好の少年が、立っていた。
金髪というかオレンジ色に近いトウモロコシ色の髪――剃り入りの坊主頭。
鮮やかなリンゴ色――アップルグリーンの瞳/ひどく険のある鋭い目つき。
ヤンキーぽい十代半ばの少年――最高に場違いな感じの人だった。

「あの、なんでしょう?」

「いやぁ、な。水や水。水はないかのォ」

言うそばから手にした二リットル入りペットボトルのミネラルウォーターをがぶ飲み。
みるみる減っていくミネラル水。

「よいや、こんなァ、すーぐなくなるけェ。今ンうちに手に入れとかなァ思ぉても、無くてのォ」

「いや、そこを流れてますが……」

「あんなァ、飲めんじゃろォ、ワシは飲み水が欲しいんじゃァ」

「飲み水なら、僕が少し持ってますけど」

エリオは馬鹿正直に返答/坊主頭がやたらと目を輝かせる。
ぱぁん、と手を叩き、心の底から嬉しそうに言った。

「あるじゃーないかァ。いやァ、譲ってくれんかのぉ、ワシァ喉が渇いて死にそうなんじゃァ」

「ど、どうぞ」

気圧されながら、リュックの中から飲み水入りのペットボトルを取り出し、少年に渡す。

「み、水じゃァ!!」

齧りつくようにしてがばがば水を飲む/あっという間にペットボトルが空になり、少年がエリオから受け取った水を飲もうとしたとき。

――うぇーん、うぇーん

少女の泣き声が聞こえた。
エリオはバリアジャケットを羽織るなり、魔法を発動。高速で声の元まで駆け抜ける――坊主頭の少年も駆け出す。
二人の体格差もあり、あっという間に追いつかれる。水のペットボトルを持ったまま、並走してきた。

「ど、どうしてついてくるんですか?!」

「違ァて。たまたま目的が同じだけじゃァ、レジアスのおっちゃんに頼まれてのォ」

驚き――レジアス中将に?
つまり、目の前の少年は管理局員であるらしい/それも、地上本部のレジアス中将に直接命令されるほどの階級。

「えーと……」

「『陸王(リクオウ)』じゃァ。お、見えてきたのォ」


267 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 19:21:31 ID:agvE6DLT
少女――襤褸を身に纏った泣き喚く女の子。見たところ、まだ十歳にもなっていないのではないか。
幼稚園にでも行っていそうな年齢だった。
エリオが声をかける前に、陸王が大声で言った。

「が〜っはっはっは。もう安心じゃァ、嬢ちゃん。ワシらが来たけェ――」

衝撃音――陸王の身体が吹き飛ばされる/魔法の行使だと気づき、ストラーダを構えた。

「陸王さんっ!!」

水音――ばしゃん、と少年が下水に落ちた。助けなければ、と思うものの、敵が許してくれそうに無い。
透過防壁が解除され、漆黒の甲殻が露に。
目の前の敵は、二足歩行の昆虫とでも言うべき生き物だった。
人型を甲冑の如き甲殻で覆った、二対の赤く光る目を持つ巨蟲。長い手足からは刃が生え、尻尾を揺らしてそいつは敵意を露にする。

――シャァァァ!!

その咆哮を真っ向から受け止め、エリオはストラーダを、槍を構えた。

(僕にやれるかっ?! クソッ、陸王さんも助けないといけないのに――)

「ハーッハッハッハァ! 不意打ちとは舐めたマネしくさってくれたのォ! ワーッシに任せとかんかいやァッ!!」

二人――否、一人の少年と一匹の異形が激突しかけたとき、威勢のいい怒声が響いた。
汚水の中から立ち上がった坊主頭の少年、陸王が凄まじい勢いで昆虫人間に飛びかかり、エリオを驚かせた。
危ない――さっきの衝撃波を弾丸状に固めたものは、もろに陸王の腕を砕いていた筈だ。
痛みを感じていないのか、折れた腕をぶら下げて突っ込んだ。
無論、昆虫人間も黙って見てはいない――先ほどの奇襲と同じく、衝撃波を放つ。
明らかに武器を持たぬ子供である陸王に、避ける術は無いように思われたが――さっとかわす。
信じがたい素早さで昆虫人間の懐に潜り込もうとする/昆虫人間が背後に跳躍して逃れる。
昆虫人間が瞠目しながら折れた両腕に衝撃波を放とうとした刹那、凶暴な笑みを浮かべる坊主頭の少年の声。

「転送を開封」

白熱の輝きが、少年の四肢を/身体を/顔を包み込む。
転送――四肢の精巧な義肢を、戦闘用の義肢<特甲>と置換し、その能力を<開封>する。
<特甲>でも最強のレベル3が、解放された瞬間だった。
眩い閃光と共に、にわかに濁流の轟きにも似た何かが猛然と唸りをあげた。

――どどどどどどど!

下水の濁流の流れる音すら打ち消す、爆音/水飛沫が転送の灼熱に蒸発する。
そして次の瞬間、一閃された煌きが壁を削り取った。一瞬早く飛び退った昆虫人間のいたところを、凄まじい勢いで回転する何かが薙ぎ払う。
速い――速過ぎて、エリオには何が昆虫人間を切り払っているのかわからない/どんな姿をしているのか、シルエットでしか視認できない。
それ――黒鉄色の装甲に身を包んだ人影が、高速で回転する何かを掲げる。
そして、いきなりの掃射音――機銃掃射。
超伝導機銃のたまらない轟音――すべてを抉り飛ばす銃撃、銃撃、銃撃。
質量兵器? とぐちゃぐちゃに混乱した思考で考える。いったい何処から出てきたのか、という疑問。
通信が入った/フェイトからのもの。

《エリオ、生きてる?! 何、この音は》

「え、えーと、その、現地の管理局員――陸王さんが、質量兵器を――」

フェイトが、呆然と呟いた。その、呪いにも似た言葉を。
震えだす――叫ぶ。

《特甲猟兵――陸王・マルティン・ユング! エリオ、そこから逃げてっ! 早くっっ!!》

268 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 19:21:58 ID:bgUz7wMM
なぁんか世界とか救いてぇ 支援

269 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 19:22:45 ID:agvE6DLT
ぴたり、と黒い装甲が止まり、こちらを見た。
黒鉄の甲冑の如き特甲――頭部全体を覆うフルフェイスのヘルメット。
車輪の両足/エンジン部である脚。轟音を上げて高速回転する、右腕そのものの巨大チェーンソー。
その異様な姿が、こちらを振り返りヘルメットを開いて歯を剥いて笑う。

「あの虫けらァ逃してしもーたと思うたら、こんなベッピンさんがワシのこと知ってるとはのォ」

炎の瞬き/左腕を掲げる――右腕とバランスを取る為の、これまた馬鹿でかい盾が、強烈な抗磁圧の防壁を展開して、炎を散らしていた。
烈火を放った妖精のように小さい少女が、喚いた。赤い髪/きわどい格好――ユニゾンデバイス。

「手前ェ! 管理局員のくせに、質量兵器使うのかよっ!!」

ユニゾンデバイスの喚きと共に、銃火が勃発。
チェーンソーと一体化した、長大な重機関銃――掃射音が響き渡る。
だが、掌に乗りそうなほど小さいユニゾンデバイスには当たらず、壁を、天井を穿つに終わる。

「あ、あ、危ねぇ! 何しやがんだお前っ!!」

「元気のいいデバイスじゃのォ、ぶっ壊し甲斐があらァッ!」

さらなる銃火が吼え、弾痕だらけになる地下水道。
そのとき、不意に銃撃が止む――特甲猟兵の動きが止まる。
ちっ、と舌打ち――エリオが少女を担ぎ上げたのを見るなり、「逃げんかボケェッ!」と喚き、後退/機銃を掃射。
エリオの身体が魔法『ソニックムーブ』で加速/後方へ駆け出す。

「エリオ君っ!」

「キャロ?! どうしてここに――いや、とにかく今は逃げよう」

「え?」

キャロの手を引っ張りながら駆け抜ける――二人分の加重で移動が遅くなる/陸王にどやされる。

「早う逃げんかァ、召喚師がおるからのォ、危のうてここにはおれんのじゃァッ!!」

コツン、と足音。
ユニゾンデバイスが逃げていき――紫色の髪の少女が、幻影のように現れ告げた。
エリオの眼には、彼女はひどく美しいものに見えた――召喚蟲使いの少女が、召喚陣を描く/グローブ型デバイスが光り輝く。

「――地雷王」

崩落――召喚陣から現れた軽トラックほどもある大きさの甲虫が、紫電を放ち全てを崩壊させた。
爆圧――陸王が掲げた抗磁圧の盾が、崩落した天井を押し返す/道を作る=エリオが、キャロの身体強化魔法の加護を受けて跳びあがる。
地上に着地/キャロの手を引いて崩落する地面から逃げながら、陸王に呼びかける。

「陸王さんっ!」

「心配せんでも生きとるで、なァ。それより、その子供こっちに渡してェな、ボウズ」

声――振り返り、驚愕に見開かれるエリオの目。
陸王そっくりの顔/パンク刈りにした頭/だぶだぶのズボンに花柄のシャツ=兄と同じ格好。

「遅いでェ、『秋水(シュウスイ)』。だいぶ手間取ってもーた、水は見つかったのかァ?」

「そんなことより兄ちゃん、虫の巣を潰したんじゃァ、やつらわらわら出てきおったのを、みーんな潰したから、もう安心――」

「ボケェ! それはお前の幻覚じゃって何時も言うとるじゃろがァ。それに、蟲言うたら後ろにどでかいのがおるでェ」


270 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 19:24:39 ID:agvE6DLT
秋水がエリオたちの背後を見て、絶句――巨大な甲虫が、地面の下からのっそりと這い出てくるところだった。
雷撃――帯電した空気が焦げる。
右手を宙に突き出し、何かを掴み取るように握り締め、秋水が呟いた。

「転送を開封」

白熱する輝きが、少年の四肢を/体を/顔を包み、閃光が弾けてエリオとキャロの意識をもぎ取っていった。


スバルとティアナが現場に駆けつけたときには、地上本部の陸士部隊が現場を封鎖していた。
何台か停まっているオリーブグリーンの装甲車/パトカー。黄色い『Keep out』と書かれたテープが張り巡らされ、あたりを結界的に覆っている。
陸士97、と書かれた部隊章の顎鬚男が、ひょこひょここちらに歩いてくる/訪ねる。

「あー、機動六課の人ですかな? こちらに少年少女二人が保護されていますので、お引取り願えますか。二人とも健康体です。
あ、失礼、私は陸士97部隊隊長エ――」

「隊長! 目を覚ましましたよ、男の子」

名前を言うタイミングを失った男/所在無げに立ち尽くす。
腹だしげに一言――まるで出番をとられた役者。

「あー、うん、ごほん。副長、二人を案内してくれ」

槍のデバイスを持った男に案内される/珍しい近代ベルカ式。
無言で医務車両まで通され、エリオとキャロに面会した。医療器具が整然と並んだ車内を歩み、駆け寄る。
副長と呼ばれた男が二人の症状を説明した。

「軽い脳震盪だそうです。近くで崩落がありましたから、そのせいでしょう」

「崩落? クラナガンで、ですか?」

スバルがぎょっとして問い返した。
無表情に副長が応える/書類をめくりながら、言う。

「召喚蟲によるテロです。その後召喚陣と思しきものからガジェットドローンが出現しましたが、マスターサーバー<轟>が機能停止に追い込み、無力化に成功。
召喚蟲も、『偶然』現地にいた地上本部の局員に破壊され、事件は終結、と」

「……お、女の子が、いませんでしたか? 六歳くらいの、金髪の……」

エリオ――突然口を開く/場に居合わせた人間が驚き、ティアナが軽く諌めた。
オレンジ色の髪の毛が揺れる。

「エリオ、一回ぶっ倒れてるんだから休んでなさい。今、フェイトさんが迎えに来るところ――」

陸士部隊副長がティアナの台詞を遮って喋った。
少し興味深そうに書類を読み上げる/エリオの表情を盗み見る。

「ああ、確かに女の子が一人救助されてますね。貴方が保護したそうですね、モンディアル陸士?
地上本部に一応事情聴取の為に送られましたが……<レリック>は機動六課が確保してください。
上からのお達しですし、テスタロッサ執務官が到着しだい、そちらに引き渡します。今、我々で封印作業中ですから」

「そう……ですか。スバルさん、ティアさん、すいません。とんだ休日になちゃいました」

「いいんだよ、エリオ。誰も気にしてないって。それより、フェイト執務官を心配させちゃ駄目だよ?」

ようやくエリオが表情を崩し、「ははは……」と笑った。
隣のキャロは可愛らしく寝息を立てており、実に健やかだった。

271 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 19:25:10 ID:bgUz7wMM
レベル3来たwww 支援

272 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 19:25:29 ID:agvE6DLT
その後、事後処理や到着したフェイト・T・ハラオウンの号泣をなだめ賺(すか)すので時間をとられ、すぐに夕方になった。
二人ともこの後の予定を蹴ってエリオとキャロの容態を見ようとしたが、フェイトの「相手の気持ちも考えなきゃ」の一言でディナーを楽しむことを確約させられた。
ヴァイスと食事を取るティアナと別れ、白露との待ち合わせ場所の公園へ向かうスバルの心中には、疑問と確信があった。
取り乱したフェイトの放った言葉――特甲猟兵。暗号じみた言葉だったが、なんだかひどく不安になった。
疑問――いったい、<特甲>とはなんなのか?
確信――自分は過去に白露に会っている――空港火災の直前の記憶が、ぼんやりとだが思い出される。


あの日、自分は姉ギンガとはぐれ、迷子になって泣いていた。
そんな時、出会った少年――ひどく優しい感じの穏やかな声音。

『迷子かい? 実は、僕もなんだ』

『え? お兄ちゃんもそうなの?』

困ったように笑う少年――銀のかかった金髪が揺れる。手荷物=バイオリンケースだけ。
頭をかきながら応えた。

『と、いうか……遠くに行くのが嫌で、抜け出してきちゃったのかもしれない』

『遠く? 外の世界?』

無邪気なスバルの問いに、少年は難しい顔で答えた。
空港といえばミッドチルダ内の航空機による移動か、次元航行艦による次元世界同士の行き来が主だ。
その場合、遠くというのはそれこそ次元の壁を越えた異世界ということになる。

『うん、多分当分こっちには帰って来れない……それで、なんだか怖くなっちゃって』

『本当? うーん……わかった、あたしが勇気の出る歌を歌ってあげる、えーと……』

『白露。シラツユでいいよ。どんな歌?』

『うん、お母さんがね、あたしとお姉ちゃんに歌ってくれた歌ー。んーと、タイトルは……』

幸せで融けてしまいそうな記憶――母が歌ってくれた、帰るべき場所へ飛んでいくためのもの。
自然と口から流れ出る歌――『虹の彼方に』。

青い鳥が飛んでいく――虹の彼方へ。
女の子は思う、自分も飛べる筈だと。
思いの力が、何時か本当に飛ぶ力をくれると信じて、待ち続ける――貴方を。

どんな気持ちで、お母さんが自分達にこの歌を歌ってくれたのか――異境へ旅立つ人に歌って、初めてわかった気がした。

『……いい歌だね……ありがとう。君、名前は――』

『スバル! スバル・ナカジマ!』

そっか、と少年は微笑み――あの大火が、彼と彼女を引き裂いた。

大火の後――スバルの身体――負った傷は深く、血が足りない。
輸血が無い。どんどん下がっていく体温/戦闘機人の起動限界を迎えつつある身体が、血を求める。
ゲンヤの怒鳴り声。

『血が足りないってどういうことだ?!』

『負傷者が多すぎるんです! この子の血液型と合致する人は、いません』

『クソッタレ!』

273 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 19:25:59 ID:bgUz7wMM
食べられてしまうw 支援


274 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 19:26:48 ID:agvE6DLT
自分の血なら何万ガロンとっても構わない、という表情。
同じ血液型のギンガは何処にいるかわからない――このとき若手執務官に助けられている最中であった。
そして、ゲンヤの血液型はスバルとは違う――輸血不可能。
そのとき、声があがった。

『僕の血を使ってください……』

バイオリンケースを持った少年/涼やかな声――遠くへ旅立つ人。


『お前さんは……?』

ゲンヤの問いに、少年は真っ直ぐな瞳で答えた。

『これでも管理局員です』

『血液型、一致しました! 君、すぐ輸血の準備を!』

大人たちのどやどやとした騒ぎと、白露の微笑みを目に焼きつけて、スバルは意識を失った。

――生命保全プログラム始動/生命の危機に関する記憶を封印(プロテクト)/再起動後は平常通りの運用を。

そして彼女は、記憶を失くした。
でも/だが/そして。
彼女は取り戻してしまった、記憶を。

何時もの場所に、白露はいた。
木の下で、バイオリンケースを持って、目を閉じて佇んでいる。
街灯と夕暮れの赤い光が、彼の姿をコントラストもはっきりと照らし出していた。
半ば眠るようだった彼が目を開き、スバルを真っ直ぐ見つめ、呟く。

「スバルさん……思い出したんだ、歌を。やっぱり、君の声だった」

少年の眼は、砂漠を見つめ/今は何かがきらきらと瞬き/星光を飛び越え、その向こうにある虹を求める目/真っ直ぐにスバルを見ている。

「君に……歌って欲しいんだ。あの歌を……それで、僕が演奏するから――」

スバルは、感情を溢れさせて/頷きもせずに/喜びのあまり、涙を流して鼻をみっともなくすすりながら、言った。
彼の心が、砂漠から戻ってこられるようにと――心の底から、そう思った。

「うん。お帰りなさい、白露さん……」

夜空が二つの月を映し出し、煌々と照らし始めた――二人はともに歌い、弾いた。
そして、二人は接吻を交わした――互いに/魂で触れ合うように。


275 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/02(水) 19:28:44 ID:agvE6DLT
投下完了です。
支援ありがとうございました。

次回、特甲レベル3が唸りをあげます! ではー。

276 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/07/02(水) 19:32:58 ID:cZH8R4jA
GJ!
……って、ぎにゃあああああぁぁぁぁぁぁ! 甘い、甘いよ!w
ラストのストロベリー空間にニヤニヤが止まらないぜ!
スバルスキーとしては萌え死に寸前の代物ですw(ぉ

ではこちらも、8時10分頃にリリ殺15話を投下したいと思います。
例によって30KB超えてるので、どうか支援をお願いしたく

277 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 19:36:11 ID:bgUz7wMM
GJでした!
なんだろう、スバルが乙女だw
まさか偽者!?(失礼です) いやー、こういうエピソードとかいいよね。
本編だと皆無な恋愛要素とかとてもいいです。
でも、ゲッター氏がこういうのを書くと真面目に悲劇フラグが出そうで怖いw
そして、陸王と秋水が出てきましたねー。
なんか綺麗な陸王に見えるんだけど、気のせいかな? 悪童兄弟=死亡フラグなのにw
ガリューよく生き延びたなぁ、出てきた瞬間ナマス切りかと思ったがセーフw
後の最後はテンペストのアイツかな?
レベル3四人って勝てる敵がいるのだろうか? と思うw
マスターサーバーなどの投入でなのは世界の事情も変化していて、そこらへんがとても楽しいです。
次回も頑張ってください!
応援しています!!

278 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/07/02(水) 20:11:00 ID:cZH8R4jA
それではそろそろ投下いきます。39KB13分割です。

今こそ、熱血ホイホイ最後の時――(ぉ

279 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/07/02(水) 20:12:00 ID:cZH8R4jA
「……行くぞ」
眼下にクラナガンの街並みを見下ろしながら、殺生丸が短く呟く。
この街の力の象徴にして、平和を守る盾たる巨大な搭――時空管理局地上本部。
小山ほどの大きさを誇るその高みのから、銀髪の妖怪は遥か下界の戦場を一望していた。
広大な市街地で今もなお戦っているのは、管理局の魔導師達とスカリエッティのガジェット達。
戦闘機人はいない。機動六課のメンバーの奮闘によって、その全てが撃破されていた。
そして、もはやここにはスカリエッティの意志すら介在していない。
アンリミテッド・デザイアのコードネームを受けて生まれたあの科学者は、既に逮捕されている。
問題の殺生丸の帰還手段の方は、すぐ背後にいる義理堅き烈火の将・シグナムが保障してくれた。
要するに、彼を束縛するものは、もう何も存在しないというわけだ。
殺生丸は刃を取る。その手に爆砕牙を取って、再び戦場へと舞い戻る。
目的は至ってシンプルだ。過激でド派手な憂さ晴らし。
あの忌々しいスカリエッティが望んだこの状況を、どうせだから盛大にぶち壊してやろう。
そうすることで、今まで散々自分をコケにしてきたあの男に仕返しをしてやろう。
冷静で上品そうな佇まいをしていながら、しかしその実意外と単純なこの男は、そんなことを思っていた。
「あ、そだ」
と、不意にアギトが殺生丸へと声をかける。
「せっかく天生牙があるのに、このおっちゃん、生き返らせたりしねーの?」
小さな融合騎が指差したのは、ゼストとオーリスの傍に横たえられた中年男の死体だ。
この部屋の主たる地上本部長官、レジアス・ゲイズ中将。
ゼストにとっては旧友で、オーリスにとっては実の父。飼い犬に手を噛まれて命を落とした、哀れな男。
「……知ったことではない」
それでも殺生丸は、言葉どおり、そんな見ず知らずの人間には興味を抱かなかったのだろう。
短く返すと、そのまま砕け散った窓の外へと飛び出していった。
慌てたようにアギトがその背中を追いかけ、さらにシグナムもそこへと続く。
その場に残されたのは、死人騎士と父を喪った娘、そして物言わぬ将校のみとなった。
「……どうして……」
ぽつり、と。
不意に、弱々しい女の呟きが響く。
崩れ落ちるようにして膝をついていたオーリスの言葉には、微かな揺らぎが宿っていた。
「どうして、父さんを助けてくれないの……?」
救う力があるというのに。原理は知らないが、死者を生き返らせる術があるというのに。
何故あの男はそれを使わない。何故最愛の父の命を救ってくれない。
「……殺生丸とて、神ではない」
ゼストが声をかけた。
いかに死者を蘇らせる力を持った殺生丸とはいえ、聖人君子のような存在ではない。
むしろ戦場においては、残虐非道とすらとれるような冷徹さを発揮する奴だ。
元々、哀れな死者の命を拾うような男ではなかったのである。
「そして、奴が神だったとしても――おいそれと人を蘇らせていいものでもないのだろう」
死んだ人間は、本来生き返るべきではない。今こうして蘇っている自分の苦悩こそが、その証でもあった。
無理に輪廻を外れれば、必ずほころびが生まれてくる。肉体的にも、精神的にも。
生ける屍などという存在は、結局は現世に更なる苦痛を見出すことにしかならないのだ。
「……なら、何で……」
オーリスの瞳が煌いた。
一筋の透明な線が、スマートな顔立ちにすっと引かれていく。確かな水気と熱をそこに内包して。
「何で貴方だけが生き残って……父さんが死ななければならなかったの……!?」
言い終えた後には、取り残された娘は床に突っ伏し、そのままさめざめと泣き始めていた。
「………」
ゼストに言葉はない。自らの内へと、己が思考を馳せる。
本当に、何故生き残ったのは自分だったのだろう、と。
レジアスには、この戦いの果てにまだ為すべきことがあった。
戦乱によって壊された平穏を立て直すために、なくてはならない男だった。
しかし、自分はどうだ。ほとんど風来坊と変わらない身の上の自分が、一体世界に何を為すことができる。
あまつさえ、死のうとしていた人間だというのに。こうして拾われた命を、投げ捨てようとしていたというのに。
意味あるはずの命が喪われ、意味などないと思っていた命が、こうして残ることになった。
であれば、世界は自分に、この場で与えられた「新たな意味」を、全うしろと言っているのか。

――世界は本当に、こんなはずではなかったことばかりだな。

280 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/07/02(水) 20:13:00 ID:cZH8R4jA
魔法妖怪リリカル殺生丸

第十五話「天空に轟く声」


広大に広がるビル群を、4つの人影が縫うようにして進んでいる。
1つは殺生丸だ。立ち並んだコンクリートの建造物を、さながら歴史上の英傑の八艘跳びのようにして駆け抜けていく。
飛行能力を有している彼だったが、元より犬とは大地に足をつけて歩く生き物だ。
殺生丸自身も、どちらかと言えばこちらの方が性に合うのかもしれない
その僅か上を飛行魔法で移動しているのは、シグナム、アギトの2人の「烈火」と、遅れて来たゼストの計3人。
「……何故貴様までついてくる」
ちら、とシグナムの姿を見上げながら、殺生丸が僅かに不満そうな声色を込めて問いかけた。
思えばいつの間にか、ゼスト達と行動を共にするのにはすっかり慣れてしまったが、元々彼は人見知りをするタイプ。
つい先ほどまで敵だった彼女と肩を並べているという状況に、未だ慣れていないが故の反応なのだろう。
「心外だな。私がいなければ、どうやってルーテシアの元にたどり着くというのだ」
文面とは裏腹に、きわめて涼しげな表情と語調で、軽くあしらうようにシグナムが言う。
彼らがその元へと向かっていた最後の仲間――ルーテシアは、この街のどこかでエリオ達と戦っている。
2人のライトニング分隊メンバーの位置を把握できるシグナムならば、案内役になれるというわけだ。
「私の鼻を甘く見るな」
「だがそれ以前に、お前達は元々管理局の敵だった。説明する人間が必要だろう」
「……フン」
反論を道理で切り返され、殺生丸は面白くないといった様子で閉口した。
確かにルーテシアの居場所だけならば、殺生丸の嗅覚だけでも突き止められるだろう。
だが、そもそも考えてもみれば、彼らは元々犯罪者に加担していた存在なのだ。
今は敵対の意志はないが、彼らの口からではそれを証明することはかなうまい。故に、シグナムという説得力が必要なのである。
「……んん?」
と、不意にアギトが怪訝そうな声を漏らす。どうやら視線の先に、何か目立つものをを見つけたらしい。
「何だ、あれは?」
微かに目を丸くしながら、シグナムが呟いていた。
彼女らの目の前で戦いを繰り広げていたのは、白と黒の2つの影。
それも、普通に魔導師が戦っているわけではない。騒音をかき鳴らしながらぶつかり合うのは――さながら、怪獣。
シグナムが注目したのは、うち片方の白い巨獣の姿だ。
人間の数十倍はあろうかと思われるほどの体躯を、ところどころ白い甲殻によって武装している。
背中に羽ばたく紫電の4枚翼はさながら甲虫のそれであり、すなわちあのガリューのそれだった。
天地を揺るがす咆哮と共に、胸部から凄まじい魔力の奔流を迸らせる。
見るもの全てを威圧するほどの凶暴さに、どこか神々しさまで纏ったような、異形の神のごとき召喚虫。
これぞ、ルーテシアの究極召喚――白天王。
「あたしらにとっちゃ、あっちの方が何じゃこりゃーだけどな」
そして、白天王を見たことのあるアギトとゼストの視線は、もう片方の黒き怪獣へと向かっていた。
強固な竜鱗に覆われたその体躯は、白天王にも勝るとも劣らぬ強烈なインパクトを振りまいている。
背中に広がるコウモリのごとき漆黒の翼が、実際以上の大きさの印象を与えていた。
頭に伸びるのは、白銀に輝く雄々しき角。灼熱の業火をその身から放ち、真っ向から白き巨大虫と対立する。
ライトニング隊所属キャロ・ル・ルシエの召喚した真竜――ヴォルテールだ。
無論、これだけならば何もおかしなことはない。巨大召喚獣を保有した2人が戦えば、こうなることは分かりきっている。
しかし、問題はそこではない。

281 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/07/02(水) 20:14:00 ID:cZH8R4jA
「妙だな……白天王の魔力が、普段よりもやけに大きい」
僅かに太い眉をしかめながら、ゼストが呟いた。
あの腹部から放たれている砲撃から感じ取れる威力が、いくら何でも高すぎるのだ。
過去にルーテシアが白天王を使役した場に立ち会ったことはあるが、その時はもう少し出力は低かった。
「ルールーの様子も何か変だ」
心配そうな色を声音に宿しながら、アギトが口を開く。
2体の巨獣の足元に立ち尽くす少女の纏う空気も、普段とは明らかに違って見えた。現在地から遠目に見ても、である。
「何にせよ、あちらへと急ぐしかないか」
言いながら、まず始めにゼストが前進する。それに合わせるようにして、殺生丸達も再び歩を進めた。
ルーテシア達の居場所に近づくにつれて、余計なビルが視界の外へと弾かれ、周囲の全容がよく分かってくる。
見れば、あの紅髪の少年騎士エリオ・モンディアルが、ストラーダを片手に随分と跳び回っていた。
雷の長槍を振り回し、果敢に戦いを挑む相手は、さながらカブトムシをそのまま巨大化させたようなモンスター――地雷王。
総勢5匹という大軍団の大型召喚を相手に、エリオは白竜フリードと共に立ち回っていた。
否、それだけではない。槍騎士の傍らにいる漆黒の鎧は――ガリュー?
どういうことだ。何故ガリューがエリオと共に、地雷王と交戦を行っているのだ。
その奥では、ルーテシアと相対するキャロの姿が見える。状況を把握するなら、こちらに話を聞くべきだろう。
「キャロ!」
ようやく現場へと到達したシグナムが、着地と同時に竜召喚士の少女へと声をかけた。
「シグナム副隊長! と……せ、殺生丸っ……さん!?」
呼びかけに応じながら、そのすぐ脇に立つ妖怪の姿を認め、キャロは素っ頓狂な声を上げる。
他にもゼストやアギトの姿もあったが、やはり最も強烈なインパクトを与えたのは彼だったようだ。
地上本部にて、この男がスバルを再起不能の寸前まで叩きのめしたのは記憶に新しい。
さらに遡れば、廃棄区画戦では、あわや自分がその攻撃を受ける一歩手前だったのだ。
それがシグナムと行動を共にしているともあれば、その衝撃もかくやといったところだろう。
「色々とあって、私の監視下に入ってもらった。今は敵ではない」
説明しながら、シグナムが周囲へと視線を回す。
「それで……現状は?」
そして、詳しい情報を聞き出すために、キャロへと問いただした。
「あ、はい。ルーちゃ……えと……あのルーテシアという子に、戦闘をやめるように説得していたんですけど……」
「――途中で戦闘機人の妨害を受けました。恐らく、何らかの洗脳がかけられているんだと思います」
言いながら、ストラーダを両手に構えたエリオが飛び退ってきた。
シグナムのすぐ横へと着地し、横目で見ながら報告する。彼がやってきた方向では、地雷王の一匹が行動を停止していた。
「洗脳だぁ!? あーもう、これだからアイツらは信用できないってぇのにぃ!」
頭をがしがしと掻き毟りながら、アギトがわめき散らした。
それが本当ならば、スカリエッティは相当前からこうした仕掛けを施していたということになる。
彼はレリックを介することで、対象の思考を意のままに操作する技術を用意していた。
あのヴィヴィオにもその処理がなされており、ついでに言うならば、タイプゼロ達もそうして手駒とする予定だったらしい。
そして、ルーテシアがその身にレリックを埋め込まれたのは――すなわち洗脳の用意がされたと思われるのは、捕らえられた1歳の頃。
「友好な関係などとは、まったくよく言ったものだ……!」
要するに、その気になればいつだって、スカリエッティは彼女を従順な奴隷に仕立て上げることができたわけだ。
自由意志もなく、ただ忠実に命令のみを実行する存在に。
ぎり、と、ゼストの奥歯が音を立てた。
それにしても、目の前のルーテシアの姿の何と痛ましいことだろう。
いつもの様子は遥か彼方に消えうせ、放つ気配は、こちらが狂ってしまいそうになるほどの激情に満ちている。
暁のごとくぼんやりとした赤い瞳は、今や怒りと悲しみと憎しみの炎の瞳だった。
「白天王……みんな……みんな殺して……誰にも私の邪魔をさせないでッ!」
叫ぶ。
憎悪を。
普段の彼女からはあまりにも逸脱した、他を排する呪いの言葉を。

