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もしカミーユ、Zキャラが種・種死世界に来たら10

1 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/03(月) 15:25:47 ID:???
新シャアでZガンダムについて語るならここでよろしく 
現在SS連載中! 

・投下が来たら支援は読感・編集の邪魔になるからやめよう 
・気に食わないレスに噛み付かない、噛み付く前に天体観測を 
・他のスレに迷惑をかけないようにしよう 

前スレ 
もしカミーユ、Zキャラが種・種死世界に来たら9
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1195487254/l50

まとめサイト(現在移転作業中) 
http://arte.wikiwiki.jp/ 
旧まとめサイト(現在も閲覧は可能、移転完了後閉鎖予定) 
http://wiki.livedoor.jp/arte5/d/FrontPage 

荒し、粘着すると無駄死にするだけだって、何でわからないんだ!! 
分かるはずだ、こういう奴は透明あぼーんしなきゃいけないって、みんなには分かるはずだ! 
職人さんは力なんだ、このスレを支える力なんだ、 
それをこうも簡単に荒らしで失っていくのは、それは、それは酷いことなんだよ! 
荒らしはいつも傍観者でスレを弄ぶだけの人ではないですか 
その傲慢はスレの住人を家畜にすることだ 
それは一番、人間が人間にやっちゃあいけないことなんだ! 

毎週土曜日はage進行でお願いします

2 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/03(月) 15:29:05 ID:???
>1乙
2ゲト

3 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/03(月) 19:05:30 ID:???
>1乙

にしても本当に良く落ちるな

4 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/03(月) 22:16:45 ID:???
全くだ。人生初の2ゲトも有難くない。
保守

5 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/03(月) 22:17:48 ID:N4BSiGdM
またかよ



6 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/03(月) 22:38:02 ID:???
土曜は要注意

7 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/03(月) 23:09:06 ID:???
土曜は完全にage進行でいったほうがいいだろうな


8 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/04(火) 00:00:55 ID:???
スレの位置ではないような気も……
レス間隔もありそう

9 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/04(火) 01:23:05 ID:???
落ちててびっくりした。

スレ立て乙。

10 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/04(火) 07:01:43 ID:???
落ちすぎ〜。
さぁさぁ、カミーユ氏投稿をどうぞm(_~_)m

11 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/04(火) 08:57:44 ID:dhFa63z8
保守上げ

12 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/04(火) 21:11:28 ID:???
保守

13 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/04(火) 21:19:12 ID:qs0ZGf56
鯖移動か?
なんか一覧がひどい事になってるんだが…

14 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/04(火) 22:43:56 ID:???
 『ジブラルタル基地』

 イベリア半島南端、海峡を挟んですぐにアフリカ大陸を臨めるそこに、ジブラルタルはある。地球におけるザフト最大のその基地は、様々な施設が立ち並び、戦いで疲弊した兵士達の唯一の安らぎの場としても機能している。
 ファントム・ペインと交戦しながら地中海を航海してきたミネルバとアークエンジェルは、何度も足止めを食らいながらもようやく辿り着くことが出来た。
激しい戦いの繰り返しは新造艦であるミネルバを歴戦の戦艦たらしめる外観に変貌させ、不沈艦と謳われたアークエンジェルもまた疲労していた。

 そして、それは両艦に搭乗しているクルーも同様だった。ジブラルタル基地への入港手続きが終わり、上陸許可が下ると、各々に体を休めようと休暇に入る。
 レクリエーションに興じる者、純粋に体を休めようとする者などそれぞれだが、エマとカツは、レコアが収容されている病院へと向かった。特にエマは、レコアに危機を救ってもらったという恩があるだけに、彼女の容態が心配だった。
その手には、お見舞いの品として花束が握られている。

「大きな病院ですねぇ」

 ジブラルタル基地は広い。移動用のエレカを借り、病院のエントランスの前に立つと、カツが感嘆の声を漏らした。基地の規模に見合った大きさの建築物に、エマも同意して顔を縦に振った。
 中に入ると、流石にそれなりの広さを誇っており、綺麗に整われた内装が清潔感を一層際立たせた。白を基調とした壁は病院の清潔感を思わせ、充実した設備が感心を誘う。

「ミネルバの医務室も大したものだと思ったけど、やっぱり本場は違うんだな」
「658号室よ、カツ」

 カツが思わずその景色に目を奪われていると、受付でレコアの収容されている病室の番号を聞いたエマが戻ってきた。彼女は流石で、カツの様におのぼりさんにならずに落ち着いた物腰だ。カツは思わず詰襟を正し、田舎者丸出しのような間抜けな顔を引き締めた。

「中尉は、どう思います?」
「何が?」
「これだけの規模を誇るジブラルタルですよ? それで連合軍に負けることなどありえるのでしょうか? いくらシロッコが連合に居るからって、これだけ充実していたら負ける気がしませんね」

 歩きがてら、カツはエマに正直な感想を打ち明けた。尤も、カツがそう感じる気持ちはエマにも分かる。エゥーゴの資金力は殆どがスポンサーに賄われている状態であったし、連邦軍を母体にしているティターンズに比べれば雲泥の差があった。
いつもギリギリの状態であったから、エゥーゴのMSはティターンズのMSに比べてバリエーションが遥かに少なかった。アナハイム・エレクトロニクスという巨大企業がバックについていたとはいえ、ティターンズに対抗できたのは、もしかしたら奇跡だったのかもしれない。

「そりゃあ、私自身もこれだけのものを見せられれば感心せざるを得ませんけどね――」

 勿論、エマもそれは実感していた。エゥーゴは艦隊の規模なども何とか対抗できる程度であったし、殆どの作戦は後手に回らざるを得なかった。
しかし、元ティターンズのエマにしてみれば、どれだけの戦力を持っていたとしても、それが戦争の決定打になるとは思えなかった。
 かつて、ジオン公国は、連邦国の僅か5分の1しかない国力でありながら、MSを開発し、それによって快進撃を続けた歴史がある。結局戦局の膠着と、連邦軍のV作戦によって敗北を喫したが、一時は降伏勧告を行えるまでに優勢に立っていたのだ。
 その歴史を考えれば、いくらザフトの戦力が充実していようとも、油断など出来るはずもない。加えてシロッコが核融合炉搭載型のMSを連合軍に提供しているのだ。カツの様に驕っていれば、足元をすくわれるのは目に見えている。

「あなただって言ってたじゃない? これ以上はムラサメでは敵のMSに対抗できないって」
「そうですけど――カミーユが持ってきたMk-Uを参考にした新型の最終調整が進んでいるって話もあるんです。対抗できますよ」

 カツの良くないところは、直ぐに増長しやすいというところだ。自分の感性で話を進めるから、他人の忠告も聞いた振りだけしていることもある。エマは、そんな彼の若さゆえの未熟さに振り回されてばかりだ。

15 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/04(火) 22:45:18 ID:???
 やがて、エレベーターに乗り、受付で聞いたとおりの部屋の前まで辿り着く。ドアのブザーを鳴らすと、インター・ホンから返事が返ってきた。開くと、そこにはベッドに上半身を起こしてこちらを見ているレコアが居た。
体の其処彼処(そこかしこ)に包帯を巻かれ、シーツの上に乗せている左腕にはギプスも巻かれている。軽症で済んだエマと比べるまでもなく、痛々しい。

「いらっしゃい、あの後も大変だったみたいじゃない?」
「レコア少尉こそ、怪我の具合は大丈夫なのですか?」

 こうして会話をするのも、彼女が意識を失って以来だ。カツは、意外と元気そうなレコアに向かって労いの言葉を掛けた。そのまま花束を花瓶に活け、見栄え良く整える。
 カツの後ろに半歩ほど下がって、少しバツの悪そうな面持ちで覗き込むエマ。それにレコアが気付くと、動く右手で手を振ってくれた。少し表情を和らげ、エマはカツの前に出て、ベッドの傍らに歩みを進めた。

「レコア、この間は――」
「気にしないで、エマさん。私は、ああでもしなければ気が済まなかったのだから――平手打ち一発で許してもらおうなんて考えないわ」
「でも……」

 その時、またもブザーが鳴り響いた。レコアが前のめりになってインター・ホンに手を伸ばそうとすると、カツが気遣って替わりにマイクを取った。

「いいですよ、どうぞ」
「誰なの?」
「キラさんです」

 エマが訊ねると、開いたドアからキラが入ってきた。レコアが一言“いらっしゃい”と声を掛けると、少し照れたように顔を俯け、手に持ったりんごのパックを差し出した。

「これ、よかったら食べてください。この時期はちょうどおいしい季節だって聞いたものですから――」
「ありがとう、キラ君」

 レコアが微笑みかけると、キラはりんごのパックを直ぐそばのテーブルの上に置いた。

「それで、レコアさんの怪我の状態はどうなんですか?」

 キラは改めてレコアの様子を観察すると、かなり大げさに包帯が巻かれているように見えた。やはり、その通りに重症だったのだろうか。

「思ったよりも外傷は少なかったみたいね。こうして体を起こすことも出来るのだし」

 エマも心配していた分、レコアの様子が気になっていた。何と言っても、彼女はここに搬送されるまで意識不明の状態だったらしいのだ。それが、こうして普通に話が出来る状態にまで回復できたのは奇跡なのかもしれない。
 レコア自身もそれは承知していることらしく、神妙な面持ちで口を開いた。

「意識が戻ったのは、昨日のことよ。こんなに長い間眠っていたのなんて始めてだわ」
「お寝坊さんなのね?」
「本当だわ」

 エマに笑いかけられ、つられて少し笑った。しかし、すぐに表情を戻して、続ける。

「それで、その間に何かの夢を見ていたような気がするの」
「夢…ですか。どんな?」
「わからない…起きたら、全て忘れていたわ。…でもね、中尉。この世界に私達が居るのは、偶然ではないのかもしれない。誰かの悪意を感じるのよ」
「悪意?」

「それって、シロッコのことじゃないんですか?」

16 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/04(火) 22:46:18 ID:???
 話を聞いていたカツが、会話に割り込んできた。彼の言うことも、何となく分かる。シロッコは、純粋に人類の未来を木星圏で考えていたが、それを間違っていると思っているエマ達にしてみれば、悪意に感じるだろう。
 その感じ方をする彼らに共感するように、キラも同じ感覚を月でのジ・Oとの戦いで抱いていた。

「シロッコという人は、月でジ・OというMSと戦ったときに知りました。あの背筋が凍りつくような声は、忘れられません……」

 フリーダムを駆りながらも、ジ・Oに乗ったシロッコには手も足も出なかった。それは、純粋な力の差だけではなかったように今は思える。
 ニュータイプとして、物理的と呼べるほどに強力なプレッシャーを放つシロッコは、キラの正常な神経を刺激した。それが戸惑いとなり、パニックに陥ったキラは、何も出来なかった。カミーユとロザミアの助けがなければ、きっと彼はあの場で死んでいただろう。

「…きっと、シロッコの黒い声に引き摺られたのよ。私達も、ティターンズの連中もね」

 シロッコに近い位置に居たレコアだからこそ実感できる感覚。何でもこなせる天才で、高いカリスマ性をも併せ持つ彼に引き込まれたのではないだろうか。それだけの吸引力を持っているような気がした。
 ただ、何故この世界をシロッコが選んだのか――もしかしたら、人種抗争の起きている世界だから、という単純な理由なのかもしれないが、良く分からないのが正直なところだ。

「ところで、カミーユは居ないんですか?」

 ふと、カツが気付いた。彼のことだから、レコアの傍にはついているものだと思っていた。ガンダムMk-Uの解析作業も、ザフトの研究員と協力すればそれほど時間の掛かる作業でもないはずだ。しかし、彼が訪れていた形跡は全くない。花瓶も、今日始めて使われたようだ。
 怪訝そうに首を振るカツに向かってレコアが説明をし始めた。

「聞くところによれば、カミーユはロザミィと一緒にオーブに向かって発った後よ。オーブ政府から、Mk-Uの移送要請が急ぎであったみたい」
「アークエンジェルの降下地点がずれて、大幅に計画が遅れていますからね。カガリも焦っているのかも知れません」

 大気圏突入前に受けた襲撃で、アークエンジェルはダーダネルス海峡に降下せざるを得なかった。そのせいで、本来ならオーブに直接降りるはずであったアークエンジェルが、ジブラルタル基地で修理を受ける羽目になった。
勿論、当初予定していたガンダムMk-Uの解析研究も大幅に遅れ、連合軍の開発研究に大きな溝を空けられる事になってしまった。

「今にして思えば、大気圏突入前の襲撃は、こうやって僕達の行動を遅らせるためのものだったのかもしれません」
「オーブのカガリ代表は、あなたのお姉さんに当たるらしいけど、正直、彼女が慌てふためく様が目に浮かぶわね」
「カガリ…まだ慣れていませんから」

 そういえば、カガリのことも心配だ。バルトフェルドが残ってくれたとはいえ、彼ではセイラン家を常にマークしていることなど難しいはずだ。恐らく、ウナトかユウナのどちらかがカガリの傍に常に寄り添っているはず。
そうとなれば、未熟な彼女では彼らの野望に抗う術がないだろう。それは、セイランのオーブ乗っ取りを意味する。
 本当なら、今すぐにでもアスランを連れてオーブへ帰りたい。しかし、彼はザフトで戦うことを決意し、それが彼女の為になると信じている。それを、自分の意思だけを押し通して彼に強制するわけにも行かない。
 とにかく今は、アークエンジェルの修理が早く終わって、一刻も早くオーブへ戻って彼女を安心させてあげなければならない。この苦境を耐え凌げば、きっと新たな局面が見えてくるはずだ。キラは、そう自分に納得させた。



17 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/04(火) 22:47:26 ID:???
 暇を持て余す。日がな一日ベッドの上に拘束され、何の面白みもない部屋の中だけが今の全てだ。一日に2回ほど差し入れられる食事だけが、忘れかけていた時間感覚を思い出させてくれる。
 アークエンジェルに監禁されているネオは、そんな何もすることもない退屈な時間を強いられていた。たまにやってくる尋問だけが、彼の欲求不満を多少なりとも和らげてくれる。そう、感じるようになってしまった。
 こうしてジブラルタル基地に移送される事もなくアークエンジェルに収監されているのは、表向きには収監場所が無いからだと聞かされている。バカにしているのか。最大規模を誇るこの基地で、そんな理屈が通るはずが無い。
恐らく、ネオが連合軍と知って、汚物を見るような目で見ているのだろう。そういうあからさまな卑下が、ネオには簡単に推察できる。

