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リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル4

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/06(日) 20:53:39 ID:kUCfA8Qb
魔法少女リリカルなのはクロスSSスレから派生したバトルロワイアル企画スレです。

前スレ
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルスレ3
ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1205585221/

クロスSS現行スレ
ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1215090521/

雑談、感想ウロススレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1214832052/


まとめサイト
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/

避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/10906/

2chパロロワ事典@wiki
ttp://www11.atwiki.jp/row/




2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/06(日) 20:55:30 ID:kUCfA8Qb
ルール及び制限

●参加者
 ・各作品から1〜11名、合計60名。見せしめ・主催者を含めると62名
  詳細は>>3にて



●支給品(アニロワに準拠)
 ・デイバック、食糧、水、コンパス、ランタン、地図、名簿の7種。デイバックには無限の収容力がある。
 ・ランダム支給品は1〜3個。出典元は問わず。参加者の戦闘力を均一化できるような選択が必要。



●能力制限
 ・変身系(姿の変化が伴う能力強化。効果時間と発動後の消耗が制限。効果時間の制限は1〜2時間が現在の案)
  1)アイテム変身系
   変身に必要なアイテムは支給品指定。本来の持ち主が必要なアイテムを得た場合のみ発動。
  2)自力変身系
 ・身体能力人外系
  一般人でもギリギリ対応出来る程度にまで能力低下。
 ・治癒能力系
  限りなく制限される。外傷治癒の場合は疲労負荷などの条件で可。
 ・追加装備系
  パワードスーツ、体に装備する類のアイテム。支給品指定。
 ・カード系(遊戯王カード・ラウズカードなどが対象)
  支給品指定。特定のアイテムと併用する事で、モンスター・魔法・罠・効果を実体化。使用後は数時間の充填が必要。
 ・巨大ロボット系
  舞台のどこかに隠されている。戦闘力均一化の問題から2〜3体、操縦者も無差別とする必要があると思われる。
 ・魔法・必殺技系
  全体として威力低下。消耗は大。ただしテンション次第では消耗が先送りにされる場合もあり。

●放送時間
 ・6時間おき。

3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/06(日) 20:57:29 ID:kUCfA8Qb
参加者
現在:57/60
※並びは参加人数の多い順です。



【魔法少女リリカルなのはStrikerS】
○高町なのは(sts) ○シャマル ○ザフィーラ ○スバル・ナカジマ ○キャロ・ル・ルシエ
○ルーテシア・アルピーノ ○ヴィヴィオ ○クアットロ ○チンク ○ディエチ
【リリカル遊戯王GX】
○遊戯十代 ○早乙女レイ ○万丈目準 ○天上院明日香 ●ティアナ・ランスター
【NANOSING】
○アーカード ○アレクサンド・アンデルセン ○インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング ○シェルビー・M・ペンウッド
【コードギアス 反目のスバル】
○ルルーシュ・ランペルージ ○カレン・シュタットフェルト ○シャーリー・フェネット ○C.C.
【魔法少女リリカルなのは マスカレード】
○天道総司 ○相川始 ○キング ○金居
【魔法少女リリカルなのはA's】
○高町なのは(A's) ○フェイト・T・ハラオウン(A's) ○シグナム ○ヴィータ
【仮面ライダーリリカル龍騎】
○八神はやて(A's) ○浅倉威 ○神崎優衣
【デジモン・ザ・リリカルS&F】
●エリオ・モンディアル ○アグモン ●ギルモン
【リリカルTRIGUNA's】
○ヴァッシュ・ザ・スタンピード ○クロノ・ハラオウン ○ミリオンズ・ナイブズ
【なの☆すた】
○泉こなた ○柊かがみ ○柊つかさ
【なのは×終わクロ】
○新庄・運切 ○ブレンヒルト・シルト
【リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
○セフィロス ○アンジール・ヒューレー
【魔法妖怪リリカル殺生丸】
○殺生丸 ○ギンガ・ナカジマ
【L change the world after story】
○L ○ユーノ・スクライア
【ARMSクロス『シルバー』】
○アレックス ○キース・レッド
【仮面ライダーカブト】
○フェイト・T・ハラオウン(sts) ○矢車想
【ゲッターロボ昴】
○武蔵坊弁慶
【魔法少女リリカルなのは 闇の王女】
○ゼスト・グランガイツ
【小話メドレー】
○エネル
【ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】
○ヒビノ・ミライ
【魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
○八神はやて(sts)
【主催者】
○プレシア・テスタロッサ




4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/06(日) 21:00:30 ID:kUCfA8Qb
地図

ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/pages/126.html

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/06(日) 21:28:32 ID:OVDt8/eb
>>1乙です。

そして前スレji氏への感想を。

GJ!
まさかのコンビwww
いくら対主催アンデルセンとはいえ、ヴァッシュと組むとは。
ヴァッシュよ、頑張って殺る気満々の神父さんを止めてくれw

6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/08(火) 21:23:28 ID:bC09oaKK
ji氏GJ!
なんという不思議な組み合わせw
しかもダンテのマントにエボアボとは……スタイリッシュすぎるw

7 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/07/08(火) 21:32:00 ID:dSFbIoJP
フェイト・T・ハラオウン分、投下します。

8 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/07/08(火) 21:33:28 ID:dSFbIoJP
黒き海面から漂う風が、彼女の鼻を潮の香りでくすぐる。
暗澹とした深夜の空の下に広がるのは、すっかり寝静まった街並みだ。
窓の明かりはない。ネオンの輝きもない。人の気配がまるでない。
けたたましい街はあまり好きな方ではないが、ここまで静かだと逆に不気味さすら覚えてくる。
フェイト・T・ハラオウンの真紅の瞳は、巨大なデパートの屋上から、下界をじっと見下ろしていた。
上質な糸を彷彿とさせる金髪が、潮風に煽られて闇に揺れる。
月明かりのみが頼りの黒天の夜空の下、さながらそれは太陽のごとく眩い存在感を放っていた。
ふと、その美貌に影が差す。
思い出されるのは、あの暗い一室での惨劇の瞬間だ。
守れなかった。目の前で大切な友達が喪われたあの時、自分は何も為すことができなかった。
要するに自分は、アリサ・バニングスを見殺しにしてしまったのだ。それがフェイトの表情を曇らせていた。
「母さん……」
そして、新たに思い出された女性の姿。我知らず、ぽつりと彼女は呟いていた。
あれは紛れもなくプレシア母さんだ。もう10年も前に死んだとばかり思っていた、プレシア・テスタロッサその人だ。
しかし、彼女は生きていた。この空よりもなお暗き、虚数空間の暗渠へと堕ちた時の姿のまま。
自らを産んだ母親は、一体何を望んでいるというのだろう。
亡き娘アリシアへの妄執に囚われた女とはいえ、元来プレシアは聡明な魔導師だったそうだ。
こんな一見無意味にも見える殺し合いを、それこそ本当に考えなしに実行させるとは到底思えない。
であれば、このデスゲームとやらには、それ相応の目的があるはずだ。
そして、彼女の一種狂気すらも孕んだ、強烈な願望の矛先はただひとつ。
「まだ……アリシアを追いかけてるんだね」
アリシア・テスタロッサを、今度こそ完璧な形で蘇生させること。
プレシアの目的といえば、これしか考えるものは存在しなかった。
今まさに繰り広げられようとしている殺戮と、プロジェクトFの完遂にどういった関連性があるというのか。
さすがにまだそこまでは、結論を下すことはできそうにない。
死者を生き返らせるには生者の血が必要――死体が欲しいというのならば、こうしたまどろっこしい手段を取る必要はないだろう。
自分の魔導師ランクは、今や人間の限界一歩手前にまで迫ったS+ランク。
魔力量だけならば、既に母を僅かに凌駕しているであろう自分を、あれほどまでに強固に拘束できるバインドがあるのならば、
そのまま自分達を絞め殺してしまった方が遥かに効率がよかったのだ。しかし、彼女はそれをしなかった。
ただの死体だけでは足りない。肝心なのは、ここで展開される闘争そのものということか。
馬鹿げている。いいや、狂っている。
そして、それが今に始まったことではないということが、フェイトにはたまらなく悲しかった。
「でも、それじゃあ駄目なんだよ、母さん」
微かに首を振りながら、彼女は母の選択を否定する。
10年の間に、自分は色々と成長したと思う。そうであると思いたい。
しかし、プレシアは何も変わってはいなかった。10年前の狂気は、未だに消えることなく残されていた。
そして、それではいけないのだ。その狂気は、選んだ手段は、決して許されるものではなかったのだ。
「自分の勝手な悲しみに、関係のない人まで巻き込んじゃいけないんだ」
今や義理の兄となった、かつての最年少執務官だった少年の言葉を口にする。
遥かな高みから、この箱庭を見下ろしているであろう母に向かって。
たとえその言葉が、風に流され消えてしまうような小さな呟きだったとしても。
それはかつて共に同じ罪を犯した者であるが故の、魂からの悲痛な叫びだった。

9 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/07/08(火) 21:34:31 ID:dSFbIoJP
「……とりあえず、まずは状況を整理しないと」
しばしそのまま沈黙した後、フェイトは再び口を開く。
そして、足元に置かれたデイパックへと、その細く綺麗な指を触れさせた。
参加者達へと支給された袋の口を開けながら、まずはここに至るまでの経緯を回想する。
思い出される最新の記憶は、どこまでも続く無限の荒野だった。
否、その光景は最新の記憶に限った話ではない。さらに遡っても、何日も、何日も、同じ風景を見続けてきた。
西暦にして1999年。彼女にとってのPT事件や闇の書事件の起こってから3年後にして、彼女にとっての現在から7年前のこと。
遥か宇宙の彼方より飛来した巨大隕石により、第97管理外世界「地球」は死の星となった。
広大な太平洋は一瞬にして涸れ果て、遮断された太陽光は植物を育む力を失った。
今あの星に存在するのは、自分達僅かな人類と、地球全土に広がる大砂漠と、蠢く異形のワームのみ。
人々の生命を脅かす化け物達と戦い続けるうちに、既に7年という時間が経過していた。
そんなある日にシグナムと共に戦地に赴き、対ワーム用に人類が開発した切り札「マスクドライダーシステム」の戦士と合流。
軍用ワゴンに乗って帰路へと着き、今や懐かしき海鳴の位置を示した看板を見つけて――
――どうやら、それが元の場所での最後の記憶のようだ。
気付けばあの場所へと閉じ込められ、こうして今ここで、久しく嗅ぐことのなかった海の香りを体感している。
「加賀美とははぐれちゃったか」
最初にデイパックから取り出した名簿を見て、少々残念そうな呟きを漏らす。
参加者達の名前の一覧表には、戦友シグナムの名前はあれど、
あの青き戦神・仮面ライダーガタックの適格者の名前はどこにもなかった。
自分達高位魔導師と互角――それも対ワーム戦においては、自分達以上の戦果すら発揮する心強い味方。
この場にいてくれれば、状況の打開のためのよき力になってくれただろう。
しかし、一方でこの事実にほっと胸を撫で下ろしている自分がいるのも確かだ。
少なくとも彼は、この戦いに巻き込まれることはなかった。いくら荒廃した地球といえど、ここよりはまだ安全な方だろう。
大切な仲間が危険から免れることができたことに対し、フェイトは安堵する。
そして再びデイパックを漁り、今度は武器を探し始めた。
殺し合いに乗るつもりなど毛頭ないが、仮に他の参加者が襲ってきた場合を考えれば、身を守る手段は必要不可欠だろう。
やがて、右手が何やら棒のようなものに触れる。
そのまま引き抜こうとする。重い。片手で取り出すには少々面倒だ。
左の手のひらもそこに添え、ぐっと力を入れて引きずり出す。
「……うわ」
外気にさらされた得物は、身の丈すらも凌駕するほどの、凄まじいサイズの大剣だった。
幅広い刀身に、紫や黒を基調としたカラーリング。表面に並ぶのは、さながらノコギリのごとき細かな刃だ。
柄に用意されたスイッチのようなものを押し込んだ瞬間、強烈な振動と共に剣が咆哮する。
ぎゅぃぃぃぃん、と。あたかもチェーンソーのように、表面の刃が猛スピードで回転していた。
大きさ自体は、バルディッシュのザンバーフォームと同程度。
しかし、醸し出される凶暴さと、質量を持った刀身であるが故の重量は、雷の愛剣とは一線を画していた。
どうやらこれでもストレージデバイスであるらしいことに気付き、モードを非殺傷設定へと切り替える。
なかなか重い武器だったが、このくらいなら、まだそのうち慣れるレベルだろう。
巨大な剣を自身の横へと置くと、再びデイパックの中へと手を突っ込む。
見つけられたのは、地図、食料、時計、ランタン、筆記用具、コンパスの基本支給品セット。
そして最後に手にしたのは、透明感を持った真紅の小さな球体だった。

10 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/07/08(火) 21:35:24 ID:dSFbIoJP
ランタンへと火を灯し、コンパスを駆使して、地図上での現在位置を特定する。
そこに表記されていたことで気付いた地上本部の存在を確認し、大体の地図上距離を感覚で把握。
遠くに見えた法の塔を見るあたり、やはりというか当然というか、フィールド自体はそれなりに広いもののようだ。
(機動六課……管理局の新しい実働部隊?)
そして、現在地から西に位置する建物の名前を確認する。
あの地球からやって来たフェイト・T・ハラオウンにとっては、機動六課は未知の存在だ。
かつての隕石衝突さえなければ、今頃にははやてが発足していたであろう新設部隊。
歴戦の戦友達と、期待の新人達。そして愛する子供達に囲まれた、穏やかな場所。
しかし、今ここにいるフェイトはそれを知らない。
無限に広がる宇宙の中では、砂粒以下の大きさでしかない隕石1つのおかげで、彼女の世界はあまりにも残酷に変化してしまった。
(ここなら、この首輪を分析して外すこともできるかもしれない)
首筋にあるひんやりとした感触をなぞる。
アリサの爆死の瞬間を見る限り、この爆弾の破壊力は相当なものだ。
これがある限り、自分はプレシアに命を握られているということになる。いかなる抵抗も、この必殺の兵器の前では無意味となるだろう。
さらに、禁止エリアへの立ち入りによる強制爆破もある。自由にこの会場を動き回るには邪魔なものだ。
まずはこれを外すことが急務だ。そうしなければ、選べる選択肢は大幅に狭められる。
幸いにも、この施設は現在地のデパートからはそれほど離れているわけではなかった。
これならば、到達するまでに時間はさほどかからないだろう。
そうすれば、そこから先は自由となる。なのは、はやて、シグナム――大切な仲間達を助けに行ける。
(それから、あとはこれ)
ひとまず地図から視線を逸らすと、フェイトは最後に見つけた赤い宝珠を手に取った。
よく似ている。形状といい色といい、首から提げるネックレスであることといい、あのなのはのレイジングハートと瓜二つだ。
しかし、どうやらデバイスではないらしい。単純にバリアジャケットのみが内蔵された端末。
これがあの杖であったらどれだけ心強かっただろうか、と嘆きつつも、彼女は赤い瞳で赤い球体を見据えた。
「セットアップ」
そして、その機能を起動させる。
眩い真紅の閃光と共に、身に着けていた衣服はたちどころに分解された。
むき出しとなった、抜群のスタイルを誇る豊満な肢体。陶器のように滑らかな裸体へと、魔法の鎧が装着される。
薔薇の意匠があしらわれた、白いニーソックスのような布。羽毛のようなファーのついたロングブーツ。
白地に水色の縞模様が刻まれたショーツの上に、赤いプリーツのミニスカートが重なる。
中世風の白い衣服の胸元は、そこだけが鋼鉄のブレストプレートの輝きを発していた。
さらにその上から、赤茶けた上着が被せられる。腰に回した漆黒のベルトには、花のごとき流麗な曲線を描いたサーベルが収まる。
幾何学模様のプリントされた短いマントの首元が、燃える炎のごときリボンによって纏められた。
ちょこんと頭に乗っかったのは、羽飾りのついた真紅のベレー帽。
バリアジャケット、装備完了。ここに至るまでの時間は、まさに一瞬にも等しき僅かなものだ。
改めてフェイトは、自身の身を守る防具の姿を見回した。
全体的に欧州の騎士を彷彿とさせるような、赤を基調としたデザインだ。
髪型がツインテールにならず、ストレートなままであることに僅かな違和感を覚えたが、まぁどうということはないだろう。
腰に差されたサーベルは、やはりデバイスではないらしい。
チェーンソー大剣ほどの重量がなかったのは魅力的だったが、殺傷能力がある以上、軽はずみに使うことは許されなかった。
防御力自体に問題はない。これまで用いてきたもの同様、信用に足る強度を有していた。
だが、実はそれ以外に、ある一点に限って問題が発生していたのだ。

11 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/07/08(火) 21:36:34 ID:dSFbIoJP
「す……少し、胸がきつい……かな……」
谷間を露出させたブレストプレートに、微妙に苦しげな声と共に触れる。
実はこのバリアジャケット、異世界において、彼女とはまた別の人間が用いていたものなのだが、そのバストサイズは僅か78。
ミッドチルダの女性の平均よりも、遥かに大きなフェイトの胸部を支えるには、あまりにも情けないスペックだ。
素肌のさらされた部分からは、無理に抑え込まれた乳房がはちきれんばかりの様相を呈している。
このまま着続けていては、最悪変形してしまうかもしれない。
しかし、状況が状況だ。多少の息苦しさには目をつぶり、そのまま我慢することにする。
ともあれ、こうして行動の指針は決定し、行動の準備も完了した。
まずは一路西へと向かい、機動六課なる部隊の隊舎の施設を利用して、この首輪を外す。それが何より優先すべき最初の一歩。
ふと、夜空を仰ぎ見た。
満天の星々は、この非常事態とは裏腹に、ひどく穏やかに輝いている。
地上で繰り広げられるであろう激戦など、知ったことではないといった様子で平和を保っている。
「――母さん」
想いを口にした。
この平穏な星空の向こうで、狂気と共にこの宴を見下ろしているであろう、母親へと。
その両手へと禍々しき剣を携え、青白く輝く月へと高々と掲げる。誇り高き騎士が主君へと捧げるように。
凶暴なチェーンソー大剣が、この時ばかりは、さながら聖母の祝福を受けた神剣のごとく輝いていた。
「私は誰も死なせはしない。この殺し合いを止めて、必ずみんなを守ってみせる」
誓いを口にした。
そうでなければ、あの母に飲み込まれてしまいそうだから。
次元犯罪に手を染めて、心を闇に染めてしまったとはいえども、彼女は未だに母親という絶対的な存在だ。
そうして彼女に飲まれた結果が、かつてのPT事件の自分の姿だ。
「そして、私が母さんの所へたどり着いた時には……」
故に、口にする。
自らを奮い立たせるために。
この暗闇の中で確固たる意志と共に、この両脚で力強く大地を踏みしめるために。
決して暗黒へと堕ちることのないよう、想いと誓いを形に変えるために。
「――お話を聞かせて」
今度こそ、母と正面から向き合うために。


【1日目 深夜】

【現在地H-5 デパート屋上】
【フェイト・T・ハラオウン(StS)@仮面ライダーカブト】
【状況】健康
【装備】大剣・大百足@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる、シーナのバリアジャケット@SHINING WIND CROSS LYRICAL
【道具】支給品一式
【思考】
 基本: 誰も犠牲者を出すことなく、この殺し合いを止める。その上で、プレシアと対話を行う
 1.機動六課隊舎に向かい、首輪を外す
 2.その後、なのは達と合流する
 3.もう少し扱いやすい武器が欲しい。欲を言うならバルディッシュ・アサルトが欲しい
 4.胸が……
【備考】
 ・なのは達「八神班」が、他の世界から来た人間であることを知りません。
 ・このゲームが、アリシア蘇生のためであると推測しました。
 ・大剣・大百足は、他の形態にはフォームチェンジしません。

12 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/07/08(火) 21:37:08 ID:dSFbIoJP
投下終了。
こちらには久々の投下となります。今までなかなか手が出せず、申し訳ありませんでした。
なんにせよ、ちゃんと他キャラと絡められた方がよかったね。反省。

13 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/08(火) 22:09:09 ID:bC09oaKK
GJ!
このフェイトは機動六課の事を知らないのか……。
その事が後々に影響を与えるのか、与えないのか。
ちょっと楽しみなところですw

14 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/08(火) 22:10:01 ID:bC09oaKK
あ、タイトル忘れてますよー

15 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/08(火) 22:33:44 ID:84B2KRwN
orz

タイトルは「君想フ声」で。大剣・大百足の出てくるゲーム「.hack//G.U.」のvol.2の副題です

16 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/07/08(火) 22:34:54 ID:84B2KRwN
コテ忘れたアッー!

17 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/09(水) 01:47:33 ID:D8REucAo
投下乙&GJ!
フェイトのプレシアに対する思考と、仮面ライダー側の設定を上手く表現出来てると思います
とても仮面ライダーを知らないとは思えないくらいの文章、本当にGJでした!
六課組と合うのが楽しみです

一つ気になったんですが、カブトでの矢車さんは一応八神班とも馴染みのある本部直轄エリート部隊の隊長ですし、
フェイトも矢車想という名前に見覚えくらいはあると思うのですが……

18 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/13(日) 01:11:49 ID:b6fBCwzk
保守ついでに質問。
前スレの作品がwiki編集されてないんだけど……
スレ探してみても落ちちゃったポイし、どうすんの?

19 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 18:44:52 ID:fLGpNDbe
現在、反目のスバル氏が「したらばに再投下して」とか「過去ログ見れる人取ってきて」とか要請してるから、その手でいくんじゃね?
これに関してはしたらばの議論スレで、って感じ


20 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 03:10:12 ID:wQdUGR1X
ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/src/up0079.zip

「アイズ」まで投下されてるJane用のdat。
wikiの砂場にでも上げようと思ったんだけど、ログインしないとうpできないみたいだから
あぷろだをお借りした。

21 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/07/15(火) 17:31:16 ID:9WJHWifx
ちょいとJaneを導入し、>>20のdatをダウンロードしてみました。
……が! 見方が分からない!

orz

22 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 21:42:48 ID:wQdUGR1X
JaneのLogsフォルダの適当な板フォルダにdatを放り込んで
板を読み込みなおせばOKじゃないかと

23 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/07/15(火) 23:22:51 ID:SCs/HpFb
解決しました、というか他の方がやってくれました。
改めまして、ありがとうございます。そして言い出しっぺのくせに何もできずに申し訳ありませんでした。

24 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 22:02:49 ID:flB+yPNr


25 :マスカレード ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/23(水) 19:51:11 ID:wxTKqBle
ほんの一瞬の規制だったようで、どうやらすでに解除されていたようです。
えー……度々申し訳ないのですが、色々と不都合が重なりまして、時間通りの投下は厳しそうです。
本日中には絶対に投下しますので、あと少しだけ待っていただけると幸いです。

26 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/23(水) 22:07:02 ID:hmvjvMv9
>>25
支援の準備をしつつ待っています。


27 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 00:32:07 ID:t0jWXOKz
……あれ?

28 :マスカレード ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 00:39:49 ID:AZdnZ5pY
遅れてしまい申し訳ありません
ではただいまより、投下を開始します

29 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 00:48:09 ID:AZdnZ5pY
 
「さて……どうしたものか」
真夜中の市街地に、銀縁の眼鏡を軽く押し上げながら、ぽつりと呟く男が一人。
彼の名前は金居。またの名をギラファアンデッド。
世界最大のクワガタムシと、その全ての仲間達の祖となった不死生物である。
彼の戦う理由は至って簡単。
最後の一人になるまでバトルファイトを戦い抜き、統制者によって与えられた万能の力で、クワガタムシだけの楽園を創る事。

人間達に捕獲され、子供達に命を弄ばれ、揚句の果てには針に刺されて標本にされる。
それが、彼の仲間であるクワガタムシ達の多くが歩んで来た末路。
地球の自然に生まれ、誰の力も借りる事無く、その生涯を終える事が出来るクワガタムシはこの世界でもほんの一握りのみ。
金居には、それがどうしても許せなかった。
何故人間達だけが繁栄を謳歌し、自分達クワガタムシは世界の隅に追いやられなければならないのか。
それだけならまだいい。何故クワガタムシ達は森で静かに、自由に生きる事すら許されないのか。
金居からすれば、人間に飼い馴らされ、クワガタムシの誇りを失った者に、最早生きている価値など無いのだ。
故に、こんな腐った世界を滅ぼし、クワガタムシだけの楽園を創ると誓った。
それなのに、世界を創り変える為の唯一のチャンスであるバトルファイトは人間やグロンギ、ワーム等といった連中に邪魔をされ、
揚句の果てにはプレシアとかいう人間の女に呼び出され、互いに殺し合えと脅迫される。
プライドの高い金居は、それに屈辱を感じずにはいられなかった。
されど、この忌ま忌ましい首輪がある限り、金居はプレシアに逆らう事は出来ない。
もちろん、自分を含めたアンデッドに死という概念は無いのだが、それならばこんなゲームに参加する意味が無い。
恐らくはここで死ぬ事は、それ即ち“カードへの封印”を意味するのだろうと推測。
こんな所で、こんなふざけたゲームで倒されてしまっては、クワガタムシの楽園を創る等夢のまた夢。
だが、このデスゲームはアンデッド同士のバトルファイトとは訳が違うのだ。
このデスゲームはまさに、相手の戦力も解らない、サバイバルゲームも同然。

最強のアンデッドとして、人間共を皆殺しにするか。
もしくは、人間共と協力し、このゲームから脱出するか。
金居が取れる選択肢は二つだ。

もしも前者の行動を取った場合……。
確かに自分の命は安全だ。
だが、例え勝ち残ったとしても、それはプレシアの言いなりになったも同然。
プレシアに命を握られた状況は変わらないし、勝ち残ったからと言って、プレシアから解放されるとは限らない。
いや、寧ろ、もしも自分がプレシアの立場であったならば。
恐らく自分は、自分の掌で踊り続ける手駒をそう簡単に捨てはしない。
ましてやこのデスゲームに勝ち残る程の実力となれば尚更だ。
それに何よりも、プレシアの言いなりに戦うのは、金居のプライドが許さなかった。
故に、前者は却下。
次に金居は、後者の条件を思考し始める。

30 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 00:53:03 ID:AZdnZ5pY
 
もしも人間共と協力し、この首輪を解除することが出来たならば……。
まず第一に、プレシアに命を握られるという、この最悪の状況を打破する事が出来る。
そうなれば後は自由だ。自分は直ぐにでも元のバトルファイトに復帰させて貰う。
だがそのためには、この首輪を解除出来る人材を探さねばならない。
それは即ち、人間共と手を組まなければならないということ。
と言っても、元々金居は暫くは人間に味方する立場に居るつもりだったのだ。
今更人間と手を組むのを躊躇う必要も無い。
あと問題なのは、この首輪を解除する為の環境を揃える事。首輪を解除する為の施設、そして人材など。
上手くそれらを利用して、この首輪を解除。そしてこのデスゲームから脱出する。

こうして、金居の考えは決まった。
次に、プレシアに支給されたデイバッグの中身を確認。
中に入っていた物を物色した金居は、真っ先に2枚の紙――地図と名簿を取り出した。
まずは名簿を確認する。一通り目を通し、いくつか見知った名前を発見。
相川始、キング、天道総司。自分が知るのは、この三人。
その内一人は、仮面ライダー。あとの二人はアンデッド。
仮面ライダーはまだいい。問題なのは、二人のアンデッドだ。
この名簿に書かれている二人のアンデッドは、いずれもこのデスゲームにおいては最悪の部類に入る存在。
死神“ジョーカー”と、仮の仲間でありながらも、間違いなく質の悪さでは他の追随を許さない、スペードの“キング”。
このゲームもバトルファイトと同じであるならば、ジョーカーが生き残った時点で全ての生命は滅ぶ。
かといって、キングはアンデッドでありながら、自分の種族の繁栄を望まず、好き勝手な行動を取っている訳の解らない男。

―――この中なら……仮面ライダーに味方するのが1番マシか。

以上の事実を踏まえた結果、金居は仮面ライダー側につくのが最善だと判断した。
理由は簡単な事。彼らは、人々を守る為に戦っているのだ。
人々を守る仮面ライダーが、こんなふざけたデスゲームに乗る事はまず有り得ないし、
何よりも彼らの戦う理由――“人々を守る為に戦う”という理由が解っているだけに、作戦も練りやすい。
次に問題なのは、自分の現在地。
ここはどこだ? 市街地だというのは明らかだが、それだけでは情報が少な過ぎる。
この地図を見るだけでも、一体どれだけ市街地が拡がっていると言うのだ。
地図上の実に半分以上が市街地では無いか。近くにある施設によって、作戦もまた変わってくるのだ。
故にここが何処だか解らないでは困る。

「チッ……どこなんだ、ここは……!」

金居が舌を打ち、地図を睨んだ―――その時であった。
遥か彼方から、女性の叫び声と、銃声が響いたのは。
聞こえたのは、現在地よりも南。

――どうする? 正義の味方面して、行って助けるか……?

そんな事を考えると、不意に笑みが漏れた。
アンデッドである自分が、悲鳴を上げる人間を助けるだと?
これではまるで仮面ライダーではないか。正義と愛で世界を守る、奴ら仮面ライダーと何も変わらないではないか。
いつから自分はこんなにも甘くなったのだと、自嘲せずにはいられなかった。
だが、金居は決めたのだ。このゲームから脱出し、グロンギやワームを倒し、自分達の戦いを取り戻すまでは、人間に協力してやると。
自分達だけの――クワガタムシだけの楽園を創るまでの辛抱だ。
金居は、渋々ながらに歩き出した。叫び声が聞こえた方向へと。



F-2の北部に位置する喫茶店、翠屋。
何の皮肉か、この場所に転送されてしまった少女は、馴染みの深い喫茶店の椅子に腰掛けながら、目の前のテーブルにデイバッグの中身を拡げていた。
少女にとってこの店は、色々と思い出の深い店。何故なら、自分の両親が、自分の家族が営む喫茶店なのだから。
久々に帰って来れた実家の喫茶店。されど少女は、素直に喜ぶ事など、出来なかった。
少女は、サイドポニーに結んだ茶色の髪を揺らし、小さく、小刻みに奮えていた。
それは、果たして戦いに対する恐怖感から来る奮えなのか。
――否。少女の奮えは、深い怒りと悲しみから来るものであった。

31 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 00:54:56 ID:Bnx3WmSl


32 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 00:58:26 ID:Bnx3WmSl


33 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 01:00:02 ID:AZdnZ5pY
彼女の名前は高町なのは。
時空管理局機動六課、スターズ分隊の隊長にして、先の戦争――JS事件を解決へと導いたスーパーエース。
魔導師としての実力は、恐らくこのデスゲームに参加している魔導師の中でも、1、2を争う程。
フェイト・T・ハラオウンや、八神はやてを除けば、彼女に単純な魔法の勝負で勝てる者など居ない。
しかし、実質最強である筈の彼女も、悲しまずにはいられなかった。
何が怖いという訳でもないが、泣かずにはいられなかった。
ならば、何故彼女がこうして啜り泣いているのか。

「うぅ……アリサちゃん……」

ぽつりと呟く、親友の名前。同時に零れ落ちた涙は、なのはに支給された銀のアタッシェケースを濡らす。
なのはが悲しむ理由。それは、その答えは、至って簡単な事だ。
“殺された”のだ。親友を。10年以上の長い付き合いを持つ、大切な親友――アリサ・バニングスを。
同じ管理局員から、影で“魔王”だの“冥王”だのと呼ばれていた高町なのはであるが、“鬼”では無い。
ましてや、心は優しかった少女時代から、何も変わってはいないのだ。
そんな彼女の目の前で、アリサは殺されてしまった。
無惨にも、首から上を爆ぜさせて。
手を伸ばせば届きそうなくらい、自分はそれ程にアリサと近い場所に居たというのに、何も出来なかった。
それを思い出すだけでも、涙はとめどなく溢れ出てくる。
自分は何も出来なかった。アリサを見殺しにしたのだ。
それだけで、凄まじい罪悪感が込み上げて来る。
そんななのはに、さらに追い打ちをかけるようにもう一つの考えが浮かぶ。

プレシア・テスタロッサは何故このふざけたデスゲームに、アリサを参加させたのか?

そんな理由は、参加者名簿に目を通せば、すぐに想像がつく。
アリサがゲームに参加させられ、殺された理由。
それは、自分やフェイトといった、魔導師組が参加しているからだ。
自分が知る限り、アリサは魔法とは何の関わりもない、普通の少女であった筈だ。
普通に生活し、普通に大学に通い、普通に恋をする。そんな至って平和な人生を送る筈だったのだ。
そんな彼女の人生を狂わせてしまったのは、まず間違いなく、自分を始めとした魔導師組との面識。
もしも10年前のクリスマスの日、自分達が魔導師であるという事実を明かさなければ。
もしも魔法など関係無く、普通の友達として接していたならば、アリサはここで命を失う事は無かっただろう。
結局全て、自分が原因なのだ。アリサがここに呼ばれる理由を作ったのも自分。
アリサを救えなかったのも自分。
そうだ。自分は、アリサに怨まれて当然の人間なのだ。
こんな自分は、アリサの家族にも、すずかにも合わせる顔が無い。
だが、それでもアリサは決して自分を怨む事も、責める事もしないだろう。
なのはが、伏せていた顔を上げると、心の中に、今は亡き親友の――アリサの声が響いた気がした。

『ちょっとなのは! こんなとこで私の為に泣いてる暇があったら、一人でも多く、他の誰かを助けに行きなさい!
 あんた誰かを助ける為に、誰かを護る為に、管理局ってとこに入ったんでしょ?』

「アリサ……ちゃん……」

『なら、いつまでもこんなとこで立ち止まってんじゃないの。行きなさいよ、なのは』

きっとアリサなら、なのはにこんな言葉をかけただろう。自分を責める様子も見せずに、きっと励ましてくれるだろう。
自分はいいから、他の誰かを助けなさいと。アリサはそんな、優しい少女だった。

34 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:00:55 ID:t0jWXOKz
待ってました、支援

35 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:01:04 ID:Bnx3WmSl


36 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:04:31 ID:t0jWXOKz
支援

37 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 01:07:54 ID:AZdnZ5pY
それから暫く、なのはは泣き続けた。涙が枯れ程に、泣き続けた。
次第に、なのはの深い悲しみは、燃えるような怒りに変わっていた。
自分の中で、悲しみが怒りに変わっていくのは、なのはにも分かっていた。
アリサを救えなかった自分に対して、そして何よりも、プレシアに対して。
プレシアの魔の手から、アリサを救えなかった事。
それが、自分に限界があることを、知らさせる。
だが、それでも。アリサなら、もしもアリサならば例え限界が見えていたとしても諦めないはずだ。
火がついた心は、なのはの身体にも伝わっていった。
悲しみによる震えは、いつの間にか、怒りに震えに変わっていた。
プレシア・テスタロッサが憎い。殺してやりたい程に憎い。
だが、そんなことをしても、アリサは決して喜びはしない。
寧ろ、それこそアリサに責められるだろう。

ならば、どうすればいい?
この行き場を無くした怒りを、どこにぶつければいい?

その答えは、考えるまでも無かった。既になのはの心の中に、その答えは刻み込まれていたのだから。
プレシアが誰かの命を奪うというのなら、自分はそれをとことん邪魔するのみ。
誰かがプレシアの言いなりに戦おうとするならば、自分の全力全開でそれを止めて見せる。
もうこれ以上、誰にも自分と同じ悲しみは味わわせはしない。
自分の目の前で、誰一人として人を殺させない。
出来る限り全ての命を救い、生き抜いて見せる。このゲームから脱出して見せる。
そして、最後にプレシア・テスタロッサを逮捕する。
なのはの心に灯った小さな火は、燃え上がる願いに変わって、なのはの身体を走り出していた。

――絶対に、こんなふざけたゲームを止めてみせる……!

戸惑いも迷いも捨て、決して揺らぐ事の無い決意を胸に、なのはは立ち上がった。
これが何よりも1番に、死んで行ったアリサへの手向けになると信じて。

自分に支給された物の中に、デバイスと呼べる物は存在しなかった。
恐らくプレシアが言っていたように、一度全ての戦力を没収され、配り直されたのだろう。
しかし、武器が無い訳では無い。どうやらこの場所では、単純な魔法ならば、デバイス無しでも使えるらしい。
それに、いざとなれば目の前に置かれたアタッシェケースに頼ればいい。
アタッシェケースの中に入っていたのは、銀のベルトが一本に、ビデオカメラとグリップ式の携帯電話が一つずつ。
「ユーザーズガイド、取扱説明書」と書かれた小冊子付きで、この機械の特徴はすぐに掴めた。
なのはが1ページ目を開くと、いきなり踊った文字。“最強、それはロマン”。
その下に書かれていたのが、“DELTA GEAR”という製品名と、製品のコンセプト、そしてツール毎に分けられた目次。
それこそ各ツールに数ページに渡って説明されており、この機械の材質から各ツールのハードディスクの容量、その他の情報まで完璧に記されていた。
これでもかと言う程にこの機械の全容が詳しく書かれた冊子を、ぱらぱらとめくっていく。
この手の機械には正直興味を引かれる。だが、詳しく読んでいる時間はない。
故に細かく読む時間が無かったのが少し残念だが、今は贅沢は言ってられない。
やがて、ざっとではあるが、一通り冊子を見終えたなのはは、最後のページに小さく書かれた文字が、やけに気になった。

38 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:08:36 ID:Bnx3WmSl


39 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:14:48 ID:t0jWXOKz
支援

40 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 01:16:25 ID:AZdnZ5pY
 
“デモンズスレート機能の効果は、変身解除後にも残る事があります。自身の体調・精神状態を考慮のうえご使用ください。”

以上。
なんだろう、これは? 
しっかりと読んでいなかったという理由も多分にあるが、最後のページに一々小さく注意書きされている意味が、なのはには理解出来なかった。
気にはなるが、今はじっくり読んでいる暇など無い。
もしもこれを読んでいる間に誰かが戦いを始めていたとしたら―――
そんなことを考えると、非常に時間がもったいなく思えてくる。
故になのははすぐにユーザーズガイドを元のケースにしまい込んだ。
恐らくはどこかの管理外世界の軍事企業が開発した兵器なのだろう。説明書はまた後でも読める。
とりあえずはこの場所から移動しなければ。
こうしている間にも、戦いが始まってしまうかもしれないのだ。

それから準備を整えたなのはは、デイバックとアタッシェケースを手に、翠屋を後にした。
翠屋を出たなのはの顔には、既に涙は浮かんでいない。
代わりに、今は亡きアリサの想いを胸に宿したなのはの瞳は、揺るぎの無い信念に燃えていた。
そんななのはの耳に、銃声と叫び声が聞こえて来たのは、それからすぐの事だった。
もちろんなのはの心に、それを無視するという選択肢は有り得ない。
気付いた時には、なのはは走り出していた。

――待っててね……すぐに私が行くから……!




「そんなところで何をしている?」
「……えッ!?」

シェルビー・M・ペンウッドは硬直した。
無理も無い。誰が自分を殺しに来るかわからないこの状況で、背後から突然声をかけられたのだ。
臆病者のペンウッドが、それに驚かない訳が無かった。

「え……あ……いや……あの……じゅ、銃声が……」
「………………」

ペンウッドの背後に立つのは、眼鏡の男――金居。
眼鏡の奥にギラつく瞳は、真っ直ぐに自分を見据えていた。
ペンウッドは、この目によく似た人物を知っている。
金居と同じように、眼鏡越しでありながら、その瞳から異様な威圧感を放つ人間を。
ペンウッドが知る限り最強の吸血鬼、アーカードと契約を交わした人間を。
その所為か、ペンウッドは、思うように言葉を紡ぎ出せなかった。

「そ、その……銃声が聞こえて……それで……」
「……行かないのか?」
「え……?」
「銃声が聞こえて……それでどうするんだ? すぐに駆け付けてやるのが、人間って奴なんじゃないのかい?」
「わ、私は……」

金居に問われたペンウッドは、その場での動きを完全に封じられてしまう。
実際自分は、銃声が聞こえたにも関わらず、歩き出せずにいたのだ。
アリサという少女に託された仕事を、勤めを全うすると誓ったものの、いざ銃声を聞いてしまえば、その足は再び固まってしまったのだ。
行けば殺されるかもしれない。
何の力も持たない自分が行った所で、何にもならないかも知れない。
そんな考えが足枷のとなって、ペンウッドの足を拘束する。
しかし、それでも動かなければならない。動かなければ何も始まらないのだ。
きっと、プレシアに歯向かおうとした、あのアリサという勇気ある少女ならば、すぐに駆け付けた筈だ。
ペンウッドは、アリサの事は何一つ知らない。
だが、きっとアリサは勇敢で、強く、気高い少女であったのだろう。
そんなことは、ペンウッドにもすぐに想像はついた。

41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:17:09 ID:Bnx3WmSl


42 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:21:47 ID:t0jWXOKz
支援

43 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 01:23:50 ID:AZdnZ5pY
ならば、どうする?
自分は、無能で、臆病者だ。決意を固めたにも関わらず、動き出せずにいるような男だ。
だがそれでも、ペンウッドは男だ。男の中の男なのだ。
だからペンウッドは、食いつくように金居を睨み、言った。

「わ、私は……行かねばならない……。
 こんな戦い……絶対に止めねばならない……!
 …………と、思うんだが……その……」

勇気を振り絞り、言った言葉。
最後の一言が無ければ、もっとかっこよく決まったかもしれないと思いつつ。
それを聞いた金居は、口元を吊り上げ、薄い笑顔を見せた。
――と、ここで、ペンウッドは一つの可能性に気付いた。

もしも……もしもこの男が、このふざけたゲームに乗っていたら……?
もしもこの男が、人を殺すのに何の躊躇いも持たないような男なら……?

実際、ペンウッドは何の躊躇いも無く他人の命を奪う奴らを大勢知っているのだ。
例えば、吸血鬼アーカードや、死神ウォルターを始めとしたHELLSING機関の連中。
例えば彼の有名な神父アレクサンド・アンデルセンを始めとする、法皇庁―ヴァチカン―、神罰代行13課―イスカリオテ―の連中。
彼らならば、まず間違いなく命を奪う事に躊躇いは感じないだろう。
目の前の眼鏡が、そんな化け物―フリークス―で無いという保証はどこにも無い。
この男が、ゲームに乗っているのかいないのか。
ペンウッドは、あと少しだけ勇気を振り絞って、それを聞き出す事にした。

「き……ききき君は……こ、このいかれたゲームに、の……乗っているのかね……?」
「……俺が? こんな茶番のような殺し合いに乗っているかだと……?」
「そ、そうだ……もしも君がゲームに乗っているのならば……わ、わわ私は、君を……
 こ、ここここから先に行かせる訳には……いかないね!」

震える声で、されど勇気に満ちた言葉を、金居にぶつける。
もしもこの相手がゲームに乗っていれば―――ペンウッドの命はここでおしまいだ。
だが、ペンウッドは決して目を閉じはしなかった。
勇気に満ち溢れた眼光で、真っ直ぐに金居を捉えて離さなかった。
ぶっちゃけ、ペンウッドは今にも恐怖に押し潰されそうな程にビビっていた。
だが、それでも、意思を曲げるつもりは無かった。と言うよりも曲げられなかった。
曲げるわけにはいけないのだ。ここで簡単に折れるようでは、あの少女から託された仕事を果たすことなど、夢の又夢だ。
だが、そんなペンウッドを嘲笑うかのように、金居の笑い声が響いた。
まるで恐怖に震える自分を笑っているかのような大爆笑。
もちろんペンウッドにとっては、心外この上無い。

「な、ななな何がおかしい!」
「ククク……失敬。震える“君”の姿が、あまりに滑稽過ぎたのでな」
「な……な……!」

“君”を強調して言う金居。
ペンウッドは、完全にナメられていると感じながらも、金居から視線を逸らさなかった。

「ふぅ……まぁいい。質問には答えてやろう。俺はこんなふざけたゲームには乗っていない。無駄に命を奪うつもりも無い」
「へ……あ……はは……は……」

金居の言葉を聞き終わると同時に、ペンウッドは一気に全身から力が抜けて行くのを感じた。

44 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:26:23 ID:Bnx3WmSl


45 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 01:29:43 ID:AZdnZ5pY
 


それからややあって、金居とペンウッドは、お互いの持つ情報を交換した。
ただし、金居は現時点では、自分がアンデッドであるという情報は伏せておいた。
無駄に恐れられるような理由を作ることもない。黙っていれば普通の仲間としてやっていけるのだ。
だから代わりに、このゲームを止めたいという旨だけを伝えた。
どうやらその思いはペンウッドも同じらしく、ペンウッドは次第に金居にも普通に口を聞くようになっていた。

「それで……カナイ君、私は思ったんだが……恐らくあの女は、我々の行動を正確には把握仕切れていない……んじゃないかな」
「ほう……何故そう思う?」
「あ、あのアリサという少女は、あの女に口答えをしたから殺されたんだ。君も見ただろう……?」
「確かにそうだな? あのアリサって女は口答えをしたから殺された。
 ならば堂々とゲームに乗らないと公言している俺達が殺されないのは、妙だな?」

ペンウッドの考察を聞いた金居が、くいと眼鏡を指で押し上げる。
これは非常に重要な鍵だ。
もしもプレシアがゲームの参加者を一人一人監視仕切れていないのだとすれば、
こちらもさらに作戦を練り安くなる。
だが一人一人監視仕切れていないとなると、この首輪には一体どんな効果があるというのだ?
恐らく無理な衝撃を加えれば爆発するというのは間違い無いのだろう。
他には何がある?
盗聴機能か? だがそれならば、ゲームに反発した時点で俺達はドカンの筈だ。
しかし、もしかしたら聞こえているのに見逃しているだけかも知れない。
プレシアの目的は俺達に殺し合わせる事。
ゲームに反発したという理由で一々首輪を爆ぜさせていては、それこそゲームにならない。
だとすれば、何故あのアリサという少女は殺されたのか。まだゲームも始まっていないというのに。
あれではまるで首輪の力を見せ付け、参加者に恐怖を植え付ける為だけに殺されたようなものだ。
と、そこまで考えたところで、一つの事実に気付いた。

“あのアリサという少女は、最初からみせしめにする為だけに呼ばれ、殺されたのだ”

それに気付いた時、自然に金居の顔は険しくなっていた。
別にあのアリサとかいう女が可哀相だとか、そういう事ではない。
あの女は、首輪の力を見せ付ける為だけに、みせしめの為だけに、最初から殺すつもりで、一人の人間を頭数に入れた。
仮にそうだとすると、それはなんとも計画的で、悪質な事実。
だが、何の為にみせしめ要員が必要だったのか?
そんなことは問うまでもない。それはまさしく首輪による恐怖を植え付ける為。
だが、最初にそれだけインパクトのある恐怖を植え付けておきながら、ゲーム本番で首輪が起動しないでは意味が無い。
やはり、この首輪は完璧に参加者を監視仕切れていないのだろうか。
それ故に、恐怖による洗脳を与えるの必要があった。だから最初にアリサという生贄が必要だったのか。
……現時点ではこれに関しては考えても答えは出まい。ここで一旦考えるのを止める。
どちらにせよ、この首輪は邪魔だ。監視が不完全というのならば好都合。
何としてもこの首輪を解除させてもらう。
それが、金居の決意であった。

46 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:32:16 ID:Bnx3WmSl


47 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 01:33:02 ID:AZdnZ5pY
 
「ペンウッド……一人一人監視が出来ていないのなら、首輪を解除する手立てもあるかもしれないぞ」
「え……え!? で、でも……どうやって!」
「それをこれから考えるのさ。」

金居は不敵に微笑んだ。それは、味方にしてはこれ以上無いという程に心強い表情だろう。
金居が頭に浮かべるのは、先程記憶した地図。確かエリアB−8に“工場”があった筈だ。
何の工場かは知らないが、工場ならばそれなりに工具も揃っているだろう。
それが、この首輪を解除する手がかりになるかもしれない。

「まずは工場へ向かう……この首輪について調べるんだ」
「こ、工場……? え……えっと……あ……」

すぐにデイバッグから地図を取り出したペンウッドは、工場の場所を確認する。

「で……でも、一体ここはどこなんだ……? ここが何処だかわからなければ、工場へは行けないぞ……?」
「チッ……分かっているさ。まずは現在地を把握しなきゃ、お話にならないってな。」
「あ……ああ、さっきの銃声の聞こえた場所なら、何か目印があるかもしれない」

そうだ。今は何も見当たらないが、そこまで行けば何か目印もあるかも知れ無い。
自分の命を危険に晒す事になるかも知れ無いが、金居は普通の人間になら負けるつもりは無かった。
ましてや、聞こえたのは銃声。銃による攻撃は、金居には通用しない。
それが、金居の確固たる自信を裏付ける理由であった。
先程は「無駄に命を奪うつもりは無い」と言ったが、もしもこの先に待ち受けるものが敵ならば、金居は容赦をしない。
無駄に命は奪わないと言っても、それは奪う必要が無ければ、の話だ。
相手が向かってくるなら、金居は何の躊躇いもなく命を奪う。躊躇う必要などどこにも無い。
相手は憎き人間なのだ。多くの同胞達が住む自然を、命を、奪い続けて来た人間なのだ。
人間共の手によって死んで行った同胞達を思えば、この会場にいる人間全員を殺したって足りないくらいだろう。
だが、幸い金居は地道にこつこつと人間を殺して行くつもりは無かった。
どうせゲームから脱出し、アンデッド同士のバトルファイトに優勝した暁には、人類など皆滅ぼすのだから。
人間共と手を組むのは、それまでの辛抱だ。それまでは、せいぜい正義の味方面して悪と戦ってやる。
そんな事を考えながら、金居は、ペンウッドと共に大通りを歩き続けていた。



「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……―――」

私は生きていてはいけない存在。
私を救おうとしてくれた少年を、エリオを殺してしまった私は、許されてはいけない存在なのだ。
柊かがみの思考は、心は、最早砕けて壊れてしまいそうな程に追い詰められていた。
私のせいでエリオは死んだ。
私が撃たなければ、エリオは助かったかもしれない。
されど、撃ってしまった。
撃つつもりが無かったなんて、ただの言い訳にしかならない。

48 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:35:40 ID:Bnx3WmSl


49 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 01:38:21 ID:AZdnZ5pY
もう嫌だ。こんな狂った世界にいるのは、もう嫌だ。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

死のう。今度こそ、これ以上誰かの命を奪ってしまう前に、死んでしまおう。
柊かがみは、先程落とした銃を拾い上げ、再び引き金に指をかけた。
銃口を米噛に密着させる。既にトリガーセーフティは解除されているのだ。
後は引き金を引いてしまえば楽になれる。もう、悩む必要は無くなる。
故にかがみは、引き金を―――

「待ちなさい!!!」

―――引いた。
同時に響く銃撃音。甲高い銃声が、再び響き渡る。
頭は打ち抜かれ、鮮血が吹き出し、その場に倒れ込む―――筈だった。
だが、いつまでたっても、血は流れないし、かがみの身体が崩れることもない。
そこに横たわっている筈の柊かがみの体は、どういう訳か、白い制服を着た人物に、抱きしめられていたから。

「自分で命を捨てるなんて……絶対にしちゃいけないことなんだよ……!?」

高町なのはは、瞳に涙を浮かべながら、柊かがみを抱きしめていた。
既に引き金が引かれた後で。突如現れたなのはは、力いっぱい、かがみの体を抱きしめていた。

「あ……あぁ……なの……は……?」

そう。柊かがみは、まだ死んではいない。
それどころか、かがみには、傷一つ付いてはいなかった。
この一瞬で起こった出来事。かがみには、何が起こったのかが解らなかった。
何故自分は生きているのか。
何故転校生が――なのはが自分を抱きしめているのか。
ただ、かがみには、白い衣服を身に纏い、自分を抱きしめてくれるなのはの事が、まるで天使のように感じられた。



高町なのはは、ひたすらに走った。
元々体力に自信がある訳でも無いなのはが、何故ここまで必死に走るのか。
それは、銃声と、女の子の悲鳴が聞こえたから。ただそれだけだ。
一体どんな状況になっているのか等、なのはは知る由も無い。
だが、今誰かが泣いているのだ。
自分はその声を聞いてしまったのだ。
ならば、それだけで理由は十分。これ以上、誰にも泣いて欲しくは無いから。
だからなのはは、全力で走った。

50 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:38:42 ID:Bnx3WmSl


51 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 01:40:57 ID:AZdnZ5pY
 
やがてなのはの目に映ったのは、自分の頭に銃を突き付ける一人の少女。
少女の、完全に崩壊し切った涙腺からは、とめどなく涙が溢れていた。
きっと辛い思いをしたのだろう。悲しい思いをしたのだろう。
なのはには、目の前の見知らぬ少女に何があったのかなど解らない。解るはずも無い。
だけど、一つわかるのは、目の前の少女は自分の手で命を断とうとしていること。

―――そんなこと、絶対にさせない!!