282 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 20:14:53 ID:XZKEELin
思念

283 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/07/02(水) 20:15:00 ID:cZH8R4jA
「召喚獣達も暴走しちゃって……正気なのは、エリオ君が目を覚まさせたガリューだけです」
キャロによる報告も、もはや殺生丸の耳には特に入っていないようだった。
鋭き金色の双眸は、怒り狂うルーテシアの姿をじっと見つめている。
心なしか、その瞳は、いつもよりも僅かに鋭さを増しているようにさえも見えていた。
「外道め……!」
何の罪もない普通の少女を、ここまで徹底的に弄ぶとは。
あの忌まわしき次元犯罪者への憎悪を苦々しく吐き捨てながら、シグナムはレヴァンティンへと手をかけた。
腰に挿した純白の鞘から、炎の魔剣の剣呑な刀身が抜き放たれる。
「私があの召喚虫へと攻撃を仕掛け、一瞬注意をそらす。その隙にヴォルテールで鎮圧を――」
そしてそこまで言いかけたところで、不意にシグナムの口は塞がれた。
何やら視線を感じ、左の方へと顔を向ける。殺生丸の黄金の目が、視線で彼女の身体を押し留めていた。
言葉など必要ない。気配だけでシグナムには理解できる。要するに彼はこう言いたいのだ。
――お前は手を出すな、と。
「……ならば、お前がやるというのか」
理解できたが故に、シグナムは問いかけていた。
お前がその爆砕牙で白天王の動きを封じ、勝機を引きずり出すつもりだというのか、と。
それでも別段構いはしなかった。結果は同じになるのだから、シグナムには特に気分を害した様子もなかった。
しかし意外にも、銀髪の魔人はゆっくりと、そして微かに首を左右に振る。
「これはお前の役目だ」
眩き長髪を翻しながら、殺生丸は第三の人間へと向き直る。
指名を受けたのは――ゼストだった。
「俺が……?」
「待て、殺生丸! 今の騎士ゼストの状態では……!」
いきなり矛先を向けられたゼストは、意外そうに目を丸くしながら呟く。一方のシグナムは、この人選に猛然とつっかかった。
殺生丸がやるならまだいい。恐らくまだ余力があるであろう彼ならば、役割をこなすことはできる。
だが、それがゼストともなれば話は別。
不安定な人造魔導師の身体には、もはやほとんど戦闘に耐えうるだけの力は残されていないのだ。
おまけにデバイスもない。魔力の尽きかけた身体では、リカバリーを公私して復元することも難しい。
こんな状態のゼストをおいそれと戦場に放り込むことなど、シグナムにはできなかった。
「一撃でも撃てればいい」
しかし、殺生丸はそんな声には耳も貸さず、淡々と言葉を紡いでいく。
「――やるのか、やらないのか」
決めるのならば早くしろ、と。
冷たく鋭い猛獣のような。気高く美しい美獣のような。
黄金の双眸が、ゼストの瞳を覗き込むようにして、真っ向から揺らぐことなく見据えていた。
しばしの静寂。
張り詰めた空気がその場に広がる。重苦しい空気が漂うほどの、沈黙。
「……どこまでも、世界は俺に役割を求めるか……」
不意にゼストが漏らす。微かに自虐を孕んだような、薄い笑みのように。
何一つ成し遂げられないと思っていた。責任を果たせなくなることが怖かった。だから何も為さず、静かに朽ち行くのが望みだった。
それでも、世界はこの死に損ないを求めている。
誰も望まぬはずだったこの身体を、役目を果たせと揺り動かしてくる。
「――行くぞ、アギト!」
どこまで行っても逃げられないのならば――徹底的に生き抜くまでだ。
いつまでこの身体がもつかは分からない。ならばそれまでの間は、全力でこの拾った生をまっとうしてみせる。
「おうっ!」
弾けるような笑顔と共に響く、アギトの強気な声。
桜色の光へと溶ける、小さな融合騎の身体。死人騎士と烈火の剣精が同調。
瞬間、誇り高き武人の身体は、灼熱に煌く鬼神と化した。
燃え盛る甲冑。輝く金の髪。瞳に宿るは烈火の色。業火を纏ったゼスト・グランガイツが、戦場の天空へと飛翔する。
蒼穹に躍り出る、屈強な戦士の姿。烈火の鎧が、鍛え上げられた豪腕の動きと共に爆散した。

284 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/07/02(水) 20:16:00 ID:cZH8R4jA
アギトとのユニゾンを果たしたゼストは、その眼差しの先に白天王の巨体を捉える。
改めて見ると大きい。高層ビルにすら匹敵する、正真正銘の化け物の体躯だ。
臆しはしない。たとえ相手がどれだけ強大だろうと、絶対に負けはしない。
「ゼスト……」
ヴォルテールの傍らに浮遊し、白天王と相対する形となったゼストに対し、不意に地上から声がかかる。
「どうして、貴方はすぐにどこかに行っちゃうの……!?」
幼いルーテシアの少女の声は、鋭く激しい怒りに満ちていた。
否、怒りだけではない。そこにあったのは、より強き悲しみ。
求めても、求めても、どこかで壁を作られる。深みへ分け入ることを拒絶される。
「行っちゃわないで……私を置いていかないでえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ―――ッ!!!」
振り撒かれるのは大粒の涙だ。
悲痛なまでの絶叫が、ゼストの顔を苦悶に歪ませた。
まだ背負わされていない責任から逃げていたのではない。責任なら、とっくに背負わされていた。
こんなにも、ルーテシアは自分を求めていたではないか。愛されてしまっていたではないか。
それにも気付かずに、理解しようともせずに。ただその影を怖れ続けた。自分は最低の男だ。
「すまんな、アギト……どこまでいっても、俺は弱い男だ」
故に、謝罪する。
後悔ばかり重ね、煮え切らない態度ばかり取り続け、それでもやっぱり心が痛むから、こんな小さな融合騎にすがり続けていた。
自分ばかり守ろうとしていた、卑小な男の姿を肯定し、口に出す。
『構わねぇよ』
それでも、烈火の剣精はおくびも気にした様子もなく、にっかと笑ってみせた。
『旦那が弱い人間だってのなら、あたしがその弱さを守る』
かつて自分を助けてくれた命の恩人。暖かい世界を自分に見せ、翼で空を飛ぶ喜びを自分に教えてくれた男。
誰よりも尊敬し、誰よりも強い親愛を抱き。
そして誰よりも守りたいと、心の底から強く願った――この強くも脆い、故に愛しい、かけがえのない「父親」を。
「ならば、お前達の想いは、この俺の身体で受け止めよう」
もう迷わない。決して逃げることはしない。
たとえこの身体がいずれ砕け散る運命にあるとしても、ならばそれまでを全力で生き抜いてみせる。
みっともない足掻きであろうとも、何の見返りもなくとも。
自分のためではなく、誰かのために――こんな自分を求めてくれている、大切な「子供達」のために。
『――衝撃加速ッ!』
アギトの魔力が、ゼストの身体に最後の息吹を吹き込んだ。
駆け巡る灼熱のエナジー。愛槍の穂先ではなく、その右の拳に収束される風圧。
恐らくこれが、ゼスト・グランガイツが騎士として行うことのできる、正真正銘最後の戦いになるだろう。
だからこそ。
この一撃に、持てる力の全てをかけて。
ルーテシアを。もう1人の「娘」を。
その暗闇から解き放つために。
「ぬぅぅぅあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――ッ!!!」
咆哮する。
全身の筋肉を躍動させ、さながら獣の唸りのように。
突き出される右の鉄拳。解き放たれるのは、蒼天を切り裂く真空の弾丸だ。
魔力という奇跡の力で固められた不可視の波動が、丸太のごとき腕から発射され、白天王の顔面目掛けて殺到する。
一直線に放たれた一撃は、吸い込まれるようにして過たず――命中。
湧き上がるのは、苦痛に喘ぐ究極召喚の声。
「ヴォルテールッ!」
そこへ、偉大なる竜王の叫びが重なった。
アルザスの民を守る、烈火纏いし大いなる守護神。この隙を逃すことなく、一挙に解き放たれる灼熱の業火。
ヴォルテールの炎は白天王の紫電をことごとく押し返し、命中し、その身を盛大に焦がす。
ルーテシアの激情を一手に受け止めた白き召喚虫は、轟音を伴いながらゆっくりと崩れ落ちた。

285 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/07/02(水) 20:17:07 ID:cZH8R4jA
「!」
倒れ伏す白銀の巨獣の姿。ルーテシアの暗き瞳が、驚愕の一色に染まって見開かれる。
何故倒された。
何故砕かれた。
白天王が。究極召喚が。自分の持ちうる最強の力が。
母を救うために手にした力が。喪失という名の心の虚から湧き出たこの力が。痛みを知るが故に培った、揺らぐことなき絶対の力が。
クアットロの起動させた洗脳プログラムによって、己が感情の躁鬱を限界まで極端化されたルーテシアは、
故に、感情のままに、目の前の事実に対して最大級の驚きの反応を浮かべていた。
吹き抜ける、一陣の風。
次の瞬間、不意に、彼女の視界の中に純白が広がる。
白天王を倒されたことで生じたルーテシアの隙を突き、その間合いへと急速に接近した殺生丸の姿がそこにあった。
「あ――」
反応する暇などない。
刹那の早業で突き出されたのは、これまであらゆる敵を殴り飛ばしてきた、痛烈な鉄拳だ。
容赦のない左ストレートは、さながら聞き分けのない駄々っ子に制裁を下すかのごとく。
「っ!」
吸い込まれるようにして迫る拳は、あやまたずルーテシアの腹部へと叩き込まれる。
漆黒のゴスロリ服に包まれた小柄な身体が投げ出され、数メートルほどの距離をサッカーボールのように転がっていく。
当然、幼い娘のか細い意識など、一撃のもとに刈り取られていた。
「おい殺生丸っ! いくらなんでもやりすぎだっての!」
半ば怒ったような声を上げながら、ゼストとのユニゾンを解除したアギトが降下してくる。
小さな剣精が殺生丸の顔の高さで静止し、何やらがみがみがみがみと説教を始めると、続いてゼストがビルの屋上へと降り立った。
周囲に輝くのは紫色の召喚魔法陣だ。ルーテシアが気を失ったことで、召喚虫達へ指令を出す者はいなくなった。
故に白天王は、そして地雷王もまた、自らの意志であるべき場所へと帰還していく。役目を終えたガリューさえも。
誰も主君の苦しむ姿など、最初から見たくはなかったのだ。
ルーテシアが激情の呪縛から解放された今、これ以上スカリエッティのために戦うつもりなど毛頭なかった。
「………」
口やかましいアギトを半ばスルーしながら、殺生丸はルーテシアの姿を見やる。
駆け寄ったゼストの手中へと収まった眠り姫。
スカリエッティの洗脳によって無理やり揺り起こされた、激昂の少女。
ばら撒かれた怒りと悲しみは、僅か9歳の娘の小さな身体を、どれだけ苛んだことだろう。
何故か――無性に腹立たしくなった。
あの変態科学者のことを憎たらしく思っていたのは、無論言うまでもない。
だが、あの痛ましいルーテシアの姿を見せられてからは、どういうわけかそれに拍車がかかったような気がした。
ただの取るに足らない、それも人間の小娘1人だというのに。
どうかしているとは思う。あのりんという少女といい、いちいち気にかけすぎだとは思う。
しかし、その胸の中でさながら灼熱のマグマのごとくうねるこの怒りだけには、嘘をつくことはできなかった。
黄金の瞳で、空を見る。
一面の青空の中、我が物顔で飛翔する、無限の欲望の最大の研究成果とやら――聖王のゆりかご。
あれを一思いに壊してしまえば、少しは憂さ晴らしにはなるだろうか。
「行くぞ」
短くシグナムへと告げ、自身は空へと飛び立った。
「ん……ああ」
唐突にかけられた言葉に、シグナムはワンテンポ遅れて反応する。
そして彼女もまた、ルーテシアをエリオ達に任せてゆりかごへと飛ぼうとした瞬間、
「――シグナム、と言ったか」
その背中を、ゼストの低い声によって引き止められていた。
「何でしょうか」
踵を返し、ルーテシア救出の一助となった死人騎士と正面から向き合って問いかける。
「行くのならば、アギトと共に戦ってやってはくれんか」
出された要求は、シグナムにとって――そして当のアギトにとってもまた、衝撃的なものだった。

286 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/07/02(水) 20:18:04 ID:cZH8R4jA
「なぁっ!?」
「よろしいのですか?」
唐突に発せられた言葉に、アギトは面白いくらいのオーバーリアクションを見せる。
一方のシグナムは冷静に振舞いながらも、ゼストの意図を図りかねてか、やや訝しげな様子で確認した。
「何でだよ旦那ぁ! 何であたしが旦那以外と――」
「俺にはもう、こいつの力を引き出してやることができん。このまま俺のもとで腐らせるのも惜しい……」
アギトの反論には耳も貸さず、ゼストはその言葉を紡いでいく。
「これは、お前にしか頼めないことだ」
そして、最後にそう締めくくった。
炎の魔力変換資質を持ち、鋭きレヴァンティンを振りかざし、アギトと同じ魔力光を持つシグナムだからこそ。
何よりも――この誇り高き烈火の将が、この次元世界の平和を守るにふさわしき、「よい騎士」であるからこそ。
だからこそ、お前に頼むのだ、と。
落ち着いた口調の中に、確かな力を込めた言葉に、偽りなどは何一つなかった。
「……分かりました」
シグナムは静かに応じていた。
アギトもまたゼストの想いを汲み取ってか、やや憮然としながらも口をつぐむ。
ふと、彼の細い瞳が、上の方へと向けられた。
視界一面に広がる空は青い。たとえ戦火が広がろうとも、巨大な戦艦が鎮座しようと、その背後の天空だけは、いつも青くあり続ける。
「――いい空だな」
ぽつり、と。ゼストが漏らしていた。
いつ見ようと、どんな状況で見ようと、変わらぬ美しい空だ。かつて守り抜こうとした、平和なミッドチルダの空。
「俺やレジアスが守りたかった世界……お前達は、間違えずに進んでくれ」

斬、斬、斬。
迫り来る雲霞のごとき、有象無象の鋼鉄兵団。
物言わぬガジェットドローン達が、牙を剥いた猛獣を捕らえんと迫るも、それらは全て余すことなく塵芥へと変わっていく。
遂に無限の欲望へと反旗を翻した殺生丸が、その破壊の凶刃を振り上げる度、鋼の人形が紙切れのごとく吹き飛ばされていく。
さながら鋼鉄のガジェット達を蹂躙する、強烈な竜巻か何かのように。
その攻撃を全く寄せ付けることなく、疾風怒濤の一撃が、次から次へと機械の軍団を破壊していった。
地上のガジェットは残らず停止したようだが、迫り来る増援部隊は留まることを知らない。
今こうしてゆりかごから直接出撃してくる連中は、他のガジェットとは管制系統が違うのだろう。
だからといって、そんなことはこの戦国の魔人にはお構いなしだ。
途切れることなく爆砕牙を振り回し、その剣閃で木の葉のように鉄屑達を巻き上げていく。
今のところはさしたる問題ではない。しかし、こうも多くを相手にしていては、なかなかゆりかごまでは近寄れない。
さてどうしたものか。殺生丸は刃を振るいながら、現状に対して思考を張り巡らせる。
「――火竜一閃っ!」
それを中断させたのは、すぐ脇を掠めていった連結刃だった。
灼熱の業火を纏ったそれは、自在にその身をしならせて、ガジェット達を次々と撃墜させていく。
先ほど戦ったばかりのレヴァンティンの刀身か。だが、何かが違う。火力が先ほどよりも大きい。
「遅くなった」
短く告げたシグナムの姿もまた、先ほどまでとは様変わりしていた。
赤紫の騎士甲冑は、青いノースリーブ型へと変貌している。髪の色は、めらめらと燃え上がるかのような金髪。
再構成された青のリボンに結ばれたポニーテールが揺れる。背中に輝くのは、烈火のごとき4枚の翼。
『助太刀するぜぇ、殺生丸っ!』
そしてその内側から響くアギトの声によって、殺生丸はようやく、それがユニゾン態であることに気が付いた。
「フン……」
素っ気無く鼻を鳴らすと、特に感想を告げることもなく、さらに高度を高めていく。
シグナムは自分と互角に戦った腕前の持ち主だ。加えてアギトの力を受けたのならば、発揮する魔力量は自分以上だろう。
それだけのものがあるならば、放っておいても死ぬことはあるまい。
そんな風に思いながら、殺生丸は新たなガジェットを一刀両断にした。

287 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/07/02(水) 20:19:01 ID:cZH8R4jA
烈火の将シグナムと烈火の剣精アギトの発揮する親和率は、想像を絶するものだった。
同じ性質を持つ者同士、炎の魔力は実に馴染む。
シグナムは供給される莫大なエネルギーに、アギトは発揮される絶大な効率に、内心で舌を巻いていた。
みるみるうちに、無数のガジェット達が破壊されていく。これほどの戦火、以前のパートナーでは望めなかっただろう。
そしてアギトはそんな思考を抱いたことを、内心で僅かに恥じていた。
我ながら現金な奴だ、と思う。
あれほどゼスト以外の人間とのユニゾンを拒んでいながら、こうしてその力を目の当たりにして、2人を平然と比べている自分がいる。
仕方のないことなのかもしれないが、どうにも自分自身に納得がいかず、むくれたような表情を浮かべていた。
『……んー?』
と、不意にアギトが怪訝そうな表情を浮かべる。その視界に、何か異常を認めたらしい。
「どうした?」
その反応に気付いたシグナムが、内なるユニゾンデバイスへと問いかけた。
『いや、な。殺生丸……何か前に見たよりも、こう……遅くなってるんじゃねぇか、って』
「遅く?」
意外そうな表情をしながらも、シグナムは上方で戦う殺生丸へと視線を飛ばした。
銀色の長髪を煌かせる妖怪の剣士は、今なお凄まじい戦闘力を振りかざし、ガジェット達を蹂躙している。
それだけを見れば、別段どうということはなさそうに見えるだろう。
しかし、直接刃を交えたシグナムには、その異常がありありと見て取れていた。
「確かに、剣速も反応速度も鈍い……!」
遅すぎるのだ。つい先ほどに彼女自身に襲い掛かった殺生丸は、あれほどに愚鈍な男ではなかった。
今でも攻撃が素早いことに変わりはない。しかし、ただ速いだけだ。
油断すれば一瞬にして命を刈り取られてもおかしくなかった、あの神速の太刀筋が今はそこにない。
反応速度の方も、あの時に比べれば遥かに低下していた。こうして見ている限りでも、何度か危なっかしい場面が見られている。
『旦那っ! 殺生丸の様子が、何か変なんだ!』
アギトは即座に地上のゼストへと回線を繋いだ。
こういうところで真っ先に彼に頼ろうとする辺り、未だに戦場での「親離れ」ができていないらしい。
ともあれ、端末のモニターを介し、ゼストもまたその様子を見る。
視界の先には、遂にガジェットのレーザーの直撃を受けてしまった殺生丸の姿があった。
『……やはり、ここまでに消耗していたというわけか』
いくらかのろまになった妖怪の貴公子の姿を見て、死人騎士が呟く。
思えば、もっと早く気付くべきだった。
急ぐ状況だというのに、その方が楽だからという理由で空を飛ばず、足を使っていた移動中。
自分でも対処できただろうに、わざわざゼストに任せた対白天王戦。
それらは全て、落ちた体力を少しでも温存するためのものだったのだ。
殺生丸はここまでずっと戦い続けていた。
地上では並入る陸士達を屠り、決意に燃えるギンガを蹴散らし、シグナムとも戦った。
無論、それだけでへばるような貧弱な身体というわけでもないだろう。であれば、この状況を招いた決定打は――
「私のシュツルムファルケンか……?」
『Sクラスの騎士の最大奥義の直撃を受けて、全く平気でいられる者など、いるはずもなかったということだ』
烈火の騎士との激戦の果てに、左胸へともろに受けた音速の一矢。
非殺傷設定故に傷つくことこそなかったものの、その強烈な痛覚は、確実に殺生丸の余力を奪っていた。
「く……!」
苦々しげに顔を歪めながらも、シグナムはその背の炎翼を羽ばたかせて飛翔する。
この乱戦の最中、殺生丸とはだいぶ距離が離れてしまった。一刻も早く接近し、フォローしなければならない。
しかし、そこにはあの無骨な機械人形達が割って入る。
「邪魔をするなぁっ!」
叫びながら、斬る。灼熱のレヴァンティンの切っ先が、ガジェット達を次々と引き裂いていった。
それでも、数は減らない。見れば視線の先の殺生丸は、無数の敵影に完全に包囲されてしまっている。
「殺生丸ーっ!」
シグナムが再び叫びを上げたその時、画面の端に映った少女の瞼が、微かに揺れたような気がした。

288 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/07/02(水) 20:20:00 ID:cZH8R4jA
身体が言うことを聞かない。
手にした爆砕牙は己が意に従わず、平時の半分の速度でのろまに敵を薙ぐ。
全身が1本の棒になったように硬直し、もはや敵の熱線を回避することもままならない。
未だその表情だけは冷静を装いながらも、殺生丸の太刀筋はひどく鈍っていた。
シュツルムファルケンの一撃をもろに食らった左胸の痛みが、彼の身体をとてつもなく愚鈍にする。
それだけではない。そうなることでその身に受けてしまったレーザーの痛みもまた、彼の身体をより強固に縛っていた。
さながら、あの曲霊と戦った時と同じ。ひどく自分が卑小な存在に見える。
相手はただの屑鉄だというのに。曲霊どころか、弟の犬夜叉よりも遥かに劣る雑兵どもだというのに。
ここで終わるというのか。元の世界から遠く離れた、こんな異国の地で。こんな雑魚に幕を閉じられるのか。
何も為せないまま、誰も倒せないまま。
あの娘を――りんを救い出すこともできないまま。
その思惑とは裏腹に、身体は着実に終焉へと進んでいく。
ガジェットドローンの包囲網。一挙に解き放たれる、雨のごときレーザー。
身を焦がす灼熱。炸裂する爆炎。立ち上る黒煙。
唸りすら上げず、殺生丸の身体は、さながら力尽きたように、頭からクラナガンの街へと墜落を始めた。
真っ逆さまに落下していく体躯。風に揺れる、すすけた着物と毛皮。
朦朧とした意識は、そのままゆっくりと途絶えかける。
不意に、ぼんやりとした視界の片隅で、通信画面が開いたような気がした。

――殺生丸。

くわ、と、金色の双眸が見開かれていた。

瞬間、世界に光が満ちる。

ごう、と。
殺生丸の身体さえも飲み込んで、ミッドの蒼穹を覆い尽くすかのごとき紫電が迸る。
目も眩むような、強烈な紫色の光のフィールド。絶大なまでに膨れ上がった魔力の光。
その中心にあるのは、あの近代ベルカの召喚魔法陣だった。

刹那、天空の景色は激変する。

青き空と鋼鉄色のガジェットドローンの2色で構成された空域に、新たな色が姿を現した。
「――オオオオオオオォォォォォォォォォッ!」
天地を一声で揺るがした絶叫は、人の言語では形容しがたい。すなわち、人ならざる猛獣の雄たけび。
高層ビルにすら匹敵する白銀の大鎧が、叫びと共に紫を突き破って現れる。
屈強な四肢を持ち、神々しき威容を放つ究極召喚は、まさしくあの白天王。
それだけではない。その周囲を更に固めるのは、頑強な甲殻を持った巨大甲虫――地雷王達。
加えてその眼前には、マフラーをたなびかせる漆黒の昆虫戦士、ガリュー。
眩い炎の髪と翼を風に漂わせながら、烈火の将シグナムもそこに並ぶ。
巨大なる白天王の右肩には――あの殺生丸の姿。
天空に躍り出る巨大召喚虫達の大軍団の中心で、堂々とした風格と共に、悠然と腕を組んで直立していた。

289 :反目のスバル@携帯 ◆9L.gxDzakI :2008/07/02(水) 20:23:05 ID:I7IW2VGx
ちょっとどうなってんのォォォォォ!? さるさん食らったんですけどォォォォォ!(ぉ

そんなわけで、どなたか代理投下よろしくですorz

290 :反目のスバル ◇9L.gxDzakI 代理:2008/07/02(水) 20:38:52 ID:Z6gmjv3B
迫り来るガジェットドローン。解き放たれる雷の波動が、しかしそれらを一瞬にして消滅させる。
鈍重な巨体を透明な翼で器用に飛行させる、5体の地雷王の一斉掃射だ。
百雷のごとき奔流は、並み居る鋼鉄の兵士達をことごとくなぎ倒し、爆炎の花畑で戦場を彩った。
今、真にその意識を覚醒させたルーテシアの声の下に、再び集った召喚虫達。
激戦の果てに傷つき倒れた、満身創痍にも等しきつわものの姿。それでも、臆することなく巨悪へと立ち向かう。
今こそ、主君の本当の命令に全力で答えるそのために。
この銀髪の魔人を、あの忌まわしきゆりかごへと送り届けるために。
瞬間、爆音と共に紫の翼が羽ばたいた。
地雷王達の頼もしき援護射撃を受け、白天王の巨体が猛然と上昇していく。
4枚の強靭な翼は風を切り裂き、純白の堅牢な鎧は触れるだけで雑兵達を蹴散らした。
吹き荒れる衝撃波と共に、殺生丸を乗せた究極召喚は、蒼天の巨大戦艦目掛けて加速していく。
突如、地雷王の迎撃をかいくぐったガジェットの内の数機が、殺生丸の眼前へと立ちふさがった。
チャージされる灼熱のレーザー。幾度となくこの妖怪の身体を焼いた、必殺の熱量。
――びゅん、と。
刹那、二陣の疾風が吹き抜けた。
攻撃態勢一歩手前にまで及んでいたガジェット達は、それら全てが両断され、粉砕される。
機械の軍団の前に立ちはだかったのは、昆虫戦士と烈火の将の姿だった。
「ルーテシアが、お前に『行け』と言っている」
クールな表情に薄っすらと笑みを浮かべ、シグナムが横目で殺生丸を見ながら言う。
『とことん行けるところまで行っちまいな! 露払いはあたしらが引き受けるからさ!』
弾けるようなアギトの声が、殺生丸の背中を後押しした。
最後に彼を見つめるのは、ガリューの赤き複眼の眼差しだ。
思えば、こうして殺生丸とガリューが顔を合わせることは、この数ヶ月間の旅の中でもほとんどなかった。
白と黒、2人の人外の戦士が、しばしその黄金と真紅の視線を重ね合わせる。
こくり、と。力強く頷くガリュー。
無言の激励の後、再び白天王はゆりかごに向かって羽ばたいた。
持てる力の全てを発揮し、凄まじい速度で天上の艦へと殺到する。
『おらおらおらぁ! 死にたくなかったら道空けなぁ!』
戦闘空域の空戦魔導師達のモニターが一様に展開され、その顔を大映しにしたアギトが目いっぱい叫んだ。
下方より迫る規格外のサイズの化け物を確認すると、誰もが悲鳴を上げて言われるままに退散する。
さながら十戒の伝承の大海のように、魔導師達がさぁっと引いて生じた道を、白天王は悠然と通っていった。
「見つけたぞ妖怪! この私と、グラハム・エーカーとぉ!」
「危険ですから下がってください隊長っ!」
何やら横合いから殺生丸を呼ぶ声が聞こえたが、正直どうでもよかったので無視することにした。
やがて白銀の究極召喚は、その巨体すら凌ぐ大戦艦を射程範囲に捉え、静止する。
殺生丸もまた爆砕牙を構え、ついでに腰から新たに抜いた天生牙を左手に握った。
蒼龍破は、自身の妖気と妖刀の妖気を同時に放つ剣術奥義だ。消耗した今では、この二振りを使わねば相応の威力は得られまい。
両の刃を構え、蒼穹のごとき青の妖気を刀身に走らせる。白天王の腹部にもまた、紫電の奔流が収束された。
「――蒼龍破!!!」
雄たけびと共にその刀身から顕現する、稲妻の龍神。
絶大な妖気が再度渦を巻いて解き放たれ、白天王の放つ極太の砲撃と複雑に絡み合う。
最強と最強。混ざり合った必殺の波動はゆりかごの壁面に着弾し、猛烈な音と光を伴って爆裂した。
もうもうと立ち込める煙の中、その巨体のどてっ腹に大穴が穿たれる。
入り口はここに出来上がった。

291 :反目のスバル ◇9L.gxDzakI 代理:2008/07/02(水) 20:39:32 ID:Z6gmjv3B
ふと、殺生丸は地上を見下ろす。
そして、首都圏から離れた山間部へと視線を向けた。あの忌まわしきスカリエッティのラボのある方へと。
既にあの男は捕らえられたというが、何らかの形で、この模様は見ていることだろう。
「そこで見ているがいい、ジェイル・スカリエッティ」
呟く。
あの姑息で小癪な科学者とやらの名を。このミッドチルダという名の世界で、最も嫌いな男の名を。
「もはや貴様にはほとほと愛想が尽きた」
さながら呪いの言葉であるかのように。
「この私を散々利用した対価……貴様ごときの命で足りると思うな!」
瞬間、言葉は怒気を孕む。
殺生丸の態度は激変した。
見開かれる双眸。血のごとき赤へと変色する瞳。牙が剥かれ、表情に満ちるは殺気。
これまでのどこか高貴ささえ漂わせる静かな気配は消えうせ、凄絶なまでの気配が顔に声にと宿っていく。
「貴様の命よりも大切な『研究成果』とやら――塵の一片たりともこの世に残さんっ!!」
凶暴な獣が、白天王の肩から飛び上がった。
刹那、その様相は変貌する。
ゆらゆらと揺らめく、銀糸のごとき長髪とたてがみのごとき毛皮。喉から漏れ出るのは、獣のごとき低い唸りだ。
殺生丸の身体が膨れ上がる。
口は裂け、手足は伸び、尻尾が生え。
全身は純白の体毛にびっしりと覆われ、十倍近い異形の巨体へと激変する。爪が、牙が、その鋭さを増していく。