「チッ!」

 一昨日は、食事以外に何もする事がなかった。昨日は、名も知らぬ兵士がドアの隙間から覗き込んでいただけだった。そいつは明らかにコーディネイターで、ナチュラルである自分をこれ見よがしに見下したような目で見ていた。
 下らない。単なる興味本位で、まるで動物園の檻の中を鑑賞するかの様なアホ面が腹立たしかった。バカにした態度を取っていたので、そいつの顔を睨んで唾を吐きかけてやったら、中に入ってきて思いっきり殴られた。
こちらは大佐だと言っているのに、聞きもしない。コーディネイターにとって、ナチュラルと結んだ戦時条約など何の価値も持たないものらしい。何発か殴られた後、最後に唾を顔に吐きかけられた。流石に頭にきたが、抵抗する術がないので放っておいた。
すると、そいつは満足そうに卑下た笑いを顔に浮かべると、もう一度腹を蹴って去っていった。
 何処が進化した人類なのか、さっぱり分からない。確かに肉体的には遺伝子をいじった改造人間の方が優れているだろう。しかし、いくら肉体が優れていようとも、あのようなバカが蔓延(はびこ)っているのなら、ナチュラルもコーディネイターも何も変わらない。
それで自らを優良人種などと自称して嘯(うそぶ)くのだから、笑い話にもならない。ナチュラルにもバカな人間は居るが、優越感を抱いて驕っている分だけ、コーディネイターの方が性質が悪いと思う。

 そんな事を考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。今日もバカなコーディネイターがアホ面を下げてやってきたのだろう。しかし、別段何もすることも出来ないのなら、そんな彼等の醜悪な趣味に付き合ってもいいとさえ思った。
 何も応えないで居ると、もう一度ノックが響いた。バカにしているのか、確認など取らずにさっさと入ってくればいいものを――

「…どうぞ。こっちの都合など、そっちには関係ないんだろ」

 ドアの外で、一瞬誰かが怯んだ様な気がした。何故かは分からない。いつも通りのバカコーディネイターなら、ナチュラルである自分に怯むことなど有り得ないはずだ。
 そう思っていたら、入ってきたのはアークエンジェルの艦長を自称している女だった。成る程、最初に顔を合わせた時に泣いていた情景を鑑みれば、あのような態度も納得がいく。
 ラミアスは、おずおずとネオの様子を覗いながら部屋に入ってきた。

「私の暇つぶしの相手でもしに来てくれたのかい?」

 話し相手がやってきてくれたのはいいが、こちらが問い掛けてもラミアスは応える気配がない。何をしに来たというのか。彼女も、この間のお返しに物珍しげな捕虜としての自分を鑑賞しに来たのだろうか。
もし、そうであるならば、今すぐにでも拘束具を引きちぎってこの女を犯してやろうか。尤もそんな超人技が普通のナチュラルである彼に出来るはずもないのだが。ネオは、そんな自分自身が幾分か悲しかった。

「フン、この間は私を誰かと勘違いして、今回はだんまりか。ウザイ女だな」

 せめてもと思い、言葉責めを試みる。この行為自体がバカらしいが、拘束されている側が責めるのも一種趣があるのではないかと考えた。

「そら、何か言ってみろよ? この間のようにブスの顔をして、私を楽しませてみろ」

 バカらしいというよりもバカだ。所詮は囚われの身。こんな拘束された状態で罵ってみても、負け犬の遠吠えにしかならない。少し考えれば分かることだったが、実際に試してみた自分は単なる変態だろう。
 眉を顰めて自省していると、ラミアスは手に持った救急箱をテーブルの上に置き、そこから湿布薬とガーゼを取り出した。何をしに来たのやら、まだこの女で自分を抱きこめると思っているのだろうか。一つ鼻で笑ってやると、ラミアスは腫れているネオの頬に湿布を貼った。

18 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/04(火) 22:49:00 ID:???
「何のつもりだ?」

 応えない。そして、明らかにこちらを蔑視している。行動と表情の矛盾に、ラミアスの中の葛藤を見たような気がした。微かに刺激される彼女の顔。頭の中と、何故か下の方が反応している。やはり、自分は単なる変態だったのだろうか。
これまで生きてきて、よもや自分にマゾ素質があるとは思わなかった。ただ、こんな状態で下らない新たな自分を発見したところで、唯単に虚しいだけだ。
 やがて一通り処置が済むと、ネオはラミアスの顔をじっと見つめた。自分の好みは、こんな女性だったのだろうか。

「…手を上げてください。服、脱がしますから」

 好きモノだったか。やっと口を利いてくれたかと思えば、何の前触れも無くお誘いだ。こちらがそういう気分になりかけているのを察して、気を利かせてくれているのだろうか。更に、妄想が拡大していく。
 先程から投げかける軽蔑の視線は、自分よりも先にマゾ素質を彼女が見抜いていたからだろうか。もし、そうであるならば、手当てをしてくれながらこちらの欲求不満を満たしてくれていたことになる。…いい女じゃないか。
 ネオはおもむろに体を起こし、両手をあげた。少し、顔が緩んでいるかもしれない。

「何をそんなに嬉しそうな顔をしているのです?」
「え? だって、してくれるんだろ?」

 瞬間、ラミアスの顔が真っ赤に染まった。戦闘態勢に入ったのか、かなりやる気に見える。彼女には、フェイズ・シフト装甲が装備されているらしい。そんなバカな事を考えるほど、恥じらいの仕草が可愛らしく思えた。
 そこでネオは確信を持つ。自分は、こういうダイナマイト・ボディの童顔な女が好みなのだろう。心の中で、先程はブスといって済まない、とこっそり謝った。

「この状況で、よくもそんな事が言えるものですね?」
「違うのか? こっちは、ずっと繋がれていてかなり溜まっているんだけどな」

 睨み付けるラミアスの顔は、それでも尚、赤い。それでも、カマトトぶって知らぬ存ぜぬを繰り返さない分だけは大人のようだ。しっかりと、こちらの要求を理解していると見える。
 しかし、ラミアスにして見ればネオに対する印象は最悪だ。昔の男と瓜二つの外見をしているくせに、口から出てくる言葉は似ても似つかない。不平があれば文句を口にし、女を見るとなれば下半身の世話をしろだ。ふざけているようにしか見えない。
ムウは、軽口を叩く男であったが、人を傷つけるような心無い言葉を口にするような男性ではなかった。この男は、間違いなくムウとは別人だ。
 ただ、アスランから聞いた話によれば、彼は自分の部下であるエクステンデッドにはかなり思い入れがあるらしい。連合の作戦に対しては警戒しなければならないが、ネオの人となりを知った上で臨みたいところだ。
 ネオはバンザイをしたままこちらを見上げ、期待の眼差しを送ってくる。その視線を撥ね退け、シャツを施錠されている手首の辺りまで脱がせると、救急箱から新たな湿布薬を取り出した。
 改めてネオの体を見てみると、そこには殴られた痕とは別に、顔にある傷と同じように無数の傷が刻まれていた。深い傷、浅い傷、様々。思わず息を呑んだ。

「お前が私の治療をしに来てくれた心優しい女だって事は分かったから、早く貼ってくれ。こんな格好をさせられていたら、余計に溜まるだろ」
「黙ってください」

 ぴしゃりとネオの口を封じると、ラミアスはそっと痣(あざ)になっている箇所に薬を塗り、その上から湿布薬を貼った。冷やりとしたその感触に、一瞬ネオが体を硬直させ、呻き声を上げた。

「変な声を出さないで」

 突き刺すように言うと、仕方ないだろといった目でこちらを睨んでくる。連合軍の大佐にまで登りつめた男が、何を情けないことを言っているのやら。一枚ずつ丁寧に貼っていき、最後の一枚を貼り終えると軽く背中を平手で叩いた。

「うごッ!」
「終わりです」

 ラミアスの一撃は、ちょうど痣になっている部分にクリーン・ヒットした。わざとだ。それを知ってか知らずか、ネオは恨みがましい目で険しい視線を向けてくる。

19 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/04(火) 22:50:09 ID:???
「――ッたく! 凶暴な女だ」
「あなたがそうさせるんです」

 2人は顔は背けたまま、目でお互いを睨み合う。共に、印象は最悪だ。片や昔の男と同じ顔であるのが気に食わないラミアス。片や期待を裏切った体だけいい女。
 ただ、ネオには思うことがある。そもそも、ラミアスは何故嫌いなはずの自分の手当てをしに来てくれたのだろうか。恐らく、誰かから自分が暴行を受けたことを聞いたのだろうが、自分の事が嫌いなのなら、ざまあ見ろとほくそ笑んでいればいいのだ。
それが、どうしてあんな軽蔑の視線を向けながらも手当てをしてくれるのか、甚だ疑問だ。
 やがてラミアスがこちらへの視線を外す。その時、ネオの口が勝手に動いた。

「なぁ、どうして私にこんなことをしてくれたんだ?」

 何故かは知らない。どうでもいいことのはずなのに、ネオの口が勝手に言葉を紡いだ。それは、何処から出てきた感情なのか。本当に自分に封印されている記憶があるのなら、そこが出所なのだろう。しかし、それを確認する術を、ネオは持っていない。
 問い掛けられたラミアスは、少し動揺していた。軍人としては不自然にちょろいな、と思いつつも、それが自分に向けられている事と気付くと、急に意識の奥底がくすぐられているような感覚に陥った。いつの頃か、彼女と甘い時を過ごしたような気がする。
 ラミアスは少しの間閉口した後、ゆっくりと語りだした。

「――似ているから……」
「え?」
「昔、好きだった人に……そっくりなのよ、あなたは……」

 そういえば、彼女も一緒に居た少年も、自分を誰かと勘違いしていた。確か、ムウとかいう名前だったが――そんな名前を名乗っていた記憶など一切無い。自分は生まれてから、ずっとネオ=ロアノークだ。
体中に刻まれた傷も、2年前の戦争の時についた、謂わば名誉の負傷の痕である。
 記憶には、絶対の自信を持っている――筈だった。ついこの間、自分と感覚を共有する謎の少年に撃墜されるまでは。

「だからって――」

「マリュー=ラミアス艦長、修理班から顔を出して欲しいと――」

 その時唐突に扉が開き、シンが入ってきた。熱で魘(うな)されていた彼も、今ではもう大丈夫のようだ。傍らにはルナマリアが寄り添い、そして、その後ろからレイが顔を覗かせた。
 その顔を見たとき、ネオの頭の中がまた沸々と熱を帯びるのを感じる。一体、あのレイという少年は自分の何なのだろうか。レイは一寸睨むと、去っていった。

「お取り込み中でしたか?」
「い…いえ、いいの。私を呼んでいるのね? …行くわ」

 ルナマリアからそう聞かれると、動揺を隠し切れないのか言葉を詰まらせてラミアスはそそくさと出て行った。その後ろ姿を見て、ルナマリアは怪訝そうに見送っていた。
 そして、シンはベッドの上でふてぶてしく座るネオに向かって歩みを進める。相変わらず口をへの字に曲げ、小指で耳の穴をほじくっていた。
 シンには、ネオに聞きたい事がある。カミーユは、エクステンデッドは強制的に戦わされていると言っていた。それを指揮していたのは、目の前に居る男。アスランは、彼がエクステンデッドである3人を大切に思っていると言っていた。
もし、アスランに告げた連合軍の作戦が現実としてこれから起こる事ならば、その作戦にはエクステンデッドも出てくるだろう。その時、彼等と戦うならば、ネオの本心を聞いておく必要性を感じていた。

「あんた、ファントム・ペインとかいうふざけた部隊の指揮官だったんだよな?」
「ご挨拶だな? それがどうした」

 戦うことを決めたシンには、確認しておきたい事がある。それは、自分の戦いが何を産むことになるかという事だ。もしかしたら、自分が悲劇を産むことになるかも知れない。その裏側で、救われる人が出てくるかもしれない。
そして、ルナマリアはこれから起こる事を決め付けてはいけないと言っていた。
だからこそ、シンはネオの本心を聞くことで、これから先のファントム・ペインとの戦いに於いての身の処し方を決めなければならない。本当の事を知る事が、これから戦っていく上での自分の使命だと感じていた。

20 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/04(火) 22:51:28 ID:???
「あんたの、本心が聞きたい。もし、本当にあんたの言ったような連合の作戦があるってんなら、俺はエクステンデッドの奴等とも雌雄を決しなきゃいけない。その前に、そいつらがどんな奴なのかを知っておきたいんだ」
「知ってどうする? お前達は、我々の作戦の妨害のことだけを考えていればいいんじゃないのか? 私のスティング達に対する気持ちを知ったところで、何になるというのだ?」

 アスランはナチュラルを全く信用していなかった。生粋のプラント生まれで、血のバレンタイン事件の被害者でもある彼には、ネオの言葉などどれほどの価値も無かったのかもしれない。
ネオにはその感覚は分からないが、多分コーディネイターの中に残るナチュラル憎悪の感情は、そこからずっと尾を引いているのだろう。
 しかし、シンは少し環境が違うコーディネイターだった。今はプラント国籍を取得し、ザフトに従軍しているが、彼は元はオーブの出身だ。不幸な事件で身寄りを失くす事となったが、ナチュラルとコーディネイターの融和が最も進んでいた国で過ごしていたのだ。

「あんたは気付いているのかどうか知らないけど、エクステンデッドというのは戦うために強化された人達の事だろ? それを“使う”のが、どういう気分なのかって、聞いているんだ」
「少年が、尋問官の真似事か。舐められたものだな、私も」
「――んだと!」

「ちょっと、やめなさいよシン!」

 舐められているのはシンの方だ。それを分かったシンは、拳を握り締めてネオに殴りかかろうとする。しかし、それをルナマリアが慌てて制した。シンがルナマリアの顔に振り向くと、そこにはたしなめる様にして眉を顰める彼女の表情があった。
直ぐに頭に血の昇るシンには、こうして逐一感情の制御をしてあげなければならない。
 シンは気持ちを落ち着かせると、一度顔を背けて歯噛みした。

「…俺は、戦いを唯の殺し合いにしたくない。戦争は殺し合いの場かもしれないけど、もしも、救える命があるのなら、その為に俺は戦いたい」
「フン、思春期の少年が考えそうな事だ。安っぽいヒューマニズムをこれ見よがしに掲げ、場の空気も読めないと見た」
「あんただって、そんな頃があっただろ」

 少年の目は、アスランのものとも違う。生粋のプラント育ちでないにしても、彼もコーディネイター。程度に差はあれど、ナチュラルに対する偏見や憎しみは同じだろう。それなのに、そういったものとは関係ない、純粋な何かを感じた。

「過ぎ去った日の事だ。大人になれば、それがどれほど甘いことだったのかが分かる。少年、軍に籍を置いているということは、近い内に現実を知る事になるぞ」

 理想をいつまでも語れるほど、現実というものは甘美ではない。それは、スティング等エクステンデッドを戦闘員として使わざるを得なかった現実を知っているからこそネオは言い切れる。どんなに理想を渇望しても、叶わない事もあるのだ。
少年は、若いが故にそのことを知らないように見える。その内、自分の力ではどうにも出来ない出来事が起これば、自らの無力と現実の厳しさを知る事になるだろう。戦争をしているのなら、なお更その時期は早く訪れる。
 だが、シンは既にどうにも出来なかった現実を知っている。しかも、それが自分の無謀のせいで引き起こされた悲劇であったこと、そして、そのせいで自分を見失いかけた事を。だからこそ、ネオの言う事に耳を貸してはいけない。
彼の言葉に同意してしまえば、自分は何も出来ない人になってしまう。それは、戦うと決めた覚悟に対する裏切りだ。促してくれたルナマリアにも申し訳ない。