自分はアリサに誓ったのだ、救える限り全ての参加者を救い、ゲームを止めてみせると。
絶対に、誰一人として目の前で殺しはしないと。
故になのはは、走りながら目の前に一つのスフィアを浮かべた。
――アクセルシューター。
なのはが幼い頃から使っていた、初歩的な魔法だ。
レイジングハートが無い為に、一度に操れるスフィアの量もたかが知れている。
だが、あの少女が引き金を引く前にあの銃を弾き飛ばすだけなら、一つあれば十分。
なのはは直ぐにスフィアを飛ばし、続けて叫んだ。

「待ちなさい!!!」

声が届いた時、既に少女の手に銃は握られていなかった。
なのはが飛ばしたアクセルシューターが、見事に銃だけを弾き飛ばしたのだ。
空に向かって発射された銃弾は、どこにも当たる事無く、虚しい銃撃音を響かせた。
なのはは、デイバッグも、デルタギアケースも放り出して、すぐに少女に駆け寄った。
そのまま、何が起こったのかと、訳もわからずに固まる少女を、強く抱きしめた。

「自分で命を捨てるなんて……絶対にしちゃいけないことなんだよ……!?」

抱きしめると同時に、なのはは目頭が熱くなるのを感じた。
きっと、アリサならこうして、無理矢理にでも少女を止めただろう。
無理矢理にでも自殺など止めて見せただろう。
親友の想いを胸に、なのはは少女を強く、強く抱きしめた。

「あ……あぁ……なの……は……?」

少女が呟いた言葉に、なのはがぴくりと反応する。
この少女は自分の事を知っているのだろうか?
いや、知っていてもおかしくは無い。ミッドにおいて、高町なのははかなりの有名人なのだ。
寧ろ知らない人間の方が少数派だろう。
だからなのはは、そのまま少女を抱き続けた。



――なんで? どうして私は生きてるの?

かがみは、虚ろな瞳で、そんな疑問を抱いた。

何で死なせてくれないの?
まだ、私に苦しみ続けろっていうの?

「ね……辛かったんだよね、苦しかったんだよね……」
「…………やめて……」

なのはの言葉、どこかで聞いた事がある。
そうだ。エリオが言ってたんだ。
かがみの記憶に残る、エリオの言葉。皮肉にもなのはの言葉は、エリオと酷似していた。

52 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:41:18 ID:Bnx3WmSl


53 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 01:45:00 ID:AZdnZ5pY
それが、嫌でもエリオの事を思い出させる。

「でもね……死んだってどうにもならないんだよ……何にもならずに、そこで終わっちゃうんだよ!?」
「……やめて……離して……」

かがみが腕に力を込めるが、なのはの力はかがみよりも遥かに強かった。
強く抱きしめられたかがみは、身動きも取れずに、なのはの言葉を聞くしか出来なかった。

「一人で辛いなら、私がいるから……私が全部受け止めるから……!」
「………………」
「だから、自分で自分の命を捨てるなんて……寂しいことしないで……」
「……な……なの……は?」

なのはの声は震えていた。
それに気付いたかがみの頭は、一瞬洗い流されたかのように真っ白になった。

泣いてる? なのはが、私の為に泣いてくれてる?
何で? エリオを殺した私なんかの為に?
……そうだ、私はエリオを殺したんだよ……?
エリオを殺した私の為に? 何でよ……?

かがみの脳裏に焼き付いて離れない、エリオの笑顔。
あの優しい笑顔を、私は奪ったのだ。
そんな私が、生きていていい筈が無い。
頭の中で何度も呟いた言葉を、もう一度強く念じた。
でも、なのはに抱きしめられていると、そんな思いを忘れてしまいそうになる。
許されていいのかと思ってしまう。
本来ならば、それが最も楽な考え方なのだ。されど、かがみにとっては、それは最も辛い考え方であった。
忘れたくない、忘れてはいけないのだ。エリオの優しさを。自分の罪を。

「寂しいのなら、私が傍にいてあげる。いつだって私が一緒にいてあげるから――」
「……めてよ…………やめてよ!!」
「……!?」

かがみは、言葉を続けようとしたなのはを突き飛ばした。

「私は……人を殺しちゃったの……! エリオを殺しちゃったの!!」
「な……エリオ……を?」
「私のせいで……私がいなければ、エリオは死なずに済んだのに! こんな私が、許されていい訳がない!!」

どういう訳か、“エリオを殺した”という言葉を聞いたなのはの表情が固まった。
考えてみればそれも当然か。何せ自分は“人を殺した”のだ。
それを聞いて距離を取らない人間がいる訳が無い。

「だから……もう放っておいてよ……お願い」

ひとしきり叫んだ後、かがみは再び涙を流し、その場に崩れ落ちた。



―――そんな……エリオが……死んだ……?

なのはは、自分の耳を疑った。
仮にもエリオは、自分が育てたフォワードの一人。
いや、JS事件が終結した現在も、六課解散までは同じ部隊の仲間。
毎朝毎朝、エリオは早起きして、自分が組んだ訓練メニューを一生懸命熟していた筈だ。
そんなエリオが、死んだ?
有り得ない。そんな訳が無い。そんな話が信じられる筈が無い。
しかし、目の前で地に顔を伏して啜り泣く少女が嘘をついているとも思えなかった。

54 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:45:38 ID:Bnx3WmSl


55 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 01:48:29 ID:AZdnZ5pY
ふと、少女の周囲の血溜まりが目に入った。

―――これは、誰の血?

一つの疑問が浮かんだ。
見る限り、目の前の少女は無傷だ。
服は汚れてしまっているが、怪我をした形跡は見当たらない。
ならば、この血はまさか―――エリオの血?
だが、遺体はどこにも存在しない。
以上の状況から推測するに、エリオは死んではいない。
恐らく、錯乱した少女がエリオを撃ってしまったのだろう。
だが、エリオは辛うじて一命は取り留め、この場から一時退却した。それをこの
少女は自分が殺してしまったと思い込んだのだろう。
そう考えれば、エリオの遺体が無い事にも想像がつく。

「ねぇ、落ち着いて……私の話を聞いて!」

少女の肩を掴み、顔を上げさせる。
そのまま、少女の瞳を真っ直ぐに見詰める。
少女は、透き通るような青い瞳で、なのはを見詰め返した。

「私もね……貴女と同じなんだ。私も、私のせいで親友を殺しちゃったの」
「……え……?」
「でもね、だからって死のうだなんて思っちゃいけないよ!
 私が死んだって……アリサちゃんは、帰ってこないから……」
「え……アリサって……まさか……」

どうやら、アリサという名前には聞き覚えがあったらしい。
アリサの頭が爆ぜた瞬間、あれだけ大声で名前を叫んだのだ。
その名前を覚えていても可笑しくはない。

「きっと……アリサちゃんなら、誰の事も憎んだりしない……きっとアリサちゃんなら、この戦いを止めて欲しいって、願うと思うんだ……」
「…………でも……エリオは…………」
「エリオだって! ……君に死んで欲しいだなんて思わない筈だよ!!」
「…………!!」
「エリオは……君の知ってるエリオって男の子は、誰かを憎むような……誰かに死んで欲しいって願うような男の子だった……?」
「あ……あぅ……だ、だって……」

なのはの問いに、少女は奮えながらも、ゆっくりと首を横に振った。
そうだ。エリオが、誰かの死を望む筈が無いのだ。
なのはの知っているエリオという男は、どんな時だって、相手の事を気遣う事を忘れない、優しい男なのだから。

「ね……、違うでしょう? エリオは、そんなこと願わないでしょう?」
「あ……うぁ……で、でも……でも……」

何かに脅えているのだろうか。少女の様子が、明らかにおかしい。
少女の涙は、奮えは一向に止まる気配を見せない。
あと少し、あと一押しで少女は心を開いてくれそうなのに、最後の一押しが、なかなか押し出せない。
何故そんなにも自分を拒むのか、なのはにはそれがわからなかった。
だからなのは、自分の気持ちを伝える為に、再び少女を抱きしめた。

「…………!?」
「ねぇ……私のこと、エリオのこと……信じてくれないかな。」
「だ、駄目……離して!!」
「きゃっ!?」

しかし、少女を抱きしめようと、一歩踏み出した瞬間に、なのはは逆に突き飛ばされた。

56 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:50:09 ID:Bnx3WmSl


57 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 01:54:09 ID:AZdnZ5pY
何の受け身も取れずに、突然突き飛ばされたなのはは、地面軽く尻餅をついた。
だが、それでも諦めはしない。こんなことで諦めていては、誰かを救うなど到底不可能だからだ。
だから、すぐに立ち上がって、少女に詰め寄ろうとした、その時であった。

「来ないでっ!!」
「……!!」
「私と一緒にいたら……なのはまで死んじゃうから……! もう嫌なのよ……これ以上私のせいで、誰かが死ぬのは……」

少女の言葉の後、暫し続いた沈黙。
きっとこの子は、エリオを撃ってしまったことに余程の罪悪感を感じているのだろう。
もちろんエリオも心配だが、今目の前にいる少女を放っておくなど、なのはには絶対に出来なかった。
少女の心を開かせる為には、どうするべきか。
そうだ。名前だ。名前を呼んであげなきゃ、話にならない。
名前を呼ぶことからすべて始まるのだ。なのはは、そのことをよく理解していた。
故になのはは、その思いで、一歩足を踏み出した。

「君……名前は……?」
「……え……? な、何言ってるのよ……こんな時に……」

一歩踏み出したなのはから距離を取るように、少女も一歩後ろへと下がる。

「名前……教えてくれないかな……まずは、そこから始めようよ」
「あ、あんた……私の名前、知ってるでしょ!?」
「……え?」

刹那、なのはの表情は固まった。
いや、固まったのはなのはだけでは無い。
同じように、目の前の少女も、青ざめた顔で自分を見詰めている。

「な、何……なのは、まさかあんた……転校したばっかりだからって、もう私の名前忘れちゃったの……!?」
「ち、違う……! 君は何の話をしているの……!? 転校って……一体誰が!?」

転校したばっかりで?
もしかして、この子は自分の中学時代の友達か何かだろうか?
だが、そうだとしてもそれは4年以上も前の話だ。“転校したばっかり”という表現は明らかにおかしい。

「あんた、まさか……私が解んないの!? こんな時に……冗談はやめてよ!!」
「ち、違う……私は……私は、時空管理局機動六課、スターズ分隊隊長の高町なのは。君は何処かで、私に会ったことがあるの……?」
「な、何……何それ……こんな時に、そんな冗談やめてよ……! あんたは、陵桜高校3年B組の、高町なのはでしょ!?」
「冗談なんかじゃないよ……私は高校になんて行った事が無い! 君とは、これが初対面だよ……!」

言った後に、後悔した。
今の彼女の精神は、非常に不安定なのだ。そんな彼女に、「貴女なんて知らない」と言ってしまえば、どうなるか。
考えるまでもない。ようやく落ち着き始めた精神は、再び崩れ去るだろう。

「……そんな……なのはが……こんな事言う人だったなんて……」
「あ……ご、ごめんね……でも、本当に君とは初対面だと思うんだ。良ければ、君の話を聞かせてくれないかな……?」

なのはは、再び少女に近寄ろうと、一歩踏み出した。
きっと話せば、しっかり話し合えば、どんな相手だって解り合える。
その想いを胸に、少女との距離を縮める。
しかし―――その想いは、少女の叫び声によって、掻き消された。

「来ないでって言ってるでしょ!?」
「……!!」

凄まじい剣幕で怒鳴る少女に、なのははその足を止めてしまった。
同時に、なのはから少し離れた場所に出来た血溜まりから、紫の大蛇が飛び出した。

58 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 01:56:56 ID:Bnx3WmSl


59 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 01:58:02 ID:AZdnZ5pY
大蛇は、主人である柊かがみの叫びに呼応して、ミラーワールドから姿を表した。
己が空腹を満たす為。そして、主人を脅かす外敵から、主人の身を守る為に。
大蛇――ベノスネーカーの毒牙は、真っ直ぐになのはへと走った。
もちろん、それらはほんの一瞬の出来事。
ミラーワールドから突如として現れたベノスネーカーを、なのはが感知出来る筈も無かった。
しかし、なのはは気付かなかった。ベノスネーカーが迫るよりも速く、一人の男が走り出していた事に。

「え……な……何?」
「大丈夫か……?」

気付けば、なのはは見知らぬ男に肩を掴まれ、地面を転がっていた。
何が何だかさっぱり解らないという様子のなのはに、眼鏡をかけた男は告げた。

「危なかったな。お前、俺が来るのがあと一秒でも遅れてたら、あの蛇に喰われてたぜ?」
「え……へ、蛇……?」

男がくいと視線を血溜まりへと送る。
なのはも同じ方向を見遣る。
血溜まりの中に見えたのは、紫に輝く巨大なコブラであった。



「さて……シェルビー・M・ペンウッド。お前ならどうする? この状況」
「あ……え!? あ……わ、私なら……!? え……えーと……」
「もういい」

金居は、高町なのはと柊かがみが、抱き合ったり離れたりとを繰り返している様を、やや離れた物陰から窺っていた。
一緒にいる男……ペンウッドならばどう動くか。そんな質問をしてみるが、すぐに聞いた自分が馬鹿だったと後悔した。

「い、いや……その……カナイ君、やはり暫くは様子を見た方がいい……んじゃ、ないかな……?」
「……ほう。奇遇だな“ペンウッド君”、俺も同意見だ。」

静観を続けていると、ややあってペンウッドが自分の意見を発表してくれた。
ペンウッドの“カナイ君”に対抗し、嫌味たらしく“ペンウッド君”などと呼びながらも、金居は冷静に状況を把握する事にした。
まず、恐らくはあの茶髪の女が、紫の女を宥めようとしているのだろう。それは容易に想像がつく。
となれば、解らないのは先程の銃声。
一体誰が銃を撃ったのか。何に対して撃ったのか。
茶髪の女か? 有り得ない。
茶髪の女が銃を撃ったのであれば、あんな風に無防備で相手を抱きしめるという行動はあまりに不可解過ぎる。
ならば紫髪の女の方か? 普通に考えればそうだろう。
状況を見るに、恐らくは錯乱した紫の女が銃を発射。
なんとか回避した茶髪の女が、相手を落ち着かせる為に自分は無防備だとアピールしているのだろう。
そう考えれば、茶髪の女はこのゲームには乗っていない可能性が高いと思われる。
しかしながら、錯乱して銃を発射するような女と、無防備にも相手を抱きしめようとしている茶髪の女とでは、明らかに茶髪の方が不利だ。

60 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 02:00:24 ID:Bnx3WmSl


61 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 02:04:34 ID:AZdnZ5pY
どうする? 以上を踏まえた上で、茶髪を助けに入るか?
しかし、ここで俺が動けば、まず間違いなく紫の方は暴走するだろう。
もしかしたら、説得に成功する可能性だってあるのだ。
もう少しだけ様子を見よう。そう判断した金居が、再び静観を続けようと、物陰に隠れた、その時であった。

「な……なんだ……この金属音……凄い音が、聞こえるぞ……!」
「どうした……そんなもの、俺には聞こえないが?」
「いや……間違いないね……! 確かに聞こえるんだ。キィーンって!!」

やれやれとばかりに、金居はペンウッドに視線を送った。
ペンウッドは金属音が何処から聞こえるのかと、周囲を見渡していた。
金居は小さくため息を落とし、ペンウッドの肩を軽く叩いた。

「……いい加減にしてくれないか。金属音なんて……ッ!?」
「ど、どうした……?」

金居は、ペンウッドの肩からすぐに手を離した。
今の一瞬で、一体何が起こったのか?
聞こえたのだ、金居にも。確かに金属音が。
ならば何故、ペンウッドに触った一瞬だけ金属音を聞き取る事が出来たというのだ?
ペンウッドが、金属音を受信するアンテナの代わりになったから?
だとすれば、何がペンウッドをそうさせた?
アンデッドである俺は、全てにおいて人間の感覚を上回っているのだ。
そんな自分が聞き取れずに、ペンウッドだけが聞き取れる。
自分に無くて、ペンウッドにあるもの……?

「ペンウッド……お前、何か変な物を持っていないか? ……恐らく、今お前が身につけている物の中で、だ」
「え……あ、あぁ……えっと……そういえば、さっき地図を確認した時に、バッグから取り出した物が……あぁ、あったあった――」
「貸せっ!!」

ペンウッドがポケットから青い長方形を取り出した。
金居は、間髪入れずにペンウッドからそれを引ったくった。

――キイイイィィィィ―――ィィィィィィィイン……

同時に聞こえ出した金属音。
金居は、この金属音を突き止めるべく、周囲を見渡した。

「あ……音が聞こえなくなっ――」
「黙っていろッ!!」
「え……あ……は、はい!」

小さく呟こうとしたペンウッドを、金居が制する。
金属音が聞こえなくなっただと? そんなことは言われなくてもわかっている。
何せ、今はこの長方形を自分が持っているのだから。
虎の顔に似た紋章が刻まれた長方形を握りしめ、金居はきょろきょろと周囲を見渡す。

――どこだ……どこから聞こえる!?

そうして周囲を見渡し続けた結果、金居は一つの答えにたどり着いた。
今にも一触即発な空気に包まれた、茶髪と紫の女の、すぐ近く。
そこに出来た血溜まりの中に、金居がこれまで見た事も無いような巨大なコブラが、今にも飛び掛からん勢いで、茶髪を睨んでいたのだ。

62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 02:04:44 ID:Bnx3WmSl


63 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 02:07:51 ID:AZdnZ5pY
金居には、それが獲物に狙いを定めた蛇の目だということが、直ぐに理解出来た。
それはつまりどういうことか――
簡単な事だ。それ即ち、あの茶髪の女が危ないという事。

「チィ……ッ!!」

そう判断するが早いか、金居は走り出していた。
全力疾走で、あの女を助ける為に。



「な……何……また……!?」

柊かがみもまた、目の前で起こった出来事を把握出来ずにいた。
自分が叫ぶと同時に、エリオの時と同じように、血溜まりから紫の異形が、大蛇が飛び出したのだ。
あの忌ま忌ましい紫の姿、決して忘れはしない。
自分を救おうとしてくれたエリオを、血溜まりの中に引きずり込んだ化け物だ。
あの化け物は、今度はなのはの命までも奪おうとした。それは、なのはが自分に優しくしようとしたから?
やはり自分は許されてはいない。ずっと、一人ぼっちで苦しみ続けねばならないのか。
せめてもの救いは、今回はなのはの命が助かった事。
見知らぬ男が、なのはの肩を掴んで、そのまま倒れ込むような姿勢で、大蛇の攻撃を回避したのだ。
良かった、と安心したのもつかの間。
直ぐに、再び現れた大蛇が、なのは達へと飛び掛かった。

「だめっ!!」

かがみが叫んだ。
今度こそ間に合わない。今度こそ、大蛇はなのは達を飲み込むであろう。
そう思い、かがみは固く目を閉じた。
これ以上、人が死ぬところを見たくは無かったから。
やがて、かがみがゆっくりと目を開けると、そこには誰も予想し得なかった光景が広がっていた。

―――な、何……あれ……

かがみが、驚愕の表情を浮かべながら、尻餅をついて後ずさる。
それは、かがみの常識では考えられない光景であったから。
大蛇を“怪獣”とするならば、そこにいるのはまさに“怪人”。
まるで黄金のような装甲を煌めかせた“怪人”が、巨大な双剣で“怪獣”を受け止めているのだ。
見れば、大蛇に喰われる筈であったなのはもまた、自分と同じように目を丸くして、怪人を見ていた。



金居には、紫の大蛇――ベノスネーカーが、再び自分を、なのはを襲う為に姿を現すであろう事など、容易に想像がついていた。
あの大蛇が、ミラーモンスターが、一度狙った獲物をそう簡単に諦める訳が無いのだから。
しかし、敵は鏡の世界の住人。攻撃が失敗したとあればすぐにまた鏡の中へと逃げ帰る。
攻撃さえ出来れば、手の打ちようもある。
されど、すぐに鏡の中へ逃げられていては、こちらも攻撃のしようが無い。
同じリングでの戦いならば、最強のカテゴリーキングである自分が、あの程度の敵に敗れることなど有り得ないというのに。

―――この蛇と対峙するにはどうすればいい?

方法はある筈だ。その方法を見付けるべく、金居は思考を巡らせる。

64 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 02:10:21 ID:Bnx3WmSl


65 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 02:12:03 ID:AZdnZ5pY
ベノスネーカーが狙っているのはこの茶髪の女。
つまりは、ベノスネーカーは再び“こいつ”を襲う為に姿を現す筈なのだ。
ならば、取れる方法は一つだ。
この女で敵を引き付け、鏡から飛び出した瞬間に抑える。
金居がこの作戦に思い至るまで、ほんの数秒。
直ぐにベノスネーカーが飛び出して来たのを確認すると、金居は女を――なのはを、傍らへと突き飛ばした。
目を丸くするなのはを尻目に、金居は自らの姿を、本来の―――ギラファアンデッドの姿へと変化させた。
黄金色に輝く体は、まさにアンデッドの王たる風格を漂わせており、そこに顕在するだけで、異様な威圧感を放っていた。
ギラファアンデッドの反射速度は、アンデッドであるが故に人間のそれを大きく上回っている。
それ故に、今の彼には鏡から飛び出すベノスネーカーの速度など、止まっているに等しかった。
ギラファはすぐに両腕を拡げ、その手にクワガタムシの大顎を模した、銀の双剣を作り出した。
作り出された双剣は、直ぐさま金と黒に変色・硬質化し、独特な輝きを放つ。

黄金の剣――ヘルター。
黒鉄の剣――スケルター。

それは、ダイアのカテゴリーキング、及びエースにのみ所持する事を許された、唯一無二の破壊力を誇る双剣。
それらを交差させて構え―――ベノスネーカーが飛び込んで来るのに備える。
交差したヘルターとスケルターは、小さな赤い稲妻を発し―――

「シェアァァァアアアアアアアッ!!!」

掛け声と共に、それをベノスネーカーへと振り下ろした。
本来なら仮面ライダーの装甲であろうが、高出力のビームにより作られたスクリーンであろうが無条件に粉砕し、
吹き飛ばす程の威力を誇る一撃が、ベノスネーカーの頭部に炸裂する。
しかし、ベノスネーカーを吹き飛ばすまでには至らなかった。
それは、ギラファにとってとても有利とは言えない、二つのファクターが彼を邪魔したから。
一つは、装着された首輪によって成される、弱体化の制限。
一つは、2メートル程の身長しかないギラファと、そのサイズは10メートルをも越えるミラーモンスターとのサイズ差。
それらの条件がギラファの足枷となり、ヘルター・スケルターによる攻撃の威力を緩和したのだ。
しかし、それでもベノスネーカーが苦痛に表情を歪ませていることは、ギラファには手に取るように分かった。
自由に鏡に逃げ込める筈のミラーモンスターが、それをしないのが大きな証拠だ。
今ならコイツを殺せる。そう判断したギラファは、すぐに双剣を構え直した。

66 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 02:12:30 ID:Bnx3WmSl


67 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 02:16:10 ID:AZdnZ5pY
 
「シェエアァッ!!」
一撃目。振り下ろすヘルターが、激しい火花を散らしながら、ベノスネーカーの頭を切り付ける。
「シェアッ!!」
二撃目。ヘルターに続けて、右手で構えたスケルターで、ベノスネーカーの頭部を横から薙ぎ払う。
「セヤァッ!!」
三撃目。ヘルターとスケルターを続けてベノスネーカーの頭へ叩き込み、そのまま四撃目へと入る。
続けて斜め掛けに振り上げた双剣は、ベノスネーカーの下顎を叩き割らんと、激しい火花を散らす。
流石に堪えたのか、ベノスネーカーは一度ギラファから距離を取ろうと後退するが―――
ギラファの双剣は、既に大きく振りかぶられ、最後の一撃を放たんと、眩ゆい光を放っていた。
左手に持ったヘルターを低く、右手に持ったスケルターを高く構え、腰を低く落とす。
黄金に輝くヘルター。紫紺の光を放つスケルター。
それらは、大蛇に死を齎すべく、嫌と言う程に眩しく輝いていた。
そして―――

「トゥアッ!!!」
『ッシャァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?』


双剣は、手負いの大蛇へと勢い良く振り下ろされた。
まるでビームでも纏っているかの如く光り輝く双剣は、ベノスネーカーの頭部を綺麗に切り裂いた。
ベノスネーカーは、余りの激痛に狂ったように叫びながら、地面をのたうちまわる。
ギラファはゆっくりと双剣を降ろし、苦しみに悶えるベノスネーカーを嘲笑するが―――

『グォォォオオオオオオオッ!!!!』
「な……!?」

突如として鏡から現れた“銀色のサイ”が、その巨大なツノで、ギラファに突進した。
流石のギラファもこの攻撃は予想し得なかっただけに、右脇腹に突進による一撃を貰う。

「チッ……もう一匹いたのか!!」

愚痴を漏らすギラファ。
そう。もう一匹居たのだ。
本来ならば一つのカードデッキ毎に契約モンスターは一匹なのだが、
柊かがみに支給された王蛇のカードデッキには、どういう訳か契約のカードが三枚入っている。
内一枚は、ベノスネーカーとの契約。
そして二枚のカードは、銀色のサイ――メタルゲラスと契約されているのだ。
これというのも、このカードデッキの元の所有者が、メタルゲラスと契約していた“仮面ライダー”を殺害し、そのモンスターを奪ったのが原因。
それ故に、王蛇のカードデッキは一つで二つ分のデッキとして機能しているも同然なのだ。
もちろん、今初めてモンスターと交戦したギラファに、そんな事がわかる筈も無いが。

ギラファは、周囲を見渡した。
現在の状況を纏めると、少し離れた場所でこの戦いを見守るなのはと、ペンウッド。
のたうちまわりながらも、なんとかミラーワールドへと帰還した蛇と、柊かがみを守るように佇むサイ。

―――ん? 何だ、この状況は。

と、ふとギラファの頭に、疑問が生まれた。
逃げようとする蛇は問題無い。放っておいても、俺が奴に敗れることは有り得ない。
問題なのは、サイだ。何故にあのサイは紫の女を守るようなポジションで立っている?

68 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 02:17:31 ID:Bnx3WmSl


69 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 02:20:36 ID:AZdnZ5pY
それはまるで、主を守る家来のように。
あのサイは、女を守るように立っている。
あの蛇は、女の激情に応えるかのように、茶髪の女を襲った。
以上の事柄から、ギラファは一つの仮説を立てるに至った。

あの女が、化け物共を操っている。
または、あの化け物共は、女を守る為に戦っている。

ならば、あの女を殺してしまえばどうなるか?
それはもちろん誰にもわからないが、仮にあの女が死んだところで金居には何の悲しみも無い。
あまつさえ、あの女が死に、モンスターが暴走したところで、金居にとっては何の恐怖も無い。
所詮女は見知らぬ“人間”。
暴走したモンスター共も、奴ら以上の絶対的な“力”を以て捩伏せればいいだけの話。
ギラファは、明確な殺意を持って、紫の女――柊かがみを殺すべく、歩き始めた。



―――な、何よ……!? 何よ何よ、何なのよアイツ!?

柊かがみは、脅えていた。ただただ、脅えていた。
恐怖の対象は、圧倒的な力で大蛇を捩伏せた、“金のクワガタ怪人”。
クワガタか何かは知らないが、頭にはクワガタムシと同じようなツノがあるし、全身にもクワガタムシの大顎に似た突起がある。
だから、柊かがみの中で、あの怪人はとりあえずクワガタ怪人になった。
あのクワガタ怪人は、エリオを殺した憎き大蛇を、圧倒的な力でやっつけてくれた。
本来なら、それは頼もしい味方と思えたのかも知れないが―――柊かがみには、どうしてもそう判断出来なかった。
それは、あのクワガタ怪人が放つ異様なまでの殺気が原因なのか。はたまた別の何かなのか。
それはかがみの知った所では無いが、とにかく怖かった。ただひたすらに怖かった。
大蛇を切り刻み、嘲笑するあの“化け物”が、怖くて怖くてたまらなかった。
やがて、かがみの恐怖に応えた銀のサイ――メタルゲラスが、鏡の中から飛び出した。
クワガタ怪人に一撃を与えたメタルゲラスは、まるで自分を守るとでも言いたげに、かがみの眼前で吠えた。
しかし、今のかがみの目には、メタルゲラスもまた自分を脅かす化け物の一つにしか見えず。
かがみはとにかく、このクワガタの化け物から、サイの化け物から逃れようと、駆け出した。
しかし、過度の恐怖と混乱の為か、思うように脚が動かない。
すぐに転んだかがみは、涙を浮かべながら、顔を上げた。
視界が霞んでよく見えないが―――霞んだ目にも映る、暗闇に輝く、金と銀の化け物。
お互いに争っているらしく、金が振るう双剣と、銀が振るう巨大な腕が激突し、火花を散らしていた。

―――もう嫌だ! 冗談じゃない、どうして私ばっかりがこんな目に合わなきゃならないのよ……!

涙を流しながらも、かがみはそう強く念じた。
出来る事なら、二人共私の前から消えてくれ!と、そう念じた。
するとどうしたことか。銀のサイが、鏡の中へと戻っていったのだ。
訳もわからずに、ただただ後ずさりするかがみ。
ポケットの中には確かにカードデッキがあるのだが、かがみはそれを知らない。
しかし、メタルゲラス達にとっては、カードデッキを所有するかがみは、まさしく“仮面ライダー”なのだ。
即ち、カードで戦い、モンスターや他のライダーを倒し、自分達に餌を与えてくれる、“主人”。
力を持っている筈のかがみが、自分達に消えろと願うということは、かがみが自分で戦うという事。
少なくとも、メタルゲラスはそう判断した。

70 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 02:21:18 ID:Bnx3WmSl


71 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 02:25:16 ID:AZdnZ5pY
しかし、もちろんかがみには“仮面ライダー”も、カードデッキを持つ者の運命も、何一つ分かる筈が無かった。
故にかがみは、迫り来るクワガタ怪人―――ギラファアンデッドから逃げるように、ただただ後ずさることしか出来ない。
やがて、だんだんと距離を詰められる。しかし、かがみには逃げ伸びる手段など存在せず。

「どうした? モンスター共に逃げられて、戦う気が失せたか?」
「い、嫌……来ないで……」
「……悪いが、お前が生きていればいつまた襲われるか分かった物じゃないんでね。」

言われたかがみは、涙を浮かべながらも、ギラファの鋭い眼光に睨み付けた。
自分のせいで誰かが襲われる?
そんなことは、エリオの時と、それからなのはの時とで、十分に解っている。
だから自分は“許されない存在”なのだ。自分が生きていては、誰かを傷付けるだけなのだ。

―――私だって……死にたかったわよ

心の中で、強く念じた一言。
そうだ。さっきだって、自分で死のうとした。死ぬのは怖く無かった。
かがみもそれを、ギラファに言おうとするが―――

「わ、私だって……」
「……ん?」
「私だって…………!」

何故だか、その言葉は口に出来なかった。
さっきまでは何も怖く無かった筈なのに、どうして?
この怪人に恐怖を感じてしまったから?
そもそも、死ぬと決めた人間が恐怖を感じる事自体がおかしくはないか?
そんな考えが、かがみの頭を駆け巡る。
いつからだ? いつから自分は助かりたい等と考えるようになった?
エリオを殺されて――いや、私がエリオを殺して、それで死のうとした筈だ。
しかし、それは出来なかった。なのはに止められて、抱きしめられて―――

―――そっか、なのはに会っちゃったから……なのはに抱きしめられちゃったから……

そして、一つの結論に至った。
なのはに出会った時点で、死の覚悟は揺らいでしまっていたのだと。
今はただ、この化け物が怖い。
この化け物から逃げ出したい。エリオへの償いは、その後でもいい。
こうしてまともに恐怖を感じられるということは、ようやくものを普通に考えられる状態にまで頭が回復したということ。
もしもなのはと出会う前にこの化け物に出くわしていたなら、恐らく自分は何の抵抗もなく殺される事を選んでいたであろう。
かがみは、心のどこかで、なのはに感謝の念を抱きながらも、目前に迫るギラファアンデッドから逃れようと、後ずさりを続ける。
暫く逃げたところで、背中に何か、硬い物が当たるのを感じた。

―――何よ!? こんな時に!

苛立ちを感じながら、背中に当たった何かを掴み、どけようとするが。

「(これは……!?)」
「どうした……そこまでか? 女」

立ち止まると同時に、ギラファがヘルターを構えた。
しかし、かがみは動じない。何故なら、今のかがみは、完全に“ぶつかった何か”へと意識を集中させていたから。
それは、ついさっきまでなのはが持っていた物。しかし、自分は何故かその“箱”に、見覚えがある気がした。
次の瞬間、かがみは夢中になって箱を回収し、その中身を確かめていた。

―――何コレ……知ってる……何だかわかんないけど、私はコレを知ってる……!

小さく呟きながら、かがみはそれを――“デルタギアケース”を抱え、ギラファを睨み付けた。

72 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 02:26:02 ID:Bnx3WmSl


73 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 02:29:31 ID:AZdnZ5pY
何故だかは、自分にもわからない。
だけど、自分は確かにこのアタッシェケースを、この中のベルトを知っていた。
このベルトが装着者を選ばずに力を与えるものだと言う事も、この力ならば目の前の驚異から助かる事が出来るということも。
何故だか、かがみは知っていた。知っているような気がした。
故にかがみは、デルタギアケースの中に入ったユーザーズガイドを開きもせずに、すぐにベルトを自分の腰に装着した。
ケースに入っていたビデオカメラ――デルタムーバーを、ベルトに接続する。
グリップ式の携帯電話――デルタフォンを、自分の顔に近付ける。
グリップの引き金を引き、マイクをオンにする。
口元にデルタフォンのマイクを近付け―――

「変身」

―――Standing by―――

デルタギアとは、音声認識システムを採用した、“最強”のライダーズギア。
変身、と音声入力すれば、それだけでデルタフォンは変身待機状態に入るのだ。
あとはそれを、ベルトに装着したデルタムーバーへと接続するだけ。
かがみはそのまま、勢いよく、デルタフォンをデルタムーバーへと叩き込んだ。

―――Complete―――

同時にかがみの体を、ベルトから伸びた白いラインが走る。
白いラインは青白い光を放ちながら、デルタのスーツを形成して行く。
やがてかがみの体は、完全にスーツに包まれ、その姿を仮面ライダーデルタへと変えていた。

「馬鹿な……あの女が、仮面ライダー……だと?」

ギラファが呟く。
しかしデルタはそれに答えること無く、ただ燃えるような赤い瞳でギラファを見詰めるのみ。
次に周囲を見渡した。なのはと、一緒にいる男が驚愕の表情を浮かべている。
それはいい。驚きたいのは自分だって同じだ。
次に、自分の両手を見た。真っ黒なスーツに、白いラインが走っているのが見て取れた。
この感覚は何だろう? どういう訳か、このスーツを身に纏ってから、力が漲ってくる感覚がする。
それに何よりも―――

―――殺したい。目の前のアイツを殺したい。ううん、みんな殺してしまいたい。

沸き上がるのは、凄まじいまでの殺意と、この力を使って戦いたいという願望。
この力を使っている限り、自分は負けない。負ける気がしない。
そんな自信からか、かがみは――いや、デルタは、すぐにギラファの眼前まで走って、距離を詰めた。

「シェァッ!」
「(遅いッ!)」

目前まで接近されることを許してしまったギラファは、すぐにデルタに向かってスケルターを振り下ろす。
だが、デルタの力を身に纏ったかがみには、そんな攻撃はまるでスローモーションのように見えた。
だからデルタは、スケルターによる一撃を簡単に回避し、ただ力任せにギラファの胸板を殴り付けた。
どうやらパンチ一発ではまだ足りないらしい。ならば次を叩き込めばいい。
今なら、どんな場所にでも打撃を入れられる。そんな自信がある。
デルタは一瞬怯んだギラファのボディに、間髪入れずに前蹴りを叩き込んだ。
1メートル程後方へと跳ね飛んだギラファは、受け身を取りながらも地面に激突する。

74 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 02:30:20 ID:Bnx3WmSl


75 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 02:39:28 ID:AZdnZ5pY
 
「クッ……貴様……」
「(行ける。これなら、コイツにだって勝てる! コイツを、殺せる!!
 ううん、コイツどころじゃない! そんなもんじゃない、誰にだって勝てる!!)」
「調子に乗るなよ……!」

悔しそうな瞳で、自分を見つめるのがわかる。
勝利を確信し、仮面の下で笑い始めたデルタ。
それを尻目に、ギラファは起き上がり様に、両手に握った双剣を輝かせる。

―――あの光、さっきの蛇を倒した時の……!

そうだ。かがみは、あの光を見た事がある。先程の戦いでベノスネーカーを痛め付けた攻撃だ。
どうする? どう対処する?
あんな攻撃を喰らえば、恐らくはデルタのスーツでも相当なダメージを受ける筈だ。
しかし、どういう訳か逃げる気にもならない。アイツを叩きのめさなければ気が済まないのだ。
デルタドライバーの大容量ハードディスクに記録された、かつての装着者達の戦いが、かがみの脳に直接トレースされる。
その経験と、デルタの力により跳ね上がった感覚。
そして、デルタに搭載された悪魔のシステムが、かがみに絶対的な自信を与える。
デルタの力に溺れ切ったかがみが出した結論は、“あの一撃を回避して、再び踏み込んで攻撃する”という至って単純なもの。
故にデルタは、どちらの方向にでも回避出来るように身構える。
一方で、ギラファも双剣を振り上げ、攻撃体勢に入る。
ギラファが双剣を振り下ろした瞬間に、自分は移動を開始する。
その為に、ギラファの動きに全意識を集中させるが―――

「も……もう止めてくれ!!」

―――それは、思わぬ邪魔が入った事により、中断された。
突然の大声に、ギラファもデルタも、動きを止めて、声が発せられた方向に視線を送る。

「ペンウッド……」

再び呟いたギラファ。
視線の先にいるのは、なのはと一緒にいた中年の男だ。
全身をガタガタと震わせていることからも、勇気を振り絞って声を張ったのだろう。
まずはあいつから殺してやろうかという考えが、かがみの頭を過ぎる。
今なら無防備なペンウッドは、軽く殺せる筈だ。
そう思ったデルタが、ペンウッドへと方向展開しようと、一歩踏み出すが。

「よそ見を……するなッ!」
「……きゃっ!?」

ほんの一瞬の隙をついて、ギラファがデルタの間合いへと踏み込み、ヘルターを振り下ろした。
火花が散り、デルタの装甲が斬り裂かれ、痛々しい傷が残る。
それでも容赦はせず、もう一閃。今度はスケルターによる斜め掛けの一撃。
二撃目の衝撃で、デルタの胸に×字型の傷が付く。だが、ギラファの猛攻はまだ終わらない。
ヘルター・スケルターで、横払いに叩き付けるように、デルタを殴り飛ばした。
初撃からここまでの繋ぎ。秒数で数えるならば、三秒にも満たない程の速度。
ろくに受け身をとることも出来ないデルタは、最後の一撃による衝撃で、地面にたたき付けられた。
同時にベルトのロックも外れ、デルタドライバーはかがみの足元に落下した。
デルタの全システムを管理するデルタドライバーが外れた。それが意味するのは、デルタの変身解除。
力を失ったかがみの前に、ギラファが迫る。突き付けられた金色の剣が、かがみの表情を強張らせる。

「終わりだな。仮面ライダー……死ね」
「(なんで……!? そんな訳ない! 私が負ける訳ない!!)」

小さな声で呟いたギラファは、金の剣を振り上げた。
だが、かがみはそんなことは認めない。最後の最後まで抗ってやろうと、右腕を突きだすが―――

76 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 02:39:57 ID:Bnx3WmSl


77 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 02:48:46 ID:AZdnZ5pY
  
「……何だコレは!」
「……え?」

振り上げられたその剣が、かがみへと振り下ろされる事は無かった。
ギラファの身体を、ピンクに輝く光が拘束しているのだ。
仮にもダイアスート最強のカテゴリーキングであるギラファの動きを止めるには、相当な力が必要な筈だ。
それ程の力の発生原はやはり―――

「そこまでだよ。金居君」
「まさか貴様……!」

かがみの目の前で静止したギラファが、少し離れた場所でこちらを指差すなのはを睨んでいた。
正直言って、かがみには何が何だかわからなかった。
魔法を全く知らないかがみに、現状を理解出来る訳が無いのだ。
故になのはが用いたバインドにも全く心辺りが無い。
やがてギラファの姿は、次第にスーツを着た眼鏡の男へと戻っていた。
同時にピンクの光も消え、そこにいるのは金居とかがみ。ただの男女二人となる。
だが、この男は、さっきまで化け物に変身していた男なのだ。
人間の姿になったからと言って、信用など出来るものか。
かがみは、すぐに地面に落ちたデルタギアを回収。
次に、自分に接近しようとする金居に手を翳した。

「貴様……」
「近寄らないで! このベルトは誰にも渡さない!」
「なっ……うおっ!?」

同時に、かがみの手から発せられた電撃は、人間態の金居を弾き飛ばした。
どうやら人間の姿を取っている間は、さっきの馬鹿げた力は使用出来ないらしい。
――まぁかがみにそんな判断をする余裕は無かったが。
かがみには最早、何故自分が電撃を放てたのかなど、どうでも良かった。
ただ、笑いが込み上げてくる。どういう訳か、自分は力を手に入れたのだ。
それが何の力なのか。何故自分に与えられたのか。そんなことはもうどうだっていい。

「あはは……あは、あははははははははははははははははははははははははッ!!」

気付けば自分は、狂ったように笑いながら、周囲に置きっぱなしにしていたデイバッグを回収していた。
デイバッグは三つあったが、どれが自分のものだとか、そんなことももうどうでもいい。
全部持って行けばそれでいいのだ。多分どれか一つはエリオのものだろう。
だからかがみは、持っていたデルタギアも、デルタギアケースも、無理矢理デイバッグに押し込んだ。
何故自分がこんな事をしているのか?
簡単な話だ。今のかがみは、他人を殺すことしか考えていないのだ。
この力を使い、他人を殺し、ゲームに生き残る。
自分以外が皆死んでしまえば、自分は家に帰ることが出来るのだ。

「アハハ、アハハハハ……アハハハハハハハハハ……アーッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!
 皆……みーんな殺してやるッ!! 私が優勝するんだ!! 優勝は誰にも渡さないッ!!
 アハハハハハハ! アハハハ、アーッハハハハハハハハハッ!!!」

目を剥き出し、口を馬鹿みたいに開けながら、かがみは叫んだ。
どういう訳か、笑いが止まらなかった。愉快で愉快で、たまらないのだ。
それもその筈だろう。自分はこんなにも素晴らしい力を手に入れたのだから。
これがあれば誰だって自分には敵わない。どんな奴だって簡単に殺すことができるのだ。
皆、皆殺す。このベルトを使って、一人残らず殺すことで、この悪夢は終わらせられる。
そうだ、それが一番手っ取り早いのだ。そうしたら、またつかさや、こなた達と一緒に、平和な生活に戻れるのだから。
その考え自体がデルタギアの持つ“悪魔のシステム”によるものだとも知らずに。
かがみはすぐに、デイバッグを抱えたまま走り出した。



78 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 02:49:02 ID:Bnx3WmSl


79 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 03:01:20 ID:AZdnZ5pY
今はこのまま逃げて、態勢を立て直す。
どういう訳か、このベルトを使ったことによる疲労が、半端ないのだ。
だからかがみは、宛てもなく、とにかく走り出し、市街地の闇の中へと姿を消した。


 
なのはは、かがみの豹変ぶりに、素直に驚いていた。
いきなり笑いだしたと思ったら、すぐに走っていってしまったのだ。
危なすぎる。あれは絶対に危なすぎる。なのはもすぐに追いかけようと走り出すが―――

「君……ちょっと、待ちなさ――」
「やめておけ」
「……ッ!?」

走り出そしてすぐ、金居がなのはの前に手を突き出した。
咄嗟に、なのはも動きを止めてしまう。

「あんたも見ただろう? あいつは狂ってる。おまけにモンスターまで付き従えてる。
 追い掛けたところで、あんたの寿命を縮めるだけだ」
「……それは……」

金居の言葉に、なのはは顔を背けた。言い返す言葉が思い付かなかったからだ。
悔しいが、少し状況をまとめて、出来ることならばこの二人と一緒に行動した方がいい。
なのはは、表情を曇らせたまま、あの少女を追いかけることを断念した。

それからややあって、なのはは金居とペンウッドと自分の持てる情報を交換した。
金居達から聞き出した情報は、恐らくプレシアはこの首輪で一人一人の動きを正確に把握仕切れていないということ。
金居達二人は、この首輪を解除する為にも、工場を目指しているということ。
以上の情報を聞いたなのはは、次に自分の持てる情報。プレシアは恐らく、自分の娘を蘇らせるのが目的という事。
それから、自分とフェイトという少女が見た、プレシアの結末を話した。
あとは三人それぞれの簡単な自己紹介。

このペンウッドという男は、自分が元いた世界――即ち97管理外世界の、英国海軍の人間だという。
それなりの地位も持っているようだが、そうなるとなのはには、このデスゲームの参加者がどういう基準で選ばれているのかが解らなくなって来る。

「あの……失礼ですが、時空管理局に知り合いは……?」
「え……あ、ああ……いるよ。三人程」
「なるほど……やっぱり……」

英国の海軍の人間ならば、例え管理局に知り合いがいたとしてもそれは六課とは関わりの無い人間だろう。
そう思ったなのはは、三人の名前までは聞かなかった。いや、そんなことよりも重要な事に気付いたからだ。
そうだ。アリサと、このペンウッドという男性に共通していること。それは、管理局員を知り合いに持っているということだ。

「恐らく、このデスゲームの参加者は、管理局員……それから、管理局員を知り合いに持つ、地球の人間が呼ばれているんだと思います……
 だから私の知り合いも、ペンウッドさんも――」
「いないぜ」
「――え……?」

なのはの言葉に割り込みをかけたのは、自分の隣に立っていた眼鏡の男――金居。

「いないぜ。俺にそんな知り合いは」
「そ、そんな……」
「ここに呼ばれた中で俺の知り合いと言えるのは……ジョーカーとキング、カブトの三人だけだ」

金居が名簿を取り出し、サラっと言ってのける。
金居という男が、97管理外世界において“アンデッド”という存在で、一万年前から種の存続をかけた戦いを続けているという話は聞いた。
俄かには信じ難いが、先程見た金色のクワガタムシのような姿が、それを証明している。
恐らくはクワガタムシ種の化身なのだろう。
自分の世界で、人知れずそんな戦いが繰り広げられていたというのは非常に驚いたが、自分のやっている仕事だって一般人が聞けば十分驚かれる内容だ。
故に金居を信じたなのはは、そのまま話を続けた。

80 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:02:26 ID:Bnx3WmSl


81 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:02:45 ID:7kvSPCbM


82 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:03:32 ID:7kvSPCbM
 

83 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:04:30 ID:7kvSPCbM
 

84 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:05:28 ID:7kvSPCbM
 

85 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:06:06 ID:rVUIS+Pp
 

86 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:11:44 ID:Bnx3WmSl


87 :残る命、散った命 ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 03:12:35 ID:AZdnZ5pY
 
「でも……じゃあ一体どういう基準で参加者が選ばれたのか……」
「そんなことは今気にすることなのか?」
「う……た、確かにそうだね……」

しかしなのはの頭に妙に引っ掛かるのが、さっきの紫髪の少女。
彼女は、どういう訳か、自分と知り合いであるかのような言い草だった。
しかし、もちろん自分にはあの少女との面識は一切無い。
金居の言うように、頭が狂っていると考えればそれまでだが。
なのはには、自分が先程読んだ“デルタギア”のユーザーズガイドのラストに書かれていた、“デモンズスレート”の意味が理解出来なかった。
それが柊かがみという少女を蝕み、狂わせたということも、少女と一切の面識を持たないなのはには到底解る筈も無かった。
どちらにせよ、柊かがみについてはこれ以上考えた所で意味は無いだろう。
故になのはは、金居から名簿を受け取り、そのまま話を続ける事にした。

「じゃあ……この名簿の中で、貴方たち二人の知り合いはどれくらい居ますか?
 危険人物と、味方……それから、保護すべき人物等がいれば、教えて下さい。」
「え、えっと……危険人物は、アーカードと……アンデルセンの二人。味方は……ヘルシング卿……くらいかな……うん」
「……危険人物は相川始、キング。味方は天道総司。それだけだ」
「アーカード、アレクサンド・アンデルセン、相川始、キングが危険人物……
それから……天道総司さんに、インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングさん……解りました」

状況を纏めたなのはは、金居から借りたペンで、金居の名簿に印しをつけて行く。
危険人物のマークと、味方・及び保護対象のマークに分け、○と×で、だ。
一人やけに名前が長いなぁなどと考えながら。

「良ければ……それぞれの特徴をもう少し詳しく教えてくれませんか? 解る限りでいいので」
「あ、アーカードは……アーカードは間違い無く、人を殺す……! インテグラの制止が無ければ、間違い無く……!
 あの男は、あの吸血鬼は、それだけ危険な化け物だ……味方についた場合は心強いが……敵になった場合は……」
「……解りました。じゃあ、アンデルセンって人は……?」
「え? あ……え、えーと……ア、アンデルセンについては良くは知らないが……数々の異名を持つ殺し屋だと聞いてるよ……」

元々なのかも知れないが、ペンウッドは動作の一つ一つが大袈裟だ。
だが、それ程にアーカードとアンデルセンという男が危険だと言う事は十分に理解出来た。
どちらも放っておいていい相手では無いだろう。最悪の場合は、戦ってでも止めなければならないかもしれない。
もしもそうなれば、もしろん自分も戦うが、きっと金居の力が役に立ってくれるだろう。そんなことを考えながら、なのはは金居の顔に視線を送るが―――

「……なんだ?」
「ううん……なんでも無い」

なのはにはこの男が、どうにも信用できなかった。何故かはわからないが、とても誰かの為に戦うような男の目には見えないのだ。
それこそ、まるで野望をうちに秘めているかのような、不敵な雰囲気にしか見えず。
……しかし、それだけで判断するのは早いかも知れない。この男については、もうしばらくは保留だ。
とりあえず、今の話を聞く限りでは、ヘルシングさんという人物の制止があればアーカードは止まるらしい。
ならば、やはりヘルシングさんは保護対象だ。見付け次第、保護せねばなるまい。

88 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:13:05 ID:7kvSPCbM
 

89 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:13:18 ID:Bnx3WmSl


90 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:13:54 ID:rVUIS+Pp
 

91 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:21:44 ID:Bnx3WmSl
支援
もう少し投下間隔短くても大丈夫そうですよ

92 :残る命、散った命 ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 03:26:58 ID:AZdnZ5pY
ペンウッドについての情報はこんなところだろう。
次はとりあえず、金居からも情報を聞き出さなければならない。
正直、さっきの戦いを見る限り、この男もかなり危険な気がするが、少なくとも敵意は無いのだろう。
信用していいのかという疑問は浮かぶが、この男が悪人ならば、すでにアンデッドの力を使って自分たちを殺しているだろう。
無駄に命を奪おうとしない限り、出来れば味方としてやっていきたい。

「じゃあ、金居君は……?」
「そうだな、まずはキング。こいつはまず間違い無くこのゲームに乗るだろうな。奴は面白ければそれでいい、他人の命など労りもしない。そんな奴だ。
 相川始は……ジョーカー。死神だ。その名の通り、奴が勝てば全ての生命は滅ぶ。こいつが勝ち残ることだけは阻止しなければならない。
 そして天道は……味方だ。人の為に、“正義と愛”とやらで世界を守る、所謂“正義の味方”って奴だ。」

なのはは薄く頷くと、この二人も相当に危険な人物なのだろうと判断。
アーカードとアンデルセンに続けて、相川という男と、キングという男にも危険人物の印をつける。
ここで気になったのは、天道総司さんという人物について。
金居が何故か嘲笑うように、嫌味たらしく“正義の味方”と言ったのは気になるが、それが本当なら、是非味方に付けたい。

「なら……私からも。危険人物は……クアットロ。味方は――」

クアットロ。あの女は、JS事件終結後も、まったく改心する様子無く、獄中で何かを企んでいるような女だ。
あの女がゲームに乗るかは定かではないが、間違いなく利益になることは無い。
されど、彼女の頭脳があれば、首輪解体には役立つかもしれない。
まぁクアットロについてもこれ以上考えても仕方がないので、そのまま話を続けていく。
次に味方だ。50音順に並んだ名簿から、機動六課のメンバーを一人一人挙げて行く。
いずれもかなりの実力を誇る隊長格に、自分達が育て上げた立派なフォワードメンバー達。
フェイトにはやて、シグナムにヴィータ、そしてスバルにティアナ、エリオにキャロ――
一人一人名前を呼んでいき、味方であるマークをつけていく。
何故か名前が二つある参加者が存在したが、それもミすぷりんとだろうと軽く流す。
彼女らがそう簡単に敗れるとは思えないが、出来る事ならば保護したい。
エリオも正直心配だが、自分が育て上げた未来のエースが、そんな簡単にやられるなどと、考えられなかった。
そして、最後に呼ぶ人物。彼女こそが、なのはが最も心配している相手。
なのはは、表情を曇らせて、その名を呼んだ。