《――ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ――――――ッ!!!》

獰猛な凶犬の絶叫が、クラナガン全土に響き渡った。
灼熱の憤怒を宿した瞳は、煙を上げる聖王のゆりかごを、更なる風穴を開けんばかりの眼光で睨みつける。
人外の魔物たる妖怪を突き動かす最も強いものは本能だ。
人間の持つ理性ではない。もっとシンプルで、もっと強烈な感情。
すなわち――怒り。
取り繕った体面を脱ぎ捨て、美麗なる容姿さえも放り捨て。
天地を揺るがす凶暴な怒りの奔流は、醜悪な犬の化け物の姿をもってこのミッドチルダに形を成した。
瞬間、疾駆する。
大木の幹にすら匹敵する四肢を走らせ、殺生丸が駆け抜ける。
ゆりかごに空いた穴にかぶりつき、爪を立て、牙を剥き、その入り口を更に押し広げて。
遂に怒りに震える純白の獣は、聖王の胎内へとその足を踏み入れた。
咆哮と共に、暴力的なまでの破壊力を振りかざしながら、轟然と駆け巡る。
殺生丸は機械に関しては完全な門外漢だ。どこを壊せばこの艦が落ちるのかなど、全く知りもしない。
ならばいっそのこと、全て壊してしまえばいい。
この巨大な欲望の結晶をあますことなく粉々に破壊してやる。
廊下を切り裂き、動力室を砕き、玉座の間さえも崩壊させ、獰猛なる巨獣は、ゆりかごの全てを余すことなく粉砕しにかかった。


292 :反目のスバル ◇9L.gxDzakI 代理:2008/07/02(水) 20:40:13 ID:Z6gmjv3B
『すっげぇ〜……』
外からその大破壊の様子を傍観していたアギトは、心底感心しきったように呟く。
突如巨大な白い犬へと変化した殺生丸の迫力は、見るもの全てを圧倒するほどのものだった。
大型召喚とか、そんなレベルではない。あの白天王ですら役者が違う。
「ああ、確かにな」
アギトの言葉を肯定するシグナムの視線の先には、より一層激しい黒煙を上げるゆりかごがある。
内部で殺生丸が大暴れを演じた結果だ。どこもかしこも手当たり次第荒らし回った結果、高貴な黄金の艦は穴ぼこだらけ。
『うっし殺生丸! そのままブッ壊しちまえ!』
シグナムの中で、アギトがさぞ爽快な様子でガッツポーズを取った。
スカリエッティに恨みがあるのは、何も殺生丸に限った話ではない。ルーテシアを洗脳させられたことは、このアギトだって許せないのだ。
その科学者の最大の研究成果が叩き壊されるともあれば、さぞかし気持ちのいいことだろう。
「……ブッ壊す?」
ややあって、突然、シグナムがアギトの言葉を反芻した。
今烈火の剣精は何と言った。そして、あの銀髪の妖怪は何をしようとしている。
目の前にあるのは何だ。あちこち破壊されてボロボロになったゆりかごだ。
しかもよくよく見てみれば、ゆっくりとではあるものの――どんどん高度が下がってきていないか!?
「お、おいおいおいおいちょっと待て……上昇を止めるだけでいいんだ……」
「へ?」
さぁっと、シグナムの凛々しい顔立ちから血の気が引いていく。内側からはアギトの間抜けな声が上がった。
誰もそこまで壊せとは言っていない。高度を落としていいと言った覚えなどない。
あくまで時間を稼げばいいだけ。
もう少しでここにやってくる本局の艦隊のために、足止めをすればいいだけの話だったのに。
そのゆりかごがどれだけの質量を有していると思ってるんだ。そのゆりかごの下にはクラナガンがあるのが分かっているのか。
『まずいな……やりすぎだ。このままでは、クラナガンの街に――』
通信越しに、ゼストが想定される最悪の事態を口にしかける。
見ればゆりかごに取り付いていたヘリ(確かヴァイスが操縦していると聞いた)が、物凄い勢いで離脱していく様子が見て取れた。
誰の目にも明らかな、焦りの運転。沈む船から逃げるねずみのごとく。
横合いから、紫の髪の虫召喚士が、その最後の言葉を――そして最大の要点を、こともなげにぼそっと言い放った。
『――墜落』
同時に鳴り響く、爆音。
巨大な空間転移を行使する際の、虚空に風穴を開ける独特な音だ。そう、戦艦クラスが空間跳躍を行う時の音。
次元の壁を開け放ち、姿を現したのは純白の巨大戦艦――時空管理局XV級大型次元航行船・クラウディア。
更に続々と現れる、同様の次元航行艦の隊列。
間に合った。最悪の事態一歩手前で、どうにか艦隊が到着した。ほっとシグナムが胸を撫で下ろす。
同時に沸々と沸きあがってきたのは、烈火のごとき怒りだった。
どういうつもりだ。こうして何とか艦隊が間に合ったからよかったものの、そうでなければミッドは壊滅していたではないか。
チャージされる砲撃の魔力。収束する白銀の光。
同時に、轟音を立て、白い影がゆりかごの天井を食い破る。巨大なる魔犬が天空に躍り出る。
放たれる一斉放火。命中する光弾。爆散する聖王のゆりかご。
空で戦うシグナムとアギトが。ヘリに乗ったギンガとスバルが。ビルに立ったゼストとルーテシアが。
その場に居合わせた全ての人間が、その光景を見つめていた。
眩い光を背に受けて、銀糸の長髪と純白の衣をたなびかせる、殺生丸の姿さえも。
爆発の音に負けないほどの大声で、最後にシグナムが叫んだ。

「あの……馬鹿犬があああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!!」

293 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 20:40:35 ID:4xYf3wgV
なんで反目氏銀さんになっちゃってんのォォォォォォォォッ!?
支援

294 :反目のスバル ◇9L.gxDzakI 代理:2008/07/02(水) 20:40:52 ID:Z6gmjv3B
「――っはははははははははははははははははは!」
クラナガン郊外の山間部。スカリエッティのラボを出てすぐの所に停められた、鈍色の護送車のすぐ横。
無限の欲望が抱いた野望は打ち砕かれた。心血を注いだ聖王のゆりかごはことごとく破壊された。
「全く凄いじゃないか! あのゆりかごが! 史上最悪の質量兵器が、木っ端微塵じゃないか!」
それでもスカリエッティは――笑っていた。
常軌を逸したような笑顔。自棄を起こしたわけでもない。
その表情に宿るのは、純然たる喜び。
もはや彼にとっては、敗北したゆりかごなど――「理性の産物」など、どうでもいいものに過ぎなかった。
今彼の注目を集め、そして狂喜にその顔を綻ばせているのは、あの愛すべき「野性の徒」だ。
圧倒的な暴力を振りかざし、人の理性を粉々に打ち砕いた殺生丸だ。
「私は間違っていなかった! 見たまえ、あれが我々生命の可能性だ!」
金色の瞳を血走らせながら、スカリエッティは叫ぶ。
「生命はもっと強くなれる! 科学を超越した先へと、進化しうる! そうとも、妖怪だけの特権になどさせるものか!
 さぁ、忙しくなるぞ! 研究だ! この私も――我々人類も、あの高みへと至るのだぁっ!!!」
言葉の端々に滲み出る狂気。整った顔立ちが醜悪に歪む。
触れるもの全てを狂わせんほどの勢いを孕みながら、スカリエッティは笑う。
げらげら、げらげらと。あの化け物が暴れまわった空へと、その視線を向けながら。
しばらくそうしてけたたましく笑った後、不意に笑い疲れたようにして息をつきながら、その視線を落とす。
次の瞬間には、いつもと変わらぬ落ち着いた薄い笑顔が、自分を逮捕した若き女性執務官へと向いていた。
「――さて、そういうわけで、私はこれからまた研究をしなければならなくなった。この拘束を解いてくれないかね?」
――ばたん。
「……冷たいねぇ」
閉じられた護送車の分厚い扉を見つめながら、半笑いの声が呟いていた。

殺生丸は地上へと降り立つ。
全ての戦いを終え、全ての敵を壊した白銀の妖怪が、静かにクラナガンのビルの屋上へと足をつけた。
元気にその名を呼ぶアギト。薄く笑みを浮かべるゼスト。未だ頭痛を残した額を押さえるシグナム。
そして、真っ先に駆け出したルーテシアが、その純白の着物にぎゅっと抱きついていた。

戦いは終わった。
ミッドチルダ史上最大と語り継がれることになるJS事件は、時空管理局側の勝利という形で幕を閉じた。

そして、世界の壁を超えて訪れた妖怪の男の、この世界における戦いもまた、ここに終焉を迎えたのだ。


295 :反目のスバル ◇9L.gxDzakI 代理:2008/07/02(水) 20:41:24 ID:Z6gmjv3B
燃えたよ……燃え尽きたぜ……真っ白にな……(ぉ

というわけで投下終了。ゆりかご戦終了です。やー、長かった長かったw
今回書いた部分(ゼスト大活躍、召喚虫軍団)はほぼ全部初期プロットにはなかったものです。
連載当初はこんなになるとは予想してなかった……おかげでギン姉の影は薄くなる一方だお(ぉ
やっぱりゼストのユニゾンもね、こう、炎を纏って変身するとか、それくらいド派手な方がよかったと思うのですよ。

あと、グラハムさん出ちゃったね。1話限りだって言ったのに。うん、反省(ぇ

次回からはエピローグ編。最終回まであともう少しだけお付き合いくださいませー。



296 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 20:43:06 ID:VeH5y+75
GJ!!です。
犬妖怪化をずっと待ってたぜw

297 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 20:58:09 ID:pO645VL8
GJでした!
なかなかの暴れっぷりでしたね。
ついにエピローグか……。
最後も楽しみに待ってます。

298 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 21:00:06 ID:qgYRUZmR
GJでした!!
待ってましたの殺生丸犬化。ほぼ今回憂さ晴らしと八つ当たりが目的だったんだよねそういえば。
このあたり本当に兄弟そっくりだとおm)蒼龍破
ただ個人的には激闘の嵐よかシグナムの馬鹿犬発言と
スカのギャグ的な最後がツボにきてしまったwww
次回、殺生丸は帰れるのか。それとも・・・?
楽しみに待ってます!!!

299 :322 ◆tRpcQgyEvU :2008/07/02(水) 22:01:04 ID:GSC5CJOK
十時になったので投下してもよろしいでしょうか?
今回はABパート投下です。

300 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 22:01:19 ID:4mkxEumk
よっしゃ、きたれぃきたれぃ

301 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 22:01:55 ID:YcZWb8f3
反目氏GJ!!

302 :322 ◆tRpcQgyEvU :2008/07/02(水) 22:04:52 ID:GSC5CJOK
魔法少女リリカルなのはStrikerS――legend of EDF――"mission10『セカンドアラート』"

――新暦七十五年 五月十三日 十二時三分 聖王教会本部――

 三百年以上の歴史を誇る次元世界最大の宗教『聖王教』
古代ベルカ時代に聖王によって作られたこの宗教は、ベルカ人だけではなくミッド人の信者も数多い。
風光明媚な各地の教会は観光名所としても名高く、その中でも一番有名なのは、やはりミッドチルダ北部にある総本山だろう。
ビルのような無機質な建物とは違い、教会本部の大聖堂はその建物自体が芸術といえるほどの豪華さを誇っている。
様々な装飾を施された柱や壁。天井にはめ込まれたステンドグラスは、陽光を浴びて光り輝き聖堂内に神秘的な雰囲気を作り出している。
所々に飾られた彫刻や絵画は単なる芸術品ではなく、名高い偉人達が聖王の偉業や伝説をモチーフにして作った宗教的価値の高い作品達だった。

 聖王教会教会騎士兼時空管理局理事官カリム・グラシア少将は、聖堂の一画にある事務室で書類の作成に勤しんでいた。
書類の内容は『アンノウン』対策本部へ送るための報告書だった。
『アンノウン』の出現から二ヶ月以上。被害の拡大に伴い管理局の危機感も本局、地上本部ともに高まり続け、
最初は本局のみの小規模組織だった対策本部も今や本局と地上本部の合同組織となり、三千人以上のメンバーを有するほどになっている。
リンディを始めとする『クラウディア事件』の面々も加わり、ラルゴ元帥の計らいで旧式だが数隻の戦闘艦を所持できるようになった。
カリムも聖王教会代表として協力しており、被害の集計や報告書の作成など裏方の仕事を淡々とこなしている。
だが、彼女がどれだけ貢献しようとも、事は一向に良くならないのが現状だった。
この事件に対して今後どうすべきかについて、本局と地上本部の意見がまったく一致しないのだ。
地上本部が意見を述べれば本局が横槍を入れ、本局が意見を述べれば地上本部が反論を。
メンバーの多くが己の面子や利益を最優先とし、いつのまにか、考えていることは相手の足を引っ張ることばかりになっている。
対策組織がこんなていたらくでは、被害者達も草葉の陰で号泣していることだろう。
それでも『アンノウン』の跳梁だけは何としても阻止しなければならない。
それが今の彼女の勤めであると同じに、亡くなった弟や被害者への最大の供養であるとも思っていたからだ。


303 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 22:05:56 ID:is6AnS16
人類が生き残るには支援するしかない。分かったか!

304 :322 ◆tRpcQgyEvU :2008/07/02(水) 22:06:47 ID:GSC5CJOK
「騎士カリム、騎士はやてがいらっしゃいました」
 傍らに映し出されたホロスクリーン。来客を告げたのは、教会騎士シャッハ・ヌエラ。
紫の髪を短く切り揃えた彼女は、カリムの友人であり、教会騎士団内でも上位に位置する実力者でもある。
「早かったわね。私の部屋に来てもらってちょうだい」
 そう答えると、シャッハに茶菓子の用意をお願いすると、カリムは書類の出来を確認してペンを置いた。
ほどなくして、修道士に案内されて客人が部屋にやってきた。
やってきたのは砂漠民のようなローブを着た人物だった。フードを被っているので顔はわからない。
客人がフードをはねあげた。
その下から現われたのは、見るからに純朴な女性の姿。
薄茶色のショートカットが唯一の特徴である女性らしい柔和な容貌。
着ているものがブレザーなどの制服だったらそのまま女子校生として通用しそうな雰囲気だ。

「カリム、久しぶりや」
彼女の名は八神はやて二等陸佐。古代遺失物管理部機動六課の部隊長である。

――

「ごめんなぁ、すっかりご無沙汰してもうて」
 カリムの事務室には客人をもてなすためのスペースも用意されている。
ローブを脱いだはやてはそこに案内され、シャッハが用意してくれた紅茶を飲みながらカリムに笑いかけた。
はやては二等陸佐でカリムは少将。
本当はタメ口をきくことなど許されない関係だが、カリムははやての古い友人であり気心が知れている。
なので、他人の目が無いところでは、互いにただの友人として接することが出来ていた。

「気にしないで、部隊の方は順調みたいね」
「うん、カリムのおかげや」
 はやては頷いた。
機動六課を設立する際、カリムは後見人の一人として部隊運営に少なからず協力していた。
残りの後見人は本局総務統括官のリンディ・ハラオウンと人事部のレティ・ロウラン。
それに加えて本局の重鎮『三提督』も非公式であるが設立を認めていた。
彼等の助けもあって、はやては部隊を構成するための人材集めに集中することができたのだ。
と、言っても新人以外で集まったのは、はやての身内や友人ばかりだが、それでも高い能力を持った実力者であることには変わりない。
部隊設立の理由はロストロギア災害への対策と迅速な行動が可能な少数精鋭部隊の実験例。『表向き』ではそうなっていた。

「私のおかげか。そういうことにしとくと、何かとお願いしやすいかな?」
 カリムは中身の無くなったカップを静かに置いた。
「なんや、今日会って話すんはお願い方面か?」
 今までの柔和な雰囲気から一転、真顔に戻ったカリムはホロスクリーンを呼び出しコンソールを操作した。
カリムがはやてを呼んだのは、彼女と茶会がしたかったためではない。相談したいことがあったからだ。
ヘタをすれば、次元世界全体に関わるほどの問題についての相談が。

305 :322 ◆tRpcQgyEvU :2008/07/02(水) 22:07:28 ID:GSC5CJOK

 照明が落とされ、二人の周囲に大小様々なホロスクリーンが浮かび上がる。
そこに写っていたのは、黒い巨大蟻の姿だった。
「なんやこれ? 蟻さん? にしてはちょっと大きすぎるような……」
「新種の生物よ。『アンノウン』の出現とほぼ同時期に次元世界各地で発見されたの。
 詳しい生態はまだ不明だけど、調査に行った局員が何度が被害を受けているわ。
 ロッサの調査団を皆殺しにしたのも、こいつらよ」
「ロッサを! せやけど、おかしいやん。そんな生き物のことわたし今まで聞いたこともなかった」
「巣に近付かなければ襲ってこないからそれほど重要視されてなかったの。
 手を出さなきゃ害のない生き物よりも船を襲う『アンノウン』の方が危険だって考える人の方が多かったしね。
 次元世界によっては別種の巨大生物も目撃されてるわ。赤い蟻だったり蜘蛛だったり。
 ミッドチルダでは、南の火山地帯で四十メートルクラスの生物の影が数匹観測されたり、
 中央の海溝ではもっと大きな四足の人工物の存在が確認されてる。
 二つとも場所が場所だからまだ回収作業もちゃんとした調査もされてないけど……それと、これを見て」
 
 ホロスクリーンの映像が切り替わる。
今度の映像は銀色の巨大ロボットだった。
頭部のない丸っこい上半身と背骨を剥き出しにしたような形の下半身。
そこから伸びる手足は異常に細長く、少し歩いただけで倒れてしまいそうだ。
右手首は指のない突起状。左手首はアサルトライフルのような形になっており、それらの存在がこのロボットが兵器であることを示している。
それにしても、見るからにがりがりで頼りないロボットだ。
無駄な贅肉はおろか、必要な筋肉すら削ぎ落としてしまったようにも思える。
並の陸士の砲撃を食らっただけで簡単に壊れてしまいそうだ。
ロボットの映像をじっと見つめながらはやてはそう思っていた。

「これは……?」
「昨日ミッドチルダの西部で発見されたロボット。詳しい性能はまだ不明だけど、大きさはちょっとしたビルくらいはあるそうよ」
「それで、今このロボットはどうなってん?」
「今日明日中に地上本部の研究施設へ列車で輸送されることになってるわ。転送魔法を使えば危険はないんだけど……」
「陸で転送使える人はあんまりおらへんからなぁ」
 はやての呟きにカリムは頷いて答えた。
事実、少ない予算と戦力をやりくりしている陸上本部には転送魔法を使える魔導師はほとんどいない。
その一握りですら本局がスカウトしていくため、陸は本局以上の人手不足に陥っているのが現状だ。
なので、陸上本部は本局なら転送魔法ですませるような輸送でも、列車や陸路などといった旧来の方法を使うしかないのだ。


306 :322 ◆tRpcQgyEvU :2008/07/02(水) 22:08:34 ID:GSC5CJOK
「近頃は船舶の被害は出なくなったし、『アンノウン』の目撃情報も段々減っていってるわ。
 巨大生物だって、このごろは巣からまったく出ようとしなくなってるし、巣によっては一匹残らず消え去ったところもある。
 対策本部では状況を楽観視する人もいるけど……私は不安なの。もう船を集める必要もなくなって、偵察もしなくなったってことは……」
 はやては顎に手を当て、数秒間だけ考え込んだ。
そして、とある結論に辿りついた途端、はやては顔をさっと青ざめ慄然とした。
「まさか……攻撃開始が近いってことか?」
「今はまだ断言出来ないわ。そうなるっていう決定的な証拠はまだなにもない。けど……だからこそ会って話しておきたかったの。
 これから何が起ころうとしているのか、どう動くべきか。まだ対応が間に合いそうな今のうちに。
 対処を失敗するわけにはいかない。もう、ロッサやクロノ提督みたいなことは、ごめんだもの」
 それっきりカリムは押し黙ってしまった
何かに耐えるように俯いて、瞼を閉じて唇を噛み締めている。
おそらく、死んだ弟のことを思い出しているのだろう。
ロッサの遺体は欠片も戻ってはこなかった。
彼の体はバラバラに引き裂かれ、ただの肉片となって洞窟中に散らばっていた。
その肉片を全部かき集めても一つの体にはならなかったらしい。半分以上がロッサを食らった蟻の腹に納まってしまったのだ。
僅かに残ったロッサの遺体も、その後の襲撃で次元の海に消えてしまった。

 クロノも同じようなものだ。
次元艦艇の爆発は何千度という熱と猛烈な爆風を生む。
クロノの体は骨の髄までドロドロに溶かされ、欠片も残らなかったに違いない。
葬式のときは、遺体の代わりに予備の制服が棺の中に入れられた。
葬式にはクロノを慕う部下や友人達が集まり、はやても家族と一緒に式に参列した。
エイミィは泣きじゃくる子供達を励まし、リンディは一切の感情を殺したように機械的に喪主を務めていた。
そうしていなければ、リンディは子供を失った悲しみと怒りに耐えられなかったのだろう。
クロノの義妹でありはやての親友でもあるフェイト・T・ハラオウンはなんでもない様子だったが、翌日会ったときには両目を真っ赤に腫らしていた

 はやては彼女等の気持ちがほんの少しだけわかるような気がした。
なぜならはやても家族を失った経験があるからだ。しかも、自身の目の前で。
『彼女』と過ごした時間は確かに短かったし血の繋がりもない。
だけどはやてにとって『彼女』は大事な家族だった。
はやてや皆のために自身の消滅を決めた『彼女』
助けられなかった、止められなかった、幸せすると決意したのに出来なかった弱い自分。
まさに、世界はこんなはずじゃなかったことばかりだ。

(せやけど……)
 はやては表情を引き締めて、コンソールを操作してホロスクリーンを消した。
「はやて……?」
 怪訝な顔をするカリムにはやては「まあ、なにがあってもきっと大丈夫」と言いきった。

「カリムが力を貸してくれたおかげで、部隊はもう何時でも動かせる。
 即戦力の隊長達はもちろん、新人フォワード達も実戦可能。予想外の緊急事態にもちゃんと対応できる下地ができてる。
 そやから、大丈夫! ロッサの仇もクロノ君の仇も、みんなわたしが取ったるよ」


307 :322 ◆tRpcQgyEvU :2008/07/02(水) 22:09:26 ID:GSC5CJOK
はやての脳裏に浮かんでいるのは機動六課の堂々たる面々のことだった。
エースオブエースと呼ばれる『スターズ分隊』隊長高町なのはと『ライトニング分隊』のフェイトはまさに六課の主砲。
副隊長である『ヴォルケンリッター』はやての家族であると同時に凄腕の騎士達でもある。
指揮官を身内で固めることに批判があるのも事実だが、それでも彼女等が優秀な戦士であることに変わりない。
フォワードの新人四人はまだ頼りないものの、鍛えていけば隊長陣に匹敵するほどの猛者になるはずだ。
前線部隊を補佐する役目が後方支援専門の部隊『ロングアーチ』
これらにSSランクの自分が加われば、どんな敵が相手でも負けることなどあるものか!

(そうや、何があっても大丈夫。わたし自信もつよなったし、力を貸してくれる皆もおる。
 『闇の書』の時とは違う。あんな悲しみとか後悔なんてもううんざりや。
 今度こそ、わたしは助けられる側から助ける側になるんや) 

身につけた強さは自信の源となり、自信が産み出す勇気は勝利と栄光への道しるべとなる。
しかし、時として強すぎる自信は過信へと姿を変え、勇気は蛮勇へと変化する。
それらが導く先は、輝かしき勝利ではなく、泥にまみれた無残な敗北である。
八神はやてと機動六課。彼女達が進む道は栄光へのロードか、それとも……

一方その頃――

「冗談ではない! そんなことできるわけないだろう!」

スカリエッティのアジトでも似たようなやり取りが行われていた。


308 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 22:09:52 ID:ODeYzS9E
支援。支援。

309 :322 ◆tRpcQgyEvU :2008/07/02(水) 22:10:37 ID:GSC5CJOK
投下終了です。
最後にはああ書きましたが、私は六課と管理局もきちんと活躍させるつもりです。
ツッコミ所はいろいろありますけど、それでも私はリリカルstsは好きな方なので。
次回は出来次第投下します。

310 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 22:10:53 ID:is6AnS16
怯むな!支援を整えろ!

311 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 22:15:55 ID:YcZWb8f3
>>309
GJ!
こちらも読んでいて、引き締まる思いがしました。
皆の活躍を期待しています。

312 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 22:16:07 ID:is6AnS16

ストーム1はスカ陣営なのが不安
管理局は足の引っ張り合いが不安
六課はやる気十分だが知識のなさで不安

こんな状態であの絶望を乗り越えれるのかw
人類の意地、楽しみにしてますぜ

313 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 22:27:59 ID:+m58FT2d
GJ!
はやてやカリムが頑張ってるのに一大決戦を前にこれで管理局は大丈夫なのだろうか?
地球が一丸となったEDFですらあの結果だったのに。まあそんだけ管理局は自分らの力に自信があるんだろうけど。
輸送機すら使えない地上本部の現状には涙が出るぜ!
しかしスカさん側の行動次第じゃ6課は初出陣の相手がフォーリナーになちまうぜ!

314 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 22:31:26 ID:o1lqNG2W
GJ
そして、これから悪夢が始まるわけですね。
スカとストーム1との対立もありそうだな。
なんていうか、管理局の汚い部分が見えてきそうだな。

楽しみだなぁ、あの悪夢をどう乗り越えるのか
何を犠牲にするのかが楽しみだな

315 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/07/02(水) 22:33:55 ID:bgUz7wMM
11時よりビスケットシューター第五話を投下したいのですがよろしいでしょうか?


316 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 22:40:18 ID:VeH5y+75
GJ!!です。
管理局サイドの動きは今回の話で分かりましたが、今度はスカ陣営で何か問題が起きとるw
次回が楽しみですwww

317 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 22:40:41 ID:VeH5y+75
支援

318 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 22:49:07 ID:/TOTyK7v
GJスカさん一体何があったんだろう。管理局に情報がいかない可能性も
管理局側は情報も連携も不十分なまま挑むことになりそう。
 他の管理世界にも彼らは根を張っているので、次元規模の大戦に。

319 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/07/02(水) 23:00:07 ID:bgUz7wMM
そろそろ時間なのですが、投下開始してもよろしいでしょうか?
容量は14KB 大体八レスほどだと思いますが、支援をお願いします。
今回はつなぎのような内容です。
美人副官注意!

320 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:01:29 ID:zyhrPX/i
支援じゃい!!

