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★エヴァ小説を投下するスレ(ノンジャンル)★2

1 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/11(金) 20:19:04 ID:???
投下する作品のジャンルを問いません。
短編、長編、LRSにLAS、パロ、シリアスなんでもどうぞ。※エロは板的にNG
ただし、書き始めた以上は責任を持って完結を目指しましょう。
でないと、読み手の人がイーッてなります。

スレ違いと指摘する人がスレ違い。
趣味の違う作品は華麗にスルー。
このスレで叩く理由はあり得ません。

ただし、ここはエヴァ板なので他の作品とのコラボは非推奨。
乗せても良いけど、理解されずに誰もレスを付けないかも。

前スレ
★エヴァ小説を投下するスレ(ノンジャンル)★
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/eva/1211668489/

2 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/11(金) 20:19:40 ID:???
立てたぞ
案内出来なかった・・・orz

3 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/11(金) 20:46:13 ID:???
>>2
乙です。ありがとー

4 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/11(金) 21:09:05 ID:???
>>2

スレ立ての目安容量決める方が良いかもね

5 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/11(金) 22:03:42 ID:???
普段janeで見てるから容量気付かねえ…
450〜480kでいいんじゃないかね?
職人このスレに気付くかなあ

6 ::2008/07/11(金) 22:08:36 ID:M2eSORva
どんな作品でも大歓迎という原則だけは譲れないぜ!!

コラボは非推奨……か。コラボも大歓迎と書いてもらいたいところだが、まぁ、許してやろう。
ただし、他作品とからめたからといって、叩き出すやつがいれば
徹底的にこのスレを荒らす。いいな?

俺(元祖スレ主)は他作品とのクロスを待っている。ただしここはエヴァ板だ。
エヴァの世界観を尊重してくるよ。

7 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/11(金) 22:10:28 ID:???
>>5
自分はLive2chだから容量見れるんだが
気付いた時には既に500kだったよ
結構1回の投下量多いスレだから450k辺りで準備した方が良いかも
後過疎った時は980辺りで立てるとかかな?

8 ::2008/07/11(金) 22:22:19 ID:M2eSORva
「読み手の人がイーッてなります」の表現が好かんな
次スレでは表現を変更するという方向で異議はないか?


9 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/11(金) 22:27:07 ID:???
450k超えたら気付いた人が報告で、500k近辺で次スレかな。
過疎ってたら980踏んだ人でいいとおも

10 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/11(金) 22:28:17 ID:???
そうだね
450kを目安にしよう

11 :戌(元祖スレ主):2008/07/11(金) 22:38:29 ID:???
うむ、450kか。それでいいだろう。


重ねて言うが、誰かクロスを書いてくれ!
このスレを立てたそもそもの理由はクロスが読みたかったからなんだ!
頼む!


12 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/11(金) 22:42:06 ID:???
何とのクロス?

13 :このスレの>>1より:2008/07/11(金) 22:43:40 ID:???
テンプレ追加

ageるヤツと荒らしは徹底して無視&スルーで
sage進行推奨

14 ::2008/07/11(金) 23:01:22 ID:???
>>12
できれば有名どころがいいな。なおかつエヴァと絡めて不自然にならない作品だと◎。
マイナーなものでもさりげなく説明を入れて読者を置いてきぼりにしないように配慮してくれればいいんだけど。


15 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/11(金) 23:14:57 ID:???
投稿者以外はコテは非推奨 ※荒らしとみなしておk

16 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/11(金) 23:19:19 ID:???
今更だけど>>1おっつだよ!

17 :前スレ6:2008/07/12(土) 01:36:11 ID:???
続き持ってきたんだが、こっちに書けばいいのか?
それともまだ早い?
正直俺、こういうの初めてなんでよく分からんのだよ。

ていうか、容量上限来たのって、もしかして俺が詰め込んだせい?
いや、でも、連投規制対策には詰め込み必須だしなぁ…。

あ、>>1はスレ立て乙!

18 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/12(土) 01:48:09 ID:???
>>17
投下してくれえええええええええええええええ!!!!!!!!!!!
頼む!!!続きを!!!

19 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/12(土) 01:49:00 ID:???
ここでいいんだよ
今投下していいんだ
ここはそのためのスレだ

20 :逆行104:2008/07/12(土) 02:11:44 ID:???


「あら? シンちゃん、箸、止まってるわよ。
今日の食事、口に合わなかった」
「あ、いえ。そんなことないです。…ほら」
ぼーっとしていたシンジはミサトの言葉に慌てておかずを口に運び、
モゴモゴと咀嚼してみせる。
そんな二人に、呆れた声を出したのがもう一人の同居人だ。
「そんな台詞、よく口から出てくるわね、ミサト。
これ全部、シンジが作った物じゃない」
「あ、あはは。冗談よ冗談。……っていうか、
シンちゃんのツッコミ待ちのつもりだったんだけど」
その言葉に、女性二人の視線がシンジに集中した。
「…う?」
シンジの頬を、汗が伝う。
アスカはそんなシンジを胡乱な物でも見るような目で眺め、
「それだけこいつが重傷、ってことね」
そう言ってから髪をかきあげると、
「ま、アタシみたいな美少女と急に一緒に暮らすことになったんだから、
無理もないけど」
そう、臆面もなく言い放った。
「…そんなんじゃ、ないよ」
対して、シンジは弱気に反論するしかないが……。
実際には、アスカの言う通りだった。
アスカと同居するという現実が、まだ受け止め切れていない。
(だって、前の世界ではユニゾン訓練の後からだったのに、いきなり、こんな……。
同年代の女の子と同居するなんていうのが、そもそも無茶なのに……)
しかし、シンジの戸惑いなんて女性陣二人にとっては些細な問題らしい。
シンジがもう何の反応も見せないと見て取ると、二人で会話を始めた。

21 :逆行105:2008/07/12(土) 02:13:21 ID:???

「あ、そうだ。アスカ、何かおっきな家具とかで必要な物があったら早めに言っといてね。
こっちで手配して、業者に直接頼んじゃうから。今何か必要な物、ある?」
「そうねぇ。やっぱり収納は少ないわよね。
特に洋服入れられるようなヤツなんか絶望的よ。
一体、これまでどーやって暮らしてたのか、って感じ。
これじゃ、荷解きも出来ないわよ」
「おっけー、了解! ……あ、カタログ見る?
シンちゃんの時に持ってきたのが、確か部屋のどっかにまだあると思うけど」
「いいわよ。ミサトのセンスで適当に選んじゃって」
「あら、いいの? 本当に適当に選んじゃうけど」
「だって、あの部屋からカタログなんて見つけるよりは、
砂漠で米粒見つける方が簡単じゃない」
「……いくらなんでもそんなに散らかっちゃいないわよ」
楽しそうな会話の影で、シンジはもそもそと無言で食事を続ける。
……少し侘しかった。
しかし二人はあいかわらずで、
「そうだ、新しいベッドも必要よね」
「ベッド? ああ、元からあるの使ってるから、別に要らないわよ」
「だってそれ、シンちゃんが使ってたヤツよ。いいの?」
「……いくら配達が早くても頼んだその日に来るワケじゃないでしょ。
元々日本で暮らしてたミサトには分かんないかもしれないけど、
一日だって床で寝るのはアタシにはキツイのよ」
「ふぅん。だからシンジ君の使ってた物でも、ないよりはマシ?」
「…そうよ」
そこで急に、ミサトは今まで見向きもしていなかったシンジの方を向くと、
「だってさ、シンちゃん。よかったわね」
「な、何がよかったなんですか?! 変なところで僕に振らないでくださいよ」
そんなことを言って、シンジを大いに慌てさせた。

22 :逆行106:2008/07/12(土) 02:14:29 ID:???

「ご、ごちそうさまっ!」
そこから逃げるように、シンジは席を立つ。
食器を下げると、そのまま洗い物に移行した。
手は自動的に洗い物を続けながら、
シンジは先ほどのことを思い返す。
(きっとミサトさん、気を遣ってくれたんだろうけど……。
けど、もうちょっと別の気の利かせ方だってあるだろうにさ…)
そんな折、
「残りの食器、持ってきたわよ」
アスカの投げやりな声とともに、後ろから食器が差し出された。
突然のアスカの接近に、少しだけ、体を緊張させながら、
「あ、すぐ洗っちゃうから、そこに置いといて」
と、シンジは言ったのだが、そこからさらに手がにゅっと伸びてきて、
「ほら、スポンジ貸しなさいよ」
シンジの手から、スポンジを奪い取ろうとする。
「い、いいよ。今日の当番は、僕なんだから」
「一から十までやられちゃうと、居候気分で何か落ち着かないのよ。
いいから貸しなさいよ、ほら」
しかしシンジは、それでも譲らなかった。
「こういうの、やりたい気分なんだ。
だから、アスカは座っててよ。…ね?」
そこまで言うと、アスカの手はすっと抜けていき、
「……そう。なら、いいわよ。
もう、頼まれたって手伝ったりしてやんないからね!」
ドタドタと、アスカが遠ざかっていく気配。
それを確認して、シンジは、
「はぁー」
と大きくため息をついた。

23 :逆行107:2008/07/12(土) 02:15:42 ID:???

戻ってきたアスカの不機嫌なオーラを見て取ったミサトは、
既に読み終わっていた雑誌に再び視線を落とした。
「うわ。この車、無駄にかっこいいわねぇ。
……愛車には、したくないけど」
などとわざとらしくこぼして、熱中している演技までしてみせる。
その涙ぐましい演技が功を奏したのか、
アスカはミサトを通りすぎ、ミサトはほっと息をついた。
それからアスカはテレビの前にどっかりと座り込んで、
ガチャガチャとリモコンを操作してチャンネルをランダムに変え続け、
「……どれも、つまんない。なんで日本の番組って、
こうくだらないのばっかりなのかしら」
と決めつけて、リモコンを放り投げてしまった。
……無音。
空気はよどみ、ミサトは必死に雑誌のページをめくる。
しかし、
「ねぇミサト。アイツ、怒ってんのかしらね?」
アスカの問いかけに、無視を決め込むワケにはいかなくなった。
「…あいつって、シンジ君?」
今気づいた、というように、返事をする。
そんなミサトの様子を、特に気にした様子もないままに、
「いきなり自分の生活空間に踏み込まれたワケでしょ。
そういうの、嫌がりそうじゃない」
アスカはテレビの真っ黒な画面を見ながら、そんなことを言った。
「んー。どうかしら。ただ戸惑ってるだけに見えるけど?」
ミサトがそう返しても、アスカから明瞭な答えはない。
ただ気のない声で、「かもねぇー」などと、
独り言のような言葉がこぼれるだけだった。
その様子に、ミサトは雑誌を膝に置いて、
アスカにきちんと顔を向けた。

24 :逆行108:2008/07/12(土) 02:16:54 ID:???

「シンジ君のコト、気になるの?」
軽い口調で、ただし、
そこにからかうような響きが混じらないように気をつけて、
少しストレートに尋ねてみる。
アスカは、テレビを見つめたまま横に首を振った。
「気になってるワケじゃないわよ。ただ…」
「ただ?」
「……ただ、気に入られたいだけ」
「へ?」
思わず出たミサトの間抜けな声に、
アスカは自分が話しすぎたと感じたようだった。
「なんでもないわよ! アタシもう寝るから。おやすみ!」
唐突に立ち上がると、部屋の方に歩いていってしまう。
「ちょ、ちょっと、アスカ…?!」
ミサトはそれを引き止めようとするが、
「……ミサト。ずっと言おうと思ってたけど、
その雑誌、上下逆さまよ」
「え、ウソッ!」
慌てて膝の上に落いた雑誌を確かめるミサトに、
「バッカみたい…」
と、それだけを言い捨てて、
アスカは自分の部屋に入って、
扉を閉めてしまった。

25 :逆行109:2008/07/12(土) 02:18:15 ID:???

閉じきってしまったアスカの部屋を見つめ、
「まずったわねぇ…」
もちろん上下逆になどなっていなかった雑誌を八つ当たり気味に弾いて、
ミサトはそう呟いた。
(……完璧に、見透かされてたわね。
あの子、シンジ君と違って目端が利くの忘れてた)
やはりぞんざいに、雑誌を横に放り捨てる。
(…ったく、セコイ真似はするもんじゃないわ。
一日目だからあんまり波風立たせたくなかったってのが理由だけど、
完っ全に裏目だわね。
信頼関係の構築、いきなり初日から失敗、かぁ)
そうやってミサトが頭を抱えていたその時、
洗い物を終えたシンジが戻ってきた。
ミサトの様子の変化に気づくこともなく、
「あれ、ミサトさん。…アスカは?」
シンジの問いに、ミサトは先ほど閉まった部屋を指差した。
「自分の部屋。引きこもっちゃったわよ」
「そ、そうなんだ」
それを聞いて、シンジはほっとしたような、残念そうな表情を見せる。
そして、
「あの、み、ミサトさん…」
いかにもオドオドとした様子で、
「アスカ、その、怒ってなかった?」
どこかの誰かと同じようなことを訊いてくる。
「あんたたちって……」
その言葉にミサトは、今日一日の疲れをまとめて吐き出すような、
大きな大きなため息をついたのだった。

26 :逆行110:2008/07/12(土) 02:20:12 ID:???


夜。シンジはアスカの部屋の前に立って、そのドアをノックした。
「……アスカ。やっぱり、話を聞きたいんだ」
返答はない。
「アスカ? 聞こえてる? 返事、してよ…」
今度はもう少し強く叩いてみる。
だが、それでも中からは物音一つしない。
シンジは少し躊躇したが、
「アスカ。……入るよ?」
そう宣言してから、三秒間待って、
「だ、ダメだって言わなかったんだから、本当に入るからね」
往生際悪くそんな風に弁解しながら、ゆっくり、部屋の中に入っていく。
アスカの部屋は真っ暗だった。
「……アスカ? いる?」
小声で呼びかけながら、ベッドに近づいていく。
「アスカ、本当に寝てるの?」
やはり、返事はない。
薄暗がりに目が慣れてくると、かつて自分が使っていたベッドの上、
壁に身を寄せるようにしてアスカが寝ているのが見えた。
「……寝ちゃってる、のか。
綾波のこととか、きちんと話をしたいと思ったのにな」
闇の中、じっと、その寝姿を見つめる。
アスカの顔はシンジと反対側に向けられていて、その表情はさやかには見えない。
その事実はなぜか、アスカがシンジを拒絶しているように感じられた。

27 :逆行111:2008/07/12(土) 02:24:36 ID:???

「アスカ…」
アスカの拒絶を意識した途端、体が自然に動いていく。
無意識に、シンジはアスカに近づいていた。
「アス、カ…」
そのまま、どんどんと、どんどんと近づいて、近づいていって、
アスカの規則正しい寝息が耳に届くほどになった時、
「ア、スカ…。僕、は……君、を…」
それが唯一自然なことで、そうするのが当たり前であるというかのように、
淀みのない動きで、シンジは両手をアスカの首元に伸ばして……。
「……あ」
――その手がアスカの肌に触れる直前、我に返った。
一歩、二歩と後ずさる。
自分の手を信じられない物でも見るように、見つめて、
「……一体、何をやってるんだ、僕は」
そのまま自分の体に封じ込めるみたいに、両腕を抱えた。
――それでも、アスカは目覚めない。何の反応も見せない。
「アスカ、僕は……」
シンジの葛藤を他所に、穏やかな寝息を連続させるアスカを見つめ、
「……僕は君のこと、好きになりたいよ」
シンジはそっと、部屋を後にした。

28 :逆行112:2008/07/12(土) 02:26:01 ID:???

呟かれた声も、閉ざされていく闇の中に、置き去りにされて、
光も音も、全てがなくなった後。
真正の暗闇の中で、アスカの体がわずかに身じろぐ。
壁に密着しそうなほど片側に寄ったアスカの体は窮屈そうで、
反対側には充分なスペースがあるのに、
それでもアスカは頑なにそちらに行こうとはしない。
まるでベッドの中心に何かの境界線があるみたいに、
半分だけのスペースで寝て、半分だけ布団をかけて、半分だけ枕を使う。
……そんな中で、規則正しかった寝息は止まり、
再びアスカが身じろぐ。
そして、
「バカ、シンジ…」
呟かれた声は、閉ざされた闇の中、誰にも届くことなく、消えた。

29 :6:2008/07/12(土) 02:28:27 ID:???
以上。だってもう眠いので。

いちいち前スレとか入れるの面倒なので、
ハンドル名は引き続き6という事でお願いします。

気が向いたら明日辺りまた来るかも。

30 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/12(土) 02:36:10 ID:???
乙!GJ!続きをまた待ってるぜ!

31 :6:2008/07/12(土) 13:56:21 ID:???
昨日の今日だが……

32 :逆行113:2008/07/12(土) 13:57:21 ID:???

「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしく!」

シンジの記憶より一日遅れで果たされたアスカの転校は、
やはり前回と同じように全校に波紋を呼び、アスカは一躍時の人となった。
そんなケンスケの言うところの「猫も杓子もアスカ、アスカ」状態の中、
一人だけ、全くのマイペースを貫いている人間がいた。
――それはもちろん、綾波レイのことだ。
アスカがレイのことをずっと気にしていたらしい、と、
加持から聞いて知っているシンジは不思議に思ったのだが、
アスカの方もまた、レイに積極的に関わっていこうとしなかった。
NERVでも今のアスカは弐号機の調整にかかりきりなせいか、
まだきちんと顔合わせはしていないようだった。
……そしてまた、シンジとアスカの関係も同じような物だ。
いつまで経っても二人の間はぎこちなく、
特に学校ではアスカに気安く話しかけられない。
周りの人間の反応もそうだが、
シンジはアスカに『避けられている』と感じていた。
目的地が同じことは多いのに、
一緒に登校したり、下校したりということもない。
実際、今日も二人ともNERVで実験の予定があるはずなのに、
シンジに何も言わせるヒマも与えず、アスカはヒカリと連れ立って、
さっさと教室を出て行ってしまった。
「……僕も、行こうか」
シンジもその後ろ姿をただ見送るだけで、
積極的に追いかけるほどの勇気はない。

そして、そうなれば必然的に……。

33 :逆行114:2008/07/12(土) 13:58:14 ID:???

「あ、綾波。綾波も、今から…?」
「…ええ」
そのやりとりをあいさつの代わりにして、
二人は並んで歩き出す。
しばらく、無言の行進が続いて、
「最近、よくわたしに話しかけてくるのね」
先に口を開いたのは、レイだった。
「そう、かな? 意識はしてないけど」
むしろ、今までが少なすぎたのではないか、とシンジは思う。
(でも、少なかったのが普通になるにも、理由がいるかもしれない)
そんな考えに、シンジが思い至った時、
「どうして?」
レイが、言葉を重ねてきた。
「え、と。意識してないから、どうしてって、言われても…」
「セカンドが、こわい?」
意外にも核心を突く言葉に、シンジは少し息を詰まらせて、
「……うん。それは、少しある。というか、怖いよ。アスカと話すのは。
アスカとは、ちょっと、色々、あって…。
だけど、少なくとも意識してレイに、……逃げてる、ワケじゃないから」
「なら、どうして話しかけてくるの?」
それがどうしても理解出来ないというように、レイが尋ねる。
「それは……」
シンジはまた少し、言葉に詰まる。
でも、それこそ意識していなかっただけで、
考えれば理由はすぐに知れた。

34 :逆行115:2008/07/12(土) 13:58:55 ID:???

「きっと、綾波が話しやすいからだと思う」
シンジの返答に、レイは驚きに目を見開き、
会話を始めてから初めてシンジを正面から見た。
「…どうして?」
シンジは、また少し考えて、
「たぶん、きちんと話を聞いてくれるからじゃないかな。
返事は、ちょっとそっけないけどね」
そう言って『ははっ』と笑った。
レイは、なぜかその顔を直視出来ないというように、目を逸らす。
そして吐き捨てるようにぼそっと、
「買いかぶりだわ、それは」
心持ち早口で、そう漏らす。
「そうかな。そんなことは、ないと思うけど…」
否定される理由が分からなくて、
シンジは不思議そうに眉をたわめた。
そんなシンジから、やはり視線を逸らしたままで、
「わたし、もう行かなきゃいけないから。…それじゃ」
レイはそう言うと、シンジの前から足早に離れていく。
小さくなっていくレイを見送って、シンジは首を傾げた。
「もしかして、怒らせちゃったかな…」
答えなど出るはずもなく、しばらくしてシンジもまた、
レイの歩いていった道をゆっくりとたどっていく。

――そのやりとりを、後ろにいたアスカに目撃されていたと知ったのは、
次の日、学校に行ってからだった。

35 :逆行116:2008/07/12(土) 13:59:43 ID:???

「アンタ、やっぱりファーストと仲いいんじゃない」
「……え?」
昼休み。アスカはわざわざシンジの席まで来て、
そんなことを言ってきた。
学校ではアスカに避けられていると思っているシンジにとって、
それは戸惑うような出来事だったのだが、
「昨日、一緒に歩いているとこ、見たわよ」
「あ、あぁ…。確かに、昨日は途中まで、綾波と一緒に…」
まるで当てつけるみたいにシンジの言葉をさえぎって、
「まーったく、うらやましいわぁ。
アタシとはまだ一言も口を利いてくれないファースト様と、
あんなに親しそうに…」
「そっか! アスカ、僕に綾波を紹介してほしかったんだ」
アスカが口にした台詞を聞いて、シンジはようやく得心した。
レイのところに全然あいさつに行かないな、と思っていたが、
それはシンジが綾波を紹介するのを待っていたからだったようだ。
(アスカも、綾波は苦手だったんだな。
言ってくれたら、すぐにでも紹介したのに。
……でも、それが言えないからアスカなのかも)
「な、ちょっと、アンタね…!」
やはり素直になれず、口ごもるアスカにシンジは笑いかけ、
「うん。もちろんいいよ。今、この時間なら、綾波は…」
そう続けようとしたのだが、
「アンタって奴は、一体どこまでズレてりゃ気が済むのよ!
いいわ! ファーストには自分で会いに行くから!」
アスカにまくしたてられて、逆に口をつぐむことになった。
経緯はとにかく、アスカはとうとうレイと対面する覚悟を決めたようだった。

36 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/12(土) 14:05:35 ID:???
キタ━━━━ヽ(^∀^ )ノ━━━━!!!!

37 :逆行117:2008/07/12(土) 14:07:07 ID:???

「アタシ、アスカ。惣流・アスカ・ラングレー。エヴァ弐号機のパイロット。
仲良くしましょ!」
たくさんの物見遊山の観衆を引き連れて、
衆人環視の中放たれたアスカの自己紹介の言葉は、
シンジの記憶にある前の世界の時と、まるっきり同じだった。
「どうして?」
そして、レイの反応も。
とりあえず今はこのまま、何事もなく終わってくれればいい。
シンジはそう祈るように考えていたのに……。
「その方が都合がいいからよ。色々とね」
「…そう。でも、ムリだと思うわ」
そのレイの一言で、二人の間に不穏な空気が広がる。
「どうしてよ!?」
アスカが叫び、そして、
「わたし、あなたのこと、好きになれそうにないもの」
「なっ…」「えっ?」
レイが放ったその言葉は、アスカだけでなく、
後ろで様子をうかがっていたシンジまでも驚かせた。
「だって、あなたは――――」
レイが何かを言い、しかし今度は遠くにいたシンジの耳には届かなかった。
たぶん、レイの一番近くにいたアスカにしか聞き取れなかっただろう。
しかし、その言葉がアスカにおよぼした影響は強烈だった。
「アンタ、今なんて言った?」
シンジには、制止するヒマどころか、声をあげる間もなかった。
一瞬でレイまでの距離を詰めたアスカは、
レイの胸倉をつかんでその顔をにらみつけていた。

38 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/12(土) 14:21:47 ID:???
あ、あれ?ここまで?連投規制?

39 :逆行118:2008/07/12(土) 14:24:06 ID:???

一方で、そんな状態にあってもレイの態度は崩れない。
「あなたのこと、好きになれそうにないと言ったわ」
冷静に、手にした本を横に置いて、じっと正面からアスカの顔を見つめ返した。
だが、アスカにはその態度すらも気に食わない。
両手にさらに力を込め、吼えたてる。
「そっちじゃない! その後よ! その後、何か言ったでしょ!?」
「そのあと? ……さあ、記憶にないわ」
「ウソ! 確かに言ったわ! さっきの言葉、もう一度言ってみなさいよ!」
「知らない。わたしはそれからなにも言ってない」
その言葉と変わらぬ態度が、アスカに何かの一線を越えさせた。
「アンタ、しらばっくれるのも、いい加減に…!」
カッとなったアスカが、右手を大きく振り上げて、
「や、やめてよ、アスカ!」
振りかぶったアスカの右手に、シンジがしがみつく。
しかし、それは完全に逆効果だった。
「アンタは、そうやっていつもコイツの…!」
アスカの中から最後の理性が吹き飛ぶ。
「放しなさいよっ! 放してっ!」
その全ての怒りは、本来の相手ではなく、自分を止めようとする少年に向かい、
ドザッ!
思わず顔をそむけたくなるような嫌な音がして、シンジは地面に倒れ込んだ。
――場の空気が凍る。
転校生が見せた意外な凶暴性と、おふざけのレベルを超えたシンジの倒れる生々しい音に、
緊張感をはらんだような空気が漂った。
「……ぁ」
アスカが思わず声を漏らす。

40 :逆行119:2008/07/12(土) 14:28:08 ID:???

その場にいた人間は誰一人、口を開くことも出来ず、
皆、ただ呆然とアスカとレイとシンジ、三人の当事者たちを眺めていた。
だが、それは一時的な物で、何かちょっとしたきっかけさえあれば、
停滞し抑圧された感情がアスカへの不満や不信となって、
一気に押し寄せていくのは明らかだった。
緊張に耐え切れなくなった誰かが、今にもその口火を切ろうとして、
――しかし、それより早く、
「も、もう。痛いよアスカ。アスカってほーんと、馬鹿力なんだから…」
意外なほどに軽やかな足取りで、シンジが起き上がる。
それを見て、今まで遠巻きに様子をうかがっていたトウジが近づいてくる。
「…い、碇。お前、ホンマに大丈夫なんか?」
恐る恐る尋ねてくるトウジに、シンジは笑いかけると、
「うん。アスカってこう見えてすごく乱暴だからね。
訓練の時とかで、これくらいのことはしょっちゅうなんだよ」
「ひえぇ! 美人の相方やるのも楽やないなぁ。
ワイにはとてもマネできんわ……」
トウジのおどけた言葉に周りからも笑いが起こり、場の空気が弛緩していく。
それを感じ取って、内心ほっと胸をなでおろしたシンジが、
うつむいてしまっているアスカに何か声をかけようとした時、
「碇くん。保健室に行きましょう」
いつのまにか傍らにいたレイに、その腕をとられた。
「あ、綾波…? で、でも……」
突然のレイの行動に狼狽するシンジに、レイは顔を寄せて、
「彼女は興奮しているわ。時間をおいたほうがいい」
ささやかれた言葉と、呆然として、
いまだに事態の把握が出来ていないように見えるアスカを一瞥して、
「う、うん…」
シンジはうなずいた。

41 :逆行120:2008/07/12(土) 14:32:19 ID:???

どこか不完全燃焼気味な群集をかき分けて、
シンジとレイは校内へと向かっていく。
それによって、集まっていた人垣もまた、
しらけたように少しずつバラけて散っていく。
――だが、それでもその場に残る人間もいた。
その内の一人だった相田ケンスケは、
やはりその場に立ち尽くしたままのアスカに寄っていった。
その目に強い敵意を宿して、口を開く。
「惣流、碇に感謝した方がいいんじゃないか?
あのままじゃ、オマエ、本当に悪者になってたぜ?」
その言葉は敵愾心に満ちた物であっても、決して理屈に合わない言葉ではなく、
だが、
「あんなの……。アタシが頼んだワケじゃないわよ…」
アスカはそれを突っぱねた。
メガネに隠れたケンスケの表情が、険悪さを増す。
「ふぅん。惣流はやっぱりそうなんだな。
さぞいい気分だろうね。そういう風に、
何でも自分を中心に世界が回ってるって考えるのはさ。
だけど、そういう生き方が…」
「そこまでや」
肩をつかまれたケンスケが、いきり立って背後のトウジに勢いよく向き直る。
「止めるなよ、トウジ。あいつ、シンジに助けられたくせに…!」
しかし、トウジは首を振った。
「一番それを分かっとるんは、まちがいなく惣流や。
……プライド高そうやからな。色々フクザツなんやろ」
ケンスケはもう一度、トウジの顔を苛立たしげににらみつけ、
「わかったよ…!」
メガネの奥に色々な感情を押し込めると、
トウジと二人、連れ立ってその場を後にした。

42 :逆行121:2008/07/12(土) 14:33:44 ID:???

――シンジのケガは、実際に大したことはなかった。
擦過傷がいくつかと、何箇所かの軽い打撲。
保険医からそれを聞き、治療を任せると、レイはすぐに立ち上がった。
「それじゃ、碇くん。わたしはもう行くから」
そう言って、保健室を出ようとする。その、背中に、
「あ、ありがとう、綾波…」
シンジはそう声をかける。
だが、その感謝の言葉に、レイはしかし、
「…ごめんなさい」
なぜか謝罪の言葉を残し、廊下に消えていった。

廊下に出ると、レイは教室とは逆方向に数歩、歩いて止まり、
「彼のケガ。大したことないそうよ」
誰もいない廊下に向かって、そう言った。
いや、無人、ではなかった。
バツの悪そうな顔をして、柱の影からアスカが出てくる。
「な、なんで…」
「そのために、ここにいたのでしょう?」
まるで温かみのないレイの言葉に、アスカはひるみながら、
「な、なんでアタシに、そんなこと教えるのよ」
精一杯の虚勢を込めて、そう問い質す。すると、
「わからないの?」
「…え?」
「教えたのだから、帰って、と言っているの」
それだけ言うと、今度こそ、レイは教室に向かって歩き始める。
アスカのことは、もう振り返りもしない。
ただ、階段を登り、アスカの姿が見えなくなってから、
「……イヤな感じ。これは、なに?」
レイは一人、胸を押さえた。


43 :逆行122:2008/07/12(土) 14:39:14 ID:???


昼休みの終了間際。
治療を終え、教室に戻ろうとしたシンジの前にも、
待ち伏せていた人影が現われた。
「そろそろ来るころじゃないかと思ったんだ。
まだ休み時間が終わるまで、五分くらいなら時間はある。
ちょっと歩こうぜ?」
「……うん」
シンジはその人影、相田ケンスケについて、歩いていく。
「さっきの、見てたよ。碇、ほんとにあいつが大切なんだな」
「……うん」
やはり、素直に。とりつくろうことなく、うなずく。
「オレだって、他人のことをあんまりとやかく言いたくはないんだ。
……だけど碇。やっぱりあいつは普通じゃない」
「アスカには、何か秘密があるの?
一体ケンスケは、何を知ってるんだよ…!?」
かみついてくるシンジに、ケンスケも足を止めた。
シンジを振り向き、とつとつと話し始める。
「オレ、見たんだよ。オーバー・ザ・レインボウで使徒が襲ってきた後、
オレは甲板に出て色々見学してたら、その時ちょうど惣流がやってきて…」
「やってきて? それで、どうしたのさ?」
ケンスケはしばらく躊躇うように沈黙した後、
「あいつ、いきなりとんでもないことを始めたんだ。
そこにあった重そうな瓦礫を持ち上げて…」

そうしてケンスケは話を始める。
レイにあれだけ言われても、結局その場を離れられなかったアスカが、
物陰で話を聞いているのも気づかずに。
――そしてアスカも、思い出す。
『その時』のことを。

44 :逆行123:2008/07/12(土) 14:42:27 ID:???


――オーバー・ザ・レインボウでの第六使徒との戦いの後、
「ちょっと一人で風に当たりたいから」
と断って、アスカは一人で甲板に出ていた。
もちろんシンジやミサトに、
「絶対ついてこないでよ!」
と釘を刺すことも忘れない。
実際に後ろを振り返って、誰もいないことを確認しておく。
そこで改めてきょろきょろと辺りを見回し、使徒との戦闘で出来た、
剥離した甲板の一部、つまりは大きな瓦礫、を持ち上げて、
「これが頭になんて当たったら、きっと余裕で死ねるわね」
そう呟いて不敵に笑ってから、それを思いっきり上に放り投げた。
それは与えられた運動エネルギーを消費しつつアスカの頭上へと飛んでいき、
やがて全ての力を使い果たして、まっすぐに落下する。
――バン、という音がして、しばらく。
瓦礫はアスカから二メートルほど横に落ちた。
「……なんでよ!」
アスカが壁に向かって拳を振り抜く。
ドン!
しかし、アスカの拳は、壁まであと一センチという所で止まっていた。
拳を落として、歯を食いしばる。
「くそ、くそ、くそ、くそ、くそぉっ!」
噛み締めた歯の間から、呪詛の言葉が漏れた。

45 :逆行124:2008/07/12(土) 14:45:16 ID:???