「それから……ヴィヴィオ。私の、何よりも大切な……大切な、娘です」
「……年齢は?」
「まだ、5歳くらい……こんな小さな女の子まで巻き込むなんて……」

金居の質問に、声を震わせて答える。
同時に、プレシア・テスタロッサに対して、再び堪えようのない怒りが込み上げて来る。
もしもヴィヴィオを傷付ける者があれば、なのはは絶対にそいつを許しはしない。
それ程までに大切な存在である愛娘を、こんな戦いに巻き込むプレシア。
考えるだけで、わなわなと拳が震えた。
それに気付いたのか、金居が口を開いた。

「わざわざみせしめ用に参加者を余分に調達したり、そんな子供を参加者に入れたりする辺りを考えると、
 あのプレシアとかいう女は相当に質が悪いようだな」
「へ……? みせ……しめ?」
「そうだ。最初に殺された女は、最初からみせしめの為だけに呼ばれたんだろうな。
 いや、あの女だけがみせしめ用として呼ばれたのかは分からんが、みせしめ要員として一人余分に参加者を調達したのは間違い無いだろう」
「そんな……」

金居の推測に、さらになのはは怒りの炎を燃やした。
ヴィヴィオのような子供を参加させ、最初から命を奪うつもりで一人余分に参加者を集めた……?
信じられない。非道過ぎる。そんなことを出来るのが、本当に人間なのだろうか?
そんな考えがなのはの頭を過ぎる。
いや、もしかしたら。今のプレシアはもう、人間では無いのかも知れない。
虚数空間に墜ちたプレシアは、人間の心を捨て、鬼となって戻って来たのかも知れない。

93 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:27:27 ID:Bnx3WmSl
 

94 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:28:04 ID:7kvSPCbM
 

95 :残る命、散った命 ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 03:29:20 ID:AZdnZ5pY
そんな女だからこそ、平気で自分達の首にこんな爆弾を仕掛けられるのだ。
何にせよ、プレシアの、あんな魔女の思い通りになどは絶対にさせない。
ヴィヴィオは、他の参加者達は、絶対に守り抜いて見せる。
それを心に誓い、今度は金居に地図を取り出すように頼んだ。
自分のデイバッグを漁り、地図を取り出した金居は、なのはに手渡しながら言った。

「工場に向かうのは決まったが……ここが何処か、わかるのか?」
「うん……ここはE-2だよ」
「……何故解る?」
「私はさっきまでF-2の翠屋にいて……ここに来るまで、真っすぐな道が続いてたからだよ。曲がり角は一つも無かった」
「なるほど……」

金居が微笑む。現在地が分かって嬉しいのだろう。
実際なのはの推測が外れているとは思えないし、冷静に考えれば、
翠屋から大通りを真っ直ぐに走り続けて、辿り着けるのはE-2しか有り得ない。
しかし、現在地がわかっても、どうやって工場まで行くかを考えねばならない。
工場があるのは、B-8。地図で言うと、かなりの右上。それも川を渡らなければ行けない場所だ。
そして、川を渡る為の橋が存在するのが、F-3とD-5の二カ所。

「川を渡るなら……橋が二つあるね。どっちを渡る……?」
「うーん……近さで言えば、F-3だが……」
「……俺ならD-5だな」

眼鏡をついと押し上げ、金居は不敵に笑う。

「確かにF-3の橋は近いかも知れないが……その先工場まで向かう途中、一体どれだけ施設がある?」
「あ……あぁ、確かに……それに遠回りだ……」
「うん……D-5の方が、橋自体は遠いけど、安全な道で工場に向かえるね」

ペンウッドに続き、なのはが頷く。
しかし、なのはの目的はこのゲームに巻き込まれた参加者を救う事なのだ。
金居の言い分は確かに正しいが、参加者と出会わなければ、守ることも出来ない。
かと言ってわざわざ危険な道を選んで、命を落としてしまっとは元も子も無い。

「俺の考えはこうだ。まずはここから北上し――」

金居が、地図上のE-2からD-2にかけての大通りを、指でなぞる。

「そして、D-2のスーパーで食料や役に立つ物を調達する。
 そこからC-3の商店街に向かい、スーパーでは調達仕切れ無かった物を頂いて行く」
「な、なるほど……」

そのまま金居の指は、大通りを道なりに進み、橋を渡る。ここで指は一度止まり、金居は顔を上げた。

「さて……ここから徒歩で行くか……それとも、E-8の駅。ここで電車に乗るか。」
「電車……?」
「……いや、なんでも無い。やはり徒歩で行くべきだな。電車が確実に走っているという保証は何処にも無い。」

金居の言葉に、なのはは納得した。
確かに電車は気になるが、停車駅がマップに印されていない為に、何処で停まるのかも解らない。
そんな不確定な物に乗るくらいなら、徒歩で行く方がいい。

96 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:29:33 ID:Bnx3WmSl
 

97 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:30:05 ID:rVUIS+Pp
 

98 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:30:32 ID:7kvSPCbM
 

99 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:31:15 ID:7kvSPCbM
 

100 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:32:09 ID:7kvSPCbM
  

101 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:32:18 ID:Bnx3WmSl
 

102 :残る命、散った命 ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 03:33:07 ID:AZdnZ5pY
しかし、やはりなのはには、本当に北から行っていいのか、という疑問が残る。

「私は……出来るだけ、皆を救いたい。だから……」
「ならば尚更だな」
「へ……?」
「考えてもみろ。俺達は何故北を進もうとしている? 無駄な戦いを避けたいからだ。
 逆に戦いを望む奴が施設の多い南を進むというのは簡単に想像出来る」
「だ、だからこそ戦えない人を助けなきゃ―――」
「だから、戦えない人間ならば出来るだけ見付からないように北を進むって言ってるのさ、俺は」
「あ……」

な、なるほど……と、なのはが小さく頷く。
確かに金居の言うように、北へ進めば、逃げて来た戦え無い人々を保護しながら進む事が出来るかもしれない。

「ま、そんな戦えない人間を狙った奴が北へ進まないとも限らないが……な?」
「じゃ、じゃあ……ッ!」
「結局は一緒なんだよ、どっちを通っても。北にも南にも、戦える奴もいれば戦えない奴もいる。
 ならさっきも言ったように、戦えない弱者が逃げて来る道を進んだ方が“君”の目的も果たしやすいって言ってるのさ、“お嬢ちゃん”」
「…………」

嫌味たらしく言う金居。
だが、そう言われて見れば、確かに金居の言う事は正しい。
力の無い者から守って行かねばならないのだから。
ならば北を進んだ方がそんな人間に会える可能性が高いというのは、嘘では無いのだろう。

「分かった……じゃあ、ペンウッドさんはどうしたい……?」
「え……あ、えっと……私は……それでいいと、思うよ」
「ならば、決まりだな」

行動方針は決定した。後は、仲間を集めながら、首輪を解除するべく工場へ向かうのみ。
いざ行かんと、歩を進めようとしたなのはを引き止め、金居が銃を手渡してくる。

「これは……?」
「持っておけ。お前、デイバッグを持って行かれただろう? 見てて色々と危なっかしいからな」
「……ありがとう」

一言礼を言いながらも、なのはは銃をスカートのポケットへと忍び込ませた。
出来ることならこんなものは使いたくは無いが、もしもAMFが展開されれば、支給品を失ったなのはは無力だ。
だから、護身用として一応持っていよう。使うかどうかは別として。
今度こそなのはは、決意を胸に、歩き始めた。

―――私の目の前で、絶対に誰も殺させない。絶対に、皆で帰るんだ……!



103 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:33:28 ID:7kvSPCbM
 

104 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:33:58 ID:7kvSPCbM
 

105 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:33:59 ID:Bnx3WmSl
 

106 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:34:13 ID:rVUIS+Pp
 

107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:35:08 ID:Bnx3WmSl
 

108 :残る命、散った命 ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 03:35:10 ID:AZdnZ5pY
【1日目 現時刻 深夜】
【現在地 E-2 路上】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、プレシアに対する怒り
【装備】グロック19(14/15+1発)@リリカル・パニック
【道具】特に無し
【思考】
 基本 誰の命も欠かす事無く、出来るだけたくさんの仲間を集めて脱出する
 1.なんとしてもヴィヴィオを救出する。それは何よりも優先。
 2.工場に向かい、首輪解除の手がかりを探す
 3.出来る限り全ての戦えない人を保護し、仲間を集める。
 4.さっきの子(柊かがみ)はどうするんだろう……?
 5.アリサの思いと勇気は、絶対に無駄にはしない
【備考】
 ※金居のことは多少警戒しています。
 ※名簿の名前が二つある人物に関しては、現時点ではあまり気にしていません。
 ※エリオが死んだという話は信じていません。

【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品(未確認1〜2個)
【思考】
 基本:自らの仕事を果たす
 1.まずは工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す
 2.殺し合いに乗るつもりはない
 3.アリサという少女の思いは無駄にしてはいけない。
【備考】
※少なくとも第四話以降の参戦です

【金居@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康、変身による疲労
【装備】特になし
【道具】支給品一式、ランダム支給品(未確認1?3個)、カードデッキ(タイガ)の複製@リリカル龍騎
【思考】
 基本 首輪を解除し、このゲームから脱出し。
 1.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す
 2.利用できるものはすべて利用する。邪魔をする者には容赦しない。
 3.脱出の為ならば、人間と手を組むのも仕方がない
 4.ジョーカーは出来ればこの戦いの中で倒してしまいたい。
 5.もしもラウズカード(スペード10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す
【備考】
 ※このデスゲームにおいてはアンデッドは死亡=カードへの封印だと思っています。
 ※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています
 ※どちらかと言えば悪者側よりも仮面ライダー側に味方した方が有利だと思っています

【チーム:少し、頭冷やそうか】
【共通思考】
 基本 首輪を解体し、このゲームから脱出する
 1.工場に向かい、首輪解除の手がかりを探す
 2.戦えない者は保護していく
【備考】
 ※それぞれが違う世界から呼ばれたということに気づいていません。
 ※なのはの話から、プレシア・テスタロッサについてだいたいの情報を得ました。
 チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
 敵対的:アーカード、アレクサンド・アンデルセン、相川始、キング
 友好的:機動六課組、インテグラ・ヘルシング、天道総司
 要注意:クアットロ
 また、アーカードについてはインテグラと合流出来れば従わせることが可能だと判断しています。

109 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:36:01 ID:Bnx3WmSl
 

110 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:38:25 ID:Bnx3WmSl
 

111 :残る命、散った命 ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 03:38:41 ID:AZdnZ5pY
 


「戦わなきゃ……戦わなきゃ、生き残れない……!」

橋を渡り終えたかがみは、小さく呟いた。
殺される前に、殺す。
デルタの力を使って、絶対に優勝してみせる。
それが、かがみの思考であり、かがみなりにエリオの意思を受け止めた結果であった。
エリオは、自分に生きる事を望んだのだ。
それだけじゃない。なのはだって、自分に生きていて欲しいと言った。
だからなのはは、自分にデルタをくれた。
だからなのはは、あのクワガタ怪人を止めてくれた。
手を見ると、バチバチと輝く赤い稲妻が見える。
この力があれば、自分は絶対に負ける気はしない。

「ありがとうなのは……私、生き残ってみせるから……!!」

デルタギアに搭載された悪魔のシステム――デモンズスレート。
オルフェノク、もしくは精神的に強く、気高い者であったならば、そのシステムに犯されることは無かっただろう。
しかし、かがみは犯されてしまったのだ。悪魔のシステム、デモンズスレートに。

「生き残って、みんな、みーんな、私が殺してあげるからね!」

デモンズスレートは、装着した人間の闘争本能を極限まで高める。
それがかがみの、潜在的な闘争心を高め、あまつさえかがみという少女を戦闘狂へと変えてしまった。
デルタの力に溺れた者は皆、こうして他人を信用することが出来なくなり、ベルトの力に依存してしまう。
或いは高町なのはなら、そんな力に溺れる事は無かったのかもしれない。
友の死を乗り越え、悲しみを怒りに変え、尚も自分を見失わなかった精神を持った高町なのはなら。
しかし、もう遅い。デルタのベルトは、高町なのはの手を離れてしまったのだ。
一度正しい装着者を失えば、ベルトは更なる争いを、戦いを呼ぶだけ。
デルタに溺れたかがみは、そんなベルトの意思を体言するかのように、更なる闘争を求める。

「最初は誰から……殺してあげようかなぁ」

微笑むかがみの目に入ったのは、立体駐車場。

―――そうだ……結構疲れちゃったし。あそこで休んでからにしようかな

この場所で、既に戦いが始まっているとも知らずに。
柊かがみは、立体駐車場へと歩き出した。
その目的は、あくまで“勝ち残り、家に帰る為”に。
その為にかがみは、闘争を楽しむ道を選んだ。

112 :残る命、散った命 ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 03:39:46 ID:AZdnZ5pY
【一日目 深夜】
【現在地 F-3 立体駐車場付近】

【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】健康、
【装備】王蛇のカードデッキ@仮面ライダーリリカル龍騎、デルタギア一式@魔法少女リリカルなのはマスカレード
【道具】基本支給品×3、ランダム支給品(0〜6)、デルタギアケース@魔法少女リリカルなのはマスカレード
【思考】
 基本 みんな殺して生き残る!
 1.今は少し休みたい
 2.エリオやなのはの気持ちを無駄にはしないためにも、戦う

【備考】
 ※なの☆すた第一話からの参戦です。
 ※エリオとなのはのデイバッグを回収しました。
 ※デルタギアに適合しなかった後遺症として、凶暴化と電撃を放つ能力を得ました
 ※デモンズスレートによる凶暴化の効果は数時間続きます。
 ※ユーザーズガイドを読めばデルタギアの全てを理解することが出来ます。
 ※ベノスネーカーは回復中です。餌を食べれば回復は早まります。
 ※王蛇のデッキには、未契約の契約カードがあと一枚入っています。
 ※参加者名簿や地図、デイバッグの中身などは一切確認していません。
 ※参加者や、その他に関する知識が消されています。ただし、何かのきっかけで思い出すかもしれません。

113 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:40:12 ID:Bnx3WmSl
 

114 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:40:37 ID:7kvSPCbM
 

115 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 03:42:44 ID:Bnx3WmSl
 

116 :残る命、散った命 ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 03:45:04 ID:AZdnZ5pY
なんかおかしいので>>108の状態表やり直しです

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、プレシアに対する怒り
【装備】グロック19(14/15+1発)@リリカル・パニック
【道具】特に無し
【思考】
 基本 誰の命も欠かす事無く、出来るだけたくさんの仲間を集めて脱出する
 1.なんとしてもヴィヴィオを救出する。それは何よりも優先。
 2.工場に向かい、首輪解除の手がかりを探す
 3.出来る限り全ての戦えない人を保護し、仲間を集める。
 4.さっきの子(柊かがみ)はどうするんだろう……?
 5.アリサの思いと勇気は、絶対に無駄にはしない
【備考】
 ※金居のことは多少警戒しています。
 ※名簿の名前が二つある人物に関しては、現時点ではあまり気にしていません。
 ※エリオが死んだという話は信じていません。

【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品(未確認1〜2個)
【思考】
 基本:自らの仕事を果たす
 1.まずは工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す
 2.殺し合いに乗るつもりはない
 3.アリサという少女の思いは無駄にしてはいけない。
【備考】
※少なくとも第四話以降の参戦です

【金居@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康、変身による疲労
【装備】特になし
【道具】支給品一式、ランダム支給品(未確認1〜3個)、カードデッキ(タイガ)の複製@リリカル龍騎
【思考】
 基本 首輪を解除し、このゲームから脱出し。
 1.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す
 2.利用できるものはすべて利用する。邪魔をする者には容赦しない。
 3.脱出の為ならば、人間と手を組むのも仕方がない
 4.ジョーカーは出来ればこの戦いの中で倒してしまいたい。
 5.もしもラウズカード(スペード10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す
【備考】
 ※このデスゲームにおいてはアンデッドは死亡=カードへの封印だと思っています。
 ※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています
 ※どちらかと言えば悪者側よりも仮面ライダー側に味方した方が有利だと思っています

【チーム:少し、頭冷やそうか】
【共通思考】
 基本 首輪を解体し、このゲームから脱出する
 1.工場に向かい、首輪解除の手がかりを探す
 2.戦えない者は保護していく
【備考】
 ※それぞれが違う世界から呼ばれたということに気づいていません。
 ※なのはの話から、プレシア・テスタロッサについてだいたいの情報を得ました。
 チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
 敵対的:アーカード、アレクサンド・アンデルセン、相川始、キング
 友好的:機動六課組、インテグラ・ヘルシング、天道総司
 要注意:クアットロ
 また、アーカードについてはインテグラと合流出来れば従わせることが可能だと判断しています。

117 :残る命、散った命 ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 03:48:14 ID:AZdnZ5pY
ようやく投下終了です。
支援して下さった皆さんに感謝!
また、投下に時間が掛ってしまい、申し訳ないです。
とりあえず「死んだ者の意思」と「今生きている者の意思」っていうのがタイトルの所以です。
なのははプラスに、かがみはマイナスにとらえちゃいましたけど。

デモンズスレートについて簡単に説明しておくと、あれは装着者を戦闘狂にしてしまうシステムだったりします。
ですが、前回のロワのデュエルゾンビのようなのとはまた違ってまして、一応ものを考えることは出来ます。
ただ、ものすごい人間不信に陥ります。ひぐらしのL5状態のレナなんかをイメージしてくれればわかりやすいと思います。
それでは、指摘や感想などあればよろしくお願いします

118 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 08:11:05 ID:E6PoLQMQ
GJ!
かがみ、何で龍騎は知らなくて555は知ってるんだwww単純な趣味の問題か?

119 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 10:28:27 ID:Bnx3WmSl
投下乙です。
前からの引きがあったが、かがみがマーダーとはwしかもデルタ装備。
個人的に前半部分のなのはがアリサの事を想うシーンがGJ。
チームが結成されたとはいえ金居がどう出るか、気になるなあ。

と、自分もかがみがどうしてデルタの事を感じ取ったのか不思議に思いましたが、かがみ自身の精神内での差異によるものでしょうか。
とにかく夜遅くにお疲れ様でした。

120 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 14:31:24 ID:bwLpp43W
GJ
暴走通り越してマーダー化するとは…さすがに予想できなかったな
そしてチーム名に軽く吹いたわw

…で、何でかがみが555知ってるんだ?

121 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 14:43:01 ID:72jRQW2u
何故かがみがデルタのことを知ってたかだって?
同じ作者だからだよ

122 :マスカレード ◆gFOqjEuBs6 :2008/07/24(木) 16:57:10 ID:AZdnZ5pY
申し訳ありません、どうやら説明が足りなかったようです。
かがみの元の世界では普通に仮面ライダーが放送されてたりします。
故に555を見ていた、もしくはこなたあたりに見せられた……とでも解釈していただければ。
今回はたまたまギラファに追い詰められて、絶体絶命の状況でデルタギアに触れたことで、断片的にその姿を思い出した、という状況です。
龍騎についても、きっかけさえあれば思い出す可能性もあると思われます。
もちろん、かがみがどこまで知っているか、というのは書き手さんの裁量に任せるしかありませんが。
同じように、遊戯王やその他のアニメについても主催側に記憶を消されてます。

123 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 18:35:24 ID:E6PoLQMQ
あ、そっか。龍騎見てる可能性もあったんだwてっきり
龍騎→放送を見てなかった
555→たまたま放送を見てた
かとw

124 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/07/26(土) 19:07:42 ID:B4ZHxLaY
ギンガとインテグラを投下します

125 :楽園への小道 ◆Qpd0JbP8YI :2008/07/26(土) 19:08:27 ID:B4ZHxLaY
かつ、かつ、かつ、と
夜の暗がりにある通りで、靴音が響き渡る。
そこには長い髪を流麗になびかせながら歩く二人の美女がいた。

「あの、それでインテグラ卿、どちらに向かわれているんですか?
アーカードさんという方がどこにいるか見当がついていらっしゃるんですか?」

暗闇の中を何の迷いなく悠然と歩いていくインテグラの姿を疑問に思い、彼女の背中に向かってギンガは訊ねた。
しかし、返ってきた答えはギンガの予想とはかけ離れたものだった。

「ギンガ、お前は劇というものが見たことがあるか?」
「は? 劇……ですか?」
「そうだ。ウィリアム・シェイクスピア、ベン・ジョンソン、オスカー・ワイルド。
我が英国が生み出した天才たち。いずれも人間の内奥に踏み込み、それを作品に表した素晴らしい作家たちだ」

質問の意にそぐわない答えにギンガは困惑した。
自分はどこに向かっているかを訊ねたはずなのに、それに対する彼女の答えは劇云々。
ひょっとしてインテグラ卿は現状に恐怖するあまり、狂ってしまったのではないだろうか。
俄かにギンガの心に不安が押し寄せた。

「あの、仰る意味がよく分からないのですが……」
「なに、簡単なことだ。どんな劇であれ、役者とは舞台の中央で踊るもの。
この殺し合いという劇において、花形である化け物がわざわざ舞台袖で自分の番が回ってくるのを待っているはずがあるまい」
「……え? あの、それが答えですか?」
「他に何か必要か?」

細められる瞳からは揺ぎ無い意思が放たれ、ギンガを圧倒した。
間違いなくそれだけの理由で彼女は動いている。
そんな狂気とも取れる彼女に言葉に対してギンガは何と言ってやるべきか悩んだ。
あなたは狂っている。そんなことを直接言うのは言語道断。却って事態をややこしくしてしまう。
大切なのは彼女を正気に戻し、ちゃんとした判断能力を戻すこと。
ギンガはそのための言葉を模索していると、やがて件の彼女から笑い声が漏れているのが聞こえてきた。
前にいるインテグラを見ると、彼女は顔を俯かせ、眼鏡のブリッジを中指で支えながら、笑い声を押し殺していた。


126 :楽園への小道 ◆Qpd0JbP8YI :2008/07/26(土) 19:08:59 ID:B4ZHxLaY
「冗談だ、冗談。そっちの世界の管理局員とは頭が固いものなのだな。
ウチのスバルやティアナとは大違いだ」
「なっ!」

インテグラの物言いに思わずギンガは素っ頓狂な声を上げてしまう。
そして人の冗談を真にとってしまったことを知り、恥ずかしさからわずかに頬が上気する。
だけど続いて彼女に湧き起こったのは純然たる怒りだった。

「こんな時に何を冗談を言っているんですか、インテグラ卿! 状況を考えて下さい!」

ギンガの説教に対してインテグラは溜息一つ、悪びれることなく謝り、言葉を続けていった。

「すまんな。だが、それも理由の一つであることは確かだ。
奴が舞台の脇に立つ端役に興味を持つはずがあるまい」
「……では他に何の理由があるんですか?」

心に感じる憤りを何とか抑えながら、ギンガは訊ねる。

「ギンガ、お前は地図を見たか?」
「あ、はい、一応は確認しました」
「ならば、そこにお前の知る施設は記されていたか?」
「はい、地上本部に機動六課隊舎です」
「そうか……こちらも私の知る施設も書かれていた」

無言でギンガはインテグラの次の言葉を促す。

「…………HELLSING機関、それが地図の上にあった」
「HELLSING機関……確かインテグラ卿が治めている機関の名前でしたよね?」
「ああ、そうだ。加えてご丁寧に私の名前が記された名簿も入っている。
幾らあいつが化物とはいえ、文字は読めるし、物だって考えることも出来る。
そしてアーカードと私を繋ぐものは、この空間において一つしかない」
「それがHELLSING機関である、と?」
「ああ、そうだ。他にも理由が必要か?」
「いえ、十分です」

彼女が狂っているわけではない。
ギンガはその認識に到達して、ホッと安堵の息を吐いた。
ならば自分のすることはそこに辿り着くまでインテグラ卿をしっかりと護衛することだろう。
辺りに警戒を張りながら、歩みを進めていくが、
念のためにと発した探知魔法によりギンガは違和感を覚えた。


127 :楽園への小道 ◆Qpd0JbP8YI :2008/07/26(土) 19:09:33 ID:B4ZHxLaY
「あの、インテグラ卿。つかぬことをお聞きしますが、普段と比べて身体におかしなとこは感じませんか?」
「いや……普段と比べて頗る不愉快な気分だという以外は何も感じないが、何故そんなことを聞く?」
「はい、先ほど周りに人がいないか探知魔法を使ってみたんですが、いつもと比べて発動を困難に感じたので……。
勿論、今の私にはデバイスがないですし、探知を始めとした補助系の魔法はあまり得意としてはいないのですが、
それでも何か拭い切れない違和感というか…………。
それでひょっとしたらこの空間にいる人全員に同じような……とまではいかないにしても、
何かしらの処置が施されているのではないかと思いまして」
「なるほど。確かお前は怪我をしていたところを治療させられて、ここに連れてこられてのだったな」
「はい」
「だとしたら、何かしらの処置が施されていても不思議ではないな」
「はい……そうですね。こういった違和感は私だけなのでしょうか?」
「確かに私の身体に違和感はないが、それでもそれはお前だけに特別施された処置を意味するとは思えないな」
「どういうことですか?」
「簡単なことだ。化物や魔導師のように私には戦う力がないからな。そのような処置を施す必要がないということだ」
「つまり……非戦闘員が勝ち残るチャンスを与えるためですか?」
「おそらくはな」
「でしたら、私以外の魔導師、そしてアーカードさんにもそのような処置が施されているということでしょうか?」

当然の疑問を放つギンガをインテグラはねめつけた。

「ギンガ、お前はアーカードを何だと思っている?
能力を制限する? 首輪をつけた? 首を爆破する? そこいらの吸血鬼と彼を一緒にするなよ! 
そんなモノでは死なない! プレシアとやらが例えどんな対化物法技術を駆使しようとも
彼はヘルシング一族が100年間かけて栄々と作り上げた最強のアンデッド、吸血鬼アーカード!
この私以外にあの化物を御することなど出来はしない!」

声を荒げ、まくし立てるインテグラにギンガは圧倒され、気おされた。
だが確かに不死の怪物を制限することなど彼女に想像もつかぬことではあった。
魔法の発動を困難にするというのはAMFという既知の知識で説明ができるが
それ以外のことは現状、彼女には理解が及ばぬことであった。
とはいえ、この空間では何があってもおかしくない。
不死の怪物を制限することも出来るかもしれない。
だけど、何があってもおかしくないというのなら、
まさしくインテグラの言っていることこそが正しいことなのかもしれない。


「そう……ですか……」



128 :楽園への小道 ◆Qpd0JbP8YI :2008/07/26(土) 19:13:23 ID:B4ZHxLaY
化物アーカードを想像しての恐怖からだろうか、ギンガはやっとそれだけの言葉を口からこぼすことが出来た。
そんなギンガを見て、インテグラは幾らか言葉の調子を落ち着かせて言った。

「ギンガ、お前はゲームというものしたことがあるか?」
「あ、はい。管理局に入ってからはそういった時間はありませんでしたが、
子供の時に妹のスバルとよく一緒にしたことはあります……が、それが何か?」
「なら、知っているだろう。いや、知らなければならない。
どんなゲームにもプレイヤーの、ゲームマスターの意を超えたジョーカーがいるということをな」
「それがアーカードさんであると?」
「そうだ。そして常にゲームを面白くするのもジョーカーの役目。
奴に能力の制限など無意味! 奴に魔法など無意味! 奴に死を与えることなど不可能!
例え山のように死屍累々が築かれようと、雨のように血肉が降り注ごうと奴の歩みは止まらん!
ただ目の前の障害を押し崩し、踏み潰し、進んでいく! それだけだ!
奴にあるのはただ一つ、見敵必殺! その言葉のみ!
プレシアごとき雌豚が何をしようと、そのルールを壊すことなどは不可能!
何故なら奴は我がヘルシング一族が用意した最高の鬼札(ジョーカー)なのだからな!」

そこでインテグラは一旦言葉を切ると、不敵に笑いながら高らかに告げた。

「さあ、盛大にこのゲームを盛り上げてプレシアを楽しませてやろうじゃないか!
 この盤上を引っくり返してな!」



インテグラは言うだけ言うと、先ほどよりも確かな足取りで暗闇を押し分け、進んでいった。
そんな彼女を頼もしく思いもしながら、ギンガは一つの不安に駆られていた。
もしインテグラが言うような化物――制限を受け付けず、見敵必殺を旨とし、決して死なない吸血鬼――が存在し、
彼女の手綱を放れることになったとしたら、どうなるか。
それはプレシア以上に恐ろしい敵となるのではないだろうか…………。
ギンガはその不安を振り払うように、インテグラの後を急いで追いかけていった。





129 :楽園への小道 ◆Qpd0JbP8YI :2008/07/26(土) 19:14:52 ID:B4ZHxLaY
【1日目 深夜】

【現在地 G-7 T字路のあたり】
【ギンガ・ナカジマ@魔法妖怪リリカル殺生丸】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済)
【思考】
 基本 この殺し合いを止め、プレシアを逮捕する
 1.インテグラを護衛し、アーカードを捜索する
 2.殺生丸とは今度こそ話をつけたい
 3.できることなら誰も殺したくはない
 4.可能ならば、六課の仲間達(特にスバル)とも合流したい
【備考】
 ・なのは(A's)、フェイト(A's)、はやて(A's)、クロノの4人が、過去から来たことに気付きました。
 ・一部の参加者はパラレルワールドから来た人間であることに気付きました。
 ・「このバトルロワイアルにおいて有り得ないことは何一つない」という持論を持ちました。
 ・制限に気がつきました。
 ・インテグラがいなくなった後のアーカードに恐怖を抱き始めました。
 ・アーカードを暴走させないためにも何としてもインテグラを守るつもりです。


【インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲート・ヘルシング@NANOSING】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済)、葉巻のケース
【思考】
 基本 この殺し合いを止め、プレシアを叩きのめす
 1. 地図上のHELLSING本部に向かう
 2. アーカードと合流し、指揮下に置く
 3. その後は殺生丸の捜索に向かう
 4. できることなら犠牲は最小限に留めたいが、向かってくる敵は殺す
【備考】
 ・同行しているギンガが、自分の知るミッドチルダに住む人間ではないことを把握しました。
 ・一部の参加者はパラレルワールドから来た人間であることを把握しました。
 ・葉巻のケースは元々持ち歩いていたもので、没収漏れとなったようです。
 ・アーカードは参加者に施されているであろう制限の外にあると思っています。


130 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/07/26(土) 19:15:55 ID:B4ZHxLaY
以上です。投下終了しました。

131 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/26(土) 20:21:05 ID:uURwrcxe
投下乙です。
ここはまともな考察組で安心するなあ……っと思っていたらw
アーカードが制限されているなんて知ったらどんな反応するだろう。
そして予約してから投下まで1日無いw早w

132 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/26(土) 20:49:10 ID:LQ9uymbW
投下乙……だけど進展ないなw

133 :名無し@お腹いっぱい。:2008/08/01(金) 22:11:50 ID:Q/APHolr
仮投下スレに曰く、10時頃投下予定らしいが……
……来るのか!?来るのか……!!? 来るなら支援するぞ!!?

134 : ◆RsQVcxRr96 :2008/08/01(金) 23:01:35 ID:dPHi1lmZ
やっと回線が復帰しました。
遅ればせながら23:10頃から本投下をしたいと思います。
おてすきの方は支援をお願いします。

135 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/01(金) 23:12:09 ID:dPHi1lmZ
ではこれより天道総司、相川始、シャーリー・フェネットで投下します。

136 :誰がために彼の者は行く ◆RsQVcxRr96 :2008/08/01(金) 23:13:29 ID:dPHi1lmZ
シャーリー・フェネットは途方に暮れていた。
いきなり訳の分からないまま殺し合いに巻き込まれて。
いきなり訳の分からないまま襲われて。
いきなり訳の分からないまま殺されかけて。
いきなり訳の分からないまま17歳という短い生涯を終えるところだった。

しかしそうはならなかった。

無我夢中火事場の馬鹿力と言うべきか。
シャーリーの渾身の蹴りは見事襲撃者エネルを撃退したのだ。
そこにはいくつかの偶然があったのだが、シャーリーはそんな事全く知らなかった。
無事に生きている、それだけで十分だった……外見はそうではなかったが。
死に瀕した際に流れた大量の汗が身体と制服を存分に湿らせていた。それに加えて乙女の尊厳が……
何はともあれ、シャーリーは落ち着いて着替えができそうな場所に向かう事にした。
地図を開いて目的に見合いそうな近くの施設を探していると、それはすぐ近くにある事が分かった。

「温泉か……」

温泉。
ブリタニアにはあまり馴染みのないものだが、シャーリーが住んでいるエリア11つまり日本には古来より数多くの温泉が点在していた。
それは人々にとって憩いの場所となり、心身共にくつろげる場所である。
シャーリーもエリア11に住んでいる以上、温泉の名を耳にする事もあった。
確かミレイ会長が生徒会で温泉旅行に行きたいとか言っていたような……いなかったような……
ともかく目的地は決まった。
シャーリーは一時でも早くこの不快感から脱却したいと思い、急ぎ足で温泉へと向かって行った。


   ◆   ◆   ◆




137 :誰がために彼の者は行く ◆RsQVcxRr96 :2008/08/01(金) 23:16:18 ID:dPHi1lmZ
闇が支配する夜。
生命が眠りに就く時間帯、ましてやこの場所は森の奥深い場所だ。
そこに「天の道を往き、総てを司る男」こと天道総司はいた。
彼はつい先程の凄惨な出来事を思い出していた。
集められた人々、異を唱える少女、そして見せしめの如く爆破される首輪、そして一人の少女の死。

「俺は確か……」

そして続いてあの広間に来るまでの事を思い出してみる。
最も新しいと思われる記憶は間宮麗奈率いるワームと戦っていたものだ。
麗奈率いるワームに対して仮面ライダーカブトに変身した天道達は優勢に戦況を進めていた。
そのような中で悲劇は起こった。
共に闘っていた時空管理局の魔導師であり、知り合いでもあるフェイト・T・ハラオウンがキュマラスワームに瀕死の重傷を負わされたのだ。
あの場は戦場であったから満足な治療など望めるはずはなく、助かる見込みはほぼなかった。
そうフェイト・T・ハラオウンはあの場で短い生涯を閉じるはずだった。

しかしそうはならなかった。

時空をも超越するアイテム――ハイパーゼクターを使用したカブトによって時間は巻き戻され、フェイトの死は回避されたのだ。
もちろん時間を越えて過去を改竄してフェイトの命を救った事は当事者のカブトだけが知る事だ。
カブト自身も時空を超える事で時空管理局が自分により一層目を向ける事はなんとなく気づいていた。
もちろんその場で使えば事情聴取という名目で連行され、全てを話すように仕向けられる事も理解していた。
それでも何故使ったのか、それは天道自身にしか分からない事だった。
ただ分かるのは一人の言葉が天道に影響を与えたであろうという事だけだ。
フェイトは言った――『……過ぎた時間は絶対に戻ってこない……だから今を必死で頑張ってるんだ!』と。
その言葉に天道が何を感じたか、それを知る術はない。

「……プレシアとか呼ばれていたな。あの女」

この状況下で天道が考えるべき事は山のように存在した。
さしあたってまずは名簿の確認を行う事にした。
誰が参加させられているのか、知っている者がいれば導き出せる方策も多くなるからだ。

結果、天道が知っている名前はそれなりにあった。
高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやて――この3人だけはなぜか2つずつ名前が記載されていた。
クロノ・ハラオウン、矢車想、浅倉威、以上6名(複数記載を含めれば9名)であった。
気に入らないが時空管理局に所属している高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやて、クロノ・ハラオウンは信用できるだろう。
残りの矢車は現状では保留、浅倉は危険人物というところが妥当だろう。
加賀美や蓮華、剣の名前は見当たらなかった。
それに幸い妹の天道樹花の名前はなかった、そしてもう一人の妹である日――

「ガッ――!!」

そこで天道の思考は中断された。
原因は右脇腹から流れ出る赤い血が雄弁に語っていた。
考え込んでいた隙を突かれて何者かに襲撃されたのだ。
しかし普段の天道ならこの程度の襲撃を感知して回避するなどできたはずだ。
それが今回は見事に脇腹に目に見える程の傷を負っていた。
天道の回避を妨げたもの、それは制限という名と枷であった。
この会場にいる者の内、数人の強者には身体的な制限が加えられている。
それは参加者に配られている支給品にも同じような事が言える。
完璧超人である天道に課せられた身体的な制限は微々たるものだったが、それが仇となった。
いつもと同じような動作で襲撃を察知して回避しようとした身体は思い通りには動いてくれなかった。



138 :誰がために彼の者は行く ◆RsQVcxRr96 :2008/08/01(金) 23:17:53 ID:dPHi1lmZ
「ハァァァ!!!」
「――ッ!!」

しかも襲撃者が止めを刺しに来た事で状況はさらに悪化した。
天道はデイパックに手を突っ込み手に触れたもの――禍々しい刀――を引き抜いて、敵が振り下ろしてくる武器と交差させた。
襲撃者は黒い鎧を身に纏った戦士だった。
赤いハートを模していてどこか昆虫のような印象を与える仮面、それが目に付くと天道の脳裏にあるものが浮かんだ。

(マスクドライダー? だが俺達のものとは違うところも……むしろブレイド――)

深く考える暇もなく天道は目の前の敵の対応に忙殺されていった。
敵の弓のような武器の両端に備え付けられた刃が次々と繰り出されていく。
斬撃! 斬撃! 斬撃! 斬撃! 斬撃! 斬撃! 斬撃! 斬撃! 斬撃! 斬撃!
縦横無尽に振るわれる刃によって天道の身体には無数の傷が刻まれていく。
最初こそ互角の戦いをしていたが、数合と渡り合わないうちに形勢は天道に不利なものとなった。
初撃による右脇腹の傷、それが天道にとって大きな重石となっていた。
刀を振るうにしても、刃を避けるにしても、脇腹の傷が天道の動きを妨げる。
そして天道の傷はどんどん深くなり、完全なる悪循環に陥っていった。

何か打開策はないかと模索していると、天道の視界が急に開けた。
森を抜けたのだ、そして目の前には崖があった。
ここは川の上流らしく流れも多少激しく、崖と水面との距離もそれなりにあった。
それを確認した天道は襲いかかる敵に向かって刀を下から振り上げた。
敵は天道の動きを見ると、まともに受けずに一瞬立ち止まった。
敵は天道が刀を振り上げて無防備になったところへ止めの一撃を送ろうとしたが、それは天道の誘導だった。
刀の振り上げを途中で止めて天道は全速力で川に向かって走った。
ここに来てようやく敵も天道が川に逃れる事を察知した。

「逃がすか」

もちろん敵に獲物を逃がす気など全くなかった。
目的を果たすためここで確実に仕留めるつもりだ。

――FLOAT――
――DRILL――
――TORNADO――
――SPINNIG DANCE――

不意に響く4つの電子音声。
それと共に自然にできたとは思えない程の威力を秘めた竜巻が巻き起こる。
それに乗り黒き鎧の戦士は天道に向けて死を送るため足を伸ばす。
回転しながら突き進むその姿は万物をも穿つ螺旋のようであった。
その軸はしっかりと天道を捉え、走る天道にはかわす術など存在するはずもなかった。
このままいけば天道に死が訪れる事は確実だった。

しかしそうはならなかった。

「な!? ……川が、光っ――――?」

それは偶然だった。
同刻、下流では自らを神と名乗る者がその神の偉大さを見せつけるべく力を解放した。
その力――雷を体現するかの如き力は一帯の川に凄まじい発光現象を引き起こしたのだった。
夜の暗さの中で突然当てられた輝かしい光は敵の目を眩ますには十分すぎるものだった。
完璧だったはずの狙いは突然の事態に動揺した事により僅かに外れる事になる。

――爆音。崩れる崖。立ち起こる土埃。果たして立っているのは……

139 :誰がために彼の者は行く ◆RsQVcxRr96 :2008/08/01(金) 23:22:04 ID:dPHi1lmZ


   ◆   ◆   ◆


戦闘が終わり、その場に残ったのは黒き鎧を身の纏った戦士――仮面ライダーカリスだけだった。
今の自分が出せる最強の技スピニングダンス。
それで確実に参加者の命を落とせたはずだが、神の悪戯かそうはならなかった。
生死を確認しようにも獲物は川に落ち、下流へと流されていった。
あの負傷では助かる可能性は低いと考え、カリスはここでの戦闘が終わったと判断した。
カリスは右腰に付けられたカードケースから1枚のカード――ハートの2――をベルトに通した。
するとそこにはもうカリスの姿はなく、一人の青年――相川始、ヒューマンアンデッドの姿を模したジョーカーの姿があった。

相川始、彼は人間ではない。
ジョーカーと呼ばれるアンデッドである。
アンデッドはお互い己の種の繁栄を賭けて戦い合う存在、ジョーカーはその戦いの中でどの種の始祖でもないイレギュラーとして参加していた。
その戦いはバトルファイトと呼ばれ人間の知らないところで進行していたが、ある時不運な出来事が起こった。
雪山で写真撮影をしていた栗原晋がジョーカーとギラファアンデッドとの戦闘に巻き込まれて致命傷を負わせてしまったのだ。
晋はそのまま帰らぬ人となり、始の手には死の間際に託された栗原親子の写真が残された。
ジョーカーとして殺戮の日々を生きてきた始は最期まで家族を想う晋の心を理解できなかった。
それが気に掛かった事もあり、罪滅ぼしの意味も込めて始は自分の罪は言わずに栗原親子の経営する喫茶店ハカランダに居候する事にした。
そしていつのまにか栗原遥香とその娘天音を慈しむようになっていた。
栗原遥香と天音を守る――いつしかそれが始の生きる目的となっていた。
そんな日々がこれからも続くと思っていた。

しかしそうはならなかった。

巻き込まれたのはバトルファイトに似た殺し合い。
違う点はアンデッド以外も参加させられている点だ。
深い森の中に転送された始は最初に名簿の確認をした。
取りだした名簿を確認する事数回、始は安堵した。
栗原遥香と栗原天音、この二つの名がなかったからだ。
とりあえずこれで一番の懸念は解消された。
もしも一般人である二人がこのような場所に放り込まれたとしたら、辿る結末など火を見るより明らかであった。
知っている名前も僅かに金居――ギラファアンデッドのみであった。
ところどころに天音の友達のような名前が見られたが、彼女らはなんの力もない小学生のはずだ。
よもやこのような場所に連れて来られる事はないと言えよう。
それに例え天音の友達だとしても始の目的の前では何の意味もない。

「そうだ! 俺は最後の一人になってみせる! そして帰るんだ、天音ちゃんの元へ!」

自分以外の59人の命を奪う事で最後の一人になる。
あの場で最後の一人が無事に帰らせてもらえるなどプレシアと呼ばれた女は言っていなかったが、それ以外に帰る術は思いつかなかった。
その最大の理由が首輪だ。
首輪とは当然自分達をこの場に縛りつける枷だ。
そんな重要なものが生半可な知識で解除されるとは思えない。
恐らく工学系、もしかしたら未知の技術にも通じている者でないと解析は無理なのかもしれない。
果たしてそんな都合のいい人物がここにいるのだろうか――いるはずがない。
プレシアにとって首輪を外される事は自身の目的が達成されないという事。
ここまで大がかりな用意をして開かれたデスゲームにそんな自らの計画を破綻させるような者を招くはずがない。
もし仮にいたとしても首輪を安全に外せる保障はどこにもない。
最悪外した瞬間を見計らって罠が仕掛けられている可能性もある。
そんな不確定な要素が多い方法より、参加者を皆殺しにした方がまだ望みはある。



140 :誰がために彼の者は行く ◆RsQVcxRr96 :2008/08/01(金) 23:26:05 ID:dPHi1lmZ
そう考えてとりあえず支給品とやらの確認をした。
ジョーカーやカリスへの変身能力があるとはいえ、武器は多いに越した事はない。
デイパックの中を調べ始めてすぐに始は驚愕した。
カリスが使用する事が出来るラウズカード――ハートの1〜10のカードが揃って支給されていたのだ。
何枚かはもともと自分のものだが、中にはまだ自分が持っていないカードまであった。
これだけあればある程度の者には負けないだろう。
始はこの点に関してはプレシアに感謝したくなった。

(もしかして俺が殺し合いに乗る事を見越して……そんな事どうでもいか)

ふとハートのJ、Q、Kもどこかにあるのかとも思い、十分あり得るという結論に至る。
ともあれ10枚のカードは自身のカードケースに収めておく。
生憎もうひとつの支給品はいますぐ使うようなものでなかったので、デイパックに戻しておいた。

「天音ちゃん……遥香さん……」

始は愛する人の名を口に出すと、一刻も早く目的を果たすために動き出した。
最初の獲物はすぐに見つかった。
暗がりの中で名簿を確認している青年。
始が何の迷いもなくハートのAを取り出すと、腰にベルトが現れる。

「変身」
――CHANGE――

変身を終えると、そこには黒き鎧を身に纏った戦士仮面ライダーカリスの姿があった。
カリスはすぐさま専用の弓型武器である醒弓カリスアローを出現させて構える。
高熱エネルギー矢の光弾を放って致命傷を与え、近づいてカリスアローの両端の刃で止めを刺す。
この手順で一人目を葬るつもりだった。
誤算があったとすれば最初の光弾で致命傷に至らなかった事だ。
だがあのまま斬り合いを続ければ間違いなくこちらの勝ちは確定だった。
川に逃げ込もうとした時もスピニングダンスで葬れるはずだった。
戦闘は有耶無耶のうちに終わった。
勝負を短時間で決する事が出来なかったのが痛かった。
だが今の戦闘で確実に分かった事があった。
――身体がいつもより動かしづらい。
少ししたら慣れるだろうが、いつもより力がでない事は確かだ。
加えて技の威力も若干いつもより低くなっているようだ。
これはいったいどういう事だろう。

(まあ、今分かっただけでも良かった。急ぐか)

大切なものを守りたいと願う蟷螂はただ走りゆく。次なる獲物を求めて――


【1日目 深夜】

【現在地 A-7 川(崖)付近】
【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、疲労(小)
【装備】カリスラウザー+ラウズカード(ハートのA〜10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、ランダム支給品×1
【思考】
 基本:栗原親子の元へ戻るために優勝を目指す。
 1.次の参加者を見つけて殺す。
 2.どんな人だろうと殺す。
 3.ハートのJ、Q、Kがほしい。
【備考】
 ・参戦時期はACT.5以前。なのは達の事は名前のみ天音より聞いた事がある(かもしれない)程度です。
 ・自身にかけられた制限にある程度気づきました。
 ・首輪を外す事は不可能だと考えています。

141 :誰がために彼の者は行く ◆RsQVcxRr96 :2008/08/01(金) 23:31:10 ID:dPHi1lmZ


   ◆   ◆   ◆


「……かはっ……はぁ、ぐぁ……」

暗がりの中をいかにも苦しげな様子で足を動かす青年がいた――天道総司だ。
直前で狙いが外れたとはいえ、カリスが誇るスピニングダンスの余波は間違いなく天道に影響を及ぼしていた。
最初に受けた右脇腹の傷、戦闘で刻まれた傷、余波による全身への負傷、そして川に落ちた時に受けた衝撃。
それらが天道の命を確実に蝕んでいた。
はっきり言ってこの状態で歩けるだけでも大したものである。
伊達にカブトの資格者ではない。
だがそれも最早限界に近くなっている。
視界は霧がかかったようにぼやけていき、足取りもだんだんと重くなっていく。
しかし天道はこんなところで倒れる訳にはいかなかった。
彼には探し求めている人がいた。

「……ひより」

日下部ひより。天道にとって唯一人の本当の肉親、妹である。
彼女を探し出すまでは倒れる訳にはいかない。
その気力で歩き続けてきたが、もう既に限界だった。
岸に上がった所から推測して休めそうな施設へ向かっていたが、そこまで意識があるかどうか分からない。
しかしこんな所で倒れたら殺し合いに乗った者にとっていい餌でしかない。
それにその前に出血多量と疲労で死ぬ可能性が高いだろう。
1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩、1歩――

(……ひ、より……待って、いて、く、れ――)

視界が暗転する。
天道の身体は限界に達して意識を手放した。
最後に少女の声を聞いたのは気のせいだろうか。


   ◆   ◆   ◆




142 :誰がために彼の者は行く ◆RsQVcxRr96 :2008/08/01(金) 23:34:06 ID:dPHi1lmZ
「はあ、さっぱりした。いい湯だったなあ」

無事に温泉に着いたシャーリーは目的であった湯浴みを終えて一休みしていた。
こんな状況ゆえにあまり時間はかけられなかったが、温泉はいいものだった。
恐怖と寒さで色を失っていた身体も今ではほんのりと赤みがさしている。
本当なら今すぐにでもルルーシュや生徒会のメンバーを探すべきなのだが、なにしろどこにいるのか見当がつかない。
よって一休みと称して地図とにらめっこをしているのだが、それで誰がどこにいるか分かる訳なかった。
ちなみに今シャーリーが着ている服はここに備え付けられていた浴衣だった。
下着も完備されていて至れり尽くせりな点が嬉しかった。
浴衣の着方などシャーリーはよくは知らなかったが、すぐ近くに着る手順が書かれた紙が張っていたので苦労はさほどしなかった。

「それにしても海鳴温泉って……ここってエリア11? 確かウミナリゲットーっていう所があったような……」

そんな事も考えたりするが、一向に名案は思いつかなかった。
だからといって考えもなしに歩き回るのは無謀である事は確かだが。
シャーリーが自身の行き先について必死に考えを巡らせていると、不意に玄関の方から物音が聞こえてきた。

(え!? ちょ、今の音って、もしかして私ピンチ? しまった! 出口の場所確認しておけばよかった……)

今更悔やんでも詮無き事だ。
訪れた事態に後押しされる形となり、シャーリーは次なる1歩を踏み出す。
まずは影から様子を確認する事にした。
廊下の角からゆっくりと顔だけを出していく。
まず目に入った光景は開け放たれた玄関、扉が開いたままだ。
そしてその視線をそのまま下にスライドさせていくと、全身ずぶ濡れの青年が倒れていた。

「!? し、しっかりしてください!!」

その姿を見るやシャーリーはすぐさま青年の傍に駆け寄った。
罠かもしれないという考えは微塵も浮かばなかった。
目の前に傷だらけの人が倒れている、それだけでシャーリーが彼を助けようとする理由は十分だった。
近づいて見てみると、脇腹の傷が特に酷かった。

(ルル、みんな、ごめん。私この人を見捨てられないや。だからみんなと合流するのは後になりそう)

心中で詫びを入れつつシャーリーは倒れている青年――天道総司を個室まで運び入れ始めた。
二人の行く先が揺らいでいるのは温泉の湯気のせいだけではないだろう。




143 :誰がために彼の者は行く ◆RsQVcxRr96 :2008/08/01(金) 23:38:25 ID:dPHi1lmZ
【1日目 深夜】
【現在地 B-7 温泉(海鳴温泉)】
【シャーリー・フェネット@コードギアス 反目のスバル】
【状態】健康、気分一新
【装備】浴衣
【道具】支給品一式、ランダム支給品1?3
【思考】
 基本:ルルーシュ達と一緒に帰りたい。
 1.目の前の人(天道)を介抱する。
 2.ルルやスバルやカレンを探す。


【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】重傷(全身、特に右脇腹)、ずぶぬれ、疲労困憊、気絶中
【装備】爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】支給品一式、ランダム支給品1〜2
【思考】
 基本:元の世界への帰還。
 1.気絶中。
 2.……ひより。
【備考】
 ・参戦時期はACT.10冒頭。クロックアップでフェイト達の前から立ち去った直後。
 ・なのは、フェイト、はやて、クロノは一応信用、矢車は保留、浅倉は警戒しています。
 ・身体がいつものように動かない事を知りました。


144 : ◆RsQVcxRr96 :2008/08/02(土) 00:03:32 ID:bV3/LJLX
サル規制解除かな。投下終了しました。

145 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 02:11:43 ID:8MflO18q
GJです!
ライダーシステムを持たない天道が同じ仮面ライダーであるカリスにボコられて……
やっぱり最初の不意打ちが痛かったなぁ。
いきなり前途多難。この先果たしてどうなるのか……
なのはロワでありながらも描写がいかにもライダーロワっぽくてGJw
そして原作ではロロに殺されてしまったシャーリー、天道を拾ったことでどんな運命になるのか期待。
果たしてルルーシュに無事再会出来るのか……