「そんなもの…なんだって言うんだ? 戦場で多くの人の生き死にを体験してきて、現実が優しくないことくらい俺にはとっくに分かっている! けど、そこで戦うのを止めちまったら、俺は何のために生きているんだ? あんたは、ただ現実に負けて、諦めちまってるだけだろ!
そんな負け犬の理屈…誰が認めるものかよ!」
「気合だけではどうにもならん事もある。それを知った振りをして、息巻いているお前のような少年に、それこそ何が出来る? お前が言っているのは、往生際の悪い愚者の言だ。その頭の悪さは、周囲に居る人間を不幸にするだけだぞ」
「それは、あんたの方だ! 諦めることで、周囲に迷惑を掛けることだってあるんだぞ! それを分からないで、あんたは――!」
「私は、最善の努力はしてきたつもりだ。スティング達をファントム・ペインの戦力として使うことで、デストロイ無しでもやれる事を常に示してきた。だが、今の私はこうだ。もう、連合上層部を止める手立ては無い」

21 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/04(火) 22:52:29 ID:???
 施錠されている両手を上げ、自らの醜態を曝け出す。こんな状況にならなければ、何をしてでもスティング達の起用は阻止しようとした。しかし、今となってはそんな意欲も何の意味も持たない。
新任の指揮官は、恐らく上層部からの要望に応えて3人の内の誰かをデストロイのパイロットとして献上するだろう。そうさせたくないのは、個人的に情を傾けているネオの我侭だ。
 ただ、この少年のように情熱を傾けられるだけの若さを持っていられたのならば、どんなに良かった事か。諦めを知らない心のままでいられれば、このような捕まっている状態でも何とかしようと足掻く事もできたはずだ。
しかし、それをしなかったのは、既に自分が諦めることを知ったどうしようもない大人になってしまったという事。スティング達が何とか無事に作戦を乗り切れることを祈ることしかできない。

「あんた、ステラとかって人達の事を大切に思ってんだろ? だったら、俺が何とかしてやるから、本当の気持ちを言えよ!」
「ちょっと、シン! そんなこと言って――」

 強引に聞き出そうとするシンの勝手な言葉に、会話を聞いていたルナマリアは驚愕した。彼が言っているのは、敵であるエクステンデッドを救おうということだ。しかも、感情に任せて自分が何を言っているのかも分かっていない様に見える。
そんな事を約束してしまっても、誰も納得しないだろう。相手は、アーモリー・ワンを強襲し、新型のGを強奪していった犯人なのだ。それを、ザフトが許すはずがない。
 ただ、一方でシンの覇気を感じたルナマリアは嬉しくもあった。ちょっと前までは戦いに疑問を抱いていた彼が、こうして戦いを前向きに考えられるようになってきている。それは、慰めた彼女にしてみれば嬉しい変化だった。
思い出すと恥ずかしい記憶だが、慰めてあげた甲斐があったと思う。
 そんな事を考えていたら、制しようとシンの肩に伸ばしかけた手を自然と引っ込めていた。彼の横顔を見ると、そこには純粋に固い意志を持つ表情があった。

「…お前などに何ができる?」

 詰め寄るシンにも、ネオは横目で睨むだけで応えようとしない。しかし、その内では葛藤を呼んでいた。

「やってやるさ! エクステンデッドは無理矢理に戦わせられていて、挙句には兵器の部品みたいにされちまうんだろ? 隊長がいっていた!」
「そうだ。そして、デストロイに乗せられれば、虐殺の首犯に担がされる事になる。戦うためだけの存在にされて、その上そのような罪を着せなければならない。私は、それを止めたかった。しかし、それはもう出来ない。運命の歯車は、もう回り始めているんだ」
「だったら! …今からでも遅くない。どんな事になろうとも、俺がデストロイって奴を止めてきてやるって言ってんだ!」

 もしかしたら、自分は少年に嫉妬しているのかもしれない。そう思えた。こうして情熱的になれるのは、少年が自分が持ち得ない強い意志を持っているからだ。それほどの意志を、自分はスティング達に傾けてやれただろうか。
 違っていたかもしれない。3人を如何に思っていようとも、こうして拘束され、足掻きもしない自分は一過性の情しか傾けてやれなかったのだ。それは、酷く無責任で、記憶の改竄を繰り返した自分が情けない。
どの道デストロイに乗せられる運命であったのならば、最初から小賢しい事を考えるべきではなかった――

「何故、そんな事を言えるのだ? お前は、敵である私の願いを叶えると言っているのだぞ? 軍に縛られているお前が、そんな事を言えるわけがないだろう?」
「けど、エクステンデッドってのは本当は戦わなくてもよかった人達かもしれないんだろ? そんな人が戦いを強制されて、いい様に利用されるなんて間違っている! あんたはそう思うから、止めようとしてたんじゃないのか!」

 ――そうではない。本当に考えなければいけないのは、3人をどうにかして連合の鎖から解き放ってやる事だ。その為に、自分は今まで色々講じてきたはずだ。それなのに、その気持ちを最初から無かった事にしようと考えるのは、底辺の人間が考えることだ。
 以前、アスランにデストロイの事を話したときは、彼は自分の話に殆ど興味を持っていなかった。報告はすると言っていたが、果たしてどの程度信じていただろうか。そういう態度を知っていれば、コーディネイターの言葉など一切信じる気にはなれない。
そう思っていたが、この少年の態度には、疑問が残る。アスランとは違い、どうにかして自分の本心を引っ張り出そうとしてくる。そして、その言葉の端々に刺激される自分がいることに気付いた。
 もう一度、同じ話をしてもいいものだろうか。

22 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/04(火) 22:53:49 ID:???
「俺は戦争で家族を亡くして、仲が良かった子を守ることが出来なかった。でも、俺は諦めたくない。戦うことで救われる人もいるんだって事を、自分に証明したいんだ」

 多分、今の言葉が少年の本音だろう。彼は、エクステンデッドを救いたいから自分に掛け合ってきたのではない。ただ、彼の戦いの拠り所を見つけたいが為だ。
 一瞬、自分勝手だと思った。結局は自分の為に偽善ぶりたいのだと、そう思った。しかし、本質は違うところにある気がする。少年の言葉は、自分に投げかけられているように思えた。
諦めては駄目なのだと、自分が出来ないのなら、他の人に任せてもいいのだと言っている気がする。少年の幼い顔を見れば、誇大妄想かもしれないが。
 ただ、決心はついた。どうせ何も出来ないのなら、僅かな希望を託してこの少年に任せてみようと思う。それで上手くいけば、万々歳だ。
 ネオは少しの間目を閉じて考えた後、黙ってこちらの反応を覗っているシンに視線を向け、口を開いた。

「少年、名は?」

 急に尋ねられて、シンは少しだけ体を強張らせた。雰囲気の変わったネオに、これから告げられる言葉の意味をおぼろげながら悟ったのだ。そして、それが困難極まりないということを、直感で感じ取っているように見える。
 仕方ないことかもしれない。勢いとはいえ、大層な事を口にしたのだ。こうして話が合意に進めば、彼にも責任が浮かんでくる。その重さに怯んでも、不思議ではない。
 しかし、彼はそこで引かなかった。強張った表情ながらも、瞳の中には決心が込められている。紅い、情熱的な瞳だ。

「シン=アスカ」
「フン、東洋の島国の名だな。まぁいい」

 特徴的な響きは、ニホンとか言う国でよく聞くものだ。恐らく、それに近い言語文化を持つ、オーブの出身かもしれない。オーブの出身であるならば、彼が斯様(かよう)な精神を持っているのも不思議ではないかもしれない。あそこは、そういう国だと記憶している。
 ネオはベッドから立ち上がり、じっとシンの顔を見つめた。

「……シン、私はデストロイを使用した連合の作戦を阻止したい。何故ならば、そのパイロットにスティング達が候補に上がっているからだ。私は、彼らの事が好きなのだ」

 静かな語り口に、シンは見つめてくるネオの視線から目を逸らさずに聞いていた。言葉の雰囲気から、それが彼の本音だという思いが伝わってくる。

「しかし、私は今お前たちに囚われている状態で、動くことが出来ない。尤も、ここから逃げ出したいというのが本音だが、それをお前たちに頼むほど落ちぶれたつもりはない」

 ルナマリアもそんな2人を見守るように聞き入っていた。こうしてこの場に居合わせたのも何かの縁。シンの力になれるのなら、同じ重圧を背負おうと思っていた。

「だが、その上でお前たちに頼みたい。3人を――スティングとアウルとステラを連合の檻から出してやってくれ。あいつらは何も分からないまま施設に入れられ、戦いを強制されるエクステンデッドにされちまった。
そんなあいつらが、このままずっと連合に縛られる理屈は無いんだ」

 敵に頼み事をするのが、軍人としてどれだけ恥ずかしいことかは分かっている。それでもネオは、プライドをかなぐり捨て、シンに頼む。3人の人生に比べれば、自分のプライドなどあって無い様なものだ。

「頼む、あいつ等を…戦いの呪縛から解き放ってやってくれ――」

 体中が打撲で痛むはずである。しかし、ネオはその痛みを堪えて静かに頭を下げた。
 先程まで何を言っても憎まれ口しか叩かなかった男が、自身よりも遥かに年下の少年に頭を垂れている。並大抵の覚悟ではないだろう。特に、軍の大佐としてやってきた男が、赤服を着ているとはいえ、遥かに格下である少年に頭を下げているのだ。
普通なら、屈辱で体を震わせるものだ。
 しかし、ネオにはそれが無い。その意味するところは、彼がシンを信用したからだ。そして、それだけの責任の重さに耐えられると思ったからだ。
 その姿を見つめるシンは、事の重大さに気付いている。ただ、その反対に殆ど知らないであろう自分に託してくれた事が純粋に嬉しかった。自分には、まだ何かが出来る。この気持ちは理屈ではない。
 シンは口を真一文字に縛り、顎に皺を寄せた。



23 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/04(火) 22:55:23 ID:???
「……決まりだな」

 別室の監視モニターが並ぶ部屋。デュランダルがその薄暗い部屋の中で椅子に腰掛け、頬杖を突いてにこやかに微笑みかけている。視線の先には、アークエンジェルの監禁室。ネオが収監されている部屋だ。

「まさか、あの証言だけでザフトを動かす気ですか?」

 傍らにはタリアが佇んでいる。そして、モニターの前にはアスランが座っていた。

「アスラン、君はどう感じる?」
「斯様な話は、以前に報告したとおりです。私も艦長と同じように、信用に値しないと思っています」
「そうか。民主主義的な多数決なら、私の主張は負けだな」

 他人に意見を求めておきながら、持論を曲げるような雰囲気ではない。デュランダルは、本気でネオの証言を元にザフトを動かそうとしている。どうしてそんな気になれるのか、アスランにはデュランダルの考えていることが分からない。
パワー・バランスを崩してまで信じられる証言だろうか。

「しかし、警戒しておく必要はあろう。私は、人を見る目だけは確かなつもりだ。君をミネルバの艦長に任命したのも、シンをインパルスのパイロットに抜擢したのも、全て私が決めたことだ。あの男は、嘘をついていない」
「議長の判断に異論を挟むようですが、私は危険と存じます。これが偽情報であったならば、連合に付け入られる隙を与えることになります」

 タリアは慎重な女性だ。デュランダルはそう思う。昔、自分と別れることになった時も、最後まで彼女は選択を迷っていた。結局決め手になったのは、自分との相性が悪く、子供を作れない事が分かった時だ。そうして、彼女は誰とも知らぬ男に肩を抱かれて去って行った。
 あの時の事は、あれから随分経つというのに、今思い出しても屈辱だ。見送るしかない自分の立場が、滑稽なほどちっぽけに思えた。男として、好きな女性の一人も幸せにすることが出来なかったのは、恥じるべきこと。

 それから、徹底的に人を見る目を養った。色々な文献を漁り、色々な人々を見てきた。もう、二度とあんな惨めな思いをしないために、分かることは予め分かっておきたい。やがて、自分には人の性質を見抜く才能が芽生え始めていることが分かってきた。

 便宜上、派閥に入ることは政治活動をして行く上で有利に働く。前々議長のシーゲル=クラインは、思想こそ共有する部分はあったが、ニュートロン・ジャマーを投下して地球を傷つけ、災厄を引き起こした。
ナチュラルとの融和を唱えておきながら、血のバレンタインの報復とも呼べる行為を行った。世論に支持されるままだったとはいえ、意志薄弱もいいところだ。
結局、その娘であるラクス=クラインが身元不明の少年に最新型のMS、フリーダムを明け渡し、挙句にその運用艦であるエターナルまでも奪われ、クライン派は反逆者の汚名を着せられて彼は銃殺刑になった。
その時の彼の末路は至極当然だと思ったし、同じクライン派に属していても関係ないこと。自分が感じたシーゲルの悪印象は、彼の死という形で立証された。
 その後世論は、シーゲルの事件を契機に大きく傾き始めた。そこで台頭したのが、ナチュラル強硬派であるパトリック=ザラ率いるザラ派だ。彼等は穏健派であるクライン派とは180度反対の超過激派である。
ナチュラルに対する憎しみや怒りが、当時の世論に支持されてあそこまでの力を持ったのだろう。
結論を言えば、パトリックも単なる復讐者に過ぎなかった。巨大γ線兵器のジェネシスをクトレマイオス・クレーターの連合軍基地に容赦なく撃ち込んだのも、全てはナチュラルが単純に嫌いだったからだ。彼の最期は、結局は報じられていない。
ただ、彼の死も当然だと思った。怨恨に縛られるものは、得てして幸せを掴む事は出来ない。それは、歴史が証明してくれている。

 個人の話だけではない。人類全体をとってみても、憎しみや恨みの感情で互いを拒絶し合っていては、決して平和な時が訪れることは無い。しかし、おかしなもので、平和を渇望しながらもナチュラルとコーディネイターはお互いを蔑み、滅ぼすことしか考えていない。
本当に平和が欲しいのなら、話し合って妥協点を見つけ、負の感情を払拭せねばならないというのに。
 そこで、考えた。シーゲルもパトリックも、プラント最高評議会の議長として相応しくなかった。それは、彼等の死によって立証され、自分の感じた印象が間違っていなかったことを決定付けた。それならば、真にその席に相応しいのは誰なのか。
考えるまでも無かった。自分の思ったとおりに歴史が動いていたのならば、それを正しく認識している自分が最も相応しい。かくして、デュランダルは議長選に立候補し、見事その座に就いた。