――あなたが消えたら、碇くんが哀しむもの。
それが、あの世界でアスカが最後に聞いた言葉だった。
「助けられたっていうの? アタシが、あの、ファーストに…!」
あの、赤い海の中で、アスカは一度、死を、自分の存在の消滅を覚悟した。
シンジに似せられた何かよく分からない物に囲まれ、
心をズタズタにされ、自己の存在の消滅を願わされた。
――その時だ。
ファースト、綾波レイがやってきたのは。
レイはアスカにまとわりつく影を吹き散らし、
消えかけていたアスカの元までやってきて、……アスカと同化した。
自分と他人の境界がなくなって、お互いの心と体が溶け合って混ざり合う、
あの不快な感触は、いまだに忘れようとしても忘れられない。
「……っく」
その時の感覚を思い出して、アスカは思わずぐっと自分の拳を握り、
……しかし今はもう、自分の中に異物が入り込んでいるような違和感はない。
かつてレイだったモノは、完全にアスカの中に吸収されていた。
それは、アスカの意志がレイのそれに打ち勝った、と考えることも出来る。
だがアスカには、どうしてもそうは思えなかった。
――きっとそれすらも、レイの意志。
「アタシのこと、嫌いなはずなのに。シンジに会わせないように、
一度は争いもしたっていうのに」
だがレイは、自分の身を投げ打ってまで、アスカを救うことを選んだ。
アスカには、そう思えてならない。
レイにとって、アスカがいない方がきっと、都合がいいはずなのに…。
「それでも、アタシを助けるの? シンジのためだからって、
自分を犠牲にしてまで…! アンタはどうして、そこまで自分を殺せるのよ!
そんなに、そんなことが出来るくらい、アイツのこと…」
言葉は、最後まで口に出来ない。
はっきりと口に出してしまえば、敗北感に、膝が折れてしまいそうで…。

46 :逆行125:2008/07/12(土) 14:50:42 ID:???

アスカが死に物狂いでシンジの元へ進もうとしたのは、
そこにシンジと、自分自身の幸福を求めていたから。
……つまりは、それだって自分のため。
アスカにはどうしても、レイのような選択は出来ない。
出来る気がしない。
そして、レイのその献身の結果が、またアスカを戸惑わせる。
あれから、アスカに吸収される形で、レイとの同化が終わって、
「その結果が、この、ワケ分かんない世界で…」
気がつくと、アスカはドイツに『戻って』いた。
ただ単に、ドイツという国に戻っただけではなく、
まだ人がいなくなる前の、過去のNERVドイツ支部に、
文字通り『戻って』きていたのだ。
それもまるで、計ったように来日の直前というタイミング、つまり、
――アスカにとって、全てが始まる前に。
「これが、アンタの意志なの、ファースト? アタシを過去に飛ばして、
あの結末を変えろって、そう言いたかったの、アンタは…?」
どういう理屈が働いたのかは分からない。
時間移動なんてナンセンスだと思っていたし、
今でも完全に信じているとは言いがたい。
だが、レイが自分の全存在を懸けて、アスカを過去に送ったのだとしたら、
「嫌なのよ、こういうのは…! 自分の命が、自分の物じゃないみたいで…」
アスカには、それを受け止めるだけの覚悟がまだ、なかった。

47 :6:2008/07/12(土) 14:51:47 ID:???
以上。

今出せるのは全部投下したんで、次は少し先になるはず。

48 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/12(土) 14:56:13 ID:???
乙です!乙!そしてGJ!!!!
急かしたくはないけど早く続き読みたいw
感心するよほんと!たいしたもんだ
ヽ(´ー`)ノ

49 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/12(土) 16:07:17 ID:X3VdLQYA
6の人GJ!

ときに、ここって他スレで書いたSSの続きって公表してもいいのかいな?
消滅したスレに書いた奴なんだが
続きが書けるなら前の分も含めて載せてみたい

50 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/12(土) 16:10:59 ID:???
カマンカマン!

載せればいいと思うよ

51 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/12(土) 17:05:24 ID:???
前スレのテンプレ書いたやつに
「それはここ最近クロスを暖めていた俺への差別ですか、そうですか」
とカキコしたのに512KBを超えました、とまたも退けものみたくされたぞw
とりあえずテンプレを考えた奴は新宿西口に来るよう

52 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/12(土) 18:45:24 ID:???
クロスいらね
やりたきゃ他板でやれ
以上


53 :49:2008/07/12(土) 19:09:05 ID:???
ほいじゃ、まず他スレ既出分のみ・・・

54 :49:2008/07/12(土) 19:20:16 ID:???
やあみんな、俺だ。

グレゴール・ザムザは、ある朝なにか気掛かりな夢から眼をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な毒虫に変わっているのを発見した。
俺はある朝、千代大海が連続優勝して横綱になり、幕内の相撲取りがみんなソリの入った髪形になる(なぜか幕下以下はそのままだった)という実に厭な夢から目を覚ますと
唐突に自分が知らない部屋にいることに気がついた。
まあ驚いたね。体型つーか顔かたちも変わってるし。もうブルワーカーの使用前と使用後もびっくりの大変身だ。
まあ一週間くらいは完全に混乱してたと思う。長すぎ?

くだくだしい説明は省く。
要するにFanFictionではよくある話で、エヴァによく似た世界の中にトリップしてしまったのだ。
まあ、俺がそう信じ込んでいるだけで、実は単に長い夢を見ているだけかも知れん。
この際どっちでも構わんけどな。似たようなもんだし。

普通はこれでシンジになってたり、ゲンドウになってたり、と登場人物の誰かに生まれ変わってるもんなのだが
(そういや中には男なのに何故かアスカになってたりするのもあった気がする。実にうらやましい)
残念ながら俺はオリキャラというかモブというか、聞いたこともないキャラになっていた。
役どころ?は主役どものクラスの同級生。冴えない顔立ちの男子で、どうやら一人称は「僕」。
ついでに言うと成績はどの教科も良くないし友達もあまり居なかったようだ。
もっとも人付き合いが良くないのとアパートに一人暮らしってのは、今から思い返すと好都合だった。
俺の態度がおかしいのを疑問に思った奴もいたらしいが、今ではそれも忘れ去られて淡々と過ごしている。
毎日暑いのと、年中真夏のこのご時世に部屋にクーラーがないことを除けばまあまあ快適な生活だ。

55 :49:2008/07/12(土) 19:20:46 ID:???
いま、窓をでっかく開け放った教室の中では、ご存知根府川先生がいつもの昔話を始めている。
教え方は丁寧なんだが、昔話を始めるとエンドレステープ状態だ。
半ばあきれて入道雲の立ってる空に視線を移そうとして、窓際の赤い髪留め女に目を止める。
これが綾波レイとは未だに思えないんだが……

どういうわけか、この世界では綾波レイと惣流アスカラングレーの姿が逆転している。
取り敢えずこの間レイそっくりの「惣流」が転校してきたから、姿が入れ替わってるのは間違いない。
これで性格も入れ替わってたら楽しいんだが、そっちは多分そのまんまだ。
あ、多分、ってのはモブキャラの悲しさってやつな。直接お近づきになったわけじゃーないので、細かい性格までは知らないの。

そうそう、あとは碇シンジ。これも凄い。何が凄いってあれですよ。外見がしとしとぴっちゃんタブリスさま。
これが見た目、性格ともにアニメのままの黒ジャージ男やミリヲタのジャンと楽しげに会話したりとか。
一番頭を抱えたくなったのは数日前の昼飯時。
蒼みがかった銀髪の「惣流」さんが渚っぽい「碇」にバカシンジーって言って、言われた方があの<s>ホモっぽい</s>謎めいた微笑……じゃなくてあからさまなお愛想笑いでごめんとか言ってたのさ。

どうも「碇」は何かの勘違いで「惣流」の分の弁当を作ってなかったらしい。
仕方なく黙って「碇」自身の弁当を「惣流」に回して、自分は購買にパン買いに行こうとしたらしい。いい奴だねぇ。
ただそこまでは良かったんだが、そこを当人に見咎められてバレたと。
照れ隠しにバカシンジと言うアスカに、半ば反射的にごめんと言うシンジ。
いかにも関係が良好な時期の二人の会話と言えばそうなんだが、見た目が見た目。こっちはもうイメージ狂いまくりもいいとこだ。
思わず俺は席を立って言ってやったね。

 「あの、手じゃなくて…良かったら佐祐理のお弁当、食べさせてあげて…」

違う違う。そうではない。

「碇くん、良かったら学食で食べない? チケット余ってるんだ」

嬉しそうに、少し遠慮がちに「いいの?」って聞いてくる彼の顔を見て、俺は言わなきゃ良かったと心底思った。

56 :49:2008/07/12(土) 19:21:29 ID:???
んでまあ、それ以上二人の会話を見続けることに耐えられなくなって「碇」を連れ出した俺だが。
まあ素直に着いてきてくれたのはいい。
「惣流」が何も言わなかったのもまぁよしとしよう
(非常に危険な視線を背中に感じたような気もするが、さすがに大丈夫だろう。俺は男だし)。

だが。
その顔で感謝の微笑を浮かべるのは勘弁して欲しかった。
使徒だ。第拾七使徒さんが目の前で、俺に感謝してんだ。ヤオイでガチホモかとうかは分からないが。
相席の都合で向かい合わせになったもんだから、こっちから誘い出した手前無視するわけにもいかん。適当なことを言ったり、向こうの話に合わせたりする。
しかし、その顔。アップ。ほほえみ。
碇シンジという名前はついてるが、どうみても 初号機の手の中にいたときの彼 です。本当にありがとうございました。


……グチャ。…


あの首チョンパシーンが頭の中で点いたり消えたりし始めた頃、漸く「碇」はメシを終えた。特に飯を食うのが遅いわけじゃなくて、それ以外のことで口を動かしていたからだ。
どういうわけか知らないが、俺に気を使ってもらったのが嬉しかったらしい。
性格がアニメのシンジのままなら、恐縮していることの反動だったのかもしれない。いずれにしても彼にしては口数が多かった。
俺の方はと言えば、話をしているようでいてやはりメシを喰うという行動に逃げていた。最後は間が持たずにコップの水を何杯も空にしていた。
何度も見るんじゃなかった。カヲルと言えば首チョンパなんて嫌な刷り込みされちまったよ。もう遅いけどな。

57 :49:2008/07/12(土) 19:22:26 ID:???
トレイを返しに行く間、「碇」はまた謝ってきた。

「ごめんね、奢らせちゃって」
いやそれはどうでもいいんだ。実にどうでもいいんだ。
「今度お弁当作ってお返しするから」
やめてくれ。マジで。それにお前男の子だろ!
フラグ立ったギャルゲの家庭的な女の子キャラみたいな台詞吐くな!
「や、やっぱり駄目かな……」
だから、やめろって!その斜め45度の寂しそうな視線は!
俺にそっちの気はNEEEEEEEE!!!!!!!!!!!!!!!

どうにかココロの絶叫を抑え込んで丁重に申し出をお断りし、ついでに「作ってやるなら綾波さんにね」と言ってやった。
「綾波に……?」
「うん。彼女いつも買い食いだし、割に仲いいみたいじゃん、碇くんとは」
碇は盛大に赤くなった。
その顔を見るとまた違和感とか思い出したくないシーンがぶり返しそうだったので、俺はそっちを見ないようにして続けた。
「まあ3人分ってのも大変だろうけど、同僚の健康に気ぃ使うのも悪いことじゃないと思うな」
碇は一拍置いてから返事をした。
「うん……そうだね」
ちらっと視線を向けると、碇は意外にも複雑な顔をしていた。てっきり完熟トマト状態で返事が遅れたのかと思ってたのに。
「ありがとう」
まあいいや。取り敢えずそのお愛想っぽいほほえみはやめろ。な。

58 :49:2008/07/12(土) 19:23:07 ID:???
さて、その続きだ。
教室に戻った俺を待ち構えていたのはレイ……じゃなかった惣流の紅いアイビーム。
あいつがサイボーグじゃなくて良かった。目にレーザーとか仕込まれてたら確実に死んでたぞ俺。
しかしなんで俺が殺人視線の餌食にならなきゃいかんのだ?

「自分が弁当取った形になったからなあ。悪者にされたと思ったんじゃないの」
そうか、くそっ、その発想はなかったぞ。
ていうか完全に逆恨みじゃねーか。既に碇は購買に行くって言ってたんだし。
「そう、何の滞りもなく事が進んでしまったため、彼女は『お弁当半分こしよ♪』とか言い出す機会まで奪われてしまったわけだ」
なんてこった。まあ、そういう会話されてたら結局違和感に耐え切れなくなってたと思うが。
「いちゃつきたい心理もあったんじゃないかなあ」
それなら家の中で鼻抓みキスなりジェリコの壁なり首締めなり好き勝手にやらかせばいいじゃねーか。
それともガッコの中まで夫婦ごっこするほど、この世界の二人はベタベタなのか?
今までは気付かなかったが。

「ところで、僕にプレッシャー掛け捲ってる君はどういうおつもり?相田君」
「俺は客観的な視点から彼女の心理を推測しているだけだよ」
「席が前後だからって後ろからナレーション流されるとすげえ怖いんですけど」
「生憎授業中で、勝手に席を立つわけには行かないんでね」
くそっ。こいつ、いい奴だと思ってたら裏ではこんな陰湿な台詞を吐いてたのか。ミリヲタなんて大嫌いだ。
俺もそうだけど。

取り敢えず放課後まで、時折飛んでくるアイビームに寿命が縮まる思いをしながら耐え抜いた。
チャイムが鳴ったら一目散に飛び出そうと思っていたのだが
「こら!掃除当番でしょ!」
そばかす乙女に呆気なく制止されてしまった。しかも、よく見りゃ銀髪赤目のおねえさんが既にモップをお持ちになっている。
なんだか急に頭痛が痛いんで早く帰りたいんですけど。
「早く終わらせれば早く帰れるわ」
ARBEIT MACHT FREIですね。わかります。門の上に掲げられてる幻覚が見えるくらい。

59 :49:2008/07/12(土) 19:23:38 ID:???
あの性格だからまともに掃除なんかしないんだろうと思ってたが、惣流は案外熱心にモップをかけてた。
そばかす乙女のいいんちょと仲が良いだけのことはある。
与えられた仕事はきっちりこなすタイプか。そういうところは外見そのまんまだわな。

俺も途中で脱走する気もなく、机運んで黒板を拭いた。
どうせ帰ってもすることはないしな。
惣流さえ掃除に集中していてくれれば、特段の問題はないのだ。ついでに完全に忘れてくれると実に有難かったんだが。
淡々とルーチンワークは進み、お掃除終わりの放送が鳴って掃除の時間は終わりになった。
今度こそいち早く教室を出ようと努力した俺だったが、やはり所詮はモブキャラ。主役級キャラの敵ではなかった。
名前を呼ばれて振り返ると、廊下の壁に青白っぽい女の子が既に先着していた。
「お昼のとき、シンジに奢ってくれたんでしょ」
「え? あ、あー、あれか。たまたまチケット余ってたから」
いつ?いつあんた廊下に出たの?と言いたいのをこらえつつ、無難な回答をしてみた。
「そうなんだ」
「うん」
ええ、余ってたのは嘘じゃないです。俺の体の人は学食派だったらしいが、中の俺は自炊派なんで。
しかし学園エヴァとは違って、中身が怒りを湛えてるっぽい惣流さんだけに迫力あるね。
と思ってたら。

「ありがと」

いきなり満面の笑み。ちょっとばかり面食らった。
そして不覚にも物凄く可愛いと思ってしまった。この表情は見慣れないだけに反則気味に効果がある。
効果を知って作った表情と分かっていても、可愛いものは可愛いのだ。

「今度からは忘れないようにさせるから」

……少しだけ笑顔に凄みが加わったような気がした。ひょっとすると気温が3℃くらい下がったかもしれない。
俺は適当に返事をして退散するしかなかった。

60 :49:2008/07/12(土) 19:24:11 ID:???
まぁそんな訳で、考えてみればその昼飯時と放課後の一件が主役級キャラふたりとの邂逅だったわけだが
ワクワクというよりビクビクって感じで味気なく過ぎてしまった。
サインの一つも貰っとけば良かったかな。暫くは余裕があるだろうからいつでも構わないか。


どうせなら寄せ書きがいいよなぁとか思いつつ入道雲を眺めていると根府川先生の授業が終わった。
引き続いてのホームルームは修学旅行の話で盛り上がっている。
班分け話が盛り上がるのはクラス仲のいい証拠なんだろう。結局好きな人同士ってことになりそうだが。
俺の人は元々存在感のない奴だったらしく、こういうときもほとんどお声が掛らない。ぼんやりしてればいいというのは非常に便利で楽ちんだ。

存在感がないといえば窓際のアスカじゃなくて綾波も負けず劣らずらしい。
たまに惣流が声を掛けたり碇と短い会話をしてる程度で、他には全く寄り付く人がいない。
もっとも、アスカの顔とはいっても無表情なのはレイそのままなんで、そういう状態でも「浮いてる」わけじゃない。
改めて見ると髪の毛も明るい茶色とはいえごく普通の色だし、目立たない大人しい子にしか見えないんだよなあ。
アスカがなんでも1位になろうと過剰に努力したのって、案外、ただ普通にしてると普通すぎて埋没しちゃうからなのかもな。

ちなみに碇が女の子に黄色い声掛けられたり、惣流の下駄箱にラブレターが溢れるのはアニメどおりだが、どうも容姿が変わってるせいか、若干極端になってるようだ。
メシに誘った翌日に惣流ファンとおぼしき男と碇ファンと思しき女の子の両方からカミソリの刃を送られたのには参った。さすが、一旦壊滅した世界とともに育ってきた子供はすることが派手だね。いやはや。
まあ、こいつらは綾波と逆だから仕方がない。アニメ色の髪の毛、赤っぽい目に目立つ髪型だもんなあ。
しかしそれで俺がとばっちりを食うのは納得しきれないものがある。

61 :49:2008/07/12(土) 19:24:52 ID:???
班分けその他は順調に進んでいったが、ふと視線を向けると碇が複雑そうな表情で惣流を見ている。

あ、そういやこいつら旅行行けないんだっけ。

浅間山の火口に使徒捕獲に行くんだもんな。
惣流がいいんちょと楽しそうに話してる(…まあ慣れたからいいとしておこう)のが哀れといえば哀れだ。
俺がゲンドウさんとかミサトさんになっていれば格別の配慮もしてやれるんだが、なにぶん脇役ですらないのだ。許せ。わはははは。

もっとも彼等にとって悪いことばかりじゃない。はずだ。
あの話でアスカはシンジのことを再評価したんだろうし、シンジは温泉で熱膨張だし。
なによりもD型装備……じゃなかったプールサイドで温泉でおっぱい独り占めですよ。
うらやましいッたらありャしない。きいッ。

しかしまあ。
碇や惣流はそれぞれお土産に困らないだろうが、綾波は何ももらえなさそうだな。
いいんちょ辺りが気を利かせてお菓子か何かを渡して終わりか。
哀れだなあ。本人はそんなことを感じないとは思うが。

そんなわけで、ホームルーム中も相変わらず関心なさそうに文庫本を読んでいる綾波の後姿を眺めつつ、
俺はアスカの顔をした目立たない女の子にシーサーのぬいぐるみでも買ってきてやろうかと思っているところなのである。

(既出分終わり)

62 :49:2008/07/12(土) 19:40:47 ID:???
既出分より後はまた来週。

63 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/12(土) 23:34:11 ID:???
あまりにあまりな内容に皆さんドン引き

64 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/12(土) 23:43:14 ID:???
何というか、以前投下してたスレって何てスレなのかは気になるよね。うん

65 :49:2008/07/13(日) 00:00:33 ID:???
>>63
そうかね。まあ問題があるって話ならやめとくわ。

>>64
「もしもレイとアスカの外見が逆だったら」
時期は1年位前か。
当時も続きは書けば書けそうだったんだが
もうスレタイと関係なくなってくのが目に見えてたから既出分のみで終わりにした。


66 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/13(日) 00:05:52 ID:???
確かに関係なくなりそうだw
つかそれならもうちょっと二人の容姿が逆って点に重点を置くべきだと思うけど。
なんか色々違い過ぎてわけわかんなかったw

67 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/13(日) 00:13:30 ID:???
まあ、自由に投下していいスレなんだから作品が気に入らなければスルーで
文句は付けないようにしようぜ

68 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/13(日) 01:17:27 ID:???
当然ながら投下してもレスが付かないと萎える。
だからこそ、よくよく考えて書いた方が良い。
例えば、クロスはスレ条件としてダメじゃ無いんだけど、ここはエヴァ板。
だからハルヒが嫌いな奴が遊びに来てるかもしれない、ていうことかと。

69 :窒素爆弾 ◆v43FfN8BIQ :2008/07/13(日) 01:23:30 ID:???
「眠ることがこんなに疲れるなんて思わなかったなぁ…」
 今、シンジの周りは、早くも循環されずに表れ始めた血の匂いとさび色のLCLで満たされていた。
たった今まで眠っていたというのに心底疲れきった様子を見せると、浪漫な動きでコンソールを操作し
プラグ内のスクリーンに辺りの景色を映させる。
 そこには少しも建設的でも、生産的でもないただ真っ白なだけの光景が映し出されるが
大して落胆もせず、無駄であることを悟ったかのようにスクリーンを閉じる。
「レーダーもソナーも帰ってこない…。空間が広すぎるんだ」
 ふと、思いついたかのようにスーツの手の甲に表示された数字に目をやる。
「生命維持モードに切り替えてからもう12時間。僕の命もあと4〜5時間か…」
 一人でそうぼやくと、眠くもないが無理やり寝ることに決めた。
 今、シンジは第16使徒の内部とも言えるディラックの海にただ一人取り残されていたのだった。

70 :窒素爆弾 ◆v43FfN8BIQ :2008/07/13(日) 01:24:31 ID:???
プツッ、カーンカーンカーンカーンカーン−−
 何かが切り替わる音がすると、あのけたたましくもどこか遠い感じのする電車の踏み切りの音が聞こえてきた。
というか、僕は今電車に乗って腰かけてるところだ。車内には夕日が差し込んでくる。
 …おかしい。姿はないのに誰かいる気がする。
明らかに異常なシチュエーションにも拘らず僕は声をかけてみた。
「誰?」
−碇シンジ
…?やはりおかしい気がする
「それは僕だ」
−僕は君だよ。人は自分の中にもう一人の自分を持っている。自分というのは常に二人で出来ている物さ。
「二人?」
−そう。実際に見られる自分と、それを見つめている自分だよ。碇シンジという自分だって何人もいるんだ。
君の心の中の碇シンジ、葛城ミサトの中の碇シンジ、惣流アスカの中の碇シンジ、綾波レイの中の碇シンジ、
碇ゲンドウの中の碇シンジ。みんなそれぞれ違う碇シンジだけど、どれもほんとの碇シンジさ。
 ベラベラとしゃべっていることは訳分かんないけど、意味は理解できた。
 まるで、最初から自分の中にその意味が存在したかのように。
−君は他人の中の自分が怖いんだよ。
 いつの間にか正面に座っているほんの小さな子供は、少しおいて続ける。
−君は他人が怖いんだろう。
「違う!僕はみんなの事、大好きさ!!」
 こいつは分かった風な口聞いて何も知らないんだ!
 怒りのあまり立ち上がった僕の周りでいつの間にか集まったらしいみんなが見てる。
そして各々が口を利き始めた。

71 :窒素爆弾 ◆v43FfN8BIQ :2008/07/13(日) 01:25:17 ID:???
「あんたバカァ!?」
アスカが罵る
「誰があんたなんかと!」
ミサトが睨む
「嫌い」
レイが告げる
「お前なんか大っ嫌いじゃ!」
トウジが叫ぶ
「じゃ、そーゆーことで」
ケンスケがあきれる
「あなたの事好きになれないわ」
リツコが言う
「嫌いだな。君の事」
マコトが言う
「嫌いです。あなたの事」
マヤが言う

「でも僕はみんな、みんな大好きだよ!」
 それでも必死に訴えかけ、叫び続けるシンジに小さな子が問う。
「僕は?」
 振り返ってみれば、「小さな僕」がすねたような顔をして聞いている。
 答えは決まってる。
一転、しかめ面をして僕はこう言った。
「嫌いだよ。お前なんて」

72 :窒素爆弾 ◆v43FfN8BIQ :2008/07/13(日) 01:26:29 ID:???
そういった途端、そこには父さんがいて、僕を見下ろして何か言った。
「帰れ!」
…え?
「お前なんか嫌いだ!」「大っ嫌い!」「嫌い」「どっか行っちまえ!」「嫌いだから!」「バカ!」
 皆はど派手になにか崩れ去り、なだれ込んだような勢いで勝手なことばかり叫んでる。
 …みんな、みんな勝手だ。エゴイストめ!畜生!
「僕を嫌いな奴なんて、みんな死んじゃえ!!」
 とうとう呪詛の言葉を吐いたシンジの足元の「小さな僕」が言った。
−じゃあ、死ねば?
…?…!!!!
「あああぁぁああぁぁぁああ!!!」
 プチッ

 プラグ内にまで響き渡るすさまじい爆音の後、真っ黒の壁から半日ぶりの光が溢れこんできて
人影が、ミサトさんが飛び込んできた。
 朦朧とする意識の中、冷え切った僕はミサトさんに力強く抱きしめられる。
 それは心地良いはずだったけど、そんなことより僕は言わなきゃならないことがあった。
が、…あ、とか、…が、としか声が出ない。仕様がないが、完全に体がまいってしまっていた。
 今言わなければ、もう同じ言葉を言う事はできなくなる気がしたが、それはどうやら無理らしかった。

「僕」はもう何も覚えてさえいないけど、「もう一人の僕」ならきっと知ってるだろうな。
 −エヴァに乗ることしかできない僕が皆を嫌ってどこに行き着くのかを。 



73 :窒素爆弾 ◆v43FfN8BIQ :2008/07/13(日) 01:31:23 ID:???
正直宣言してから投下すべきだったと思ってる
スマン


74 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/13(日) 01:46:24 ID:???
12使徒じゃないの?と思いつつもGJ

75 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/13(日) 02:45:54 ID:???
あれ?相撲板かと思ったらエヴァ板かここ?

76 :窒素爆弾 ◆v43FfN8BIQ :2008/07/13(日) 08:05:14 ID:???
>>74
絶望した!自分のアホさ加減に絶望した!
完全に話数と間違えてたw
とりあえず吊ってくる

77 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/13(日) 09:50:26 ID:???
良スレだな。これは戌に感謝しなきゃいけないな。

78 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/13(日) 09:54:19 ID:???
>>77
感謝するわけねえだろ
消えてろよお前は

79 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/13(日) 10:05:32 ID:???
大体あの基地が立てたとは限らんのだよ。なんの証拠もない

80 :このスレの>>1どす:2008/07/13(日) 10:13:39 ID:???
このスレは一読者のおいらが立てたので前スレ立てたのが誰であろうと現行スレは無関係どす
便宜上2となってるだけで純粋に作品を楽しむスレとなっております

( ´・ω・`)_且~~ イカガ?

81 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/13(日) 10:22:25 ID:???
( ・∀・)っ旦~<いただきます

82 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/13(日) 10:23:22 ID:???
    _, ._
  ( ゚ Д゚)   イタダキマス
  ( つ旦O
  と_)_)

    _, ._
  ( ゚ ◎゚)   ズズ…
  ( ゙ノ ヾ
  と_)_)

    _, ._
  ( ゚ Д゚)   …………
  ( つ旦O
  と_)_)

    _, ._
  ( ゚ Д゚)   ガシャ
  ( つ O. __
  と_)_) (__()、;.o:。
          ゚*・:.。

      _ _  ξ
    (´   `ヽ、     __
  ⊂,_と(    )⊃  (__()、;.o:。
                  ゚*・:.。

83 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/14(月) 22:53:45 ID:???
>>69
浪漫な動きでコンソールを操作し


浪漫な動きってどんな動きなのか禿げしく気になるんだがw

84 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/15(火) 03:56:23 ID:???
旅立つ〜男の胸に〜は〜浪漫の〜かけらがほしい〜のさ〜

85 :窒素爆弾 ◆v43FfN8BIQ :2008/07/15(火) 17:27:17 ID:???
浪漫:ロマンチシズム
自分が一番吹いたw暗い雰囲気なだけにw
次からは絶対調べてから書きますw
ホントボロだらけだなぁ
というか皆気づいてたなら教えてくれw
顔真っ赤すぎるw

86 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/15(火) 17:32:39 ID:???
ラ・ラ・ラ、真っ赤な〜
スカ〜フ〜

87 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/16(水) 17:04:39 ID:???
>>85
学生服で飲み込まれたはずなのに
プラグスーツが浮いてるものの2次小説だ
気にすんなw

88 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/16(水) 17:41:26 ID:???
みなさんどのくらい書き終えてから投下してますか?
完全に完成してからですか?

89 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/17(木) 03:18:15 ID:???
人それぞれだろう
分けて書いて連載したほうがモチベーション保てるヤツもいるだろうし、完全に書いてからドッと投下したほうが性に合うヤツもいるだろう
ちなみに私は完成してから暇を使って投下しとる
全ては作家次第だ


90 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/17(木) 10:16:34 ID:???
>>88
頭ん中で大ざっぱに完成させる。
ちょいちょい投下して好評ならテキストに落としていく。
レスが着かなければ投下はおろかテキストも作らない。

こんな感じです。

91 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/17(木) 18:08:15 ID:???
>>88
連載の場合頭の中で軸となる部分の起承転結だけ完成させる
プロットは軸に肉付けする形でストックしたネタを話の流れに合わせて引っ張り出す
話の流れのキリのいい所迄書いたら投下

短編の場合は電波が降りたら一気にテキストに落として投下

但し、自分の場合はプロットは全部絵コンテやネームやイラストに近い形だから
プロット作成作業はネタになるコマの継接ぎに近いかも知れん
テキスト化は映像を文章化する様な感覚だったりする

あんまり参考にならんで済まぬ

92 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/17(木) 21:25:11 ID:???
さすがにこのスレの人の話は濃いな

93 :88:2008/07/17(木) 23:06:16 ID:???
>>89
>>90
>>91
ありがとうございます
もう10レスくらい書き終わったんですが
ラストにいたる過程がまだ決まっていません
もう少し練ってから投下することにします

94 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/17(木) 23:09:28 ID:???
>>93
お待ちしております

95 :戌魔神 ◆Tp.LvYDjb6 :2008/07/18(金) 22:15:51 ID:???
俺様もそろそろ投下してやろうか?
いい加減駄作ばかりで飽きてきただろう

96 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/18(金) 22:26:41 ID:???
いい加減死ねよコイツ。良スレばっかり荒らしやがって
死ぬか荒らしやめるかどっちかにしろ

97 :真の戌神 ◆c25tGfYsrs :2008/07/18(金) 22:33:25 ID:???
偽者の俺乙 偽者に騙される低脳君も乙

98 :戌魔神 ◆Tp.LvYDjb6 :2008/07/18(金) 22:41:07 ID:???
ごめんなあ俺荒らしてばっかで〜
でも職人さんがチヤホヤされてんの見ると羨ましくてさ〜
ここも元は俺が立てたのに邪魔者にするしさ〜

99 :真の戌神様 ◆Tp.LvYDjb6 :2008/07/18(金) 22:56:29 ID:???
今まで色んなスレで嫉妬して荒らして来たのさ
たとえスルーされても毎日の様に張り付いてな
偽者よ。この苦労がお前に解るか?

100 :真の戌神様 ◆Tp.LvYDjb6 :2008/07/18(金) 22:59:30 ID:???
まあ俺は才能無いからな。それは認めよう
だからつい嫉妬しちゃうのさ♪
もりたけよ。見ているか?

101 :真戌神 ◆Tp.LvYDjb6 :2008/07/18(金) 23:04:36 ID:???
そうだ。あのスレが始まりだったんだ
俺はあのスレに投下していた古参だったのに……後から来た奴が皆のGJを持って行ったんだ
皆俺の神作品には見向きもしなかった。
俺はそれ以来嫉妬に狂ってしまった

102 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/18(金) 23:15:10 ID:???
全ての荒らしに苦痛に満ちた死を

103 :◆Tp.LvYDjb6 :2008/07/18(金) 23:44:03 ID:Me7KA1bt
意外と食いつきわりーナー
つまーんなーいの

104 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/19(土) 00:01:25 ID:???
あぼーんしてるから見えなかった
ってことはまたあの糞が来てたのか

105 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/19(土) 00:07:11 ID:???
今度は自分の偽者が現われたという設定で散々暴れていったよ

106 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/19(土) 00:10:26 ID:???
はいはいヌルーしましょう。ヌルー
投下待ってます

107 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/19(土) 00:17:35 ID:???
そだね
期待しながら待ち〜

108 :ドーベルマン:2008/07/19(土) 10:47:22 ID:???
あぼーんするというのは神の啓示を無視するのと同じ罪深い行為だ
させてなるものか

109 :ブルドッグ:2008/07/19(土) 10:47:59 ID:???
あぼーんしてみろよ?
アハハハw


110 :チワワ:2008/07/19(土) 11:16:29 ID:???
愚民共め。恐れ入ったか

111 :チャイニーズクレステッド:2008/07/19(土) 13:16:02 ID:???
チワワめ。貴様は偽者だ。我を辱めんとする貴様の行為、万死に値する。

「啓示」
余がこのスレを荒らすのは以下のときである。以下に当てはまらないときは決して荒らさない。
・余をないがしろにしたり、余を貶めたとき
・スレタイ、及びテンプレを勝手に変更したとき
・クロス小説を認めようとしない風潮が現れたとき


112 :シベリアンハスキー:2008/07/19(土) 13:36:28 ID:???
余には文才というものが一切無い
だからこうして荒らすしかないんだ。分かってくれたまえ

113 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/19(土) 13:48:26 ID:???
勝手に荒らしてろバーカ

お前がちまちまと何かしたところで何の意味もないんだよ

114 :ペキニーズ ◆c25tGfYsrs :2008/07/19(土) 13:50:45 ID:???
112も偽だ。Meの名をかたる大悪党め。
Meには余りある文才があるぜ!