146 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/08/02(土) 14:25:07 ID:MUS3fY+p
バトロワで30KB台とか初めてだぜ!(ぉ
そんなわけで、はやて、セフィロス、シグナム、アレックス分投下します

147 :舞い降りた翼 ◆9L.gxDzakI :2008/08/02(土) 14:27:40 ID:MUS3fY+p
 歩いていく。
 茶色いショートヘアーを揺らした小学生ほどの少女と、銀の長髪をたなびかせた大男が。
 宵闇の中で、ともすれば親子ほどに歳の離れた印象を受ける2人組が、並んで道路を歩いていた。
 静まり返った街の中には、自分達以外の人間がいる様子などまるで見られない。
 街頭の灯りは残らず消え、走ってくる自動車も見受けられず、人の気配などあるはずもない。
 虫の音すらも聞こえない深夜の静けさは、幼いはやてには一種恐怖感さえ与えていた。
 数歩ほど先を歩く男の顔を、ちらと覗き込む。
 漆黒のコートから筋骨隆々とした胸板を覗かせる、絶世の美男子とでも言うべき麗人。
 確かセフィロスと名乗ったか。彼はこの状況においてなお、ひどく落ち着いていた。
 自分のように怯えた様子はまるでなく、無表情で進行方向を見つめている。
 青き光を湛えた鋭い瞳は、見る人によれば恐ろしくも見えるだろうが、この場ではひどく頼もしい。
 それだけではない。銀と青の長槍を携えたこの男の姿には、どこか無性に安心感を覚える。
 黒ずくめと銀色の長髪という組み合わせが、あのリインフォースに似ていたからかもしれない。
 あるいはもっと別の理由もあったのかもしれない。そんなことは分かるはずもなかったのだが。
 ふと、視界の中に見知った風景を認めて、足を止める。
「……翠屋や」
 そして、ぽつり、と呟いた。
 はやてがそこで止まったことを察したセフィロスもまた、己が歩みを止めて振り返る。
 視線の先にあったのは、一軒の小洒落た喫茶店だ。
「知っている店か」
 静かに、そして短く、セフィロスが問いかける。
 幾分か冷たい雰囲気の漂う声音だったが、はやては特に気にしてはいなかった。
 そもそもクールという点でならば、共に生活しているシグナムやザフィーラともさほど変わらない。
「私の友達の……高町なのはちゃんのお家や」
 言いながら、車道を挟んで反対側にある店舗へと歩いていく。
 車が通っているわけでもないのに、わざわざ車道を歩いていたのは、やはり習慣というものなのだろう。
 セフィロスもまたそれに続く。はやては幾分か早足だったが、歩幅の差ですぐに追いついた。
 少女の眼前に建っていたのは、本来ここにあるはずのない建物。
 自分の暮らす地球の、海鳴という町の、あの場所にあるべき建物。
 自分と同じくこの殺し合いに巻き込まれてしまった友人の、帰るべきはずだった場所。
 とはいえ、それをすぐに本物の翠屋と結びつけるほど、はやても馬鹿な娘ではない。
 恐らくプレシアが、何らかの意図をもって複製させたのだろう。
「そうか……ここが」
「知っとるの、セフィロスさん?」
 少々意外そうな声音で、はやてが尋ねる。
 ぽつりと口から漏れた男の声に、微かに感慨のようなものがこもっていたのを感じたのだ。
「まあな」
 返ってきたのは、そんな素っ気無い返事だった。
 つれないセフィロスの態度に、はやては少々むっとしたような表情を作る。
 そういえば彼は、少し前まで管理局の嘱託魔導師をやっていたと聞いた。
 何でも、次元断層に巻き込まれてミッドチルダに流れ着いたところを、局員のある女性に拾われて、
 色々あった末に一時的に入局することになったらしい。
 その色々、というのがよく分からないが、大人には、子供では分からないことが色々あるのだろうと強引に納得。
「ひょっとしてなのはちゃんのことも、そのセフィロスさんを助けた人に聞いたんですか?」
「そんなところだ」
 曖昧な返事をしながら、セフィロスはデイバックを開けて地図を取り出した。
 恐らく翠屋という名前が、その地図に載っていたのだろう。ならば、現在地を確認するにはちょうどいい。

148 :舞い降りた翼 ◆9L.gxDzakI :2008/08/02(土) 14:29:56 ID:MUS3fY+p
「その人って、どんな人やったんです?」
 ふと、そんなことを聞いていた。
 会話を続けていれば、少しは夜のへの恐怖が紛れるかもしれない。あくまでその程度の、軽い気持ちでの問いかけ。
 セフィロスから返ってきたのは、予想外の沈黙だった。
 地図をなぞる目線さえも止め、じっと押し黙る。
 彼は確かに無口だったが、それでも話しかければ、無視せずにちゃんと答えてくれていた。
 それがここにきてこの沈黙だ。ひょっとすると、どう表現していいのか、案外真剣に考え込んでいるのかもしれない。
「……お前と同じように、訛りのあるしゃべり方をした奴でな」
 ややあって、不意にセフィロスが口を開いた。
「とにかく騒がしい奴だった。いつも俺にまとわりついてきて、時には面倒に巻き込んで……
 いつもにこにこしているかと思えば、時々思いっきり泣き出したこともあった」
 ぽつり、ぽつりと、低い男の声が紡がれていく。
 呆れてため息をつくような、それでいてどこか苦笑しているかのような、そんな声だった。
 少なくとも、まだまだほんの数十分ほどの付き合いではあったが、その中でも珍しく、彼は饒舌に語っていた。
 ふっ、と。
 はやての口元に、柔らかな笑みが浮かぶ。
「セフィロスさんにとって、大事な人やったんですね。その人」
 そんな風に語る目の前の男は、何となく楽しそうにさえも見えていたから。
 おおよそ感情を見せぬ声。どこか寂しげに輝いていた瞳。
 そこに初めて、ほんの微かではあったけれども、どこか明るい光が差していたような気がしたから。
 当のセフィロスは、ようやくはやての方へ視線を向けると、鋭い目つきを僅かに丸くする。
 そしてしばしの沈黙が続いた後、これまたほんの僅かに、彼の口元が緩んだ気がした。
「……かもしれんな」
 薄っすらと微笑んだように見えたセフィロスは、特に否定するでもなく、そう呟いた。



 大事な人。
 唐突にそんなことを言われて、一瞬セフィロスは己が思考を停止させていた。
 あの騒がしい関西弁女をそんな風に思うことは、そうそう滅多にはなかったのだから。
 優しくてある程度の度胸もあるくせに、いつもいつも馬鹿騒ぎを繰り返して、結果ため息を誘うような奴。
 妙な会議に誘われたり、挙句麻雀とやらでたかられたこともあった。
 だが、少し考えてみたことで、あながちそれも間違いではないようにも思えた。
 奴には色々と面倒なことに巻き込まれることもあったが、その間の自分は決して独りではなかった。
 たった独りで全人類の抹殺を目指したあの時とは違い、そこには大勢の仲間の姿があった。
 元々人付き合いがそんなに得意ではなく、更にその心を閉ざしてしまった自分が彼女らに溶け込めたのは誰のおかげか。
 そんなことは、今さら再確認する必要もないだろう。
(それにしても、随分と他人事に語るものだ)
 そして、目の前の少女に感じるギャップに、思わず噴き出しそうになる。
 この小さなはやてには知る由もない。彼女が言った大事な人というのが、他ならぬもう1人の彼女自身であることなど。
 そんな奇妙な光景が、セフィロスにとってはひどく滑稽に感じられた。
 とはいえ、過去の思い出に浸っているわけにもいかない。まずは現状を打開する必要がある。
 そこでセフィロスは、地図を自身のデイバックへとしまうと、兼ねてから考えていたことを実行する。
「ちょうどいい。……お前の持ち物の中に、武器として使えそうなものはあるか?」
 真剣な表情を作り直すと、はやての方へと向き直って問いかけた。
「武器?」
 予想した通り、目の前の少女は怪訝そうな表情を浮かべる。
 無理もないだろう。つい数十分前に力を貸すといった人間が、人殺しのための武器を要求したのだから。
 少なくとも小学生の幼稚な頭脳では、そこまでしか連想することはかなうまい。
 これが自分の知る19歳のはやてならば、もう少しまともな判断もできただろうか。
 そう思いつつも、セフィロスは言葉を続けた。

149 :舞い降りた翼 ◆9L.gxDzakI :2008/08/02(土) 14:31:10 ID:MUS3fY+p
「他の参加者が襲ってきたり、もしくは参加者同士が戦闘を行っている場面に出くわしたる可能性もある。
 力ずくで止めなければならないこともあるだろう。そのための装備だ」
 それを聞いたことで、はやてはようやく得心したような表情を浮かべる。
(それ以外の役割もあるんだが)
 内心で呟いた言葉を、しかしセフィロスは決して口に出すことはしなかった。
 もちろん彼は、全ての殺し合いを止められるとも、全ての参加者を救うことができるとも、毛頭思っていない。
 どうしても殺さなければならない時がくる。どうしても捨てなければならない命がある。
 そのためにはより扱いやすい武器が必要となる。
 セフィロスは強い。それも掛け値なしに。
 並の人間など歯牙にもかけない、などといった生ぬるいものではない。
 人間離れした超人すらも食らう、まさしく「魔人」とでも言うべき存在なのだ。
 たとえはやてに仕えるヴォルケンリッターの面々と戦うことになっても、一対一ならば蹴散らしてみせるだろう。
 あまりにも凄まじく、あまりにも気高い。それがセフィロス。
 しかし、それは普段の彼のことだ。
 今の彼の身体には、恐らく何らかの制限がかかっている。普段の絶大なまでの力が発揮できないのだ。
 この状況では、自分の絶対性は信用できない。誰に遅れを取るとも分からない。
「……あれ? でも、そのデバイスではあかんのですか?」
 と、ここで再びはやてが首をひねった。
「俺は剣の方が慣れている」
 自らの手に収まったストラーダを見下ろしながら、言った。
 セフィロスがその能力を最大限に発揮するのは、このデバイスのような槍ではない。
 あの美しくも鋭き愛刀・正宗のような剣だ。
「ん……なら、ちょっと待っとってください」
 言いながら、はやては自らのデイバックへと手を突っ込んだ。
 彼女はまだ自分の持ち物を、ろくに確認もしていない。
 最初に手にした名簿を読んでいたところでセフィロスに遭遇したのだから、無理もないだろう。
「とりあえず、こんなのがあったんですけど」
 と、そこからはやてが何かを取り出す。
「……まだ槍の方がましか」
 微かにセフィロスがため息をついた。
 その手に抱えられていたのは、何やらよく分からない銀色の物体だった。
 腕に嵌めて使うもののようで、付属していた説明書によると「デュエルディスク」というらしいが、直接戦闘用の武器ではないようだ。
 デュエルモンスターズなるカードアイテムを使用するためのものらしいが、そんなカードは持ち合わせていない。
 すなわち、現段階ではセフィロスの眼鏡にはかなわない。
「何にせよ、相手を殴ることくらいには使えるだろう。お前が持っておけ」
「あ、はい」
 セフィロスの言葉に従い、はやてはそれを左腕に装着する。
 カードを右手で扱わなければならないので、左に着けることを前提としているらしい。
 細かい作業に向かなくなった左腕を遊ばせ、右手だけで支給品あさりに戻る。
 ややあって、その手が何か平らな物を掴んだ。軽い。そのまま片手で拾い上げる。
「……何やろ、これ?」
 奇妙な猫の仮面がそこにあった。
 顔面の真ん中を線で仕切られたそれは、半分黒、半分白といった塗り分けられ方をしている。
 どことなく、不気味な印象。ファンタジーの類に出てくるような、呪いの仮面を彷彿とさせた。
「あ……これ、デバイスや」
 しばしの間が空いた後、はやてが呟く。魔法を使う者であるが故に、その独特の性質に気づいたのだろう。
「起動させてみろ」
 短くセフィロスが要求した。小さく無言で頷くと、はやては手の中の猫仮面へと指示を飛ばす。
 しかし、変わらず。まるで変化なし。
 もう一度試してみる。変化なし。試しにもう一度試してみる。やっぱり変化なし。

150 :舞い降りた翼 ◆9L.gxDzakI :2008/08/02(土) 14:32:33 ID:MUS3fY+p
「これ……なんかプロテクトがかかってて、起動せぇへんようになってます」
 困ったような表情を浮かべながら、はやてがセフィロスへと向き直った。
 男の端整な顔立ちが、僅かに歪む。
 起動しない、とは一体どういうことだ。殺し合いがさせたいのならば、何故そんな不便な代物を支給する。
 参加者達に戦いをさせたいのならば、わざわざ武器に鍵をかけるなんてことはマイナスでしかない。
 それともあるいは、その状態が仕様だとでもいうのか。
 この趣味の悪い仮面は、元からそうしたプロテクトがかかっていたというのか。
「何か情報は呼び出せないのか」
 探る必要がある。そうすれば、この意味不明の封印の理由も分かるかもしれない。
 セフィロスの言葉を受けたはやては、再び仮面へと向かうと、そのデータを調べだした。
 しかしその顔は、徐々にしかめられていく。どうやらスペックノートの方にも、何らかの制限がかかっているらしい。
「あ〜……あかん。名前以外、ろくに何も分かりませんでしたわ、これ」
 気だるげにはやてが言った。セフィロスの予想は的中したようだ。
「で、その名前は?」
「……“マハ”……だそうです」
「それでは何も分からんか」
 呆れたような声が上がる。
 ひょっとしたらスバルのリボルバーナックルなどのように、名称から大体の形が割れるのではないかと踏んだのだが、それもハズレ。
 発音にしてたった2文字の名前からは、それがいかなるものなのかはまるで検討もつかない。
 ひとまずそれは保留として、セフィロスは今後の方針を考え始めた。
 ここから少し東に進めば、運河にかけられた橋がある。そこから南下すれば機動六課、東に直進すれば地上本部があった。
 地上本部の方は詳しくないが、古巣とも言える六課隊舎は非常に設備が整っている。
 そこならば、互いの首輪を外すこともできるかもしれない。そうすればプレシアによる爆破を警戒する必要がなくなる。
 しかし、今はそれ以上に優先すべきことがあった。
 翠屋の扉へと歩み寄ると、ドアノブをがちゃりとひねる。
「今のうちに眠っておけ」
 そして振り返ると、はやてに向かって短く言った。
「え? でも、私らが急がんと……」
「お前はまだ子供だ。いざという時に眠くでもなられたら、俺の邪魔にもなる」
 そう。目の前のはやては小学生ほどの子供なのだ。
 セフィロスのように戦場慣れしていないどころか、徹夜に耐えうるだけの体力もないだろう。
 加えて、現在は深夜。いついかなるタイミングで寝そうになるかなど、分かったものじゃない。
 ならばいっそ開き直って、今のうちに寝ていてもらった方がまだ都合がいい。
 子供扱いされたことで、またはやては一瞬むくれた顔をしたが、その後は表情を正して黙り込む。
「……あの、セフィロスさん」
 そして、しばらくの後に口を開いた。
「これ腕に着けとったら、寝るときに邪魔なんですけど……」
「……別に今着けろと言った覚えはなかったんだがな」



 高町なのはの部屋。
 幼い女の子が暮らすに相応しい、それなりに可愛らしく彩られた一室。
 はやては今ここのベッドの中で、すやすやと寝息を立てていた。
 やはりこの非常時だ。加えて、先ほど槍を突き立てられた時には、一瞬死すらも覚悟していただろう。
 なんだかんだ言いながらも、やはりその辺りは小さな女の子だ。緊張の糸が切れ、眠りにつくまでにはさほどかからなかった。
 そして、すぐ傍らで椅子に座り、少女の寝顔を見つめるセフィロス。
(思えば、こうして寝ているところまでは、さすがに見たことはなかったな)
 そんな風に内心で軽口を叩くのは、彼なりの余裕の表れなのだろうか。
 そして窓の外へと視線を移し、遠くの地上本部を見やる。
 上空の雲すらも突き破る、凄まじいまでの高さのタワーだ。何度見ても、やはりそれだけは周りとは迫力が違う。
 あれほどまでに大きな物を、何故わざわざ複製したのだろうか。建造しても面倒なだけだろうに。
 そんなことを考えながら、ふと、視線を下に泳がせる。

151 :舞い降りた翼 ◆9L.gxDzakI :2008/08/02(土) 14:33:55 ID:MUS3fY+p
「……?」
 そして、見た。
 桃色のポニーテールをたなびかせる女性が、何やら異形の腕手を持った男と小競り合いをしているところを。
 ここから少し離れた橋のそばで、見覚えのある剣を携えた見覚えのある女の姿を。
(シグナムに……バスターソードか)
 機動六課の副隊長格の剣士を思い出す。アンジールやザックス、そしてクラウドが振るっていた大剣を思い出す。
 余裕ぶって、ここではやてに休息を取らせたのは間違いだったかもしれない。
 寝ている間に、結局すぐ近くで起こっていた戦闘を見逃したともあれば、ベッドの少女はどう思うだろうか。
 そして、見た。
 その場に乱入する、もう1人の女の姿を。
 オレンジ色の髪をツインテールにした、これまた見覚えのあるティアナ・ランスターの姿を。
 ――彼女を貫くバスターソードを。
 反射的に、セフィロスの身体は動いていた。
 デイバッグに手を突っ込むと、支給されていたメモを取り出す。
 一応向こうでの生活に困らない程度に身に着けていた、簡単なミッド語の書き置きを残した。
 数時間後と思われる日の出の時には、はやては目を覚ますだろう。それまでには帰ってこれる自信はある。
 だが、それよりも早く目覚めてしまったらどうする。その時自分がその場にいなかったらどうする。
 そのためのメッセージだ。
 机に置かれたデュエルディスクの近くにそれを置くと、セフィロスはがらがらと窓を開け放ち、

 そのまま飛び降りた。


「……ん……」
 少女の瞼が微かに震える。
 何やら冷たい風のようなものを感じ、その意識はゆっくりと覚醒へと向かった。
 上体を起こすと、はやては周囲へぐるりと視線を泳がせる。
 よく見ると、部屋の窓が開いていた。恐らく風はそこから吹き込んでいたのだろう。
 そして、枕元に置かれたメモ用紙に気がついた。

 ――しばらく外に出る。俺が戻るまで、そこでじっと身を隠していろ。

 それを読んでようやく、その場にセフィロスの姿がないことに気がついた。


【1日目 深夜】
【現在地 F-2 翠屋・なのはの部屋】
【八神はやて(A's)@仮面ライダーリリカル龍騎】
【状態】健康、寝起き
【装備】なし
【道具】支給品一式、デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、憑神刀(マハ)@.hack//Lightning、
    ランダム支給品0〜1個、セフィロスのメモ
【思考】
 基本 この殺し合いからの脱出
 1.仲間たちと合流
 2.セフィロスさん……?
【備考】
 ※セフィロスが自分を知っていることを知りません
 ※憑神刀(マハ)のプロテクトは外れておらず、待機形態のままです
 ※憑神刀を含めた、巫器(アバター)に関する説明は後述します

152 :舞い降りた翼 ◆9L.gxDzakI :2008/08/02(土) 14:34:57 ID:MUS3fY+p
 びゅん、と。一陣の風が無音の夜空を駆け抜ける。
 さながら夜の帳を引き裂くような、鋭く激しき剣閃の音。
 刃を振るうのは、桜色の長髪を揺らす女騎士だ。身の丈を遥かに凌駕する日本刀。それがその手に携えた刃。
 シグナムの意志に呼応し、長大な正宗は宵闇に白銀の軌跡を描く。
 迎え撃つは異形の男だ。武器など持たぬ異形の腕。人のそれならざる凶悪な腕手。
 おとぎ話の「気狂い帽子屋」の名を冠する、アレックスのARMSが、剣呑なる凶刃と真っ向から対立する。
 激突。交錯。回避。防御。
 襲撃。追撃。反撃。連撃。
 次から次へと繰り出される攻め手の応酬。息も尽かさぬデッドヒート。
 正宗が、マッドハッターが。アレックスへと、シグナムへと。
 相対する敵を滅さんと、持てる力と技と速さと気力の全てをかけて襲いかかる。
 一進一退の互角の勝負のさなか、しかしその状況にあっても、互いに苛立ちを拭い去れずにいた。
(先ほどの剣よりは軽いが……)
 シグナムの眉がひそめられる。
 手にした和刀のリーチは確かに強力な武器だ。2メートル以上の刀身など、もはや槍にすら匹敵する。
 しかし、それ故に、どうしても振りが遅れてしまう。なまじ長すぎるが故の弊害。
 近所の道場で剣術を教える身として、また戦闘においても片刃の剣を使う身としては、確かに日本刀は得意な武器といえよう。
 だが、だからこそ、そのタイムラグがより顕著に感じられる。
 バスターソードならばまだよかった。扱いづらいと把握できていたが故に、覚悟があった。
 しかし正宗は違う。元来得意な武器であるが故に、どうしても平時の感覚で振るい、結果その落差に苛立ってしまう。
 無論、使い勝手そのものはこちらの方が遥かにましなのは、確かなことなのだが。
(隙が見つからんな……)
 アレックスの頬を冷や汗が伝う。
 異形のマッドハッターの能力の本分は、「ブリューナクの槍」と呼称される砲撃だ。
 焦点温度数万度。冗談のようなスペックの荷電粒子砲。直撃せずとも、人間など余波だけで始末できる。
 しかし、撃てない。流れるように繰り出されるシグナムの斬撃が、エネルギーチャージの隙を与えない。
 現状は確かに互角の勝負だ。未だ勝機は見つからないが、まずそう簡単に負けはしないだろう。
 だが、本来ならばそうではない。こんなに時間をかける必要などない。一撃で決着をつけられる戦いなのだ。
 ただの一発、あの光の槍を放つだけで、目の前で踊るシグナムをたちどころに蒸発させられる。
 それだけで十分なはずなのに、こうして余計な遠回りをさせられている。
(そして……)
(この制限とやら……)
 そして2人の思考は得物のみならず、同時に己が身体能力へも向いていた。
 練られる魔力の効率が悪い。発揮できるARMSの腕力が低い。
 さらに何となく、足が普段より遅くなっている気がする。何となく、体力が普段より減りやすくなっている気がする。
 これがプレシアが一部の参加者にかけた制限なのだろうか。2人は同時に推測する。
 相手の様子を見る限りでは、どうやら向こうも同じらしい。
 であればこれは吉と出るか、凶と出るか。
 いずれにせよ、全力で戦えないなどということが、それら以前に「つまらない」ことであることは確かだった。
 シグナムの正宗が振りかぶられる。
 アレックスのマッドハッターが振り上げられる。
 それぞれがそれぞれの苛立ちを抱え、それぞれの武器は、それぞれの敵へと叩きこまれた。

 ――ずどん。

153 :舞い降りた翼 ◆9L.gxDzakI :2008/08/02(土) 14:36:18 ID:MUS3fY+p
「「っ!?」」
 両者の動作が停止する。驚愕に見開かれる瞳。
 力と力の正面衝突、その僅か刹那の直前。シグナムとアレックスの間に、割って入る金属の煌きがあった。
 烈火の騎士が知らず、キース・シルバーが知る、騎士の突撃槍。
 飛来したアームドデバイス・ストラーダが、アスファルトに深々と突き刺さっていた。
 あまりにも素早く、あまりにも鋭く、そしてあまりにも正確無比なタイミング。
 吸い込まれるように落下してきたストラーダは、2人のちょうど中間地点に、猛烈な速度で現れたのだ。
 こんな芸当が出来るやつはそういない。少なくとも本来の持ち主たるエリオには無理。
 一体誰だ。誰がこの戦いに割って入った。

 ――ふわり。

 よく響く羽音が鳴った。
 シグナムとアレックスは、同時に音のする方へと顔を向ける。
 そして、見た。
 橋の上に佇立する、1人の男の姿を。
 夜風にたなびく、絹糸のごとき見事な銀髪。黒天の夜空に溶け込むような、漆黒のロングコート。
 細い黒水晶を持った目。闇の中で妖しく輝く目。猫のような魔性の瞳。
 背後にはためくは、異形。
 巨大な烏のごとく艶やかで、巨大な鷲のごとく荘厳な、黒き翼。
 それだけなら受ける印象はARMSと同じ。しかし、異形。それ以上に不気味。なぜか片方しか存在しない歪な黒翼。
 白銀の長髪と漆黒の翼を翻すその様は、さながら神話の天使のごとく、ため息の出るような美麗さを見せつける。
 刹那、その端整な顔立ちが、微かに動いた。
 髪が、コートが、翼が。妖艶の一言が相応しい動作で、ゆっくりと揺れる。
 そして、その吸い込まれるような青き瞳が、両者の元へと向けられた。

 ――ぞわり。

「「!」」
 身体をなぞる感触。ほとんど条件反射のごとき動作で、後ずさる。
 そして、自身が意識せぬままに後退していたことに気づき、二度驚愕した。
 この男は一体何者だ。
 一瞬前に視線越しに感じた、強烈な気配が蘇る。
 この男は違う。今までここで戦ってきた相手とも、自分が肩を並べる戦友とも、自分が日常で戦うべき相手とも。
 他ならぬ自分とさえもものが違う。格が違う。桁が違う。
 纏う空気が違う。一度殺気を当てられただけで理解できる、凄まじいまでの力量。
 どっと汗をかいたのを感じた。こんな感覚は久方ぶりだ。一瞬、制限がありがたいとさえ感じられる。
 参加者の実力を均等にするための制限は、恐らくこの男にもかけられているだろう。それがどれほどかは知らない。
 しかし、もしもこの男が本力だったら? そして、自分達だけに制限がかけられていたとしたら?
 もしも手を組んで迎え撃ったとしても――ただの一瞬であっさりと蹂躙されてしまうのではないか?
 推測に意味はない。そして、制限がある以上それは実現しない。しかし、それでも警戒しなければならない。
 何せ目の前で、さながら魔人のごとき睨みを利かすこの男は。
 このヴォルケンリッターの長、シグナムを。
 このキースシリーズの一角、アレックスを。
 ――ほんの一瞬とはいえ、恐怖させたのだから。
「どういうつもりだ、シグナム」
 男はゆっくりと、その口を開いた。

154 :舞い降りた翼 ◆9L.gxDzakI :2008/08/02(土) 14:37:34 ID:MUS3fY+p
「……お前まで私を知っているのか」
 額の汗を拭うと、シグナムはつとめて冷静に返す。
 まったく、ここに来てから妙なこと続きだ。
 自分の味方だと言ってくる、目の前のアレックス。自分を上官と呼んだ、管理局員の少女。そしてこの男。
 誰1人として知るはずもない人間なのに。管理局に友好的な知り合いなどいるはずもないのに。
 橋に立った男は一瞬、微かに驚いたように口を閉じた。
「質問に答えろ。何故ティアナを殺した」
 ティアナ、とは確か、そこで倒れている死体が名乗った名前だ。
 オレンジ色のツインテール。執務官補佐とかいう役職の娘。先ほどバスターソードで始末した敵。
「……我が主のために。それ以外に理由はない」
 決然と言い放つ。
 シグナムにとってはそれが全てだ。守護騎士の主たる八神はやてのために。
 彼女を生き残らせるためならば、騎士の誇りもどぶに捨てよう。
 彼女を優勝へと導くためならば、血の雨さえも被ってみせよう。
 たとえ全てを捨ててでも。主に人でなしとそしられようと、己が命さえ投げ出すことになろうと。
 最後の夜天の主・八神はやてを守るためならば、そこに一点の揺らぎもない。
「フッ……はやてが聞けば嘆くだろうな」
「ッ!」
 微かに憫笑する男の言葉にシグナムはその身を強張らせた。
 今、「はやて」と言ったか。その口調でその名を呼んだか。
 自分への侮蔑のみならず、僅かにはやてへの親しみを込めた声色で、我が主の名前を呼んだというのか。
 アレックスの他人行儀な口調とは明らかに違う。この男ははやてを知っている。それも、ちゃんと交流を持っている。
 どういうことだ。奴は自分のみならず、主とすらも言葉を交わしたことがあると言うつもりなのか。
「お前もこいつを知っているのか」
 横合いから響いた声に、シグナムははっと我に返った。
 横目に見れば、今の今まで忘れかけていたアレックスが口を開いている。
「名は何と言う」
 誰何する。
 銀月の光をその身に受け、超然と立ち尽くす麗人へと。
「……元機動六課所属嘱託魔導師、セフィロス」
 ややあって男が口にした所属は、またも機動六課という名称だった。
 アレックスが名乗った所属と同じ、聞き覚えのない部隊。
 今ここにいるシグナムの時代には、未だ存在すらしていない部隊。
「俺も機動六課所属だが……お前の顔に覚えはないな」
「……そうか」
 警戒の言葉を向けるアレックスに、またもセフィロスと名乗った男は一瞬口をつぐむ。
 だが、二度目にはさすがに慣れたのか、その間隔は先ほどよりも狭かった。
 ……何に慣れたというのだ?
 そこでシグナムは自問する。己が無意識に抱いた感想について。
 嘘を看破されることに? 自分のでまかせを見破られたことに? あるいは――純粋に自分と相手の記憶が食い違っていることに?
 ここにきてようやくシグナムは、この場に存在する奇妙な違和感に、微かな疑念を抱き始めていた。

155 :舞い降りた翼 ◆9L.gxDzakI :2008/08/02(土) 14:39:12 ID:MUS3fY+p


 セフィロスを驚かせた要素は2つ。
 1つは、自分を知らないシグナムのこと。
 1つは、自分が知らない六課メンバーのこと。
 しかし、それもさしたる問題ではないとすぐに判断した。
 かつてあれほどしつこく決闘を挑んできたこの女の無知は、かつてあれほどしつこくつきまとってきたはやての無知と同じ。
 自分を機動六課で見たことがないというこの男の無知は、この男を機動六課で見たことがないという自分の無知と同じ。
 恐らくこの場の面々の大半が、大なり小なり記憶に食い違いを持っているのだろう。
 それが記憶改竄なのか、はたまたそれ以外の何かなのか。
 少なくとも、はやて以外の人間には特に興味のないセフィロスには興味がなかった。
「まぁいいだろう」
 呟きながら、己が片翼を体内へと引っ込める。人外の魔物――ジェノバの眷属たる象徴を。
 あの時翠屋から飛び降りたセフィロスは、その翼をもって黒天の夜空へと飛翔した。
 そしてここまで移動し、ストラーダを投げ落とすことで戦闘を中断させ、今に至る。
 かつ、かつ、かつ、と。
 アスファルトの道路の上で靴音を鳴らしながら、セフィロスは眼前の2人に向かって歩を進める。
 両者は動かない。いくら何でも円越しで攻めてくることはないだろう。そう判断したが故の沈黙。
 並び立つシグナムとアレックスを素通りし、道路に突き立てたストラーダを抜き放つ。
 さて、果たしてこの場の2人と、自分はどこまでやり合えるだろうか。
 空中から見る限りでは、少なくともシグナムに制限がかけられていることは把握できた。
 かつて自分の魔力量を計測するために行った模擬戦。そこでの魔力リミッター付きの彼女と、ほぼ同レベルにまで弱体化した太刀筋。
 そして異形の腕を振り回す男の方も、大体は同じぐらいの能力と見て間違いないだろう。
 そう。今までこの場で交戦していた2人組の予想は、実は見事に的中していた。
 倒せる。この場にいたセフィロスが普段通りのセフィロスならば、今の2人などあっという間に叩き潰せる。
 その凄まじき力を振りかざし、5分と経たずに一方的に蹂躙してみせるだろう。
 しかし、今はそうはいかない。制限はセフィロスにもかかっているのだから。
 果たして手加減ができるだろうか。殺さない程度に戦闘をやめさせることができるだろうか。
 状況は三つ巴だ。2対1というわけではない。勝てないにせよ、負けることはないだろう。
 だが、そんなぎりぎりの状況で、殺さずの選択肢を取ることができるだろうか。
 仮に、力量的な意味でそれが可能だとしよう。しかしそれでもなお、精神的な問題が立ちはだかる。
 アレックスならばまだ話は分かるかもしれないが、シグナムの方は自分の声を聞き入れるだろうか。
 無理である可能性の方が明らかに高いだろう。
 あれは主に忠実だ。八神はやての存在に、愚直なまでに忠実だ。
 たとえ歪んだ道であろうとも、それがはやてのためになると信じるならば、決して曲げることはしないだろう。
 さて、このような状況で、本当に自分はこの戦いを死者なしで止められるだろうか?
 いっそ2人とも殺してしまった方が、遥かに楽なのではないだろうか?
「……フッ」
 ――それでも。
 諦めることを選びたくない自分がいた。
 人間に屈したくない自分がいた。はやての道を貫き通したい自分がいた。
「俺も随分と、アイツに毒されたものだな」
 あの雪の日の光景が蘇る。消滅する自身の身体。うろたえるリインフォースU。
 涙と共に自分にすがりついた――あの日のあの場所の八神はやて。
 あの泣き顔を、もう見たくないと思う自分がいた。

156 :舞い降りた翼 ◆9L.gxDzakI :2008/08/02(土) 15:00:10 ID:MUS3fY+p
「それに、それは元々俺の剣だ」
 シグナムが手にした正宗を見ながら、言う。
 長身のセフィロスの背丈すらも凌駕するあの刀は、紛れもないセフィロスの愛刀だ。
 元の世界においては、自分のみが扱いきれる究極の業物だ。まさかこんなに早く見つかるとは思わなかった。
 あれを手に入れることができれば、こんな槍で難儀する必要もなくなる。
 がちゃり、と音を立て、ストラーダを構えた。
 左手に握り、顔の高さへと運び、地面に水平にして。セフィロスの見せる独特な構え。
 戦闘の気配を察したシグナムとアレックスが、己が得物を構え直す。
 自分へと、そしてもう1人の相手へと、最大限の警戒を向けながら。
 にやり、と。
 片翼の天使は不敵に笑む。
 烈火の将が手にした剣を取り戻すためにも。
 何より、あの翠屋で待つはやての理想のためにも。
「悪いが……殴り倒してでも止めさせてもらう」


【現在地 F-3 橋付近】

【セフィロス@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】健康
【装備】ストラーダ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、ランダム支給品0〜2個
【思考】
 基本 元の世界に戻って人類抹殺
 1.八神はやてと行動を共にする
 2.殺し合いを止めるというスタンスは尊重するが、不可能と悟った時には殺すことも辞さない
 3.シグナムとアレックスを叩きのめし、戦闘を止めさせる。それが不可能ならば殺すが、ぎりぎりまでは粘る
 4.3が終わったらはやての元に戻り、目を覚まし次第機動六課隊舎へ向かう
 5.シグナムの持つ正宗が欲しい
【備考】
 ※現在行動を共にしている八神はやてが、本物の八神はやてであると認識しました
 ※機動六課でのことをはやてに自ら話すつもりはありませんが、聞かれれば話します
 ※身体にかかった制限を把握しました
 ※シグナムとアレックスが制限を受けていることを把握しました
 ※ブリューナクの槍の存在には気付いていません
 ※参加者同士の記憶の食い違いがあることは把握していますが、特に気にしていません

157 :舞い降りた翼 ◆9L.gxDzakI :2008/08/02(土) 15:01:00 ID:MUS3fY+p
【アレックス@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】健康、疲労(小)
【装備】なし
【道具】支給品一式、はやての車@魔法少女リリカルなのはStrikerS、サバイブ“烈火”のカード@仮面ライダーリリカル龍騎、
    ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
 基本 この殺し合いを管理局の勝利という形で終わらせる
 1.シグナムとセフィロスの排除
 2.1の後、機動六課隊舎へ向かう
 3.六課メンバーとの合流
 4.キース・レッドの首輪の破壊
【備考】
 ※身体にかかった制限を把握しました
 ※シグナムの存在、およびセフィロスの元六課メンバーだという証言に違和感を覚えています
 ※キース・レッド、管理局員以外の生死にはあまり興味がありません

【シグナム@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】困惑、疲労(小)、胸に裂傷(我慢できる痛みです)
【装備】正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式×2、バスターソード@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、ランダム支給品0〜3個
【思考】
 基本 はやてを優勝させるため、全ての敵を排除する
 1.アレックスとセフィロスの排除
 2.はやてとの合流
 3.ヴォルケンリッターの仲間達との合流
 4.このセフィロスという男……何故主はやてのことを知っている……!?
【備考】
 ※身体にかかった制限を把握しました
 ※参加者同士の記憶の食い違いに違和感を感じています
 ※セフィロスがはやてと交流があった可能性に気付きましたが、アレックスがはやてと交流があった可能性には気付いていません

158 :舞い降りた翼 ◆9L.gxDzakI :2008/08/02(土) 15:04:04 ID:MUS3fY+p
【支給品解説】
 巫器(アバター)@.hack//Lightningについて
 ・通常は名前のデータ以外の全てにプロテクトがかかっており、いかなる手段を用いても解除不可能。
  セットアップはおろか、カタログスペックの提示すらもできない。
 ・所有者が心に何らかの喪失を抱え、それに伴う強靭な意志を発揮した時、初めて起動させることができる。
  以降はプロテクトが解除され、普通に用いることができる。
 ・所有者が死亡することで、再び全機能にプロテクトがかけられる。
 ・デバイスモードの巫器が近くにある時、その存在を「鼓動」によって察知させる。
 ・術式はミッド式、古代ベルカ式、近代ベルカ式のいずれとも異なるため、AMFの影響を受けない。
  (独自の術式によって組まれたスカリエッティの魔法が、AMFの効果対象外であったのと同じと考えればよい)
 ・それぞれの巫器がそれぞれの専用スキルを持つが、「データドレイン」のみは全巫器が共通して保有している。
   データドレイン:魔力結合の術式に干渉・改竄することができる魔力弾を放つ。スキルの名称は各巫器によって異なる。
           魔力結合によって形成された存在(魔法やAIDA)などを変質、あるいは削除させることは愚か、
           人間に命中させれば、そのリンカーコアにも干渉することができる。
           それそのものには攻撃力がないため、魔力適正のない者には無意味だが、
           魔導師相手ならば一撃必殺クラスの性能を誇る。
           ただし、消費する魔力も膨大なため、一度の戦闘で1発撃つのがやっと。
           (とはいえ、魔導師殺しとしてはあまりに強力すぎる性能であるため、議論が必要と思われる)

//////////////////////////////////////////

ひとつ前の話「なごり雪」での言い回し、「私が俺でいられる場所」というのがお気に入りです。
エタブレの歌詞をモチーフにしているあたりに、「ああー、よく(片翼を)読み込んでくれてるなぁ」と喜びつつ今回分を執筆。

というわけで投下終了です。一触即発三つ巴大乱闘。
しかも確かかがみん接近中だそうで。こりゃ次回は血の雨だぜ!(ぇ
アレックスの影が極端に薄いのは、反目がARMS知らないからです。サーセン。

今回拙作から、巫器(アバター)を出させていただきました。恐らくライダーベルトに匹敵する超兵器(ぉ
や、こいつの設定って、けっこうロワ的には面白いと思うのですよ。
はやての強い決意のもとに発動させるか、
はたまたはやてをぶっ殺してセフィロスに持たせ、最凶最悪のバーサーカーとさせるか、
さぁ好きな道を選ぶがいい!(ぇ

159 : ◆jiPkKgmerY :2008/08/02(土) 19:50:47 ID:Hf7EgXvX
GJ!
まさかの不殺wセフィロスかっけえw
死者を出すことなくこの戦闘は終わるのか、それとも……
先の気になる展開でした!

あ、あと自分も15分頃に投下します。


160 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 20:16:36 ID:bV3/LJLX
投下乙です。
一触触発の三つ巴wどうなるんだこれ。
何気に一人残されたはやてが不安だw

161 : ◆jiPkKgmerY :2008/08/02(土) 20:20:47 ID:Hf7EgXvX
それではインテグラル、ギンガ、殺生丸、ナイブズ、キャロ、なのは(幼)、カレンの七名投下します。

162 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 20:21:36 ID:bV3/LJLX
 

163 :童子切丸は砕けない ◆jiPkKgmerY :2008/08/02(土) 20:22:44 ID:Hf7EgXvX
「行けども行けども闇ばかりか……人っ子一人いやしない」

地図でいうG-7に位置する市街地にて、褐色肌の女性――インテグラルが苛立ちを込め呟いた。
その端正な顔には多少の疲労の色が張り付いているが、今だ足取りはしっかりとしていて力強い。
それどころか苛立ちにより歩くペースが着実に上がってきている気さえする。

「辺りも静かですし……近くに人は居ないのかもしれませんね」

その歩調に苦労しながらも並行して歩く一人の少女――ギンガ・ナカジマ。
最早、早歩きと言える速度で歩くインテグラルに置いて行かれぬよう、必死に足を動かしている。
だがその割には、しっかりと周辺を警戒していて、その身振りには隙がない。


(――侮れない少女だ)


心の中で感服しながらインテグラは、今日何本目か分からない葉巻に火をつける。
美味、という言葉以外、形容のしようがない紫煙を堪能しつつ、インテグラは口
を開いた。


「分からないぞ。息を潜め、影から狙っている輩も居るかもしれん。警戒だけは怠るな」
「はい、分かってます」

小さく答を返しながらギンガは、インテグラルに感嘆を覚えていた。
常に鋭敏な空気を纏い、周囲に視線を送っている。
また、一挙一動に油断というものがなく、見ているだけで実力者だという事が分かる。
一般人なら錯乱してもおかしくない状況でも落ち着いているし、自らの道を迷う事なく進んでいる。


――自分はどうなのだろう。
そんなインテグラの姿を見ていると、ふとそんな考えが脳裏をよぎる。


この殺し合いにて自分は何をするべきなのか。

機動六課の仲間達との合流?
妹――スバル・ナカジマとの合流?
幼き頃の思い出に残る妖怪――殺生丸と出会う事?
会ってどうする?
殺生丸は敵として現れた、犯罪者だ。
もし殺し合いに乗っていたら?
その時は戦うしかない。
それは分かっている、だが勝てるのか?
デバイスもない今の自分が、妖怪という存在に?
もし殺生丸が殺し合いな乗ってなく、仲間とも合流できたらどうする?

首輪の解除?
それは可能なのか?
もし首輪の解除に成功し、会場から脱出できたとしてもプレシア・テスタロッサはどうする?

吸血鬼アーカードや、妖怪殺生丸さえもこの場に拉致する程の魔導師を捕まえられるのか?

まるで、灯り一つない真っ暗闇の中、巨大な迷路に放り投げられた気分だ。
何をどうすればゴールに辿り着けるのか。


164 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 20:22:53 ID:bV3/LJLX
 

165 :童子切丸は砕けない ◆jiPkKgmerY :2008/08/02(土) 20:25:31 ID:Hf7EgXvX
考えても、考えても答えは出ない。
そもそもゴールはあるのか?
それすら分からない。



「――い、おい! 聞こえているのか、ギンガ・ナカジマ!」

唐突に声を掛けられた。
声のした方向には、呆れ顔でこちらを見ているインテグラの姿。

「は、はい、何か?」
「先程の轟音が聞こえなかったのか? 警戒を怠るなと言っただろう、全く……」

轟音?
何の事だ?
不思議に思いインテグラに質問をしてみると、長い長いため息の後教えてくれた。

何でもほんの少し前、何十もの木々が倒れたかのような、物凄い轟音が鳴り響いたらしい。
その事について意見を求めようと振り向いたら、小難しい顔で何かを思案している自分が居たとの事だ。

そこまで思考に集中していたのか。
恥ずかしさに自分の顔が赤くなっていくのが分かる。

「す……すみません、ちょっと考え事をしてまして……」
「まぁ良い、気にするな。……それで、だ。お前ならどうする?
行くか? 行かないか?」

その時のインテグラの顔には試すような色が含まれていた。
どうする、とは轟音の事についてだろう。
顎を抑え、数秒の思考。
脳細胞を活性化させ、自らが選ぶべき道を模索する。

インテグラの話によると轟音は相当な音量であったらしい。
だがそれにも関わらず、この場からそのような轟音が起こる為の破壊現象は視認できない。
それらの事から破壊現象は距離が離れて場所で起こった事が分かる。
その上、インテグラの耳にハッキリと届く程の轟音。
相当な規模の破壊であったのだろう。
それこそ隊長や副隊長達の魔法のような圧倒的な破壊をもたらす威力の攻撃。
もしかしたら、本当に隊長達なのかもしれない。
その可能性も充分に有り得るだろう。
だが、ここで一つの疑問が浮かぶ。
――何故、轟音の主はそのような破壊活動を行ったのか?

仮説1.轟音の主は殺し合いに乗っていないが、相当な強敵と相対してしまい、それ程の威力の攻撃を使用しなくては生き残れない状況にあった。

仮説2.轟音の主は殺し合いに乗っており、相当な強敵を相手どり、殺害を目的として自身の能力を行使した。

仮説3.本人の能力ではなく支給品が関係しており、偶然、もしくは故意に能力を発動した。

こちらとして望むのは仮説1だ。
戦力としては申し分ないし、確実に味方となってくれるだろう。
次点が仮説3。
危うさはあるが、味方になるか敵になるかは五分五分。
行ってみる価値はあるかもしれない。
最悪なのは仮説2。
隊長級の力を持ち、人殺しを忌避しない危険な思想。
正直言えば、避けて通りたい相手だ。



166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 20:26:20 ID:bV3/LJLX
 

167 :童子切丸は砕けない ◆jiPkKgmerY :2008/08/02(土) 20:26:33 ID:Hf7EgXvX
自分の脳細胞が物凄い勢いで回転しているのが、分かる。
轟音の場に行くか、行かないか。
どちらもメリット、デメリットが存在する。
ここで最悪なのは判断ミスによる死。
一つの選択にも間違いは許されない――。


数秒の、だがギンガにてっては数分に感じる思考の後、ギンガは顔を上げる。
その顔に迷いはない。
ギンガの導いた答えは――

「……行きましょう。
誰かが襲われてるかもしれませんし、轟音を起こした者が殺し合いに乗っていない可能性だってあります。
もし、その人が殺し合いに乗っていたとしても、放置する事はできません。
……まだゲームは始まったばかりです。ここは引くタイミングではない。
――攻めていくべきです」

真っ直ぐに、インテグラの試すような瞳を見つめ返し、ギンガは一息に語った。
『轟音のした方へ向かう』
これがギンガの選んだ答え。
この選択が正解か不正解かは分からない。
でも、ここで引いてはいけないと思った。
ここで消極的な選択をすると、その先もズルズルと引っ張られていく。
メリットもデメリットも五分五分――ここは積極的に動くべきだ。

視線の先には力ある瞳でこちらを睨み続けるインテグラの姿。
インテグラの意見は違うのか。
目の前に立つ女性の、言い知れぬプレッシャーに、一粒の汗がギンガの頬を伝う。
痛いほどの沈黙の中、インテグラが口から紫煙を吐き出し、葉巻を地面に落とした。
足で火を消しながらインテグラは顔を上げ、そして。

「……やるな、ギンガ・ナカジマ」

――微笑みを浮かべ、そう言った。
それはまるで教師が優秀な生徒を褒める時に見せるような微笑み。

「正直言ってそこまでの思考力を持っているとは思わなかった。
私もお前の意見に賛成だ」

そう言うとインテグラは、その身に纏うコートを翻しつつ後ろに振り向く。
後ろ――つまり先程まで目指していた中心街とは真逆の、轟音のした方向。

「ちょ、ちょっと待って下さい! 良いんですか? もしかしたら危険な人物が居るかも……」
「さっきも言っただろう? お前の意見に賛成だと。それに消極的な策は私も好かん。
私達が狙うのはゲームの転覆だ。こんなところで引いてるようではそんな事は不可能。
…………それとも今になって怖じ気づいたか、ギンガ?」

フフンと鼻を鳴らし同時に、インテグラの顔に意地悪な笑みが浮かんだ。
その言葉に少し慌てたようにギンガが答える。

「そ、そんなんじゃありませんよ!」
「フフ、冗談だ。……それに試すような真似をして悪かった。
どうも浮き足立ってるように見えて、つい、な」

軽い口調とは逆に、物々しい態度で頭を下げるインテグラ。
――こういうところで、育ちが出るんだろうな。
そんなインテグラを見ながら、ギンガは妙な感心を覚えた。



168 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 20:27:38 ID:bV3/LJLX
 

169 :童子切丸は砕けない ◆jiPkKgmerY :2008/08/02(土) 20:27:46 ID:Hf7EgXvX
「音のした方角は北東。さて、行くぞ」

再び歩き始めるインテグラ。
その威風堂々とした後ろ姿は、ギンガにとってこれ以上なく頼もしく感じた。




「地図によるとF-8は平野……先程のような轟音が鳴り響くとは思えない……」

G-7の北部。
目的地へと黙々と歩いている最中、インテグラが地図を取り出し、ポツリと呟いた。
何かを考えるかのように顎を押さえ、歩みを止めずに考え込む。

「? どういう事ですか?」

横を歩くギンガが疑問を投げ掛ける。
その言葉にインテグラは手を顎から離し、顔を上げた。

「お前は聞いてなかったから分からないかもしれないが、あの轟音は何かが破壊された音ではなかった」
「と……いうと?」
「些細な違いだがな……私には、あの音が『破壊された物が崩れ落ちる音』に聞
こえた」
「『破壊された物が崩れ落ちる』……?それは?」
「さっき言っただろ?……『何十もの木々が倒れたような音』だ。……まぁ、勘でしかないがな」

そこで言葉を切り、インテグラは懐に右手を突っ込んだ。
取り出した物は、やはり葉巻。
専用のカッターで先端を切り落とし、ライターで火をつけ、口へと運ぶ。
ギンガには理解できないであろうが、喫煙家にとってはこの煙こそが生活必需品。
ヘビースモーカーであるインテグラでは尚更だ。
煙の味を楽しみつつ、インテグラは口を開く。

「今私達が向かっている北東――F-8は、平野と記載されている。
平野に何十もの木々が立っているとは考えにくい。というとは、だ――」
「音の発生源はF-9、またはE-9の確率が高い、ということですね」

答を口にしたのは、インテグラではなくギンガであった。
意表を着かれたのか、インテグラの目が見開かれる。

「やるな……大当たりだ」
「ありがとうございます」

嬉しそうな笑みを浮かべ、礼を言うギンガ。
だが、それもほんの一瞬。
顔を引き締め、真剣な表情でインテグラへと向き直る。

「目的地はF-9またはE-9に変更ということですね。じゃあ出発しましょう」
「ああ、そうだな」

――やはりこの少女は頭が回る。
とても16の少女とは思えない思考能力に、感嘆の眼差しを向けるインテグラ。
しかし、次の瞬間インテグラの表情に怪訝そうな色が映った。

「? どうした、ギンガ・ナカジマ?」

それは突然であった。
会話をしている内に、ギンガの表情が、まるで信じられないものを見たかのように変わっていたのだ。
当然、インテグラには何が何だか分からない。


170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 20:28:48 ID:bV3/LJLX
 

171 :童子切丸は砕けない ◆jiPkKgmerY :2008/08/02(土) 20:28:56 ID:Hf7EgXvX
ギンガに問うも返答はなく、見開いた眼で何かを見つめ続けている。
その視線は、インテグラの頭越しに遥か彼方を捉えていて、微動だにしない。
不審に思いつつもギンガの視線を辿り、その先――自分の後方へと振り向く。

その瞳に映ったものは――




最強の血を受け継げし妖怪、殺生丸は月光に照らされながら空を舞っていた。
背中にはいまだ気を失っている少女、キャロ・ル・ルシエの姿。




ガソリンスタンドにて考えに考えた挙げ句、彼が選択した答えは少女を連れての行動。
明らかにデメリットの多い選択肢。
たが、彼の中の何かがそちらを選択させた。
冷血なだけの妖怪ならば選ぶはずのないソレを――。

(どうかしている)

この娘は自分とは全く関係がない。
元の世界で匿っていた少女とも違うし、異世界で出会った召喚師の娘とも違う。
むしろ敵側に位置する人間だ。
それを何故……。


先程から、殺生丸の脳裏には同じ葛藤が廻り続けている。
答えなど出るはずがない。
苛だつ。
小娘を連れている自分にも、今現在自分がしている行動にも腹が立つ。

本来ならば先ほど遭遇した男――自分に逃亡を選ばせた男を殺しに向かう筈であった。
だが、自分が戦闘を行うにはこの小娘は邪魔だ。
捨て置けば良いのだが、その選択肢は、何故か選べない。

結局、男を見逃し先に中心部へと向かう事に。
あまりに、自分らしくない。
この場に来てからは可笑しい事ばかりだ。

殺生丸の端正な顔が歪み、苛立ちを解消するかのように、飛行速度を上げていく。
ふと眼下を覗くと、先程までの草原ではなく、様々な建物が建ち並ぶ市街地へと変わっていた。
恐らくF-7に辿り着いたのだろう。

そう殺生丸が思考した、その時であった。

「殺生丸さん!」

――聞き覚えのない少女の声が響き渡った。




172 :童子切丸は砕けない ◆jiPkKgmerY :2008/08/02(土) 20:29:57 ID:Hf7EgXvX



殺生丸は、その少女の姿に見覚えがあった。
眉をひそめながら、自分の記憶を辿っていく――――思い出した。
あの時、ルーテシアを囲んでいた管理局の魔導師の一人。
一瞬で蹴散らした相手だが、どうも印象に残っている。
確かあの時以前にも顔を見た事があるような――

「殺生丸さん!」

空を飛べないのか見上げるような形で声を張り上げ続ける女。
何故、自分の名を知っているのか?
疑問に思いつつ高度を落とす。
面倒だという気持ちもあるが、今の自分には圧倒的に情報が足りない。
それに、目の前の女が愛刀・爆砕牙を支給されている可能性もある。

一考の後、殺生丸は地へと降り立つ。
何故か、喜びに顔を綻ばせ、近付いてくる少女。

だが、その喜びは一瞬で打ち砕かれる。

少女――ギンガ・ナカジマが、殺生丸に背負われた、傷だらけの仲間の存在に気が付いてしまったから。

「せ、殺生丸……さん? その背中の子は、あな……た、が……?」

驚愕の表情で、何とかその言葉を吐き出す。
ギンガを襲う衝撃とは対照的に、殺生丸は関心なさげな顔を見せていた。

「だとしたら、どうする」

そして関心なさげに呟いた。
瞬間、ギンガを埋めていた何かが、崩れ落ちる。
敵だとは分かっていた。
でも、キャロを、まだ年端もいかない少女を、手にかけるような人ではないと信じていた。
なのに、なのに、この人は平然と、何食わぬ顔で――









「でゃぁああああああ!!」





気付いた時には拳を振るっていた。
デバイスが無いこと、相手が自分の実力を遥かに上回っていること、そんなの関係ない。


173 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 20:30:18 ID:bV3/LJLX
 

174 :童子切丸は砕けない ◆jiPkKgmerY :2008/08/02(土) 20:31:51 ID:Hf7EgXvX
感情に任せるままに、何年と鍛え続けた格闘術で、最強の妖怪の懐に踏み込む。

しかし――

「ガッ!」

格が違う。
悲しいくらいに呆気なくカウンターの一撃が顔面へとめり込み、ギンガの体が宙に舞った。



――強い。
浮遊感を感じながら、ギンガは思う。
先の一撃は、モーションを読み取る事すら出来なかった。
でも、だからこそ怒りが湧き上がる。

目の前の男は、あんな傷だらけになるまでその脅威的な力をキャロへと振るったのだ。
許せるもんか。

怒りが意識を鮮明にし、体を動かす。
空中で身を捻り、両足で着地。
殺生丸は無表情にこちらを見つめている。
追撃などする必要もないとでも思っているのか。

確かにそれは事実だろう。
デバイスを持たない自分と殺生丸とはそれ程に実力差がある。
だけどその油断が――こちらの勝機。

ダン、と地面を蹴り、間合いを詰める。
何回、何十と殴り飛ばされようと引かない、引いてたまるか。
殺し合いに乗ったこの人を止めてみせる。
命の恩人だからこそ、理想の人だからこそ、絶対に。

少女は駆ける。
少女の持つ全ての決意、意志を乗せて。
相手は遥か高みに立つ高貴なる妖怪・殺生丸。
少女の全てを込めた一撃は――






「止まれ!!! このバカ!!!」

――吸血姫でさえ縮み上がるような怒声によって阻止された。

今まさに激突しようかとしていた二人は、時間が止まったかのように動きを止め、怒声がした方へと視線を向ける。
その視線の先には、浅黒い色の肌を持つ一人の女性。
額に青筋を浮かべ、引きつった顔で近付いてくる。



175 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 20:32:12 ID:bV3/LJLX
 

176 :童子切丸は砕けない ◆jiPkKgmerY :2008/08/02(土) 20:33:40 ID:Hf7EgXvX
「インテグラルさん、止めないで下さい。
この人、殺生丸さんは殺し合いに乗っています。――私が止める」

冷静な、それでいて怒りに溢れているギンガの口調。
その言葉にインテグラルの片眉がピクリとつり上がる。
そして胸一杯に息を吸い込み一言。

「このバカが!! この男のドコが殺し合いに乗っているように見える!!」

それは殺生丸すらたじろかせる程の強烈な一声。
ギンガに至っては驚愕の表情のまま、固まる。

「だ、だって傷だらけのキャロを……」

それでも尚、納得できないか、ギンガが絞り出すように言葉を紡ぐ。
返答は盛大なため息。
インテグラルは呆れを隠す事もせず、左右に大きく首を振った。

「考えてもみろ。もし、その殺生丸という男が殺し合いに乗っているのなら、何故その少女を生かしておく?
それだけ弱っているのだ、殺す機会などいくらでもあったはずだ。
なのに、この男は傷ついた少女を連れている」

そこでようやく自分の考えが誤解という事に気付いたのか、目を見開きながら殺生丸を見やる。

「気付いたか? そいつは殺し合いになんか乗っていない。それどころかお前の仲
間を救ってくれた恩人だ」
「…………そういう事だ」

握り締められた拳を解きながら殺生丸が告げた。
蓋を開けてみれば何て事はない。
一人の少女の勘違い。

とてつもなく気まずい空気が場に流れる。

「……ご、ごめんなさい」

この空気の中、少女に出来る事は、ひたすらに頭を下げる事だけだった。




「殺生丸さん、本当にごめんなさい! とんでもない勘違いをしてしまって……」
「はぁ、相当に頭のキレる奴だと思ってたんだがな……」
「ああ! インテグラルさんもすみませんでした! ホントに私ったら……」
「はぁ、まったく……」

――この下らない喜劇は何時まで続くのだ?