24 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/04(火) 22:57:29 ID:???
「私は、今まで判断を過った事が無い。私が議長の座に就いているのも、全ては私の判断が間違っていなかったからだ」

 タリアは傍らで聞いていて、何て自信をだろうと思った。ある意味傲慢に近いその自信は、なまじ強い言葉ゆえに、いつか取り返しのつかない過ちを引き起こすような気がした。

「私はね、タリア? ただ、人があるべき姿のままで居られるような世の中にしたいだけなんだ。しかし、ナチュラルはコーディネイターを脅威に感じ、コーディネイターはナチュラルを遅れた人類として蔑んでいる。
それは、袂を同じとする我々広義の人類にあってはよろしくない精神状態なんだ。そんな状態がいつまでも続けば、人類の歴史は近い将来に消えてなくなる。それは、種としての生存本能を持つ人間の本来あるべき姿では無い。
だから、私はこうして少しでもお互いが擦り寄れるようになるためにプラントの政治を取り仕切っている」

 その考えが、これ程までの自信に繋がっているのだろうか。その源は、一体どこにあったのだろう。自分と付き合っていた時は、まだそんな事を口にする性格ではなかった。それが間違いでないのなら、彼はあの日、あの時に変わったというのか。

「人は、どこで道を間違えたのか――ジョージ=グレンが暗殺されたときか、それともコーディネイターが殖え始めたときか――なんにせよ、2つに分かれた人類は、お互いを拒絶し合う。その証明が現在の世界であり、顕著に表しているのが、ブルー・コスモスだ」

 彼を変えたのは自分。そして、それをそ知らぬふりは出来ない。タリアは淡々と説くデュランダルの背中を眺めながら、唾を飲み込んだ。
 彼の、たった一度の敗北。彼が自分に絶対の自信を持つに至った経過は、恐らく自分との悲恋にある。それ程彼は自分を深く愛し、勿論自分も彼を愛していた。しかし、運命は自分達の恋愛を認めなかった。
 だからだろう。一人残された彼は、運命に抗うのではなく身を委ねる様になった。そして、ついには自分でそれを読み取ろうと努める様になったのだ。その結果、全てを掌握し、上手くいっていることが彼の絶対の自信に繋がった。

「ネオ=ロアノークの言っている作戦が連合軍のものではなく、ブルー・コスモスからの勅命であることは、子飼であるファントム・ペインがその任に当たるということが証明している。つまり、本当の敵は連合ではなく、それを裏から糸を引いている彼等だ」

 ネオの調書を取るまでも無く、ファントム・ペインの存在はザフトの諜報部によって調べられていた。エクステンデッド3人と“イレギュラー”の4人に加え、最先端の技術を優先的に配給される連合軍の中にあっても特異な部隊。
精鋭部隊であるミネルバを相手取り、幾度も苦戦を強いた彼らにザフトが注目しないわけが無かった。
 彼の読みは、恐らく当たっているだろう。連合の中にもブルー・コスモスを支持している政治家が居るはずだ。そして、その政治家達が連合の主導権を握っている事も、ファントム・ペインという部隊に優先的に戦力が集中している現実を見れば何となく察しがつく。
 ブルー・コスモスが全ての黒幕――2年前と同じようにそう考えれば、確かに辻褄は合うのだ。

「しかし議長、ブルー・コスモスの母体には軍産複合体のロゴスがあります。例え彼らを潰したとしても、豊富な資金力で今大戦と同じようにまた復活するかもしれません」
「ロゴスは経済団体だ。それを潰せば、地球経済は困窮してしまう。それではニュー・ジャマーを投下し、地球にエネルギー危機を招いたシーゲルと同じになってしまう。私は、その様な愚は犯さない」
「では――」
「ブルー・コスモスは必ず潰す。だが、それ以上の事は出来ない。その意味、君に分かるか?」
「いえ……」

 ロゴスを潰さずに、ブルー・コスモスだけを壊滅させる。それのどこが解決に結びつくのだろうか。ロゴスを残せば、自分の言ったとおりブルー・コスモスは必ず復活する。ナチュラルのコーディネイターへの不信が残る限りは。
 デュランダルの言っていることは、全く分からない。

「フフッ…しかし、それを可能にする手札は既に揃いつつある。君やアスランにも、近いうちに分かる時が来るさ」

 笑いを零すデュランダル。背後からではその表情を窺い知る事は出来ないが、不敵な笑みを浮かべている顔が頭の中に容易に想像できる。

「とにかく、先ずはネオ=ロアノークの言っている連合の大規模な作戦を阻止することが第一だ。我々のシンパが多数居るヨーロッパ地域を無碍にしておく訳にはいくまい。ザフトは私が説得しておく。恐らく君にも行ってもらうことになると思うが、準備はしておいてくれよ?」

25 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/04(火) 22:58:25 ID:???
 若い頃は、彼も優しい人間だった。今もその本質は変わっていないと思いたい。しかし、何かが変わってしまったような気がする。彼がプラント最高評議会議長になって再会した時、近寄りがたい距離を感じた。
それが議長としての威厳なのか、それとも過去の罪悪感に苛まれる自分が作り出した壁なのかは分からない。
 デュランダルは席を立つと、タリアの肩にぽんと手を乗せ監視室を出て行った。それを追いかける様に、タリアも続いた。一人残ったアスランは、デュランダルの言葉を噛み締める。

 デュランダルの言葉には、引っ掛かる部分があった。手札は揃いつつある――それが意味するものは、一体なんだ。考えれば、必然的にカガリやラクスの顔が浮かんでくる。彼が、地球圏に影響力のある2人の少女を利用しようと考える事は、容易に想像できた。
それと言うのも、オーブと同盟を結んだ背景には、間違いなくそういう目論見があっただろう。ただ、利用するといっても、デュランダルは純粋に2つの人類の事を考えているのかもしれないし、逆に覇権主義に囚われて2人を都合よく使うつもりなのかもしれない。
 本当のことは一兵士でしかないアスランには分からない。父のように政治的手腕に才能があるわけでもなく、誇れるものといえば18年間培ってきたMSパイロットとしての腕だけだ。

「俺もシンの様に熱い気持ちで立ち向かえたら――」

 先程のネオとのやり取りを、一種の羨望を持って見つめていた。彼は、自分が落とせなかった相手を懐柔して見せた。それは、何処までも正直な彼だからネオもそれに応えなければと感じたのだろう。
自分は最初からネオを疑って掛かり、連合軍の大佐という肩書きを軽蔑していた。シンは、そんな事に関係なく接していた。彼の中には、ナチュラルとコーディネイターの確執というものは殆ど無いのかもしれない。腐っても流石はオーブの出身だな、と思う。
 対して、自分はどうだろうか。もし、全てのナチュラルとコーディネイターが本当の意味で和解できるのかと問われれば、ハッキリとYesとは言えない。中には和解できるものも居るかもしれないが、全ては考えにくい。
確かにデュランダルの言うとおり、ブルー・コスモスの様な輩が蔓延っている限りは、完全な希望は持てないのだ。そう考えるのは、2年前に血のバレンタイン事件で母親を亡くした彼だからこそ。

「人をあるべき姿に――か……」

 コントロール・パネルの上に腕を置き、両手の指を組む。そして、少し俯き加減にアスランは呟いた。あれがデュランダルの本心であるならば、それに向かって努力する事をアスランは厭(いと)わない。
シンを見ていれば、今は希望を持てなくても、ナチュラルとの完全なる和解を望みたい気持ちになる。かつて、自分とカガリが心を通い合わせたように、他のナチュラルとコーディネイターも出来るはずだ。その事を、先程のシンに思い出させてもらったような気がする。

「ブルー・コスモス――」

 単純だ。敵は、2年前と同じ。地球の自然環境保全組織から膨れ上がった、極端な地球至上主義者達を排除すれば、ナチュラルとコーディネイターの間に横たわる最初の壁は破られるのだ。
 そう考えると、急にデュランダルの言葉が説得力を増してきた。最初は胡散臭さが目立った彼。しかし、こうして彼の話を直に聞いた今、その猜疑心は払拭されつつあった。

「俺の、やりたい事……」

 そして、おぼろげながら見えてくる、自分のやりたい事。もし叶うのであれば、それは途方も無く無謀な事と言えるだろう。しかし、目指してみる価値はあると思う。ただ、それをする為には、先ずこの戦争を終わらせなければならない。
アスランは、胸の奥が久々にときめきを取り戻しているような気がした。



26 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/04(火) 22:59:13 ID:???
 通路を歩く2人の足音が、ちぐはぐに響く。男性と女性の歩幅。それは、2人の気持ちの距離の音。

「……変わったわね、ギル」
「人は変わって行くものさ。過去を過去の事と認識し、前を見つめなければ人類の進化の歴史などあり得なかった。だから、私は変わったのさ」
「でも、あなたは――」
「君への未練は、断ち切らなければならない。最近、私にもようやくその事が分かってきたよ。…あぁ、そうだ。この間のディオキアでの事は、忘れてくれ」

 一瞬だけ、デュランダルの表情があの日の頃に戻った。その懐かしさに、タリアの記憶の中にある昔が呼び起こされる。しかし、それは本当に一瞬だけで消え、改めて今の彼の表情に戻った。

「私は弱い。だから、君をいつまでも忘れられなかった。だが、それではいけないのだ。過去を引き摺る事が、私だけでなく君までも不幸にしてしまうこともある」
「そんなことは無いわ」
「いや…シンを見ていると、そう思えるのだ。彼は、不幸な星の下に生まれてきた。だが、皮肉なことに天は彼に戦いの才能を与えたのだ」
「それは彼の両親がそうコーディネイトしたからではないの?」

 そう言うと、少しデュランダルが笑った。

「君も一児の親なら、どうしてそういうことが言える? どこの世界に、子供に人殺しの才能など与える親が居るものか。彼のあのセンスは、天から与えられたものだよ」

 シンは荒削りではあるが、性能以上に適切にインパルスを運用している。それは、これまでの戦いの記録から見れば分かることで、戦績もトップ・エースであるアスランに肉薄するものを持っている事から明らかだ。

「完璧に調整されたコーディネイターであるキラ=ヤマトも、戦いに特化している。何をしても人並み以上の事が出来るのに戦いしかしないのは、彼がそう宿命付けられているからだ。世界は、そういったもので動いている」
「大したロマンティストね」
「いけないかい? 男は、ロマンを追い求める生き物だよ」

 久しぶりにこういう風に話した気がする。ディオキアでは、距離を感じてこんな風には話せなかった。今もその距離は感じているが、しかし変わったデュランダルの本心が少しだけ垣間見られた気がした。
 先程一瞬だけ見せた表情――それは、彼はまだあの頃の気持ちを心のどこかに残してあるということ。議長だからと気張って、隠しているのだ。多分、下らない男の意地なのだろう。
 こうして並んで歩いている間だけ、昔の2人に戻れたような気がする。タリアはその表情を表に出さないように顔を引き締めて、歩いて行った。

27 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/04(火) 23:15:54 ID:???
>>1乙投下は以上です


それで、一つ質問をば
土曜が来るたびに落ちては立ててもらうと言うのも申し訳ないので、とりあえず4話くらい投下した方が
いいような気がするんですけどどうなんですかね?
そうすると、今年の投下がもう出来なくなってしまう可能性が大なんですけど

何となく、最近の落ち方とかを見てたら、そんな考えが出てきたので聞いてみました。


それと、ニコ動で見たけど、Gジェネ魂でビームコンフューズが再現されてて思わず声が出ちまったい(・∀・)

28 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/04(火) 23:54:46 ID:???
できれば今までどおり1話ずついってもらいたいです
俺らも土曜日はage 進行でいって落とさせやしない

29 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/05(水) 01:42:37 ID:???
まだ読んでないけど乙!
油断してるとあっさり落ちるからまとめて投下しちゃってもいいんじゃない?

30 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/05(水) 03:05:18 ID:???
しかし、まとめて投下してもらって、全て落ちてしまったらダメージでかいよ。

31 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/05(水) 03:27:08 ID:???
仕事中だけど、乙。

32 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/05(水) 10:37:07 ID:???
どっちみち落ちるときは落ちるんだし、ログ残してるヤツがwikiに上げればいいんじゃね?

33 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/05(水) 16:29:33 ID:???
えー
乙や感想言いたいから
今までどおり一話ずつがいいんだが

34 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/05(水) 18:54:34 ID:???
【もしも】種・種死の世界に○○が来たら【統合】いけば?

35 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/05(水) 19:33:38 ID:???
作品の投下があるスレの割にレスが少ないかも
各人がもうちょいこまめに気付いた時にレスした方がいいと思う

36 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/05(水) 21:37:32 ID:???
4話分一気に投下ですと!!是非ともと言いたい所ですが、読み逃して落ちたらと考えると甚だ恐ろしい。2話ぐらいではどうでしょう?(卑屈な笑い)

37 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/06(木) 00:24:40 ID:???
これからは統合スレで頑張ってね

38 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/06(木) 11:39:19 ID:???
統合スレにいっちゃうの?

39 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/06(木) 11:52:51 ID:???
スレあるんだし、行く必要ないだろ。

40 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/06(木) 13:02:02 ID:???
てか無理やり統合統合言ってるバカはなんなの?
ここが本スレだろうに

41 :sage:2007/12/06(木) 14:04:14 ID:/mAWvMqc
私はできれば、このスレで頑張ってほしいな。遅れましたけど、GJ

42 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/06(木) 14:17:20 ID:???
>>37-38
昨日、『ifの方に』「保守しかないから、コメ乞食なので移転したい」と書いた人がいた。

でも、2話しか書いてないって言ってたから、ここじゃないと思われ。
つーか、ここを無理矢理統合に持ってくなら管轄はクロスだし、そのクロスの統合はいらない子状態だし。

43 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/06(木) 17:20:00 ID:???
>>統合に関して
ぶっちゃけ、内容に殆ど触れずGJして4話投下は勘弁!のレスしかない本スレつーのもどうかと思った。
もっと、感想を肴にわいわいとやっていれば、そういうレスも着かなかったんでは?