115 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/19(土) 13:55:06 ID:???
一人で騒がしい奴だな。はいはいあぼ〜んあぼ〜ん

116 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/19(土) 16:01:20 ID:???
潰すの?このスレ。ねぇねぇ潰すの?
ならそういってよ。今、書いてるやつ丸めて捨てちゃうし。

117 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/19(土) 16:21:17 ID:???
一部の人がやってる事だから気にしないで。すぐ沈静化するから

118 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/20(日) 02:27:54 ID:???
一部っつーか一人かもな

119 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 09:37:48 ID:???
等価真知子

120 :前スレ35:2008/07/23(水) 23:02:07 ID:???
続き作って見ましたので投下してみます。
って、前スレ落ちてるし、覚えてる人いないかも...

121 :前スレ35 EOEA:2008/07/23(水) 23:02:45 ID:???
ざく、ざく、ざく、ざく……

あれから何日、何ヶ月が経ったかな。
畑仕事に従事するシンジと私。
今では大きなワゴン車でやってきて、現場に泊まり込むことも少なくない。

どちらかというと、シンジの方が頑張ってくれている。
畑に作物ごとのプラカードまで立てて、水場の整備まで見よう見まねでやっている。
車の運転もだいぶ上手くなってきた。え、私?
だってしょうがないじゃない。

「シンジ、その……あのね。そろそろ私、始まりそう。」
「ああ……そうだね。うん、ゆっくりしてきて。」
「ごめんね。」
「いや、仕方ないよアスカ。」
「シンジの方こそ、体調とか気をつけて。体がおかしいと思ったらすぐに言ってね。」
「うん、ありがとうアスカ。」

女性につきもののアレである。
もう「子供なんかいらない」なんて言ったりしないけど、自分が女性であることが悔やまれる。
シンジと私、性別が逆だったらよかったのに。

シンジの方はどうだろう。
男の子って、いつでも女の子のことを考えてるって聞いたことがある。
目の前に可愛い子がいたら理性のタガが外れかねない、とか。
自分の思考まで本能に操られる訳ね。
種族保存のためとはいえ、犯罪者に落ちないように社会で働く男は大変。

シンジは、やっぱり自分で処理しているのかな。


122 :前スレ35 EOEA:2008/07/23(水) 23:03:47 ID:???
それぞれ、自分自身のメンテナンスが出来るように。
寝るとき以外は努めて一緒に過ごす。
私達はお互い相手が全てなのだ。
互いの自制心は相手が居ればこそ。
さもなくば、あっという間に怠惰な生活へと落ちてしまう。

食事とか、普段すごす時はいつでも一緒。
今日も古いアニメや映画を見ながら晩餐の乾パンをポリポリ。
つましい食事だけど、計算して必要なカロリーや栄養素は摂取している。
最低でも一日1400カロリー必要で、肉体労働に従事するから400カロリーほど上乗せ。

「食パン二枚にスパゲッティに……私達より十分豪勢じゃないの、ヤマト定食。」
「そうだね……」
「それを飽きただなんて、宇宙戦士の名が泣くってもんよ。ね、シンジ。」
「あはは……」

気のないようなシンジの返事。
自分を押さえているようでもなく、すっかり低いテンションが身に付いてしまったようだ。
私がちょいと突っかかっても軽く受け流す。たまには喧嘩ぐらいしてもいいと思うけど……
まあ、私もそこまで刺激したくない。
触れず離れず、という関係が成立している。

「もう寝るの?」
「うん……明日、早めに行かなくちゃ。」
「そう。それじゃ、お休みなさい。」
「お休み。」

ぱたん、とドアが閉まる乾いた音。


123 :前スレ35 EOEA:2008/07/23(水) 23:05:10 ID:???
シンジは、来ない。
来ないっていう意味、判るよね?
まあ本気で来られても困る。子供が出来ちゃったら、やっぱり大変。
でもそうね。お休みのキスぐらいの習慣が出来たって……いや。
アイツ、根本的に私のことは好きじゃないのかな。女の子として……

「ね、アンタはどう思うのよ。」

相も変わらず、「ファーストの目」と対峙する私。
もはや、鏡に映る紅い目をした自分が他人に見えて仕方がない。
まるで寂しさを紛らわすように、一日の報告とか悩み相談までコイツにしている私。
シンジという相手がいるのにね。

「そうね。シンジがああだから私は寂しいのかもね。
 子供、先に作っちゃうべきなのかな。自分の手で生活を安定させるまでは、と思っていたけど……
 でもそれだと、私はシンジが相手として不足だと思ってるのかな。
 シンジが、あんな状態だから。」

何も答えない「ファーストの目」、
その寡黙っぷりが、以前のファーストを彷彿とさせる。

「フン……なんか言いなさいよ、アンタ。
 私ばかりシンジの相手ができてうらやましい?
 たまには、包帯を逆に付けてあげましょっか?
 きっと……」

そうだ。
シンジは必ず、魅了されるに違いない。
この、ファーストの紅い目に。



124 :前スレ35 EOEA:2008/07/23(水) 23:06:14 ID:???
そう、「私」ではなく。

「そう、アンタの奇跡の大復活ね。
 どうして?何故?ってシンジは不思議がるだろうけど、それが落ち着けばアイツはこの目に惚れる。
 間違いなく、この紅い目に恋をする。
 そして、アイツは私とセックスをするの。このアンタの目を見ながら、アイツはイクの。
 うれしいでしょ?アンタ。そうなったらうれしいでしょ……」

だんだんと、ファーストの目に怒りが込み上げてくる。
そうだ、怒れ。
もっと怒りなさいよ。

「そして、アンタのことだからね。生まれてくる子供は紅い目と、ついでに髪の毛も蒼かったりして。
 それがアンタが私に仕掛けた呪いなのよ。ちゃーんと、私には判って……」

……言ってしまった。
口に出すまいと胸に秘めていた、私の恐れ、不安、疑念。
子供を作りたくない、本当の理由。

そして、目の前には先のとがったハサミ。

「畜生!こんな目玉、くりぬいてやるッ!」

……

「なーんてね、アハハ。」
と、いったん握りしめたハサミをカラリと放り出す。
まさか、本当にそんなことする訳ないでしょ。


125 :前スレ35 EOEA:2008/07/23(水) 23:07:16 ID:???
と、笑っては見たものの……私、本気でやろうとしてた。
いや、ほんのちょっとだけ。

ゾクリ、と震えが体中に込み上げてきた。
何、この感覚。
これが自分の中に芽生える狂気って奴?

あー、やだやだ。
さっさとこの目、隠してしまおう。
そうね、あっさりシンジに見せちゃおうか。
もう数ヶ月もこの目に悩まされてるもんね。いい加減、本気で変になりそうだ。
そうすりゃ私も案外ひらきなおって……え?

「アスカ!どうしたのアスカ!」

シンジ!?
しまった。さっきの叫び声、シンジに聞かれちゃったのね。
もう寝たと思ってたのに。私、そんな大きな声を出してたのかしら。

どんどんどんどんどんどんっ!
ガチャッガチャガチャッ!
「ねぇアスカ!お願いだからここを開けてッ!アスカッ!」

激しいノック、返事もしてないのに鍵のかかったノブをひねる音、そして叫び声。
この生活に入って、こんな激しいシンジは初めて。

どうしよう、このままだとシンジがおかしくなってしまう。
でも、まだ右目を隠してないし。
さっきは見せようとも考えたけど、やっぱりダメ。心の準備が出来てない。


126 :前スレ35 EOEA:2008/07/23(水) 23:08:18 ID:???
「ねぇアスカ!アスカ!アスカ!アスカ!」

仕方ない。

がちゃり……と、ドアを開けた。
手でしっかりとファーストの右目を隠して。

「……アスカ。」
不安、恐れ、そんな感情をない交ぜにしたシンジの顔。
私はすぐさま、シンジを抱きしめた。
交差する私達の顔。これなら、シンジに目を見られる恐れはない。

「ゴメンね、シンジ。びっくりさせちゃったね。」
「アスカ、その、目は……」
「前にも言った通りよ。この目だけは、アンタに見せられない。」
「でも、アスカ……」
「お願い、私のこの目を見ようとは思わないで。シンジ、お願いだから。」

しばらく、抱き合いながら沈黙。
シンジの早い鼓動が伝わってくる。
が、徐々にそれが収まりつつある。
そして、ゴクリと喉が鳴る音。

再び、しっかりと右目をふさぎながら体を離した。
シンジはうつむいて目を伏せる。そして、ゆっくりと私に背を向けた。
私の目を見まいとする意思表示
「わかったよ、アスカ。ごめんね、その……取り乱して。」

まるで、そういうシンジの背中が私達の間に立ちはだかる大きな壁のように見える。


127 :前スレ35 EOEA:2008/07/23(水) 23:09:26 ID:???
私は今度は、シンジを背中から抱きしめる。
「ごめんね、ホントに……その、シンジ……」

まずい。このままでは、まずい。
本当に私達はダメになってしまう。
やっぱり、まだこの目は見せられない。でも……

「シンジ、今夜は一緒に寝ようよ。」

私の最大の譲歩。いや、取引とかそういうことじゃないの。
私のシンジに対する精一杯の気持ち。
今まで刺激すまいと思っていたシンジの体を、遠慮するなと言うようにギュッと抱きしめる。

でも。
「アスカ、その……やっぱり、まだ……」
と、私の手に自分の右手を添えるシンジ。
離せ、という合図。

そしてシンジは判っていた。
これまで、二人の関係を進展させまいとしていた、私の考えを。
自立した生活を確立するまで……今まで、あえて口に出したこと無かったけど。

「判った。シンジ、ごめんね。」
「ううん……僕こそ……」

そして、私が抱きしめていた腕を開くと、シンジは背を向けたまま自分の部屋に帰っていく。

「おやすみ、アスカ。」
「おやすみ。」


128 :前スレ35 EOEA:2008/07/23(水) 23:10:52 ID:???
私はシンジが触れた右手をなでながら、おやすみの挨拶を交わした。
そういえば、シンジから私に触れたのはこれが初めてかも。

アハハ、なんだかな。
デレデレじゃないのよ、私。
情けない。私ともあろう者が……なんてね。

「え!?」

うっかり声に出してしまいそうになり、慌てて口を塞いで飲み込んだ。
なんで今まで気がつかなかったのだろう。
それとも、最近になって変化したのかしら。

この腕。この右腕。
間違いない。これは私の右手じゃない。
指の長さが、左と違う。

(う、うう……)

私はクラクラし始める頭を抱えて、倒れ込むように自分の部屋へと駆け込んだ。
まさか、最後には完全にファーストに支配されてしまうの?私の体は……


129 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 23:11:17 ID:???
初めに謝ります携帯なので区切ります
小説と言うより詩ですね…
EOEその後

全てが赤に染まった

二人だけの世界

今は一人だけ

君は僕に別れを告げて旅だった

君の最後の言葉


キモチワルイ…

僕は去る君を只眺めるだけ

まだ成長出来てない弱い僕


130 :前スレ35:2008/07/23(水) 23:11:30 ID:???
とりあえず、これだけー

131 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 23:14:07 ID:???
>>129
続き


波の音だけしか残されていない今

僕は思う…

いつか

いつかきっと

強くなって君に逢いに行くよ

今はまだ僕は歩けないから

いつかきっと

自分の足で立って

去って行った君を見付に

その時は君に拒絶されないように

強く抱きしめたいから

上を向いて

居ない君が見える空の星に

僕は願いをかけた


132 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 23:17:13 ID:???
終わりました

非難はかなり覚悟の上で書きました。
かなり意味不な内容ですみません

133 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 23:33:45 ID:???
>>132
いや、意味は判るよ。
でも文章の組み立て方というか、なんかこう...
どうすりゃ良いの、と聞かれると困る。俺は上手くないし。

しかし、みんなEOEA好きだねw

134 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/24(木) 00:44:29 ID:???
GJ!
レイはキャラ壊さないと話創りにくいからじゃない?
アスカはよっぽどじゃないかぎりこういうアスカもあり、で許容されるし


135 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/24(木) 00:51:03 ID:???
後AEOEは割と話を自由に作りやすいけど、本編中は改編が難しいからだと思われ

136 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/24(木) 05:36:56 ID:???
SSまとめサイトを作ってくれる心優しき勇者はいませんか?
なぜかこのスレには大長編が多いので、あると相当助かるんですが……

137 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/24(木) 07:28:49 ID:???
個人的には前スレのログもあるしなあ
作者がまとめサイトを望んでればじゃないか
前スレの6氏と35氏の二人ね
それにしても読み応えあるのを投下してくれるのでうれしいね

138 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/24(木) 11:15:40 ID:???
他の人はどう思う?

139 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/24(木) 19:37:21 ID:???
実質LASスレになってるよなー
だったらLASスレまとめに頼むのも一つの手だが
他のカプの投下を考えたら別にまとめある方が良いのかも

140 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/24(木) 21:23:04 ID:???
誰かがまとめてくれることについちゃ異論は無いし、ありがたい。
まとめ方についてはまとめ人の自由。
不満が有れば自分でやればいいしw

あえて言うなら、
LASだからどうする、なんてことをすると、
油断してたらLASに見せかけて実は?
などというトリッキーな作品が出てくるかもw
ジャンル分けはしないほうが楽かもよ。

141 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/24(木) 21:30:55 ID:???
ジャンル気にしすぎたらこのスレの意味無いからな

142 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/24(木) 21:42:45 ID:???
まとめサイトがあると職人のモチベが上がりそう

143 :6:2008/07/25(金) 01:58:42 ID:???
俺としては今の所まとめサイトについて意見は特にないかな。
スレ住人の好きにしてくれればいいんじゃないかと。

ただ、俺の作品だって本当にLASとは限らない、とか言ってみたりして。
俺の末路閃稿によるとラストはカヲル君との同棲エンドだし。

時間が微妙だが、ちょっと投下。

144 :逆行126:2008/07/25(金) 01:59:13 ID:???

――シンジには、ケンスケの話はどこか要領を得ないように思えた。
(アスカが甲板の上で自分を傷つけるようなことをしたり、
いきなり壁を殴ったり、色々と情緒不安定だったのは分かったけど)
しかし、それがシンジの聞きたかったことではないと、
シンジは本能的に悟っていた。
(だってそれは、ケンスケがアスカを人間じゃない、
なんて言う理由にはならない。
まだ僕は、ケンスケから全部を聞かされたワケじゃないんだ)
一体ケンスケが何を考えているか、それは分からなくても、
(僕は僕のやれることをしよう。
とりあえず、綾波とアスカの仲を取り持たなくちゃ…)
シンジはそう決めて、そのために動き出したのだが、
(……なんか、どっちもつかまらないんだよな)
アスカが気まずそうに視線を逸らすのはともかく、
あの一件以来、レイが妙に余所余所しい気がするのだ。
その心境の変化は、シンジには察することはおろか、
想像することも出来ない。
それでも、ほとんど同じ生活圏で、
ほとんど同じ生活パターンで暮らしているのだ。
どうしたって、会話する機会は出てくる。
シンジは結局、NERVに向かう道の途中でその機会を得た。
しかし、
「綾波!」
と声をかけても、レイは振り返らない。
仕方なく、シンジはレイに駆け寄って、至近距離から声をかけた。

145 :逆行127:2008/07/25(金) 02:00:32 ID:???

「どうしたんだよ、綾波」
「……なにが?」
いつもと同じ、そっけない返事。
だが、シンジはその返答がいつもよりずいぶんと遅れていることに気づいていた。
「気のせいだったら、ごめん。
……最近、綾波が僕を避けてるような気がするんだ。
もし、僕が何か、綾波を怒らせるようなことをしてしまったんなら…」
「気のせいだわ」
シンジの言葉を一言で切り捨てて、シンジから離れて歩いていこうとする。
そのレイに歩調を合わせながら、シンジは尋ねる。
「その言葉、信じてもいいの?」
「…………」
レイは無言だった。
しかし、それが答えでもある。
「それは、やっぱりあの時アスカと言い合いになったことと関係があるの?」
「…………」
また、無言。
だがやはりシンジは、それを肯定と捉えた。
言葉を継ぐ。
「お節介だと思うけど、綾波とアスカがケンカしているのが心配なんだ。
そりゃ、綾波はあんまり気にしてないかもしれないけど、でも…」
そんなシンジの言葉をさえぎって、
「そんなに、セカンドが大切?」
レイの言葉が、シンジを射抜いた。

146 :逆行128:2008/07/25(金) 02:03:55 ID:???

「い、いきなり何を言うんだよ…」
その言葉に込められた意外な敵意か、振り向いたその瞳の光の鋭さか、
とにかくシンジはレイからの圧力を感じ、思わず目を逸らした。
しかしレイは、それすら許さなかった。
『こっちを見て』とは言わない。
ただ無言で、シンジの瞳を直視し続ける。
瞬きもしないそんな目でずっと見詰められて、
シンジが耐え切れるはずなかった。
ふてくされた子供のように渋々と、しかし怖々と、視線を戻す。
それを見届けて、レイの唇が厳かに動く。
「セカンドとわたしが、ケンカするのがイヤなんでしょ?」
「そ、それは……そんなの、当たり前じゃないか」
シンジの狼狽を、しかしレイは気にも留めない。
ただ、淡々と、淡々と言葉をつむぐ。
「セカンドがわたしに暴力をふるうのを見たくないんでしょ?」
「だ、だから、そんなのは…」
当たり前だ、と口にすることも出来なかった。
それより前に放たれたレイの次の言葉が、その口を縫い止める。
「そうなれば、あなたは彼女に腹を立てるから。
セカンドのことを、好きでいられなくなるかもしれないから。
……それを、あなたはおそれているのよ」
「違う!」
シンジは思わず叫んでいた。
「いいえ、ちがわないわ」
「違うよ!」
もう一度叫んで、シンジはレイに詰め寄っていく。

147 :逆行129:2008/07/25(金) 02:05:59 ID:???

「何で、何でそういうこと言うんだよ!」
常になく、シンジに芽生えているのは、
その体を動かしているのは、強い怒りだった。
しかし、その怒りに突き動かされるまま、声を荒げても、
「わたしがそう、思っているから」
レイの口調は変わらない。
変わらず淡々と、シンジの理解を突き放して、
「そんなはずないじゃないか! 僕は、綾波を心配して…」
「そうなの? わたしにはわからないわ。
わたしは、あなたじゃないもの」
だがその言葉、態度に、シンジはレイの意図を感じる。
レイがシンジを遠ざけようとしていると、分かってしまう。
自分でも正体の分からない苛立ちと憤りが、募る。
「ズルイよ、綾波は…!」
その正体不明の感情が、そんな言葉を生み出した。
「ずるい? わたしが? ……どうして?」
レイのトゲのある無関心さが、シンジの心をささくれ立たせる。
「だってそうじゃないか! そうやって、
人に心配されるのを嫌がって、壁を作って…」
加速した怒りに、シンジの口調も熱くなって、だが、
「……それの、なにがいけないの?」
あまりにも平然とした返しに、シンジは固まってしまう。
(それは…、その言葉だけは、口にしちゃ、いけないのに…!)
思いは、明確な言葉にはならない。
突き進もうという意志だけが、前に出て、
「約束したじゃないか! あの時、二人で一緒に…」
レイの手を、つかもうとする。そして、
――パシン、と。
シンジの手が、振り払われた。

148 :逆行130:2008/07/25(金) 02:07:33 ID:???

なすすべもなく、じっと払われた手を見つめるシンジを、
レイは無表情で見つめる。
「あや…なみ…?」
こんなのは、何かの間違いだろ、というみたいに、
すがるように問いかける視線にも、レイは眉一つ動かさない。
そして、レイは、
「今、あなたは…」
それでもやはり変わらぬトーンで、
冷淡とも、酷薄とも感じる口調で、
「わたしにうらぎられた、と思った?」
容赦のない言葉を吐き出す。
「綾波、僕は…」
だがレイは、最後までシンジの言葉を聞かない。
どうせそこから続く言葉など存在しないのだ。
聞く意味なんてなかった。
だから平然と、言葉を続ける。
「わたしのことも、好きでいられなくなると思った?」
「僕は、僕は…!」

「なら、それでいいんだと思うわ」

それが、最後の拒絶だった。
レイはそれきり立ち尽くすシンジに一瞥もくれることはなく、
静かにその場を立ち去った。
その背中が遠くなっていくのを目の当たりにしても、
シンジには叫ぶことも、その場に崩れ落ちることも出来ない。
ただ、うつむいて、
「僕、は……」
続きのない言葉を、ずっと独り、呟いていた。

149 :逆行131:2008/07/25(金) 02:10:50 ID:???


NERVに向かっていたはずのシンジは、今、全く場所を歩いていた。
これからNERVに行って、レイの顔を見る勇気が、シンジにはなかった。
かといって、学校に戻る訳でも、家に帰る訳でもない。
むしろ出来るだけ知らない方へ、知らない方へと、シンジは進んでいく。
今はどうしても、自分を知っている人間と会いたくなかった。
――シンジだって、自分に護衛と監視がついているのは知っている。
今ごろ、NERVにいるミサトかリツコ辺りに、
連絡がいっているかもしれない、とは思う。だが、
(どうでもいいんだ、そんなこと)
無目的に、街を歩く。
他人ばかりの街が、今は少し心地いい。
何も考えず、この街の背景の一つに溶け込みたかった。
なのにほとんど無意識に、シンジの目は右手の小指を見つめていた。
ぐっと、唇をかみしめる。
(……約束なんて、役に立たない)
所詮そんな物は、きっかけにしかならない。
(約束なんて物が役に立つのは、お互いにそれを認めてる時だけだ。
どちらかが、それを嫌がったら…)
小指を握り潰すように、ぎゅう、と拳を握り締める。
「……なん、で」
唇からそんな声が漏れて、レイに手を払われた時の鮮烈な衝撃が、
シンジの胸によみがえる。
(……前の世界では、うまくいっていたんだ。
二人目の綾波とは、何の問題もなく、付き合っていけた)
前の世界を思い出す。
短い間に過ぎていった、レイとの思い出を。
(なのに、綾波が、変わってしまったから。
前の綾波とは、違ってしまっていたから、だから…)
しかし、
(違う、そうじゃない。そうじゃないんだ)

150 :逆行132:2008/07/25(金) 02:13:52 ID:???

(もしあの時、綾波が自爆なんてしないで、ずっと生きていたら。
きっと、今と同じようなことが起こってたんだ)
だってそんな、何かがずっと、うまくいくはずなんてないから……。
喜びという物は、つらいこととつらいことの間にだけ、ある物だから。
だからいつか、絶対、つらいことに塗り潰される。
(……なのに)
シンジは、自分の右手を見る。
――ちっぽけで、無力な手。
(どうして僕は、人と触れ合えるなんて思ったんだろう。
そもそもどうして、人と触れ合おうなんて思ったんだろう)
ぎゅっと、目を閉じた。
(無理だったんだ、僕には最初から。
僕に、そんな資格はないんだ。そんな権利はないんだ。
……もう傷つきたく、ないんだ)
自覚した途端、体から、すぅっと力が抜けていく。
気負ったり悩んだりしていたことが、バカみたいに思えた。
(……もう、やめよう。
いつものように、笑っていればいいんだ。
笑って、みんなの望むことだけ、してればいいんだ)
シンジは足を止める。
きびすを返し、NERV本部へと向かう。
(綾波とは、距離を取ろう。
僕が話しかけていかなければ、きっと向こうだって、
何も言ってはこない。
それが、一番いい。
一番、居心地がいいから)
考えながら、シンジは足を速める。
――なぜか右手の小指が、じりじりとうずいた。

151 :逆行133:2008/07/25(金) 02:16:22 ID:???


「うーん…」
モニターの前で、ミサトがうなり声みたいな音を出した。
「どうしたの? そんなに難しい顔をして」
リツコに聞かれ、ミサトの困り顔がモニターのシンジに向けられた。
「シンジ君の様子がちょっちねぇ…。
指示は素直に聞くんだけど、反応が妙に機械的っていうか。
最近、いい感じにくだけてきたと思ってたんだけど…」
「あら、そう? でも、そんなに心配することはないんじゃない?
シンクロ率はむしろ、順調に上がっているわよ。
……それより今日、調子を崩しているのは」
リツコは体を前に乗り出して、零号機へのスピーカーをオンにする。
「レイ、集中が乱れてるわよ」
「すみません」
素直な謝罪は、しかしそれ以上の言葉を封じていた。
思わず嘆息するリツコに代わり、ミサトがマイクに向かう。
「レイ、今日は調子悪い? もし、何かあるのなら…」
「なにも問題ありません」
取りつく島もなかった。
ミサトはリツコと顔を見合わせ、軽く頭をかいて、
「……そう。でも、あなたの不調は、あなただけの問題じゃないのよ。
エヴァが負ければ、人類が滅ぶわ。……それだけは忘れないで」
「はい」
その返答にも、態度の変化は見られない。が、
「そんなの当たり前、か。……ダメね。
こんなことしか言えない自分が、ほんと嫌になるわ」
「仕方ないわ。大人には、立場という物があるもの」
興味を失ったように手元の書類に戻るリツコを横目にして、
「そうね。……でも、それを盾にするようになったら、本当におしまいだわ」
ミサトはひっそりと、強く唇をかみしめた。

152 :6:2008/07/25(金) 02:19:28 ID:???
以上。というか、規制を考えるとここで切るしかない感じ。

最近ちょっとへこむ事が多くてこういうのに没頭する余裕がなかったんだが、
たぶんこの綾波編くらいは一週間以内に完結すると思う。
また、近々。

153 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/25(金) 03:03:57 ID:???
乙です
なんか暗い方向へ行ってるなあ
続き待ってるよー!

154 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/25(金) 17:24:37 ID:???
6さんGJ!
毎回展開がおもしろくて良いと思います

155 :6:2008/07/26(土) 01:25:59 ID:???
前回の終わりが微妙だったので、少しだけ追加

156 :逆行134:2008/07/26(土) 01:27:24 ID:???


「待ちなさいよ!」
本部を出たところで、シンジは後ろから呼び止められた。
振り向く。
「……あぁ、アスカか。めずらしいね、
アスカの方から僕に話しかけてくるなんて」
シンジには似合わない、流暢で、よどみのない口調だった。
だが、アスカにそれを深く考えられるほどの余裕はない。
「…っ! どうでもいいでしょ、そんなことは!
今までは用がなかったから話してなかっただけよ。
それより…!」
取り繕うように大声を出して、それからギッとシンジをにらみつけ、
「アンタ、ファーストと何かあったワケ?」
そんな言葉を投げかけられても、シンジに変化はなかった。
少なくとも、表面上は……。
「別に、何もないよ」
「ウソよ! 前はあんな、気持ち悪いくらいベタベタしてたじゃない!
なのに今は、目を合わせようともしない」
「誤解だよ。もともと、綾波とはそんなに親しいワケじゃないから」
その言葉に、アスカは目を見開いた。
「親しいワケじゃないって、アンタねぇ…!
とぼけるんでも、もう少しまともなこと言いなさいよ。
あんなに二人で…」
普段なら、シンジを押し切ってしまえるような、強い口調。
だが、
「綾波とは同じエヴァのパイロットで、
だから一緒にいることが多いだけだよ。
アスカだって訓練で綾波とはよく一緒にいるけど、
それほど仲がいいワケじゃないだろ?」
「それは、そう、だけど」
思わぬ反撃にあって、逆にアスカが言葉に詰まってしまう。

157 :逆行135:2008/07/26(土) 01:29:02 ID:???

この時点になってようやく、
アスカはシンジの様子がいつもと違うのに気づいた。
だが、振り上げた矛は止められない。
「とにかく! アンタたちがピリピリしてるとアタシが居心地悪いのよ!」
感情のままに言葉をぶつけられても、シンジは少しも動じることなく、
「それが本当なら、確かに申し訳ないとは思うけど。
……でもやっぱり、アスカには関係のないことだから」
そう言って、その場を立ち去ろうとする。
それに慌てたアスカが口にした、
「ちょっと、逃げるつもり?!」
という言葉に、シンジの顔が初めて歪んだ。
痛みをこらえるような表情を、しかし背中で隠して、
「そういうんじゃないよ。でも、僕はもう帰るから…」
そのまま歩いて行こうとして、
「分かったわ。アンタ、ファーストとケンカして、
いじけてるんでしょ」
しかし、アスカは足を速めてシンジについてきた。
元々、二人の目的地は一緒だ。
同行を断る理由もない。
「そんなんじゃないって言ってるだろ」
シンジはそれをわずらわしいと思いつつ、そう否定を重ねるしかない。
「ふぅん。でも、どうかしらねぇ?
あの優等生が、めずらしく怒られてたみたいじゃない。
それって、アンタと…」
「うるさいな! もういいだろ!
何でいちいち、人のことそんなにかぎまわるんだよ!」
とうとう、シンジが爆発した。
今まで蓄積した苛立ち全てを吐き出すように、アスカを怒鳴りつける。

158 :逆行136:2008/07/26(土) 01:30:31 ID:???

シンジの激しい言葉に、アスカは一瞬だけ鼻白むが、
「そ、それは……!
あ、アンタがウジウジしてて、見ていられないからじゃない!」
すぐに持ち直し、怒鳴り返した。
そこでシンジがアスカに怒鳴り返せば、いつも通りだっただろう。
だが、
「……お願いだから、ほっといてよ」
「え…?」
予想外の言葉に、アスカの動きが止まる。
「アスカが僕のこと気に入らないっていうんだったら、謝るよ。
僕のことが嫌いだっていうなら、もう必要以上に近づいたりしないから」
怒るでもなく、怯えるでもなく、シンジは疲れた声でそう告げる。
「僕はもう、アスカに迷惑かけないから。
だからその代わり、関係ないアスカに、色々言われたりとか…」
しかしそれ以上、シンジは言葉を続けられなかった。
ぐっと首元をつかまれ、強い力で顔を引き寄せられる。
「この! アンタ、寝ぼけてんじゃないわよ!?
アンタがアタシのこと、アスカって呼ぶって決めた時から、
もう、無関係だなんてこと…!」
その至近距離で、それでもシンジはアスカから目を逸らした。
そして、
「…ごめん。だったら、もう、呼ばないから」
口から漏れた決定的な言葉に、はっきりとアスカの表情が変わった。

159 :逆行137:2008/07/26(土) 01:32:28 ID:???

「……アンタ。それ、本気で言ってんの?」
さっきまでとは打って変わった、静かな、
落ち着いているとさえ錯覚してしまうような口調で、アスカが問う。
対して、シンジは決してアスカと目を合わさないままで、
「…うん。僕が無神経だったんだよ。もう二度と呼ばない。だから…」

バキン!

容赦のない音がシンジの頬で弾け、シンジは体勢を立て直すことも出来ず、
そのまま地面にしりもちをついた。
そのシンジの前に、握り拳を怒らせた影が立ちはだかる。
「ふざっけんじゃないわよ!
アンタは、アンタはアタシが、どんな気持ちで…!
どんな…っ!」
しかしそこで突然に声を詰まらせ、アスカは額の辺りを手で押さえて、
不自然に顔を逸らした。
「アスカ…?」
殴られた時より呆然としたシンジの目が、
アスカの手からこぼれる雫を捉えた。
「アス、カ…? もしか、して…」
押さえた手から、こぼれ落ちていった物は……。
「違うわよ!
こんなことで、泣いたりするはずないでしょ!
ぜったい、泣いてなんかないわよ!」
叫んで、アスカはシンジに背中を向けて、
「……先、家帰るから」
そう残して、歩き去っていった。

160 :逆行138:2008/07/26(土) 01:34:02 ID:???

アスカの姿が見えなくなって、
今さらながら、アスカに殴られた頬が熱を持ってくる。
焼けるようなその感触を頬と手のひら、両方で感じながら、
シンジはおかしそうに笑った。
「なんだ。どっちにしろ、結局、殴られるんじゃないか。
だったら……」
だったら、どうだと言うんだろうか。
そんなことにすら、答えを出せないまま、
「……アスカ。謝りたいな」
押さえられた手の隙間から、涙と一緒にのぞいたアスカの顔を思い出し、
素直にそう思った。
――でも、出来ない。
もう一度アスカに踏み込んでいく選択肢なんて、
今のシンジには最初からなかった。
「アスカからは、絶対に逃げないって誓ったのに…」
追いかけようという気力は、全くわいてこない。
今だって必死に考えているのは、アスカとの和解の方法ではなく、
アスカと会うのを少しでも遅らせる方法だけ。
「……やっぱり、約束なんて役に立たないや」
自嘲気味に笑って、シンジは立ち上がる。
そうして、
「お金。持って来てて、よかったな。
これなら夕食まで、なんとでも時間を潰せそうだ」
今日はぎりぎりまで、街でねばることを決めた。

161 :逆行139:2008/07/26(土) 01:35:26 ID:???

ミサト、アスカ、シンジ。
三人がそろった食卓はしかし、いつもにも増して、
ぎくしゃくした雰囲気だった。
食事を終えたミサトは、その原因の大元がシンジにあると見当をつけ、
「あのね、シンちゃん。レイやアスカと何があったか知らないけど、あんまり…」
と話を始めようとするが、
「やめてください。今はそういう正論、聞きたくないんです」
すっと、シンジは意図的にミサトから目をそらして、
「そりゃ、ミサトさんは立派ですよ。
でも、僕はそんな風には生きられませんから」
「…! あんたねぇっ!」
一番癇にさわる態度を取られ、思わず振り上げられるミサトの手を、
「ミサト!!」
大声をあげて制止したのは、アスカだった。
「……ほっときなさいよ、そんなの」
だがその口から出てくるのは、
もちろんシンジをかばう言葉などではない。
「放課後からずっと、いじけてんのよ、そいつ。
構ってほしくてやってるだけなんだから、相手するだけ無駄よ」
「あ、アスカ…。だけどねぇ…!」
そうしてミサトの注意がアスカに向けられて、
「おやすみなさい」
その隙に、シンジは自分の部屋へと入っていく。
「シンジ君っ!」
ミサトが叫ぶが、それでシンジが止まるはずもなく、
シンジを飲み込んだ扉は、無情にも音を立てて閉じられた。
「なんなのよ、もぉ…!」
扉の前で、ミサトが苛立った声を出して、
――アスカはその様子を、ひどく冷めた目で見つめていた。

162 :逆行140:2008/07/26(土) 01:37:18 ID:???