321 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:02:01 ID:4xYf3wgV
紫煙

322 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/07/02(水) 23:02:39 ID:bgUz7wMM
 

 孤独は湿度のない乾いた空気であり、冷たい風のようなものだ。
 乾いた空気は喉を痛めつける。
 冷たい風は体を冷やす。
 乾いて、傷ついた喉は水を求めて熱を発し。
 冷えた体は熱を求めて、震え出す。
 最初は辛い。
 寒さに震え、痛みにもがくだろう。
 しかし、何時しか慣れる。
 冷え切った体と声すら出せない喉を残して。


                            ――岩陰で朽ちて死んだ男の口癖より




【UnrimitedEndLine】

 外伝 『Biscuit・Shooter/5』

  その日、覚悟を決めた


323 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/07/02(水) 23:03:11 ID:bgUz7wMM
 古代遺失物管理部【機動六課】
 地上部隊に置かれておきながらも、その所属は本局に属しているという異例な部隊。
 所属している魔導師は最低でもBランク以上。
 五名存在する隊長陣に至ってはAAA以上、リミッター保持でもAAクラスという常識外れの部隊。
 その存在を知った地上部隊の人間はこう囁く。

 ――海から送り込まれた地上への牽制だと。

 ――金と権力を持て余した馬鹿が作ったお飾り部隊だと。

 ――海と地上の戦力差を見せ付けるためだと。

 そう囁かれる。
 好意的な意見もあれば、悪い噂もある。どんなものにもマイナスな面があるように、妬む者も居れば憎む者もいる。
 稀に出てくる才能ある魔導師はその待遇の良さ故に本局――『海』へと渡り、地上所属――陸は限りある戦力で任されている次元世界を保護する。
 年々監視規模を増やす次元世界の調査や対処に海は人手不足を嘆き、陸は少ない戦力で嘆きながらも見捨てられない人々のために力を尽くす。
 海は扱っている規模故に一つ次元の世界で戦う地上を軽んじて、地上は戦力を引き抜いていき防げるかもしれない事件への対処を遅らせる海を憎悪していた。
 人は全て善人なわけがない。
 治安を護ることを理念とする管理局に所属していても、全ての人間が清らかな面を持っているわけじゃない。
 次元世界を管理するなどと謳っても、そこに所属し、そこで働くのはヒトだ。
 もちろん次元世界には様々な生命体がいる。
 様々な獣人、知能を持った獣、限りない情報から生まれた情報構成体、発展した文明から産み出された電子生命体、鋼鉄の血肉と配線と電子部品の頭脳を持った機械生命体 その他にも沢山の存在が居る。
 けれど、決して完全なる善性を持った存在などいなかった。
 失敗を起こさぬものが居ないように、悪が産まれない世界などどの次元にもなかった。
 穏やかな性格の獣人たちが住む惑星があった。
 けれど、そんな彼らでも誤解から喧嘩になることもある。
 暴力を嫌う故に起こるのは小さな子供のような喧嘩だったが、それでも争いというものは産まれる。

 ある研究者は言った。

「もし本当の意味であらゆる次元を作った創造主がいるのであれば、それはおそらくヒトなのだろうね」

 ヒト。
 それは不完全な存在を指し示す言葉だと、研究者は告げた。
 不思議なことにどんな世界にも同じように伝わる神話がある。
 神は土よりヒトを創り、己の分身とした。
 己の手足である天使とは違う、己と同じ存在を産み出したのだ。

 神話にはそう語られている。
 だからこそ、ヒトは不完全なのだと研究者は言った。
 創造主が完璧な存在ならば、生み出されたものも完璧になるはずだと。
 完璧な存在が悪などという不具合を産み出すはずはないと。
 その研究者はそう告げると、静かに笑った。

「だからこそ、可能性というものもあるのだがね」

 不完全な存在だからこそ、完璧なものはない。
 完璧ではないからこそ、可能性がある。
 可能性があるからこそ、不完全。
 不完全だからこそ、心がある。
 心というのは不完全だからこそ生まれるのだから。

 メビウスの輪のように永遠に結論へと辿り付かない疑問、ループし続ける
 きっと千年経っても見つからない答えを探しながら。

 もがき続けるんだろう。

324 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/07/02(水) 23:03:54 ID:bgUz7wMM
 


 海と陸は油と水のような関係だ。
 決して混じり合えない、反発するだけの存在。
 水の中に油を垂らすように、機動六課という存在は地上部隊からどこか浮いている。
 もしも混じり合わせたければ、それこそ石鹸水でも使わないといけないだろう。

「まあその場合、石鹸水になるのは親交関係ってとこか」

 隊舎の寮。
 ヴァイスはハッカの飴を舐めながら、地上本部の連絡員から渡された情報を見ていた。
 手には待機状態のストームレイダー。演算処理と簡単な処理ならそのままでも行えるので、問題は無い。
 空間に展開するモニターではなく、直接網膜に画像を投影しながら目を走らせる。

【陸士108部隊 部隊長――ゲンヤ ナカジマ】

 映し出されているのは二日後、機動六課の面子がホテル・アグスタへの警備任務に向かう際に合同任務を行う部隊の隊長。
 スターズのフォワードであるスバル・ナカジマの父親である人物であり、それ以前にヴァイスはこの人物を知っていた。

「あの時のおっさんか」

 思い出すのは六年前。
 “ティーダが死んだ事件”のこと。
 かつてミッドチルダで起きた事件、今よりも遥かに多かったテロ行為。紛争があった時代。
 ヴァイスとシグナムとティーダが。
 地上本部の部隊全てが一丸となった大規模紛争。
【ミッドチルダ閉鎖事件】
 ミッドチルダが7日間に渡り次元閉鎖された悪夢のような一週間。
 その中で、直接は見ていないが著しい働きをした部隊の隊長として彼の名前をヴァイスは知っていた。

「古参組……か」

 ヴァイスはどこか含みを持った呟きを洩らした。
 そこに篭められたのは過去を思い出す感情。
 地上本部も六年前と比べて大分状況が変わった。
 頻発していたテロを鎮圧していた熟練の局員は退役や本局に引き抜かれて、今地上本部にいるのは碌なテロも知らない新人ばかり。
 そんな中でも実戦を知り尽くし、熟練した隊員を揃えているのが陸士108部隊だった。


325 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/07/02(水) 23:06:46 ID:bgUz7wMM
 
「純粋に警備だけなら、奴らに任せれば安心だろう」

 ヴァイスはファイルを閉じて、証拠隠滅にデータを削除する。
 大体必要な情報は頭に叩き込んだ。
 主要な人員の顔も覚えたし、後は現場で何も起こらないことを祈るだけだ。

「俺は出ないしな」

 そうなのだ。
 今回の警備任務の舞台はクラナガンにある高級ホテル。
 少々僻地にあるとはいえヘリで向かうわけがなく、陸で活用される移動トレーラーで輸送されることになっている。
 ヘリパイロットであるヴァイスは緊急時に備えた交代部隊の輸送要員として、待機が決まっていた。
 華やかな人員と優秀極まる魔導師が数を揃えたスターズとライトニング分隊だが、それの予備であり、交代部隊である人員もまた優秀な人員である。
 B以上の陸戦魔導師が大半を占めており、その人員は地上本部から出向した隊員による部隊。
 人手不足だというのに、なんとか運営に支障がない分の人員や面子を揃えて、差し向けたレジアスの苦労には頭が下がる一方だった。
 彼らはレジアスから渡されたストッパーでもあり、同時に地上の地形や事情に疎いスターズやライトニングでは任せられない任務を請け負っている。
 何かと癖の多い面子が揃っているが、陸の所属だったシグナムが指揮を取っていることで今のところ問題は起こっていない。
 まああまり顔を合わせないこともあって、フォワード四人は交代部隊の人員のことなど殆ど知らないだろうが……

 ――ピッと不意に音が鳴った。

「ん?」

 ベッドの脇に置いておいたストームレイダーが電子音声で内容を伝えた。

『It is Time(時間です)』

「そんな時間か」

 パキリと噛んでいたハッカの飴を噛み砕き、ヴァイスは立ち上がると、自室の隅のハンガー掛けに掛けたプライベート用のジャケットを羽織る。
 ベットの縁の置いておいた待機状態のストームレイダーをズボンのポケットに入れ、机の上に置かれた小さな鏡で身だしなみを軽く確認しながらタバコの箱をジャケットの内ポケットに放り込む。
 事前に申請しておいた外出許可証を手に持ち、ヴァイスはドアを開いて歩き出した。


326 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:07:21 ID:4xYf3wgV
支援ー

327 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/07/02(水) 23:08:40 ID:bgUz7wMM
 


 エンジンが唸りを上げる。
 己の手でチェーンナップしたエンジンが、タイヤに効率的にエネルギーを伝えて、低く唸るような咆哮を上げていた。
 太陽も翳る夕闇の中、点灯もしてない大型二輪が一直線にクラナガンの路地裏を疾走し、その乗り手であるヴァイスは迷いもせずに狭い路地裏を突破し、
転がっている紙切れやゴミなどを吹き飛ばしながら走っていた。
 硬質な樹皮の感触がグローブ越しに伝わってくる。
 狭い路地裏の曲がり角を、角に差し掛かる数秒前に体を大きく傾けて――曲がる。
 アスファルトに傾いた体が擦れそうになりながら、握り締めた手でグリップを回し、加速。
 タイヤの溝がアスファルトを噛んで、ギャリギャリと音を立てながら、されどスリップする事なく走る。
 そして、直進。
 数百キロにも至る鋼鉄のボディを引きずりながら、僅かに浮かんだ前輪を押しあげる様に後輪が回転する。
 傾いた体が真っ直ぐに進む道に合わせて体勢を立て直し、バイクが唸り声を上げながら走った。

「んっ」

 目的地が見えた。
 路地裏を活用し、大きくショートカットした末に通常よりもずっと早く目的の店が見えたヴァイスは速度を落としながら、ブレーキを掛けていく。
 目的地の十数メートル前、誰もいないことを確認し、ヴァイスは大きくバイクを振り回しながら後輪を滑らせた。
 焦げ臭い臭いを撒き散らしながら、ギャリギャリと引き攣るような音を立ててバイクが止まる。
 遠心力を失い、自然に傾くボディを地面に差し出した脚が支えた。

「着いたな」

 バイクから居り、駐輪出来る位置にまで手で押すと、キーを抜く。
 ヴァイスはフルフェイスのヘルメットを外すと、ヘルメットをハンドルに被せた。
 一応チェーンを付けると、彼は静かに顔を見上げた。
 そこにあったのは――六年前、一つの信じるものを教えられた場所だった。


328 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/07/02(水) 23:11:53 ID:bgUz7wMM
 

 カランと静かに音がした。
 ドアに付けられた鈴が音を立てる。

「いらっしゃい」

 ヴァイスが入ったドアの向こう、外見からは想像付き難いぐらいに大きなバーの中で、マスターがグラスを磨いていた。
 八年前、今は死んだ先輩にして同僚の男に連れられてやってきた時から多少老け込んでいるものの、変わらない動きと笑みでこっちを見つめていた。

「おや? ヴァイス君か、一月ぶりだね」

「お久しぶりです」

 返事を返しながら、ヴァイスは店内を見渡す。
 まだ夕暮れに差し掛かった時刻、夜勤明けもいなければ通常業務が終わる時間でもない店には殆ど客がいなかった。

 ――奥に座る見覚えのある人物を除いて。

「奥の席は空けてあるよ。存分に話すといい」

「ありがとうございます」

「なに、君は八年以上の付き合いだからね」

 店と客という立場の違いあっても、人同士ということには変わりは無いとマスターは付け足した。
 静かに飲みたいのなら静かに飲ませ、騒がしく飲みたいのならば騒がしく飲ませる。
 望まれるままに品を出し、温かく見守るだけ。
 そんなスタイルを保ち続けているから、どこか癖の強い陸の隊員がよく寄り付く場所になっているのだろうなとヴァイスは思う。

「それと注文は?」

「ロックの水割りで」

 指二本並べてヴァイスが告げると、マスターは承知したように後ろに並べてある酒瓶を手に取り、準備を始めた。
 その間にヴァイスは歩き出す。
 奥のテーブル席へと近づいて、挨拶をした。

「えっとお久しぶりです、オーリスさん」

「久しぶりですね」

 そこには私服姿に鞄を膝の上に置いたオーリスがカクテルを手に座っていた。
 プライベートと仕事では使い分けているのか、前に地上本部では見かけた時よりも若干大きめなメガネを付けていた。


329 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/07/02(水) 23:13:58 ID:bgUz7wMM
「連絡員なら、ドゥーエでも来ると思っていたんすけど」

 それなりに顔馴染みになっている隠密諜報用の戦闘機人の名を上げる。

「彼女なら博士のところに連絡に向かわせました」

 彼女が博士と言って、該当する人物は一人しか居ない。
 ジェイル・スカリエッティ。
 ヴァイスも良く知る科学者。広域指名手配犯、レジアスとの共犯者。

 ――“奴ら”を叩き潰すための仲間。

「彼女の擬態能力はとても優秀です。連絡要員としてはこちらとしても欠かせないのですよ」

 説明が足りないと思ったのか、オーリスは少しだけ早口で言葉を継ぎ足した。
 実際ドゥーエは優秀だ。
 顔を変え、体型も、見かけ上ならば性別も変更出来る彼女はどんな立場にも縛られないフリーな存在として動ける。
 諜報員としてあれ以上の存在はいないだろうと、ヴァイスは承知していた。

「あ、いや、それは分かりました」

「それならいいのですが」

 ほぅっと息を吐くオーリスを見ながら、ヴァイスはオーリスの正面から少し外れた横の位置に座る。
 っと、そこでトレイを持ったボーイが二人のテーブルの上に水割りのグラスを置いた。

「どうぞごゆっくり」

 礼式めいた言葉を残して、ボーイが立ち去る。
 彼が立ち去ったのを確認し、ヴァイスは口を開いた。

「そういえばレジアスの大将は元気ですか?」

 話の切り口としてヴァイスがレジアスの名を上げると、オーリスは彼独特の呼び方も含めておかしかったのか少しだけ微笑を浮かべた。

「ええ、元気です。少し仕事をし過ぎだと注意はしても、あまり聞いてくれないところが困ったものですが」

 昨日も栄養ドリンクを飲んで、書類を書いてましたと少しだけ呆れたように呟くオーリス。
 その言葉に、レジアスが目の下に隈を浮かべて、大量の書類に目を通している姿がヴァイスの目に浮かんでくるようだった。

「あー、それならよかったっす」

 まずまずな会話の出だしに、ヴァイスが少しだけ笑みを浮かべた。
 彼は別に初心な男というわけでもないのだが、女誑しというほど女になれているわけでもない。
 あまり親しくもない女性には多少は気を使うし、そういう場合には普通の対応ぐらいしか出来ない。

「そういえば、あまり話したこともないですね」

「あ、そうっすね」

 オーリスが不意に口を開いて、ヴァイスを見つめた。
 氷のように冷たい女だと地上本部に所属する心無い人間が囁く怜悧に相応しい、切れ長の瞳が少しだけ和らぐ。
 唇を湿らせたカクテルの縁には、口紅の跡。

330 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:14:22 ID:v2Yi7h12
支援いたす

331 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/07/02(水) 23:14:31 ID:bgUz7wMM
「折角の機会ですので、礼を言わせていただきます」

「え?」

「貴方のお陰で、中将が――父が救われています」

 淡々とした、けれどどこか感情を篭った言葉がヴァイスの耳に届く。

「父は喜んでいます。地上にも正義を理解している人がいるということを」

 どこか冷たく、乾いた目に力が篭っていた。

「海は知らない。陸の窮地に、外へと羽ばたく人々の後ろを必死で護っている人間の正義を」

 多少の酔いはあるのかもしれない。
 けれど、それは本心なのだろう。

「父は孤立しています。海からは危険分子を軽蔑され、陸からは英雄だと尊敬されていますが、誰もその苦悩を知りません」

 よく耳に届くレジアスの中傷。
 海よりの局員が在籍する機動六課。そこには陸への軽視がある。

「たった100年でいい。ただ平和が欲しいだけなのに」

 海には海の事情があるのだろう。
 けれど、それは陸も同じだ。
 外へ目を向け、次元を救うのはいいことだろう。
 誰もが称える栄誉であり、誇らしいことだろう。
 けれど、だからといって人々を護る陸が無駄なのか?
 否。
 そんな偉業よりも、オーリスはただ平和を求めていた。
 そのために、父の反対も押し切って、今の職場にいる。
 平和の殉教者に仕えていた。

「……と、すみません。礼を言うはずなのに、愚痴をもらしてしまって」

「いや、いいっす。気持ちは、その……よく分かりますから」

 普段抑えていたものがお酒で噴出したのだろう。オーリスの目は少しだけ潤んでいた。
 ヴァイスは取り繕うように、けれどしっかりと本音が混じった言葉で慰める。

「それで今回の用件なのですが。これをどうぞ」

 コホンと調子を整えたオーリスが、持っていたカバンから数枚の書類を手渡す。
 そこに書かれていたのは何らかの地図と地上本部の武装隊で使われる用語を多用した作戦書。
 ヴァイスはそれを読み、そして次第に怪訝な顔つきを浮かべて――不意に目を厳しく細めた。

 地図と作戦書に書かれていた場所の名前に。

「これは、まさか」

「その通りです。博士から依頼ですが」


「ビスケット・シューター。あなたへの狙撃任務です」


332 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:14:32 ID:VPJzIefz
支援!!

333 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:14:33 ID:zyhrPX/i
支援!!!

334 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:16:10 ID:v2Yi7h12
親父も苦労してるのさ支援

335 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:16:59 ID:v2Yi7h12
支援

336 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:17:09 ID:4xYf3wgV
眼鏡美人の涙には従わざるを得ない支援

337 :代理 アンリミテッド・エンドライン ◇CPytksUTvk:2008/07/02(水) 23:20:47 ID:R8a0k2rr
 痛みがある。
 誰もが痛みを抱えている。

 生きるということは痛みだ。
 苦しみながら悶える日々だ。

 だから、これから行うことも平気だ。

 痛みは増したところで、痛みなのだから。

 覚悟を決めろ。

 親しみを持った仲間を撃ち抜けるだけの覚悟を――

338 :代理 アンリミテッド・エンドライン ◇CPytksUTvk:2008/07/02(水) 23:21:59 ID:R8a0k2rr
支援ありがとうございます。
メガネ美人っていいよねと思いつつ、ビスケットシューター五話目を投下させていただきました。
次回からビスケットシューターはアンリミテッドエンドライン本編に密接に絡み始めます。
異なる視点からの物語をどうぞお楽しみ下さい。

明日か明後日にアンリミテッドエンドラインの最新話を続けて投下したいと思います。
読んでくださってありがとうございました。

339 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:24:28 ID:+m58FT2d
GJ!
中将は支援してくれる人が少なすぐるからなあ。
そしてオーリスを通してスカ博士からの狙撃依頼!標的は誰だ!?

340 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/07/02(水) 23:27:56 ID:EhWgqN60
お疲れ様でした。
次に私が対メガザラック戦編をUPしたいと思いますが、如何でしょうか?

341 : ◆.k7TdiLwT2 :2008/07/02(水) 23:29:57 ID:R8a0k2rr
代理をしておいて早速なのは何ですが、0:00に予約します
クロス元は鬼哭街。短編です

342 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:30:11 ID:bgUz7wMM
問題ないと思いますけど、何時から投下するのでしょうか?
50分からですか?

343 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:31:00 ID:9QzOdtyk
ふむ……では、0時ぐらいからの投下、ということですね。
謹んで支援させていただきます!

344 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/07/02(水) 23:31:45 ID:EhWgqN60
そうですね…35〜40分辺りを考えていますが…。

345 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:32:52 ID:9QzOdtyk
つ三十分ルール

346 : ◆.k7TdiLwT2 :2008/07/02(水) 23:33:00 ID:R8a0k2rr
あうあ、予約がかぶってしまいましたね……
>>344
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
 前の作品投下終了から30分以上が目安です。
です

347 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:33:02 ID:VeH5y+75
GJ!!です。
何を狙撃するのか楽しみですw
そして、本編よりオーリスさんがちゃんとしたキャラに見えるぜwww


348 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/07/02(水) 23:35:04 ID:EhWgqN60
>>345
あっ、はい。
◆.k7TdiLwT2氏の後でUPします。

349 : ◆.k7TdiLwT2 :2008/07/02(水) 23:36:56 ID:R8a0k2rr
>>348
先を譲っていただき、申し訳ありません
それでは、お言葉に甘えて先に0:00に投下させていただきます

350 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/02(水) 23:44:22 ID:/TOTyK7v
GJ中将達陸のとてつもない苦労が伝わってくる。
スカさんの依頼は何なのだろう。

351 : ◆.k7TdiLwT2 :2008/07/03(木) 00:00:17 ID:R8a0k2rr
それでは、投下します

352 : ◆.k7TdiLwT2 :2008/07/03(木) 00:01:17 ID:R8a0k2rr
 ミッドチルダ首都周辺。廃棄区画。舗装されたアスファルトはひび割れ、放置されたビルは風雨にさらされ、
崩落への歩みを一度として止めることはない。整備されることはない。だからこそ廃棄の名を冠している。
 ライフラインもなく、ただ朽ちていくだけの存在。だが、果たして本当にそれだけか。
 違う。少なくとも、そこで暮らす住民にとっては。
 廃棄区画――だが、彼らはこう呼ぶ。廃棄都市、と。

 こつり、と黒いブーツの底が乾いたアスファルトを蹴り上げた。細かな破片が踏み砕かれ、砂塵となって風に
溶けていく。
 廃棄されたビルの合間を流れる風は強く早い。コートの裾を靡かせながら――ミッド最新型の全天候対応型だ
――、男はじっとその廃墟を見つめていた。その双眸は細く険しい。刀剣の類に近かろう。
 事実、男の手には凶刃が握られていた。見る者が見れば、それは鋏刀、あるいは単剣刀と呼ばれる南派の器械
と知れただろう。ありふれた柳葉刀とは異なる、刺突、斬撃ともにこなす優れた刀剣だ。玄人向きとも呼べる。
 廃棄都市にあって、早々お目にかかれるものではない。
 いや、それに言及するのであれば、そも、男のなり自体が廃棄都市に似つかわしくない。ここに住む者はみな
おしなべて貧しい。物資の流通もなければ、産業もまるでない。それでどうして豊かに暮らせると言うのか。
 答えは簡単だった。その残りわずかな産業に、男は身をやつしていた。
 廃棄都市。ミッドの弱さの象徴。正しく発展したのであれば、区画整備は十年も二十年も前に終わっていた。
捨て置かれた理由は、怠慢ではなく、力不足に他ならない。
 だからこそ、廃棄区画に住む人々を排せない。
 そして、人が集まれば社会はできる。ルールもできる。その集団を相手に取引を持ちかける無法者も現れる。
自然金が生まれ、物資のやり取りも生まれ、そこでようやく廃棄区画は独自の社会を作り上げた。
 法によらぬ社会。その一手を担うのが、幇と呼ばれる裏世界の結社たちだった。法が幇を上回るとは、音が
同じであることは何かの皮肉だろうか。
 笑えない冗談に、男は苦笑を浮かべることもなく眉を顰めた。少なくとも、男自身は幇をそれほど悪いもの
だとは思っていない。
 クラナガンですらも失われようとしている侠。それがここでは、とりわけ青雲幇、そして李寨主の元では未だ
その輝きを残している。でなければどうして凶手などという汚れ仕事に手を染められよう。
 男の名は孔濤羅。青雲幇が誇る最強の鬼札が一であった。

353 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 00:02:25 ID:4xYf3wgV
紫電掌のお兄ちゃんだー!
支援

354 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 00:02:30 ID:dLOkQ+4R
紫電掌 支援

355 : ◆.k7TdiLwT2 :2008/07/03(木) 00:02:35 ID:iM1LlziA
 かつて武林は二つの流派に分かれていた。
 一方は膂力、体躯、瞬発力などに重きを置き、純粋な破壊力を求める外家拳法。かたや呼吸や血流を精作する
ことで内功を鍛え上げる内家拳法。
 どちらが優れていたか、結局は使い手の技量次第になるのだが、頂点を占めていたのは、いつであろうと内家
拳法だった。当然だ。人の筋骨をどれだけ鍛えようと、動物には勝てはしない。岩を砕き、鉄を捻じ曲げること
など不可能だ。
 だが、内家拳法は違う。その域に達するのは尋常ならぬ修練を必要とするが、極めれば羽毛より軽く跳躍し、
鉄より重い一撃を振るわせる。深遠無辺なれど、だからこその境地では、人の常識では括れない。
 だが、その栄華をたやすく奪ったのが、魔法技術だった。
 手の届かぬはるかな間合いから岩をたやすく打ち砕き、鳥よりも早く空を飛ぶ。防護服を身に纏えば、生半な
衝撃はおろか、器械の一撃ですら通用しない。
 こうして、武術はたやすく存亡の危機に晒された。魔法技術を前提とした格闘線へと組み込まれるのはいつも
修練を必要としない外家拳法。それすらも、正しい形では受け継がれない。
 ――それでも、外家拳法はまだよかった。当時その技術の片鱗を見せていたサイバネティクス技術。人の体を
捨てることで、遥かな領域にまで手をかける。
 安全であったはずがない。人工臓器、人口骨格、人口義肢。そのどれもが欠損を補うためであって、人以上の
性能を約束するものではない。
 それでも、彼らは捨てられなかったのだ。身につけた武を。魔法によらぬ力を。無論違法だ。それでも、人は
力を求めずにはいられない。とりわけ、厳しい環境におかれた者においては。
 今では、この廃棄都市においてサイバネティクス技術は産業の一角を占めていた。その恩恵を受けたサイバネ
外家拳法家の力を知らぬ者もいない。
 そうして、滅びの道は内家拳法にだけ与えられた。今では、その技術の一端が精神修行として細々と受け継が
れているだけである。
 だが、やはり内家の果てにはそれこそ限界はなかった。限界が見えたそのとき、新たな鬼子が内家拳法に生ま
れたのだ。その名を戴天流。人の身にて魔導師、サイバネ拳法家を滅ぼさんとする殺戮の絶技。
 濤羅が修めた流派である。つまり彼は、魔導師でもサイバネティクス外家拳法家でもない、どこまでも純粋な
唯人だった。
 人の身を捨てたサイバネ外家拳法家を、化生、畜生の所業だと蔑視する李の元、濤羅はこの上なく重宝される
理由がそれだった。尤も、濤羅自身の好漢極まりない性格もたぶんに影響はしていたのだが。
 ともあれ、濤羅が刀を持ってこの場にいる理由は唯一つしかない。幇の敵を斬るためだ。
 廃棄区画に住む人は、当然戸籍がない。あったものもいるが、ほとんどがそれを捨てている。だから、彼らを
殺したとしても、ミッドの法に問われることは基本的にはありえない。それを誅するのが幇の役目。
 合成素材でできた鞘を、濤羅の手が硬く握り締める。
 濤羅は本来人斬りが好きではない。剣は好んだが、地にぬれることを何より厭うた。それでも侠を没義にせぬ
ためにと、心を鬼にして役目を全うしてきたのだ。
 そんな彼でも怒りを覚えずにはいられないほど、此度の標的は人の道に外れていた。ただ殺すのではなく、誘
拐し、実験し、人の命を弄んでは打ち捨てる。まさに左道の名にふさわしい。
 下手人が誰か。それはわかっていない。だが、実行犯のアジトは突き止めた。それぐらいしなければ、聞けば
泣いて怯える青雲幇の名が腐る。
 廃棄されたビル郡の一角。その下に隠されるように作られた地下施設に、濤羅は足を一歩踏み入れた。

356 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 00:03:37 ID:dLOkQ+4R
百綜手 支援!

357 : ◆.k7TdiLwT2 :2008/07/03(木) 00:03:40 ID:iM1LlziA


 鼻を突く異臭は、すでに浄化されることのなくなった廃棄水の臭いだろう。毒こそもってはいないだろうが、
それでもやはり注意を払うに越したことはない。
 腐った空気をフィルタにかけるように、濤羅は浅く特殊な呼吸を繰り返した。肺腑に届くまでには、清らか
とまではいかないが、内功を駆使するには十分なほどになっている。もとよりこの場はすでに戦地。息を整え、
五体に気を巡らすのは当然の備えだ。
 わずかに残された電気がもたらすか細い光は暗い地下道を照らすには程遠い。闇の中、濤羅の硬い靴底の音が
幾重にも木霊――はしない。足音一つ立てず、闇の中に溶け込みながら濤羅は一人暗い道を歩く。常人であれば
歩くことすら間々ならぬような暗闇ではあるが、音、臭い、流れる風、そんなものから、濤羅は周囲を理解して
のける。その精度は、魔法のエリアサーチにすら決して劣らない。
 その敏感なセンサーに、反応があった。おそよ50mほど先に、人の気配。それが二つ。
 当然だ。陣地に踏み込まれて気づかぬ阿呆がどこにいる。魔力反応やエネルギー反応こそ濤羅は持ち合わせて
いないが、それで十全のセンサーを抜けきれるはずもない。
 いわば濤羅は身を囮にして、敵が来るのを待っていたのだった。
 止まる、あるいは待つという選択肢は存在しなかった。先手を譲れば、刀一つの濤羅に勝機はない。サイバネ
外家であろうと、魔導師であろうと、こと大規模破壊においては内家の遥か上を行く。
 であれば、濤羅がとる手段はただ一つ。電光石火の奇襲に他ならない。
 くん、と腰を落とし、腿力を込めて地面を蹴りつける。一歩、二歩、三歩。その疾走はまさに目にも止まらぬ。
魔法で目視しているのかと見間違わんばかりだ。果たして、これが人のなせる技なのか。音一つ立てずに駆ける
その様は、まるで黒い死神が走っているかのようだった。
 人間としてありえない速度に、敵が闇の先ですらわかるほど狼狽の気配を漏らす。この距離で濤羅に気づいた
以上、存外鈍くはないようだった。
 つまりは、戦闘技能保有者。濤羅の心の中にわずかな安堵が浮かぶ。武器も持たず、戦う牙のない者を斬って
捨てるには、いささか濤羅は優しさが過ぎる。怒りに燃えていようと、それは変わらない。
 残り15メートルほどになっただろうか。鷹のように目を凝らせば、そのおぼろげな輪郭が見とれる。わずかに
丸みを帯びている。人影は二つとも女性のものだった。それも一つは子供ともとれる小柄なものだ。
 一瞬、濤羅の足取りが弱まる。その内心を読んだわけでもなかろうが、絶好のタイミングで、その子供らしき
人影が手に持つ何かを投擲した。
 わずかな風切音。四つ、いや五つ。形状はおそらくヒョウに近い。しかしそれが濤羅を射抜くことはなかった。
 少女――と思しき相手――が投擲する直前、濤羅はその意を敏感に察知し、軽功を纏って左前方にある壁へと
跳躍していたのだ。ヒョウが射抜いたのは濤羅が数瞬前にいた虚空だけ。

「なっ!!」

 あるいは必殺の一撃だったのか。驚愕の声を上げる相手に、濤羅は心中で憫笑した。たかが投擲。何を恐れる
ことがある。音速にすら迫らんとするサイバネ拳法家の連撃すらも刀一本で捌き切る濤羅にとっては、目の前の
一撃など比喩ではなく、目を瞑っていようと避けられよう。
 意に先んじて投げられれば難しかろうが、そうでもなければ、戴天流を前には児戯にも等しい。
 壁をもう一度蹴り付け、次は天井へ。さかしまになった視界の中、5mの距離になってようやく人影に確かな
輪郭が与えられた。どちらもやはり女性。一人は大柄な女性。魔法か、あるいはそれに類するものか。両腕に紫
に光る刃を生やしている。残るもう一人は、やはり少女だった。銀髪に隠れ、右目を覆う眼帯が目に付く。
 戦闘経験はそれなりにあるようだった。下手に密集せず、さりとて互いに援護できるだけの距離は保っている。
 女性相手。それに一瞬でけりをつけられないことを胸中で罵ると、濤羅はコートの裾を巻き上げながら、大柄
な女性へ一等一速の間合いから一歩はなれたところを目指して舞い降りた。

358 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 00:05:16 ID:dLOkQ+4R
羅刹太后 支援!

359 : ◆.k7TdiLwT2 :2008/07/03(木) 00:05:38 ID:iM1LlziA
「貴様っ!!」

 斬りかかろうとしたのか、あるいは、腕の刃を打ち出そうとしたのか。どちらにせよ、変わりはない。驚愕で
一瞬身を固めていては、とっさに行動できるはずもない。当たらぬのであれば、何であろうと意味がない。
 動こうとした機先を制し、濤羅は膝で殺しきれなかった衝撃そのままに一歩前へ踏み出すと、そっとその
腕先に撫でるように手を添えた。
 ただそれだけ。たったそれだけで、濤羅はその女性の刃圏全てを無効にした。残る片手を振るおうにも、己が
腕が邪魔をしてそれもできない。それには必ず一歩の距離が必要だ。
 それがどれほど絶望的な動作か。この技量を前にしては、理解せざるを得ない。だが、それまでだ。
 攻撃は止められた。距離は奪われた。だが、永遠ではない。一撃に耐えれば、いや、防護服があれば、耐える
ことすら必要ない。そして彼女らは二人だ。
 男一人。何の障害になるのか。
 狼狽にわずかに引きつったものの、余裕にあふれた笑みが二人の顔に浮かぶ。少女はどこからともなく新たな
飛刀を取り出し、濤羅が隙を見せる瞬間を今か今かと待ち構えている。
 それを、油断と誹るのは無理があろう。彼女らは、状況こそ揃えばSランクオーバーの魔導師ですら殺しきる。
事実過去において、一対一で少女のほうはそれを成し遂げた。
 その彼女らを生身の人減が相対しようとすることこそが無謀なのだ。獅子はウサギを狩るにも全力を賭すが、
狩られることを警戒などしない。

「……軽愚」

 それでも、濤羅が厳かに呟いた。無駄な一呼吸ではあったが、あるいは憐憫だったのかもしれない。
 心の速度は、魔法でも神経の電子化でも鍛えられない。それを為しえるのは内家の功夫だけである。先ほどの
驚愕の一瞬こそが、その証明だ。人剣一致に至れば、理解の前に行動が追いつく。
 つまりこれからの一挙手一動作は、濤羅が全てにおいて先じる。もうその差は取り戻せない。彼女らは一度と
して戦いの主導権を取り戻せないだろう。
 す、と添えていた腕を撫で上げる。筋に添うように、意に添うように。まるで糸に括られた、あるいは螺旋を
巻かれた人形のように、女の腕が持ち上がる。刺して力を込めた気配もない、事実込められてない濤羅の掌に操
られ、人体急所の一つ、脇の下を致命的に晒し上げていた、
 一歩、濤羅が踏み込む。肩口から、背中を見せるように。音もなく黒い影が急所へと忍び寄る。
「っがっ!!」

 それは果たして声だったろうか、悲鳴だったろうか。どちらも違う。勁の込められた靠の衝撃が、肺腑に込め
られた空気と言う空気を全て搾り出した音だった。それだけに飽き足らない。勢いそのまま、その直線状にいた
少女をも巻き込む形で女性の体を吹き飛ばす。
 まさか味方がいきなり自分に向かって飛んでくるとは露とも思っていなかったに違いない。攻撃に備えていた
ことも災いした。心を鍛えていなければ、とっさの行動はできない。
 その両手に飛刀を持っていなければ、受け止めることはできなくとも、防御の姿勢だけは取れたかもしれない。
あるいは、傷付けること覚悟で両手を前に突き出せば、最悪の事態は避けられただろう。
 だが、そのどちらも少女は選べなかった。逆に両手を広げ――しかし抱きとめることはできず、小さな体その
ものをクッション代わりにして、吹き飛んできた女性を受け止め、そして一緒に吹き飛んだ。
 硬いコンクリートの壁に、二人が叩きつけられた。体の内側を直接揺さぶられた女性は当然、二人分の体重を
一身に受けた少女もまた、呻き声を上げながら立ち上がる様子はない。
 だが、まだ意識はある。脅威は未だ去っていない。ほんの一言分の呼吸、ほんのわずかな時間、それだけで、
魔導師は十分以上の戦力となる。最後まで、彼女らの逆転の目は消えないのだ。
 その最後とは――

360 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 00:07:20 ID:dLOkQ+4R
六塵散魂無縫剣 支援!