>>27
氏は先日の投下で一話分なんだよな?それが4話分となったら
どんだけのレスになるのかー?ってのは興味あるが
ただでさえ一話が凄いボリュームなので果たして読者がついていけるのか?と疑問がある。

んで、感想としては>>26の最初の一文はかなり好き。
普通会話文と言うのはどうしてもだれがちで動作が取れない中、敢えてこの一文ですっきりとまとめたのは
凄い良いと思った。これからも頑張ってください。

44 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/06(木) 21:45:16 ID:???
GJ!
ってかネオの妄想がもの凄く真面目に書かれていて吹いたwwww

45 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/06(木) 23:11:01 ID:???
とりあえず、まとめて投下は無しにして、これまで通りに一話ずつ投下と言う形にします。
アンケートのご協力、ありがとうございました。

そんで>>37、人違い乙ということでw
まあ、でもあれを自分が書き込んだと思われても仕方ないかもしれないです。
ぶっちゃけ、あのレスに共感する気持ちが無かったとも言い切れませんし。
ただ、まさか勘違いされるとは思いませんでしたけど(´・ω・`)

宣言しておくと、このスレが続く限りは完結まで頑張ろうと思います。
他のスレに移って続けると言った事は、全く考えていません。


しかし、只今絶賛スランプ中ということで、最近殆ど話を進められていなかったりorz
色々余裕を持つ意味でストックしておいた分がまだあるので、投下する分には暫く困らないと思いますけど……

46 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/07(金) 01:40:33 ID:???
ジージェネスピリッツ買いました。
カミーユの扱いが悪い。
シャアとアムロが居れば良いのか?
技量もNTとしても、トップクラスだと思うんだけどな。
やっぱ、ファーストファンに嫌われているから?

47 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/07(金) 01:51:34 ID:???
Gジェネなんていつも適当じゃん
俺が随分昔に買ったときはやたら0083が強かったよ

48 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/07(金) 09:33:49 ID:???
保守


49 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/07(金) 10:27:11 ID:???
>>Gジェネ魂
そもそも、劇場版基準つーことでゲーツが出てこないし。
V連中もシュラク隊出て来ないしで基本は一年戦争中心だねやっぱり

50 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/07(金) 17:50:58 ID:???
>>46
今回は主役NTが全体的に前より弱くなってるけどね
ウッソはなんか強くなってる気がするけど

しかし、Zがビームコンヒューズ使えるのはよかったな。


51 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/07(金) 18:12:45 ID:???
http://mechanismus2007.piranho.de/

52 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/07(金) 19:56:16 ID:???
>45
乙であります。1話づつになりましたか、お気を使わせてすみません。

53 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/07(金) 22:52:59 ID:???
>>46
カミーユはNT能力は最強だが
技量は微妙なとこだろう

54 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 00:31:46 ID:???
高すぎるNT能力に引っ張られて不安定すぎるので
カミーユの技量はカミーユの調子次第ってのが最強パイロットスレの定説だけどな

55 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 02:08:50 ID:???
落ちたら怖いのでage


56 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 02:47:35 ID:???
保守

57 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 08:13:16 ID:???
ほしゅ

58 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 13:33:49 ID:???
運命の土曜日だ 保守

59 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 14:13:46 ID:71MhY+/B
あげ

60 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 14:14:45 ID:???
土曜日ですのでage進行発動でお願いします

61 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 14:24:23 ID:???
あげ

62 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 14:29:17 ID:???
落ちるのにスレの位置とか関係ないし。


63 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 15:01:10 ID:???
上にあったほうが落ちずらいのは事実

64 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 16:49:08 ID:???
うげ

65 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 18:03:25 ID:???
保守

66 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 18:12:28 ID:???
おぉ、復活してたのか!!
これより堪能させていただきます!!

67 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 18:25:06 ID:???
保守

68 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 18:32:16 ID:???
俺の体をスレに貸すぞ

69 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 18:36:03 ID:/9IDt1Rz
カミーユならイザーク如きなんて躊躇なく殺るだろ

70 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 18:39:03 ID:???
まあカミーユにしてみりゃイザークなんてその辺の一般兵と何も変わらんしな

71 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 18:55:32 ID:???
遊びでやってんじゃあないんだよ

72 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 20:15:42 ID:???
ほしゅ

73 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 21:03:56 ID:???
保守

74 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 22:01:31 ID:glydrM14
あげ

75 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/09(日) 00:36:59 ID:???
age

76 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/09(日) 00:56:44 ID:drb+35TE
カミーユinCE73のクオリティの高さは異常

77 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/09(日) 03:39:47 ID:???
>>76
同意

「そうだ…俺にはまだ翼がある……!空は飛べなくても、アイツには追いつける!」

このシンの台詞は種本編でいって欲しかったくらいにグッときた

78 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/09(日) 09:38:36 ID:???
ほし

79 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/09(日) 18:06:48 ID:???
保守

80 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/09(日) 18:09:11 ID:???
保守

81 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/09(日) 21:51:06 ID:???
あげ

82 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/09(日) 23:40:25 ID:???
からあげ

83 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/10(月) 02:46:54 ID:???
保守

84 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/10(月) 07:27:16 ID:???
朝ほしゅ

85 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/10(月) 12:52:20 ID:???
ほしゅ

86 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/10(月) 17:42:43 ID:6QUuMFNp
目の前の現実も見えない男が

87 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/10(月) 22:28:28 ID:???
ほしゅ

88 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/10(月) 22:49:55 ID:???
賢しいだけの小僧が

89 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/10(月) 23:32:09 ID:???
賢くて悪いか!

90 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/11(火) 00:09:37 ID:ubgeKn3J
賢い奴が賢こくて何が悪いんだよ。俺は賢いよ


携帯からすいません

91 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/11(火) 00:19:42 ID:???
賢い奴が賢こくて何が悪いんだよ。俺は賢いよ


携帯からすいません

92 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/11(火) 00:21:30 ID:ubgeKn3J
すいません。レスを無駄にしました。生きててすいません

93 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/11(火) 01:45:01 ID:???
今、ちょっと話を考えているんだけど、無印種でも良い?

94 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/11(火) 02:17:05 ID:???
>>93
私は一向にかまわんっ!

95 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/11(火) 09:34:39 ID:???
もしもイザークとカミーユが直接対面したら・・・・・・・?


















初っ端から大喧嘩になるだろうなぁ・・・・

96 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/11(火) 09:56:23 ID:???
>>90-91
それカミーユの台詞?

97 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/11(火) 16:29:04 ID:???
ほしゅ

98 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/11(火) 19:29:33 ID:9wzSdymG
ほしゅ

99 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/11(火) 20:58:07 ID:???
>>94

どこの海王だww

100 :93:2007/12/11(火) 20:58:11 ID:???
ありがとうございます。
もう少し煮詰めてから、投稿しますね。

101 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/11(火) 21:41:30 ID:???
ファも登場させてよ。

102 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/11(火) 22:22:36 ID:???
確認。外伝とか小説とか一部0083〜Z辺りの話とかでもZら編の時間軸(ティターンズとかエゥーゴ)なら良いのだろうか?
SEEDでいうアストレイみたいな連中ばっかりの奴を考えてるんだが

103 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/11(火) 22:41:11 ID:???
それだと本編しか知らない奴からは反応ないかもしんないよ、と。

104 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/12(水) 00:12:10 ID:???
>>102
問題ないだろ
ここに来てる時点で大体のガンダムは知ってるだろうし

少なくとも俺は大丈夫

105 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/12(水) 00:21:59 ID:???
タイラントソードだのセンチネルだのAOZだのやられても判らんわ

106 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/12(水) 12:26:14 ID:???
センチネルだけ知ってる

107 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/12(水) 19:18:20 ID:???
てかカミーユ関係やΖの連中が種世界に絡む小説なら問題ないだろここは
最近は職人カミーユ氏の単独スレっぽくなってるが、他の職人さんも書くのは自由と思う

108 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/12(水) 19:33:04 ID:???
スレが盛り上がるのは良いことだ。
そんなわけで、カモーン

109 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/13(木) 13:15:16 ID:???
保守

110 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/13(木) 21:46:13 ID:???
ほしゅ

111 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/13(木) 22:38:42 ID:???
遊びで保守してんじゃないんだよ!

112 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/13(木) 23:01:27 ID:???
 『エマージェンシー・デストロイ』

 オーブから出て、結構な日が経っている。残してきたカガリやバルトフェルドは、今どうしているのだろう。キラはジブラルタル基地の展望室で、海の向こうにあるであろうオーブの島々を空想した。
 カガリは、自分から見てもまだ頼りなく映る。それは、単純な経験の浅さと性格の幼さが見せているのだろう。彼女の性格は悪く言えば単純で無謀。ちょっとした事でもすぐに頭に血が上る、勝気な少女だ。
2年前の頃に比べれば多少の落ち着きも出てきたと思うが、それでもまだまだ子供だ。老獪な政治家連中と渡り合うのには圧倒的に力が足りていない。

「先客が居たか」

 低く、唸るような声。キラの視界がぐるっと景色を巡り、やがてその姿を据えた。
 例えば、このデュランダルという人物。彼が同盟を申し入れてきたのは、単純にオーブと互恵関係を結びたかったからではないだろう。その裏に、少なからず欲しいものが別にあったはず。その中に、ラクスや自分が含まれていたことに、最近になって気付けてきた。

「色々と大変だったそうじゃないか?」
「いえ…月では陽動の部隊を回して頂き、ありがとうございました」
「Mk-Uを回収できたのだ。私も動かした甲斐があったというわけだ。それに、君からの言伝も承ったよ。パプテマス=シロッコといったか……君とフリーダムのコンビを全く歯牙にかけなかったそうじゃないか? まったく、世の中は面白いことが起こる」

 常に冷静で、動揺したことがあるのか疑問に思うほど、デュランダルの佇まいは超然としている。こんな人間に、ぶっきらぼうで短気なカガリが正面から渡り合えるわけが無い。
その為にセイラン親子という参謀がついているのだが、バルトフェルドの言うように彼らも何かしらの裏があるように感じる。果たして、四面楚歌の中にあって、カガリは平静を保っていられるのだろうか、甚だ疑問だ。甘言に流されて、自分を見失っていなければいいが――

「君達が救出したカミーユ=ビダンという少年……彼は面白いな。我々の感覚と全く別のものを持っているように感じたよ」
「話したんですか?」
「少しね。彼の情報と、そして彼自身も、私達の大いなる助けになると私は思うがね。キラ君はどう思う?」
「どう、って――」

 カミーユに想像も出来ない不思議な力があることは、何度か“テレパシー”を受けたキラには分かる。そして、エマやレコアなどもそれは知っているのだろう。しかし、それ以外のC.E.世界の人間がそれに気付ける者は、居ないはずだ。
彼は“テレパシー”以外は普通のナチュラルと全く変わらないのだから。デュランダルは、人の中身を覗く目を持っているというのだろうか。

「カミーユは、ついこの間まで心を病んでまともに立つことも出来なかったんです。僕は、あの人をもう戦争に巻き込むべきではないと思います」
「だが、彼はシロッコを止めなければならないと感じているようだ。同じ世界の“イレギュラー”分子として、この世界に混乱を巻き起こしている人間を止めるべきだと言っている」
「あの人は責任を感じすぎなんです。この世界で事が起こっている以上、その責任は僕たちが果たすべきだと思います」
「そういう理屈が彼に通るなら、私は何も言わないさ」

 J.Pジョーンズを急襲した時、カミーユはガンダムMk-Uに乗り込み、勝手に戦列に加わった。その理由を別れ間際に問いただしたところ、エクステンデッドを放っておけなかったからだと言っていた。
自分の体調の事も分かっていないくせに、よくもそんな事を考えられるものだとその時は思った。
 しかし、それは自分にも言えることなのかもしれない。元よりキラの反応速度に耐えられるように設計されていたフリーダムならまだしも、前回の夜襲の時はM1アストレイで出撃して散々な目に遭った。出迎えたサイは、そんな無謀な自分を怒っていた。
きっと、そのときの彼の気持ちは、今の自分の気持ちと同じだったのだろう。こんな事では、余計に信頼を失くすかも知れない。

113 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/13(木) 23:02:14 ID:???
「そうだ」

 眼下に広がるのは無機質なジブラルタル基地の人工的な建築物の整然とした、街並みにも似た風景。その向こうには、イベリア半島の肥沃な大地が広がる。ヨーロッパ的な森林と草原に、川の流れがひとつのアクセントとなって景色の中に横たわっていた。
 とても落ち着く風景だ。今世界で戦争が起こっていることなど、とても意味の無いことと思えるほどにのどかな印象を与えられる。その景色に回想し、考えをめぐらせていると不意にデュランダルが声を発した。

「そういえば、オーブのカガリ代表から君宛てに送られてきたものがあるんだ」
「カガリが…僕にですか?」
「ここではないのだが、同行を願えるかな?」

 一体、カガリは何を送りつけてきたというのだろうか。デュランダルに続いて、キラは展望室のエレベーターで下に降り、後をついて行った。外に待たされていたデュランダルの専用車両に乗り込み、レクリエーション施設が立ち並ぶ区画を抜けて工廠区画へ向かう。
その検問をデュランダルの顔パスで抜けると、一棟の整備工場の前で車は止まった。

「ここは……」
「姉君の弟へのプレゼントとしては、少々大き過ぎるものだとは思うがね」

 車から降り、キラを誘うように先を行くデュランダル。釈然としないまでも、キラはハッとして後に続いて行った。
 中に入ると再びエレベーターに乗り、地下へと案内される。ザフトの格納施設というものは、須(すべか)らく同じような構造をしているものなのだろうか。似たような構造に、2年前にラクスからフリーダムを託されたときの事を思い出した。
 通路の先端にまで歩みを進めると、デュランダルはそこで手を掲げた。定石どおりであるならば、そこにはMSが立っているはずである。デュランダルの手に応えて一気に暗闇がライト・アップされ、果たしてそこから予想通りに一機のMSが姿を現した。

「これは――」

 浮かび上がったのはGタイプの頭部を持つMS。フェイズ・シフト装甲装備の機体で、火が入っていない今は灰銀の色を晒している。

「驚いたかね? カガリ代表は、君がフリーダムを失ったと聞き、こちらへこれを送ってきたのだ」

 その形には見覚えがある。かつて愛機としていたGAT-X105ストライク。その余剰パーツで組み上げたカガリ専用のストライク・ルージュだ。キラの操っていたトリコロール・カラーの機体とは違い、フェイズ・シフト装甲で一番硬い色と言われている赤に染まる。
左肩部には本人の証として、獅子のエンブレムが刻まれていた。間違いなく、カガリのものだ。

「ここへ通す以上、色々と調べさせてもらったわけだが、成る程、君の為に随分と手が加えられているようだ。とても2年前に製作された試作機とは思えない性能だよ」

 肩越しに振り返るデュランダルは、口元に笑みを浮かべていた。

「代表も、ただ平和に流されていたわけではなかったようだ。私がフリーダムを用意していたように、彼女も準備を怠っていなかった――これは、その証拠ではないのかな?」
「そんな! カガリは――」
「では、なぜこれを君の元に送ってきた? ――答えは、君に戦って欲しいからではないのかな?」