「シンジ、いるわね。開けるわよ」
簡潔に、それだけを宣言して、シンジの部屋の扉が開かれる。
アスカの姿が扉の間からのぞく前に、シンジは何とか音楽を止め、
扉に背を向けて眠ったフリをすることが出来た。
「シンジ。アンタに話があるの」
アスカがそう言っても、シンジは微動だにしない。
閉じこもるように体を丸めて、寝たフリを続ける。
まるでこの前、シンジがアスカの部屋を訪れたのと真逆の構図。
だがその状況を、アスカは気にしなかった。
「シンジ。そのままでいいから、聞いて」
そう、前置きして、
「昼間のことは、アタシが悪かったわ。
たぶん、アンタの言い分の方が正しいと思う。
勝手なこと言ったと思ってる」
吐き出されたその言葉に、シンジはまた少し、身を縮める。
自分の言い分が認められてうれしいはずなのに、なぜか、胸の塞ぐ思いがした。
「…………」
「…………」
沈黙が続いた。
戸口に立つアスカの存在は、今のシンジにとって、ただ苦痛だった。
シンジはひたすら、アスカが一刻も早くその場を立ち去ってくれることを祈った。
その期待に反するように、アスカはすぅっと息を吸い、
「でも今度、アタシのこと名前で呼ばなかったら、またぶっとばすから」
「…!」
予想してなかった言葉に、刹那、シンジの息が止まる。
そこにアスカは、たたみかけるように、
「勝手でも何でも、このままなんて、絶対に許さないから。だから、だから…」
部屋に差し込む影が、少しうつむいて、
「……早く元気になんなさいよね、バカ」
その言葉を残して、扉が閉められた。

163 :逆行141:2008/07/26(土) 01:38:26 ID:???

扉が閉められて、部屋が暗闇に閉ざされて、しばらく。
横たわるシンジの耳に、小さな嗚咽が聞こえてきていた。
聞きたくないと耳を塞いでも、その音は止まらず、
執拗にシンジを責めたてる。
シンジはさらに強く耳を押さえ、
そして、ようやく、気づいた。

――泣いているのは、シンジだった。

気づいたことで嗚咽はさらに大きくなって、
シンジを悩ます。
そっと、体を転がし、扉を見つめる。
その向こうからはかすかに明かりが漏れていて、もしかすると、
その奥にはアスカが待っているのかもしれなかった。
シンジは一瞬、立ち上がりかけ、
「だけどアスカ、怖いんだ。
人と触れ合うのが、怖いんだよ…」
結局果たせず、そのままそこで布団をかぶる。

――布団の中、押し殺した嗚咽は一晩中やむことがなかった。


164 :6:2008/07/26(土) 01:39:03 ID:???
以上

165 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/26(土) 04:10:56 ID:???
シンジ情けねえぞ!
と思わず言ってしまうほど引き込まれる(笑)
いやあ、お世辞じゃなくうまいなあ!
6と35の二大連載を掲載してるスレだな(笑)

166 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/26(土) 08:19:30 ID:???
GJ!! 毎度毎度おつかれさん

他の人も投下できるならぜひ投下してくれ

167 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/26(土) 11:12:49 ID:???
私の気持ち…貴方に届いて居る筈なのに…

貴方の気持ち…私に届いて居る筈なのに…
私と貴方は交わる事が出来ないで居る。現世では、交わるには、想いの糸が複雑に絡まり過ぎたから…
貴方の中に居る、あの娘への想い、と、私の中に居る、あの娘への嫉妬…
そして、今は居ないあの娘の貴方への想いが解るから
来世で結ばれるように願いをかけ私と貴方は此処に居る


  『 曽根崎で…』


そこは遊女とデッチの男が結ばれる事が叶わないと行き着いた地…
私は遊女じゃないし、あの人はデッチじゃないけど
結ばれないと言う事は同じ…だから、私は、この地に貴方と共に訪れた。来世に想いと願いをかけて…
そして、私たちは此処に寄り添うように眠る…
今度、巡り会う事が出来たなら、『Children』で無く、男と女として…そして、私と貴方が結ばれる事を夢見て、信じながら…
曽根崎天神に眠る過去と、今の物言わぬ二組の亡きがらを夜の静けさが優しく包む

168 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/26(土) 11:18:39 ID:???
何気に投下してみましたm(_ _)m
曽根崎心中物語を題材にしてみました。(近松門左衛門に呪われそうな劣悪さだけど…)
敢えて名前をかかなったのは、ヒロインを読者に当て嵌めて貰おうと画策した結果です( ̄▽ ̄;)
ぐだぐだですが読んで頂けたら嬉しくおもいます

169 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/26(土) 12:40:46 ID:???
GJ&age

170 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/27(日) 12:02:56 ID:???
>>61
鈍亀かもしれないけど49氏GJ!
続き読んでみたいです

6氏と35氏の文章、好みすぎる。このスレ大好き

171 :前スレ35:2008/07/27(日) 20:32:29 ID:???
続きー

172 :前スレ35 EOEA:2008/07/27(日) 20:33:37 ID:???
「なんだか涼しいね。」
「うん……」

今日もジープで農地へと向かいながら、
そんなお天気話をぽつりぽつりとシンジと交わす。
大して盛り上がらない二人の会話。盛り上げようとする気もない。

だって必要ないんだもの。会話という物がね。
やることは決まっているし、伝え合う情報もない。
でも、悪くはない。寂しくはない。
二人でこうして側にいることが、百万の会話に勝る。
さらに、互いの体の温かさを感じられるなら……

と、右手を伸ばそうとして、ためらった。
私じゃない右腕。今更、包帯を巻いて隠したりしないけど、
やはり自分の腕では無いことが気になり、なんだかそれでシンジに触れたくはない。
シンジは私の右側に座っている。左手で触れるならシンジの右に回り込むしかない。
でもわざわざそうまでして……

なんだかな。何、くだらないことを悩んでるのかしら。私ともあろうものが。
そう思い返して顔を上げれば、見えてくる私達の農場の山。
草木一本、何も生えていない山。

セカンドインパクトの折、微生物に至るまで全ての生命体が例外なく消失したと聞く。
やはりサードインパクトもそうだったのだろうか。あの時のことは何も判らない。
もはや、新たな生命が生まれ出でることなど無いのだろうか。

「……あれ?」
「ん、どうしたのシンジ。」


173 :前スレ35 EOEA:2008/07/27(日) 20:34:47 ID:???
「緑色……僕たちの畑だよ、あれ。」
「ごめん、まだよく見えない……ああ。」

私の不安はすぐに解消された。植えた作物が育ち始めたのだ。
しかし……

シンジは少し笑顔を浮かべる。
「よかった。この調子で上手く育つと良いね、アスカ。」
「いや……どうかしら。」
「え?」
「空を見て。羊雲じゃない?あれ。
 ここに、第三新東京市に秋が来ようとしているのよ。」
「……ええ!?」

シンジが驚くのも無理はない。
常夏の日本で育ったシンジには恐らく未知の季節の襲来だ。
間違いない。この気温の下がり方、もはや夏の物ではない。

「じ、じゃあ、僕たちの畑は……」
「最悪、全滅ね。」
「……え!」
「でしょ?野山が枯れる時期に植えた物など、育つ筈がないわ。」

驚いたシンジはギィッと車を止めて、ドライにそう言った私の顔をまじまじと見つめる。
ああ……そうね。頑張っていたシンジにはキツイ言い方だったかもね。

「仕方ないわよ。少し様子を見て帰ろう、シンジ。」
「……」
「初心者の私達なんだし、こういう失敗ぐらい繰り返して当然よ。勉強したと思って、諦めよう。」


174 :前スレ35 EOEA:2008/07/27(日) 20:35:59 ID:???
一応、慰めてるつもり。頑張ってたもんね、シンジ。
何かを育てるのは良いことだ、と誰かから聞いてたのが励みだったらしい。。

「えー!?加持さんがスイカを?」
「そうなんだ。みんなには内緒って言ってたけど……」
「あはは、それでスイカを育てたいって言ってたのね。」

そんな会話を交わしたのは何時だったか。
加持さん、か……前の恋人の話を今の彼氏としているようで、なんだか微妙な気分だ。

「シンジ、ずいぶん髪が伸びちゃったね。」
「うん、まあ……このまま伸ばすのも面白いかな……と。」
「よし、アタシが切ったげる。」
「え?いや、いいよ。」
「いーから、ここに座んなさい!
 そんなふうに伸ばされちゃ、アンタが誰かさんに見えてくるから!」

実際、加持さんっぽさを身につけたかったのかな?シンジは。
そうして私の気を引きたいのかな。
私、露骨に加持さん、加持さんって言ってたし。
それとも、単なるシンジのあこがれかな。

「ほら!アタシも上手いもんでしょ。」
「うん……あはは、すっかり元通りになっちゃったな、僕。」

元通り。
つまり、もとの脆弱な心のシンジに?
そういう意味にも取れるわね。
几帳面なお利口さんが髪を伸ばしてたのは、やっぱり変身願望、か。


175 :前スレ35 EOEA:2008/07/27(日) 20:37:00 ID:???
「ご不満?アンタはそれでいいよ。」
「え……?」
「アンタはそのままで良いっていったの。」
「そ、そう……ありがと。」

少しはにかんで、頬を染めるシンジ。
私は髪型のことを言ったつもりだったけど、シンジは人格まで認めて貰えたと喜んでるみたい。
いや、シンジが軟弱でも私は構わない。
昔の私ならいざしらず、今の私ならそんな彼を許容できる。
つまり、私が変わりつつある。それは何故?

思わず、右目に手を添える。
結局、この目に帰結する自分の思い。
この目のお陰で私がシンジを、などと思いたくない。
軽く手が触れただけでドギマギしている自分が許せない。
あのファーストなら好きそうね。こういう恋愛がさ。

以前の私なら、こうしてシンジと暮らすことなど出来ただろうか。
もともと、私はシンジのことが好きだったのだろうか。
それじゃ私の今の感情、それはファーストからの借り物なの?

私は素直に認める。
私はシンジが好き。今の私はね。
でもそれが、私自身の気持ちでは無いとしたら?
それが無性に許せない。
ファースト、アンタが私に取り憑くよりもずっと以前から、エヴァに乗っていた頃からシンジを……

と、私が考えているのは今の自分だから?
まるで自分で自分の体を持ち上げるような、自己評価の堂々巡り。


176 :前スレ35 EOEA:2008/07/27(日) 20:38:03 ID:???
思わず、鏡の前に座ろうとする私。
気持ちの整理をつけるために……いいえ。

もう、アンタの目は見ないわよ。
もう、この包帯を解いてあげない。

「また、行くの?」
「うん、やっぱり、畑の様子が気になるし。」
「そう。私も一緒に……」
「いいよ。長い時間はかけないから。」
「うん……ちょっと待って。そんな薄着じゃダメよ。アンタ、秋とか冬を知らないでしょ?
 ジャンパーとか車に積んで行きなさい。」
「ああ、ありがとうアスカ。」
「夕方になっても戻らないときは迎えに行くからね。」
「うん……行ってきます。」

今、ここにいるのは私。
こうしてシンジと互いに気遣いながら一緒に暮らせるのは私。
シンジと居られるのはアンタじゃない。
アンタは包帯の裏から指をくわえて見てなさい……あら?

シンジ、もう戻ってきたの?

「アスカ、雪だ。もの凄い雪が降ってる。」
「ええ!?」

私がシェルターの外に出てみると、既に一面は銀世界……
などという綺麗な風景なんてもんじゃない。
すさまじい吹雪が、あたり一帯をおそっている。


177 :前スレ35 EOEA:2008/07/27(日) 20:39:03 ID:???
「……」
呆然と、吹雪の中で立ちつくす二人。
おかしい。ついこの間まで秋だと思ってたのに。

「氷河期……」
ぼそり、と私がそういうとシンジは驚いて振り返る。

「ひょ……そ、そんな、それじゃ自給自足なんて到底……」
「判らないわよ。とにかく、今がどういう気候なのか。
 あのサードインパクトからどう変わったのか、そこからじっくり調べる必要があるわね。」

といったって、今の私達に調べられることはごくわずか。
セカンドインパクトで日本の気候が変わったのは地軸の歪み。
再びそれが発生したのなら、吹雪の到来が説明できる。
でも、そうでないとしたら……

「その時は、ひっそりとこのシェルターで老後を迎えるしかないわね。」
「そんな……」
「まあ、そうなるとは限らないわよ。最大で一年以内には間違いなく結論が出るわ。
 その時、シェルターから外に出られるならね。」

シンジはがっくりと肩を落とす。
自給自足を目指そう、と言い出したのは私だけど、私以上にシンジは頑張ってくれていた。
このシェルターへの突破口を開いてくれた時のように。
私はそっとシンジの肩を抱きしめる。

「仕方ないわよ。大自然が相手じゃ、私達には太刀打ちできない。でしょ?」
「……うん。」
「開き直ってのんびりしようよ、シンジ。」


178 :前スレ35 EOEA:2008/07/27(日) 20:40:05 ID:???
いや、ダメだ。
本当は、そんなことをしちゃいけない。

嵐が過ぎるの待ちながら、
シェルターというゆりかごの中で寝過ごしたその後で、
本当に私達が力強く生きていけるのかどうか。

得体の知れないモヤモヤとした不安が私を襲う。
アクティブが信条のこの私、
どうしようもない自然の驚異が相手だとしても、どうしようもない、などと言いたくない。

「シンジ、もうシェルターに入ろうよ。風邪なんか引いたら大変。
 たまにはさ、乾パンに水とかじゃなくて暖かい物を……」

だから何を言ってるのよ、アスカ!
そんなヌルイ台詞、私らしくも無い!

「……ッ!」
「え、あの……アスカ?」
「え?あ、あの……ああ……」
「もの凄い顔をしてたよ。どうしたの、アスカ。」

そうよ。何を取り乱しているの、アスカ。
見てよ、この景色。どうしようもないじゃない。
天災相手に何をしようというのよ、アスカ?

「……」

ほら、シンジが心配してるよ?落ち着いて、アスカ。


179 :前スレ35 EOEA:2008/07/27(日) 20:41:08 ID:???
「さあ、中に入ろうよ。アスカ?」
「う、うん……ゴメンね。」

逆にシンジになだめられて、ふわっと胸の中が軽くなる。
そっと肩を抱かれて、沸き立っていた苛立ちが砂の山のように崩れて落ちる。

でも、何かが抵抗している。
心の奥で、何かが。

「シンジ、ゴメンね。今日のお昼は何を……」

違う。
これは私じゃない。

こんなの、私なんかじゃない。

- 続く -


180 :前スレ35:2008/07/27(日) 20:42:10 ID:???
続くー

181 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/28(月) 00:16:20 ID:???
これもまた続きが気になる!www
GJ!乙です!

ここの職人はいったい何者なんだwww

182 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/28(月) 00:44:31 ID:???
GJ!!
先が全然読めないw

183 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/30(水) 01:29:20 ID:???
夏場なので怪談物です


相変わらず蒸し暑い夜の話し
「ねぇ〜…シンジ何か涼しくなる事無い?」
事の始まりは、アスカの何気ない一言からだった。そして、これが恐怖の始まりだった…
「なら、怪談なんてどうだろう?」
と、シンジが答えた。
「階段?そんな話しして本当に涼しくなんの?」
アスカは『怪談』と『階段』を勘違いしているらしく、頭の上に?を着けて、白けた顔をしていた。
(アスカのヤツ階段と怪談を勘違いしてるな…)内心呆れながらも
「怪談だよ。幽霊とか怖い話しをして涼もうって事だよ」
と、アスカに怪談の意味をそれとなく教えたのだった
「怖い話しねぇ〜…うん♪面白そうじゃない↑さっそくやりましょ♪」
と、アスカはノリノリで答えたのだった。するとシンジは部屋の電気を消して、一本の蝋燭に火を点けて雰囲気を造ってから


184 :183:2008/07/30(水) 01:42:57 ID:???
続き

「じゃ…まずは、僕からするね。この話しはSecond-Impactよりもっと以前で江戸時代の話しなんだけどね…」
シンジは自分の中で知っている怪談話しをし始めた…
「それは…今日みたいに蒸して、蒸して暑い夜だったらしく、寝苦しくて中々眠れなかったらしいんだ…男が夜中に喉が渇いたらしく瓶の中の水を飲もうと覗いたら、瓶の中は空だったんだ。それで、仕方なく井戸の水を汲もうとしたらしぃんだ…。
そして、汲み上げた水を桶に移そうとした時に、汲み上げた水が妙に鉄の臭いがしたそうなんだ…そして、水の色も透明から段々と赤くなりだしたんだ。何でだと思う?」
と、シンジは一旦話しを区切りアスカに尋ねてみたのだった
「水の色が血に変化していったとか言うんじゃないでしょうねぇ〜?」
と、半ば適当に答えたのだが
「正解♪で、続きを言うとね…」
と、シンジはアスカの適当な解答が正解だと言うと話しを続け出した。

185 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/30(水) 01:46:56 ID:???
今日はここまで( ̄▽ ̄;)
続きは明日の夜にでも書きます。何分携帯からなんで細切れになりますが、温かく見守って下さいm(_ _)m
では×2└|∵|┐≡ダッシュ

186 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/30(水) 01:51:35 ID:???
なんちゅーところでw

<階段?そんな話しして本当に涼しくなんの?
これアスカ絶対「怪談」知ってるだろww

187 :183:2008/07/30(水) 23:51:45 ID:???
184
続き

「それから、汲み上げた水の色が段々と赤くなっていって、とうとう血みたいな鮮やかな赤になったんだ。
しかも、血独特の鉄腐さは酷くなって、その上、何故か有る筈の無い髪の毛が大量に浮かび上がって来たんだ。
男は直ぐに汲み上げた水…今は血の方が正しいかな?まぁ、それを捨てようとするんだけど体が硬直して動けないらしくカタカタと震えながら様子を見るしかできなかったらしんだ…
だけど、桶の水の変化はそれだけでは留まらずに鉄の臭いの中に何かが腐った臭いが混じりだしたんだ…男は恐怖の余りに気絶しそうになった時に…誰かが背中を『トントン』と叩いたんだ…
それと同時に男は振り返る事が出来たんだ。
だけど、男は振り返った後に激しく後悔したんだよ。何故か解る?」
また、シンジは話しを区切り、アスカに話しを振ったのだっあ

188 :183:2008/07/31(木) 06:18:04 ID:???
187続き


「えっ?何で、そいつ後悔したの?」
アスカは男が何故後悔したのか解らなかったから逆にシンジに聞き返したのだった。
「それはね…何となくなんだけど、心の中で絶対に振り向いてはいけないと思っていたのに、顔が勝手に動いたらしく、
それで、振り向いた時に男は『死ぬ』と直感し、それで振り向いた事に後悔したらしいんだ。」
と、シンジは言ったのだった。
「ふぅ〜ん…で、続きはどうなったの?」
アスカは続きが気になって仕方ないらしく、シンジに話しの催促をした。
そして、シンジは続きを語りだした。
「それで、男が振り向いた先に居た物は、首の無い女だったんだ。
男は怖さの余り、その場にへたり込みたかったんだけど相変わらず体はうごかなかったんだ…
そして、男の頭の中に直接声が聞こえて『私の…首を…返して…』と、男は視線を血に変化した水に送ると、血の中に腐敗しまくった女の顔らしき物が入って居たんだ…」

189 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/31(木) 06:21:21 ID:???
昨日は書いてる途中で睡魔に襲われて寝てしまいましたm(_ _)m
かなり、おかしな部分があると思います。続きはまた後で書きますm(_ _)m
では×└|∵|┐≡ダッシュ逃げ

190 :前スレ35:2008/08/02(土) 00:08:21 ID:???
eo解除されたー
続きー

191 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 00:09:21 ID:???
「ふう……ふう……はあ……」

シンジがマラソンから帰ってきた。
シェルター内の狭い通路を繋いでコースを造り、毎朝5qを走りきる。
あれ以来、この街に冬将軍が到来してからのシンジの日課だ。
そして訓練室に行き、腹筋とか懸垂とかのメニューをこなす。
そろそろ終わるかな。しょうがない、タオルを持って行ってやるか。

「お疲れ様。よく続くわね。」
「あはは、こういうことでもしないと退屈だし。」

私がシンジにやれと指示した訳じゃない。
シンジの自発的活動だ。
毎朝、決まった時間にちゃんと起きるし、
トレーニングの後はきっちりと生活のための仕事をこなす。

「アスカ、朝ご飯の準備をするから待っててね。今、シャワーを浴びてくる。」
「うん……」

私?
お察しの通り、何もしない怠惰な生活が続いている。
今ではもう、食事の用意や掃除洗濯までシンジに甘えきり。
アクティブが信条とか、自分ながらよく言ったものだ。
そんなものぐさな私になったのも、ファーストの目のせいかって?
逆よ。いや、その通りかもね。こいつを見たくないの。考えたくない。
だから何もしない。したくもない。
できれば、そう。

シンジの顔、見たくない。


192 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 00:10:44 ID:???
「アスカ。後で体温と血圧、計っておくね。」
「え?あ、そう……」
「なんか自動で血液検査とか出来るものがあるみたい。後で僕、試してみるよ。」
「うん……」
「上手く出来たらアスカもやっておくといいよ。それから……」

シンジ、お願い。
あまり私に話しかけないで。
シンジと一緒に居たい偽物の私と、そうでない本来の私の心……

あれ?本当は私はシンジが嫌いなの?
違う。そういう訳じゃない。
シンジを慕う私の心。これが私自身ではなく、ファーストのものだとしたら?
私の心がファーストに支配され、シンジに触れるその手がやはりファーストの右腕だとしたら?

そうね。まるで今の私は、アスカの記憶を誰かから植え付けられたものであり、
本来の自分自身が消し去られたような、そんな感じ。
本来のアスカは既に抹消されて、今のは私はアスカの姿と記憶を持つ綾波レイ……

嫌だ。絶対に嫌だ。
そんなこと、絶対に許せない。
もし、こうしてシンジと一緒に過ごしているのが私でない……いや、違う。
私は私よ。私こそが惣流アスカ・ラングレー、その人じゃないの。

いや、でもね。仮によ?
あの時。そう、エヴァシリーズと戦った折りに、既に本物の私は死んで……

「アスカ?」
「……え?あ、シンジ、何?」


193 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 00:11:45 ID:???
「うん……あのね。もうすぐ、クリスマスだよね?
 たまには、普通の料理を食べようよ。ね?」
「……そうね。」
「ドイツ料理ってどんなの?僕、作って見るよ。」
「……」
「えーと、材料がそろうかなぁ。どんな料理が知らないけど……」
「私も知らない。ずっとNERVに育てられたから。」
「あ、そう……えーっと……」

(アッハッハ!ドイツ料理なんてね、ソーセージとジャガイモとか適当に食べるだけなんだから!
 ほら、以前に作ったカレーの方がよっぽど美味しいわよ。それじゃ、また作ろうか!)

そう、答えてあげたかった。
でも、何かが許せなかった。
あの時。そう、シンジとカレーを作った私が既に私じゃないとしたら?

……ああ、もう嫌だ。
私、ずっとそんなことを考えてる。

「止めておきましょう、シンジ。」
「え?」
「私達は蓄えを食いつぶしてるのよ。自重しなくちゃ。」
「……そうだね。」

そして私は何も言わずに立ち上がり、自室にこもる。
最近、ずっとこのパターンだ。
それを嫌だという訳じゃない。
自分の部屋の扉に鍵をかけたあと、どれだけホッとすることか。
そしてベットに潜り込み、何もしないでその日を過ごす。


194 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 00:12:46 ID:???
もう鏡に向かうこともない。
シャワーを浴びる時も包帯を巻き直すときも、絶対にこの目を開かない。
しっかりと眼帯を当てて、その上から山ほどの包帯で頭全体を覆い隠してしまっている。
もう頭をすっぽりと覆い隠すくらいに……え?この髪の毛……

「いやああああッ!!」

ばたんっ!ばたばたばたばた!

うっかり出してしまった悲鳴を聞きつけて、シンジがこちらに走ってくる。
もうだめだ。あのファーストの浸食がここまで来てしまったのだ。
私の赤毛の中に、間違いなくファーストの青い……あら?
これって、単なる白髪?

どんどんどんどんどんどんっ!

「どうしたの、アスカ!ねえ、ここを開けてよ!ねえッ!」

ったくもう……うるさいなあ。
聞き耳たててるんじゃないわよ、バカシンジ。

「シンジ、ゴメン。その……変な夢を見ただけ。慌てないで。」
「あ、あの、アスカ、その……ホントに?怪我とか……」
「してないわよ。判ったら、あっちに行ってて。」
「アスカ……」

ドアの磨りガラスに映るシンジの影。
行けと言ったにも関わらず動こうとしない。
もうほっといてよ。


195 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 00:13:48 ID:???
「アスカ……もう今月に入って5度目だよ?」
「……」
「一度、話をしようよアスカ。」
「話?ないわよ。話すことなんか。」
「でもさ……」

あー、もういい。ほっとこう。
シンジがそうしたいというなら、ずっとドアの外で吠えてればいいわ。

とんとん……しつこく、シンジはノックする。

「ねえ、アスカ。今は僕たちだけしか居ないんだよ?僕たちだけなんだよ?仲裁してくれる人も居ない……」
「……」
「お願いだよ、アスカ。話をしようよ。」
「……」

とんとん……

とんとん……

「アスカ……」
「……」
「アスカ、その目がそんなに」

シンジ……アンタ、この私を怒らせるつもり!?

ガンッ!

と、思わずドアに蹴りを入れて怒鳴り散らした。もう、我慢できない!



196 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 00:14:52 ID:???
「アタシの言ったこと忘れたの!いい加減にしなさいよ!」

「アスカ、その目がどんな状態なのか判らないけど、どうなっていようと」

「アンタに私の気持ちが判るわけないでしょ!この目についてあれほど触れるなって言ったじゃないッ!」

「だから、僕は見るつもりはないよ。アスカが見せたくないなら、僕は見ない。
 でも僕は、その目のためにアスカがダメになるんじゃないかと心配なんだよ。」

「アタシの何がダメだって言うのよ!言ってみなさいよ!ダメで何が悪いの?
 そうよ、あれが良くてこれが悪いとか、今更そんな善悪なんて、なんの意味も無いじゃないの!」

「アスカ、前に言ってたじゃないか。自分達の力で生きていけないなら意味が無いって。
 生きていくことは善悪の問題じゃないよ。それにさ。」

「何よ!?」

「最初の時より、ずっと包帯が増えてるじゃないか。ほとんど顔も見えないくらいに。」

「それが何よ。あー、そうね。最後に残った女が醜いから、それでアンタは必死な訳ね。
 どうせこの場にファーストが居たら、そっちに飛びついていくくせに!」

「……アスカ、綾波のことは別に関係ないじゃないか。」

「アンタの口からその名前を言わないで!なんで、ファーストのことなんか言い出すのよ!」

「アスカ、言ってることがメチャクチャだよ!落ち着いてよ!」

「なら、メチャクチャなアタシのことなんかほっといてよ、もう!」


197 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 00:16:12 ID:???
「アスカ……」

「シンジ、ならいいわよ。ドアを開けてあげる。
 そのかわりね。ズボンとパンツを脱いで待ってるのよ。いい?
 そしたら、私も服を全部ぬいであげるから、私を見ながら自分でしなさい。」
 
「アスカ……なんてことを……」

「私、覚えてるのよ。あの時、起きてたのよ、シンジ。
 あの時と同じ事をするだけじゃないの。それが今更、恥ずかしいって?」

「……」

「そしたら、アンタとセックスしてあげなくもないわ。どう?それで、満足?」

「……」

そして、ドアからシンジの影が消えた。

……何よ。
悪いのはシンジよ?シンジが悪いの。
私に説教がましいことを言う、シンジがみんな悪いのよ。
それで、ちょっと言われたぐらいで逃げちゃってさ。

あれだけ言われて怒らないの?どこまで軟弱なのかしら。
どうせなら、ドアを踏み破って私をレイプするぐらいの気合いでかかってきなさいよ。

そうよ、あれだけ言われて……そうよ。男があそこまで言われて……
大抵の男なら、あんな恥ずかしいことを……


198 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 00:17:13 ID:???
そこまで言われちゃもう引き返せないくらいの、秘密を明かされたというのにシンジは……

私……私は……

私はシンジに取り返しの付かないことを……?


(う、うぐ……ううううううっ……)

シンジ?

なに、今のうめき声。
いや、演技じゃない。ただ事じゃない。
何があったの?何が起こってるの?

(うう……ああああ……あああああああッ!)

シンジ!?


- 続く -


199 :前スレ35:2008/08/02(土) 00:18:18 ID:???
続くー

200 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/02(土) 01:04:10 ID:???
いやぁぁ、こんなとこできらないでwww
気になるよぉぉぉ

201 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/02(土) 01:10:52 ID:???
今回解除迄短かったよなー
お試し使わなかったのか?
しかしミイラっぽいアスカすげー、GJ


202 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/02(土) 03:30:00 ID:???
GJGJGJ!続きが気になりまくリング!

203 :前スレ35:2008/08/02(土) 21:59:53 ID:???
続きー

※ 注意 ※ 

以降、10レス以内に痛グロ出血表現があり、読むと鬱になったりします。
そういうの駄目な人、どうかスルーして頂けますように...

204 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 22:00:54 ID:???
何かあったんだ!
シンジの身に、何かあったんだ!

ガチャン!

「シンジ!どうしたの!シンジ!」

私はドアを開けて飛び出して、シンジの声が聞こえた方に走り出し……

シンジ!?

「う、うう……あああああっ……」
「シンジちょっとやだ、アンタ、アンタ……アンタ、なんてことするのよッ!!」
「あ、あああ、あすか、あ……」

私が見た物。
それは、左目に深々とナイフが突き刺さったシンジの顔。

「や、やだ、シンジ、何でこんなことをするのよ、何で、
 いい?抜くわよ?抜くからジッとしてて、お願い、ジッと、」
「う、うう、ああああ……ああああああああああッ」

ナイフを抜いた左目から、噴水のように吹き出す鮮血……いやだ、抜いちゃいけなかったの!?
そんな、抜かなきゃしょうがないじゃない!

お願い止まって!止まって、お願い!

「シンジ、あ、アンタの服……ッ!」


205 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 22:01:58 ID:???
ビリビリッ!

「ほら、これで押さえて!何をしてるの、しっかり押さえて!
 やだ、目の血止めなんかどうすればいいの!ねえ、どうすればいいのよ!わかんないッ!!
 ねえ、シンジ!しっかり自分で押さえててよ!アタシが薬とか取ってくるから!」
「う……う……あ……」

嫌だ、シンジの声が途切れ途切れになってくる!
私は夢中で走り出す、救急箱、救急箱は何処!?
シンジ、アンタは取り返しの付かないことをしたのよ?
医者も居ない病院も無い、ここは私達二人だけ、
そんな世界で体を損なうことになったら、

「あ、あ、あった!シンジ、今行くから!お願い、死なないで!死なないで!死なないで!」

中途半端に蓋が開いてて、
バラバラと中身をまき散らす救急箱、
そんなのをほっといて、残った薬を抱えて走り出し、
いや、ダメよアスカ!落とした薬が無くてシンジが死んだらどうするのよ!

「シンジ頑張って!ほら、薬を持ってきたよ!いい、かけるわよ?」
「あ……」
「しみるの?仕方ないでしょ!大怪我なのよ?」
「……」
「どうなの!まだ痛む?ほら、しみるでしょ?しみるとか痛いとか悲鳴あげなさいよッ!」
「……」
「シンジ!シンジ!?ねぇ、声を出して!お願い!声を出して!」

ビリビリビリ!


206 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 22:02:59 ID:???
足りない!私の服まで使っても足りない!血が止まらない!
お願い!どうすればいいの!?

「イヤだ、血、止まって!ねえ!シンジ!シンジ!死なないで、死んだら承知しないわよ!
 死んだら、死んだら、死んだらアタシは、ゴメン!シンジ死なないで!アタシ、謝るから!何でもするから!
 誰か助けて!お願い!シンジを助けて!お願い!お願い!お願いだからシンジを助けて!!」

『ねえ、アスカ。今は僕たちだけしか居ないんだよ?』

「……そうよ、アスカ。アンタだけなのよ?アスカ、シンジを助けられるのは私だけ、私だけなのよ?
 このままシンジを死なせていいの?もう、私にはシンジしか居ないのよ?
 私が何も出来ずにシンジを見殺しにしてしまったら、私は、」

……見殺しぃ?はぁ????
アハハハハハハッ!何を言ってるのよ、私は!
シンジの言う『僕たちだけしか居ない』って意味、判ってる?
言ってみなさい!シンジを殺したのは誰?シンジをここまで追いつめたのは誰なのよ!

「い、い、イヤッ!私は何を言うつもりなの!?
 止めて!言わないで!それだけは言わないで!お願いだから言わないで!」

シンジを殺したのは他の誰でもない、私自身じゃないの!!


「いやああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!」


……


207 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 22:03:59 ID:???
血は、止まった。
最後には自分の目の包帯をといて、シンジの頭に無茶苦茶に巻き付けていた。

辺りは、血の海と化していた。
その中で、半裸で抱き合うシンジと私。
血が止まったのは、もう全て流れ尽くしてしまったから?
そう、そうね、でも、大丈夫、大丈夫よ、シンジ。

「ねえ、シンジ……起きてる……?
 ねえ、シンジ……私、夢を見たのよ……丁度、こんな夢……
 水しぶきを上げながら……二人で裸で抱き合ってた……夢……バラ色の夢……
 そうか……あれはアンタの血だったのね……
 ねえシンジ……ほら、起きて……あの夢の続きをしようよ……ほら、起きてシンジ……」

目の前に、シンジの左目に刺さっていたナイフが転がっていた。

「出血が酷いから起きれない?……しょうがないわねぇ……
 ウフフ……大丈夫よ……アタシの分があるから……ね……?
 ほら……分けてあげる……私の……」

私は、ナイフを自分の首筋に押し当て、そして、

(ぴちゃん……)

ん?

(ぴちゃん……)

「やっと、お出ましって訳ね?今更、何よ。」


208 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 22:05:00 ID:???
見上げると、そこにファーストが立っていた。
おぼろげで、その姿がハッキリと見えてこない。ぼんやりと切れ切れに見えるファーストの幻。

「アンタのせいよ。悪いのは全てアンタよ。何よ、何しに来たのよ。」

(……)

「せっかく出てきたんだから何か言いなさいよ。全部アンタが悪いのよ……ねえっ!」

(ごめんなさい)

ふわっと、まるで暗がりに光る蛍のような、そんな声が辺りに漂う。

「そうよ、謝りなさい。もう、アンタに出来ることはそれだけよ。
 もう一度、謝りなさい。そして消えなさい。二度と私の前に姿を見せないで!」

(ごめんなさい。でも、そんなことを言わないで。)

「はぁ??」

(消えろだなんて言わないで。謝るから……)

「アンタ、何を言ってるのよ。アンタらしくも……」

(お願い、ママ。謝るから……)

え!?

「ちょっと、ファースト……今、なんて……」


209 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 22:06:54 ID:???
違う。ファーストの姿、幻だから見えにくいんじゃない。
無いんだ。ファーストの体が欠けている。
右腕と、そしてファーストの両眼が。

「あ、ああ、ああ……」

そして、私は意識を失った。
全てを悟った、その後に。

……

「シンジ!?」

目が覚めて、辺りをキョロキョロと見渡す。
シンジが居ない。
昨日の出来事、いや、あれは昨日の出来事だったんだろうか。
やはり夢では無かった。私は血塗れの部屋で眠っていた。

思わず、自分の目に手を当てる。
手を添えた右目に、ほどいた筈の包帯がしっかりと巻き付けられていた。
この巻き方、そうだ。シンジと浜辺で気がついた時の、あの巻き方だ。
誰がしたのだろう……答えは一つだ。

私は立ち上がり、フラフラとシンジの姿を求めてさまよった。
何処に行ったの、シンジ。

まさか、ファーストが連れて行っちゃったの?


210 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 22:07:55 ID:???
でも、その考えに憤りを感じない。
なんだか、すっかり心が洗い流されたかのよう。
もうこの目と、そして右腕に苛立つこともない。

ん、微かな物音。
シンジね?

その音の方に向かうと、そこにシンジが立っていた。
私がシャツを引き裂いてしまったために、ほとんど裸の姿だった。
私もそうだ。身につけているのは下着だけ。
シンジは洗面台に向かっていた。
鏡に映るシンジの顔は、思った通りだ。

「シンジ……」

シンジが振り返る。
左目を包帯で隠した、その姿で。

「シンジ、その目……」
「あ、うん、これね……」
「大丈夫なの?その目……ねえ、手当を……」
「大丈夫だよ、その……」

シンジは少し笑って、こう言った。

「ごめんね。僕、男だしさ。見せたくない。」

何それ。
以前、私が言った台詞じゃないの。


211 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 22:08:58 ID:???
「うふ……ふふふ……」
「あはは……はは……あはははは……」

二人で笑った。
バカみたいに笑い転げた。
そのまま抱き合い、床に崩れ落ちて、息が出来なくなるほど笑い続けた。

そう、やっとあの夢の続きが始まるのだ。

- 続く -

212 :前スレ35 EOEA:2008/08/02(土) 22:10:10 ID:???
続くー次が最終回ぃー

※ 注意 ※ 

こっから前の10レス以内に痛グロ出血表現があり、読むと鬱になったりします。
そういうの駄目な人、どうかスルーして頂けますように...


213 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/02(土) 22:46:12 ID:???
GJ
次で終わっちゃうのか(´・ω・`)

214 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/03(日) 00:21:16 ID:???
続きが気になるが…そうか終わっちゃうんだ…
とにかくGJ!

215 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/03(日) 00:35:57 ID:???
GJGJGJ!!!

216 :前スレ35:2008/08/03(日) 17:16:44 ID:???
続きー

217 :前スレ35 EOEA:2008/08/03(日) 17:17:46 ID:???
それから、数ヶ月。

長い長い冬が明けて、第三新東京市に春が訪れた。
まさに溢れんばかり命が咲き乱れる、見事な春が到来した。
この街に、この国に春がやってきたのは何年ぶりのことだろう。

私達の不安、氷河期の到来は無かったのだ。
あるいは、サードインパクトの傷跡を突貫工事で癒すため、ごく短期間の氷河期だったのかも知れない。
まさに、あの吹雪は癒やしの風に他ならなかった。

私はシンジに促されて、数ヶ月ぶりに日の光を浴びた。
シェルターの原子炉が生み出す電灯の灯りばかり浴びていた私には、
輝かしい春の日差しの中で、身動きできないほどの目眩に襲われた。
そして、シンジが待ち遠しそうに私の顔をのぞき込む。私が驚嘆するのを待っているのだ。
そして、目が次第になれてきて世界の有様を見た時、シンジにとって期待通りの悲鳴を上げた。
瓦礫と化した第三新東京市では、盛大な花々のセレモニーが繰り広げられていたのだ。

すみれ、たんぽぽ、スズラン、れんげ、チューリップ、そしてこれでもかと言うほどの桜、桜、桜……

もう知ってる花も知らない花も、私が一番と誇らしげな顔で咲き乱れていた。
瓦礫の山にも、ビルの廃屋にも、岩という岩、地面の至る所に草木が萌え、
花々が織りなすクラクラするほどの春の息吹が溢れかえっていた。
それこそ正にこの街に、この星にサードインパクトで溶けてしまった生命達が戻ってきたことの証明だった。

「シンジ……ああ……シンジ……」

私はただ、シンジの名を唱えるばかり。
そんな私を得意げな顔で手を引いていく。まるで自分の手柄のように。
あはは、いいわよ!これ全てアンタのお陰だって、私が声高らかに宣言してあげるから!


218 :前スレ35 EOEA:2008/08/03(日) 17:18:46 ID:???
私達が以前に畑を耕していた山に向かって、ジープなど使わずにゆっくりと歩いていく。
そして、最初に見た花々など序の口であったことに気が付いた。

山はとてつもない変化を遂げていた。
サードインパクトの被害を受けて丸裸となってしまった山々には、
樹齢100年にも1000年にも見える木々で埋め尽くされ、
妖精が住んでいると信じて疑わないほどの見事な森林と化していた。

そして最後にたどり着いた場所。
私達が耕した小さな畑。何故かそこだけは大自然の浸食を受けていなかった。
巨大な木々に守られて、私達が作ったそのままの姿で残されていた。

「ほら、アスカ。また、作物が芽を出している。」
「ほんと……ほんとね、シンジ……よかった……よかったね……」

そう言って涙ぐむ私を後ろからシンジは抱きしめる。
そっと、お腹の新しい命を愛でながら。

そして、更に数年後……え?
冬が明けるまでどうしていたか?
聞いてなかったのかな。今まで説明した通りなんだけど。
深い深い雪の下で、ゆっくりと春が訪れるのを待ちながら、
新しい命をじっくりじっくり育んで、そして花開いた、というわけ。
とすれば、第三新東京の花盛りもシンジのお陰と言えなくもないでしょ?

っていうかさ。こっぱずかしくて言えないのよ!
二人きりだからこそ出来ることばかりして乳繰り合ってたんだから!

はい、更に数年後。


219 :前スレ35 EOEA:2008/08/03(日) 17:20:04 ID:???
さらさらさら……

風に波立つ稲穂の海。
私はいつも、暇さえあればその光景を眺めていた。
朝日を浴びて、昼間の強い日差しを浴びて、夕日に紅く染められる小麦の大海原を。

「アスカ、また泣いてるの?」
「うん、ゴメンね。夕日が沈む頃が一番泣けて来ちゃう。」

もう音楽も映画も何もいらない。
この風景さえあれば、私は他に何もいらない。
これこそ正に最高の音楽、最高の映像。
そこに私達にとって、最高のヒロインが登場する……
「ファースト、待って!危ないからパパと一緒に居なさい!」
「平気!」

私達の「ファースト」、一人娘のユイは自慢の青い髪を風になびかせて、
元気に稲穂を左手で触れながら駆け抜けていく。

右腕は、なかった。それだけではない。両目とも見えないのだ。
私達の娘は、眼球を持たないまま生まれてきたのだ。
なぜなら、娘は私にそれらを捧げてしまったのだから。
そんな体で生まれてしまったけれど、可愛い可愛い私達の一人娘なのだ。

「アスカ、あの子なら大丈夫だよ。僕達以上に物事は見えている。」
「そうね。本当にそうみたいね。」
「でもさ、そのう……あの子をファーストって呼ぶのは……」
「いいの。私がそう呼びたいの。だって、出会ってからずっとそう呼んでたのよ?私は。」
 ……ん?なに、複雑な顔してるの?大丈夫、今ならファーストに感謝してるぐらいなんだから。」


220 :前スレ35 EOEA:2008/08/03(日) 17:21:09 ID:???
私に右目をくれた。右腕も貰った。そして、シンジにも。
物を貰ったから感謝してるだけ?
自己犠牲に感動して?
いや、違う。うーん、なんて言えばいいんだろう。

あの時、シンジと傷つけ合ったのは通過儀礼で、それを促したのが紛れもなくファーストで、
それこそが人類を補完するための本当の道に至る……

「なに難しい顔をしてるの?ママ。」
いつの間にか、小さなファーストは私の膝元にやってきていた。

「ゴメンね。ちょっと悩んでたの。今日の晩ご飯はどうしようって。」
「ん、それじゃーね、うーんとね、うーんとね……」
「そうだ。たまにはシェルターの食べ物、持ってこようか。お肉なんて食べた事なんてないでしょ?」
「えー?私、嫌いだって言ったじゃない!動物の体なんか、食べたくない。」
「そうねえ、パパの作った作物しか食べたことないもんね……
 ん?ねえ、ファースト。いつ、それを言ったんだっけ?」
「んーとね、判んない。」
「フフ、そっか。それじゃ、今からご飯つくるからいらっしゃい。ファーストも今日から手伝うのよ?」
「はぁーい!」

そうだったわね。それで三人とミサトも一緒にラーメン食べたんだもんね。
そんなことを思い出しながら、ファーストの頭をそっと撫でてやる。ファースト自慢の青い髪を。
そう言えばエヴァに乗っていた頃、私を名前で呼んだことがなかったな。
うーん、うっかり「ママ」と呼んじゃったらマズイから?なんてね。

「ねえ、ママ。」
「なあに?」
「パパとママ。いつまで、その包帯してるの?やっぱり、怪我が直らない?」


221 :前スレ35 EOEA:2008/08/03(日) 17:22:03 ID:???
「ああ、そうねえ……」

私はシンジと顔を見合わせた。
ずっと気にしてほどけなかった頭の包帯。
今までほどく気になれなかった。
裸でシンジと愛し合う時も、どんな時でも。

互いに知っていながら、ずっと守り通してきたお互いの秘密。
傷つけることを恐れていたのではなく、互いの秘密にそっと手を添えて守りあってきたのだ。
この包帯こそが、まるで二人のエンゲージリングであるかのように。

でももうそんな証明は不要だろう。
私達の証明なら目の前に居るではないか。
せっかく貰ったファーストの右目。
それでファーストの姿を見ないでどうするのか。

「そうね、シンジ?」
「……うん。」

そして、私達はゆっくりと互いの包帯をほどき始めた。

- 完 -

222 :前スレ35:2008/08/03(日) 17:23:47 ID:???
終わりー

っていうか、アスカが本編で包帯巻いてたのは左目なんすよね……
なんかもう色々おかしいけど今更修正も効かないし、
でもしょうがないので突っ切ってしまいました。
すんまへん、失礼しましたー

223 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/03(日) 20:37:17 ID:???
35氏GJ!お疲れさんでした!今から読むぞー

224 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/04(月) 01:04:43 ID:???
GJ
お疲れ様でした


225 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/04(月) 10:37:11 ID:???
35さんGJ
締めまでおいしく頂きました
お疲れさまでした!


226 :183:2008/08/05(火) 00:46:59 ID:???
ひっそりと188続き
少し(?)グロくなります…



シンジは続きを語り出した。
男は腐敗しまくった女の顔に視線を移しながら
「く・首って、コ・コ…コレの事かな?返すから成仏して下さい…ナンマンダブ…ナンマンダブ」と言ってたんだけど…
「コノ、『クビ』ハ…イラナイ」
「オマエノ…『クビ』ヲカワリニモラウ…」と言って、男にしがみついて来たんだ…それで、男は怖さに耐え切れなくて気を失ったんだ。
男が目を覚ました時には朝になってて、不意にさっきまでの事が夢なんじゃないか?って思ったらしいんだ

227 :183:2008/08/06(水) 00:25:17 ID:???
ひっそり225続き
シンジ編終わる予定です。



まだ、男は自分の身に起きた変化に気付かなかったんだ。
それで、男は取り敢えず自分の家に戻ったんだけど…そこには、見知らぬ女が居て男は
「ここは、俺の家だぞ!!勝手に入ってんじゃねぇー!」と威嚇したらしいんだ。
一方、女は叫ぶ男に一瞥くれて
「今は貴方の家じゃありませんよ。それに…その汚らわしい身体をどうにかして下さいな」と、微笑んだ。
男は益々激昂し「言うに事かいて、汚らわ…『ズルッ…』」
全てを言う前に首がもげた…男は初めて自分の身体の異変に気付いたんだ。
首が取れた事もだけど、身体が腐っていた事に…
女は、そんな男を微笑みながら見ていた。
そして、男は女が昨日の化け物だと気付いたんだ。
そして、女はと言うと男のもげた首身から上を潰し、体を持ち外の井戸にほうり込んだんだ…それからは、その井戸からは男の声が聞こえて来るらしいんだ…「俺の首を返して」とね…

228 :183:2008/08/06(水) 00:40:51 ID:???
「僕の話しどうだった?」
と、シンジはアスカに怪談の感想を聞いた
「はんっ!シンジにしては上出来だけど、全然怖くないわよ。それに…」
と、アスカは強気で言ったのだけど、途中で良いよどんだ。
「それに、どうしたんだよ?」
シンジはアスカにその後が気になって聞き返したのだった。
アスカは
「あんた。後ろにだれか居るわよ…」
と言ってシンジの後ろを指さしていた。
怪談話をしていただけにシンジは心の中で
(僕を驚かせようとしてるんだな…)
と、思っていた。
それでも、シンジは後ろを振り向いて見た。
そこに居たのは………………………

白いワンピース姿に何故か大皿をもった綾波が居た。
さっきしてたのが怪談話だっただけに、綾波の急な登場はシンジを失禁寸前にまで追い込んだ。

つづく…

229 :6:2008/08/06(水) 01:49:29 ID:???
あっちの最終回終わってしばらく経ったみたいだし、
そろそろ俺も投下していいかな?

というか、余韻に浸ってる奴がいたら悪いな。
俺の方じゃアスカ、半分ギャグ担当だから……

230 :逆行142:2008/08/06(水) 01:50:43 ID:???


結局昨夜、一睡も出来なかったシンジは朝早くに起き出し、
せめて腫れて熱くなったまぶたを冷やそうと洗面所に向かった。
しかしそこで、
「……ぁ」
「…………」
ばったりと、アスカと鉢合わせしてしまった。
狼狽するシンジとは対照的に、目が合っても、アスカは何も言わない。
ただ不機嫌そうな目で、じろりとシンジをねめつける。
「あ、あの、その……」
そこで、シンジはなけなしの勇気を振り絞り、
「お、おはよう。その、…………アスカ」
はっきりと、そう口にした。
しかし、アスカはそれでも無言。じっと、シンジをにらみ続ける。
それで焦ったのはシンジだ。決死の覚悟で口を開き、
「あ、アスカ。あの、き、昨日は、悪かったと思ってるんだ。
ぜ、全部、アスカの言う通りで、ミサトさんに怒ってもらおうって、
昨夜はわざとあんなこと言ったりして、ずっと、独りでいじけてて……」
どもりながら、懸命に、自分の気持ちを伝えようとするが、
――ドン!
アスカは思わずシンジが「ひっ」という声を漏らすほどの勢いで足を踏み鳴らし、
最っ高に不機嫌な顔で、こう言い放った。
「もぉおおおおう! ほんっとに気の利かない奴ね!
アタシはトイレに行きたいの!
そんなとこ立たれたら、中、入れないじゃないのよ!」
「え? ……わっ! ごめん!」
そこでようやく、シンジは自分がトイレの前に立っていたのに気づいて、
慌てて横にどいた。
それを見て、アスカはふんっと鼻を鳴らして、
わざと乱暴に肩をぶつけながらシンジを押しのける。

231 :逆行143:2008/08/06(水) 01:52:09 ID:???

そして、トイレの前に立つと、ぎろり、と振り返って、
「何? アンタ、ずっとそこに立っとくつもり?
アンタにそんなトコいられると、すっっごく気になるんだけど」
何も考えられずにその場に立ち尽くしていたシンジを追い立てる。
「あ、わわ、ご、ごめん…!」
シンジはまた謝って、いそいでトイレから距離を取る。
アスカはそんなシンジの様子を目をすがめて見届けて、
「バッカみたい」
と冷たく言い放った。
「ご、ごめん…」
さらに首をうなだれさせるシンジを無視してアスカは言葉を続ける。
「アンタはね。どうせバカなのよ。どこまで行ってもバカシンジ。
……だからたまには、他人を頼りなさいよ」
が、その口から発せられた思わぬ言葉に、シンジはびっくりして顔をあげた。
「…え?」
それを照れくさく思うみたいに、アスカは不自然に斜め上を向いて、
「あいかわらず、察しの悪い奴ね! ……だ・か・ら!
相談されれば、ちょっとした手助けくらいはやってやってもいい、
って言ってんのよ!」
そんなアスカからの最大の歩み寄りに、しかしシンジは素直にはうなずけない。
「でも、そんな、悪いよ。アスカには、関係ないのに……」
「関係ないぃ…?!」
眼光鋭くシンジを貫く視線の圧力に、シンジは鼻白み、
「…う。だって、その、僕が、やらなきゃいけないことだし」
アスカに「はあぁ」と特大のため息をつかせる。
「そんなの、当たり前でしょ。そんな過保護な真似、こっちから願い下げよ。
そうじゃなくって、アンタの話聞いてやったり、落ち込んだアンタに発破かけたり、
アンタが自分で動くチャンスを作ってあげたり、って話。
それとも、そんなの手助けにならないとでも言うつもり?」
「そ、そんなことないよ!」

232 :逆行144:2008/08/06(水) 01:54:23 ID:???

シンジの言葉に、ようやくアスカは少し満足そうな表情を浮かべ、
「そ。とにかく、ま、そういうこと」
とムリヤリ話を締めくくった。
『これで話は終わり』という態度で腕組みしながら、でも、
どこかシンジの反応を待っているような、アスカはそんな状態で…。
それを察して、シンジは慌てて口を開く。
「う、うん。でも、アスカ…」
「何よ! これ以上うだうだ言うんだったら…」
そうじゃなくて、とシンジは首を振り、アスカの背後を指差して、
「その、トイレ。今、ペンペンが入っていったみたいだけど、いいの?」
「………え?」
バタン。…ガチャ。
背後から、トイレのドアが閉まる音と、カギのかけられる音。
アスカは弾かれたように振り返り、
「ぺ、ペンペン!? って、ちょ、ちょっとアンタ!
鳥類の分際で何いっちょ前に人間様のトイレ使ってんのよ!
こ、こら! カギ開けなさい! 開けなさいってのに、こらぁ!!」
さっきまでの真面目な顔はどこにいったのか。
ペンギン相手に本気で怒鳴り散らすアスカの目が、少しずつ据わっていく。
そこに危険の匂いをかぎとったシンジは、
「あの、それじゃぁ、僕は、もう行くから…」
一応小声でそう断って、抜き足差し足でその場を離れ始める。
「いーい、ペンペン。冗談とかじゃなく、アタシは限界なの!
感情的にも、その、…せ、生理的にも、ね。だから……、
って、聞いてんの、アンタ! ……く、そうだシンジ!
アンタも黙ってないで、何か…っていない?!
逃げたわね! 後で覚えてなさいよ!」
聞こえてきた言葉に、シンジはびくりと肩をすくませながら、
「とにかく早くしてよ! 漏れちゃうでしょぉ!!」
アスカのいつもと変わらぬ賑やかな様子に、わずかに頬を緩めたのだった。

233 :逆行145:2008/08/06(水) 01:55:38 ID:???

しばらくして、アスカが居間に戻って来た。
「あ、おかえり。
よかったぁ。その様子だと、無事に…」
言いかけたシンジに、ゴン、と無言で拳骨をお見舞いすると、
頭を抱えて倒れ伏したシンジの前に仁王立ちして、
アスカは言った。
「……で?」
ストレートかつ、端的に。
「で?、って、何が?」
だが、それで伝わるシンジではない。
能天気に首をかしげ、疑問符を浮かべる。
それに、かぶせるようにして、
「アンタ、ファーストと仲直りしたいんでしょ?」
「え…?」
アスカはやはり、直球なことを言って、
「そ、その、それは……」
シンジの言葉を詰まらせる。
――こうしてアスカとは普通に話せるようになっても、
シンジは別に立ち直ったワケでも、開き直ったワケでもなく、
いまだ、レイに歩み寄る自信も勇気もないのだ。
口ごもるシンジに、焦れたように、
「いいわ! だったらアタシが協力してやるわよ」
「えっ? アスカ、が…?」
アスカがそう宣言して、シンジを驚かせる。
シンジの驚き様に、『じゃあさっきアンタとしてた話はなんだったのよ!』
という思いが一瞬、アスカの表情に出るが、懸命に制御して、
「どうせアンタだけじゃ、色々考えるだけで動けやしないんでしょ。
ファーストと二人きりになるまでは、アタシがサポートしてやるから、
――アンタはその時、何を言うかだけ考えときなさい」
まるで決定事項のように、そう告げる。

234 :逆行146:2008/08/06(水) 01:57:05 ID:???

「ちょ、ちょっと待ってよ、アスカ!
いきなり、そんなこと言われたって、心の準備が…」
シンジは当然、狼狽するが、
対照的にアスカはいつも以上に落ち着いていた。
「だから、それを今しときなさいって言ってるのよ」
静かな口調で、シンジをたしなめるように、
「うまく行くかどうかなんて、正直アタシにだって分からないけど、
せめて、後悔だけはないようにしてもらうわ。
そうじゃなきゃ、わざわざアタシが骨を折る意味がないもの」
言葉の中身とは裏腹に、アスカの口調はどこか気遣わしげで、
それが逆にアスカの本気をシンジに思い知らせた。
……逃げ道を塞ぐアスカの言葉が、シンジの心の声をえぐり出す。
「そんな、待って、無理だ、無理だよ…。
分からないんだ。綾波に会って、何を言えばいいか。
自分がどうしたいのかも、分からないんだよ…!」
半ば叫ぶように訴えるシンジを、しかしアスカは冷たく見下ろした。
「ほんと、バカね。分からないから、考えるんでしょ。
考えることからも逃げてちゃ、答えなんて見つかるはずないわよ」
その言葉に、シンジはうつむくしかない。
「分かってる。それは、分かってるよ。だけど、僕には……」
そうして、うなだれるシンジに、
「でもアンタは、アタシの名前、ちゃんと呼べたじゃない」
「え…?」
意外なほど暖かい声が降り注ぎ、シンジは目を見開いてアスカを見上げる。
アスカはそんなシンジの肩をつかんで、
「ほら、しゃんとする!」
「あ、アスカ…?」
シンジを半ば無理矢理立ち上がらせ、視線を合わせるように、
その目を覗き込んだ。

235 :逆行147:2008/08/06(水) 01:58:00 ID:???

「いいからもう一度、徹底的にやってみなさいよ。
精一杯やって、それでもうまくいかなかったら……」
「うまく、いかなかったら?」
シンジのオウム返しの言葉に、アスカはにやりと笑顔を作り、
「その時は、アタシがあの澄ました顔に一発ガツンとやってやるから」
「そ、それは…」
強張っていたシンジの顔が固まった。
「そもそもアタシ、ファーストのこと、キライだし。
……そうよ! アタシがあんな奴のために何かするなんて、
本当はすっごくイヤなんだからね!
ただ、アンタにはこの前の借りがあるから…」
勝手に盛り上がるアスカを、シンジは呆然と眺め、
やがて、そのまま力なくその場に座り込んだ。
「……アスカは、勝手だよ。
僕の都合なんて、全然考えてくれない」
「それは…っ! ……ううん。分かってるわよ。
一方的なこと言ってるって言うのは。でも、それでもアタシは…」
唇を噛み締めるアスカに、シンジは初めて自分から目を合わせ、
「……だけど、ありがとう」
そう告げたシンジの顔には、笑顔が浮かんでいた。
それはほとんど苦笑としか言えないような苦い笑いで、
だけどそれでも、それは確かに笑顔には違いなかった。
「どこまで出来るか分からないけど、やれるだけやってみようと思う。
……アスカのこと、頼りにしておくから」
一瞬、なぜかぽかんとシンジを見ていたアスカだったが、
すぐに我に返る。そして、
「当っ然! このアスカ様に任せておきなさいよ!」
いつもの不敵な笑顔で、そうシンジに答えたのだった。

――それから、

236 :逆行148:2008/08/06(水) 01:59:19 ID:???

「――ねぇファースト。アンタに大事な話があるのよ。
だから、次の休み時間にでも、屋上に…」
「イヤ」
……即答だった。
翌日の学校。シンジが見守る中、レイに近寄っていったアスカは、
数秒も経たずに撃墜されていた。
(あ、アスカぁ…!)
後ろで見守るシンジの声なき声にプライドを刺激されたのか、
それは分からないが、当然この程度で引き下がるアスカではない。
「あ、アンタね! 用事が何か聞いてから…」
いきりたって、何か言おうとするが、
「碇くんにたのまれたの?」
機先を制した質問に、思わず、
「ちがっ…! シンジは関係な…」
と言ってしまい、
「そう。関係ないのね」
「…ぅう!」
致命的な言質を取られてしまう。
シンジであれば、この時点で勝負は決していただろう。
だが、アスカは食い下がった。
「か、関係ないっていうのはそういう意味じゃないわよ!
つまり、話があるのはシンジなんだけど、
シンジに頼まれたワケじゃなくて、」
「そうね。彼、そんなことする人じゃないもの」
「ッ――!!」
アスカの話の途中に入れられた横槍の言葉に、
挑発と知りつつアスカはぎりっと歯ぎしりする。
そして、今にも怒りを爆発させてしまいそうに見えたが、
(アスカ! 頼むから抑えて…!)
必死で念を送るシンジの期待に応え、アスカは何とか思い留まった。

237 :逆行149:2008/08/06(水) 02:00:09 ID:???

呼吸を整えて、アスカはもう一度、
レイに向き直る。
「……とにかく。
シンジがアンタと話をしたがってんのよ。
だから…」
そして、またしてもレイは、
アスカが最後まで言い終える前に、
「そう。なら、碇くんに伝えて」
その言葉をさえぎり、アスカの言葉を封じると、
明らかに、その視線の向ける先をシンジへと変えて、

「――迷惑だ、って」

掛け値なしの拒絶の言葉を、吐いた。


238 :逆行150:2008/08/06(水) 02:04:44 ID:???

「……悪かったわよ」
失敗したくせに、なぜかふてくされたような口調で、アスカはそう言って、
「あ、あのさ。任せておいて、って言ってたけど。
もしかして、綾波を呼び出す方法、特別に考えてたワケじゃなくて…」
「うっさいわね! 悪かったって言ってんじゃない!
……大体ねぇ、相手はたかがクラスメイトよ!
そんなの呼び出すのに、特別な作戦なんてフツー考えないでしょ!」
おずおずと尋ねたシンジに、無策だったことをバラし、あっさりと逆ギレした。
「でも、それで失敗してるんじゃないか…」
それでもさすがに収まりがつかないのか、さらに文句を言うシンジに、
「あーあーあー! 聞こえない。聞こえないわ」
と大人気のない対応をしてみせてから、一瞬、
何か考えるような表情になって、
「でも、脈はあると見たわ」
そんな言葉を言い放った。
「どこがさ!? 思いっきり嫌がられてたじゃないか!」
しかしその言葉はシンジには妄言としか思えない。
シンジは思い切り叫び声を上げるが、
「そこよ。アイツがあんな感情剥き出しにするなんて、
そうそうあることじゃないわ。
それだけアンタを意識してるってことじゃない」
アスカはあっさりとそれを受け流し、自説を展開する。
だが、それをシンジが簡単に信用出来るはずもない。
「それって……それだけ、僕と話すのが嫌だったんじゃないかな…」
思わず口から出た弱気なシンジの言葉に、
「まあ、そうとも言うわね」
あっさり首肯するアスカ。
「そうとも言う、って……」
もはやシンジには言葉もない。

239 :逆行151:2008/08/06(水) 02:06:55 ID:???

「しかし、困ったわね。
ファーストだってもうアタシを警戒してるだろうし、次は…」
「……ごめん。もう、いいよ」
何かを言いかけるアスカから、微妙に視線を外しながら、
「このままムリヤリ話をしたとしても、きっといい結果にはならないよ。
もしかすると、時間が解決してくれるかもしれないし、今日はこのまま…」
「ダメよ!」
口にされたシンジの弱気な提案は、アスカの怒声に一蹴された。
「いーい? これはもうアンタだけの問題じゃないのよ。
アンタが頼んで、アタシが引き受けた。
一度受けた以上、これはアタシが取りかかった作戦、ミッションよ。
失敗は絶対に許されないの!」
「そんなぁ、メチャクチャだよ…」
ワケの分からない理屈を並べられた上、いつのまにかシンジが頼んだことになっている。
シンジとしてはたまったものではないが、おまけに、
「もう色々考えるのも面倒ね。……シンジ。アンタ、行ってきなさい」
今までの議論全てを覆すようなことを口にされ、さすがに抗議の声をあげる。
「え、ええっ? さ、最初と言ってることが…」
「ほらほら。次の休み時間でいいから、ファーストに話しかけて来なさいよ」
「だ、だからそれが出来ないから…」
「うるさい! そもそもアンタの問題でアタシが頭悩ますってのが間違ってるのよ。
だから、アンタが行きなさい。……ほら、もう休み時間も終わるわ。
分かったら、さっさと席に戻りなさいよ」
最後まで横暴なアスカは、問答無用でシンジを追い払う。
――だが、ぶつぶつと言いながらシンジの背中が遠ざかると、アスカの表情も変わった。
能天気にも見えたその顔には物憂げな色が深まり、鋭さを増したその視線はシンジを離れ、
もう一人のチルドレン、綾波レイの元へと向けられる。
その目に捉えるのは、頑なにこちらを、シンジのいる方を向こうとしない、その姿。
「ふん。まるでハリネズミみたいにツンツンしちゃってさ。
……一体何を怖がってんのかしら、あの能面」

240 :6:2008/08/06(水) 02:08:11 ID:???
以上。

続きはまた明日にでも。

241 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/06(水) 02:59:53 ID:???
GJ!いいね!
先の展開が楽しみ(笑)

242 :129:2008/08/06(水) 22:03:17 ID:???
ずっと前に書いたヤツのアスカVer投下します。

苦しいい…アタシが目覚めて初めて感じたのがコレだった…。
ぼやける視界の先には『アイツ』が馬乗りになってアタシの首を締めてる姿だった。
アタシは『アイツ』と居るなら死んだ方がマシだと思ったけど、最後くらいは優しくしてやろうと思ったから『アイツ』の頬を優しく撫でてあげた。
でも、『アイツ』は何を勘違いしたのか突如、泣き出した。
『アイツ』の眼から流れる『涙』は、頬を伝い、アタシの顔に落ちて来た。
アタシは『アイツ』の『涙』が生暖かくて、病室での『アイツ』の行為を思い出させる。
だから、アタシは『アイツ』に向けて一言
「キモチワルイ…」
これが、今のアタシの『アイツ』への評価であり全てだった。
しばらくして、アタシは立ち上がり歩き出した。理由は『アイツ』と居るのが苦痛だったから

243 :129:2008/08/06(水) 22:30:05 ID:???
242続き

『アイツ』は、その場に座ったまま動こうとはしなかった。
アタシは背中に視線を感じたけど、振り返りもせずに只、歩いていた。
そこで、アタシは気付いた事があった。
人の気配がまったくしない事だった…
歩く事に疲れたアタシは、偶然あった戦自のジープを見つけた。
アタシは中を覗き込むと鍵はかかったままだった。
すかさずアタシはジープに乗り込み鍵を回し、エンジンを掛てみる。
『キュルルル…バルン…バルルル』
エンジンが掛かった。
アタシは運転する前にウザったらしい包帯を解いた。物凄く傷だらけだと思って居たけど傷一つ残っていなかった。
最後に頭のも解いて…窓から投げ捨てた。
まず、アタシが向かった先はデパートだった。プラグスーツのままなのは気持ち悪いからだった。
目的の場所を見付けたは良いが…電気が通って無ければ入る事が出来ない…
ダメ元で、自動ドアの前に立ってみる、『ゴファ〜』と音を立てて開いたので電気は通っている事は確認出来た。
アタシは中に入り衣服と食料を物色しながら辺りを見回してみた。
相変わらず人の気配はしない…その代わりに様々な服や鞄、靴などが転がっていた。そして、その周りにはオレンジ色の液体が散らばっていた。
とにかく、考えるのを後にして、アタシは荷物をジープに乗せてデパートを後にした

244 :6:2008/08/07(木) 00:42:11 ID:???
上の終わってなかったら悪いけど、ちょっと投下させてもらうぞ?