憮然とした表情で手を組んだまま殺生丸は、終わる事のない謝罪に耳を傾けていた。
その横ではインテグラルが、ギンガの謝罪にため息を尽きながら、傷だらけのキャロに応急処置を施している。
何処となくたどたどしさを手つきだが、処置自体は適切なのだろう。
キャロの表情は段々と安らかな物になっていった。



177 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 20:34:00 ID:bV3/LJLX
 

178 :童子切丸は砕けない ◆jiPkKgmerY :2008/08/02(土) 20:35:06 ID:Hf7EgXvX
「ところでだ」

ほって置いたら延々と謝罪を続けそうなギンガを制し、インテグラルが声を上げた。
視線は殺生丸へと向けられている。

「殺生丸、お前は先程の轟音について何か知っているか?」

返答は無かった。
閉じた目を開けようともしない。

「お前が飛んできた方角は東。轟音の発生源と同じ方向……お前が関係している
と考えた方が自然なんだがな……」

構わず続けるインテグラル。
それでも視線すら向けようとしない殺生丸。

「私は貴様たちと話をしに来た訳ではない。お前たちの支給品を見せろ、用件はそれだけだ」

目を閉じたまま、ポツリとそれだけ告げた。
完全な平行線。
話し合おうという気を欠片も見せようとはしない。
――その時、目を瞑っていた殺生丸は気付く事ができなかった。
インテグラルの顔に挑発的な笑みが浮かんだ事に。


「…………ほう、言うじゃないか。
流石は妖怪、人間如きとは手を組む事すらしないと。
だが、お前だけでこの場から脱出できるのか?
いくらお前が超人的な力を持ってたとしても、不可能だと思うんだが」

殺生丸の眉がピクリと動く。
確かにこのゲームから脱出するには、異世界に詳しい者が必要だろう。
例えば目の前の女――管理局の局員のような。
戦国の時代を生き続けた自分には、異世界への移動法など分からない。
いざとなれば参加者を皆殺しにすれば良いのだが、それではあの女の言いなりになったのと同意義だし、何よりルーテシアとゼストもいる。
流石に奴等を殺すのは忍びない。

(ここは手を組んでおいた方が得策か……)

ため息一つ。
殺生丸の両眼が開かれる。
そこには、心配そうな表情でこちらを見せるギンガという少女、そして計画通りという笑みを見せるインテグラルという女。

「……分かった」

諦めの表情で殺生丸が呟いた。
瞬間、ギンガの表情がパアッと明るくなり、インテグラルの笑みが深みを増す。

「決まりだな。よろしく頼むぞ、Mr.殺生丸」

意気揚々と告げるインテグラル。
返ってきたのは、不快極まりないと無言で語る殺生丸の瞳。
だが、そんなもので「HELLSING機関」局長インテグラル・ファルブルゲ・ヴィンゲーツ・ヘルシングは怯まない。
楽しげに指を鳴らし告げる。



179 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 20:35:58 ID:bV3/LJLX
 

180 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 20:36:59 ID:Z9N434j3


181 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 20:40:27 ID:bV3/LJLX
 

182 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 23:34:35 ID:bV3/LJLX
ji氏の代理投下しますのでおてすきの方支援お願いします

183 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/02(土) 23:36:12 ID:bV3/LJLX
「戦力は手に入れた、出発するぞ」

傷だらけの召喚師、機械造りの魔導師、吸血鬼ハンターの末裔、最強の妖怪。
それぞれ関わりなど、少ない。
だが、確かにこの場に於いて四人は協力しあう事を決めた。












その時だった。










「よう、また会ったな」

全員――気絶しているキャロ以外の三人が、一斉に真上を向いた。
そこには満月を背に、宙を浮かぶ金髪の男。
その顔には、気味が悪いまでに和やかな笑みが張り付いている。
男の名はナイブズ。
人類を憎悪し、滅亡を望む男がそこにはいた。


「誰だ、お前は?」

その突然の不審者に対し、真っ先に口を開いたのはインテグラルであった。
デイバックから剣を取り出し、警戒とともにナイブズへと向ける。
ギンガもキャロを背中に庇うように立つ。
唯一、殺生丸だけが構える事すらせずに、ナイブズを睨んでいた。

「貴様か……」
「やはりお前は甘いな。人間と手を組むとは、少し期待外れだ」

明らかな殺意を込められた殺生丸の視線を、ナイブズは笑って受け流す。
その笑みを見た瞬間、肌が粟立っていくのをギンガは感じた。
――この男はヤバい。
本能が、告げていた。
冷たい、肌に貼りつく不快な汗が流れる。
見た目は何処にでもいそうな青年なのに、その瞳は底なし沼のように濁っていて、光が見えない。

何なのだ、この男は?
何故こんな瞳をすることができる。




184 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/02(土) 23:42:33 ID:bV3/LJLX
ギンガ自身は気付いていないが、ギンガの心を支配するその感情は恐怖であった。
身が竦み、動けない。
だから、見ている事しか出来なかった。

男の指が刃のように変化していく瞬間を、そしてその刃と化した指を自分へと振り下ろされるその瞬間を――。



一陣の烈風と共に――万物を切り裂く斬撃が走った。




気付いたら、視界が鮮やかな白に染まっていた。
モフモフとした柔らかな感触。


抱きかかえられていた。

まるで、あの時――五年前、空港火災から助けてもらった時のように、殺生丸の懐に抱かれ、空を舞っていた。
その懐はあの時と変わらず大きく逞しく安心感を与えてくれる。

ふと下を見ると、数瞬前まで自分が立っていた大地に、まるで巨大な刀で斬られたかのような一筋の線がある。
この時、ギンガは気が付いた。
再び、殺生丸に命を救われたのだという事を。

――そして殺生丸が地に降り立ち、時を遡ったかのような一瞬は終わりを告げる。

「あ、ありがとうございます。殺生丸さん……」
「……そこの小娘を連れて貴様達は逃げろ。こいつの相手は私がをする」

礼を告げるギンガの方を見ずに、殺生丸は告げた。
同時に妖刀・童子切丸を鞘から抜き放つ。
月光に照らされ、血を求めるかのように童子切丸が光った。

「……分かりました」
「E-7の駅で待っている……あんな糞ガキ、早々にぶちのめして合流しろ」

――離れたくない。
でもここに居ても足を引っ張るだけ。
それ程にあの男は異常だ。
少ない予備動作で発現する脅威的な切れ味の斬撃。
デバイスの無い自分では、防御も回避も不可能だろう。
おそらくインテグラルさんも。
だが、殺生丸さんは違う。
私達を遥かに越えた身体能力、反射速度。
殺生丸さんなら、戦える。
私達は――邪魔なのだ。
彼が全力で戦うには、私達は居ない方が良い。

「絶対に、絶対に死なないで下さいね」

だから、彼を信じて逃げよう。
彼なら大丈夫だ。
殺生丸さんなら――。


その言葉を最後にギンガとインテグラルの二人は駆け出す。
背中には気絶中のキャロと二人分のデイバック。
二人は決して振り向かず、駆け続けた。

185 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 23:44:32 ID:OgXEVnuW



186 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/02(土) 23:45:29 ID:bV3/LJLX





沢山のビルが建ち並ぶ市街地。
二人の人あらざる者が相対する。


「やっぱりお前は甘いな。何故、人間の肩を持つ? あんな下らない、寄生虫のような種を」

嘲りを含んだナイブズの問い。
答えはない。
問いを投げ掛けられた張本人、殺生丸は無言で剣を向ける。

「……所詮はそこまで、貴様もアイツと変わらない……クソ甘い――」

言い終える前に、殺生丸は疾走を始めていた。
その姿に嘲笑を浮かべると共にナイブズは、左腕を刃へと変化させ、目にも止まらぬ速度で振るわれる妖刀を迎え撃つ。
甲高い金属音と共にぶつかる妖刀とナイブズの左腕。

――瞬間、ナイブズの嘲笑が驚愕へと移り変わった。


187 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 23:46:12 ID:OgXEVnuW



188 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 23:47:47 ID:OgXEVnuW



189 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/02(土) 23:47:53 ID:bV3/LJLX
だが、殺生丸は止まらない。
間髪いれず連続で振るわれる童子切丸。
ナイブズはそれら全てを険しい顔で避け、防ぎ、耐える。
だが、その回避には余裕が感じられない。
それもそのはず、彼の戦法はエンジェル・アームによる遠距離からの一撃必殺。
近距離戦は不慣れと言っても良い。
だが、それでも彼はプラント自立種――人を超越した種だ。
充分、超人的な反応速度、身体能力は兼ね揃えている。
そんじょそこらに居る達人が相手だったとしても、負ける事はないだろう。

しかし今、彼が相対している者は、最強の妖怪の子孫、殺生丸。
圧倒的な剛力、スピードを持ち、その剣技たるや、半妖の弟すら寄せ付けぬ程の実力――達人という言葉では、到底片付ける事が出来ない立派な『化物』だ。
その殺生丸を相手にして、近接戦不慣れなナイブズが勝てる道理がない。

熾烈な連撃を前に防戦一方。
それでも防ぎきれずに刃が肉体を掠めていく。
距離を離そうとしても、殺生丸の身体能力がそれを許さない。
結果、時が経つにつれ徐々に圧されていくナイブズ。


それは油断。
自身の圧倒的な力を信じるが故に現れた驕り。
自分が――プラントがたかが人外如きに負ける訳がない。
その思考があったからこそ、ナイブズはギンガ達へと不用意に近付き、声を掛けた。
確かに能力を温存する意味もあったかもしれない。
だが、そこには絶対的な慢心があったのは事実だ。
自身の能力を過信し、殺生丸の実力を侮っていた。
結果、今の劣勢に繋がっている。


振り下ろされる童子切丸と、ナイブズの左腕がぶつかり、弾ける。
何物をも斬り裂く彼の左腕も、制限された今では通常の名刀と同程度の切れ味しか持っていない。
必然的に生まれる斬り合い――当然、圧されるナイブズ。

右肩からの袈裟斬り、防御。
切り返しの逆袈裟、回避。
流れるような動きからの刺突、防御――防ぎきれない。
右腕だけで振るわれている筈の刀から伝わる、恐るべき圧力。

「吹き飛べ」

呟きと同時に殺生丸が踏み込み、ナイブズの身体ごと突進を始める。
両の足に渾身の力を込めるが、止まらない。
押し込まれていく速度は徐々に増していき――ナイブズの身体は後方に建つビルへと叩き込まれた。
だが、それでも殺生丸は突進を止めない。
ただ自身の怪力に任せ、ナイブズの身体を軋ませる。

その人間離れした力を前にして、先に白旗を上げたのはナイブズではなくビルの壁であった。
押し付けられるナイブズを中心に亀裂が刻まれ、一瞬後に崩壊。
二人は、コンクリート製の壁を突き破り、ビルの内部へと突入する。
そして、再び現れた壁――ビルを支える柱の一つへと渾身の力を込めて、ナイブズを叩き付けた。

轟音と共に確かな手応えが、殺生丸の手を伝わる。
人間だったら原型を保つ事すら出来ないだろう衝撃。
糸が切れたかのように、ナイブズの身体から力が抜ける。


190 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 23:49:02 ID:OgXEVnuW



191 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/02(土) 23:49:21 ID:bV3/LJLX
しかし殺生丸の攻撃は止まらない。
繰り出されるは、ベルカの鉄槌すら溶かす毒牙。
それをナイブズの喉元狙い、突き出す。
瞬間、殺生丸にとっては聞き慣れた、普通の人間だったら確実に聞いた事のない音――肉が溶解する音が響き渡った。
それはナイブズの死を、殺生丸の勝利を告げるゴング。





そのはずだった。






「――もっと、よく、狙えよ、下手糞が」


肉の溶ける音はする。確かにナイブズの肉体は溶けている。
ならば何故生きている?
常人に比べ遥かに打たれ強いプラントといえど、殺生丸の毒牙を喉に食らえば耐えられる筈がない。
それなのに何故――?

その疑問に対する答えは簡単。毒牙が突き刺さっている部位だ。
殺生丸の狙い通り喉元に命中したなら、ナイブズは確実に死んでいただろう。
だが、現実に突き刺さっている場所は違った。


――右腕。

ビルに叩き付けられ身体中にダメージを受けながらも、その衝撃に意識を飛ばしかけながらも、ナイブズは右腕を毒牙と喉元の間に滑り込ませたのだ。


――ナイブズは、笑っていた。
右腕が溶けていく激痛の中でも、右腕が一生動かなくなりかけてるにも関わらず、口を開き、殺生丸でさえも異質だと感じさせる程の狂気を瞳に宿し、笑っていた。


そしてその狂気により引き起こされた一秒にも満たない怯み。
それをナイブズは見逃さない。


192 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/02(土) 23:51:06 ID:bV3/LJLX
ナイブズと殺生丸の間にある僅かな隙間、そこに『門』が出現した。


――マズい。

その思考へ辿り着く前に、殺生丸は、その脚力を持って地を蹴っていた。
空気中に溶けていくかのように光球がブレる。
それは、万物を切り裂く斬撃が出現する兆候。
再び殺生丸が地を蹴ったと同時に光球が消失、何十もの斬撃と化した。





それは全てを斬り裂いた。
床も、壁も、窓も――ビルの基盤とも言える柱さえも易々と刻み、瓦礫へと変える。

一階に存在する物全てが役目をなくした。
ケーブルを切断されたエレベーターは永遠に上階とは向かわないだろうし、粉々に砕けた窓では外から入り込む風を防ぐ事などできないだろう。
斬撃痕により歪に変形した床も、とても人が歩けるとは思えない。

それは柱――ビル全体を支える柱達とて例外ではなかった。

何十もの斬撃に斬り刻まれた柱達は、強度をなくしビルを支えきれない。
結果、十数メートルにも及ぶビルが、地鳴りのような音をたて揺れる。
何秒も、何十秒も、耐えるように揺れ続け――――呆気なく崩壊を始めた。

ナイブズと殺生丸が中に居る事など気にも止めず、その巨体は何百もの瓦礫へと変貌した。








193 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 23:54:01 ID:OgXEVnuW



194 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/02(土) 23:54:26 ID:bV3/LJLX
轟音を撒き散らし、何百もの瓦礫へと姿を変えたビル。
その上空にナイブズは居た。
あの一瞬、瓦礫に落下してくる寸前、ナイブズは自身の真上に『門』を形成し、瓦礫を消し飛ばしたのだ。
その結果、ナイブズはビル崩壊によるダメージを受ける事なく、無傷での脱出に成功を収める。

「……バラバラになったか、瓦礫に潰されたか」

無表情に瓦礫の山を見渡し、ナイブズが呟く。
バラバラ、生き埋めとは、おそらく殺生丸の事だろう。
確かに上空から見る限り殺生丸の姿はどこにも無い。

「あの戦闘力……少々惜しかったな」

あそこまで追い込まれたのは初めてだった。
制限下とはいえこの自分と斬り合い、右腕を潰した男――殺生丸。
爛れた右腕は、ピクリとも動かず、常に激痛が走っている。
少なくともこのゲーム中に回復する事は有り得ないだろう。
それにエンジェル・アームを使った事による疲労も無視できない。

「休息をとるか……」

ポツリと呟き、ナイブズは身を翻す。


ドゴォッ!


――その時、背後から奇妙な音がした。
首を回し、音のした方に顔を向けるナイブズ。
その瞳に映った光景は、光の鞭で瓦礫を吹き飛ばし宙に躍り出る男の姿。

「逃がすと……思ったか?」

殺生丸といえども何百もの瓦礫の塊は防ぎきれなかったのだろう、華麗な銀髪は赤に染まり、着物もボロボロ――一目で満身創痍だと分かる。
だがそれでも最強の妖怪は仇敵へと剣を突き付けた。
決して、戦から逃げようとはしない。

その鬼気迫る姿にナイブズの瞳が見開かれ、次の瞬間には、愉悦の色が浮かんでいた。

「フ、ハハ、やるじゃないか、殺生丸! 素晴らしい! 本当に素晴らしい! 秀逸だ!」

嗤う。
両手を広げ、最強の妖怪を見下ろし、男は嗤う。

「凄まじい執念! そして何よりも瀕死の身体でも全く衰えない殺意!! 最高だ!!!」

それは新たなオモチャを与えられたような、愉しげな笑い。

「……それ故に残念だ……お前を殺す事が」

ナイブズは理解している。
殺生丸が決して自分に、いや、他の誰にも服従しない事を。
だからこそ、面白い。
自分の、この圧倒的な力を見て、刃向かう者など居なかった。
恐れるか、敬うか、逃げるか、今まで出会った人間の誰もがそうだった。
だが、この男は違う。変わらない殺意で、反抗の牙を突き付ける。
その身が満身創痍だろうと、決して揺るがない。
あのバカな弟のように、自分の信念を貫き通そうとする。
――最高だ!


195 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 23:59:47 ID:OgXEVnuW



196 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/02(土) 23:59:56 ID:bV3/LJLX
「何を勘違いしている。死ぬのは貴様の方だ」

呟きと共に掲げられるは、童子切丸。
殺生丸の分身、爆砕牙には劣るが、それでも充分な力を誇る妖刀。
その刀身を蒼い光が渦巻いている事に、ナイブズは気付いた。
その光から発せられる、今までの長い人生でも感じたことのない、プレッシャー。
瞬時に理解した。
これが殺生丸の本気の一撃なのだろう、と。


「いいぞ……来い! お前の全力を見せてみろ!」

ナイブズも刃と化した左腕を構え、『門』を造り出す。その大きさは、今までで最も巨大。
制限下でなければ都市一つを丸々破壊できる程の力が込められている。

世界が氷ついたかのように、静寂が二人を包む。
人間を越えた者達の戦闘は、人間では到底成し得ない力で決着がつこうとしている。
その衝突を邪魔する事など、誰にも出来ない。



「――蒼龍破ッッ!」
「――消えろッッ!」


妖刀から放たれる蒼色の極光。
『門』から放たれる無数の斬撃。
蒼色の光と不可視の斬撃が激突し、白い光へと姿を変えた。

本来なら有り得るはずのない邂逅が、世界を包む闇を消し飛ばし、市街地を真昼のように照らす。
その圧倒的な破壊力の前では、全ての物が脆すぎた。
地面や木々は余波にすら耐えかれず砕け散り、そびえ立つビル群も、まるで怯える小動物のように振動を始める。

光の強さが段々と増していき、強すぎる光が世界を塗り潰す。

だが、その光の中心に居るはずの二人の男は寸分も怯まない。
ただひたすらに、極光の先にいる相手を睨み、持てる限りの力を込める。





197 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:01:48 ID:JZsQ4oam



198 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/03(日) 00:01:59 ID:E67T63S7
(……馬鹿な……!)

完全な拮抗状態。
その中、焦りの色を浮かべたのはナイブズであった。
本来、彼の能力、エンジェル・アームはこのような拮抗を生み出す筈がない。
エンジェル・アームから放たれた斬撃は何物をも斬り裂き、刻み落とす。

たが今現在、実際にエンジェル・アームは、殺生丸が持つ最強の術『蒼龍破』と衝突し、極光を散らしている。

何故か?

答えは、殺生丸が振るう妖刀・童子切丸、そして蒼龍破の特性が持っていた。

童子切丸――人間の生き血を捧げれば、あらゆる防御術式を貫く事ができる妖刀。
蒼龍破――殺生丸自身の妖力と妖刀に宿る妖力を複合し、相手に放つ殺生丸の奥義。

ここで注目するのは、童子切丸の『あらゆる防御術式を貫く』という特性と蒼龍破の『妖刀の妖力を複合して』という特性だ。

『あらゆる防御術式を貫く』――確かに強力な特殊能力。
上手くいけば最強の剣になる可能性すらある。
だが、残念な事に殺生丸は人間の生き血を捧げていない。
その効果は発動しないはずだ。

だが、ここで蒼龍破が持つ特性が現れる。
『妖刀の妖力を複合する』――つまり、童子切丸の『あらゆる防御術式を貫くという力』を複合。

そう、今放たれている蒼龍破はただの蒼龍破ではない。
『あらゆる防御術式を貫く妖力を複合した蒼龍破』なのだ。
それはエンジェル・アームという人知を越えた力さえ効果の範囲内。

とはいえ、殺生丸が生き血を捧げていないのも事実。
だからこそ、エンジェル・アームを貫けない。だが、童子切丸の能力により、触れられない斬撃を捉える事は出来る。
あとは、蒼龍破とエンジェル・アーム、殺生丸とナイブズの力勝負。
そしてその力勝負は拮抗――いや、殺生丸が圧している。

ゆっくりと、ゆっくりとナイブズの方へと傾いていく極光。
唇を噛み、力を込めるも圧倒的な暴風は進行を止めない。


「――突き抜けろッ!!」


199 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:03:09 ID:JZsQ4oam



200 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/03(日) 00:04:09 ID:E67T63S7
咆哮の主は殺生丸。その絶大な圧力に震える両腕を渾身の力で振り抜く。
瞬間、極光が割れた。
世界を染める白の中から現れる蒼き龍。
打ち出した時と比較し明らかに弱体化しているが、それでも龍は光を貫き仇敵へと迫る。








――世界が蒼色に染まった。









何時しか光は消えていた。
世界は再び闇に包まれ、建物を震わせていた轟音も聞こえない。
光に呑まれた木々や瓦礫は、存在すら許される事なくこの世から消え去っていた。
光の範囲から逃れた建物群もヒビが入り、今にも崩れ落ちそうな痛々しい姿を見せている。

その光景はまるで台風が通り過ぎていったかの如く。
二人の男が作り出したとものとは誰も信じないだろう。

そんな市街地を、空に立つ一人の男が見下ろしていた。


「惜しかったな……」




201 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:04:28 ID:t9i9CYVc


202 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:04:40 ID:JZsQ4oam



203 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:04:47 ID:E/MwTayF
 

204 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:05:12 ID:6aWgZ6vg



205 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/03(日) 00:05:19 ID:E67T63S7
風になびく金髪、そしてその中の三割ほどを領する黒髪。
男は何処か遠い眼をして、思考する。

――死を覚悟した。

あの一瞬、自分の能力を突破し迫る蒼い光を見て、確かに自分は死を意識した。
あの時――数年前、今は亡きジュライにて半身を吹き飛ばされた時と同様に。
しかし、身体が無意識に行動を起こした。

反射的に『門』――『持っていく力』を出現させ、出口を殺生丸の真後ろに形成。
出口から飛び出した龍は、主である殺生丸に炸裂し、命を奪った。
奴は自分が死んだ事すら分からずに、自らの勝利を確信したまま消え去ったのだ
ろう。

「予想以上に厄介だな、この制限とやらは……」

もし蒼き龍が万全な状態であったなら『持っていく力』も喰い破られていただろう。

憎々しげに首輪を触る金髪の男。
制限さえ無ければ……だがそれは、あの男とて同じ。互いの状況は変わらない。
自分は……負けたのか――


そこまで考えて、不意に体から力が抜けた。
意志と反して身体が地面へと落下していく。


制限下でのエンジェル・アームの連発、殺生丸に潰された傷。
それらは飛行魔法を維持する事すら出来ない程に、男の体力を奪っていた。
地面に降り立ち膝をつく男。

「チッ、身体が……動かんか……」

ぐらり、と身体が揺れ、男は固いアスファルトへと倒れ伏す。
男からしたらあるまじき醜態。だが、今の男には自尊を考える余裕もなかった。
襲ってくる猛烈な疲労に身を任せ、男の意識は闇の中へと消えていく――






「なんだったのだ、あの光は……」

E-7に位置する平野の中、唖然といった様子でインテグラルが呟いた。
背中には傷だらけのキャロを背負っている。

隣に立つギンガもインテグラル同様、呆然とその現象が起こった方角を見つめていた。




206 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:06:30 ID:t9i9CYVc


207 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/03(日) 00:07:10 ID:E67T63S7
――それは唐突に起こった。

殺生丸にあの場を任せ、逃走を始めてから十数分経った頃、突然、後方から強烈な白色の光が発生したのだ。

それは、魔法を知る二人にとっても異常な規模の光。
まオーバーSランクの砲撃同士をぶつけたとしても、あれ程の光は発さない。
明らかに異常であった。
光は、蒼色に変化した後、これまた唐突に消失してしまったが、それでも二人は走り始める事が出来なかった。






「……行きましょう」

インテグラルを現実へと引き戻したのは、ギンガの一言であった。
ギンガは今までにない程に冷静な表情をインテグラルへと向けている。

「あ、ああ、そうだな」

そんなギンガに僅かな違和感を感じつつもインテグラルは頷き、歩き始める。


――冷静すぎやしないか?

いくら自分以上に魔法の知識を持っているとはいえ、先程の現象は異常だったはずだ。
もう少し動揺があっても良い。
しかも、あの場で足止めしているのは、ギンガ自身が語っていた殺生丸――敵であり、おそらく憧れの男。
普通の少女だったら多少の焦りが見えても不思議ではない。むしろその反応の方が正常だ。

それなのに――。







208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:07:13 ID:JZsQ4oam



209 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:07:25 ID:6aWgZ6vg



210 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/03(日) 00:08:34 ID:E67T63S7
解ける訳のない疑問にインテグラルが頭を悩ませている時、ギンガも同じく思考の海を漂っていた。


多分、先程の光は殺生丸さんと金髪の男との戦闘により発生したもの。
シグナム副隊長すら退かせた殺生丸さんなら、あれ程の砲撃魔法を行使できたとしても頷ける。
……そして、それ程の攻撃を使用しなくてはいけない程、あの金髪の男は強いのだろう。


――大丈夫。

殺生丸さんが負けるはずない。
あの人は、自分なんかより何倍も強い。負けるところなんて想像も出来ない。

大丈夫、大丈夫。
今自分に出来る事は、一刻も早く駅へとたどり着きキャロを休める事、それだけだ。
市街地に戻ったとしても、戦闘が終わってなかったら足を引っ張ってしまう。
今あの場に行くのは、危険。殺生丸さんを信じるんだ。

……そういえば、名前を読んだ時、殺生丸さんは不思議そうな顔をしていた。
考えてみれば、空港火災から助けてもらった事を言っていない気がする。

そうだ。

殺生丸さんが駅に着いたら、あの時の礼を言おう。
元の世界に戻ったら再び敵対するかもしれないけど、この場に於いて彼は味方なんだ。
いくらでも説得が出来る。
いくらでも礼を言う事が出来る。
いくらでも自分の気持ちを伝える事が出来る。

そう、いくらでも――。




傷だらけの少女を背負い二人は走り続ける。
彼女達が待つ男が、もうこの世に存在しない事を知らずに。
三時間後――放送の時に襲う絶望を知らずに。


――彼女達は走り続ける。


211 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:08:55 ID:JZsQ4oam



212 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/03(日) 00:10:17 ID:E67T63S7
【1日目 黎明】
【現在地 E-7 南部の平野】

【ギンガ・ナカジマ@魔法妖怪リリカル殺生丸】
【状態】顔面に打撲(小)、疲労(極小)
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済)
【思考】
 基本 この殺し合いを止め、プレシアを逮捕する
 0:殺生丸さん……
 1:駅に向かい、殺生丸を待つ
 2:インテグラを護衛し、アーカードを捜索する
 3:殺生丸が帰ってきたら話をつける
 4:できることなら誰も殺したくはない
 5:可能ならば、六課の仲間達(特にスバル)とも合流したい
【備考】
 ※なのは(A's)、フェイト(A's)、はやて(A's)、クロノの4人が、過去から来たことに気付きました。
 ※一部の参加者はパラレルワールドから来た人間であることに気付きました。
 ※「このバトルロワイアルにおいて有り得ないことは何一つない」という持論を持ちました。
 ※制限に気がつきました。
 ※インテグラがいなくなった後のアーカードに恐怖を抱き始めました。
 ※アーカードを暴走させないためにも何としてもインテグラを守るつもりです。



【インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲート・ヘルシング@NANOSING】
【状態】健康
【装備】ジェネシスの剣@片翼の天使
【道具】支給品一式、ランダム支給品0〜2(確認済)、葉巻のケース
【思考】
 基本 この殺し合いを止め、プレシアを叩きのめす
 0. ギンガ……大丈夫か?
 1:駅にむかい、殺生丸を待つ
 2:その後地図上のHELLSING本部に向かう
 3:アーカードと合流し、指揮下に置く
 4:できることなら犠牲は最小限に留めたいが、向かってくる敵は殺す
【備考】
 ※同行しているギンガが、自分の知るミッドチルダに住む人間ではないことを把握しました。
 ※一部の参加者はパラレルワールドから来た人間であることを把握しました。
 ※葉巻のケースは元々持ち歩いていたもので、没収漏れとなったようです。
 ※アーカードは参加者に施されているであろう制限の外にあると思っています。



【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(中)、脇腹に切り傷、左太腿に貫通傷、気絶中
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
基本:殺し合いを止める。殺し合いに乗ってる人がいたら保護する。
1:……………
2:仲間を探し合流する。
[備考]
※取り敢えずキャロの傷は命に関わる程ではありません。
※バルディッシュはF-9のホテルアグスタの近くに落ちています。
※別の世界からきている仲間がいることに気付いてません。


213 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:10:33 ID:6aWgZ6vg



214 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:10:50 ID:JZsQ4oam



215 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/03(日) 00:12:51 ID:E67T63S7




「カレンさん! あと少しですから頑張って下さい!」
「ああ……大丈夫だよ、なのは……」


遡ること十数分前――まだ殺生丸とナイブズが戦闘を開始したばかりの頃。
高町なのはとカレン・シュタッドフェルトの二人は、現在ギンガ達の居る地点の上空を飛行していた。


彼女達が目指しているのはH-6にある病院。
理由は、勿論カレンの治療の為だ。

最低限の応急処置はしたものの、それは気休め程度。

――本格的な治療をするには、圧倒的に器具が足りない。

そう判断したなのはが病院を目指す事を提案、拒否するカレンを無理矢理背負い空を飛び始め――現在に至る。

最初は「子供に無理させられるか!」と喚いていたカレンも、決して意志を曲げないなのはに呆れたのか、怪我による消耗か、徐々に大人しくなっていった。







そして、それは不意に発生する。


光。

世界を照らす優しげな光ではない、全てを染め上げる暴力的な光が前方の市街地から発生したのだ。


「何だったのだ、あの光は……」
「多分……魔法、ですかね……。でも、だとしたら相当な実力者ですよ……」
「……本当に魔法というモノは凄いんだな……」


突然起こった謎の現象に、首を捻りながらも直進を続ける二人。
そして数分後、二人が見たものは地獄絵図と化した市街地であった。

ひび割れた地面。
薙ぎ倒さた木々。
窓が全て吹き飛んだビル群。
ひね曲がる街灯や信号機。
余りに凄惨過ぎるその光景に、二人は息をのむ事しか出来ない。
先を急ぐ事すら忘れ、呆然と立ち尽くしていた。


216 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:13:15 ID:JZsQ4oam



217 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/03(日) 00:15:06 ID:E67T63S7
「……行きましょう、今はカレンさんの怪我の治療が先決です」

口を開いたのはなのはであった。
破壊し尽くされた市街地を見下ろし、呟く。
その表情は苦々しく歪んでいた。

「なのは、無理しなくても、良いんだぞ…………気になるんだろ、生存者が居るかもしれないって……」

だが、そんななのはの呟きに、カレンは優しげに返した。

カレンは、応急処置の途中、なのはの持つ情報を聞いた。
痛みにぼやける頭では、把握しきれないところもあったが、それでもなのはが魔法という強大な力を持ち、人々を守る仕事をしているという事は理解できる。

だから、気付いた。

この凄惨な光景を見てなのはが、何を考えているのか。

「そ、そうですけど……」
「私なら大丈夫だ……止血はしたし、それに私はそんな甘い鍛え方はしていない……な、心配するな」
「で、でも……」
「それに魔法を使えば直ぐに終わるのだろう……? 大丈夫だ……私を、信じろ……」

そのカレンの言葉を聞き、何かを考え込むように押し黙るなのは。
そして、数秒後。

「…………分かりました。一分で終わらせちゃうんで待ってて下さい!」

なのはは、ビルの一つへと舞い降り、カレンを横たえた。
直ぐさま立ち上がりS2Uを掲げ、魔力を集中させる。
使用する魔法はエリアサーチ。
生み出された光球が市街地を駆け抜け、なのはの脳内に周囲の状況をフィードバックさせる。
……十秒程経っただろうか。
唐突になのはが顔を上げた。

「カレンさん、生存者が居ましたよ! 気絶してるみたいですけど………………カレンさん?」

声を掛けてもカレンは反応を示さず、仰向けに寝転がったまま動かない。
――まさか。
ある可能性に行き着き慌ててカレンの顔を覗き込むなのは。

「カレンさん! カレンさん!!」

大声で呼び掛けても、やはり返事はない。
気絶している。



218 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:15:18 ID:t9i9CYVc


219 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:15:26 ID:JZsQ4oam



220 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/03(日) 00:16:40 ID:E67T63S7
――当たり前だ。

手を吹き飛ばされて平気な人が居る訳ない。
自分の心配そうな顔を見て、カレンさんは嘘をついたのだ。

肩を揺さぶっても全く反応がない。
血を流し過ぎたのか、それとも疲労からかは分からない。ただ、漠然とした危機感がなのはを押し寄せた。

「S2U、アクセルフィン!」

叫びと共になのはの両足首に桜色の翼が形成される。
『アクセルフィン』――高速移動の為の魔法。

「カレンさん……死なないで!」

カレンを背負うと同時に空に飛び上がり、桜色の両翼が羽ばたき加速。
眼下の市街地が物凄い勢いで後方へと流れていく。



数秒後、目的地――エリアサーチで見つけた金髪の男が倒れている場所へと着いた。
周囲には、凄まじい破壊痕が見えるが、それを詳しく調べている時間はない。
たが――

「ひ、酷い……」

――男の右腕を見た時、なのはの動きが止まった。


それはあまりに酷い傷であった。
男の右腕は、ドロドロに爛れ紫色に変色している。
辛うじて元の状態を保っている皮膚もベロンベロンで、今にも剥がれ落ちてしまいそうだ。
ドロドロの奥に見える白色の物体は骨だろうか――。


221 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:16:44 ID:JZsQ4oam



222 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/03(日) 00:18:12 ID:E67T63S7
頭の片隅がそこまで理解した瞬間、猛烈な吐き気が襲ってきた。
必死に口元を手で抑えるが、ほんの少しでも気を抜けば、胃の中の物が逆流しそうになる。

数秒におよぶ吐き気との戦闘。

何とか吐き気を抑えつつ、立ち上がるなのは。
男の右腕を見ないようにしながら、急いで男を背負い、再び飛び上がる。

(お、重い……けど)

カレンに加え、長身痩躯の男。
魔法少女として縦横無尽に空を飛び回るなのはとて、流石にキツい。
だが、なのは弱音を吐かずに飛行の速度を上げるため魔力を高め続ける。

「絶対に、絶対に死なせませんから!」

時たまふらつきながらも、魔法少女は自身が成せる全力全開で空を駆ける。
二つの命を救うために。

――だが、少女は知らない。
その背負っている男が、この破壊現象を起こした張本人だという事を。
未来の自分の部下を傷付けた男だという事を。

知らずに少女は闇夜を突き進む――。






223 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:18:48 ID:t9i9CYVc


224 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:18:59 ID:JZsQ4oam



225 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/03(日) 00:19:29 ID:E67T63S7
【1日目 黎明】
【現在地 F-7市街地の上空】
【高町なのは(A's)@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】疲労(中)
【装備】S2U@リリカルTRIGUNA's
【道具】支給品一式、ランダム支給品0〜2個
【思考】
 基本 プレシアと話し合いをする
 1:病院に向かい、カレンと金髪の男(ナイブズ)の治療
 2:仲間との合流
 3:もう一人に私に会って……


【備考】
 ※制限に気がつきました
 ※自分がクローンではないかと思い悩んでます
 ※パラレルワールドという考えには至っていません
 ※プレシアの目的がアリシアの蘇生か、アルハザードへ到達するためにあると思っています
 ※S2Uがなのはの全力に耐えられるかは分かりません



【カレン・シュタットフェルト@コードギアス 反目のスバル】
【状態】疲労(小)、重傷(左手欠損)、気絶中
【装備】ヴァッシュの銃 (0/6)@リリカルTRIGUNA's
【道具】支給品一式、ランダム支給品1〜2個
【思考】
 基本 元の世界に帰る 0:気絶中
 1:病院で治療
 2:なのはから情報を得る


【備考】
 ※なのはとチンクが普通の人間でないことに気がつきました
 ※ここが日本でないことには気がついてます
 ※異世界の存在には気づいてません
 ※参戦時期はSTAGE10でいなくなったゼロを追いかけていったところからです



【ミリオンズ・ナイブズ@リリカルTRIGUNA's】
【状態】疲労(極大)、黒髪化三割 、全身打撲(小)、右腕壊死、気絶中
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品(1〜3)
【思考】
基本:出会った参加者は殺す。が、良いナイフ(殺戮者)になりそうな奴は見逃す。良いナイフになりそうな奴でも刃向かえば殺す。
0:気絶中
1:中心部へ向かい人を探す。
2:ヴォルケンズ、ヴァッシュは殺さない。
3:制限を解きたい。


【備考】
※エンジェル・アームの制限に気付きました。
※高出力のエンジェル・アームを使うと黒髪化が進行し、多大な疲労に襲われます。
※黒髪化に気付いていません。また、黒髪化による疲労も制限によるものだと考えています。
※はやてとヴォルケンズ達が別世界から来ている事に気付いていません。
※F-7にて大規模な発光現象が起こりました。周囲一マスくらいに届いたかもしれせん。


226 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:20:19 ID:JZsQ4oam



227 :代理投下  童子切丸は砕けない ◇jiPkKgmerY:2008/08/03(日) 00:21:00 ID:E67T63S7



そして無人となった市街地。
煉獄と化したそこに、何かが突き刺さっている。

それは刀。

刀身には幾多に及ぶ亀裂が刻み込まれ、使い物にはならない事は一目瞭然であったが、それでも刀は威風堂々と自らの存在を誇示し続けていた。


それは、まるである妖怪の信念のように。
誰にも従う事なく己の力を信じて生き続けた男のように。


――童子切丸は、砕けない。





【殺生丸@リリカル殺生丸 死亡】

※F-7市街地に、ボロボロの童子切丸が刺さっています。
※殺生丸のデイバッグ、基本支給品、スタングレネード×2は消え去りました。




投下終了です。
さるさんくらいましたが、本スレで支援してくださった方、本当にありがとうございました。


228 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:23:10 ID:E67T63S7
代理投下終了です。
多くの支援感謝します。

229 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:27:40 ID:E67T63S7
投下乙です。
殺生丸wwwナイブズ相手に一歩も引かず流石だ。
そしてギンガが切なすぎる……君の逢いたい人はもう……
なのはwそいつは危険だw拾うなーー
壮絶な戦い、GJでした。

230 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:38:15 ID:0xEmDfPv
殺生丸様ァァァァァァァッ!
まさかこんなに早く退場されるとは思いませんでしたが、不思議と清々しい気分だ……
素晴らしい! まったく素晴らしい激戦だった。
エンジェルアームと互角以上に渡り合う太刀筋と毒華爪か。秀逸だ。
まさかのゲッター蒼龍破(仮名)と重なりあって、えもいわれぬ熱さをかもし出している。
何よりも、あのナイブズに敗北さえも認めさせたのが気に入った!!(ぉ
このロワで見たかったものは全部見れたし、おまけにこれまでの中でも屈指の死闘を楽しめたので、個人的には大満足です。
最悪瞬殺されることすら覚悟してましたが、まさかナイブズに土をつけるとは……アンタやっぱ最高だよ、殺生丸様!
しかし残されたギン姉には、とてつもない悲しみと絶望が待っているわけか……まぁ、それもまたよし!(ぇ
ともあれGJ! まさしくGod Jobでした!

231 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 00:57:19 ID:XekQi87k
投下乙&GJ!
殺生丸vsナイブズ……熱過ぎる!!
このロワで一番の大規模バトル!それも男と男の凄絶な闘い!!
そしてあのナイブズがここまでダメージを受けるとは……
見事でした!殺生丸様!
今まで殺生丸のことをオレンジオレンジと侮っていた自分がもう……orz
放送まであと少し、どれ程の絶望がギンガを襲うのか……
さりげなくなのはも爆弾抱えちゃって先が楽しみすぎるw
もう一度GJ!!