 カガリが自分に戦いを要求するのはいい。それがオーブの為になるのなら、キラには喜んでその為の礎になる覚悟はある。しかし、彼女が戦前からストライク・ルージュのアップ・デートを行っていたと言うデュランダルの推測は受け入れられない。
それは、彼女が平和は長く続かないと予測していた事に他ならず、今回の戦争は不可避と考えていたことになる。それではキラは困るのだ。現実として戦争となってしまった今なら仕方ないと言えるが、それを最初から諦めていたとすれば我慢ならない。
2年前の戦いはナチュラルとコーディネイターの争いを止めるためではなかったのか。その努力を、中心人物である彼女自身が諦めていたのでは話にならない。

114 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/13(木) 23:03:03 ID:???
「ですけど、ルージュのアップ・デートには、カガリは関っていないはずです。他の誰かがカガリには内緒で勝手にやらせたとしか――」
「中立を保つには、外圧に負けない力を持っている事が必須条件だ。代表がそう考えてもおかしくはないという事さ。オーブの前国家元首であらせられたウズミ=ナラ=アスハ氏も、そういう考えでMSの開発を進めていたのだろう? だとすれば、彼女の判断は正しい」

 確かに、国家元首としては国防上は正しい判断だ。しかし、カガリの持論は“力があるから戦いが起きる”だ。その考えを持つ以上、今回の件は自己規範を示す意味では失格。そして、彼女が容易く持論を曲げるような人物ではない以上、どうしても信じられなかった。

「僕は――」
「代表からのビデオ・レターも預かっている。これが、そうだ」

 デュランダルが差し出したのは一枚のディスク・ロム。それを受け取り、キラはディスクとデュランダルの顔を交互に見やった。

「私は見ていないよ。ただ、ウイルスの類が入っていないかどうかの検閲はさせてもらったがね」

 カガリにサイバー・テロ紛いの事が思いつくはずがない。そういう事は、昔からキラの得意分野だ。こんな直接的な方法を採るよりも、ネット・ワーク経由で侵略したほうが足がつきにくいことを知っているキラは、当然そうだろうと思った。

「ともかく、これはアークエンジェルに積み込まれる事になる。これで、フリーダムの改修が済むまでの繋ぎができたわけだ」
「僕はザフトの為に戦うのではありません。だから、あなたの為に戦うのではないんです」
「分かっている。君は君の信念の下に戦えばいい。私は、その上で君に力を提供したいと思っているに過ぎないのだよ。誰であろうと、利用できるものは利用したまえ。世の中は、君一人の力で何ができるというものでもない」

 自分が一人で戦っているつもりでいると思っているのだろうか。冗談ではない。今も、これまでも自分一人では生き抜いてこられなかったことくらい当然のごとく承知している。それを勘違いしていると捉えられた事が、心外だった。
 釈然としないキラは、ディスクの方々を確認すると、それを持って割り当てられた自室に戻って行った。後ろ姿を見つめるデュランダルは、相変わらず笑みを湛えているだけだった。

 自室に戻り、備え付けのコンピューターを起動してディスクをトレイにはめて押し込む。ビデオ・プレイヤーが起動し、自動で映像が再生される。がさつなカガリが、自分で撮影したのだろう。動画が始まっても彼女の影がちらほら映り、苦戦しているのが分かった。
 景色は、恐らく彼女の執務室だと思われる。後ろの壁にはオーブの国旗が掲げられ、何処となく見覚えのある風景だ。

『キサカ、これでいいんだよな?』
『録画ランプが点灯している。もう始まっているぞ』
『何!? それを早く言え! “テープ”がもったいないだろうが!』

 ぶっきらぼうな口調は、さすがゲリラをしていただけの事はある。大雑把な彼女の滑稽な仕草に、思わず笑いが零れた。コンピューターが全盛のこの時代に、カガリのような希少なアナログ人間はある意味貴重だろう。
 モニターの中の彼女は、カメラの前にセットされたデスクの後ろに腰掛けると、神妙な面持ちで両手を組んだ。少し髪が伸びただろうか。肩に届かない長さだった髪が、今は掛かっている。見慣れない彼女の髪型に、似合わないな、と感想を漏らした。

『ん゛ッ! キラ、久しぶりだな。お前たちがオーブを発ってから、色々あったと聞いているぞ。特に、お前がフリーダムに乗っていながらも撃墜されたと聞いた時には、本当に驚いた』

 咳払いも似合わない。しかし、語りかけてくる口調は、紛れもなく知っている彼女のものだ。双子の姉弟で、事実を知った時に強引に自分を姉と断定したカガリ。心配そうな表情は確かに姉のものだ。

『無敵だったもんな、昔のお前は……でも、それも全てはお前の周りに仲間がいたからなんだぞ。お前はすぐに一人で思いつめようとする、悪い癖がある。そんな事をしなくても、お前を心配してくれる仲間を信じればいいんだ。私も、力になれることがあれば協力する。
だから、無茶はするな。お前が無茶をすれば、みんな心配するし、ラクスは悲しむ。女を泣かせたんじゃ、男の甲斐性って奴が無い証拠だろ? そんなんじゃ、大好きなラクスにだって愛想を尽かされちゃうぞ』

「カガリが心配することじゃないでしょ?」

115 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/13(木) 23:04:03 ID:???
 他人の恋路を心配する余裕があるとはとても思えない。自分だってアスランと離れ離れになって寂しい筈なのに、姉貴だからといって自分の心配をしてくるから始末が悪い。先ずは自分の心配をしたらどうか。
そんな中途半端な髪形をしていたのでは、アスランに突っ込まれるのではないか。彼は、容赦なく突っ込みを入れてくるぞ、とモニターに言葉を返した。

『そういえば、そのラクスからこの間連絡があった。無事にプラントに入り、議長とも面会したそうだ。ただ、ラクスもプラントでしなければならない事があるからと言って、暫くは滞在するようだ。…お前、会えなくて泣いてるんじゃないのか?』

 カガリこそ、強がっているだけではないのか。そう言ってやった。泣いているんじゃないのか、とバカにする割には、彼女だってよく泣くではないか。人の事を言えるのか、と眉を顰める。

『まぁ…何だな? この映像を見てくれているって事は、お前は元気だって事なんだろ? そうなら、いいんだ。オーブも、この間の戦いから少しずつ再編成が進んでいっている。
大西洋連邦軍も、この間の大規模侵攻以来なりを潜めて、ハイネを中心としたザフト駐留軍と小競り合いを繰り返しているだけだ。私達の方は問題ない。お前達は無理をせずにオーブに帰ってきてくれればいい』

 カガリの表情が一瞬だけ微妙に変化したような気がした。少し俯き加減で、先程の元気な表情とはまるで逆だった。しかし、すぐに表情を戻し、何事もなかったかのように続ける。

『――んッと、他には……』
『カガリ、ビデオのバッテリーが切れそうだ』
『何ッ、もうか!? 早すぎるだろ!』
『リハで使った時から充電していなかったようだ』

 リハ? この出来でリハーサルをやっているというのだろうか。その割にはあまりにもお粗末だ。慌てるカガリの視線が、画面の外に居るであろうキサカに救いを求めている。

『ど、どうして! キサカが充電しておいたんじゃないのか!』
『自分でやるといっていただろう。やっておいたのではないのか?』
『そこはお前が気を利かせていると思って――』
『電源のランプが消え掛かっている。もう時間がないぞ』
『んなこと言ったって――そ、それじゃキラ! またな! 早くオーブにかえ――』

 結局、最後はどたばたして映像は終わっていた。せめて、もう一度録り直すといった発想はなかったのだろうか。こんなヘタクソな編集で送ってこなくてもいいのにとキラは思う。まぁ、不器用なカガリだから何度繰り返そうとも似たような出来になっただろうが。
 それはさておき、肝心なストライク・ルージュに関してが全く触れられていなかった。キラはどうしてもそれが気になり、もしかしたらと思ってディスクの中身を解析してみた。
しかし、そこには何度か上書きした映像記録以外の情報は入っておらず、目ぼしい情報は得られなかった。

(カガリ…どうして僕が一番知りたい事を――)

 尤も、カガリはその様な小細工ができるほどの器用さは持ち合わせていない。恐らく、ディスク・ロムに収められた伝言はこれが全てなのだろう。諦めてコンピューターからディスクを取り出した。
それから中心の穴の中に中指を入れ、円盤の周囲を持って改めて何か無いかと探ってみたが、何も見つからなかった。
 キラはディスクをケースの中に入れ、深い溜息をついて背もたれに体を預けた。カガリの本心は、結局は語られなかった。

「カガリ、一体何を考えているの?」

 彼女が戦えと言うのなら、それも構わない。ただ、ふと見せた一瞬の表情が、キラは心配だった。
 アークエンジェルの修理もそろそろ終わる頃だ。早くオーブに帰還して、カガリを安心させてあげなくちゃ――そう思って、キラはそのままの姿勢で目蓋を下ろした。



116 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/13(木) 23:05:03 ID:???
(おかしい――)

 相変わらずアークエンジェルの一室に軟禁させられているネオは、変化のない暮らしに疑問を感じていた。いつまでもジブラルタル基地に移送されないのは、自分が連合軍の大佐としてコーディネイターに忌み嫌われているからだというのは分かる。
そして、捕虜の暮らしというものが変化に富んでいるなどとは思わない。それを分かった上で、ネオは不思議に思っていた。

(何故ザフトは慌てないんだ? 今頃はデストロイが猛威を振るっている筈だってのに……)

 ファントム・ペインへのアッシマーの合流は、デストロイによるローラー作戦の開始の合図であるはずだ。囚われのネオは、そういう認識で連合軍の動向を覗っていた。しかし、その報告がなされてから既に結構な日が経っている。それなのにザフトは動く気配すらない。
デストロイの調整が難航しているのか、それとは別に作戦を延期する理由があるのか――情報を殆ど得られないネオには、全く見当もつかなかった。
 そんな時、部屋のドアが開いた。これもおかしい、尋問の時間にはまだ早いはずである。ドアの向こうから姿を現したのは、ほのかに茶色掛かった髪色の、赤服を着た女性だった。

「今日は尋問の時間が早いんだな?」
「そうね……尋問といえば尋問になるかしら」

 女性は腕を組んでベッドに横たわるネオのそばに来ると、上から見下してきた。威圧するような、厳しい視線だ。マリューとか言う女艦長と比べるまでもなく、彼女は軍人だ。

「何を聞きたいんだ?」
「あなたの居た部隊に、ジェリドという青年士官が居たのを知っているかしら?」
「何? ジェリドを知っているって事は、お前は――」

 彼らと同じ“イレギュラー”だ。名前は、エマ、カツ、カミーユ、レコア、それと、アルザッヘル基地から脱走したロザミアの5人が今現在確認されている敵側の人物だ。顔写真までは手に入らなかったが、目の前で見下ろす彼女はその中の誰かなのだろう。

「女という事は、カミーユ…か?」
「違うわ。本人の前で言って、殴り飛ばされるがいいわ」

 予想が外れたらしい。ただ、名前を間違えたことがそんなに失礼な事だったのか、女は何やら辛らつな言葉を浴びせてきた。男の名前と間違えたのならまだしも、どうして女性の名前で間違えて怒られなければならないのだろう。
“カツ”以外は全て女性の名前のはずだ。

「エマ=シーン。それが私の名前よ」

 知らなかったのだから、別段怒られる理由もないのだが、ともかく女の名前は分かった。そして、ネオは体を起こし、見下ろしてくるエマの視線に真正面から睨み合う。女性と思って舐めていれば、何かとんでもない事をされそうな気がした。
それは女の勘ならず、男の勘とでも言うべきか。自分の身に迫る危険に、背筋が震えているような気がする。

「それで、ジェリドのことだったか? 勿論、知っているさ。あいつ等は、優秀なパイロットだからな」
「私達のことも知っていたということは、既に彼らが何者なのか分かっているのではなくて? そして、シロッコの事も知っている。あの悪魔の様な男の事を――」
「パプテマス=シロッコが悪魔か――分かるかも知れんな。何処からともなくやって来て、気付けば軍の中枢に据えられていた。そして、圧倒的な知識量にMSの開発と、その才能は留まる所を知らない」
「そうよ。いつかは連合もあの男に乗っ取られる事になるわ。かつてのティターンズの様に」

 シロッコは、目的の為には手段を選ばない男だ。ティターンズに在籍しながらもアクシズのハマーンと通じた挙句にジャミトフを暗殺し、側近であったバスクをも排除して完全にティターンズを掌握した。
それと同じ事が、連合の組織内でも起こるのではないかとエマは危惧している。

「だが、上の連中はそう思っていないぜ。シロッコの事は、利用できる駒位にしか考えていない。それに、いくら奴が曲者でも、いくつもの国々が連なる連合の全てを掌握することなんて、できる訳がない」
「佐官クラスのあなたがその程度の認識なら、危ないわよ。彼は、人の心の隙間に入り込むわ。そのせいで、人生を狂わされた人だって居る。並じゃないのよ」

117 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/13(木) 23:06:04 ID:???
 レコアはジュピトリスに潜入した際にシロッコに会い、魅入られた。サラという少女も為す術も無く魅かれ、そのせいでカツは人間不信に陥った経緯もある。そういう悪意をばら撒くことに関しては、少なくとも天才だと認めることができる。
 その悪意が今現在連合内部を侵食中と思えば、これほど厄介なことは無い。ただでさえ巨大勢力である連合軍が、彼の思うままになってしまうのは更なる世界の混迷を意味するのだ。
 しかし、ネオはそんなエマの真剣な話を聞いても知らん顔だ。囚われている以上関係ないとでも言いたげだ。その顔がエマの癇に障った。

「ザフトの赤服が、わざわざ敵である我々の心配か? おめでたいんだな。そんな気を遣わなくたって、たった一人の男に連合は口説き落とせやしない。そんなことよりも、デストロイの方を警戒するんだな」
「シロッコがあなた達の中枢に配置されているということは、既に要人に取り入っている証拠ではなくて? 素性の知れない彼が短期間にそこまでのし上がれるほど、あなた達も甘くは無いんでしょ?」
「おかしな事を言う。お前だって、オーブからの転向者にしては随分と眩しい色の服を着ているじゃないか? 赤はザフトのエリートさんの証なんだろ?」
「これは――」
「どう違う?」

 減らず口は彼の性格か。捕虜の癖に余裕のある態度には、同じ軍人として見習うべきところもあるだろう。しかし、話題を逸らして屁理屈を口にするのは、彼もそれなりに屈辱を感じているということだ。そうでなければ、こちらを刺激するようなことは口にしないはず。
情報を漏らしたくないのなら口を閉ざせばいいのだ。それなのに良くしゃべるのは、彼が何かにあせっているからだとエマは推測する。あるいは、デストロイの件に関してか。
 エマはひとつ深呼吸して、気持ちを落ち着けた。ネオのペースに付き合っていても、こちらが疲れるだけだ。