では、この辺りからは多少ギアを上げて……

245 :逆行152:2008/08/07(木) 00:43:29 ID:???


次の授業が終わり、休み時間。
シンジが次の授業の教科書を用意していると、
「でっ…!」
顔面に、消しゴムの欠片が飛んでくる。
涙目になって飛んできた方向を見ると、しかめ面をしているアスカが、
手の動きでレイの方を指して、「行け!」と命令していた。
(無視、するワケにも、……いかないよなぁ)
仕方なく、シンジは席を立ち、まだ自分の席にいる綾波の隣までやってくる。
それだけで、心臓がばくばくと高鳴り、足ががくがくと震える。
だがそれをどうにか押さえつけ、口を開く。
「あ、綾波ぃ!」
……見事に裏返った声が出た。
それでも頑としてこちらを見ようとしないレイに向かって、
シンジはとにかく話を切り出した。
「あ、綾波に、は、話があるんだ」
今度は少し、きちんとした声。
だが、
「そう。でも、わたしには話すことはないから」
レイはそう言って、立ち上がってしまう。
カバンを手に取って、そのまま教室を出て行こうとする。
「ちょ、ちょっと待ってよ。どこか行くなら、僕も一緒に…」
シンジは何とか食い下がろうとするが、
「……お手洗い。いっしょにくるの?」
「え? あ…」
口ごもる。
まさか、一緒に行くと言えるはずもなく、
「あ、あの、ごめ…」
狼狽するシンジをあいかわらずの冷たい視線で一瞥し、
レイはスタスタと教室を出て行った。

246 :逆行153:2008/08/07(木) 00:45:00 ID:???

今日はやけにトイレ絡みの失敗が多いなぁ、とシンジが落ち込んでいると、
更なる不幸の元が向こうから歩いてきた。
肩を落としているシンジにあてつけるつもりはないだろうが、
こっちは肩を怒らせ、ドスドスと大股に歩いてくる。
「あ、アスカ、その…」
とりあえず何か弁解しないと、と思い、シンジは何か言いかけるが、
「バカ! 何で行かせちゃったのよ!」
その言葉を最後まで待たず、アスカはシンジを怒鳴りつけた。
「え? でも、トイレだって……。
まさか、ついていくワケにはいかないし」
アスカは「キィー!」とか何とか、いささか前時代的な感のある奇声を発し、
「なぁんでアンタはそんなに間が抜けてんのよ!
トイレ行くのに、カバン持ってくはずないでしょ!」
「あ、そういえば……」
そんなことは、全く考えていなかった。
「逃げたのよ。たぶん行き先は、NERV本部か自宅か…」
「えぇ…? で、でも、綾波に限って……」
シンジの口から情けない声が出る。
レイに嘘をつかれるなんて、シンジの想像の埒外だった。
しかし、そんな甘い希望を打ち砕くように、アスカは断言する。
「アンタがファーストのことをどう思ってるかは知らないけどね。
ファーストが歩いていったのは、少なくともトイレとは逆方向だったわよ」
「そ、そんなぁ……」
こんな状況で、アスカが嘘を言うとも思えない。
レイに逃げられたことや、アスカの言葉云々よりまず、
シンジはレイに嘘をつかれたことに落ち込んだ。
(そんなに、そこまでするほど、僕と話したくないの? ……綾波)
その時、消沈したシンジとシンクロするような声が、
「アンタ、そんなに…」
目の前から聞こえた気がして、シンジは顔をあげた。

247 :逆行154:2008/08/07(木) 00:47:04 ID:???

ハッと口元を押さえるアスカを見上げて、シンジは眉をたわめる。
さっきの言葉は、アスカが言ったのだろうか。
「ねぇ、アス…」
確かめようと、シンジが何か疑問の声を発する前に、
「だからまぁ、そんなに気を落とすことでもないんじゃない、って言ったのよ」
アスカとしてはめずらしく、どこか優しげな口調で、そう先回りして答えた。
「え? で、でも……」
「アンタの言う通り、お互いに距離を取った方がいい時期ってのはあるわ。
冷静に見てみると、今がその時なのかもしれないわね」
百八十度方針を変えたアスカに、シンジは目をぱちくりとさせる。
もちろんそれは、シンジにとっては都合のいい言葉で、でも…、
「…でも、アスカは、いいの? 作戦は絶対失敗出来ない、とか言ってたのに…」
様子をうかがうように、上目遣いに尋ねてくるシンジに、
アスカは薄く笑って返した。
「ファーストのこと、これからも時々なら相談に乗ってやるわよ。
ま、長期戦、ってことね。そうしたら、作戦失敗ってことにはならないでしょ」
あいかわらず、シンジには分からない理屈だったが、
言葉から、アスカの労わりが心に染みてくる気がした。
「それとも、何? 今から追いかける? アタシはそれでもいいわよ」
アスカの言葉に、シンジは首を振る。
今のシンジに、とてもそんな気力は残ってなかった。
「でしょ。……さぁってと、今日くらいなら、アタシも付き合ってやってもいいわよ」
「付き合う、って何に?」
きょとんとするシンジに、アスカはあっけからんと。
「そりゃもちろん、シンジがファーストに振られた残念会よ」
「ふ、振ら……ってまだ振られてないよ!
というより、だからそんなんじゃないってば!」
シンジは真っ赤になって叫ぶが、そんなものはまるで取り合わず、
「はいはーい。お大事にぃ…」
シンジを慌てさせるだけ慌てさせ、アスカは勝手に遠ざかっていく。

248 :逆行155:2008/08/07(木) 00:51:22 ID:???

そんなアスカを、シンジは怒りにも似た面持ちで眺め、
(……でも、きっとアスカなりに僕を励まそうとしてくれたんだよな。
一応お礼、言っておいた方がいいのかな?)
それだってうまく持続させられず、一言だけでも声をかけようと、
アスカの背を追いかける。
すぐにアスカに追いついて、何か声をかけようとした、その時に、
「……分かってる、自分でも。優しいフリして、つけこんで、遠ざけようとしてる。
アタシは、卑怯だわ。でも、仕方ないじゃない。だって…」
小さくそんな言葉が聞こえた気がして、シンジはかけようとした言葉を留めた。
しかし、黙っているのも気が咎め、
「あ、あの、アスカ? 今、何か言った?」
やはり声をかけると、アスカが一瞬、全身を強張らすようにして動きを止める。
が、すぐに振り向くと、シンジと目を合わせ、穏やかすぎるほど穏やかな顔で、
ゆっくりと左右に首を振った。
「ううん。何も言ってないわよ。……シンジこそ、何か聞こえたの?」
あまりにも穏やかで、ひどく優しいアスカの顔に、不自然なものを感じながら、
「う、うん。でも、気のせいだったのかもしれないや。
僕も、ちゃんと聞いてたワケじゃないから」
シンジもそれに、笑顔で答える。決してそこに、踏み込まない。
――そうするだけの勇気と覚悟は、レイの言葉に吹き散らされて戻ってこない。
「…そう。なら、いいけど」
二人の間を流れる空気は、不自然に穏やかなまま。
「それで何か、用事なの? 何か言い忘れてたことがあったなら、アタシも…」
「あ、い、いいんだよ。ただ、色々ありがとう、って言おうと思っただけで」
その言葉を聞いて、なぜか驚いたような、傷ついたような顔をするアスカを、
なぜかこれ以上、見てはいけない気がして、
「そ、それだけだから、それじゃ…!」
シンジは慌てて背を向け、その場を離れる。
まるで目に見えない何かに、追い立てられてでもいるように……。

249 :逆行156:2008/08/07(木) 00:52:38 ID:???

アスカから離れ、シンジは何の気なしに窓際へと進んでいく。
だから、そこから窓の外を見ようと思いついたのはほんの偶然で、
強いて言うならちょっとした未練だった。
レイが教室を出て行った時間から考えると、
彼女はとっくに学校の敷地の外にまで出ているだろうし、
あのレイが嘘をついてまで校舎を出たのだから、
わざわざ教室から見えるような場所を通るはずなんてない。
そう、思ってはいたのだが、
「―――ッ!」
休み時間の、誰もいないはずのその場所には、はっきりと一人の少女の姿があった。
そこに見えたのは、紛れもなく蒼い髪の……

「綾波っ!」

考えるより先に、口が動いていた。
シンジの叫びと同時に、レイは身をひるがえす。
逃げ出すように、走り去っていく。
(僕に、気づいた? いや、今、見つけたというより、むしろ…)
シンジが窓から下を見た瞬間、
そこに立っていたレイと、目が合った気がした。
つまり、

(――綾波は、僕を見ていた?)

そう考えるのが、自然な気がした。

250 :逆行157:2008/08/07(木) 00:53:22 ID:???

「あや、なみ…!」
知らぬ間にぐっと食いしばった口から、その名が漏れる。
理由も分からず、心臓が早鐘を打つ。
なぜかじっとしていられず、シンジは自分を押さえ込むように、
あるいは駆け抜ける悪寒をこらえるように、体の前で腕を交差させる。
無意識の内に、自分の制服の袖を、跡が出来るほどに強く、握り締める。
(なんで、こんな……。
関係ない、関わりたくない、って、
綾波のことは放っておこう、って、
そう、思ってたはずなのに……)
自問する。
その、答えは……
(……綾波が、僕を見てたから?)
いや、それだけじゃない。
この熱さの源泉は、そこじゃない。
(だったら、僕は…)
遠目に一瞬だけ見えた、レイの姿が、
その表情が、シンジの脳裏によみがえる。
(……あぁ、そうか)
そして突然、シンジは理解した。
もちろんそんなもの、目の錯覚かもしれないし、
シンジの願望が作用して、そう見えただけかもしれないし、
あるいはもっと単純に、ただの気のせいだったのかもしれない。
それでも、シンジは思ったのだ。

――こちらを見ていたその赤い瞳が、ひどく寂しそうだ、と。

そしてそれだけで、シンジの腹は決まった。

251 :逆行158:2008/08/07(木) 00:54:18 ID:???

考えていたのは、たぶんほんの数秒にも満たない間。
シンジの異変に気づいたトウジが近づいてきて、
「センセ、どない…」
そう言いかけた時には、シンジはもう動き始めていた。
「ごめんトウジ! 今日は早退するから…!」
自分の席に駆け寄って、一瞬、考えてから、
「これ、頼むよっ!」
自分のカバンをトウジに放り投げる。
受け取ったトウジは目を白黒させて、
「ちょ、待たんかいシンジ! こんなもん、どないせえって…」
しかしもうシンジは聞いていない。走り始めている。
止まれない。止まるヒマはない。
「……ごめんっ!」
最後にせめてそれだけ言って、教室を飛び出していった。

残されたのは、カバンを手に呆然とするトウジに、
状況を悟ってメガネを光らすケンスケに、
突然のシンジの行動に、事情も分からず騒然となるクラスメイトに、
それを抑えようと、必死で声を張り上げるヒカリ、

そして、そして――


252 :逆行159:2008/08/07(木) 00:55:34 ID:???

「……ごめんっ!」
叫びながら走るシンジは一瞬、アスカの目の前をかすめ、
しかしそれにも気づかないまま、教室を飛び出していく。
――アスカはそれをじっと、瞬きもしないまま、じっと見ていた。
自分の目の前を通り過ぎていくシンジを見送って、
シンジの巻き起こした風と怒号もまた、アスカの前を通り過ぎて、
それからようやく、アスカはぼそりと呟く。
「……何よ、バッカじゃないの。
怖いとか、分からないとか、さんざん言ってたくせに……。
いざとなったら、アタシのこと、気づきもしないで」
そうしてアスカは、本当の愚か者が誰なのか、自分に染み込ませるように、
「……バカ。ホントバカね、アスカ」
ゆっくりと、自嘲に満ちた表情を作り、その顔を決して誰にも見られないよう、
深く深く顔を伏せた。
そんなアスカを、嘲笑うみたいに、
「お、ナニナニ? 愛の逃避行?」「碇くーん! しっかりね!」
「碇ぃ! 綾波は左行ったぞ!」「なんや分からんけど、きばりやセンセぇ!」
窓際で沸き起こる、無責任な喧騒に背を向ける。
今窓に近寄れば、アスカはつい外を覗き込んで、シンジの姿を探してしまう気がした。
だから、代わりに、かすれた声でシンジを励ます。
「行きなさいよ、シンジ。答えなんて、最初から出てたのよ。
それがアンタの、本当にやりたかったことなんだから…」
言いながら、そう心の底から思いながら、けれどアスカは、
窓に、シンジに背を向けて、決してその姿を直視しようとしない。
だってそんなもの、認められるはずがない。
「――これじゃまるで、道化じゃないの、アタシは…!」

だが、そんなアスカの呟きなど、届くはずもなく、
一途にひた走る背中は見る間に、迷いなく遠ざかっていく。
……ただ一人の少女の、姿だけを求めて。

253 :6:2008/08/07(木) 00:56:44 ID:???
以上。なぜか煽りだけは最終回レベルかも。
いや、特にどうということもない場面なんだが。

次、綾波編のラストはもう一度推敲してから落とすつもり。


254 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/07(木) 02:51:02 ID:???
アスカが健気だのう(>_<)
ケンスケが目撃したのがなんだったのかとか色々今までの伏線が気になる(笑)
次回も待ってるで〜♪

255 :242:2008/08/07(木) 17:55:34 ID:???
シンジVer


赤い海のほとりで目を覚ました僕が見た物は…
僕を最後まで拒絶した『あの娘』だった。
僕は『あの娘』に跨がり首を絞めた…
多分…あの時の僕は普通じゃなかった。
拒絶されて当たり前の筈なのに、それが堪らなく嫌だった…だから、僕は『あの娘』の首を絞めた。
首を絞められて息を吹き返したのかはわからないけど、『あの娘』は僕の頬を撫でた…ただ撫でられただけなのに『あの娘』の首を絞めてる手に力が入らなかった。
そして、僕の眼から頬を伝い熱い物が流れていく…
僕は泣いていた。
そして、『あの娘』は言った
『気持ち悪い…』と


256 :242:2008/08/07(木) 18:17:55 ID:???
255続き


『あの娘』が去ってどれくらい経ったのだろう…
去り行く姿をただ眺めていた。
今はもう、砂と赤い海と『あの娘』の足跡しか残って居なかった。
暫く座り込んで海を眺めていると背後から第九を口ずさむ歌声が聞こえて来た。 しかも、僕の知ってる声…『カヲル君』の声だった。
歌声はだんだん近付いて来て、僕の真後ろで止まった。
「こんな所に座り込んでどうしたんだい?シンジ君」
僕はカヲル君の声に驚いて後ろを振り返った…
「おどろかせたかい?」
僕の顔を見つめながらいつもの笑顔で話してる
僕は思わず
「これは夢なのかな?」
と、言ってしまった。
「夢…かも知れないね」
僕は正直夢でも構わないと思った。
カヲル君に逢えたから…
「沢山、傷付いたみたいだね?でも、今の君は好意に価しないよ…」
「好きじゃないって事さ…」
カヲル君は寂しそうな瞳を向けてそういった。
僕の瞳から、また熱いのが溢れてきた
「なんでなの?」
としか言えない僕に
「僕がシンジ君の事を好きになれなくなったのは、今しなきゃいけない事をしないからだよ」
と答えてくれた…なおも僕はカヲル君に尋ねた
「僕は何をしなきゃいけないの?」
………と

257 :242:2008/08/08(金) 20:50:43 ID:???
ひっそりと更新してますが。
書きたい物が出来たので違う物ですが投下します。
時代は終戦まじかの、もうひとつのシンジとアスカの物語です。
8/9中には投下し終える予定です

258 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/08(金) 21:54:01 ID:???
赤色の空が大地を覆う…
それは、夕焼けの色ではなく、物の焼ける色…人や建物が焼けている。
その中で青年、碇慎司は空を眺めながらある事を決意していた
(僕が…否、俺の大事な人を奪って行ったあの鬼畜共に鉄槌を…)
そして、青年は空の鬼神となった。
零戦に乗る慎司は向かう米軍機をことごとく打ち落として行った。
日本軍からは『撃墜王』の栄光を…
米軍からは『Little-Devil』のあだ名を着けられていた。
だが、碇慎司にとってはどうでもよかったのだが…
それから暫く経ち、戦況は芳しくなくなって行き、日本軍の戦闘機には片道の燃料しか載せなくなっていた。
いわゆる『神風特攻隊』の誕生だった。
『撃墜王』の異名を持つ碇慎司にとって例外なく『神風特攻隊』に選ばれた

259 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/08(金) 22:28:25 ID:???
慎司は飛び立つ前日に自分が搭乗する機の前に居た。
「明日には散る命か…だが、俺には後悔は無い。有るのは憎しみのみ…」
手に握られた蒼銀の髪の束を握り締め青年、碇慎司19歳の夜は過ぎていく…

やがて、朝が来て全員集まった。
片道切符片手に飛び立つ小隊が次々に搭乗していく。
そして、碇慎司も乗り込んだ。
空を飛ぶ零戦の群…ただ一機だけ高度が下がって行く…整備不良で高度が保てなかったのだ。
その機体は、碇慎司の乗る機体だった。
仕方なく近くの島に不時着する事にした…。
とりあえず降りて辺りを確認してみるが、無人島らしく人の気配を感じられなかった…。
自分の機に戻り何処が悪いか調べて見る事にした…その時
「そこのジャップ!手をあげろっ!!」
慎司の背中に銃口を押し付けて声をあらげた
声は男の物では無かった。
「女か…悪いが俺はまだ命をくれてやる訳にはいかない」
慎司は冷静に手をあげ、振り返りながら言った。
振り向いた先には、赤みがかった金髪を携えて蒼い瞳を持つ女が居た。
そして、それは慎司の憎む外人だった。
「外人にしては日本語がうまいな。」
すこし慎司は少しビックリしたが、静かに言った
「黙れっ!それに、誰が振り向けと言った!!」
女は慎司の態度に益々ムカついたのか怒声を強めた

260 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/08(金) 22:52:51 ID:???
>>259
女は、男に名前を聞いたが
「名をきくなら、まず自分から名乗るのが礼儀だろ?これだから外人は礼儀を知らないから困るな…」
慎司は呆れながら言った。
「アタシの名は惣流・アスカ・ラングレーよ!名乗ったからには貴様も名乗れ!」
アスカは高圧的な態度を崩す事無く答えた。
慎司はヤレヤレといった感じで
「俺の名前は、碇慎司だ。所で背中の物騒なのをどけてくれないか?」
ついでに背中に押し付けられてる銃をどけるように促した。
「銃をどけた隙に逃げようってんだろ?お前の考えなどお見通しだ!」
と言いながら、さらに強く銃口を押し付ける。
「少なくとも今は、逃げたりはしないさ…それに、腹減っから飯を調達したいのだが…」
と、うなだれながら慎司は言った。
「…ご飯…」
と言うと同時にアスカの腹の虫が盛大に鳴った。
慎司は笑いを必死に堪え
「くくく…豪快な腹の音だな…君は飯作れないのか?」
少し小ばかにしながら言った。
「馬鹿にすんじゃないわよ!」
顔を真っ赤にしてアスカが怒鳴り散らす。
そして、腹の虫も大音量で鳴った
「あはははは!君の腹は正直だな…俺が作ってやるから銃を降ろしてくれ」
とうとう笑いを堪えられずに大爆笑する慎司を見て、アスカはゆっくり銃を降ろした。
そうとう腹が空いてたようだった。

261 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/08(金) 23:48:09 ID:???
>>260
>>259


暫く島を散策しながら食べれる物を捜し散策していた。
ある程度食料を調達した慎司は手早く調理を開始する。
次第に食べ物の良い匂いがしてきた。
それに合わせてアスカの腹の虫が盛大に鳴った。
慎司は笑いながら手持ちのナイフで木を彫り簡易式の器を二人分作って盛りつけた。
「飯、出来たぞ。早く食べよう」
慎司がアスカにご飯が出来たのを伝えて食べ始めた…
アスカは物凄い勢いで食べ物を口に運んでいく…
その姿を見ながら慎司は
(俺の思った外人は血も涙も無い鬼畜だと思ってたが…腹もすけば食べもするんだな)
無意識にだが慎司の抱く外人像を変えていた。
やがて食事が終わりアスカは散策時に見付けた小川に向かって行った。
体を洗うために…
もちろん、慎司を縄で縛ってからだったのだが

262 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 00:03:13 ID:???
>>261
>>260
>>259

アスカは体を洗い終えると慎司の居る場所に戻って行った。
慎司はアスカが戻って来ると、縄を解いて欲しいと頼むが聞いてはくれなかった…
そして、何日か過ぎていき仲が良くなったのか慎司は縄で縛られる事はなくなっていた…
そして、慎司はアスカという人間がわかるきっかけとも言える事が起きた…

その日の夜、慎司は、すすり泣く声で眼が覚めた。
アスカが焚火の前でうずくまり泣いていたのだった。
慎司はアスカの横に座り
「どうかしたのか?」
と、尋ねた…
アスカは
「起こしてしまって悪かったな…」
と、初めて謝った。
慎司はその時なにも言わなかったが、アスカは慎司に聞いた
「貴様は…いや…慎司はLittle-Devilを知ってるか?」
と…
慎司は向こうに、そう呼ばれていた事は知っていたが
「名前だけはな…」
と答えた。
それを聞いてアスカは語り出した。

263 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 00:21:32 ID:???
>>262 >>261 >>260 >>259


「慎司は知ってると思うけど、アタシは名前の通り、日本人の血が少し混じってるの…
そのせいで、よく虐められた…
でも、アタシをよくかばってくれたジョージってのが居たの…いつしかアタシはジョージに惹かれていったわ。
そして、アタシ達は将来を約束したの…でも……ジョージは軍人であった為に日本へ向かったのよ。
でも…ジョージは日本から帰って来る事は無かったわ…あのLittle-Devilに落とされたのよ…ジョージの戦死の報告を聞いてアタシは眼の前が暗くなったわ…
それから、アタシは復習する事を誓ったわ…
必ず奴を…アタシの手で殺してやると…ね。
そして、アタシは女を捨てて米軍に入ったの…」
アスカの話しを慎司は黙って聞いていた。
そして、慎司は語る
「御免…アスカ…本当は、俺はソイツの事を詳しく知ってるんだ…」
と…
アスカは俯いたまま答えないが視線だけを慎司に向けていた
慎司は、おもむろに胸ポケットから蒼銀の髪の束を取り出し語り始めた

264 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 00:29:17 ID:???

続き待ち

265 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 00:55:44 ID:???
>>263 >>262 >>261 >>260 >>259


「そいつには両親と呼べる人は居なかったんだ…
だけど、そいつには妹がいたらしい…
そいつは両親が居なくても、妹が居たからそれなりに幸せだったんだ。
だけど、戦争は激しさを増し、そいつの所も被害は大きかったんだ…
そして、そいつは徴兵され、妹は被害の少ない田舎へ疎開する事になったんだ…
妹を乗せた列車は田舎へ行く途中で……アメリカの爆撃に逢って木っ端みじんになったそうだ…
後に…そいつの所に届けられたのは妹の遺髪と小さな骨壷だけだったらしい…
そいつは泣きに泣いてそうだ…一生分…涙が枯れるまで…
そして…そいつは空を睨み誓ったらしい…俺は鬼畜共に復讐してやるんだ…とね」
そこまで喋ると慎司は焚火の炎をただ見つめていた…
それまで沈黙を保って居たアスカだったが、慎司が持っている蒼銀の髪の束に視線を移して
「もしかして、そいつって…」
「そう…俺なんだ…」
そして、沈黙が支配していたが慎司が最初に沈黙を破った

266 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 01:14:35 ID:???
>>265 >>263 >>262 >>261 >>260 >>259

「俺が妹を殺されて復讐心に駆られて、この手にかけた人達にも…家族や愛する人が居たのに…アスカに言われるまで木がつかなったなんて…
最低だな…俺って」
慎司の独白を聴きながら、アスカは
(慎司の顔は影になって見えないし、涙を流していないが泣いていたんだと思う…)
と、心の中で思いながら
「初めから、あんたがLittle-Devilだって知ってたら躊躇わず引き金を引いていたわよ…」
と、言った。
慎司はそんなアスカに視線を移し
「なら、今…俺を撃てば良い。俺はもう…『パーン!!』」
慎司が全てを言う前にアスカの渾身の平手が慎司の頬を叩いた…
「馬鹿言ってんじゃないわよ!!そんな事を今、言われて出来るわけないじゃない…だから、二度とアタシの前でそんな事を言わないで…」
いつの間にかアスカの瞳が潤み、涙がこぼれそうになっていた。
「ゴメン…」
慎司は泣きそうなアスカを抱きしめながら謝った

267 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 01:30:22 ID:???
>>266 >>265 >>263 >>262 >>261 >>260 >>259


暫く二人は無言のまま抱き合った。
そして、泣き止んだアスカがそっと慎司から離れた。
それでも、お互いにそれ以上語ろうとはしなかった…
それからまた暫く経って…
空から戦闘機の羽音が聞こえて来た…
どちらの軍機かわからなかったので、お互いに茂みに隠れて様子を伺っていた。
実は、ほんの昨日までお互いに隠れてモールス信号で助けを呼んでいたのだった…
助けに来たのはアメリカ軍だった。アスカは慎司に小声で動かないように注意しながら茂みから出て行った。
戦闘機はアスカの近くに着陸した。
中から出て来た人にアスカは困惑していた…
そこに居たのは、見間違う訳がない最愛の人、ジョージだったからだ

268 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 01:32:41 ID:???
ドイツって同盟国だよな

269 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 01:45:24 ID:???
>>267 >>266 >>265 >>263 >>262 >>261 >>260 >>259


アスカの瞳が潤み駆け足でジョージの元へ駆けていき彼の胸に飛び付いていった
ジョージは、そんなアスカを抱きしめている。
慎司はそんな様子を見ながら少し胸が痛んだけど…その場を動こうとはしなかった…
アスカはジョージの胸の中で泣いていたが…ふと、疑問に思った事を聞いた。
「ジョージが戦死したって聞いたから…アタシ…てっきり…」
それ以上は言葉にならなかった。
すると、ジョージは
「俺が死ぬ訳無いだろ?それに、その方が都合が良かったからな」
と言ってニヤリとほくそ笑んだ。
アスカは見た事の無いジョージの顔に戸惑いを隠せないながらも
「都合?…って、どんな都合なの?」
と、ジョージに聞いた…
その答えはアスカにとって衝撃以外の何物でも無かった…
「あぁ…アメリカ人もどきの糞ジャップ勘違い馬鹿がうざいから死んだ事にしたのさ」
あまりの衝撃的な言葉にアスカは呆然とするしかなかった…
だが、ジョージの暴言はそれだけでは留まらなかった…

270 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 01:48:05 ID:???
アスカは設定上アメリカ国籍なのでアメリカ人って事にしています。
説明不足ですみませんm(_ _)mペコリ
では、続きます

271 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 01:59:01 ID:???
>>269 >>267 >>266 >>265 >>263 >>262 >>261 >>260 >>259


「助けを求める信号たどって来たら、お前だったんだからな。とんだ、むだ足だったな。でも、そのまま帰るのもアレだから一発やらせろよ!」
その言葉にアスカは完全に固まってしまっていた…自分が信じてた人にここまで言われて固まる他には無いだろう…
そして、ジョージはアスカの服を剥ごうとした時の事だった…
ジョージの首筋に鈍く輝くナイフがあてがわれていた…
慎司が背後から襲っていたのだった
「せっかくの恋人同士の再会を邪魔したく無かったんだけど…内容があまりに酷いんで、ついね」
冷めた声に冷たい殺気を乗せて慎司はジョージに言った。

272 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 02:07:00 ID:???
「赤い彗星」と畏れられる赤いメッサー・シュミットで
「ナチスの科学は世界一イイイィィィッ!!!」と叫ぶアスカ
そして「哀しいけどこれって戦争なのよね」とフラグが立つシンジ
こうですか、わかりません(>_<)

273 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 02:16:22 ID:???
ジョージは首筋にあてがわれたナイフと慎司の殺気を前に冷や汗を流していた…
そして…慎司は続け様に
「さっきアスカに言ったのは本気じゃないよね?本気だとしたら、本当にLittle-Devilに殺られるよ…」
Little-Devilの名前は、ますますジョージを震え上がらせた…
そして、ジョージは
「じ・じ…冗談ですよ…彼女を前にして少し悪ふざけしたかっただけなんですよ…」
冗談の一言に慎司はますます怒りをあらわにしていく
「冗談…か…なら、俺も冗談でこの短刀を滑らせて喉元掻き切ってあげようか?」
さらに殺気の度合いが強まり冷たさが増して行く
もはや、ジョージには死ぬ以外の選択肢は残されていないように思えた。
そんな時アスカが気持ちを立て直して
「慎司…こんな奴の為に手を汚さなくて良いよ…それに、これはアタシの問題なんだから」
と、言ってアスカは銃の柄の部分で思いっきりジョージの水月を殴打した。

274 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 02:33:23 ID:???
>>273
水月のを殴打されたジョージは、その場で嘔吐し呼吸が上手く出来ずにのたうち回っていた…
すかさずアスカは少し前まで慎司をふん縛って居た縄でジョージを縛った。
慎司はその手際のよさに少々関心していた。
そして、アスカは関心してる慎司を前に「さっさと増援が来る前に逃げるわよ!」
と、慎司にハッパをかけた…
「逃げるにしても何処にだよ」
と言う慎司に対して、
「とにかく逃げないと仲間が来たら、いくらアンタでもあっさり殺されるわよ!」
と、言いながらアスカはジョージが乗っていた戦闘機に乗り込もうとしたが
慎司が不意に
「それに燃料積んでるか?」
と聞いた。
アスカは中を見渡し燃料を見付けて慎司に
「あったけど、何に使うのさ?」
聞いた。
慎司は
「俺のに使うのさ。俺のは整備不良じゃなくて、単に燃料が無かっただけみたいだからさ」
と言って隠した零戦を指さして言った

275 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 02:43:10 ID:???
>>274>>273

燃料を補給した慎司は零戦で大空へ飛び出した。
慎司は一路、長崎を目指した。
理由はあそこなら、『なんとかなるかも知れない』と言う理由だったからだ。
そんな時アスカが
「ちょっと、狭いからなんとかしなさいよ!!」
と、愚痴をこぼして居たとか、いなかったとか…
慎司はやっとの思いで長崎に到着できた。
日にちは『1945年8月8日』だった。

276 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 02:45:54 ID:???
多分次で終わります。
最後にエピローグで、あれから70年後の世界を書いて終わりますm(_ _)m

277 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 02:50:35 ID:???
氷り漬けになっていた慎司が生き返ってヤンキー学校の教師になるんですね、わかります

278 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 03:08:40 ID:???
続きまだー?

279 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 03:13:16 ID:???
長崎に着いた慎司は少し戸惑って居た。
何故なら、此処が自分達が居た場所よりかなり綺麗だったから…
慎司の居た所は空襲で殆どが瓦礫か焼け野原となって居たからだ。
それに比べて、此処はあまり爆撃された跡が無かった
それが、同じ日本なのにこうも違うのか…と慎司は思ったからだった。
一先ず、慎司とアスカは宿を捜す事にした。
四六時中歩き廻って一軒の宿屋に泊まる事が出来た。
アスカと慎司は同じ部屋で明日からどうするかを話して居た。
慎司が
「明日、アスカに着いて来て欲しい場所があるんだ。」
少し真剣な慎司の顔にアスカは
「うん。」
と、だけ答えて慎司から視線を逸らし心持ち頬が紅かったのは、さっき温泉に入ったからだろうか…
そして、慎司とアスカは明日に備えて眠る事にした。
翌朝『1945年8月9日運命の日』がやって来た。
その日は、慎司の言っていた『行きたい場所』に行く事にした。
その場に着いた時にアタシはビックリしていた…日本に、こんな場所が有るなんて…
慎司とアスカが来た場所は『大浦天主堂』だった。
時間は『10時40分』だった。
この時、慎司とアスカは空を見上げて異変に気が付いていた。
米軍のB-29が空を飛んでいたからだ…
だが、警報が発令されていなかったから、二人は偵察機だと思っていた。
おもむろに、慎司がアスカを抱きしめた時に悲劇は起きた…
『11時02分−原爆投下−』
アスカと慎司は長崎の街と一緒に光りとなって消えた…一つの影を残して…
それを見て居たマリア像だけが二人の為に涙をながしていた
終わり

280 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 03:22:15 ID:???
マリア様がみて…いや、なんでもないです…

281 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 03:32:27 ID:???
エピローグ:

長崎に原爆が落とされてから70年の月日が流れた『2015年8月9日』
少年と少女が長崎に来ていた。
少年の名前は『碇シンジ』
少女の名前は『惣流・アスカ・ラングレー』
少年と少女は原爆の悲劇を勉強しにきていたが
少年は自分に似た『日本兵』の姿を見て
少女は自分に似た『アメリカ兵』の姿を見ていた。
そして二人は、その『二人』に誘われるように歩いて居た。
二人が辿り着いた場所は
『大浦天主堂』の『マリア像』前だった。
そして『鐘』は鳴る。原爆の被害にあった者達に鎮魂の意味を込めて…
その音を聴きながらシンジ…今は、慎司は、アスカを抱きしめる。
あの時言えなかった言葉と共に…
「俺は、アスカの事を愛してる…だから、二人で一緒に」
慎司が語る。
「はい…アタシも慎司の事を愛します。だから、二人で一緒に」
アスカが答える。
『鐘』の音が鳴り止むと同時に二人は淡い光りに包まれる…
それを見つめる、シンジとアスカは二人して涙がこぼれていた。
二人は願った「あの人達に永遠の安らぎと永遠の愛を…」
そして、今ある平和を守ろうと…
その時の『マリア像』は優しく微笑んでいたように見えた。

終わり

282 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 03:37:47 ID:???
何とか睡魔に負けず書き切りました…
後は寝るだけ…どうしても、今日中に書きたかった物です…。
はっきり言って勉強不足と力量不足です…(´Д`)
それでは、ここまでお目汚し駄文に付き合って下さいましてありがとうございました。
m(_ _)mペコリ

283 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 03:43:26 ID:???
乙、よかったよ

284 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 05:29:46 ID:???