232 :なのは×終わクロ ◆WslPJpzlnU :2008/08/03(日) 23:16:55 ID:g8NiSojY
THE久し振り。
かなり短いもんですが……相川始予約分が出来たので投下してみるの事です。

233 :最初からクライマックスなのか!? ◆WslPJpzlnU :2008/08/03(日) 23:18:40 ID:g8NiSojY
 不意に、風が吹いた。
 千万億の枝葉が揺すられ、ざ、と擦れ合う音が幾重にもなる。
 揺れる木々と葉音。日中ならば爽やかだろうそれも、深夜にあっては不吉さを醸し出していた。
 樹木の密集地は月光の僅かな光も遮り、夜空以上の暗澹を生み出している。そこで一斉に木々がざわめけば、不気味さも一入だ。
 加えて、森林を二分する川もある。
 せせらぐ音、地と空気と問わずに濡らす湿気、それは夜の冷気によって温感と触感を常に粟立たせた。
 だが相川始の感じる悪寒は、それに原因するものではない。
「………………」
 川沿いで立ち止まった彼は、カリスの姿をとっている。
 黒と白の外殻に深紅の色どり、V字型に膨らんだ赤い眼もとは額から伸びる触覚も相まって、どこか蟷螂を思わせる形状だった。右手にはデイバックの肩掛けベルトを揃えて握っている。
 徹頭徹尾をアンデットの外殻で覆った始に、表情を表すことはできない。
 だが、全身から滲み出る緊迫が彼の内心を表していた。
 緊迫を隠さず直立する始が見るのは、河川の横断によって途切れた木々より見える夜空。否、その隙間から見える遠くの景色だ。光の乏しい夜空にあって影を浮かばせるのは、遠地にあって見とれるほど大きな長方形の群。
 高層ビルの群、市街地だ。そこに始が感じた悪寒の原因がいる。
「――アンデット、か」
 原因の名を呟いた頃には、風と木々のざわめきは止んでいた。悪寒も然りだ。
 しかし、始の緊迫は解かれない。夜空に浮かぶ市街地の影を、遠くに見続けている。
……そこにいるのか……
 断言するのは、始が根拠に出来る能力を持っているからだ。
 相川始には、いくつかの能力がある。
 カリスラウザーを出現させる力。
 アンデットに変身する力。
 そして、アンデットの戦闘を感知する力。
 アンデットが怪物の姿で闘うのなら、始はそれを悪寒として察知出来る。
 しかし、
……妙だな……
 そう思うのは、感知したアンデットの戦闘が二か所別々で起こったものだからだ。
 確認した名簿において、始が知るアンデットの名は一つだけ。しかし感知したのは二体分の戦闘。ならばここには、自分も知らないアンデットがまだいると考えるべきだ。
「どうしたものかな」
 正直な話、金居に関してはあまり問題視していなかった。人間体での名も姿も知っている以上、最大限の警戒は出来る。だが他にアンデットがいるのだとしたら、それは問題だ。自分はそのアンデットの名前を知らず、必然的に姿も知らない。
……誰がアンデットか解らない、か……
 始はデイバックを下ろし、中から名簿を取り出した。開かれたファイルには見開きを埋める名前の羅列がある。
 数にして七十に及ぶ、殺し合いに招かれた者どもの名だ。そこには倒すべきものの名があり、愛すべき家族の友人と思しき名があり、それをはるかに超える数の見知らぬ者達の名があった。
 始は羅列を幾度か見返して、
「無意味だな」
 溜息をついた。どれほど読み返しても、文字は読み手が知る以上の情報を伝えることはない。読み返しは再確認以上の成果を作らなかった。
 解ってはいたことだが、と自嘲し、ファイルを閉じ、
「……待て」
 ようとした時、始の脳裏に一つの思考が閃いた。
 閉じかけたファイルを開き、名前の羅列を読み返す。やはり字の羅列は、何度読み返しても新事実を教えてはくれない。
 しかし推論を立てる、その助けとなった。
「アンデットは全部で五十三体。内、人間の姿になれるのは……十二体」
 俗に上級アンデットと呼ばれるものどもだ。それ以外のアンデットは知能が低く、人間の姿にもなれない。
 つまり人間の名を持たない。
「ハートスートの三体は封印されていると考えて……九体」
 Aから10までのカテゴリーに属するハートスートのアンデットは、封印された状態で自分に与えられた。ならばJ、Q、Kも封印されて誰かに支給されたか、誰にも支給されていないかのどちらかだろう。
 つまり殺し合いには、最大でも九体のアンデットしかいない。
 殺し合いが行われている、この世界には。
……おそらくここは、俺がいた場所とは途絶した場所にある……
 始がいた場所と今いるこの場所は、あまりにも違い過ぎている。
 景色や環境が、ではなく、空間が。
 空間や空気が持っている、匂いが。
 途絶された空間に、最大でも九体のアンデット。
 それらが封印されたとしたら、どうなるのか。

234 :最初からクライマックスなのか!? ◆WslPJpzlnU :2008/08/03(日) 23:22:59 ID:g8NiSojY
「――暫定的なバトルファイトの勝者となる……?」
 立てた推論の答えはそれだった。
 この場所で封印されていないアンデットは、自分を除いて最大九体。途絶されているなら、ここにいないアンデットは除外されたと考えられないだろうか。
 だとしたら、この殺し合いはバトルファイトを一気に終極まで推し進めたものという事にある。
 普通のアンデットなら、それで何というわけでもない。普通のアンデットは勝利という結果を統制者に捧げ、そこではじめて自らの種族を栄えさせる力を得られる。
 しかし相川始はそれに含まれない。
 相川始は普通ではないから。
 相川始はジョーカーだから。
「俺は勝者となった時、統制者からの授与無く、力を発揮する」
 滅亡の力。
 ジョーカーの眷属。
 ダークローチ。
「俺以外のアンデットを全て封印したら、あの力が使えるのか?」
 ヒューマンアンデットの影響で温情を抱いた為に、忌避すべきと思っていた力。
 だが今は、ヒューマンアンデットの影響を受けて温情を持った故に、欲する力。
 アンデットに及ばないとはいえ。
 殺せる存在であるとはいえ。
 地上から全ての命を刈り取るまで、始の影より自動的に増殖する傀儡の群。
 もしあれが使えるなら、自分は最強の殲滅力を持つこととなる。
 参加者を一気に掃討する、圧倒的な数を。
「……しかし」
 そこまで思い、反論も浮かんできた。
 そもそも、本当にこの場所が途絶された空間なのか、という根本的な疑問だ。勢いでここまで理論だててみたものの、本当に途絶された空間など作れるのか。
 確かにこの殺し合いを仕組んだ、あのプレシアなる女は自分達に空間転移をやってのけた。アンデットの中には時間を止めるものもいる。
 空間を区切る能力、想像することはできる。
 しかしそれが実在するという根拠にはならない。
「制限もある」
 先ほど人間を殺し損ねた時に気づいた事だが、今の自分は全力を出せない状態のようだ。おそらくプレシアの小細工なのだろう。
 身体能力や攻撃力が抑えられているのに、あの圧倒的製造能力が抑えられていない、という事があるのだろうか。
……或いは……
 それが狙いなのかもしれない、と始は思った。
 自分にダークローチを生み出す能力を目覚めさせ、この殺し合いの場にいる者達を殲滅する。それも有りだ、という風に考えているのかもしれない。見せしめのように一人の少女を殺した、あのプレシアの挙動を回想して始は思う。
 等々と思いあぐね、出した結論は、
「試すのも悪くないか」
 その一言だった。
 そもそも自分は、出会った者は皆殺しにすると決意した。
 アンデットの封印にしたところで、結局は闘って倒す必要がある。ならば対処は同じだ。
 もし巻き込みたくない誰かがいたのなら、この選択肢はない。
 しかし現実には、誰もいない。
 護りたい人など、誰もいない。
 だから試すことも、辞さない。
 成功すればそれでよし。失敗しても損はない。
「要は優先順位の問題だ」
 アンデットと思しき者を率先して倒す。
 それ以外も殺すが、優先順位はアンデット以下とする。
「俺はジョーカーだ。……そう言えば、ある程度は見極められるか」
 上級アンデットどもは、ジョーカーの存在を知っている。恐れ忌み嫌っている。だから自分から告白すれば動揺を誘えるだろう。
 確認はそれぐらいで十分だ。
 だってどのみち、遭遇した相手は皆殺しだから。
 護りたい人なんて、一人もいやしないんだから。
 どうせ自分は、ジョーカーなのだから。

235 :最初からクライマックスなのか!? ◆WslPJpzlnU :2008/08/03(日) 23:23:57 ID:g8NiSojY
「こんな所か」
 浮かんだ推論と取るべき行動、その折衷案を完成させて始は頷く。
 気づけば、いつの間にか腕を組んでいた。それを解き、足下に置いていたデイバックを掴み上げて胸の内に意思を作る。
……市街地を目指そう……
 屈めた身を起し、始は再び遠地を見つめた。分断された木々より見える夜空、そこには変わらずビル群の影がある。
 市街地ならば、アンデットでなくとも人は集まり易いだろう。戦闘のために遭遇を望むなら、そこに向かうのは当然というものだ。
 先ほど名簿と共に確認した地図によれば、傍を流れるこの川は市街地も横断している。
 ならばこれに沿って歩けば、やがては市街地に至るだろう。
「――待っていろ」
 まだ見ぬ化物どもに向け。
 まだ見ぬ人間どもに向け。
 相川始の声は、足音とともに放たれた。



――――ハートのカテゴリー2が、くすんだ気がした。








【1日目 深夜】

【現在地 A-7 川(崖)付近】
【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、カリス形態
【装備】ラウズカード(ハートのA〜10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、ランダム支給品×1
【思考】
 基本:栗原親子の元へ戻るために優勝を目指す。
 1.アンデット(もしくはそれと思しき者)を優先的に殺す
 2.見つけた参加者は全員殺す
 3.川を辿って市街地を目指す
 4.あるのならハートのJ、Q、Kがほしい
【備考】
 ※参戦時期はACT.5以前。なのは達の事は名前のみ天音より聞いた事がある(かもしれない)程度です。
 ※自身にかけられた制限にある程度気づきました。
 ※首輪を外す事は不可能だと考えています。
 ※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝者となるのではないか」という推論を立てました。
 ※相川始本人の特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘した場合、その位置をおおよそ察知できます。
 ※カリスラウザーは相川始本人の特殊能力によって発現する物です。任意で自在に出現させられます。

【ダークローチ】
 相川始(ジョーカー)がバトルファイトの勝者(始以外の全アンデットが倒された状態)になった際、始の影から出現する怪人の群。
 地上に存在する全生物を絶滅させる事を本能とし、それを完遂するまで無限に影から這い出してくる。自我はなく、近辺の生物を自動的に襲う。なので始にも制御は出来ない。
 アンデットではない為、戦闘力・治癒力は遠く及ばず、殺すことは出来る。
 ダークローチ製造能力が使用可能かどうかは、後の書き手さんにお任せします。

236 :なのは×終わクロ ◆WslPJpzlnU :2008/08/03(日) 23:29:35 ID:g8NiSojY
投下終了。

……。
…………。
………………短ぇ。
短文にもほどがあるぞ、自分……。
何はともあれ、諸所で「マーダー少なくね?」という声が多かったので、マーダー激増フラグを立ててみました。いやホント真面目な話、これが使えたら出来レースも言い所ですよね。
状態表にも書きましたが、これが使えるかどうかは議論or後の書き手さん次第ということで。

あとどうでもいい話ですが、最初ダークローチのことをゴキブローチって書いてました。……おっかしいなぁ、どこで吹き込まれたんだろうなぁ、その名前。確かに外見は似てるけどさ。

237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:09:35 ID:3/gGp8XU
投下乙です。
これでますますマーダー路線の始。
個人的に風景描写が印象的でした。

えっとダークローチですが、さすがに不味いと思います。
あれはそれこそ無数に出てきますし、それ以前にこの空間では無理かと。
モノリスの判定が無かったら勝敗がつかないので。

あとA-7から市街地までは最短でも4km。たぶん始でも見るのは無理だと思います。
それだけ離れているならアンデッドの気配を察するのも疑問です。
この部分は修正を入れるべきかと。

それと短くても立派な作品です。
短くて話を構成できる点は見習いたいです。

238 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:32:36 ID:Tff7HBDO
GJ!一気に始がキングや金居に次いで悪質なアンデッドにw
さらにダークローチのみならずキングを4枚集めれば14も召喚可能(かもしれない)という特典が……。
非常に始らしい判断で、先が楽しみです。

アンデッドの位置を探知する能力に関しては、自分も少し制限をかけた方がいいかなとは思います。
どこかで戦っているのは分かるが、位置まではわからない。くらいまで能力を落とした方がいいかもしれませんね。
それからもう一つ。前回の話で始は人間の姿に戻っていたと思うのですが、再び変身したということでいいのでしょうか?
それから指摘を一つ。正しくは「アンデット」では無く、「アンデッド」です。

ダークローチについては、個人的には無理がある気がしますが、今後の流れ次第かと。
ただ始のダークローチを許してしまえば、金居やキングが勝利した場合も考えなければならないというのがネックですね。
出すにしても、流れ的には本当に最後の最後、クライマックスシーンとかで出せるかな?くらいに思います。
以上の事から、勝利者特典はあるにしても、キング4枚を集めた場合の邪神14くらいに留めておくのが無難かと……

239 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/04(月) 22:33:56 ID:ukx4C6UA
はやて、キング、ヴィータ 投下します

240 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/04(月) 22:34:31 ID:ukx4C6UA
許さない。

八神はやてがどんなに強くそう思おうと、結果は変わらない。
彼女は管理局の中でも非力さにおいては群を抜くもの。。
対する相手は常に前線に立ち続け、その生死の境界の中で戦闘技術を高めてきたベルカの騎士だ。

決着は一瞬でついた。

八神はやてが持つツインブレイズはヴィータの持つ槍で簡単に薙ぎ払われ
その衝撃によって堪らず尻餅をつくはやての喉元に槍はそのまま突きつけられることになった。
このままヴィータの偽者に殺され、大切な家族を救うことなく死んでしまうのだろうか。
無手となったはやては悔しそうにヴィータを睨み付けた。
だけど、彼女の予想とは違っていつまで経っても、その槍ははやてを貫くことはなかった。
そのことに八神はやてが疑問を感じると、それに答えるかのようにヴィータの言葉がぶつけられてきた。

「何でだよ!」

ヴィータは吐き捨てるように叫んだ。

「何でお前はそんなにはやてに似てんだよ!」

彼女は八神はやてではない。
八神はやては足を動かせず、いつも車椅子に乗って移動をしている年端もいかない女の子だ。
何よりも自分の主である八神はやては簡単に他の人の命を奪うような人間ではない。
ヴィータの知る知識、持っている理性全てが目の前の人間を八神はやてでない、と言っている。
そう、断じて違うはずなのだ。
それなのに彼女はいつまで経っても、その槍先を動かすことが出来なかった。

「くそ! くそ!」

言葉に出来ない気持ち、身体を動かせない戸惑い。
その両方に苦しむヴィータはただ同じ言葉を叫ぶだけだった。

「……ヴィー……タ?」

はやてが呟いた言葉にヴィータの目が開かれる。
どうしても目に付くこの女と自分の主の類似点。
この女を見ているとどうしても思い出してしまう大切な主。

違う、違う!

ヴィータは自分の頭に過ぎった考えを振り払うようにまた叫んだ。

241 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/04(月) 22:35:47 ID:ukx4C6UA
「ウッセー! お前は喋るんじゃねー!」

ヴィータは手に持つ槍に力を込め、目の前の女を殺さんばかりの勢いで睨み付けた。
大体この女はギルモンを殺した憎むべき相手だ。放っておいていいはずがない。
このままにしていたら、自分の本当の主にも危険が及ぶかもしれないのだ。
するべきことは決まっている。こんな所で躊躇なぞしていられない。
そんな事は分かっている。分かってはいるけれど、ヴィータは動けなかった。
何故ならどう否定しようとも、相手が持つ顔は、声は、
自分が心から慕う八神はやての面影を強く残していたのだから。

「くそ! くそ! 何なんだよ、お前は!? 一体どうすればいいんだよ!?」

絶えず湧き起こり、自分でもその正体が掴めないその不確かな感情は、
彼女の中を満たし、既に溢れたそれは自分でも御しきることが出来ず、彼女を混乱させていった。
この女をギルモンのためにも、主のためにもブチのめさなければならない。
だけど、その肝心の相手が大切な人を思わせる姿形でいる。
その悪夢のような出来事は、例え目の前の人物がはやてでないと分かっていても
既に人としての感情を取り戻した守護騎士ヴィータを戸惑わせるのには十分なものだった。

「くそっ! くそっ!」

自分にはこの女を殺すことが出来ない。
忌々しいし、何よりもそんな自分を情けなく感じたが、
それがヴィータの出した結論だった。
彼女はその槍ではやての横のアスファルトを悔し紛れに思いっきり叩くと、
ギルモンの死体とバッグをかつぎ、逃げるように飛び去っていった。



242 :仮面の告白 ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/04(月) 22:36:37 ID:ukx4C6UA
*   *   *


飛び去っていくヴィータを呆然と見つめるはやてに
キングは飄々とした感じで話しかけた。

「弱っ! お前、マジで弱すぎ! そんなんでよく武器を持って立ち向かう気になれたよな。
お前、馬鹿なんじゃないの?」

人を馬鹿にしたような台詞に思わずはやては相手を睨み付ける。
しかし、キングはそれをどこ吹く風といった具合に相変わらずの口調で話しかけた。

「で、どうすんの? このまま大切な家族の偽者をのさばらせといていいわけ?」

「……勿論、追いかけるに決まってるやろ」

その言葉を聞いてキングは顔に浮かべていた笑みを一層増長させる。
だけど、続いて聞こえてきた言葉には拍子抜けするものを感じた。

「せやけど、今の戦いで足を捻ってしまったみたいなんよ。
私は地上本部の医務室に行って手当てしくるから
ほんま悪いんやけど、その間辺りを見回ってもらえへん?」

「ダッセ! マジでダセーんだけど!」

余りに弱い人間。一瞬で戦闘が終わってしまうほどの非力さ。
こんなんで本当に自分を楽しませてくれるのか。
そんな疑問が湧き出ると同時に、いっそこのまま殺してしまおうかという思いが湧く。
だけど、キングは何とかその気持ちを抑えることが出来た。
人間にとって忌むべきはずの命を奪うという行為を
平然とやってのける八神はやての家族に対する思い、執念。
その異常ともいえる人間の姿など、そう滅多に見れるものではない。
きっとこの女はまだまだ楽しませてくれるはずだ。
それに戦力が足らないというのであれば、自分がそれとなくバランスを取らせてあげればいい。
戦力をある程度均衡にすれば、あんな一方的で一瞬で終わることもなく、
もっと存分にお互いを罵り合い、憎しみ合い、殺し合ってくれることだろう。
そうなれば、きっと先程より面白いショーが見ることが出来るはずだ。
そうしてその果てにどちらかが倒れたなら、残っている方に真実を教えてやればいい。
お前たちが戦って、殺してしまったのは、お前の本当の家族だ、と。
その後の彼女たちの反応が楽しみだ。どんな顔をして楽しませてくれるだろう。
泣くか、悲しむか、怒るか、笑うか、狂うか、絶望するか?
全く人間とは本当に笑わせてくれる生き物だ。

「まあ、いいや。でも、早くしないと、あの偽者の子がどっか行っちゃうよ♪」

キングは顔の下にある酷薄な笑みが表に出るのを我慢しつつ、いつもの調子で話しかける。
そうして彼は心底愉快な気持ちで、足取り軽く、辺りの警戒に向かっていった。



243 :仮面の告白 ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/04(月) 22:37:35 ID:ukx4C6UA
*   *   *


キングが歩き出すと同時にはやても立ち上がり
そして足を引きずり、痛そうに歩きながら地上本部へ戻っていった。
しかし、彼女はキングが完全に視界から外れることを確認すると、
その怪我したはずの足で平然と歩き始めていった。
そう、実際に彼女は怪我などはしていなかった。
ただキングという騒々しい馬鹿に邪魔されず、
一人落ち着いて考える時間を得るための方便だったのだ。
そして医務室に辿り着き、そこのベッドに腰掛けると、
彼女は早速先程に起こった一連の出来事について考えをまとめ始めた。

先の事で確認出来たことは三つ。
ヴィータを姿をした女の子は自分のことを知らないこと、自分の名前を知っていること、
そしてあの恐竜が死んで激昂したこと、恐竜の死体を持ち去るという非合理的な行動をしたこと、
何より殺人を躊躇ったことからして、人としての感情を持ち合わせている節があるということだ。
以上の三つだが、これだけでは答えなどは生まれず、茫漠とした考えが広がるだけだ。

しかし、そこにプレシアが持っているアルハザードの技術を当てはめると、事は違ってくる。
アルハザードは不可能を可能にする技術の集合体だ。
それを考慮すれば、幾分か馬鹿げているとは思うが、はやてには幾つかの可能性が思い浮かべることが出来た。
それは彼女が平行世界、異時間のヴィータであるということ、
もしくはそれらを元に作られた複製プログラム体。
普段ならこんな突拍子なく、滑稽な考えなど笑い飛ばしていたことだろう。
だけど、今は違う。寧ろ、そうでなくては困るくらいだ。
手に入れるべきものが自分の想像を遥かに超えるほど優れた技術であるなら
それだけゴジラを倒す公算も高まるのだから。

そして彼女はこの世界に来て以来、いや、家族を失ったあの日以来、
本当に僅かだが初めて本当の優しい笑みをこぼす事が出来た。
もう二度と会うことが出来ないと思っていたヴィータに会うことが出来たのだ。
それはどんな邂逅であれ、嬉しくないわけない。
だけどそれも束の間、次の瞬間にははやての表情は元通り冷たいものとなった。


244 :仮面の告白 ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/04(月) 22:38:49 ID:ukx4C6UA
あの「ヴィータ」が「ヴィータ」であることは認めよう。
淡々とした表情で彼女はそう結論づけた。
ヴィータと同じ顔、姿、声、そして相手をつっぱねながらも、どことなく思いやってくれる性格。
彼女はそれを有していた。それは自分が同じ時間を過ごしたヴィータと変わるところがない。
だけどそれでも、はやては今以上彼女に心を許すことが出来なかった。
自分にとって本当の家族は、あの日、自分のために人柱となった守護騎士たちなのだ。
彼らは今も結界妖星ゴラスの中で苦しんでいる。
それなのにそんな彼らを放っておいて、他の人に笑いかけるなど、はやてには出来るはずもなかった。
そんな事をすれば、自分のためにその身を投げ打った家族の思いを踏み躙り、彼らを裏切るようなものだ。
彼女には家族を裏切るということだけは絶対に出来なかった。

だが、実際問題、あの「ヴィータ」は戦力となりうる。
彼女が「ヴィータ」であるならば、それは当然だろう。
そしてそれならば利用しない手はない。
あの「ヴィータ」が望む八神はやてを演じて、存分に道具として使い果たしてあげよう。
自分の本当の家族、ヴィータたちに会うために。
確かに先程は誤解により悲劇が起こってしまったみたいだが、まだ取り返しはつくだろう。
何といったって自分は八神はやてなのだ。
それは先程彼女が自分を殺さなかったことからも証明されている。
きっと付け入る隙はあるはずだ。



そこまで考えると、突然と医務室の扉が開かれた。

「おい、いつまで待たせんの?」

ノックもなしに勝手に入ってくる不躾さ。
それだけでもこのキングがどれだけ人として不完全かを教えてくれる。

「あぁ、ごめんな。足の治療の他にも何か使えそうな薬、探してたんよ」

そう言い、いつの間にか手にとっていた治療薬を見せる。
ふーん、と興味なそうな顔をキングはぶら下げる
それを尻目に八神はやてはもう一つの問題、キングについて思考を巡らした。

最初は駒として利用してあげようかと思ったが、この男はその価値もないクズだ。
状況をわきまえず、絶えずヘラヘラと笑い、緊張感を持たないカス。
人を小ばかにしたような尊大な態度を取るくせに、念動力しか使えないという戦力的に無意味なゴミ。


245 :仮面の告白 ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/04(月) 22:40:41 ID:ukx4C6UA
こんな人間の失敗作のような奴と一緒にいては、
十分に戦力が確保されることになっても士気低下に繋がりかねない。
戦闘において士気の差が実際の戦力以上に戦局を左右することは、
既に幾つかの知識と自らの経験において、はやては知っている。
なればこそ、士気の低下を招きかねないこの軽薄な小僧は邪魔でしかない。
いや、士気の低下だけで済めば、まだ良い方だ。
問題なのは、この低能のおかげで重要な戦力が削られてしまう可能性があるということだ。
例えばはやての知り合いであるなのはやフェイトなら、相手がどんな能無しであれ、
その人の身に危険がせまれば、身を挺しでも守ろうとする。
その結果、貴重な戦力が失われることになってはいけないのだ。
おまけにこのキングはこの状況に危機感を持てないほど頭が悪い。
自然となのはたちのような心優しき馬鹿の懸念を買ってしまい、
戦力の損失を招いてしまう可能性が高くなる。
そうならないためにも、早急にこの間抜けを排除する必要がある。

大体、あの「ヴィータ」との確執もこのアホが原因のような気がする。
八神はやては憎しみが表に出ぬよう、努めて愛想笑いを顔に浮かべた。
確かにこの愚物に対する判断を誤り、言を聞き入れてしまった責任ははやてにもある。
何ら身元が保証されていない民間人の発言を信じてしまうなど
部隊の指揮官としてはあってはならないミスだ。
だけど、彼の要らぬ助言のせいで、あの戦いの幕が上がったことも確かだ。
彼の言葉に嘘や悪意があったのかというのは彼女には分からない。
彼が見て、感じてきたことを素直に教えてくれたかもしれないし、
自分を嵌めようと何かを企んでいたのかもしれない。
だが、どちらにしろ、キングは排除すべき存在だ。
何故なら、嘘を吐いたのなら彼はゲームに乗った悪人であり、
嘘を吐いていないのなら、正確な情報を伝えることが出来ない無能ということだからだ。
そのどちらもはやてのの望む戦力に必要はない。





246 :仮面の告白 ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/04(月) 22:41:53 ID:ukx4C6UA
医務室の扉を出て、先を歩くキングの背中を見つめる。
今ならやれるだろうか。
思わずツインブレイズを持つ手に力がはいる。
そしてそこから発せられる収束されたエネルギーが
鮮明に奴の背中を貫くところがイメージでき、はやてを愉悦に浸らせる。
だけど、今の自分で勝てるかどうか不安なところがある。
如何にSSランクを誇る魔導師であれ、自分にはデバイスもない。
加えて自分の本分は遠距離からの圧倒的火力による制圧、殲滅にある。
接近戦では先の二の舞だろう。
やはり他の仲間に合流するまでは控えたほうがいいかもしれない。
いや、そもそも自分でやる必要はどこにもない。
先の出来事を全てキングのせいにして、ヴィータに殺させてみようか。
それならば自分はリスクを負うことなく、事を成し遂げられる。
いい策だ。
だが、それにも問題がある。
「ヴィータ」に会うまで、このクズと同じ時間を共有しなければならないということだ。
自分の持つ時間は自分の家族にこそ捧げるべきもの。
間違っても、この汚物のような人間にではない。
はやては腸が煮え返るのような思いで決意した。


いいだろう。
「ヴィータ」に会う前にチャンスが見つかれば、遠慮なく殺してあげよう。
その存在が誰にも見つからないように、優しく、丁寧に、丹念に殺しぬいてあげよう。


八神はやてはその顔の下で誰にも気づかれぬよう冷たく笑った。



247 :仮面の告白 ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/04(月) 22:42:50 ID:ukx4C6UA
【1日目 深夜】
【現在地 E−5 地上本部】


【八神はやて(sts)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】健康、怒り
【装備】ツインブレイズ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、ランダム支給品1〜3個(武器では無い)
    ランダム支給品1〜2個(キングから貰いました)
医務室で手に入れた薬品(消毒薬、鎮痛剤、解熱剤、包帯等)
【思考】基本 プレシアの持っている技術を手に入れる
    1.「ヴィータ」を追いかけ、彼女を戦力に加える
    2.チャンスがあればキングを排除する
    3.首輪を解除できる人を探す
    4.プレシアに対抗する戦力の確保
    5.以上の道のりを邪魔する存在の排除
 【備考】
 ※参戦時期は第一話でなのは、フェイトと口喧嘩した後です
 ※名簿はまだ確認してません
 ※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだという考えに行き着きました
 ※ヴィータの他、この場にいるかもしれない守護騎士たちに優しくするのは、
  自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています
 ※キングのことは、ただの念力が使えるだけの少年だと思っています


【キング@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康、非常に上機嫌
【装備】無し
【道具】カブトのライダーベルト@魔法少女リリカルなのはマスカレード
    キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのはマスカレード
【思考】基本 この戦いを全て滅茶苦茶にする
    1.面白そうだから、はやてとヴィータの戦いを見物する
    2.カブトの資格者を見つけたら、ゲームでも持ちかける。でも、飽きたら殺す
    3.はやてとヴィータの決着が着いたら、残ったほうに真実を伝えて、その反応を楽しむ
    4.とにかく面白いことを探す
【備考】
 ※制限が掛けられている事に気がつきました
 ※ゴジラにも少し興味を持っています
 ※携帯電話は没収漏れです。写メ・ムービー以外の全ての機能は停止しています。
 ※携帯には相川始がカリスに変身する瞬間の動画等が保存されています。
 ※キングの携帯に外部から連絡出来るのは主催側のみです。





248 :代理投下  仮面の告白 ◇Qpd0JbP8YI:2008/08/04(月) 23:08:00 ID:3/gGp8XU
ギルモンの死体を担ぎ、彼をどこかに埋葬してやろうとヴィータが奔走していると
突然と遠くから声が聞こえてきた。
足を止め、その内容を聞いてみると、
どうやら声の持ち主は時空管理局執務官のクロノ・ハラオウンであるらしいことが分かった。

「あいつか……」

ヴィータは呟く。
彼女は彼のことをいつかの対峙とその時のご大層な名乗りのおかげで覚えていた。
だけど、問題は彼が誰かということではない。
これから彼に対してどう振舞うべきかだ。
普段のヴィータなら管理局などに助けなどは求めはしない。
自分の主を捕らえようとする勢力だ。当然、排除して然るべき相手だ。
だが、今は普段とは状況が違う。
この殺し合いという狂ったゲームの真っ最中だ。
更に未だ主を見つけられず、いつ主を殺されてもおかしくない状況。
管理局の連中に助けを求めた方がいいのではないか。
非殺傷を旨とし、正義のお題目を掲げる管理局員なら、
こんな状況の中でも、殺人を良しとせず、主の命を守ってくれるのではないか。
そんな考えが彼女の頭の中に過ぎる。
だけど、それには当然無視出来ないことが付いて回る。
管理局員と一緒にいれば、殺し合いを無事に脱出できたとしても、
闇の書の主である八神はやては当然管理局に逮捕されてしまうことになるだろう。
そうなれば、あのみんなで過ごした幸せな生活は二度と送ることが出来なくなる。

「そんなのは嫌だ!」

ヴィータは思わず叫ぶ。
闇の書の守護騎士プログラムとして長きに渡り生きていた中で、
図らずも手に入れることが出来た幸せ。
戦いに明け暮れていた自分たち守護騎士が主と共に笑うことの出来た日常。
それは彼女にとって掛け替えのないものだった。
それが失われるのは、彼女にとって我慢のならぬものであった。
だけどこのまま自分一人では、未だ見つからぬはやてを守るというのにはどうしても限界がある。


「くそっ! 一体どうすればいいんだよっ! なぁ、はやて!!!」


彼女の悲痛な叫び声が夜に木霊した。


249 :代理投下  仮面の告白 ◇Qpd0JbP8YI:2008/08/04(月) 23:08:48 ID:3/gGp8XU
【1日目 深夜】
【現在地 D−4】

【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】疲労(小)、左肩に大きな切り傷、激しい怒りと悲しみ、激しい迷い
【装備】ゼストの槍@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F
    ランダム支給品0〜3
【思考】 基本 はやてを救って、元の世界に帰る
    1.クロノに対する行動を決める
    2.ギルモンを埋葬する
    3.八神はやて及び他の守護騎士たちとの合流
      そして彼らに偽者の八神はやてがいて、殺し合いに乗っていることを伝える
    4.ヴィヴィオを見付けた場合は、ギルモンの代わりに守ってやる
【備考】
 ※はやて(StS)を、はやて(A's)の偽物だと思っています
 ※デジヴァイスには、一時的に仮パートナーとして選ばれたのかも知れません。
 ※なのは達のデバイスが強化されたあたりからの参戦です


85 :仮面の告白 ◆Qpd0JbP8YI:2008/08/04(月) 22:47:44 ID:UfdFnCdA
以上で投下終了です

250 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 23:28:24 ID:3/gGp8XU
投下乙です。
はやてwww君がアホだと言った奴は間違いなくここでは最強に分類されるぐらいに強いぞwww
なんという状況判断ミス…ま、仕方ないか。
3人の思惑が交錯してGJ
中でもヴィータが次にどうでるかwktk
あとキング、ノリノリだなあ。

251 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/05(火) 00:07:11 ID:JKYGGf6w
投下乙。
いきなり外道化wwwこのはやてウゼェwww

252 :マスカレード ◆gFOqjEuBs6 :2008/08/05(火) 01:15:19 ID:EtqZQeAK
投下乙&GJです!
はやてもキングもやっぱりお互いに利用し合ってる関係のようで。
二人とも自分の方が立場が上だと思ってるあたり、先が楽しみです。
ステルスマーダーの二人がお互いのスタンスに気付かずに腹を探り合っている光景が斬新でしたw
やっぱりこのはやてのポジションはロワ的に美味しいですね
もう一度GJ!

さて、コテ付きで失礼しますが、少しキングの喋り方に違和感があったので、
そこだけ指摘させて頂きます。
一応キングは物凄く今風な若者ってことですが、
精神的には幼く、喋り方ももう少し子供らしい方がキングらしいかなと。

>>242
「弱っ! お前、マジで弱すぎ! そんなんでよく武器を持って立ち向かう気になれたよな。
お前、馬鹿なんじゃないの?」

「弱っ! 君、マジで弱すぎ! そんなんでよく武器を持って立ち向かう気になれたよね。
君、馬鹿なんじゃない?」

>>244
「おい、いつまで待たせんの?」

「ねぇ、いつまで待たせんの?」


他には特に違和感もありませんし、ここだけ直せばキングに関しては特に問題はないかと。
なんか一々細かいツッコミみたいな感じで申し訳ありませんが、本当にそれ以外は
十分キングの雰囲気を出せていたと思いますので、そこだけ検討よろしくお願いします。
では、失礼しました。

253 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/05(火) 02:10:38 ID:FAR61VPl
>>252

いえ、ご指摘ありがとうございます。
wikiに載ったら早速直してみます。


やっぱりライダーをwikiの知識だけで書くのは無理があったみたいですね……

254 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/05(火) 02:23:05 ID:7+mp5XCj
>>253
ライダーロワとか参考にはなると思いますよ。
一度見てみたらどうでしょう。

255 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/05(火) 08:16:15 ID:JKYGGf6w
一つ前のSS読めば何となく分かる気がするんだけどな……

256 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/08/05(火) 16:42:30 ID:/RamN3HK
GJ!
はやてが、はやてが順調に悪役の道を〜(ぉ
これがもしセフィロスと鉢合わせでもした場合、一体どうなってしまうんでしょうか……

では、万丈目、チンク、明日香分を投下します

257 :コピーベントの罠! ナンバーX危うし ◆9L.gxDzakI :2008/08/05(火) 16:43:28 ID:/RamN3HK
「――一体何がどうなっているんだ!」
 廃墟の真ん中で、1人の少年が苛立ったように喚いた。
 元はどこかの小さな町であったのだろうか。しかし今現在のこの場所は、見るも無惨に朽ち果てている。
 ひび割れた家、壁に穴の空いた家、半壊状態にさえ至った家。
 電柱は軒並みへし折れ、砕けたアスファルトに散乱した電線には電気の光すらない。
 大規模な戦争か何かが通り過ぎたような、そんな場所。
 ここで戦いがあったわけではない。ここは元からこうだったのだ。
 一体あのプレシア・テスタロッサが、いかなる意図でこういう場所を用意したのかは誰にも分からない。
 ともかくも、その残骸の中心地に、万丈目準は不機嫌そうに立っていた。
 デュエルアカデミア3年生。黒い制服は、ノース分校で仕立てられた特注品。
(あのデュエルモンスターズ世界からようやく出られたと思ったら……結局何も変わらんではないか!)
 苦々しげに歯軋りをする。
 つい先ほどまで、彼はここともまた別の異世界にいた。
 どこまでも続く白い砂の大地。その中にぽつりと佇立する、母校アカデミアの校舎。
 実体を持ったカードゲームのモンスター達との、終わりの見えない生存競争。
 その場所からようやく脱出できたかと思ったら、ここでもまた要求されるのは殺し合いだ。
(何でこうもたびたびこんな――)
 ――轟。
 唐突に耳を貫く爆音。
 さながら悪魔の唸り声。
 身体をびくりと震わせて、瞳をくわと見開いて、万丈目の思考はいずこへと吹き飛ぶ。
 遠くから響いたのは、さながら遠雷にも匹敵する凄まじい音だった。
 次いで、めりめり、めりめりと、木々の砕ける音が混じる。
 どうやらこの廃墟を囲む森の中で、何か大規模な破壊が起こったらしい。
 ここが戦場であるということを、改めて実感する。それも並々ならぬレベルの危険度の。
(……ええい、冗談じゃないっ! この万丈目サンダーをこんなことに巻き込んで、ただで済むと思うなよ!)
 怒りを胸へと蘇らせながら、内心でプレシアへと叫ぶ。
 この借りは十倍にして返してやろう。いや、百倍だ。千倍。一万倍にしてやってもいい。
 とにかくまずはここから脱出し、説明を受けたあの部屋へと戻り、あの女を思いっきり殴り飛ばしてやる。
(そのためには、なのは達魔導師組との合流が必要か……)
 ふと、冷静さを取り戻しながら、デイバッグから名簿を抜き出す。
 あの場にはすぐ近くに座っていたアカデミアの仲間と共に、異世界から来た魔法使い達の姿もあった。
 そもそもプレシアとは、そちら側の世界に位置する人間らしい。であれば、彼女らがいるのは必然か。
 名簿に並んだ名前へと、ざっと目を通す。
 遊城十代、天上院明日香、早乙女レイ……アカデミア組は、どうやら自分が確認した面子で全員らしい。
 つまりこの場には、丸藤翔とティラノ剣山、エド・フェニックス、そしてヨハン・アンデルセンを筆頭とした分校組はいないということ。
 誰か1人忘れている気がしないでもないが、何となく今に始まったことではないような気がしたので放っておく。
 そして、続いて確認したのは管理局の人間だ。
 高町なのはを始めとする、6人のデタラメ人間達。こちらは全員この場に集められたようだ。
 彼女らは転移魔法という、いわゆるテレポートのような力を持っているらしい。
 ならばそれを使えば、あの場所へと戻ることができるだろう。
 ここがあの砂漠と同じように、転移に対するジャミングの張られた場所である可能性には、遂に至ることはなかった。
 ちなみに更に補足するならば、先ほどの咆哮はそのなのはの招いたものだったが、そんなことは知る由もない。
 とはいえ、それは万丈目の知らない「もう1人のなのは」の方の話なのだが。

258 :コピーベントの罠! ナンバーX危うし ◆9L.gxDzakI :2008/08/05(火) 16:44:20 ID:/RamN3HK
(よし……今後の方針は決した! まずはここから脱出するために、連中と合流を果たす!)
 拳を握る。万丈目の瞳に宿るのは、ぎらぎらとした決意。
 デュエルアカデミアで、互いにしのぎを削ったライバル達と。
 時空管理局からやってきた、超人的な力を持つ魔法使い達と。
(何よりもまず――天上院君とッ!)
 自分が惚れたクラスメイトと。
 握った拳を天へと掲げ、煌々と輝く天上の月へと、固く誓った。
(……では、残る支給品を確認するか)
 どっかと腰を下ろすと、道路へデイバックを置き、中身をあさる。
 まずは武器が必要だ。誰かに襲われた場合の自衛手段として、そしてプレシアへの報復手段として。
 ここで重要となるのは、別に万丈目には他の参加者を殺すつもりはないということだ。
 あくまで当面は外敵を追い払うためのもの。一撃で対象を殺すような危険物は欲しくない。
 要するに、銃器などはNGだ。どちらかと言えば、いわゆる「峰打ち」のできる剣などの方が都合がいい。
 やがて何かが手に触れた。それを掴み、外気へと晒す。
「タッパー?」
 出てきたのは、プラスチックで作られた容器だった。
 家庭の弁当などで見られる、食品類を入れるためのもの。ご丁寧にも、カレーライスと思しきものが既に入っている。
 一体何故、こんなものが支給されたのだろう。見たところ食料品は別にあるというのに。
 とはいえ、こうして用意されたからには、何らかの意味があるはずだ。
 輪ゴムで括りつけられたプラスチック・スプーンを手に取り、蓋を開ける。
 何やら微妙に赤いような気がするが、まぁ気のせいだろうと判断。漆黒の宵闇は、万丈目の色彩認識能力を削っていた。
 中のカレーライスを掬い取り、口へと運ぶ。



「……ぬぅあああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!!!!」



 森全体に響き渡るような絶叫が上がった。
 この世の終わりを思わせるような、悲痛な叫び。音量ならば、先ほど聞こえた砲撃ともいい勝負。
 そして声の主たる当の万丈目はというと、廃墟のアスファルトの上でじったんばったんとのた打ち回っていた。
(辛い……辛すぎるぞこれは! 何でこんなものが支給されているんだっ!)
 ひりひりとした感触を訴える舌が痛い。
 たった一口食べただけでノックアウト。
 彼に支給されたこの追加食糧は、完全なるトラップにも等しい代物だった。
 悶絶する万丈目の思考能力は根こそぎ奪われ、ひいひい言いながら道路を転がる。
(おのれ……許さん、許さんぞプレシア! この俺様をここまでこけにしおってぇ!)
 沸々と怒りを湧き上がらせながらも、無様に身体をごろごろとさせる万丈目。
 彼がようやく動けるようになるまでには、それから数分もの時間を要することになった。
 未だ舌の痛みは抜け切らぬものの、どうにかこうにか耐えられるレベルになったことで、その身体を道路から起こす。
 再びデイバックへと手を入れ、次なる支給品を探し始めた。
 そして程なくして、更なる物体が引き抜かれる。先ほどのタッパーよりも大きい。手に伝わる金属的な感触。
「……なんだ、これは?」
 奇妙な首飾りがそこにあった。
 紐がかかっているのだが、その先端の飾りは妙に大きい。
 全体を形成するリングのサイズは、ともすれば人間の顔ほどにすら思える大きさ。
 中央には先ほど手触りで感じた、黄金に輝く三角形のパーツ。周囲には同様の素材の楔が並んでいる。
 ただの装飾品ではない。何らかの呪術の儀式で用いられるような意匠。
 そんな古めかしさと悪趣味さ、そして不気味さが同居するリングが、彼の両手に納まっていた。

259 :コピーベントの罠! ナンバーX危うし ◆9L.gxDzakI :2008/08/05(火) 16:45:28 ID:/RamN3HK
(こんな大仰な形をしているからには、魔法のアイテムか何かなんだろう)
 妙に冴えた勘のもとに、それを首へと通す。
 たとえば、自身の身体能力を強化するだとか、魔法のような力が使えるようになるとか、そんなもの。
 ロールプレイングゲームのような展開に期待しつつ、そのリングを身に着けた。
 デュエルモンスターズの世界や魔法使いの世界が存在するのなら、そんなものが更に別の世界にあっても不思議ではない。
 結論を言えば、それは半分正解。だが、半分は間違いだ。
 それは善良なるサポートアイテムなどでは断じてなく――言わば呪いのアイテムにも等しき存在だった。

『――よぉ』

「っ!?」
 不意に、どこからともなく声が届いた。
 反射的に周囲を見回す。だれもいない。どこにもいない。頬を伝う嫌な汗。
 今の声は一体誰だ。敵か、味方か。少なくとも聞きなれた声ではない。では、一体何者の声なのだ。
 ごくり、と喉を鳴らしながら、再び闇夜に視線を飛ばそうとした瞬間、
『おいおい、そっちじゃねぇよ!』
 嘲るような声が再び響いた。
「だ……誰だ貴様はっ! 姿を現せっ!」
 僅かに震えた声で、万丈目は叫びを上げる。
 どこから聞こえてきたのか、それが全く読み取れない。
 右から聞こえてきたわけでも、左から聞こえてきたわけでもない。前からでも、後ろからでもなく。上からでも、ましてや下からでも。
 いや、そもそもそれは、本当に外から聞こえてきた声だったのだろうか。
 不意にそんな疑問にかられた。
 夜の闇よりなお深き、漆黒の深淵から這い上がるような声。ではその深淵とはどこだ。
 心の底から浮かび上がってくるこの呼びかけは、であればむしろ己が内側から――
『そう焦らなくても出てきてやるって』
 1人の少年の姿が、目の前に浮かび上がってきた。
 銀色の髪を長く伸ばした、恐らく自分と同年代か、あるいは1つ下といった様子の男。
 瞳はぎらぎらと獣のように輝き、獰猛な笑顔をこちらへと向けている。
 ぞわり、と。背筋が粟立つのを感じた。
 この少年は、自分の周りにいるクラスメイトとは違う。こんな凶暴さと残忍さをにおわせるティーンエイジャーなどいない。
 そこら辺に吐いて捨てるほどいる“不良”などとはわけが違う。
 言うなればセブンスターズ。言うなれば斎王琢磨。言うなれば異世界のモンスター達。
 これは“悪者”の目だ。こんな歳の少年が、正真正銘の“悪者”の気配を纏って目の前に現れている。
 こいつは自分にとって危険な奴。反射的に万丈目は身構えていた。
『そんな身構えんなよ。どの道無駄なんだから』
 嗜虐的な笑みを浮かべながら、眼前に立った少年は口を開く。
 いや、そもそも眼前とはどこだ。
 目の前に広がっている廃墟か。今自分が立っているアスファルトの上か。
 それにしてはおかしい。上手く説明できないが、奇妙な違和感がある。恐らく少年はそこにいない。
 では、一体いかなる視点の上にそいつは立っている。外面を見つめる目ではなく――内面に向けられた目?
「まさか……貴様、俺の心の声だとでも言うのか……!?」
『ご名答! 俺様はたった今、もう1人のお前になった。お前の心の中に住まわせてもらうことでな』
 二重人格。例えるならばその言葉が近いのか。
 自分の中に芽生えたもう1つの心が、こうして自分の心に直接語りかけている。
 奇妙なオカルト体験。だが、不思議ではないとさえ思えてくる。こんなことは、既にいくつか経験済みだから。

260 :コピーベントの罠! ナンバーX危うし ◆9L.gxDzakI :2008/08/05(火) 16:46:12 ID:/RamN3HK
「……この、首飾りのせいか?」
 慎重に万丈目は問いかけた。
 根拠は至って簡単だ。自分と少年には、決定的な共通点がある。
 その胸元で黄金色に輝く、魔性の瞳を持ったリング。少年の首にも、全く瓜二つの物体がかけられていた。
『そうさ。俺様はその千年リングに宿りし、偉大な盗賊王の魂――バクラ様よ』
 よく言う。
 内心で万丈目が呟く。
 こいつは確かに悪役としては一級品のプレッシャーを放っているが、偉大な風格など毛ほども持っていない。
 王者に相応しき威厳がない。いやそもそも、荒くれ者を束ねる王ならば、むしろこの方が正しいのか。
 そして頭に引っかかるのは、千年リングというその単語。
「千年アイテム……か?」
『そういや、噂にはなってるんだってなァ』
 愉快そうな様子で、バクラと名乗った男が笑った。
 史上最強の使い手として語り継がれるキング・オブ・デュエリスト、武藤遊戯。
 千年パズルと呼ばれる特殊なアイテムを持った彼の戦いには、常に同じ千年アイテムの存在が付きまとっていた。
 超古代の遺産の力によって繰り広げられる、人知の及ばぬ壮絶な激闘――通称、闇のゲーム。
 誰が語り出したのかは今や知る者はいない。ともかくも、確かにそんな都市伝説が存在していた。
 現に万丈目も、それを騙る敵を目の当たりにしたことがある。
 そして今まさに、千年の名を冠した謎のアイテムが、こうして姿を現した。結び付けられるのは必然だ。
『安心しな。ビビるこたぁねえ。俺様は宿主サマの味方だぜ?』
 どこまで信じていいものか。
 この狡猾にして残忍な気配を漂わせる男の笑みを。
 とはいえ、このままこの千年リングを外してしまうのも惜しい。
 これが本当に古の千年アイテムならば、戦う力の足しにはなってくれるはず。何より重要なのが、その人格。
 万丈目は頭脳を手に入れたのだ。いざ何かを考える時に、共に思考してくれる頭脳を。
 こいつがどこまでの知能を持っているのかは知らないが、参考意見くらいは出してくれるだろう。
『まぁ何にせよ、まずは残りの支給品を見ておいた方がいいんじゃねえか?』
 さっそくバクラは、万丈目にそうした意見を出してきた。
 ついぞデイバックの存在を失念していた万丈目は、我に返ってバッグへ手を入れる。
 取り出されたのは、まずは地図や食糧などの基本的な支給品一式。名簿と一緒にあったものだ。
 そして最後に取り出されたのは、何やら黄緑色のケース。
 説明書のようなものが付属しており、そして本体には、そこから何かを引き抜くための穴がある。
 手を伸ばすと、触れたものは紙の感触だった。
「俺の知らないカードゲームか……」
『そういや、宿主サマもデュエルモンスターズをやるんだってな』
「何故知ってる?」
『お前の記憶は俺様に筒抜けなのさ』
 こめかみを拳骨でつつきながら、バクラが言った。
 そうしてからかう少年をひとまずは無視し、万丈目は説明書のページを開く。
 曰くこのカードデッキなるものは、ミラーモンスターなる物の力を借りて、仮面ライダーという戦士になるための装置らしい。
 強化服を纏い、カードの力を駆使して戦うファイター。それが仮面ライダーだ。
 無論、タダで力を借りられるわけではない。まず変身するためには、鏡のような物が必要となるのだという。
 そして更に、モンスター――このデッキの場合は「バイオグリーザ」というらしい――への対価が必要となる。
 仮面ライダーの力を得るために、モンスターに捧げなければならない対価は、
「!? 生きた……参加者だとっ!?」
 すなわち、人柱だった。
 そこに書かれたルールはこうだ。
 ・12時間に1人、契約モンスターに「生きた参加者」を喰わせないと所有者が襲われるようになる
 ・参加者を1人喰わせると猶予が12時間に補充される。猶予は12時間より増えない
 ・変身や契約モンスターの命令を1分継続させる毎に10分の猶予を消費する
 ・猶予を使い切ると変身や命令は解除され、契約モンスターに襲われるようになる
 ・所有者が自らの意識でカードデッキを捨てると契約モンスターに襲われる。無意識、譲渡、強奪は適用外
 はっきり言って無茶苦茶だ。これでは自分は、12時間に1人ずつは、必ず人を殺さなければならないということではないか。

261 :コピーベントの罠! ナンバーX危うし ◆9L.gxDzakI :2008/08/05(火) 16:47:02 ID:/RamN3HK
『――ちょうどいいじゃねぇか』
 頭の中で、またあの声が呟く。ぞっとするような悪意の言葉を。
「な……なんだとっ!?」
『殺し合いに乗った連中がいたら厄介だろ? お前を襲って、殺そうとするかもしれねぇ。
 だがそいつらを餌にしちまえば、命は助かるし邪魔者もいなくなる。まさに一石二鳥じゃねえか』
 くっくっと嫌な笑い声を漏らしながら、バクラは言葉を並べていく。
 やっぱりだ。やっぱりこいつは悪しき存在だった。
 人殺しを行うことに何の抵抗もない。顔色ひとつ変えることなく、あの残忍な笑みを浮かべている。
「そんなことができるか!」
『おいおいそりゃねえぜ宿主サマよぉ。これは殺し合いのゲームだぜ?
 人が人を殺し血で血を洗う、糞溜めみてぇな地獄絵図。阿鼻と叫喚の木霊する、狂気と絶望のデスゲーム。
 極限のスリルと快楽に満ちた、これ以上ねぇってくらい素敵なゲームじゃねえか! だったら楽しまなきゃ損ってもんだろうが!』
 狂っている。
 頭の中で高笑いを上げながら、両手を広げて叫ぶバクラに対して、万丈目は苦々しげな表情を浮かべた。
 人殺しをいとわないどころではなかった。こいつは人殺しを楽しんでいるのだ。
 誰かを傷つけいたぶることに快感を覚えるような、そんなどうしようもない奴だったのだ。
「だが……殺人は犯罪だ」
『こんな所に法だの罰だのみてぇな、まともなルールなんざ意味ねえよ。このシチュエーションそのものが狂ってるんだからなぁ』
 だからお前も狂ってしまえと。狂ったルールには狂って従えと。
 ためらうことなく人を殺せ、と。
 悪魔のような声が囁く。
 そんなことできるはずがない。人が人を殺すなど、許されるはずがない。人類同士には生存競争の理屈など存在しない。
 だが、このカードデッキはどうする。これがある限り、自分は人を殺し続けなければ生きられない。
 いっそ誰かに渡してしまうか。いや、そんなことは論外だ。そうすればその人間がカードの呪縛に囚われる。
 ならば開き直って、この身をモンスターに捧げるか。冗談じゃない。誰だって死ぬのは嫌だ。
 ではこの状況をいかにして打開するか――
『……おっと』
 と、不意にバクラが呟く。さながら何かに気付いたように。
「どうした?」
『気をつけな。どうやら宿主サマが馬鹿みたいに叫んだのを聞きつけて、お客さんがやってきたらしいぜぇ……?』
 口にした物騒な言葉とは裏腹に、バクラの声はさぞ楽しそうに響いていた。
 張り詰める緊張。冷や汗が伝う。
 やがて聞こえてくる靴音。かつり、かつり、と。果たして来訪者は敵か味方か。
 ややあって姿を現したのは、1人の銀髪の少女だった。それも小さい。
 まだまだ10代に達するか否かといったところだろう。その片目に当てられたのは漆黒のアイパッチ。
『ありゃあ敵だぜ』
 バクラの声が響く。
「馬鹿な! あんな小さな子供だぞ!?」
『よく目を見てみな。据わってやがる。いっちょ前のチャイルドソルジャーの目だ。ついでにあの服装は多分戦闘服……もう分かるな?』
 確かに彼の言う通りだ。
 金色の隻眼の視線は鋭い。どことなく殺気のこもった目で、こちらを見つめている。
 そしてその身体を覆う青いフィットスーツは、普通の衣服とは到底思えない。
 すなわち、戦う気満々の姿。それどころか、今まで散々戦いを続けてきた兵士の姿。
 いきなり敵と相対したというわけか。しかも一般人の自分と違い、戦い慣れている相手と。
 前方では人殺しが睨みを聞かせ、後方からは人殺しが誘惑する。万丈目準の状況は最悪だった。

262 :コピーベントの罠! ナンバーX危うし ◆9L.gxDzakI :2008/08/05(火) 16:47:56 ID:/RamN3HK


 戦闘機人ナンバーX・チンクが行動を再開したのは、今からほんの少し前のことだった。
 万丈目の聞きつけた轟音――高町なのはのディバインバスターを受けた身体も、徐々に動くようになってきた頃。
 さて、自分はこれからどうするか。
 あの幼いなのはが向かった方向は分からない。砲撃に目をふさがれた結果、完全に見失ってしまった。
 なら何を目印にして動けばいいだろう。どこに行けば妹達を救え、ターゲットを確保できるか。
 枝に埋もれた身体をゆっくりと起こしながら、チンクはしばし思案する。
 そんな彼女の行動を決定づけたのは、

「……ぬぅあああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!!!!」

 この、バクラ曰く「馬鹿みたいな叫び」だった。
 砲撃の爆音にすら勝るとも劣らぬ大声に、一瞬チンクはびくりと身体を震わせる。
 今の声は一体なんだったのか。妙に悲痛な叫びだったが、誰かが殺されでもしたのだろうか。
 いずれにせよ、近くに参加者がいるのは理解できた。同時にこのゲームの前提を思い出す。
 開始から24時間で1人も死者が出なかった場合、ゲームは即座に中断される。
 全ての首輪が爆破され、全ての参加者が死亡し、強制的にゲームオーバーだ。
 なのはを24時間以内に見つけ出せる確証はない。ならば早いうちに行動を起こした方がいい。
 そもそもああいう声が上がったということは、近くに殺し合いに乗った人間がいるということだ。
 それを始末することは、同時にクアットロやディエチを襲う可能性のある人間が、1人減るということに繋がる。
 方針は決まった。声のする方へ行き、その場にいる人間を抹殺する。
 未だ微妙に痛みと疲労の抜け切らぬ足を動かし、チンクは森を進んでいった。
 それなりに距離はある。歩いていくうちに、受けたダメージも回復していった。
 そして目の前に生い茂る木々が姿を消し、荒れ放題の廃墟が目に移る。確か地図に記されたエリアのはずだ。
 そこで待っていたのが、黒コートを羽織り、首には悪趣味なリングをぶら下げた男。
 しかも、こちらを警戒している。
 決まった。
 こいつは敵だ。
 デイバッグへと手を突っ込み、そこから工具セットを取り出す。
 そこから選んだのは、鍋やフライパンに比べれば扱いやすいドライバー。
 もう先ほどのようなミスは犯さない。こいつで確実に息の根を止める。
 黄金の隻眼が、獲物を真っ向から睨みつけた。



「何だ、あれは……?」
 一方の万丈目は、そうしたチンクの意図を理解することができなかった。
 何故奴は、おおよそ殺し合いには使えなさそうなドライバーなんてものを握っている。
 まさかそれを自分に向けて、「ボルティングドライバー!」とか何とか言って衝撃波でも放つつもりなのだろうか。
 いやいや、考えすぎだ。それはいくら何でも突拍子もなさすぎる。では、あれを何に使うつもりだ。
『気をつけろよ宿主サマ。ありゃあなんか仕掛けがありそうだぜ』
 冷静なバクラの声。だが、そんなことは万丈目も薄々察知している。問題はそれが一体いかなるからくりなのか、だ。
 ひゅん、と。
 唐突に目の前で投げられる、金属製のドライバー。
「ランブルデトネイター」
 チンクの呟き。身をかわす万丈目。響き渡る炸裂音。
 それら3つの現象は、ほとんど同時に発生していた。

263 :コピーベントの罠! ナンバーX危うし ◆9L.gxDzakI :2008/08/05(火) 16:48:46 ID:/RamN3HK
「ばっ、ばば……爆発しただとぉ!?」
 驚愕に目を見開きながら、万丈目はひたすら逃げ回っていた。
 なおもチンクの指先から弾き出される、細かなビスやナットの数々。
 そしてそれらが全て、次の瞬間には大音量の音と必殺の熱量へと変化する。
『どうやらアイツは爆弾使いか何かみてぇだな』
 戦局を万丈目の心の中から悠々と見つめながら、バクラが呟いた。
 先ほど投げ出されたドライバーは、突如万丈目の目と鼻の先で爆発したのだ。
 そして今の攻撃も同じ。飛んでくる工具全てが、爆発物となって襲い掛かってくる。通常では有り得ない光景。
 故に目の前の少女もまた、魔法使いと同じような超人と判断する。
『さぁどうする宿主サマ? こりゃさっきのカードを使わなきゃ死んじまうぜぇ?』
「だが、それは……っ!」
 悪魔の囁きを耳に受けながら、万丈目は苦悶の表情を浮かべる。
 確かにこの状況、武器もなしに切り抜けられるはずもない。だがここで時間を消費すれば、それだけ己が死期も早まる。
 ミラーモンスターの猶予期間が短くなる――すなわち決断を強いられるのが早くなるということ。
 この呪いのアイテムをどう扱うか。誰を殺すか、もしくは殺すことなく死ぬか。
『後から考えるのと考える前に死ぬのと、どっちがいいと思ってるんだ?』
 そこへ追い討ちのように、バクラの声がかけられる。
 確かにその通りだ。ここで死んでしまえば元も子もない。そうした選択を考える間すらなくなってしまう。
 ならば、ここはこいつに従って、生き残るためにカードを使うしかないのか。
「……しかし、鏡はどうする」
 観念したように万丈目が呟く。だが、まだ問題はあった。
 仮面ライダーの力を使うための手段――カードデッキをかざすべき鏡はどこにある。
『鏡“のようなもの”だったら、ここにあるぜぇ』
 にぃ、と。
 バクラの顔に、より一層獰猛な笑顔が浮かべられる。
 反射的にカードデッキを取り出す万丈目。緑色の長方形がかざされる。
 自らの胸へと。そこに光る、黄金色のリングへと。
『ピッカピカに磨き上げられた千年リングがよぉ!』
「――変身ッ!!!」
 瞬間、荒廃した世界に光が満ちた。
 万丈目の身体が変異する。カードデッキの色と同じ、緑色の鎧を纏う。
 ところどころが銀と真紅で彩られた、毒々しささえ感じられる魔人の姿。
 ぎょろりと輝く巨大な瞳は、さながらカメレオンを彷彿とさせる。
 これぞ、カードデッキの持つ力。ミラーモンスターの力を受けた、戦うための緑の鎧。
 ――仮面ライダーベルデ。
「姿が変わった?」
 ふと、目の前のチンクが微かな驚愕と共に呟いた。
 無理もないだろう。万丈目自身すらも驚いている。まさかここまで劇的に変化するとは思わなかった。
 ともあれ、強化服であることには変わりないらしい。身体中に力がみなぎってくるのが分かる。
 反撃の時間だ。ベルデと化した万丈目は、力強くアスファルトを蹴った。
 スピードが上がっているのが分かる。体力馬鹿の剣山より速い。常人には到底到達し得ぬ加速力。
 一直線に駆け抜ける。振り上げられる拳。みるみるうちに距離が詰まっていく。
 そして、反逆の一撃が少女へと叩き込まれる数秒前。
「……ぐわあぁぁっ!」
 しかし、爆発。
 万丈目がその間合いにチンクを捉えるよりも早く、次なる工具が命中していたのだ。
 さすがは仮面ライダー。その装甲は、人間なら一撃で吹き飛ぶ破壊力から、ちゃんと彼の命を守っている。
 それでも、痛い。ノーダメージとはいかなかったらしい。
 続けざまに投げ込まれる爆弾達。バールが、ペンチが、ハンマーが。次から次へと炸裂する。
 さながら弾幕のように展開されたそれらは、目の前の極彩色の外敵を一歩も寄せ付けなかった。

264 :コピーベントの罠! ナンバーX危うし ◆9L.gxDzakI :2008/08/05(火) 16:49:58 ID:/RamN3HK
『おいおい! 全然駄目じゃねぇか!』
 呆れたようなバクラの声が上がる。
「くそっ、何か武器は!? 千本ノックとかみたいな必殺技はないのか!?」
 一方の万丈目は、次々と飛び道具が襲い掛かる現状に、完全にいっぱいいっぱいになっていた。
 いくらベルデに変身したとはいえ、今の彼には拳と脚しか武器がない。
 対してチンクの方は、こちらのレンジ外から自在に爆弾を投げ込める。
 どれだけ身体能力が強化されようと、届かなければ意味がない。つまり、万丈目不利の情勢に変化なし。
(これで本当にデュエリストかよ)
 ふと、そんな思考がバクラの脳裏に浮かぶ。
 少し考えれば分かることだ。今腰のベルトに収まっているカードを使えば、何かしらのサポートが得られるということに。
 飛び道具があれば万々歳だし、それがなくとも、状況を打開できる方法は思いつくだろう。
 まったく、なんでこんな単純なことに気付かないんだ。
 内心でバクラはため息をついた。
 しかし、それを万丈目に要求するのは酷なことだ。
 彼はこういう直接戦闘を体験したことがない。暗黒の破壊神ゾークの眷属であり、盗賊王の記憶と経験を持ったバクラとは違う。
『チッ!』
 それを知ってか知らずか、バクラは忌々しげに舌打ちをする。
『俺様に代わりな!』
「何っ!? それは一体どういう……」
 瞬間、万丈目の意識は暗転した。



 チンクは奇妙な違和感を感じていた。
 先ほどから目の前の男が、どこかにいるであろう何かとしきりに話していたことは分かる。
 独り言ではないだろう。気が狂っているとも考えられない。
 そもそも本当に頭がおかしくなっていたのなら、あの強化服を身に着けるという選択肢は取れなかった。
 ともあれ万丈目は先ほどから、ちゃんと誰かと会話を行っていたのだ。
 それがたった今、突然その言葉が途切れた。
 こんな不自然な言葉の切れ方は、これまでのやりとりの中には存在しない。
 見ればベルデの鎧もまた、会話と同時にその足さえも止めている。
 何が起こった。まさか気絶したか。
「――よぉ嬢ちゃん、悪いがここで選手交代だ」
 不意に、目の前のカメレオン男が口を開く。
 同じ声。同じ装備。同じ体格。
 だが、違う。何かが変わっていた。
 違う声色。違う仕草。違う態度。
 そこから想定される事象は――
(二重人格か!)
 この男は、1つの身体に2つの意識を持っている。先ほどまでの会話の相手はこの人格で、恐らく表に出る役が交代したのだろう。
 そして今の人格は、さっきの人格とは明らかに雰囲気が違う。戦い慣れしている。おまけに残忍だ。
 急激にその濃度を増していく殺意を肌で感じながら、チンクは目の前のバクラへ最大限の警戒心を払った。
(さて、と……どうやら念じれば、大体どんなカードが使えるのか分かるみてぇだな)
 一方のバクラは、己が思考を腰のカードデッキへと飛ばす。
 果たしてこの仮面ライダーとやらが、いかなる能力を有しているのか。
(……へぇ……だったら話は早ぇ)
 にやり、と。カードの確認を終えた後、仮面の下で、バクラの意思を宿した万丈目の顔が不敵に歪む。
 ぎらりと輝く凶悪な瞳。マスク越しに、チンクに向けて獰猛な視線を向ける。
 手札は分かった。タクティクスも組み上げた。ベルデの身体能力なら実行可能。
 すなわち、それが導き出す結論は、
(俺様の勝ちだ!)