「随分と焦っている様ね?」
「何処を見てそう思う? 私は努めて余裕さ」

 施錠された両腕を可能な範囲で広げ、余裕だとアピールする。それも、男の面子だ。大袈裟に表現するのは、本心を隠す為のフェイク。ネオはやはり何かに焦っている。

「いつまでも強情を張っていなさい。シロッコの動向を探りに来たつもりだったけど、あなたからはこれ以上は聞くべき事も無いみたいだわ」
「ご期待に添えられなかったようで、申し訳ないな」

 引きつった笑いが、ネオの強がりだと見抜くのにそれ程労力は要らなかった。エマは呆れた様に溜息をつき、横目で蔑むようにネオを見やりつつ背を向ける。

「ちょっと待て」

 エマが帰る仕草を見せると、唐突にネオが呼び止めた。やっぱり何か焦っているんじゃないか、とエマは内心でほくそ笑んでいた。彼が焦っている以上、突き放した態度を取れば引き止めてくるのではないかと踏んでいたが、そのとおりだった。

「何か?」
「何でザフトはこんなに落ち着いていられるんだ? 本当にデストロイは、まだ確認されていないのか?」
「あなたの証言を元に、モスクワ近辺で網を張っているんですけどね。まだそれらしき影は捉えてないそうよ。…このままじゃ、あなたの証言が嘘になってしまうわね」

 敵陣で堂々と嘘をつくのは度胸が要る。それも、ネオの証言は相当な規模の作戦だという話だ。それが嘘という事になれば、彼の身も危ないだろう。エマには、それを危惧する焦りに見えていた。

「まだ出て来ていないだと? …いや、そんな事は問題じゃない。どの程度の部隊を警戒ラインに配置している?」
「あなたが知ることではないわ」
「そういう事ではない! ミネルバもアークエンジェルもここに置いておいて、デストロイを阻止できると思っているのか、ザフトは! これまでの兵器の流れを遥かに上回る化け物なんだぞ、あれは!」
「そうは言いますけどね――」

 その時、部屋の中に緊急を告げるコールが鳴った。エマはそれに反応し、即座に受話器を取って対応する。

「どうしたの、ミリアリア――何ですって!?」

 エマの表情が一変する。驚きに眉を顰め、表情が険しく変化した。その豹変振りに、ネオは確信する。

「遂に出てきたんだな?」

 問いかけると、エマは頷いて受話器を元に戻し、ネオに向き直る。表情は相変わらず険しいままだ。

118 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/13(木) 23:07:10 ID:???
「モスクワに配置していた一個連隊が僅か30分で壊滅したわ……。あなたの情報を信じて、ザフトがかなり警戒していたみたいだけど――」
「あれは圧倒的だ。もし私がお前たちに囚われていなくても使うのを躊躇うほどのな。それだけ、デストロイの性能はずば抜けている」
「現在、ザフトの残存戦力はベルリンまで後退中。デストロイは尚も侵攻中だそうよ」

 間に合わなかった。ザフトもそれなりに自分の言葉を信じて警戒してくれていたようだが、如何せんデストロイは兵器の枠を超えた怪物だ。謂わば、動く戦略兵器と言ってもいい。
主力のミネルバとアークエンジェルをジブラルタル基地で遊ばせておいて止められるほど簡単ではない。
 これで、3人の内の誰かがデストロイに取り込まれたことになる。ネオの必死の願いも叶わなかった。悔しくて、拳を強烈にベッドに叩きつける。

「……これからミネルバとアークエンジェルは艦隊を組んでベルリンに向かい、そこでデストロイを食い止める作戦に入るそうよ。そんな化け物を、私たちが止められるのかしらね?」

 手をドアの枠に突っかけるように当てがり、エマはネオに尋ねる。それに対する言葉を持っていないネオは、沈黙するしかなかった。そして出て行こうとするエマ。

「お、おい! 俺はどうなるんだ? このままアークエンジェルと一緒にベルリンまで行くのか?」
「緊急出動だそうよ。そんな暇、あると思って?」

 素っ気無く告げると、エマは振り返ることも無く部屋を出て行った。それから程なくして、アークエンジェルのエンジンに火が入る振動が起こった。本当にこのまま自分を乗せて出動するらしい。

「私に対する扱いも、ここまでぞんざいにされると逆に気持ちいいな」

 皮肉たっぷりに独り言を漏らす。ただ、これは逆にチャンスだ。戦場の混乱に紛れて、もしかしたら脱走のチャンスがあるかもしれない。デストロイの性能を考えれば、いくらアークエンジェルとミネルバの2艦でもただでは済むまい。
その時に上手く逃げ出せれば、近くにいるファントム・ペインのメンバーと何とかして接触し、帰還することができる。

「フッ、私を甘く見た事を、存分に後悔するがいい……」

 チャンスは無いかもしれない。しかし、これは一生に一度あるかないかの大きな廻り合わせ。この時ほど、ネオはコーディネイターのナチュラル卑下をありがたく感じたことは無かった。自然と、口元に悪い笑みが零れた。



「よぉ、何でデストロイのパイロットがステラなんだ?」

 侵攻を続ける連合軍ファントム・ペインとその他の艦隊。アウルはモスクワでの戦闘を終え、陸戦艦の甲板にアビスを着陸させてライラに問いかけた。

『デストロイとの適合率が一番高かったからだろ? まぁ、何とかと天才は紙一重って言うからね。あの子はそういう子かもしれない』

 ドダイに乗ったMSが、アウルの後を追うように着艦してくる。黄緑色を基調としたその姿形は、月面でサラが使用していたパラス・アテネ。ライラに新たに支給されたMSは、シロッコからの贈り物だった。

「じゃあ、俺が不出来だってのかよ!」
『デカブツに拘るのは、少年の憧れかい? あんなもんに乗せられなくても、あたしと一緒に居れば戦果は挙げられる。それじゃあ不満だってのかい?』
「いや…そういうわけじゃ――」

 確かに、先程の戦いでもパラス・アテネの性能の高さは確認済みだ。同じ砲撃戦に特化したライラと組めれば、相当な戦果が期待できるだろう。ただ、ネオを葬ったザフトを、その手で粉微塵にしてやりたいという気持ちがアウルを逸らせていた。

「でも、ステラはネオにべったりだったんだぜ? そのネオが居なくなって、混乱しているんじゃねーのか?」
『或いは、だからかもしれないね。弔い精神って奴は、人間の限界を引っ張り出す。そういう感情が、デストロイのシステムとシンクロしたのかもしれない』
「じゃあ、もしあの時ライラを俺が殺していたら、デストロイのパイロットは俺になっていたかもしれねぇって事か?」
『その可能性もあったかもしれないって話さ。…さぁ、あんたはさっさとMSから降りて体を休めておきな。今回の戦闘は出ずっぱりだったじゃないか。次のベルリンではミネルバとアークエンジェルが出てくるって話もある。その時にへばってたんじゃ、話にならないからね』
「ライラ……」

119 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/13(木) 23:08:08 ID:???
 最近、ライラの態度が少しずつ軟化してきた様な気がする。前までは堪え性の無い自分を叱責してばかりだった彼女が、自分の体を気遣ってくれている。それは、ライラの中の自分に対する扱いが、子供から変わってきたからではないだろうか。
アウルは顔をにやけさせてライラに話しかける。

「それって、俺の事を――」
『あたしは坊やの調教中だって事を、忘れないことだ。あたしから見れば、あんたはまだまだ子供だよ』

 アウルの意図に気付いたのか、ライラは急に険しい顔つきになって言葉を被せてくる。いつもの様に厳しい視線が、モニターの中にあった。自分が変な気を起こさないように、釘を刺されたようだ。
 “そういう所があるんだよな”と一つ舌打ちし、アウルはアビスのコックピットからワイヤーを伝って降りていった。

 一方のジェリドとマウアーも、別の陸戦艦に着艦していた。スティングのカオスが、後に続いてくる。

『ライラ大尉とカクリコンのおっさんは新型を受領できたってのに、ジェリド達は相変わらずダガーのまんまだな。2人とも、忘れられてんじゃねーのか?』

 ちょっと小バカにした調子で言ってくるスティング。確かにライラにはパラス・アテネが支給され、カクリコンにはバイアランが与えられた。本来ならそれと同時にジェリド達にも新たにMSが支給されるはずだったが、少し予定が遅れているらしい。
結局、デストロイによる侵攻作戦には間に合わず、彼等は引き続きスローター・ダガーで戦闘をこなしていた。ジェリドは一つ鼻で笑って、言葉を返す。

「ガブスレイが2機だからな。俺とマウアーの――少し時間が掛かっているだけさ」
『それに、デストロイがあれば私達の出番もそう多くない。ダガーでも十分やれるわ。ステラの付き添いのスティングには、そうは思えないかもしれないけどね』

 マウアーの言葉に、スティングは少し憮然とした表情になった。確かにエクステンデッドとして3人で一組という考えは分かるが、別にジェリド達に楽をさせる為に従っているわけではない。マウアーの考えは、ちょっと面白くなかった。

『デストロイは分かるけどよ、俺とアウルも一緒になって盾になる必要はねーんじゃねぇのか? 大尉とカクリコンは新型の慣らし中とはいえ、司令官のバカは俺に死んでこいって言ってるようなもんじゃねーか』
「そうは言うな。お前を死なせたりはしないさ。どんなに生意気な小僧でも、お前は俺達の仲間だからな」

 何気なく返されたジェリドの言葉に、スティングは一瞬固まってしまった。よもや、彼がその様なことを言うとは思わなかったからだ。

『お、おぉ……』
『ジェリド……』

 戸惑ったように歯切れの悪い返事をするスティング。こそばゆい感覚に慣れていないからだろうか、動揺が表れている。
 マウアーはそんなスティングの年相応の照れを微笑ましく思い、一方でジェリドの言葉に感心していた。きっと、彼がそう思えるようになったのは、グリプス戦役で自分を含めた多くの同胞を目の前で失ってきたからだろう。
だからこそ、スティングのような子供にもそう言える様になれた。

「とにかく、ベルリンが正念場だ。サイコ・ガンダムもどきがいくら強力とはいえ、奴らは並大抵ではない。今回のように単純には行かないはずだ」
『分かってるぜ、ジェリド。次の戦闘は組めるんだろ?』
「奴らが出てくるのなら、俺が出ないわけにも行かないだろうが?」
『ヘッ! そう来なくっちゃよ!』

 ジェリドは、いい方向に進めているとマウアーは思う。かつて、彼に世界を変える力を持つと感じた彼女の感性は、今になって現実味を帯びてきたような気がする。ジェリドの傍には、不思議と仲間が集まってくる。それは自分然り、ライラ然り、カクリコン然り――
当然、そこにはスティング達の事も含まれていた。そういった仲間が彼の下に集まるのは、つまりは彼にそれだけの天運があるという証拠なのだろう。自分の愛した男性は、やはり見込んだとおりの人物だった。
 マウアーはそんなジェリドを愛しく感じ、モニターの中の精悍な顔つきに目を細めた。



120 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/13(木) 23:09:46 ID:???
 デストロイを連れたファントム・ペイン一行は、更にベルリンに向かって吹雪く荒野を突き進む。デストロイ搭載艦・ボナパルトのブリッジに陣取ったブランは、雪で白くなっている視界の先を見つめていた。

「少佐、バイアランの性能は問題ありません。次のベルリンでは存分に使えます」
「ん、ご苦労」

 ブリッジの扉が開き、カクリコンが入ってきた。これで、彼のバイアランとライラのパラス・アテネ、そして自分のアッシマーと3機の核融合炉搭載型MSが揃ったことになる。

「ライラ大尉の方はどうか?」
「ハッ、順調のようです」
「よろしい」

 そして、視線をカクリコンから通信兵に移し、告げる。

「艦隊司令に次の作戦には俺も含めて3機全てを投入すると伝えろ。恐らくミネルバとアークエンジェルがでてくる。デストロイに纏わりつく敵MSは任せろとな」
「了解しました」

 座席から振り返った通信兵が向き直り、一言返事をするとすぐに旗艦に通信を繋げた。次は、ミネルバとアークエンジェルが出てくる可能性が非常に高い。ならば、あのセイバーという紅いMSも出てくるだろう。
前回の夜襲では見事に行く手を阻まれたが、今度はそうは行かん、と気を引き締めていた。

「中尉は何度か交戦経験があると言っていたな? どうなんだ、ミネルバは?」

 夜襲は、ほんの小手調べのつもりだった。時間制限を設けていたし、損害を与えこそしても、被るつもりはなかった。それなのに必死な抵抗に遭い、ミネルバに接触できなかったばかりかライラが乗機を失うという予想外の結果が出てしまった。
それは、単なる自分の驕りではないと思う。窮鼠猫を噛むという諺があるが、ミネルバはネズミではないだろう。天運を味方につけた、不思議な力を有する艦だとブランは睨んでいた。

「間違いなくザフトの主力であると思われます。現に何度かチャンスを得ながらも、後一歩のところで届かないことが続きました。我々の最大の敵であると思われます」
「そうだろうな――」

 カクリコンを横目で見やり、口の端を吊り上げる。

「デストロイは確実だ。だが、確実すぎるゲームは面白みに欠ける。だからこそ、ミネルバは面白い存在なのだよ」
「逆に言えば、ミネルバさえ片付けられればザフトは烏合の衆と言えます」
「そのとおりだ、中尉」

 環境窓から見えるのは相変わらず吹雪で白く染まる白銀の世界。視界の悪さなら、この間の夜襲の時とそう変わらないだろう。寧ろ、視界が白く染まる分、厄介かもしれない。やがて、ベルリンの街が近づいてくる。
 その時、敵の出現を知らせる警報が鳴り響いた。予想通り、ザフトの待ち伏せだろう。策敵兵がインカムに手を当て、怒鳴る。

「敵艦隊発見! 先日のモスクワで交戦した部隊の残りと、それにベルリンの守備隊、更にジブラルタル方面からミネルバとアークエンジェルが接近中です!」
「よぉし、ミノフスキー粒子戦闘濃度散布! MS隊は出撃準備に取り掛かれ。ジブラルタルからの敵増援部隊が到着次第、出撃だ! それまではデストロイに任す!」


 ボナパルトのハッチが開き、そこから黒い山のようなシルエットがのっそりと姿を現した。上半身部に巨大なレドームのような円盤状のパックを被り、ホバー移動して白銀の大地に降り立つ。その姿は奇異で、黒塗りの機体色が決して雪の白に混ざることは無い。
さながら雪原に舞い降りた悪魔とでも形容するように、存在を隠すことも無くひけらかす。一種不敵とも取れるような威風堂々とした佇まいに、誰もが圧倒されることだろう。
 そのコックピット、ステラ=ルーシェは、目の前に広がる光景を睨みつける。ベルリン郊外、都市部まではまだ距離がある。しかし、その先に確実に居るであろう敵の存在は何となく察知する事ができた。

「あいつらが――!」

 他の陸戦艦からも、部隊が出撃する。雪原の向こうからは敵がやってくる。ステラの目は、その敵を確実に見据えていた。

121 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/13(木) 23:10:43 ID:???
『前方に敵機を確認。迎撃に出ます』
『ま、待て! ――デストロイが前に出るぞ!』