自分は駆け出し軍ヲタなので
いろいろ突っ込みたいところが多くて
まともな感想は書けんのだ、乙だけで許せw

285 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/09(土) 20:21:11 ID:???

2015年でちょうど70年になるのか…

286 :6:2008/08/10(日) 01:48:10 ID:???
>>254
前に「次の話で色々な謎が明らかに!」、とか書いた気がするが、
実は諸々の伏線の意味がはっきり分かるのはもう少し後だったり……。
ただケンスケの見た物はアスカの回想をよく読めば分かるように書いたはずだし、
他も一応ヒントっぽいものは所々落としてない訳でもないので、
その辺り予想でもしながらのんびり気長に付き合ってもらえればなぁ、と思う。

287 :逆行160:2008/08/10(日) 01:50:00 ID:???


校舎を飛び出して、途中クラスメイトの声援を受け、シンジは走り続けた。
自分の頑なだった気持ちや、傷つきたくないという思い、
そんな物が、錯覚かもしれないレイの視線一つで砕けてしまったのが、
なぜかひどく愉快だった。
もはや後先は考えない。
勢いだけでもいい。たとえ今日のことをいつか後悔するとしても、
その後悔すら受け入れてやろうと、そういう気持ちだった。
(綾波は……)
学校の外に出て、シンジは反射的に辺りを見渡す。
確かケンスケの声が、左に曲がったと教えてくれたが、
そこから綾波の目的地を逆算して……と、そんな風に考えていたのに、
「――っ!?」
探していた人は、そこにいた。
「あ、綾波っ?!」
シンジから、十メートルも離れていない場所で、
カバンを両手に、所在なさげに立っていて、
「いかり、くん…?」
魂を抜かれたような顔で、シンジがこの場にいるのが信じられない、
というように、目を見開いている。
だが、それも束の間、
「あ、あの、綾波…っ!」
シンジが話を切り出そうとしたのを察知すると、
くるり、踵を返し、奥へと消える。
だが、シンジも逃がさない。今度ばかりは逃がすつもりはない。
レイの後を追って、角を曲がる。
追いすがって、至近距離、レイまで三メートル。
「――っ?」
振り返ったレイが言葉にならない驚きの声をあげる。

288 :逆行161:2008/08/10(日) 01:52:01 ID:???

レイの顔には、シンジがほとんど見たことがないような、
驚愕と狼狽が浮かんでいるようにも見えて、
シンジはとうとう、レイをつかまえたと思った。
だが、レイのそこから先の決断は、シンジの予想を越えて迅速だった。
いささかの逡巡もなく、手にしたカバンを放り捨てる。
宙を舞ったカバンが近くの植え込みに落ちるのも、最後まで確認せずに、
「………っ」
カバンという制約が消えて一層身軽になったレイは、
さっきまでとは違う、本気の速度で走り出した。
「ま、待ってよ!」
などという声には、耳も貸さない。
「……くっ!」
だが今回ばかりは、シンジも弱音は吐かない。
そんなことで、足を止めたり、引き下がったりはしない。
――当然、追いかける。
そして、振り返ったレイは、それを確認して、
「……」
全速力だと思っていたレイの速度が、さらにあがる。
「綾波! 僕は話がしたいんだよ! 綾波!」
シンジはレイの背中に向かって、もう一度制止の言葉を投げかけるが、
レイはほんの時折、後ろを振り返ること以外に余計なことは一切しない。
ひるがえるスカートも気にせずに、ひたすらに走る。
(……説得は、無理? なら、追いついてつかまえるしか!)
それを見て、シンジは口をつぐみ、あらためて地を蹴る足に力を込める。
今度こそ、たぶんお互いに全力。こんな速度で長く走れるはずもないが、
こんな街でもし一度姿を見失えば、もう一度見つけるのは難しいだろう。
つかまったら終わりなレイだけでなく、シンジにとっても後がない。
……だからこその、全力。
そうして、シンジとレイの本気の追いかけっこが始まる。

289 :逆行162:2008/08/10(日) 01:53:25 ID:???

さすがに男子であるシンジが、レイより走るのが遅い、
などとは思わないし、思いたくない。だが、
(……速い!)
シンジとレイの距離は、縮まるどころか広がる一方だった。
――普通、グラウンドと同じようには、街の中は走れない。
それは、地形の凹凸や、車道や人が障害物になるだけでなく、
状況や周りからの視線が意識を散漫にさせ、集中を阻害するからだ。
――だが、レイは違った。
他人の目がある市街地を走ることに対して、一切遠慮や照れがない。
人の視線などというものを、全く問題にしていなかった。
時々すれ違う人に接触しそうになり、罵声を浴びせられても、
何の反応も返さない。謝罪はもちろん、視線を返すことすらしない。
それは彼らを無視しているのではなくて、きっと本当に、意識の端にも上っていないのだ。
……想像するだけで、鳥肌が立つほどの一途さ、ひたむきさ。
今、たぶんレイの頭の中には、逃げることしか、ない。
何が彼女をそこまで駆り立てるのか、そもそもどうしてシンジから逃げるのか分からない。
分からないが、
(……追いかける!)
シンジを動かす想いだって、そう軽いものではなかった。
今だけは、衝突を避ける生き方を捨て、目を丸くする通行人を無視して、
シンジはとにかくレイを追った。
だが、意識してねじ伏せるのと、端から問題にしていないのでは、
やはり速度に差が出てくる。
最初、レイがカバンを捨てた時は三メートルほどにまで詰められていた距離が、
今はもう、十メートル以上開いてしまっている。そして、
「!? すみませっ…!」
ドン、と道を歩いていたサラリーマン風の男にぶつかってよろけ、
次にシンジが視線を戻した時には、
「いない…?」
綾波の姿は、シンジの視界から消えていた。

290 :逆行163:2008/08/10(日) 01:55:20 ID:???

しかし、パニックになりかけたのは一瞬。
「綾波だってスーパーマンじゃないんだ。
ただ、僕が見てない間に角を曲がっただけ。
だから…」
すぐに起き上がり、レイが消えた曲がり角まで走る。
……ここまではいい。
問題は、
「右か、左か、どっちだ?」
左右を見渡す。
どちらにも、レイの姿はない。
――考える。
ここで間違えたら、レイを追うのは絶望的になる。
だから、ゆっくり冷静に。
シンジにはもう、自分がどこにいるかなんて分からない。
レイだってきっと、目的地を定めて逃げていたワケじゃないはず。
なら、道を決めたのは、この道がどこにつながっているか、ではない。
焦る心をなだめながら、もう一度、観察する。
右の道は長く、一本道だ。
途中でビルの中にでも入らない限り、遮蔽物がない。
いくらなんでも、この短時間でレイがこの道を最後まで駆け抜けたとは思えない。
だったら、
「……左だ!」
シンジは左の、途中に横道のある短い道を選ぶ。
レイはこっちに向かって走って、途中でどこかの路地に入った。
そうとしか考えられない。
シンジは迷いを振り捨てて左の道に足を踏み出した。

……だが。
走り抜けたその先、そのどこにもレイの姿はなかった。
――シンジが選んだ道は、完全に不正解だった。


291 :逆行164:2008/08/10(日) 01:57:39 ID:???

シンジが左の道を選んで、駆け出した直後。
ほんの数秒前、シンジが走り抜けたその道に、レイがひょい、と顔を出す。
――正解は、右の道でも、左の道でもなかった。
シンジが人にぶつかってバランスを崩し、レイを見失ったちょうどその時、
レイは最後まで道を進まず、狭い脇道に入り込んでいた。
……目だけで左右を見渡し、シンジの姿がないのを確認すると、
レイはさっと路地から身を抜け出して、元来た方向へと駆け出す。
悲鳴をあげる体を無視して、学校への道を戻るように、いくつかの角を曲がり、
……レイは不意に、立ち止まった。
「わたしは、なにをしているの…?」
強く、胸を押さえる。
頭が冷静さを取り戻すと共に、限界を越えた体がふらりと傾ぐ。
それは軽い貧血の症状で、今さらそんなもの、騒ぎ立てるつもりもないが……、
よろめいたその先、ガラスに映った自分の姿に、つい目を向けてしまう。
「……滑稽ね、わたし」
痩せこけてみすぼらしい体に、味気なく無表情な顔が載っていて、
なのにその目だけは赤く、炯々と光っているのだ。
全身で世界を拒絶して、全身で生きることを投げ出しているようでいて、
その目だけが全てを裏切っている。
その瞳は、まるで追い詰められて怯えているようにも、
狂おしく何かを求めているようにも見えた。
「……なぜ、そんな目をするの?」
鏡越しの自分に問いかける。
しかし問いかけの言葉は、ただ自分に返って反響し、

――だが、わからない。わからないのだ、自分でも。

自分を肯定して欲しいくせに、自分が認められるのが怖くて、
人形を演じるしかないと決めたくせに、その務めすら放り出して、
こうして無様に逃げ回っている。

292 :逆行165:2008/08/10(日) 01:59:26 ID:???

――しかし、なればこそ、
いつまでもここで呆けている訳にはいかなかった。
「く、ぅ……」
ふらつく体を立て直す。乱れた呼吸を整えて、
狂ったビートを刻む心臓の音をなんとかなだめる。
理由の分からない胸の疼きには気づかないフリをして、
綾波レイは再び歩き出す。
無言で来た道を戻り、一つの植え込みの前で足を止めた。
そこに一つの影を認め、何のためらいもなくその植え込みの中に、
自らの左腕を差し込む。
「……っつ」
腕をつつく枝や葉に、ほんのわずかだけ苦痛の色を見せて、
しかしその間も腕は遅延なく動作する。
まもなく、レイは茂みに放置されていた自分のカバンを取り出した。
目的の物を手に入れ、立ち去ろうとしたその時に、

「つ、つかまえた…」

後ろから、聞こえるはずのない声。
だがしかし、今、レイの右手をつかむ、この手の主は……
「碇、くん…?」
振り向いたその先に、確かに彼はいた。

碇シンジが困ったようにはにかみながら、そこに立っていた。


293 :逆行166:2008/08/10(日) 02:44:56 ID:???


だが、レイの顔を彩る一瞬の驚きが過ぎ去ると、
レイはすぐにシンジがこの場にいる理由を察したようだった。
「……そう。まちぶせていたのね、ここで」
その言葉に、シンジはうなずく。
「うん。ここにいれば、綾波はきっと戻ってくると思ったから」
レイを見失ったと気づいたシンジは、すぐに決断した。
路上の標識や地図を頼りに、すぐに学校まで戻り、
そこからレイがカバンを投げ捨てた場所までやってきた。
……正確には、そこでカバンを取ろうとしているレイを見つけただけで、
待ち伏せていたのではなかったのだが、細かい訂正はしない。
それよりも、今は、
「話を、聞いてほしいんだ」
レイの右手をつかんだ手に、わずかに力を込める。
「……わたしは、聞くつもりはないわ」
振り払おうと揺すられる手にすがるように、
シンジはレイの右手にもう一方の手も重ねる。
「僕には、あるんだ」
シンジはそう言いながら、強い想いを乗せて、レイの瞳を見据えた。
その突然の行動にレイは一瞬、戸惑ったように目を逸らし、
だが次の瞬間には倍加した鋭さでシンジを射すくめる。
「…はなして」
冷たく戻った口から、そんな言葉が漏れる。
「は、放さないよ」
どうしようもなく気圧されながら、シンジは必死に首を振る。
「…どうして?」
「ど、どうして、って…」
あまりに当たり前の質問に、わずかにどもってから、
「は、放したら、綾波はまた、逃げるじゃないか」
やはり当たり前の答えを返した。

294 :逆行167:2008/08/10(日) 02:46:18 ID:???

だが、シンジの言葉に、レイは首を振った。
「にげないわ」
「……本当に?」
シンジの質問に、
「ええ」
今度はうなずく。
こちらを直視してくる瞳に、揺らぎがないことを確かめて、
「……分かった。なら…」
ついにシンジがぱっと腕を放し…た途端、レイが駆け出した。
「えぇ? あっ、待っ……!?」
驚きが、すぐに言葉にならない。
それでも反射的に伸ばされるシンジの腕を、すり抜けていき、
「――っ!?」
だがその直後、レイは足をもつれさせ、転倒した。
「綾波っ!!」
シンジが悲鳴のような声をあげ、駆け寄る。
レイは地面に手をついていて、どうやら頭を打ったりはしていないようだが、
すぐには立ち上がれないようだった。
「だ、大丈夫?」
そんな気遣わしげなシンジの言葉を、こんな時でもレイは、拒絶しながら、
「問題、ないわ…」
一人で何とか、立ち上がろうとする。だが、
「問題ない、って…」
そんなはずはなかった。
シンジはレイの手を、半ばひったくるようにしてつかみとる。
「手、血が出てるじゃないか! 早く、手当てしないと…」
「…あ」
途端、レイが小さく声をあげ、数瞬遅れて、シンジも気づく。
握ったその手に、しかし、この時ばかりは気づかなかったフリをした。

295 :逆行168:2008/08/10(日) 02:47:48 ID:???

シンジは、レイの手をつかんだまま、
けれど、レイと目を合わすことはしないままで、
「ごめん、今、これくらいしかないけど…」
血のにじんだレイの手のひらに、数枚のティッシュを押し当てる。
「べつに、かまわないわ。本部に行けば、医務室があるから…」
レイもまた、シンジから視線を逸らし、それでも手を放せとは言わない。
どこか冷たくなりきれない声で、弁明のための言葉を紡ぐ。
「…………」
レイは、自分の手を必死で押さえる、シンジの手の動きを眺めながら、
「……どうして?」
自然と生まれ出た疑問を、そのまま口にしていた。
「どうして、わたしに近づこうとするの?」
――気がつくと、レイはまっすぐ、シンジを見ていた。
敵意も拒絶も、それどころか一切の意図が削げ落ちた、無垢そのものの瞳で。
それを目にして、シンジは悟る。……ここが、分岐点だと。
ここを逃せば、これ以上レイの心がシンジに近づくことはない、と。
そして、それを知って、シンジが口にしたのは、
「……分からないよ、そんなの」
ひどく、いい加減な答え。
だがそれは、シンジの本心だった。
「わから、ない…?」
きょとん、とした顔で、
「そう、なの…?」
歳相応の、いや、それ以上に幼い表情で、レイは聞き返す。
あらためて聞き返され、シンジはどこか落ち着かない風に口をとがらせた。
「そうだよ。……だって、しょうがないじゃないか。
理由なんて分からなくたって、そうしたいものは、そうしたいんだから」
その答えはもしかすると、レイにとって、想像もしていなかったもので、
「……そう。…そう、なの」
自分の中に沈み込むように、レイは何度もうなずいた。

296 :逆行169:2008/08/10(日) 02:49:28 ID:???

「綾波…?」
不思議な綾波の反応に、シンジは心配そうに眉をたわめた。
とっくに血の止まっているレイの手をつかむ自らの手に、わずか、力を込める。
しかしレイは、そのことにすら、気づいた様子もなく、
「でも、わたしは……、わたしは、わからないのがこわいわ」
おそらく誰にも打ち明けたことのない気持ちを、
ぽつりぽつりと語り出す。
「碇くんといると、わからなくなる。
自分の中に、知らない自分がいるのに気づくの」
それは確かに、今までに見たことのない彼女の姿で、
「胸の中にある空っぽが、あんなにイヤだったはずなのに…。
今は、変わるのがこわい。
……空っぽじゃなくなるのが、こわい」
そっと握った手から、レイの震えが伝わってくる。
それはまるで、レイ自身の心の震え、そのもののようで、
どんな言葉より雄弁に、レイの怯えを伝えていて、
「……ごめん、綾波」
それでもシンジは、そう言うことしか出来なかった。
その言葉は、ゆっくりと時間をかけてレイに染み渡り、
やがて彼女は、
「……そう、ね」
安堵と諦観の混じった響きで、握られていた手を、離す。
レイの手が、逃げていく。
自分の手の届かない所へ、すり抜けていく。
それを、何よりも肌で感じながら、シンジは……

297 :逆行170:2008/08/10(日) 02:52:30 ID:???

……シンジは、離れようとするレイの手に、ぎゅっと力を込めた。
引き止めるように、逃がさないように、……しっかりとつかまえる。
そして、驚きに見開かれた瞳に、シンジはもう一度、言った。
「……ごめん、綾波。
でも、僕はそれでも、この手を放したくないよ。
放したく、ないんだ」
その言葉、宣言に、今度こそレイは驚きに硬直する。
そうして、息を詰めて見つめるシンジの前、
レイはその視線の重みに耐えかねたように目を伏せて、
囁くほどの小さな声で、目も合わせないまま、

「わたしも…」

――それでもその手が、きゅっとシンジの手を握り返してくる。
そのささやかな感触が照れくさく、くすぐったくて、
「……うん」
なぜか突然胸が詰まって、シンジにはそれしか言えなくなる。
……だが、それで充分だった。
互いの手のひらの、確かな感触。
そのわずかな接触面から、二人の体温が溶け合っていく。
――もはや、言葉は必要ない。
どちらから、ということもなく、自然と二人の視線が交差し、そして、

「ヒューヒュー! お熱いねぇ、お二人さん!」

そんな二人をはやし立てる野次馬の声に、二人は同時に我に返った。
すぐにここが街の往来だということを思い出す。
概して他人に無関心な人間の多い都市部だということもあり、
さすがにシンジたちの周りに人が集まっているなどということはなかったが、
通り過ぎる人たちがみな、自分たちの方を好奇の眼差しで眺めているのが見えた。

298 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/10(日) 02:53:05 ID:???
いい!乙!wktk!

299 :逆行171:2008/08/10(日) 02:59:16 ID:???

シンジの顔が、たちまちの内に赤く染まる。
「わ、う、うわわわわわ?! ち、違うんだ綾波!
僕は、その、そんなつもりじゃなくて…」
弾かれるようにレイから身をもぎ離す。
そして自分がまだ、レイと手をつないだままだということを思い出し、
「ご、ごめっ…」
急いで手を離そうとして、
「え? あ、綾波?」
一層強く自分の手を握ってくる、レイの存在に気づいた。
わたわたと慌てるシンジとは対照的に、
「来て。…こっち」
レイは機敏に立ち回って、シンジの手を引いていく。

――そして、そのまま手を引かれ、シンジが連れて来られたのは、
「あ、ここ……」
レイの自宅だった。
あいかわらず郵便受けに色々な物が満載にされた無骨な扉。
それを空いている方の左手で無造作に開け放つと、
「…入って」
戸惑うシンジを、レイは招き入れる。
「う、うん…」
その言葉に導かれて家に足を踏み入れるものの、
やはり気後れして玄関で立ち止まってしまう。
「……なにをしているの?」
純粋な疑問の言葉。
だが、この状況ではそれは催促と同じだった。
「お、お邪魔します」
やはり抗い切れず、シンジは奥へと進む。

300 :逆行172:2008/08/10(日) 03:08:52 ID:???

――殺風景を通り越して、殺伐とした部屋の光景は、以前来た時と同じだった。
「そうだ。すりむいた手、ちゃんと手当てしないと…」
病院に似た雰囲気に触発され、レイの怪我を思い出したシンジはそう提案するが、
「……このままでいいわ」
レイは首を振る。
「で、でも…」
食い下がろうとするシンジに、レイはもう一度首を振り、
「わたしは、」
そこで、つないだ手に、少し力を込めて、
「このほうがいい」
告げられた言葉の意味を正しく読み取って、シンジの顔が赤く染まる。
「後で本部に行ったら、ちゃんと見てもらわなきゃダメだよ」
「ええ」
それでも一応そう釘を刺して、引き下がる。
シンジが納得したのを確認して、
「待ってて。お茶、いれてくるから」
レイはシンジを残して台所に向かおうとして、
「……ぁ」
つながれた、二人の手を見る。
「…………」
お茶を淹れるためには、もちろん手を放さなくてはいけない。
当たり前のことだった。
黙ってしまったレイを見かね、シンジが先に切り出す。
「やっぱり、お茶はいいよ。
綾波も一緒にここで、ゆっくりしよう?」
「……碇くんが、それでいいなら」
「うん。……僕も、その方がいい、かな」
シンジは恥ずかしそうにはにかみながら、先ほどのレイとほとんど同じ台詞を吐いた。
――結ばれた二人の手が、さっきより少し、強くなる。

301 :6:2008/08/10(日) 03:10:53 ID:???
以上。というか全然終わってないが、続きは明日にしてもらっていいか?
wktkしてた人には特に申し訳ないが、手直ししたい場所を見つけたのに眠くてうまく書けそうにないんだ。

明日、シンジとレイのバカップルぶりといじわるばあさんのいじわるっぷりを絶対見せるから、
……スマンね。

302 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/10(日) 11:58:46 ID:???

思わず野次馬にキレそうになったw
氏ね

303 :6:2008/08/10(日) 23:43:10 ID:???
ではちゃちゃっと投下

304 :逆行173:2008/08/10(日) 23:43:51 ID:???

――通常、平日におけるエヴァの実験開始時刻は、
シンジたちの学校が終わる時間に合わせて設定されている。
だから、学校の途中で抜け出してきていたシンジたちには、
その時間まではもう少し余裕があった。
レイの部屋には椅子が一脚しかないため、
二人はベッドによりかかるように並んで座り、時を過ごす。
「…………」
「…………」
会話は、ほとんどない。隣にいても、お互いを見ることすら稀で、
ただ時折、シンジが左手に力を込めると、レイが右手で握り返し、
レイが右手でシンジの左手をつつくと、シンジがやり返して、
などといった、あまりにもささやかなやりとりがあるだけだった。
それでも、この状況への罪悪感に駆られたのか、
不意にシンジが口を開いた。
「……みんな、今ごろまだ勉強してるのかな?」
「……そうね」
二人、前を向いたまま、ぽつり、ぽつりと会話する。
「何だか、悪い気がするね。僕たち二人だけ、勉強、さぼって…」
「……だったら、今からもどる?」
その言葉は辛辣なようでいて、イタズラっぽい響きを伴っていて、
シンジだってすぐに、レイが本気で言っているのではないと分かった。
だからシンジも、冗談で返してみる。
「そう、だね。……が、学校でも綾波と席が隣なら、考えた、かも」
「…そうしたら、ずっと手をつないでいられる?」
「う、うん」
「………ばかね、碇くん」
たどたどしく、手探りで、会話を進める。
お互いに、慣れないことをしているという自覚はあって、
でもそんな距離感を共有しながらこんなことを言い合える関係を、
二人共楽しんでいた。酔っていた、と言ってもいい。

305 :逆行174:2008/08/10(日) 23:45:15 ID:???

ただ、一つ、学校のことで本気の懸念があるとしたら、
「アスカ、怒ってるかなぁ…」
ということ。
半ば強制されたとはいえ、レイとの仲直りを頼んでいたのに、
勝手に飛び出してきてしまってよかっただろうか。
いや、仲直りのために飛び出したのだから問題ない気はするのだが、
不思議となんとなく、気が咎めるのだった。
だが、まるでアスカに気持ちを飛ばすシンジをいさめるように、
「……その話、今はしないで」
レイが、不機嫌そうに言い放った。
だが、半ば以上フリとはいえ、レイがそんな風に機嫌を損ねてみせるのも、
普通では考えられないことで、
「そういえば、アスカとはケンカ中だったね。…ごめん」
シンジはそう口では謝りながら、愉快な気持ちが込み上げるのを抑えられない。
今までずっと前を見ていたレイが、初めてシンジの方を向いて、
「……そういうの、感じわるいわ」
とこぼすのを聞いて、とうとう耐えられなくなった。
「あはははっ!」
笑い出す。
それを見て、レイはしばらくあっけに取られていたが、
「ふ、…ふふふっ」
シンジにつられるように、笑い始める。
それは努力して笑っているのが分かるようなぎこちない笑いで、
だがそんなこと、気にならなかった。
二人共、苦労して楽しんでいる人を演じているようで、
傍から見れば不自然で滑稽にすら見えたとしても、
楽しんでいる気持ちは本物だった。
――まるでママゴトのような二人の時間が過ぎていく。

306 :逆行175:2008/08/10(日) 23:46:02 ID:???

笑いの発作が収まって、同時に場を支配する奇妙な緊張感が影をひそめる。
急速に弛緩する空気の中、シンジは強い眠気を覚えていた。
(そういえば昨夜、全然寝てなかったから…)
まぶたが重くなる。どうしても意識を、保っていられなくなって、
「……ぁ」
気がつくとシンジは、レイの肩に、頭をくっつけていた。
「あ、ご、ごめん…!」
シンジは慌てて、体を戻すが、
「……………ぅ、んん」
しばらくするとまた、レイにもたれかかっていた。
「ご、ごめん…!」
シンジはまたすぐ、体を離すが……、さすがに今度は、ごまかしきれない。
「…碇くん?」
気遣わしげな、レイの瞳。
至近距離で見つめるその綺麗な顔立ちに、勝手に顔面が赤くなるのを感じながら、
「ご、ごめん。気分が悪いとか、そういうんじゃないんだ。
ただ、実は昨夜、ほとんど眠れなくて…」
そう、告白する。
「…そう」
レイはうなずき、そして空いている方の手で、自分の後ろを指し示した。
「時間、まだあるわ。……ベッド、使ってもいいから」
「そ、そんなワケにはいかないよ…!」
さすがに遠慮する。いや、遠慮とかいったものだけじゃなく、
レイが普段使っているベッドに寝るなんてことは、シンジの理解の範疇を越えていた。
「……なら」
つながれた手が、ぐいっと意外なほど強い力で引かれる。
疲れていて無防備だったシンジは、為す術もなく体勢を崩し、
「――あ、や…なみ?」
何がどうなったものか、その頭をレイの太ももの上に預けていた。

307 :逆行176:2008/08/10(日) 23:46:50 ID:???

そして、自分の状況を悟るや否や、
「う、うわ! あ、あの、これは、わざとじゃなくて…」
慌てて起き上がろうとするが、
「あばれないで」
レイの手に額を押さえられ、動きを封じられる。
「この部屋、代わりになるもの、ほかにないから」
代わり、というのは、ベッドの代わりということだろうか。
「だ、だからって…」
「それにこうしていれば、手を離してもだいじょうぶだから」
大丈夫、などと言われても逆効果だった。
その言葉に、レイと触れ合っていることが、一層意識させられる。
「だ、ダメだよ、やっぱり…!」
もう一度起き上がろうとするのに、額を押さえる力は意外に強く、
起き上がれない。
シンジは実力行使をあきらめ、
「あのさ、綾波。寝るんだったら、僕は別に床…」
「話していては、ねむれないわ」
「だ、だから…」
とにかく必死で反駁しようとして、
「だまって」
……黙った。
「力をぬいて」
妙な迫力に押され、言われるがまま、力を抜く。
「目、とじて…」
ぴとり、と目の上に指が置かれる。光が完全にさえぎられた。
「あ、綾波? その…」
「だいじょうぶ。時間になったらおこすから」
このままではいけないと、起きなくちゃ、説得しなくちゃ、と思うのに、
レイの温もりが疲れた体に染み入ってきて、レイの声が、心地よく耳を震わす。
そしてそのまま、シンジは……


308 :逆行177:2008/08/10(日) 23:48:41 ID:???

……レイの膝の上で、シンジはそのまま、
小さな寝息を漏らしていた。
「…つかれていたのね」
言いながら、レイはほとんど無意識の内に、
シンジの髪をなでる。
そんな自分に、驚きながら、
「……そう。これもまた、はじめての気持ちね。
今まで感じたことのない……」
そして、今度は意識的に、もう一度シンジの髪をなでる。
それは先ほどと比べて、幾分かぎこちなく、
しかしそれ以上に、価値のある行為で……。
「碇くん。あなたはわたしを、どこにつれていくの?」
ささやいた言葉に答える声はない。
しかし、レイにはそれさえも満足で、もう一度、
さっきよりは手慣れた所作で、シンジの髪を触る。
……それは、特に反応を期待した行為ではなかったのに、
刺激を受け、眠り込んだシンジの口が、小さく動く。
「――かあ、さん」
と。
レイは、その言葉に一瞬だけ複雑そうな表情を浮かべ、
「おやすみなさい、碇くん」
だがすぐに穏やかな顔になって、そう呟いた。

309 :逆行178:2008/08/10(日) 23:53:24 ID:???

『やっぱり疲れてたのかしら。シンジ君、完っ璧に寝ちゃったわねぇ』
『ええ。それも、良く知りもしない女の部屋の、おまけに膝の上でね。
……全く、よくもまあ眠れるものだと思うわ』
『あ、あー。ま、それはともかく、これでレイとは和解、ってことでいいのかしらね。
あの子に限っては、ちょーっち何考えてるか全然よく分からないっていうか…』
『ミサト。どうでもいいけど日本語、破綻しているわよ』
『うるさいわねぇ。言葉なんて意味が伝わればいいでしょ、べつに。
それよりこの状況、あんたはどう思うのよ?』
『どう思う、って何がかしら? 別に、見たままじゃないの?』
『そりゃ、他の子が相手だったらあたしもそう思うけど……。
あの子、複雑そうっていうか、理解出来ないところあるじゃない?』
『そう? 優しくしてくれる男に簡単になびく、とても単純な女だと思うけど?』
『……あんた。言葉にトゲがあるっていうか、なんか私怨入ってない?
中学生の小娘相手にその態度は正直どうかって思うわよ』
『あら、人の評価なんて、元を辿れば好きか嫌いか。綺麗に修飾したって根底は変わらないわ』
『リツコ先生らしからぬ暴論ねぇ。
嫌いだけど能力は認めてるとか、色々あるでしょうが…』
『認めているっていう表現自体が、既に嫌悪の中の好意を認めていると思うのだけどね。
まあ、その話はもういいわ。レイが何を考えているか、という話だったかしら?』
『そ、そうよ。それよそれ。あの子、いかにも怪しいじゃない。
シンちゃんへの態度に裏があるとは思えないけど、一体何を隠してんだか…』
『まあ、何かあるのは確かね。
でも、レイに関しては魂の変質という事で説明出来るかもしれないわ』
『魂の変質? 何よそれ。あんた、この期におよんでもまだあたしに隠しごとしてるワケ?』
『……そんな大した事じゃないわよ。
人一人に対して、対応する魂は基本的に一つだけ。知ってるでしょ?』
『当たり前よ。他ならぬあたしたちがそれを証明してるじゃない。それで?』
『別の体に入ったとしても、魂はそれを継承する。でも前の体で魂が変質していたとしたら…』
『新しい体も、その影響を受ける…? 待って、じゃあつまり、
あんたは記憶が残っているって言いたいの? この子に』

310 :逆行179:2008/08/10(日) 23:54:43 ID:???
『体の記憶ではなく、魂の記憶だけどね。
とはいえ、所詮仮説よ。真実かどうかは分からないわ』
『……もうしばらく、様子を見るしかない、ってコト?』
『ええ。結局はそこに落ち着く事になるわね』
『……はぁ。こうして懸案事項だけが増えていく、って寸法ね』
『不満? でも、それが…』
『あたしたちの存在意義だ、って言うんでしょ。もう耳タコよぉ』
『まだ、一度しか言っていないわよ…』
『…う、そうだった?
ま、まぁあたしだって、そんなにワガママを言うつもりはないのよ。
シンジ君の安全と幸福のために動く。
それが、あたしたちのやるべきことなんでしょ』
『ええ、そうよ。……少なくともシンジ君の幸福が、
私たちのそれに重なっている限りは、ね』
『この、ひねくれもん』
『ふふ。……さて、あなたとのお喋りも楽しいけれど、
このくらいで切り上げなくちゃね。
ミサト、そろそろシンジ君を起こした方がいいわよ』

311 :逆行180:2008/08/10(日) 23:56:42 ID:???

『え? もうそんな時間?』
『ええ、もうそんな時間よ。
今、本部にいる『私』の時計が狂っているのでなければ、だけど。
……時間になったら起こすって言ってたのに、
やっぱりあの子、意外と使えないわね』
『だから、大人気ないコメントは控えなさいってば……』
『あら、私は本当の事を言ったまでだけど』
『だっから、あんたのそういうところが…』
『はいはい。愚痴はまた後で。……とにかく、私はもう行くわ』
『行くわ、って。一緒にシンジ君起こしてけばいいでしょ。
どうせ、他にやることなんて……』
『あら、それはいつの話? 人の歩みは日進月歩。
今は私にだって他にやるべき仕事があるわ。
仕事内容は……そうね。
さしずめ、閃きという名の技術供与、という所かしら』
『ちょ、あんた、それって……』
『それに、これ以上ここにいると不愉快な映像を見せられそうな予感がするもの。
だから退散させてもらうわ。じゃ、シンジ君の監視、お願いね』
『あ、無視するんじゃないわよ、話はまだ…!
……もう、しょうがないわねぇ。
シンちゃん! シンジ君! 起きて! ほら!』

312 :逆行181:2008/08/10(日) 23:58:41 ID:???