361 : ◆.k7TdiLwT2 :2008/07/03(木) 00:07:47 ID:iM1LlziA
「疾っ!」

 鈴のような鞘鳴りを立てて、濤羅が鋏刀を抜いた。わずかな光すらも存分に吸い込み、まるで刀身は濡れてい
るかのようだった。
 こう、という濤羅の低い呼吸の音が響く。今度こそ、足音確かに二人へと駆け寄り

「發っ!!」

 剣閃一閃。白刃の煌きだけが、息吹に遅れて闇の中に残された。
 もはや……二人に意識はない。刀を振るって仕損じるほど、濤羅の腕は甘くない。その、心ほどは。

「ふ、う」

 額に手をやって、濤羅は思わず呻いた。
          ・ ・ ・ ・
 果たして、この気絶した女性二人を一体どうやって持ち帰ったものか。

「まったく、つくづく甘い」

 自嘲が洩れるのもむべなるかな。
 本来は、一刀の元斬り伏せるつもりだった。例え機械の体であろうと――ほんの一瞬の接触で濤羅はそこまで
見抜いていた――支障はない。戴天流剣法は戦車の前面装甲すら断つ。あるいは、刀術が通用せずとも浸透勁は
通用したし、最悪、紫電掌の一撃で事足りる。
 だが、最後のあの瞬間。
 小柄な少女が自分の身も省みず仲間を助ける光景を目にした瞬間、自然と刃を返し、棟で首を打っていたのだ。
 無茶な扱いに、気を込められていたにも関わらず鋏刀の腰は伸びてしまっている。どうにも鞘に納まりそうに
ない。結構な業物だったのだから、わずかに顔も翳る。
 まして、相手は殺さなかったからといって助かるような相手でもない。この場で死んだほうがましだったとも
思えるような仕打ちを受けるかもしれないのだ。
 濤羅の立場は幇において磐石ではない。暗い殺し屋風情、だまし討ちをする内家拳法と罵る一派すら存在する。
 だからこそ、この少女たちは殺すべきなのだ。最低でも助けようなどと思ってはいけない。
 しかし――

「李寨主……それに豪軍にでも頼み込むか」

 いまさら、見捨てられようはずもない。
 義を見てそれを無碍にできるようであれば、それこそ侠の名など捨ててしまえばいい。
 ある種の爽快感――捨て鉢と言ってもいい――を胸に、この調査が終われば、濤羅は少女らを生きて連れ戻る
ことを決意していた。

362 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 00:08:20 ID:dLOkQ+4R
手には一刀、斃すは五人…… 支援!

363 : ◆.k7TdiLwT2 :2008/07/03(木) 00:10:26 ID:iM1LlziA
以上です。
コテはリリカル×リリカルを流用

……ほぼ蹂躙でごめんなさい OTL
刃鳴散らすクロスといい、飢狼MOWといい、必ずなのは側が負けていますが、決して愛がないわけではないのです……

364 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 00:15:08 ID:+P05JyUP
GJ!!です。
クロス先は知らないのですが・・・強いw
しかも話にしか出てこないサイバネ拳法家っていうのもぶっ飛んだ強さだwww

365 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 00:18:15 ID:dLOkQ+4R
GJ!
さすが濤羅! 生身で音速超えたサイボーグの攻撃を掻い潜り、機関銃の弾丸を叩き落せる剣鬼だw
紫電掌は振動破砕以上に戦闘機人の天敵だぜ! 電磁発頸があれば、ガジェットだって倒せること確実w
短編といいつつも、次回を期待させずを得ないw
剣戟の描写は本当にほれぼれとします。
これはリリカル×リリカルで、シグナムが登場する日が楽しみだ!(当分出ねぇよ)

そして、まだ妹が暴走してないせいで、綺麗な豪軍と白い濤羅ですねw
連れ帰ったことを妹が知ったらどうなるだろう(ガクガクブルブル)
剣鬼になったら濤羅が見たい反面幸せになってほしいものです。
次回も楽しみにしてます!

366 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/07/03(木) 00:48:33 ID:iM1LlziA
ファントム、ヴェドゴニア、鬼哭街、ハロワ、デモベ、ハナチラ、竜†恋、戒厳聖都、塵骸、カルネヴァーレ、ジャンゴ
全部プレイしてますヽ(´-`)ノ
あれ、一個足りない?
あはは、まさかそんなことが……|天二|( ゚Д゚)知らんがな

感想、支援を下さった皆さん、先を譲ってくれたトランスフォーマー氏、ありがとうございました。

367 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 00:57:27 ID:QrmvxW0T
>>366
天二を馬鹿にするなだお!
あれも悪くないお! と言っておく

368 :コミコミ:2008/07/03(木) 01:00:58 ID:MpRkTOrF
やべーって! フォーリナーの活動が開始しちゃってるよ!EDFは会戦という会戦にことごとく敗北してるし
40Mクラスの巨大生物って!?ヴァラクか!二匹同時のインフェルノはクリアできなかったサイボーグも楽しみ!
四足歩行要塞 通称ヨツハシ 「山が動いてる!?」「機銃の雨だー!?」
も楽しみ!
「人類は生き延びることが出来るか?」


369 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/07/03(木) 01:04:05 ID:Vj+HvXlg
お待たせいたしました。
これよりUPいたします。
当初は最後まで書いてからUPする予定でしたが、分量が多くなった為、二編
に分けました。

370 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/07/03(木) 01:12:12 ID:Vj+HvXlg
では、これより始めます。

371 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/07/03(木) 01:14:59 ID:Vj+HvXlg
どこまでも続いているかの様に錯覚してしまう程の、抜けるような蒼天。
強烈な陽射しと砂からの照り返しで、うだるような暑さが続く砂漠のど真ん中を、
フェイト達セギノール基地の生き残りは、デュラハ少年の村へと歩いて行く。
先頭はエップスと案内役のデュラハ。
中間をフェイトの担架を担ぐメルゲルとグーダに、その警護としてデ・カタと
フェイトの救護に当たる衛生兵が担架の横に立つ。
ロアラルダルは殿軍を務め、背後からの攻撃に眼を光らせている。
上空にはエグゼンダとローレンスが居て、空や遠方で不審な動きがないかどうか、
眼を皿にして見張っていた。

「村まで、後どれ位だ?」
「もうすぐ。あの頂上から見えるよ」
エップスの問掛けに、デュラハは数百m先の峰の頂を指差して答えると、そこへ
目指して、一目散に駆け出す。
「やれやれ」
魔導師たちが苦労して登る砂と岩の斜面を、何でもないかのようにスイスイと
駆け上がって行くデュラハの姿を見て、それまでずっと険しいままだったエップス
の表情が苦笑のあまり和らいだ。

残りの距離を息も絶え絶えに歩いてエップス達は頂に辿り着く。
フェイトの担架を担ぐメルゲルとグーダ以外が行きも絶え絶えにへたばる中、
立ちながら下を向いて息を整えてから、エップスはデュラハに尋ねる。
「村はどこにあるんだ?」
それに対するデュラハからの返事はない。
不審に思ったエップスが顔を上げると、デュラハは峰の向こう側を見つめた
まま動かない。
「どうした?」
エップスが問掛けると、デュラハは呆然とした表情で呟いた。
「村が…」
その言葉に只ならぬものを感じたエップスは、途差にデバイスを起動させて、
デュラハの見ている方に視線を向ける。

372 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/07/03(木) 01:23:09 ID:Vj+HvXlg
峰の頂から見下ろす先にあったのは、砂と岩だけの荒れ果てた沢の中で、緑の潅木が
美しく映える小さなオアシス。
その中に、砂嵐に耐えられるようドーム型に造られた小さな家が数軒、木々に寄り添う
ように建てられている小じんまりとした集落がある。
何もなければ平穏そのものな筈の村。だが、家々の屋根はは無惨に破壊され、黒い煙が
朦朦と吹き上がっている。
よく見ると、家の周り地に攻撃を受けたと覚しきクレーターが幾つもあり、その周りで
人が倒れているのも分かった。

「何てこった…」グーダが愕然とした表情で呟く。
「父さん! 母さん!」
そう叫んで駆け出そうとするデュラハを、エップスが抱きかかえて止める。
「離して! 離してよ!! 父さんと母さんが―――」
暴れながら言うデュラハに、エップスが怒鳴り付けた。
「落ち着け! 基地を襲った奴が村の中に居るかもしれんぞ!」
その声に我に返ったデュラハは、不安な表情で炎上する村を見つめる。
不意に、そっと腕に手を置かれた時、デュラハはハッと振り向く。
いつの間にか、横に担架に載せられたフェイトが居て、デュラハに微かに微笑んでいた。
デュラハも、そうすれば親が無事であるかのように、フェイトの手を握り返す。

373 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/07/03(木) 01:29:22 ID:Vj+HvXlg
「おかしいっすね」
ローレンスが何気なく呟いた。
「何が?」
グーダが問い掛けると、ローレンスは首を捻りながら答える。
「だって俺たち、敵襲を警戒して1キロ先まで、広域警戒魔法陣を展開してたんだぜ?」
その言葉に、メルゲルがハッとした表情で言う。
「そう言や、何の反応も出なかったな…」
デ・カタは腰に下げた水筒を取り上げながら言う。
「村の位置が沢の谷間にあるから攻撃が判らなかった…としても、空と地上で何らかの
動きは探知出来る筈だし…」
そう言って水筒を口に含むも、中身は空っぽである事に顔をしかめた。

腕を組み、うーんと唸りながら考え込む魔導師たちに、フェイトが声をかけた。
「空と…地上でないとすれば…」
「執務官?」
その場の全員が注目する中、フェイトは指先を真下の砂地に向ける。
それが意味する事を悟った時、全員の顔から血の気が引いた。
「エグゼンタ! ローレンス! ハラオウン執務官を連れて空に上がれ!」
エップスがそう怒鳴ると、空戦魔導師二人はフェイトの担架を持ち上げ、慌てて空へ
飛ぶ。
「円陣を組め! 死角を作るな!」
デュラハを自分の傍らに引き寄せながら、エップスは命令を下す。
陸戦魔導師たちは、全方位どこからの攻撃にも対応出来るよう集まって円の形を作り、
針の落ちる音一つ聞き漏らすまいと神経を尖らす。
突然彼等の足元で砂煙が上がると、地面が蟻地獄の巣の様に陥没する。
埃が吹き上がった時、途差に飛び退かったなかったら、全員巣の底に引きずりこまれて
いただろう。

“蟻地獄”の餌食にならなかったとは言え、魔導師たちは流れ落ちる砂に足を取られて
転倒し、穴の底へと落ちそうになる。
彼等は必死で手足を動かして流砂にあらがい、次々と穴から這上がる。
彼らの中で一番底に近いところまで落ちたメルゲルが必死で、先に脱出したグーダが
差し延べる手を掴もうとした瞬間、穴の底からメガザラックが飛び出す。
巨大な機械蠍は、金属の尻尾を素早く振るい、砕岩機のドリルと見紛がう大きな針を
メルゲルの背中に突き立てる。
犠牲となった二等陸士は、叫ぶ間も無く砂の中に引きずり込まれた。

「走れ! 止まるな!」
エップスの命令を聞くまでもなく、メルゲルの最期を間のあたりにした陸戦魔導師
たちは、必死になって沢を駆け降りた。
砂に足を取られて倒れそうになりながらも、懸命に踏ん張ってバランスを取り、
砂地を駆ける。
突然、彼等の背後で砂煙が上がると、メガザラックが飛び出して来る。
メガザラックは、獲物を捕えんと鋏型の強力なマニピュレーターが付いた両腕を
伸ばすが、慣れない砂地を火事場の馬鹿力で走る魔導師たちを、タッチの差で
捉え損ねた。

魔導師たちが、未だ炎の収まらない集落へ駆け込むと、メガザラックは砂の中から
飛び出し、彼等の前に全容を見せた。
その姿は地球の砂漠地帯に棲む蠍を彷彿とさせるが、10mは優にある巨体と陽の光
を受けてギラギラと光沢を放つ金属のボディが、如何なる次元世界にも属さない
異質な存在である事を示している。

374 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 01:32:31 ID:XnKCMKto
睡魔支援

375 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/07/03(木) 01:51:59 ID:Vj+HvXlg
メガザラックは、二つの大きなギョロ眼をフェイトを運ぶ空戦魔導師たちに向けると、
左腕を彼等の方に向ける。
マニピュレーターが開かれ、内部機構が唸りを上げて回転を始めた次の瞬間、実体弾が
数発放たれた。
弾頭はフェイトたちの間近で炸裂し、爆風と無数の破片を巻き散らす。
事これあるを予想して、シールドとフィールドを幾重に展開していたが、破片の幾つかは
それら防護障壁を突き破り、一発がローレンスの左肩に命中する。
狼男は突然の激痛に思わず声を上げてよろめき、バランスを大きく崩して失速する。
二人の空戦魔導師が集落の中に墜落するのを確認したメガザラックは、すかさず地上
の魔導師たちに注意を向けた。

建物の裏や樹の陰など、隠れられそうな場所に飛込むと、陸戦魔導師たちはミッド式・
ベルカ式魔方陣を次々に展開する。
まず最初に、槍型デバイスを持つロアラルダルと、ブルパップ式自動小銃型デバイス
のデ・カタが機械の化け物への攻撃を試みた。
彼等が立て続けに放ったアクセルシュートは、全弾メガザラックの巨体に命中するも、
裝甲の表面で空しく弾けるだけで何らダメージを与えない。
次にメガザラックの右手のマニピュレーターが展開すると、強烈な閃光――ブラック
アウトが使ったプラズマ弾の小型版――が、デ・カタが隠れている岩めがけて撃ち
込まれた。
弾は岩の3分の1を粉々にし、石のシャワーを周囲に巻き散らす。
デ・カタは岩陰に隠れていたにも関わらず、爆発の衝撃で5m程吹き飛ばされた。
慌てて岩陰に這い戻るデ・カタにメガザラックがトドメの一撃を加えようとすると、
今度は右横からファイアボール弾が撃ち込まれる。
それはメガザラックの顔右側に命中して爆発するが、メガザラックの顔が僅かに
揺れたぐらいで、まったく効いていない。
メガザラックはお返しとばかりに、弾の来た方角に右手を向ける。
レトロフューチャーな光線銃型デバイスを持ったグーダが飛び出すのと同時に、
今まで隠れていた家の壁が木っ端微塵に吹き飛んだ。

半ば爆風に飛ばされるような形で、グーダはデ・カタの隣に滑り込む。
「アクセルシューターじゃ駄目だ!」
カートリッジを再装填しながら、デ・カタはグーダに喚く。
「こっちのファイアーボールでも利かねぇぞ!!」
グーダはデ・カタと体を押し合うようにして岩の陰に隠れながら、メガザラックに注意を
向けつつ怒鳴り返す。
グーダがデバイスを操作すると使用済みのカートリッジが排莢され、砂の上に弧を描いて
落ちた。

376 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/07/03(木) 01:53:47 ID:Vj+HvXlg
本日はここまでです。
最近は仕事の合間を見ながら、携帯にチマチマと打ち込むようになってます。
出来るだけ早いうちにUP出来る様にしたいですね。
では、おやすみなさい。

377 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 09:47:59 ID:+P05JyUP
GJ!!です。
メガザラック怖いw土中の敵を倒すのは難しいなぁ。



378 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 10:19:01 ID:1q87Vcjn
GJ!!!!


379 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 11:00:03 ID:mHWfz9E6
GJ!
ついに地中の殺戮者とのバトルが始まったー!
メガザラックの尻尾にぶち抜かれるのは誰だ!

380 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 13:10:11 ID:1q87Vcjn
宇宙刑事のクロスを単発で投下します。
予告編みたいな内容です。

381 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 13:48:39 ID:6gZErv7y
待て
メール欄にはsageを入れるんだ

382 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 14:23:02 ID:1q87Vcjn
無数に輝く星の中で、青く煌く惑星、第92管理外世界地球、
またの名を太陽系第3惑星とも呼ばれるこの星は、今まで
数多くの宇宙犯罪者達に狙われてきた、「マクー」「マドー」
「フーマ」といった宇宙3大巨悪もまた、地球を狙った。
がしかし、その野望は3人の宇宙刑事達によって打ち砕かれていった。
時は過ぎ、ミッドチルダの時空管理局では、怪事件が各世界で多発した、
先のJS事件で活躍をした、八神はやて率いる。機動6課が正式に設立し、
ほとんどのメンバーが集まった。多発する事件の糸口が地球に
あるという、情報をつかみ、6課は、スターズ、ライトニング分隊を派遣した。
地球で、捜査をしていた彼女達の前に突然強襲をしかけてきた集団、
応戦しようにも、魔法が通用しないため、追い詰められた、両分隊、
襲ってきた集団たちの正体は、皇帝デスモンドの配下、宇宙犯罪組織
「ハザン」、銀河中を荒らし周りまた次元犯罪者達と手を組み、
次元世界にまで、手を伸ばしてきた。
魔法が効かない、相手になのは達は、ハザンに捕らえられようと瞬間、
一人の少年が颯爽と現れた。少年は、ハザンの戦闘員たちを蹴散らし、
なのはたちを救出し、両手を天にかざし。叫んだ「昇華!」
その一瞬で少年はメタリックな強化服を身にまとい、
犯罪者達に向かって「宇宙刑事、シャイン!!」と名乗った。
彼はバード星から派遣され、地球防衛の任を与えれてきたのだった。
今、ここに銀河と次元世界の命運を分ける戦いがはじまった。
昇華せよ!!宇宙刑事シャイン!!

多分、続かない

383 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/07/03(木) 14:27:51 ID:JeFT5rZd
投下乙です。
それからちっとカキコ。

どなたか前スレの終わりと現スレの最初にある自分の作品を、まとめWikiにまとめてもらえないでしょうか。
自分では上手くやれる自信がないので…

384 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 14:39:48 ID:KGdbPRcM
>>382
誰もあなたの考えたオリジナルキャラを見たくはないんだが。
宇宙刑事シリーズは単なる出汁じゃねーか。
てかオリジナルとのクロスはなしだろ。

385 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 15:06:01 ID:BwUkdm/l
>>382
SRCでやれ、としか。

386 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 15:07:36 ID:BwUkdm/l
あと日本語になってないよね、>>382

ともかく昨日から今日にかけての皆さん、投下ラッシュ乙です。
全部の感想はさすがにちょっと書けないですが(笑)

387 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 15:51:57 ID:+8F2S5bP
>384-386
つttp://nukoup.nukos.net/img/13333.jpg
という事で。

388 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 16:35:00 ID:PEFcDVFH
メガザラックじゃなくてスコルポノックでは?

389 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 16:38:15 ID:/EqqpNst
でも宇宙刑事とのクロスはいいと思う
宇宙刑事の敵って異次元から来てるしな


390 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 16:53:43 ID:mA/yKbRr
>>388
メガザラックは日本名でノベライズ版で使用、スコルポノックは英語名で実写映画版で使用。
SSはノベライズ版トランスフォーマー準拠なのでメガザラックを使用している。

391 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 17:36:32 ID:R7MRcLr7
スコルポノック・・・・スコルポス…
Bst氏はいずこ?

392 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/07/03(木) 17:42:45 ID:1/bLPn18
みんなー、文化してるー!?
と、言う訳で間が空きすぎて前回の内容を覚えていただけているかどうかドキドキな今日この頃。
恥ずかしながら帰って参りましたァァァァァッ!

只今より投下させていただきたく思いますが、支援お願いしてもよろしいでしょうか?

393 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 17:48:36 ID:vs/4sm4C
リンディ「エリオくん、キャロちゃん。これからユーノ君のことはお爺ちゃんって呼ぶようにね」
フェイト「エリオ、キャロ。これからユーノのことはお父さんって呼ぶようにね」

リンディ「…………」
フェイト「…………」

リンディ「ふふふ、お義母さんの幸せを素直に祝えないなんて、いけない子ねぇ、フェイトは」
フェイト「義娘の幸せを素直に祝えない母親もどうかと思うよ、義母さん」

リンディ「うふふふふふふ……」
フェイト「ふふふふふふ……・」




エリオ「……とりあえず、『ユーノ先生』で」
キャロ「うん、そうだね」


394 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 17:49:36 ID:vs/4sm4C
申し訳ありません、誤爆しました

395 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 17:58:51 ID:4zKl7hT+
なんと言う……
気を取り直して武者○氏を投下支援。

396 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/07/03(木) 17:59:26 ID:1/bLPn18
ダレモイナイ トウカスルナライマノウチ
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 海鳴を遠く離れたここは本州の西端、山口県某所。
 見た目はただの町工場なそこに、不釣り合いと言えば不釣り合いな人物が姿を見せていた。
 その人物こそ、はるばる秋田からやってきた武者、爆流頑駄無。
 トッキー重傷の知らせを受けて再び海鳴へと向かおうとしていた矢先に
彼の重要なスポンサーからの呼び出しが爆流をこの地へと誘っていたのだった。

「ニャ〜ッハッハッ! やっとかめだなも、爆流しゃん!
 今日はボクちゃんのお願いに付き合ってくれてサンクスだぎゃー!」

 そうした事情故に不機嫌な爆流に向けて、一人の武者頑駄無が陽気な声を投げ掛ける。
 もともと人間と比べて小柄な武者たちの中でも、飛びぬけて小さい体を珍妙な背広に包み、
自虐なのか何なのか、秘書としてモデル体型のすらりとした長身の美女と
彼の倍くらいの背丈を持った巨大な大砲と車輪を背負った鉄機武者を従えている
もはや存在そのものがギャグ一歩手前なその男。
 武ちゃ丸やトッキーの戦友にして、名古屋が日本に誇る新興の大企業「鎧王グループ」の盟主、
シャチョーの姿がそこにあった。

「一体何なんや、こないなとこまで呼び出して……
 お前さんの仲間の斗機丸が半死半生やってのに、それをも上回る最優先事態っちゅうの、
 納得のいく説明してもらおか?」

 じとっとした目を足もとのシャチョーへと向けながら、爆流はそう凄んで見せる。
 無理もない。この世界で鉄機武者を完全に近い状態にまで整備できる人材は限られている。
 彼はその数少ない人物の一人なのだ。
 シャチョーの後ろに立つ鉄機武者……たしか爆炎頑駄無と言っただろうか?
 彼がそこまでひどい損傷を受けているようには到底思えない。
 明らかに優先すべきなのは斗機丸の方であるはずなのに、という思いで爆流の頭脳は満たされていた。

「爆流しゃん、斗機丸の事を心配してくれてるのきゃー?」
「当たり前や! 知っとるんやったらなんで俺をこんなとこにまで呼び出したんや!?」

 そんな事はお見通しとばかりにシャチョーが爆流に話しかけると、
爆流は抑えていた感情をぶちまけ、憤然とシャチョーに迫る。
 当のシャチョーは思わず背後の爆炎の影に逃げかくれつつ、ビクビクとしながら
怒りの化身と化した爆流との会話を続けようと試みた。

「チ、チミの気持ちは痛いほどわかるけど、これも長い目で見れば斗機丸のためになる事なんだぎゃー。
 お願いだからわかってチョーよ?」
「斗機丸のため……どういうこっちゃ?」
「百聞は一見に如かず。まぁ、とりあえずこれを見てほしいのみゃー。ナンシー?」
「かしこまりました、シャチョー」

 シャチョーの指示に応え、沈黙を守っていた秘書の女性、ナンシーが壁に無造作に下げられている
スイッチを次々と作動させる。
 すると、ただのコンクリートにしか見えなかったその壁一面が、震えるような重い音を立てながら
少しずつ開き、その向こうに隠されたこの工場の真の姿が明らかとされていった。
 整然と並べられた最新の作業機械の間、爆流にとっては見慣れたモノが視界に飛び込んでくる。
 そこには両手で数え切れないほどの数の鉄機武者が立ち並んでいたのだ。
 よく見ればその姿は爆炎頑駄無とシャチョーの操縦する鎧鋼力服(よろいすーつ)、
「鎧丸」をちょうど足して二で割ったような姿をしていた。

397 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/07/03(木) 18:00:37 ID:1/bLPn18
「ニャ〜ッハッハッハッ! 驚いたきゃー?
 これぞ、こっちの爆炎頑駄無の設計とボクちゃんの鎧鋼力服のデータを基に量産した
 純日本製鉄機武者! 新生爆火隊の雄姿だぎゃー!」
「……こらまた、えらい事を……」

 その光景に爆流は気勢を完全に削がれてしまっていた。
 シャチョーの迅速を尊ぶ手腕はある程度聞いてはいたが、それでもまさか自分を差し置いて
ここまで事を進めていたとはと、素直に驚きの感情を覚えていた。

「……って、ちゃうちゃう! ここまでできとるんやったら俺の手伝いはもういらんやろ!?
 それにこいつらはどう見たかて火力支援型の設計!
 さっき言うとった『トッキーのため』っちゅうのとつながらんで!?」

 しばらくは呆けたかのように施設内部をうろついていた爆流だったが、ふと我に返り、
再びシャチョーを睨みつける。
 シャチョーはそんな爆流をニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて見つめ返し、
秘書の持っていたノートパソコンを受け取ると、自慢げにそのディスプレイを見せつけた。

「これを見たら少しは納得してくれるかみゃー?」
「! こ、これは!?」

 画面上に映るのは鉄機武者か何かの骨格だろうか。
 スマートで、シンプルかつ機能的。
 地球の科学技術と武者世界の錬金術の粋を結集したその基礎設計案は、
彼の眼にはもはや芸術の域にまで達しているかのように映っていた。

「データも資材も揃ってる。ただ、これを完成させるにはウデのいい職人の力が必要なんだぎゃー。
 爆流頑駄無しゃん、ぜひともあんたの協力が必要みゃー!」

 ごくりと息をのむ爆流の顔を覗き込むシャチョー。
 その表情は彼の答えをすでに予見しているかのような、自信と意欲に満ちた物であった。




 巻之弐拾「信じた絆と、魂の意味なの」




「クロノ君、今、なんて……?」

 なのはの顔が、信じられないものを聞いたという風にこわばる。
 彼女のそんな辛そうな顔を見るのは忍びない。
 そう思いながらも、クロノはあくまで一執務官としてその言葉を繰り返した。

「もう一度言おう。
 時空管理局は、これ以上今回の件について武者頑駄無たちが関わる事を容認できない」

 場に集まった少女たちの間で小さなささやき声が上がる。
 そんな中、大きな音を立てて机を叩き、勢いよく立ちあがったのはやはりシンヤだった。

「おいおい……冗談にしたって、もっと気の利いた事言えるんじゃねーのか?
 ジュエルシードで事件が起こっても、堕悪闇軍団にいろんな奴らが迷惑掛けられても、
 何もせずに、ただじーっと見てただけの奴が今更それか?」
「彼らのしてきた事については理解している。
 だが、だからこそ僕達は彼らにこの事態を任せるわけにはいかないんだ」

398 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/07/03(木) 18:01:09 ID:1/bLPn18
 そう言ったクロノの胸倉を掴み上げ、シンヤはなおも責め立てる。

「訳のわからない誤魔化し方すんじゃねぇ!!
 アンタらがちゃんと動いてりゃあ、あの日の海鳴市も、トッキーもあんな事にならずにすんだんだ!
 それを……テメーに一体何がわかるってんだ!?」
「わからないさ! だからこそ、僕は君達に彼らと関わることは推奨できないと言っている!」

 シンヤの手を強引に振りほどき、襟元を正しながら呼吸を整えたクロノは
努めて冷静であろうとしながら、諭すように言葉を続ける。

「この国の暦で一月一日、大阪という都市の繁華街が壊滅的な打撃を受けたのを覚えているかい?」
「あん? それが一体……」
「あの事件は、ジュエルシードの暴走体が武者頑駄無との戦闘の結果生じたものだ」

 クロノの告げる事実が空気を凍りつかせる。
 さすがに武者丸が引き起こした事態という事はこの場の誰も知る由がなかったが、
それでも全員の口を封じるにはこれだけで十分だった。

「刀一本で街を崩壊させ、高ランクと思しき戦闘魔導師と互角以上に渡り合い、
 中には全身を質量兵器で固めた者や、存在そのものが兵器と呼べる者までいる。
 何の予備知識もなしに彼らと接触を持つ事はリスクが高すぎるんだ。
 だから僕らはこの半年の間、ずっと彼らを監視し続けてきた。
 黙って見過ごすには無理があるし、世界を乱す存在になりかねないからね」

 クロノの発した耳慣れない言葉に、なのははすぐそばのユーノに耳打ちして訊ねる。

「ユーノ君、質量兵器って?」
「簡単に言えば、ミサイルや毒ガスみたいな魔力を使わない破壊兵器、殺戮兵器の事だよ。
 昔ね、僕達の世界……ミッドチルダではそれこそ核兵器の親玉みたいな
 恐ろしい広域破壊兵器が使用されて、ひとつの国が終焉を迎えてしまったんだ」