 ウインダム部隊が前に出ようとした時、デストロイが再びホバーで機体を浮き上がらせ、前進を開始した。

『デストロイ! まだ攻撃命令は出ていないぞ!』
「――知るもんか」

 繋げられた通信回線を一蹴すると、ステラはこちらの迎撃に出てきたザフト部隊を見据えた。最初に向かってきた敵部隊の規模は、おおよそだが2個中隊といったところだろう。まだ本格的な交戦距離ではない。
 しかし、次の瞬間、デストロイの円盤部に装備されている4門のアウフプラール・ドライツェーンが火を噴く。戦艦の主砲をも圧倒するその威力が、迎撃に出て来たばかりの2個中隊を一瞬にして薙ぎ払った。

『デストロイ――ッ!』
『これ程とは……!』

 ウインダムのパイロットの目に、前方で吹き上がる雪のカーテンが飛び込んできた。たった一発放たれたデストロイの主砲が、一瞬にして敵部隊を破壊の中へと飲み込んだ。まるで氷河が崩れ落ちたような雪煙を吹き上げ、デストロイはその名の通りの力を示した。
 そして、デストロイは尚も侵攻を続ける。流石に視界の悪い中で無闇に連発をしなかったが、何かに取り付かれているかのように不気味にゆっくりとベルリンの街に向かう。
 やがて、最初に放ったアウフプラール・ドライツェーンによる効果が見えてきた。ザフトの2個中隊はほぼ全滅。生き残った機体も機能停止寸前の様子で、機体をショートさせながらもがいているようだ。

『これなら、いくらコーディネイターとはいえ、物の数じゃないな?』
『デストロイがあれば、改造人間ったって唯の人さ』

 デストロイの威容は、まさに圧倒的だった。誰も近くへ寄せ付けないかのようなオーラを纏い、味方ですら接触を拒絶するかのような勝手さで前進を続ける。それを阻止せんと、更にベルリンの守備隊が出てきた。今度は先程の数の比ではない。
一個大隊規模の戦力を差し向けてきた。
 それでも、デストロイは進む。自重を浮かせるホバーは力不足なのか、速度は非常にゆったりとしている。全身に火器を装備していながらも、回避性能はほぼゼロだ。流石に今度はザフトもデストロイの性能を分かったようで、大きく散開して襲い掛かってきた。

「あんた達が――!」

 周囲を囲まれても、ステラは一切動揺を見せることは無い。以前までなら、こうして囲まれてしまえば不安から精神状態が不安定になっていただろう。しかし、今の彼女の瞳の奥には、憎しみの光が宿っている。その光が消えない限り、デストロイの足が止まることは無い。
 デストロイ上部に掲げられるようにして設置されている円盤部分の円周が、無数の煌きを灯す。そして、まるで傘を広げるように煌きから破滅的なまでのビームが広がった。
デストロイ自身も回転を始め、円盤部に20門設置されたネフェルテムが取り囲んだ敵部隊を弾き飛ばすように焼き払う。

 全てが一瞬で決まってしまう。デストロイの火力は、核融合炉からの膨大なエネルギー供給を受けて無尽蔵に攻撃を続ける。空中を飛行するバビも、雪原を滑るバクゥ・ハウンドも、長距離から狙っていたガズウートも、全て関係なかった。
デストロイに仕掛けたMSは、全て虫けらの様に屠られる。たったそれだけの、シンプルな構図だった。

「ネオを――あんた達が奪ったネオを返せぇッ! ステラに返せぇッ!」

 雪煙とMSの爆発の煙が混ざり合って視界を汚す中、デストロイの歩みは止まらない。唯我独尊を誇示するように、全てを撥ね退ける威圧感を放っていた。
 ステラの頭の中は、破壊で満たされている。ネオを失ったことにより、彼女の穏やかな気質は一変した。大事な心の支えを失い、元々幼い性格だった彼女の中の支柱がぽっきりと折れてしまったのだ。結果招いたのは自我の崩壊。
デストロイのシステムに馴染むようにネオの死を誘導的に破壊へと向けられたとはいえ、ステラにはその事実だけで全てを壊せる気質があった。気性を破壊へ向けられているから、涙すら流さない。

 その時、一発のビームがデストロイを直撃した。しかし、それはデストロイに装備されたリフレクターによって全く効果を示さなかった。ザムザザーやゲルズゲーに装備されていたものと同じ、陽電子リフレクターだ。
デストロイには、それが巨体をカバーする為に頭部と両腕、それと円盤部にそれぞれ装備されている。故に、遠距離からの狙撃に対してもほぼ無敵。

122 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/14(金) 00:01:06 ID:???
「ば、バカなッ! あれにどれだけのコストを投入しているんだ、連合は!?」

 デストロイを狙撃したのは、換装で長距離狙撃用ライフルを背負ったバクゥ・ハウンド。寸分も効果を得られなかったことに、パイロットは驚愕していた。そして、驚いている間にデストロイの姿勢が、そのバクゥ・ハウンドに向いた。
ゆっくりと下半身が回転し、デストロイの上部円盤部が持ち上がって背中にマウントされて行く。

「ま、まさか――!」

 バクゥ・ハウンドのパイロットは、デストロイの変体に目を奪われていた。MAと思われたその機体は、単純ながらも、信じられないことに変形を始めたのだ。そして、ゆっくりと変形を終えると、そこから表れたシルエットは――

「ひ、人の形をしているのか、あんなものが――」

 そのパイロットの目に一瞬だけ焼きついたその姿は、所謂“G”と呼ばれ、人間の形に最も近いと思われているMSの姿だった。その頭部の、丁度人間で言えば口の部分から発せられたビーム“ツォーン”が、バクゥ・ハウンドを目掛けて襲い掛かってきた。
 その光景は、まさしく空想上の中に出てくる化け物の為せる所業。パイロットには、さぞかし恐怖に感じただろう。しかし、彼はもうそんなことに怯える必要は無かった。一瞬だけ焼きついたその光景は、そんな恐怖に引き攣る彼を一瞬にして消滅させてしまったのだから。

 蹂躙。まさに、そう呼ぶに相応しい圧倒的な力が、デストロイから放たれている。遠距離からの攻撃は全て陽電子リフレクターが防ぎ、近づく敵には無数のビームが襲い掛かる。まるでシューティング・ゲームの様に、いとも容易くザフトのMSは蹂躙されて行った。

 ステラの瞳は敵を探す。そして、その時、これまでに無い強力なビームがデストロイを直撃した。流石にその一撃は堪えた様で、陽電子リフレクターで機体にダメージこそ無かったものの、大きくバランスを揺さぶられた。
視線を射線の方向に向けると、そこには果たしてミネルバとアークエンジェルが向かってきているのが目に入ってきた。

「ミネルバ…アークエンジェル……!」

 ミネルバが、後方のアークエンジェルに道を譲るように進路を変える。そして、続けて前に出てきたアークエンジェルが、2門の陽電子砲を構えていた。ステラはデストロイをアークエンジェルに正対させ、胸部に横に3門並んでいるスキュラにエネルギーを送る。

 一方のアークエンジェル。ラミアスは初めて見るデストロイの巨大な威容に慄いていた。しかし、そうやって怯えていていいのは、艦長席に座っていない時だけ。艦のリーダーである自分の戦意が落ちれば、即ち艦全体の士気に関わる。
あれだけのものが出てきた以上、このままのさばらせて置く訳には行かないのだ。

「ミネルバのタンホイザーの効果は?」
「機体を揺さぶっただけですね……ダメージは無いものと思われます」
「こちらのローエングリンでも、効果は望めないかも……でも!」

 ミネルバとの連携で陽電子砲を続けざまに放つ波状攻撃。普通ならば、それだけで戦いの趨勢が決まってしまうほどの攻撃も、それに対して防御手段を持つデストロイには意味が無いかもしれない。
しかし、デストロイの目をベルリンから引き付けるには、最も効果を発揮する手段だ。

「デストロイにエネルギー反応! こちらを狙っています!」
「回避運動!」

 チャンドラが叫ぶ。それに応えて、ノイマンがラミアスの指示よりも数瞬早く反応し、船体を傾けさせる。

「ローエングリン、臨界!」
「発射!」

 船体のバランスを崩しながらも発射されるローエングリン。ノイマンの絶妙な制御バランスと、チャンドラの正確な狙いがデストロイを捉える。ローエングリンがデストロイに直撃し、しかし少し傾いたデストロイはお構いなしとばかりにスキュラを放つ。
本筋の赤をなぞる様に輝く白の輝き。複相ビームの奔流は、照準を狂わせられながらもアークエンジェルを掠め、船体を大きく揺さぶった。

「クッ――被害状況は!?」
「機関出力低下! 高度を維持できません!」
「そんな――たった一発の攻撃が掠めただけで!?」

123 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/14(金) 00:02:48 ID:???
 不時着の影響で、船体が再び大きく揺れた。一室に監禁されたままのネオは、振動でベッドから転げ落ちてしまった。不自由な四肢をもがき動かし、何とかベッドに腕を乗せてしがみつく。

「――ったく! 戦艦でデストロイとやり合っても勝てる見込みなんか無いってのに!」

 先程の一撃は、恐らくアークエンジェルに多大なるダメージを負わせたことだろう。今の衝撃が不時着した揺れならば、そう考えられる。そして、そのネオの推測を決定付けるかのように、出入り口のドアの隙間から煙が入り込んできた。

「じょ、冗談じゃないぞ!」

 ギョッとした。ネオは四肢を拘束させられていて、満足に体を動かすことすらできない。そんな状態で監禁させられていれば、この煙で窒息死もあり得るだろう。煙に目を沁みさせながら、徐々に体内の酸素を奪われてもがき苦しみながら死んで行く。
それを想像するだけでネオの頭の中は追い詰められて行った。

「だ、誰か! 誰か居ないのか!?」

 呼んでも応えるわけが無い。今は戦闘中で、ネオにかまけていられるクルーなど一人も居ないだろう。そうしている間にも、煙は徐々にその量を増やし、ネオの部屋に侵入してくる。

「バ、バカな……! こんな所で、死んでたまるか!」

 こうなれば、頼れるのは自分しかない。ネオはベッドを這いずる様に立ち上がり、ドアに向かって突き進む。そして、そのまま勢いに任せて体当たりをかました。

「うおぁッ!?」

 すると、どうしたことか、施錠されているはずのドアがいとも容易くぶち破れてしまった。ネオは破られたドアと一緒に通路に倒れこむ。どうやら、先程のデストロイの一撃は自分の部屋の近くにダメージを与えたらしく、セキュリティやロックが故障していたようだ。

「く…うぅ――! これしき……!」

 ドアの上に倒れこんだネオは、再び何とか立ち上がって周囲を見渡した。通路は煙に巻かれていて、視界が悪い。しかし、良く見ると煙の流れが一定の方向に向かって流れているのが分かった。恐らく、どこかの外壁に穴が開いているのだろう。
煙の流れを辿って行ければ、いずれ外に出られるかもしれない。ネオは、先程までの焦りの表情から一変させ、笑みを湛えた。

「フッ…フフフ……! ツキが回ってきたぞ、私にも!」

 こんな巡り合わせがあるものだろうか。運が良いとかそんな単純に決め付けていい事ではないと感じた。恐らく、デストロイが戦うことが無ければ、こんなチャンスは巡って来なかっただろう。
 それならば、デストロイを止めるのは自分の役目なのかもしれない。こうしてデストロイが3人の内の誰かを取り込んで自分に逃げる機会を与えたのなら、それは自分が助け出す為の布石。ザフトに頼らなくてもいいという安堵感が、ネオの頭の中の悩みを一掃した。

 それでも、ネオはまだ四肢を拘束されている状態。いくらアークエンジェルが緊急事態とはいえ、不時着して戦線から退かざるを得なくなった状態であれば直ぐに自分の脱走に気付かれるかもしれない。
ネオは、見つかるまでに何とかしてアークエンジェルから脱出しなければ。今度は、そういった焦りが出てきた。
 しかし、それも大して心配することではないかもしれない。こうして煙が充満していれば、捜索する人間が居てもそうそう見つかることは無いだろう。

 ネオは煙の流れる方向を見極め、その方向にあるであろう外壁の穴に向かって歩みを進める。制限させられた四肢を、転ばないように細心の注意を払いながら、チョコチョコと歩く。
 こんな所で、捕まるわけが無い。ネオは何故か確信に似た思い込みをして、こめかみから伝う汗を拭った。

124 : ◆x/lz6TqR1w :2007/12/14(金) 00:09:08 ID:???
油断したら久しぶりにさるさん規制に掛かった今回は以上です

新職人さんの出現で盛り上がりそうな予感にwktk(・∀・)

125 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/14(金) 00:12:26 ID:???
おつです

126 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/14(金) 00:13:59 ID:???
乙かれ
各キャラがグリプス戦役を踏まえた性格になってるのがいいよね
今回ならジェリド
世界の違うキャラの絡ませ方が凄く上手いと思う

127 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/14(金) 00:58:19 ID:???
乙〜
なんか普通にネオが死にそうな予感w

128 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/14(金) 03:31:11 ID:???
乙〜
ミネルバから外に出るとき、笑顔でなんか叫んじゃったら、その瞬間アウトっぽいなw

129 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/14(金) 17:06:27 ID:???
GJ
またシン空気w

130 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/14(金) 19:39:43 ID:z9yKD61F
シンなんてジェリド以下だろ

どうせカツのぶっ放した流れ弾に当たって死ぬのが関の山

131 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/14(金) 19:48:06 ID:???
NG ID:z9yKD61F


132 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/14(金) 21:59:33 ID:???
金曜保守

133 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/15(土) 09:28:56 ID:jxRXXYTr
遊びでageてんじゃないんだよ

134 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/15(土) 18:34:30 ID:???
保守のお時間

135 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/15(土) 21:24:06 ID:???
GJでした。デストロイってこんなに強かったんやね。
是非、Zに乗ったカミーユで戦って欲しいところなんですが、開発が間に合わないかな。


136 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/16(日) 00:20:31 ID:???


137 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/16(日) 01:08:40 ID:???
保守

138 :通常の名無しさんの3倍:2007/12/16(日) 01:39:48 ID:kpwN2qHL
age


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>>33 結果的に第二次大戦後で国内で直接、最大の人数を殺害した人物に… (在外邦人だと日本赤軍の「リッダ闘争」とやら、なのかな)
35 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/11(月) 12:19:04.72 ID:0NDwPXkN
吉野氏もそのままブクロ派に残って専従でもやっていればな。 こういうナウいヤングと知り合えたわけで・・・ \糞スレを立てる事しかできない白痴。
      ガッキーン       /  ( ゚∀゚ )    ( ゚∀゚ )          /test/read.cgi/shar/1196663147/">★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

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