265 :コピーベントの罠! ナンバーX危うし ◆9L.gxDzakI :2008/08/05(火) 16:51:05 ID:/RamN3HK


「さぁ来いよちびっこ! テメェのご自慢の爆弾なら、この俺様を吹き飛ばせるんだろ!?」
 バクラが大手を振ってチンクへと吼える。
 明らかな挑発。嘲笑を込めた、見え透いた誘い。チンクの思考が一瞬揺らいだ。
 果たして自分は、あいつにこのまま攻撃を仕掛けていいのだろうか。突如そんな不安が、彼女の胸にこみ上げてきたのだ。
 ああして誘っているからには、何らかの罠がある可能性も考えられる。仕損じるようなことになってはまずい。
 だが、無視もできない。どの道攻撃しなければ、人を殺すことはできないのだ。
 大体あの鎧には、遠距離への攻撃手段はないではないか。ならば今さら何ができる。
「言われるまでもない」
 結果、チンクが選んだのは攻撃。迷うことなく、攻撃。
「はっ!」
 小さな気合と共に、バッグから取り出したフライ返しを投げ飛ばす。
 一方のバクラは、沈黙。不気味なまでに沈黙。その場から動くことなく、じっと目の前の凶器を見据えている。
 次の瞬間、轟音。
 フライ返しが空中で炸裂し、猛烈な熱量の爆発を巻き起こした。
 燃え上がる爆炎。巻き上がる爆煙。一瞬、ベルデの姿が炎と煙によって掻き消える。
 そしてややあって、それらが晴れた瞬間。
(いない!?)
 そこにあの緑の仮面ライダーの姿はなかった。
 どういうことだ。奴は一体どこへ消えた。
 完全に蒸発した、というわけではないだろう。せめて焼死体だけは残るはずだ。
 いやそもそも、あの堅牢な装甲は、まだまだ崩れるとは思えない。
 つまり、姿をくらましたということだ。
 炸裂からの時間からして、そう遠くまでは行けないはずだ。回避するためにしても、逃亡するためにしても。
 しかし、その気配はどこにもない。戦闘機人のレーダーにさえも、影も形も映らない。
「――盗賊ってのは、まずお宝の番人から姿を隠さなきゃいけねぇ」
「っ!」
 不意に耳元にかけられた声。反射的に、己が左側へとビスを飛ばす。
 しかし、空振り。そこには人っ子一人いない。
「そして誰にも気付かれないうちに、素早く目当てのもんを懐に隠す」
 びゅん、と。風を切る音がした。
「なっ!?」
 気付いた時には、何かがチンクの胴体に巻きついていた。
 紐と金属で構成されたそれは、例えるならばヨーヨーと呼ばれるおもちゃか。
 ベルデの目玉を模したようなそれが、チンクの身体を縛り上げている。
 突然、細身にもかかわらず剛健な紐の先に現れる――仮面ライダーベルデ。
 驚愕に隻眼が見開かれる。
 これぞアドベントカードの1枚・クリアーベント。目視、レーダー、サーモグラフ。あらゆる索敵手段から逃れる、究極の迷彩。
 カメレオン型モンスター・バイオグリーザを従えたライダーであるが故の力。
「盗賊の仕事は、もちろん盗むことだ。だったら俺様の最後の仕上げのこのカード、どんな効果か……分かるよなぁ?」
 ベルトから引き抜かれる新たなカード。左の太ももに装着されたカメレオンが、その舌によって口の中へと巻き取る。
 瞬間、ベルデの姿は激変した。
 銀の長髪。漆黒の眼帯。黄金の隻眼。青いフィットスーツ。18歳の男子にしては低すぎる身長。
 今、囚われとなった戦闘機人の少女の目の前に。
(私が……いる……!?)
 チンクと全く同じ顔をして、全く同じ声をして。
 絶対にしないタイプの笑顔と、絶対に発しないタイプの声音の共に。
「――俺様がランブルデトネイターを使えるってことさ!」
 瞬間、猛烈な爆発音が廃墟に木霊した。

266 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/05(火) 16:55:57 ID:7+mp5XCj


267 :コピーベントの罠! ナンバーX危うし ◆9L.gxDzakI :2008/08/05(火) 17:00:05 ID:/RamN3HK


 戦場に立っていたのは、元の仮面ライダーベルデの姿。
 チンクは無様にアスファルトに倒れ伏し、荒い息と共にバクラを見上げている。
 その身体の様子は、まさしく無惨の一言だった。
 身体に密着された状態ででヨーヨー――ホイールベントを爆破されたことにより、その全身はまさしくぼろぼろ。
 特に悲惨なのは胴体だ。ナンバーズスーツがずたずたに引き裂かれ、少女の柔肌は大火傷を追っていた。
 身体中から流れる真紅の血液が、いかに危険な状態かを物語っている。
 勝った。
 こんな状況で逆転など、できるはずもない。すなわち、自分の勝ち。
 バクラは歪んだ愉悦と共に、己が勝利を確信していた。
 であれば、これからすべきことはひとつ。あの生ぬるい宿主が黙っているうちに、こいつを生贄に捧げること。
「さて、と……じゃあ、これでさよならだな」
 嗜虐的な笑みを浮かべるバクラの口。
 仮面の先のチンクへと向けられる、残酷な快楽。
 さすがに何かまずいことが起こると察したらしく、チンクは虚ろになりかけた瞳を引き締めた。
 だが遅い。今からひとたび自分がバイオグリーザへと命じれば、千年リングから飛び出した魔物が彼女を食らうだろう。
 勝利者の持つ、絶対的な自信。
 ――その油断が判断を鈍らせた。
「んっ!?」
 途端、目の前で爆ぜる炎。
 鼓膜を轟音がつんざき、鼻先を陽炎があぶる。
 音と炎は連続して幾度となく巻き起こり、バクラの視覚と聴覚を完全に奪い去る。
 それらが発生してから再び視界が元に戻るまでには、それこそ彼にとっては悠久にも近い時間を要した。
 もうもうと立ち込める煙が晴れ、爆音の耳鳴りもようやく途切れてきた頃。
 しかし、そこに既にチンクの姿はない。
「逃げやがったな」
 舌打ちをする。
 先ほどの自分の手口とまるきり同じだ。
 それも手持ちの金属を次から次へと爆破させたことにより、煙幕の持続時間が長引いている。
 あれだけの重傷であろうとも、これだけの時間があれば、森に引っ込むことぐらいは十分可能だろう。
「だが……ひとつ見落としてるぜ」
 そして再び浮かぶ、あの凶悪な笑顔。
 見下ろしたアスファルトにぽたぽたと落ちていたのは、血痕。それが真紅の尾を引いて、そのまま森の中へと続いている。
 つまりこれを追っていけば、彼女に問題なく追いつけるということ。
 ベルデの変身を解除し、元の万丈目の姿へと戻る。
 仮面ライダーの力の反動だろうか、全身へと疲労感が襲い掛かった。だが、まだこの程度なら耐えられる。
 問題は変身状態を維持しすぎて、タイムリミットを早めることの方だ。
 それに変身せずとも、あとはこの千年リングによる念力だけでも、十分に決着をつけられる。
「逃がしゃしないぜぇ? 嬢ちゃん」
 不敵に笑うバクラの顔。それはすなわち万丈目の顔。
「……ヒャーッハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
 悪魔のような笑い声が、朽ち果てた残骸の中で響き渡った。

268 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/05(火) 17:00:37 ID:7+mp5XCj


269 :コピーベントの罠! ナンバーX危うし ◆9L.gxDzakI :2008/08/05(火) 17:01:22 ID:/RamN3HK
【1日目 深夜】
【現在地 D-8 廃墟】
【万丈目準@リリカル遊戯王GX】
【状態】バクラ憑依、疲労(中)
【装備】千年リング@キャロが千年リングを拾ったそうです
【道具】支給品一式、ベルデのカードデッキ@仮面ライダーリリカル龍騎、ルーテシアのカレー@闇の王女
【思考】
 基本 殺し合いには乗りたくない。仲間達と合流し、プレシアに報復する
 1.………(意識を失っている)
 2.明日香とは最優先で合流する
 3.できればカードデッキに生贄を捧げたくない
【備考】
 ※D-8に万丈目の絶叫が響きました。周囲に参加者がいた場合、気付いた可能性があります。
 ※千年リングを装備したことにより、バクラの人格が目覚めました。
  基本 このデスゲームを思いっきり楽しむ
  1.逃げたチンクを追いかけ、バイオグリーザの餌にする
  2.その後、可能ならばキャロを探す


 ふらふら、ふらふらと。
 たよりない足取りで、チンクはひたすらに森の中を歩き続けていた。
 道中で枝に身体をひっかけ続けた、その身体の状態は更に悪化している。
 全身に細かな切り傷が刻み込まれ、ナンバーズスーツはその平坦な乳房が半分露出しかけるほどに裂けてしまった。
 失血がひどい。もはや思考も判然としない。ろくに考えることもできやしない。
 可能なことは、あの煙幕の中で決めた行き先のみ。
 廃墟から北東にあると記されていた、父ジェイル・スカリエッティのアジト。
 そこならこの身体を治療することができる。そこなら新しいスーツを調達することができる。
 残念ながら、姉妹達の捜索は後回しだ。この体たらくでは、ろくに誰一人として救えまい。
 と、ようやく目の前の木々が開けてきた。
 恐らくその先にラボの入り口があるのだろう。元あった場所の形に忠実ならば、多分洞窟のような横穴が。
「――貴方、大丈夫っ!?」
 声。
 うっそうと生い茂る木々を抜けた瞬間、不意に女の声が飛んできた。
 霞んできた視界の中に、白と青に彩られた服装が飛び込んでくる。
 途端、身体中を襲う脱力感。同時に遠のいていく意識。どうやらもう限界らしい。
 味方でもない人間の手を借りるのは癪だが、ここは彼女に委ねるとしよう。
 少なくとも敵ではあるまい。でなければ、ああいう反応は取らない。
「……スカ……リエッティの、アジト……というしせ……つ、の……生体、ポッドに……私を……」
 自らの小柄な身体が抱きとめられるのを感じながら、チンクは切れ切れの言葉を紡ぐ。
「一体……誰にやられたの!?」
 女はそう問いかけていた。
 教えておくのも悪くはない。そうすれば、奴の存在を警戒してくれる。
 自分の命を預けるのだ。であれば、それぐらいの危機感は抱いてくれなければ話にならない。
 どうか犠牲になりませんように。あの凶悪で残忍な、緑の鎧を纏う少年に、と。
「黒い、コートに……黒髪の……おと、こ……――」
 チンクの意識は、そのまま奈落へと落下していった。

270 :コピーベントの罠! ナンバーX危うし ◆9L.gxDzakI :2008/08/05(火) 17:02:12 ID:/RamN3HK


 天上院明日香は混乱していた。
 いきなりわけも分からぬうちに人が殺され、そして自身も殺し合いに巻き込まれた。
 彼女の感想は、概ね万丈目のそれと一致する。
 殺し合いなど言語道断。まずは仲間達と合流し、そしてプレシアを打倒する。
 だが、そこから先が違っていた。
 彼女はプレシアの元へ向かう手段を見出せなかったのだ。
 なのは達の転移魔法の存在に気付かなかったわけではない。いや、むしろより深くへと思考を向けている。
 もしかしたらあのデュエルモンスターズ世界のように、ここでも転移魔法が使えないのではないか、と。
 明日香は万丈目よりも賢かった。しかしそれ故に道を見失い、途方に暮れていたのだ。
 そして、そこへ追い討ちのように現れる傷だらけの少女。
 全身をひどい火傷と裂傷にやられたチンクの姿は、明日香の冷静さを奪うには十分すぎた。
 反射的に駆け寄り、彼女の身体を抱きとめる。
 曰く、すぐ側にあった横穴から入れる施設を使えば、治療はできるらしい。
 しかし、チンクがもたらした衝撃は、それだけには留まらなかった。
 黒いコートに黒髪の男。
 それが導き出す存在は1つ。
「……どうして……万丈目君が、こんなことを……!?」


【1日目 黎明】
【現在地 C-9 スカリエッティのアジト前】
【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】全身火傷、全身裂傷、身体の幾つかに銃創(戦闘にそれほど支障はないです)
【装備】半裸のナンバーズスーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、工具セット、料理セット、翠屋のシュークリーム@魔法少女リリカルなのはA's
【思考】
 基本 姉妹と一緒に元の世界に帰る
 1.………(気絶中)
 2.姉妹に危険が及ぶ存在の排除
 3.クアットロに会い、制限の確認、出来れば首輪の解除
 4.Fの遺産とタイプ・ゼロの捕獲
 5.機動六課を警戒
【備考】
 ※制限に気がつきました
 ※幼なのはがクローンであると認識しました
 ※この会場にフェイト、八神はやてのクローンがいると認識しました
 ※ベルデに変身した万丈目(バクラ)を危険と認識しました
 ※料理セットは一人暮らしの人に向けて販売されている簡単な調理器具の一式です

【天上院明日香@リリカル遊戯王GX】
【状態】困惑
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品1〜3個(確認済み)
【思考】
 基本 殺し合いには乗らない。仲間達と合流し、プレシアを打倒する
 1.本当に万丈目君が、この子を殺そうとしたの……!?
 2.チンクをスカリエッティのアジトへと運び、治療する
【備考】
 ※転移魔法が制限されていることに気付きました
 ※万丈目にバクラが取り憑いていることに気付いていません

271 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/05(火) 17:03:05 ID:7+mp5XCj


272 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/08/05(火) 17:03:17 ID:/RamN3HK
投下終了。ゴメンナサイ、またバクラ出しちゃいました(ぇ
でもって龍騎ライダー枠最後の1つとして、ベルデのカードデッキを出させていただきました。
死霊召喚を彷彿させる人海戦術のインペラーとは、どちらにするか最後まで悩みましたが、
やはりえげつない戦法重視ということで、ベルデをチョイス。まぁ、一度もTVで見たことないから、完全に想像で書いたんだけどね!(ぉ

あと、万丈目の「千本ノック」というのは、忍風戦隊ハリケンジャーの6番目・シュリケンジャーとの声優ネタ。
ベルデと同じ緑色の戦士なので、松野声の万丈目がベルデになると、どうしてもそっちに見えてしまうw
そういえばバクラ役の松本さんも、龍騎のオープニング歌ってたんだよなぁ……

ともかくまた色々とはっちゃけてしまったので、何かまずいところがあったらご指摘ください。
タイトルは遊戯王第13話「メタモルポッドの罠! 炎の剣士危うし」より。

273 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/05(火) 17:35:18 ID:JKYGGf6w
仮面ライダーとバクラ……何という危険な組み合わせw
これは間違い無く美味しい(ロワ的な意味で)フラグ。
そして重傷のチンク姉はどうなるのか……GJです!

274 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/05(火) 19:58:13 ID:3tdR+56P
GJ
仮面ライダーバクラ…しかもベルデとなると、恐ろしい事になりそう…
というか万丈目wwwやっぱり三沢忘れてんのかよwww

275 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/05(火) 20:50:07 ID:7+mp5XCj
投下乙です。
なんというおいしい誤解フラグw
盗賊王にベルデとかwなにこの相性のよさw鬼に金棒状態。
万丈目サンダー、早く起きろー

あと気になった事。
ベルデの事は議論に出ているのでそれは置いておいて。
・明日香が『転移魔法が制限されていることに気付きました』と断定するのは流石に無理だと思います。
 あくまで可能性程度にとどめておく方がいいのでは。
・カードを使い方が念じて分かるのはどうなんでしょう。
 バクラも説明書を見ていたのほうが自然かと思いました。

276 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 18:55:46 ID:1cydpTGH
この話が通るかどうかは別にして、一つだけ指摘したい点が…

×ホイールベント→○ホールドベント

277 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 22:43:03 ID:Yn0yqfew
>>276
正確にはホールドベントで召喚したバイオワインダーが正しいらしい。

278 :なのは×終わクロ ◆WslPJpzlnU :2008/08/07(木) 20:30:49 ID:RSoAFpPd
新庄・運切の予約分が出来たので、投下します。

279 :なのは×終わクロ ◆WslPJpzlnU :2008/08/07(木) 20:33:30 ID:RSoAFpPd
 暗い夜だ、と新庄は思う。
 自分の周りに散らしたデイバックと支給品、そこに含まれる時計が深夜である事を示していた。
 淡い月光に黒い長髪が煌めく。同様に着込んだ装甲服もその白色を主張し、暗闇にその存在を主張していた。
 装甲服といっても、外見は白黒のボディースーツに金属製の骨子を付け加えた様な様相だ。ゴム製にも見えるロングスカートが腰部と接続しているが、一見した限りでは防護性があるようには見えなかった。
 だがその全ては概念によって防護効果を付加されており、外見に反して優れた防御力を有する現代の鎧だ。
 そして、厚手の軍用手袋をした両腕は一丁の狙撃銃を構えていた。鈍く照る黒い外装からは細長い銃身が伸びており、その基部には逆さまになった二等辺三角形のコンソールが備わっている。
 機体と並行に伸びた銃床を肩に当て、右手でグリップを、左手で機体下部を握りこんでいた。そして機体に添えられたスコープに右目を押し当てている。
 しかし、新庄の構えは、狙撃銃のその機能を行使するには欠くものがある。
 まず第一に解る事は、伏せていない事だ。狙撃を望むなら、伏せて地面との接着面を増やすなり、銃身を建造物の外縁で固定するのが基本である。だが新庄はそれをせず、直立した状態で背を丸めて銃を構える、不格好な姿勢をしていた。
 そしてもう一つ、決定的に欠くものがある。
 グリップを握った右手、その人差し指が引き金に掛けられていない事だ。
 戦意の無い戦闘態勢、不完全な狙撃姿勢のまま銃口は周回する。
 右から、次第に、左へ。
 それは狙撃ではなく、望遠鏡で周囲を確認しているかのようだった。
 事実、新庄が立つのは望遠鏡が備えられていても可笑しくない、高層ビルの屋上だ。
 白みを帯びた長方形の建造物、壁面には窓硝子を整列させ、屋上外縁には落下防止のフェンスが突き立っている。フェンス越しに見える風景は、このビルほどではないものの、高層ビルと呼ぶに足りる建物の密集地帯だ。
……地図にある、ビル密集地って事だよね……
 先ごろに確認した地図、その中央部に描かれていた地域の事を新庄は思い返した。そして、狙撃銃によって確認した景色によって現在位置も把握済みだ。
 把握の鍵は、新庄の居るビルにも匹敵する超高層ビル。このビルに反して色黒の印象を受けるそれは、山林地帯を背景にしていた。
……あれが、地上本部っていう所なんだよね……?
 地図にも特記事項として記された施設。それとの位置関係や同等の規模である事から、新庄が推測する現在位置の名は、
……スマートブレイン本社ビル……
 その屋上に自分は居るのだ、と新庄は判断している。
 そうして周囲を一通り確認して、新庄は狙撃銃を下ろした。
「……はぅ」
 まだ見ぬ環境の確認と、それなりの重量がある狙撃銃を不完全な体勢で構える事、その両方を完遂して新庄は浅く息を吐いた。
 膝を曲げて尻を下げ、狙撃銃から離した左手を接地させて支えにしつつ、座り込む。そうやって座り込んだ後は、親指と人差し指で疲労の溜まった眉間を揉んだ。
「どうでしたか?」
 不意に新庄は問いを放つ。目は天上を仰ぎ瞬かせており、話し相手を見ていない。
 まるで、話し相手が傍にいるかのように。
 しかし新庄の周囲に人の姿はない。ビルの屋上は新庄を除いて、無人だ。問いかけは明後日の方向に放たれ独り言で終わる、かに思われた。
 だが、 
『ビンゴ、ですね』
 答えは返ってきた。
 声はやや低めの女性のもので、しかし肉声ではない。同じ声が二重になって聞こえるような、電子音の混じった声だ。
 その声は、狙撃銃のコンソールが点滅するのに同期していた。
『予想は当たっていましたよ、新庄』
 ストームレイダー、そう呼ばれた狙撃銃は新庄に吉報を告げる。
……良かったぁ……
 思った途端、肩が緩んだ。気の綻びに自然と頬の力が抜け、脱力するような笑みが新庄に浮かぶ。
 そして気色の微笑みと共に、新庄はストームレイダーへと目を向けた。
「やりましたね、ストームレイダーさん! これで当面の目的と……希望が持てました」

280 :空への翼 ◆WslPJpzlnU :2008/08/07(木) 20:34:37 ID:RSoAFpPd
 小さくはしゃぐような様子でかけられた声に、そうですね、とストームレイダーは控えめに答える。
 自分と同様に喜色を感じつつも、それとは別に何か思うところがあるようなその様子に、新庄は小首をかしげた。
『……新庄、喜ばしい状況の所に、余り茶々を入れたくはないのですが……』
 押し堪えるようなストームレイダーの声に、びくり、と新庄の肩が震えた。
 何かいけない事したかなぁ、と思いつつ、
「な、なんですか? ストームレイダー……さん」
『それです』
 問い返しに断言がなされ、一際大きく肩が震える。
『良いですか新庄? 私はデバイス、貴女に与えられた貴女の武装なのです。それに敬語を使う必要はありません』
 道具に注意される女、新庄。
……やっぱり武器型になる人って、考え方も格式ばってるのかなぁ……
 人じゃないけど。
 少し偏見だけど。
 とか付け加えつつ。
 慌てて新庄は抗弁に励む。
「で、でも、あのね? ボクの知ってるデバイスって、ストームレイダー……さんみたいのじゃなくて…こう、道具としては扱い辛いというか」
『それなのですが、本当に新庄のところのデバイスは、全て自我を持たないのですか? 確かに私の知るデバイスもそういうのは多いのですが……』
「うん。僕の知ってるデバイスっていうのは……概念を使うための機械で、自我を持つのは極少数って聞いてるよ」
『……概念、ですか』
 新庄の放った単語にストームレイダーは押し黙った。深慮するような様子で、再び問うた時もまだ疑問を引きずって、喋る。
『それが、またよく解らない単語ですね。何というか、正に概念的で要領を得ないというか……』
 ごねる様に呟いて。
『一定の空間に新しい物理法則を加える、という認識で良いのですか?』
「そんな感じ、かな? それだけって訳じゃないんだけど」
 概念。
 数ある異世界が固有に持つ、物理法則の原因。
 空間に加えれば、その範囲に。
 道具に加えれば、その機能に。
 それが示す力を発揮させる、特殊能力の結晶。
……概念を知らないデバイスっていうのも、何か不思議な感じ……
 ストームレイダーが言うには、彼女のいたところでは、デバイスは魔力という力を消費して魔法を起こす機械であったらしい。自分たちがGと呼ぶ、かつて滅びた異世界群の他にも異世界はあったのだろうか、と新庄は思う。
 この奇妙な協力者を得たのは、ほんの数十分前だった。
 突如として連れ込まれた、殺し合い。
 縛られ。
 脅され。
 見せつけられ、た。
 逆らい殺された少女を。
 少女を殺した女性、プレシアは、それを新庄達にも行なえと命じ、否応もなく新庄をこの場へ送り込んだ。
 原理不明の転移が為され、このビル屋上に飛ばされ、新庄が最初に行ったのは名簿の確認だった。
 巻き込まれてほしくない、少年がいたから。
……佐山君……

281 :空への翼 ◆WslPJpzlnU :2008/08/07(木) 20:35:36 ID:RSoAFpPd
 出会い、まだ一日にも満たない少年。
 なのに、何故か意識してしまう少年。
 幸いにも名簿に彼の名は無く、彼はここにいないようだ、と新庄は判断した。
 ほ、と我知らずと息が抜け、新庄は名簿を仕舞おうとした。気づけば辺りにデイバックの内容物が散らかっており、ずいぶんと慌てたんだな、と自分を思い。
 そして出会ったのがストームレイダーだ。
 正確には、見つけた、という方が正しかったが。
……認識票が喋るとは思ってなかったもんなぁ……
 散らかった道具の内の一つに、何の役に立つのかと疑問に思う、認識票が混じっていた。
 ひょっとして自分が死んだ時の為か、と恐る恐る摘み上げ、しげしげと見つめた時に声をかけられた。
……うっかり取り落としちゃったりして……
 それでしばらくは微妙に怒ってた気もしたけれど。
 とりあえずストームレイダーの言われるがままに彼女を起動させ。
 ストームレイダーは、認識票から狙撃銃への奇跡の変身を遂げた。
……貴女の助けになります、か……
 助けます。
 起動したストームレイダーが最初に言った言葉。
 それを聞いた時、新庄は不覚にも、
……泣いちゃったもんなぁ……
 殺し合いに呼ばれ。
 目前で人が死んで。
 自分も強要されて。
 そして出会った不思議な機械の、その言葉。
 それを受けて、新庄は緊張を途切れさせてしまった。
……困ってたもんなぁ、ストームレイダーさん……
 それはそうだろう、とも新庄は思う。
 齢十七になる大の女が、恥ずかしげもなく泣き喚けば、そりゃ扱いにも困る。
「……うぅ」
 思い出された自分の醜態に、自然と頬が熱くなった。
『新庄? どうかしましたか?』
「ふぁ、ふぁいっ!?」
 不審げなストームレイダーの問いの問いに、新庄は間の抜けた返事をする。
 ただいま現在時間。
「な、なんでもありませんですよっ!?」
『……ではどうして疑問形なのですか……』
 あきれた様子のストームレイダーにどうもばつが悪くて、新庄は話題を進める事にした。
「それで、ストームレイダーさんの言ってた物はあったんですよね?」
「……ええ、まあ」
 話題をそらした新庄に、ストームレイダーは胡乱げな返答。彼女に目があったらきっと半目だったろうな、と新庄は思いつつ、
「――704式ヘリ、っていう、ストームレイダーの載ってたヘリコプターは」
 探していた、それの名を告げる。
「機動六課隊舎、だっけ? ストームレイダーの言ってた施設って」
『はい。先ほど名簿と共に確認した地図上にあったのですが……たった今、新庄の協力で実際でも確認でいました』
 スコープを、と促され、新庄は再びストームレイダーのスコープに右目を押し当てる。
「座ったままでも見えるんですか?」
『位置はもう特定しましたから。私の誘導に添って視点を動かして下さい』
 スコープに当てた右目が、円形に区切られた風景を捉えた。それはスコープの機能により、深夜にあっても正確かつ拡大された立地を映す。
 と、円形の風景に赤い矢印が投影された。
……これが誘導、かな?

282 :空への翼 ◆WslPJpzlnU :2008/08/07(木) 20:36:11 ID:RSoAFpPd
 スコープの表示した矢印に従い、示された方向へと新庄はストームレイダーの先端を動かす。そして視点の位置調整を終えると、次は自動で望遠機能が作動し、一つの施設を新庄に確認させた。
 それは背の低い、引き換えに奥行きのある建造物だった。
 高さにして五階程度、しかし左右に広い構造になっており、前面には湾岸、背面には広大な庭とヘリポートが広がっている。
 そしてヘリポートには、闇夜に馴染む深緑のヘリコプターが鎮座していた。
……あれが704式ヘリ……
 輸送用というその機械は、無骨な作りをしていたが大型であり、相応の物資や人員が運べる事を新庄に悟らせる。
 目的を再確認した新庄はスコープから目を離し、ストームレイダーを下げた。
 と、
『私の本来の主は』
 不意にストームレイダーが語りだした。
『彼は、あれを駆って仲間達を事件現場に運ぶ仕事についていました。私自身も、機体に組み込まれ補佐をして』
 その言葉に新庄は少し驚く。
「じゃあ、狙撃銃の形態は使ってなかったんですか?」
 狙撃銃という攻撃的な形態を持つストームレイダーだから、新庄は本来の主は戦闘要員なのだと思っていた。
 新庄の率直な問いにストームレイダーは、
……え……?
 無言で答える。
 それも言葉に詰まったのではなく、語らない、という意味のある意味のある沈黙だった。
『……えぇ』
 そうして告げられた答えよりも。
 それまでの間の方が重要に思えて。
 新庄はそれ以上聞くのを止めた。
「ともあれ、ストームレイダーがいればあのヘリを動かせるって事ですよね」
 本題へと逸れて、それをストームレイダーがどう思ったのかは解らない。
 ただストームレイダーは、沈黙を抜いて回答を告げる。
『……そうですね。操縦の履歴は残っていますし、簡単な飛行と離着陸ぐらいなら出来ます』
「十分だよ」
 ストームレイダー自身は完璧ではない事に、少し言いにくそうな様子だったが、新庄にしてみればそれで事は足りた。
 うん、と一人頷き、新庄は意気込む。
 だがストームレイダーは、新庄ほどに楽観視はしていないようだった。
 音声以外に意志表示ができない筈のデバイスから、新庄は一つの感情を如実に得る。
 不安、その一語。
『しかし新庄、704式ヘリを動かすには、私が継続的に待機状態で組み込まれている必要があります』
 それを皮切りにしてストームレイダーは懸念を続けた。
『その間、貴女はどうするのですか? 私以外に、貴女には武器は支給されていないのでしょう?』

283 :空への翼 ◆WslPJpzlnU :2008/08/07(木) 20:37:02 ID:RSoAFpPd
 どうやって生き伸びるのか。
 どうやって身を守るのか。
 どうやって、戦うのか。
 そう、訊かれて。
「――戦わないよ」
 答えは一言。
 言い聞かせるように。
 彼女にも。
 自分にも。
「ボクは誰も殺さないし、誰にも死んでほしくない」
 だから。
 手に入れる。
 殺さず、死なさず、戦わずに済ます、道具を。
「この殺し合いに巻き込まれた人たちを、助ける為に。……ストームレイダーは704式ヘリにたどり着くまでの自衛手段になってくれれば良いんだよ」
 言葉を返して、返されることはない。ストームレイダーは黙したままで、言った新庄に、自分の顔を見る事は出来ない。
 しかしストームレイダーの、目のない彼女の注目が自分の顔に向けられていて。
 何かが。
 伝わる何か、が。
 あったのかな。
 とか思う。
『解りました』
 そして、ストームレイダーは答えた。
 解りました。
 判りました。
 分かりました。
 と。
「殺し合いに乗らない、乗らない人達を助ける。…それは、私としても望むところです」
 笑みとか、意気とか。
 そういう感情を感じた。
「――やりましょう、新庄。誰かを助ける為に」
 その言葉に。
 だから。
「……うん!」
 言って。
 思った。
 今度は泣かないよ、と。
……有難い人……
 そんな風に、新庄は思う。
 ありがとう。
『それに新庄も、やっと私に対して道具らしい扱いをしてくれましたし』
 続けてストームレイダーは、ふ、と笑ったように言った。
 その言葉に新庄は、へ、と首をかしげ、
「あ。は、話し方の事?」
 言われてみれば、確かにいつの間にか新庄は敬語で話すことを止めていた。
「そ、その、ごめんなさい」
『謝らなくていいんです。機会に謝らないでください、新庄。大体、その方が貴女も素でしょう?』
 それはそうなんだけど、と新庄は言い淀み、それからふと思う。
 ストームレイダーの物言いもまた、どこか軽いものになったな、と。
……馴染んだのかな……
 自分も。
 彼女も。
 そう思うと、胸の内に喜色がにじみ出て。
「これからよろしくお願いします!」
 あらためて挨拶してみたりして。
 ただ、
「ストームレイダー………………………………………さん」

284 :空への翼 ◆WslPJpzlnU :2008/08/07(木) 20:37:46 ID:RSoAFpPd
 これだけは外れませんでした。
『……はぁ』
 器用にも。
 ストームレイダーは電子音で溜息をついた。





【1日目 深夜】

【現在地 F-5 スマートブレイン本社ビル屋上】
【新庄・運切@なのは×終わクロ】
【状況】健康、女性体
【装備】ストームレイダー(15/15)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、ランダム支給品(0〜2、武器はありません)
【思考】
 基本:出来るだけ多くの人と共にこの殺し合いから生還する
 1.機動六課隊舎の704式ヘリ確保を目指す
 2.弱者、及び殺し合いを望まない参加者と合流する
 3.殺し合いに乗った参加者は極力足止め、相手次第では気付かれないようにスルー
 4.自分の体質については、問題が生じない範囲で極力隠す
【備考】
 ※参戦時期は、第7章で佐山と別れた後です。
 ※特異体質により、「朝〜夕方は男性体」「夜〜早朝は女性体」となります。
 ※スマートブレイン本社ビルを中心して、半径2マス分の立地をおおまかに把握しました。
 ※ストームレイダーの弾丸はすべて魔力弾です。非殺傷設定の解除も可能です。
 ※H-3機動六課隊舎のヘリポートには、704式ヘリがあります。

【704式ヘリ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
 ヴァイス・グランセニック、アルト・クラエッタが操縦した輸送用ヘリ。内部には十数人を収容できるスペースがある。
 待機形態のインテリジェントデバイスを操縦桿に組み込むことで、インテリジェントデバイスはヘリを操縦することができます。デバイス無しでも操縦はできますが、その場合は完全にマニュアル操作となります。
 デバイスによる操縦の場合は、操縦中は常に組み込まれている必要があるため、デバイスは操縦以外の事が出来なくなります。

285 :なのは×終わクロ ◆WslPJpzlnU :2008/08/07(木) 20:42:33 ID:RSoAFpPd
投下終了。

新庄&ストームレイダーの狙撃コンビ再来。リスタート前はちょっと捏造しすぎちゃったから、今回は控えめなつもり。
さてさて、撃つ事に臆病な二人は無事704式ヘリを手に入れ、反主催キャラ達合流の懸け橋になれるのか!? みたいな話。
別に704式ヘリは新庄らがたどり着く前に誰かが手に入れたり壊したりしても構わないのよ、とか、他の書き手さんの為に言っておいてみたりして。

……また誰かの目をうっかり狙撃しちゃったりしたら、楽しいだろうなぁ……っ!

286 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 21:50:04 ID:4v2M/S9F
投下乙です。
成程、どちらも撃つ事に関して何かしら思うところがあるんですね。
さてさて新庄の理想がどこまで貫いていけるのか期待、ああ微妙にヴァイスと被るようなそうでないような。
ヘリをGETしたら大幅な躍進だが、果たして無事にいくか。
普通に会話するストームレイダーがなんか新鮮でした。(本編でも喋ってたのに何故だw)


287 :魔獣〜ジャバウォック〜 ◆RsQVcxRr96 :2008/08/09(土) 23:12:03 ID:sPs3ltK5
夜の暗さが支配する道の真ん中で一人の少女――神崎優衣は怯えていた。
優衣が怯えている原因、それは「死」だった。
突然目の前で見せつけられた見知らぬ者の死。
それが優衣の心を酷く苛む。
一瞬前までは威勢よく啖呵を切っていた快活そうな金髪の少女はいとも簡単に殺された。
爆発する首輪、弾ける首、噴き出る血、そして周囲から聞こえてくる無数の悲鳴。
優衣も悲鳴を上げた一人だった。
間近であれほど鮮烈な誰かの死を突きつけられた事などもちろん初めてだ。
例え鏡の中で誰か死んでも彼女が直接見た事など今まで唯の一度としてなかった。
どれもこれも知り合いからの又聞きだ。
その時は純真に死を悼んだ。
だが今はどうだ。

――何もかもが怖い。

周りを取り巻く夜の闇が、風が織り成す木々のざわめきが、見知らぬ場所に一人いる事が、堪らなく恐ろしい。
よく見れば電柱が1本立っていて辺りを薄く照らしていたが、その程度では全く気休めにもならなかった。
ここはあのプレシアに怒りを抱く場面かもしれないが、まず浮かんだのは紛れもない恐怖。
底知れぬ恐怖は優衣の心を容赦なく蝕んでいく。
ひんやりとした首輪の感触がやけに気になる。
こんなもの今すぐにでも外したいが、無理に外そうとすれば爆破されるに違いない。
あの首輪を爆破された少女の姿に自分自身の姿が重なる。

首輪を外そうかと手をかける自分自身が目の前に幻として浮かんでくる。
束縛から抜け出ようとした罰を知らせるのは無機質な電子音。
ピ、ピ、ピ、ピ、と命のカウントダウンが始まる。
その音を耳にすると、余計に躍起になって首輪を外そうとするが所詮は無駄な事だ。
そして審判の時は訪れ、自分の首輪は――

「いやあああぁぁぁあああ!!!」

想像してしまった。
自分が死ぬ瞬間をリアルに想像してしまった。
さっきより余計に周りの事が気にかかり、一層神経を張り巡らせる。
誰かが突然襲いかかってくるような気がしてならない。
優衣の精神は触れれば破裂するシャボン玉のような状態に陥っていた。
そして案の定そんな状態がいつまでも続く訳なく、次第に優衣の精神は摩耗していった。

(……私、どうなるんだろう……苦しい、誰か助けて……
 やっぱり誰かに殺されるの? 殺し合いに乗った人が来たら……対抗できる訳がない……)

優衣の精神は極度の緊張と恐怖でこの短時間に酷くボロボロになっていた。
それゆえに一刻も早くここから逃げ出したいと思った。
しかし逃げる場所などあるはずなかった。
逃げ場がないという事実に気づくと、優衣の身体から力が抜けた。
それに伴って右手に握られていたデイパックは重力に従って地に落ちた。
ドサッという音に優衣は身体をビクッと震わせた。
今の今までデイパックを持っている事にすら気が付いていなかったのだ。
地に落ちたデイパックはその衝撃で中身をいくつか吐きだしていた。

「――ぁ」

288 :魔獣〜ジャバウォック〜 ◆RsQVcxRr96 :2008/08/09(土) 23:14:51 ID:sPs3ltK5

そしてその中にあった鈍く光る凶器が優衣の目に留まった。
それは人の手には余るような大型拳銃『対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル』であった。
薄闇の中で電灯の鈍い光に照らされる黒い銃身は蠱惑的な光を振り撒いているかのように見えた。
優衣は熱に浮かされたようにジャッカルを手に取り、何かに憑かれたかのようにまじまじと見つめた。
時間にして数分だろうか。
ジャッカルを観察していた優衣の動きは止まり、次の行動に移っていた。
ゆっくりとジャッカルの銃口が彼女自身の手で彼女自身の眉間へと運ばれていった。
無機質な冷たい銃口と眉間が肉薄した瞬間、彼女の動きは一瞬止まった。
だが覚悟を決めたのか引き金に掛けた指に力を込める――この場所からいなくなるために。

(――ッ!!)

一瞬で訪れるはずの死。
しかしそれはいつまでたっても訪れなかった。
死ぬ気で指先に力を込めていた優衣はようやく誰かに手を握られている事に気付いた。
虚ろな目を上にあげると、確かに誰かが自分の手を掴んで固定しているのが分かった。

「死ぬ気か」

そう声をかけた人は夜でも鮮やかな金髪と吸い込まれそうな綺麗な碧眼を持っていた。
ガシャッというジャッカルが落ちる音がなぜか現実味がなかった。


     ◆     ◆     ◆


病院の一室。
現在そこに私と先程の男性はいる。
名を尋ねたところ「キース・レッド」という答えが返ってきた。
あれからしばらく経つが、未だになぜ彼がわざわざ自分の行動を止めたのか理由がよく分からなかった。
理由を聞いても答えをはぐらかされるばかりだった。
でもこうして時間が経つにつれて、先程の自分が如何に馬鹿だったか理解していく。
恐らく一種のパニック状態だったのか、とにかく少し前までの自分はどうかしていたという結論に落ち着きかけてきた。

「あの、ありがとうございました。えっと、あ、私……」
「気にするな。恐怖は人を狂わせる」

彼の物静かな口調が自分の精神を落ち着かせる。
だいぶ時間が掛かったが、ここに来てようやく周りが見えるようになってきた。
よくよく考えてみれば自ら命を断つなど以ての外だ。
なんの力もない自分だが、それでも死んだらそこで終わりだ。
あの殺された少女は勇敢にもプレシアに立ち向かったではないか。
それに比べて自分はなんて情けないんだろう。
もしあのまま一人だったら確実に自分は自ら命を絶っていたに違いない。
今こうして生きているのは偶然だが傍に誰かがいたからだ。
キースさんには感謝してもしきれない。
ふとここに至ってまだ相手の名前しか聞いていない事に気がついた。

「あの、キースさんは殺し合いに乗っているんですか」

聞いてから後悔した。
自殺を止めてくれて親切にも安全な病院まで連れて来てくれたキースさんが殺し合いに乗っている訳ないではないか。
今の質問を聞いてどんな顔をしているのかと思って顔を向けると、彼は何かを確かめるように手を動かしていた。
この様子だと聞き逃したのかと思ったが、

「殺し合いには乗っていない。ただ探している奴がいる」


289 :魔獣〜ジャバウォック〜 ◆RsQVcxRr96 :2008/08/09(土) 23:18:05 ID:sPs3ltK5
きちんと答えを返してくれた。
ふとその探している人がどういう人か尋ねると、キースさんと一緒で金髪碧眼の人という事だった。
命を助けてくれたお礼に恩返しがしたかったが、生憎そのような人に心当たりはなかった。
なによりここに来て初めて会った他人が他ならぬキースさんである。
その旨を伝えると、向こうもあまり期待していなかったのか特に落胆する様子はなかった。

「私には碌なものが支給されなかったんだが、優衣さんには何が支給されたんですか」

私は何か役に立てるのかという一心でデイパックの中身を目の前に広げた。
先程の大型拳銃ジャッカルに、その予備弾30発、そして赤い水晶のような物。
どれか役に立つのかと思ったが、キースさんのお目当ての物はなかったのか興味は薄そうだった。
でも赤い水晶――レリックと言うらしい――には唯一他の2つとは別の目を向けていた。
それでも別段どうでもよさそうな感じではあった。

「なるほど。ではもう少し優衣さんの事……どこから来たのか話してくれますか」
「は、はい。私は――」

キースさんが私の話を聞いてくれている。
つまりはキースさんにとって私の話が役に立つという事ではないだろうか。
私は役に立ちたい一心で自分が知っている事を全て話した。
それをキースさんは時折質問を交えながら聞いてくれた。
全てを話し終えた時、私は一つ何かをやり遂げた感じだった。

「ほう、優衣さんにも兄がいるんですか」
「はい。今は間違った方向に進んでいますけど、でもきっと元の優しいお兄ちゃんに戻ってくれるって信じています」
「そうか。大変だな」
「あの、キースさんの兄弟ってどんな方なんですか。探している方なんですよね」

そう聞いた瞬間、キースさんの顔が強張ったような気がしたのは気のせいだろうか。
それからしばらく沈黙の時間となった。
どうやらいけない事を聞いてしまったらしい。

「あ、出しゃばった事を聞いてしまってすいませんでした」
「いや気にしないでくれ。それよりご苦労様、貴重な情報感謝するよ。では――」
「はい、なんですか」

ようやく役に立てた、その気持ちが持てただけで少し楽になった。
なんの力のない自分でもこうしてほんの小さな恩返しが出来て嬉しかった。
なんだか初めの時より晴れやかな気持ちになれた。

「――私のために首輪をください」

キースさんの言葉を理解する間もなく、私は彼にとって最も役に立っていた。
キースさんの手から伸びた刃によって私の首と胴体が別れを告げて首元から血が噴き出る。
それはまるで先程自ら想像した姿に酷似していたようだった。


     ◆     ◆     ◆


彼――キース・レッドはこの状況に感謝していた。
最初に皆が集められて一人の少女が命を落としたホール。
暗がりではっきりとは見えなかったが、キース・レッドはその目で確かに見た。
自身の兄弟――キース・シルバーの姿を。
シルバーと再会したのは数時間前、貨物列車の上だった。
スカリエッティーの要請で動いていたら、突如シルバーはレッドの前に現れた。
なぜシルバーが時空管理局側にいたのかなどレッドにとっては些細な問題だった。
一番重要なのはシルバーと戦う事が出来る、その一点だった。
キース・レッド――両腕にアドバンスドARMS“グリフォン”を宿した「キースシリーズ」の一人。
だがレッドは他のキース達とは違い、欠陥品のレッテルを貼られてしまった。

290 :魔獣〜ジャバウォック〜 ◆RsQVcxRr96 :2008/08/09(土) 23:20:42 ID:sPs3ltK5
今は物言わぬ骸と化した少女に向かって先程の質問の答えを返す。

「冥土の土産に教えてやる。
 私にも兄弟はいる、しかし彼らは私の事を“欠陥品”や“初期不良品”だと決めつけた。
 どこが違う! 同じ遺伝子プールから生まれたのに何故だ!
 だから私にとって兄弟とは憎むべき対象、超えるべき存在だ!」

それからレッドは上を目指すようになった。
もっと高く、もっと強く、強者の高みへと昇り詰める。
力が欲しかった。
今の自分よりも強い力が、他の誰よりも強い力が欲しかった。
それはスカリエッティとの邂逅である程度達成された。
あとは手に入れた力がどこまで通用するか証明するだけ。
その相手としてキース・シルバーが現れた事は僥倖だった。
死力を尽くした戦いは終始互角の様相を見せた。
結局決着は付かないまま帰還する事にはなったが。

「私はシルバーを超える事を証明せねばならぬのだ! 邪魔するなら容赦なく殲滅するのみ!」

先程神崎優衣の自殺を止めたのは現状把握のために情報を聞き出そうとしたからだ。
元は軍人の身だ、状況把握の大切さは知っている。
ここで初めて会った参加者、加えて自殺志願者。
情報を聞き出した後に何をしようが気にする必要が無い事は楽だった。
見たところ一般人の彼女から聞き出せる情報は現状把握のための参考程度ぐらいだと思っていた。
しかし彼女の話は思った以上に興味をそそられた。
鏡の世界で行われる13人の「仮面ライダー」と呼ばれる戦士によるバトルロワイアル。
趣旨は違えど今のこの状態と類似点はいくつか見出せる。
しかもプレシアはその戦いに自ら参加していたと言う。
つまりその戦いからヒントを得てこのようなデスゲームを開いたのだろうか。

「まあ私にとってはどうでもいい事だ。むしろ問題は奪われた武器」

キース・レッドにとって目下の問題は奪われた武器『ベガルタ』と『ガ・ボウ』である。
没収されているところを見ると、プレシアの言う通り誰かに支給されている可能性が高い。
シルバーと再会するまでに何とか取り戻しておきたい。

「あとはこの忌々しい首輪。それになんとなくARMSのナノマシンの調子が落ちているようだな。
 腕の変化は普通に行えたが、本気で戦う時は注意が必要そうだな」

自分達の命を握っている首輪。
ARMSである自分が首を吹き飛ばされたところでコアさえ無事なら問題ないのだが、それでは不公平というものだろう。
身体の調子から見ても何かしらの制限を受けている可能性が高い。
忌々しい事だが、これでは戦いの際に不覚を取る事もあるだろう。
首輪と制限に何か関係性があるのかは分からないが、即急に外したいところだ。

方針は決まった、後は実行に移すだけだ。
キース・レッドは誰もいないロビーで一人新たな誓いを宣言する。

「オレはもっと高みへ……奴らの待っている高みまで行かねばならないのだ。
 そのために立ち塞がる者は誰であろうと、高みへ昇るための礎にしてくれる!!」

遥かな高みを目指す魔獣キース・レッド。
彼の腕が掴むものは……神の未来か、悪魔の過去か、それとも――


【神崎優衣@仮面ライダーリリカル龍騎  死亡】
※病院のロビーに首が切断された神崎優衣の死体が放置されています。



291 :魔獣〜ジャバウォック〜 ◆RsQVcxRr96 :2008/08/09(土) 23:23:46 ID:sPs3ltK5
【1日目 深夜】
【現在地 H-6 病院(ロビー)】
【キース・レッド@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】健康
【装備】対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(6/6)@NANOSING
【道具】支給品一式×2、対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカルの予備弾(30発)@NANOSING、レリック(刻印ナンバーZ)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    首輪(神崎優衣)、ランダム支給品1〜3
【思考】
 基本:キース・シルバー(アレックス)と戦い、自分の方が高みにある事を証明する。
 1.シルバー(アレックス)及び『ベガルタ』『ガ・ボウ』の捜索。
 2.1を邪魔するものは容赦なく殲滅する。
 3.できるだけ早く首輪を外したい。
【備考】
 第六話Aパート終了後からの参戦です。
 キース・シルバーとは「アレックス@ARMSクロス『シルバー』」の事ですが、シルバーがアレックスという名前だとは知りません。
 神崎優衣の出身世界(仮面ライダーリリカル龍騎)について大まかな説明を聞きました。
 自身に掛けられた制限について多少把握しました。


292 : ◆RsQVcxRr96 :2008/08/09(土) 23:26:01 ID:sPs3ltK5
投下終了しました。すいません、投下開始宣言し忘れていました。今度から気をつけます。
誤字脱字、矛盾、疑問点などありましたら指摘して下さい。

293 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 14:29:19 ID:fwp7XNvM
投下乙です!
神崎ー!アッサリ死んだー!!
うん、仕方がない。それが常人の反応だよ……。
そしてキースレッド、まさかの首輪ゲット一番乗りw
シルバーよりも優秀だと示せるのか……貴重なマーダーとして頑張って欲しいです。
GJ!