 なのはの問いに、質量兵器という言葉が持つ意味と、それが生んだ悲しい歴史をユーノは語り出す。
 自分たちの故郷が「魔法の国」になるに至ったその理由を。

「行き過ぎた力を放置する事は破滅を呼びこむ。
 それを教訓に、先人達は高い知性が求められる魔法技術に基づいた文明に方針を切り替えたんだよ。
 質量兵器の廃絶は、その流れの中で起こったんだ。けど……」
「けど?」

 そう言うと、ユーノは、視線の先にとらえる影をなのはからクロノに移す。
 
「あの条約はそれに批准した管理下にある世界だけで通用するもの。
 今、ここでその話は関係ないのではありませんか?」

 ユーノの鋭い指摘と刺すような視線に、クロノは肩をすくめて答える。
 その表情は前髪に隠れ、伺うことはできない。

「……失礼。確かにこの件を持ち出すのは筋違いだった。
 けど、知っておいてほしかったんだ。君達の隣にいる小さな子供が、
 そんな爆弾みたいな危険性を秘めているって事をね」 

 そこで、全員の視線が机の上を粉だらけにしながら、お茶菓子のビスケットに夢中になっている
この場で唯一の頑駄無……羽丸に注がれる。

「なんだよー! 子供子供ってばかにすんなー! おれだって武者のはしくれなんだぞー!」
「……今までのやり取り、絶対聞いてなかったわね、この子」

 両腕をぶんぶんと振りまわしながら必死で自己主張する羽丸の姿を見て、
呆れたようにアリサが呟いた言葉は皆の意見をこれでもかと代弁していた。

399 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/07/03(木) 18:01:48 ID:1/bLPn18
「ホラホラ羽丸君、そんなに暴れたらこぼしちゃうよ?」
「あ、うん」

 本人の主張はともかく、すずかに口の周りの食べかすを拭いてもらう姿はどう見てもお子様だ。
 しかも発言がクロノの言動と全くかみ合っていない。
 思わず彼の話に引き込まれそうであった一同は、再び疑いの眼差しをその当人へと向ける。
 武者頑駄無を危険と断じる材料としては、羽丸はあまりに幼く、純粋かつ無垢であった。

「執務官、僕からもいいでしょうか?」
「……何だ」

 明らかに困っているクロノに追い打ちをかけて論破し、なのはの前で無様に、
そして完膚なきまでに叩きのめすべく……もとい、今まで共に困難に立ち向かってきた大切な「友」、
武ちゃ丸やトッキーを擁護すべくユーノはクロノと対峙した。

「管理局が武者頑駄無達を危険視する理由は伺いました。
 確かに、彼らが持つ力は一個人で行使する力とは思えないほど強大です。
 けれど……」

 目を見開き、今まで武者頑駄無と共に過ごした日々……その中で学んだ事を、
彼らの素性を疑う彼に対し、自分なりに伝える事。
 それこそが今の自分にできる最大限の事だから、ユーノはその言葉に万感の想いをこめる。

「短い間ですが、彼らと行動を共にしてわかった事があります。
 彼らはいつも人々を、そしてその笑顔を守るという事がその行動の基準。
 鉄道が乗っ取られた時も、ジュエルシードの暴走体に民間人が襲われそうになった時も、
 仲間をかばって自らの命を投げ出した時も……」

 新幹線で見た武ちゃ丸とトッキーの笑顔が、號斗丸の心よりの叫びが、
そして紅零斗丸の壮絶な散り様とそれに応えたシャチョーの雄姿が次々と脳裏をよぎる。

「だから僕は、武者頑駄無を信じます。彼らが見せてくれた……
 えっと、何て例えたらいいのかな……そう、『魂』を」
「その通りだい! 自らを捨て、弱きを助け闇を断つ! それが武者頑駄無の魂だ!」

 胸を張ってユーノの言葉を飾り立てる羽丸の姿は誇らしげだ。
 異邦人にすぎない自分達の事を理解してくれた人がいて、きっとそれが純粋に嬉しかったのだろう。

「私だってそうだよ、クロノ君! トッキー君には危ない所を何度も助けてもらったし、
 それに、もし頑駄無さん達が危ない人達だったら、日本は半年前に滅茶苦茶になってると思うの」
「そうよ! シンヤじゃないけど、事件が起きたのわかってて何にもしなかったのって怠慢よ、怠慢!
 こっちからしてみりゃアンタ達時空ナントカだってよそ者には変わらないんだからね!
 味方してもらいたきゃ、それなりの誠意を尽くしなさいよ!」

 ユーノと同じくらい頑駄無達と関わり、生命の危機からも救われたなのはが、
そしてアリサがまたしても知り合ったばかりの人間を呼び捨てにしつつ、それに続く。
 口には出さないがすずかも心は同じようで、二人の発言に首を頷いて同意を示していた。
 こうしてこの場にいる人間すべてを敵にしてしまったクロノは、
仕方なく先程からむっつりと黙り込み、行儀悪く足を崩して安物のソファーに座り込んでいる
シンヤに話題を振るという選択肢を選ばざるを得なかった。

「『虎穴に入らずんば虎児を得ず』というのはこの世界のことわざだったね。
 君達が見つけた虎の子がそれだったという訳なのか?」
「さぁてな、んな事聞かれたってよくわかんねーよ。こちとらタダの小学生だし。
 けどな……」

 頭の上に「?」の字を浮かべ、クロノはシンヤの言葉を待つ。

「監視しようって奴と、ダチになろうって奴じゃあ
 相手がどんな奴だって違うように見えて当たり前なんじゃねーか?」

400 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/07/03(木) 18:02:42 ID:1/bLPn18
 それはとても、そう、とても単純な事だった。
 しかし、それ故にその言葉はがつんとクロノの頭脳を揺さぶっていた。
 彼がこの世界に来た理由……それは次元世界の平和を維持するという役目と、
ちょっとばかり強い因縁のある存在を追っての事。
 その重すぎる使命に負けるまい、くじけるまいと意気込む事が、気付かぬうちに己の心を
頑なにしてしまっていたのではないだろうか。
 目の前にいる彼らは決して言葉で丸め込まれたのではない。
 そんな事くらいは、この真剣な顔を見ればよく分かる。
 ならば、自分のとるべき行動は……

 突然押し黙ってしまったクロノを怪訝そうに見つめるいくつもの視線の中、
渦中の本人は一つの決意を固めていた。




 硬い金属と金属がぶつかり合い、擦れ合う音が暗闇の底に沈む意識に覚醒を促す。
 輪郭のない灰色のぼやけた世界が拡がって、夢もうつつも判然としない中、
次第にハッキリと世界は実体を持ちはじめ、自分はまだ現実の世界に生きているという事を
眠りから覚めたその存在……トッキーに告げていた。
 
「……ふぅ、なんとか私一人でもどうにかできた、か。
 おはよう、トッキー君。調子はいかがかしら?」

 自分に向けられた声を聴覚センサーは異常を見せることなく知覚した。
 派手にやられてはいたが、どうやらこの機能は生きていてくれたらしい。
 その聞き覚えのある声にトッキーは振り向くと、そこには彼の予想通りの人物が
コンピュータのモニターとにらめっこしたまま、ずっとキーボードを叩き続けていた。

「忍、さん……でしたね。あなたが俺の修復を?」
「そ。あ、右腕動かしてみて? 動作のチェックしたいから」

 月村忍。
 なのはの親友、すずかの姉であり、前回の損傷時に施された大手術に立ち会った唯一の人間。
 そんな彼女の指示に従い、右肩をぐるりと回し、指を開いては閉じ、肘を数度上下させる。
 それは鉄機心得の「ぷろぐらむ」に刻まれた、繊細ながらも基本的にして単純な行動。
 しかし、どこか妙だ。形容しがたい違和感がトッキーの頭脳を襲った。

「重量バランスや機能に変わったところはないかしら?」
「数値上の話で言うなら若干挙動が遅れますが、反応自体は悪くないと思います。
 ただ……」

 言い澱むトッキーを制し、その内容を先読みして口を開いたのは忍のほうだ。

「前と同じようにはいかない。そう言いたいんでしょ?」
「申し訳ありませんが……」

 申し訳なさそうに小声でそう告げるトッキーに対し、忍は予想外の反応を示す。
 達観していながらもどこか子供っぽさを残したはにかみを浮かべ、
自分の予想が的中していた事に満足が行っている。そんな表情だった。

「あぁ、いいのいいの。あなたのお国の技術とこっちの技術じゃどうしても性質が違うし、
 同じ事をさせようとしてもどうしても相違点が生じちゃうから、予想はしてた」
「それはかまいませんが……って! まさか忍さん一人だけで自分の修復を!?」

 その一言に驚きをあらわにするトッキー。
 忍は確かに前回立ち会った唯一の人物だが、それでも体内時計から割り出したこのわずかな期間で、
しかもたった一人で機能の大半が問題なく稼働するまで修復したというのだ。
 彼女の天性のセンスと経験の蓄積には舌を巻かされる。

401 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/07/03(木) 18:03:10 ID:1/bLPn18
「最初に言ったと思うけど、その通りよ。
 まさかあなたのようなオーパーツをやすやすと父の企業に預けるわけにはいかないしね。
 それに、爆流さんがお仲間のプロジェクトに参加するとかで山口県に行っちゃったから、
 すぐには来てもらえないって……」
「それで、あなたが?」

 そんな驚きに満ちたトッキーの反応とは裏腹に忍はあくまで当たり前のことであるかのように答える。

「そう。あなたのお友達が心配するでしょ?
 マニュアルも預かってるから処置程度ならできるし、前々から興味もあって
 こっちの世界にある物で何とか再現できないかどうかいろいろ考えてたの。
 それで、緊急ってことだからそのプランを適用したってわけ。
 違和感は慣れないパーツのせいね。すぐに修正パッチ当てるからマシにはなると思うけど」

 忍がそう話している間にも、彼女の指がリズムよくキーボードを叩く音は休みなく流れ、
トッキーに繋がれたコードからコンピュータに送られるステータス表示の情報を
コマンドラインに打ち続けていた。

「いえ、お気になさらず。この程度の情報伝達ラグならこちらで合わせます」
「あら、そうなの? ソフトウェアもハードウェアも、こっちのとは全然比べ物にならないのね。
 全くいやになっちゃう」

 口ではそう言いながらも、忍の表情は先ほどからずっと楽しそうだ。
 例えるならば、クリスマスプレゼントをもらった翌朝の子供の表情が一番近いだろうか。
 トッキーに触れるたび、機械と触れ合う事の楽しさがふつふつと湧き上がってくる。
 それは、幼い頃から家族の仕事柄最先端の機器に触れることが多い彼女にとって
久しく忘れていた全く未知の技術との出会いであった。

「そんな事はありませんよ。
 動作の精密さならむしろこの部品の方がはるかに複雑な要求に応じてくれます。
 電装系の精度も桁違いだ」
「ありがと、お世辞でも工場のおじさん達が聞いたら喜ぶわ。
 けど……あぁ、ここから先はとっても大事な話だからちゃんと聞いてね?」

 休みなく流れていたキーボードの音がぴたりと止まる。
 忍は顔をあげ、トッキーの瞳をしっかりと見据え、言葉を続けた。

「こっちの作業機械用に作られた部品は、戦闘みたいな過酷な環境は全く想定されていないの。
 簡単に言えば、精密な分繊細で、脆い。あなたのスペックにあったフルドライブモード……
 えっと、何て言ったかしら?」
「鉄機力増幅装置(ジェネレーター)・最大戦力状態(マキシマムモード)ですか?」
「そうそう、それそれ。
 多分まともに使ったんじゃあ部品が負荷に耐えられないの。
 一回の部品交換でパーツが耐えられる限界は……大体三十秒前後」

 その一言は高機動戦闘用鉄機武者の斗機丸に対して死の宣告に近かった。
 前回の戦いで自分が黒衣の少女に対して絶大なアドバンテージを得られていたのは
能力の差……出力を可変させ、相手のペースをそれと気取られぬほどに乱し続けていたためだ。
 師の教えを基にして、戦いの中で彼が身につけた技巧の一つである。
 それに、自分の最高の技は出力全開状態で振るわれるもの。
 もし戦いが長引く事になるならば、この状態は致命的な結果に繋がる。 
 
「……仮に、ですよ? その制限時間を越えて力を出し続けた場合、自分の体はどうなりますか?」
「自分で自分の不具合の修正パッチあてられるあなたなら、
 私が言わなくてもすでにシミュレーション出来てるはずよ」

 忍の声音からは、先程までの楽しそうな感じは雲散霧消してしまっている。
 彼女の言ったことだけでなく、その様子からも易々と答えに想像はつく。
 だが、それでもトッキーは聞かずにはいられなかった。

402 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/07/03(木) 18:03:36 ID:1/bLPn18
「……わかったわ。大切な事だから絶対に忘れないでね。
 まず、関節可動部が交換したパーツから粉々になって動けなくなるわ。
 そして、四肢による微細なバランス制御を失った体は際限なく暴走を続ける。
 その結果最後に待っているものは……空中分解よ」
「空中分解……」
「そう、そこに行くまでに地面か障害物とごっつんこする方が先でしょうけど。
 いずれにせよ、多分跡形も残らないわ。待っているのは確実な『死』ね」

 どこまでも冷徹な事実が突き付けられ、時間が凍てついたかのような無言の時が流れる。
 その間にも、トッキーは彼女の言うように脳内でのシミュレーションを繰り返した。
 結果は……あえて語るまでもない。
 百回やって百回ともに、制限時間を超えた自分のたどる末路は同じだった。
 しかもインターバルを置いてどうこうなるという問題ではなく、
一度発動すれば、例え三十秒経っていなくとも二回目の発動後すぐに自己崩壊を起こしてしまう。
 今まで自分の切り札であったはずの機能は、ここに至って突然自らの命を蝕む危険な毒物へと
その性質を真逆の物に変えてしまっていた。
 だが、しかし。トッキーは電子頭脳をフルに稼働させ、考える。
 薬には毒の成分を薄めて使い、体の抵抗力を引き出す類の物もある。
 だとすれば……

「逆に言えば、三十秒までは大丈夫なんですね?」

 沈黙を破り、トッキーは己が至った結論を口にする。
 それを聞かされた忍は、それも考えの内であったとばかりに眉一つ動かさず即座に返事をよこした。
 ただし、反応の速さとは裏腹にその口ぶりは鉛を口にしたかのような重さであった。

「その後で確実にメンテナンスが必要になるけどね。
 『一回』のメンテに付き『三十秒』! そして一度発動すればメンテ受けるまで二回目は禁止!
 これだけは何があろうと譲れない最低ラインよ。
 本当は全力モードになる事、ううん、これ以上堕悪闇軍団と戦う事だって……」

 強く、強く念を押し、その下からちらりと真摯な本音をのぞかせる忍。
 どうやら彼女は知らないようだ。
 自分をここまで追い込んだ相手が年端もいかない少女だという事を。
 知っていれば余計に止めただろうか?
 いや、そんな仮定は意味がない。
 なぜなら、彼の中ではすでに歩むべき道はとっくに決まっているから。
 きっと、生まれた時からそうなのだ。

「ご心配、ありがとうございます。ですが……」
「ストップ。そこから先は言わなくてもわかるわ。
 止めても無駄みたいね。まぁ、なんとなくそんな気はしてたけど」

 忍の言う通り、人に止められたからどうなるというものではない。
 なぜなら鉄機武者は生きとし生けるものの「友」たるべく創り出された存在であるから。
 そして、そんな宿命とは無関係に肩を並べる「戦友(とも)」がいる、
守りたいと思う「朋友(とも)」がいる、家族にも等しい「親友(とも)」がいる。
 そんな彼らを理不尽な力が襲おうとしている。
 さらに、未来ある少女が誤った価値観にその人生を歪められようとしている。
 トッキーにとって人に与えられたその命を投げ出す理由は「誰かのため」、それだけで十分だった。

「でも、忘れないでね。あなたを必要としている人もたくさんいるって事を。
 あなたには心がある。人とつないだ思い出がある。
 それがある限り、あなたは取り換えが利く『物』なんかじゃない。
 命を持った人間と何にも変わりはしないんだから。わかったら返事!」
「は、はい!」

403 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/07/03(木) 18:03:52 ID:iM1LlziA
sien

404 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/07/03(木) 18:03:58 ID:1/bLPn18
 そんなトッキーの決意を見透かしたかのように、忍はさらにダメ押しとばかりに釘を刺す。
 鉄機武者は体こそ機械でできているが、いわゆる工業用ロボットなどとは一線を画す存在だ。
 生まれた時からそれらに関わってきた彼女だからこそ感じ取れたのだろうか。
 鋼の体に宿る、どんな生き物にも決して負けない熱いオイルの血潮を。
 
「よろしい! じゃ、早速で悪いけど、調整が済んだら出かけるところがあるの。
 歩けるようならついて来てくれるかしら?」
「出かける? どこにですか?」

 どうやら、忍はやっと元の明るい調子を取り戻した様子だ。
 しかし時刻はとうに夜となってしまっている。
 一体どこに行くというのだろうかという問いかけに対してその答えはごく簡潔に、
その一方ではち切れんばかりの意味をこめて告げられた。

「ふふっ、きっとあなたを世界で一番心配してる子達の所よ」




「うんっと……同い年くらいかな?」
「もうちょっと小さいんじゃない?」
「えぇ? 私、ちょっとだけ上かなって思ってたんだけど……」
 
 話も終わり、降りしきる雨の中、ビルの軒先で迎えをじっと待つ。
 暇を持て余したなのは達は改めてユーノの顔をまじまじと見つめていた。
 そういえば、結構衝撃的な展開だった気もするが事態が落ち着いたのがついさっきなので、
こうやってまじまじとその姿を確認するのは実は初めてだったりする。
 見た目こそ変わった民族衣装のような服を着た線の細い普通の男の子だが、
よくよく見ると、女の子のようにさらさらとした薄茶色の髪の色はフェレットの毛と同じ色だし、
ぴょこんとはねた癖っ毛は変身してもしなくても変わらない。

「……ひょっとして僕の年齢の話? 多分皆と同じくらいだと思うけど……」
「どっちにしたってオレより下で……」
「おれよりおっきいのは間違いないよね?」
「う、うん。多分」

 そんな屈託のないなのは達の視線に、彼女の私生活を覗き見していたような立場のユーノは
申し訳ない気分を抱きながら、なのはやその他見知った顔の面々の様子を伺ってみる。

「えっと……皆、もしかして怒ってたりする?
 その、秘密にしてたみたいになっちゃって……」
「ううん! びっくりはしたけど、それだけだよ。ねぇ?」

 なのはの顔がくるりと他の面子に向けられる。
 狙ってやったなら大したタマだし、素でこんなキラーパスを振れるというならある意味敬意に値する。
 だが、しかし。

「そうそう、こっちはもう半年も前から異世界人との文化的交流やってる一般市民の端くれなんだもの。
 今更あんたが魔法の国からやってきた魔法使いって言ったって、そんなに気にする事じゃないわよ」
「そうだよ! これからもよろしくね、ユーノ君?」
「おれだって、おれだって! よろしくな、いたち……って、
 これからはいたちって呼んだらだめだよね? なんて言ったらいいかなぁ?」
「そこは普通にユーノでいいじゃねーか。
 ま、お前が心配してるほど皆気にしちゃいないぜ?
 フェレットだろーが人間だろーが、お前が頭でっかちのユーノってのは一緒だしな。
 あいつらに比べりゃあ、全然普通だって」

 皆の言う通り、別の世界からやってきた住人など、そもそも武者頑駄無達で通過した道なのだ。
 しかも彼らは皆一様に人間とはかけ離れた容姿を持ち、常識はずれの力を使いこなすときている。
 能力はともかく、見た目が人間なユーノは彼らに比べるとかわいいものに過ぎなかったのであった。

405 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 18:04:46 ID:iM1LlziA
ユーノ、怒られなくてよかったね支援

406 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/07/03(木) 18:05:03 ID:1/bLPn18
「良かったじゃないか、こっちでも使い魔には人権はあるみたいで」

 と、そんな温かい受け入れモードに冷たい水を差す声が割って入る。

「使い魔じゃない! こっちの姿が僕の本当の姿だ!
 いい加減にしてください、ハラオウン執務官!!」

 その声の主は、誰あろうクロノ=ハラオウン少年。
 悪戯っぽい笑みを浮かべてユーノをからかい、ユーノもまたそれに本気で応じてしまうために
悪天候の中、またも二人の激突が始まろうとしているが、例によってそれを制止する人物がいる。
 早くもこの姿が板に付きつつあるなのはだ。

「まぁまぁ、ユーノ君、落ち着いて。ね?
 それよりも本当なの、クロノ君? その……」
「本当だ。僕も次回から君達のジュエルシード回収に同行させてもらう」

 そうクロノはきっぱりと言い切った。
 自分がまだ彼らの本質をつかめていないというのなら、こっちから確かめに行けばいい。
 それが、彼の導き出した現時点での結論。
 その結果彼らが信頼に値するならそれでよし、もしそうでなかった場合はすぐに対処に移れる。
 一旦関わってしまったからには責任が伴うし、彼にはそれを遂行できる実力も自信もあった。
 その一方で、わざわざリスクの高い選択肢を選ぶなんて自分らしくないとクロノは思う。
 ひょっとしたら、自分も早くも「武者魂」とやらに感染しているのかもと自嘲気味に肩を竦めた。
 そんなクロノの心を知る由もなく、ユーノは疑いの眼差しを向けたまま憎まれ口を叩く。

「僕達だけで十分です。どうぞ安心してお引き取りください」
「残念だけどそうはいかない。
 僕はまだ武者頑駄無達の事を心から信用したわけじゃないからね。
 だから、君達が感じたものが本当かどうか確かめさせてもらうよ。一番近くの特等席でね」
「その特等席って、絶対違う意味が入ってませんか? 主に不純な意味で」
「さっきも言ったが、僕は詳細について何も話していないのにそういう考えに持っていこうとする時点で
 すでに君の思考が不純だと言う事にいい加減気付いてくれないか?」
「そう思わせる発言こそが火種になっているということを理解してほしいですね!
 大体、人員運用の要にあるお偉いさんがどうしてこんなスタンドプレーを……」
「執務官は本来身軽な単独行動が信条さ。
 それに、君達のような民間人にばかり任せておけないというのも事実だしね。
 これからは大船に乗ったつもりでいてくれて構わない」
「大船は大船でもタイタニック号の間違いじゃないですか?
 超大型の豪華客船ですよ、すごいですねー。それともヒンデンブルグ号かな?」
「ふぅ、相変わらず君はそんな上げ足を取るしかできないんだな。
 それがどういう船かくらい映画で知ってるさ。こちらの世界の情報を集める時に観たからね」
「だったら話が早い。わざわざ沈むとわかってる船には乗りたくないのでご遠慮ください」
「君はネズミか? 第六感で身の危険を回避するって言う……
 あぁ、そういえばその遠い親戚のフェレットだったな、使い魔君は」
「だーかーら! 僕は使い魔じゃ……」
「似たようなものじゃ……」
「もーっ! いい加減にしてよ、ユーノ君、クロノ君!」

 何物も阻むことかなわないほど延々と加熱する二人の諍いも、
天の声の如きなのはの叫びをもってすればピタリと止まる。
 物事が何でもかんでもこんな簡単に進めば楽なのになぁと、
少年少女たちが若い身空で現実の厳しさを噛みしめていたその時。

『クーローノー君っ!! 大変大変、大変なんだよぉっ!!』

 クロノの懐の通信機器がやかましく鳴り響いたかと思うと
彼が機械に触れるより早く、何もない空中に大慌ての若い女性の顔がデンと浮かびあがる。
 しかもその格好はなぜかメイド服姿だ。

407 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/07/03(木) 18:05:34 ID:1/bLPn18
「何かと思ったらエイミィか。その仕事着が気に入ったのはわかったから報告は明瞭に頼む」
『その事で連絡が……って、人がいっぱい……ひょっとして今、マズかった?』

 空中に浮かぶディスプレイを物珍しそうに見つめたり、手をかざしたりする子供たちの姿に
遅ればせながら気付いたその女性……クロノの同僚であるエイミィ=リミエッタは
勢いに任せて突っ走った結果を目の当たりにし、バツが悪そうな顔をクロノに向ける。

「あぁ、彼らならかまわない。現地協力者だ。
 そんな事より何が大変なんだ? さっきの広域破壊魔法の犯人はもう捕らえられたかい?
 手はずだと逆探知したアジトにもう踏み込んでいるはずだけど……」
『そうそう、それなんだよ、それ! 突入した武装局員の人たちが!』




 そこは広い、そう、とても広い空間だった。
 荘厳な雰囲気を醸し出す高い天井の渡り廊下と、バランス良く配置された調度品の数々。
 大理石に似た材質で作られた幾本もの柱に、正確に積み上げられた石壁がそれらを取り囲む。
 だが、今となってはそのどれもが色あせ、そして朽ち果てようとしていた。
 かつてはそれなりに権力か、もしくは財力を奮っていた者が賑やかな日々を過ごしていたであろう事が
その端々から偲ばれる。
 だが、今ここに暮らすのはただ一人。
 その主のもとへ一人の少女が人っ子一人いない回廊を進み、その最奥にでんと控える
錆びついた巨大な扉を軋ませつつ、ゆっくりと開け放つ。
 そして、開かれた部屋……玉座の間で待っていたのは、焼け焦げたバリアジャケットに包まれ、
息も絶え絶えに呻いている事から辛うじて生きているとわかる幾人もの見知らぬ人々と、
彼らが横たわるその中心にある玉座に座し、まさしく「魔女」と呼ぶにふさわしい
あふれる威圧感と、不気味な気配を振り撒く女の姿があった。

「母さん、これは……? 一体何があったの!?」
「待っていたわ、フェイト。さぁ、ジュエルシードを私に」

 少女、フェイト=テスタロッサがこの異常な事態に動揺をあらわにするのと対照的に、
彼女が母と呼ぶその人物は冷静に、そして簡潔に要求だけを彼女に告げていた。
 それは、決して実の娘に相対する母親の見せる顔ではなかった。

 彼女こそいつしか「時の庭園」と呼ばれるようになった躯の宮殿の主。
 世が世なら大魔導師と崇められたであろう世紀の天才。
 結界の中にいたはずのなのは達に雷撃の雨を降らせ、ススムの行方を失わせた張本人。
 プレシア=テスタロッサという名を持つ女だった。



 ついに姿を現したジュエルシードを求める最強の魔女、プレシア!
 爆流頑駄無が見たものとは、一体何か?
 斗機丸は本当にこのまま力を失ったまま戦い続けねばならないのか?
 そしてクロノの心に武者頑駄無の魂の叫びは届くのか!?
 ススムの行方を探し続ける武ちゃ丸達は、一体今!?

 ――次回を待て!!



408 :リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/07/03(木) 18:07:08 ID:1/bLPn18
 
 登場武者符亜意留(ふぁいる)

爆炎頑駄無 [バクエンガンダム]
出典:超SD戦国伝 覇大将軍編
モデル:ΖΖガンダム

 轟炎を纏った砲弾が雨のように降り注いできたら、それは間違いなく爆炎頑駄無率いる爆火隊の仕業だ。
 彼は歴代大将軍が用いた大目牙砲(オメガキャノン)を分析し、量産化に成功した巨大な連射式大砲
「爆炎粉砕砲」を支えるパワーと、その発射時の反動に耐えうる装甲を持たされた、
まさにこの大砲を運用するためだけに生み出された鉄機武者である。
 その実直な性格は信頼が篤く、自身の量産型を率いて「爆火隊」を組織し、火力支援を担っている。
 日本に来てからは頑駄無軍団の戦力不足を補うため、シャチョーに自身の設計データを提供して
新生爆火隊を誕生させ、来るべき堕悪闇軍団との本格的な決戦に備えている。


======
今回は以上です。
相も変わらず長々とお待たせして申し訳ありませんでした。
今回、出番がなかった彼らに関しては次回でクローズアップしたいと思います。
それでは。

409 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 18:07:15 ID:22tlHmqV
投下祭りも三日目に突入じゃァァァァ!支援

410 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 18:16:20 ID:22tlHmqV
GJでした!
相変わらずこのユーノとクロノはいいコンビというか自重しろというかw

411 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 19:45:25 ID:zbIRwSOu
GJっす。
ついにプレシア登場。次回も楽しみにしてます。

412 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 19:58:57 ID:iM1LlziA
クロノとユーノの掛け合いは見ていて和みます
今回は特に管理局サイドから見た頑駄無の危険性、彼らの人間性を知らないクロノの危惧、友人であるなのはたちにとって頑駄無たち
と、それぞれ明確な違いを打ち出して、その上で互いに否定しない上手い話の流れを作っていたと思います

413 :Strikers May Cry:2008/07/03(木) 20:30:02 ID:FP6CsIiU
今空いてるようですので、投下します。

トライガンとのクロスで、長編(?)の第一話です。

414 :リリカル・ニコラス:2008/07/03(木) 20:31:08 ID:FP6CsIiU
リリカル・ニコラス 第一話「牧師と騎士」


青い空と白い雲、そして異形の方舟の下、彼が最後に聞いたのは遠雷に似た響き。

それが自立型プラント同士の力の拮抗が生み出した轟音だったというのを理解する事は出来なかった。
何故なら彼は死んでいたから。

その身に受けた数多の銃創、過剰に投与された代謝促進剤の影響、その他あらゆる外傷が彼の生命を絶った。
だが運命の神は気まぐれで悪戯好きである。
プラント同士のこの衝突で生じた凄まじいエネルギー、これによっていかなる奇跡か悪夢か、空間は軋みを上げて裂けた。
彼のすぐ隣に座っていた自立型プラントの青年は空間の生じた時空の裂け目に目を奪われる。
そしてその刹那、最後の寝床となったソファに座る彼の骸は彼の得物である罪深き鉄火の十字架と共に宙に刻まれた暗き裂け目に消えた。

プラントの青年は暗き淵に消える朋友の骸に手を伸ばして虚しく叫んだ、彼のその名前を。


「ウルフウッドォォ!!!」


血と硝煙にまみれた歪な聖職者はそうして次元の狭間に消えた。
朋友、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの叫びと共に。





その日は恐いくらいに月と星がよく見える夜だった。
どこまでも澄んだ空、星月の眩い光の下、夜の冷気に白く染まった吐息が映える。
女性はその豊かなブロンドの髪を揺らして月夜の散歩をしていた。
それは彼女の数少ない趣味であり、ここ最近の日課でもある。
仕事柄、教会から離れる事の少ない彼女にとって夜の帳の下りた中を気まぐれに歩くのは密かな楽しみであった。

そして女性は天に照る数多の星と眩い二つの月に見惚れて思わず口を開いた。


「綺麗ね……こういう日はなにか良い事がありそうだわ…」


教会騎士カリム・グラシアは空の芸術にそう感嘆した。
夜の冷気に冷えて真っ白に染まった彼女の吐息が季節を感じさせる。
カリムは天の絶景に見惚れながら気ままな夜の散歩を楽しむ、そこにはいつもと変わらぬ緩やかな時間が流れた。
だがその中にいつもと違う相違点があった。

それは匂い、それも凄まじい異臭。
まるで腑分けられた臓腑のような血生臭い臭気、濃密な血の香り。そしてその中に溶けた鼻を付く硝煙の芳香。
夜の冷気の中に漂う異臭にカリムは眉をひそめた。


(なにかしらこの匂い……いったいどこから?)