「ん? ミサト、さん?」
どうしてだか、ミサトの声を聞いたような気がして、シンジは目を覚ます。
そうして目を開けて、シンジの視界に入ってきたもの。
それは見知らぬ天井と、そして、
「綾、波…?」
ベッドに寄りかかるようにして眠る、レイの姿だった。
(綾波、寝てる時は、こんな顔してるんだな…)
ただあどけない、というのとも少し違う、
起きている時の険の強さや全方位へ向けた無関心さが抜け落ち、
どこかおっとりした、見ているとほっとするような顔をしていた。
「……ん」
シンジの声に反応したのか、レイが少し身じろぎをする。
すると当然、シンジが頭を乗せているレイの太ももだって揺れて、
「わ、うわわ…!」
その揺れと、その拍子に感じたレイの体のリアルな質感に驚いて、ずり落ちて、
ガゴン!
聞くだけで痛みを感じるような凄惨な音を立てて、床に頭をぶつける。
「い、いったぁ…」
痛みに、転げ回る。
「碇、くん…?」
その騒ぎで、起こしてしまったようだった。
レイは目をこすりながら体を起こし、すぐにハッとする。
「碇くん、時間…!」
レイの言葉に、シンジも時間を確かめた。
「あ、うん。そうだね。そろそろ、行かなくちゃ」
その言葉にレイはうなずいて、やはり自分が起こすと言っていた手前、
責任を感じているのだろう。めずらしく少し眉を寄せ、険しい顔で、
「……ごめんなさい」
少し沈んだような声で、謝った。

313 :逆行182:2008/08/11(月) 00:00:54 ID:???

「いいよ。僕が先に寝ちゃったんだし、こうして起きられたんだから。
でも、めずらしいよね。綾波が、こんな…」
言いかけて、困ったような綾波の顔に、言葉を止める。
「わたしも…」
しかし、違った。困っているのではなかった。
そうではなくて、まるで共通の秘密を、打ち明けるみたいに、
「わたしも昨夜、ねむれなかったから」
少しだけ照れたように、レイがそう告げる。
「そ、そうなんだ…」
そして照れは伝染する。
レイの顔を、もうまともに見られない。
眠る前の、あの濃密な空気の中では出来ていた色々なことが、
今のシンジにはもう、出来なくなっていた。
それでも、それを認めるのは嫌で、
「じゃ、じゃあ、一緒に行こうか」
言いながら、レイに向かって手を伸ばす。
勇気を出せば、今からだって自然に手をつなげるような気がした。
だが、
「……ぁ」
シンジがレイの手に触れた途端、レイはびっくりしたように手を引いた。
それを見て、シンジもあきらめる。同時に、後悔もした。
「ごめん。嫌だった…?」
しかし、その言葉には、レイはかぶりを振って、
「イヤ、じゃないわ。でも…」
その時の、顔を反対側に向けていたレイの表情は、当然シンジには見えない。
だが、賭けてもいいとシンジは思った。

「はずかしい…から」

そう口にした瞬間のレイの頬が、羞恥で赤く染まっていたことを。

314 :逆行183:2008/08/11(月) 00:03:29 ID:???

「――わたし、やっぱり先に出るわ」
あっというまに身支度を整えたレイにそう告げられて、
「…え?」
シンジは間の抜けた声を出した。
「実験スケジュール。今日、碇くん最後だから、
もうすこしゆっくりしていられるはず」
ぶっきらぼうな口調とは裏腹に、
シンジはその言葉の中にレイの優しさを感じて、
「う、うん…」
と思わずうなずいていた。
しかし、ふと思いついて尋ねる。
「そういえば、綾波ってこういう実験の時、一番に入ることが多いよね。
それなのに、僕たちより長く本部にいるみたいだし…」
「……それは、わたしだけが協力している実験もあるから。
それに、今は実験に模擬体も使っているから…」
「あ、そうか」
ヤシマ作戦で大破した零号機はまだ修復されていない。
その間、レイのシンクロテストや訓練をするのに、リツコがずいぶん骨を折っていると、
シンジも以前、ミサトから聞いた覚えがあった。
「それじゃ…」
シンジがそんなことを考えている間に、レイはもう玄関の辺りまで出ていってしまっていて、
――だがその時、シンジはとんでもないことに気づいた。
「ま、待って! カギ、僕持ってないよ…!」
それは、それなりに大変なことのように思えたのだが、
「しなくていいわ。いつも、してないから」
あっさりと答え、レイは全く頓着しない。
「で、でも…」
尚も渋るシンジに、
「なら、持っていて」
ひょい、とレイは何かを投げ寄越す。

315 :逆行184:2008/08/11(月) 00:06:25 ID:???

投げ渡されたのは、もちろんカギで、
「これ、もしかしてここのスペアキー?」
シンジの質問というより確認の言葉に、
しかしレイは首を振って、平然と、
「いいえ。カギは、それひとつしかないわ」
などと言う。
「それじゃ…」
…ぜんぜんダメじゃないか、そう、シンジは思うのに、
「持っていて」
「で、でもさ…」
「碇くんに、持っていてほしいの」
なんて言われてしまえば、受け取るより他ない。
そうして、今度こそ、
「わたし、行くわ。……碇くん。また、あとで」
扉に手をかけるレイに、
「あ、うん。……行ってらっしゃい」
そんな言葉をかける。
そのあいさつに、レイはしばし、目を見開いて、
「……いってきます」
そう律儀に返してから、外へと踏み出していく。
そして、扉が閉まる直前、

「ありがとう。……碇くんに会えて、よかった」

シンジはレイの微笑みを見た、気がした。

316 :6:2008/08/11(月) 00:13:11 ID:???
以上。最後の台詞は綾波死亡フラグ……ではないので、あしからず。

ここまで読ませといてなんだけど、この綾波編は色々失敗だったかも。
まあ次はアスカの話、というか本筋なんでストーリーが進むはず。
こっからテンポアップして早く完結させたいなぁ…。

317 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/11(月) 00:22:13 ID:???
GJ!!!アスカも気になるがこれはこれでいい(笑)

318 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/11(月) 00:52:30 ID:???

脂肪フラグすぎてワロタw

319 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/12(火) 16:20:26 ID:???
>>279
大浦天主堂は原爆の被害なかったよ。
浦上天主堂の間違いでは?

320 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/12(火) 22:29:00 ID:???
age

321 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/14(木) 23:21:26 ID:???
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322 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/16(土) 01:13:31 ID:???
今ちょっとずつ書き溜めてるのがあるんだが
ここに投下してみてもいいのかな

323 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/16(土) 01:17:03 ID:???
どうぞ!

324 :322:2008/08/16(土) 01:35:09 ID:???
じゃあ投下しちゃいますよ
とりあえずレス番の322をコテにして投下します
トリは他の職人さんもつけてないし、今のところ必要ないでしょう

325 :322第壱話-帰墟-:2008/08/16(土) 01:36:39 ID:???
そこは紅に染まった世界だった。
少年はそこに立っているのか、浮遊しているのか、よくわからない不思議な感覚で
そこにいた。
その深紅は、まるで血の赤。動脈血というよりは、静脈血の血の赤だ。
そしてここは、まったくの無音。なにも聞こえなかった。
-----そうか。
少年は理解している。何故この世界が黒ずんだ色をしているのか。
漆黒の闇が混ざり合っているからだ。その闇の正体まではわからなかったが。
-----また、来る。
その闇から生まれ出る、純白の光。本来ならば、このような世界においては
それは歓迎すべきものなのであろうが、それがそういう類のものではないということは
少年はすでに知っていた。
-----怖い…!
それは天使のような翼をもった、白い異形の群れだった。
その異形の厭らしい笑みは、まるで生贄を見つけ、心が踊っているかのように見えた。
その群れと自分との距離が縮まってくるにつれ
それまではいっさい聞こえてこなかった音が、だんだんと聞こえてくるのを、少年は感じた。
歓喜の声と、翼の羽ばたく音だった。
-----逃げなきゃ。
それはわかっている。それはわかっているのだ。だが、体が命令を実行してくれない。
脳髄からは確実に、逃げろという命令は下っている筈なのであるが
それでも体は動いてはくれなかった。
-----あれ…なんだ?これ?
その次の瞬間、何故か少年は体が融解していくような感覚を覚えた。

326 :322第壱話-帰墟-:2008/08/16(土) 01:38:02 ID:???
人口進化研究所(ゲヒルン)内に設けられた、職員宿舎の一室。
狭い、畳の簡素な部屋。シンジはそこにいた。
「う…ん、朝か。…まだ眠いや」
シンジは枕元に置かれていた時計を手に取った。いつもの起床時間に比べ、一時間ほど早い。
二度寝しようかとも思ったが、どうせ後一時間、中途半端に寝るほうが後が辛いだろう。
目も冴えてしまっている。それならばと、シンジは布団からゆっくりと這い出た。
カーテンの隙間から漏れる朝の日差しがきつく、今日は暑い日になることが予想できた。
寝起きの目に、光が刺さるように沁みる。
「眩しいなぁ…もう」
とりあえずこうしていても仕方がない。シンジは立ち上がると、カーテンに手をかけた。
そしてさっと左右に広げる。窓越しに青空が広がっていた。
「あれ…」
見下ろすと、そこには花壇がある。この宿舎の、シンジのいる部屋のある側からよく見える場所だ。
そこで一人の少女が花に水をやっていた。
(早起きしたのは僕だけじゃなかったんだな)
シンジは簡単に身支度を終え、部屋から出た。

「おはよう、リツコさん」
シンジは彼女に声をかけた。

327 :322第壱話-帰墟-:2008/08/16(土) 01:39:20 ID:???
花に水をやっていた彼女はジョウロの口を上げると
振り返り、挨拶を返した。
「あらシンジ君、おはよう」
彼女は、シンジがここに来てから知り合った、同い年の少女だ。
「今日は早いのね?」
「リツコさんもね」
「なんか目が覚めちゃってね」
リツコはそう言うと、再び花壇へと向き直り、花を見下ろした。
「だからこの子達に、今日は早めの水をあげていたところ」
シンジも同じく花を見る。
「早めの朝ごはん?みたいなものかな?」
「ちょっと違うんじゃないかしら?」
リツコはシンジの物言いが可笑しかったのか、クスクスと笑った。
「植物の栄養の摂取の仕方と、動物の栄養の摂取の仕方とではその根本でメカニズムが…」
「いや、そういう話はいいから……そういえば、お母さんは?」
リツコはここで、母親とともに暮らしている。とはいっても、一つ一つの部屋が狭いため
隣同士の部屋で別々に住んでいるのだが。
「母さん?」
リツコは宿舎の一室の窓を見上げた。そこが彼女の母親の部屋だ。
「徹夜明けだったから、多分昼まで寝てるんじゃないかしら?」
リツコにつられて、シンジも同じく窓を見上げた。
窓に反射する東日に、一瞬顔を顰めたシンジは、ここに来た日のことを思い出していた。
その日も今日のように、雲の無いよく晴れた日だった。

328 :322第壱話-帰墟-:2008/08/16(土) 01:40:50 ID:???
それは三週間前の事だ。
「第三新東京市か…」
駅から出たシンジは、辺りを見回した。
将来新首都になる計画都市、それがここ、第三新東京市だ。
建設がまだ完了してはいないため、それほど賑わっているわけではないのだが
それでも人は結構いるようだ。
シンジがここへとやってきたのは、人に呼ばれたためだった。
両親を早くに亡くし、それからは親戚の家で世話になっていたのだが
両親の古くからの知り合いである、冬月という人物に呼ばれたのだ。
シンジは写真でだけだが、冬月という人物を知っていた。
その冬月がシンジを駅まで迎えに来ることになっていたのだが
見渡してみたところ、どこにも見当たらない。
「まだ来てないのかな?…ん?」
一人の女性と目が合った。
おそらく母親がまだ生きていたならば、これぐらいの年齢だろうと思われる彼女は
柔らかく微笑むとシンジに近寄ってきた。
「碇シンジ君ね?」
「え、そうですけど…?」
「私は赤木ナオコ。冬月先生の代理できたの」
どうやら冬月は来られなくなってしまったようだ。
「あ、はい、その、よろしくお願いします」
ナオコは若干困ったように笑った。
「そんなに畏まらなくてもいいのよ?初対面じゃないんだし…って、流石に憶えてないか」
どうやら前に会ったことがあるようだ。だが、シンジはナオコに覚えがない。

329 :322第壱話-帰墟-:2008/08/16(土) 01:42:21 ID:???
「…すみません」
「仕方がないわよ。まだ小さかったし、ユイさんがご存命だったころだし…」
そこまで言って、ナオコはしまったと心の中で舌打をした。
ユイというのは、彼の母の名なのだが、思春期という年代の彼に
親の死について、軽々しく発言していいものではないのではないか、と。
「…ごめんなさい」
今度はシンジが困ったように笑った。
「いいんですよ、そんな…母さんなんて、顔も覚えてないんだし」
このまま空気が重くなっていくのは好ましくない。ナオコは話題を変えることにした。
「冬月先生はちょっと仕事の関係で、急用ができちゃったから来られなくなっちゃってね」
「そうだったんですか。忙しいんですね、冬月先生」
「ええ。…でもちょっと意外ね」
「何がです?」
「シンジ君も、冬月『先生』って呼んでるのが」
「父さんがそう呼んでいたんで」
シンジは父親の事ならば覚えている。母親が死んだのはまだ物心つく前だったのだが
父親が死んだのは五年ほど前のことだ。
「なるほど、その影響ね」
ナオコはそういえばと時計を見た。
「シンジ君、そろそろ行きましょうか?」
「そうですね」
駐車場へと向かうナオコ。シンジは彼女の後ろに続いた。
「ごめんなさいね、急かしちゃったみたいで。私もこの後ちょっと用があるから」
「いいんですよそんな」

330 :322第壱話-帰墟-:2008/08/16(土) 01:44:45 ID:???
窓越しに街路樹が流れていくのを、シンジはぼんやりと眺めている。
「どうシンジ君、第三新東京市は?」
シンジがあまり自分から話しかけてこないので、ナオコは質問した。
沈黙が続くのは何か気まずい気がするからなのだが、それにしてもこのあまりにも
可もなく不可もなくな、内容の無い話題に、もっとほかに何か言い様があるのではないか
ともナオコは思ったのだが、いかんせんまだ距離のとり方がつかめていない相手である。
ナオコにはシンジと同い年の娘がいるのだが、そのような相手に情けないように思える。
その娘との距離のとり方も、分からずに苦労している、という事実もまた
彼女の内に存在していたりするわけだが…。
「新しい施設とか、そういうのはありますけど…普通に古いのとかもありますね」
シンジはナオコの方へ振り返りながら答えた。
シンジの言う通り、町の様子を眺めていると、電柱や公衆電話など
旧態依然としたものが存在している一方、旧東京都や、第二新東京市にあるものよりも
新しく、大きいビル郡等も、また同時に存在している。
「旧東京の復興が本格的に動き始めたのはつい最近だし、第二は応急で作られたからね」
「ここが新しい首都になるんですよね?」
「ええ、そうよ。これから先、どんどん人も増えていくでしょうね」
シンジは再び、窓の外を眺めた。
「…人が多いのって、あんまり好きじゃないんですよね」
面倒くさそうにシンジは言った。
「そう…。まぁでも、それならよかったかもしれないわね」
シンジは不思議そうな顔で、ナオコへと再び振り返った。
これから人が増えると言っていたのに、何故それならよかったとなるのか。

331 :322第壱話-帰墟-:2008/08/16(土) 01:46:07 ID:???
「これから行く場所、市街地から離れているから。静かでいい所よ」
車は山道へと入っていった。

「シンジ君、どうかした?」
「え、あ、なんでもないよ」
リツコの声に、シンジは現在へと戻ってきた。
「ここに来たときのこと、ちょっと思い出してただけ」
「ふーん、そっか」
リツコは宿舎のほうに向け、歩き出した。
「ジョウロ片付けてくるわ…あぁ、そうだ」
そういうと、リツコはシンジへと振り返った。
「朝、もう食べた?まだなら一緒にどう?」

332 :322:2008/08/16(土) 01:47:38 ID:???
とりあえずこんな感じです
遅筆ですけどマターリいきますよヽ(´ー`)ノ

333 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/16(土) 01:55:39 ID:???

設定がまだ謎で見えないとこで切られた(笑)
続き待ちしてるよ〜

334 :前スレ35:2008/08/16(土) 23:27:41 ID:???
えーと、お疲れ様ですー

EOEAという題名つけて投下してましたが、
あれはアスカサイドで、今度は同じ話のシンジサイドを作ってみました。

ただ、同じ話の繰り返しだったりするのと、アスカの目の左右とか色とか間違いを正しておきたくて、
ここに投下するんじゃなくて、まとめて以下に置くことにしました。

http://www36.atwiki.jp/one_threefive/

シンジサイドも完結させてありますので、安心してご一読ください。
また、なんか思いついたらスレ保守に貢献したいと思います。それではー


335 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/17(日) 00:18:14 ID:???
乙!ありがとう!

336 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/17(日) 00:38:09 ID:???
すげー労力だな
乙乙

337 :322第壱話-帰墟-:2008/08/17(日) 07:14:57 ID:???
>>331の続きです

338 :322第壱話-帰墟-:2008/08/17(日) 07:16:23 ID:???
研究所内にある食堂。そこにシンジとリツコの姿があった。
職員用宿舎は、寝泊りするぐらいにしか使えない。
電気も水道も通っているが、生活を営むというには、何分狭い。
ここの食堂にはキッチンもあるし、大きめの冷蔵庫もある。
他にも、シャワー室、ランドリー施設も、研究所内には完備されている。
自動販売機コーナーもある。
宿舎など、単に寝るだけのスペースだったとしても、問題は無い。
プライバシーというのもあるのだろうが、そもそもここで働いている職員は
それほど多くはいない。別に気になるものでもなかった。
今にしても、食堂にいるのはシンジとリツコだけだ。
「はい」
リツコはシンジにコーヒーを渡した。
「ありがとう」
「豆を変えてみたんだけどね」
リツコはなかなかコーヒーにこだわりがあるようだ。
「…うーん」
シンジにはまだ、コーヒーの違いは分からないようだったが。
「砂糖とミルクを入れなかったら、わかりやすいわよ?」
リツコは、ブラックのままのコーヒーを一口飲んだ。
「酸味がさわやかね…」
「そ、そうなのかな」
シンジはまだ、コーヒーをブラックで飲めそうにない。
甘党なわけではないのだが、まだ14歳だ。別に珍しくもなんともない。
「香りもいいわね。でもコクは…まぁでもこんな物なのかしら?」
というかむしろ、リツコのほうが珍しいのでは…。

339 :322第壱話-帰墟-:2008/08/17(日) 07:17:58 ID:???
「あぁ、そうだわ」
リツコは壁にかけられたカレンダーを見た。
「シンジ君、私と同じ学校に通うんだっけ」
シンジは今度から、リツコの通う市立第壱中学校に通うことになっている。
「こっちに来てから三週間、やっとね。まぁいろいろとあったから」
「いろいろといっても、ほとんど寝てただけだし、実感ないや」
実は、シンジはここへと来てからというもの、何かの実験に付き合わされていた。
そもそも、実験に協力してほしいとのことで、ここへと呼ばれたのだ。
実験といっても、電極みたいなものをつけられて、ただ寝ているだけだったり
周りの研究員達はせかせか働いてはいるが、シンジには退屈なものだったのだが。
「僕のデータなんて何に使うんだろうね?」
どうやら、両親が生前に携わっていた事と、何か関係があるようだということは
ナオコや、他の者たち口ぶりから、何となく分かっていたわけなのだが。
実験中何度か、両親の名を話しているのを、聞いたことがある。
「お父さんが何してたかなんて、何にも聞いてなかったからなぁ」
「どんな人だったの?」
実は、リツコには生まれたときから父親がいない。
そのため父親とはどのような存在なのか、彼女には良く分からなかった。
「何にも話さない人。何をやってて、どんなこと考えているのかさっぱり」
シンジにとっては、いたとしても、何だか理解しがたい存在であったようだ。
「まぁ、お母さんの事が本当に好きだったっていうのは、わかってるんだ」
「そうなんだ?写真とか飾ってあったの?」

340 :322第壱話-帰墟-:2008/08/17(日) 07:19:15 ID:???
「いや全然。全部捨てたんだってさ」
「…え?」
この答えは、リツコは予想できなかった。
「すべては心の中だ、今はそれでいい…とか言ってたよ」
話を聞けば聞くほどに、よく分からなくなってくる。
「…ロジックじゃないのね」
「何分かった風なこと言っているのよ?」
食堂の入り口のところから声がした。見ればそこにはナオコが立っていた。
「あ、ナオコさんおはようございます」
「ええ、シンジ君おはよう」
確か徹夜明けで、まだ寝てそれほどたっていないはずなのだが…。
「母さん、もう起きて大丈夫なの?」
ナオコはガシガシと頭をかきながら、不機嫌そうに中に入ってきた。
「大丈夫じゃないわよ。でも呼び出されたんだから仕方ないでしょ」
そう言うと彼女は、リツコの隣の席に座った。
こんな朝早くから呼び出しとは、一体何事だろうか。
「何かあったの?」
「あった、らしい」
リツコのその質問に対するナオコの回答は、なんだか酷く曖昧なものだった。
「電話で叩き起こされてね。なんか数字が合わないとかで」
「え、じゃあこんな所にいて大丈夫なんですか?」
シンジの疑問ももっともだ。
そもそも何故、徹夜やら早朝やらと、研究が慌しい状態なのかというと
予定よりもかなり遅れているからだった。
期日までにデータをまとめて、国連に提出しなければならないことになっている。

341 :322第壱話-帰墟-:2008/08/17(日) 07:20:48 ID:???
「ええ、いても大丈夫。私が行く前に解決したんだって。
 単にデータの入力ミスだったんですって。…そんな事でいちいち起こさないでよ」
ナオコはうんざりといった様子だ。
「だいたいそこの数字が合わなかったら、一番最初にどこをチェックするのか
 わかる筈でしょ…。そりゃあ、皆疲れているのはわかるけど…」
「母さん、朝っぱらから愚痴はやめてもらえないかしら…?」
確かに、そんなことをリツコが聞かされても、どうしようもない。
「まだ眠いんなら、部屋に戻ってまた寝たらいいじゃない」
「…変なところで起こされたから、妙に目が冴えちゃってるのよ」
結局その後、ナオコは昼前から夕方まで寝ることになるのだが…。

その日、リツコは学校から帰宅すると、研究所の中へと入っていった。
いつものことだ。ほとんどここが自宅なようなものだった。
どうせ宿舎など、寝るときにしか利用しない。
「あ、冬月先生、お疲れ様です」
リツコが研究所の食堂へやってくると、ここの所長である冬月が休憩していた。
「やぁリツコ君、おかえり」
リツコも周りの者達の影響か、冬月を先生付けで呼んでいた。
「研究、進んでますか?」
「…うーん」
どうやら進んでいないらしい。
「どんな研究なんですか?母さん、あまり話してくれなくて」
「そうだな…まぁその前に、座ったらどうかね?」
リツコは冬月の正面の席に腰をかけた。
「あるモノを調べていてね。それがブラックボックスの塊のようなもので…」
「ということは、扱い方自体は分かってるんですね?」

342 :322第壱話-帰墟-:2008/08/17(日) 07:22:49 ID:???
「…ほう」
リツコのその言葉に、冬月はそう言葉を漏らした。流石だと、感心したようだった。
「どうかしましたか?ブラックボックスという言葉の定義なら
 常識的に、普通に知っているレベルの話だと…思うのですけど?」
「ふーむ、そうかね?」
ブラックボックスとは、分かりやすく説明すれば、別に未知なる物でもなんでもなく
内部の動作原理や構造を理解していなくても、外部から見た機能や使い方を知っていれば
得られる結果を十分に利用する事のできる装置や機構のことだ。
これくらいの事ならば、別に知っていても不思議なことではないのだが
14歳という年齢を考慮すれば、なるほど、知識があると思える。
「ブラックボックスは、その決まった使い方をすれば、その結果を得ることができる。
 間違った使い方をしてはならない。どういった理屈でそうなるのか分からないのだから
 それ以外の使い方をしてはならない。どんな結果になるか予想できないからね」
「ですがそれは、間違った使い方をしなければ問題無い、ということにはなりません」
冬月は頷いた。
「その通りだよ。その考え方では規定外のことが起きてしまったとき
 どう対処しなければならないか、それが分からなくなってしまうからね?
 たとえば…そうだな、それだ」
冬月は、隅に置かれている電子レンジを指差した。
「あれの隙間に異物を入れてはならない」
「まぁ、電子機器の説明書には、たいてい書いてあることですよね」

343 :322第壱話-帰墟-:2008/08/17(日) 07:24:05 ID:???
「そうだな。でだ、わざわざ異物など入れるだろうか?
 アクシデントで入ってしまうものなのではないのかね?
 自分で入れなければ問題無い、ということではないんだよ」
そうなのだ。ブラックボックスとはそういうものなのだ。
規定から少しでも外れてしまえば、そこでもうどうしたらいいものか
さっぱり分からなくなってしまう。
トラブルとは、そうしなければいいとは思っていても、起きてしまうものなのだ。
電気製品に異物が混入したとして、そこでどうするか?
開けるのか?分解するのか?だがそれも禁止事項であるはずだ。
昔の機械なら、詳しいものならば構造は理解できるだろうが
新しい機械は、チップが並んでいて、何が何だかわからない。
開けて異物を取り出したとして、なのに機能に障害が出たとなれば、どうしようもない。
「今研究しているものは、その辺にある電気製品ではないんだ」
「危険なものなんですか?」
冬月は黙った。リツコは冬月の言葉を待っている。
暫しの沈黙。破ったのは二人のうちのどちらでもなかった。
「ええ、危険よ」
食堂の入り口、そこにナオコが立っていた。
(今朝と同じね)
何かのパターンなのか、リツコにはそれが少し可笑しかった。
「…何笑ってるの?」
「なんでもないわ」
「それと、冬月先生?」
ナオコは今朝のだるそうな動きとは違い、ツカツカとハイヒールを鳴らしながら
足早に冬月へと近づいてきた。

344 :322:2008/08/17(日) 07:27:16 ID:???
地味です。動きがありません。
本編基準でいうと、まだ第壱話にも至ってないという…。

345 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/17(日) 15:28:46 ID:???
コミケにあったの?

346 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/18(月) 13:17:28 ID:???
乙です
続き待ち

347 :322第壱話-帰墟-:2008/08/20(水) 05:23:41 ID:???
>>343の続き
「ああナオコ君、お目覚めかね?」
「ええ、おはようございます」
「もう夕方も過ぎたのだが、おはよう。どうかしたかな」
ナオコはため息混じりに言った
「研究のこと、リツコにはあまり詳しく説明しないでくださいと、言いましたよね?」
「詳しい内容は話していないのだが…」
「そうは言っても…」
「ちょっとまって母さん」
リツコは立ち上がり、ナオコを見た。睨み付けるというほどではないのだが
あまり好意的な態度ではなかった。
「何故?機密なのは分かるけど、話せる事は話してくれてもいいじゃない?」
ナオコはリツコの目を、正面から見据える。
「知らなくてもいい事だからよ」
先に目を逸らしたのはリツコだった。
「…そう、分かったわ」
そうはき捨てたリツコは、不機嫌そうに食堂から出て行った。
「……」
ナオコは、リツコの姿が見えなくなっても、しばらく出口を見つめていた。
しばらくその様子を、目を細めながら静観していた冬月が
やれやれといった具合に口を開いた。
「まぁ、私も軽率だったとは思うが、もう少し言い方というものがあるんじゃないかね?」
ナオコは苦笑する。
「わかってはいるんですけど、なかなか思うようにはいかないものですわ」

348 :322第壱話-帰墟-:2008/08/20(水) 05:25:56 ID:???
冬月にはわからなかった。子供がいない彼には、親の心中というのものは。
しかも相手は思春期だ。いくらその心情を想像してみたところで、結局は他人事でしかない。
「やはり心配か」
そしてこういう月並みな言葉しか出てこないのだ。
「…はい」
「まぁとにかく座ったらどうだ。時間は大丈夫だったかね?」
「はい、シンジ君のパーソナルデータは、必要なところは全て取りましたから」
ナオコは冬月の向かいの席に座った。
「それで、どういうことなのかね」
「心配なんですよ、リツコの事が」
リツコは優秀だった。ナオコにしても冬月にしても、彼女を高く評価している。
普通はそれはいい事なのだろう。能力が素晴らしいにこしたことは無い。
しかしナオコには、寧ろそれが不安の材料になってしまっていた。
「あれは危険だからな。興味を持たせたくないわけか」
今研究しているモノの危険性を考慮すれば、それに巻き込みたくはないという思いは
それは当然のものといえる。
「リツコは優秀です。将来もしかしたら、その能力が必要になってくるということも
 …かなり可能性が高いと思います」
だからか、ナオコはリツコに研究の事は話してはいなかった。
「しかしな、それならば何もここで、一緒に暮らさなくてもいいのではないか?」
ナオコにとって、痛いところだ。
その通りで、巻き込みたくないのであれば、ここから離れた場所にやればいいだけのこと。
「確かにまだ14歳の娘を、目の届かない所にやるというのは、抵抗があるだろうが」

349 :322第壱話-帰墟-:2008/08/20(水) 05:29:10 ID:???
「ええと、説明に困るんですけど…」
なんと言ったらいいものか、とにかくリツコを側に置いていたいと
漠然ではあるが、ナオコは強く思っていた。
母親だから、の一言では、どうも自分自身ですら納得しかねていた。
深層心理に何かあるのだろうが、生憎ナオコは心理学は専門外であるし
そもそも精神科医だったとしても、自分自身のことを診療することはできない。
「しかしここでは…」
「はい、アレに近すぎます」
あちらをたてればこちらがたたず、という事だろうか。
一緒にいたいが危険に近い。危険に近いが一緒にいたい。
結局はナオコ自身のエゴなのだろうが、それは自分で理解していたとしても
まるで心臓が鎖で雁字搦めにされているような、強迫観念にも似た何かが
ナオコを支配していた。
「一度、ちゃんと話し合った方がいいのではないのかね?」
とは言ったものの今の状態では、それもうまくいかないのだろうと
冬月は内心思っていたのだが、そう言うほかはなかった。
「…はい」
とりあえずこの話は、今はここまでだろう。
「冬月先生…」
ナオコは窓の外に視線をぼんやりと眺る。
「ゲンドウさんと、ユイさん…シンジを君関わらせてしまったこと
 悔やんだりはしていないんでしょうか?」
冬月は遠い目をしながら呟くように答えた。
「生まれてくる子供を信じていると、ユイ君は言っていたな…」
「…そう、ですか」

350 :322第壱話-帰墟-:2008/08/20(水) 05:30:43 ID:???
そこは紅に染まった世界だった。
シンジはそこに立っているのか、浮遊しているのか、よくわからない不思議な感覚で
そこにいた。
-----また、ここか。
おそらく、夢の中だろう。
-----やっぱり。
前に見た風景だった。
あの天使のような翼をもった白い異形の群れが、シンジ目掛けて翔けてくる。
いつか見たそれと、同じだ。そうシンジが思った矢先のことだった。
-----…あれ?
次の瞬間総てが消え去り、シンジは真っ黒な空間に放り出されてしまった。
その空間の奥から、眉間にじりじりと刃の切っ先を押し付けられているような
まるで殺気ともいえるような、凄まじい視線が、シンジへと向けられていた。
-----な、なんだ…。
黒い空間の中、四つの小さな光がともった。
シンジを睨み付けるそれは、その視線の主の目だろうか。
-----…誰なの。
だんだんと浮かび上がってきた。
-----ねぇ、誰なの。
真っ赤な人影が。

「シンジ君!!」
「…あ、リツコさん」
シンジは眠っていた。研究所の自動販売機コーナーのベンチで。

351 :322第壱話-帰墟-:2008/08/20(水) 05:32:18 ID:???
食堂からここへとやってきたリツコは、俯いたまま苦しそうにしていたシンジに
声をかけたのだった。
「あ、じゃないわよ。苦しそうだったけど…大丈夫?」
「…そうだった?」
シンジはよく憶えていなかった。確かになにか、夢を見ていたような気がしたのだが。
「そうだったって…シンジ君、泣いてるわよ」
「え…?」
目元にそっと触れてみると、指先が濡れた。涙が流れていた。
「あれ、なんで…」
シンジは困惑している。一体、どんな夢を見ていた?怖い夢?それとも…。
「…実験の影響かしら?」
「え、影響って、どんな?データを取ってただけだよ…?」
そうは言ったものの、リツコは実験に関しては何も知らない。
ただ、シンジのこの状態は、とにかく正常であるとは思えなかった。
単に夢見が悪かっただけなのかもしれないが、先ほどの食堂でのやりとりもある。
「とにかく、ちゃんと横になって休んだほうがいいわ」
シンジをすぐそこにある仮眠室まで連れて行こうと、リツコは彼の手をとる。
この状態のシンジを、宿舎まで歩かせようとは思えなかった。
「立てる?」
「うん」
シンジは答えながらゆっくりと立ち上がった。そして二人はそこを立ち去る。
誰もいなくなったそこでは、ただ無機質に自販機が音を立てていた。

352 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 05:32:53 ID:???
キター(・∀・)

353 :322:2008/08/20(水) 05:34:17 ID:???
とりあえず第壱話終ました

354 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 05:38:58 ID:???

もう少し続きが読みたかったw

355 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 08:41:20 ID:???
別に批判するつもりはないんだけど、幻想的っていうか抽象的っていうかよくわからない話だったなぁ……

356 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 09:34:24 ID:???
まぁまだ第壱話だし

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