294 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 20:23:48 ID:PtdtyEvC
ji氏は少し遅れて9:20頃か。さてwktkしながら支援の準備するか。

295 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 23:42:52 ID:s/Y2udYB
残念、延長だってさ。
だが、明日中には投下するとの事

296 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/11(月) 23:44:19 ID:FBFfFnBx
シャーリーと天道を投下します

297 :シャーリーと爆砕牙 ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/11(月) 23:45:07 ID:FBFfFnBx
シャーリーはそのか細い腕で何とか天道を温泉にある一室の布団の上に寝かせることに成功した。
そして軽く額に浮き出た汗を拭いながら、彼女はそっと彼の持っていた刀に目を向けてみた。
それを見ると、どうしても思い出してしまう河口湖での事件。
そこではイレブンのテロリストが同じもの所持し、自分たちにそれを突きつけてきた。
彼女の中に自然とその時の恐怖が湧き起こってきた。
この人は殺し合いに乗った人なのだろうか。
殺しあえと言われ、無理矢理変な所に連れてこられ、
そして簡単に人を殺すようなテロリストが持っていた武器が目の前にある。
その二つによって当然の疑問がシャーリーの頭に浮かんだ。

「ううん、違うよねっ!」

だけどシャーリーは頭を振りながら、その考えを追い払った。
確かに河口湖の事件では日本解放を目指すイレブンのテロリストによってブリタニアの人は殺された。
また同じくイレブンのテロリスト、黒の騎士団によって自分の父は無残にも殺されてしまった。
ブリタニアの国籍を持つ物、父親の子供である自分は当然、イレブンを憎むべきなのだろう。
でも、シャーリーは知っていた。
イレブンにはスザクのような人間がいることを。
猫であるアーサーには嫌われてはいるみたいだったけれど、彼は誰かのために優しくなれた。
屋根から落ちそうになったルルーシュを助け、自分とルルーシュのことも応援していてくれた。
そんな彼は例えイレブンでもあっても、自分にとって大切な人であり、自分の友人と言える人だ。
そして目の前にいるこの人だって、
スザクと同じように自分の友達になれるかもしれない人なのだ。
それならば、放っておけはしない。

「よし!」

彼女は掛け声一つ、両手の握り拳を胸の前に掲げ、気合を入れた。
そして改めて怪我の容態を確認しようとして、彼女は途端に途方に暮れてしまった。
仰向けに寝る彼の身体全体には思わず目を逸らしてしまいたくなるような傷があり、
腹部にはより事態の凄惨さを増すかのように血が絶えず流れ出ていた。
その今まで見た事がないむごたらしい有様は、
彼女の中に湧き出た気力を挫けさせるのに十分なものだった。

「え、えーと、こんな時、どうするんだっけ?」


298 :シャーリーと爆砕牙 ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/11(月) 23:45:51 ID:FBFfFnBx
とはいえ、そのまま何もせずにというわけにはいかない。
動揺しながらもシャーリーは必死に自分の知識から、彼を助けるための手段を模索した。
そして思い出したのは、部活で習った救命措置。

「そ、そうだ。確かこんな時は気道を確保して…………」

そう言いながら彼女は急いで彼のアゴを上に向け、人口呼吸の準備に取り掛かった。

《ルル、ごめんね》

何故か心の思い浮かんだ同級生に謝りながら
彼女は自らの唇を天道のに重ねようとした……。





「……って、違ーう! これは人口呼吸! 意味ないから!」





しかし、唇が触れ合う寸前でシャーリーはハッと我に返り、
その意味のない処置に思い切り突っ込みをいれた。

「ななな何をやっているの、私!? これじゃあ、私、馬鹿みたいじゃない!」

おおよそ傷の具合とは相容れない行動に自分の愚かしさを痛感してしまい、
そんな気持ちがより一層彼女の中の現状に対する焦燥を加えていった。

「そ、そうだ。どこかに医務室があるかも」

と、天啓のように訪れた案。
大勢の人を迎え入れるような施設なら、
体調を崩した人の為にも簡単な医薬品が揃った医務室があるはず。
今になって思いついた案に彼女は必死に縋り付き、
狂ったように温泉施設内を走り回った。
そしてようやくの果てに見つけたのは、医務室ではなく小さな救急箱。
しかもその中身は風邪薬、消毒薬、湿布、包帯があるだけの極めて簡素なものだった。
シャーリーはその事実に落胆を感じずにはいられなかったが、
これでもないよりはマシかと急いで天道の元に戻っていった。




299 :シャーリーと爆砕牙 ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/11(月) 23:46:23 ID:FBFfFnBx
救急箱を使った治療はすぐに終わった。
まず更衣室から取ってきたタオルで濡れた身体と血を拭き取り、
その後、出来る限りの傷を消毒し、出来る限りの腫れに湿布を貼り、包帯をする。
しかし全身に及ぶ傷を小さな救急箱では
十分に手当てすることなどは出来るはずもなかった。
そもそも腹部の出血は内臓器官を傷つけている可能性が非常に高く
その場合には外科的治療を施さない限り、止血も治すことも出来ない。
また治療する際にも失血を補うための大量の輸血が必要となってくる。
そのどちらもシャーリーには出来なかったし、
そのための設備を当然、温泉になどあるはずもなかった。

そこで遅まきながらシャーリーの頭に病院という考えが思い浮かんだ。
妙な場所に連れてこられはしたが、もしかしたらちゃんとした医療施設があるかもしれない。
シャーリーは急いで地図を眺めてみたが、すぐに自然と彼女の口から溜息が漏れてしまった。
病院があるにはあったが、遠すぎるのだ。
とても人一人を背負って歩いていける距離ではない。
受付に置いてあった電話で救急車を呼ぼうとしてみたが、
残念ながら、緊急通報用電話番号では繋がらなかった。
念の為に自分の家、学校の生徒会室にかけてみたが、結果は変わらなかった。



ペタリ、と膝をつく。
このままで男の人が死んでしまうかもしれない。
言い知れぬ絶望感と無力感がシャーリーを襲う。
このまま自分は何も出来ず彼を死なせしまうのだろうか。
そして何も出来ない自分はスバルを、カレンを死なせ、
大切なルルーシュをも失い、死んでいってしまうのだろか。
心に重くのしかかった暗い闇は
シャーリーの暗澹たる未来が思い描き、彼女の力を失わせていった。
だけど、それによって彼女の力の全てが失われたわけではない。
ここに転送された時、彼女はルルーシュのために、みんなのために頑張ると決めたのだ。
残る力で彼女は突きつけられる現実に抗うかのように首を振った。
まだ目の前の男性は死んでいない。まだ助かる見込みはあるのだ。

自分は無力ではない。きっと出来る。

無事にこの男の人を助け、その後はスバルを、カレンを、
そしてルルーシュを助けて、元の世界に帰るのだ。

シャーリーはその言葉を証明するため
最後の頼みとばかりに支給されたバッグを漁り出した。
だけど出てくるのは、期待に反してどれも変なものばかり。
自分のにはとてもじゃないが、治療に使えそうなものはなかった。
それではこの男の人のはどうか。
他人の物を勝手に見るということに幾らか罪悪感を覚えたが
緊急事態と割り切って、シャーリーは思い切って天道のバッグを中身を開けてみた。
そしてその瞬間、シャーリーの中にあった思考は全て吹き飛ばされた。




300 :シャーリーと爆砕牙 ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/11(月) 23:47:07 ID:FBFfFnBx
「これって…………」



出てきたのは漆黒に塗られた仮面。
あまり一般には見ぬものではなかったが、彼女にはそれに見覚えがあった。
テレビで、ネットで、そして河口湖で彼女は実際に見たことがある。
それは正義と日本解放の旗を掲げる黒の騎士団の象徴。
そしてそれを統べるゼロがいつも身に着けている仮面。



「じゃあ、この人がゼロ……?」



思い出すのは大好きだった父。
いつも自分のことを気にかけ、自分の為にチケットを手配してくれた優しい父。
それを無残にも殺した張本人が目の前にいる。



「……お父さんの仇…………」



彼女は既に殺し合いのことなどは失念していた。
彼女の頭の中を占めるのは目の前にいるゼロのことだけ。
彼女の手は震えながらも爆砕牙の方に伸びていき、
その刀をゆっくりと鞘から抜いていった。





301 :シャーリーと爆砕牙 ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/11(月) 23:47:47 ID:FBFfFnBx
【1日目 黎明】
【現在地 B-7 温泉(海鳴温泉)】
【シャーリー・フェネット@コードギアス 反目のスバル】
【状態】健康
【装備】浴衣、 爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】支給品一式、ランダム支給品1〜3 (一見して治療に使えそうなものはありません)
【思考】
 基本:ルルーシュ達と一緒に帰りたい。
 1.お父さんの仇を……
 2.ルルやスバルやカレンを探す。
【備考】
 ・天道のことをゼロだと思っています



【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】重傷(全身、特に右脇腹)、疲労困憊、気絶中
【装備】なし
【道具】支給品一式、ゼロの仮面、ランダム支給品0〜1
【思考】
 基本:元の世界への帰還。
 1.気絶中。
 2.……ひより。
【備考】
 ・参戦時期はACT.10冒頭。クロックアップでフェイト達の前から立ち去った直後。
 ・なのは、フェイト、はやて、クロノは一応信用、矢車は保留、浅倉は警戒しています。
 ・身体がいつものように動かない事を知りました。
 ・朝までにちゃんとした治療をしないと死ぬ可能性が高いと思われます

302 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/08/11(月) 23:48:33 ID:FBFfFnBx
以上です。投下終了しました。

303 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/12(火) 08:53:33 ID:bxa65444
投下乙です。
シャーリィィィイイイ!!!違う、勘違いだw
天道ぉぉぉおおお!!!起きろ、早く起きるんんだw
これはなんともおいしい誤解フラグwww天道さらに絶体絶命。
シャーリー……慌てふためいていたと思ったら、一気にヤバい状態に。
続きが気になる引きでした。GJです。

304 : ◆jiPkKgmerY :2008/08/12(火) 19:53:45 ID:1WhOIpeg
投下乙。
シャーリーが一気に危うくwww
天道はどんだけ運が無いんだw
GJでした!


てことで、Qp氏に引き続き自分もアグモン、武蔵坊弁慶、ヒビノ・ミライ、アーカード投下します。

305 :クロノは大変な超人達を集めていきました ◆jiPkKgmerY :2008/08/12(火) 19:59:00 ID:1WhOIpeg
黄色の身体、鋭い爪と平べったい手……のようなもの、パッチリと開いた緑色の
瞳、側頭部にまで裂けた大きな口。
文字だけ見れば化け物、だけどどこか愛嬌のある不思議な生物――アグモン。

彼は今、その短い足をペタペタと動かし、彼なりの全速力で前へと進んでいた。


「うわわわわわわ! だ、だ、だ、誰か助けて〜!」


万人が認める悲痛な叫びがその口から漏れる。
だが、悲しいかな。その叫びは誰にも届く事なく周囲の闇へと溶けていった。
そもそもアグモンは何から逃亡しているのか?

その答えは彼の後方十数メートルの所を見れば分かる。
そこに居るのは、鋼のような筋肉を持った男。

男の名は武蔵坊弁慶。

人並み外れた肉体と単純で奔放な性格を持つ男――間違っても殺し合いに乗るような男ではない。
だが、今現在、弁慶は捕獲、殺害する為にアグモンを追い掛けていた。

「すげぇな、喋るトカゲなんて初めて見たぜ……」

呑気にそう言う弁慶の顔には、殺意など全く見受けられない。

殺意を持たずの殺しなどどんな化物でも、それこそ不死の王でも、自らを神と称
する雷の化身でさえ不可能。
ならば何故、彼はその様な人間離れした行動が出来るのか?
何故、武蔵坊弁慶という男はアグモンを殺そうとしているのか?

――答えは単純だった。

「喋るトカゲってのは……美味ぇのかな?」


弁慶は、アグモンの事をこのゲームの参加者と見ていない。

言うなれば非常食。

アグモンの事を、大飯食らいな自分に神様が与えてくれたプレゼントとしてしか見ていないのだ。



306 :クロノは大変な超人達を集めていきました ◆jiPkKgmerY :2008/08/12(火) 20:00:33 ID:1WhOIpeg
「それにしても、あんな身体のくせに逃げ足早いな……やっぱさっき仕留められなかったのは痛かったか」

そう言い、手に握る一振りの刀をチラリと見る弁慶。
ため息一つ。
自らの食欲を満たす為、巨体を揺らし市街地を駆け続けた。


と、その時、


「うぇっ!?」

自分の左足に右足を絡ませ、もつれるようにアグモンが転んだ。
しかも顔面から盛大に。
後ろを走る弁慶へと、これ以上ない見事な転倒を見せつけた。

「いてて…………あ」

擦りむいた鼻先を抑えつつ顔を上げたアグモンの瞳に映った物。
それは、自分に向け振り上げられた一振りの日本刀。
満月に照らされたそれはとても綺麗で、そして言いようのない恐怖心を心に湧かせる。

「わりぃな、美味しくいただくからよ。恨まないでくれ」

――あぁ、死んじゃうんだなぁ……。

幼いながらにアグモンは理解した。
デジタルワールドに住んでいたアグモンに、日本刀の切れ味など分かる筈がない。
しかし、理解した。
アレが振り下ろされた時、自分の命は亡くなっているだろう事を。

炎を吐く暇もない。その刃が振り下ろされ――







「ぐぉぉぉぉおおおおお!?」


寸前、二メートルを越える巨体が真横に吹き飛んだ。
まるで車に跳ねられたかのように、ポーンと。
百は越えるだろう重量の男が宙を舞い、地面へと落ちていった。


「大丈夫かい?」


そして一秒前まで弁慶が立っていた位置に、不思議な格好をした男が立っていた。
白銀を基調とした身体に走る、紅色の線。


307 :クロノは大変な超人達を集めていきました ◆jiPkKgmerY :2008/08/12(火) 20:02:04 ID:1WhOIpeg
天辺にいくほど頭は尖っており、眼は淡い光を放っている。
人型をしているが、一目で人間でないと分かるその姿。

様々な怪獣から地球を守り続けてきた光の戦士の姿がそこにはあった。


「逃げるよ」


一言そう言い男はアグモンを抱え上げ、人間離れした速度でその場から走り去る。
あとには、衝撃に意識を飛ばした弁慶だけが残された。





ヒビノ・ミライがアグモン達の存在に気付いたのは、殆どラッキーと言っても過言でもなかった。

自分の良く知る『アリサ』に似た少女の凄惨な死亡劇。
急変する事態に声を上げる事も、立ち上がる事も出来なかった。

――兄さん達なら助けられたのだろうか。
――自分が未熟な新米だから『アリサ』を助けられなかったのではないのか。

後悔と悲しみが入り混じり、巨大な虚脱感がミライを包んでいた。

迅速な行動しなければ更に被害者が増えるだけだというのに、動けない。
『アリサ』を助けられなかった罪悪感に身体は言う事を聞いてくれず、ただ絶望に打ちひしがれていた。



そして丁度その時、あの声が聞こえた。


「うわわわわわわ! だ、だ、だ、誰か助けて〜!」

それは、助けを求める少年の声。その声は、恐怖に震えていて弱々しい。
その言葉が鼓膜を叩いた瞬間、先までの虚脱が嘘のように身体が動いた。



――これ以上誰も殺させない。



助けを求める悲鳴がくすぶり掛けた信念を、使命を、心の中で燃え上がらせる。
そうだ、自分はウルトラマンメビウス。地球を、人々を、全てを守る光の巨人。



――これ以上、罪のない命が奪われてたまるか。


燃え上がる決意に呼応するかのように、左腕が光輝く。
現れたのは小さなブレスレット――全てを護る力が込められた腕輪。


「メビウゥゥゥゥスッ!」



308 :クロノは大変な超人達を集めていきました ◆jiPkKgmerY :2008/08/12(火) 20:04:09 ID:1WhOIpeg
咆哮と共にミライの身体が光に包まれる。
光の中から現れるは、光の戦士ウルトラマンメビウス。
変身を終えると同時に、メビウスは地を蹴り、走り出した。





走り始めて一分程経った頃、強化された視界の先に助けを求めたらしき少年の姿が映った。
いや、少年というのは間違いか。
黄色い体に、鋭い爪と牙。それは怪獣の幼体のような姿であった。
その後ろには刀を持った筋肉質な男。その様子からして殺し合いに乗っているのだろう。


――この距離なら間に合う。


メビウスは、そんなアグモンの姿を見ても寸分も躊躇わない。
助けを求める者は全て助ける。人間だろうと、怪獣だろうと、だ。



足と足を引っ掛け、転倒する黄色い怪獣。
刀を振り上げる大男。
その刹那――メビウスの飛び蹴りが男に命中、叫び声と共に男が宙を舞った。

「大丈夫かい」


怪獣は驚愕に目を見開きながらも、コクリと頷いた。
その無事な姿にメビウスは微笑みを見せ、そして両腕にアグモンを担ぎ上げる。


「逃げるよ」


変身していられる時間は残り少ない。気絶しているのか、地面に寝転んだまま動かない男を一瞥しメビウスは全力で駆け始めた。







「えーと、君の名前はアグモン。デジタルワールドという世界で暮らしていたんだね」
「うん、そうだよ。それで最近、姉御がデジタルワールドに来てね。姉御の仲間を探す為旅に出たんだ」


数分後、D-3の市街地にあるビルの中にて、アグモンとミライが向かい合いながら座っていた。
ミライは真剣な表情でアグモンの話に耳を傾け、アグモンは楽しそうに自分の世界について語る。




309 :クロノは大変な超人達を集めていきました ◆jiPkKgmerY :2008/08/12(火) 20:05:16 ID:1WhOIpeg
「その姉御っていうのは?」
「人間だよ〜。ミライみたいに大きくないけど」
「そっか……名前はなんて言うんだい?」
「キャロ・ル・ルシエ。ピンク色の髪の毛で、身長はオイラよりちょっと大きいくらいかなぁ」

いやな事は直ぐに忘れてしまう子供の特性か、数分前まで命を奪われる寸前だったというのに、アグモンは驚く程の明るさを見せていた。
そんなアグモンを微笑ましく思いつつミライは先を続ける。

「キャロちゃんか、このゲームに呼ばれてるみたいだね。無事だと良いけど……」
「フリードがついてるから大丈夫だと思うけど……熱出してたし、心配だなぁ……」

この場へ飛ばされる寸前に熱で倒れた相棒の事を思い出し、その微笑みに陰りを見せるアグモン。

「熱が出てる子供まで参加させているのか……クソっ……」

アグモンの言葉に、ミライは悔しげに唇を噛む。
その時、ミライの心に宿っていた感情は怒りと憤り。

――アグモン君の話からして、キャロちゃんはまだ幼い少女なのだろう。
この名簿にはなのはちゃん、フェイトちゃん、クロノ君、ユーノ君の名前も掲載されている。
何故なのはちゃんとフェイトちゃんの名前が二つあるのかは分からないけど、最初の部屋で自分も見た。なのはちゃんとクロノ君が並んで座っているところを、だ。

自分が知っているだけでも四人。そしてアグモン君から聞いたキャロちゃん。
年端もいかない子供が五人もこんな凄惨なゲームに参加させられている。
そう考えるだけで、プレシアと名乗った女に対し怒りが込み上げてくる。


「絶対に止めてやるぞ……こんな殺し合い!」


殺し合いなど絶対に阻止してやる。
兄さん達なら、ウルトラ警備隊の一員なら、迷わずにその道を選ぶ筈だ。

「行こうアグモン君。キャロちゃんを探さなくちゃ」

その悲惨な現実に、ミライの決意が固まっていく。
迷いはない。後悔は全てが終わったあとに幾らでも出来る。
今、するべきは行動。

燃え上がる決意を胸に光の戦士は立ち上がり、そしてその時――


『僕は時空管理局執務管、クロノ・ハラオウンだ』


――最年少執務管の声が、市街地一帯に響き渡った。





310 :クロノは大変な超人達を集めていきました ◆jiPkKgmerY :2008/08/12(火) 20:06:34 ID:1WhOIpeg




「クロノ君……」

一分にも満たない僅かな時間の放送。
そんな短い放送でも、それはミライに大きな希望を与えてくれた。

――仲間が、自分と同じ決意を持った心強い仲間が、いる。
そうだ。全員が全員、殺し合いに乗る訳がない。
プレシアに対し反旗を翻す者だって、必ずいる筈だ。

希望が湧き上がる。

こんな絶望的な状況でもクロノ君は行動を示した。
次は――僕の番だ。

「知ってる人なの?」

傍らで問い掛けるアグモンに、ミライは笑顔と共に頷く。

「ああ、勇気を持つ戦士だよ。まずはクロノ君と合流しよう。
彼なら脱出の方法を思い付くかもしれないし、もしかしたらキャロちゃんも、放送を聞いて向かってるかもしれない」
「うん、分かった〜」

二人は荷物を纏めビルの扉を開く。
外は満月と街灯に照らされ、ライトをつける必要もなかった。

「そういえば、人間って進化できるんだねぇ」
「し、進化?」
「うん、だってミライ進化してたじゃん。銀色っぽいのに」
「あ、あれはね。ウルトラマンって言って…………」

デジモンとウルトラマン。それは次元を越えた存在達。
絶望が渦巻くこのゲームで二人は何を成す事が出来るのか。
ゲームはまだ始まったばかり――


【一日目 深夜】
【現在地 D-3 市街地西部】

【ヒビノ・ミライ@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】

【状態】健康
【装備】メビウスブレス@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0〜2
【思考】
 基本:殺し合いを止める。
 1.アグモンと共に学校へ行き、クロノと合流する。
 2.なのは、フェイト、ユーノ、ヴィヴィオ、キャロ、ギルモンと合流したい。
3.アグモンを襲った大男(弁慶)を警戒。

【備考】
※メビウスブレスは没収不可だったので、その分、ランダム支給品から引かれています。
 ※制限に気付いてません。
 ※デジタルワールドについて説明を受けましたが、説明したのがアグモンなので完璧には理解していません。




311 :クロノは大変な超人達を集めていきました ◆jiPkKgmerY :2008/08/12(火) 20:07:43 ID:1WhOIpeg
【アグモン@デジモン】
【状態】膝と顔に軽度の擦り傷
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
【思考】
 基本:熱を出して倒れたキャロと合流。
 1.ミライと共に学校に行き、クロノと合流する。
 2.刀を持った大男(弁慶)を警戒
 3.やっぱりフリードもここにいるのかな? 姉御を守ってくれていると良いけど……

【備考】
 ※制限に気付いていません。
※ウルトラマンについてある程度理解しました。




「あぁ、痛ぇ! チクショウ! 何だったんだ、アイツは!」

アグモンとミライが歩き始めた頃、その数百メートルほど西にて一人の男が声を上げた。
右手で腰をさすりながら、苛立たしげに悪態をつく。

「あートカゲも持ってかれちまったし……チクショウ……」

男が怒りを覚える理由。
それは腰への強烈な飛び蹴りではなく、非常食――アグモンを奪われた事であった。

見た目は美味そうには思えなかったが、それでも自分の獲物だ。見知らぬ男に奪われる道理は無い。

「食い物の恨みは怖えーんだからな、覚えてやがれ!」

吹き飛ばされグチャグチャに揺れる視界の端で、弁慶は白銀の戦士の姿を捉えて
いた。
不意打ちで、大事な大事な食糧を奪った男。今度あったら、非常食と腰を蹴られた分の借りを返すと決意し、弁慶は歩き始める。


「……んじゃ、取り敢えずは中心地にでも行くか。スバルやティアナとも合流してぇしな」

中心地なら人は集まるだろう。
単純だが正解とも言える判断に従い、弁慶は歩く。

「あー腹へったな……」

何処か虚しげな男の呟きが、無人の市街地に溶けていく。
執務管が選択した勇気の行動は、残念ながら男の歩く場所に届く事はなかった。




312 :クロノは大変な超人達を集めていきました ◆jiPkKgmerY :2008/08/12(火) 20:08:36 ID:1WhOIpeg
【1日目 深夜】
【現在地 D-3 市街地西部】
【武蔵坊弁慶@ゲッターロボ昴】
【状態】腰にダメージ(小)
【装備】閻魔刀@魔法少女リリカルなのはStirkers May Cry
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0〜2【思考】
 基本:殺し合いを止め、プレシアを打倒する(どうやって戦うかは考えていない)
 1.スバル、ティアナと合流。
 2.銀色の男(メビウス)に恨みを返す。
 3.隼人は多分大丈夫だろう。
【備考】
※5話終了後からの参戦です。
※自分とスバル、ティアナ、隼人の4人は、ネオゲッターロボごとここに送り込まれたのだと思い込んでいます。
 また、隼人がどうして参加者の中に居ないのかという疑問を持っています。
 ※隼人がこのゲームに関わっていないことを知りません。
※アグモンがゲーム参加者であることに気付いていません。






そして更に離れること数キロ。
鬱蒼と生い茂る木々が月明かりさえも遮る、闇に包まれた森の中。
そこに、血で染めたかのような真紅を羽織った一人の男が居た。
灯り一つないにも関わらず、その足取りは軽やか。淀みなく足を前へと動かしている。

「ほう、我が主も呼ばれているのか。これはこれは……なかなかやるじゃないか、プレシア・テスタロッサ」

視線を手に握られた紙切れ――参加者名簿へと向けたまま、男が呟いた。
その顔に浮かぶ笑顔。楽しくて楽しくて仕方がない。その微笑みは無言で語っていた。

「インテグラルがそう簡単に死ぬとは思えないが……」

笑顔を真剣な表情へと移し、男は考える。

自分の主――インテグラルは甘いところもあるが、ボンボンの箱入り娘という訳ではない。
吸血鬼ハンターの末裔として鍛錬は積んでおり、下級吸血鬼であれば造作もなく斬り伏せる事が出来る実力を持つ。

たがこのゲームで生き残れるかと言えば、答えはノーだ。

確かに実力を持っているとはいえ、所詮は人間の範疇を越える事はない。
億が一にも有り得ないが、仮に自分とインテグラルが戦えば一分も経たずに勝負がつく。
勿論、自分の勝利でだ。
そしておそらく、このゲームには、自分に匹敵する実力者も参加している。

そうでなければ『ゲーム』にはならない。
『ゲーム』というものは互角の力を持った者で行わなければ白熱しないし、見ている側も退屈な物だ。

そして、何より――本能が告げている。

このゲームには自分の望むものがある、と。
即ち、『自分と闘争を楽しめる程の強者がいる』と。



313 :クロノは大変な超人達を集めていきました ◆jiPkKgmerY :2008/08/12(火) 20:09:55 ID:1WhOIpeg
「早めに合流した方が得策か……」

真剣な表情で声を上げ、名簿をデイバックへと戻すアーカード。
とその時、不意にアーカードの表情が困惑へと歪んだ。


『僕は時空管理局執務管、クロノ・ハラオウンだ――』

人間であれば聞き取れない程の小さな音量。だが、吸血鬼であるアーカードの聴力はその内容を鮮明に聞き取った。

その放送を要約すると、『殺し合いに乗っていない者は学校に集まってくれ』と
の事。
要するに、脱出の為の仲間集めと弱者の保護を目的とした放送。
そして、この状況でこの様な目立つ行動を選択できるのは強者のみ。
声は、まだ声変わりもしていない幼いものだったが、ティアナの上司であるヴィータの例もある。
おそらく放送の主『クロノ・ハラオウン』は強者――つまり、学校へと行けば闘争が楽しめる。

そういう事だ。

それはアーカードにとって、願ってもない僥倖。

「……だが、まずはHELLSING本部を見てからだな」

学校のがあるエリアから一つ左。そこに設置されているHELLSING本部。
イギリスにある筈の本部が何故この場にあるか見当もつかないが、インテグラルが居るとしたら此処が一番確率が高い。

――闘争も楽しみつつ、主の命も護る。

それがこのゲームにてアーカードが成すべき事。
学校へは、本部を探索した後に向かえば良い。


「さて、行くか。大切な愛しい愛しい我が主を護るため。そして――」

そう言い、男はデイバックの中に手を突っ込み、何かを取り出した。
それは十数本のベルトと、白い布に包まれた巨大な十字架。
それはアーカードに用意された唯一のランダム支給品。
常人だったら持ち上げる事すら叶わないそれを軽々しく背中に背負い、男は叫ぶ。

「――闘争を楽しむ為に!!」





314 :クロノは大変な超人達を集めていきました ◆jiPkKgmerY :2008/08/12(火) 20:10:40 ID:1WhOIpeg
アーカードは知る由もないが、その十字架はある世界に於いて、最強の個人兵装と敬称されている。

瞬きの間に人を塵へと化す重機関銃。
大規模な爆発範囲で複数の人間を消し炭とする事が可能なロケットランチャー。
それらを複合し一つの武器へと昇華した兵器――パニッシャー。

吸血鬼であるアーカードにとっては皮肉とも言える十字架を模った支給品。だが、武器としてはこれ以上ない威力を秘めた支給品。

ただパニッシャーには二つの難点がある。

一つは重力が有りすぎて扱えない者もいるという事。
そしてもう一つは――

「ついでに銃器も探すか。闘争は全力全開で行うからこそ――面白い!!」

――その特徴的な見た目からして、武器と認識され難いという事だ。







――最強の個人兵装を鈍器と勘違いする吸血鬼。

――この場に於いても、変わらぬ信念を貫き通そうとする光の戦士、そしてデジタルモンスター。

どちらも目指すは学校。
一人の少年が起こした勇気の行動により、超人達は集結する――。


【1日目 深夜】
【現在地 C-5 平野北部】
【アーカード@NANOSHING】
【状態】両腕不調(治癒中)、全身にダメージ小(治癒中)
【装備】パニッシャー@リリカルニコラス
【道具】基本支給品一式
【思考】
 基本:インテグラルを探しつつ、闘争を楽しむ。
 1.HELLSING本部へ向かいインテグラルの捜索。
 2.その後、学校へ向かい闘争を楽しむ。
 3.アンデルセンとスバル達に期待。
【備考】
※スバルがNANOSHINGのスバルと別人であると気付きました。
※パニッシャーが銃器だという事に気付いてません。



315 :クロノは大変な超人達を集めていきました ◆jiPkKgmerY :2008/08/12(火) 20:12:56 ID:1WhOIpeg
投下終了です。
正直SS読んで把握したキャラばかりなので、口調等変なところがあったらご指摘を。

316 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/12(火) 22:33:49 ID:bxa65444
投下乙です。
アグモン危機一髪w危うく情けない最期を迎えるところだったw
さすがは正義のヒーロー!ピンチには駆けつけるな。
そして学校が何気にヤバい雰囲気に……さっさと離れないと不味いぞw
って、アーカードの武器が最強の個人兵装www(何が驚いたって自分が考えていた事と一緒だった事だ!)
まさしくクロノは大変な面子を集めたようでwGJでした。

少し指摘をするとアグモンの参加時期だとまだヴィヴィオとギルモンには会っていないので、
ミライの思考2から二人を削るべきかと思いました。
たぶんWiki編集の際に削ったらいいのでは。

317 : ◆jiPkKgmerY :2008/08/12(火) 23:12:26 ID:J83NI8Ee
ご指摘感謝です。
ヴィヴィオとギルモンについては昨日、今日で修正し終えた筈だったのに……。
取り敢えず、修正版を一時投下スレに投下したのでご確認の程を。


てか、パニッシャーアーカードはやっぱり考えますよねw
ご指摘、本当に感謝です

318 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/13(水) 00:05:06 ID:ol/S7l1b
投下&修正乙!

クロノの所にいい感じで人が集まってきたな
ミライ、アグモン、アーカード、ギルモンの死体を担いだヴィータ
んでもって大はやてとキングかw
とんでもなくカオスww
この後の展開が気になるぜ
GJでした!

319 : ◆RsQVcxRr96 :2008/08/16(土) 21:50:17 ID:NtEQ/fNr
10時頃よりフェイト・T・ハラオウン(StS)、遊戯十代、柊つかさで投下いたします。
おてすきの方は支援お願いします。

320 :夢・オ・チでリセット! ◆RsQVcxRr96 :2008/08/16(土) 22:02:21 ID:NtEQ/fNr
デパートの薄暗いロビーに仄かに光る明かりが1つ。
それは見る人に不気味な印象を与えそうだが、近づくとそれが誘蛾の雰囲気を醸し出すランタンの光だと分かっただろう。
照明が消えて暗いというのは分かるが、それなら用が済むまで照明を付けたらいいだけの話だ。
ここは一般的なデパートだから探せば配電室の場所などすぐに判明するはずだ。
しかしそれはできない。
照明を付けたらそれこそ本当にこの場所は誘蛾灯に成り果ててしまう。
ただし引き寄せるのは光を求める蛾ではなく、他者の命を求める悪意である。
そんな事を考えてフェイトは少々薄暗いのを仕方ないとしてランタンの光でデパートの案内板を照らしている。
今まで培ってきた経験からフェイトは照明を無闇に付ける事の愚かしさをなんとなく知っていた。
確かに引き寄せられる人が危険な人物とは限らないが、現状は慣れない環境での不測の事態。
ここは無用な戦闘は避けて慎重に行動する局面と判断した結果だ。

(それにしても、エリオやキャロまでいるなんて……)

名簿に載っている60の名前。その中には自分の知っている名前もいくつもあった。
なのはやはやてみたいな魔導師や矢車のような人ならこのような状況でも的確な判断の元に行動していると思える。
しかしそれに当てはまらない名前もあった。
エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエ。どちらも自分が保護した子供達の名前だ。
二人とも特殊な事情があるにせよ本質は保護を受けるべき子供だ。
そんな子供達までこの場にいる事に、改めて先程の誓いを強く念じるフェイトであった。

誓いを新たにフェイトは行動を起こすためにまずはこのデパートの構造を知ろうと屋上からエレベーターを使って1階へと降りてきていた。
しかしそこでふと疑問が浮かんだ。
電気が通っているのだ。
エレベーターが問題なく作動している事からそれは明白だった。
つまりどこかで発電をしているという事になる。
自家発電や魔法による発電の可能性もあるが、わざわざそんな事をする理由が分からなかった。
他にも思い立ってトイレで蛇口を捻れば問題なく水が出た。
水道もしっかり機能していた。
確かにライフラインがあれば参加者にとっては便利だろう。
しかし今は殺し合いを強要される状態。
そんな状態でわざわざライフラインを提供する意味は果たしてあるのだろうか。
殺し合いを進めたいのならライフラインを絶って、参加者の精神を揺さぶるべきではないのだろうか。

(でもライフラインが無事なら、もしかして期待できるのかな)

総合案内板によるとこのデパートは地下1階と地上5階で構成されている。
食品、衣料品、雑貨、見たところ一般的なデパートにある物は全て完備しているようだった。
しかし案内板の通り実際に物品が置いてあるかは甚だ不明だ――というのは、つい先程までの考えだ。
どういう理由かは分からないにしろ、こうしてライフラインが無事にある以上、デパートに物品が残っている可能性が非常に高い。
今後の事も考えてまずは医療品を探すべきだと方針を決めた瞬間――

「いやっ! 誰か、助けて!!」

救いを求める少女の悲鳴が聞こえてきた。
聞こえた声の大きさと方角からデパートのすぐ近くなのが分かった。
その声を無視する気は当然の如くフェイトにはなかった。
無用な戦闘は避けようと思っていたが、目の前の危難を見過ごすほどフェイトは非情ではなかった。
どちらかというと人情は厚い方だ。
そして後ろを振り向くと、自動ドアの透明のガラスの向こうに救いを求めた人物がいた。
暗い夜道の上に倒れこんでいる少女、そして剣を手にして今にも襲いかかりそうな赤いジャケットの少年。
どんな状況かは一目瞭然だった。

「プラズマランサー! セット!」

ドアに向かって走りながら使い慣れた射撃魔法を発動させる。
その数4つ。
魔力運用に若干の違和感があったが、さほど問題ない。
フェイトは今にも少女に襲いかかろうとする少年に怒りを向けつつ牽制の魔法を放った。


321 :夢・オ・チでリセット! ◆RsQVcxRr96 :2008/08/16(土) 22:06:34 ID:NtEQ/fNr
「――ファイアッ!!」

狙いはほぼ正確に少年の周囲に着弾して爆発による衝撃で少女と少年の間には距離ができた。
フェイトはその間に滑り込むと、少女の盾となるべく少年と対峙した。


    ◆    ◆    ◆


「おい、待てよ!」
「いや! 来ないで!」

あれからしばらく経つが未だに十代はつかさと追いかけっこをしていた。
少し走り続ければ追いつけるのだが、そうなると決まってつかさは拒絶の意思を表して必死に逃走する。
追いつかなければいけないが、追いついたところでまた逃げられる。
そこで十代は少し方針を変えていた。
しばらく走り続けてつかさが走れなくなるまで走り続ける事にしたのだ。
そうすれば嫌でも話す時間ができるし、体力は十代の方があるのは明白だった。
そして十代の考え通り数分も走り続けると、つかさの体力は限界に達した。
ついに足をもつれさせて再び地面へスライディングをかましていた。

「いやっ! 誰か、助けて!!」

さすがに再び地面に倒れこむとは思っていなかったが、概ね考えていた通りだった。
あとはゆっくりと相手を落ち着かせて話し合うだけだが――

「――ファイアッ!!」

いきなり降りかかった金色の閃光に阻まれた。
突如として周囲で爆発したそれによって十代とつかさの距離はまた広がってしまった。
そしてそこに赤を基調とした中世風の鎧に身を包んだ少女が割り込んできた。
目の前に現れた少女に十代は見覚えがあった。

「まさか!?」

異世界で出会った魔導師――そして今は戦いを求めるだけになってしまったデュエルゾンビ。
それが十代の知るフェイト・T・ハラオウンであった。
だからこそ十代はこの状況をすぐさま理解した。
おそらく戦いを求めて彷徨っていたフェイトが自分達を発見して戦いに来たというところだろう。
そうでなければあのフェイトが無闇に攻撃を仕掛ける事などありえない。
十代の中でフェイトの行動は至極当然のものとして映った。

(あの反応、私を知っている?)

一方フェイトはフェイトで目の前の少年の正体を測りかねていた。
当然の事ながらフェイトは十代に見覚えなど全くなかった。
管理局時代に知り合ったか、もしくはワーム退治の時に出会ったか。
とにかく十代が悪事を働こうとしているのは蹲る少女の様子から見ても一目瞭然だった。
元からなのか、ここに来てなのかは分からないが、フェイトに十代を許す気はなかった。
戦闘力を奪って話を聞かせてもらう気だった。

「ハァァァ!!!」

まずは大剣・大百足による上段からの一撃。
もちろん狙いは十代を少女から更に遠ざけるためだ。
よって剣速も遅く狙いも大きく外していた。

「――ッ!!」


322 :夢・オ・チでリセット! ◆RsQVcxRr96 :2008/08/16(土) 22:10:59 ID:NtEQ/fNr
そしてフェイトの狙い通り十代はつかさから更に離れる結果となった。
十代から見て今の状況は最悪に近いものだった。
泣き崩れているつかさ、戦いを求めているフェイト。
自らと比べて圧倒的に強いフェイトの攻撃を掻い潜って、未だ混乱しているつかさと共にこの場から脱するなど無理な話だった。
考える時間も碌になく追い詰められた十代は苦渋の決断をした。

すなわち一時撤退。

「くらえ!」
「なっ!?」

十代はデイパックから支給品として配られた「んまい棒」を地面に叩きつけた。
非常食であり、いざという時は煙幕にもなる便利なものだ。
んまい棒の煙幕によって一瞬で辺りは白い煙に包まれた。

「つかささん! しばらくの辛抱だ。俺が戻ってくるまで無事でいてくれ!」

そう言い残すと十代は支給されていたバイクに乗って、その場から全速力で離れて行った。
目指す方角は北。
南は川があり、なにより北に行けば中心部だ。
そこでフェイトにも対抗できるだけの仲間を集めるつもりだ。
仲間を集い、つかさをフェイトの手から救うべく十代は夜の市街地を駆け抜けて行く。

(フェイトさんがデュエルゾンビなら、やっぱり万丈目やエリオも……)

この場にいる十代が知る者の中でデュエルゾンビになったのは万丈目とフェイトとエリオの3人。
フェイトがあのような状態である以上、他の2人も注意が必要だ。
だがそれにも増して今十代を悩ましている事は自分が先程取った行動の是非であった。
一時撤退――その判断が正しいかどうか十代は不安だった。

(俺はつかささんを見捨てたのか? いや違う、必ず救うんだ。でも……
 くそ、なんて無力なんだ!)

さらに十代は致命的な勘違いを抱えたままであった。
元々フェイトはデュエルゾンビなどではなかったのだ。
その事に終ぞ気付かず、十代はどこか悲しげなエンジン音と共に夜の街へ消えて行った。


【1日目 黎明】
【現在地 H-5 市街地北部】
【遊城十代@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康、多少の罪悪感、バイク搭乗中
【装備】バイク@魔法少女リリカルなのはStrikerS、バヨネット@NANOSING
【道具】支給品一式、んまい棒×4@なの魂
【思考】
 基本:殺し合いには乗らない。
 1:中心部へ行き、つかさを救うための仲間を集める。
 2:俺はつかささんを見捨てた? いや違う。
【備考】
 ※万丈目、フェイト(StS)、エリオがデュエルゾンビだと思い込んでいます。

【バイク@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
本編十話と最終話でティアナが乗っていた一般的なバイク。持ち主はヴァイス。
使用頻度からティアナやアルトの所有物になりかけているらしい。


    ◆    ◆    ◆



323 :夢・オ・チでリセット! ◆RsQVcxRr96 :2008/08/16(土) 22:14:39 ID:NtEQ/fNr
煙幕が晴れるとそこには寄り添う形で固まっているフェイトとつかさの姿があった。
あの瞬間、フェイトは十代を逃がす気は無くすぐさま追いかけようとした。
しかしそれは叶わなかった――今も必死に自分にしがみついている少女によって。
おそらく突然視界が塞がれた事で軽度のパニックになった事で近くにいた自分を頼った結果だろう。
さすがに怯えている少女を残して行く訳にもいかず、フェイトは少女の気が済むまでじっとしていた。
その際に注意を少女に向けていたために逃げる少年の去り際の言葉があまり聞こえなかった。
「しばらく」や「戻る」という単語が辛うじて聞こえた事から態勢を立て直して再び襲ってくる可能性が高い。
とりあえずデパートに戻って中に潜んで様子を見る事にした。

「もう大丈夫だよ。えっと名前は……」
「? 柊、つかさ……です」
「つかさか。私はフェイト・T・ハラオウン。よろしくね」
「は、はい。よろしく」

挙動不審な感じがするが、さっきまであんな目に遭っていたのだ。
落ち着くまでには時間がかかるだろう。
こんな普通の少女まで巻き込まれた事にフェイトは少なからず怒りを覚えた。

「えっと……フェイトちゃん、だよね? お姉ちゃんと一緒のクラスの?」
「え?」

突然かけられた質問。
それにフェイトは少々困惑してしまった。
フェイト自身が学校に通っていたのは、もう7年も前の話だ。
そんな前の事を言っているとは思えないのに加えて、つかさの口振りでは現在進行形の事を言っているようだ。

(もしかして混乱している? 無理もないか。いきなり連れて来られて怖い目に遭ったから。
 とりあえず余計な心配をかけないように、しばらくは話を合わせよう)

フェイトはつかさに話を合わせる形でつかさから話を聞いた。
まとめると、どうやらつかさの言う「フェイト」は転校生でつかさの姉の柊かがみと同じクラスらしい。
そして気づいたらここにいて、訳も分からずに先程の少年――遊城十代に殺されかけたとの事だ。
つかさから話を聞く限り十代は本気でつかさを殺そうとしていたらしい。

(やっぱり拘束しておくべきだったか。私が逃したばかりに……)
「ねえ、フェイトちゃん?」
「ん? なに、つかさ」
「さっき服が変わったけど……それも魔法なの?」

現在フェイトはシーナのバリアジャケットを解除している。
いつまでも臨戦態勢では気が疲れる……というのは建前で、実際は胸の辺りがきつくて行動に支障が出るのが理由だった。
これから先も長いのに常にあの格好ではいざという時に何かあっては大変だと思ったのだ。
それにストレージデバイスである大剣・大百足でもバリアジャケットは展開できるから問題なかった。
魔法の事は簡単に先程話したのだが、見たところつかさはあまり理解していないような気もした。

「うん、そうだよ。この赤い宝玉を使って――」
「それって私にもできるかな?」
「……どうだろう。つかさの魔力適合次第だけど……やってみる?」
「え、いいの。えっと……セットアップ」

つかさはフェイトから宝玉を受け取ると、先程聞いた起動の呪文を唱えた。
フェイトからすればどう見ても魔力のない一般人のつかさが何をしようと変化はないと思っていたのだが――

「わあ、すっごーい。綺麗だね」


324 :夢・オ・チでリセット! ◆RsQVcxRr96 :2008/08/16(土) 22:20:58 ID:NtEQ/fNr
あっさりとバリアジャケットが展開されていた。
薔薇の意匠があしらわれた白いニーソックス。
羽毛のようなファーのついたロングブーツ。
白地に水色の縞模様が刻まれたショーツの上に重なる赤いプリーツのミニスカート。
赤茶けた上着の下にある中世風の白い衣服の胸元で輝く鋼鉄のブレストプレート。
腰に回した漆黒のベルトに収まる花の如き流麗な曲線を描いたサーベル。
幾何学模様のプリントされた短いマントの首元で映える燃える炎の如き赤いリボン。
ちょこんと頭に乗っかった羽飾りの付いた真紅のベレー帽。
全てがフェイトの身につけていたものと一緒だった。
流石に胸は丁度いい具合みたいだったが。

(でも一体どうして?)

しっかりと確認はしていないが、つかさにはデバイスを起動するだけの魔力など無かったはずだ。
これは一体どういう事だろうか。
つかさは自分の姿が変化した事に多少驚いたものの、今ではターンなどして自身の姿を確認している。
その姿からも魔法など初めて見るといった感じがする。

(つかさ自身には魔力が感じられない……怪しいのは、首輪?)

フェイトの疑問は解ける事はなかった。


    ◆    ◆    ◆


(やったー。あはは、やっぱりそうだったんだ)

つかさは自分の服装が一瞬で変わった事に驚いていた。
しかしそれも一瞬の事、すぐに現れた服装がどのようなものか確かめた。
幻ではない本物のような感触。
まさしく自分が魔法を使っているという事を知ると、つかさはずっと考えていた事に確信を抱いた。

(やっぱり、これって夢なんだ!)

何の覚えもなく突然降り立った場所。
転校生が実は世界を守るために戦っている正義の魔法使い。
そして極めつけは自分が魔法を使えた事。
どれもこれも現実ではありえない事ばかりだ。
つまりは全部夢。
今つかさ自身は不思議な夢を見ていると認識していた。

(でも妙に本物みたいだけど、そういう夢なのかな。
 ……いいや、夢なんだし眼が醒めるまで思いっきり楽しんじゃお)

柊つかさは夢の終わりまで今の状況を楽しもうと決めた――夢が終わる時、それが何を意味するかも分からぬままに。




325 :夢・オ・チでリセット! ◆RsQVcxRr96 :2008/08/16(土) 22:25:51 ID:NtEQ/fNr
【1日目 黎明】
【現在地 H-5 デパート1階】
【フェイト・T・ハラオウン(StS)@仮面ライダーカブト】
【状況】健康、若干の困惑
【装備】大剣・大百足@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる
【道具】支給品一式
【思考】
 基本:誰も犠牲者を出す事なく、この殺し合いを止める。その上でプレシアと対話を行う。
 1:これはどういう事だろう?
 2:つかさが落ち着いたらデパートを探索する。
 3:機動六課隊舎に向かい首輪を外す。その後、なのは達と合流する。
 4:もう少し扱いやすい武器が欲しい。欲を言うならバルディッシュ・アサルトが欲しい。
【備考】
 ※なのは達「八神班」が他の世界から来た人間である事を知りません。
 ※このゲームがアリシア蘇生のためであると推測しました。
 ※大剣・大百足は他の形態にはフォームチェンジしません。
 ※しばらく話をつかさに合わせる気でいます。
 ※遊戯十代が殺し合いに乗っていると思っています。


【柊つかさ@なの☆すた】
【状態】疲労(小)
【装備】シーナのバリアジャケット@SHINING WIND CROSS LYRICAL
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考】
 基本:夢から醒めるまで楽しむ。
 1:フェイトちゃんと一緒にいる。
 2:家族や友達に会いたい。
【備考】
 ※自分が夢の中にいると思い込んでいます。(望めば大抵の事はできるかもと思っています)
 ※遊戯十代が殺し合いに乗っていると思っています。


326 : ◆RsQVcxRr96 :2008/08/16(土) 22:30:00 ID:NtEQ/fNr
投下終了しました。
誤字・脱字、矛盾点、疑問点などありましたら指摘して下さい。

327 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 22:40:40 ID:NOlAOBLX
GJ!
十代が万丈目を危険視……って、あながち間違ってはいないんだけれどもwww

あと1つ。
フェイトの出典元の「仮面ライダーカブト」には、確かStS本編から登場する人物が存在しません。
だから彼女はエリオとキャロを拾ってはいないはずなのですが

328 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 22:56:25 ID:NtEQ/fNr
>>327
したらばの議論スレ540でマスカレード氏によるフェイト(StS)の簡易説明において、
>管理局とZECT両方に所属、組織を掛け持ちしていること。六課が存在しないために、スバル・ティアナとの面識は無し。
 ちなみにエリオとキャロは原作通りに保護した後。変更点はそれくらいかと。
とあったので拾っている風に書きました。
作者本人なので間違いはないはずですが。

329 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 23:13:56 ID:NOlAOBLX
あ、すんません、誤解してましたorz

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