心中でそう疑問を浮かべながらカリムは匂いを辿って足を進めた。
夜闇の中でも強烈な臭気を辿れば捜索はそれほど難儀しない、程なく辿り着いた場所にあった臭気の根源は人の形を成したものだった。

カリムが辿り着けば、そこには傍らに歪な鉄の十字架を持ち黒衣を纏った男が草むらの中に横たわっていた。
月光の下でも明らかに分かるほど、男の身体は夥しい流血に赤く濡れている。
凄惨なその姿に、冷えた夜気とは違う寒気がカリムの背筋を駆け抜けた。


415 :リリカル・ニコラス:2008/07/03(木) 20:33:08 ID:FP6CsIiU
一瞬呼吸すら忘れてカリムは立ちすくむが、即座に思考を冷静なそれに戻して男に駆け寄る。


「あなた、大丈夫ですか!?」


声を荒げながらも慎重に抱き起こした男の身体は温かかった。
だが生命の脈動、心臓の鼓動は感じられない。当たり前だ、既に男の命は事切れているのだから。
しかし、彼の容態をある程度察しながらもカリムは諦めようとは思わなかった。
即座に念話を展開し、自分の秘書である修道女へと繋げる。


『シャッハ!!』
『へっ? 騎士カリム? どうかなさったんですか?』
『人が倒れています、すぐに病院に連絡を! 大至急です!!』
『わ、わかりました!』


簡潔に念話を切り上げると、カリムは男に向き直った。
心停止状態で放置し続ければ確実に蘇生は不可能になる。最悪、蘇生に成功しても脳に異常などが出てしまいかねない。
彼女は昔聞いた方法を思い出しながら、即座に蘇生措置を開始した。
頭を後ろに傾け気道を確保し、胸骨下端部に手を当て心臓に狙いを定める。
集中する時間は一秒、その時間で手の先端に溜まった魔力を男の体内に流し込んだ。
ドスン、という音を立てて男の身体が跳ね上がる。魔力の衝撃に男の四肢の筋肉が収縮したのだろう。
だがそれでも彼に心の臓腑は動かない。
カリムは額に嫌な汗を流し、神に祈りながらもう一度手の平に魔力を集める。
今度はさっきよりも大量の魔力を集め、再び彼の身体に触れた。


「神よ…」


小さくそう祈りの言葉を呟き、再度魔力の放出が男の身体を流れた。
今度は先ほどよりも強く男の四肢が跳ねる。
そして…


「がはっ!!」


男の口から固まりかけた血の泡が吐き散らされる。
今までの比でない凄まじい血の匂いが周囲に漂うが、そんな事を気にかける暇はなかった。
息を吹き返してもなお、男の呼吸は再び止まりかける。


「そんなっ! 死なないでください!!」


そう悲痛に叫ぶが彼は答えられない。
苦悶の表情をしながらもカリムは弱まる心臓に刺激を送り続け、ついで彼の顔に手を当てると迷う事無く唇を重ね合わせて息を吹き込んだ。
濃い血の味を味わいながら目一杯息を吹き込む。
男の呼吸はそれで少なくともある程度は回復した。

そうしてカリムが汗だくになりながら蘇生を続けていると、空からヘリのローター音が響いてきた。
救急救命のヘリが到着すると、男は速やかに医療施設に運ばれる。



416 :リリカル・ニコラス:2008/07/03(木) 20:34:20 ID:FP6CsIiU
後には彼が持っていた歪な鉄の十字架だけが残された。





彼が目を覚まして最初に見たのは真っ白な天井。
全身に鈍く響き渡る苦痛を感じながら瞬きして視界を確認し周囲を見回す。
白いカーテンを透かして窓から部屋の中を満たす陽光が目に痛い。
死の淵を彷徨った思考はまどろみの中でゆるやかに再起動を果たしていく。
そして彼は静かに口を開いた。


「なんや……地獄にしては…随分綺麗やなぁ…」


間の抜けた声でそう言うと男は目蓋を閉じてもう一度眠りの世界に落ちようとした。
あの時の自分の状況から生き延びるのはどう考えても絶望的だった。自然、彼は自分自身が既に死んでいるものだと考える。
そして思う、ならばここは地獄だ、血の斑道を歩み続けた自分が上の方に逝ける筈が無い。
いやあってはならないのだ、故にここは穏やかな地獄の入り口だと覚醒寸前の鈍い彼の思慮は思い至る。
そして、そう考えたら後はもうどうでも良くなった。今はただもう一度、泥のように寝むりたかった。
疲労と苦痛が限界だったのだから無理も無い、だが運命は残酷で彼にしばしの安らぎを与える気は無いらしい。
彼が目を閉じようとした刹那、ドアが開け放たれた。


「えっと……まだ眠ってらっしゃるのかしら?」


澄んだ声と共に輝く金髪をなびかせた女性がそう呟きながら部屋に踏み入る。
女性は部屋に入ると手探りで電灯のスイッチを押し、病室を人工の光で満たす。
唐突に目を指す眩い白光に男は顔をしかめて手で顔を覆う、死神のキスから逃れたばかりの目覚めにこれは少しきつい。
思わずしゃがれた声を上げた。


「ああ……眩しすぎや…目ぇ溶けてまうで」


喉から零れたその言葉に女性は思わず男に駆け寄り、マシンガンの如く彼に言葉を撒き散らした。


「目が覚めたんですか!? ケガの具合はどうですか!? 痛くないですか!? 気分はどうですか!?」
「…ちょい落ち着いてくれや……ってか、なんやねんもう…地獄に仏やのうて姉ちゃんかいな…」
「ああ…すいません……つい…」


男はもういい加減にしてくれ、とでも言いたげな口調で女性を諌めた。
彼のその言葉に、女性は落ち着きを取り戻して一つ息を吐いて呼吸を整える。
そんな彼女の様子に男は思わず苦笑した。


「しっかし、ホンマ……地獄にしては随分VIP待遇やなぁ…」
「あ…あの、なにが地獄なんですか?」
「ん? なんや……ワイ死んだんやないのんか?」


男のその言葉に、女性は顔を真っ赤にして反論した。

417 :リリカル・ニコラス:2008/07/03(木) 20:35:05 ID:FP6CsIiU
せっかく必死になって助けたというのに死んだ気でいられては、たまったものではない。


「し、死んでなんかいませんっ! ちゃんと生きてます!!」


男は彼女の剣幕に一瞬ポカンとする。
一瞬の沈黙、男は冷静な思考を徐々に取り戻し状況を確認した。
自分は生きている、あの死の淵から生還したという実感が胸に沸いてきた。
静寂、彼はただ黙って感慨深げに瞑目する。


(そうか…ワイ、生きとんのやな……リヴィオ、トンガリ…なんやまた会えそうや…)


脳裏を過ぎるは共に死線を潜り抜けた朋友、そして踏み外した道から連れ戻った弟分達の事。
生き残ることができ、また彼らに会うことが叶うと思えば、柄にも無く胸が熱くなった。
そんな彼に女性がふと声を掛けた。


「あの、そういえば自己紹介が遅れましたね。私は聖王教会騎士のカリム・グラシアです」
「ワイはニコラスや、ニコラス・D・ウルフウッドっちゅうねん。よろしゅうな」


カリムは笑顔でそう言うと、ウルフウッドに一歩近づいて手をさし伸ばした。
ウルフウッドは軋む身体をやや起こして迷う事無くその手を握る、軽く握手を交わして彼もまた笑顔で答えた。

牧師と騎士、奇妙な運命に導かれた二人はこうして出会った。


続く。


418 :Strikers May Cry:2008/07/03(木) 20:37:56 ID:FP6CsIiU
投下終了です。

ここ最近投下が賑わっているようなので、書き溜めていた長編予定の第一話を投下しました。
ウルフウッドがミッドに来るお話、まだ未定だけどバトル展開はできるだけ少なめなSSにしたいと思っています。

419 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 20:46:54 ID:x5EAjKxj
GJ
ウルフウッドメインは嬉しいですな。
トライガンでは一番好きなキャラです。
ラズロ戦後なら戦わせたくはないのでバトルが少ないのもいいかも
続きを楽しみにしてます

420 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/07/03(木) 21:26:30 ID:kXRSHFdd
Strikers May Crys氏、投下乙です
原作終了後のウルフウッドですか・・・身体ボロボロ?
彼の最後は余りにも壮絶でしたからね
カリムやシャッハは、パニッシャーのケタ外れの威力を見てどう思うんだろうか、実に楽しみです

そして皆さん、お待たせしました
R-TYPE Λ 第15話、やっと書き上がりです
1ヶ月以上もお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした
では、10時に投下を予約させていただきます
今回はギン姉となのはさんのターンです

421 :R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2008/07/03(木) 21:31:16 ID:kXRSHFdd
済みません、容量が不足な為、次スレでの投下に回します
本当に申し訳ありません

422 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 21:37:52 ID:S9anLwU9
キター!と思ったら容量が!

423 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 21:38:41 ID:4zKl7hT+
なに!?40kb以上とな!?


424 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 21:39:12 ID:DHNYrUO4
じゃあ立てて来るよ?いいよね?

425 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 21:39:53 ID:S9anLwU9
次スレどうしよ。今456kbだけど、他に投下する人いないなら立てちゃう?

426 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 21:45:53 ID:iM1LlziA
次スレ立てても、普通にこっちを使えばいいじゃん
別に新スレにしか投下しちゃいけないわけじゃあるまいし

427 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 21:46:55 ID:d2SHa6UW
どうせなら短編投下してもいいですか?


428 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 21:47:12 ID:DHNYrUO4
じゃあ立ててきます

429 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 21:48:57 ID:4zKl7hT+
OK、きなさいきなさい>短編

430 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 21:49:48 ID:DHNYrUO4
と思ったけど>>427の短編投下されてからでもいいですかね?
>新スレ

431 :なのは×DDD ◆EHFosUmvec :2008/07/03(木) 21:51:24 ID:d2SHa6UW
駄文ですいませんが
「あなたは……なんで生きていられるの?」
 夜突然話を聞かれたブロンド美女にそんなことを言われた。
 理由はまあ自分の体質昼のことを夜になれば忘れてしまうということを話したからだが、そういや前に誰かに似たようなことを言われた覚えが…
 (だって―――アンタが一番、イカレてるよ)
 誰だったか、多分昼間に言われたことだろうしそんなことは厄介に決まっていると思い出さないようにした、それが俺石杖所在の生き方。
 「いやいや体質の事いってるなら慣れれば結構いいぜこれ、なんせ厄介なことを忘れられるんだから」
 
 「悪魔憑き……か、いまどきそんなオカルト……」
 八神はやては悩んでいた、この前六課で捕まえた男がうわ言のように言っていたコトバ
 (あれは悪魔に憑かれてんだじゃなきゃじャナキゃジャナキャあんなことできるわけが無い!!!)
 「シグナムどう思う?なんの魔力反応もでていないのにいつの間にか自分の感覚を無くされていて気づいたら殺されかけてるって」
 男を捕らえたのは全くの偶然だった、男を捕らえようと追っていたらはやて自身が出身の第97管理外世界に逃げ込み必死で探していたら死に掛けの状態だったとのことだ。
 男が言うには町でぶつかった少女に触れられたら感覚が無くなったらしい、そして気がついたときには自身が死にかけだったらしい、その時男は。
 (おじさんもジユウに生きられるようにしてあげる)
 と言われたらしい。
 「そうですね感覚を無くすと言うこと自体がありえないと思います、そんな魔法我々ヴォルケンリッターも知りません」
 「うーんやっぱそんな魔法存在せんよなあ…一応無限書庫のほうにも問い合わせて見たんやがそんなフザケタもんは存在しないと怒られたわ」
 感覚を無くす魔法は存在しない、ではあの男のコトバは一体なんなのか。
 「一応フェイトちゃんに斥候させてるけど大丈夫やろか……」
 
 

432 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 21:51:33 ID:S9anLwU9
>>430
いいんじゃね。

433 :なのは×DDD ◆EHFosUmvec :2008/07/03(木) 21:52:54 ID:d2SHa6UW
C県支倉市で流行始めたあらたな事件
 
 「へえ、お客さんとは珍しいようこそこの地下室へ、それでこんなとこへ来ると言うことは悪魔憑きに関することですか?」
 「……あ、はい私高町なのはって言います」
 地下室の悪魔の元へ尋ねに来た高町なのは
 
 「それで所在事件のことはどうだ?」
 「事件て?マトさん俺になんか言ってたっけ?」
 「ちっ、言ったのは昼だったかまあいい忘れてるならもう一度言うぞ、最近噂になってる感覚を消す通り魔について調べろアレは多分悪魔憑きだ」
 石杖アリカにふりかかる新たな悪魔憑きに関する事件
 
 「馬鹿な確実に殺したはずだ、なぜ死なない」
 「いやね簡単なことデスよ、要するにスピードさ、常に最悪を想定しいつでも体をノってる状態にすればいい、
オレのような凡人は最初から怪物に最高速が負けているだからこそ自身の最高速度を怪物のスタート直後のスピードにぶつける、
そうすれば相手が怪物でもそれなりな勝負になるでショウ?」
 「なっ!そんなことができるわけがない常に最悪を考えるなど正気の沙汰ではない……お前は何者だ?」
 「フッよくぞきいてくれマシタ、我は火の神……そのあれだフォウマルハウト……揺り篭ってことなんだが、
あーだめだぜんぜんきまんねー!つーか恥ずかしい、なんか凄い恥ずかしいですよ先生!」
 シグナムが遭遇した最速の揺り篭
 
 「ああ、とりあえうずそこの白髪片手の男をこちらへ渡してくれませんか、あなたたちはその後で殺しますんで」
 「いきなりあらわれ殺すか……お前何もんだ?」
 「私?私はそこのしんそこ嫌そうな顔をしているのの妹、石杖カナタです」
 全ての出会いは1つのアクマツキ……10年前に繋がる……
 
 魔法少女リリカルなのはDeath Decoration Dance

434 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 21:53:39 ID:S9anLwU9
しえん

435 :なのは×DDD ◆EHFosUmvec :2008/07/03(木) 21:54:06 ID:d2SHa6UW
以上ですなんか一部長くて書き込めなかったので速攻で改行したのがおかしくなってますが
まあもとから駄文なんであまりきにしないでください

436 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 21:56:10 ID:S9anLwU9
GJ!
悪魔つきと聞いてデモンパラサイトが思い浮かんじまったwww
DDDとはまた乙な選択だw

437 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 22:04:32 ID:DHNYrUO4
投下乙です
じゃあ新スレ立ててきます

438 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 22:06:37 ID:S9anLwU9
>>437


439 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 22:10:52 ID:DHNYrUO4
新スレデキタヨー
ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1215090521/

440 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/03(木) 22:13:23 ID:XnKCMKto
>>439


埋めるにしても微妙に容量があるな
小ネタ1〜2個ぐらいは余裕そうだ

441 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/04(金) 11:06:06 ID:oqOFYD8L
>>リリカル・ニコラス
GJです、ただ読んだ後にトライガン マキシマムを読み返したんですが、
ネタばれになりますけどこの場合リヴィオに最終戦時に
回復薬みたいのが渡されず死亡フラグ立っちまったような気がするんですが。

442 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/07/04(金) 18:24:02 ID:ENtmGgAu
これよりクラナガンシュピーゲルの投下を開始しますー。
支援お願いします。

今回は戦闘メインです。

443 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/04(金) 18:27:46 ID:ENtmGgAu
クラナガン・シュピーゲル「少女と少年 その3」

召喚蟲による首都での小規模テロから数日、機動六課の実戦部隊は、地上本部前で各々警備任務についていた。
公開意見陳述会当日、会場の警備に、機動六課が駆りだされることになったのは、実のところ<海>の事情というやつが関係している。
公開意見陳述会というのは、時空管理局の統括する主要な次元世界での地上の軍備の運用方針を発表/協議/可決するものであり、
その動向は今後数年の地上の治安に関ることから、各次元世界にリアルタイムで中継される。
今回、幾つものテロ組織からの襲撃予告があったが、マスターサーバー<轟>と<特甲>を戦力に持ち、軍用転送兵器の配備も計画に入れている地上本部は、
『会場の安全』を強調。
テロに屈しない地上をアピール/弱腰なミッドチルダ政府高官との対比で、地上の民衆からの人気は鰻上り。
レジアス中将の台詞――『もはや、地上の治安はテロに脅かされることはないっ!』。
公開意見陳述会の趣旨――『質量兵器の限定的運用による治安向上策について』。

いずれも、魔導技術=本局管理下の戦力による次元世界統治を掲げる、本局上層部にとっては面白いことではない。
そもそもマスターサーバーや転送システム、特甲児童は<海>の管理下だった技術なのだが、地上恭順派の局員の手で地上本部に配備されたという経緯もあり、
今現在<陸>と<海>はもっとも険悪な空気になっていた。
本局としては、<海>の影響力を会場で示さねばならない、というわけだった。

そこで白羽の矢が立ったのが、エース級魔導師の集まった新設部隊機動六課である。
本局の意向に従う人間が大半の魔導師部隊で、なおかつ美人が多い、歩く広報のような存在。
部隊の中核は悲劇の『闇の書事件』の生還者にしてSSランク魔導師『八神はやて』/才色兼備の指揮官候補生。
その他の人材も、一流の実力と美貌を兼ね備えた若い女性であり、魔導師の力を示すには最高の素材といえた。
そんな大人の事情に疲れ果てた女が一人――部隊長八神はやてである。
溜息をつく/冷めた割合美味い珈琲をすする/幽鬼の如き表情。つまりは、部隊の配置などの仕事で徹夜した後。
地上本部の食堂で、危ない目でぶつぶつ何事かを呟きながら遅い朝食。

「あー、もう駄目やぁ。かなり死ねるで、ほんま」

「おうおう、どうした八神二佐。指揮担当がそんなことでどうするんだ?」

精悍そうな男の声/壮年に差し掛かった初老の顔/陸士108部隊部隊章。
無駄な脂肪を削ぎ落とした老犬の風情/知性の宿る瞳が、その手腕を想像させる。
地上本部三佐『ゲンヤ・ナカジマ』=スバルとギンガの父/妻を若い頃に亡くした独身者。
醜態を見せていたはやてが一瞬で背筋を伸ばし、敬礼した。

「ナ、ナカジマ三佐! お久しぶりですっ!」

「今はお前さんが階級上なんだ、かしこまらなくていいさ、二佐。指揮はいいのか?」

はやては目を宙に泳がせ、唸りながら返答/まるで死に掛けの両生類。

「い、いやぁ……私は陳述会に出ないといけませんし、指揮はグリフィス君に任してあります。
私より優秀なくらいですよ、ほんまグリフィス君は」

「ああ、レティ提督のご子息か……副官が提督の息子とは、コネはしっかり作っているようで何よりだ、八神。
俺は会場警備に回されたからな、ひょっとしたらテロ屋どもとの戦闘で六課の世話になるかもしれん。そのときはよろしく頼む」

惚れ惚れとするような男らしい笑み/師匠から頼られているという実感が、はやての身体を満たす。
白いものが混じり始めた髪が、またいい。

(と、あかんあかん。ゲンヤさんはいい男やけど、恋愛対象とはちゃうよなぁ……)

栗色の髪を揺らしながら、はやては返答/弟子として恥ずかしくない振る舞い。
ブラウンの制服の胸元を押さえながら、堂々と言った。

「任せといてください。私達の六課は、テロなんかに負けませんっ!」

444 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/04(金) 18:28:55 ID:ENtmGgAu
渋い笑みを浮かべて、「頼りにしてるぞ、八神」と言うなり席を立ち、副官のラッド・カルタスのもとへ歩み寄るゲンヤ。
その後姿を見送りながら、はやては食堂を見渡し、部下を発見した。
新米魔導師のスバルとティアナのコンビだ。何事かを話しているらしい/聞き耳を立てるべく、はやては二人へ接近した。

「――スバル。ねえ、スバル」

ティアナの声に、ぼんやりと目を向ける/齧りかけのパンが口の端からはみ出ている。

「ろうしたの?」

「口にもの入れたまま喋るなバカスバル」

言いつつ指でパンの切れ端を口の中に押し込む。
もぐもぐもぐもぐ、ごくん/規則正しい咀嚼の後、再び夢見る乙女モードへ。
スバル――数日前からこの調子で、白昼夢モード=数日前の夜の少年との思い出の海を漂う。
最初の歌を終えた後の過ごし方――月光の下、互いに心行くまで歌い、弾き続けた。
ベルカ聖教歌、流行の曲、映画音楽。全てを白露が演奏/録音した。
それからカフェテラスに寄り食事をし、にっこり微笑みあって別れた/キスしたことなど無かったかのように。
でも、唇にはっきりと残る感触――ぬくもりと柔らかな感触/思い出すだけでふわふわした気分になり、顔が綻ぶ。

「あはは」

「あー、もう何なのよ、ここ最近のアンタは。少しはシャキッとしなさいシャキッと。もしかして、何か白露さんとあったの?」

そう言いながら、パンにスクランブルエッグとハムを挟み、簡単なサンドイッチを作ってナプキンで包み手渡す。

「ちゃんと食べなさいよ。アンタがミスるとあたしが迷惑被るんだからね?」

怒ったような口調で言うなり、立ち上がって配置を端末で確認し始めるティアナ=フォワードリーダーの責任感溢れる行動。
スバル――指で唇をなぞる/陶酔したような表情。
何を言われてるかわかってませんという感じで頷く。

「アンタ、わかってないでしょ?」

溜息をつきながら歩き出すティアナ/後生大事そうにサンドイッチを持ってその後を歩むスバル。
ティアナとしては、ヴァイスと顔を合わせるのは避けたかった。彼は人員を地上本部まで移送した後六課に帰る筈なので、
あと数十分を乗り切れば顔を合わせずに済むわけだ。
あの日の夕食で、少し格好いいと思ってしまったからか、あれ以来ちょっとしたことで顔が赤くなる。
なんだかもう勘弁してください、と言いたくなるようなむず痒さと、ちょっと夢見るような乙女の自分の衝突。

(あー、もう、こんなことで動揺してどうするのよ、あたしっ!)

曲がり角を出た瞬間、ヴァイスの顔があった。
陽気な声――ヘリパイロットのムードメーカー的存在感の本領発揮。

「よう、朝食食ったか二人とも。ティアナ、この前の夕食のときはどうもな――」

顔が何故か赤くなりかける/わけもわからず喚いていた。

「え、えーと、仕事があるので失礼しますっ! あの、また後で」

「お、おお……」

ヴァイス――唖然とした顔で見送る/ティアナの後を追うぼーっとしたままのスバルを目で追う。
そして、にやけた顔の八神部隊長を見て、「どうしたんすかね?」と呟いた。
はやて――にやにやしながらからかう。

「あんまり女の子やきもきさせちゃあかんよ、ヴァイス君」


445 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/04(金) 18:29:41 ID:ENtmGgAu
「なんですか、そりゃ?」

「わからへんならええんやけどね……ま、ティアナも女の子やし、な」

ふうむ、と腕を組んで考え込むヴァイス――意外と鈍感らしい。
これは面白くなってきたと思いながら、はやてが口を開きかけたとき、放送が鳴った。

『間もなく、公開意見陳述会が始まります。関係者の皆様は、すぐに会場まで――』

はやてが、どたばたと慌ただしく駆け出しながらヴァイスに別れを告げた。
ブラウンの制服の裾が翻り、白い肌が見て取れた。

「あ、あかん。はよう行かな! それじゃまた後でな、ヴァイス君っ!!」

「あ、はい」

なんとも色っぽい部隊長の生脚を眺めつつ、ヴァイスはそろそろ帰るかとヘリの発着場まで歩いていくことにした。
アルトや整備班の面子が、最新型ヘリの帰りを待っていることだろうと思いながら、一歩、踏み出し。

――爆音が響いた。


地上本部中央タワー高層部――ここに、<陸>を統括する初老の男『レジアス・ゲイズ』中将の執務室が在った。
肥満体に見える脂肪と筋肉のついた巨躯は、将校服ではち切れんばかりである。
四角く、厳つい彼の顔が、気難しげに演説の文面を読んでいた。
その脇には眼鏡をかけた彼の一人娘『オーリス・ゲイズ』が立ち、秘書として書類を読み上げている。
彼女の金髪が揺れ、時間を告げた。

「中将、そろそろ陳述会のお時間です。移動を」

「うむ……ところでオーリス、その前に警備に参加している機動六課の名簿を、『彼ら』に渡し終えたか?」

オーリス――眉根を寄せてひどく思いつめた表情/機械的な硬質さが抜け、父の身を案じる娘の顔に。

「お父さん……。特甲猟兵は、私達には過ぎたる力のような気がしてならないの。今なら、引き返せる」

バイオリンの音色が、やわらかに響いた。
優しい旋律の曲だった――にも関らず、とてつもなく冷え冷えとした音色/少年の心の虚無を体現したようなそれが、執務室に不気味に響き渡った。
銀のかかった金髪/まどろむように半ば閉じられた碧眼/桃色の薄い唇/滑らかな頬と首筋。
今は時空管理局の制服を着た少年が、バイオリンと弓を手に、何時の間にかレジアスの前に立っていた。

「白露か……どうした?」

レジアスの落ち着き払った声/少しも動じない地上の守護神。
白露――白皙の顔に微笑を浮かべ、呟いた。

「名簿に知ってる子がいたんだ。いい歌を歌う子で……」

虚無が顔を覗かせる/非人間的な何か/全てを食らう、飢餓にも似た空洞。
心に虚無を飼う者の顎(あぎと)。

「……あの子の中に、僕がいる――とっても食べたいんだ、今」

446 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/04(金) 18:30:52 ID:ENtmGgAu
爆発音は、地上本部正面ゲートに撃ち込まれたロケット砲から始まった。
ガスを噴射しながら加速する弾頭――対戦車ロケットを、陸士部隊の迎撃の魔力弾が撃ち落す。
爆音/火球が空中に生まれる。
走行するトラックのタイヤを撃ち抜く狙撃班/横転する車両/中から這い出してきた武装テロリスト十数名を、正確無比な射撃が無力化。
殺傷設定の純粋凝固魔力を頭部にぶち込まれ、脳漿を撒き散らして即死する。
這い出した先から死亡、死亡、死亡/苛烈な対テロ戦に、配置されていた機動六課のメンバー、ヴィータが抗議の声をあげた。
赤毛を可愛らしく纏めた女の子/赤い舞踏服のような騎士甲冑/手に持った巨大なハンマー『グラーフアイゼン』。
見た目とは裏腹に、歴戦の勇士である彼女だが、ここ数年は非殺傷を貫いてきた。
それを目の前で突き崩され、彼女はらしくもなく動揺した。

「て、手前ら! いきなり射殺なんて……」

陸士97部隊隊長――無表情/装甲車に囲まれた通信車両から端末を操作/指揮を出す。

「よくやった、狙撃班。連中は見つけ次第殺せ。生かして帰すな」

冷たい目でヴィータを見下ろす副長/槍のデバイスを片手に、何処までも冷然と言い放つ。
常識を話すときの、子供をあやすような口調。

「誰かが死んでからでは遅い。我々は殺意には殺人をもって返す――それが最良だと信じていますから」

「管理局の理念は――」

「その理念の為に死んだ同僚達は、結局なんら顧みられなかった。皆を護る為なら、この程度の汚れなど」

言い返そうとしたとき、念話が脳裏に響き渡った。
ヴォルケンリッターの将、シグナムからのものだ。

(落ち着け、ヴィータ。彼らの言い分も一理ある)

(シグナムッッ! こんなやり方――はやてもよろこばねえ!)

苦い記憶――かつて奪ってきた無数の命。それを目の前で繰り返されているようで、胸糞が悪かった。
突然、シグナムが悪戯っぽく微笑むのが感じられた。

(――なら、この戦場を我々の流儀で制圧するまでだ。指揮権は独立しているからな)

ピンと来た。
ヴィータは獰猛に笑い、ハンマーを片手に前線へ飛び出し、大声で喚いた。
周りからの制止を跳ね除け、叫んだ/声の限りに。

「かかって来やがれェ、馬鹿野郎ども!! あたしがヴォルケンリッター、ヴィータだっっ!!
キン○マついてるやつは出て来いよ、まとめてぶっ飛ばしてやるっっっ!!!」

ぞろぞろ旧式の装甲車から突き出す銃口/ライフル銃が一斉に火を噴いた。
テロリストの怒声。

「ぶっ殺せぇぇぇ!!」

「ヴォルケンリッターの餓鬼だっ!! やりゃあハクがつくぜ」

ベルカ系過激派組織の男達=ぎらついた瞳で銃火を撃ち出す――人体を一撃で粉砕する破壊の嵐。
分厚い半球状の魔力障壁が全てを弾く/時速250キロメートル/戦闘ヘリ並みの速度で加速して飛行。
魔力を纏ったハンマーヘッドの一撃が、装甲車両前面の傾斜装甲を凹ませる/吹き飛ばす。
宙を舞う装甲車――ゴミのように零れ落ちるテロリスト/轟音とともにアスファルトを叩き割って着地/ひしゃげた装甲板。

「うりゃああああああっっ!! どうしたぁ、まだあたしは生きてるぞぉ!!」

戦慄――テロリストたちが震えあがる圧倒的力の差。


447 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/04(金) 18:31:36 ID:ENtmGgAu
そのとき、地面が割れた。アスファルトがひび割れ、装甲車両が自重で沈んでいく/わらわら逃げ出すテロリスト――狙撃班に速攻で制圧される。
地下水道に展開された召喚陣/湧き出す大型トラック並みの大きさの甲虫の群れ。
生理的嫌悪感をもよおす昆虫=ヴィータの顔が引きつる。
雷撃の嵐――生体発電機ともいえる化け物の体内発電器官が、高圧電流を放射する/強力な射撃の前に、魔力障壁を張って後退するヴィータ。
一瞬見えた少女=紫色の髪/深紅の瞳/漂白したような白い肌/漆黒の舞踏服的バリアジャケット/人形的に整った顔――無表情。
透過防壁を展開した昆虫人間『ガリュー』に抱えられ、下水の暗闇に消える――咄嗟に叫んだ。

「待てっ!!」

だが、人影は霞のように消え失せていた。
馬鹿げた大きさの召喚蟲の群れを前に、呟いた。

「冗談きついなぁ……虫は嫌いなんだけどよォ……」

そう言いつつ、獰猛な笑みを浮かべ、相棒に問いかけた。

「やれるかっ、アイゼン」

無言の返答=カートリッジを廃莢――スパイクと加速器のハンマーヘッドのギガントフォルムへ変形。
そうだよなぁ、と思いながら思いっきりハンマーを振り上げた。

「かかってこいっ!! ヴォルケンリッターの流儀を見せてやるっ!!」

「私もそうするとしよう」

声がした。シグナムのものだ。
桃色の髪をポニーテールに纏めた長身の女性が、長剣型デバイスを手に空中に佇んでいる。
意志の強そうな顔/大きな胸元/白と桜色の騎士甲冑。
魔力の火炎変換資質を持つ、ヴォルケンリッターのリーダー格。
長剣『レヴァンティン』の刃が火炎を纏い、ごう、と燃え上がった。

「では――」

『いくぞっっ!!』


炎が上がる=戦闘が開始された証――ティアナとスバルは地上本部の通路を走り抜けていた。
ティアナ――拳銃型デバイス『クロスミラージュ』を両手に構えながら、端末を操作し隊長陣と連絡を取る。
なのはが通信に出た――銃火を魔力障壁で弾きながら通話。

《ティアナ?! そっちの警備状態はどう》

「今現在急行しています。エリオとキャロが踏ん張ってるみたいですけど、長くは持ちません。至急増援を。
あたしたちだけじゃ――」

なのはが砲撃魔法を放つ――桜色の純粋魔力砲撃が、爆薬を満載した軽トラックを消し飛ばす。
顔を引きつらせて言う/苦しげな顔/止むことのない銃火が、状況を悪化させる。

《……増援は送れない。警備担当区域全てに、テロリストが侵入してる――》

「……了解しました。スバル、行くわよっ!!」

スバルの返答――マッハキャリバーを用いて駆け出す/ローラーの高速回転。
拳を握り締めて頷いた――力強く。

「うんっ!!」


448 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/04(金) 18:32:21 ID:ENtmGgAu
敷地内に侵入した銃撃を放つ装甲車の横に、窓を突き破り二階から着地――人間離れした跳躍力/魔導師の身体強化魔法。
衝撃音にぎょっとしているテロリストたちを尻目に、魔力を乗せた拳を振り上げる。
シューティングアーツの技――その名は。

「ナックルダスタァァァァ!!!」

筋力強化による一撃が、装甲車を横転させる=中のテロリストたちが軒並み這い出してくる。
ティアナの速射――オレンジ色の魔力弾が彼らを昏倒させ、即制圧。
フォワードリーダーのナイスフォロー/エリオとキャロに声をかけた。

「エリオ、キャロ、大丈夫?」

「あ、はい。ティアさん、ありがとうございます」

「礼ならいいわよ、あたしたち、仲間じゃない――ッ! 何を!!」

のろのろと男の一人が立ち上がり、拳銃を己の喉に突きつけた。
頭に巻かれたターバンがほどけ、道路に落ちた。
息を呑む/悲鳴。

男の頭――無毛/額の後ろ、つまり大脳全体が抉られたようにぽっかりと消失している。
人工皮膚で傷を覆った脳の無い人間が宙を仰ぎ、哀切の表情で、ベルカ語で聖王に向け祈りを捧げた。

「どうか――我らに救いを、天におわす聖王よ!!」

「止めなさいっ!」

銃声――喉に9ミリパラベラム弾の穴を開けた人間が、延髄を破壊され絶命。
背から倒れこんだその表情は、決意と安らぎが同居していた。

「どう……して。自殺なんかを!」


そして、鋼の鳥が目覚める――廃棄都市に眠っていたそれは、光学防壁を解除/幾何学的な模様とともに飛び立つ。
目覚め=自我の獲得。
私――鋼の身体/翼/質量兵器。
鋭い嘴(くちばし)/ダークグレーのボディ――対空ミサイルに耐える堅牢な装甲。
無人の操縦席に満ちる意志――エンジンと燃料、精密機器、モーターの回転――それが、我が身体。
己の脳を捧げた=犠脳――魔力適正無き者が、破壊の王となる瞬間。カプセルに入った髄液と脳/接続コード。
唸りをあげてギロチン刃のような回転翼が動き出し、重力から解き放たれる。
粉塵を巻き上げつつ、二つの人影を乗せながら機動。
光学カメラで都市を見る――なんと矮小で、醜いことか。
飛翔――歓喜とともに/もう誰も我が翼を止められぬ。

最初にそれを見つけたのは、スバルだった――空中に浮かぶ微細な点=航空機。
人より良い視力が、役に立った。

「ティア!!」

急速接近――馬鹿げた機動性/最新型高速ヘリに肉薄する性能。
ローター音と空中から降り注ぐ光の雨――エネルギー兵器による広域制圧射撃。
大型戦術ヘリに乗った少女=中性的容姿の少年のようなあどけない顔つき。
ショートカットの茶髪を揺らし、青いボディスーツを着込んだそいつが、指先から無数の光線を放っている。
呟き――無感情な一言。

「IS<レイストーム>……僕の結界からは逃れられない」

スバルが呆然とそいつを見上げて呟いた。
その、非魔導技術で造られた人造の兵士を/己が同族を。


449 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/04(金) 18:33:50 ID:ENtmGgAu
「戦闘……機人? そんな――」

「僕は『オットー』。タイプゼロセカンド……ドクターの命令だ、捕まえさせてもらう」

そのとき、猛然と吼える飛竜の声――フリードリヒの戦意溢れるもの。
キャロの詠唱――グローブ型デバイス『ケリュケイオン』が光り、燐光が白銀の幼竜を覆った。

「竜魂召喚――お願い、フリードッッ!!」

力を解放=翼長十数メートルの竜が、両翼を羽ばたかせて主に答えた。
フリードリヒの真の姿――圧倒的な速度と火力を持つ白銀色の竜族。
その口から圧倒的熱量が吐かれ、ヘリを焼き尽くさんと数千度の炎が乱舞した。
戦闘ヘリの機敏な動作――無人の、操縦席が無い機体が、猛禽のように運動し炎の渦を避けた。
反撃――鋭い嘴=大口径ガトリング砲が火を噴く。フリードリヒの空戦機動――翼を用いて避ける/数千度の炎で弾丸の嵐を溶かしきる。
硬質な分厚い皮膚が弾丸を弾くが、その度に痛みが飛竜を襲った。
苦しげな叫びをあげながら、ヘリの死角――如何なる武装も装備できぬ上へ回り込む。
一瞬後には炎のブレスが、ローターを融かしてこの怪物を地上に叩き落す筈だと、白銀の竜は思った。

快音。

剣閃が煌き、フリードの硬質な皮膚を断ち割った。
絶叫があがる。

――ギィィィィィィィ

飛竜が痛みに歯を食い縛り、それを見た。
青いボディスーツ/豊麗な胸元/先ほどの戦闘機人オットーそっくりの整った顔/同じく栗色の髪。
両手に握られた光り輝く刃――エネルギーブレード。

「……ナンバーズの12番、『ディード』」

空中型戦闘機人――白兵戦による装甲目標の殲滅を設計コンセプトとした個体。
気づけば、装甲車に乗っていたテロリストたちが銃を向けていた。皆、脳が無い=大脳を機械に捧げた男達。
自らの心臓目掛けて。
スバルが叫んだ。

「やめろぉぉぉぉ!!」

銃声、銃声、銃声。
一斉に、絶命――そして、都市の地下で蠢く怪物たちが、その心臓に火を灯した。

――ワタシは、オレは、ワシは

――鋼と一体である

人体との融合によりマスターサーバーの電子的干渉に拮抗する兵器――犠脳体の群れが、起動した。
高町なのは/フェイト・T・ハラオウン/フォワードメンバーの前で、それらは唸りをあげた。
鋼鉄の魔物たちが、質量兵器の牙を剥き出しにして吼える。
地下水道を叩き割り/コンテナを突き破り/都市郊外の運河を横切り、一斉に鳴いた。
かつてミッドチルダの戦争で用いられた質量兵器が、人機融合の完成形として顕現。

そして、<戦争>が始まった。

450 :クラナガン・シュピーゲル ◆yZGDumU3WM :2008/07/04(金) 18:38:13 ID:ENtmGgAu
投下完了です。
クラナガンシュピーゲルは短期連載ですので、他の連載に支障が出ないよう早めに切り上げます。
というわけで、レベル3は次回に持越し/今回は犠脳体の登場回でした。

ではでは。

451 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/04(金) 18:55:06 ID:+I0I6xYU
GJ
支援が間に合わなくてすみません

いきなりのガチ殺し
許しを請わずに恨まれることを前提としてますね

452 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/04(金) 18:56:14 ID:WXvx35Bz
>リリカル・ニコラス
GJ!
遂に来たか、この男!
しかもあの伝説戦闘の後からとは、これまた良い選択w
他クロスで頑張ってる相棒同様に、お前も頑張れウルフウッド!

>シュピーゲル
これ、また期待できそうなクロスw
頑張って下さい!

453 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/04(金) 19:12:54 ID:zMuTAmz2
GJ!!です。
おぉ!なんか凄い兵器がw
肉体から機械に乗り換えて魔導師と互角に戦おうとするのか。

454 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/04(金) 22:29:33 ID:uO9lH8Gl
クロス元はよく分からんが、もっとやれw
魔法を破壊の力にしか使えない基地外どもに、目に物見せてくれ!

455 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/06(日) 03:22:39 ID:Me2a5D6Y
誰も埋めないなあ…。

456 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/06(日) 03:44:47 ID:jm9qX0uN
やるか!兄弟!


457 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/06(日) 08:32:29 ID:vpfXkT/z
やるんじゃないんかい!?

458 :一本腕 ◆NO4WSobGYg :2008/07/06(日) 12:58:28 ID:B8lmgIVk
埋め支援ついでにとって置いてあるプロットの一つを置いておきますね。

とりあえず2分後。1300より
そして「まだ」なんです。申し訳ない。そして作者様方応援しております、大好きです、LOVEです。
そして皆様大好きです。

459 :一本腕 ◆NO4WSobGYg :2008/07/06(日) 13:00:25 ID:B8lmgIVk


新暦79年――――聖王のゆりかご落着から3年後


「着装ーー! 面体着装ーー!!」
「面体着装良し!!」
「くっそう!! 火が弱まらねぇっ!!」「もっと水ぶっ掛けろ!! ありったけだッ!!」

火の粉の降りかかる中、白い耐火服に身を包んだ隊員たちが業火の轟音に己の声を掻き消されぬよう
怒号の如く声を張り上げ燃え盛る建物の中に飛び込み、或いは魔法で消火し、或いは放水で道を切り開く

首都クラナガン「ホテル・アグスタ」……。

周囲を森林に囲まれ美しい自然との共存を売りにした其処は
ホテルのどの一室からも自然に囲まれた雄大な森林を見渡す事ができる
各地からの観光で休日にはどの部屋も予約で一杯になるという大きなホテルである
劇場では毎日催し物が開かれ、吹き抜けのある大玄関ではゆったりとしたクラッシックが流れる
ビッフェからは湖と森林が一望でき、風に揺れる木のささやきを聞きながら優雅に食事を楽しむ事が出来る
だがかつてロストロギアオークションが行われた大きな劇場も、ガラス張りのビッフェも過去のもの

――ホテルは炎に包まれていた

ホテルの周りには多数の消防車両や消防機が駆けつけ放水を行っている
それをつい一時間前まではゆったりとした休暇を、観光を、安らぎを求めてやってきた客たちが
呆然と燃え盛るホテルを仰ぎ見ていた。 まるで目の前の事が現実ではなく夢のように……。
だがむせ返るような熱気と目の前に広がる炎、燃える森林は紛れも無く現実である事を突きつける

ホテル内部、炎に包まれた通路を数人の消防官がIFEXで内部から消火活動に及んでいた
IFEXとは水や消化薬剤、カートリッジに詰められた冷凍魔法弾を打ち込む事で消化を行う多用途消化弾発射機である
コレを用いて内部に侵入し、ホテルの置くに取り残された観光客を救出する手筈だったのだが
救出された救助者の証言によって奥深くに女の子が一人取り残されている事が判明

コレを救出すべく消防隊員が突入を試みるが―――
炎の壁となった通路は入る物を拒むかのように立ち塞がり
放水重片手に飛び込んだ消防隊員もなす術なく後退を余儀なくされた

部屋からから炎にに包まれた耐火服を纏った消防隊員が転がり出てきた
隊員達は慌ててそれに放水を浴びせ、隊長が鎮火して倒れる部下を抱き起こす…

「どうだ、……行けるか!?」

隊員は力なく首を振り

「――ダメです、これ以上前進は無理です! それにこのままだと他の隊員たちを危険に晒してしまいます!」
「だがまだ劇場には子供が取り残されているんだ、何か方法はないのか!?」

既にホテル全体を覆った火は轟々と燃え盛り、それはまるで何もできぬ人間達をあざ笑っているかのよう
人員は飛び火を防ぐ為の森林伐採に手を追われ、要救助者を救出に行こうにも炎の壁で遮られて突入を阻まれる
IFEXで対応できるものではないし冷凍弾は等の昔に使い切っている。
ホースもこの奥地までには届かず、これ以上の進行は無理だと言う結論に達っした

「あと一人だと言うのにあと一息だというのに……クソッ! なんとか、ならないのか!?」
消防突入部隊を指揮する隊長は隊長である以前に、消防員として助けに行きたい、なのに助けにいけない。
何も出来ない苛立ちを地面にぶつけた。 だがこれ以上ここに留まる事は隊員たちを危険に晒すだろう
燃え盛る炎は目の前どころか退路も遮断しようと囂々と燃え盛る

460 :一本腕 ◆NO4WSobGYg :2008/07/06(日) 13:01:27 ID:B8lmgIVk
「隊長……」
「――これ以上の救出活動は無理と判断……残念だが、我が部隊は撤収する!」
「しかし……!」
「恨まれるのは俺だけで良い、行くぞ……全員撤収準備」

断腸の思いでの決断、要救助者よりも部隊の仲間を取った
子の親からは確実に恨まれるだろうが部下の命を預かっている身として部下の命を考えなければならない
非情の選択だった

――――その時

「た、隊長! 特救です! 特救が到着しました!!」
「――っ! 特救!? 湾岸特別救助隊か!!」

その報告を受けたとき隊員らは此処が火災現場の真っ只中であると言うのにその報告色めきたった
湾岸特別救助隊とは災害担当局員憧れの銀色の制服を纏い、どんな災害現場でも臆することなく突入し
取り残された人々を助け出していくと言う一騎当千の部隊員
その一人一人の技量や魔力ランクも相当のもので、教導団にも匹敵するほどの実力の持ち主がごろごろと存在する救出専門部隊だ
報告を聞いた隊員達が色めき立つ

「そうか……よし、ならばこれより我が隊は出来うる限りこの場に留まり特救を支援する!
 ここで出来るだけ火勢を押さえておけば向こうも低リスクで突入する事ができるはずだ!」

「「「了解!!」」」

この士気なら暫くはここで踏みとどまる事が出来るだろう

「俺達消防隊も伊達じゃないという事を見せ付けてやれ!」

461 :一本腕 ◆NO4WSobGYg :2008/07/06(日) 13:03:15 ID:B8lmgIVk
「……誰かぁ! 誰か娘を!? 娘を助けてぇ!」


逃げ遅れた子供の母親の悲痛な叫びが響いた
だが誰もが呆然と見上げるしかない
懸命な消火活動も実を結ぶことなく火は轟々と燃え続ける
ホテルを焼き尽くし、溶けた硝子が炸裂し、黙々と黒煙が吐き出される
誰もが子供の生存を絶望視した、誰もが子供の死を想像した

「大丈夫です、必ず助け出しますから」

肩にかかる手、暖かさを感じ、母親が泣きはらした顔で見上げた
銀色の制服に身を纏い、肩までに短く切りそろえられた青い髪の女性は
目の前に燃え盛るホテルをじっと見据えている

その先ではまるで炎が壁のように立ち塞がって誰も立ち寄らす事を許そうとしないように轟々と燃えている。だが―――
翡翠色に輝く彼女の眼はその炎の壁の向こうで助けを求める子供を射抜いているようにも見える
強烈な意思が宿るその目を見て母親は言葉を失った、もしかしたら……助かるかもしれない、助けてくれるかもしれない。
いや、絶対に助けてくれると……思ってしまった
それが確かな物ではない己の希望的観測なものではなく、ただただそう感じたのだ。運命のような物を。

管理局員は炎に向かって歩き出す
彼女は振り向かぬままこう言った

「私が絶対に助け出しますから」
「え?」
「往くよ、マッハキャリバー」
『Standby Get Ready』

呼ぶは相棒の名、成るは魔導師、思いは此処に
炎の壁すら飛び越えて、立ち塞がる全てを打ち倒し
助けを求める手を掴み、絶対に助け出す! 助けてみせる!

「セットアップ!!」

閃光と共に女性の身を包む服が変化する
長ズボンと分厚いジャケットを身に纏い
長く白いリボンで括ったショートポニーを風に揺らし、白に青ではなく、銀色に青の耐火特化型バリアジャケットに身を包む
青いローラーブーツ型インテリジェンスデバイス「マッハキャリバー」が土煙を上げ
右腕のカートリッジ式アームドデバイス「リボルバーナックル」が火花を散らす


―――燃え盛る炎の中 助けを求める人々の手を握り

462 :一本腕 ◆NO4WSobGYg :2008/07/06(日) 13:07:13 ID:B8lmgIVk
炎に包まれる劇場の中で子供が一人舞台の中央で蹲っていた
客席は既に炎に撒かれ、出入り口は瓦礫で封鎖されている
ハンカチを口にあてて出来るだけ身を低くし其処にある空気を吸って這いながら進むと言うのが常識なのだが
まだ10才にも満たない子供が知っていてもそんな事を子の緊急時に出来るはずも無く、煙を吸い込んでしまい
炎の熱気と息苦しさで朦朧としたまま蹲っていた。 おかあさんと助けを求めながら。

手には誕生日に買ってもらった人形をぎゅっと握ったまま蹲っていた

「(きっと悪い事をしたばつが当たったんだ、ぼくがおかあさんをこまらせるようなことをしたから・・・ばつがあたったんだ)」

誰しも経験したであろう冒険心
未だ見ぬ何かに興味を持ち、制止を振り切り探検をして
その後に怒られるといった経験は無いだろうか
丁度この子もこの広いホテルに着き部屋に着いた後
この先に何があるのだろうかと、親の目を盗んで手に持った人形と共に冒険に出かけた

―――気が付けば、何時の間にか業火に包まれた劇場

こわいこわいこわい
こわいこわいこわいこわい
こわいこわいこわいこわいこわい
このままどうしちゃうのだろうか
もうおかあさんにあうことができないのだろうか

「おかあさん……ふぇ、ううう……おかあさーん!!!」

返事は返ってこない、顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃに濡らし助けを求める子の運命は儚い
それでも必死に声を上げて助けを求め続けた

ふと視界に布の切れ端が落ちてくるのを見て疑問と言い知れぬ恐怖が襲う
ばちんばちん、と何かが切れるような音がした
恐る恐る舞台の上を見上げると、真っ赤に燃えた緞帳が……その炎に照らされる照明機材がギイギイと音を立てて揺れていた

「あ――――――?」

ここにいてはあぶないここにいてはきけんだ
恐怖が体を刺し、必死に体を動かそうとしても声を上げすぎて恐怖に怯えた子供の体は麻痺したかのように動こうとしない
這ってでも必死に逃げようとする子の上で重さ100キロを超える大きな照明機材がグラグラと揺れ
弾ける様に機材を支えるワイヤーがブチ切れ、子供めがけて落下する!


―――絶望も希望も彼果てた人々の真たる希望となり

463 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/06(日) 13:09:15 ID:dAZN8dUH
支援

464 :一本腕 ◆NO4WSobGYg :2008/07/06(日) 13:10:31 ID:B8lmgIVk
こんな筈ではと反芻してそれを思う事はない、何故こうなったのかと後悔する事もまだわからない
恐怖、純然たる知らない物への恐怖。だが朧気ながらもこれから自分がとても痛い目にあうという事は自覚できた
死と言う概念を知らない故の恐怖、少なくとも無事ではすまない事を本能が警告している
思わず目を逸らして体を丸めた
当たったら痛いのだろうか、どれだけ痛いのだろうか、ぎゅっと目を瞑り迫り来る死。

照明機材は万有引力の法則の元、盛大な音を立てながら鉄塊の巨躯を舞台の上に叩き付けた
爆弾が破裂したかのような轟音が劇中に鳴り響き、少年はビクッと体を竦ませた、……だが


――――――痛く、ない?
落ちてきた照明は確実に子供を押しつぶす筈だった
だが痛みは無い、来るかも知れない痛みが来ない

「君が……シェルビ、ちゃんだね? だ、だ、いじょう、ぶ?」

声をかけられた、ふと見上げてみると女の人が燃える照明機材を受け止めていた
銀色の服に白いリボン、手甲を付けた女の人
明らかにその質量の倍近くあるそれを持ち上げるその人を見た
踝まで床に埋まり、ギチギチと体が軋むような音が聞こえる
女の人は体制を低くして両腕に力を込め

「――づう、ぅおおおおおおおおおおおっっ!!!」

重さ数百キロもある照明機材を放り投げた
照明機材は客席に向かって放物線を描きながら吹き飛び、観客席に落着した

女の人は床に埋まった足を引き抜き子供に面帯を付けさせ震える体を抱き起こす
すると先ほどのような真剣な顔ではなく、見惚れるような満面の笑みで…

「よ〜し間に合った、よく頑張ったね……もう大丈夫だよ、君ガッツあるよ」

「……あ」

震える左手で女の人の顔に触れた
ヒーローが助けに来てくれたのだと彼女は思った
目の前の人はヒーローとは違うけどヒーローのように私を助けに来てくれた

それに安心したのか急に目の前が暗くなっていく
日の入りを加速させたように視界が暗くなっていく様子は恐ろしかったが、不思議と怖くなかった
私の手に触れる「炎の痛みのある熱」とはまた違う「柔らかな温かみ」が、心を包むような感覚が体に広がった
それはまるでおかあさんに抱かれているような感覚……

心の暖かさを感じて安心したのか
強烈な眠気と倦怠感で意識が閉じ、子供は気を失った

―――人々が助けを求める限り、身を粉にして往く者達。

465 :一本腕 ◆NO4WSobGYg :2008/07/06(日) 13:12:57 ID:B8lmgIVk
ポツリと小声で詠唱、すると彼を中心に半円形の緑色のシェルバリアが展開され、子供をしゅるりと覆った。
シェルバリアは熱や衝撃から内部の対象を保護する魔法で魔力消費が大きいが、発動後は効果が一定時間維持される
湾岸特別救助隊所属職務員なら誰でも習得している魔法で、これ以上に災害の中で頻繁に使われる魔法はそうは無いだろう
シェルバリアの中に包まれた子供安全を確認したスバルは前を見据えて集中し始めた

「上空確保確認……行くよマッハキャリバー、リボルバーナックル!」

『Shitt to Divine Buster Canon Mode……All Magic lines Connected』

両手を前にかざして巻き込むように回し、魔力スフィアを展開。
青色に輝く魔力スフィアは近代ベルカ式のスタンダードな物
両手で練り上げた魔力で前方に魔力スフィアを形成し「マッハキャリバーがスフィアを保持する」
左手を右手にスライドさせるように添えて『コッキング』 右手を弓を引くように引き絞る構えを見せる
同時にリボルバーナックルのスライドがガシンガシンとカートリッジを装填、2つの薬莢がキンキンと小気味良い音を立てて落ちる
スバルの足元に近代ベルカ式の環状魔方陣が足元に展開されて魔力の収束制御を行なわれ始めた
これから行使される魔力が半端な物ではないとその広がり方から知識あるものは容易にそれが想像できるだろう

周りの炎がひときわ大きく燃え上がった
バリアジャケット越しでも伝わる熱を無視しつつ集中
体全体に伝わる魔力の流れを右腕に集中させたと同時に
左手をスフィアに沿え、マッハキャリバーからの保持プログラムを受け取って前方に左腕を突き出す

『Landing anchor and climbing rons locked……inner Knuckle chamber pressure nsing normally』

マッハキャリバーの車輪が格納され、踵に付いたアイゼンアンカーが大地を噛んで衝撃に備える
同時に右腕に収束された魔力が六つの光となってナックルスピナーの部分からボウッと浮かび上がった

『Life-ring has started revolving』

六つの青い光球がナックルの周りを回転し始める
回転するスピナーに紫電が迸り、六つの魔力光が右腕を覆うように一つのリングを形成する
その魔力リング――『ライフ・リング』がスピナーを離れ、目の前にスフィアに重なり合うように展開
そのまま引き絞り<<激鉄を>>握り締めた右腕を……全魔力を込めた拳をリング中央に―――

『Ready to Fire』

――<<落とす>>叩き付ける!

「ディバインバスターキャノン!!! シューートッ!!」

拳が魔方陣に叩き込まれた瞬間、高濃度で圧縮された魔力が開放された
撃ち出されたそれはまるで光の槍、螺旋を描き、目の前に立ち塞がる全ての障害を貫く光槍
燃え盛る炎を掻き消し、幾重にも連なる天井に大穴を開け、ただただ只管まっすぐに飛び続け
やがてそれは空の彼方に消えていった

ディバインバスターキャノン
短距離直射方砲撃魔法であるアレンジ型ディバインバスターの貫通力と威力はそのままに
新たにスピナーから形成される『ライフ・リング』をスフィアと重ね合わせる事によって
より射程を延ばす事に成功したディバインバスターの強化発展型魔法である

―――残心
マッハキャリバーとリボルバーナックルの各所から一斉に排気が行われた

466 :一本腕 ◆NO4WSobGYg :2008/07/06(日) 13:18:06 ID:B8lmgIVk
轟音と共に光の柱がホテルより噴き出し、何事かと空を仰ぎ見た。
すると、燃え盛るホテルから飛び出た直射方砲撃魔法が雲を貫通して消えていく
その光の柱の発信源をみやると子供を抱えた魔導師が飛び出てくるのが見て取れる。
胸元に抱える要救助者を見て救急隊員がストレッチャーを慌てて運んで駆け寄った

母親と思われる人物が我がこの安否を確認した途端号泣しながら崩れ落ち
スバルの手を握り何度も何度も「ありがとうございます、ありがとうございます……」と感謝する
それを見て、―――ああ、また助ける事が出来たんだな と、母親の手を握り

「それでは我々は引き続き救助に戻ります、貴女はしっかりとお子さんの隣についてあげてください」
そうしで母親を安心させ、その場を離れようとすると救急車に載せられた子供が目を覚ます
途端、跳ね上がるように上半身を起こした彼女はじぃっとスバルを見つめた

「―――っっ!!!!!?」

青い短髪、青い目をした女の子
いつもいつも危険なものを指差し教えてくれる女の子
幻のように現れては消える幼かったスバルそのもの―――ただ、決して笑う事は無い



  この世に彼らが居る限り、絶望は希望へと昇華する

  魔法少女め組のスバル  はじまり―――ません


『リンカーコア、及び魂の吸収開始』

 「喜べよぉ? コレでお前とお前の魂とお前の魔力はずぅっといしょにいしょに一緒に隣にあり続けるんだ」

                                                              クロス、他数

未完    「コレにて闘争を開始する」

467 :一本腕 ◆NO4WSobGYg :2008/07/06(日) 13:20:27 ID:B8lmgIVk
終わりです、生存報告なのでしょうか、プロローグは5割といった所ですが書いてます
これは試作ですので、あしからず。しかしお客様の目にとまり読んでくれるのであれば幸いです。

有難うございます有難うございます。

468 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/06(日) 13:25:48 ID:uD+FinSt
お疲れ様。
まさか、め組とは懐かしいものをw

469 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/06(日) 13:55:40 ID:aQlyjfL3
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         |  宇 宙 の   法 則 が   乱 れ る !.│
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    | { {从リノ!〉 | { ,ノハ))〉)`         r       ___    /〉  .ゝ ト{ ((^ソリ)ゞ
.    ソ,|.| ゚ -゚ノ  从|.゚ ー゚ノリ       , '⌒⌒ヾ ,'_,r==ヽ.  //   .ソヘ(リュ^ヮ゚ノ!`
   (( j(`つつ  /゙〈|V|)ト、     .イ lフ,从从ゝ{ {ノノノハ))〉//.      (フ,,XI)、
    r</´: :: :l l: : l: :: :: :ヽ: :\_   ^'vlュ ゚ -ノ'゛|.(l|ュ゚ -゚ノ|う′    と(^つこ)う
    /j: : : :|: :jl ト、 l -‐ト、: :\ト-<  <巡},,\)つ {i(フ!,,Xll)'´, ヘ.     /^ヽ ̄ ヽ
  _、,.,,._ : : j-ハj ヽ >ー¬Tー―': \,(フ、,〈}___从_うコ========   |⌒l ト・^・|
_,ゞ´   ゙ヾ:レ ―-、_{     jヘ ヽ\ :〈患´l患、 : (_ノ'┘: : : : : : : :}   |  | 〕.○.|
フ ,(レwハviゝ.    j ! ヽ、_ノlノー-- `> ___: : : : : : : : : : : : : : : : /   |_l ト・_,・|    . '⌒⌒ヽ
´ヘ(lュ゚ -゚ノ゙.ヽ、_ノr‐┐   ノ___: -/lブ `ヽ  ̄ ̄7: : : : : :/ _ _  ヽ__ノ_ノ    | i lレハリi.}
 <_].[{]つヽ__ `ー'   /,イ: : : : :_{ イ,ノノ^))〉  /: : : : /∠(7´ `ヾゝ        ,C.!|●-゚ノ|
_ノ〈―<-ニニニ-,\.__/( レ'///|l(||`ー´ノ|  /: : : : :/  イ イ ivwvv'i>       ((,ゝ.)X{ニア
.Z   ヽヽヽ  `ヽ、\ ___.7     ノi/リ,,U,)リつ三: : :/    ^'(l|ュ ゚ -ノl|  |\    〈,、jし'Jトゝ
\Z   ヽ__/`v , 'lフ  `ヘゝ      _>  ,': : : : /  〔 ̄ ̄Lつ ̄ ̄ ̄)二二二二二二二回
  / レ"フ  >、.  { レハlノハjゞ i    ゝ. ___ i : : : : {  ノ亡二二7二匸l二匸「 ̄_)_ ̄ ̄ ̄ |.ヽ
/      r‐/弋ニヘ(|ュ゚ -゚ノ|ヽ ノw、l,,;:'(フ^^^'ヘ. : : :丶 ( __ とノ `ヽ._): : : /,ヘヘ. ヘヘ.   〔| |
_      | |\ `ヽ(フとス). Y   ,;;;{ { 从リハ) 〉: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : (ヽr'l レニリノ}.〉  |,,_|
、 \   /l   \/l    .|  |   ,;;;レVュ^ヮ゚ノリ、 : : : : : : : : : : : : : : : : : :/ \ヾjュ゚ -゚ノ!|  ∧ノ
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